(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン樹脂、成形品、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20230320BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230320BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20230320BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20230320BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20230320BHJP
D01F 6/70 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C08G18/66 074
C08G18/10
C08L75/08
C08L33/24
C08G18/75 010
D01F6/70 B
(21)【出願番号】P 2018235572
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田子 浩明
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 巧
(72)【発明者】
【氏名】金山 宏
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144861(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092745(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092744(WO,A1)
【文献】特開昭56-019525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0284501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
D01F 1/00 - 6/96
D01F 9/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、
分子量400以下の低分子量ポリオール、および、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分と
の反応生成物である熱可塑性ポリウレタン樹脂であり、
不飽和脂肪酸アミドを含有し、
前記不飽和脂肪酸アミドの含有割合が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下である
ことを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、70モル%以上99モル%以下の割合でトランス体を含有する
ことを特徴とする、請求項
2に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む
ことを特徴とする、成形品。
【請求項5】
溶融紡糸成形により得られる弾性繊維であることを特徴とする、請求項4に記載の成形品。
【請求項6】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分、および、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程と、
前記イソシアネート基末端プレポリマー、および、分子量400以下の低分子量ポリオールを反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る工程とを備え、
さらに、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂に不飽和脂肪酸アミドを含有させる工程を備え、
前記不飽和脂肪酸アミドの含有割合が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下である
ことを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂、成形品、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は、一般に、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールの反応により得られるゴム弾性体であって、ポリイソシアネートおよび低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを備えている。このような熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶融成形することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる成形品を得ることができる。
【0003】
熱可塑性ポリウレタン樹脂として、例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有するイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られるポリウレタンエラストマーにおいて、ポリオール成分が、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールを含有し、高分子量ポリオールが非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有することが提案されている。より具体的には、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、共重合性ポリテトラメチレンエーテルグリコール(テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1800)とを反応させてプレポリマーを合成し、そのプレポリマーと、1,4-ブタンジオールとを反応させて、ポリウレタンエラストマーを製造することが、提案されている(例えば、特許文献1(合成例9、実施例9)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリウレタンエラストマーの成形品は、用途に応じて各種物性が要求され、例えば、伸縮特性(戻り応力、残留歪)および耐ブルーム性を兼ね備えることが要求される場合がある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のポリウレタンエラストマーは、用途によっては、伸縮特性(戻り応力、残留歪)および/または耐ブルーム性が十分ではない場合がある。
【0007】
本発明は、伸縮特性(戻り応力、残留歪)および耐ブルーム性を兼ね備える熱可塑性ポリウレタン樹脂、その熱可塑性ポリウレタン樹脂から得られる成形品、および、そのような熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できる熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、分子量400以下の低分子量ポリオール、および、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分との反応生成物である、熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、不飽和脂肪酸アミドを含有し、前記不飽和脂肪酸アミドの含有割合が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、0.01質量%以上0.5質量%以下である、上記[1]に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む、上記[1]または[2]に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、70モル%以上99モル%以下の割合でトランス体を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む、成形品を含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、溶融紡糸成形により得られる弾性繊維である、上記[5]に記載の成形品を含んでいる。
【0014】
本発明[7]は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分、および、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程と、前記イソシアネート基末端プレポリマー、および、分子量400以下の低分子量ポリオールを反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る工程とを備える、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂およびその成形品は、原料(高分子量ポリオール)として、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールが用いられている。
【0016】
原料として非晶性ポリエーテルポリオールを用いれば、その結晶性の低さに由来して、ハードセグメントの析出を抑制でき、耐ブルーム性の向上を図ることができる。
【0017】
一方、ハードセグメントの析出が抑制されると、ハードセグメント間の凝集性が低下するため、伸縮特性の低下を惹起する場合がある。しかし、非晶性ポリエーテルポリオールの数平均分子量が2500以上であれば、ソフトセグメント相(ソフトセグメントにより構成されるドメイン)の結晶化を抑制したまま、ハードセグメントの析出を促進でき、伸縮特性の向上を図ることができる。
【0018】
また、非晶性ポリエーテルポリオールの数平均分子量が4000以下であれば、ハードセグメント間の距離が長くなることによる凝集性の低下を抑制でき、その結果、優れた伸縮特性を維持することができる。
【0019】
すなわち、原料として、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを用いることにより、伸縮特性および耐ブルーム性を、バランスよく両立することができる。
【0020】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、伸縮特性および耐ブルーム性を兼ね備えた熱可塑性ポリウレタン樹脂および成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、後述するように、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させ、その後、必要に応じて、熱処理(加熱養生)することによって得られる。換言すれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である。
【0022】
ポリイソシアネート成分は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、必須成分として含んでいる。
【0023】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとしては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン樹脂の伸縮特性および耐ブルーム性の両立を図る観点から、対称構造である1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0024】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス-
,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、75モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、例えば、99.8モル%以下、好ましくは、99モル%以下、より好ましくは、96モル%以下、さらに好ましくは、90モル%以下の割合で、含有している。換言すると、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体およびシス1,4体の総量が100モル%であるため、シス1,4体を、例えば、0.2モル%以上、好ましくは、1モル%以上、より好ましくは、4モル%以上、さらに好ましくは、10モル%以上、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下、より好ましくは、25モル%以下、さらに好ましくは、20モル%以下の割合で、含有している。
【0025】
トランス1,4体の含有割合が上記下限以上であれば、伸縮特性および耐熱性の向上を図ることができる。また、トランス1,4体の含有割合が上記上限以下であれば、耐ブルーム性の向上を図ることができる。
【0026】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、国際公開WO2009/051114パンフレットに記載の方法などにより、製造することができる。
【0027】
また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0028】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの変性体としては、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(ダイマー(例えば、ウレトジオン変性体など)、トリマー(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体など)など)、ビウレット変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと3価アルコールとの反応より生成するポリオール変性体(付加体)など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)などが挙げられる。
【0029】
また、ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、その他のポリイソシアネート、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを、任意成分として含有することができる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω、ω’-ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)が含まれる。
【0032】
脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス,トランス-、トランス,シス-、およびシス,シス-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(水添MDI)、1,3-または1,4-シクロヘキサンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、その異性体である2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン(NBDI)、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタンなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0036】
また、その他のポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0037】
その他のポリイソシアネートの変性体としては、例えば、その他のポリイソシアネートの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0038】
その他のポリイソシアネートを含有する場合の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0039】
ポリイソシアネート成分として、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを単独で用いる。より好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを単独で用いる。
【0040】
本発明において、ポリオール成分は、分子中に水酸基を2つ以上含有する化合物である。
【0041】
ポリオール成分は、分子量400以下の低分子量ポリオールと、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールとを含み、好ましくは、本質的に、分子量400以下の低分子量ポリオールと、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールとからなる。
【0042】
なお、ポリオール成分に分子量分布がある場合には、数平均分子量が採用される。また、このような場合において、数平均分子量は、GPC法による測定や、ポリオール成分の各成分の水酸基価および処方により決定することができる(以下同様)。
【0043】
低分子量ポリオールとしては、例えば、分子中に水酸基を2つ以上有し、分子量50以上400以下の化合物(単量体)が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール(1,4-ブタンジオール、1,4-BD)、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコールなどのC2~4アルカンジオール、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールAおよびその水添物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0044】
また、低分子量ポリオールとしては、上記の多価アルコールを開始剤として、炭素数2~3のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)を、上記分子量となるように付加反応させたポリオキシアルキレンポリオール(ランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)なども挙げられる。
【0045】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0046】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコール(低分子量ジオール)、より好ましくは、C2~C4アルカンジオール、さらに好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0047】
低分子量ポリオールが上記のものであれば、機械物性に優れた成形品(後述)を得ることができる。
【0048】
低分子量ポリオールの分子量は、例えば、50以上、好ましくは、70以上であり、400以下、好ましくは、300以下である。
【0049】
低分子量ポリオールの分子量が上記範囲であれば、機械物性に優れた成形品(後述)を得ることができる。
【0050】
非晶性ポリエーテルポリオールにおいて、非晶性とは、後述する示差走査熱量測定(DSC測定)により得られる融点が、23℃以下であることを示す。なお、結晶性とは、後述する示差走査熱量測定(DSC測定)により得られる融点が、23℃を超過することを示す。
【0051】
すなわち、非晶性ポリエーテルポリオールは、DSC測定により得られる融点が、23℃以下であるポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールは、分子中に1つ以上のエーテル結合と、2つ以上の水酸基とを有する高分子量化合物(好ましくは、重合体)である。
【0052】
非晶性ポリエーテルポリオールとして、より具体的には、非晶性ポリオキシエチレンポリオール、非晶性ポリオキシプロピレンポリオール、非晶性ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体(ランダム/ブロック)、非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどの非晶性ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられ、好ましくは、非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0053】
非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールは、炭素数3のオキシ直鎖状アルキレン基を主鎖として有するポリエーテルポリオールである。
【0054】
非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、上記の低分子ポリオールを開始剤とする、トリメチレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。開始剤として、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。なお、2価アルコールにトリメチレンオキサイドを付加重合させる方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0055】
2価アルコールにトリメチレンオキサイドを付加重合させることにより、2価の非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオール(別名:非晶性ポリ(1,3-プロパンジオール)、非晶性ポリ(オキシ-1,3-プロピレン)ジオール、非晶性ポリトリメチレンエーテルグリコール(非晶性PT(C3)MEG))を得ることができる。
【0056】
また、2価の非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなども挙げられる。
【0057】
これら非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールとして、好ましくは、2価の非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0059】
非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランなどの重合単位に上記2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール(非晶性PT(C4)MEG)などが挙げられる。
【0060】
より具体的には、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフラン(例えば、3-メチルテトラヒドロフランなど)との共重合体(テトラヒドロフラン/アルキル置換テトラヒドロフラン(モル比)=15/85~85/15)や、例えば、テトラヒドロフランと、分岐状グリコール(例えば、ネオペンチルグリコールなど)との共重合体(テトラヒドロフラン/分岐状グリコール(モル比)=15/85~85/15)などとして、得ることができる。
【0061】
また、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、市販品を用いることができ、そのような市販品としては、例えば、旭化成せんい社製「PTXG」シリーズ、保土谷化学工業社製「PTG-L」シリーズなどが挙げられる。
【0062】
これら非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0063】
非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールとして、好ましくは、2価の非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオール(非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール)が挙げられる。
【0064】
非晶性ポリエーテルポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
非晶性ポリエーテルポリオールとして、好ましくは、2価の非晶性ポリエーテルポリオール(非晶性ポリエーテルジオール)が挙げられる。
【0066】
また、非晶性ポリエーテルポリオールとして、入手容易性および吸湿し難さの観点から、好ましくは、非晶性ポリトリメチレンエーテルポリオール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられ、伸縮特性および耐ブルーム性の両立を図る観点から、より好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオール、さらに好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0067】
非晶性ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、伸縮特性および耐ブルーム性の両立を図る観点から、2500以上、好ましくは、2700以上、より好ましくは、2800以上、さらに好ましくは、3000以上、とりわけ好ましくは、3200以上であり、また、4000以下、好ましくは、3900以下、より好ましくは、3800以下、さらに好ましくは、3700以下、とりわけ好ましくは、3600以下である。
【0068】
上記数平均分子量の非晶性ポリエーテルポリオールを用いれば、伸縮特性および耐ブルーム性の両立を図ることができる。
【0069】
より具体的には、原料として非晶性ポリエーテルポリオールを用いれば、その結晶性の低さに由来して、ハードセグメントの析出を抑制でき、耐ブルーム性の向上を図ることができる。
【0070】
一方、ハードセグメントの析出が抑制されると、ハードセグメント間の凝集性が低下するため、伸縮特性の低下を惹起する場合がある。しかし、非晶性ポリエーテルポリオールの数平均分子量が2500以上であれば、ソフトセグメント相の結晶化を抑制したまま、ハードセグメントの析出を促進でき、伸縮特性の向上を図ることができる。
【0071】
また、非晶性ポリエーテルポリオールの数平均分子量が4000以下であれば、ハードセグメント間の距離が長くなることによる凝集性の低下を抑制でき、その結果、優れた伸縮特性を維持することができる。
【0072】
すなわち、原料として、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを用いることにより、伸縮特性および耐ブルーム性を、バランスよく両立することができる。
【0073】
ポリオール成分において、低分子量ポリオールおよび非晶性ポリエーテルポリオールの含有割合は、それらの総量に対して、非晶性ポリエーテルポリオールが、例えば、5モル%以上、好ましくは、7モル%以上、より好ましくは、10モル%以上、さらに好ましくは、15モル%以上であり、例えば、75モル%以下、好ましくは、65モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。また、低分子量ポリオールが、例えば、25モル%以上、好ましくは、35モル%以上、より好ましくは、50モル%以上であり、例えば、95モル%以下、好ましくは、93モル%以下、より好ましくは、90モル%以下、さらに好ましくは、85モル%以下である。
【0074】
また、ポリオール成分は、その他のポリオール(上記の低分子量ポリオール、および、上記の非晶性ポリエーテルポリオールを除くポリオール化合物)を含有することができる。
【0075】
その他のポリオールとしては、例えば、数平均分子量が400を超過し10000以下の高分子量ポリオール(非晶性ポリエーテルポリオールを除く。)が挙げられ、より具体的には、結晶性ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。
【0076】
また、その他のポリオールとしては、例えば、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオール以外の非晶性ポリエーテルポリオールが挙げられ、より具体的には、例えば、数平均分子量400を超過し2500未満の非晶性ポリエーテルポリオール、例えば、数平均分子量4000を超過し10000以下の非晶性ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0077】
その他のポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、1質量%以下であり、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0078】
すなわち、ポリオール成分は、とりわけ好ましくは、低分子量ポリオールと、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールとのみを含有する。
【0079】
そして、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、以下に示す熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によって、得られる。
【0080】
より具体的には、この方法では、上記のポリイソシアネート成分と上記のポリオール成分とを反応させる(反応工程)。
【0081】
上記各成分(ポリイソシアネート成分、ポリオール成分)を反応させるには、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の方法が採用される。各種物性の向上の観点から、好ましくは、プレポリマー法が採用される。
【0082】
具体的には、プレポリマー法では、まず、ポリイソシアネート成分と、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオール(さらに、必要に応じて上記のその他のポリオール(以下同様))とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する(プレポリマー合成工程)。
【0083】
プレポリマー合成工程では、ポリイソシアネート成分と、非晶性ポリエーテルポリオールとを、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法により反応させる。
【0084】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネート成分および非晶性ポリエーテルポリオールを、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0085】
溶液重合では、有機溶剤に、ポリイソシアネート成分および非晶性ポリエーテルポリオールを加えて、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0086】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0087】
また、上記の重合反応では、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
【0088】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0089】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫(オクチル酸スズ)、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクタン酸ビスマス(オクチル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられ、好ましくは、オクチル酸スズ、オクチル酸ビスマスが挙げられる。
【0090】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0091】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
ウレタン化触媒の添加割合は、ポリイソシアネート成分および非晶性ポリエーテルポリオールとの総量10000質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0093】
なお、ウレタン化触媒は、必要に応じて、公知の触媒希釈剤(溶剤)により希釈された溶液または分散液として添加することができる。
【0094】
また、上記重合反応においては、未反応のポリイソシアネート成分や、有機溶剤を用いた場合には有機溶剤を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去することができる。
【0095】
プレポリマー合成工程において、各成分の配合割合は、非晶性ポリエーテルポリオール中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)として、例えば、1.3以上、好ましくは、1.5以上であり、例えば、20以下、好ましくは、15以下、より好ましくは、10以下、さらに好ましくは、8以下である。
【0096】
より具体的には、プレポリマー合成工程における各成分の配合割合は、非晶性ポリエーテルポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート成分が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、例えば、150質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。
【0097】
そして、この方法では、イソシアネート基含有率が、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、1.5質量%以上、より好ましくは、3.0質量%以上、さらに好ましくは、5.0質量%以上、例えば、30.0質量%以下、好ましくは、19.0質量%以下、より好ましくは、16.0質量%以下、さらに好ましくは、12.0質量%以下に達するまで上記成分を反応させる。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。
【0098】
なお、イソシアネート基含有量(イソシアネート基含有率)は、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法などの公知の方法によって求めることができる。
【0099】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、低分子量ポリオールとを反応させて、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物を得る(鎖伸長工程)。
【0100】
すなわち、この方法において、低分子量ポリオールは、鎖伸長剤である。
【0101】
そして、鎖伸長工程では、イソシアネート基末端プレポリマーと、低分子量ポリオールとを、例えば、上記したバルク重合や上記した溶液重合などの重合方法により反応させる。
【0102】
反応温度は、例えば、室温以上、好ましくは、50℃以上、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下であり、反応時間が、例えば、5分以上、好ましくは、1時間以上、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。
【0103】
また、各成分の配合割合は、低分子量ポリオール中の水酸基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)として、例えば、0.75以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.1以下である。
【0104】
より具体的には、鎖伸長工程における各成分の配合割合は、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、低分子量ポリオールが、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、2.5質量部以上、より好ましくは、3.5質量部以上、さらに好ましくは、4.5質量部以上、とりわけ好ましくは、5.5質量部以上であり、例えば、15.0質量部以下、好ましくは、10.0質量部以下、より好ましくは、9.0質量部以下である。
【0105】
また、鎖伸長工程において、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度(後述)を調整するために、低分子量ポリオールとともに、上記非晶性ポリエーテルポリオールやその他のポリオールなどを、適宜の割合で配合することもできる。
【0106】
さらに、この反応においては、必要に応じて、上記したウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒は、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または低分子量ポリオールに配合することができ、また、それらの混合時に別途配合することもできる。
【0107】
また、上記の反応生成物を得る方法として、ワンショット法を採用する場合には、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分(非晶性ポリエーテルポリオールおよび低分子量ポリオールを含む)とを、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、より好ましくは、0.98以上、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下、より好ましくは、1.08以下となる割合で、同時に配合して撹拌混合する。
【0108】
また、この撹拌混合は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、70℃以上、例えば、280℃以下、好ましくは、260℃以下で、反応時間が、例えば、30秒以上1時間以下で実施する。
【0109】
また、撹拌混合時には、必要により、上記したウレタン化触媒や有機溶剤を、適宜の割合で添加することができる。
【0110】
これにより、反応生成物として、熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる。
【0111】
また、この方法では、必要に応じて、得られた反応生成物を熱処理することができる(熱処理工程)。
【0112】
熱処理工程は、上記の反応生成物(熱処理前の反応生成物(一次生成物))を熱処理して二次生成物(熱処理後の反応生成物)を得る工程である。
【0113】
熱処理工程では、上記の反応工程で得られた一次生成物を、所定の熱処理温度で、所定の熱処理期間静置することにより熱処理した後、必要により乾燥させる。
【0114】
熱処理温度としては、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0115】
熱処理温度が上記範囲であれば、とりわけ良好に、伸縮特性および耐ブルーム性を兼ね備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0116】
熱処理期間としては、例えば、3日以上、好ましくは、4日以上、より好ましくは、5日以上、さらに好ましくは、6日以上であり、例えば、10日以下、好ましくは、9日以下、より好ましくは、8日以下である。
【0117】
熱処理期間が上記範囲であれば、とりわけ良好に、伸縮特性および耐ブルーム性を兼ね備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0118】
また、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、好ましくは、表面改質剤(滑剤)が添加される。換言すれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、好ましくは、表面改質剤(滑剤)を含有する。
【0119】
表面改質剤としては、例えば、脂肪酸アミドなどが挙げられ、脂肪酸アミドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0120】
飽和脂肪酸アミドは、飽和脂肪酸のアミド化合物であって、特に制限されないが、例えば、ラウリルアミド、オレイルアミド、ステアリルアミドなどの飽和脂肪酸モノアミド、例えば、メチレンビスラウリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスラウリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスステアリルアミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド、例えば、メチレンビス12-ヒドロキシステアリルアミド、エチレンビス12-ヒドロキシステアリルアミドなどの水酸基含有飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
不飽和脂肪酸アミドは、不飽和脂肪酸のアミド化合物であって、特に制限されないが、例えば、オレイルアミド、エルカアミドなどの不飽和脂肪酸モノアミド、例えば、メチレンビスオレイルアミド、メチレンビスエルカアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカアミドなどの不飽和脂肪酸ビスアミド、例えば、メチレンビスヒドロキシオレイルアミド、エチレンビスヒドロキシオレイルアミドなどの水酸基含有不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0122】
表面改質剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0123】
表面改質剤として、耐ブルーム性の向上を図る観点から、好ましくは、脂肪酸アミドが挙げられ、より好ましくは、不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。すなわち、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、好ましくは、脂肪酸アミドを含有し、より好ましくは、不飽和脂肪酸アミドを含有する。
【0124】
また、表面改質剤として、好ましくは、ビスアミド(飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド)が挙げられ、とりわけ好ましくは、不飽和脂肪酸ビスアミドが挙げられる。
【0125】
熱可塑性ポリウレタン樹脂が表面改質剤(好ましくは、不飽和脂肪酸アミド)を含有する場合、表面改質剤(好ましくは、不飽和脂肪酸アミド)の含有割合は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、例えば、0.001質量%以上、より好ましくは、0.005質量%以上、より好ましくは、0.01質量%以上、さらに好ましくは、0.05質量%以上であり、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以下、さらに好ましくは、0.2質量%以下である。
【0126】
表面改質剤(好ましくは、不飽和脂肪酸アミド)の含有割合の含有割合が上記範囲であれば、とりわけ良好に、耐ブルーム性の向上を図ることができる。
【0127】
なお、表面改質剤(滑剤)は、任意のタイミング(例えば、各成分の合成時、合成後、混合時、反応時など)において、添加することができる。
【0128】
また、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、必要に応じて、上記の表面改質剤以外の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、さらには、加水分解防止剤(カルボジイミド化合物など)、染料(ブルーイング剤など)、可塑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、フィラー、防錆剤、充填剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の混合時、合成時または合成後に添加することができる。
【0129】
酸化防止剤としては、特に制限されず、公知の酸化防止剤(例えば、BASFジャパン製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0130】
耐熱安定剤としては、特に制限されず、公知の耐熱安定剤(例えば、BASFジャパン製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系加工熱安定剤などが挙げられる。
【0131】
紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤(例えば、BASFジャパン製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0132】
耐光安定剤としては、特に制限されず、公知の耐光安定剤(例えば、ADEKA製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
【0133】
これら添加剤(表面改質剤を除く。)は、それぞれ熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上、例えば、3.0質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下となる割合で、添加される。
【0134】
なお、表面改質剤や、その他の添加剤が添加された熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂と添加剤(表面改質剤や、その他の添加剤)とを含む樹脂組成物でもあるが、「熱可塑性ポリウレタン樹脂」として総称する。
【0135】
そして、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、伸縮特性および耐ブルーム性をバランスよく両立する熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0136】
すなわち、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、分子量400以下の低分子量ポリオール、および、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールを含むポリオール成分とを反応させる。
【0137】
そのため、このような製造方法により得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分および低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネート成分および非晶性ポリエーテルポリオール(数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオール)の反応により形成されるソフトセグメントとを備えている。
【0138】
熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0139】
なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント(ポリイソシアネート成分と低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から、公知の方法で算出することができる。
【0140】
より具体的には、ハードセグメント濃度は、例えば、プレポリマー法が採用される場合には、各成分の配合処方(仕込)から次式により算出することができる。
[鎖伸長剤(g)+(鎖伸長剤(g)/鎖伸長剤の分子量(g/mol))×ポリイソシアネート成分の平均分子量(g/mol)]÷(ポリイソシアネート成分(g)+ポリオール成分の総質量(g))×100
そして、熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度が上記範囲内であれば、得られる成形品(後述)の伸縮特性および耐ブルーム性を向上させることができる。
【0141】
つまり、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、原料(高分子量ポリオール)として、数平均分子量2500以上4000以下の非晶性ポリエーテルポリオールが用いられているため、伸縮特性および耐ブルーム性をバランスよく両立することができる。
【0142】
例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント相(ハードセグメントにより構成されるドメイン)の融解ピーク温度(融点)は、例えば、200℃以上、好ましくは、205℃以上、より好ましくは、210℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、240℃以下、より好ましくは、230℃以下、さらに好ましくは、220℃以下である。
【0143】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂のソフトセグメント相(ソフトセグメントにより構成されるドメイン)の融解エンタルピーは、例えば、5mJ/mg以上、好ましくは、10mJ/mg以上、より好ましくは、15mJ/mg以上であり、例えば、30mJ/mg以下、好ましくは、25mJ/mg以下、より好ましくは、20mJ/mg以下、さらに好ましくは、18mJ/mg以下である。
【0144】
ハードセグメント相の融解ピークが上記範囲であり、かつ、ソフトセグメント相の融解エンタルピーが上記範囲である場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ハードセグメント相の凝集力が保持され、かつ、ソフトセグメント相の結晶化が抑制されている。そのため、熱可塑性ポリウレタン樹脂の伸縮時における破壊を抑制して、優れた伸縮特性を得ることができる。
【0145】
なお、ハードセグメント相の融解ピーク、および、ソフトセグメント相の融解エンタルピーは、後述する実施例に準拠して、示差走査熱量測定(DSC測定)により求められる。
【0146】
また、伸縮特性は、より具体的には、繰り返し伸長変形後の戻り応力および残留歪により評価される。
【0147】
熱可塑性ポリウレタン樹脂の戻り応力(後述する実施例に準拠)は、例えば、1.8MPa以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.2MPa以上であり、例えば、3.0MPa以下である。
【0148】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂の残留歪(後述する実施例に準拠)は、例えば、25%以上であり、例えば、60%以下、好ましくは、55%以下、より好ましくは、50%以下である。
【0149】
すなわち、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、比較的低い残留歪を保持しながら、優れた戻り応力を得ることができ、伸縮特性に優れる。
【0150】
なお、残留歪および戻り応力は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0151】
また、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、さらに、耐熱性にも優れている。
【0152】
例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の貯蔵弾性率(E’)が1×106Paを示す温度(以下、耐熱温度とする。)が、例えば、160℃以上、好ましくは、170℃以上、より好ましくは、180℃以上、さらに好ましくは、190℃以上であり、例えば、250℃以下である。
【0153】
なお、耐熱温度は、後述する実施例に準拠して、動的粘弾性測定により求められる。
【0154】
また、本発明は、上記した熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む成形品を含んでいる。成形品は、熱可塑性ポリウレタン樹脂から成形される。
【0155】
成形品は、例えば、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂を、公知の成形方法、例えば、特定の金型を用いた熱圧縮成形および射出成形や、シート巻き取り装置を用いた押出成形、例えば、溶融紡糸成形などの熱成形加工方法、例えば、3Dプリンター加工により、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、中空状、箱状などの各種形状に成形することにより、得ることができる。
【0156】
好ましくは、成形品は、溶融紡糸成形により得られる、弾性繊維である。
【0157】
そして、得られた成形品は、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の成形品であるため、伸縮特性および耐ブルーム性を兼ね備えることができる。
【0158】
そのため、成形品は、上記の各種物性が要求される分野において好適に用いることができ、とりわけ、糸や繊維(チューブ、タイツ、スパッツ、スポーツウエア、スポーツグッズ、サポーター、水着などに用いられる糸や複合繊維)、モノフィラメント、フィルム(衣料用の伸縮性フィルム、ホットメルトフィルム、創傷被覆フィルムなど)の分野において好適に使用される。
【0159】
また、成形品は、上記の用途の他、工業的に広範に使用可能であり、具体的には、例えば、透明性硬質プラスチック、コーティング材料、粘着剤、接着剤、防水材、ポッティング剤、インク、バインダー、フィルム(例えば、ペイントプロテクションフィルム、チッピングフィルムなどのフィルム、ソフトカーボンシート等の基材への含浸用フィルム)、シート、バンド(例えば、時計バンドなどのバンド、例えば、自動車用伝動ベルト、各種産業用搬送ベルト(コンベアベルト)などのベルト)、チューブ(例えば、医療用チューブ、カテーテルなどの部品の他、エアーチューブ、油圧チューブ、電線チューブなどのチューブ、例えば、消防ホースなどのホース)、ブレード、スピーカー、センサー類、高輝度用LED封止剤、有機EL部材、太陽光発電部材、ロボット部材、アンドロイド部材、ウェアラブル部材、衣料用品、衛生用品、化粧用品、食品包装部材、スポーツ用品、レジャー用品、医療用品、介護用品、住宅用部材、音響部材、照明部材、シャンデリア、外灯、シール材、封止材、コルク、パッキン、防振・制震・免震部材、防音部材、日用品、雑貨、クッション、寝具、応力吸収材、応力緩和材、自動車の内外装部品、鉄道部材、航空機部材、光学部材、OA機器用部材、雑貨表面保護部材、半導体封止材、自己修復材料、健康器具、メガネレンズ、玩具、ケーブルシース、ワイヤーハーネス、電気通信ケーブル、自動車配線、コンピューター配線、カールコードなど工業用品、シート、フィルムなどの介護用品、スポーツ用品、レジャー用品、各種雑貨、防振・免振材料、衝撃吸収材、光学材料、導光フィルムなどのフィルム、自動車部品、表面保護シート、化粧シート、転写シート、半導体保護テープなどのテープ部材、ゴルフボール部材、テニスラケット用ストリング、農業用フィルム、壁紙、防曇付与剤、不織布、マットレスやソファーなどの家具用品、ブラジャーや肩パッドなどの衣料用品、紙おむつ、ナプキン、メディカルテープの緩衝材などの医療用品、化粧品、洗顔パフや枕などのサニタリー用品、靴底(アウトソール)、ミッドソール、カバー材などの靴用品、さらには、車両用のパッドやクッションなどの体圧分散用品、ドアトリム、インスツルメントパネル、ギアノブなどの手で触れる部材、電気冷蔵庫や建築物の断熱材、ショックアブソーバーなどの衝撃吸収材、充填材、車両のハンドル、自動車内装部材、自動車外装部材などの車両用品、化学機械研磨(CMP)パッドなどの半導体製造用品などにおいて、好適に用いられる。
【0160】
さらには、上記の成形品は、被覆材(フィルム、シート、ベルト、ワイヤー、電線、金属製の回転機器、ホイール、ドリルなどの被覆材)、押出成形用途(テニス、バトミントンなどのガットおよびその収束材などの押出成形用途)、マイクロペレット化などによるパウダー形状でのスラッシュ成形品、人造皮革、表皮、シート、被覆ロール(鉄鋼などの被覆ロール)、シーラント、ローラー、ギアー、ボール、バットのカバーあるいはコア材(ゴルフボール、バスケットボール、テニスボール、バレーボール、ソフトボール、バットなどのカバーあるいはコア材(これらはポリウレタン樹脂を発泡成形した形態であってもよい。))、マット、スキー用品、ブーツ、テニス用品、グリップ(ゴルフクラブや二輪車などのグリップ)、ラックブーツ、ワイパー、シートクッション部材、介護製品のフィルム、3Dプリンター成形品、繊維強化材料(炭素繊維、リグニン、ケナフ、ナノセルロースファイバー、ガラス繊維などの繊維の強化材料)、安全ゴーグル、サングラス、メガネフレーム、スキーゴーグル、水泳ゴーグル、コンタクトレンズ、ガスアシストの発泡成形品、ショックアブソーバー、CMP研磨パッド、ダンバー、ベアリング、ダストカバー、切削バルブ、チッピングロール、高速回転ローラー、タイヤ、時計、ウエアブルバンドなど、繰返し伸縮、圧縮変形などによる回復性や耐摩耗が要求される用途において、好適に使用される。
【実施例】
【0161】
次に、本発明を、製造例、合成例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
1) 原料
<ポリイソシアネート成分(a)>
1,4-BIC:後述の製造例1~5に記載の方法で合成した1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
<非晶性ポリエーテルポリオール(b)>
b-1)PTG-L(数平均分子量(Mn)2000):テトラヒドロフランとメチルテトラヒドロフランとを共重合した非晶性ポリエーテルグリコール、商品名;PTG-L2000、水酸基価=56.2mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-2)PTG-L(数平均分子量(Mn)3000):テトラヒドロフランとメチルテトラヒドロフランとを共重合した非晶性ポリエーテルグリコール、商品名;PTG-L3000、水酸基価=37.3mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-3)PTG-L(数平均分子量(Mn)3500):テトラヒドロフランとメチルテトラヒドロフランとを共重合した非晶性ポリエーテルグリコール、商品名;PTG-L3500、水酸基価=32.0mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-4)Velvetol(数平均分子量(Mn)2700):非晶性ポリトリメチレンエーテルグリコール、商品名;VelvetolH2700、水酸基価=41.9mgKOH/g、ALLESSA社製
b-5)PTXG(数平均分子量(Mn)1800):テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合した非晶性ポリエーテルグリコール、商品名;PTXG1800、水酸基価=62.5mgKOH/g、旭化成社製
<結晶性ポリエーテルポリオール(b’)>
b-6)PTMEG(数平均分子量(Mn)2000):ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名;PTG2000SN、水酸基価=56.3mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-7)PTMEG(数平均分子量(Mn)3000):ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名;PTG3000SN、水酸基価=37.2mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-8)PTMEG(数平均分子量(Mn)3500):ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名;PTG3500SN、水酸基価=32.6mgKOH/g、保土谷化学工業社製
b-9)PTMEG(数平均分子量(Mn)4000):ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名;PTMG4000、水酸基価=29.1mgKOH/g、三菱ケミカル社製
<低分子量ポリオール(c)>
1,4-BD:1,4-ブタンジオール、三菱化学社製
<ウレタン化触媒>
ビスマス系触媒:オクチル酸ビスマス、商品名;ネオスタンU-600、日東化成社製
<触媒希釈剤>
ジイソノニルアジペート:商品名:DINA、大八化学工業社製
<表面改質剤(滑剤)>
エチレンビスオレイルアミド:不飽和脂肪酸アミド、商品名スリパックスO、三菱ケミカル社製
エチレンビスステアリルアミド:飽和脂肪酸アミド、商品名カオーワックスEB-P、花王ケミカル社製
<その他の添加剤>
酸化防止剤:ヒンダードフェノール化合物、商品名;イルガノックス245、BASFジャパン社製
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール化合物、商品名;チヌビン234、BASFジャパン社製
耐光安定剤:ヒンダードアミン化合物、商品名;アデカスタブLA-72、ADEKA製
<ポリイソシアネート成分(a)の製造>
・1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)の製造
製造例1(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1)(以下、1,4-BIC(1)とする。)の製造方法)
後述の製造例2に記載の1,4-BIC(2)を窒素パージしながら、石油缶に充填した後、1℃のインキュベーター内で2週間静置させた。得られた凝固物を4μmメッシュのメンブレンフィルターを用いて、手早く減圧ろ過して、液相部を除去し、固相部を得た。その固相部に対して、上記した操作を繰り返して、1,4-BIC(1)を得た。1,4-BIC(1)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス/シス比は99.5/0.5であった。加水分解性塩素濃度(以下、HC濃度とする。)は18ppmであった。
【0162】
製造例2(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(2)(以下、1,4-BIC(2)とする。)の製造方法)
特開2014-55229号公報の製造例6の記載に準拠して、純度99.5%以上のトランス体/シス体比98/2の1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを92%の収率で得た。
【0163】
その後、特開2014-55229号公報の製造例1の記載に準拠して、この1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施して、1,4-BIC(2)を得た。
【0164】
得られた1,4-BIC(2)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス体/シス体比は98/2であった。HC濃度は18ppmであった。
【0165】
製造例3(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(3)(以下、1,4-BIC(3)とする。)の製造方法)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2の1,4-BIC(2)を789質量部、後述の製造例6の1,4-BIC(6)を211質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌した。得られた1,4-BIC(3)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス/シス比は86/14であった。HC濃度は19ppmであった。
【0166】
製造例4(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(4)(以下、1,4-BIC(4)とする。)の製造方法)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2の1,4-BIC(2)を561質量部、後述の製造例6の1,4-BIC(6)を439質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌した。得られた1,4-BIC(4)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス/シス比は73/27であった。HC濃度は20ppmであった。
【0167】
製造例5(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(5)(以下、1,4-BIC(5)とする。)の製造方法)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2の1,4-BIC(2)を474質量部、後述の製造例6の1,4-BIC(6)を526質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌した。得られた1,4-BIC(5)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス/シス比は68/32であった。HC濃度は21ppmであった。
【0168】
製造例6(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(6)(以下、1,4-BIC(6)とする。)の製造方法)
13C-NMR測定によるトランス体/シス体比が41/59の1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製)を原料として、特開2014-55229号公報の製造例1の記載に準拠して、1,4-BIC(6)を得た。
【0169】
得られた1,4-BIC(6)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス体/シス体比は41/59であった。HC濃度は22ppmであった。
【0170】
2)熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造
合成例1~16、参考例1、実施例2~3、参考例4~5、実施例6~7、参考例8、実施例9~16および比較例1~6
表1~表2に記載の処方に従い、ポリイソシアネート成分(a)と、非晶性ポリエーテルポリオール(b)または結晶性ポリエーテルポリオール(b’)とを、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、80℃にて1時間撹拌した。
【0171】
その後、予めDINA(大八化学社製)により4質量%に希釈したオクチル酸ビスマス(商品名:ネオスタンU-600、日東化成社製)を、ポリイソシアネート成分(a)と、非晶性ポリエーテルポリオール(b)または結晶性ポリエーテルポリオール(b’)との総量に対して、触媒量(固形分量)として、2ppmとなるように添加した。
【0172】
そして、80℃の温調下、窒素気流下で撹拌混合しながら、表1~表2に記載のイソシアネート基含有量に達するまで反応を進め、イソシアネート基末端プレポリマー(a)~(p)を得た。
【0173】
その後、80℃に温調したイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度を測定した。
【0174】
そして、低分子量ポリオールとしての1,4-ブタンジオール(1,4-BD)を、低分子量ポリオール中の水酸基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCOインデックス)が1.01となるように、ステンレスカップに計量して、80℃に温調した。
【0175】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーを別のステンレスカップに計量した。そして、イソシアネート基末端プレポリマーおよび1,4-BDの総量100質量部に対して、イルガノックス245(BASF社製 耐熱安定剤)2質量部、チヌビン234(BASF社製 紫外線吸収剤)0.3質量部、アデカスタブLA-72(ADEKA社製 HALS)0.3質量部となる割合で、各添加剤をイソシアネート基末端プレポリマーに添加した。
【0176】
さらに、実施例4以外では、イソシアネート基末端プレポリマーおよび1,4-BDの総量100質量部に対する割合(phr)が、表3~5に記載の割合になるように、エチレンビスオレイルアミド(不飽和脂肪酸アミド、商品名スリパックスO、三菱ケミカル社製)またはエチレンビスステアリルアミド(飽和脂肪酸アミド、商品名カオーワックスEB-P、花王ケミカル社製)を、イソシアネート基末端プレポリマーに添加した。
【0177】
その後、80℃の油浴中で、高速撹拌ディスパーを使用して、1000~3000rpmの撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを3分間撹拌混合した。
【0178】
次いで、予め計量して80℃に温調した1,4-BDを、イソシアネート基末端プレポリマーに添加し、高速撹拌ディスパーを使用して、1000~3000rpmの撹拌下、3~10分間撹拌混合した。
【0179】
次いで、予め150℃に温調したテフロン(登録商標)製のバットに混合液を流し込み、150℃にて2時間反応させた後、100℃に降温して20時間反応を継続し、熱可塑性ポリウレタン樹脂の一次生成物(A)~(V)を得た。
【0180】
次いで、バットから熱可塑性ポリウレタン樹脂の一次生成物(A)~(V)を取り外し、ベールカッターによりサイコロ状に切断し、粉砕機にてサイコロ状の樹脂を粉砕し、粉砕ペレットを得た。
【0181】
次いで、粉砕ペレットを、熱処理温度80℃、熱処理期間5日間の条件で熱処理(養生、熟成)し、真空減圧下、80℃で12時間乾燥させた。
【0182】
その後、得られた粉砕ペレットを用い、単軸押出機(型式:SZW40-28MG、テクノベル社製)を用いて、スクリュー回転数30rpm、シリンダー温度200~270℃の範囲でストランドを押出し、カットすることによって、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)~(V)のペレットを得た。
【0183】
実施例17(繊維(成形品))
実施例2の熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)のペレットを、予め、真空減圧下、80℃で12時間乾燥させた。
【0184】
次いで、キャピラリーレオメーター(型式:キャピログラフ1C、東洋精機社製)を用いて、ピストン速度100mm/min、シリンダー温度230℃で、ダイ(L/D=30mm/1mm)から熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出し、それを巻き取り装置で引き取ることで、直径70μmの繊維を得た。
【0185】
その後、得られた繊維を、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、ポリウレタン繊維を得た。
【0186】
これを用いて、後述の繰り返し伸長変形後の戻り応力および残留歪を測定した結果、戻り応力は2.3MPa、残留歪は43%であった。
【0187】
3)評価用サンプルの成形
<ポリウレタンフィルムの成形方法>
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)~(V)のペレットを、予め、真空減圧下、80℃で12時間乾燥させ、単軸押出機(型式:SZW40-28MG、テクノベル社製)を用いて、スクリュー回転数20rpm、シリンダー温度200~270℃の範囲で、Tダイから樹脂を押出し、それをベルトコンベアで引き取った。これにより、厚み100μmおよび10μmのフィルムを得た。
【0188】
得られたフィルムを、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、ポリウレタンフィルムを得た。
【0189】
4)評価
<ソフトセグメント相の融解エンタルピー(単位:mJ/mg)・ハードセグメント相の融解ピーク温度(単位:℃)>
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:EXSTAR6000 PCステーション、および、DSC220C)を使用して、以下の通り測定した。
【0190】
すなわち、ポリウレタンフィルム約8mgを、アルミニウム製パンにできるだけ密着可能な形状となるように薄く切断して採取した。このアルミニウム製パンにカバーを被せてクリンプしたものを測定用試料(サンプル)とした。同様にアルミナを採取したものをリファレンス試料とした。
【0191】
サンプルおよびリファレンスをセル内の所定位置にセットした後、流量40NmL/minの窒素気流下、試料を10℃/minの速度で-100℃まで冷却し、同温度で5分間保持後、10℃/minの速度で270℃まで昇温した。
【0192】
この昇温の間に現れる吸熱ピークの内、使用した非晶性ポリエーテルポリオール(b)(または結晶性ポリエーテルポリオール(b’))の融点以下に現れる吸熱ピークの融解熱量を、ソフトセグメント相の融解エンタルピー(単位:mJ/mg)と定義した。
【0193】
また、使用した非晶性ポリエーテルポリオール(b)(または結晶性ポリエーテルポリオール(b’))の融点より高温側に現れる吸熱ピークの内、最も高い温度を示す吸熱ピーク温度を、ハードセグメント相の融解ピーク温度(単位:℃)と定義した。
【0194】
なお、上記の測定において参照点として用いられる、非晶性ポリエーテルポリオール(b)(または結晶性ポリエーテルポリオール(b’))の融点および融解エンタルピーは、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:EXSTAR6000 PCステーション、および、DSC220C)を使用して、以下の通り測定した。
【0195】
すなわち、非晶性ポリエーテルポリオール(b)(または結晶性ポリエーテルポリオール(b’))約8mgを、アルミニウム製の密閉パンに採取した。このアルミニウム製の密閉パンにカバーを被せてクリンプしたものを測定用試料(サンプル)とした。同様にアルミナを採取したものをリファレンス試料とした。
【0196】
サンプルおよびリファレンスをセル内の所定位置にセットした後、流量40NmL/minの窒素気流下、試料を10℃/minの速度で100℃まで昇温し、同温度で5分間保持後、10℃/minの速度で-100℃まで降温した。
【0197】
この降温の間に現れる発熱ピークについて、ピーク温度を、非晶性ポリエーテルポリオール(b)(または結晶性ポリエーテルポリオール(b’))の融点(単位:℃)とし、同ピークの融解熱量を、融解エンタルピー(単位:mJ/mg)とした。
【0198】
<戻り応力(単位:MPa)>
100μm厚みのポリウレタンフィルムから、巾10mmの短冊状の試験片を切り出し、チャック間距離60mm、伸縮速度500mm/minの条件で、伸度300%まで伸長し、原点まで戻す操作を3回繰り返した。
【0199】
3サイクル目に伸度300%から原点復帰する際に、伸度が200%を示した際の応力を、繰り返し伸長変形後の戻り応力として測定した。
【0200】
<残留歪(単位:%)>
10μm厚みのポリウレタンフィルムから、巾10mmの短冊状の試験片を切り出し、チャック間距離60mm、伸縮速度500mm/minの条件で、伸度300%まで伸長し、原点まで戻す操作を3回繰り返した。3サイクル目に伸度300%から原点復帰する際に、応力が0MPaを示した際の伸度を、繰り返し伸長変形後の残留歪として測定した。
【0201】
<耐熱温度>
100μm厚みのポリウレタンフィルムから、巾10mmの短冊状の試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、型式:DVA-220)を用いて、測定開始温度-100℃、昇温速度5℃/min、引張モード、標線間長20mm、静/動応力比1.8、測定周波数10Hzの条件で、動的粘弾性スペクトルを測定した。
【0202】
そして、貯蔵弾性率E’が1×106Paを示す温度(すなわち、ガラス転移温度(Tg)よりも高い温度領域(ゴム状領域)の動的粘弾性スペクトルにおいて、貯蔵弾性率E’が1×106Paに到達する温度)を、耐熱温度と定義した。
【0203】
<耐ブルーム性>
100μm厚みのポリウレタンフィルムから、10cm四方を切り出し、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下に静置して、フィルム表面に発生する粉吹き現象までの日数を、以下の評価1~5の5段階で評価した。
評価5:試験7日以内では、粉吹き現象が発生しない。
評価4:試験7日以内に、粉吹き現象が発生する。
評価3:試験5日以内に、粉吹き現象が発生する。
評価2:試験3日以内に、粉吹き現象が発生する。
評価1:試験1日以内に、粉吹き現象が発生する。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】