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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】用紙搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20230320BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230320BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230320BHJP
   B65H 9/14 20060101ALI20230320BHJP
   B65H 7/08 20060101ALI20230320BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H04N1/00 567M
G03G15/00 107
G03G21/00 370
B65H9/14
B65H7/08
H04N1/12 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019118205
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005778
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣 英幸
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200153(JP,A)
【文献】特開2018-026755(JP,A)
【文献】特開平11-180591(JP,A)
【文献】特開2006-151608(JP,A)
【文献】特開2015-139143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 15/00
G03G 21/00
B65H 9/14
B65H 7/08
H04N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
始点位置から終点位置まで、任意の速度で用紙を搬送可能な用紙搬送部と、搬送中の用紙の開口穴を検出可能な開口検出部と、必要時に搬送中の用紙を一時停止させて用紙の傾斜姿勢を矯正可能なレジスト部と、搬送中の用紙から画像情報を取得するか、或いは、搬送中の用紙に画像を形成する画像処理部と、を有する用紙搬送装置であって、
前記画像処理部が機能するタイミングでは、所定の通常速度で用紙を搬送する第1手段と、
前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部や用紙後端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部によって一時停止された後の用紙を、前記通常速度未満の速度で搬送する第2手段と、
を設けたことを特徴とする用紙搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を破損することなく搬送可能な用紙搬送装置に関し、典型的には、画像読取装置や画像形成装置として実現する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリなどの画像読取装置では、用紙から画像情報を正しく取得するべく、一般に、用紙の斜め搬送を解消するレジスト制御が採用されている。このレジスト制御では、停止状態のレジストローラに、用紙を一時的に押し付けることで、用紙の傾斜姿勢を矯正している。
【0003】
しかし、パンチ穴などが存在する用紙は、特に、その先端部が弱いので、レジスト制御時に用紙の先端が折れ曲がるなど、用紙にダメージを与えてしまうおそれがある。なお、この問題は、画像読取装置に限らず、画像形成装置においても、例えば、ルーズリーフを搬送する過程で生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-005582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、かかる問題を考慮して、特許文献1には、パンチ穴の開いた用紙に対して、レジスト制御を回避する発明が開示されている。しかし、引用文献1が開示する単純な回避制御では、画像読取装置の高速動作の要請に応えることはできない。
【0006】
すなわち、画像読取装置では、画像読取タイミングでは、機器の読み取り能力やユーザが指定する読取解像度などに基づく所定速度で用紙を搬送する必要がある一方、それ以外のタイミングでは、用紙を素早く搬送して処理速度を高めたい要請がある。この点は、画像形成装置でも同様であり、画像形成タイミング以外は用紙の高速搬送が望まれる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、用紙の折り曲りなどの破損を未然防止する一方、用紙を高速で搬送できる用紙搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る用紙搬送装置は、始点位置から終点位置まで、任意の速度で用紙を搬送可能な用紙搬送部と、搬送中の用紙の開口穴を検出可能な開口検出部と、必要時に搬送中の用紙を一時停止させて用紙の傾斜姿勢を矯正可能なレジスト部と、搬送中の用紙から画像情報を取得するか、或いは、搬送中の用紙に画像を形成する画像処理部と、を有する用紙搬送装置であって、前記画像処理部が機能するタイミングでは、所定の通常速度で用紙を搬送する第1手段と、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部や用紙後端部に前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部によって一時停止された後の用紙を、前記通常速度未満の速度で搬送する第2手段と、を設けたことを特徴とする。
本発明は、典型的には、例えば、スキャナ装置、複写機、ファクシミリなどの画像読取装置や、プリンタなどの画像形成装置として実現される。また、本発明の終点位置には、排紙後の停止位置(図5(k)参照)だけでなく、両面原稿における一時停止位置(実施例では、反転停止位置)も含んでいる。なお、始点位置は、実施例では、原稿セット台50が、これに該当する。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明によれば、用紙の折れ曲りなどの破損を未然防止する一方、用紙を高速に搬送できる用紙搬送装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例のスキャナ装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】スキャナ装置の要部を示す図面である。
図3】原稿の送り機構を示す概略断面図である。
図4】穴開き原稿を示す図面である。
図5】パンチ穴の無い通常原稿について、搬送経路を説明する図面である。
図6】原稿先端部だけにパンチ穴がある場合の搬送制御手法1を説明する図面である。
図7】原稿後端部にパンチ穴がある場合の搬送制御手法1を説明する図面である。
図8】原稿先端部にパンチ穴がある場合の搬送制御手法2を説明する図面である。
図9】原稿後端部にパンチ穴がある場合の搬送制御手法2を説明する図面である。
図10】原稿先端部にパンチ穴がある場合の搬送制御手法3を説明する図面である。
図11】原稿後端部にパンチ穴がある場合の搬送制御手法3を説明する図面である。
図12】パンチ穴についてユーザ設定を受け付ける場合を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る用紙搬送装置について説明する。なお、以下の説明では、スキャナ装置SCを、用紙搬送装置の一実施例と位置付けている。そして、図1は、実施例に係るスキャナ装置SCの全体構成図である。また、図2図3は、スキャナ装置SCの特徴部分を説明するための図面である。
【0018】
図1に示すスキャナ装置SCは、コンピュータやプリンタなどの外部機器MCと接続して使用され、CPU,ROM,RAM、I/Oポートなどを有する中央制御部10が、スキャナ動作の全体を制御している。また、中央制御部10は、通信ラインLNを通して、外部機器たるコンピュータMCに接続されており、コンピュータMCから受ける指示に対応する制御動作を実行している。
【0019】
中央制御部10は、用紙(以下、原稿と称することがある)に印刷された画像を読み取る原稿読取部11と、原稿読取部11から画像情報を取得してデコード処理などを実行する画像制御/処理部12と、原稿の搬送位置や原稿のパンチ穴を検出可能な複数の検知センサSNSと、中央制御部10から受けたモータ駆動データやLED駆動データを出力する複数個のドライバ14,15に接続されている。
【0020】
原稿読取部11は、CCD(Charge Coupled Device)方式やCIS(Contact Image Sensor)方式のイメージセンサ、イメージセンサに結像を生成する光学機構、及び、アナログ画像データをデジタル画像データに変換するAFE部(Analog Front End)を含んで構成されている。ここで、光学機構の一部は、移動可能に構成され、透明載置台80の下方で、原稿に沿って走査可能に構成されている。
【0021】
画像制御/処理部12は、AFE部から受ける生画像を画像処理して、適宜に画像変換する部分であり、例えば、DSP(digital signal processor)や専用CPUを有して構成される。そして、画像処理後の画像データは、画像記憶部16に記憶される。また、画像制御/処理部12は、画像データバスBSを経由して、外部機器MCに画像データを伝送可能に構成されている。
【0022】
検知センサSNSには、図3に示す第1搬送センサ26、第2搬送センサ27、第3搬送センサ28が含まれている。各搬送センサ26~28は、例えば、発光素子と受光素子とが対面する光学センサを、一組又は複数組配置して構成されている。
【0023】
ドライバ14は、中央制御部10からモータ駆動データを受けた場合に、これをプラテンモータ17に出力することで、原稿読取部11の光学機構を移動させている。また、複数のドライバ15は、原稿送り装置18に、必要な駆動データを供給するよう構成されている。原稿送り装置18には、原稿を搬送する複数の搬送モータや、所定の搬送モータを一時停止させるレジスト動作を実現するクラッチや、各種のLEDが含まれている。
【0024】
複数の搬送モータは、各々に対応するドライバ15を経由して、中央制御部10からモータ駆動データを受けている。そして、図3に示す給紙ローラ20、分離ローラ21、レジストローラ22、読取前ローラ23、読取後ローラ24、排紙反転ローラ25を、必要なタイミングで回転駆動している。なお、投入された原稿は、分離ローラ21からレジストローラ22に受け渡され、次に、レジストローラ22から読取前ローラ23に受け渡され、更に、読取前ローラ23から読取後ローラ24に受け渡された後、読取後ローラ24から排紙反転ローラ25に受け渡されて原稿表面の画像読み取り動作が完了する。
【0025】
何ら限定されないが、実施例の搬送モータは、ステッピングモータで構成されており、中央制御部10がモータ駆動データの更新周期を変化させることで、適宜な搬送速度で回転するよう構成されている。実施例の場合、中央制御部10の制御に基づき、搬送速度が、画像データ読取時の低速の第1速度と、加速制御時の第2速度に切り替えられる。何ら限定されないが、第1速度は、読取解像度などに応じて、例えば300mm/sであり、第2速度は、例えば360mm/sである。
【0026】
図2は、実施例に係るスキャナ装置SCのうち、原稿送り装置18に関連する部分を図示してものである。図2には、給紙ローラ20と、給紙部カバー30と、原稿ガイド40と、原稿セット台50と、原稿出力部60と、サイズ検知板70と、透明載置台80とが示されている。なお、透明載置台80は、透明ガラス板で構成されているので、その左端81からは、原稿読取部11などが目視される。
【0027】
給紙ローラ20は、間欠的に回転を開始して、原稿セット台50にセットされた原稿を取込むよう構成されている。なお、給紙ローラ20の下流側には、分離ローラ21(図3)が配置されており、複数の原稿が取込まれた場合にも、一枚の原稿だけが選択されるようになっている。
【0028】
給紙部カバー30は、紙詰り時や、給紙ローラ20の清掃時など、必要に応じて開放できるよう構成されている。また、原稿ガイド40は、そのガイド幅を、原稿サイズに一致させるべく、手動設定可能に構成されている。なお、このスキャナ装置SCは、両面印刷された両面原稿も読取可能に構成されているが、片面原稿を読取る場合には、読み取り面が上向きにセットされる必要がある。
【0029】
サイズ検知板70は、透明載置台80にセットされた原稿の原稿サイズを検知するために機能する。そして、透明載置台80の左端81の下方には、原稿読取部11やプラテンモータ17が配置されている。
【0030】
図3には、スタックされた複数枚の原稿PA~PAと、原稿の搬送経路に配置された搬送センサ26~28と、原稿を適宜なタイミングで、適宜な速度で搬送する各種の駆動ローラ20~25との位置関係が示されている。何ら限定されないが、第1搬送センサ26には、原稿先端の左右位置を検出可能な斜行センサ26aと、原稿の先端領域や後端領域のパンチ穴を検出可能なパンチ穴センサ26bとが含まれている。
【0031】
斜行センサ26a(不図示)は、例えば、原稿進行方向に直交する原稿の左右位置に配置される光学センサで構成される。そして、斜行センサ26aの出力に基づき、原稿が斜めに進行していると判定される場合には、停止状態のレジストローラ22に原稿を押し当てるレジスト制御動作が、原則として実行される。
【0032】
パンチ穴センサ26b(不図示)は、例えば、原稿進行方向の直交方向に配置される一組又は複数組の光学センサ(発光素子と受光素子)で構成される。なお、パンチ穴を正確に検出するためには、CCDイメージセンサなどを利用して原稿画像を読取るか、或いは、多数の発光素子や受光素子を列状に配置するのが好ましい。
【0033】
しかし、二穴や三穴程度のパンチ穴なら、その用紙の強度は、通常の用紙と殆ど変わらないので、本実施例では、そのような構成を採っていない。すなわち、本実施例では、図4の矢印で示す原稿進行方向に直交して、多数のパンチ穴が形成されている場合を主として問題にしている。
【0034】
何れにしても、パンチ穴の検出には、典型的には、原稿の最初の通過時(1パス目)に、パンチ穴センサ26bの出力に基づいて、先端側と後端側のパンチ穴を判定する判定手法(1)と、原稿の最初の通過時(1パス目)には、先端側のパンチ穴だけを判定し、その後の原稿読取部11の読み取り動作に基づいて、後端側のパンチ穴を判定する判定手法(2)とが考えられる。但し、両面原稿において、原稿の二度目の通過時(2パス目)に、パンチ穴センサ26bの出力に基づいて後端側のパンチ穴を判定する判定手法(3)を採っても良い。
【0035】
<パンチ穴が存在しない原稿に対する搬送制御>
以上を踏まえて、図5に基づいて、パンチ穴が存在しない通常原稿に対する搬送動作について説明する。なお、ここでは、便宜上、両面原稿を問題にする。
【0036】
原稿セット台(始点位置)50に原稿がセットされ、開始スイッチが操作されると、原稿を押圧した状態で、給紙ローラ20が回転を開始する(図5(a)参照)。そのため、原稿は、分離ローラ21を通過して、第1搬送センサ26の位置に達する。そして、斜行センサ26a(第1搬送センサ26の一部)の出力に基づいて、原稿先端の左右位置が把握されると共に、パンチ穴センサ26b(第1搬送センサ26の一部)の出力に基づいて、原稿先端部にパンチ穴が存在するか否かが判定される。
【0037】
ここでは、通常原稿を問題にしているので、原稿先端部にパンチ穴が検出されることはないが、原稿の斜行姿勢が検出された場合には、レジストローラ22を停止させた状態で、給紙ローラ20や分離ローラ21を回転させて、斜行姿勢を矯正する(図5(b)参照)。なお、図5(b)のレジスト動作拡大図は、原稿先端を撓ませるレジスト制御動作を図示している。
【0038】
そして、斜行姿勢が矯正された状態で、原稿の先端が、第2搬送センサ27を通過した後、原稿表面の読み取り動作が実行される(図5(c)~図5(d)参照)。読み取り動作時には、読取前ローラ23や読取後ローラ24が第1速度で回転する。第1速度は、原稿読取部11の読み取り動作に相応しい移動速度であって、外部機器MCなどから設定された読取解像度や、光学機構の読み取り能力などに対応した速度である。
【0039】
そして、排紙反転ローラ25が、紙面の反時計方向に回転することで、原稿が、反転停止位置まで移送される。次に、排紙反転ローラ25が、紙面の時計方向に反転動作を開始することで、反転停止位置の原稿が、紙面の左方向に移送される。なお、この反転動作状態では、原稿の本来の後端位置が、反転移動する原稿の先頭位置となる。
【0040】
原稿の反転移動は、第3搬送センサ28を通過して継続され、その後、反転移動する原稿の先端部(本来の後端部)が、第1搬送センサ26を通過する過程で、斜行センサ26aによって搬送姿勢が判定される。先に説明した通り、パンチ穴の存在は、判定手法(1)~(3)の何れかの方法で判定されるが、ここでは、通常原稿を問題にしているので、何れの方法を採った場合も、原稿の先端側や後端側にパンチ穴が検出されることはない。
【0041】
そして、反転移動する通常原稿に斜行姿勢が検出された場合には、レジストローラ22を停止した状態で、排紙反転ローラ25を回転させて、斜行姿勢を矯正する(図5(f)参照)。図5(f)の反転レジスト動作拡大図は、この反転レジスト動作を図示している。
【0042】
次に、斜行姿勢が矯正された状態で、原稿の先端(本来の後端)が、第2搬送センサ27を通過した後、原稿裏面の読み取り動作が実行される(図5(g)~図5(h)参照)。この読み取り動作時でも、読取前ローラ23や読取後ローラ24が第1速度で回転して原稿裏面の画像を取得する。
【0043】
そして、排紙反転ローラ25が、紙面の反時計方向に回転することで、原稿が、反転停止位置まで移送される(図5(h)参照)。次に、排紙反転ローラ25が、反転動作を開始することで、反転停止位置の原稿が、紙面の左方向に移送される。この状態では、原稿の本来の先端位置が、反転移動する原稿の先頭位置となる。
【0044】
次に、1枚目の原稿の排紙が開始される共に、2枚目の原稿の給紙が開始され(図5(j)参照)、その後、2枚目の原稿の読み取りと、1枚目の原稿の排紙が完了する(図5(k)参照)。そして、その後も、上記と同様の動作が繰り返される。
【0045】
以上、両面印刷された両面原稿の搬送経路について説明したが、片面原稿の場合には、図5(a)~図5(d)の処理を経て、一連の搬送動作が完結する。
【0046】
次に、両面原稿についての搬送速度を説明する。なお、原稿先端部にも原稿後端部にもパンチ穴がない通常原稿についての説明である。図5に矢印で示す通り、この実施例では、原稿が第1搬送センサ26に把握されるまでは、その原稿が低速の第1速度で搬送される。
【0047】
なお、ここでは、パンチ穴の無い通常原稿を問題にしているが、斜行センサ26aの出力に基づいて、原稿の斜行を判定した後は、レジスト制御による一時停止時を除いて、その原稿が、第1速度より速い第2速度で搬送される(加速制御)。
【0048】
その後、第1速度で原稿表面の読み取り処理が実行された後は、原稿裏面の読み取り動作の開始まで(図5(e)~図5(f))、レジスト制御時の一時停止時を除いて、高速の第2速度で原稿が搬送される。そして、原稿裏面の読み取り動作は第1速度で実行されるが、その後は、加速制御された第2速度で、1枚目の原稿が搬送される(図5(i)~図5(k))。なお、2枚目の原稿は、図5(j)~図5(k)のタイミングでは、第1速度で搬送される。以上の通り、この実施例では、可能な限り加速制御を実行するので、一連の処理を、迅速に終了することができる。
【0049】
<パンチ穴が存在する原稿に対する搬送制御>
続いて、原稿の先端部、及び/又は、後端部にパンチ穴が存在する場合について、各種の搬送制御手法を説明する。先ず、原稿の先端部や後端部にパンチ穴が検出された場合に、レジスト制御を回避すると共に、加速制御を緩和する搬送制御手法1について、図6に基づいて説明する。
【0050】
[搬送制御手法1(原稿の先端部だけにパンチ穴が検出された場合の動作)]
図6は、原稿の先端部だけにパンチ穴が検出された場合を示しており、図面に記載されている「通常速度」は、画像の読み取り時の第1速度と同じである。また、加速制御時には、第1速度(通常速度)より高速の第2速度で原稿が搬送される。なお、この点は、図7以降の記載についても同様である。
【0051】
以上を踏まえて説明を続けると、図5の場合と同様、第1搬送センサ26の位置までは、原稿が第1速度で搬送される(図6(a))。次に、この原稿の場合には、パンチ穴センサ26bの出力に基づいて、原稿先端部のパンチ穴が認識される筈である。また、斜行センサ26aの出力に基づいて原稿の斜行が認識される場合もある。
【0052】
この搬送制御手法1では、原稿先端部のパンチ穴が認識された場合には、例え、原稿の斜行が認識されても、レジスト制御の実行が回避され、加速制御も回避される。すなわち、斜行状態の原稿についても、一時停止させることなく、第1速度を維持して原稿の搬送が継続される。
【0053】
パンチ穴のない通常原稿の場合には、レジストローラ22を一時停止させた後、通常原稿を第2速度で搬送するのに対して(図5)、原稿先端部にパンチ穴が検出された原稿については、レジスト制御を回避して、第1速度で搬送し続けるので、原稿先端部の穴が破れたり、原稿先端部が折り返されるなどのダメージを受ける可能性が大幅に軽減される。また、レジストローラ22が一時停止するタイミングが無いので、この意味での高速搬送が実現される。
【0054】
その後、第1速度による原稿表面の読み取り動作(図6(b))が終了した後は、原稿裏面の読み取り動作の開始まで、第1速度より高速の第2速度で原稿が搬送される(図6(c)~図6(d))。これは、ここで説明している搬送制御手法1が、原稿の先端部にだけパンチ穴が存在し、原稿の後端部にはパンチ穴がない原稿に対するものだからである。
【0055】
すなわち、原稿表面の読み取り動作が終了したタイミング(図6(c))では、パンチ穴のある原稿の先端が、排紙反転ローラ25を通過しているため、高速搬送しても弊害が生じない。また、反転移送時には、パンチ穴のある原稿の先端が、原稿の後端側に位置するため高速搬送に弊害がない。
【0056】
その後に続く、原稿裏面の読み取り動作は、減速した第1速度で実行されるが、読み取り動作後は、原稿の後端が反転停止位置に達するまで(図6(e)参照)、加速制御された第2速度で原稿が搬送される。なお、ここで説明した図6(c)~図6(e)の動作は、通常原稿に対する制御動作と同じである。
【0057】
但し、図6(f)に示すように、原稿を排出するための3パス目は、通常原稿の場合とは相違して、原稿の先端が排紙反転ローラ25を抜けるタイミングまでは、低速の第1速度で原稿を搬送する。これは、原稿先端にパンチ穴があることを考慮したものであり、原稿がダメージを受けることを回避するためである。
【0058】
一方、原稿の先端が、排紙反転ローラ25を抜けたと思われるタイミングの後は、通常原稿の場合と同様に加速制御して、第2速度で原稿を搬送する。そのため、穴開き原稿の場合にも、一連の処理時間がそれほど遅くならず、高速処理が実現される。
【0059】
[搬送制御手法1(原稿の後端部にパンチ穴が検出された場合の動作)]
次に、原稿の後端部にパンチ穴が検出された場合について、図7に基づいて説明する。なお、先に説明した通り、後端部のパンチ穴は、典型的には、原稿の最初の通過時に、パンチ穴センサ26bの出力に基づいて検出されるか、或いは、原稿読取部11の画像読み取り動作に基づいて検出される。
【0060】
この場合は、原稿先端部にパンチ穴が検出されたか否かに応じて、図5(a)~図5(b)の処理を経るか、或いは、図6(a)の処理を経て、原稿表面の読み取り処理を実行する。そして、読み取り処理を終えた原稿は、加速制御された第2速度で、反転停止位置に移送される。なお、この段階では、中央制御部10は、原稿の後端部にパンチ穴が存在することを把握している。
【0061】
そのため、その後の反転移動では、パンチ穴センサ26bの出力に拘らず、レジスト制御の実行が回避され、また、加速制御を回避して第1速度による搬送が実行される(図7(a)~図7(b)参照)。そのため、反転移動時の原稿の先端(本来の原稿後端部)に位置するパンチ穴が破れたり、原稿の先端(本来の原稿後端部)が折り返されるなどのダメージを受ける可能性が大幅に軽減される。
【0062】
そして、第1速度で搬送される原稿裏面の読み取り処理が完了すると、読み取り処理後の原稿は、加速された第2速度で、反転停止位置まで移送される(図7(c))。読み取り処理後の原稿の先端は、排紙反転ローラ25を通過済みであるので、高速搬送しても何の弊害もない。また、その後の排紙動作も第2速度で実行される(図7(d))。そのため、穴開き原稿は、ダメージを受けることがなく、また、一連の処理が高速化される。
【0063】
[搬送制御手法2]
以上、レジスト制御を回避すると共に、加速制御を緩和する搬送制御手法1について説明したが、特に、この手法に限定されるものではない。例えば、加速制御を緩和するが、レジスト処理を実行するもの好適である。
【0064】
図8は、搬送制御手法2を説明する図面であり、原稿の先端部にパンチ穴が検出された場合を示している。この搬送制御手法では、第1速度で、第1搬送センサ26の位置に到達した原稿に、パンチ穴が検出され、かつ、斜行姿勢が検出された場合には、レジスト制御動作を実行する。但し、停止状態のレジストローラ22は、その後、低速の第1速度で回転して原稿を搬送する。したがって、原稿の傾斜姿勢を矯正することができ、また、その後、原稿がゆっくり搬送されるので、穴開き原稿が受けるダメージを抑制することができる。
【0065】
図9も、搬送制御手法2を説明する図面であり、原稿の後端部にパンチ穴が検出された場合を示している。この場合、原稿の後端部にパンチ穴が検出され、かつ、反転移動時の原稿が、第1搬送センサ26の位置で斜行姿勢となっていた場合には、レジスト制御動作を実行し、停止状態のレジストローラ22は、その後、低速の第1速度で回転して原稿を搬送する。
【0066】
以上、搬送制御手法2の要部だけ説明したが、その他のタイミングの搬送動作は適宜である。但し、好ましくは、搬送制御手法1の場合と同様の加速制御が実行される。
【0067】
[搬送制御手法3]
図10は、原稿の先端部にパンチ穴が検出された場合に、第1速度より遅い安全速度でレジスト制御動作を実行する搬送制御手法3を示している。この搬送制御手法では、パンチ穴が検出され、かつ、斜行姿勢が検出された場合には、レジスト制御動作を実行し、停止状態のレジストローラ22は、その後、第1速度より遅い安全速度で回転して原稿を搬送する。安全速度は、例えば、第1速度の2/3程度であり、第1速度=300mm/sの場合は、200mm/sとされる。
【0068】
そして、その後、原稿表面の読み取り前に、搬送速度を第1速度に戻して、画像読み取り処理に移行させる。以上の通り、この搬送制御手法では、斜行姿勢が矯正された後の原稿が、更にゆっくり搬送されるので、穴開き原稿が受けるダメージを効果的に抑制することができる。
【0069】
図11は、原稿の後端部にパンチ穴が検出された場合の搬送制御手法3の動作を示している。この場合は、反転移動時の原稿が、第1搬送センサ26の位置で斜行姿勢となっていた場合には、レジスト制御動作を実行し、停止状態のレジストローラ22は、その後、上記した安全速度で回転して原稿を搬送している。
【0070】
この場合も、斜行姿勢が矯正された後の原稿が、更にゆっくり搬送されるので、穴開き原稿が受けるダメージを効果的に抑制することができる。そして、その後、原稿裏面の読み取り前に、搬送速度を第1速度に戻して、画像読み取り処理に移行させる。
【0071】
以上、搬送制御手法1~搬送制御手法3を説明したが、特徴部分を整理して確認すると以下の通りである。
【0072】
先ず、搬送制御手法1を採用する場合には、図6(b)や図6(f)に示す通り、用紙搬送装置は、始点位置から終点位置まで、任意の速度で用紙を搬送可能な用紙搬送部と、搬送中の用紙の開口穴を検出可能な開口検出部と、必要時に搬送中の用紙を一時停止させて用紙の傾斜姿勢を矯正可能なレジスト部と、搬送中の用紙から画像情報を取得するか、或いは、搬送中の用紙に画像を形成する画像処理部と、を有し、前記画像処理部が機能するタイミングでは、所定の通常速度で用紙を搬送する第1手段と、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部の動作を禁止して、傾斜姿勢の用紙を一時停止させることなく、それまでの速度を維持して用紙を搬送する第2手段と、を設けている。従って、片面原稿や両面原稿に関して、原稿先端に穴が検知されると、レジスト制御が回避されると共に加速制御が回避され、通常速度で原稿が搬送される(特徴構成1)。また、図7(b)に示す通り、用紙搬送装置は、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙後端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部の動作を禁止して、傾斜姿勢の用紙を一時停止させることなく、それまでの速度を維持して用紙を搬送する第2手段を設けている。従って、両面原稿に関して、原稿後端に穴が検知されると、レジスト制御と加速制御が回避され、通常速度で原稿が搬送される(特徴構成2)。何れの場合も、穴開き原稿は、レジストローラ22に押し戻されることなく、第1速度(通常速度)で円滑に通過するので、原稿の先端や後端の穴が破れたり、ダメージを負う可能性が効果的に軽減される。
【0073】
また、図6(e)や図7(d)に示す通り、用紙搬送装置は、前記開口検出部が前記開口穴を検出した場合であっても、前記レジスト部によって一時停止される用紙先端部に前記開口穴が存在しない場合には、前記レジスト部を機能させ、一時停止された後の用紙を、前記通常速度を超える速度で搬送する第2手段を設けている。従って、原稿の先端部や後端部にパンチ穴が検知された場合でも、搬送方向の先端側に位置しない場合は、加速制御およびレジスト制御を行うので(特徴構成3)、処理速度を向上させることができ、斜行状態の原稿の姿勢を補正することもできる。
【0074】
次に、図6(c)、図6(g)、及び、図7(c)に示す通り、用紙搬送装置は、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部や用紙後端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記用紙搬送部を構成する複数のローラのうち前記終点位置への移送用に配置された最終ローラを、前記開口穴が通過した後は、前記通常速度を超える速度で用紙を搬送する第2手段を設けている。従って、搬送制御手法1を採用する場合には、原稿の先端側に穴が検知された場合でも、原稿先端が全てのローラを抜けた場合は、加速制御を行うので(特徴構成4)、原稿にダメージを与えることなく、処理速度を向上させることができる。
【0075】
一方、搬送制御手法2を採用する場合には、図8(b)や図9(b)に示す通り、用紙搬送装置は、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部や用紙後端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部によって一時停止された後の用紙を、前記通常速度と同一の速度で搬送する第2手段を設けている。従って、搬送方向の原稿先端側に穴が検出された場合に、レジスト制御を行う一方、その後、レジストローラ22をゆっくり通過させるので(特徴構成5)、斜行補正を実現しつつ原稿ダメージを軽減することができる。
【0076】
また、搬送制御手法3を採用する場合には、図10(b)や図11(b)に示す通り、用紙搬送装置は、前記開口検出部が、前記始点位置における用紙先端部や用紙後端部に、前記開口穴を検出した場合に機能して、前記レジスト部によって一時停止された後の用紙を、前記通常速度未満の速度で搬送する第2手段を設けている。従って、搬送方向の原稿先端側に穴が検出された場合に、レジスト制御を行う一方、その後、レジストローラ22を、更にゆっくり通過させるので(特徴構成6)、斜行補正を実現しつつ原稿ダメージを更に確実に軽減することができる。
【0077】
以上、穴開き原稿を自動的に検出することを前提に説明したが、特に、限定されるものではない。例えば、用紙搬送装置は、搬送されるべき用紙に開口穴があるか否かを含んだ情報のユーザ設定を受け付ける受付部を有し、前記ユーザ設定に対応して、前記レジスト部を機能させるか否か、及び、前記始点位置から前記終点位置に至るまでの用紙の搬送速度を決定する第2手段を設けてもよい。すなわち、穴開き原稿か否か、原稿のどの位置で穴が開いているか、原稿の強度がどの程度か、などはユーザが最も正確に把握しているので、原稿の状態をユーザから指示に基づいて、原稿の状態を把握するのも好適である(特徴構成7)。
【0078】
図12は、特徴構成7を具備する実施例を示す図面であり、開口穴の有無、及び、開口穴の位置を、ユーザに指定してもらうための表示画面を例示している。なお、タッチパネル式の表示画面を使用するのが典型的である。この方式を採ると、原稿搬送時にパンチ穴などの検知処理を実行する必要がなくなり、より確実に上記した各制御を実行することができる。
【符号の説明】
【0079】
SC スキャナ装置(用紙搬送装置)
11 原稿読取部(画像処理部)
18 原稿送り装置(用紙搬送部)
SNS 検知センサ(開口検出部)
22 レジストローラ(レジスト部)
PA 原稿(用紙)
図1
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図12