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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】タービン翼及び蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
F01D5/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019024406
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133432
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】香田 拓郎
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-069402(JP,A)
【文献】特開2000-073702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0003323(US,A1)
【文献】特開2016-138551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0243749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107265(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1067273(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転するロータ軸の周りに形成されて蒸気の流れる蒸気主流路を有する蒸気タービンに設けられるタービン翼であって、
前記蒸気主流路内で前記蒸気の流通方向の上流側に向けて前縁が配置可能とされ、翼高さ方向に延びる翼面を有する翼本体と、
前記翼高さ方向における前記翼本体の端部に接続され、前記翼高さ方向と交差する第一方向に延びる端板と、を備え、
前記端板における前記翼高さ方向及び前記第一方向に交差する第二方向を向く端面であって、前記端板における前記上流側を向く端面には、前記第二方向に突出する凸部及び前記第二方向に窪む凹部が形成され、
前記凸部及び前記凹部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記第一方向に交互に形成され、
前記端面において、前記流通方向の最も下流側に位置する前記凹部の底部の周方向の位置は、前記翼本体の前縁の前記周方向の位置と一致するように配置され
前記凸部及び前記凹部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記翼本体の前縁よりも前記上流側に配置されているタービン翼。
【請求項2】
前記凸部及び前記凹部の前記上流側を向く面は、前記翼高さ方向から見た際に、前記第一方向に連続する湾曲線を形成している請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記端板には、前記翼高さ方向から見た際に、凹部及び凸部の少なくとも一方が複数形成されている請求項1又は請求項2に記載のタービン翼。
【請求項4】
軸線を中心として回転するロータ軸と、
前記ロータ軸の軸方向と前記第二方向とを一致させて配置される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタービン翼と、を備える蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン翼及び蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、軸線を中心として回転するロータと、このロータを覆うケーシングとを備えている。ロータは、軸線を中心として軸方向に延びるロータ軸と、ロータ軸の外周に固定され軸方向に並ぶ複数の動翼列と、を有する。各動翼列は、周方向に複数配置された動翼を有する。また、蒸気タービンは、ケーシングの内周面に固定され、複数の動翼列毎の上流側に配置されている静翼列を有する。各静翼列は、周方向に複数配置された静翼を有する。
【0003】
このような蒸気タービンでは、周方向で互いに隣り合う動翼同士の間及び静翼同士の間の翼間流路で、二次流れが発生する。その結果、翼間流路における流体の流れに損失が生じる場合がある。二次流れが発生する要因としては、例えば動翼のプラットフォーム付近に形成される境界層の剥離等がある。タービン効率を高めるには、翼間流路における二次流れによる損失を抑える必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、隣接するタービン翼の間でエンドウォール(プラットフォーム)から回転軸の径方向に窪む凹部や径方向に突出する凸部を備える構造が開示されている。また、特許文献2には、エンドウォールに、回転軸の径方向に凹む凹部を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4616781号公報
【文献】特許第5010507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されているように、エンドウォール対して、径方向に突出する凸部や窪む凹部を設けた場合、翼間流路において、軸方向の上流側から下流側に流れる流体の流路寸法が径方向で増減する。その結果、流路断面積が増減して変動する部分で損失が生じるため、この損失をさらに抑えてタービン効率の改善を図る余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、二次流れによる損失をさらに抑え、タービン効率をさらに高めることが可能なタービン翼及び蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係るタービン翼は、軸線を中心として回転するロータ軸の周りに形成されて蒸気の流れる蒸気主流路を有する蒸気タービンに設けられるタービン翼であって、前記蒸気主流路内で前記蒸気の流通方向の上流側に向けて前縁が配置可能とされ、翼高さ方向に延びる翼面を有する翼本体と、前記翼高さ方向における前記翼本体の端部に接続され、前記翼高さ方向と交差する第一方向に延びる端板と、を備え、前記端板における前記翼高さ方向及び前記第一方向に交差する第二方向を向く端面であって、前記端板における前記上流側を向く端面には、前記第二方向に突出する凸部及び前記第二方向に窪む凹部が形成され、前記凸部及び前記凹部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記第一方向に交互に形成され、前記端面において、前記流通方向の最も下流側に位置する前記凹部の底部の周方向の位置は、前記翼本体の前縁の前記周方向の位置と一致するように配置され、前記凸部及び前記凹部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記翼本体の前縁よりも前記上流側に配置されている
【0009】
このような構成とすることで、上流側から流れてきた蒸気は、端板の上流側の端面に形成された凸部及び凹部に衝突し、端面から径方向に立ち上がるような縦渦を生じる。この縦渦により、翼面に沿う流れの中でも、端板に近い位置での流れに乱流を生じることができる。これにより、端板付近において、翼面に沿う流れである境界層の成長や剥離を抑えることができる。したがって、周方向で互いに隣り合う翼本体同士の間において、二次流れによる損失が抑えられる。その結果、タービン効率をさらに高めることが可能となる。
【0011】
このような構成とすることで、翼本体の前縁よりも下流側においては、周方向で互いに隣り合う翼本体同士の間の流路では、翼高さ方向の寸法が変動することがない。これにより、凸部及び凹部を形成することによって、翼本体同士の間の流路の断面積が変化してしまうことを抑えることができる。これにより、翼本体同士の間を流れる蒸気への影響を抑えつつ、二次流れによる損失が抑えられる。
【0012】
また、本発明の第態様に係るタービン翼では、第一態様において、前記凸部及び前記凹部の前記上流側を向く面は、前記翼高さ方向から見た際に、前記第一方向に連続する湾曲線を形成していてもよい。
【0013】
このような構成とすることで、軸方向における縦渦の発生位置が、周方向で連続的に変動し、縦渦による二次流れによる損失抑制効果が良好に得られる。
【0014】
また、本発明の第態様に係るタービン翼では、第一態様又は第二態様において、前記端板には、前記翼高さ方向から見た際に、凹部及び凸部の少なくとも一方が複数形成されていてもよい。
【0015】
このような構成とすることで、縦渦の発生数をする増加させることができる。その結果、縦渦による二次流れの損失抑制効果が良好に得られる。
【0016】
また、本発明の第態様に係るタービンは、軸線を中心として回転するロータ軸と、前記ロータ軸の軸方向と前記第二方向とを一致させて配置される第一態様から第三態様のいずれか一つのタービン翼と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、二次流れによる損失をさらに抑え、タービン効率をさらに高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における蒸気タービンの断面図である。
図2】本実施形態における蒸気タービンの動翼列の一部を軸方向から見た図である。
図3】本実施形態における動翼列を構成する翼本体およびプラットフォームの一部を示す斜視図である。
図4】本実施形態における翼本体およびプラットフォームを径方向外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明によるタービンを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態における蒸気タービンの断面図である。図1に示すように、本実施形態の蒸気タービン1は、軸線Arを中心として回転するロータ20と、ロータ20を回転可能に覆うケーシング10と、を備えている。
【0021】
なお、以下の説明の都合上、軸線Arが延びている方向を軸方向Daとする。また、軸方向Daの第一側を上流側(一方側)Dau、軸方向Daの第二側を下流側(他方側)Dadとする。また、軸線Arを基準とした後述する軸芯部22における径方向を単に径方向Drとする。また、この径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、この径方向Drで径方向内側Driとは反対側を径方向外側Droとする。また、軸線Arを中心とした軸芯部22の周方向を単に周方向Dcとする。
【0022】
ロータ20は、ロータ軸21と、動翼列31と、を有している。ロータ軸21は、軸線Arを中心として軸方向Daに延びている。ロータ軸21は、軸芯部22と、複数のディスク部23と、を有する。軸芯部22は、軸方向Daに延びる円柱状を成している。複数のディスク部23は、軸芯部22から径方向外側Droに広がり、軸方向Daに互いに間隔をあけて並でいる。ディスク部23は、複数の動翼列31毎に設けられている。
【0023】
ケーシング10には、外部から蒸気Sが流入するノズル室11と、ノズル室11からの蒸気Sが流れる蒸気主流路室12と、蒸気主流路室12から流れた蒸気Sを排出する排気室13と、が形成されている。ノズル室11と蒸気主流路室12と排気室13とによって、ケーシング10内には、高圧の蒸気Sが流通する蒸気主流路15が構成されている。
【0024】
蒸気主流路15では、高圧の蒸気Sが上流側Dauから下流側Dadに向かって徐々に圧力が低下しながら流れている。つまり、本実施形態における蒸気Sの流通方向は、軸方向Daにおける上流側Dauから下流側Dadに向かう方向である。蒸気主流路15は、ロータ軸21の周りで環状に形成されている。蒸気主流路15は、複数の動翼列31及び静翼列41に跨って軸方向Daに延びている。
【0025】
図2は、本実施形態における蒸気タービンの動翼列の一部を軸方向から見た図である。図1及び図2に示すように、動翼列31は、ロータ軸21の外周部分であるディスク部23の外周に取り付けられている。動翼列31は、ロータ軸21の軸方向Daに沿って間隔をあけて複数列が設けられている。本実施形態の場合、動翼列31の数は、7つ設けられている。よって、本実施形態の場合、第1段から第7段までの動翼列31が設けられている。
【0026】
各動翼列31は、周方向Dcに並ぶ複数の動翼(タービン翼)32を有している。各動翼32は、翼本体33と、シュラウド34と、プラットフォーム(端板)35と、翼根36とを有する。
【0027】
図3は、本実施形態における動翼列を構成する翼本体およびプラットフォームの一部を示す斜視図である。図4は、本実施形態における翼本体およびプラットフォームを径方向外側から見た図である。
【0028】
図1図4に示すように、翼本体33は、蒸気主流路15内に配置されている。翼本体33は、翼高さ方向Zに延びている。翼本体33は、翼高さ方向Zに延びる凸面状の負圧面(翼面)33aと、翼高さ方向Zに延びる凹面状の正圧面(翼面)33bとが、前縁33fと後縁33rとを介して連続してなる翼型断面を有している。
【0029】
図3及び図4に示すように、翼本体33では、周方向Dcの第一側に向かって突出するように負圧面33aが形成されている。翼本体33では、周方向Dcの第一側とは反対側の周方向Dcの第二側から周方向Dcの第一側に向かって窪むように正圧面33bが形成されている。
【0030】
前縁33fは、翼本体33の上流側Dauの端部である。前縁33fは、翼高さ方向Dhと直交する断面において、負圧面33aと正圧面33bとが接続される部分である。後縁33rは、翼本体33の下流側Dadの端部である。後縁33rは、翼高さ方向Dhと直交する断面において、前縁部61aに対して軸方向Daの反対側で負圧面33aと正圧面33bとが接続される部分である。
【0031】
なお、本実施形態における翼高さ方向Zとは径方向Drである。したがって、翼高さ方向Zと直交(交差)する第一方向が周方向Dcであり、翼高さ方向Z及び第一方向に直交(交差)する第二方向が軸方向Daである。
【0032】
シュラウド34は、翼本体33に対して径方向外側Droの端部に接続されている。シュラウド34は、翼本体33と一体に形成されている。シュラウド34は、周方向Dcに延びている。複数の動翼32のシュラウド34は、周方向Dcに並ぶことで全体として円筒状をなしている。
【0033】
図1及び図2に示すように、プラットフォーム35は、翼本体33に対して径方向内側Driの端部に接続されている。プラットフォーム35は、翼本体33と一体に形成されている。プラットフォーム35は、周方向Dcに延びている。複数の動翼32のプラットフォーム35は、周方向Dcに並ぶことで全体として円筒状をなす。プラットフォーム35の径方向外側Droを向くプラットフォーム外周面35oから翼本体33が延びている。プラットフォーム外周面35oは、軸方向Daにわたって蒸気Sの流れを妨げるような凹凸の形成されていない平滑な面である。
【0034】
図2図4に示すように、周方向Dcにおいて互いに隣り合う翼本体33同士と、径方向Drにおいて対向するシュラウド34とプラットフォーム35とによって囲まれた空間は、蒸気Sが流れる翼間流路15wとされている。周方向Dcに動翼32が複数設けられることで、このような翼間流路15wが周方向Dcに複数形成されている。周方向Dcに複数並ぶ翼間流路15wは、蒸気Sが流れる蒸気主流路15の一部を形成している。
【0035】
図2に示すように、プラットフォーム35の径方向内側Driには、翼根36が接続されている。翼根36は、プラットフォーム35の径方向内側Driを向くプラットフォーム内周面35fから径方向内側Driに延びるよう形成されている。翼根36は、周方向Dc両側に向かってそれぞれ突出する係合凸部38を有する。係合凸部38は、径方向Drに沿って間隔を空けた複数箇所に設けられている。複数の係合凸部38は、周方向Dcへの突出寸法が、径方向内側Driに向かうにしたがって漸次小さくなるよう形成されている。これにより、翼根36は、いわゆるクリスマスツリー状をなしている。
【0036】
ロータ20のディスク部23には、係合凸部38が係合される翼溝28が形成されている。翼溝28は、ディスク部23の外周面から径方向内側Driに窪んでいる。翼溝28は、翼根36の外周形状を対応するように形成されている。翼溝28は、径方向Drに沿って間隔を空けた複数箇所に、周方向Dcの両側に向かって窪む係合凹部29を有している。
【0037】
図1に示すように、蒸気タービン1は、ケーシング10の内周面に固定され、軸方向Daに沿って間隔を空けて設けられた複数の静翼列41を備えている。本実施形態の場合、静翼列41の数は、動翼列31の数と同じ7つ設けられている。よって、本実施形態の場合、第1段から第7段のまでの静翼列41が設けられている。複数の静翼列41は、それぞれの動翼列31に対して上流側Dauに隣接して配置されている。
【0038】
静翼列41は、複数の静翼42と、外側リング43と、内側リング46と、を有する。複数の静翼42は、周方向Dcに間隔をあけて設けられている。外側リング43は、環状をなし、複数の静翼42の径方向外側Droに設けられている。内側リング46は、環状をなし、複数の静翼42の径方向内側Driに設けられている。すなわち、複数の静翼42は、外側リング43と内側リング46との間に配置されている。静翼42は、外側リング43と内側リング46とに固定されている。外側リング43と内側リング46との間の環状の空間は、蒸気Sが流れる蒸気主流路15の一部を形成している。
【0039】
図3及び図4に示すように、プラットフォーム35には、凸部51と、凹部52とが形成されている。凸部51及び凹部52は、プラットフォーム35において、上流側Dauを向く端面35aに設けられている。本実施形態の凸部51及び凹部52によって、端面35aは凹凸面50とされている。つまり、本実施形態の端面35aは、全域に渡って凸部51及び凹部52が形成されている。
【0040】
凸部51と凹部52とは、周方向Dcに交互に形成されている。凸部51は、径方向Drから見た際に上流側Dauに向かって突出している。凹部52は、径方向Drから見た際に下流側Dadに向かって窪んでいる。凸部51において上流側Dauを向く面51f、及び凹部52において上流側Dauを向く面52fは、軸方向Daに対して直交する面である。凸部51の面51fと凹部52の面52fとが周方向Dcに連続することで、凹凸面50は、径方向Drから見た際に周方向Dcに連続する湾曲線を形成している。つまり、凹凸面50は、径方向Drの外側から見た際に波型状をなしている。
【0041】
凸部51及び凹部52は、径方向Drの外側から見た際に、翼本体33の前縁33fよりも上流側Dauに形成されている。すなわち、凹凸面50において最も下流側Dadに位置する凹部52の底部52dは、翼本体33の前縁33fよりも上流側Dauに配置されている。
【0042】
なお、一つのプラットフォーム35に対して、凸部51及び凹部52が一つずつ配置されていることに限定されるものではない。例えば、一つのプラットフォーム35には、凸部51及び凹部52の少なくとも一方が複数形成されていてもよい。この実施形態では、凹部52の底部52dの周方向Dcの位置は、翼本体33の前縁33fの周方向Dcの位置と一致するように配置されている。そして、周方向Dcで互いに隣り合う翼本体33同士の間に、2つの凸部51と、1つの凹部52とが配置されている。具体的には、一つのプラットフォーム35に対して複数の凸部51が形成されている。
【0043】
また、例えば、凸部51や凹部52の一部が一方のプラットフォーム35に形成され、残部が隣に配置された別の(他方の)プラットフォーム35に形成されていてもよい。
【0044】
このような蒸気タービン1では、ノズル室11を介してケーシング10の上流側Dauから蒸気Sが送り込まれる。この蒸気Sは、蒸気主流路15を通り、下流側Dadの排気室13へと流れる。これにより、ロータ軸21が軸線Ar回りに回転し、ディスク部23とともに、各動翼32が軸線Arを中心として回転する。このとき、各動翼32においては、周方向で互いに隣り合う翼本体33同士の間の翼間流路15wに蒸気Sが流れる。
【0045】
上述したような動翼32によれば、蒸気Sの流れが、凹凸面50に衝突すると、径方向外側Droに立ち上がるような縦渦Svを生じる。縦渦Svは、プラットフォーム外周面35o上で、径方向Drおよび軸方向Daを含む仮想面に沿うように旋回する。凹凸面50には、凸部51と凹部52とが周方向Dcに交互に並んで形成されている。そのため、縦渦Svが生成される軸方向Daの位置は、周方向Dcの位置が変わることで軸方向Daにずれる。具体的には、凸部51の先端部51aでは、縦渦Svが生じる軸方向Daの位置は、最も上流側Dauとなる。凹部52の底部52dでは、縦渦Svが生じる軸方向Daの位置は、最も下流側Dadとなる。凸部51の先端部51aと凹部52の底部52dとの間では、縦渦Svが生じる軸方向Daの位置は、凸部51の先端部51aにおける縦渦Svの発生位置と、凹部52の底部52dにおける縦渦Svの発生位置との間となる。このような縦渦Svにより、負圧面33a及び正圧面33bに沿う流れの中でも、プラットフォーム外周面35oに近い位置での流れに乱流が生じさせることができる。これにより、プラットフォーム外周面35o付近において、負圧面33aや正圧面33bに沿う蒸気Sの流れである境界層の成長や剥離を抑えることができる。したがって、周方向Dcで互いに隣り合う翼本体33同士の間の翼間流路15wにおいて、二次流れによる損失が抑えられる。その結果、蒸気タービン1のタービン効率をさらに高めることが可能となる。
【0046】
また、凸部51及び凹部52は、翼本体33において最も上流側Dauの前縁33fよりもさらに上流側Dauに形成されている。これにより、翼本体33の前縁33fよりも下流側Dadの領域においては、プラットフォーム35の形状が変化しない。そのため、周方向Dcで互いに隣り合う翼本体33同士の間の翼間流路15wでは、径方向Drの寸法が変動することがない。これにより、蒸気Sの流れを乱す凸部51及び凹部52を形成することによって、翼間流路15wの断面積が軸方向Daの位置に応じて変化してしまうことを防ぐことができる。したがって、翼間流路15wを流れる蒸気Sへの影響を抑えつつ、二次流れによる損失が抑えられる。
【0047】
また、凹凸面50は、径方向Drから見たときに、周方向Dcに滑らかに連続する湾曲線を形成している。つまり、鋭角に突出する凸部や鋭角に窪む凹部が形成されることがない。そのため、軸方向Daにおける縦渦Svの発生位置が、周方向Dcで連続的に変動する。これにより、縦渦Svによる二次流れによる損失抑制効果が良好に得られる。
【0048】
また、周方向Dcで互いに隣り合う翼本体33同士の間に、凸部51が複数形成されている。したがって、凸部51及び凹部52が一つのみ形成されている場合に比べて、翼間流路15wにおいて、縦渦Svの発生数をする増加させることができる。その結果、縦渦Svによる二次流れの損失抑制効果が良好に得られる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0050】
なお、上記実施形態では、凸部51及び凹部52がプラットフォーム35のみに形成されたが、凸部51及び凹部52は動翼32に形成されることに限定されるものではない。例えば、凸部51及び凹部52は、静翼42に形成されていてもよい。したがって、凸部51及び凹部52は、外側リング43や内側リング46を端板とし、外側リング43や内側リング46の上流側Dauを向く面に形成されていてもよい。
【0051】
また、凸部51及び凹部52が動翼32に形成される場合であっても、プラットフォーム35のみに形成されることに限定されるものではない。例えば、凸部51及び凹部52が動翼32に形成される場合、シュラウド34を端板とし、シュラウド34の上流側Dauを向く面に形成されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、凸部51及び凹部52は、周方向Dcから見た際に、凹凸面50が波型形状をなすように形成されたが、凸部51及び凹部52の形状はこのような形状に限定されるものではない。例えば、凸部51及び凹部52は、周方向Dcから見た際に、矩形状や、三角形状をなしていてもよい。
【0053】
また、仮に端面35aにシールフィン等が設けられている場合には、凸部51及び凹部52は、径方向Drにおける端面35aの領域の中でもプラットフォーム外周面35oに接続されている領域に少なくとも形成されていればよい。
【符号の説明】
【0054】
1 蒸気タービン
10 ケーシング
15 蒸気主流路
15w 翼間流路
20 ロータ
21 ロータ軸
22 軸芯部
23 ディスク部
28 翼溝
29 係合凹部
31 動翼列
32 動翼(タービン翼)
33 翼本体
33a 負圧面
33b 正圧面
33f 前縁
33r 後縁
34 シュラウド
35 プラットフォーム(端板)
35a 端面
35f プラットフォーム内周面
35o プラットフォーム外周面
36 翼根
38 係合凸部
41 静翼列
42 静翼
43 外側リング
46 内側リング
50 凹凸面
51 凸部
51a 先端部
51f 上流側を向く面
52 凹部
52d 底部
52f 上流側を向く面
Ar 軸線
Da 軸方向
Dad 下流側
Dau 上流側
Dc 周方向
Dr 径方向
Dri 径方向内側
Dro 径方向外側
S 蒸気
Sv 縦渦
図1
図2
図3
図4