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特許7247025排水ソケット及び排水ソケットを備えた便器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】排水ソケット及び排水ソケットを備えた便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/16 20060101AFI20230320BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
E03D11/16
E03D11/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019102195
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197010
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 舞子
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 嵩正
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀和
(72)【発明者】
【氏名】米津 直人
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174303(JP,A)
【文献】特開2016-191206(JP,A)
【文献】特開2019-49184(JP,A)
【文献】特開2000-282553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の排水管部に接続される第1接続部と、
床面等の排水配管に接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間を繋ぐ排水路本体部と、
を備え、
前記排水路本体部は、下側に向かって前後方向の一方側に傾斜する傾斜部を有し、
前記排水路本体部の上流端部には、絞り部が設けられ、
前記絞り部のうち前記傾斜部が傾斜する前記一方側に位置する面は、左右方向の中央から左右方向の端側に向かって、前記第1接続部の中心との間の水平方向の距離が大きくなる部分を有する排水ソケット。
【請求項2】
前記傾斜部の前記一方側とは反対側の面は、上流側よりも下流側が鉛直に近い勾配をなしている請求項1に記載の排水ソケット。
【請求項3】
前記絞り部の前記一方側の面の下流側に、鉛直方向の下方に向かって前記一方側とは反対側に傾斜する傾斜面が設けられている請求項1又は請求項2に記載の排水ソケット。
【請求項4】
前記絞り部の前記一方側に位置する部分が、鉛直方向に対して交差方向に広がる段差面を有している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の排水ソケット。
【請求項5】
前記第1接続部が前記便器の排水管部に接続された状態において、
前記絞り部の前記一方側に位置する部分が、前記便器の排水管部の前記一方側に位置する部分よりも前記一方側に位置している請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の排水ソケット。
【請求項6】
便器の排水管部を有する便器と、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の排水ソケットと、
を備えている排水ソケットを備えた便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケット及び排水ソケットを備えた便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の排水管部と床面等に設けられた排水配管との間を繋ぐ排水ソケットが知られている。排水ソケットは、一般に、便器の排水管部に接続される第1接続部と、床面等に設けられた排水配管に接続される第2接続部と、第1接続部と第2接続部との間を繋ぐ排水路本体部と、を備えている。排水ソケットは、下流側に向かって後方に傾斜した傾斜部を有するものがある。このような傾斜部を有する排水ソケットにおいて、例えば下記特許文献1には、排水路本体部の上流端部に、絞り部が設けられたものが記載されている。この排水ソケットは、便器の排水管部からの洗浄水を絞り部に衝突させ、サイホン力を高めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-184745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成では、絞り部の後部に洗浄水とともに流下する紙等が集まりやすい。絞り部の後部に集まった紙等がそこに引っ掛かると、詰まりを生じる虞があるため改善が望まれていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、絞り部に紙等を引っ掛かりにくくできる排水ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排水ソケットは、便器の排水管部に接続される第1接続部と、床面等の排水配管に接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間を繋ぐ排水路本体部と、を備え、前記排水路本体部は、下側に向かって前後方向の一方側に傾斜する傾斜部を有し、前記排水路本体部の上流端部には、絞り部が設けられ、前記絞り部のうち前記傾斜部が傾斜する前記一方側に位置する面は、左右方向の中央から左右方向の端側に向かって、前記第1接続部の中心との間の水平方向の距離が大きくなる部分を有するものである。
本発明の排水ソケットを備えた便器は、便器の排水管部を有する便器と、前記排水ソケットと、を備えているものである。
本発明における前後方向の一方側とは、傾斜部の傾斜方向を水平面上に投影したときの水平面上における方向である。本発明における左右方向とは、本発明における前後方向に対して交差する方向である。本発明における上下方向とは、排水ソケットを施工した状態(第2接続部を床面等の排水管部に接続した状態)における上下方向である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絞り部のうち傾斜部が傾斜する一方側に位置する面は、第1接続部の中心との水平方向の距離が一定の円弧面である場合に比べて、左右方向の両端部が外側に広い。したがって、絞り部の一方側に位置する面の左右方向の中心に紙等が集中しにくく、また流路面積が大きいから紙等が流下しやすい。よって、絞り部に紙等を引っ掛かりにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1における排水ソケットであって、便器の排水管部と床面の排水配管とを連結した状態を示す断面図
図2】排水ソケットを示す断面図
図3】排水ソケットの垂下管の上部材を示す平面図
図4】排水ソケットの水の流れを説明する図
図5】実施例2における排水ソケットを示す断面図
図6】排水ソケットを示す一部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明の排水ソケットにおいて、前記傾斜部の前記一方側とは反対側の面は、上流側よりも下流側が鉛直に近い勾配をなしているものとしてもよい。このような構成によれば、絞り部の一方側に位置する部分に衝突して傾斜部の一方側とは反対側の面に跳ね返った洗浄水は、傾斜部の一方側とは反対側の面の下流側の鉛直に近い勾配によって、勢い良く排水される。したがって、排水路本体部に紙等を引っ掛かりにくくできる。
【0010】
また、本発明の排水ソケットは、前記絞り部の前記一方側の面の下流側に、鉛直方向の下方に向かって前記一方側とは反対側に傾斜する傾斜面が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、絞り部の一方側に位置する部分に衝突した洗浄水が傾斜面に沿って傾斜部の一方側とは反対側の面に流下し、傾斜部の一方側とは反対側の面に沿って勢い良く流下するからサイホン力を向上できる。
【0011】
また、本発明の排水ソケットは、前記絞り部の前記一方側に位置する部分が、鉛直方向に対して交差方向に広がる段差面を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、絞り部の一方側に位置する部分に多量の洗浄水が衝突して、水膜を確実に形成することができるから、サイホンを確実に発生させることができる。
【0012】
また、本発明の排水ソケットは、前記第1接続部が前記便器の排水管部に接続された状態において、前記絞り部の前記一方側に位置する部分が、前記便器の排水管部の前記一方側に位置する部分よりも前記一方側に位置しているものとしてもよい。このような構成によれば、絞り部の一方側に位置する部分が便器の排水管部の一方側に位置する部分より一方側と反対側に位置する場合に比べて、絞り部の一方側に位置する部分に衝突した洗浄水は、傾斜部の一方側とは反対側の面の低い位置に向かう。したがって、絞り部の一方側に位置する部分に衝突した洗浄水と、便器の排水管部から流下する洗浄水とが、傾斜部の低い位置で合流するから、サイホンが発生する水膜形成位置が下がるためサイホン力を強くできる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について、図1図4を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例における排水ソケット10は、便器41の排水管部(便器排水管部40と称する。)に接続される第1接続部11と、床面の排水配管50に接続される第2接続部12と、第1接続部11と第2接続部12との間を繋ぐ排水路本体部13と、を備えている。
【0014】
以下、各構成部材において、便器41に通常の姿勢で座る人の向きを基準とし、図1の左側(傾斜部14の傾斜方向)を後方、図1の右側を前方、図1の上側を上方、図1の下側を下方として説明する。また、図1の紙面に垂直な方向の手前側を右方、図1の紙面に垂直な方向の奥側を左方として説明する。
【0015】
便器41は、便鉢部42と、便鉢部42の底部から便器41の後方に向かって延びる便器排水路43とを有している。便器排水路43は、便鉢部42の底部から斜め上方に延びた後、下方に延び、その下流端において鉛直方向下向きに開口している。便器排水路43の下流端は便器排水管部40に形成されている。便器排水管部40は、円筒形状をなし、便器41の後端部において鉛直方向下向きに突出している。
【0016】
排水ソケット10は、第1接続部11を有する垂下管15と、垂下管15の下端部から略水平に延びるアジャスター管16と、アジャスター管16の先端部に連結された連結管17とを有している。連結管17は、第2接続部12を有している。排水ソケット10は、アジャスター管16を所定の長さで切断することにより、第1接続部11と第2接続部12との間の水平方向の距離を変えることができる。
【0017】
垂下管15の下端部には曲がり部18が設けられている。曲がり部18は円弧状をなして屈曲している。曲がり部18に水が溜まってサイホン作用が発生する。
【0018】
垂下管15は、上部材15Uと下部材15Sとに2分割されている。上部材15Uの下端は、下部材15Sの上端に差し込まれて接着剤により接合される。アジャスター管16は、下部材15Sに一体成形されている。曲がり部18は、下部材15Sに形成されている。
【0019】
第1接続部11は上下両側に開口した円筒状をなしている。第1接続部11の内部には、上方から便器排水管部40が挿入される。第1接続部11の外周面には、パッキン60が装着される。
【0020】
パッキン60は、図2に示すように、第1接続部11に外嵌するパッキン本体部61と、パッキン本体部61の上端から内側に突出するシール部62とを有している。シール部62は環状をなし、便器排水管部40の全周に密着する(図1参照)。
【0021】
第2接続部12は、円筒形状をなし、鉛直方向に開口している。第2接続部12は、排水路本体部13の下流端に連続している。第2接続部12は排水配管50に挿入される。
【0022】
排水路本体部13は、垂下管15、アジャスター管16、及び連結管17にわたっている。排水路本体部13は、傾斜部14と、傾斜部14の下流側に連続する曲がり部18と、曲がり部18の下流側に連続する水平部19と、水平部19の下流側に連続する鉛直部21とを有している。排水路本体部13の流路面積は、傾斜部14、曲がり部18、水平部19及び鉛直部21にわたり概ね一定である。すなわち、垂下管15の傾斜部14及び曲がり部18と、アジャスター管16と、連結管17とにわたり内径寸法は概ね一定である。
【0023】
傾斜部14は、垂下管15の上部材15Uに形成されている。傾斜部14は、鉛直方向に対して傾いている。傾斜部14は、図2に示すように、下流側に向かって後方に傾斜している。傾斜部14は、上端から下端に向かって少しずつ後方に変位している。
【0024】
傾斜部14の前面(一方側とは反対側の面)22は、図2に示すように、絞り部後部31と対向する側に位置している。傾斜部14の前面22は、上流側22Uよりも下流側22Sが鉛直に近い勾配をなしている。傾斜部14の前面22の断面形状は、図2に示すように、後側に膨らんだ弓状をなして湾曲している。前面22の下流側22Sの下端は、鉛直方向の上側から見ると、図3に示すように、左右方向に直線状をなしている。
【0025】
排水路本体部13の上流端部には、絞り部30が設けられている。絞り部30は、鉛直方向に対して交差方向(略水平方向)に広がる第1段差面33及び第2段差面34を有している。第2段差面34は、第1段差面33より下流側に位置する。第2段差面34の幅寸法(内外方向の寸法)は、図3に示すように、第1段差面33の幅寸法よりも小さい。
【0026】
第1段差面33は、図3に示すように、絞り部30の全周に形成された環状をなしている。第1段差面33は、絞り部30の左右両側に位置する第1側段差面33Sと、絞り部30の前側に位置する第1前段差面33Fと、絞り部30の後側に位置する第1後段差面33Rとを有している。第1後段差面33Rの幅寸法(内外方向の寸法)は、左右方向の中央から左右方向の端側に向かって徐々に小さくなる。
【0027】
第2段差面34は、図3に示すように、絞り部30の左右両側に位置する第2側段差面34Sと、絞り部30の後側に位置する第2後段差面34Rとを有している。第2側段差面34Sと第2後段差面34Rとは幅寸法(内外方向の寸法)が概ね等しい。
【0028】
絞り部30の周面は、図3に示すように、左右一対の側面35と、前面36と、後面37とを有している。前面36は、左右一対の側面35の前端側を繋いでいる。後面37は、左右一対の側面35の後端側を繋いでいる。絞り部30の後面37は、絞り部30のうち傾斜部14が傾斜する一方側に位置する面である。
【0029】
一対の側面35は、一対の第1側段差面33Sの内縁から略鉛直に垂下している。一対の側面35は、上方からの平面視では、図3に示すように、略平行をなし、前後方向に直線状に延びている。前面36は、第1前段差面33Fの内縁から略鉛直に垂下している。前面36は、上方からの平面視では、第1接続部11の中心Cを中心とした円弧形状をなして湾曲している。後面37は、第1後段差面33Rの内縁から略鉛直に垂下している。後面37については後ほど詳しく説明する。
【0030】
絞り部30の一方側に位置する部分(絞り部後部31と称する。)は、図3に示すように、第1後段差面33R、第2後段差面34R及び後面37を有している。後面37は、絞り部後部31の周面を構成する。後面37は、図3に示すように、上方からの平面視では、前面36より大きい半径の円弧形状をなして湾曲している。後面37は、左右両端37R,37Lと第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離B1が、左右方向中央と第1接続部11の中心Cとの間の距離B2よりも大きい。絞り部後部31と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離は、左右方向中央から両端37R,37Lに向かって少しずつ増している。なお、絞り部30は、第1接続部11の中心Cを基準に左右対称である。
【0031】
絞り部後部31の下流側には、図2に示すように、鉛直方向の下方に向かって前方に傾斜する傾斜面38が設けられている。傾斜面38は、第2後段差面34Rの内縁から垂下している(図3参照)。傾斜面38は、第2後段差面34Rの内縁から排水路本体部13の傾斜部14の上流端までわたっている。傾斜面38は、傾斜部14の前面22の下流側22Sに向かうように傾斜している。言い換えると、図2に示すように、傾斜面38に沿って下方に延長した仮想傾斜面39は、傾斜部14の前面22の下流側22Sと交差する。傾斜面38は、対向する絞り部30の前面36よりも傾斜している。
【0032】
傾斜面38は、上方からの平面視では、図3に示すように、後面37と略平行な円弧形状をなして湾曲している。すなわち傾斜面38は、左右方向の両端と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離が、左右方向中央と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離より大きい。
【0033】
次に、本実施例の排水ソケット10の使用例を説明する。
まず、図1に示すように、排水ソケット10を用いて便器排水管部40と排水配管50とを連結する。排水ソケット10の第2接続部12を排水配管50に接続し、便器排水管部40を第1接続部11に挿入する。便器排水管部40の下端は、パッキン60のシール部62の下端より下方に突出する。
【0034】
第1接続部11が便器排水管部40に接続された状態では、図1に示すように、絞り部後部31が、便器排水管部40の後部(一方側に位置する部分)44よりも後側に位置している。言い換えると、絞り部後部31と傾斜部14の前面22との水平方向の距離が、便器排水管部40の後部44と傾斜部14の前面22との水平方向の距離よりも大きい。
【0035】
便器排水管部40から排出された水は、図4に示すように、絞り部後部31に衝突して下流側に水膜W1を形成し、早期にサイホンが発生する。絞り部後部31に衝突した水は、傾斜面38によって矢印Aのように下流側22Sに流下する。絞り部後部31から流下した洗浄水は、下流側22Sにおいて便器排水管部40から矢印Bのように流下した洗浄水と合流し、水膜W2が形成される。このように水膜形成位置が低いため、強いサイホン力が発生する。下流側22Sに流下した水は、下流側22Sの鉛直に近い傾斜に沿って矢印Cのように曲がり部18へ勢い良く流れ込む。このため、水が下向きに強く引っ張られ、サイホン力がより強くなる。
【0036】
また、水とともに流下する紙等が絞り部後部31に集まる。ここで、絞り部後部31は円弧面に比べて左右方向に広がりが大きいから、紙等が中心に集中しにくい。また、絞り部後部31が円弧面である場合に比べて絞り部30における流路面積が広いため、紙等は引っ掛かることなく流下する。紙等は強いサイホン力により水とともに勢いよく下方に引き込まれてスムーズに排出される。
【0037】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例の排水ソケット10は、便器41の排水管部に接続される第1接続部11と、床面の排水配管50に接続される第2接続部12と、第1接続部11と第2接続部12との間を繋ぐ排水路本体部13と、を備えている。排水路本体部13は、下流側に向かって後方に傾斜する傾斜部14を有している。排水路本体部13の上流端部には、絞り部30が設けられている。絞り部30の後面37は、左右方向の両端37R,37Lと第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離B1が、左右方向の中央と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離B2よりも大きい形状である。この構成によれば、絞り部30の後面37は、第1接続部11の中心Cとの水平方向の距離が一定の円弧面である場合に比べて、左右方向の両端部が外側に広い。したがって、絞り部30の後面37の中心に紙等が集中しにくく、また流路面積が大きいから紙等が流下しやすい。よって、絞り部後部31に紙等を引っ掛かりにくくできる。
【0038】
また、傾斜部14の前面22は、上流側よりも下流側が鉛直に近い勾配をなしている。この構成によれば、絞り部後部31から傾斜部14の前面22に流下した洗浄水は、前面22の下流側の鉛直に近い勾配によって勢い良く排水される。したがって、排水路本体部13に紙等を引っ掛かりにくくできる。
【0039】
また、絞り部30の後面37の下流側に、鉛直方向の下方に向かって前方に傾斜する傾斜面38が設けられている。この構成によれば、絞り部後部31に衝突した洗浄水が傾斜面38に沿って傾斜部14の前面22に流下し、前面22に沿って勢い良く流下するからサイホン力を向上できる。
【0040】
また、絞り部後部31が、鉛直方向に対して交差方向に広がる第1段差面33及び第2段差面34を有している。この構成によれば、絞り部後部31に多量の洗浄水が衝突するから、サイホン力を強くできる。
【0041】
また、第1接続部11が便器排水管部40に接続された状態において、絞り部後部31が、便器排水管部40の後部44よりも後側に位置している。この構成によれば、絞り部後部31が便器排水管部40の後部44より前側に位置する場合に比べて、絞り部後部31から跳ね返った洗浄水は、傾斜部14の低い位置に向かう。したがって、絞り部後部31に衝突して跳ね返った洗浄水と、便器排水管部40から流下する洗浄水とが、傾斜部14の低い位置で合流するから、サイホンが発生する水膜形成位置が下がるためサイホン力を強くできる。
【0042】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2に係る排水ソケット70を図5及び図6によって説明する。
本実施例の排水ソケット70は、主にアジャスター部を有さない点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
本実施例の排水ソケット70は、実施例1と同様、第1接続部11と、第2接続部12と、排水路本体部13とを備えている。排水路本体部13は、実施例1と同様、傾斜部14を有し、排水路本体部13の上流端部には、絞り部30が設けられている。以下、各構成部材については、実施例1と同様、傾斜部14が下方に向かって傾斜する方向(図5の左側)を後方、その反対側(図5の右側)を前方、図5の上側を上方、図5の下側を下方として説明する。また、図5の紙面に垂直な方向の手前側を右方、図5の紙面に垂直な方向の奥側を左方として説明する。
【0044】
排水路本体部13は、傾斜部14の下流側に鉛直部21が連続している。傾斜部14の前面22は、実施例1と同様、上流側22Uよりも下流側22Sが鉛直に近い勾配をなしている。
【0045】
絞り部30は、実施例1と同様、鉛直方向に対して交差方向(略水平方向)に広がる第1段差面33及び第2段差面34を有している。
第1段差面33は、実施例1と同様、絞り部30の全周に形成された環状をなし、第1側段差面33S、第1前段差面33F、及び第1後段差面33Rを有している。第1前段差面33Fと第1後段差面33Rとは幅寸法(内外方向の寸法)が概ね等しい。
【0046】
第2段差面34は、絞り部30の左右両側に位置する第2側段差面34Sと、絞り部30の前側に位置する第2前段差面71とを有している。第2側段差面34Sと第2前段差面71とは幅寸法(内外方向の寸法)が概ね等しい。
【0047】
絞り部30の周面は、実施例1と同様、左右一対の側面35、前面36、及び後面37を有している。
絞り部後部31は、第1後段差面33R及び後面37を有している。後面37は、実施例1と同様、上方からの平面視では、前面36より大きい半径の円弧形状をなして湾曲している。
【0048】
絞り部後部31の下流側には、実施例1と同様、鉛直方向の下方に向かって前方に傾斜する傾斜面38が設けられている。傾斜面38は、後面37の下端から垂下している。傾斜面38は、実施例1と同様、傾斜部14の前面22の下流側22Sに向かうように傾斜している。
【0049】
傾斜面38は、実施例1と同様、左右方向の両端と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離が、左右方向の中央と第1接続部11の中心Cとの間の水平方向の距離より大きい形状をなしている。傾斜面38は、上方からの平面視では、後面37よりも緩い円弧形状をなして湾曲している。すなわち傾斜面38の半径は後面37の半径より大きい。
【0050】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、絞り部後部31における左右方向の両端部が外側に広いから、絞り部後部31の中心に紙等が集中しにくく、また流路面積が大きいから紙等が流下しやすい。よって、絞り部30の後部に紙等を引っ掛かりにくくできる。
【0051】
また、実施例1と同様、絞り部後部31の下流側に、鉛直方向の下方に向かって前方に傾斜する傾斜面38が設けられている。これにより、絞り部後部31に当たった洗浄水が傾斜面38に沿って傾斜部14の前面22に流下し、前面22に沿って勢い良く流下するからサイホン力を向上できる。
【0052】
また、絞り部後部31が、鉛直方向に対して交差方向に広がる第1段差面33を有している。この構成によれば、絞り部後部31に多量の洗浄水が衝突するから、サイホン力を強くできる。
【0053】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、本発明を床面に設けられた排水配管50に接続される排水ソケット10,70に適用した場合を説明したが、本発明は、床面に対して略垂直に立つ壁面に設けられた排水配管に接続される壁排水用の排水ソケットにも適用できる。
(2)上記実施例では、絞り部30が第1段差面33及び第2段差面34を有しているが、これに限らず、絞り部は、段差面のかわりに下流側に向かって流路面積を小さくするようなテーパ面を有していても良い。また、絞り部は、3段以上の段差面を有しても良い。
(3)上記実施例では、傾斜部14の前面22が、上流側よりも下流側が鉛直に近い勾配をなしているが、傾斜部の前面の勾配は必ずしもこのようにしなくてもよい。
(4)上記実施例では、絞り部後部31の下流側に傾斜面38が設けられているが、必ずしも傾斜面を設けなくても良い。
(5)上記実施例では、一対の側面35が略平行をなし、前後方向に直線状に延びているが、これに限らず、一対の側面は例えば緩く湾曲していてもよい。
(6)上記実施例では、後面37が円弧形状をなしているが、これに限らず、後面は、左右方向中央から端側に向かって第1接続部の中心との間の水平方向の距離が大きくなる部分を有していればよく、すなわち、後面の少なくとも一部に、そのような部分が形成されていてもよい。
(7)上記実施例では、排水ソケット10(70)の傾斜部14が下側に向かって便器41の後側に傾斜するものを例示したが、これに限らず、排水ソケットの傾斜部の傾斜方向は下側に向かって水平方向における任意の方向に傾斜するものであってよく、例えば、排水ソケットの傾斜部は、下側に向かって便器の前側、便器の左側または便器の右側に傾斜するものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
C…第1接続部の中心
B1…左右方向の両端と第1接続部の中心との間の水平方向の距離
B2…左右方向の中央と第1接続部の中心との間の水平方向の距離
10,70…排水ソケット
11…第1接続部
12…第2接続部
13…排水路本体部
14…傾斜部
22…傾斜部の前面(傾斜部の一方側とは反対側の面)
30…絞り部
31…絞り部後部(絞り部の一方側に位置する部分)
33…第1段差面
34…第2段差面
37…絞り部の後面(絞り部のうち傾斜部が傾斜する一方側に位置する面)
38…傾斜面
40…便器排水管部(便器の排水管部)
41…便器
44…便器排水管部の後部(便器の排水管部の一方側に位置する部分)
50…排水配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6