(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】誘導システム、誘導装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F41G 7/22 20060101AFI20230320BHJP
F42B 15/01 20060101ALI20230320BHJP
G01S 13/44 20060101ALI20230320BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
F41G7/22
F42B15/01
G01S13/44
G01S13/88 210
(21)【出願番号】P 2019120350
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】蜂須 裕之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-267743(JP,A)
【文献】特開2012-108109(JP,A)
【文献】特開2010-181074(JP,A)
【文献】特開平08-178598(JP,A)
【文献】特開2001-183092(JP,A)
【文献】特開平11-108599(JP,A)
【文献】米国特許第04142695(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41G 7/22
F42B 15/01
G01S 13/44
G01S 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を使用して目標を追跡する飛翔体と、
前記飛翔体を前記目標に誘導するための第1の照射電波を送出する誘導装置と
を具備する誘導システムであって、
前記誘導装置は、
前記第1の照射電波に対する前記目標からの第1の反射電波及び前記飛翔体からの第2の反射電波を受信する手段と、
前記第1及び第2の反射電波に基づいて、前記飛翔体及び前記目標を観測する手段と、 前記飛翔体及び前記目標に対する観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して前記目標に誘導するための指令情報を含む第2の照射電波を送出する手段と
を含
み、
前記誘導装置は、
前記飛翔体と複数の目標のいずれかとの観測処理を断続的に実行し、
前記観測処理の観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して誘導する目標を切り換え、
前記複数の目標は、第1の目標と第2の目標とを含み、
前記誘導装置は、
前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理を断続的に実行し、
前記観測処理の観測結果に基づいて、前記第2の目標の優先度が前記第1の目標の優先度よりも高く、前記飛翔体が前記第2の目標へのホーミングが必要と判定した場合には、前記第1の目標への誘導形態で使用されていたキャリア周波数で、前記第1の目標への照射から、前記第2の目標への照射へと切り換える、
誘導システム。
【請求項2】
前記誘導装置は、
前記飛翔体に対して前記目標に対する処理を指示するための指令情報を含む前記第2の照射電波を送出する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記飛翔体は、
前記誘導装置から送出される前記第1の照射電波に基づいて、前記目標からの前記第1の反射電波を受信して、
前記第1の照射電波を使用して前記第1の反射電波を検波し、
前記第1の反射電波に基づいて前記目標を検出して誘導動作を実行する、
請求項1に記載の誘導システム。
【請求項4】
前記誘導装置は、前記飛翔体及び前記目標を観測する観測処理のときに、前記第1の照射電波として連続送信波を送出し、
前記飛翔体は、前記第1の反射電波に基づいて前記目標を検出して誘導動作を実行するときに、前記目標から前記連続送信波に基づいた連続受信波を前記第1の反射電波として受信する、請求項1又は3に記載の誘導システム。
【請求項5】
前記誘導装置は、
前記飛翔体が前記目標に向けて飛翔している状態で、誘導開始する地点に到達している場合には、誘導開始指令を含む前記第2の照射電波を前記飛翔体に送出する、請求項1から4のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項6】
前記飛翔体は、
前記誘導装置から前記第2の照射電波を受信し、
前記第2の照射電波から前記誘導開始指令を復調すると、前記目標に向けて誘導動作に移行する、請求項5に記載の誘導システム。
【請求項7】
前記誘導装置は、
誘導開始指令を含む前記第2の照射電波を前記飛翔体に送出した後に、前記第1の照射電波の照射を継続し、
前記飛翔体の誘導動作の継続と並行して、前記飛翔体及び前記目標を観測する観測処理を継続する、請求項5又は6に記載の誘導システム。
【請求項8】
前記誘導装置は、
前記飛翔体の前記目標に対する誘導動作中に、前記飛翔体の最接近距離が規定距離以上の場合には、近接起爆指令を含む前記第2の照射電波を前記飛翔体に送出する、請求項2から7のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項9】
前記飛翔体は、
前記誘導装置からの前記近接起爆指令の受信に基づいて所定の処理を実行する、請求項8に記載の誘導システム。
【請求項10】
前記誘導装置は、
前記飛翔体の前記目標に対する誘導動作中に、前記飛翔体の最接近距離が規定未満の場合には、前記飛翔体の誘導動作を継続させる、請求項2から8のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項11】
前記誘導装置は、
前記飛翔体と複数の目標群の観測処理を実行し、
前記飛翔体が前記目標群に接近した場合に、近接起爆指令を含む前記第2の照射電波を前記飛翔体に送出する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項12】
電波を使用して、飛翔体を目標に誘導する誘導システムに適用する誘導装置であって、 前記飛翔体を前記目標に誘導するための第1の照射電波を送出する手段と、
前記第1の照射電波に対する前記目標からの第1の反射電波及び前記飛翔体からの第2の反射電波を受信する手段と、
前記第1及び第2の反射電波に基づいて、前記飛翔体及び前記目標を観測する手段と、 前記飛翔体及び前記目標に対する観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して前記目標に誘導するための指令情報を含む第2の照射電波を送出する手段と
、
前記観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して誘導する目標を切り換える手段と
を含
み、
前記目標は、第1の目標と第2の目標とを含み、
前記観測する手段は、前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理を断続的に実行し、
前記切り換える手段は、前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理の観測結果に基づいて、前記第2の目標の優先度が前記第1の目標の優先度よりも高く、前記飛翔体が前記第2の目標へのホーミングが必要と判定した場合には、前記第1の目標への誘導形態で使用されていたキャリア周波数で、前記第1の目標への照射から、前記第2の目標への照射へと切り換える、
誘導装置。
【請求項13】
電波を使用して、飛翔体を目標に誘導する誘導システムに適用する方法であって、
前記飛翔体を前記目標に誘導するための第1の照射電波を送出する処理と、
前記第1の照射電波に対する前記目標からの第1の反射電波及び前記飛翔体からの第2の反射電波を受信する処理と、
前記第1及び第2の反射電波に基づいて、前記飛翔体及び前記目標を観測する処理と、 前記飛翔体及び前記目標に対する観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して前記目標に誘導するための指令情報を含む第2の照射電波を送出する処理と
、
前記観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して誘導する目標を切り換える処理と
を含み、
前記目標は、第1の目標と第2の目標とを含み、
前記観測する処理では、前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理を断続的に実行し、
前記切り換える処理では、前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理の観測結果に基づいて、前記第2の目標の優先度が前記第1の目標の優先度よりも高く、前記飛翔体が前記第2の目標へのホーミングが必要と判定した場合には、前記第1の目標への誘導形態で使用されていたキャリア周波数で、前記第1の目標への照射から、前記第2の目標への照射へと切り換える、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、飛翔体の誘導システム、誘導装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波を使用して目標を検出、追跡する飛翔体を誘導する誘導システムには、各種の方式が開発されている。誘導システムは、誘導装置を搭載する飛翔体と、地上等に設置されている誘導装置(イルミネータ:illuminator)とが連携して飛翔体を誘導する。
【0003】
アクティブ方式(active radar homing)の誘導システムは、飛翔体がレーダを搭載しており、このレーダから電波を送信(照射)して、目標からの反射電波に基づいて目標を検出する。このアクティブ方式は、飛翔体側の主導による誘導が可能であるが、対処目標の多様化や発射後の状況変化に適応するためには、飛翔体の高機能化が要求される。具体的には、飛翔体は、小型でかつ高性能のレーダ等の搭載により、高機能化による価格上昇が不可避である。近年では、特に近距離範囲において、主要な対処目標が低価格の無人機等の場合には、費用対効果が著しく悪化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3707923号公報
【文献】特開平8-338698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクティブ方式の状況の解決策として、セミアクティブ方式(semi-active radar homing)の誘導システムの採用が挙げられる。セミアクティブ方式は、レーダからの電波送信(電波照射)を誘導装置(イルミネータ)が担うことで、飛翔体から電波送信の機能を削減できるため、高性能レーダの搭載を不要にして、飛翔体の低価格化を実現できる。しかし、単にセミアクティブ方式を採用するだけでは、多様化する目標への高い適応能力を有する誘導システムを実現できない。
【0006】
そこで、目的は、飛翔体の低価格化と共に、誘導装置の高機能化を実現することで、多様化する目標への高い適応能力を有する誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の誘導システムは、電波を使用して目標を追跡する飛翔体と、前記飛翔体を前記目標に誘導するための照射電波を送出する誘導装置とを備えた構成である。前記誘導装置は、前記照射電波に対する前記目標からの第1の反射電波及び前記飛翔体からの第2の反射電波を受信する手段と、前記第1及び第2の反射電波に基づいて、前記飛翔体及び前記目標を観測する手段と、前記飛翔体及び前記目標に対する観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して前記目標に誘導するための指令情報を含む照射電波を送出する手段とを含む。前記誘導装置は、前記飛翔体と複数の目標のいずれかとの観測処理を断続的に実行し、前記観測処理の観測結果に基づいて、前記飛翔体に対して誘導する目標を切り換える。前記複数の目標は、第1の目標と第2の目標とを含む。前記誘導装置は、前記飛翔体と前記第2の目標との観測処理を断続的に実行し、前記観測処理の観測結果に基づいて、前記第2の目標の優先度が前記第1の目標の優先度よりも高く、前記飛翔体が前記第2の目標へのホーミングが必要と判定した場合には、前記第1の目標への誘導形態で使用されていたキャリア周波数で、前記第1の目標への照射から、前記第2の目標への照射へと切り換える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に関する誘導システムの構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態に関する誘導装置及び飛翔体の誘導制御装置の構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態に関する誘導装置及び飛翔体の処理を説明するためのブロック図。
【
図4】実施形態に関する誘導システムの観測形態に対応する照射電波及び反射電波の状態を示す図。
【
図5】実施形態に関する誘導システムの誘導形態に対応する照射電波及び反射電波の状態を示す図。
【
図6】実施形態に関する誘導システムの指令形態に対応する照射電波及び反射電波の状態を示す図。
【
図7】実施形態に関する誘導システムの照射電波の一例及び反射電波の受信処理の一例を示す図。
【
図8】実施形態に関する飛翔体の信号処理部の処理を説明するためのフローチャート。
【
図9】実施形態に関する誘導システムの時系列動作を示す図。
【
図10】実施形態に関する誘導装置の時系列動作を示す図。
【
図11】実施形態の第1の変形例を説明するための図。
【
図12】実施形態の第2の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
[誘導システムの構成]
図1は、本実施形態の誘導システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、誘導システムは、空間内を目標7に向けて飛行する飛翔体1と、例えば地上に設置された誘導装置6から構成される。誘導装置6は、セミアクティブ方式の誘導システムにおけるイルミネータに相当する。
【0010】
飛翔体1は、誘導制御装置2、弾頭3、推進装置4、及び操舵装置5を搭載している。誘導制御装置2は、後述するように、誘導装置6と連携して飛翔体1を目標7に誘導し、及び弾頭3を起爆する各種制御を実行する。推進装置4は、飛翔体1を飛行させるための推進機構である。操舵装置5は、誘導制御装置2により算出される、目標7に誘導(ホーミング:homing)するための操舵信号に応じて飛翔体1の飛行を制御する。
【0011】
誘導装置6は、レーダを搭載し、当該レーダから照射電波10を、飛行中の飛翔体1及び目標7に向けて照射する。飛翔体1は、目標7から反射される反射電波12を受信すると共に、誘導装置6からの照射電波10も直接受信する。飛翔体1は、誘導装置6からの照射電波10を使用して、目標7からの反射電波12の検波処理等を実行する。
【0012】
飛翔体1と並行して、誘導装置6は、目標7から反射する反射電波13を受信すると共に、飛翔体1から反射する反射電波14を受信する。誘導装置6は、受信した反射電波13、14を処理して、飛翔体1と目標7の相対位置や相対速度等を観測する。また、誘導装置6は、飛翔体1に対する指令情報(後述する)を重畳した照射電波11を、飛翔体1に向けて照射する。このとき、飛翔体1は、誘導装置6から受信した電波が、当該指令情報を含む照射電波11であるか否かを、当該指令情報に含まれる特定符号等に基づいて常に判定している。飛翔体1の誘導制御装置2は、誘導装置6から受信した電波が照射電波11である場合に、重畳されている指令情報を復調して当該指令情報に対応する各種の処理を実行する。
【0013】
図2は、誘導装置6、及び飛翔体1の誘導制御装置2の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、誘導装置6は大別して、電波送受信系20と信号処理系27を含む。電波送受信系20は、情報変調器21、拡散変調器22、特定変調器23、照射切換器24、送信周波数変換器25、受信周波数変換器26、送信アンテナ29Aおよび受信アンテナ29Bを含む。
【0014】
誘導装置6では、動作形態が例えば「指令形態」の場合、即ち、指令情報を含ませた照射電波11を送出して飛翔体1に指令を出すときは、信号処理系27の信号処理器28は指令情報及び切換指示を出力する。
【0015】
電波送受信系20では、照射切換器24は、信号処理器28からの切換指示に応じて、(指令)側への切換を実行する。一方、情報変調器21は、信号処理器28から出力される指令情報を、例えばFSK(frequency shift keying:周波数シフトキーイング)等のデジタル変調を実行し、拡散変調器22に出力する。拡散変調器22は、拡散コードによる変調を実行する。さらに、電波送受信系20は、照射切換器24を経て、送信周波数変換器25でキャリア周波数を所定の周波数に変換し、送信アンテナ29Aから指令情報が重畳された照射電波11を空間に放射する。
【0016】
一方、飛翔体1の誘導制御装置2は、後方アンテナ30、前方アンテナ31、高周波処理部32、モノパルス合成器33、及び信号処理部34を含む。飛翔体1では、後方アンテナ30において、誘導装置6から照射される照射電波11を常に受信し、高周波処理部32により処理される。高周波処理部32は、周波数変換器35、拡散復調器36、及び情報復調器37を含み、受信した照射電波11から受信情報を復調する。情報復調器37は、拡散復調器36により指令判定が有ると復調された場合に、指令情報を復調して信号処理部34に出力する。
【0017】
飛翔体1の誘導制御装置2は、前方アンテナ31を経由して、誘導装置6から照射される照射電波10及び目標7からの反射電波12を受信する。モノパルス合成器33は、照射電波10及び反射電波12に基づいて、目標7を検出するため測角処理(方位角と高低角の算出)に必要なΣ系(合成)受信信号とΔ系(誤差)受信信号を生成する。高周波処理部32は、同期検波器(Σ系)38及び同期検波器(Δ系)39を含み、照射電波10を用いて同期検波を実行し、Σ検出信号及びΔ検出信号として信号処理部34に出力する。信号処理部34は、Σ検出信号とΔ検出信号を使用して、飛翔体1を目標7へホーミング(誘導)するための操舵信号を算出して操舵装置5に出力する。
【0018】
一方、誘導装置6では、動作形態が例えば「観測形態」または「誘導形態」の場合、即ち、照射電波10を送出する時には、信号処理系27の信号処理器28は、切換指示を照射切換器24に出力する。電波送受信系20では、照射切換器24は、信号処理器28からの切換指示に応じて、(観測又は誘導)側への切換を実行する。この場合、特定変調器23は、例えばステップドFM(stepped frequency modulation)波形と呼ばれる連続送信波を生成する。電波送受信系20は、当該連続送信波を照射電波10として、照射切換器24、送信周波数変換器25及び送信アンテナ29Aを経由して空間に放射する。
【0019】
誘導装置6は、動作形態が「観測形態」の場合には、送信アンテナ29Aから飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出して、それぞれから反射電波13と反射電波14を受信アンテナ29Bで受信する。信号処理器28は、受信した反射電波13と反射電波14を、受信周波数変換器26を経由して入力し、飛翔体1と目標7の位置、速度等を観測する観測処理を実行する。また、誘導装置6は、動作形態が「誘導形態」の場合には、送信アンテナ29Aから飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出し、後述するような誘導処理を実行する。
[誘導システムの動作]
以下、
図3から
図10を参照して、本実施形態の誘導システムの動作及び効果を説明する。
図3は、誘導装置6及び飛翔体1が実行する処理を説明するためのブロック図である。
図4から
図6は、誘導システムの動作形態に対応する照射電波及び反射電波の状態を示す図である。
図7は、誘導システムの照射電波の一例及び反射電波の受信処理の一例を示す図である。
【0020】
まず、
図3、
図4及び
図7を参照して、誘導システムの動作形態が「観測形態」の場合について説明する。
図3に示すように、「観測形態」では、誘導装置6は、信号処理系27が観測照射指示を実行し、飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出する(300、
図4を参照)。具体的には、信号処理器28は、切換指示を照射切換器24に出力する。電波送受信系20では、照射切換器24は、信号処理器28からの切換指示に応じて、観測側への切換を実行する(200)。
図4に示すように、誘導装置6は、目標7と飛翔体1から反射電波13と反射電波14を受信する。
【0021】
図3に示すように、具体的には、電波送受信系20は、受信アンテナ29Bを経由して目標7からの反射電波13を受信する(201)。信号処理器28は、受信した反射電波13を入力し、目標7の位置、速度等を観測する観測処理を実行する(301)。さらに、信号処理器28は、観測処理結果に基づいて、所定の発射諸元計算を実行し、当該計算結果を飛翔体1に送出する。飛翔体1は当該計算結果を入力し(100)、信号処理器28から送送出される発射指示に応じて発射・飛翔することになる(101)。
【0022】
誘導装置6は、発射された飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出する(304、202)。電波送受信系20は、受信アンテナ29Bを経由して目標7と飛翔体1のそれぞれから反射電波13、14を受信する(203)。信号処理器28は、受信した反射電波13、14を入力し、飛翔体1と目標7の位置、速度等を観測する観測処理を実行する(305)。
【0023】
ここで、
図7に示すように、誘導装置6は、動作形態が「観測形態」と「誘導形態」の場合には、電波送受信系20の特定変調器23により、前述のステップドFM波形と呼ばれる連続送信波を生成する。電波送受信系20は、当該連続送信波を照射電波10として、送信アンテナ29Aを経由して空間に放射する。これにより、誘導装置6における観測処理及び飛翔体1における目標7へのホーミング処理において、高い距離分解能を有する目標検出処理を実現することが可能となる。
【0024】
図7(A)に示すように、誘導装置6は、照射電波10として当該連続送信波を送信する。
図7(B)に示すように、誘導装置6は、目標7からの反射電波13として連続受信波を受信して、信号処理器28により目標7の位置、速度等を観測する観測処理を実行する。一方、
図7(C)に示すように、飛翔体1は、誘導装置6から照射される照射電波(連続送信波)10及び目標7からの反射電波(連続受信波)12を受信する。飛翔体1は、当該照射電波10及び反射電波12に基づいて、目標7を検出するため測角処理(方位角と高低角の算出)に必要なΣ系(合成)受信信号とΔ系(誤差)受信信号を生成する。さらに、飛翔体1は、照射電波10を用いて同期検波を実行し、データサンプルであるΣ系受信信号とΔ系受信信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform)処理(目標の速度検出)及び逆FFT(帯域合成)処理を実行して、Σ検出信号及びΔ検出信号を算出する。信号処理部34は、Σ検出信号とΔ検出信号を使用して、飛翔体1を目標7へホーミング(誘導)するためのレンジプロファイル(点で示す目標までの距離)に基づいた操舵信号を算出して操舵装置5に出力する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、「観測形態」では、誘導装置6は、飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出し、受信した反射電波13、14を入力し、飛翔体1と目標7の相対位置や相対速度等を観測する観測処理を実行する(305)。この場合、飛翔体1は、拡散復調器36において指令判定「なし」を出力し、特に制御動作を実行しない。
【0026】
図3に示すように、誘導装置6では、信号処理器28は、飛翔体1と目標7の相対位置や相対速度等の観測結果に基づいて、各種の判定処理を実行する(306)。判定処理は、会合経路判定処理、誘導開始判定処理及び接近判定処理を含む。
【0027】
会合経路判定処理は、現観測結果(305)に基づいて飛翔体1と目標7の予想会合点を算出し、発射時の予想会合点との比較を行う。信号処理器28は、当該比較結果が規定条件(距離、角度)以上に乖離している場合には、飛翔体1の経路変更が必要と判定して、経路変更の指令(操舵変更指令)を送出する(307)。電波送受信系20は、当該操舵変更指令を含む照射電波11を送信アンテナ29Aから飛翔体1に送信する(204)。飛翔体1は、当該操舵変更指令を受信すると(102)、操舵パターンを変更する(103)。
【0028】
誘導開始判定処理は、飛翔体1が誘導開始する地点に到達しているか否かを判定する(308)。信号処理器28は、飛翔体1が誘導開始する地点に到達していると判定した場合には、誘導開始指令を送出する(309)。電波送受信系20は、当該誘導開始指令を含む照射電波11を送信アンテナ29Aから飛翔体1に送信する(205)。飛翔体1は、当該誘導開始指令を受信すると(104)、動作形態が「誘導形態」と判定する。
【0029】
図3及び
図5に示すように、「誘導形態」では、誘導装置6は、飛翔体1と目標7に向けて照射電波10を送出する(310、206)。電波送受信系20は、受信アンテナ29Bを経由して目標7と飛翔体1から反射電波13と反射電波14を受信する(207)。信号処理器28は、受信した反射電波13、14を入力し、飛翔体1と目標7の位置、速度等を観測する観測処理を実行する(311)。
【0030】
ここで、誘導装置6から誘導開始指令が送出されたとき(310)、飛翔体1は、誘導形態」と判定し(104)、目標7からの反射電波12及び誘導装置6からの照射電波10を受信する処理に移行する(105、106)。具体的には、飛翔体1は、照射電波10及び反射電波12に基づいて、同期検波処理(Σ検出信号及びΔ検出信号の生成)及び目標検出処理(目標7の測角処理)を実行し、目標7へホーミング(誘導)するための操舵信号を算出して操舵装置5に出力する(107)。
【0031】
接近判定処理は、現観測結果(311)に基づいて、飛翔体1と目標7の相対位置と相対速度から最接近距離を算出し、最接近距離が規定距離以上(目標7を直撃しない距離)であるか否かを判定する(312)。信号処理器28は、飛翔体1の最接近距離が規定距離以上であると判定した場合には、飛翔体1における起爆タイマ時間を算出して、近接起爆指令を送出する(313)。電波送受信系20は、当該近接起爆指令を含む照射電波11を送信アンテナ29Aから飛翔体1に送信する(208)。
【0032】
飛翔体1は、当該近接起爆指令を受信すると(108)、それまでの動作を中止し、動作形態が「指令形態」と判定する。即ち、飛翔体1は、近接起爆指令による受信情報(起爆タイマ作動時間)を弾頭3へ設定し、弾頭起爆(109)までそのままの飛翔状態を維持する(
図2の信号処理部34の出力を参照)。
【0033】
図6に示すように、「指令形態」では、誘導装置6は、飛翔体1に向けて指令情報を重畳した照射電波11を送出する。飛翔体1は、後方アンテナ30において、誘導装置6から照射される照射電波11を常に受信し、受信した照射電波11から受信情報を復調する。飛翔体1は、指令判定が有ると復調された場合に、指令情報を復調して、当該指令情報に対応する処理を実行する。
【0034】
図8は、飛翔体1の信号処理部34の処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、飛翔体1の信号処理部34は、誘導装置6からの照射電波11に含まれる指令情報により弾頭3の起爆フラグがONであるか否かを判定する(S1)。信号処理部34は、起爆フラグがONである場合には(S1のYES)、起爆タイマの作動信号を弾頭3に出力する(S19)。
【0035】
一方、信号処理部34は、起爆フラグがOFFである場合には(S1のNO)、指令判定を入力する(S2)。信号処理部34は、指令判定が無く、指令情報を受信していない場合には(S3のNO)、誘導フラグがONであるか否かを判定する(S12)。ここで、飛翔体1は、指令情報を受信して(S3のYES)、当該指令情報が誘導開始指令であると判別された場合(S5)、動作形態が「誘導形態」と判定する。信号処理部34は、この判定に基づいて、誘導フラグをONにセットする(S8)。
【0036】
信号処理部34は、誘導フラグがONであれば(S12のYES)、前述したように、Σ検出信号及びΔ検出信号を入力し(S15)、目標7の測角処理を含む誘導信号を算出する計算処理を実行する(S16)。さらに、信号処理部34は、誘導信号に基づいて目標7へホーミング(誘導)するための操舵信号を算出する操舵指令計算を実行して(S17)、操舵信号を操舵装置5に出力する(S18)。
【0037】
また、飛翔体1は、指令情報を受信して(S3のYES)、当該指令情報が経路変更指令であると判別された場合(S5)、操舵情報として操舵パターンを取得する(S9)。信号処理部34は、誘導装置6からの経路変更指令に基づいて操舵パターンを変更し(S10)、誘導フラグをOFFにセットする(S11)。これにより、信号処理部34は、誘導フラグがOFFであれば(S12のNO)、前述したように、誘導装置6からの操舵変更指令に基づいて変更される操舵パターンを使用して操舵指令計算を実行し(S13)、操舵信号を操舵装置5に出力する(S14)。
【0038】
信号処理部34は、当該指令情報として近接起爆指令を受信すると(S5)、それまでの動作を中止し、起爆情報として起爆時間を取得する(S6)。信号処理部34は、起爆フラグをONにセットする。前述したように、信号処理部34は、起爆フラグがONである場合には(S1のYES)、起爆タイマの作動信号(起爆タイマ作動時間)を弾頭3に出力する(S19)。飛翔体1は、弾頭起爆までそのままの飛翔状態を維持する(
図9を参照)。
【0039】
図9及び
図10はそれぞれ、誘導システム及び誘導装置6の動作を時系列的に示す図である。
図9に示すように、誘導装置6は、飛翔体1を発射した後のホーミング前(誘導動作前)の期間において、「観測形態」の電波照射を実行する。即ち、誘導装置6は、照射電波10を送出して、飛翔体1と目標7の相対速度や相対距離を観測する観測処理を実行する。この観測処理は、連続的又は間欠的のいずれでもよい。
【0040】
誘導装置6は、観測結果に基づいて会合経路判定を実行し、会合点が大きく変化すると判定した場合には「指令形態」の電波照射を実行する。即ち、誘導装置6は、飛翔体1に向けて経路変更のための操舵変更指令(操舵パターン情報を含む)を重畳した照射電波11を送出する。飛翔体1は、誘導装置6からの照射電波11を受信すると、「指令有」として、操舵変更指令(操舵パターン情報)を復調する。飛翔体1は、操舵変更指令に応じて、更新される操舵パターン情報に基づいて新たな会合点方向へ飛翔する。
【0041】
次に、誘導装置6は、誘導開始判定を実行し、飛翔体1が誘導開始する地点に到達しているか否かを判定する。即ち、誘導装置6は、到達したと予想される時刻になると、「指令形態」の電波照射、誘導開始指令を重畳した照射電波11を送出する。飛翔体1は、当該誘導開始指令を受信すると、動作形態が「誘導形態」と判定し、ホーミングに移行する。
【0042】
誘導装置6は、誘導開始指令の送出後、「誘導形態」の照射電波10の照射を継続する。一方、飛翔体1は、誘導開始指令の受信を確認した以降、目標7からの反射電波12と誘導装置6からの照射電波10との同期検波による反射波検出処理を開始し、新たな指令を受信するまで当該処理を継続する。これにより、飛翔体1の目標7へのホーミングを実現する(ホーミング期間)。このホーミング期間中、誘導装置6は、照射電波10の照射に対する飛翔体1からの反射電波14及び目標7からの反射電波13の受信を継続して、「観測形態」として並行に観測処理を実行する。
【0043】
以上のように、ホーミング期間中、誘導装置6は、飛翔体1の目標7へのホーミングを実現しつつ、目標7と飛翔体1の観測処理も継続する。従って、飛翔体1は、目標7に対する誘導飛翔(ホーミング)を継続する。誘導装置6は、接近判定処理を実行し、飛翔体1の最接近距離が規定距離以上であると判定した場合には、目標7に対する直撃が困難として、近接起爆指令を送出する。即ち、誘導装置6は、起爆タイマ時間を含む近接起爆指令を重畳した照射電波11を送出する。
【0044】
一方、飛翔体1は、誘導装置6から近接起爆指令を受信すると、起爆タイマ作動時間を弾頭3に設定し、当該タイミングで弾頭を起爆させる。これにより、飛翔体1と目標7が最も接近すると予想された地点において、弾頭3の起爆を実現できる。
【0045】
図10に示すように、誘導装置6は、接近判定処理を実行し、飛翔体1の最接近距離が規定距離未満であると判定した場合には、近接起爆指令は送出せずに、直撃(命中)までの期間、観測処理を伴う「誘導形態」を継続する(400)。
【0046】
以上のように本実施形態の誘導システムであれば、レーダからの電波照射を誘導装置(イルミネータ)が担うセミアクティブ方式を適用し、当該誘導装置の高機能化を実現することができる。これにより、飛翔体の低価格化と共に、多様化する目標への高い適応能力を有する誘導システムを実現できる。
【0047】
具体的には、飛翔体から電波照射の機能を削減できるため、高性能レーダの搭載を不要にして、飛翔体の低価格化を実現できる。さらに、飛翔体の誘導制御装置から自律判定機能、目標変換判定機能(オーバーキル回避機能等)及び直撃判定機能を削除できる。また、誘導装置の高機能化により、近接起爆指令を送出する指令形態を実現できるため、飛翔体から近接検知装置を削減できる。また、飛翔体から専用の通信装置を削減できる。
【0048】
なお、本実施形態の誘導装置は、地上に設置される地上装置でもよいし、また、船舶等に搭載される搭載装置でもよい。
[第1の変形例]
図11(A)、(B)は、本実施形態の第1の変形例に関する図である。なお、本変形例においても、本実施形態の誘導システムにおける基本的構成及び動作は同様であるため、説明は省略する。
【0049】
図11(A)に示すように、本変形例では、当初の目標#1(7#1)の「誘導形態」の動作(ホーミング#1)中に、誘導装置6は、断続的に別の目標#2(7#2)に対する観測処理501が可能である。ここで、誘導装置6は、別の目標#2を観測するときにはキャリア周波数等が異なるため、飛翔体1は目標#1からの反射電波を観測できず、規定フレーム以下の期間に観測結果(500)を得られないため、現時点の飛翔方向を継続することになる。即ち、飛翔体1は、目標#1へのホーミング#1を継続する。
【0050】
一方、誘導装置6は、当該目標#2への観測結果に基づいて、例えば目標#2の優先度が高く、飛翔体1が目標#2へのホーミング#2が必要と判定した場合には、目標#1への誘導形態で使用されていたキャリア周波数で目標#1への照射から目標#2への照射へと切換える(照射方向の変更)。これにより、飛翔体1は動作中断することなく、目標#1へのホーミング#1から目標#2へのホーミング#2へと移行が可能となる。このような、ホーミング対象の目標への変換は、目標#1が他の飛翔体により撃破されたときなどに効果があり、オーバーキルの回避が可能となる。
【0051】
ここで、
図11(B)に示すように、誘導装置6は、地上装置ではなく、例えば車両に搭載されている搭載装置であり、移動可能であってもよい。誘導装置6は、当初の目標7#1からの反射電波#1に基づいたホーミング#1中に、別の目標7#2からの反射電波#2に基づいたホーミング#2に移行した場合である。
[第2の変形例]
図12(A)、(B)は、本実施形態の第2の変形例に関する図である。なお、本変形例においても、本実施形態の誘導システムにおける基本的構成及び動作は同様であるため、説明は省略する。
【0052】
図12(A)に示すように、本変形例では、誘導装置6は、特定の目標方向へ飛翔体1を発射後に、「誘導形態」の電波照射を実行せずに、断続的に目標群7#1~7#3の観測処理を継続する。誘導装置6は、所定の操舵情報を送出して、飛翔体1を飛翔させる。さらに、誘導装置6は、目標密集度が高いと観測されたときには、特定の目標への「誘導形態」は実行せずに、目標群への飛翔経路を取るように操舵変更指令を照射電波11に含ませて送出する。この後、誘導装置6は、飛翔体1が目標群(高密集の中央付近)への接近判定に基づいて、近接起爆指令を含む照射電波11を送出する。
【0053】
即ち、
図12(B)に示すように、飛翔体1は、誘導装置6から近接起爆指令を含む照射電波11を受信すると、目標群7#1~7#3の高密集の中央付近600において、弾頭3の起爆を実行する。本変形例によれば、高密集度の複数目標7#1~7#3への弾頭起爆による対処も実現可能である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…飛翔体、2…誘導制御装置、3…弾頭、4…推進装置、5…操舵装置、
6…誘導装置、7…目標、20…電波送受信系、21…情報変調器、
22…拡散変調器、23…特定変調器、24…照射切換器、
25…送信周波数変換器、26…受信周波数変換器、27…信号処理系、
29A…送信アンテナ、29B…受信アンテナ、30…後方アンテナ30、
31…前方アンテナ、32…高周波処理部、33…モノパルス合成器、
34…信号処理部、35…周波数変換器、36…拡散復調器、37…情報復調器、
38…同期検波器(Σ系)、39…同期検波器(Δ系)。