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特許7247117ストリッピングを促進するガス/固体流動化システムのための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ストリッピングを促進するガス/固体流動化システムのための装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/34 20060101AFI20230320BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B01J8/34
C10G11/18
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019569840
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018041906
(87)【国際公開番号】W WO2019014502
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】15/649,729
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517254868
【氏名又は名称】ティー.イーエヌ プロセス テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】マラー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グボルゾー エウセビオス アンク
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-532225(JP,A)
【文献】特開昭58-030332(JP,A)
【文献】米国特許第04830792(US,A)
【文献】特表平03-505303(JP,A)
【文献】特表2014-512428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00- 8/46、
10/00-12/02、
14/00-19/32、
21/00-38/74
B01F 1/00- 5/26
C10G 1/00-99/00
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル及び前記シェル内の開放内部領域を有する容器;と、前記開放内部領域内に位置決めされている少なくとも1つの波形パッキング要素であって、交互に交差する平面内に配置されている複数のひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンであって、前記交互に交差する平面スタンチョン間に又は前記交互に交差する平面スタンチョンに隣接して複数の開放空間を提供する前記平面スタンチョンを備え、3次元格子構成を有し、前記ひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンは山及び谷を含み、前記山及び谷は、シェル内で、波形パッキング要素に組み込まれる際に、平面スタンチョンの最大傾斜線から90度未満に角度付けられる、前記波形パッキング要素;と、前記波形パッキング要素内の固体粒子;と、前記波形パッキング要素の中を前記固体粒子に対して向流方向に流動し、前記波形パッキング要素内での前記固体粒子の流動化を引き起こしてガス/固体流動化床を形成する、少なくとも1つのガス流;とを含む、ガス/固体流動化床。
【請求項2】
ひだ付き平面スタンチョンが、長手方向若しくは横方向に、又はその両方の組合せで配置されている山及び谷を含む、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項3】
波形パッキング要素が、ひだ付き平面スタンチョンを備える、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項4】
波形パッキング要素が、リブ付き平面スタンチョンを備える、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項5】
リブ付き平面スタンチョンのリブが、波形パッキング要素に組み込まれる際に、平面スタンチョンの最大傾斜線から90度未満に角度付けされる、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項6】
ひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンが、1又は2以上の穴を有する、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項7】
波形パッキング要素の高さが、2.5cm~91.4cmである、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項8】
波形パッキング要素の高さが、15.2cm~61.0cmである、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項9】
山は、高さが0.2cm~5.1cmであり、谷は、深さが0.2cm~5.1cmであり、前記山及び前記谷の幅は、0.6cm~61.0cmである、請求項2に記載のガス/固体流動化床。
【請求項10】
リブ付き平面スタンチョンのリブは、高さが0.2cm~5.1cmであり、前記リブ間の距離が、0.6cm~61.0cmである、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項11】
山及び谷が、波形パッキング要素に組み込まれる際に、平面スタンチョンの最大傾斜線から45度に角度付けされる、請求項2に記載のガス/固体流動化床。
【請求項12】
山及び谷が、平面スタンチョン上の同じ方向又は異なる方向に角度付けされる、請求項2に記載のガス/固体流動化床。
【請求項13】
各平面スタンチョンの山及び谷が、隣接するスタンチョン上の前記山及び前記谷に対して同じ方向又は反対方向に存在する、請求項2に記載のガス/固体流動化床。
【請求項14】
各平面スタンチョンのリブが、隣接するスタンチョン上の前記リブに対して同じ方向又は反対方向に存在する、請求項に記載のガス/固体流動化床。
【請求項15】
容器と連通して、ガス流を開放内部領域の中へ、波形パッキング要素を通って方向付け、前記ガス流が前記波形パッキング要素の中を流動した後、前記容器から前記ガス流を除去するガス流流動導管を含む、請求項1に記載のガス/固体流動化床。
【請求項16】
容器と連通して、固体粒子を波形パッキング要素に方向付け、前記波形パッキング要素の中を通過した後、前記容器から前記固体粒子を除去する固体粒子流動導管を含む、請求項15に記載のガス/固体流動化床。
【請求項17】
ガス流動導管及び固体粒子流動導管が、固体粒子とガス流との向流を提供するように配置されている、請求項16に記載のガス/固体流動化床。
【請求項18】
固体粒子が、触媒粒子を含む、請求項16に記載のガス/固体流動化床。
【請求項19】
シェル及び前記シェル内の開放内部領域内に位置決めされている少なくとも1つの波形パッキング要素を有する容器内で、固体粒子を流動化するための方法であって、前記波形パッキング要素が、交互に交差する平面内に配置されている複数のひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンを備え、前記平面スタンチョンが、前記交互に交差するひだ付き平面スタンチョン間に又は前記交互に交差するひだ付き平面スタンチョンに隣接して複数の開放空間を提供し、前記波形パッキング要素が、3次元格子構成を有し、前記ひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンは山及び谷を含み、前記山及び谷は、シェル内で、波形パッキング要素に組み込まれる際に、平面スタンチョンの最大傾斜線から90度未満に角度付けられ、前記方法が、前記波形パッキング要素内に複数の固体粒子を提供するステップと、前記波形パッキング要素内で、少なくとも1つのガス流を前記波形パッキング要素の中を流動させることによって前記固体粒子の流動化をもたらすステップとを含む、前記方法。
【請求項20】
波形パッキング要素を通る固体粒子をガス流の流動方向に対して向流方向に方向付けるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
波形パッキング要素内に固体粒子の量の追加を提供するとともに、ガス流が前記波形パッキング要素の中を流動している間、前記波形パッキング要素から、流動化された固体粒子のうちの少なくともいくつかを除去するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ガス流が波形パッキング要素の中を流動している間、前記波形パッキング要素内の固体粒子の量を維持するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
固体粒子が、揮発性炭化水素に関連する触媒粒子であり、ガス流を波形パッキング要素の中を流動させるステップ中に、前記揮発性炭化水素の少なくともいくつかが、流動化中に前記ガス流によって前記触媒粒子からストリッピングされる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ガス流が、水蒸気を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
固体粒子が、コークス付着物を含有する触媒粒子であり、前記コークス付着物を燃やして、ガス流を接触装置の中を流動させるステップ中に前記触媒粒子の再生を引き起こすステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「DEVICE FOR GAS SOLIDS FLUIDIZED SYSTEM TO ENHANCE STRIPPING」という名称の2017年7月14日に出願された米国特許出願第15/649,729号に対する優先権の便益を主張するものであり、その内容は、その全体がすべての目的で参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、固体と流体とが向流関係で流動する流動化床に関する。より詳細には、本明細書に開示される実施形態は、流動化床内の固体と流体との間の接触をしやすくするための内部、より詳細には、パッキング要素を対象とする。
【背景技術】
【0003】
流動接触分解(FCC,Fluidized Catalytic Cracking)処理は、石油精製所において一般に使用されている化学的処理であり、その目的は、重い高分子量の炭化水素材料をより軽く、より低い分子量の炭化水素留分に変換することである。このタイプの処理では、炭化水素原料は、高温で蒸発させられ、同時に、原料蒸気中に懸濁した状態で維持されているクラッキング触媒の粒子と接触させられ、それによって同伴される。クラッキング反応により、所望の分子量範囲がもたらされ、それに対応して沸点が低下した後、得られる生成物は、触媒粒子から分離される。粒子は、その後、ストリッピングされて、同伴された炭化水素を回収し、その上に形成されるコークスを燃やすことによって再生され、再度、クラッキングすべき原料と接触させられることによってリサイクルされる。
【0004】
この処理では、炭化水素の沸点の所望の低下は、触媒反応及び熱反応の制御によってもたらされる。これらの反応は、微細霧化された原料が触媒粒子に接触させられると、ほとんど瞬時に行われる。しかしながら、触媒粒子が原料と接触する間の短い時間では、本質的に炭化水素が吸着されコークス及び他の汚染物質が触媒の活性部位上に付着するので、粒子は急速に失活することになる。したがって、失活した触媒を連続的に例えばスチームによりストリッピングして、ボイドに吸着され同伴される炭化水素を回収し、単段又は多段の再生セクションにおけるコークスの燃焼の制御によって触媒を連続的に及びその特性を変えることなく再生してから、触媒粒子を反応ゾーンへとリサイクルさせることが必要である。
【0005】
ストリッピング(stripping)は、流体接触分解処理における決定的ステップのうちの1つである。実際、ストリッピングが不十分であると、結果的に、反応器廃液が触媒粒子上及び触媒粒子間に残り、それにより、再生ステップ中、再生器には、接触反応を駆動させるのに必要な熱を超える過度な熱生成を伴って、さらなる燃焼負荷が与えられることになる。結果として、再生器への同伴された炭化水素蒸気を燃焼させることは、変換された生成物の最終収率を損失することを表す。
【0006】
FCC処理では、触媒粒子のストリッピング及び再生は、通常、容器内での流体流と触媒粒子との活発な混合及び密な接触を助長するように流動化床において行われる。流動化床は、粒子を懸濁させ固体粒子の乱流混合を引き起こすのに十分な流量で、流体流、通常は蒸気流を小さい固体粒子の床の中を上向きに通すことによって生じさせられることが普通である。
【0007】
一般には、触媒粒子から反応器廃液が分離された後、粒子は、ストリッピングチャンバに方向付けられ、ここで、ストリッピングが、下降密度流動化相(descending dense fluidized phase)で行われる。チャンバの底部で注入されるガス状流体を使用して、コークスの付いた触媒粒子を流動化させ、粒子間の粒間空間内にある同伴された炭化水素を変位させる。このガス状流体には、触媒粒子によってより強力に吸着されるスチームなどの極性材料を使用することが優先され、したがって、炭化水素はより容易に変位させられる。最後に、ストリッピングされた触媒粒子は、再生ゾーンに移される。
【0008】
その上、ストリッピング作業には、課題がある。具体的には、触媒粒子の進行を制御し、チャネリング(大きい泡が流動化床の中を直接通過すること)、及び逆混合(特にストリッピングチャンバ壁の領域において、流動化不良の粒子が下方に流動すること、又はさらにそのような粒子が再循環すること)に関係している部分的な脱流動化を回避することは困難である。したがって、失活した触媒粒子の範囲及び平均ストリッピング時間、並びに粒とガス状流体との間の接触品質は、大きい容量の流動化床においては特に制御することが困難である。加えて、触媒流量が設計された流量よりもはるかに低いレベルまで減少する場合、ストリッパ内の触媒の流動化を維持し十分なストリッピング効率を果たすためには、触媒の比率に対するスチームの比率がより高いことが要求される。過度なスチームは、ストリッパに連結されている設備に対してガス及び液体の負荷を増加させる。例えば、過度なスチームは、処理される炭化水素の1ポンド当たりに生成される酸性廃水の量を増加させるだけでなく、過度なスチームを生成し処理するための作業費用も増加させる可能性がある。
【0009】
これらの問題を克服するには、ストリッパチャンバの内部の装置を利用して、ストリッピング流体による効果的な混合を容易にし、粒子の分散及び均一化を改良する必要がある。具体的には、ストリッピング装置の中を通過した後、粒子は、流体との体系化された撹拌の状態を確保しランダムな接触を促進する空間内に再分布する。流体及び粒子は、単流から複数の方向に方向付けられる。その上、この装置は、粒子の逆混合及びチャネリング、並びにストリッピングチャンバ内の固体又はガスのポケットの形成を防止する。
【0010】
構造化されたパッキング要素を内部ストリッピング装置として使用すると、固体粒子と流体との間の接触ゾーンの寸法を抑えることが可能になる。実際、この接触は明らかに改良されるので、ストリッピングチャンバを通る非常に高い触媒束(catalyst fluxes)ですらストリッピング性能を損失することなく、従来技術のストリッピングチャンバと比較して、より小さいストリッピングチャンバを使用することが可能である。
【0011】
ストリッピングを改良するための異なる構造化パッキング要素が提案されている。例えば、Rall et al.に対する米国特許第6,224,833号には、交差する平面内に平面部分の対を配置する接触要素内に形成されるガス/固体流動化床が開示されており、各平面部分は、1又は2以上のウェブと、各ウェブに隣接する1又は2以上の開放スロットによって形成されている。ウェブ及びスロットは、平面部分のうちの一方におけるウェブが、対になった平面部分におけるスロットに交差するように配置されている。流動化床は、例えばFCCシステム内の触媒ストリッパ及び/又は再生器におけるガス流によって流動化される触媒粒子とすることができる。米国特許第6,224,833号の商業実績では、段ストリッピング効率の低下、ガス及びスチームの不均等分布、並びに所望のストリッピング効率を達成するための予想ストリッピングスチーム使用量よりも高いストリッピングスチーム使用量などの弱点が示されている。
【0012】
別の例は、触媒及びスチームが互いに接触するための多数の内部ひだ付きチャネルを形成するようにともに溶着されるひだ付きシートからなる、Senegas et al.に対する米国特許第5,716,585号に記載のひだ付きパッキングである。このパッキングタイプは、触媒から炭化水素をストリッピングするのにあまり効率的でないことが米国特許第6,224,833号に示されている。
【0013】
Lehman et al.に対する米国特許第6,251,499号には、交差ひだ付きパッキングのためのひだ付きストリップが開示されており、このストリップは、その下側縁部に、曲線を有する少なくとも1つの下向きに突出するモチーフを含む。ひだ付きパッキングは、浮体式石油プラットフォーム又はバージに搭載されている空気蒸留カラムにおいて有用である。
【0014】
米国特許第6,224,833号の問題及び制約を克服する改良された構造化パッキング要素の必要性がある。さらには、同様のストリッピングレベルを達成するのに要素の数を抑えることが要求される構造化パッキング要素、又は米国特許第6,224,833号に記載されているのと同じ数の要素についてのストリッピング効率を増加させることができる要素の必要性がある。さらには、最適なストリッピング効率を達成するのにスチームの量を抑えることが要求されるパッキング要素の必要性がある。
【0015】
本明細書に開示される実施形態は、米国特許第6,224,833号、及び任意のタイプの平面構造化パッキング、又はガス/固体適用例におけるストリッピングに使用される、例えば、米国特許第8,936,757号、若しくは米国特許第9,238,210号、若しくは米国特許第7,179,427号に記載されるパッキングに対して改良する。本明細書に示されている実施形態は、例えば、米国特許第6,224,833号の基本構造を使用し、それに関連する問題を新規のパッキング要素設計及び方法を提供することによって解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第6,224,833号
【文献】米国特許第5,716,585号
【文献】米国特許第6,251,499号
【文献】米国特許第8,936,757号
【文献】米国特許第9,238,210号
【文献】米国特許第7,179,427号
【文献】米国特許第2,767,967号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書に開示される一実施形態は、ガス/固体流動化床を対象とし、このガス/固体流動化床は、シェル及びシェル内の開放内部領域を有する容器と、開放内部領域内に位置決めされている少なくとも1つの波形パッキング要素とを備える。この波形パッキング要素は、交互に交差する平面内に配置されている複数のひだ付き又はリブ付き平面スタンチョン(planar stanchions)を備え、この平面スタンチョンは、交互に交差する平面スタンチョン間に若しくは交互に交差する平面スタンチョンに隣接して複数の窓又は開放空間を提供し、3次元格子構成を形成する。波形パッキング要素の平面スタンチョンは、戦略的な点にある穴を組み込んで、平面スタンチョン間のガス又は/及び触媒の流動を助けることができる。ガス/固体流動化床は、流動化床エリア内に固体粒子と、固体粒子に対して向流方向に流動し、波形パッキング要素及び流動化床内での固体粒子の流動化を引き起こす少なくとも1つのガス流とをさらに含む。
【0018】
別の実施形態によれば、ひだ付き平面スタンチョンは、山及び谷を備え、この山及び谷は、波形パッキング要素を形成するように組み込まれる際に、ひだ付き平面スタンチョンの最大傾斜線(fall-line)から90度未満に角度付けされる。山及び谷の寸法は、任意の特定の処理又は設備に対して必要に応じて異なってよく、ただし、山の高さは、約1/16インチ~約2インチの範囲であることが普通であるが、典型的には、約1/4インチの高さである。谷の深さは、約1/16インチ~約2インチの範囲であることが普通であるが、典型的には、約1/4インチの深さである。山及び谷の幅は、限定されるものではないが、約1/4インチ~約24インチの範囲であることが普通であるが、典型的には、約3/4インチであり、波形パッキング要素内で固体粒子を開放エリアへと効果的に送り込むチャネルを形成する。
【0019】
さらなる別の実施形態によれば、リブ付き平面スタンチョンは、平坦な平面スタンチョンの頂面及び/又は底面及び/又は側面にリブを備える。リブは、波形パッキング要素を形成するように組み込まれる際に、リブ付き平面スタンチョンの最大傾斜線から90度未満に角度付けされるチャネルを形成する。リブの寸法は、任意の特定の処理又は設備に対して必要に応じて異なってよく、高さは、約1/16インチ~約2インチであることが普通であるが、典型的には、約1/4インチの高さである。さらには、リブは、形状として、限定されるものではないが、例えば、スタンチョンの面上のリブ間のチャネルを形成する正方形、長方形、円形、又は湾曲の面を挙げることができる。リブ間の距離は、必要に応じて異なってよく、約1/4インチ~約24インチのいずれかのところに離間されることが普通である。典型的には、リブは、互いから約3/4インチ、又は波形パッキング要素内で固体粒子を開放エリア内に送り込むチャネルを効率的及び効果的に形成する距離に離間される。
【0020】
別の実施形態によれば、ひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンにおける穴は、戦略的な場所に開けられて、固体とストリッピング流体との交差混合を助ける。穴は、直径が少なくとも約1/4インチ以上であり、円形、楕円形、又は他の形状とすることができる。
【0021】
別の実施形態によれば、波形パッキング要素の高さは、約1インチ~約36インチで異なってよく、又はより大きく、好ましくは約6インチ~約24インチでもよい。
【0022】
別の実施形態によれば、平面スタンチョンは、90度未満に傾斜している。
【0023】
別の実施形態によれば、ひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンによって形成されるチャネルは、スタンチョン上の同じ方向に傾斜していない。
【0024】
別の実施形態によれば、隣接するスタンチョン上のひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョンによって形成されるチャネルは、同じ方向を指し示していない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本明細書に開示される波形パッキング要素の一実施形態を含んでいる流動化床を示すカラムの概略図である。
図2】本明細書に開示される波形パッキング要素の一実施形態の概略図である。
図3】波形パッキング要素の寸法、及び単一のひだ付き平面スタンチョンの配置の一実施形態の概略的な頂面図と側面図である。
図4】様々な角度からの波形パッキング要素の概略図である。
図5A】ひだ付き又はリブ付き平面スタンチョン上の波形パッキング要素のチャネルパターンの一実施形態の概略図である。
図5B】ひだ付き又はリブ付き平面スタンチョン上の波形パッキング要素のチャネルパターンの一実施形態の概略図である。
図5C】ひだ付き又はリブ付き平面スタンチョン上の波形パッキング要素のチャネルパターンの一実施形態の概略図である。
図5D】ひだ付き又はリブ付き平面スタンチョン上の波形パッキング要素のチャネルパターンの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態について、本開示の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して本明細書に以降、より完全に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的で完璧になるように、及び当業者に実施形態の範囲を完全に伝えるように与えられる。全体を通じて、同様の数字は、同様の要素を示すが、必ずしも同じ又は同一の要素を示すとは限らない。
【0027】
図1は、本明細書に開示されるガス/固体流動化床(5)内の波形パッキング要素(1)の一実施形態を示している。波形パッキング要素(1)は、円筒形容器(2)内に位置決めされて示されている。円筒形容器(2)はまた、例えば、正方形又は長方形でもよく、流体接触分解(FCC)ユニットにおいて使用するのに適している材料から構築される。円筒形容器(2)は、熱交換、物質伝達、及び/又は化学反応に関わる処理など、ガス及び固体の様々なタイプの流動化床処理に使用され得る。例えば、円筒形容器(2)を使用して、FCC処理で、使用済み触媒から炭化水素をストリッピングし、又は使用済み触媒のコークスを燃やすことによって使用済み触媒を再生することができる。加えて、円筒形容器(2)は、FCCで気体と高温触媒との間の熱交換を果たすために、或いはFCC立管に入る触媒を調節する触媒流動の整流器若しくは触媒均一化装置として、又は流動化床内だけでなく他の処理における脱同伴装置としても使用され得る。
【0028】
図1に示されているように、波形パッキング要素(1)は、円筒形容器(2)の横断面のすべてにわたって、又は一部分にわたって90度未満の鋭角で延伸する複数のひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョン(3)(リブ付き平面スタンチョンは図示せず)を備える。複数のひだ付き平面スタンチョン(3)は、交互に交差する平面内で延伸し、一方の端部か、又はそれらの長さに沿う中間部分かのいずれかにおいて、従来の手段によって、ともに接合されている。ひだ付き(並びに/又はリブ付き)平面スタンチョン(3)の幅及び厚さは、限定されるものではないが、それぞれ、例えば3”及び5/32”の典型的な値による機械的な考慮事項から決定される。平面スタンチョン(3)間に形成される窓(4)、すなわち、開放空間又はスロットの大きさは、パッキング要素の高さに依存する。窓(4)は、ガス及び固体の貫通流動を許容する。加えて、ひだ付き平面スタンチョン(3)自体には、流体及びガスが中を流動することを許容する孔が開けられていてもよい。本質的には、交互に交差する平面内に配置されているひだ付き平面スタンチョン(3)は、各ひだ付き平面スタンチョン(3)間の実質的に正方形又は菱形の開放空間、すなわち、窓(4)を有する3次元格子構成を提供する。したがって、交互に交差するひだ付き平面スタンチョン(3)によって形成される角度は、典型的には、60度又は90度であるが、必要に応じて他の角度でもよい。
【0029】
図2は、波形パッキング要素(1)の一実施形態だけでなく、ひだ付き平面スタンチョン(3)の詳細を示しており、このひだ付き平面スタンチョン(3)は、非平坦又は波状の金属で作られており、米国特許第2,767,967号に記載されている商標RIPPLE TRAYの下で販売されている波状金属処理トレイと似て見える。図3は、ひだ、すなわち、波若しくは畝、及び溝を示しており、これらは、チャネルを形成し、ひだ付き平面スタンチョン(3)の中を波形に広がる山(8)及び谷(9)から構成されている。山及び谷は、波形パッキング要素(1)へと組み込まれる際に、ひだ付き平面スタンチョン(3)の最大傾斜線から90度未満に、典型的には、約45度に角度付けされるチャネルを形成する。この配置は、米国特許第5,716,585号に記載されているひだ付きシートとは異なる。各谷を横断する距離と、各谷(9)及び山(9)の深さ及び高さとは、限定されるものではないが、チャネルを形成する山及び谷の実際の角度及び深さは、改良されたストリッピング効率に最適化される。この実施形態によれば、図3に示されているように、チャネルを形成する山(8)及び谷(9)の角度は、ひだ付き平面スタンチョン(3)の最大傾斜線から約45度であり、各谷(9)を横断する距離は、典型的には、約3/4インチであるが、約1/4インチ~約24インチの範囲とすることもあり得、山及び谷は、高さ/深さが、典型的には、約1/4インチであるが、それぞれ、約1/16インチ~2インチの範囲とすることもあり得る。
【0030】
したがって、ひだ付き平面スタンチョン(3)の波状金属、及びリブ付き平面スタンチョン(図示せず)のリブにより、半径方向の混合が助長され、流動化ガス状媒体との固体粒子の接触が増加する。対照的に、平坦面のスタンチョン、すなわち、本明細書に説明するひだ付き又はリブ付きではないスタンチョンは、触媒粒子の、ガスからの隔離を助長し、粒子は、スタンチョンの平頂面を下って開放空間窓(4)から離れるように移動し、ここで、触媒は、流動化ガス(7)と混ざり合うことになる。具体的には、ひだ付き平面スタンチョン(3)のチャネルを形成する波、すなわち、山及び谷、並びに平坦な平面スタンチョン上のチャネルを形成するリブは、触媒粒子の、開放空間窓(4)への横方向の移動を促進するように角度付けされているので、固体粒子と蒸気とのより良好な混合及び接触が存在する。その結果、触媒粒子がひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョン上を多方向に移動することになり、結果的に、従来技術のパッキング要素における触媒成層とは反対に、波形パッキング要素(1)内での触媒と流動化ガス(7)との間のより良好な接触につながる。したがって、波形パッキング要素(1)は、所与の量のストリッピングスチーム及びストリッピング段(stripping stages)についてのストリッピング効率の増加を提供する。
【0031】
波形パッキング要素(1)は、波形パッキング要素(1)内での内部還流に起因して、単一要素のストリッピング段の数の増加を提供する。したがって、波形パッキング要素(1)は、従来技術のパッキング要素と比較して、同様のストリッピングレベルを達成するのに要求されるパッキング要素の数の低減を提供し、又は波形パッキング要素(1)は、同じ数の要素についてのストリッピング効率の増加を提供し、又は代替として、波形パッキング要素(1)は、最適なストリッピング効率を達成するのに要求されるスチームの低減を提供する。
【0032】
波形パッキング要素(1)は、商標RIPPLE TRAY並びに商標KFBEの構造化パッキング要素及び/又は他のストリッパパッキング要素をもたらすのに使用されるものなど、すでによく確立されている材料及び技術を利用して製造され得る。
【0033】
非限定的な形で、図5A図5B図5C、及び図5Dは、それぞれ、平面スタンチョンの角度付きリブ及び波によって形成される多くのパターンのうちのいくつかを表している。
【0034】
複数のひだ付き及び/又はリブ付き平面スタンチョン(3)は、波形パッキング要素(1)を形成するように、整列され、相互連結され、交差する形でともに接合されている。図4は、異なる角度からの波形パッキング要素(1)の図を示している。いくつかの波形パッキング要素(1)は、端部と端部とが円筒形容器(2)内で離間して、又は接触する関係に置かれていてよい。隣接するパッキング要素(1)は、整列して置かれていても、又は互いから45度、90度、若しくは別の所望の角度などの角度で回転させてもよい。各ひだ付き平面スタンチョン(3)の平面と円筒形容器(2)の長手方向軸とによって形成される角度は、ひだ付き平面スタンチョンについて選択される交差角度に応じて異なる。例えば、90度の交差角度が使用される場合、ひだ付き平面スタンチョン(3)は、容器軸に対して45度及び135度の角度で延伸する。60度の交差角度が選択される場合、ひだ付き平面スタンチョン(3)は、カラム軸に対して60度及び120度で延伸する。
【0035】
波形パッキング要素(1)はそれぞれ、円筒形容器(2)の横断面を完全に充填するようにサイズ決めされ得、又はより小さいいくつかのパッキング要素(1)は、容器の横断面若しくは容器の横断面の一部分を充填するように、並んだ関係で若しくは互いの頂部に位置決めされ得、例えば、波形パッキング要素(1)は、容器の横断面の外周の周りに、横断面の中心を開放させて離間され得る。並んだ関係で位置決めされる場合、波形パッキング要素(1)は、同じ方向又は異なる方向に方向付けられてよく、互いからオフセットされる複数の列内で位置決めされてもよい。
【0036】
一実施形態によれば、ガス/固体流動化床(5)が、円筒形容器(2)の一部分内に形成され、この中に、波形パッキング要素(1)又は複数の波形パッキング要素(1)が置かれている。図1では、ガス/固体流動化床(5)が、矢印(6)によって表されている粒子状固体によって、及び矢印(7)によって表されている上向きに流動するガス状流体によって形成されている。固体(6)は、事前選択された粒子の形状、大きさ、及び組成をもち、ガス(7)は、事前選択された組成、及び速度をもつ。好ましくは、固体(6)は、連続する方式でガス/固体流動化床(5)の頂部に追加され、底部から除去されることになり、したがって、固体(6)とガス(7)とは、流動化床の中を向流方向に進行する。代替として、固体(6)は、処理が完了するまでは流動化床(5)内に残り、次いで、流動化床から排出される。
【0037】
ガス(7)は、流動化床(5)の中を上向きに進行した後、ガス/固体流動化床(5)の上方の希薄相に入り、サイクロン(図示せず)などの分離器の中を通過していずれの同伴された固体粒子をも除去してから、最終又は中間の目的地に搬送され得る。固体(6)もまた、流動化床(5)からの除去後、最終又は中間の目的地に搬送され得る。
【0038】
波形パッキング要素(1)は、流動化床(5)内で所望の垂直場所に位置決めされ得る。いくつかの適用例では、波形パッキング要素(1)、又は複数の波形パッキング要素(1)を流動化床(5)の上側境界及び下側境界の付近に位置決めすることが望ましい場合があるが、他の適用例では、要素(1)を境界から事前選択された距離に位置決めすることが望ましい場合がある。さらなる別の適用例では、要素(1)は、流動化床(5)の上方に延伸していても、又はさらには下方に延伸していてもよい。
【0039】
流動化床(5)内で起こる処理のタイプとしては、熱伝達、物質伝達、燃焼及び/又は化学反応を挙げることができる。例えば、流動化床(5)は、FCCシステム内の使用済み触媒から炭化水素をストリッピングし又は使用済み触媒上のコークス付着物を燃やすのに使用され得る。例えば、波形パッキング要素(1)を採用するFCCシステム(図示せず)では、ストリッパチャンバ内の使用済み固体触媒粒子から揮発性炭化水素をストリッピングしてから、触媒粒子は、再生器に運ばれ、ここで、コークス付着物が燃やされて、触媒粒子が再生される。反応器セクションチャンバは、ライザ(riser)を有し、ライザは、触媒粒子及び反応器廃液を反応器チャンバの開放領域に供給し、ここで、触媒粒子は、反応器廃液から分離される。次いで、触媒粒子は、波形パッキング要素(1)の中へと、この波形パッキング要素(1)を通って、重力の影響の下、下向きに流動する。スチーム又は別のストリッピングガスは、流動線を通って波形パッキング要素(1)の下方の場所におけるストリッパチャンバに供給され、上向きに流動して、波形要素(1)内での触媒粒子の流動化を引き起こし、結果的に、触媒粒子に関連する揮発性炭化水素のストリッピングが生じることになる。触媒粒子は、ガス流により、よく流動化されるので、従来のストリッピング方法と比較して、より高い程度の処理効率が達成され得る。
【0040】
ストリッピングされた揮発性炭化水素を含有するオーバーヘッドガス流は、流動線を通ってストリッパからFCC反応器(図示せず)又は別の所望の場所に迂回され得る。ストリッピングされた触媒粒子は、別の流動線によってストリッパから再生器に移され、ここで、触媒粒子の活性を効果的に回復するように触媒上及び触媒内のコークスが燃焼させられる。次いで、触媒粒子は、FCC反応器(図示せず)に戻すことができる。再生器オーバーヘッド煙道ガス(flue gas)は、スクラバ(図示せず)に迂回され、又は別の形で処理される。サイクロン分離器(図示せず)を再生器とFCC反応器との両方において利用して、同伴された触媒粒子をオーバーヘッドガス流から除去する。
【0041】
本明細書において上述した成果は、本明細書に説明の実施形態によるストリッピング装置の利点を反映している。具体的には、波形パッキング要素(1)内でのガス状流体と触媒粒子との間の接触を改良すると、結果的に、再生器への炭化水素同伴が低減され、及び所要の再生器燃焼負荷及び揮発性炭化水素成分の量がより少なくなる。この揮発性炭化水素成分は、再生器に送り込まれると、希薄空間内で優先的に燃焼して高温をもたらし、そのことにより、再生器構成要素の機械的完全性に悪影響が及ぼされる場合があり得る。
【0042】
添付の特許請求の範囲によって定義される本明細書に開示の実施形態は、その多くの明らかな変形形態が可能であるので、上記の説明に記載の具体的な詳細によって限定されるものではないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D