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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】洗浄液及びクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20230320BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230320BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C11D7/50
B41J2/165 401
C11D17/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019136821
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021020985
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一行
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤Aと、炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤Bとを含み、前記炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤はエーテル結合を含まず、前記炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤は、エーテル結合を含まない、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置用の洗浄液。
【請求項2】
前記脂肪酸モノエステル系溶剤Aが、炭素数20以下の脂肪酸モノエステル系溶剤を含む、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記脂肪酸モノエステル系溶剤Aが、炭素数12以上の脂肪酸モノエステル系溶剤を含む、請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記脂肪酸モノエステル系溶剤AをR-COO-Rで表したときに、前記脂肪酸モノエステル系溶剤Aが、R又はRが炭素数6以下である脂肪酸モノエステル系溶剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
前記アルコール系溶剤Bが、23℃における粘度が10mPa・s以下の炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項6】
23℃における粘度が20mPa・s以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤が、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、3-ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、及びベンジルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種を含み、
前記炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤が、1,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びシクロヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項8】
油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズルプレートに、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄液を付着させる工程と、
前記洗浄液を付着させたノズルプレートをワイプする工程とを含む、クリーニング方法。
【請求項9】
前記洗浄液を前記ノズルプレートに付着させる工程が、前記インクジェットヘッドのノズルから前記洗浄液を押し出すことを含む、請求項に記載のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗浄液及びクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
印刷方式の1つであるインクジェット方式は、一般的に、小さい体積の液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して記録媒体に付着させることにより画像を形成する。一般的に、パージ操作等でノズルプレート上に残ったインクがノズルの吐出部を塞いでしまうことを回避するため、ノズルプレートのワイピング等のクリーニングが行われている。
【0004】
特許文献1は、非水系インクを用いたインクジェット記録装置のクリーニング方法を開示しており、所定の構造のグリコールエーテル等の溶剤を少なくとも一種類含む含浸液を用いることを開示している。
【0005】
通常、インクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズルプレートには、フッ素コート処理等により撥インク性が付与される。しかしながら、例えば、搬送した用紙が接触することによりノズルプレートに傷が発生した場合には、撥インク性が低下し、クリーニングを行ってもインクが除去され難くなる。そのようにして付着したインクが乾燥することによってインクの乾燥物(以下、固着物という)が形成され、インクの吐出不良につながることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-214417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態の一目的は、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のノズルプレートの撥インク性を改善することが可能な、洗浄液、及び、クリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態により、炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤Aと、炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤Bとを含む、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置用の洗浄液が提供される。
本発明の他の実施形態により、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズルプレートに、上記実施形態の洗浄液を付着させる工程と、前記洗浄液を付着させたノズルプレートをワイプする工程とを含む、クリーニング方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のノズルプレートの撥インク性を改善することが可能な洗浄液、及び、クリーニング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態が本発明を限定することはない。
【0011】
本発明の一実施形態の洗浄液は、炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤A(以下、「脂肪酸モノエステル系溶剤A」という場合がある。)と、炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤(以下、「アルコール系溶剤B1」という場合もある。)及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤(以下、「アルコール系溶剤B2」という場合もある。)からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤B(以下、「アルコール系溶剤B」という場合もある。)とを含む。この洗浄液は、油性インクジェットインクを用いる印刷装置用として好ましく用いることができる。
この洗浄液によれば、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のノズルプレートの撥インク性を改善することができる。
【0012】
以下、油性インクジェットインクを、単に「インク」又は「油性インク」と称することがある。
【0013】
インクジェットヘッドのノズルプレートに付着した油性インクジェットインクが、ノズルプレート表面のワイピング等のクリーニングを行っても除去されずに残って乾燥し、固着物としてノズルプレートに固着する場合がある。このような固着物がノズルプレートに固着している場合、ノズルプレートの撥インク性が低下していることが多い。ノズルプレートの撥インク性が低下する理由として、ノズルプレートに固着物が固着していること、及び、ノズルプレートの固着物が油性インクジェットインクの有機溶剤等の油分を保持していることが考えられる。
【0014】
洗浄液が炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤Aを含むことで、固着物を除去しやすくすることができる。これは、炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、例えば、石油系炭化水素溶剤と比較して、極性が高く、かつ、炭素数がより大きい脂肪酸モノエステル系溶剤と比較して粘度が低い傾向があるためと考えられる。また、粘度が低い傾向があることから、洗浄液の粘度を低くしやすい。極性が高い溶剤は、固着物の再溶解を促すので固着物を剥がしやすく、さらに、溶剤の粘度が低いほど、固着した部分に浸透しやすくなるので固着物を剥がしやすい。
【0015】
固着物を除去しても、顔料粒子等の油分を保持した残渣がノズルプレートに残ると、ノズルプレートの撥インク性に影響しうる。炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤(アルコール系溶剤B1)及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤(アルコール系溶剤B2)からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤Bは、極性が高い傾向を有するが、このようなアルコール系溶剤Bを含むことで、ノズルプレート上の残渣をも除去しやすくすることができると考えられる。
【0016】
このようにして固着物が除去され、その残渣も除去されると、撥インク性を改善することができる。
【0017】
以上のように、脂肪酸モノエステル系溶剤Aと、アルコール系溶剤Bとを含む洗浄液を用いる場合、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のノズルプレートの撥インク性を改善することができる。
【0018】
洗浄液は、炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤A(脂肪酸モノエステル系溶剤A)を含むことが好ましい。
【0019】
固着物の除去及びノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aの炭素数は28以下が好ましい。脂肪酸モノエステル系溶剤Aの炭素数は、固着物の除去の観点から、炭素数24以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、18以下がさらに好ましい。
【0020】
固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aの炭素数は6以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。
【0021】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aの炭素数は、例えば、6~28が好ましく、10~24がより好ましく、12~20がより好ましく、12~18がさらに好ましい。
【0022】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸とアルコールとのモノエステルであるが、固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、R-COO-Rで表したときに、R又はRが炭素数6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。R又はRの炭素数が上記範囲内である場合、固着物の溶解をより効率的に促すことができる傾向がある。例えば、R及びRのうちのいずれかの炭素数が上記範囲内であってよいが、Rの炭素数が上記範囲内であることがより好ましい。
【0023】
及びRの炭素数はそれぞれ独立に1以上であってよく、臭気等の観点から、R又はRが炭素数2以上であることがより好ましい。例えば、R又はRが炭素数1~6であることが好ましく、炭素数2~4であることがより好ましい。R及びRのうちのいずれかの炭素数が上記範囲内であってよいが、Rの炭素数が上記範囲内であることがより好ましい。
【0024】
固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、例えば、炭素数が24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下であり、かつ、R又はRが炭素数6以下であることが好ましい。
【0025】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aとしては、飽和脂肪酸とアルコールとのモノエステル、不飽和脂肪酸とアルコールのモノエステル、または、それらの組み合わせを用いてもよい。
【0026】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、R-COO-Rで表したとき、R及びRはそれぞれ独立的にアルキル基、またはアルケニル基であることが好ましい。
【0027】
例えば、Rがアルキル基またはアルケニル基であり、Rがアルキル基であってもよい。
【0028】
及びRは、それぞれ独立に直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基であってよい。例えば、R及びRのうち一方が直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R及びRのうち他方が炭素数1又は2以上の側鎖を有してもよい。また、R及びRの両方が炭素数1又は2以上の側鎖を有してもよい。
【0029】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aとしては、例えば、ヘキサン酸ヘキシル、オクタン酸エチル、オクタン酸イソプロピル、オクタン酸ブチル、オクタン酸イソアミル、2-エチルヘキサン酸ブチル、2-エチルヘキサン酸イソノニル、2-エチルヘキサン酸セチル、ノナン酸エチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸イソプロピル、デカン酸ブチル、デカン酸イソアミル、デカン酸デシル、ウンデカン酸メチル、ウンデカン酸エチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸イソアミル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ベンジル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソブチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸イソブチル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸オクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソデシル等が挙げられる。
【0030】
固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aの23℃における粘度は、25mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましく、15mPa・s以下がさらに好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。
【0031】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
固着物の除去及びノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、50.0質量%以上であることが好ましい。脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、アルコール系溶剤Bに比べて、油性インクジェットインクに用いられる溶剤と混和性が高い傾向があり、この観点からも、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して50.0質量%以上であることが好ましい。
【0033】
固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、55.0質量%以上であることがより好ましく、80.0質量%以上であることがさらに好ましく、90.0質量%以上であることがさらに好ましく、95.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
ノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
固着物の除去及びノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、50.0~99.9質量%であることが好ましく、55.0~99.9質量%であることがより好ましく、80.0~99.9質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.9質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.5質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.0質量%であることがさらに好ましく、95.0質量%~99.0質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
固着物の除去及びノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、洗浄液全量に対し、50.0質量%以上であることが好ましい。
【0037】
固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、洗浄液全量に対して、55.0質量%以上であることがより好ましく、80.0質量%以上であることがさらに好ましく、90.0質量%以上であることがさらに好ましく、95.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
ノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、洗浄液全量に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aは、洗浄液全量に対して、例えば、50.0~99.9質量%であることが好ましく、55.0~99.9質量%であることがより好ましく、80.0~99.9質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.9質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.5質量%であることがさらに好ましく、90.0~99.0質量%であることがさらに好ましく、95.0質量%~99.0質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
洗浄液は、炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤(アルコール系溶剤B1)及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤(アルコール系溶剤B2)からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤B(アルコール系溶剤B)を含むことが好ましい。
【0041】
アルコール系溶剤B1は、エーテル結合を含まないことが好ましい。アルコール系溶剤B2は、エーテル結合を含まないことが好ましい。アルコール系溶剤Bは、エーテル結合を含まないことが好ましい。
【0042】
ノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、アルコール系溶剤Bは、アルコール系溶剤B1を含むことがより好ましい。
【0043】
ノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、アルコール系溶剤B1の炭素数は9以下が好ましく、6以下がより好ましい。脂肪酸モノエステル系溶剤Aとの相溶性の観点から、アルコール系溶剤B1の炭素数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
アルコール系溶剤B1の炭素数は、例えば、2~9がより好ましく、2~6がさらに好ましく、例えば3~6であってもよい。
【0044】
ノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、アルコール系溶剤B1の23℃における粘度は、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましく、15mPa・s以下がさらに好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。
【0045】
ノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、アルコール系溶剤B1は、例えば、炭素数が2~9、より好ましくは2~6であり、かつ、23℃における粘度が30mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは15mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下であることが好ましい。
【0046】
ノズルプレートの撥インク性の改善の観点から、アルコール系溶剤B2の炭素数は6以下が好ましい。脂肪酸モノエステル系溶剤Aとの相溶性の観点から、アルコール系溶剤B2の炭素数は4以上が好ましい。アルコール系溶剤B2の炭素数は、例えば、4~6がより好ましく、5~6がさらに好ましい。
【0047】
アルコール系溶剤B2の23℃における粘度は、80mPa・s以下であることが好ましい。
【0048】
アルコール系溶剤B1としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、3-ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0049】
アルコール系溶剤B2としては、例えば、1,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0050】
アルコール系溶剤Bには、アルコール系溶剤B1及びB2のいずれか一方のみを用いてよく、その場合、アルコール系溶剤B1又はB2について、その1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコール系溶剤Bには、アルコール系溶剤B1を1種または2種以上と、アルコール系溶剤B2を1種または2種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
アルコール系溶剤Bは、ノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、アルコール系溶剤Bは、固着物の除去の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計に対して、50.0質量%以下であることが好ましく、45.0質量%以下であることがより好ましく、20.0質量%以下であることがさらに好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
アルコール系溶剤Bは、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計
に対して、例えば、0.1~50.0質量%であることが好ましく、0.1~45.0質量%以下であることがより好ましく、0.1~20.0質量%であることがさらに好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましく、0.5~10.0質量%であることがさらに好ましく、1.0~10.0質量%であることがさらに好ましく、1.0~5.0質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
アルコール系溶剤Bは、ノズルプレートの撥インク性改善の観点から、洗浄液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、アルコール系溶剤Bは、固着物の除去の観点から、洗浄液全量に対して、50.0質量%以下であることが好ましく、45.0質量%以下であることがより好ましく、20.0質量%以下であることがさらに好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
アルコール系溶剤Bは、洗浄液全量に対して、例えば、0.1~50.0質量%であることが好ましく、0.1~45.0質量%以下であることがより好ましく、0.1~20.0質量%であることがさらに好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましく、0.5~10.0質量%であることがさらに好ましく、1.0~10.0質量%であることがさらに好ましく、1.0~5.0質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
ノズルプレートの撥インク性改善の観点から、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計は、洗浄液全量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、99.5質量%以上であることがさらに好ましく、99.9質量%以上であることがさらに好ましい。脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計は、洗浄液全量の100質量%であってもよい。
【0056】
脂肪酸モノエステル系溶剤Aとアルコール系溶剤Bとを併用することにより、脂肪酸モノエステル系溶剤Aとアルコール系溶剤Bとの相溶効果により洗浄液粘度を低くすることができる傾向がある。例えば比較的粘度が高い脂肪酸モノエステル系溶剤Aまたはアルコール系溶剤Bを使用したとしても、脂肪酸モノエステル系溶剤Aとアルコール系溶剤Bとの併用により洗浄液の粘度を低くすることができると、洗浄液の対流が促されやすく、このため、固着物が洗浄液を含んで柔らかくなりやすいため、固着物の溶解を促しやすいと推測される。
【0057】
洗浄液は、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、石油系炭化水素溶剤などの他の溶剤、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。石油系炭化水素溶剤としては、例えば、後述する油性インクジェットインクに用いることができる石油系炭化水素溶剤の中から、1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0058】
洗浄液の23℃における粘度は、固着物の除去の観点から、20mPa・s以下が好ましい。洗浄液の23℃における粘度が20mPa・s以下であると、洗浄液の対流が促されやすく、このため、固着物が洗浄液を含んで柔らかくなりやすいため、固着物の溶解を促しやすいと推測される。固着物の除去の観点から、洗浄液の23℃における粘度は、15mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。一方、洗浄液保持の観点から、洗浄液の23℃における粘度は、0.5mPa・s以上が好ましく、1mPa・s以上がより好ましい。例えば、洗浄液の23℃における粘度は、0.5~20mPa・sが好ましく、0.5~15mPa・sがより好ましく、1~10mPa・sがさらに好ましい。
【0059】
例えば、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bの合計が、洗浄液全量に対して50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、又は99.9質量%以上であり、かつ、洗浄液の23℃における粘度が、20mPa・s以下、15mPa・s以下、又は10mPa・s以下であることが好ましい。
【0060】
この洗浄液は、油性インクジェットインクを用いる印刷装置に好ましく用いることができる。
【0061】
油性インクジェットインクは、色材及び非水系溶剤を含むことが好ましい。
【0062】
インクは、色材として顔料、染料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。洗浄液は、顔料を含むインクを用いた場合に、より好ましく用いることができる。
【0063】
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
顔料の分散形態は、顔料を非油溶性樹脂で被覆したいわゆるカプセル顔料や着色樹脂粒子、及びそれらを顔料分散剤で分散させた分散体であってもよく、顔料表面に官能基を化学結合させたいわゆる自己分散顔料の分散体や、顔料分散剤を顔料表面に直接吸着させて分散させた分散体であってもよい。
【0065】
顔料の平均粒子径としては、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
【0066】
インク中で顔料を安定して分散させるために、顔料とともに顔料分散剤を用いることができる。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
【0067】
顔料分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名);BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);楠本化成株式会社製「ディスパロンKS-860、KS-873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA-202、OA-600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、9077」(いずれも商品名);クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0068】
顔料分散剤は、上記顔料を十分にインク中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し顔料分散剤を0.1~5で配合することができ、好ましくは0.1~1である。また、顔料分散剤は、インク全量に対し、0.01~10質量%で配合することができ、好ましくは0.01~5質量%である。
油性インクには、顔料分散剤を含む樹脂成分は、インク全量に対し10質量%以下で配合することができ、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。これによって、インク粘度の上昇を防止し、吐出性能をより改善することができる。
【0069】
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。油性インクでは、染料は、インクの非水系溶剤に親和性を示すことで、貯蔵安定性がより良好となるため、油溶性染料を用いることが好ましい。
油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
【0071】
インクには、非水系溶剤が含まれることが好ましい。
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤のいずれも使用できる。なお、本実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0072】
非極性有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
【0073】
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
【0074】
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
【0075】
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
【0076】
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
【0077】
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル(炭素数22)、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2-オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16~30の脂肪酸エステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
【0078】
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0079】
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0080】
上記各成分に加えて、油性インクには、本発明の効果を損なわない限り、各種添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
【0081】
インクは、色材及び非水系溶剤を含む各成分を混合することで作製することができる。
好ましくは、各成分を一括ないし分割して混合及び撹拌してインクを作製することができる。具体的には、ビーズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより調製できる。
【0082】
油性インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、一層好ましい。
【0083】
洗浄液が使用されるインクジェットインク印刷装置の印刷方式としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよいが、ピエゾ方式であることが好ましい。インクジェット印刷装置を用いた印刷方法は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
【0084】
本発明の一実施形態のクリーニング方法は、油性インクジェットインクを用いるインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズルプレートに、上記実施形態の洗浄液を付着させる工程(以下、「洗浄液付着工程」という場合もある。)と、洗浄液を付着させたノズルプレートをワイプする工程(以下「ワイプ工程」という場合もある。)とを含む、クリーニング方法である。
【0085】
このクリーニング方法によって、油性インクジェットインクを用いるインクジェットヘッドのノズルプレートの撥インク性を改善することができる。
【0086】
洗浄液付着工程とワイプ工程とは、別々に行われてもよく、1つの動作で行われてもよい。
【0087】
洗浄液付着工程において、洗浄液を付着させる方法はとくに限定されない。
【0088】
洗浄液付着工程において、洗浄液は、例えば、インクジェットヘッドのノズルプレートに、塗布又は噴霧等により付着させてもよい。塗布により洗浄液を付着させる方法では、例えば、後述するように、洗浄液を含浸させた綿棒または布等を用いてもよい。
【0089】
洗浄液付着工程において、洗浄液は、例えば、インクジェットヘッドのノズルから押し出す(パージ)ことでノズルプレートに付着させてもよい。洗浄液を、インクジェットヘッドのノズルから押し出すことでノズルプレートに付着させる場合、インクジェットヘッドは、2種類以上の液体を吐出可能なものであってよい。例えば、インクを吐出する第1の吐出部と洗浄液を吐出する第2の吐出部とを備えたインクジェットヘッドを用いてもよく、第1の吐出部に油性インクジェットインクが、第2の吐出部に洗浄液が、それぞれ導入されていてもよい。一実施形態において、例えば、固着物の固着を防ぐ観点から、インクジェットヘッドの定期的クリーニング等において洗浄液を用いてよく、その際、例えば、インクジェットヘッドのノズルから洗浄液をパージしてもよい。また、洗浄液とインクを同時にパージしてもよい。洗浄液のパージ量を多くしてノズルプレート上で洗浄液とインクを混ぜることにより、見かけ上色材量が少なくなるので固着した時の固着量も少なくなることから、固着物が所定の量になるまでの時間を遅くすることができる。
【0090】
ワイプ工程において、ノズルプレートをワイプする方法は特に限定されない。例えば、弾性変形可能なゴム等のワイパを用いてワイプしてもよい。または、後述する綿棒または布等を用いてもよい。
【0091】
洗浄液付着工程及びワイプ工程の1つの例としては、洗浄液を含浸させた綿棒又は布等を用いて、インクジェットヘッドのノズルプレートをなでるようにワイプすることが挙げられる。これにより、洗浄液付着工程とワイプ工程とを行うことができる。
【0092】
固着物の除去及びノズルプレートの撥インク性改善の観点から、クリーニング方法は、ノズルプレートに付着させた洗浄液を、ノズルプレート上に所定時間、例えば10秒以上、保持することをさらに含むことが好ましい。このようにして固着物の溶解を促したのち、ワイプ工程を行うことが好ましい。
【0093】
洗浄液をノズルプレート上に保持する時間は、10秒以上が好ましく、1分以上がより好ましく、3分以上が好ましく、5分以上がさらに好ましい。一方、洗浄液をノズルプレート上に保持する時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましく、20分以下がさらに好ましい。洗浄液をノズルプレート上に保持する時間は、例えば、10秒~60分であってよく、1分~60分がより好ましく、3分~30分がさらに好ましく、5~20分がさらに好ましい。
【実施例
【0094】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の実施例及び比較例を通して、特に説明のない限り、共通する成分は同一のものである。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0095】
<脂肪酸モノエステル系溶剤Aの合成>
合成品の脂肪酸エステル系溶剤Aは、以下の手順にしたがって合成した。
四つ口フラスコに、デカン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)と2-エチルヘキサノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)をモル比で1:1となるように入れて混合撹拌し、均一な溶液を得た。四つ口フラスコにディーンスターク装置を装着し、仕込んだ原材料が反応して水が発生したら取り除けるようにした。均一な溶液が入っている四つ口フラスコに、さらに触媒として硫酸を適量加え、系全体を加熱した。加熱温度は100℃に設定した。加熱反応時間は4時間に設定した。反応後、未反応の原材料や不純物を取り除くため、得られた溶液を減圧蒸留し、デカン酸2-エチルヘキシルを得た。
【0096】
<インク1の作製>
インク1の処方を表1に示す。
表1に示す配合量にしたがって、表1に記載される原材料(顔料、顔料分散剤、及び非水系溶剤)を混合し、ビーズミル「ダイノーミルKDL-A」(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で、十分に顔料を分散した。続いて、メンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、インクを得た。
【0097】
表1に記載される原材料は、以下の通りである。
【0098】
(1)顔料
カーボンブラック:三菱ケミカル株式会社製「MA8」
【0099】
(2)顔料分散剤
ソルスパース13940:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940」
【0100】
(3)非水系溶剤
石油系炭化水素溶剤:株式会社MORESCO製「モレスコホワイト P-60」
【0101】
【表1】
【0102】
<洗浄液の作製>
実施例1~21及び比較例1~6の洗浄液の処方を表2~7に示す。なお、比較例7では、洗浄液を用いなかった。
表2~7に示す配合量にしたがって、表2~7に示す原材料を混合撹拌して実施例1~21及び比較例1~6の洗浄液を調製した。
【0103】
表2~7に記載される原材料は、以下の通りである。
【0104】
(1)脂肪酸モノエステル系溶剤
ラウリン酸メチル:花王株式会社製「エキセパールML-85」
ミリスチン酸イソプロピル:花王株式会社製「エキセパールIPM」
デカン酸2-エチルヘキシル:合成品
オレイン酸イソブチル:花王株式会社製「ビニサイザー30」
イソノナン酸イソトリデシル:日清オイリオグループ株式会社製「サラコス913」
ステアリン酸イソオクチル:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL STO」
ステアリン酸イソトリデシル:花王株式会社製「エキセパールTD-S」
【0105】
(2)アルコール系溶剤
エタノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
イソプロパノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
ヘキサノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
3,5,5-トリメチルヘキサノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
1,2-ヘキサンジオール:富士フイルム和光純薬株式会社製
メチルシクロヘキサノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
ベンジルアルコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
デカノール:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0106】
(3)その他の溶剤
石油系炭化水素溶剤:エクソンモービル社製「エクソールD130」
【0107】
表2~7において、各原材料の23℃における粘度も示す。
【0108】
表2~7において、脂肪酸モノエステル系溶剤について、「脂肪酸モノエステル系溶剤炭素数(R1:R2)」は、R-COO-Rにおける「Rの炭素数:Rの炭素数」を示す。
【0109】
<評価>
上記実施例及び比較例の洗浄液について、以下の方法により評価を行った。これらの評価結果を表2~7に示す。
【0110】
(1)固着物の除去効果
インクジェットプリンタ「オルフィスFW5230」(理想科学工業株式会社製)用インクジェットヘッドに用いられているノズルプレート上に、上記で作製したインク1を2μlのせた後、真空乾燥を行って固着物を形成した。この固着物に各実施例及び比較例の洗浄液を付着させ、10分間放置した後、ニトリルゴム(NBR)製のワイプゴムを用いて、固着物が除去できるまでワイピングを繰り返し行うことでクリーニングを行った。比較例7では洗浄液を用いなかった。
ワイピングは、固着物を除去できるまで行うが、ワイピング回数は30回までとして、ワイピング回数30回でも固着物を除去しきれない場合にも、それ以上ワイピングは行わなかった。
固着物が除去するまでに要したワイピングの回数から、固着物の除去効果を下記の基準にて評価した。
【0111】
A:固着物が除去するまでに要したワイプ回数が20回未満
B:固着物を除去するまでに要したワイプ回数が20回以上30回以下
C:ワイプ回数30回でも固着物を除去しきれなかった
【0112】
(2)撥インク性
各実施例及び比較例について、上記の「固着物の除去効果」の評価でクリーニングを行ったノズルプレートを用いて撥インク性を評価した。したがって、「固着物の除去効果」の評価で評価AまたはBであったノズルプレートは、固着物が除去された状態で、「固着物の除去効果」の評価で評価Cであったノズルプレートは、固着物を除去しきれない状態で、以下の評価を行った。
撥インク性の評価は次のように行った。「固着物の除去効果」の評価でクリーニングを行ったノズルプレートをインク1に漬け込み、すぐに引き上げて、インクが滴になる時間を測定し、撥インク性を下記の基準にて評価した。
【0113】
A:インクが滴になるまでの時間が10秒未満
B:インクが滴になるまでの時間が10秒以上20秒未満
C:インクが滴になるまでの時間が20秒以上
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
表2~7に示す通り、炭素数28以下の脂肪酸モノエステル系溶剤Aと、炭素数9以下の1価のアルコール系溶剤及び炭素数6以下の2価のアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であるアルコール系溶剤Bとを含む洗浄液を用いた実施例1~21は、比較例1~7に比べて、優れた撥インク性を示した。
【0121】
これに対して、アルコール系溶剤Bは用いられずに、炭素数10のアルコール系溶剤が用いられた比較例1及び2、脂肪酸モノエステル系溶剤Aは用いられずに、炭素数31の脂肪酸モノエステル系溶剤が用いられた比較例3、脂肪酸モノエステル系溶剤Aのみが用いられ、アルコール系溶剤は用いられなかった比較例4、アルコール系溶剤Bのみが用いられ、脂肪酸モノエステル系溶剤は用いられなかった比較例5、脂肪酸モノエステル系溶剤A及びアルコール系溶剤Bは用いられず、石油系炭化水素溶剤のみが用いられた比較例6、及び洗浄液が用いられなかった比較例7は、実施例1~21に比べて撥インク性に劣っていた。