(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】プリント基板の製造方法、プリント基板製造装置、及びプリント基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20230320BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230320BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H05K3/28 F
B32B7/022
B32B27/00 L
(21)【出願番号】P 2019069197
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊介
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-49850(JP,A)
【文献】特開2003-334903(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141512(WO,A1)
【文献】特開2005-327982(JP,A)
【文献】特開2017-132162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00―43/00
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
厚さ
10μm以下の離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる工程(I)と、
重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる工程であって、少なくともカバーレイフィルム(B)側についてはプロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とが貼り合わされる工程(II)と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する工程(III)とを有
し、
離型層(C1)が、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、
プリント基板の製造方法。
【請求項2】
製造されるプリント基板がフレキシブルプリント基板である、請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項3】
工程(I)の前に、回路基材(A)、カバーレイフィルム(B)、及びプロセス用離型フィルム(C)の少なくとも一部が、ロールから巻き出され、
工程(III)の後に、貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)が、ロールに巻き取られる、
請求項2に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項4】
カバーレイフィルム(B)が仮ラミネートされた回路基材(A)が1のロールから巻き出され、プロセス用離型フィルム(B)が他の1のロールから巻きだされる、請求項3に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項5】
金属配線パターン(A2)が、ライン幅及びスペース幅の少なくとも一方が100μm以下である部分を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項6】
中間層(C2)の180℃で測定される引張弾性率が11MPa以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項7】
工程(I)において、更にプロセス用離型フィルム(C’)が、プロセス用離型フィルム(C’)/回路基材(A)/カバーレイフィルム(B)/プロセス用離型フィルム(C)の順で重ね合わされ、
工程(II)において、加熱加圧がプロセス用離型フィルム(C’)を介しても行なわれ、
工程(III)、貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C’)も剥離される、
請求項1から6のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項8】
樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる手段と、
プロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる手段と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する手段とを有
し、
離型層(C1)の厚みが10μm以下であり、離型層(C1)が4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、
プリント基板の製造装置。
【請求項9】
フレキシブルプリント基板の製造に用いられる、請求項8に記載のプリント基板の製造装置。
【請求項10】
回路基材(A)を連続的に供給する巻き出し手段、カバーレイフィルム(B)を連続的に供給する巻き出し手段、及びプロセス用離型フィルム(C)を連続的に供給する巻き出し手段の少なくとも一部、並びに貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)を連続的に巻き取る巻き取り手段、を更に有する、
請求項9に記載のプリント基板の製造装置。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法によって製造されたプリント基板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント基板を有する、電気電子機器、輸送機械、又は生産機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、好ましくはフレキシブルプリント基板(以下、「FPC」ともいう。)、を製造する方法に関し、より具体的には回路基材における電気回路(銅箔等)が形成された面に保護層であるカバーレイ等を積層することで、プリント基板を製造する方法に関する。
本発明の製造方法は、その材料フィルムがロールから巻き出され、製造されたフレキシブルプリント基板がロールに巻き取られる、いわゆるロール・トゥ・ロール方式でのフレキシブルプリント基板の製造に、特に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
プリント基板製造プロセスでは、通常、電気回路を形成した基材とこれを保護するカバーレイとを、熱硬化性接着剤により接着する。このカバーレイは、基材の片面だけに電気回路が形成されている場合は、電気回路が形成された基材の片面にのみに、また、基材の両面あるいは多層に互って電気回路が設けられている場合は、基材の両面に、接着されている。そして、その接着の際には、通常、基材と熱硬化型接着剤を塗布したカバーレイとを金属板に挟み、この金属板を介して加熱及び加圧をする。そして、このカバーレイと金属板との接着を防止するため、プリント基板製造プロセス用離型フィルムが、金属板とカバーレイとの間に挟んで使用される。
【0003】
プリント基板製造プロセスにおいてまず重要なのは、加熱硬化後のプリント基板が、離型フィルム等から容易に剥離できること(離型性)である。
【0004】
また、プリント基板においては、他の部品との電気的接続のため、電気回路の端子部分が形成されており、その端子部分はカバーレイで被覆されず、露出している。そして、端子部分以外を被覆するためにカバーレイに塗布された接着剤が、加熱及び加圧によって接着する際に溶融し、しばしば、この電気回路の端子部分に流出し、接着剤の被覆層が形成され、電気的接続不良の原因となる場合がある。したがって、プリント基板製造プロセスにおいては、接着剤の流出の防止も重要である。
【0005】
更にプリント基板製造プロセスにおいては、特に加熱及び加圧プレスしてカバーレイの接着をする際に、離型フィルムが比較的短時間で大きな温度変化を受けるので、離型フィルムの表面にシワが発生し易い。そのため、そのシワが発生した部分では、シワがプリント基板に転写されるなどのため、十分満足できる外観を有するプリント基板が得られない、などの問題を生じうる。したがって、プリント基板製造プロセスにおいては、プリント基板の良好な外観、及びそのための離型フィルムのシワ発生の防止も重要である。
【0006】
当該技術分野の発展に伴いプリント基板製造プロセスに対する要求水準は年々高まっている。特に、実装密度の向上に伴い、カバーレイフィルムの開口パターンは微細化し、またプリント基板上の回路パターンも微細化しているため、接着剤の端子部分への流出の影響は相対的に増大しているので、従来技術よりも一層高いレベルの流出防止が求められている、更に、パターンの微細化は一般に離型をより困難にするため、離型性についても、従来よりも高いものが求められている。
加えて近年、プリント基板製造プロセスの生産性向上のため、自動化に適したロールトゥロール方式が採用されるようになってきている(例えば、引用文献1参照)。この方式においては、シワが発生し易い傾向にあり、プリント基板製造プロセスにおけるシワ抑制も従来技術よりも一層高いレベルのものが求められている。
すなわち、プリント配線基板上の回路パターンの微細化、及び生産性の向上、という近年のますます増大する要求に応えるため、特にフレキシブルプリント基板の製造プロセスにおいては、従来技術よりも更に高いレベルで、離型性、接着剤の流出防止、及び離型フィルムのシワ発生の防止、を兼ね備えることが求められるに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、離型性、接着剤の流出防止、及び好ましくは離型フィルムのシワ発生の防止を従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えた、プリント基板の製造方法、中でもロールトゥロール方式に好ましく適用可能な製造方法、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の複数のプロセス工程と、特定のプロセス用離型フィルムとを組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち本発明、並びにその好適な態様及び実施形態は、下記[1]から[14]に記載のとおりである。
【0010】
[1]
樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
厚さ15μm以下の離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる工程(I)と、
重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる工程であって、少なくともカバーレイフィルム(B)側についてはプロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とが貼り合わされる工程(II)と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する工程(III)とを有する、
プリント基板の製造方法。
[2]
製造されるプリント基板がフレキシブルプリント基板である、[1]に記載のプリント基板の製造方法。
[3]
工程(I)の前に、回路基材(A)、カバーレイフィルム(B)、及びプロセス用離型フィルム(C)の少なくとも一部が、ロールから巻き出され、
工程(III)の後に、貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)が、ロールに巻き取られる、
[2]に記載のプリント基板の製造方法。
[4]
カバーレイフィルム(B)が仮ラミネートされた回路基材(A)が1のロールから巻き出され、プロセス用離型フィルム(B)が他の1のロールから巻きだされる、[3]に記載のプリント基板の製造方法。
[5]
金属配線パターン(A2)が、ライン幅及びスペース幅の少なくとも一方が100μm以下である部分を有する、
[1]から[4]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[6]
カバーレイフィルム(B)が開口部を有し、貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)において、開口部を通じて金属配線パターン(A2)が露出する、
[1]から[5]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[7]
工程(I)において、更にプロセス用離型フィルム(C’)が、プロセス用離型フィルム(C’)/回路基材(A)/カバーレイフィルム(B)/プロセス用離型フィルム(C)の順で重ね合わされ、
工程(II)において、加熱加圧がプロセス用離型フィルム(C’)を介しても行なわれ、
工程(III)、貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C’)も剥離される、
[1]から[6]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[8]
樹脂基材(A1)が、ポリイミド樹脂又はポリエステル樹脂を含有する、[1]から[7]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[9]
樹脂基材(B1)が、ポリイミド樹脂又はポリエステル樹脂を含有する、[1]から[8のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[10]
接着剤層(B2)が、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系、又はイミド系の接着剤を含有する、[1]から[9]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[11]
離型層(C1)の表面の水に対する接触角が60°から130°である、[1]から[10]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[12]
中間層(C2)の180℃で測定される引張弾性率が11MPa以上である、[1]から[11]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法。
[13]
樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる手段と、
プロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる手段と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する手段とを有する、
プリント基板の製造装置。
[14]
フレキシブルプリント基板の製造に用いられる、[13]に記載のプリント基板の製造装置。
[15]
回路基材(A)を連続的に供給する巻き出し手段、カバーレイフィルム(B)を連続的に供給する巻き出し手段、及びプロセス用離型フィルム(C)を連続的に供給する巻き出し手段の少なくとも一部、並びに貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)を連続的に巻き取る巻き取り手段、を更に有する、
[14]に記載のプリント基板の製造装置。
[16]
[1]から[12]のいずれか一項に記載のプリント基板の製造方法によって製造されたプリント基板。
[17]
[16]に記載のプリント基板を有する、電気電子機器、輸送機械、又は生産機械。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリント基板の製造方法は、従来技術では実現できなかった高いレベルで、離型性、接着剤の流出防止、並びに好ましくは離型フィルムのシワ発生の防止及びそれに伴うプリント基板の良好な外観を同時に実現することができるので、高密度実装用のフレキシブルプリント基板等を、接着剤の流出による端子における導通不良、好ましくはシワによる外観の不良などを抑制しながら、高い生産性を有するロールトゥロール方式等の各種製造方式で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のプリント基板の製造方法中の一工程の例を示す模式図である。
【
図2】本発明のプリント基板の製造方法中の他の一工程の例を示す模式図である。
【
図3】本発明のプリント基板の製造方法中の他の一工程の例を示す模式図である。
【
図4(a)】プリント基板の製造方法の一例におけるカバーレイフィルム開口部付近を模式的に示す斜視図である。本明細書中では、
図4(a)から
図4(c)を集合的に「
図4」とも称す。
【
図4(b)】
図4のうち、好ましい充填状態の例を示すものである。
【
図4(c)】
図4のうち、好ましくない充填状態の例を示すものである。
【
図5】本発明のプロセス用離型フィルムを用いたプリント配線基板の製造方法の一形態中の一工程を示す模式図である。
【
図6】本発明のプロセス用離型フィルムを用いたフレキシブルプリント配線基板の製造方法の好ましい一形態であるロールトゥロール方式を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
厚さ15μm以下の離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる工程(I)と、
重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる工程であって、少なくともカバーレイフィルム(B)側についてはプロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とが貼り合わされる工程(II)と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する工程(III)とを有する、
プリント基板の製造方法、である。
以下、図面を参照しながら、本発明のプリントの基板製造方法について説明する。
【0014】
図1、
図2、および
図3は、本発明のプリント基板の製造方法の一例を示す模式図である。
図1から3中、樹脂基材151は樹脂基材(A1)に相当し、その上に形成された金属配線パターン152は金属配線パターン(A2)に相当し、これらで構成される回路基材15は、回路基材(A)に相当する。
また
図1から3中、樹脂基材161は樹脂基材(B1)に相当し、その上に形成された接着剤層162は接着剤層(B2)に相当し、これらで構成されるカバーレイフィルム16にはカバーレイフィルム(B)に相当する。カバーレイフィルム中には開口部が形成されており、金属配線パターン152の一部を、開口部を通じて上方からアクセス可能な様に露出させることができる。
更に
図1から3中、プロセス用離型フィルム11a及び11bは、それぞれプロセス用離型フィルム(C)及び(C’)に相当し、図示されない離型層(C1)と中間層(C2)とを含んでいる。プロセス用離型フィルム(C)は、ロールから巻き出されて使用され、その後ロールに巻き取られることが好ましいが、本発明の製造方法はその様な態様に限定されるものではない。
【0015】
樹脂基材151上に金属配線パターン152が形成された回路基材15と、樹脂基材161上に接着剤層162が形成されたカバーレイフィルム16とが、金属配線パターン152と接着剤層162とが対向する様に重ねあわされる(重ね合わせ工程(I)、(
図1))。その後、プロセス用離型フィルム11a及び11bを介して加熱加圧することによって、接着剤層162が流動化し、金属配線パターン152の層における空間を埋めるように流動し、樹脂基材151と樹脂基材161との間を充填して両基材間を接着することで、貼り合わせが実現される(貼り合わせ工程(II)、(
図2))。その後、プロセス用離型フィルム11a及び11bが、貼り合わされた回路基材15とカバーレイフィルム16との積層体である、プリント基板から剥離され、プリント基板が製造される(剥離工程(III)、(
図3))。
以下、各工程をより具体的に説明する。
【0016】
重ね合わせ工程(I)
本実施形態の製造方法中の重ね合わせ工程(I)においては、まず
図1示すように、樹脂基材151上に金属配線パターン152が形成された回路基材15と、樹脂基材161上に接着剤層162が形成されたカバーレイフィルム16とが、金属配線パターン152と接着剤層162とが対向する様に重ねあわされる。
重ね合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16は、貼り合わせのための熱及び圧力を供給する熱盤17aと熱盤17bとの間に配置される。その際、重ね合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16の両面と、熱盤との間に、プロセス用離型フィルム11b及び11aが、それぞれ配置される。
【0017】
なお、カバーレイフィルム16には開口部パターンが設けられている。この結果、
図1に示すよう、金属配線パターン152の一部は、当該開口部と対向し、貼り合わせ後も、開口部から露出するので、外部からアクセス可能であり、たとえば外部との導通を確保する電極として使用される。
【0018】
なお、本実施形態においては、プロセス用離型フィルム11a及び11bが、重ね合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16の上下に配置されているが、下側(回路基材15側)のプロセス用離型フィルム11bの使用は、本発明において必須ではなく、上側(カバーレイフィルム16側)のプロセス用離型フィルム11aのみを使用する態様も、また本発明の範囲内である。
【0019】
重ね合わせ工程に供される回路基材15、カバーレイフィルム16、並びに離型フィルム11b及び11aは、生産性の観点からはロールから供給されることが好ましいが、ロール以外、例えば枚葉状で供給されてもよい。
【0020】
貼り合わせ工程(II)
次に、
図2に示すように、熱盤17a及び熱盤17bを用いて、プロセス用離型フィルム11a及び11bを介して、重ね合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16を加熱加圧する。
この結果、接着剤層162が加熱加圧によって流動化し、金属配線パターン152の層における空間を埋めるように流動する。更に流動が進むと、樹脂基材151と樹脂基材161との間の空間は接着剤で充填されるので、基材151と基材161とが接着され、回路基材15とカバーレイフィルム16との貼り合わせが実現される。
加熱加圧における温度は、160℃以上であることが好ましく、170℃以上であることが特に好ましい。一方、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることが特に好ましい。
また、圧力は、8MPa以上であることが好ましく、9MPa以上であることが特に好ましい。一方、12MPa以下であることが好ましく、11MPa以下であることが特に好ましい。
【0021】
この際、カバーレイフィルム16に開口部が形成された部分においては、樹脂基材161上に接着剤層162が存在しないので、離型フィルム11aが、金属配線パターン152及び樹脂基材151との間の空間を埋めるように変形する。
本発明の製造方法においては、追従性に優れるプロセス用離型フィルム11aを用いるので、この際に、樹脂基材151、金属配線パターン152、樹脂基材161、及び接着剤層162が形成する段差形状に忠実に追従し、段差形状により形成された空間を充填することができるという優れた技術的効果を示す(
図2)。
【0022】
仮にプロセス用離型フィルム11aの追従性が不良であると、上記段差形状により形成された空間を充填することができず、充填されなかった空間に接着剤層162からの接着剤が流出するなどの問題を生ずる場合がある。
より具体的には、
図4は、上記実施態様におけるカバーレイフィルム開口部付近を示す斜視図である。
図4(a)は、重ね合わせ工程(I)における状態を示したものであり、金属配線パターン452が樹脂基材451上に形成された回路基材(A)上に、接着剤層462及び樹脂基材461で構成されたカバーレイ(B)が重ねあわされている。
カバーレイフィルムは開口部の周縁部であり、開口部46bと非開口部46aとが
図4(a)中に示されており、開口部46bには、金属配線パターン452が露出している。
その後、張り合わせ工程(II)において、接着剤層462が加熱加圧によって流動化し、金属配線パターン452の層における空間を充填する様に流動する。
図4(b)は充填が理想的に行なわれた場合を示すもので、非開口部46aにおける空間が接着剤層462で充填される一方で、開口部46bに接着剤の流れ出しは認められず、金属配線パターン452が開口部46b全面にわたってアクセス可能となっている。
一方、4(c)は充填が必ずしも適切に実施できなかった場合を示すもので、開口部46bにおいて、金属配線パターン452上を流出した接着剤462’が覆っている。
カバーレイに開口部が設けられる目的の代表的なものは、金属配線パターンを電極として使用するためにこれと導通を得ることである。このとき、流出した接着剤が、開口部における金属配線パターン452上で硬化すれば、当該金属配線パターン452への導通の妨げとなり得るので、プリント配線基板の歩留まりの低下等をもたらす懸念がある。
金属配線パターンのライン幅、スペース幅が小さいほど、言い換えれば集積度が高いほど、流出した接着剤の影響は大きく、また充填すべき凹凸形状も微細複雑になるので、接着剤の流出が起こりやすくなる。したがって、その様な高集積度のプリント基板を製造する際に、本発明の製造方法は特に好適である。
【0023】
剥離工程(III)
接着剤層162が熱硬化性樹脂からなる場合、加熱により熱可塑性樹脂が硬化したならば、
図3に示すように熱盤17a及び17bの間隔を広げ、貼り合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16を取り出す。
この際、本発明の製造方法では、離型性が良好なプロセス用離型フィルムを用いるのでで、貼り合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16に過大な又は不必要な応力が加えられることなく、取り出しを行なうことができるので、貼り合わされた回路基材15及びカバーレイフィルム16の破損等が有効に抑制される。特に複雑な段差形状を有するカバーレイフィルム16の開口部において、設計どおりの形状、パターンを維持することが容易となる。
【0024】
本発明のプリント基板の製造方法は、FPCの場合には、生産性向上等の観点から、ロールトゥロール方式で行うことが好ましい。
より具体的には、例えば、
図6に示すように、枚葉状のカバーレイフィルム66を予め仮ラミネートして一体化した回路基材65をロールから巻き出して供給するとともに、回路基材65及びカバーレイフィルム66を貼り合わせたプリント基板をロールに巻き取ることで、高い生産性でFPCを製造することができる。このとき、カバーレイフィルム66として枚葉状のカバーレイフィルムを使用して、これを回路基材65に仮ラミネートすると、巻取り時に回路基材との位置合わせのずれ等を生じにくいので好ましい。
その際、プロセス用離型フィルム61a及び61bも、ロールから巻き出して供給するとともに、使用後にロールに巻き取り回収することが好ましい。
なお、
図6においては、カバーレイ66が、回路基材65の両面に仮ラミネートされているが、カバーレイを回路基材の片面のみに仮ラミネートしてもよく、あるいはカバーレイを仮ラミネートせずに、回路基材とは別のロールから供給することもできる。
回路基材65とカバーレイフィルム66との貼り合わせは、
図1から3を参照して説明したプロセスと同様に、2つの熱盤(67a及び67b)を用いて加熱加圧することで行うことができる。例えば、上述の
図1から
図3を用いて説明したのと同様のプロセスで貼り合わせを行なった後に、紙面横方向の熱盤の寸法と略同じ距離だけ、回路基材85、カバーレイフィルム66、並びにプロセス用離型フィルム61a及び61bを送り、同様の貼り合わせを行なうことができる。
この様な貼り合わせと送りとを交互に繰り返すことで、高い生産性で、回路基材とカバーレイフィルムとが貼り合わされたFPCを製造することができる。
【0025】
本発明のプリント基板製造方法は、離型性、接着剤の流出防止、及び好ましくは耐シワ性が良好なので、一般にシワが発生し易いロールトゥロール方式でのFPCの製造を高速で行う際に好適である。また、接着剤の流出や離型不良が懸念されるライン幅及びスペース幅の少なくとも一方が100μm以下であるような高集積度なプリント配線基板の製造において、特に好適に使用され、ライン幅及びスペース幅は、少なくとも一方が50μm以下の場合でも使用できる。さらには、ライン幅及びスペース幅の少なくとも一方が40μm以下の場合にも対応可能である。ライン幅又はスペース幅の下限値は、例えば10μmである。
【0026】
本発明の製造方法においては、それぞれ特定の構成を有する回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを、上記重ね合わせ工程(I)、貼り合わせ工程(II)、及び剥離工程(III)を経て貼り合わせることにより、プリント基板が製造され、その際、それぞれ特定の構成を有する回路基材(A)、カバーレイフィルム(B)及びプロセス用離型フィルム(C)が使用される。
以下、本発明の製造方法において使用される回路基材(A)、カバーレイフィルム(B)、及びプロセス用離型フィルム(C)の詳細について説明する。
【0027】
回路基材(A)
本発明の製造方法で使用する回路基材(A)は、樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された構造を有する。樹脂基材(A1)は可撓性を有することが好ましく、すなわち柔軟性樹脂基材であることが好ましい。
ここで、樹脂基材(A1)の材料には特に制限はなく、金属配線パターン(A2)間の絶縁を確保でき、かつ用途との関係で必要な可撓性/形状を有する材料であれば、適宜使用することが可能である。中でも、可撓性を有すると共に耐薬品性及び耐熱性を有する材料を好ましく用いることができる。
樹脂基材(A1)の具体的な材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド等を挙げることができ、特に、ポリエステル、及びポリイミドが、コスト、及び耐熱性等のバランスの点で好ましい。
樹脂基材(A1)の厚みには特に制限は無いが、強度確保等の観点から、12μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。一方、可撓性、ロール・トゥ・ロールプロセスへの適合性、コスト等の観点から、75μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
【0028】
樹脂基材(A1)上の金属配線パターン(A2)は、樹脂基材(A1)上に直接積層されていてもよく、また接着剤を介して積層されていてもよい。
金属配線パターン(A2)は、樹脂基材(A1)上に形成された導電体層をフォトリソグラフィー等によりパターニングして形成することができる。
金属配線パターン(A2)の材質にも特に限定は無いが、導電性及び加工性に優れた金属を使用することが好ましく、導電性、加工性、安定性等の観点から、銅を使用することが特に好ましい。金属配線パターン(A2)上には、電気メッキ等によるメッキ層を形成することができる。
【0029】
金属配線パターン(A2)の厚みには特に制限は無いが、導電性や安定性等の観点から、9μm以上であることが好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。一方、可撓性、コスト等の観点から、70μm以下であることが好ましく、35μm以下であることが特に好ましい。
金属配線パターン(A2)のライン幅にも特に制限は無いが、集積度向上等の観点から100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることが特に好ましい。一方、導電性やプロセスの容易さ等の観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。
金属配線パターン(A2)のスペース幅にも特に制限は無いが、集積度向上等の観点から100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることが特に好ましい。一方、導電性やプロセスの容易さ等の観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。
【0030】
カバーレイフィルム(B)
カバーレイフィルム(B)を構成する樹脂基材(B1)には特に制限はないが、例えば、回路基材(A)を構成する樹脂基材(A1)に用いたものと同一あるいは類似の材料及び厚みを有するポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムを用いることができる。
樹脂基材(A1)同様に、樹脂基材(B1)も可撓性を有することが好ましく、すなわち柔軟性樹脂基材であることが好ましい。
カバーレイフィルム(B)を構成する接着剤層(B2)にも特に制限はないが、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系、又はイミド系の接着剤を使用することが好ましく、特にエポキシ系の接着剤を使用することが好ましい。
接着剤層(B2)の厚みには特に制限は無いが、金属配線パターンの厚みや金属配線との接着性等の観点から、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。一方、金属配線上への流出防止等の観点から、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることが特に好ましい。
カバーレイフィルム(B)には開口部を設けることが好ましく、回路基材(A)との積層後に、当該開口部を通じて金属配線パターン(A2)との導通を確保できる事が好ましい。
【0031】
プロセス用離型フィルム(C)
本発明の製造方法で使用されるプロセス用離型フィルム(C)は、少なくとも離型層(C1)と中間層(C2)とを含む、プロセス用離型フィルムであって、離型層(A)の厚みが15μm以下であるプロセス用離型フィルムである。また、中間層(C2)の180℃における引張弾性率は、11MPa以上であることが好ましい。
すなわち、プロセス用離型フィルム(C)(以下、単に「離型フィルム」ともいう)は、離型性を有する離型層(C1)、及び該離型層を支持する中間層(C2)、を含む積層フィルムの構成を有する。
【0032】
離型層(C1)
プロセス用離型フィルム(C)を構成する離型層(C1)には、従来よりプロセス用離型フィルムに、又はその表面の離型層に使用されている、各種の材料を使用することができる。また、それら各種の材料と同等の離型性を有する材料を使用することもできる。
離型性の観点から、離型層(C1)の水に対する接触角は、60°から130°であることが好ましく、90°から130°であることがより好ましく、95°から120°であることが更に好ましく、より好ましくは98°から115°であることが特に好ましく、100°から110°であることが一層好ましい。
離型性に優れること、入手の容易さなどから、離型層(C1)は、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン系樹脂等を含有することが好ましく、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが特に好ましい。
【0033】
離型層(C1)に用いることができるフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を含む樹脂であってもよい。テトラフルオロエチレンの単独重合体であってもよいが、他のオレフィンとの共重合体であってもよい。他のオレフィンの例には、エチレンが含まれる。モノマー構成単位としてテトラフルオロエチレンとエチレンとを含む共重合体は好ましい一例であり、この様な共重合体においては、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位の割合が55~100質量%であり、エチレンに由来する構成単位の割合が0~45質量%であることが好ましい。
【0034】
離型層(C1)に用いることができる4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体であってもよく、また4-メチル-1-ペンテンと、それ以外の炭素原子数2~20のオレフィン(以下「炭素原子数2~20のオレフィン」という)との共重合体であってもよい。
【0035】
4-メチル-1-ペンテンと、炭素原子数2~20のオレフィンとの共重合体の場合、4-メチル-1-ペンテンと共重合される炭素原子数2~20のオレフィンは、4-メ
チル-1-ペンテンに可とう性を付与し得る。炭素原子数2~20のオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が含まれる。これらのオレフィンは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
4-メチル-1-ペンテンと、炭素原子数2~20のオレフィンとの共重合体の場合、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位の割合が96~99質量%であり、それ以外の炭素原子数2~20のオレフィンに由来する構成単位の割合が1~4質量%であることが好ましい。炭素原子数2~20のオレフィン由来の構成単位の含有量が少なくすることで、共重合体を硬く、すなわち貯蔵弾性率E’が高くすることができ、封止工程等におけるシワの発生の抑制に有利である。一方、炭素原子数2~20のオレフィン由来の構成単位の含有量が多くすることで、共重合体を軟らかく、すなわち貯蔵弾性率E’を低くすることができ、追従性の向上を通じて接着剤の流出を防止するのに有利である。
【0037】
4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は、当業者において公知の方法で製造されうる。例えば、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造されうる。4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は、結晶性の高い(共)重合体であることが好ましい。結晶性の共重合体としては、アイソタクチック構造を有する共重合体、シンジオタクチック構造を有する共重合体のいずれであってもよいが、特にアイソタクチック構造を有する共重合体であることが物性の点からも好ましく、また入手も容易である。さらに、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は、フィルム状に成形でき、金型成形時の温度や圧力等に耐える強度を有していれば、立体規則性や分子量も、特に制限されない。4-メチル-1-ペンテン共重合体は、例えば、三井化学株式会社製TPX(登録商標)等、市販の共重合体であってもよい。
【0038】
離型層(C1)に用いることができるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオールから導かれる構成単位とテレフタル酸から導かれる構成単位とを骨格に有するものであればよく、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とからなる、所謂、PBTと称されるポリブチレンテレフタレートであっても、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテル、ポリエステル、あるいはポリカプロラクタムなどとのブロック共重合体であってもよい。
【0039】
離型層(C1)に用いることができるポリブチレンテレフタレート樹脂は、減圧下もしくは不活性ガス流通下で200℃以上の温度で固相重合した原料を使用することが好ましい。固相重合することによりフィルム成形しやすい固有粘度に調整でき、さらに末端カルボン酸基量の減少、オリゴマーの減少が期待できる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は1.0~1.3であることが好ましい。
離型層(C1)に用いることができるポリブチレンテレフタレート樹脂としては、例えば、東レ社から、商品名トレコン1200M、トレコン1100M等として、三菱エンジニアリングプラスチック社から、商品名ノバデュラン5010CS、ノバデュラン5020等として、製造・販売されている。
【0040】
離型層(C1)に用いることができるポリブチレンテレフタレート樹脂は、その融点が180~250℃であることが好ましく、より好ましくは200~240℃、更に好ましくは210~230℃である。ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点(Tm)(℃)とした。
【0041】
離型層(C1)に用いることができるポリスチレン系樹脂には、スチレンの単独重合体及び共重合体が包含され、その重合体中に含まれるスチレン由来の構造単位は少なくとも60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
ポリスチレン系樹脂は、アイソタクチックポリスチレンであってもシンジオタクチックポリスチレンであってもよいが、透明性、入手の容易さなどの観点からはアイソタクチックポリスチレンが好ましく、離型性、耐熱性などの観点からは、シンジオタクチックポリスチレンが好ましい。ポリスチレンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
離型層(C1)の厚みは、15μm以下である。離型層(C1)の厚みが15μm以下であることで、プリント配線基板の配線パターンやカバーレイの開口パターンに追従して変形することで、接着剤の流出を効果的に防止することができる。離型性や耐シワ性等の観点から、離型層(C1)には比較的剛性の高い樹脂が使用される場合が多いが、その場合であっても、離型層(C1)の厚みが15μm以下であることによって、良好な追従性が実現され、離型性、耐シワ性、及び接着材の流出防止を高いレベルでバランスさせることができる。離型層(C1)の厚みは、14μm以下であることが好ましく、更には13μm以下であることがより好ましい。
離型層(C1)の厚みには特に下限は存在しないが、製膜、積層の容易性や、破損の防止等の観点から、通常は2μm以上とすることが便宜であり、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。
【0043】
離型層(C1)の弾性率には特に限定はないが、離型性、耐シワ性、及びプリント配線基板製造時の配線パターンやカバーレイの開口パターン等への追従性の観点から、プリント配線基板の貼り合わせの際の温度において、弾性率が過大あるいは過小ではないことが好ましい。例えば、離型層(C1)の180℃での引張弾性率が5MPa以上、より好ましくは15MPa以上であることが、主に離型性、耐シワ性の観点から好ましく、120MPa以下、より好ましくは110MPa以下であることが、主に追従性の観点から好ましい。
また、厚みとの関係においては、離型層(C1)の厚みと弾性率との積が所定範囲内であることが好ましい。より具体的には、一層良好な追従性を得る観点から、離型層(C1)の厚みと180℃での弾性率との積は、1000Pa・m以下であることが好ましく、900Pa・m以下であることがより好ましい。一方、フィルム自体の剛性を確保し、一層良好な耐シワ性を得る観点から、離型層(C1)の厚みと180℃での弾性率との積は、200Pa・m以上であることが好ましく、250Pa・m以上であることがより好ましい。
【0044】
離型層(C1)は、プリント配線基板製造時の加熱加圧の際の温度(典型的には150~190℃)に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。かかる観点から、離型層(C1)としては、結晶成分を有する結晶性樹脂を含むことが好ましく、当該結晶性樹脂の融点は160℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。当該結晶性樹脂の融点には特に上限は無いが、通常入手可能な結晶性樹脂の融点は、280℃以下であることが多い。
離型層(C1)に結晶性をもたらすため、例えばフッ素樹脂においてはテトラフルオロエチレンから導かれる構成単位を少なくとも含むことが好ましく、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体においては4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を少なくとも含むことが好ましく、ポリスチレン系樹脂においてはシンジオタクチックポリスチレンを少なくとも含むことが好ましい。離型層(C1)を構成する樹脂に結晶成分が含まれることにより、樹脂封止工程等においてシワが発生し難く、シワが成形品に転写されて外観不良を生じることを抑制するのに好適である。
【0045】
離型層(C1)を構成する上記結晶性成分を含む樹脂は、JISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が高いと、プリント配線基板の貼り合わせの際の加熱加圧に耐え得る耐熱性及び離型性をより効果的に発現することが可能であることに加え、寸法変化率も抑制することができるため、シワの発生も防止することができるので好ましい。具体的には、15J/g以上であることが好ましく、20J/g以上であることがより好ましい。第1回昇温工程での結晶融解熱量には特に上限は存在しないが、通常50J/g以下である。
【0046】
離型層(C1)は、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び/又はポリスチレン系樹脂の他に、さらに他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂の種類及び添加量を適宜選択することで、離型層(C1)の弾性率、融点、結晶融解熱量等を、上記の好ましい範囲内となるように調節することもできる。他の樹脂の例には、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリエチレンテレフタレートが含まれる。このように、離型層(C1)が、例えば柔らかい樹脂を多く含む場合(例えば、4-メチル-1-ペンテン共重合体において炭素原子数2~20のオレフィンを多く含む場合)でも、硬度の比較的高い樹脂をさらに含むことで、離型層(C1)を硬くすることができるので、プリント配線基板製造時における、電気回路を形成した基材とこれを保護するカバーレイとを貼り合わせる際のシワの発生の抑制に有利である。
【0047】
これらの他の樹脂の含有量は、離型性を維持できる限りにおいて特に制限はなく、分散性を制御することでフッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び/又はポリスチレン系樹脂等を表面に偏在させることができれば、90質量%程度まで他の樹脂を含有していてもよい。
【0048】
また離型層(C1)は、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び/又はポリスチレン系樹脂等の高分子樹脂に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等、フィルム用樹脂に一般的に配合される公知の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の含有量は、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び/又はポリスチレン系樹脂等の樹脂100質量部に対して、例えば0.0001~20質量部とすることができる。
【0049】
離型層(C1)の表面は、必要に応じて凹凸形状を有していてもよく、それにより離型性を向上させることができる。離型層(C1)の表面に凹凸を付与する方法は、特に制限はないが、エンボス加工等の一般的な方法が採用できる。また、離型性を向上させるために、離型層(C1)の表面に、凹凸形状付与以外の表面処理を行ってもよい。
【0050】
離型層(C3)
本発明の製造方法で使用されるプロセス用離型フィルム(C)は、離型層(C1)及び中間層(C2)に加えて、更に離型層(C3)を有していてもよい。すなわち、プロセス用離型フィルム(C)は、離型層(C1)と、中間層(C2)と、離型層(C3)とをこの順で含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであってもよい。
【0051】
離型層(C3)にも、従来よりプロセス用離型フィルムに、又はその表面の離型層に使用されている、各種の材料を使用することができる。また、それら各種の材料と同等の離型性を有する材料を使用することもできる。
【0052】
離型層(C3)の水に対する接触角も、60°から130°であることが好ましく、90°から130°であることがより好ましく、95°から120°であることが更に好ましく、98°から115°であることが特に好ましく、100°から110°であることが一層好ましい。
【0053】
離型層(C3)も、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン系樹脂等を含有することが好ましく、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが特に好ましい。
離型層(C3)を構成する好ましい樹脂の詳細は、離型層(C1)に関して上記で説明したものと同様である。
【0054】
離型層(C3)の厚みも、15μm以下であることが好ましい。離型層(C3)の厚みが15μm以下であることで、本実施形態で用いるプロセス用離型フィルム(C)の離型層(C3)の側においても、良好な追従性を実現することができる。離型層(C3)の厚みは、14μm以下であることが好ましく、さらには13μm以下であることがより好ましい。
離型層(C3)の好ましい融点、弾性率、弾性率と厚みとの積、結晶融解熱量、等の好ましい物性も、離型層(C1)に関して上記で説明したものと同様である。離型層(C3’)への好ましい添加成分、及び添加量、並びに好ましい表面処理等も、離型層(C1)に関して上記で説明したものと同様である。
【0055】
プロセス用離型フィルム(C)が、離型層(C1)と、中間層(C2)と、離型層(C3)とをこの順で含む積層フィルムである場合の離型層(C1)と離型層(C3)とは同一の構成の層であってもよいし、異なる構成の層であってもよい。
反りの防止や、いずれの面も同様の離型性を有することによる取り扱いの容易さ等の観点からは、離型層(C1)と離型層(C3)とは同一または略同一の構成であることが好ましく、離型層(C1)と離型層(C3)とを使用するプロセスとの関係でそれぞれ最適に設計する観点、例えば、離型層(C1)をプリント配線基板からの離型性に優れたものとし、離型層(C3)を熱盤からの剥離性に優れたものとする等の観点からは、離型層(C1)と離型層(C3)とを異なる構成のものとすることもできる。
離型層(C1)と離型層(C3)とを異なる構成のものとする場合には、離型層(C1)と離型層(C3)とを同一の材料であって厚み等の構成が異なるものとしてもよいし、材料もそれ以外の構成も異なるものとしてもよい。
【0056】
中間層(C2)
本発明の製造方法で使用されるプロセス用離型フィルム(C)を構成する中間層(C2)は、離型層(C1)(及び場合により離型層(C3))を支持し、かつプリント配線基板製造時における、電気回路を形成した基材とこれを保護するカバーレイとを貼り合わせの際のシワ発生を抑制する機能を有する。
中間層(C2)に使用される樹脂は、プリント配線基板製造時、特にFPC製造時、の加圧加熱時に衝撃力を緩和するためのクッション機能を示す樹脂であることが好ましい。
プロセス用離型フィルム(C)においては、中間層(C2)の180℃における引張弾性率が11MPa以上であることが好ましい。中間層(C2)の180℃における引張弾性率が11MPa以上であることによって、この実施形態のプロセス用離型フィルムは、比較的薄い離型層(C1)を用いながら、高い耐シワ性を維持することができる。すなわち、この実施形態のプロセス用離型フィルムを用いることで、比較的薄い離型層(C1)によってもたらされる高い追従性と、中間層(C2)が有する所定の引張弾性率によってもたらされる高い耐シワ性とを、一層高いレベルで両立した製造方法が実現される。中間層(C2)の180℃における引張弾性率は、13MPa以上であることが好ましく、15MPaを超えることが特に好ましい。
【0057】
中間層(C2)の180℃における引張弾性率には特に上限は存在しないが、例えば50MPa以下であると、好適なクッション性を有し、追従性に与える悪影響が局限されるので好ましい。
中間層(C2)の180℃における引張弾性率は、40MPa以下であることがより好ましく、25MPa以下であることが特に好ましい。
【0058】
中間層(C2)の180℃における引張弾性率の調整は、当該技術分野で通常用いられる方法で行うことができる。中間層(B)に使用する材料を選択することが、最も直接的かつ一般的な手段であり、特に後述の中間層(C2)に好ましく使用される樹脂の種類、ブレンドである場合にはブレンド組成を調整すること、さらにまた高融点の添加剤を導入すること等、が効果的である。
【0059】
中間層(C2)に用いられる材料には特に制限はないが、柔軟性、製造及び取扱いの容易さ、コスト、離型層(C1)との積層の容易さなどから、高分子樹脂からなる、あるいは高分子樹脂を主成分とすることが望ましい。
中間層(C2)に上記好ましい引張弾性率を付与する観点から、高分子樹脂の全部又は一部は、結晶成分を有する結晶性樹脂であることが好ましい。当該結晶性樹脂として、例えばポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等を用いることができるが、これらには限定されない。
より具体的には、ポリオレフィン樹脂としては、それぞれ共重合体であってもよい、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等、又はそれらの組み合わせを、ポリエステル樹脂としては、エチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、又はそれらの組み合わせを、ポリアミド樹脂としてはポリアミド6、ポリアミド66等又はそれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0060】
なかでも、コスト、種類、物性の豊富さ、フィルムの取扱いの容易さ、離型層(C1)において4-メチル-1-ペンテン(共)重合体を用いる場合の積層の容易さ等の観点から、比較的軟質のポリオレフィン系樹脂(b1)を使用することが好ましい。本実施形態で使用される比較的軟質のポリオレフィン系樹脂(b1)は、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体からなるポリオレフィン系樹脂あって、具体的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、 エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等から選ばれる樹脂を単独で使用、又は混練して使用される樹脂である。これらの中ではポリエチレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。
【0061】
中間層(C2)を構成する材料として、上記の高分子樹脂を用いる場合、諸物性、特に180℃における引張弾性率等の機械的物性の調整を容易にする観点から、複数種類の高分子樹脂を含む組成物(いわゆる樹脂ブレンド)を用いることが好ましい。この場合、ブレンド可能な高分子樹脂の種類、物性の豊富さ、広い組成範囲にわたる高分子樹脂同士の親和性などから、ポリオレフィン樹脂同士のブレンドを用いることが特に好ましい。
【0062】
中間層(C2)を構成する材料として好適に用いられるポリオレフィン樹脂同士のブレンドとしては、上述の比較的軟質のポリオレフィン系樹脂(b1)に融点が通常180℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましくは220℃以上の高融点樹脂(a)がブレンドされた高融点樹脂含有ポリオレフィン樹脂(b2)を用いることができる。ここで該高融点樹脂(a)としては、離型層Aに用いる様な4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドを例示できる。これらの中ではポリ4-メチル-1-ペンテン、PETが好ましく、ポリ4-メチル-1-ペンテンが特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂(b1)と高融点樹脂(a)とのブレンドの割合は重量比(b1/a)で通常は20/80~98/2、好ましくは40/60~95/5である。
【0063】
中間層(B)を構成する材料として、ポリオレフィン系樹脂(b1)と高融点樹脂(a)とのブレンドを用いる場合に特に好ましいのは、ポリオレフィン系樹脂(b1)がポリエチレン及びポリプロピレンであり、高融点樹脂(a)が4-メチル-1-ペンテン(共)重合体である組み合わせである。すなわち、中間層(B)を構成する材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のブレンドであることが、特に好ましい。この様な組み合わせであれば、中間層(B)の諸物性を高い自由度で所望のものとすることが可能であり、また剥離層(A)において4-メチル-1-ペンテン(共)重合体を用いる場合の剥離層(A)と中間層(B)との積層も容易である。
【0064】
ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のブレンドにおいては、180℃における上記好ましい引張弾性率を実現する観点から、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の量は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の合計100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることが更に好ましい。また、中間層(C1)の180℃における引張弾性率を過大なものとせず、例えば50MPa以下とする観点からは、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の量は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の合計100質量部に対して、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、65質量部以下であることが更に好ましい。
ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のブレンドにおいては、追従性の観点から、ポリエチレンの量は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の合計100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましく、また80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることが更に好ましい。
ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のブレンドにおいては、密着性や相容性また耐シワ性の観点から、ポリプロピレンの量は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び4-メチル-1-ペンテン(共)重合体の合計100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましく、また60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
上記ポリエチレン及びポリプロピレンは、両方を使用することを要するものではなく、いずれか一方のみを使用してもよい。
【0065】
本実施形態において中間層(C2)に用いる樹脂として、上記の高融点樹脂(a)をポリオレフィン系樹脂(b1)にブレンドした高融点樹脂含有ポリオレフィン系樹脂(b2)を用いた場合には、該中間層(C2)は、例えば180℃程度の高温でもすべてが溶融しているわけではないので、このような樹脂を用いて得られる離型フィルムを用いる
本実施形態のプリント基板製造プロセスにおいては、特にFPC製造時、の加熱加圧工程において中間層(C2)を形成する樹脂(b2)が離型フィルムの積層体から外側のFPC等の銅箔上へはみ出したりすることを容易に抑制することができる。たとえはみ出したとしても該樹脂の銅箔等への付着力は弱いので、FPC等の汚染を抑制することも容易である。
またこの実施形態の離型フィルムはポリイミドフィルム等の樹脂基材(A1)と金属配線パターン(A2)との段差に追従する密着性(追従性)が一層良好なので、接着剤層(B2)からの接着剤の配線パターン(A2)上への流出を、一層効果的に防止することができる。
【0066】
中間層(C2)を構成する材料として、先のポリオレフィン系樹脂(b1)に高融点樹脂(a)及びオレフィン系エラストマー(c)をブレンドした、ポリオレフィン系樹脂/エラストマーブレンド(b3)を使用することもできる。
【0067】
本実施形態で使用されるオレフィン系エラストマー(c)は、通常炭素原子数2~20のα―オレフィンの重合体または共重合体であり、密度が通常0.900g/cm3以下、より好ましくは0.860~0.900g/cm3の範囲にあり、MFR(ASTMD1238に準拠して荷重2.16kg、190℃で測定)が0.01~150g/10分、より好ましくは20~l00g/10分の範囲にあることが望ましい。このようなオレフィン系エラストマー(c)は、X線回折法によって測定した結晶化度が30%未満、ないしは非晶質であることが望ましい。
【0068】
炭素原子数2~20のα―オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンおよびこれらの混合物を挙げることができ、これらの中では、炭素原子数が2~10のα―オレフィンが好ましく、特に、エチレン、1-ブテンが好ましい。
【0069】
好ましいオレフィン系エラストマー(c)として具体的には、例えば、エチレンから誘導される成分単位が0~95モル%、好ましくは30~92モル%、より好ましくは50~90モル%、炭素原子数3~20のα-オレフィンから誘導される成分単位が1~100モル%、好ましくは4~70モル%、より好ましくは8~50モル%、ジエン化合物から誘導される成分単位が0~10モル%、好ましくは0~5モル%、より好ましくは0~3モル%からなる重合体または共重合体を挙げることができる。より具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-l-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素原子数が3~10のα―オレフィン含量が10~50モル%のエチレン・α―オレフィン共重合体、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素原子数が4~l0のα―オレフィン含量が10~50モル%のプロピレン・α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0070】
また中間層(C2)は、高融点樹脂(a)、比較的軟質のポリオレフィン系樹脂(b1)等の高分子樹脂に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等、フィルム用樹脂に一般的に配合される公知の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の含有量は、高分子樹脂の合計100質量部に対して、例えば0.0001~20質量部とすることができる。
【0071】
本発明の一実施形態においては、中間層(C2)が、その周囲を離型層(C1)で被覆されていてもよい。
この実施形態においては、中間層(C2)を、一般により硬質である離型層(C1)で被覆したことによって、プリント基板製造時に離型フィルム(C)を介してプリント基板を加熱加圧する工程で離型フィルム(C)の中間層(C2)が外部へはみ出してプリント基板等を汚染したり、プレス熱盤にはみ出した樹脂が付着したりすることを、効果的に防止できる。
【0072】
中間層(C2)には、無延伸フィルムを用いても、延伸フィルムを用いてもよいが、クッション性等の観点からは無延伸フィルムであること、又は無延伸フィルムを含んでなることが好ましく、強度や熱収縮等の異方性等の観点からは、延伸フィルムであること、又は延伸フィルムを含んでなることが、好ましい。
【0073】
中間層(C2)の厚みは、フィルム強度を確保できれば、特に制限はないが、厚みが大きいと、シワを一層効果的に抑制することができる。中間層の厚みは、30μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm以上であり、特に好ましくは70μm以上である。中間層の厚みには特に上限はないが、たとえばロールトゥロールプロセスにおける巻取り、巻き出しの際のハンドリング性や、フィルムの廃棄量を抑制する観点から、過大ではないことが好ましく、具体的には300μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは120μm以下であることが望ましい。
また、厚みとの関係においては、中間層(C2)の厚みと弾性率との積が所定範囲内であることが好ましい。より具体的には、中間層(C2)の厚みと180℃での弾性率との積が、1100Pa・m以上であることが好ましく、1200Pa・m以上であることがより好ましく、1250Pa・m以上であることが特に好ましく、また2600Pa・m以下であることが好ましく、2300Pa・mであることが特に好ましい。
【0074】
それ以外の層
本発明の製造方法で用いるプロセス用離型フィルム(C)は、本発明の目的に反しない限りにおいて、離型層(C1)、及び中間層(C2)(並びに存在する場合には離型層(C3))以外の層を有していてもよい。例えば、離型層(C1)(又は離型層(C3)と中間層(C2)との間に、必要に応じて接着層を有してもよい。接着層に用いる材料は、離型層(C1)又は(C3)と中間層(C2)とを強固に接着でき、樹脂封止工程や離型工程においても剥離しないものであれば、特に制限されない。
【0075】
例えば、離型層(C1)(又は離型層(C3) ))が4-メチル-1-ペンテン(共)重合体を含む場合は、接着層は、不飽和カルボン酸等によりグラフト変性された変性4-メチル-1-ペンテン系共重合体樹脂、4-メチル-1-ペンテン系共重合体とα-オレフィン系共重合体とからなるオレフィン系接着樹脂等であることが好ましい。離型層(C1)(又は離型層(C3))がフッ素樹脂を含む場合は、接着層は、ポリエステル系、アクリル系、フッ素ゴム系等の粘着剤であることが好ましい。接着層の厚みは、離型層(C1)(又は離型層(C3 ))と中間層(C2)との接着を強化できれば、特に制限はないが、例えば0.5~10μmである。
【0076】
更に本発明の製造方法で用いるプロセス用離型フィルム(C)は、1又は2以上の、帯電防止層、ガスバリア層、着色層等を有していてもよい。
【0077】
プロセス用離型フィルム(C)の総厚みには特に制限は無いが、高いレベルの追従性、耐シワ性を兼ね備える観点から、例えば35μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが更に好ましい。また、たとえばロールトゥロールプロセスにおける巻取り、巻き出しの際のハンドリング性や、フィルムの廃棄量を抑制する観点から、例えば320μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。
【0078】
本発明又はその実施形態におけるフィルム又は層の180℃における引張弾性率は、以下のように定義される。
動的粘弾性測定装置(例えば、TA instruments社製 RSA-GII)により引張弾性率E’を測定し、180℃でのその値を180℃における引張弾性率とする。具体的には、サンプルサイズを幅5mm、チャック間の長さ(MD(フィルム長手)方向)を20mmとし、周波数1Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で30℃から200℃まで測定して得られた引張弾性率E’のデータを基に、180℃における引張弾性率を求める。
フィルム中の層について180℃における引張弾性率を測定する場合のサンプルは、以下の基準に従うものである。
製造過程で単層の状態で取り出すことが出来る層の場合は、当該単層の状態で取り出したものを用いて測定する。
共押出し成形法等で製造されるため製造過程で単層の状態が存在しない層の場合は、別途同様の条件(成形温度等)で積層体における当該層と同じ厚みの単層フィルムを作製し、その別途作製した単層フィルムを用いて測定する。但し、積層体における当該層が薄いため同じ厚みの単層フィルムを作製できない場合(具体的には30μm厚み以下の場合)には、同様の条件で50μm厚みの単層フィルムを作製して、それを用いて測定する。
【0079】
プロセス用離型フィルム(C’)
プロセス用離型フィルム(C’)は、プロセス用離型フィルム(C)と同じものを用いてもよいが、特に限定されない。
【0080】
プリント基板の製造装置
本発明の一態様であるプリント基板の製造装置は、
樹脂基材(A1)上に金属配線パターン(A2)が形成された回路基材(A)と、
樹脂基材(B1)上に接着剤層(B2)が形成されたカバーレイフィルム(B)と、
離型層(C1)と中間層(C2)とを含むプロセス用離型フィルム(C)と、
をこの順で重ね合わせる手段と、
プロセス用離型フィルム(C)を介して加熱加圧を行なうことで、重ね合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)とを加熱加圧して貼り合わせる手段と、
貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)から、プロセス用離型フィルム(C)を剥離する手段とを有する、
プリント基板の製造装置である。
本態様のプリント基板の製造装置を用いることで、高密度実装用のフレキシブルプリント基板等のプリント基板を、接着剤の流出による端子における導通不良や、好ましくはシワによる外観の不良などを抑制しながら、高い生産性で製造することが出来る。
本態様のプリント基板の製造装置は、回路基材(A)を連続的に供給する巻き出し手段、カバーレイフィルム(B)を連続的に供給する巻き出し手段、及びプロセス用離型フィルム(C)を連続的に供給する巻き出し手段の少なくとも一部、並びに貼り合わされた回路基材(A)とカバーレイフィルム(B)を連続的に巻き取る巻き取り手段、を更に有する、いわゆるロール・トゥ・ロール方式の製造装置であることが好ましい。
本実施形態のロール・トゥ・ロール方式の製造装置は、フレキシブルプリント基板等を高い生産性で製造できる一方で、上記構成を有することにより、フレキシブルプリント基板等を、接着剤の流出による端子における導通不良や、好ましくはシワによる外観の不良などを抑制しながら製造することができる。
【0081】
本発明のプリント基板製造方法、又は製造装置を用いて製造されたプリント基板は、高品質かつ低コストであるので、電気電子機器、輸送機械、生産機械等、電気電子回路を装備する、広範な分野における機器、装置において、特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定
されるものではない。
【0083】
以下の実施例/比較例において、物性/特性の評価は下記の方法で行った。
(180℃における弾性率)
動的粘弾性測定装置(TA instruments社製 RSA-GII)により引張弾性率E’を測定し、180℃でのその値を180℃における引張弾性率とした。具体的には、サンプルサイズを幅5mm、チャック間の長さ(MD(フィルム長手)方向)を20mmとし、周波数1Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で30℃から200℃まで測定して得られた引張弾性率E’のデータを基に、180℃における引張弾性率E’を求めた。
(測定サンプル)
製造過程で単層の状態で取り出すことが出来る層の場合は、当該単層の状態で取り出したものを用いて測定した。
共押出し成形法等で製造されるため製造過程で単層の状態が存在しない層の場合は、別途同様の条件(成形温度等)で積層体における当該層と同じ厚みの単層フィルムを作製し、その別途作製した単層フィルムを用いて測定した。ただし、積層体における当該層が薄いため同じ厚みの単層フィルムを作製できない場合(具体的には30μm厚み以下の場合)には、同様の条件で50μm厚みの単層フィルムを作製して、それを用いて測定した。
【0084】
(水に対する接触角(水接触角))
JIS R3257に準拠して、接触角測定器(Kyowa Inter face Science社製、FACECA-W)を用いて離型層(A)の表面の水接触角を測定した。
【0085】
(離型性)
図5に示す構成の装置を用い、金属配線パターンが形成されたFPC用回路基材55、の両側に枚葉式のカバーレイフィルム56が仮ラミネートされたものの両側に離型フィルム51a若しくは52b、及びガラス布58a若しくは58bをこの順で重ね合わせ、熱盤57aと57bを用いて(但し片側の熱盤(57b)には厚さ2mmの耐熱シリコーンゴム板と厚さ1mmの鉄板が焼き付けられ積層されたゴム板が設置されている)、温度:180℃、圧力:10MPa、加熱加圧時間:130秒(予圧:10秒、本圧:120秒)で加熱加圧して貼り合わせを行い、フレキシブルプリント基板を作製した。
1)回路基材55は、樹脂基材(A1)である厚み25μmのポリイミドフィルム上に、金属配線パターン(A2)である厚み22μmの銅配線が形成されたものを使用し、銅配線部のライン幅/スペース幅は、それぞれ40μm及び60μmであった。
2)カバーレイフィルム56は、樹脂基材(B1)である厚み12.5μmのポリイミドフィルム上に、厚み25μmの接着剤層(B2)が 形成されたものを使用した(ニッカン工業株式会社製、商品名:CISV1225DB)。
このカバーレイフィルム56には回路基材55の端子部分に相当する部分(開口部)が複数打ち抜かれていた。カバーレイフィルム56の開口部のサイズは4mm×7mmであった。
3)回路基材55と2枚のカバーレイフィルム56との重ね合わせにあたっては、前者の銅配線(A2)と後者のうち1枚の接着剤層(B2)とが対向する様に配置し、カバーレイフィルム56と離型フィルム51aとの重ねあわせにあたっては、前者のポリイミドフィルム層(B1)と、後者の離型層とが対向するように配置した。
加熱加圧後、直ちに離型フィルムを剥離し、離型フィルムの離型性を、以下の基準で評価した。
○:FPCから容易に剥離可能
△:FPCからやや重いが剥離可能
×:FPCに貼りつき容易には剥離不可
【0086】
(接着剤流出防止)
上記離型性の評価におけるものと同様の装置、フィルムの組み合わせで、加熱加圧後のFPCの銅配線(A2)上への接着剤の流れ出し量を、光学顕微鏡で観察し、流れ出しが防止できたかどうかを、を以下の基準で評価した。
○:開口部への流れ出しが20μm未満
△:開口部への流れ出しが20μm以上25μm以下
×:開口部への流れ出しが25μmを超える
【0087】
(耐シワ性)
図6に示す構成の装置を用い、いずれもロールから巻き出された金属配線パターンが形成されたFPC用回路基材65(枚葉式のカバーレイフィルム66は事前に仮ラミネート済)、及び離型フィルム61a及び61b、ガラスクロス68a及び68bを、
図6に示す順で重ね合わせ、フィルム幅270mm、熱盤サイズ:600mm(流れ方向)、送り量:470mm、引張張力:1kg、温度:180℃、圧力:10MPa、加熱加圧時間:50秒(予圧:5秒、本圧:45秒)で加熱加圧して貼り合わせを行い、フレキシブルプリント基板を製造した。
上述の様に、カバーレイフィルム66は事前に回路基材65の両面に仮ラミネートし巻き取ったものを使用した。仮ラミネートの条件は、温度:40℃、圧力:0.01MPa、加熱加圧時間:7秒とした。
1)回路基材65は、樹脂基材(A1)である25μm厚みのポリイミドフィルム上に、金属配線パターン(A2)である12μm厚みの銅配線が形成されたものであり、銅配線部のライン幅/スペース幅は、それぞれ40μm及び60μmであった。
回路基材65の1単位あたりのサイズは、幅250mm、流れ方向の長さ400mmであり、この1単位毎に、同じ基板パターンが繰り返される構造をもつロール状の長尺プリント配線基板となっていた。
2)カバーレイフィルム66は、樹脂基材(B1)である12.5μm厚みのポリイミドフィルム上に、25μm厚みの接着剤層(B2)が形成されたものを使用した(ニッカン工業株式会社製、商品名:CISV1225DB)。
カバーレイフィルム66にはFPCの端子部分に相当する部分(開口部)が複数打ち抜かれていた。カバーレイフィルム66の開口部のサイズは4mm×13mmであった。
カバーレイフィルム66の幅は250mm、流れ方向の長さは380mmであった。
3)回路基材65と2枚のカバーレイフィルム66との重ね合わせにあたっては、前者の銅配線(A2)と後者のうち1枚の接着剤層(B2)とが対向する様に配置し、カバーレイフィルム66と離型フィルム61aとの重ねあわせにあたっては、前者のポリイミドフィルム層(B1)と、後者の離型層とが対向するように配置した。
1回の加熱加圧後、ロール状の回路基材65、及び離型フィルム61a及び61b、ガラスクロス68a及び68bを送り量:470mm巻き出し、2回目の加熱加圧、3回目の加熱加圧・・・と、同様な加熱加圧を繰り返し、計5回の加熱加圧し貼り合わせを行った後に、配線基板65/カバーレイ66積層体から離型フィルム61aを剥離し、巻き取られた離型フィルム61a上の回路基材65の計5回の加熱加圧された範囲内(フィルム長手方向にて計470mm×5回=2350mm)についてシワの数を計測し、耐シワ性を以下の基準で評価した。
○:シワが25本未満
×:シワが25本以上
【0088】
[実施例1]
4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」60質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)8質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)32質量部をブレンドして樹脂組成物を作製し、中間層(C2)用の樹脂として使用した。
4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」を、離型層(C1)及び離型層C3)用の樹脂として使用した。
スクリュ径40mmの押出機3台を有する3層T-ダイフィルム成形機にて、各押出機に上記各樹脂を仕込み、成形温度280℃、チルロール温度70℃、エアーチャンバー静圧15mmH2Oの条件下、両外面が離型層(C1)及び(C3)、その間が中間層(C2)である2種3層構成の積層フィルムを得た。エンボス処理を、ロールトゥロールで加熱した予熱ロール温度40℃で接触させた後、表面粗さRaが4μmのエンボスロールで、エンボスロール温度130℃、エンボス線圧50kg/cmでフィルム両面にエンボス加工を行ない、フィルムの表面粗さRaが3μmである実施例1で使用する離型フィルムを得た。(以下、各実施例/比較例においても、離型フィルムの表面粗さRaは、3μmであった。)離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0089】
[実施例2]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物のブレンド比を、4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」50質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)10質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)40質量部に変更したことを除くほか実施例1と同様にして、実施例2で使用する離型フィルム(C)を作製した。離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0090】
[実施例3]
離型層(C1)及び(C3)の厚みを6μmに変更し、中間層(B)の厚みを110μmに変更したことを除くほか実施例2と同様にして、実施例3で使用する離型フィルム(C)を作製した。離型フィルム(C)の構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0091】
[実施例4]
中間層(C2)の厚みを80μmに変更したことを除くほか、実施例2と同様にして、実施例4で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルム(C)の構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0092】
[実施例5]
離型層(C1)及び離型層(C3)に使用する樹脂を4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:MX022)に変更したことを除くほか実施例2と同様にして、実施例5で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型層(C1)及び離型層(C3)の180℃における引張弾性率は20MPa、水の接触角は105°であった。
離型フィルム(C)の構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0093】
[実施例6]
離型層(C1)及び離型層(C3)の厚みを5μmに変更し、中間層(C2)の厚みを110μmに変更したことを除くほか実施例5と同様にして、実施例6で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例7]
離型層(C1)及び離型層(C3)に使用する樹脂をポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ株式会社製、製品名:トレコン、銘柄名:1200M)に変更したことを除くほか実施例5と同様にして、実施例7で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0095】
[実施例8]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物中の4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂を、ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ株式会社製、製品名:トレコン、銘柄名:1200M)に変更したことを除くほか実施例7と同様にして、実施例8で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0096】
[実施例9]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物中の各樹脂の配合量を表1に示すとおりに変更したことを除くほか実施例8と同様にして、実施例9で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルム(C)の構成を表1に示す
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0097】
[参考例3]
離型層(C1)及び(C3)の厚みを15μmに変更し、中間層(C2)の厚みを90μmに変更したことを除くほか実施例2と同様にして、参考例3で使用する離型フィルム(C)を作製した。
離型フィルム(C)の構成を表1に示す。
この離型フィルム(C)を用いて、上記評価方法に従い、FPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0098】
[比較例1]
4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」30質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)14質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)56質量部をブレンドして樹脂組成物を作製し、70μm厚みに成膜して、中間層(C2)用の樹脂として使用した。
4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」を、離型層用の樹脂として使用した。
スクリュ径40mmの押出機3台を有する3層T-ダイフィルム成形機にて、各押出機に上記各樹脂を仕込み、成形温度280℃、チルロール温度70℃、エアーチャンバー静圧15mmH2Oの条件下、両外面が離型層、その間が中間層(C2)である2種3層構成の積層フィルムを得た。エンボス処理を、ロールトゥロールで加熱した予熱ロール温度40℃で接触させた後、表面粗さRaが4μmのエンボスロールで、エンボスロール温度130℃、エンボス線圧50kg/cmで行ない、フィルムの表面粗さRaが3μmである、比較例1で使用する離型フィルムを得た。離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルムム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0099】
[比較例2]
離型層に使用する樹脂を4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:MX022)に変更したことを除くほか比較例1と同様にして、比較例2で使用する離型フィルムを作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0100】
[比較例3]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物のブレンド比を、4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」50質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)10質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)40質量部に変更したことを除くほか比較例1と同様にして、比較例3で使用する離型フィルムを作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0101】
[実施例11]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物のブレンド比を、4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」35質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)13質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)52質量部に変更したことを除くほか実施例1と同様にして、実施例11で使用する離型フィルムを作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0102】
[実施例12]
中間層(C2)に使用する樹脂組成物のブレンド比を、4-メチル-1-ペンテン共重合樹脂(三井化学株式会社製、製品名:TPX、銘柄名:DX818)」30質量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー株式会社製、製品名:F300SP)14質量部、及び低密度ポリエチレン樹脂(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、ミラソンF9673P)56質量部に変更したことを除くほか実施例1と同様にして、実施例12で使用する離型フィルムを作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0103】
[比較例4]
離型層の厚みを20μmに変更し、中間層(C2)の厚みを80μmに変更したことを除くほか実施例12と同様にして、比較例4で使用する離型フィルムを作製した。
離型フィルムの構成を表1に示す。
この離型フィルムを用いて、上記評価方法に従いFPC用の回路基材(A)と枚葉式のカバーレイフィルム(B)との積層を行ってフレキシブルプリント基板を作製し、離型性、接着剤流出、及び耐シワ性を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
【0105】
【表2】
本発明の製造方法に該当する各実施例においては、離型性が良好であるとともに、接着剤流出が有効に防止された結果が得られた。接着剤の流出防止は製品の品質そのものであるため特に重要である。実施例1~
9においてはシワの発生も防止された。本発明の製造方法の範囲外である各比較例においては、一部に接着剤の流出防止の観点からは有効な結果があったが、シワ発生防止の観点も踏まえ総合的に判断し有効な製造方法とはならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のプリント基板の製造方法は、高密度実装用のフレキシブルプリント基板等を、接着剤の流出による端子における導通不良やシワによる外観の不良などを抑制しながら、高い生産性を有するロールトゥロール方式等の各種製造方式で製造することができるという実用上高い価値を有する技術的効果をもたらすものであり、電子部品産業、電気電子産業、機械産業、自動車産業をはじめとする産業の各分野において高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0107】
11a、51a、61a、: プロセス用離型フィルム(C)
11b、51b、61b: プロセス用離型フィルム(C’)
15、55、65: 回路基材(A)
151、451: 樹脂基材(A1)
152、452: 金属配線パターン(A2)
16、56、66: カバーレイフィルム(B)
46a:非開口部
46b:開口部
161、461:樹脂基材(B1)
162、462:接着剤層(B2)
462’:接着剤の流れ出し
17a、17b、57a、57b、67a、67b: 熱盤
58a、58b、68a、68b: ガラスクロス