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特許7247062継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/14 20060101AFI20230320BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20230320BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20230320BHJP
   B21D 51/08 20060101ALI20230320BHJP
   B21D 51/24 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B21D22/14 Z
F17C1/06
F16J12/00 A
B21D51/08
B21D51/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019162928
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041412
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391030099
【氏名又は名称】株式会社旭製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】395014747
【氏名又は名称】株式会社旭テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133693(JP,A)
【文献】特開2004-34114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14
F17C 1/06
F16J 12/00
B21D 51/08
B21D 51/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の胴部を有していない、又は胴部の長さが胴部直径の1/2以下であり、継ぎ目が無く、凸曲面体の形状を有し、ガスが充填される金属材料製の容器本体と、該容器本体に付属し、前記ガスを出し入れする円筒形の前記金属材料製のポートと、を有する継目無容器の製造方法であって、
前記金属材料製板材、又はパイプ材から、鍛造加工、切削加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工を行って前記容器本体の前記凸曲面体の半分の半凸曲面体部分と円筒部分を持つU字状カップを作製し、
前記U字状カップの前記半凸曲面体部分の外側中央に、外側に突出する回り止め部を有する底部ボスを形成し、
前記U字状カップの前記半凸曲面体部分と嵌合する凹み部、及び該凹み部の中央に前記底部ボスの前記回り止め部が嵌め込まれる貫通穴を持つ雌型チャックの他端側の円筒状部をスピニングマシンの本体チャックに取り付けてチャックし、
前記半凸曲面体部分の前記底部ボスの前記回り止め部を前記雌型チャックの前記貫通穴に嵌め込んで回り止めとし、前記雌型チャックの他端側から前記貫通穴を通して前記回り止め部を前記雌型チャックにねじを用いて固定し、前記半凸曲面体部分を前記雌型チャックの前記凹み部に取り付けて固定することにより、前記半凸曲面体部分を前記雌型チャックに堅固にチャックし、
前記スピニングマシンの前記本体チャックを回転させることにより、前記本体チャックに前記雌型チャックを介して前記半凸曲面体部分がチャックされた前記U字状カップを回転させ、回転している前記U字状カップの前記円筒部分をバーナによって加熱しながら前記スピニングマシンの回転するローラを押し付けて押圧することによって少しずつ湾曲させ、球形にするスピニング加工を行うと共に、ネックを成形するネッキング加工を行って前記容器本体の前記凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分とその中心に前記ポートとなるネックを成形することを特徴とする継目無容器の製造方法。
【請求項2】
前記底部ボスは、前記U字状カップの前記半凸曲面体部分の外側中央に溶接されて形成される請求項1に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項3】
前記U字状カップを作製する際に、前記半凸曲面体部分の外側中央に底部ネックを形成しておき、該底部ネックの内面に、前記回り止め部、及び前記雌ねじ部を有する回り止め部材をねじ込むことにより、前記底部ネック、及び前記回り止め部材を有する前記底部ボスが形成される請求項1に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項4】
前記底部ボスの前記回り止め部の形状は、角形状であり、前記雌型チャックの前記貫通穴の形状は、角形状の前記回り止め部が嵌り合うように挿入される角形状であり、前記雌型チャックに対する前記U字状カップの回り止めとして機能する請求項1~3のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項5】
前記底部ボスの前記回り止め部の形状は、四角形であり、前記雌型チャックの前記貫通穴の形状は、四角形である請求項1~4のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項6】
前記底部ボスの前記回り止め部は、その中央に雌ねじ部を有し、
前記雌型チャックへの前記回り止め部の固定は、前記回り止め部の前記雌ねじ部に固定ボルトを螺合させて前記雌型チャックの他端側の平坦部に固定することにより行われる請求項1~5のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項7】
前記固定ボルトは、ワッシャー付きボルトである請求項6に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項8】
前記底部ボスの前記回り止め部は、その中央に雄ねじ部を有し、
前記雌型チャックへの前記回り止め部の固定は、前記回り止め部の前記雄ねじ部にナットを螺合させて前記雌型チャックの他端側の平坦部に固定することにより行われる請求項1~5のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項9】
前記ナットは、ワッシャー付きナットである請求項8に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項10】
前記容器本体の前記凸曲面体は、球形状、楕円体鏡板形状、又は皿形鏡板形状である請求項1~9のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法によって製造された前記金属材料製の継目無容器の外表面全体を、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆する被覆工程を有することを特徴とする複合容器の製造方法。
【請求項12】
前記補強材料は、炭素繊維、ガラス繊維、並びにケブラー、及びザイロンの少なくとも1つを含む有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維である請求項11に記載の複合容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸曲面体形状の継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法に係り、詳しくは、球形、楕円体形状、及び皿形鏡板形状等の凸曲面体形状の継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法、特に、宇宙空間に打ち上げられる宇宙用ロケットに搭載される継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、宇宙空間に打ち上げられる宇宙用ロケット推進系システムには、燃料となる液体水素を充填した液体水素容器及び酸化剤である液体酸素を充填した液体酸素容器が搭載されている。この液体水素容器には、ロケット推進の制御やロケットの姿勢制御に用いられるヘリウム(He)ガスを充填した気蓄器が複数個、例えば3個取り付けられている。
このような気蓄器には、金属製容器、又は複合(コンポジット)容器等の高圧ガス用圧力容器が用いられており、その形状的には、円筒容器や、球形容器等が用いられている。
また、燃料としては、液体水素-液体酸素の組み合わせの他に燃料としてヒドラジン、ケロシン、メタン、過酸化水素などもあり、いずれも気蓄器に充填されている。
【0003】
現在、このような複合(コンポジット)圧力容器としては、円筒形、又は球形の樹脂ライナーをブロー成形等で一体に作製し、その外面を、炭素繊維等の補強材料を用いて被覆した継目無し構造の圧力容器が作製されている。
しかしながら、このような複合容器は金属製容器に比べて高価になる。
なお、複合圧力容器としては、円筒形、又は球形の金属製容器をライナーとして作製して、その外面を、炭素繊維等の補強材料を用いて被覆した構造の圧力容器も作製されている。
【0004】
また、現在、金属製円筒形圧力容器としては、円筒形胴部の両側が半球形である、又は両側端部(底部)が湾曲している円筒容器、例えば円筒形胴部の両側にそれぞれ半球鏡板を溶接で接合したものや、深絞り加工、又はスピニング加工によって円筒形胴部の一方の側の球形部、又は湾曲部を形成した後に、他方の側に半球鏡板や皿形鏡板を溶接で接合したものや、一方の側の球形部や湾曲底部を形成した有底の円筒体(U字状カップ)の他方の側をスピニング加工によって球形化又は湾曲底部化した継目無円筒容器等が用いられている。
例えば、図10に示すように、高圧ガス用金属製円筒形継目無容器80は、金属板から深絞り加工を行って一方の側の湾曲底部82aを形成した有底の円筒体(U字状カップ)82の円筒形胴部82bをスピニングマシン84を用いて、即ちスピニングマシン本体46の本体チャック44によってチャックし、円筒形胴部82bの他方の側の円筒状開口部82cを、加熱用バーナ48で加熱しながらローラ50で押圧しながら、少しずつ湾曲させて湾曲部82dを成形(スピニング加工ともいう)し、端部を閉塞してバルブ取り付け用のボス86を成型する(ネッキング加工ともいう)ことが一般的である。
【0005】
ところで、航空宇宙などで用いられる、例えばロケットに搭載する金属製圧力容器は、重力に抗して宇宙に運ばれるために軽量であることが要求される。
しかしながら、圧力容器の形状としては、球形が最も省スペースであり、軽量となることから、円筒形圧力容器は、球形圧力容器に比べて、肉厚になり、容器重量も重くなるという問題がある。
このように、航空宇宙などで軽量、且つ省スペースが要求される圧力容器の場合、最適形状としては球状が要求されるので、胴部平行部、例えば円筒形胴部を有しない球形容器などが多く用いられている。
しかしながら、金属製球形容器の場合は、円筒形胴部平行部が無く、スピニングマシンでチャッキングすることが出来ないので、半球状の鏡板をプレス成形、切削加工又はへら絞りで成型したものを2個合わせて中央部で直接溶接接合して製作された溶接容器が用いられている。
【0006】
溶接容器の場合、溶接欠陥は、低圧で容器を破壊し、また、ガスが漏れるなどの致命欠陥となる。このため、溶接容器は、継目無容器に比べて品質の信頼性が低く、また、多くの費用もかかる等の問題がある。
このように、金属製球形圧力容器でも、金属製円筒形圧力容器でも、半球鏡板を溶接で接合した圧力容器では、溶接品質を保つために溶接方法、溶接作業者、溶接条件、溶接環境、品質管理等に大きな負担を強いられるという問題がある。
また、圧力容器を溶接で作ると、溶接効率を考慮しなければならず、継目のない構造よりも余分な肉厚が必要となるし、上述したように、肉厚が厚くなると容器重量も重くなるという問題がある。
【0007】
一方、特許文献1には、球形の継目のない構造の金属製圧力容器の製造方法が提案されている。
特許文献1においては、金属製シームレス、溶接無し、球形圧力容器を製造する方法が開示されている(第1欄第51行~第4欄第60行、及び図1図7参照)。特許文献1に開示の球形圧力容器の製造方法においては、まず、金属製の円形スラッグ、又はワークピースの内側を雌型ダイのキャビティに置き、雄型ラムで押圧して、上部シェル部に続く底部を部分的に球形化する。次に、雌型ダイを球形状の凹部を持つ別の雌型ダイに変更して、先端が球状の雄型ダイ部材でワークピース内側を押圧して半球底部を形成する。次いで、半球底部を持つワークピースWを半球底部と同じ凹部を持つ底部ダイ及び支持台に載置し、大きさの異なる4種類のカッピングダイ、4種類のカッピングダイにそれぞれ対応する4種類の可動穴付きプラテン(圧胴)、及び4種類の可動穴付きプラテン(圧胴)にそれぞれ対応する4種類のエジェクタピンを用いて、球形底部に繋がる上部シェル部をその端部から押圧して、徐々に球形化すると共に、ネックを形成し、最終製品(金属製シームレス、溶接無し、球形圧力容器)を製造している。
【0008】
また、本出願人は、特許文献2において、球形、又は球形に近い凸曲面体形状の金属製継目無容器、及びその製造方法、並びに複合容器、及びその製造方法を提案している。
特許文献2に開示の金属製継目無容器の第1の製造方法においては、まず、金属材料製の板材、又はパイプ材に、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工等の塑性加工を行って半球体部分等の半凸曲面体部分と円筒部分を持つU字状カップを作製する。次に、スピニングマシンの本体チャックに取り付けられた雌型チャックの凹部にU字状カップの半凸曲面体部分を嵌合させて取り付けると共に、凹み部を、ロータリージョイントを介して雌型チャックに接続された真空ポンプによって真空吸引することにより、半凸曲面体部分を雌型チャックに堅固にチャックし、U字状カップの円筒部分に加熱しながらスピニング加工を行って冷却し、円筒部分を残りの半凸曲面体部分を成形し、ネッキング加工を行ってネックを成形している。
また、特許文献2に開示の金属製継目無容器の第2の製造方法においては、スピニングマシンの本体チャックに取り付けられた雌型チャックの凹み部に予め作製されたU字状カップの半凸曲面体部分を嵌合させて取り付けると共に、半凸曲面体部分の内側表面に一方の端部に本体チャックの回転に同期して回転する芯押し棒を押し付けて、半凸曲面体部分を雌型チャックに堅固にチャックし、U字状カップの円筒部分に加熱しながらスピニング加工を行って冷却し、円筒部分を残りの半凸曲面体部分を成形し、ネッキング加工を行ってネックを成形している。ここで、芯押し棒の直径が大きく、成形されたネックの直径が大きい場合には、残りの半凸曲面体部分の外側表面を肩押さえ治具(サブチャック)に当接させて雌型チャックの凹み部に押し付けて、半凸曲面体部分を雌型チャックに固定し、直径の大きいネックに再加熱しながらスピニング加工を行って冷却し、円筒部分を残りの半凸曲面体部分を成形し、ネッキング加工を行って直径の小さいネックを成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3651559号明細書
【文献】特開2017-133693
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に開示された技術では、金属製の球形継目無圧力容器を製造できるものの、金属製の円形スラッグ、又はワークピースを少しずつ変形させて球形化する必要があるため、半球部分を成形するために、2種の雌型ダイとこれに対応する雄型ラム、及び雄型ダイ部材、並びに成形された半球部分を支持する底部ダイと、残りの円筒部分を少しずつ球形化するための大きさの異なる4種のカッピングダイ、これらの対応する4種の可動穴付きプラテン(圧胴)、及びこれらの対応する4種のエジェクタピンが必要であるという問題があった。
また、引用文献1に開示の技術では、球状圧力容器の半径が大きく、本願発明のように、ネックの肉厚に対して球状圧力容器の肉厚が相対的に小さいとき、ネックの根元の部分が上から押される力(押圧力)によって陥没(座屈)するため、実用的なネックを作ることができず、ロケット用等の精密な圧力容器の製造には不適であるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に開示の技術では、球形等の凸曲面体形状の金属製継目無容器を作製することはできるが、金属製継目無容器の第1の製造方法では、同期回転するロータリージョイント、及び真空ポンプを使う必要があり、金属製継目無容器の第2の製造方法では、同期回転する芯押し棒や、肩押さえ治具を使う必要がある上に、その取り付け、位置調整、及び取り外し等に時間がかかるという問題があった。
特に、金属製継目無容器の第1の製造方法では、ワークを真空で引くために最大チャック力は1気圧の80%に吸引面積を掛けた吸引力となるために、ワーク肉厚が厚くなり加工力が大きくなるとチャック力が加工力よりも低くなり十分にワークをチャックできないという問題があった。
また、金属製継目無容器の第2の製造方法では、芯押し棒と肩押さえ治具を使っているので、その取り付け、位置調整、ワーク加熱、冷却、取り外しなどが繰り返されることで時間が掛かり、また、スピニング加工の加工点を繋ぐことになるために精度良く形状を作ること、及びネック部にむかって暫時増肉することが難しいという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、軽量で、省スペースであり、球形、楕円体形状、又は皿形鏡板形状などの凸曲面体形状の金属製の容器本体にも、この容器本体と金属製のポートとの間にも継目が無く、容器本体とポートとが一体的に成形され、宇宙空間に打ち上げられる宇宙用ロケットに搭載することもできる凸曲面体形状の金属製の継目無容器を、手間をあまりかけることなく、容易、かつ確実に歩留まり良く製造することができ、製造時間を従来に比して大幅に短縮することができる継目無容器の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、こうして製造された凸曲面体形状の金属製の継目無ガス容器の外表面全体を炭素繊維等の補強材料で被覆することにより補強された軽量で、省スペースであり、堅固な複合容器を製造することができる複合容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の継目無容器の製造方法は、円筒形状の胴部を有していない、又は胴部の長さが胴部直径の1/2以下であり、継ぎ目が無く、凸曲面体の形状を有し、ガスが充填される金属材料製の容器本体と、容器本体に付属し、ガスを出し入れする円筒形の金属材料製のポートと、を有する継目無容器の製造方法であって、金属材料製板材、又はパイプ材から、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工を行って容器本体の凸曲面体の半分の半凸曲面体部分と円筒部分を持つU字状カップを作製し、U字状カップの半凸曲面体部分の外側中央に、外側に突出する回り止め部を有する底部ボスを形成し、U字状カップの半凸曲面体部分と嵌合する凹み部、及び凹み部の中央に底部ボスの回り止め部が嵌め込まれる貫通穴を持つ雌型チャックの他端側の円筒状部をスピニングマシンの本体チャックに取り付けてチャックし、半凸曲面体部分の底部ボスの回り止め部を雌型チャックの貫通穴に嵌め込んで回り止めとし、雌型チャックの他端側から貫通穴を通して回り止め部を雌型チャックにねじを用いて固定し、半凸曲面体部分を雌型チャックの凹み部に取り付けて固定することにより、半凸曲面体部分を雌型チャックに堅固にチャックし、スピニングマシンの本体チャックを回転させることにより、本体チャックに雌型チャックを介して半凸曲面体部分がチャックされたU字状カップを回転させ、回転しているU字状カップの円筒部分をバーナによって加熱しながらスピニングマシンの回転するローラを押し付けて押圧することによって少しずつ湾曲させ、球形にするスピニング加工を行うと共に、ネックを成形するネッキング加工を行って容器本体の凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分とその中心にポートとなるネックを成形することを特徴とする。
【0014】
ここで、底部ボスは、U字状カップの半凸曲面体部分の外側中央に溶接されて形成されることが好ましい。
また、U字状カップを作製する際に、半凸曲面体部分の外側中央に底部ネックを形成しておき、底部ネックの内面に、回り止め部、及び雌ねじ部を有する回り止め部材をねじ込むことにより、底部ネック、及び回り止め部材を有する底部ボスが形成されることが好ましい。
また、底部ボスの回り止め部の形状は、角形状であり、雌型チャックの貫通穴の形状は、角形状の回り止め部が嵌り合うように挿入される角形状であり、雌型チャックに対するU字状カップの回り止めとして機能することが好ましい。
また、底部ボスの回り止め部の形状は、四角形であり、雌型チャックの貫通穴の形状は、四角形であることが好ましい。
また、底部ボスの回り止め部は、その中央に雌ねじ部を有し、雌型チャックへの回り止め部の固定は、回り止め部の雌ねじ部に固定ボルトを螺合させて雌型チャックの他端側の平坦部に固定することにより行われることが好ましい。
また、固定ボルトは、ワッシャー付きボルトであることが好ましい。
また、底部ボスの回り止め部は、その中央に雄ねじ部を有し、雌型チャックへの回り止め部の固定は、回り止め部の雄ねじ部にナットを螺合させて雌型チャックの他端側の平坦部に固定することにより行われることが好ましい。
また、ナットは、ワッシャー付きナットであることが好ましい。
また、容器本体の凸曲面体は、球形状、楕円体鏡板形状、又は皿形鏡板形状であることが好ましい。
【0015】
また、上記他の目的を達成するために、本発明の第2の態様の複合容器の製造方法は、上記第1の態様の継目無容器の製造方法によって製造された金属材料製の継目無容器の外表面全体を、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆する被覆工程を有することを特徴とする。
ここで、補強材料は、炭素繊維、ガラス繊維、並びにケブラー、及びザイロンの少なくとも1つを含む有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維であることが好ましい。
【0016】
上記第1の態様、及び上記第2の態様において、容器本体の外径が、50mm~1000mmであり、ポートは、容器本体と継目が無く一体であり、かつポートの外径が、5mm~200mmであり、ポートの肉厚は、容器本体の肉厚以上であることが好ましい。
また、容器本体の耐圧が、1MPa~100MPaであることが好ましい。
また、金属材料は、比強度が、100kN・m/kg以上の金属材料であることが好ましい。
また、容器本体の凸曲面体の上の各点における凸曲面の曲率半径rと容器本体の肉厚t1との比r/t1が、5~250であることが好ましい。
また、容器本体の凸曲面体は、球体であり、容器本体の外径Dと容器本体の肉厚t1との比D/t1が、10~500であることが好ましい。
また、容器本体の凸曲面体は、球体であり、ポートの接続部、及び底部ボスを除く容器本体の全球面の外径とその平均値の差が平均値に対して±2%の範囲にあることが好ましい。
【0017】
また、ポートには、バルブ、又は配管が、ねじ込み、溶接、もしくは機械的係合によって取り付けられることが好ましい。
また、継目無容器は、宇宙用ロケットに搭載されることが好ましい。
また、容器本体は、ポートの位置と反対側の容器本体の底部の位置に非貫通の底部ボスを有し、底部ボスは、容器本体の内側と外側との間の空気の流れを遮断する機能を有することが好ましい。
また、底部ボスは、容器本体の底部の位置において容器本体のシェルを外側に向かって突出するように変形させたものであることが好ましい。
また、底部ボスは、正四角柱部分と、正四角柱部分の基部になり、かつ溶接によって容器本体に取り付けられた円柱部分と、から成ることが好ましい。
また、底部ボスは、容器本体の底部から外部に突出するように設けられた円筒部分と、円筒部分の内部表面に形成された雌ねじと、雌ねじに螺着されたプラグと、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量で、省スペースであり、球形、楕円体形状、又は皿形鏡板形状などの凸曲面体形状の金属製の容器本体にも、この容器本体と金属製のポートとの間にも継目が無く、容器本体とポートとが一体的に成形され、宇宙空間に打ち上げられる宇宙用ロケットに搭載することもできる凸曲面体形状の金属製の継目無容器を、手間をあまりかけることなく、容易、かつ確実に歩留まり良く製造することができ、製造時間を従来に比して大幅に短縮することができる。
また、本発明によれば、こうして製造された凸曲面体形状の金属製の継目無ガス容器の外表面全体を炭素繊維等の補強材料で被覆することにより補強された軽量で、省スペースであり、堅固な複合容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る継目無容器の製造方法によって製造される金属製球形継目無容器の一例の断面図である。
図2】(A)は、図1に示す金属製球形継目無容器において底部に溶接される底部ボスの他の一例を示す底部の部分断面図であり、(B)は、(A)に示す底部ボスの底面図である。
図3】(A)は、本発明法によって製造される金属製球形継目無容器において底部に設けられる底部ボスの一例を示す底部の部分断面図であり、(B)は、(A)に示す底部ボスの底面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る継目無容器の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る継目無容器の製造方法を実施する製造装置の断面模式図である。
図6図5に示す製造装置において金属製球形継目無容器の製造方法を実施している時にワークに発生する力を説明する説明図である。
図7】本発明に係る金属製楕円体形状継目無容器の他の一例の製造装置の断面模式図である。
図8】本発明に係る金属製皿形継目無容器の他の一例の製造装置の断面模式図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る複合容器の製造方法によって製造される複合容器の一例の断面図である。
図10】従来の金属製円筒形継目無容器の製造装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る継目無容器の製造方法、及び複合容器の製造方法を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
まず、初めに、本発明の第1の実施形態の継目無容器の製造方法によって製造される金属製継目無容器について説明する。
本発明法によって製造される金属製継目無容器は、円筒形状の胴部を有していない、又は胴部の長さが胴部直径の1/2以下であり、継ぎ目が無く、凸曲面体の形状を有し、ガスが充填される金属材料製の容器本体と、容器本体に付属し、ガスを出し入れする円筒形の金属材料製のポートと、を有するものである。
【0021】
ここで、容器本体の形状としては、凸曲面体の形状であって、円筒形状の胴部を全く有していない形状、又は、長さが胴部直径の1/2以下である円筒形状の胴部を有する形状であれば、いかなる形状であっても良い。例えば、円筒形状の胴部を全く有していない形状としては、球形(後述する図1及び図5参照)、又は楕円体形状(後述する図7参照)等を挙げることができ、円筒形状の胴部を有する形状としては、皿形鏡板の形状(後述する図8参照:皿形鏡板を合わせた形状)等を挙げることができる。
凸曲面体の形状の容器本体は、スピニングマシンのチャックを用いてチャックできないような短い円筒形状の胴部を有していても良く、胴部の長さが胴部直径の1/2以下であれば良いが、円筒形状の胴部を有していない形状であることが好ましい。
なお、胴部の長さを胴部直径の1/2以下に限定する理由は、胴部の長さが、胴部直径の1/2超では、従来型のスピニングマシンのチャックを用いて胴部をチャックして加工できるからである。
【0022】
以下では、始めに、容器本体の形状として、球形容器を代表例として説明するが、本発明では、これに限定されないのは勿論である。
図1は、本発明法によって製造される金属製球形継目無容器の断面図である。
図1に示すように、金属製球形継目無容器10は、円筒形状の胴部を有しておらず、継ぎ目がなく、凸曲面体の形状を有する金属材料製の容器本体12と、この容器本体12に付属する円筒形の金属材料製のポート14と、を有する。
【0023】
なお、球形継目無容器10の球形容器本体12には、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置に、図1には示されていないが、図2(A)及び(B)に示す底部ボス18を有していることが好ましい。
図2(A)及び(B)に示す底部ボス18は、球形継目無容器10の製造中に必要なもので、容器本体12の半球体部分22aの外側中央の底部16に外側に突出する正四角柱形状の回り止め部18aと、その基部となる円柱部18bと、回り止め部18aの中央に内側に向かって設けられた雌ねじ部18cとを有するもので、製造中に円柱部18bが溶接によって容器本体12に取り付けられるものである。
球形継目無容器10の製造後には、溶接された底部ボス18を取り外すことにより、球形継目無容器10を図1に示す状態にすることができるが、底部ボス18が残っていても、球形継目無容器10をガス容器として使用する際に支障はないので、底部ボス18を取り外す手間を考えると、底部ボス18は、残しておくことが好ましい。
【0024】
また、図2(A)及び(B)に示すように、球形継目無容器10の球形容器本体12には、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置に底部ボス18を備えていることが好ましいが、図3(A)及び(B)に示すように、ポート14と略同様の形状を有する円筒形状の底部ネック20aを備えている場合には、底部ボス18の代わりに、底部ボス20を有していることが好ましい。
この底部ボス20は、金属材料製の容器本体12の底部16から外側に突出するように設けられる底部ネック20aと、底部ネック20aの内側表面に形成された雌ねじ部20bと、雌ねじ20bに螺着されたプラグである回り止め部材20cと、を有する。また、回り止め部材20cは、雌ねじ20bに螺合する雄ねじ20dと、雄ねじ20dの頭部であり、正四角柱形状の回り止め部20eと、回り止め部20eの中央に内側に向かって設けられた雌ねじ部20fとを有する。
【0025】
底部ボス18には貫通孔がないので、底部ボス18は、非貫通であり、容器本体12の内側と外側との間の空気の流れを遮断する。
また、回り止め部材20cは、底部ネック20aの先端を密閉するためのものであり、底部ボス20は、非貫通であり、底部ボス18と同様に、容器本体12の内側と外側との間の空気の流れを遮断する。
また、図示例では、回り止め部18a、及び20eは、正四角柱形状をしているが、製造中に後述する雌型チャック42の貫通穴42cに合わせて挿入された、即ち嵌め込まれた時に、雌型チャック42に対するU字状カップ22の半球体部分22a(図5参照)の回転を停止できれば、即ち回り止めとして機能できれば、どのような形状でもよい。回り止め部18a、及び20eの形状は、角形状、又は角柱形状であることが好ましく、図示例のように四角形、四角柱形状であることが好ましく、図示例のように正四角柱形状であることが特に好ましい。
また、図2、及び図3に示す底部ボス18、及び20は、それぞれ回り止め部18a、及び20eの中央に雌ねじ部18c、及び20dを有しているが、雌ねじ部18c、及び20dの代わりに、図示しないが、回り止め部18a、及び20eの中央からそれぞれ突出する雄ねじ部を有していても良い。
【0026】
容器本体12は、充填された所定量の高圧ガスを貯留しておくためのもので、その外径が、50mm~1000mmである必要がある。外径の数値限定の理由は、外径が50mm未満では、内部の容量が小さ過ぎて、高圧ガス容器としての用途に、特に宇宙航空用途には向かないからであり、外径が1000mm超では、内部の容量が大き過ぎて、高圧ガス容器として用途に、特に宇宙航空用途には向かないからである。
なお、容器本体12の外径は、200mm~800mmであることが好ましく、300mm~600mmであることがより好ましい。
容器本体12が球形である場合においては、ポート14(及びその接続部14a)、並びに図2、及び3図に示すように、底部ボス18、及び20がある場合には、底部ボス18、及び20を除く、球形容器本体12の全球面の外径と、全球面の外径の平均値の差が平均値に対して±2%の範囲にあることが好ましく、±1%の範囲にあることがより好ましい。上記差を好ましい±2%の範囲に数値限定する理由は、容器本体12の外径とその平均値との差が、平均値に対して±2%の範囲を超える場合には、球形胴の一部に円筒胴を含む恐れがあり、また、部分的に球形胴を構成する曲率から外れる恐れがあるからである。
【0027】
また、球形継目無容器10の耐圧、即ち、球形容器本体12の耐圧は、1MPa~100MPaであることが好ましく、5MPa~30MPaであることがより好ましい。球形容器本体12の耐圧を好ましい1MPa~100MPaの範囲に限定する理由は、容器本体12の耐圧が、1MPa未満では、圧力容器として必要性が少ないからであり、100MPa超では、圧力容器の肉厚が厚くなり、後述する本発明の継目無容器の製造方法を用いて加工することが難しくなるからである。
また、容器本体12の外径をDmmとし、容器本体12の肉厚をt1mmとする時、外径Dと肉厚t1との比D/t1が、10~500であることが好ましい。比D/t1を好ましい10~500の範囲に限定する理由は、比D/t1が、10未満では、低い強度の材料を使うことになるからであり、500超では、金属材料の靱性と強度を考慮したときに上限の強度が限定されるからである。
ここで、球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚t1は、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置(図2、及び図3の底部ボス18、20の位置)からポート14に向かって漸増するものであることが好ましい。
【0028】
なお、球形以外の容器本体の場合(後述する図7及び図8参照)には、容器本体12の外径Dの代わりに、容器本体の凸曲面体の上の各点における凸曲面の曲率半径r(球形の場合には=D/2)を用いればよく、容器本体12の外径Dと肉厚t1との比D/t1の代わりに、容器本体の凸曲面体の上の各点の曲率半径rと容器本体の肉厚t1との比r/t1を用いればよく、比r/t1は、比D/t1の半分、即ち5~250であることが好ましい。比r/t1を好ましい5~250の範囲に限定する理由は、比r/t1が、5未満では、低い強度の材料を使うことになるからであり、250超では、金属材料の靱性と強度を考慮したときに上限の強度が限定されるからである。
【0029】
また、本発明法による球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚をt1mm、容器本体12の外径をDmm、容器本体12の耐圧をPMPa、金属材料の強度をσMPa、とする時、肉厚t1は、薄肉計算式で計算すると、下記式1で表される。
t1=PD/(4σ) …(1)
一方、図14に示すような従来の円筒形継目無容器80の円筒形容器本体88の胴部82bの肉厚をt0mm、容器本体88の胴部82bの外径、耐圧、及び金属材料の強度を、それぞれ同様に、Dmm、PMPa、及びσMPa、とする時、肉厚t0は、薄肉計算式で計算すると、下記式2で表される。
t0=PD/(2σ) …(2)
したがって、t1=PD/(4σ)=t0/2となり、球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚t1は、従来の円筒形継目無容器80の円筒形容器本体88の胴部82bの肉厚t0の半分となる。したがって、球形継目無容器10の容器重量は、従来の円筒形継目無容器80の容器重量の大凡半分となり、軽量であることが分かる。
【0030】
ポート14は、容器本体12にガスを充填するためにガスを導入し、容器本体12に充填されているガスを外部に放出するためにガスを通過させるためのものであり、ガスを出し入れする円形の貫通孔を有し、容器本体12に付属する円筒形の金属材料製の部材であって、容器本体12と継目が無く一体であり、容器本体12から外部に突出している。
ポート14は、その外径が、5mm~200mmである必要がある。ポート14の外径の数値限定の理由は、外径が5mm未満では、内部のガスの通路となる貫通孔の径が小さくなり過ぎて、所定量のガスを出し入れするのが難しくなるからであり、外径が200mm超では、バルブ、又は配管との接合時に相手部品の大きさが大きくなりすぎるからである。
なお、ポート14の外径は、20mm~100mmであることが好ましく、30mm~50mmであることがより好ましい。
【0031】
なお、ポート14には、バルブ、又は配管が、ねじ込み、溶接、もしくは機械的係合によって取り付けられることが好ましい。
また、ポート14の肉厚は、容器本体12の肉厚以上である必要がある。その理由は、ポート14の肉厚が、容器本体12の肉厚未満であると、バルブ、又は配管等を取り付けるのが難しくなり、取り付けられたバルブ、又は配管等を支持することが困難となるし、また、ポート部に相手部品とシールをするOリング溝を設置する事が難しくなるからである。
【0032】
容器本体12とポート14とを継目無く一体的に形成する金属材料は、比強度が、100kN・m/kg以上の金属材料であることが好ましい。その理由は、宇宙航空用途においては、軽量でありながら高圧ガスを充填する必要があり、十分な強度が必要であるからである。比強度が、100kN・m/kg未満の金属材料では、充填できるガス量に比して重量が重くなるからである。
このような金属材料としては、比強度が、100kN・m/kg以上の金属材料であればどのような金属材料であっても良いが、例えばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、高張力綱等の金属材料を挙げることができる。
【0033】
また、球形継目無容器10の球形容器本体12内に充填するガスは、特に制限的ではなく、いかなるガスであっても良いが、宇宙航空用途に用いられるガスであることが好ましく、例えばヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、キセノン(Xe)、二酸化炭素(CO)等のガスを挙げることができる。
金属製球形継目無容器10の他、従来の円筒形継目無容器80より、省スペースであり、軽量となる継目無容器としては、後述する楕円体形状(楕円体鏡板形状)の継目無容器64(図7参照)や皿形鏡板形状の継目無容器74(図8参照)なども挙げられるが、それらについては本発明の第1の実施形態の継目無容器の製造方法の説明と共に後述する。
本発明の第1の実施形態の継目無容器の製造方法によって製造される金属製継目無容器は、基本的に以上のように構成される。
【0034】
次に、本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器の製造方法について説明する。
本実施形態の継目無容器の製造方法は、凸曲面体形状の継目無容器を製造する製造方法である。
図4は、本発明の一実施形態に係る継目無容器の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の継目無容器の製造方法においては、図4に示すように、まず、ステップS12の準備工程において、金属材料製板材、又はパイプ材、雌型チャック、及びスピニングマシンを準備する。
【0035】
次に、ステップS14の塑性加工工程において、金属材料製板材、又はパイプ材等からU字状カップを作製する。
具体的には、塑性加工工程は、金属材料製板材、又はパイプ材等から、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工等の公知の塑性加工を行って継目無容器の容器本体の凸曲面体の半分の半凸曲面体部分と円筒部分を持つU字状カップを作製する工程である。
次に、ステップS16の底部ボス形成工程において、U字状カップの半凸曲面体部分の外側中央に底部ボスを形成する。
具体的には、底部ボス形成工程は、 U字状カップの半凸曲面体部分の外側中央に、外側に突出する回り止め部を有する底部ボスを形成する工程である。
【0036】
次に、ステップS18の第1チャッキング工程において、雌型チャックをスピニングマシンの本体チャックにチャックする。
具体的には、第1チャッキング工程は、U字状カップの半凸曲面体部分と嵌合する凹み部、及び凹み部の中央に底部ボスの回り止め部が嵌め込まれる貫通穴を持つ雌型チャックの他端側の円筒状部をスピニングマシンの本体チャックに取り付けてチャックする工程である。
【0037】
次に、ステップS20の第2チャッキング工程において、U字状カップの底部ボスの回り止め部を雌型チャックの貫通穴に嵌め込んで回り止めとするとともに、固定ボルトで底部ボスを雌型チャックに固定して、U字状カップの半凸曲面体部分を雌型チャックに堅固にチャックする。
具体的には、第2チャッキング工程は、U字状カップの半凸曲面体部分の底部ボスの回り止め部を雌型チャックの貫通穴に嵌め込んで回り止めとし、雌型チャックの他端側から貫通穴を通して回り止め部を雌型チャックにねじを用いて固定し、半凸曲面体部分を雌型チャックの凹み部に取り付けて固定することにより、半凸曲面体部分を雌型チャックに堅固にチャックするチャッキング工程である。
ここで、第1チャッキング工程、及び第2チャッキング工程は、まとめてチャッキング工程ということもできる。このチャッキング工程においては、第1チャッキング工程、及び第2チャッキング工程の実施順序を入れ替えても良い。
【0038】
次に、ステップS22の成形工程において、U字状カップを加熱しつつ回転させながらU字状カップの円筒部分に対してスピニング加工して円筒部分を半凸曲面体化し、ネッキング加工してネックを成形して継目無容器を製造する。
具体的には、成形工程は、スピニングマシンの本体チャックを回転させることにより、本体チャックに雌型チャックを介して半凸曲面体部分がチャックされたU字状カップを回転させ、回転しているU字状カップの円筒部分をバーナによって加熱しながらスピニングマシンの回転するローラを押し付けて押圧することによって少しずつ湾曲させ、球形にするスピニング加工を行うと共に、ネックを成形するネッキング加工を行って容器本体の凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分とその中心にポートとなるネックを成形する工程である。
本発明では、こうして、金属製継目無容器を製造することができる。
【0039】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る金属製球形継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置の一実施例の断面模式図である。図6は、図5に示す製造装置において金属製球形継目無容器の製造方法を実施している時にワークに発生する力を説明する説明図である。
図5に示す金属製球形継目無容器の製造装置40は、予め、金属材料製板材から深絞り加工等の公知の塑性加工を行って作製され、図3(A)及び(B)に示す底部ボス20を備える球形継目無容器11の容器本体12の球体の半分の半球体部分22aと円筒部分22bを持つU字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス20の回り止め部20eを雌型チャック42にねじ、即ち固定ボルト52を用いて固定して半球体部分22aを雌型チャック42で堅固に把持(チャック)した状態で円筒部分22bにスピニング加工、及びネッキング加工を行って、容器本体12の球体の残りの半分の半球体部分22cと、ポート14となるネックを成形して、半球体部分22aと半球体部分22cとからなる球形の容器本体12とポート14とからなる球形継目無容器11を製造するためのスピニングマシンである。
【0040】
図5に示す製造装置(スピニングマシン)40は、U字状カップ22の半球体部分22aを一端側の把持部42aで把持(チャック)する雌型チャック42と、雌型チャック42の他端側の円筒状部(円筒状ボス)42bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック42を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、スピニング加工、及びネッキング加工時にU字状カップ22の円筒部分22bを所定温度に加熱するバーナ48と、U字状カップ22の円筒部分22bにスピニング加工、及びネッキング加工を施すローラ50とを有する。
雌型チャック42は、一端側には、U字状カップ22の半球体部分22aとぴったり(中心部を除き略隙間なく)一致する、即ち嵌合する半球状の凹み部(半球状凹部)43を有する把持部42aを備え、他端側には、本体チャック44にチャックされる円筒状ボス42bを備える。また、円筒状ボス42bの中心には、一端側の把持部42a内面側から円筒状ボス42bの他端まで貫通する貫通孔42cを備えている。また、把持部42aの半球状凹部43の反対側の円筒状ボス42bの端部の中央部分は、円筒状に凹んでおり、平坦な端面を形成し、平坦面42dを構成している。
【0041】
この貫通孔42cは、U字状カップ22の半球体部分22aの底部16の底部ボス20を構成する底部ネック20a、及び回り止め部材20cを貫入させ、回り止め部材20cの回り止め部20eをU字状カップ22(半球体部分22a)が雌型チャック42(半球状凹部43)に対して相対的に回転させないための回り止めとして機能させるためのものである。
また、この貫通孔42cは、貫入された底部ボス20の回り止め部材20cの回り止め部20eの頭部中央に内側に向けて形成された雌ねじ部20fに螺合させるために固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入するためのものである。
ここで、少なくとも底部ボス20の回り止め部20eが挿入される部分の貫通孔42cの形状は、底部ボス20の回り止め部20eが回り止めとして機能できれば、特に制限的ではないが、四角形状の回り止め部20eと同じ形状の四角形状であり、回り止め部20eより少しだけ大きい形状であることが好ましい。貫通孔42cの半球状凹部43側の部分の形状は、底部ボス20を貫入できれば、いかなる形状であっても良い。また、貫通孔42cの外側の部分の形状は、固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入できれば、いかなる形状であっても良い。
【0042】
即ち、雌型チャック42の特徴は、第1に、一端側の把持部42aにはU字状カップ22をセットする半球状凹部43と、中央にはU字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス20を貫入させる貫通孔42cとを設け、反対側(他端側)には本体(スピニング)チャック44に取りけるための円筒状ボス42bを付けることである。
また、第2に、貫通孔42cには、底部ボス20の回り止め部材20cの回り止め部20eを貫入させてU字状カップ22の半球体部分22aの回り止めとして機能させることである。
また、第3に、固定ボルト52の雄ねじ部52aを、貫通孔42cを通して挿入し、貫通孔42cに貫入された底部ボス20の回り止め部20eの頭部中央の雌ねじ部20fに螺合させ、ワッシャー54を介して、雌型チャック42の半球状凹部43と反対側の平坦部42dに固定して、U字状カップ22の半球体部分22aを雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43に堅固に把持(チャック)することである。ワッシャー54は、貫通孔42cの孔断面積より大きく、また固定ボルト52の頭部52bの断面積より大きい。このため、固定ボルト52の頭部52bは、ワッシャー54を介して平坦部42dに強く密着させることができるので、固定ボルト52は、底部ボス20を雌型チャック42に強く固定できる。したがって、U字状カップ22の半球体部分22aを雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43に堅固に把持(チャック)することができる。
【0043】
スピニングマシン本体46は、U字状カップ22をその半球体部分22aでチャックした雌型チャック42をその円筒状ボス42bで本体チャック44にチャックさせるとともに、本体チャック44がU字状カップ22をチャックした雌型チャック42をチャックして支持している状態で、本体チャック44を回転させることにより、U字状カップ22及び雌型チャック42を同時に回転させる。こうして、U字状カップ22の円筒部分22bは、その中心を回転中心軸として回転する。
【0044】
上述したように、雌型チャック42の円筒状ボス42bの他端側の平坦面42dでは、ワッシャー54を介して密着している固定ボルト52の雄ねじ部52aが、雌型チャック42の円筒状ボス42bの貫通孔42c内に挿入されて、貫通孔42c内に反対側(半球状凹部43の側)から貫入されたU字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス20の回り止め部20eの頭部中央の雌ねじ部20fにねじ込まれて強く固定され、U字状カップ22の半球体部分22aは雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43に堅固に把持(チャック)されている。このため、雌型チャック42が回転している時、U字状カップ22、したがってその円筒部分22bは、雌型チャック42の回転に対してずれることなく、一体的に回転する。
こうして、U字状カップ22は、回転している雌型チャック42に堅固に把持され、回転しているU字状カップ22の円筒部分22bをバーナ48によって加熱しながら回転するローラ50を押し付けて押圧することによって少しずつ湾曲させ、球形にするスピニング加工を行うと共に、ネックを成形するネッキング加工を行うことができる。
【0045】
本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器の製造方法は、以下のように実施される。
まず、予め、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工などの公知の塑性加工方法を用いて、金属材料製板材、又はパイプ材から図5に示すような半球体部分22aを持つU字状カップ22を作る。
次に、図5に示すスピニングマシン40に雌型チャック42を取り付けて、U字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス20を雌型チャック42に固定ボルト52でねじ止して固定することによりU字状カップ22を雌型チャック42にチャックし、U字状カップ22の円筒部分22bをスピニング加工で半球形化し、ネッキング加工でネックを成形する。
具体的な加工工程を下記に示す。
(1)まず、第1ステップでは、U字状カップ22の半球体部分22aを雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43にセットすると共に、U字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス20を雌型チャック42にねじ止して固定することによりU字状カップ22を雌型チャック42にチャックする。
(2)次に、第2ステップでは、スピニングマシン40を稼働させて加工部となる円筒部分22bを加熱用バーナ48で加熱する。
(3)次に、第3ステップでは、U字状カップ22の円筒部分22bの加工部の温度が約400℃前後になった時にスピニングマシン40のローラ50を動かして円筒部分22bを湾曲させて球形化するスピニング加工を行うと共にポート14となるネックを成形するネッキング加工(ボス部の成形加工)を行う。
【0046】
ここで、スピニング加工、及びネッキング加工中にU字状カップ22の円筒部分22bの加工部(ワーク)に発生する力は、図6に示すように、軸方向の圧縮力、引張力、半径方向の力、及びワークを回転する回転力の4種類となる。
1.まず、ワークの軸方向にかかる圧縮荷重は雌型チャック42、具体的にはその把持部42aで受ける。
2.次に、ワークの軸方向にかかる引張荷重は、雌型チャック42、具体的にはその平坦部42dに取り付けられた固定ボルト52の締め付け力によりワークを引っ張る力で受け持つ。
3.また、ワークにかかる半径方向の力は、チャック把握力(固定ボルト52によりワークを雌型チャック42に引き付ける力-ワーク軸方向にかかる引張荷重)による雌型チャック42、具体的にはその把持部42aの半球状凹部43にワークが接する各点の半径方向分力が受け持つ。
ワークの底部ボス20の回り止め部20eと雌型チャック42の貫通孔42cとの嵌め合いが緩い場合、ワークの外径が小さいと、チャック把握力よりも半径方向の力が大きくなり、ワークが雌型チャック42、具体的にはその把持部42aの半球状凹部の中で滑ることが発生する。
その場合は、ローラ50の送りを、後送りを主として前送りをしないでワークにかかる引張荷重が発生しないようにすれば良い。
又は、ローラ50をワーク軸に180度対向した位置に2個設けることによりワークに生ずる半径方向の荷重を相殺してゼロにする等の対策方法も考えられる。
なお、本発明においては、図2及び図3に示すように、容器本体12の底部16に底部ボス18、及び20を有することにより、U字状カップ22を、その軸端部分の底部ボス18、及び20によって支持することもできる。即ち、スピニング加工、及びネッキング加工時に、回転するU字状カップ22を、一方の軸端部分となる底部ボス18、及び20によって円筒部分22bに半径方向に加わる力に対してU字状カップ22を支持することもできる。
【0047】
4.ワークにかかる回転力は、ローラ50がワークを半径方向に局部的に押しつぶす時にワークの変形抵抗により生じる力と、ワークに接するローラ50の軸のベアリングの摩擦係数による力により発生する。
一方、ワークは、雌型チャック42(把持部42aの半球状凹部)に、固定ボルト52等のねじを用いて固定され、かつ回り止めも施されているので、ワークと雌型チャック42の静止摩擦力が回転力より大きく、ワークが雌型チャック42内で滑ることはない。
なお、上述したように、ワークの底部ボス20の回り止め部20eと雌型チャック42の貫通孔42cとの嵌め合いが緩い場合など、それでも回転力によりワークが雌型チャック42内で滑る場合は、雌型チャック42のチャック内表面をアルミナ等によるショットブラストを施工して表面を粗くするか、もしくは回転力が大きくなるワーク(U字状カップ22の円筒部分22b)の外周に近い部分の加工を行う場合はローラ50の加工度を下げるか、もしくはスピニングマシン40の芯押し台でワークを固定する等、種々の対策も考えられる。
以上のようにして、ワークの半球体部分22aの底部ボス20を雌型チャック42に固定すると共に回り止めして半球体部分22aを雌型チャック42にチャックしながら、加工条件、例えばローラ50の送り速度等を適切に調整し、また、ワークの加工温度を適度に調節することにより、スピニング加工、及びネッキング加工が可能となる。
【0048】
本実施形態においては、図5に示すスピニングマシン40を用いて球形継目無容器11を製造するものに限定されず、半球体部分22aの底部16に図2に示す底部ボス18を有するU字状カップ22を図5に示すスピニングマシン40を用いて全く同様にして球形継目無容器10を製造することができる。
即ち、U字状カップ22の半球体部分22aの底部ボス18を雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43の側から貫通孔42cに貫入し、雌型チャック42の平坦部42d側から貫通孔42cに固定ボルト52を挿入してU字状カップ22の底部ボス18の回り止め部18aの雌ねじ部18cねじ込んで固定し、U字状カップ22を雌型チャック42に堅固にチャックして、スピニングマシン40において雌型チャック42を回転させながらスピニング加工、及びネッキング加工を行って、球形継目無容器10を製造することができる
【0049】
また、本発明は、図5に示すスピニングマシン40を用いて球形継目無容器10、及び11を製造するものに限定されず、図7及び図8に示すように、スピニングマシン60、及び70を用いて、楕円体形状の継目無容器64、及びスピニングマシン40の本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部76aを持つ凸曲面体形状の継目無容器74を製造しても良い。
即ち、本発明の凸曲面体形状の継目無容器は、円筒状胴部を全く持たない図1及び図5に示す球形継目無容器10、及び11や、図7に示す楕円体形状の継目無容器64であっても良いし、図8に示す、スピニングマシン40の本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部76aを持つ凸曲面体形状の継目無容器74であっても良い。
なお、図7及び図8に示す楕円体形状の継目無容器64及び凸曲面体形状の継目無容器74は、図1及び図5に示す球形継目無容器10と、容器本体66及び76の形状が、容器本体12の形状と異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は、省略する。
【0050】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る金属製楕円体形状継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置(スピニングマシン)の一実施例の断面模式図である。
図7に示すスピニングマシン60は、予め、金属材料製板材等から深絞り加工等を行って作製され、楕円体形状継目無容器64の容器本体66の楕円体の半分の半楕円体部分68aと円筒部分68bを持つU字状カップ68の底部ボス18を固定ボルト52で雌型チャック62に固定してU字状カップ68の半楕円体部分68aを雌型チャック62で把持しながら円筒部分68bにスピニング加工、及びネッキング加工を行って、容器本体66の楕円体の残りの半分の半楕円体部分68cと、ポート14となるネックを成形して、半楕円体部分68aと半楕円体部分68cとからなる楕円形の容器本体66とポート14とからなる楕円体形状継目無容器64を製造するためのスピニングマシンである。
【0051】
図7に示すスピニングマシン60は、U字状カップ68の半楕円体部分68aを一端側の把持部62aで把持(チャック)する雌型チャック62と、雌型チャック62の他端側の円筒状ボス62bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック62を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、スピニング加工、及びネッキング加工時にU字状カップ68の円筒部分68bを所定温度に加熱するバーナ48と、U字状カップ68の円筒部分68bにスピニング加工、及びネッキング加工を施すローラ50とを有する。
雌型チャック62の把持部62aは、U字状カップ68の半楕円体部分68aと嵌合する半楕円状の凹み部(半楕円状凹部)63を持ち、雌型チャック62の円筒状ボス62bの中心には、雌型チャック62の円筒状ボス62bの中心には、把持部62a内面側から円筒状ボス62bの他端まで貫通する貫通孔62cが設けられている。また、把持部62aの半楕円状凹部63の反対側の円筒状ボス62bの端部の中央部分は、円筒状に凹んでおり、平坦な端面を形成し、平坦面62dを構成している。
【0052】
この貫通孔62cは、U字状カップ68の半球体部分68aの底部中心の底部ボス18を構成する回り止め部18a、及び円柱部18bを貫入させ、回り止め部18aをU字状カップ68(半球体部分68a)が雌型チャック62(半球状凹部63)に対して相対的に回転させないための回り止めとして機能させるためのものである。また、この貫通孔62cは、貫入された底部ボス18の回り止め部18aの頭部中央に内側に向けて形成された雌ねじ部18cに螺合させるために固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入するためのものである。固定ボルト52の頭部52bは、断面積の大きいワッシャー54を介して平坦部62dに強く密着させることができるので、固定ボルト52は、底部ボス18を雌型チャック62に強く固定できる。
ここで、少なくとも底部ボス18の回り止め部18aが挿入される部分の貫通孔62cの形状は、底部ボス18の回り止め部18aが回り止めとして機能できれば、特に制限的ではないが、四角形状の回り止め部18aと同じ形状の四角形状であり、回り止め部18aより少しだけ大きい形状であることが好ましい。貫通孔62cの半楕円状凹部63側の部分の形状は、底部ボス18を貫入できれば、いかなる形状であっても良い。また、貫通孔62cの外側の部分の形状は、固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入できれば、いかなる形状であっても良い。
【0053】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る金属製凸曲面体形状継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置(スピニングマシン)の一実施例の断面模式図である。
図8に示すスピニングマシン70は、予め、金属材料製板材等から深絞り加工等を行って作製され、凸曲面体形状継目無容器74の容器本体76の凸曲面体の半分の半凸曲面体部分78aと円筒部分78bを持つU字状カップ78の底部ボス18を固定ボルト52で雌型チャック72に固定してU字状カップ78の半凸曲面体部分78aを雌型チャック72で把持しながら円筒部分78bにスピニング加工、及びネッキング加工を行って、容器本体76の凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分78cと、ポート14となるネックを成形して、半凸曲面体部分78aと半凸曲面体部分78cとからなる凸曲面形の容器本体76とポート14とからなる凸曲面体形状継目無容器74を製造するためのスピニングマシンである。
【0054】
図8に示すスピニングマシン70は、U字状カップ78の半凸曲面体部分78aを一端側の把持部72aで把持(チャック)する雌型チャック72と、雌型チャック72の他端側の円筒状のボス72bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック72を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、スピニング加工、及びネッキング加工時にU字状カップ78の円筒部分78bを所定温度に加熱するバーナ48と、U字状カップ78の円筒部分78bにスピニング加工、及びネッキング加工を施すローラ50とを有する。
雌型チャック72の把持部72aは、U字状カップ78の半凸曲面体部分78aと嵌合する半凸曲面状の凹み部(半凸曲面状凹部)73を持ち、雌型チャック72の円筒状ボス72bの中心には、把持部72a内面側から円筒状ボス72bの他端まで貫通する貫通孔72cが設けられている。また、把持部72aの半球状凹部73の反対側の円筒状ボス72bの端部の中央部分は、円筒状に凹んでおり、平坦な端面を形成し、平坦面72dを構成している。
【0055】
この貫通孔72cは、U字状カップ78の半球体部分78aの底部中心の底部ボス18を構成する回り止め部18a、及び円柱部18bを貫入させ、回り止め部18aをU字状カップ78(半球体部分78a)が雌型チャック72(半凸曲面状凹部73)に対して相対的に回転させないための回り止めとして機能させるためのものである。また、この貫通孔72cは、貫入された底部ボス18の回り止め部18aの頭部中央に内側に向けて形成された雌ねじ部18cに螺合させるために固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入するためのものである。固定ボルト52の頭部52bは、断面積の大きいワッシャー54を介して平坦部72dに強く密着させることができるので、固定ボルト52は、底部ボス18を雌型チャック72に強く固定できる。
ここで、少なくとも底部ボス18の回り止め部18aが挿入される部分の貫通孔72cの形状は、底部ボス18の回り止め部18aが回り止めとして機能できれば、特に制限的ではないが、四角形状の回り止め部18aと同じ形状の四角形状であり、回り止め部18aより少しだけ大きい形状であることが好ましい。貫通孔72cの半凸曲面状凹部73側の部分の形状は、底部ボス18を貫入できれば、いかなる形状であっても良い。また、貫通孔72cの外側の部分の形状は、固定ボルト52の雄ねじ部52aを挿入できれば、いかなる形状であっても良い。
【0056】
なお、図7及び図8に示すスピニングマシン60及び70は、図5に示すスピニングマシン40と、図7及び図8に示す継目無容器64及び74、容器本体66及び76、U字状カップ68及び78、並びに底部ボス18の形状が、図5に示す球形継目無容器10、容器本体12、U字状カップ22、及び底部ボス20の形状と異なるために、図7及び図8に示す雌型チャック62及び72の把持部62a及び72aの形状が、図5に示す雌型チャック42の把持部42aの形状と異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は、省略する。なお、図7及び図8に示すU字状カップ68及び78においても、図2に示す底部ボス18の代わりに、図3に示す底部ボス20を取り付けたものであっても良い。本発明では更に、底部ボス18、又は20と固定ボルト52を用いる代わりに、上述した中央に雄ねじ部を持つ回り止め部を有する底部ボスと回り止め部の雄ねじ部に螺合するナット、又はワッシャー付きナットを用いるものであっても良い。
また、継目無容器64及び74は、図7及び図8に示すスピニングマシン60及び70を用いることにより、図5に示すスピニングマシン40を用いた球形継目無容器10の製造方法と、同様な製造方法で製造できる。したがって、継目無容器64及び74の製造方法の詳細な説明は省略する。
以上から、図7及び図8に示すスピニングマシン60及び70を用いて、それぞれ図7及び図8に示す継目無容器64及び74を製造することができる。
本発明の継目無容器の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0057】
次に、本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法によって製造される複合容器について説明する。
この複合容器は、本発明の第1~3のいずれかの実施形態の継目無容器の製造方法によって製造された金属製継目無容器と、この金属製継目無容器の容器本体の凸曲面体の外表面全体を被覆する補強材料と、を有するものであり、金属製継目無容器の容器本体の凸曲面体の外表面全体は、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆されたものである。
即ち、この複合容器は、予め製造された金属製継目無容器を、本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法に従って、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆することにより製造することができる。
本発明の複合容器は、宇宙用ロケットに搭載されることが好ましく、宇宙航空用途であることが好ましい。
【0058】
図9は、本発明の複合容器の製造方法によって製造される球形複合容器の一例の断面図である。
図9に示すように、球形複合容器30は、金属材料製の容器本体12、及びこの容器本体12に継ぎ目なく一体化された円筒形の金属材料製のポート14を有する金属製球形継目無容器10と、金属製球形継目無容器10の容器本体12の外表面全体を被覆する補強材料の被覆層32と、を有する。以下では、図1に示す金属製球形継目無容器10を代表例として説明するが、図7及び図8に示す継目無容器64及び74を用いても良いことは勿論である。
なお、容器本体12は、底部16に図2(A)、(B)に示すような底部ボス18が取り付けられている。なお、容器本体12の底部16に取り付けられる底部ボスは、図2に示すような底部ボス18に限定されず、図3(A)、(B)に示すような底部ボス20であっても良いし、中央に雄ねじ部を持つ回り止め部を有する底部ボスと回り止め部の雄ねじ部に螺合するナット、又はワッシャー付きナットを用いるものであっても良いのは勿論である。
【0059】
ここで、被覆層32は、金属製球形継目無容器10のポート14及び底部ボス18を除く、容器本体12の外表面全体に隙間なく設けられている補強材料の層である。
被覆層32を構成する補強材料としては、金属製球形継目無容器10の容器本体12の外表面全体を被覆することにより保養できる材料であれば、特に制限的ではなく、例えば炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維であることが好ましい。なお、有機繊維としては、ケブラー、及びザイロンの少なくとも1つが好ましい。
被覆層32は、球形継目無容器10のポート14及び底部ボス18を除く、容器本体12の外表面全体に、フィラメントワインディング法を用いて、補強材料である上記繊維を被覆して得られたものである。
即ち、本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法は、予め製造された金属製球形継目無容器10のポート14及び底部ボス18を除く、容器本体12の外表面全体を、補強材料となる上記繊維を用いてフィラメントワインディング法で被覆して被覆層32を形成することにより球形複合容器30を製造するものである。
【0060】
なお、フィラメントワインディング法(Filament Winding)では、金型(マンドレル)の代わりに、ポート14、及び底部ボス18を中心軸として金属製球形継目無容器10を回転させ、上記繊維の粗紡糸(ロービング)を1~数十本引き揃え、樹脂含浸槽を通して樹脂(マトリックス)を含浸させながら、回転する球形継目無容器10に所定の厚さまで、張力(テンション)を掛けて球面に合わせて角度を調整しながら連続的に巻き付けて硬化させて被覆層32を成形する。
こうして、球形継目無容器10のポート14、及び底部ボス18を除く、容器本体12の外表面全体に、軽量かつ、機械的強度、電気絶縁性、耐薬品性、寸法安定性に優れた被覆層32を形成することができる。
本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法、及びこの製造方法によって製造された複合容器は、基本的に以上のように構成される。
【0061】
従来の容器の加工方法は、容器円筒部をスピニングマシンの中空チャックに挿入して胴部をチャックして、肩部をネッキング加工している。このため、容器の外径が大きくなるとスピニングマシンの中空チャックを支えるベアリングも当然の如く大きくなり、スピニングマシンの設備費用は高額となるので航空宇宙に使用する容器のように少量製作する場合は、そのための設備を設置することが難しい。
また、従来の容器の加工方法では、球形容器の様に胴部がない容器、又は胴部が短くて充分に把持できない容器の加工はできない。
しかしながら、本発明によれば、胴部の無い容器、又は胴部が短くて従来の胴部をチャックする方法で成形できなかった継目無短尺胴部容器のドーム加工が可能となる。なお、
本発明の製造方法で加工できる容器の胴部長さには限定がないのはもちろんである。
【0062】
以上詳述したように、本発明においては、円筒状胴部が全く無いか、あるいは円筒状胴部が短すぎてスピニングチャックの把握力が充分に得られず、通常のスピニングマシンを使った時にネッキングができない容器(U字状カップ)でもネッキングが可能となり継目無容器を作ることができる。
本発明の継目無容器は、底部ボスを除いて容器本体自体には溶接部分がないので製造肉厚に溶接効率を考慮する必要がなく理論式を満足する最小の肉厚で製造可能となり、継目無容器を軽量とすることができる。
また、本発明の継目無容器は、底部ボスを除いて容器本体自体には溶接部分がないので溶接にかかる、技能者の確保、溶接設備、設備の管理、溶接部の非破壊検査及び気密検査などが不要となるのでコストダウンとなる。
本発明の球形継目無容器の場合、材料肉厚は円筒部を有する円筒形継目無容器の1/2の厚さでよいことが分かる。
本発明の継目無容器では、容器の収納場所が狭い場合でも、容器の鏡板部形状を皿形、又は楕円体にすることにより、本発明の継目無容器を円盤に近い形で継ぎ目なく製作することができる。
【0063】
以上、本発明の継目無容器、及びその製造方法、並びに複合容器、及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
10、11 (金属製球形)継目無容器
12、66、76 容器本体
14 ポート
14a ポートの接続部
16 底部
18 、20 底部ボス
18a、20e 回り止め部
18b 円柱部
18c、20b、20f 雌ねじ部
20a 底部ネック
20c 回り止め部材
20d、52a 雄ねじ部
22、68、78 U字状カップ
22a、22c 半球体部分
22b、68b、78b 円筒部分
30 (球形)複合容器
32 被覆層
40、60、70、84 継目無容器の製造装置(スピニングマシン)
42、62、72 雌型チャック
42a、62a、72a 把持部
42b、62b、72b 円筒状部(円筒状ボス)
42c、62c、72c 貫通孔
42d、62d、72d 平坦面
43 凹み部(半球状凹部)
44 本体(スピニング)チャック
46 スピニングマシン本体
48 バーナ
50 ローラ
52 固定ボルト
52b 頭部
54 ワッシャー
63 半楕円状の凹み部(半楕円状凹部)
64 楕円体形状の継目無容器
68a、68c 半楕円体部分
73 半凸曲面状の凹み部(半凸曲面状凹部)
74 凸曲面体形状の継目無容器
76a 円筒状胴部
78a、78c 半凸曲面体部分
80 円筒形継目無容器
82 有底の円筒体(U字状カップ)
82a、82d 湾曲底部
82b 円筒形胴部
82c 円筒状開口部
86 バルブ取り付け用のボス
88 円筒形容器本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10