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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
E02F9/22 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019570640
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001295
(87)【国際公開番号】W WO2019155843
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2018022017
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】白谷 竜二
(72)【発明者】
【氏名】新垣 一
(72)【発明者】
【氏名】山本 正明
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-139410(JP,U)
【文献】特開2008-169640(JP,A)
【文献】特開2016-003481(JP,A)
【文献】特開2005-256595(JP,A)
【文献】特開平08-302753(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
旋回自在に前記走行体に搭載される旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及びバケットを含むアタッチメントと、
前記ブームを操作するための操作装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ブームを駆動するブームシリンダに供給される作動油の流量を、前記操作装置に対する操作量の増加に応じて増加させるよう制御すると共に、前記バケットを地面に接触させる作業に起因して前記走行体が浮いている状態の場合、前記ブームの上げ方向の前記操作量に応じて前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を相対的に少なくすることにより、前記走行体が浮いている状態を解消させる方向の前記アタッチメントの動作を相対的に遅くする、
ショベル。
【請求項2】
前記バケットを地面に接触させる作業は、前記バケットが相対的に大きな力を付加しながら地面に接触するような作業、又は、前記バケットが地面に接触した状態で相対的に大きな力を地面に付加するような作業であり、
前記走行体が浮いている状態は、前記走行体の一部が地面から浮き上がり、前記走行体及び前記アタッチメントで当該ショベルの自重を支えている状態である、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ブームを駆動する前記ブームシリンダのロッド側油室の圧力に基づき、前記走行体が浮いている状態か否かを判定し、前記走行体が浮いている状態であると判定した場合に、前記アタッチメントの動作を相対的に遅くする、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、更に、当該ショベルの傾斜状態に関する情報、前記バケットの位置に関する情報、及び、前記アタッチメントの操作状態に関する情報のうちの少なくとも一つに基づき、前記走行体が浮いている状態か否かを判定する、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記操作装置から出力される、前記操作量に対応する出力信号に基づき、前記ブームシリンダを油圧駆動する制御弁と、
前記操作装置と前記制御弁との間の信号伝達経路に設けられ、前記制御装置による制御の下、前記出力信号を補正し前記制御弁に向けて出力可能な補正装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記走行体が浮いている状態の場合、前記操作量が小さくなる方向で、前記補正装置に前記出力信号を補正させる、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のショベル。
【請求項6】
前記制御装置は、前記走行体が浮いている状態である場合に、前記アタッチメントの動作を相対的に遅くすると共に、前記走行体が浮いている状態を解消させるための操作が開始されてから一定時間が経過した場合に、前記アタッチメントの動作速度を元の状態に復帰させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項7】
前記制御装置は、前記走行体が浮いている状態である場合に、前記アタッチメントの動作を相対的に遅くすると共に、その後、前記走行体が浮いている状態でなくなった場合に、前記アタッチメントの動作速度を元の状態に復帰させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項8】
前記制御装置は、前記走行体が浮いている状態になった場合に、前記アタッチメントの動作速度を相対的に遅くしながら、自動的に、前記走行体が浮いている状態を解消させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項9】
前記制御装置は、前記走行体が浮いている状態である場合、前記走行体が浮いている状態を解消させる操作が行われたときに、前記アタッチメントの動作速度を相対的に遅くしながら、前記走行体が浮いている状態を解消させる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルは、走行体の一部が浮き上がり、走行体の接地部分とアタッチメントの接地部分とで自重が支えられる状態(以下、「ジャッキアップ状態」)になる場合がある。
【0003】
例えば、ショベルによる掘削作業時に、掘削反力によって、走行体の前部が浮き上がり、その結果、ショベルがジャッキアップ状態になる場合がある(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
また、例えば、下部走行体のクローラについた泥を落とすため、ショベルが、左右一対のクローラのうちの一方のクローラを接地させ、且つ、他方のクローラを浮き上がらせたジャッキアップ状態にされる場合がある(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-173031号公報
【文献】特開2015-196973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ショベルのジャッキアップ状態が解消される場合、その態様によっては、走行体が一部浮き上がった状態から一気に落下するように接地し、ショベルの車体に相対的に大きな衝撃が生じる可能性がある。よって、ショベルの寿命やショベル及びショベルの周辺の安全性の観点で改善の余地がある。
【0007】
そこで、上記課題に鑑み、ジャッキアップ状態が解消される場合に、車体に生じる衝撃を抑制することが可能なショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、
走行体と、
旋回自在に前記走行体に搭載される旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及びバケットを含むアタッチメントと、
前記ブームを操作するための操作装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ブームを駆動するブームシリンダに供給される作動油の流量を、前記操作装置に対する操作量の増加に応じて増加させるよう制御すると共に、前記バケットを地面に接触させる作業に起因して前記走行体が浮いている状態の場合、前記ブームの上げ方向の前記操作量に応じて前記ブームシリンダに供給される作動油の流量を相対的に少なくすることにより、前記走行体が浮いている状態を解消させる方向の前記アタッチメントの動作を相対的に遅くする、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、ジャッキアップ状態が解消される場合に、車体に生じる衝撃を抑制することが可能なショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルの構成の一例を示すブロック図である。
図3A】ショベルに生じるジャッキアップ状態の一例を示す図である。
図3B】ショベルに生じるジャッキアップ状態の他の例を示す図である。
図4】操作支援制御装置の構成の一例を示す図である。
図5A】ブーム上げ操作の操作量とブームシリンダのボトム側油室に供給される作動油の流量との関係の一例を示す図である。
図5B】ブーム上げ操作の操作量とブームシリンダのボトム側油室に供給される作動油の流量との関係の他の例を示す図である。
図6】操作支援制御装置の構成の他の例を示す図である。
図7】操作支援制御装置に関する設定画面の一例を示す図である。
図8】操作支援制御装置による操作支援制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図9】操作支援制御装置による操作支援制御処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
[ショベルの概要]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るショベル500の概要について説明をする。
【0013】
図1は、本実施形態に係るショベル500の側面図である。
【0014】
本実施形態に係るショベル500は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業装置)としてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。以下、ショベル500の前方は、ショベル500を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(以下、単に「平面視」)で見たときに、上部旋回体3に対するアタッチメントの延出方向(以下、単に「アタッチメントの延出方向」)に対応する。また、ショベル500の左方及び右方は、それぞれ、ショベル500を平面視で見たときに、キャビン10内のオペレータの左方及び右方に対応する。
【0015】
下部走行体1(走行体の一例)は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(図2参照)で油圧駆動されることにより、ショベル500を走行させる。
【0016】
上部旋回体3(旋回体の一例)は、旋回油圧モータ21(図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0017】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0018】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0019】
[ショベルの基本構成]
次に、図2を参照して、ショベル500の基本的な構成について説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るショベル500の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
尚、図中、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。以下、後述する図4図6についても同様である。
【0022】
本実施形態に係るショベル500の油圧アクチュエータを油圧駆動する油圧駆動系は、エンジン11と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係るショベル500の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0023】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するエンジンコントロールモジュール(ECM:Engine Control Module)75による制御の下、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0024】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するコントローラ30による制御の下、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
【0025】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、油圧アクチュエータである走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。
【0026】
本実施形態に係るショベル500の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26を含む。
【0027】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11により駆動される。
【0028】
操作装置26は、レバー26A,26Bと、ペダル26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、それぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26(即ち、レバー26A,26B、及びペダル26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。以下、レバー26Aによりブーム4(ブームシリンダ7)の操作が行われ、レバー26Bによりアーム5(アームシリンダ8)の操作が行われる前提で説明を進める。
【0029】
本実施形態に係るショベル500の制御系は、コントローラ30と、圧力センサ29と、ECM75と、エンジン回転数センサ11aを含む。また、本実施形態に係るショベル500の制御系は、後述する操作支援制御に関する構成として、傾斜角度センサ40と、ブーム角度センサ42と、アーム角度センサ44と、バケット角度センサ46と、ロッド圧センサ48と、表示装置50と、音声出力装置52と、電磁比例弁54と、操作支援機能ON/OFFスイッチ60を含む。
【0030】
コントローラ30は、ショベル500の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性の補助記憶装置、及びI/O(Input-Output interface)等を含むマイクロコンピュータで構成され、ROMや補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能が実現される。
【0031】
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、ECM75を介して、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0032】
また、例えば、コントローラ30は、圧力センサ29から入力される、操作装置26における各種動作要素(即ち、各種油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧の検出値等に基づき、コントロールバルブ17を含む油圧アクチュエータを駆動する油圧回路の制御を行う。
【0033】
また、例えば、コントローラ30は、ショベル500がジャッキアップ状態にある場合、ジャッキアップ状態の解消のためのオペレータの操作を支援する制御(以下、「操作支援制御」)を行う。コントローラ30による操作支援制御の詳細は、後述する。
【0034】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラにより実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
【0035】
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0036】
ECM75は、コントローラ30から制御指令に基づき、エンジン11を駆動制御する。例えば、ECM75は、エンジン回転数センサ11aから入力される検出信号に対応するエンジン11の回転数(回転速度)の測定値に基づき、コントローラ30からの制御指令に対応する目標回転数でエンジン11が一定回転するようにエンジン11を制御する。
【0037】
エンジン回転数センサ11aは、エンジン11の回転数を検出する既知の検出手段である。エンジン回転数センサ11aによるエンジン11の回転数に対応する検出信号は、ECM75に取り込まれる。
【0038】
傾斜角度センサ40は、ショベル500の所定の基準面(例えば、水平面)に対する傾斜状態を検出する検出手段である。傾斜角度センサ40は、例えば、上部旋回体3に搭載され、ショベル500(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸における傾斜角度を検出する。傾斜角度センサ40による傾斜角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0039】
ブーム角度センサ42は、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度(以下、「ブーム角度」)を検出する。ブーム角度センサ42は、例えば、ロータリエンコーダやIMU(Inertial Measurement Unit)等を含んでよく、以下、アーム角度センサ44及びバケット角度センサ46についても同様である。ブーム角度センサ42によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0040】
アーム角度センサ44は、アーム5のブーム4に対する俯仰角度、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度(以下、「アーム角度」)を検出する。アーム角度センサ44によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0041】
バケット角度センサ46は、バケット6のアーム5に対する俯仰角度、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度(以下、「バケット角度」)を検出する。バケット角度センサ46によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0042】
ロッド圧センサ48は、ブームシリンダ7のロッド側油室7R(図4図6参照)の圧力(以下、「ロッド圧」)を検出する。ロッド圧センサ48によるブームシリンダ7のロッド圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0043】
表示装置50は、キャビン10内の操縦席付近のオペレータが視認し易い場所(例えば、キャビン10内の右前部のピラー部分等)に設けられ、コントローラ30による制御の下、各種情報画面を表示する。表示装置50は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイであり、操作部を兼ねるタッチパネル式であってもよい。また、表示装置50は、表示部に表示されるショベルに関する各種操作画面を操作するためのボタン、トグル、レバー等のハードウェアによる操作部を含んでもよい。
【0044】
音声出力装置52は、キャビン10内の操縦席付近に設けられ、コントローラ30による制御の下、オペレータに各種通知を行うための音声を出力する。音声出力装置52は、例えば、スピーカやブザー等である。
【0045】
電磁比例弁54は、操作装置26の二次側の油圧ライン27のうち、レバー26Aに対するブーム4の上げ操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応する二次側の油圧ライン27A(図4図6参照)に設けられる。電磁比例弁54は、コントローラ30からの制御電流に応じて、レバー26Aの操作状態に対応するパイロット圧を減圧する。例えば、電磁比例弁54は、制御電流が入力されない場合、レバー26Aの一次側のパイロット圧と、ブーム4の上げ操作に対応する二次側(油圧ライン27A)のパイロット圧とを同じにする。そして、電磁比例弁54は、制御電流が入力される場合、制御電流が大きくなるほど、二次側(油圧ライン27A)のパイロット圧が小さくなるように作用する。これにより、オペレータによるブーム上げ操作に対するブーム4の動作を抑制し、動作速度を通常時(ショベル500がアタッチメントを用いた掘削作業等の通常の作業を行う場合)に対して相対的に遅くすることができる。
【0046】
操作支援機能ON/OFFスイッチ(以下、便宜的に「操作支援機能スイッチ」)60は、上述した操作支援制御の機能(以下、「操作支援機能」)を有効化(ON)或いは無効化(OFF)する操作部である。操作支援機能スイッチ60は、例えば、表示装置50に搭載される、或いは、表示装置50と別に設けられるボタン、トグル、レバー等のハードウェアによる操作部であってもよいし、例えば、タッチパネル式の表示装置50に表示される操作画面上のアイコン等のソフトウェアによる操作部であってもよい。操作支援機能スイッチ60の操作状態に関する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0047】
[ジャッキアップ状態の具体例]
次に、図3図3A,3B)を参照して、操作支援制御に関連するショベル500の姿勢状態、即ち、ジャッキアップ状態について説明する。
【0048】
図3Aは、ショベル500に生じるジャッキアップ状態の一例を示す図であり、具体的には、オペレータの意図に反して、ジャッキアップ状態が発生するショベル500の作業状況を示す図である。図3Bは、ショベル500に生じるジャッキアップ状態の他の例を示す図であり、具体的には、オペレータの意図に沿って実現されるショベル500のジャッキアップ状態を示す図である。
【0049】
図3Aに示すように、ショベル500は、地面300aの掘削作業を行っており、主に、ブーム4の下げ動作やアーム5及びバケット6の閉じ動作によって、バケット6から地面300aにショベル500の車体寄りの斜め下方向への力F2が作用する。このとき、ショベル500の車体には、バケット6に作用する力F2の反力、即ち、掘削反力F2aのうちの垂直方向成分F2aVに対応する車体を後方に傾斜させようとする反力F3(力のモーメント。以下、本実施形態では、単に「モーメント」)がアタッチメントを介して作用する。具体的には、当該反力F3は、ブームシリンダ7を引き上げようとする力F1として車体に作用する。そして、この力F1に起因して車体を後方に傾斜させようとするモーメントが、重力による車体を地面に抑え付けようとする力(モーメント)を上回ると、車体の前部が浮き上がってしまう。その結果、ショベル500は、バケット6の先端部、及び下部走行体1の後端部だけが接地し、下部走行体1の前端部が浮き上がったジャッキアップ状態になる。
【0050】
このように、ショベル500のジャッキアップ状態は、例えば、アタッチメントを用いた掘削作業等において、バケット6が相対的に大きな力を付加しながら地面に接触することにより、オペレータの意図に反して生じうる。
【0051】
また、図3Bに示すように、ショベル500は、下部走行体1の右側のクローラ1a、左側のクローラ1bのうちの左側のクローラ1bが地面から浮き上がり、バケット6の先端部及び右側のクローラ1aだけが接地したジャッキアップ状態になっている。
【0052】
具体的には、オペレータは、操作装置26を操作し、上部旋回体3が直進方向を向いた状態(図1の状態)から上部旋回体3を左方向に90°旋回させ、その後、ブーム4の下げ操作及びアーム5の閉じ操作(以下、それぞれ、「ブーム下げ操作」及び「アーム閉じ操作」)等を行い、バケット6を接地させる。そして、オペレータは、その状態で、更に、ブーム下げ操作及びアーム閉じ操作等を継続することにより左側のクローラ1bを地面から空中に浮き上がらせる。これにより、ショベル500がジャッキアップ状態において、オペレータは、操作装置26を操作し、浮き上がった方の左側のクローラ1bを空転させることにより、クローラ1bに付着した泥を地面に落とすことができる。
【0053】
このように、ショベル500のジャッキアップ状態は、例えば、下部走行体1のクローラの泥落としのため、バケット6が地面に接触した状態で相対的に大きな力を地面に付加することにより、オペレータの意図に沿った態様で生じうる。
【0054】
[操作支援制御の詳細]
次に、図4図6を参照して、操作支援制御を行う操作支援制御装置200の構成について説明する。
【0055】
図4は、操作支援制御装置200の構成の一例を示す図である。
【0056】
操作支援制御装置200は、コントローラ30と、レバー26Aに対するブーム上げ操作に対応する二次側のパイロット圧を検出する圧力センサ29(圧力センサ29A)と、傾斜角度センサ40と、ブーム角度センサ42と、アーム角度センサ44と、バケット角度センサ46と、ロッド圧センサ48と、表示装置50と、音声出力装置52と、電磁比例弁54と、操作支援機能スイッチ60を含む。
【0057】
コントローラ30は、例えば、ROMや補助記憶装置に格納される一以上のプログラムを実行することにより実現される機能部として、判定部301と、動作制御部302と、通知部303を含む。
【0058】
判定部301は、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。
【0059】
例えば、判定部301は、ロッド圧センサ48により検出されるブームシリンダ7のロッド圧PRに基づき、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。具体的には、判定部301は、ロッド圧センサ48により検出されるブームシリンダ7のロッド圧PRが所定閾値PRth以上である場合、ショベル500がジャッキアップ状態にあると判定してよい。ショベル500のジャッキアップ状態は、ショベル500の自重をアタッチメントで支えている状態であり、ブームシリンダ7のロッド圧が非常に高くなるからである。このとき、所定閾値PRthは、ショベル500がジャッキアップ状態にある場合のブームシリンダ7のロッド圧PRの下限値として、実験やコンピュータシミュレーション等により予め規定されうる。また、判定部301は、ロッド圧センサ48により検出されるブームシリンダ7のロッド圧PRが所定閾値PRth以上である状態がある程度の時間(所定時間Tth以上)継続している場合に、ショベル500がジャッキアップ状態にあると判定してもよい。これにより、例えば、土羽打ち作業(転圧作業)等の通常作業時に、一瞬、ブームシリンダ7のロッド圧PRが所定閾値PRth以上になるような場合があり得るところ、そのような状態とジャッキアップ状態とをより精度良く判別することができる。
【0060】
また、例えば、判定部301は、傾斜角度センサ40により検出されるショベル500の傾斜状態に基づき、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。上述の如く、ジャッキアップ状態では、下部走行体1の一部が浮き上がり、ショベル500(上部旋回体3)が傾斜するからである。
【0061】
また、例えば、判定部301は、オペレータによる操作装置26に対するアタッチメントの操作状態に基づき、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。上述の如く、ショベル500のジャッキアップ状態が生じる場合、地面にバケット6が接地した後も、ブーム下げ操作やアーム閉じ操作が継続する特殊な操作状態になりうるからである。
【0062】
また、例えば、判定部301は、車体(下部走行体1及び上部旋回体3)に対する相対的なバケット6の位置に関する情報に基づき、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。ショベル500のジャッキアップ状態が生じる場合、車体から見たバケット6の先端部の位置が、下部走行体1の通常の接地部分より下方になるからである。このとき、判定部301は、ブーム角度センサ42、アーム角度センサ44、及び、バケット角度センサ46により検出されるブーム角度、アーム角度、及び、バケット角度と、既知のブーム4、アーム5、及び、バケット6のリンク長に基づき、車体から見たバケット6の相対位置を測定(算出)することができる。
【0063】
また、判定部301は、ブームシリンダ7のロッド圧、ショベル500の傾斜状態、アタッチメントの操作状態、及び、バケット6の相対位置のうちの少なくとも二つに関する情報を組み合わせて、ショベル500がジャッキアップ状態にあるか否かを判定してもよい。
【0064】
例えば、判定部301は、ブームシリンダ7のロッド圧に関する情報と、ショベル500の傾斜状態、アタッチメントの操作状態、及びバケット6の相対位置のうちの少なくとも一つに関する情報とに基づき、ショベル500がジャッキアップ状態にあるか否かを判定する。これにより、判定部301は、複数の種類の情報を参照することができるため、ショベル500がジャッキアップ状態にあるか否かをより精度良く判定することができる。
【0065】
動作制御部302は、操作支援機能が有効化(ON)されている状態で、ショベル500がジャッキアップ状態になった場合に、操作支援制御を行う(開始する)。具体的には、動作制御部302は、操作支援機能が有効化されている状態で、ショベル500がジャッキアップ状態になった場合に、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作を相対的に遅くする。以下、操作支援機能が有効化されていることを前提として、説明を進める。
【0066】
より具体的には、動作制御部302は、ショベル500がジャッキアップ状態になった場合、電磁比例弁54に制御電流を出力する。これにより、レバー26Aに対するブーム上げ操作に対応する二次側のパイロット圧は、減圧され、減圧されたパイロット圧がコントロールバルブ17のブームシリンダ7を駆動するブーム制御弁17A(駆動装置の一例)のブーム上げ操作に対応するパイロットポートに入力される。
【0067】
換言すれば、動作制御部302は、レバー26Aとブーム制御弁17Aとの間のブーム上げ操作に対応する圧力信号経路(油圧ライン27)に設けられる電磁比例弁54(補正装置の一例)に、レバー26Aに対するブーム上げ操作に対応する二次側のパイロット圧を操作量が少なくなる方向に補正させる。これにより、ブーム制御弁17Aを通じて、メインポンプ14からブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量は、通常時の同じ操作量を伴うレバー26Aに対するブーム上げ操作の場合に比して減少し、ブーム4の上げ動作が相対的に遅くなる。よって、操作支援制御装置200は、オペレータによって、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのブーム上げ操作が行われた場合に、ブーム4の上げ動作を相対的に遅くし、浮き上がった下部走行体1の一部が接地する際の衝撃を抑制することができる。
【0068】
例えば、図5Aは、レバー26Aに対するブーム上げ操作の操作量Cと、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量Qとの関係の一例を概念的に示す図である。
【0069】
図5Aに示すように、通常時において、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量Qは、全体として、操作量Cの増加に応じて増加する。具体的には、流量Qは、不感領域(つまり、操作量Cが0から所定値C0までの間の領域)を除き、操作量Cの増加に応じて、略線形的に増加する。そして、流量Qは、操作量Cが最大値Cmaxの場合に、最大流量Qmaxに到達する。
【0070】
一方、動作制御部302による操作支援制御が開始された場合、流量Qは、通常時と同様、全体として、操作量Cの増加に応じて増加するものの、電磁比例弁54の作用により、制限流量Qlim(<Qmax)以下になるように制限される。具体的には、流量Qは、操作量Cが所定値C0以上の範囲において、操作量Cの増加に応じて、通常時と同じ増加率(傾き)で略線形的に増加する。しかし、流量Qは、操作量Cが制限流量Qlimに対応する所定値C1を超えると、操作量Cに依らず、制限流量Qlimに維持される。これにより、例えば、オペレータの熟練度が低いことや雑な操作等に起因して、ジャッキアップ状態の解消のための急なブーム上げ操作が行われた場合であっても、操作支援制御装置200は、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量Qを、相対的に低い、換言すれば、レバー26Aの微操作に対応する制限流量Qlim以下に制限することができる。
【0071】
また、例えば、図5Bは、レバー26Aに対するブーム上げ操作の操作量Cと、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量Qとの関係の他の例を概念的に示す図である。
【0072】
図5Bに示すように、本例では、動作制御部302による操作支援制御が開始されると、流量Qは、電磁比例弁54の作用により、操作量Cの増加に応じた増加率(傾き)が通常時よりも小さく、且つ、制限流量Qlim以下になるように制限される。具体的には、流量Qは、操作量Cが所定値C0以上の範囲において、操作量Cの増加に応じて、通常時よりも小さい傾き(増加率)で略線形的に増加する。しかし、流量Qは、制限流量Qlimに対応する所定値C2(>C1)を超えると、操作量Cに依らず、制限流量Qlimに維持される。これにより、操作支援制御装置200は、更に、操作量Cの増加に対する流量Qの増加率も抑制することができる。そのため、操作支援制御装置200は、オペレータによって、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのブーム上げ操作が行われた場合に、ブーム4の上げ動作を更に遅くし、一部が浮き上がった下部走行体1の接地時の衝撃を更に抑制できる。
【0073】
このように、動作制御部302は、ショベル500がジャッキアップ状態の場合、レバー26Aに対するブーム上げ操作の操作量に応じてブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量を、通常時よりも相対的に少なくする。これにより、操作支援制御装置200は、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのブーム上げ操作に対応する、ブーム4の上げ動作を通常時よりも相対的に遅くし、ジャッキアップ状態の解消時における車体(下部走行体1及び上部旋回体3)への衝撃を抑制できる。そのため、操作支援制御装置200は、結果として、ジャッキアップ状態の解消の際の衝撃による車体の劣化、周囲への騒音、オペレータの不快感等を抑制することができる。また、操作支援制御装置200は、操作熟練度が相対的に低いオペレータによりショベル500が運転される場合であっても、ショベル500のジャッキアップ状態の解消の際の衝撃を抑制することができる。また、操作支援制御装置200は、操作熟練度が高いオペレータであっても、車体への衝撃を防止するための微操作が要求されるところ、操作に必要以上の気を使わせることなく、ジャッキアップ状態の解消の際の車体への衝撃を抑制することができるため、結果として、オペレータの疲労度を軽減させることができる。
【0074】
また、動作制御部302は、他の方法で、レバー26Aに対するブーム上げ操作の操作量に応じてブームシリンダ7に供給される作動油の流量を、通常時よりも相対的に少なくしてもよい。以下、他の方法について、図6を参照して説明する。
【0075】
図6は、操作支援制御装置200の構成の他の例を示す図である。
【0076】
本例では、操作支援制御装置200は、図4の場合と異なり、電磁比例弁54の代わりに、電磁比例弁56を含む。
【0077】
電磁比例弁56は、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rとブーム制御弁17Aとの間の高圧油圧ラインに設けられる。つまり、電磁比例弁56は、レバー26Aに対するブーム上げ操作時におけるロッド側油室7Rからブーム制御弁17Aを経由する作動油タンクTへの作動油の排出経路に設けられる。電磁比例弁56は、コントローラ30からの制御電流に応じて、レバー26Aに対するブーム上げ操作時におけるブームシリンダ7のロッド側油室7Rから排出される流量を制限する。例えば、電磁比例弁54は、制御電流が入力されない場合、流量を制限せず、且つ、制御電流が入力される場合、制御電流が大きくなるほど、許容される流量が小さくなるように作用する。これにより、電磁比例弁56は、結果として、レバー26Aに対するブーム上げ操作時におけるブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される流量を制限することができる。
【0078】
動作制御部302は、ショベル500がジャッキアップ状態になった場合、電磁比例弁56に制御電流を出力する。これにより、レバー26Aに対するブーム上げ操作時に、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rから排出される作動油の流量が制限され、結果として、ボトム側油室7Bに供給される作動油の流量が制限される。このとき、電磁比例弁56による流量の制限態様としては、例えば、上述した図5A,5Bで表される流量と操作量との関係が採用されうる。
【0079】
また、本例では、動作制御部302は、電磁比例弁56を介して、レバー26Aに対するブーム上げ操作時に、ブームシリンダ7のロッド側油室7Rから排出される作動油の流量を制限させるが、直接的に、ボトム側油室7Bに供給される作動油の流量を制限させてもよい。この場合、電磁比例弁56は、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bとブーム制御弁17Aとの間の高圧油圧ラインに設けられる。
【0080】
換言すれば、動作制御部302は、ブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される、或いは、ロッド側油室7Rから排出される作動油の流量が、通常時よりも相対的に少なくなるように、電磁比例弁56(調整弁の一例)に当該流量を調整させる。これにより、ブーム制御弁17Aを通じて、メインポンプ14からブームシリンダ7のボトム側油室7Bに供給される作動油の流量は、通常時の同じ操作量を伴うレバー26Aに対するブーム上げ操作の場合に比して減少し、ブーム4の上げ動作が相対的に遅くなる。よって、操作支援制御装置200は、図4の一例の場合と同様、オペレータによって、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのブーム上げ操作が行われた場合に、ブーム4の上げ動作を相対的に遅くし、浮き上がった下部走行体1の一部が接地する際の衝撃を抑制することができる。
【0081】
図4に戻り、通知部303は、上述した操作支援制御が開始された場合、表示装置50や音声出力装置52を制御し、表示装置50や音声出力装置52を通じて、操作支援制御が開始された旨をオペレータに通知する。以下、当該通知を便宜的に「操作支援制御開始通知」と称する。換言すれば、通知部303は、操作支援機能によって、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じた、ジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作が通常時よりも相対的に遅くなっていることをオペレータに通知する。これにより、オペレータは、通常時よりも、操作装置26に対する操作に応じたアタッチメントの動作が遅くなっていることを認識することができる。
【0082】
また、通知部303は、操作支援制御が開始された後に、操作支援制御が停止された場合、表示装置50や音声出力装置52を制御し、表示装置50や音声出力装置52を通じて、操作支援制御が停止された旨をオペレータに通知する。以下、当該通知を便宜的に「操作支援制御停止通知」と称する。換言すれば、通知部303は、操作支援機能によって、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じた、ジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作が通常時よりも相対的に遅くなっている状態が解除されたことをオペレータに通知する。これにより、オペレータは、通常時よりも、操作装置26に対する操作に応じたアタッチメントの動作が遅くなっている状態が解除されたことを認識することができる。
【0083】
[操作支援制御装置に関する設定方法]
次に、図7を参照して、操作支援制御装置200に関する設定方法の具体例について説明する。
【0084】
図7は、表示装置50に表示される操作支援制御装置200に関する設定画面の一例(設定画面700)を示す図である。
【0085】
図7に示すように、設定画面700は、リスト701と、選択アイコン702と、ON/OFFアイコン703と、動作速度選択アイコン704を含む。
【0086】
リスト701は、設定対象の複数の操作支援制御に関する制御モード(操作支援モード)を表す。本例では、リスト701は、本実施形態におけるショベル500のジャッキアップ状態に対応する操作支援モード(ジャッキアップ対応モード)を含む4つの操作支援モードが含む。オペレータ等は、所定の操作手段(例えば、表示装置50に付随するボタン等や表示装置50に実装されるタッチパネル等)を通じて、複数の操作支援制御に関する制御モードの中から所望の操作支援モードを選択することができる。
【0087】
選択アイコン702は、現在選択されている設定対象の操作支援モードを表している。本例では、ジャッキアップ対応モードが選択されていることを表している。
【0088】
ON/OFFアイコン703及び動作速度選択アイコン704は、ジャッキアップ対応モードが選択されていない状態では、非表示状態、つまり、折りたたまれた状態になっており、ジャッキアップ対応モードが選択されると展開表示される態様であってよい。
【0089】
ON/OFFアイコン703は、操作支援機能スイッチ60に対応する仮想的な操作対象である。ON/OFFアイコン703は、ONアイコン703AとOFFアイコン703Bを含み、本例では、ONアイコン703Aが選択された状態になっている。オペレータ等は、所定の操作手段を通じて、ONアイコン703A或いはOFFアイコン703Bに対する指定操作を行うことで、ジャッキアップ対応モード、つまり、上述したショベル500のジャッキアップ状態に対応する操作支援制御の機能を有効化したり、無効化したりすることができる。
【0090】
動作速度選択アイコン704は、ジャッキアップ対応モードによる操作支援時のアタッチメントの動作速度、つまり、ショベル500がジャッキアップ状態に応じて相対的に遅くされるアタッチメントの動作速度を設定するための仮想的な操作対象である。本例では、ショベル500のジャッキアップ発生時におけるアタッチメントの動作速度が3段階に区分され、動作速度選択アイコン704は、レベルアイコン704A~704Cを含み、本例では、レベルアイコン704Aが選択されている。オペレータ等は、所定の操作手段を通じて、レベルアイコン704A~704Cの何れかに対する指定操作を行うことで、ショベル500のジャッキアップ発生時におけるアタッチメントの動作速度を3段階の中で設定することができる。
【0091】
[操作支援制御装置の動作]
次に、図8図9を参照して、操作支援制御装置200による動作の詳細について説明する。
【0092】
図8は、操作支援制御装置200のコントローラ30による操作支援制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベル500の運転中において、操作支援機能がON(有効化)されており、且つ、操作支援制御が実行されていない場合に、所定の処理間隔で繰り返し実行される。以下、後述する図9のフローチャートについても同様である。
【0093】
ステップS102にて、判定部301は、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かを判定する。判定部301は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合、ステップS104に進み、ジャッキアップ状態でない場合、今回の処理を終了する。
【0094】
ステップS104にて、動作制御部302は、操作支援制御を開始する。具体的には、動作制御部302は、電磁比例弁54や電磁比例弁56への制御電流の出力を開始する。そして、通知部303は、表示装置50や音声出力装置52を通じて、オペレータに対する操作支援制御開始通知を行う。
【0095】
ステップS106にて、動作制御部302は、圧力センサ29Aの検出信号に基づき、レバー26Aに対するブーム上げ操作が行われたか否かを判定する。動作制御部302は、ブーム上げ操作が行われた場合、ステップS108に進み、ブーム上げ操作が行われなかった場合、ブーム上げ操作が行われるまで本ステップの処理を繰り返す。
【0096】
尚、ステップS106の処理開始から比較的長い時間が経過しても、ブーム上げ操作が行われない場合、本フローチャートによる処理は強制的に停止されてもよい。例えば、判定部301によるジャッキアップ状態であるか否かの判定精度によっては、ジャッキアップ状態が生じていない可能性があるからである。
【0097】
ステップS108にて、動作制御部302は、ブーム上げ操作開始から予め規定される一定時間が経過したか否かを判定する。当該一定時間は、例えば、ショベル500のジャッキアップ状態の解消のためのブーム上げ操作開始から実際にジャッキアップ状態が解消されるまでに必要な時間の上限値(最大値)として、実験やコンピュータシミュレーション等により予め規定されうる。動作制御部302は、ブーム上げ操作開始から当該一定時間が経過した場合、ステップS110に進み、ブーム上げ操作開始から当該一定時間が経過していない場合、当該一定時間が経過するまで待機する(つまり、本ステップの処理を繰り返す)。
【0098】
ステップS110にて、動作制御部302は、操作支援制御を停止する。具体的には、電磁比例弁54や電磁比例弁56への制御電流の出力を停止する。そして、通知部303は、表示装置50や音声出力装置52を通じて、オペレータに対する操作支援制御停止通知を行う。
【0099】
このように、本例では、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態であると判定した場合、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作(具体的には、ブーム4の上げ動作)を通常時よりも相対的に遅くする。そして、操作支援制御装置200は、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの操作が開始されてから一定時間が経過した場合、当該アタッチメントの動作速度を元の状態に復帰させる。これにより、操作支援制御装置200は、一定時間が適宜設定されることで、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されるまでの間で、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作を通常時よりも相対的に遅くすることができる。そのため、操作支援制御装置200は、ジャッキアップ状態が解消される際に、浮き上がっていた下部走行体1の一部が接地することによる車体への衝撃を抑制することができる。また、操作支援制御装置200は、一定時間が適宜設定されることで、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されたにも関わらず、アタッチメントの動作が通常時よりも遅くされた状態が不要に継続されることを防止することができる。
【0100】
続いて、図9は、操作支援制御装置200のコントローラ30による操作支援制御処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
【0101】
ステップS202,S204の処理は、図8のステップS102,S104と同じであるため、説明を省略する。
【0102】
ステップS206にて、判定部301は、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されたか否かを判定する。判定部301は、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されている、つまり、ショベル500がジャッキアップ状態でない場合、ステップS208に進む。一方、判定部301は、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されていない場合、つまり、ショベル500がジャッキアップ状態である場合、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されるまで待機する(つまり、本ステップの処理を繰り返す)。
【0103】
尚、ステップS206の処理開始から比較的長い時間が経過しても、ジャッキアップ状態が解消されない場合、本フローチャートによる処理は強制的に停止されてもよい。例えば、判定部301によるジャッキアップ状態であるか否かの判定精度によっては、ジャッキアップ状態が生じていない可能性があるからである。
【0104】
ステップS208の処理は、図8のステップS110と同じであるため、説明を省略する。
【0105】
このように、本例では、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態であると判定した場合、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作(具体的には、ブーム4の上げ動作)を通常時よりも相対的に遅くする。そして、操作支援制御装置200は、その後、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されたと判定した場合、当該アタッチメントの動作速度を元の状態に復帰させる。これにより、操作支援制御装置200は、ショベル500のジャッキアップ状態が解消されたタイミングを具体的に把握して、アタッチメントの動作速度を元の状態に復帰させることができる。そのため、操作支援制御装置200は、アタッチメントの動作が通常時よりも遅くされた状態が不要に継続されることをより確実に防止することができる。
【0106】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0107】
例えば、上述した実施形態では、操作装置26は、オペレータによる操作状態に応じた油圧による圧力信号(パイロット圧)を出力する油圧式であったが、電気信号を出力する電気式であってもよい。この場合、コントロールバルブ17は、操作装置26から直接的に、或いは、コントローラ30等を経由して間接的に入力される、操作状態に応じた電気信号により駆動される電磁パイロット式の油圧制御弁(例えば、電磁パイロット式のブーム制御弁17A)を含む態様で構成される。また、電磁比例弁54は、コントローラ30(動作制御部302)からの制御指令に応じて、レバー26Aに対するブーム上げ操作に対応する電気信号を補正し、ブーム制御弁17Aに向けて出力する電子回路や処理装置(共に、補正装置の一例)に置換される。また、当該電子回路や処理装置の機能は、コントローラ30に内蔵されてもよい。
【0108】
また、例えば、上述した実施形態及び変形例では、動作制御部302は、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作として、ブーム4の上げ動作を通常時よりも相対的に遅くするが、当該態様には限定されない。例えば、動作制御部302は、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作として、ブーム4の上げ動作に代えて、或いは、加えて、アーム5の開き動作を通常時よりも相対的に遅くしてよい。この場合、例えば、電磁比例弁54と同様に、レバー26Bのアーム開き操作に対応する出力ポートとコントロールバルブ17との間の油圧ライン27に、コントローラ30による制御の下で、レバー26Bのアーム開き操作に対応する二次側のパイロット圧を減圧する電磁比例弁が設けられてよい。また、例えば、電磁比例弁56と同様に、アームシリンダ8のボトム側油室とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインに、コントローラ30による制御の下で、レバー26Bに対するアーム開き操作時のアームシリンダ8のボトム側油室から排出される作動油の流量を制限する電磁比例弁が設けられてもよい。また、例えば、アームシリンダ8のロッド側油室とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインに、コントローラ30による制御の下で、レバー26Bに対するアーム開き操作時のアームシリンダ8のロッド側油室に供給される作動油の流量を制限する電磁比例弁が設けられてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態及び変形例では、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合に、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させるためのアタッチメントの動作だけを通常時より相対的に遅くするが、当該態様には限定されない。例えば、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合に、アタッチメントの動作全体を通常時より相対的に遅くしてもよい。この場合、操作支援制御装置200(コントローラ30)は、例えば、メインポンプ14の吐出流量を制限したり、メインポンプ14の駆動力源であるエンジン11の出力を制限したりすることにより、アタッチメントの動作全体を通常時より相対的に遅くしてよい。
【0110】
また、上述した実施形態及び変形例では、操作支援制御装置200は、ブームシリンダ7のロッド圧PR等に基づき、ショベル500がジャッキアップ状態か否かを判定するが、当該態様には限定されない。例えば、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態であるか否かに関係なく、ブームシリンダ7のロッド圧PRが相対的に高くなった(具体的には、ロッド圧PRが所定閾値PRth以上になった)場合に、ブームシリンダ7等のアタッチメントの動作速度を遅くしてもよい。また、操作支援制御装置200は、ブームシリンダ7のロッド圧PRが相対的に高い状態が相対的に長い期間継続する(具体的には、ロッド圧PRが所定閾値PRth以上の状態が所定時間Tth以上継続する)場合に、ブームシリンダ7等のアタッチメントの動作速度を遅くしてもよい。この場合、操作支援制御装置200は、ステップS102において、ジャッキアップ状態か否かを判定する代わりに、ブームシリンダ7のロッド圧PRが相対的に高くなったか否かやロッド圧PRが相対的に高い状態が相対的に長い期間継続しているか否かを判定する処理が採用された、図8の処理フローを実行してよい。また、操作支援制御装置200は、ステップS202において、ジャッキアップ状態か否かを判定する代わりに、ブームシリンダ7のロッド圧PRが相対的に高くなったか否かやロッド圧PRが相対的に高い状態が相対的に長い期間継続しているか否かを判定する処理が採用され、ステップS206において、ジャッキアップ状態が解消したか否かを判定する代わりに、ブームシリンダ7のロッド圧PRが相対的に高い状態が解消したか否かを判定する処理が採用された図9の処理フローを実行してよい。
【0111】
また、上述した実施形態及び変形例では、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合に、ブームシリンダ7等のアタッチメントの動作速度を調整するが、当該態様に限定されない。例えば、操作支援制御装置200は、ショベル500の上部旋回体3に搭載されるカウンタウェイトの重量の変化(ショベル500に搭載可能な複数の種類のカウンタウェイト)に対応するために、アタッチメントの動作速度を調整してもよい。この場合、操作支援制御装置200は、搭載されているカウンタウェイトを自動的に判断し、自動でアタッチメントの動作速度の調整を行ってよい。また、操作支援制御装置200は、オペレータ等による搭載されているカウンタウェイトの手動設定に応じて、自動的にアタッチメントの動作速度の調整を行ってもよいし、オペレータ等による動作速度に関する手動設定に応じて、アタッチメントの動作速度の調整を行ってもよい。また、オペレータによる手動設定は、上述した実施形態の場合と同様、ボタン、トグル、レバー等のハードウェアによる操作部や、例えば、タッチパネル式の表示装置50に表示される操作画面(例えば、上述の図7の設定画面700)上のアイコン等のソフトウェアによる操作部を通じて行われてよい。
【0112】
また、上述の実施形態及び変形例において、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合に、アタッチメント(ブーム4やアーム5)の動作速度を相対的に遅くするだけでなく、自動でショベル500のジャッキアップ状態を解消させてもよい。つまり、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合に、アタッチメントの動作速度を相対的に遅くしながら、自動的に、ジャッキアップ状態を解消させてもよい。これにより、ショベル500のジャッキアップ状態が自動的に解消される。また、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合、ショベル500がオペレータ等の意図的なジャッキアップ状態であるか、意図しないジャッキアップ状態であるかを判断し、意図的でないジャッキアップ状態であるときに、アタッチメントの動作速度を相対的に遅くしながら、自動的に、ジャッキアップ状態を解消させてもよい。例えば、操作支援制御装置200は、操作装置26の操作状態等に基づき、直前のショベル500の作業状況を把握することにより、現在のジャッキアップ状態が意図的であるか、意図的でないかを判断しうる。これにより、操作支援制御装置200は、オペレータ等が意図的にショベル500をジャッキアップ状態にしたような場合に(例えば、上述の図3Bの場合に、自動でショベル500のジャッキアップ状態が解消されないようにすることができる。また、操作支援制御装置200は、ショベル500がジャッキアップ状態である場合、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させる操作が行われたときに、アタッチメントの動作速度を遅くしながら、自動的に、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させてもよい。例えば、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させる操作には、操作装置26に対するブーム4を上げる操作やアーム5を開く操作である。このとき、アタッチメントの動作速度は、操作装置26に対するブーム4やアーム5に関する操作内容(つまり、操作量)とは関係なく制御される。また、ショベル500のジャッキアップ状態を解消させる操作は、ジャッキアップ状態を解消させるための専用の操作ボタン等に対する操作であってもよい。これにより、操作支援制御装置200は、オペレータ等にジャッキアップ解消の意思がある場合に限定して、自動でショベル500のジャッキアップ状態を解消させることができる。
【0113】
また、上述した実施形態及び変形例では、ショベル500は、操作装置26を通じて、キャビン10に搭乗するオペレータ等からの操作を受け付けることで動作するが、当該態様には、限定されない。例えば、ショベル500は、搭載される通信機器を用いて、所定の外部装置と通信ネットワーク(例えば、基地局を末端とする移動体通信網、通信衛星を利用する衛星通信網、インターネット網等)を通じて通信可能に接続され、搭載される周辺を撮像する撮像装置の撮像画像を外部装置に逐次送信する。これにより、当該外部装置において、作業者等は、ショベル500の周辺の様子を確認することができる。そして、ショベル500は、当該外部装置における作業者(オペレータ)等による外部装置の操作手段(例えば、ジョイスティック等)に対する操作入力を通信ネットワーク経由で受け付けることで動作してもよい。つまり、ショベル500は、通信ネットワーク経由で、遠隔操作されてもよい。この場合、操作支援制御装置200は、上述した実施形態の場合と同様、通信ネットワーク経由でのオペレータ等の操作を支援することができる。つまり、操作支援制御装置200は、遠隔操作に応じて、オペレータの意図に反するショベル500のジャッキアップ状態(図3A参照)、或いは、オペレータの意図に沿ったショベル500のジャッキアップ状態(図3B参照)が発生した場合についても、上述した実施形態及び変形例と同様の操作支援制御を行うことができる。
【0114】
また、上述の実施形態及び変形例では、ショベル500は、オペレータ等による操作を受け付けることで動作するが、外部からの操作を受け付けることなく、自律的に動作してもよい。この場合、ショベル500は、オペレータ等の操作装置26に対する操作内容(例えば、操作方向や操作量)の代わりに、自律動作を制御する制御装置(以下、自律制御装置)により自動生成される操作内容に応じて、動作する。換言すれば、ショベル500は、自律制御装置によって自動操作される。また、このように、ショベル500が自律動作する場合についても、操作支援制御装置200は、自律制御装置によるショベル500の自動操作を支援することができる。つまり、操作支援制御装置200は、自律制御装置によるショベル500の自動操作に応じて、自律制御装置の意図に反したショベル500のジャッキアップ状態(図3A)、或いは、自律制御装置の意図に沿ったジャッキアップ状態(図3B)が発生した場合についても、上述した実施形態及び変形例と同様の操作支援制御を行うことができる。
【0115】
また、上述した実施形態及び変形例では、ショベル500は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の各種動作要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部が電気駆動される構成であってもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
【0116】
最後に、本願は、2018年2月9日に出願した日本国特許出願2018-22017号に基づく優先権を主張するものであり、これらの日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0117】
1 下部走行体(走行体)
1A 走行油圧モータ
1B 走行油圧モータ
2 旋回機構
3 上部旋回体(旋回体)
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
11a エンジン回転数センサ
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
17A ブーム制御弁(制御弁)
21 旋回油圧モータ
25 パイロットライン
26 操作装置
26A レバー
26B レバー
26C ペダル
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ(制御装置)
40 傾斜角度センサ
42 ブーム角度センサ
44 アーム角度センサ
46 バケット角度センサ
48 ロッド圧センサ
50 表示装置
52 音声出力装置
54 電磁比例弁(補正装置)
56 電磁比例弁(調整弁)
60 操作支援機能ON/OFFスイッチ
75 エンジンコントロールモジュール
200 操作支援制御装置
301 判定部
302 動作制御部
303 通知部
500 ショベル
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9