(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】弁膜逆流の治療のための僧帽弁インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A61F2/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041944
(22)【出願日】2020-03-11
(62)【分割の表示】P 2016573983の分割
【原出願日】2015-06-17
【審査請求日】2020-04-10
(32)【優先日】2014-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513190025
【氏名又は名称】ポラレス・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ケー・カイルカハン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・レシュ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/192107(WO,A1)
【文献】特表2014-510563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0022557(US,A1)
【文献】特表2008-517672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ、及び、前記ハブの周りに離隔された支持構造体の複数のセクションを備えるインプラントであって、前記ハブ及び前記支持構造体の複数のセクションは一体的に形成され、前記インプラントは、僧帽弁の後尖の上に位置するように構成される、インプラントと、
組織アンカーと、
前記インプラントを心臓に送達するように構成された送達用カテーテルと、
を備え、
前記送達用カテーテルと前記ハブとは直接結合して、回転及び軸方向
の動きについて前記送達用カテーテル及び前記インプラントを一時的に係止することができるように構成されていることを特徴とする固定システム。
【請求項2】
前記組織アンカーは、前記ハブによって送達されることを特徴とする請求項
1に記載の固定システム。
【請求項3】
追加的なアンカーをさらに備えることを特徴とする請求項
1または2に記載の固定システム。
【請求項4】
前記支持構造体の複数のセクションは、形状記憶材料を備えることを特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項5】
前記送達用カテーテルは、トルクをかけることができ、かつ、偏向可能であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項6】
前記インプラントは、送達のために畳まれるように構成されることを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項7】
前記インプラントが開くと、前記インプラントは、形状記憶材料の形状をとることを特徴とする請求項
1~6のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項8】
前記インプラントは、組織に係合するための受動的フックをさらに備えることを特徴とする請求項
1~7のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項9】
交連固定をさらに備えることを特徴とする請求項
1~8のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項10】
前記組織アンカーは、X線透視マーカーを備えることを特徴とする請求項
1~9のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項11】
経中隔シースをさらに備えることを特徴とする請求項
1~10のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項12】
前記組織アンカーは、前記インプラントが前記送達用カテーテルに結合される際、前記インプラントに事前に装填されることを特徴とする請求項
1~11のいずれか一項に記載の固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年6月18日に出願した米国特許仮出願第62/014060号、名称「Mitral Valve Implants for the Treatment of Valvular Regurgitation」の優先権を主張するものである。前述の優先権のある出願の開示全体は、すべての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、典型的には心臓弁疾患の治療のため、および/または人体の1つまたは複数の弁の特性を変えるための、改善された医療デバイス、システム、および方法を提供する。本発明の実施形態は、僧帽弁逆流の治療のためのインプラントを含む。
【背景技術】
【0003】
人間の心臓は、静脈を経由して臓器および組織から血液を受け取り、その血液をポンプで肺に通し、そこで、血液は酸素濃度を高められ、酸素を豊富に含んだ血液を心臓から動脈に送り出し、身体の臓器系が酸素を抽出して適切な機能を行えるようにすることができる。非酸素化血液は心臓に還流し、もう一度肺にポンプで送られる。
【0004】
心臓は、4つの心室、すなわち、右心房(RA)、右心室(RV)、左心房(LA)、および左心室(LV)を備えている。心臓の右側および左側のポンプ動作は、一般的に、心臓周期全体において同期して行われる。
【0005】
心臓は、心臓周期において血流を正しい方向に選択的に送るように一般的に構成されている4つの弁を有する。心房を心室から分離する弁は、房室(またはAV)弁と称される。左心房と左心室との間のAV弁は、僧帽弁である。右心房と右心室との間のAV弁は、三尖弁である。肺動脈弁は、血流を肺動脈に導き、そこから肺に導き、血液は、肺静脈を経由して左心房に戻る。大動脈弁は、流れを大動脈に通し、そこから末梢に導く。通常、心室と心室の間、または心房と心房の間に直接的な接続はない。
【0006】
機械的心拍は、心臓組織全体に広がる電気インパルスによってトリガされる。心臓弁の開閉は、主に、心室の間の圧力差の結果生じるものであり、それらの圧力は受動的充満または心室収縮の結果生じる。たとえば、僧帽弁の開閉は、左心房と左心室との間の圧力差の結果生じ得る。
【0007】
心室充満の開始時(拡張期)に、大動脈および肺動脈弁は、動脈から心室内への逆流を防ぐために閉じられる。その後まもなく、AV弁は開き、心房から対応する心室内への妨げられない流れが許される。心室収縮(すなわち、心室が空になる)が開始してまもなく、三尖弁および僧帽弁は、通常閉じて、心室から対応する心房内への逆流を防ぐシールを形成する。
【0008】
残念なことに、AV弁は、損傷するか、または他の何らかの形で適切に機能できなくなることがあり、その結果、閉じるのが不適切になる。AV弁は、一般的に弁輪、弁尖、腱索、および支持構造体を備える複雑な構造体である。各心房は、心房前庭を経由して弁と接合する。僧帽弁は、2つの弁尖を有し、三尖弁の類似構造体は、3つの弁尖を有し、弁尖の対応する表面同士の対向または係合は、血液が間違った方向に流れるのを防ぐように弁を閉鎖または封止するのを助ける。心室収縮時に弁尖が封止できないことは、接合不良(malcoaptation)として知られており、血液が弁を通って逆方向に流れることを許し得る(逆流)。心臓弁逆流は、患者に対して深刻な結果を引き起こす可能性があり、多くの場合、結果として、心不全、血流減少、血圧降下、および/または身体組織への酸素流の減少を生じる。僧帽弁逆流も、血液が左心房から肺静脈への血液逆流を引き起こし、鬱血を生じ得る。重度の弁膜逆流は、もし処置されなければ、結果として、永久的な障害をもたらすか、または死に至らしめ得る。
【0009】
様々な療法が、僧帽弁逆流の治療に適用されてきており、なおも他の療法が、提案されている可能性もあるが、患者を治療するためにまだ実際に使用されていない可能性がある。知られている療法のうちのいくつかが少なくとも何人かの患者に対して恩恵をもたらすことが判明しているが、なおもさらなる選択肢があるのが望ましいであろう。たとえば、薬理作用のある物質(利尿薬および血管拡張薬など)は軽度の僧帽弁逆流を有する患者に使用され、左心房内に逆流する血液の量を低減するのを助けることができる。しかしながら、薬剤には、患者の薬剤服用順守の欠如という欠点があり得る。かなりの数の患者が、慢性的なおよび/または次第に悪化する重大な僧帽弁逆流の可能性があるにもかかわらず、薬剤投与を受けないことが時折(または定期的にすら)あり得る。僧帽弁逆流の薬理療法は、不便な場合もあり得、奏功しないことも多く(特に、症状が悪化すると)、著しい副作用(低血圧など)が付随し得る。
【0010】
僧帽弁逆流の治療のために様々な外科手術の選択肢も提案および/または採用されている。たとえば、心臓切開手術は、機能不全に陥った僧帽弁を置き換えるか、または修復することができる。弁形成リング修復術では、僧帽弁後輪は、その周に沿ってサイズが縮小され、その際に、適宜、機械的外科弁形成縫合リング(mechanical surgical annuloplasty sewing ring)に通された縫合糸を使用して接合を行う。観血療法では、また、弁尖を再形成しおよび/または他の何らかの方法で支持構造体を修正しようとすることもあり得る。とにかく、僧帽弁切開手術は、一般的に、人工心肺装置を付けて患者が全身麻酔された状態で、また胸部が切り開かれている状態で、行われる非常に侵襲性の高い治療である。合併症はありがちであり、心臓切開手術の疾病率(および潜在的死亡率)に照らして、タイミングは難しいものとなる--病気が重い患者ほど、手術の必要性が高いが、手術への耐久性が低い。成功する僧帽弁切開手術結果も、外科手術の技能および経験にきわめて依存し得る。
【0011】
心臓切開手術の疾病率および死亡率が与えられたとして、発明者らはより侵襲性の少ない外科的療法を探し求めた。ロボットを用いて、または内視鏡を通して行われる手技は、多くの場合、なおもきわめて侵襲的であり、また時間も、費用も高くつき、少なくともいくつかの場合において、外科医の腕前にかなり依存し得る。これらのときには虚弱な患者に及ぼす外傷性傷害をなおいっそう少なくすることが望ましく、技量が様々に異なる非常に多くの医師でも成功させることが可能である療法を実現したい。その目的に向けて、多数の、侵襲性が少ないと言われる技術およびアプローチが提案されてきた。これらは、冠状静脈洞内から僧帽弁輪を再形成しようとするデバイス、自然弁輪の上または下のいずれかに嵌合させることによって弁輪を再形成することを試みるデバイス、弁尖を癒合させるデバイス(アルフィエーリ縫合をまねる)、左心室を再形成するデバイス、および同様のものを含む。
【0012】
おそらく、最も広く知られている、様々な僧帽弁置換術が開発されており、これらのインプラントは自然弁尖を交換(または置換)し、一般的に心室の間の血流経路を制御するために外科的にインプラントされた構造体に頼る。これらの様々なアプローチおよびツールは様々なレベルで受け入れられてきたが、僧帽弁逆流を患っている大半のまたは全部の患者にとって理想的な療法として広く認知されたものはまだない。
【0013】
知られている侵襲性を最小限度に抑えた僧帽弁逆流療法およびインプラントには問題点と不利点とがあるので、なおもさらなる代替的治療法が提案されている。代替的提案のいくつかは、インプラントされた構造体が心拍周期全体を通して弁輪内に留まることを必要とするものであった。これらの提案の一グループは、弁開口部を通して心房と心室との間に延在するテザーまたは剛体棒上にインプラントされたままとなる円柱状バルーンまたは同様のものを含んでいる。別のグループは、インプラントを固定するために弁上に延在するバットレスまたは構造クロスメンバーと組み合わせることが多い、アーチ形リング構造体または同様のものに頼る。残念なことに、自然弁尖とバルーンまたは他の同軸本体部の全周との間の封止は難しいことが実証され得るが、各心拍の間の自然弁輪の周りの著しい収縮は、結果として、バットレスまたはクロスメンバーを相互接続するアンカーが屈曲を許される場合に長期に渡る植え込みにおいて著しい疲労破損が生じる問題を引き起こし得る。さらに、弁の組織の著しい移動は、インプラントが剛体であろうと、可撓性であろうと関係なく、インプラントの正確な位置決めを難しくする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記に照らして、改善された医療デバイス、システム、および方法を提供することが望ましい。僧帽弁逆流および他の心臓弁疾患の治療のための、および/または身体の他の弁のうちの1つまたは複数の特性を変えるための、新しい技術を提供することが特に望ましい。弁尖接合(弁輪または心室再形成を介して間接的にではなく)を直接増強することができ、癒合を介してまたは他の形で弁尖解剖学的構造を壊さない、しかし単純にかつ確実に配備でき、過剰な費用もしくは手術時間を費やすことのない、デバイスが依然として必要である。これらの新しい技術は、配備のために心臓を停止したり人工心肺装置に頼ることなく、また改善された弁および/または心臓機能を実現するために外科医の並外れた技能に頼ることなく、侵襲性の低いアプローチを使用して実装することが可能であれば特に有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、心臓弁の接合不良を治療するためのインプラントである。インプラントは、形状記憶構造体、構造体に結合された生体適合膜、インプラントの近位側に配置され、膜に結合されているハブ、近位側上の膜の縁に沿ってある1つ、2つ、またはそれ以上の穴もしくはミシン目、および固定デバイスに結合されている心室突出部のうちの1つまたは複数を備えることができる。インプラントは、経皮的カテーテルに通して送達するため、折り畳むようにできる。形状記憶構造体は、たとえばニチノールまたはPEEKなどの、形状記憶棘状突起部を含み得る。遠位先端部などの、心室突出部の一部は、放射線不透過性とすることができる。固定デバイスは、能動的でも受動的でもよい。棘状突起部は、膜および組織に結合するために微小孔および微小フックなどの特徴部を備え得る。
【0016】
また本明細書で開示されているのは、操縦可能なシャフト、ハンドルに加えられるトルクの量に応じてシャフトの遠位先端部の曲げ半径を調整するようにシャフト内に配置されているプルワイヤに結合されている回転可能なハンドルの1つまたは複数を備える操縦可能なカテーテルである。いくつかの実施形態において、カテーテルのハンドルの直径は、操縦可能なシャフトの直径に等しいか、または操縦可能なシャフトの直径以下である。また本明細書で開示されているのは、カテーテルのシャフトの遠位先端部の曲げ半径を調整するようにトルクをかけられるシャフト内に配置されているプルワイヤに結合されている回転可能なハンドル、インプラントが折り畳まれたときにインプラントを収容するように設計されているシース、およびインプラントのハブもしくはアンカーのいずれかに送達用カテーテルを結合することを可能にする係止特徴部をさらに備える遠位先端部のうちの1つまたは複数を具備する送達用カテーテルである。いくつかの実施形態において、カテーテルは、インプラントの折り畳みを助ける、引き裂ける、使い捨てできる漏斗も備えることができる。いくつかの実施形態において、遠位先端部は、自然に係止解除位置に設定される係止タブをさらに備える。送達用カテーテルは、送達用カテーテルの係止タブを受け入れる特徴部を有するインプラントの環状ハブに結合され得る。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤまたは別のカテーテルがシャフト内に挿入され、それにより、係止タブをインプラントのハブ上の随伴する特徴部に押し付けて、カテーテルとハブとが係止されるようにできる。カテーテルは、また、ループの張力がハンドル上のコントロール部を介して制御され得るように近位ハンドルから遠位先端部まで引かれるワイヤなどの、ループも備え得る。送達用カテーテルは、クロスピンを有するインプラントの環状ハブに結合され得る。ガイドワイヤまたは別のカテーテルがシャフト内に挿入されるものとしてよく、ワイヤのループは、ループの張力が維持されるまで送達用カテーテルがインプラントのハブに係止されるようにクロスピンおよびガイドワイヤに対して張力をかけられる。
【0017】
インプラントは、送達用カテーテルへのアンカーの第1のカップリング、ならびにハブおよび組織内にアンカーを挿入するために送達用カテーテルにトルクが加えられるインプラントハブへのアンカーの第2のカップリングを介して、心臓組織などの組織に動作可能に結合されるものとしてよい。第1のカップリングは、カテーテルを引っ込めるために結合を外され得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、アンカーをカテーテルのシャフトに結合するステップ、アンカーおよびカテーテルをアンカー部位まで前進させるステップ、インプラントおよび組織と係合するようにアンカーを送達するステップ、ならびにアンカーとシャフトとの結合を外すステップのうちの1つまたは複数によって交連アンカーが送達され得る。シャフトは、トルクがかけられるものとしてよく、係合機構は、アンカーがインプラントおよび組織と係合するようにシャフトにトルクを加えることができる。アンカーは、形状記憶材料から作ることができ、アンカー部位に送達するためにカテーテルのシャフト内に圧し込められるものとしてよく、カテーテルの遠位先端部は、組織を刺し通すような形状を有する。アンカーは、送達用カテーテルが最初に組織を刺し通した後に前進させられるものとしてよく、その後、カテーテルは引っ込められて、アンカーを適所に残す。
【0019】
いくつかの実施形態において、開示されているのは、心臓弁の接合不良を治療するためのインプラントである。インプラントは、取り外し可能な形状記憶構造体、構造体に結合された生体適合膜、インプラントの近位側に配置され、膜に結合されているハブ、近位側上の膜の縁に沿ってある1つ、2つ、またはそれ以上の穴もしくはミシン目、および固定デバイスに結合されている心室突出部のうちの1つまたは複数を備えることができる。インプラントは、また、環状縁の周りに、および/または心室突出部に沿って配置されている通路などの、少なくとも1つの通路も備え得る。いくつかの実施形態において、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上などの、複数のアンカーが送達され、インプラントを心臓組織に結合する。送達用デバイスは、中央回転シャフトに回転可能に結合されている1つ、2つ、またはそれ以上のアンカーを備える遠位セクションを有することができる。バネ仕掛け機構が押す力を印加して、アンカーが遠位端から出るのを引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、アンカーは、中央回転シャフトが回転するとアンカーが遠位端から出るように内径上の溝を有するハウジング内に収納され得る。デバイスは、たとえば、中空シャフト、中空シャフトの端部のところの先の尖った端部、ワイヤが挿通された中空シャフト内に留置されている1つ、2つ、またはそれ以上の中空バレル、および近位端のところにあるプッシャーであって力がプッシャーに加えられたときにバレルが中空シャフトから1つずつ出て来るようなプッシャーのうちの1つまたは複数を備え得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されているのは、長手方向軸、近位端、および遠位偏向ゾーンを有する、細長い可撓性本体部を備える、操縦可能なガイドワイヤ、偏向ゾーンの制御可能な偏向のための、近位端上のコントロール部、およびコントロール部から偏向ゾーンまで延在する移動可能な偏向要素である。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤのどの部分も、約10フレンチ超、8フレンチ、6フレンチ、または4フレンチの外径を有しない。コントロール部は、本体部の外径以下である外径を有し得る。軸の周りのコントロール部の回転は、偏向ゾーンの横方向移動を引き起こし得る。軸の周りの第1の方向のコントロール部の回転は、偏向要素の近位への引き込みを引き起こし得る。
【0021】
また、本明細書で開示されているのは、可撓性本体部を備える、植え込み可能な接合補助(coaptation assistance)デバイス、後尖を制限するように構成されている、本体部上の第1の凹面、前尖と接触するように構成されている、本体部上の第2の凸面、第1の表面から見て外を向く開口部を画成する本体部上のアーチ形の、周辺上縁、および本体部から遠ざかって延在し、心室内に固定されるように構成されている、心室突出部である。デバイスは、心室突出部上にアンカーも備え得る。アンカーは、能動的でも受動的でもよい。デバイスは、また、アーチ形周辺縁を支持するための可撓性の棘状突起部も備え得る。棘状突起部は、いくつかの場合において取り外し可能であってよい。
【0022】
また、本明細書で開示されているのは、植え込み可能な接合デバイスの心室突出部を取り付けるための固定システムである。システムは、内部を貫通する開口を有する肩部と、ハブから遠位に延在する、螺旋状組織アンカーと、トルクシャフトの解放可能な係合のための、アンカー上の第1の係合構造体と、アンカーを係合させるための、トルクシャフト上の第2の係合構造体と、内部で螺旋状アンカーを受け取るように寸法を決められているハブを有する、インプラントを備えることができ、トルクシャフトは、螺旋状アンカーを組織内に押し込み、インプラントを組織に固定するため回転するように構成される。第1の係合構造体は、開口であってよく、第2の係合構造体は、突出部であってよい。突出部は、トルクシャフト内の細長要素の軸方向移動に応答するなどして、開口内、および開口から外に横方向移動可能であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、操縦可能なガイドワイヤが実現される。操縦可能なガイドワイヤは、長手方向軸、近位端、および遠位偏向ゾーンを有する、細長い可撓性本体部を備えることができる。操縦可能なガイドワイヤは、偏向ゾーンの制御可能な偏向のために、近位端上にコントロール部を備えることができる。操縦可能なガイドワイヤは、コントロール部から偏向ゾーンまで延在する移動可能な偏向要素を備えることができる。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤのどの部分も、約10フレンチ超の外径を有しない。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤのどの部分も、約6フレンチ超の外径を有しない。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤのどの部分も、約4フレンチ超の外径を有しない。いくつかの実施形態において、コントロール部は、本体部の外径以下である外径を有する。いくつかの実施形態において、軸の周りのコントロール部の回転は、偏向ゾーンの横方向移動を引き起こす。いくつかの実施形態において、軸の周りの第1の方向のコントロール部の回転は、偏向要素の近位への引き込みを引き起こす。
【0024】
いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスが実現される。植え込み可能な接合補助デバイスは、可撓性本体部を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、後尖を制限するように構成されている、本体部上の第1の凹面を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、前尖と接触するように構成されている、本体部上の第2の凸面を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、第1の表面から見て外を向く開口部を画成する本体部上のアーチ形の、周辺上縁を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、本体部から遠ざかって延在し、心室内に固定されるように構成されている、心室突出部を備え得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスは、心室突出部上にアンカーを備え得る。いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスは、能動的アンカーを備え得る。いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスは、受動的アンカーを備え得る。いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスは、アーチ形周辺縁を支持するための可撓性の棘状突起部を備え得る。いくつかの実施形態において、棘状突起部は、取り外し可能である。
【0026】
いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合デバイスの心室突出部を取り付けるための固定システムが実現される。固定システムは、内部を貫通する開口を有する肩部を備え得る。固定システムは、ハブから遠位に延在する、螺旋状組織アンカーを備え得る。固定システムは、トルクシャフトの解放可能な係合のために、アンカー上に第1の係合構造体を備え得る。固定システムは、アンカーを係合させるために、トルクシャフト上に第2の係合構造体を備え得る。固定システムは、内部で螺旋状アンカーを受け取るように寸法を決められているハブを有する、インプラントを備え得る。いくつかの実施形態において、トルクシャフトは、螺旋状アンカーを組織内に押し込み、インプラントを組織に固定するため回転するように構成される。いくつかの実施形態において、第1の係合構造体は、開口であり、第2の係合構造体は、突出部である。いくつかの実施形態において、突出部は、開口内に、および開口から外に、横方向移動可能である。いくつかの実施形態において、突出部は、トルクシャフト内の細長要素の軸方向移動に応答して、開口内、および開口から外に横方向移動可能である。
【0027】
いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスが実現される。植え込み可能な接合補助デバイスは、第1の接合面と、それと反対側の第2の接合面とを備え、各接合面は第1の側縁、第2の側縁、下縁、および上縁によって境界を接する、接合補助本体部を備えることができる。植え込み可能な接合補助デバイスは、下縁から延在する心室突出部を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、上縁と心室突出部との間の接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する第1の支持体を備えることができる。植え込み可能な接合補助デバイスは、第1の側縁と第2の側縁との間の接合補助本体部の少なくとも一部を貫通する第2の支持体を備えることができる。植え込み可能な接合補助デバイスは、内部で操縦可能なカテーテルを受け入れるサイズを有する接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する通路を備えることができる。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、第1の支持体が略直線的である第1の構成と、第1の支持体が湾曲している第2の構成とを有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の支持体は、植え込み可能な接合補助デバイスの経皮的挿入を可能にするように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、通路は、上縁と心室突出部との間の接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルは、湾曲するように構成されている遠位先端部を備える。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルのハンドルを回転させると、遠位先端部は湾曲する。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、形状記憶材料を含む。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、接合補助本体部に接着される。いくつかの実施形態において、接合補助本体部は、第1の支持体の少なくとも一部を受け入れるサイズを有する内腔を備える。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、取り外し可能である。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、上縁から心室突出部まで延在する。いくつかの実施形態において、通路は、第1の側縁と第2の側縁との間の接合補助本体部の少なくとも一部を貫通する。いくつかの実施形態において、第2の支持体は、形状記憶材料を含む。いくつかの実施形態において、第2の支持体は、接合補助本体部に接着される。いくつかの実施形態において、接合補助本体部は、第2の支持体の少なくとも一部を受け入れるサイズを有する内腔を備える。いくつかの実施形態において、第2の支持体は、取り外し可能である。いくつかの実施形態において、第2の支持体は、第1の側縁から第2の側縁まで延在する。いくつかの実施形態において、第1の支持体は、第2の支持体に結合される。いくつかの実施形態において、第1の支持体および第2の支持体は、取り外し可能なハブに結合され、取り外し可能なハブは接合補助本体部の表面から突出している。
【0029】
いくつかの実施形態において、収めるためのキットが実現される。キットは、植え込み可能な接合補助デバイスを含み得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、第1の接合面と、それと反対側の第2の接合面とを備え、各接合面は第1の側縁、第2の側縁、下縁、および上縁によって境界を接する、接合補助本体部を備えることができる。植え込み可能な接合補助デバイスは、下縁から延在する心室突出部を備え得る。植え込み可能な接合補助デバイスは、内部で操縦可能なカテーテルを受け入れるサイズを有する接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する通路を備えることができる。キットは、操縦可能なカテーテルを含み得る。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルは、僧帽弁を通過し、心室組織に向かって湾曲するように構成され、植え込み可能な接合補助デバイスは、操縦可能なカテーテル上を通過して心室組織の方へ向かうように構成される。
【0030】
いくつかの実施形態において、通路は、上縁と心室突出部との間の接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルは、湾曲するように構成されている遠位先端部を備える。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルのハンドルを回転させると、遠位先端部は湾曲する。いくつかの実施形態において、通路は、第1の側縁と第2の側縁との間の接合補助本体部の少なくとも一部を貫通する。
【0031】
いくつかの実施形態において、植え込み可能な接合補助デバイスを使用する方法が提供される。方法は、接合補助本体部を心臓弁の方へ挿入するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、接合補助本体部は第1の接合面と、それと反対側の第2の接合面とを備え、各接合面は第1の側縁、第2の側縁、下縁、および上縁によって境界を接し、心室突出部が下縁から延在している。方法は、接合補助本体部に湾曲した構成をとらせるように第1の支持体を操作するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、第1の支持体は上縁と心室突出部との間の接合補助デバイスの少なくとも一部を貫通する。方法は、接合補助本体部に湾曲した構成をとらせるように第2の支持体を操作するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、第2の支持体は第1の側縁と第2の側縁との間の接合補助本体部の少なくとも一部を貫通する。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1の支持体を操作するステップは、送達用カテーテルから接合補助本体部を解放するステップを含む。いくつかの実施形態において、第2の支持体を操作するステップは、送達用カテーテルから接合補助本体部を解放するステップを含む。方法は、接合補助本体部を操縦可能なカテーテル上に誘導するステップを含み得る。方法は、接合補助本体部を心臓弁の方へ挿入する前に、操縦可能なカテーテルを心室突出部から上縁の方へ渡すステップを含み得る。方法は、操縦可能なカテーテルの遠位部分を移動して後尖に沿って湾曲させるステップを含み得る。方法は、接合補助デバイスを操縦可能なカテーテルの湾曲上へ渡すステップを含み得る。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルは、心室突出部が心室組織と係合した後に取り出される。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテルは、心室突出部が心室組織の方へ前進させられたときに適所に留まる。方法は、第1の支持体を接合補助本体部から取り出すステップを含み得る。方法は、第2の支持体を接合補助本体部から取り出すステップを含み得る。方法は、心室突出部を心室組織と係合させるステップを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は経皮的に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図1B】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図1C】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図1D】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図1E】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図1F】背景技術の項および以下で説明されているように、本明細書で説明されているインプラントおよびシステムと相互作用し得る、心臓および僧帽弁の組織の一部を例示する概略図である。
【
図2A】拡張期の僧帽弁機能の概略を示している、心臓の簡略化された断面を例示する図である。
【
図2B】収縮期の僧帽弁機能の概略を示している、心臓の簡略化された断面を例示する図である。
【
図3A】僧帽弁弁尖の接合不良のセッティングにおいて収縮期の僧帽弁逆流の概略を示している、心臓の簡略化された断面を例示する図である。
【
図3B】僧帽弁弁尖の接合不良のセッティングにおいて収縮期の僧帽弁逆流の概略を示している、心臓の簡略化された断面を例示する図である。
【
図4A】機能的僧帽弁逆流のセッティングにおける僧帽弁接合不良を示している、心臓の定型化された断面を例示する図である。
【
図4B】変性僧帽弁逆流のセッティングにおける僧帽弁接合不良を示している、心臓の定型化された断面を例示する図である。
【
図5A】接合補助デバイスの一実施形態を例示する図である。
【
図5B】
図5Aの断面A-Aに沿って支持構造体が有し得る様々な断面を例示する図である。
【
図5C】心室突出部の遠位端のところのアンカーの様々な形状を例示する図である。
【
図5D】接合補助デバイスの寸法の範囲の非制限的な例を示す図である。
【
図5E】支持構造体の変更形態(材料、寸法の範囲)の非制限的な例の表を例示する図である。
【
図5F】心室突出部の遠位端の一実施形態を例示する図である。
【
図5G】接合補助デバイスの位置が、接合補助デバイスの形状を利用して自然後尖をつまむことによって維持され得ることを例示する図である。
【
図5H】接合補助デバイスが心室側から後尖を通して固定され得る仕方の一実施形態を例示する図である。
【
図6A】操縦可能なカテーテルを例示する図である。
【
図6B】心臓内の
図6Aの操縦可能なカテーテルの位置を例示する図である。
【
図7B】送達用カテーテルを環状ハブに係止する係止機構の一実施形態を例示する図である。
【
図7C】送達用カテーテルを環状ハブに係止する係止機構の別の実施形態を例示する図である。
【
図7D】接合補助デバイス、送達用カテーテル、およびガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテルの結合を例示する図である。
【
図8A】接合補助デバイスが、どのように、折り畳まれ、インプラントシース内に引き込まれ、大腿アクセスを通じて心臓内に送達されるかを例示する図である。
【
図8B】接合補助デバイスが、どのように、折り畳まれ、インプラントシース内に引き込まれ、大腿アクセスを通じて心臓内に送達されるかを例示する図である。
【
図8C】接合補助デバイスが、どのように、折り畳まれ、インプラントシース内に引き込まれ、大腿アクセスを通じて心臓内に送達されるかを例示する図である。
【
図8D】接合補助デバイスが、どのように、折り畳まれ、インプラントシース内に引き込まれ、大腿アクセスを通じて心臓内に送達されるかを例示する図である。
【
図8E】送達用カテーテルおよびインプラントシースが、どのように、接合補助デバイスの心室突出部が固定され得るように配置されるかを例示する図である。
【
図8F】送達用カテーテルおよびインプラントシースが、どのように、接合補助デバイスの心室突出部が固定され得るように配置されるかを例示する図である。
【
図8G】送達用カテーテルおよびインプラントシースが、どのように、接合補助デバイスの心室突出部が固定され得るように配置されるかを例示する図である。
【
図8H】完全に開いている接合補助デバイス、および環状ハブを弁輪に固定するための環状ハブの上に位置決めされた送達用カテーテルを例示する図である。
【
図8I】環状ハブに固定するために使用され得るアンカーの一実施形態を例示する図である。
【
図9A】接合補助デバイスを接合補助デバイスのフレーム内の穴を介して交連に隣接して固定するための方法を例示する図である。
【
図10A】複数の内腔およびインプラントとの接続部を有する送達用カテーテルの別の実施形態を例示する図である。
【
図11A】アンカーの様々な代替的実施形態を例示する図である。
【
図11B】アンカーの様々な代替的実施形態を例示する図である。
【
図11C】アンカー11Aおよび11Bが送達される際に通るものとしてよい送達用チューブを例示する図である。
【
図11D】
図11Bのアンカーが、固定処理が完了した後にどのように見えるかを例示する図である。
【
図12】棘状突起部のないインプラント設計を例示する図である(図は、後でインプラントから引き抜かれる構造体1220とともに図示されている)。
【
図13A】棘状突起部のないインプラントに対する送達手順の初期段階を例示する図である。
【
図13B】棘状突起部のないインプラントに対する送達手順の初期段階を例示する図である。
【
図14A】棘状突起部のないインプラントに対する固定方法の様々な種類を例示する図である。
【
図14B】棘状突起部のないインプラントに対する固定方法の様々な種類を例示する図である。
【
図15A】複数のアンカーを送達することを可能にされているアンカーカテーテルの一実施形態を例示する図である。この図は、複数のアンカー設計も例示している。
【
図15B】複数のアンカーを送達することを可能にされているアンカーカテーテルの別の実施形態を例示する図である。
【
図15C】
図15Bのアンカーがどのように組織に結合され得るかを例示する図である。
【
図15D】
図15Bのアンカーがどのように組織に結合され得るかを例示する図である。
【
図16A】複数のアンカーを送達することを可能にされているアンカーカテーテルの別の実施形態を例示する図である。
【
図16B】
図16Aの用具が、複数のアンカーを送達するためにどのように使用され得るかを例示する図である。
【
図16C】
図16Aの用具が、複数のアンカーを送達するためにどのように使用され得るかを例示する図である。
【
図17A】棘状突起部のないインプラントの別の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の範囲内で説明されているデバイス、システム、および方法は、一般的に、僧帽弁逆流(MR)の治療のためのものである。僧帽弁逆流は、僧帽弁が収縮期に左心室から左心房への血液の逆流を防がないときに生じる。僧帽弁は、2つの弁尖、前尖および後尖からなり、収縮期に接合するか、または一緒になって、逆流を防ぐ。一般的に、僧帽弁逆流、機能的および変性逆流の2種類がある。機能的MRは、異常な、または正常に機能していない、左心室(LV)の壁運動、左心室拡大、および乳頭筋疾患を含む、複数の機構によって引き起こされる。変性MRは、腱索の引き伸ばしまたは破断を含む弁尖および弁下組織の構造的異常によって引き起こされる。損傷した腱索は、弁尖の脱出を引き起こす可能性がある、すなわち、弁尖が出っ張る(一般的に心房内に入る)か、または腱索が破れた場合に動揺し、血液の逆流を引き起こす。以下で説明されるように、本開示のデバイス、システム、および方法は、血液の逆流が最小になるか、またはなくなるように自然後弁の上に新しい接合面を形成する。
【0035】
図1A~
図1Dを参照すると、心臓の4つの室、左心房10、右心房20、左心室30、および右心室40が示されている。僧帽弁60は、左心房10と左心室30との間に配設されている。図には、また、右心房20と右心室40とを分離する三尖弁50、大動脈弁80、および肺動脈弁70も示されている。僧帽弁60は、2つの弁尖、前尖12および後尖14からなる。健康な心臓では、2つの弁尖の縁は、接合ゾーン16のところで収縮期において対向する。
【0036】
線維性弁輪120は、心臓骨格の一部であり、前尖12および後尖14と称される、僧帽弁の2つの弁尖の取り付け部をなす。弁尖は、腱索32への取り付け部によって軸方向に支持される。次いで、腱索は、左心室の乳頭筋34、36の一方または両方に付着する。健康な心臓では、腱索支持構造体は、僧帽弁弁尖をテザリングし、弁尖が拡張期に容易に開くが、心室収縮期に発生する高圧に抵抗することができる。支持構造体のテザリング効果に加えて、弁尖の形状および組織コンシステンシーは、効果的な封止または接合を促進する働きをする。前尖および後尖の前縁部は、接合ゾーン16に沿って一緒になり、3次元接合ゾーン(CZ)の横断面160は
図1Eに概略が示されている。
【0037】
前僧帽弁尖および後僧帽弁尖は、異なる形状を有する。前尖は、中心線維体(心臓骨格)の上に載る弁輪によりしっかりと取り付けられ、より動きやすい後僧帽弁輪に取り付けられている、後尖よりもいくぶん堅い。閉じている領域の約80%が、前尖である。交連110、114に隣接するか、弁輪120上にあるか、または弁輪120の前にあるのは、左(外側)124および右(中隔)126線維性三角であり、これらは僧帽弁輪が大動脈の無冠状動脈弁葉の基部と癒合する場所に形成される(
図1F)。線維性三角124、126は、中心線維体128の中隔および外側の広がりを形成する。線維性三角124、126は、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の環状もしくは心房アンカーとの安定した係合を行うためのしっかりしたゾーンを構成するという点で利点があり得る。弁尖12、14の間の接合ゾーンCLは、単純な線ではなく、むしろ、湾曲した漏斗状表面界面である。第1の交連110(外側または左)および第2の交連114(中隔または右)は、前尖12が弁輪120のところで後尖14と会合する場所である。
図1C、
図1D、および
図1Fの心房から軸方向に見ると最も明らかであるように、接合ゾーンの軸方向断面は、一般的に、弁輪CAの重心から、さらには拡張期COにおいて弁を通る開口部から、分離されている曲線CLを示している。それに加えて、弁尖縁は、ホタテ貝の縁のように波打っており、後尖と前尖とについてはもっとそうなっている。接合不良は、これらのA-P(前-後)セグメント対A1/P1、A2/P2、およびA3/P3のうちの1つまたは複数の間に生じる可能性があり、そのため、接合不良特性は、接合ゾーンCLの湾曲に沿って変化し得る。
【0038】
次に
図2Aを参照すると、心臓の適切に機能している僧帽弁60は、拡張期には開き、それにより、血液を左心房から流路FPに沿って左心室30の方へ流し、それによって左心室を充填することができる。
図2Bに示されているように、機能している僧帽弁60は、収縮期に閉じて、心室圧力の増大によって最初に受動的に次いで能動的に、左心房10から左心室30を効果的に封止し、それによって、左心室の周りの心臓組織の収縮で、血管系全体に血液を送ることができる。
【0039】
図3A~
図3Bおよび
図4A~
図4Bを参照すると、僧帽弁の弁尖縁が十分に対向することができず、それによって収縮期に心室から心房に血液が逆流することを許すいくつかの状態または病状がある。特定の患者の特定の病因に関係なく、心室収縮期に弁尖が封止できないことは、接合不良として知られており、僧帽弁逆流を引き起こす可能性がある。
【0040】
一般的に、接合不良は、一方または両方の弁尖の支持構造体による過剰なテザリングの結果として、または支持構造体の過剰な引き伸ばしもしくは破れの結果生じ得る。他のあまり一般的でない原因は、心臓弁の感染、先天性異常、および外傷を含む。弁機能不全は、
図3Aに示されているように、僧帽弁逸脱として知られている、腱索が引き伸ばされること、および場合によっては、動揺弁尖220として知られている、腱索215または乳頭筋の破れの結果生じ得る。または、弁尖組織それ自体が冗長である場合、弁は、接合のレベルが心房内に入るほど高くなるように脱出し、心室収縮期230に心房内で弁をより高く開き得る。弁尖のいずれか1つは、脱出を受けるか、または動揺し得る。この状態は、ときには、変性僧帽弁逆流として知られている。
【0041】
過剰なテザリングでは、
図3Bに示されているように、通常構造化されている弁の弁尖は、弁輪の拡大または形状変化、いわゆる弁輪拡張240のせいで適切に機能しないことがある。そのような機能的僧帽弁逆流は、一般的に、心筋不全および付随する心室拡張の結果として生じる。また、機能的僧帽弁逆流の結果生じる過剰な容積負荷は、それ自体、心不全、心室および弁輪拡張を悪化させる可能性があり、したがって、僧帽弁逆流を悪化させる。
【0042】
図4A~
図4Bは、機能的僧帽弁逆流(
図4A)および変性僧帽弁逆流(
図4B)における収縮期の血液の逆流BFを例示している。
図4Aの弁輪のサイズ増大は、心室320および乳頭筋330の肥大によるテザリングの増大と結合し、前尖312および後尖314が対向するのを妨げ、それによって、接合を妨げる。
図4Bにおいて、腱索215の破れは、左心房内への後尖344の上方脱出を引き起こし、これは前尖342に対する対向を妨げる。いずれかの状況において、結果は、心房内への血液の逆流であり、左心室の圧縮の有効性を減じる。
【0043】
図5Aは、接合補助デバイス500の一実施形態を例示する。接合補助デバイス500は、接合補助本体部515を備え得る。接合補助本体部515は、第1の接合面535を備え得る。第1の接合面535は、接合不良の自然弁尖の方へ、僧帽弁の場合には、植え込まれるときに後尖の方へ配設され得る。接合補助本体部515は、第2の接合面540を備え得る。第2の接合面540は、
図5Aに示されているように第1の接合面535と反対側にあってよい。第2の接合面540は、接合不良の自然弁尖の方へ、僧帽弁の場合には、植え込まれるときに前尖の方へ配設され得る。第1の接合面535および第2の接合面540は、第1の側縁および第2の側縁を境界とすることができる。第1の接合面535および第2の接合面540は、下縁および上縁545を境界とすることができる。
【0044】
第1の接合面535および第2の接合面540は、接合補助本体部515を形成する同じインプラント構造の2つの面である。接合補助本体部515の形状は、いくつかの実施形態において、上縁545の形状、第1の接合面535の形状、および第2の接合面540によって一般的に特徴付けられ得る。
【0045】
接合補助デバイス500は、
図5Aに示されているように心室突出部525を備え得る。心室突出部525は、接合補助本体部515の下縁から延在し得る。心室突出部525は、植え込まれるときに左心室内に留置され得る。心室突出部525は、固定機構を備えることができる。心室突出部525の遠位端530は、一般的に、固定機構を備える。
【0046】
心室突出部525の遠位端530は、
図5Cに示されているように異なる形状を有し得る。
図5Cは、遠位端530の5つの実施形態を示している。より多くの変更形態が可能であり、
図5Cに示されている5つの実施形態に限定されないことに留意されたい。一般的に、他の実施形態では、2種類のアンカーがある。受動的アンカーの例は、
図5Cにおける実施形態555.1から555.4に示されている。受動的アンカーは、腱索の背後の取り込みおよび/または腱索との干渉に頼る。受動的アンカーに関して、いくつかの実施形態において、最大寸法または腱索によるもつれに関与する寸法(通常は幅)は、10mmから40mmの範囲内、たとえば25mmであってよい。
【0047】
遠位端555.1は、1つまたは複数の突起部を備える。突起部は、図示されているように中心ハブから延在する細長い棒であってよい。例示されている実施形態では、4つの突起部が中心ハブから延在する。他の実施形態では、1つまたは複数の突起部が中心ハブから延在する。突起部は、中心ハブからある角度で延在し、それによって、遠位端530の表面積を増大させることができる。遠位端555.2は、略矩形、矩形、略正方形、正方形、略菱形、または菱形とすることができる。遠位端555.2は、1つまたは複数の切欠を備えることができる。切欠は、組織を掴む能力を高めることができる。例示されている実施形態では、4つの切欠が、遠位端に形成されている。他の実施形態では、1つまたは複数の切欠が備えられる。
【0048】
遠位端555.3は、1つまたは複数の突起部を備える。突起部は、図示されているように中心ハブから延在する細長い棒であってよい。例示されている実施形態では、2つの突起部が中心ハブから延在する。他の実施形態では、1つまたは複数の突起部が中心ハブから延在する。突起部は、中心ハブから直角の角度で延在し、それによって、遠位端530の表面積を増大させることができる。
【0049】
遠位端555.4は、1つまたは複数のバーブを備える。バーブは、図示されているように中心ハブから延在し得る。バーブは、中心ハブの方へ戻る形で延在し得る。例示されている実施形態では、3つまたはそれ以上のバーブが中心ハブから延在する。他の実施形態では、1つまたは複数の方向の1つまたは複数のバーブが備えられる。
【0050】
遠位端555.5は、1つまたは複数の突起部を備え、遠位端555.1として示されている構成に類似している。遠位端555.5は、能動的アンカーの一例である。能動的アンカーは、心室組織に結合することができる鋭く尖った先、バーブ、またはネジなどの特徴部を有することができる。能動的アンカーは、組織内に埋め込むために、トルクなどの駆動力を必要とし得る。受動的または能動的アンカーのいずれかは、シリコーン、PEEK、pebax、ポリウレタンなどのインプラントグレードの生体適合性材料から作ることができる。
【0051】
接合補助デバイス500のサイズは、
図5Dに詳しく説明されている。この図は、接合補助デバイス500の接合補助本体部515の上面および正面を示している。図に示されている3つのパラメータ「x」、「y」、および「z」は、接合補助デバイス500を特徴付ける。これらの変数x、y、およびzの範囲および大きさの非限定的な例は、図の中の「寸法表」に示されている。
【0052】
接合補助デバイス500は、支持構造体505を備え得る。支持構造体505は、棘状突起部と称され得る。この支持構造体505は、少なくとも一部は、接合補助デバイス500の形状を画成することができる。
【0053】
図5Aを再び参照すると、支持構造体505は、点線で示されている。いくつかの実施形態において、支持構造体505は、限定はしないが、ニチノール(NiTi)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、または他の硬質ポリマーもしくは疲労に強い金属などの、形状記憶材料から作られる。形状記憶材料を使用することで、本明細書で説明されている利点が利用可能になる。たとえば、形状記憶材料の一利点は、その超弾性特性が、心臓が収縮し、拡張し、接合補助デバイス500に圧力を加えるときに接合補助デバイス500が接合補助デバイスとしてその形状および機能を維持するのに役立つという点である。利点の別の例は、形状記憶材料が、本明細書で説明される経皮的送達方法に適している点である。
【0054】
支持構造体505は、1つまたは複数のセクションを備えることができる。いくつかの実施形態において、支持構造体505は、1つのセクションを備える。いくつかの実施形態において、支持構造体505は、2つのセクションを備える。いくつかの実施形態において、支持構造体505は、3つまたはそれ以上のセクションを備える。いくつかの実施形態において、支持構造体505の1つまたは複数のセクションは、1つまたは複数のサブセクションを備えることができる。
図5Aに示されているいくつかの実施形態において、支持構造体505は、2つのセクションを、すなわち、第1のセクション505.2および第2のセクション505.1を備える。
【0055】
第1のセクション505.2は、上縁545と心室突出部525との間の接合補助デバイス500の少なくとも一部を貫通することができる。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、上縁545と心室突出部525との間の接合補助デバイス500の間の全長を貫通することができる。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、接合補助本体部515の上縁545と下縁との間の位置から延在する。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、接合補助本体部515の下縁と心室突出部525との間の位置から延在する。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、接合補助本体部515に沿って延在し、心室突出部525を支持するように続く。
【0056】
第2のセクション505.1は、第1の側縁と第2の側縁との間の接合補助本体部515の少なくとも一部を貫通することができる。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、第1の側縁と第2の側縁との間の全長を貫通することができる。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、接合補助本体部515の上縁545と下縁との間の位置から延在する。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、接合補助本体部515の下縁よりも上縁545に近い位置から延在する。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、第1の側縁から第2の側縁の方へ延在する。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、第2の側縁から第1の側縁の方へ延在する。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、第1の側縁と第2の側縁との間のセクションに沿って延在する。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、接合補助デバイス500の縁に沿って延在する。
【0057】
いくつかの実施形態において、支持構造体505の第1のセクション505.2および第2のセクション505.1は、1つの一体となった部品であるか、または単一構造であってよい。いくつかの実施形態において、支持構造体505の第1のセクション505.2および第2のセクション505.1は、個別の構成要素である。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2および第2のセクション505.1は、限定はしないが、圧着およびレーザー溶接などの方法によって結合されている2つの個別のセクションであってよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、本明細書で説明されているように接合補助本体部515内に一体化される。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、本明細書で説明されているように心室突出部525内に一体化される。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、本明細書で説明されているように接合補助本体部515から取り外し可能である。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、本明細書で説明されているように心室突出部525から取り外し可能である。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、本明細書で説明されているように接合補助本体部515内に一体化される。いくつかの実施形態において、第2のセクション505.1は、本明細書で説明されているように接合補助本体部515から取り外し可能である。いくつかの実施形態において、第1のセクション505.2は、本体部515の長手方向軸に実質的に平行に一般的に配向されている第1のゾーン、および例示されているような本体部515の長手方向軸に実質的に垂直に一般的に配向されている第2のゾーンを有することができる。
【0059】
心室突出部525の形状を支持する支持構造体505は、
図5Aの断面AAによって示され、
図5Bにおいて詳しく例示されているような様々な断面を有し得る。
図5Bには、断面の5つの実施形態が示されているが、支持構造体505の断面の実施形態は、これらの5つに限定されないことに留意されたい。断面550.1は、円形または略円形である。断面505.2は、円形または略円形である。断面550.1は、断面550.2よりも広い断面積を有することができる。断面550.3は、複数の円形または略円形の断面を含む。例示されている実施形態では、7個の円形または略円形の断面が、集まって断面550.3を形成する。他の実施形態では、2つまたはそれ以上の円形または略円形の断面が、集まって断面550.3を形成する。断面550.3は、ケーブルの形態をとり得る。断面550.4は、矩形または略矩形である。断面550.5は、矩形または略矩形である。断面550.4は、断面550.5よりも広い断面積を有することができる。
【0060】
また第1のセクション505.2および第2のセクション505.1は、異なる断面を有していてもよいことに留意されたい。
図5Bに示されている各断面または実施形態は、いくつかの断面が一方向に曲がりやすく、別の方向にはそうでないなどのいくつかの利点を有し得る。他のいくつかの断面は、他のものよりも比較的高い信頼性特性を有し得る。各種類の断面の特性は、2つの異なる材料、ニチノールおよびPEEKについて
図5Eの表2の断面の範囲および非限定的な可能な寸法と併せて説明されている。様々な構成が表2に提示されているが、いくつかの実施形態において、断面550.4および550.5は、両方の材料に利用され得る。
【0061】
接合補助デバイス500が、心臓内に留置されるときに、接合補助デバイス500は、いくつかの実施形態において、心室突出部525が一般的に
図5Gに示されているように左心室内に留置されるようなデバイスである。心室突出部525は、心室の構造を使用する接合補助デバイス500を固定するための機構を備える。接合補助デバイス500を後尖の上に位置決めする一例は、
図5Gに例示されている。
【0062】
位置決めの他の例も可能であり、本開示の別の項で説明されていることを念頭に置くと、この特定の例では、接合補助デバイス500は、湾曲した形状を有する心室突出部525を備えて例示されている。心室突出部525および/または第1の支持体505.2は、形状記憶材料からなるものとしてよく、その場合、湾曲した形状は、植え込み後も保持される。湾曲した形状は、接合補助デバイス500が自然後尖14に係合するように適所に留まることを可能にし得る。
【0063】
図5Fは、心室突出部525に対する受動的アンカーの一実施形態を示している。この実施形態において、心室突出部525の長さに沿って配置されているチューブ560は、接合補助デバイス500の遠位端のところの、2つのチューブ565.1および565.2内で終端する。接合補助デバイス500は、2つのチューブ565.1および565.2が真っ直ぐにするワイヤが前進状態にあることを指示する点線565.1および565.2(位置A)によって示されているようにほぼ真っ直ぐになるように真っ直ぐにするワイヤで心臓の左側に送達され得る。いくつかの実施形態において、2つのチューブ565.1および565.2は、限定はしないが、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、pebax、およびナイロンを含む形状記憶材料から作ることができる。真っ直ぐにするワイヤなしでは、2つのチューブ565.1および565.2は、
図5Fの実線565.1および565.2(位置B)によって示されているようにカールするかまたはコイル状であってよい既定の形状を有し得る。
【0064】
インプラントが、心臓内に適切に送達され留置された後、真っ直ぐにするワイヤが引き出されて、2つのチューブ565.1および565.2はその既定の形状(位置B)をとることができる。2つのチューブ565.1および565.2は、腱索のもつれにより固定支持体を構成し得る。この種類の固定の利点は、満足のゆく留置でないため接合補助デバイス500の位置決めをやり直す必要がある場合に、真っ直ぐにするワイヤを前進させて2つのチューブ565.1および565.2内に戻し、2つのチューブ565.1および565.2を真っ直ぐにし、腱索から2つのチューブ565.1および565.2のもつれを解きほぐさせることができるという点である。上記の例では2つのチューブ565.1および565.2を説明しているが、1つ、2つ、またはそれ以上のチューブがあり得ることは理解されるであろう。
【0065】
接合補助デバイス500を固定するさらに別の実施形態が、
図5Hに例示されている。能動的アンカーが、心室突出部525の遠位端に結合され得る。インプラントの送達の後に、能動的アンカーは、後尖に通され、図示されているように弁輪(心房)のところの接合補助デバイス500に結合し得る。アンカーを位置決めし、駆動する方法が、本明細書において説明される。
【0066】
別の実施形態において、心室突出部525の先端部は、接合補助デバイス500が経皮的に留置されている間に接合補助デバイス500の留置および固定を補助するために放射線不透過性を有するか、または音波を発生するものであってよい。そのような手順において、X線透視または超音波撮像モダリティは、心臓および接合補助デバイス500を可視化するために使用され得る。
【0067】
図5Aを再び参照すると、別の実施形態において、接合補助デバイス500は、ハブ510を備え得る。ハブ510には、1つまたは複数の目的があり得る。1つの目的は、本明細書で説明されているように固定デバイスとして使用されることであってよい。別の目的は、本明細書で説明されているように接合補助デバイス500を経皮的に送達するための機構を備えることであってよい。いくつかの実施形態において、ハブ(図示せず)は、接合補助デバイス500の遠位端に存在し得る。ハブは、心室突出部525の端部に配置され得る。心室ハブは、心室突出部525の遠位端530の最も遠位の先端部のところに留置され得る。2つのハブを区別するために、近位側のハブ510は、単に「ハブ」、「環状ハブ」、または「近位ハブ」と呼ばれるものとしてよい。心室突出部の遠位先端部のところのハブは、特に、「心室ハブ」と呼ばれる。
【0068】
なおも
図5Aを参照すると、接合補助デバイス500の接合補助本体部515は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの様々な生体適合性材料から作ることができる。この材料は、前尖が接する接合面を構成する。接合補助デバイス500の接合補助本体部515は、支持構造体505の形状が接合補助デバイス500の一般的な形状を与えるように支持構造体505に結合され得る。
【0069】
接合補助デバイス500の形状は、1つまたは複数のリブ546(図示せず)によってさらに支持され得る。1つ、2つ、またはそれ以上のリブ546があり得る。リブ546は、限定はしないが、縫合糸、ポリプロピレン、ナイロン、NiTiケーブル、NiTiワイヤ、およびPEEKなどの様々な材料から作ることができる。接合補助デバイス500の接合補助本体部515を支持構造体505および/またはリブ546(リブ546が存在している場合)に結合するプロセスは、本明細書において説明されている。
【0070】
製造するいくつかの方法において、プロセスは、ポリエチレン(PE)チューブを支持構造体505および/またはリブ546(リブ546が存在している場合)上に滑らせることによって開始するものとしてよい。この組み合わせは、2つのePTFEシートの間に配置され、その後に、熱および圧力が加えられる。ePTFEは、チューブのポリエチレン材料が溶かし込まれるePTFE材料中の細孔によりPEチューブと結合し、機械的結合を形成する。同様に、PEチューブ材料は、熱および圧縮が加えられたときに溶けて支持構造体505および/またはリブ546内の微細孔内に流れ込み得る。支持構造体505および/またはリブ546内の微細孔は、結合を改善するために故意に留置され得る。
【0071】
上で説明されているプロセスの一変更形態において、PEシートは、PEチューブが存在し得ない場所に留置することができる。この変更形態では、ちょうど上で説明されているように、熱および圧縮の類似のプロセスが適用され、より均一な組成物構造が生成され得る。さらなる実施形態において、支持構造体505および/またはリブ546内は、ePTFE膜を結合する微細孔などの特徴部を有するものとしてよい。微細孔の口径は、たとえば、0.005"から0.030"の範囲内とすることができる。
【0072】
接合補助デバイス500の接合補助本体部515を形成するために使用され得る材料の種類に関する変更形態において、限定はしないが、スポンジ材料、ポリウレタン、シリコーン、ウシまたはブタ心膜などの、他の材料も利用され得る。結合プロセスは、限定はしないが、ヒートボンディング、縫合、および接着剤による接着を含み得る。
【0073】
図5Aを引き続き参照すると、いくつかの実施形態において、接合補助デバイス500は、ミシン目またはスロット520を有する。1つまたは複数ミシン目もしくはスロット520があり得る。これらのミシン目520は、本明細書で説明されているようにアンカーが留置され得る部位を設ける目的に使用され得る。
【0074】
接合補助デバイス500の利点のうちの1つは、接合補助デバイス500がより小さな構造体になるように折り畳めることである。接合補助デバイス500は、送達用カテーテルを通して経皮的に送達され得る。いくつかの実施形態において、支持構造体505は、形状記憶材料から作られる。折り畳まれている接合補助デバイス500が心臓内で展開されると、接合補助デバイス500の所望の形状が回復される。ここで、多くの実施形態において、接合補助デバイス500を心臓内に送達するために使用される様々な方法、デバイス、およびシステムについて説明する。
【0075】
いくつかの使用方法において、第1の支持体は、第1の支持体505.2が略直線的である第1の構成と、第1の支持体505.2が湾曲している第2の構成とを有する。いくつかの使用方法において、第1の支持体505.2および第2の支持体505.1は、接合補助デバイス500の経皮的挿入を可能にするように構成されている。
【0076】
送達手順における第1のいくつかのステップは、当技術分野で知られているものと同様であってよい。患者の身体は、たとえば、下側胴体/大腿上方領域(鼠径部)において穿刺され、大腿静脈にアクセスできるようにされる。一般的に、経中隔シースおよび針が、下大静脈内に挿入され、心房中隔まで前進させられ、その位置で、経中隔穿刺が実行され、経中隔シースが前進させられて左心房内に送り込まれる。針は、取り出され、これで経中隔シースが、左心房へのアクセスを提供する。上記のステップの詳細は、公開されている医学文献に記載されている。
【0077】
方法は、現在説明されているものを含む様々なステップを含み得る。接合補助デバイス500の心室突出部525は、一般的に、左心室内に留置され得る。様々な誘導技術を使用して接合補助デバイス500をこの位置に誘導することは有利な場合がある。たとえば、単純なガイドワイヤが経中隔シースの内側に留置され、最初に左心房に入り、僧帽弁を通過することによって左心室内に誘導され得る。しかしながら、単純なガイドワイヤは、心室突出部525の留置において十分な精度をもたらし得ない。
【0078】
いくつかの実施形態において、ガイドワイヤを操縦可能なシースの内側に留置する方法が、使用され得る。ガイドワイヤを備える操縦可能なシースは、前進させられて経中隔シースに通され、その後、僧帽弁に通されて、左心室に入ることができ、そこでは、操縦可能なシースの操縦性がガイドワイヤを適切に位置決めするための追加の支持を可能にする。ガイドワイヤが留置された後、操縦可能なシースは、接合補助デバイスの送達の前に取り出される必要がある。この方法は、ガイドワイヤのより正確な位置決めをもたらすが、操縦可能なシースを取り出す余計なステップを伴う。植え込みを実行するために必要なステップの数を減らすことに関してこのプロセスを改善するために、操縦可能なシースの様々な実施形態が本明細書において開示されている。
【0079】
小口径の操縦可能なカテーテル
図6Aを参照すると、小口径の操縦可能なカテーテル600が例示されている。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテル600のハンドル610の口径615は、操縦可能なカテーテル600の本体部605の口径620に等しいか、または実質的に等しいものとしてよい。操縦可能なカテーテル600は、その中にプルワイヤ625を有することができる。ハンドル610が、たとえば、矢印632の方向に回転させられると、操縦可能なカテーテル600の遠位部分は、矢印635に沿って真っ直ぐな位置630から湾曲した位置640まで移動する。湾曲した位置640は、本明細書で説明されているように心室突出部625を位置決めするのに役立ち得る。ハンドル610が、たとえば、矢印632の反対方向に回転させられると、操縦可能なカテーテル600の遠位部分は、湾曲した位置640から真っ直ぐな位置630まで移動する。操縦可能なカテーテル600の真っ直ぐな位置630は、点線で示されており、同様に点線で示されているプルワイヤ625と混同しないようにされたい。真っ直ぐな位置630は、解剖学的構造からの操縦可能なカテーテル600の挿入または引き込みに役立ち得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、ハンドル610の口径は、本体部605の口径に等しいものとしてよい。これは、接合補助デバイス500が、操縦可能なカテーテル600が心室内に留置された後にハンドル610および/または本体部605上を摺動することができるので有利であり得る。いくつかの実施形態において、操縦可能なカテーテル600は、ハンドル610から延在する近位端のところにエクステンション612を備えることができる。エクステンション612は、ワイヤまたは他の細長い構造体であってよい。エクステンション612の目的は、医師または他の操作者が操縦可能なカテーテル600の制御を保持できるようにしながら他のカテーテルまたはデバイスの装填を補助することである。エクステンション612上に他のカテーテルまたはデバイスを装填した後に、操縦可能なカテーテル600は、他のカテーテルまたはデバイスを誘導するために利用される。エクステンション612の長さは、他のカテーテルまたはデバイスを装填し送達するプロセスにおいて、操縦可能なカテーテル600の制御が保持されるように装填されているカテーテルまたはデバイスの長さと一致するか、それよりも長いものとしてよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、エクステンション612は、必要になったときのみハンドル610に結合されてよい。たとえば、手術中に、医療チームがより長いカテーテルが必要であると判断した場合に、エクステンション612が、ハンドル610に結合されてよい。結合機構は、限定はしないが、ねじ山付き接合部、圧縮フィット、または他の機構を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態における様々な部分構成要素(本体部605、ハンドル615、エクステンション612)の寸法の非限定的な例は、以下の通りであってよい。本体部605の直径620は、2から10Fr、たとえば4Fr、約2Frから約6Fr、約3Frから約5Frの範囲内、または10Fr、9Fr、8Fr、7Fr、6Fr、5Fr、4Fr、3Fr、もしくは2Fr未満であってよい。ハンドル610の長さは、いくつかの場合において、約1/2"から約2"の範囲内、たとえば、約1"であってよく、ハンドルの直線行程(プルワイヤを作動させる場合)は、いくつかの場合において、約1/8"から約3"の範囲内、たとえば、約1/4"であってよい。
【0083】
植え込みのプロセスにおいて、いくつかの方法は、ガイドワイヤまたはガイドワイヤと操縦可能なシースを伴う。いくつかの方法において、操縦可能なカテーテル600は、前進させられ大腿アクセス部に通され得る。ハンドル610は、患者身体の外にあるので、この操縦可能なカテーテル600の遠位部分が後尖の下の適切な位置に留置されるように回転され得る。エクステンション612は、ハンドル610の近位端に取り付けられるものとしてよく、それにより、その後、本明細書で説明されている経中隔シース650に挿入する前に接合補助デバイス500および送達用カテーテル700の装填を行うことが可能になる。この送達用カテーテル700は、本明細書で説明されるように接合補助デバイス500を導入するためのガイドとして使用され得る。
【0084】
図6Bは、心臓内の操縦可能なカテーテル600の留置を例示している。経中隔シース650の一実施形態が図示されている。左心房655、左心室660、僧帽弁の後尖665、および僧帽弁の前尖670も図示されている。操縦可能なカテーテル600は、僧帽弁を通過し、後尖665の下に位置決めされるように図示されている。これで、操縦可能なカテーテル600の遠位部分を偏向させることができると、接合補助デバイス500の適切な位置が得られて、どのように有利であるかが理解され得る。操縦可能なカテーテル600の遠位部分は、図示されているように後尖665の下で湾曲することができる。いくつかの方法において、操縦可能なカテーテル600を留置した後の次の一般的なステップは、接合補助デバイス500を心臓に送達することである。送達を行うための方法およびデバイスに関するさらなる実施形態が次に説明される。
【0085】
送達用カテーテル
次に、
図7Aを参照して、送達用カテーテル700について説明される。送達用カテーテル700の機能は、接合補助デバイス500を心臓に運ぶ機能である。送達用カテーテル700のシャフト本体部710は、トルクを加えることができ、偏向可能であるものとしてよい。シャフト本体部710は、クロスハッチ線で示されている。送達用カテーテル700は、ハンドル730を備えることができる。ハンドル730は、回転機構、たとえば、プルワイヤなどを有することができる。回転機構は、シャフト本体部710を偏向させ、操縦することができる。ハンドル730の遠位に、本明細書において説明されているように接合補助デバイス500を心臓に運ぶことができるインプラントシース725がある。いくつかの実施形態において、インプラントシース725のなおいっそう離れた遠位に、剥がせる漏斗720がある。剥がせる漏斗720は、接合補助デバイス500の折り畳みを円滑にすることができる。いくつかの実施形態において、シャフト本体部720の最も遠い遠位端は、シャフト本体部710を接合補助デバイス500に係止して、接合補助デバイス500が心臓に輸送され、適切に留置されるようにできる特徴部を有する。次に、係止プロセスおよび特徴部について
図7B、
図7C、および
図7Dに関して説明される。
【0086】
図7Dを参照すると、送達用カテーテル700および接合補助デバイス500は、一時的に係止させることを可能にする整合特徴部を有することができる。いくつかの実施形態において、送達用カテーテル700は、1つまたは複数の遠位係止タブ705を備える。接合補助デバイス500は、本明細書で説明されているような環状ハブ510を備え得る。送達用カテーテル700の遠位係止タブ705は、本明細書で説明されるように接合補助デバイス500の環状ハブ510内の特徴部と結合するものとしてよい。
【0087】
いくつかの方法において、操縦可能なカテーテル600または他の誘導ワイヤもしくはカテーテルは前進させられて、心室突出部525および/または固定機構530に通され得る。いくつかの実施形態において、固定機構530は、中心に穴または通路を有することができ、これにより、
図7Dに示されているように、操縦可能なカテーテル600を通すことができる。操縦可能なカテーテル600は、固定機構530から環状ハブ510まで通ることができる。接合補助デバイス500を通る他の経路も企図される。操縦可能なカテーテル600は、固定機構530から環状ハブ510まで、さらに送達用カテーテル700まで通ることができる。
【0088】
図7Bを参照すると、送達用カテーテル700の先端部が、拡大図で示されている。接合補助デバイス500の環状ハブ510も図示されている。遠位係止タブ705は、ニチノールなどの何らかの形状記憶材料から作られ得る。係止タブ705の自然な位置は、
図7Aに例示されているように内向きに、および互いの方へ曲がるように設定される。いくつかの方法において、ガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテル600などのカテーテルが環状ハブ510内に、また遠位係止タブ705の間に挿入されるものとしてよく、遠位係止タブ705は押し出されて、環状ハブ510にあたるものとしてよい。環状ハブ510は一致するポケット740を備えるように設計され、遠位係止タブ705はこれらのポケット740内に嵌合する。操縦可能なカテーテル600が存在して遠位係止タブ705を外向きに圧しポケット740内に入れる限り、送達用カテーテル700の先端部は、環状ハブ510に係止されたままである。他の係止機構も可能であり、そのような代替的形態の1つが
図7Cにおいて次に説明される。
【0089】
図7Cを参照すると、環状ハブ510はクロスピン745を備えることができる。クロスピン745は、環状ハブ510を横断する中実部品であるものとしてよく、当技術分野で知られている方法により適所に保持される。送達用カテーテル700は、ワイヤまたは縫合糸750のループを備えることができる。縫合糸750はガイドワイヤなどの物体または環状ハブ510内の操縦可能なカテーテル600の周りに輪を作るものとしてよい。縫合糸750は、送達用カテーテル700のハンドル730内に貫入し得る。ハンドル730は、縫合糸750の張りを制御する機構を有し得る。張りを制御することによって、接合補助デバイス500は、送達用カテーテル700の遠位端に引き当てられ、確実に保持され得る。操縦可能なカテーテル600が、クロスピン745のレベルを超えて引っ込められると、縫合糸750のループ755は、クロスピン745上に滑って、それにより、クロスピン745および接合補助デバイス500を解放することができる。
【0090】
送達手順
図8A~
図8Dは、送達の方法を示している。いくつかの方法において、インプラントシース725および漏斗720は前進させられて、接合補助デバイス500上に送られる。送達用カテーテル700が接合補助デバイス500とともに係止された後に、インプラントシース725および漏斗720は前進させられて接合補助デバイス500上に送られ得る。漏斗720の形状は、接合補助デバイス500が閉じるか、またはそれ自体の上に折り畳まれるのを補助する。インプラントシース725および漏斗720が前進する様子は、
図8Aおよび
図8Bに示されている。
図8Aの矢印760は、接合補助デバイス500が漏斗720内にどのように引き込まれるかを示している。接合補助デバイス500が、インプラントシース725内に入った後、漏斗720は取り出される。いくつかの実施形態において、漏斗720は、タブ715を引っ張ることによって取り出され、それによって、
図8Cに示されている、漏斗720を分割する。次いで漏斗720およびタブ715は破棄してよい。いくつかの方法において、接合補助デバイス500を収容するインプラントシース725は前進させられてガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテル600上に送られるものとしてよい。繰り返すと、操縦可能なカテーテル600の設計の利点は、接合補助デバイス500がハンドル610および本体部605の異なるサイズの口径による不都合を生じることなく操縦可能なカテーテル上に滑らかに滑空することができるので明らかである。インプラントシース725は、
図8Dに示されているように経中隔シース650内に挿入され得る。
【0091】
接合補助デバイス500およびインプラントシース725のシステムは、
図8Eに示されているように経中隔シース650を出るまで前進させられる。送達用カテーテル700は、インプラントシース725が、
図8Eに示されている、僧帽弁の弁尖の間に位置決めされるように偏向される。インプラントシース725は、腱索765(「P2」位置)の間に留置される。インプラントシース725がこの位置に達した後、送達用カテーテル700は適所に保持され、インプラントシース725はゆっくりと引っ込められ、それにより、
図8Fに示されているように接合補助デバイス500がインプラントシース725から出始める。操縦可能なカテーテル600または同等のガイドワイヤは、後尖の下の適所にそのまま置かれ、それでも、コントロールハンドル610を使用して能動的に調整または偏向され得ることに留意されたい。いくつかの方法において、送達用カテーテル700が前進させられると、接合補助デバイス500は、心室突出部525の遠位端530が心室組織に結合されるまで操縦可能なカテーテル600の経路に従って、押し出される。これは、
図8Gに例示されている。接合補助デバイス500が、押し出されている間、インプラントシース725は引っ込められ得る。いくつかの方法において、適切な留置を確実にするために送達用カテーテル700に対して回転調整が行われ得る。
【0092】
固定
接合補助デバイス500が開いた後に、方法は、僧帽弁の心房面上、すなわち、僧帽弁輪上に接合補助デバイス500を固定するステップを含み得る。次にいくつかの実施形態で、固定を行うための方法およびシステムについて説明する。
【0093】
形状記憶材料から作られた支持構造体505は有利であり得る。接合補助デバイス500が開くと、接合補助デバイス500は、形状記憶材料の作用により意図された形状をとる。接合補助デバイス500の形状は、本明細書で説明されているように、逆流が低減されるか、またはなくされるように新しい接合面を形成することを意図されているものとしてよい。送達および固定プロセスの説明を再び参照すると、接合補助デバイス500の環状ハブ510にそれでも結合され得る、送達用カテーテル700は、次に、接合補助デバイス500を適切に自然弁の後尖の上に位置決めするように(回転して、軸方向に)操作され得る。一実施形態において、接合補助デバイス500の支持構造体505は、組織に付着できる特徴部を有し得る。いくつかの実施形態において、これらの特徴部は受動的フックである。いくつかの方法において、これらの特徴部は、接合補助デバイス500が、固定が開始されている間適所に保持され得るように弁輪と係合する。
図8Hは、インプラントシース725が引っ込められ、シャフト本体部710が環状ハブ510にそれでも結合されている、送達用カテーテル700の状態を示している。
【0094】
アンカー800の一実施形態が、
図8Iに詳しく例示されている。アンカー800は、様々な方法で送達用カテーテル700および/または接合補助デバイス500に結合され得る。環状ハブ510は、クロスピン512を有するものとしてよい。クロスピン512は、アンカー800の螺旋状構造体815が図示されているように巻き付き得る部位を形成し得る。アンカー800は、肩部805を有することができる。肩部805は、送達用カテーテル700のシャフト本体部710の周りで嵌合し得る。肩部805は、送達用カテーテル700の遠位係止タブ705を係止することができる窓810などの特徴部を有するものとしてよい。送達用カテーテル700の遠位係止タブ705は、ピン、ガイドワイヤ、操縦可能なカテーテル600などのカテーテルが送達用カテーテル700のシャフト本体部710内に存在しているときに係止することができる。いくつかの方法において、アンカー800は、接合補助デバイス500上に事前に装填され、接合補助デバイス500を送達用カテーテル700に装着するプロセスにおいて送達用カテーテル700とともに適所に係止され得る。これは、接合補助デバイス500がインプラントシース725内に引き込まれ、大腿静脈内に挿入する用意ができている前に行われ得る。
図8Hに戻って参照すると、トルクは、アンカー800が組織内に送り込まれるようにシャフト本体部710に加えられ得る。アンカー800が適切に固定されているかどうかのフィードバックを返すために、X線透視マーカーがアンカー800上に存在し得る。マーカーは、近位端に配置され得る。これらのマーカーは、アンカー800が環状ハブ510の方へどれだけ移動している可能性があるかを医療チームに知らせることができ、アンカー800がいつ確実に適所にあるかに関する情報をもたらし得る。いくつかの実施形態において、適切なトルクが加えられることを確実にするために、ハンドル730のトルクレベルは、アンカー800が環状ハブ510の底を打ったときに急上昇し得る。この増大したトルクレベルは、ハンドル730のところで感じ取ることができ、適切なトルクが加えられていることを示すフィードバックとなり得る。中心ガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテル600は、引っ込められ得る。これにより、遠位係止タブ705がアンカー800の窓810から後退し、それにより、送達用カテーテル700およびアンカー800の係止を解除する。これは、接合補助デバイス500の解放を引き起こし得る。これで、送達用カテーテル700および操縦可能なカテーテル600は、完全に引っ込められ得る。
【0095】
交連固定
いくつかの実施形態は、交連固定を例示している。そのような一実施形態は、
図9Aに示されている。送達用カテーテル700(図示せず)は、引っ込められており、アンカーカテーテル900は前進させられて、大腿アクセス部に通されている。アンカーカテーテル900は、トルクをかけることができる。1つまたは複数のアンカーカテーテル900が備えられ得る。アンカーカテーテル900の遠位先端部は、アンカーの送達中にアンカーを適所に係止するための1つまたは複数の特徴部を有し得る。
図9Aにおいて、遠位先端部は、螺旋状アンカー915の一部を受け入れることができる切欠905を有する。アンカーカテーテル900は、中心ピン920も有し得る。中心ピン920は、先の尖った端部を遠位先端部に有し得る。いくつかの実施形態において、中心ピン920は、引っ込めることができるものとしてよい。
【0096】
図9Aは、ループ910を示している。ループ910の端部(図示せず)は、ループ910の張りが制御されるように、アンカーカテーテル910のハンドルへ、またはその間のある長さだけ移動し得る。ループ910は、螺旋状アンカー915の近位部分を形成するクロスバー917または他の部分を越える。クロスバー917を備える螺旋状アンカー915の上面図が、
図9Bに示されている。身体の外側にある間、経中隔シース(図示せず)内に入る前に、螺旋状アンカー915は、中心ピン920に隣接して留置され得る。ループ910は、ループ910に張りが加えられたときに、ループ910は螺旋状アンカー915、および中心ピン920を適所に係止されたままにするように配置構成され得る。
図9Aにおいて、この配置構成は、切欠905が螺旋状アンカー915の近位部分を受け入れるように引っ込められる。ループ910の張りを保ちながら、この配置構成全体が前進させられて経中隔シース内に入れられる。
【0097】
身体内の所望の位置に来た後、アンカーカテーテル900は、アンカーカテーテル900の遠位端が交連孔520の上に位置決めされるように調整される。中心ピン920および螺旋状アンカー915は、中心ピン920が交連孔520を通過した後最初に組織を穿刺するように前進させられる。トルクがアンカーカテーテル900に加えられ、螺旋状アンカー915が組織を穿刺する。螺旋状アンカー915は、接合補助デバイス500の支持構造体505またはフレームを組織に固定する。螺旋状アンカー915が適所に置かれた後、中心ピン920が引っ込められる。中心ピン920の引き込みにより、ループ910は螺旋状アンカー915のクロスバー917上を滑り、それによってアンカー915を解放することができる。このプロセスは、他の交連部位が接合補助デバイス500の両方の極端な突出部を固定するまで繰り返され得る。
【0098】
代替的な固定技術
図10Aは、別の実施形態における代替的な固定技術を示している。この実施形態では、送達用カテーテル1000は、複数の内腔1040を有し得る。送達用カテーテル1000は、
図10Bに示されているような断面を有するものとしてよい。内腔1040は、個別のトルクをかけることができる駆動シャフトを運ぶことができる。各駆動シャフトは、シャフト1020および1030の場合のようにアンカー上に、またはシャフト1010について示されているように環状ハブ510上に係止され得る。各トルクをかけることができるシャフト1010、1020、1030は、
図9Aに例示されているアンカーカテーテル900の設計を有することができる。送達用カテーテル1000は、ガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテル600が通過できる中心内腔1050を有し得る。複数のトルクをかけられる駆動シャフト1010、1020、1030、ガイドワイヤまたは操縦可能なカテーテル600は接合補助デバイス500とともにすべて、経中隔シース内に入る前に送達用カテーテル1000のインプラントシース内に装填され、引っ込められ得る。この配置構成全体は、前進させられ、本明細書で説明されているのと同じ手順に従って、接合補助デバイス500を留置することができる。この配置構成の有利な側面は、固定プロセスが、アンカーカテーテルを複数回引っ込める必要なく実行され、アンカーを再装填し身体に再入することができるという点である。
【0099】
アンカーの代替的設計
本明細書ではいくつかのアンカーについて説明されているが、他の代替的実施形態も企図される。
図11Aは、引っ掛けフックを備えるアンカーを示している。
図11Bは、傘に似たアンカーを示している。両方の実施形態において、アンカーは、形状記憶材料から作られ得る。両方の実施形態において、アンカーは、
図11Cに例示されている送達用カテーテルなどの送達用カテーテル内に装填され得る。
【0100】
本明細書において説明されているような係止機構は、アンカーを送達用カテーテルに係止するために使用され得る。送達用カテーテルは、先の尖った端部を有するものとしてよく、これにより、送達用カテーテルを適切な位置に誘導し、最初に組織を穿刺することができる。送達用カテーテルが適切な位置に留置され、初期穿刺が実行された後、これらのアンカーのうちの1つまたは複数が前進させられ、適所にセットされ得る。このステップの後に、送達用カテーテルの係止を外し、引っ込める。
【0101】
図11Dは、
図11Bの傘アンカーが組織内にセットされ接合補助デバイス500を固定するようになった後にどのように見えるかを示す図である。アンカーの自然なストレスのかかっていない形状により、接合補助デバイス500の上で組織内に配備されたときに、変形された形状は、接合補助デバイス500の面上に効果的なバネ力をかけ、良好な足場を確保する。
【0102】
棘状突起部のないインプラント
図5A~
図5Fで説明されている接合補助デバイス500は、支持構造体505を備え得る。支持構造体505は、本明細書で説明されているような形状記憶材料から作られ得る。接合補助デバイスのいくつかの実施形態において、別の構成が企図される。この構成は、心臓内に接合補助デバイスを留置した後に支持構造体が取り除かれることを指示するために棘状突起部のない接合補助デバイスと呼ばれ得る。両方の種類の接合補助デバイスが、いくつかの利点を有し得る。棘状突起部のない接合補助デバイスは、構成要素および材料が少なく、可能な金属疲労もないので、有利であり得る。
【0103】
図12は、棘状突起部のない接合補助デバイス1200の一実施形態を示している。棘状突起部のない接合補助デバイス1200は、チューブまたは通路1210を備え得る。通路1210は、環状縁の周りに留置され得る。この通路1210は、環状チューブと呼ばれ得る。棘状突起部のない接合補助デバイス1200は、心室突出部に沿ってチューブまたは通路1212を備え得る。この通路1212は、心室チューブと呼ばれ得る。
【0104】
通路1210の輪郭は、環状チューブの端部の方へ示され得る。円形の輪郭が例示されているが、チューブまたは通路1210、1212は、限定はしないが、卵形および平坦を含む他の輪郭を有することができる。
【0105】
支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、支持構造体1210.1および1210.3が突き出る環状縁を除き点線で示されている。支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、3つの明確に異なるセクションを有するものとしてよく、1210.1および1210.3は、環状チューブ内に留置され、1210.2は、心室チューブ内に留置される。支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、棘状ハブ1220内で結合され得る。いくつかの実施形態において、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、明確に異なる、別のセクションであってよい。いくつかの実施形態において、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、限定はしないが、圧着およびレーザー溶接などの様々な方法のうちの1つによって連結され得る。支持構造体1210.1、1210.2、1210.3および接合補助デバイス1200のこの配置構成は、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3が接合補助デバイス1200から抽出されることを可能にする。いくつかの方法において、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3は、棘状ハブ1220に引く力を加えることによって抽出される。接合補助デバイス1200、および接合補助デバイス1200を送達し、固定する手順に関するさらなる詳細についてここで述べる。
【0106】
棘状突起部のないインプラントの送達手順
図13Aおよび
図13Bは、接合補助デバイス1200の送達手順を例示している。
図13Aは、
図12の接合補助デバイス1200を示している。
図13Aは、追加の特徴部、アンカー部位1300を示している。このアンカー部位1300について、以下でより詳しく説明する。
【0107】
操縦可能なカテーテル600は、接合補助デバイス1200内に挿入され得る。操縦可能なカテーテル600は、心室突出部1212の遠位先端部から挿入され得る。操縦可能なカテーテル600は、出口開口1335から出ることができる。送達用カテーテル1320が備えられ得る。送達用カテーテル1320は、トルクをかけることができるシャフト1310を備えることができる。送達用カテーテル1320は、ハブアンカー1300と結合するハブ係止特徴部1330を備えることができる。
図13Aにおいて、ハブ係止特徴部1330は、ネジとして示されている。本明細書で説明されている他の係止機構も、利用され得る。
【0108】
図13Bは、送達用カテーテル1320に関してより詳しく例示している。送達用カテーテル1320の遠位先端部は、漏斗1360を備えることができる。漏斗1360の近位に、インプラント導入器1340が存在し得る。非常に近くの近位端において、送達用カテーテル1320は、ハンドル1370を有するものとしてよい。
【0109】
操縦可能なカテーテル600は、本明細書で説明されているように接合補助デバイス1200内にねじ込まれ得る。漏斗1360は、送達用カテーテル1320の遠位先端部上に挿入され得る。接合補助デバイス1200は、係止特徴部1330を使用して適所に係止されるものとしてよく、それにより、ハブアンカー1300は、トルクをかけることができるシャフト1310に接続される。
【0110】
操縦可能なカテーテル600は、インプラント導入器1340上の角度付き側部ポート1350内にねじ込まれ得る。接合補助デバイス1200および操縦可能なカテーテル600は、送達用カテーテル1320を引き込むことによって漏斗1360を通して引っ張ることができる。引き込み続けることで、接合補助デバイス1200は、インプラント導入器1340内に折り畳まれる。インプラントが導入器1340内に入った後、漏斗1360は取り出され、破棄される。漏斗1360は、容易に取り出せるように設計され得る。漏斗の設計は、限定はしないが、剥離設計(
図8A~
図8Cにすでに示されている)またはクラムシェル設計(
図13B)を含む。
【0111】
送達用カテーテル1320は、インプラント導入器1340とともに前進させられて、インプラント導入器1340が経中隔シース650のハブと結合するまで操縦可能なカテーテル600上に送られ得る。この時点で、インプラント導入器1340は、それ以上前進することができないが、接合補助デバイス1200それ自体は前進させられて、経中隔シース内に入ることができる。次のいくつかのステップは、この例では、インプラントシースが使用されていないことを除き、
図8Eから
図8Gに示されているステップに類似している。接合補助デバイス1200は、後尖の上に留置され、心室突出部1212は、左心室内に留置される。操縦可能なカテーテル600は引っ込められ、心室突出部1212をP2の下でカールさせるか、またはコイル状にすることができる。心室突出部1212が固定された後、ハブアンカー1300は回転させられるか、または他の何らかの形で作動させられ得る。ハブアンカー1300は、接合補助デバイス1200の近位側を弁輪に固定することができる。トルクをかけることができるシャフト1310は、引っ込められ得る。本明細書で説明されるように、追加の固定の後、ハブ係止特徴1330は、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3をそれとともに引っ張って引っ込められる。接合補助デバイス1200は、これで、支持構造体1210.1、1210.2、1210.3なしで左心内で動作できるようになるものとしてよい。
【0112】
棘状突起部のないインプラントの固定手順
図14Aは、接合補助デバイス1200を固定するための一実施形態を示している。植え込み後に支持構造体1210.1、1210.2、1210.3などの剛構造体が存在し得ないので、接合補助デバイス1200は、追加のアンカーを必要とし得る。いくつかの実施形態において、接合補助デバイスは、密集したアンカーを利用することができる。いくつかの実施形態において、接合補助デバイス1200は、本明細書で説明されている、支持構造体505を備える類似の接合補助デバイスよりも追加の、密集したアンカーを利用し得る。
図14Aは、接合補助デバイス1200と組織を結合するために使用され得る、アンカー1400の一実施形態を示している。
図14Bは、別の実施形態を示している。
図14Bにおいて、接合補助デバイス1200を組織に「縫い付ける」ために縫合糸またはテープ1410が使用される。縫合糸またはテープ1410は、限定はしないが、ポリプロピレンまたはナイロンを含む、複数の材料のうちの1つから作られ得る。次に、複数のアンカーが留置される仕方を説明するいくつかの実施形態が、本明細書において説明される。
【0113】
図15Aは、複数のアンカーを送達するアンカーカテーテル1500の一実施形態を示している。アンカー1510.1およびアンカー1510.2を含む、いくつかのアンカー1510は、アンカーカテーテル1500内に積み重ねられる。
図15Aは、2つのアンカー1510.1および1510.2がアンカーカテーテル1500内に積み重ねられているように示しているが、積み重ねられるアンカーは増減できる。各アンカー1510は、コイルセクション1550を備え得る。コイルセクション1550は、先の尖った端部1570を備えることができる。アンカー1510は、アンカーヘッド1560を備え得る。アンカーヘッド1560は、
図15Aにおいて1545.1、1545.2、1545.3、および1545.4で示されているいくつかの断面のうちの1つを有するものとしてよい。他の断面も可能である。
【0114】
最初にアンカーカテーテル1500を装填するために、アンカー1510は、アンカーカテーテル1500の中心シャフト1520上に装填される。中心シャフト1520およびアンカー1510は、アンカー1510が中心シャフト1520に回転可能に結合され得るように一致する断面を有するものとしてよい。アンカーカテーテル1500の近位端には、バネ1540が備えられ得る。このバネ1540は、中心シャフト1520が回転させられたときに、アンカー1510が矢印1550の方向にアンカーカテーテル1500の遠位端から出るような押す力をもたらす。アンカー1510が出ると、アンカー1510は、接合補助デバイス1200および組織と係合して、接合補助デバイス1200を組織に結合することができる。中心シャフト1520の回転は、医者などの操作者によって制御され得る。いくつかの実施形態において、中心シャフト1520は、近位端でハンドル(図示せず)に結合され得るトルクをかけることができるワイヤ(図示せず)に結合される。いくつかの実施形態において、トルクをかけることができるワイヤは、手動で制御され得る。いくつかの実施形態において、トルクをかけることができるワイヤは、電気モーターを介して制御され得る。回転運動を中心シャフト1520に与えるための他の方法も企図される。
図15Aに示されていない特徴部は、アンカーカテーテル1500の遠位端を操縦し、位置決めすることができるものである。一方のアンカー1510が送達されると、遠位先端部は、次のアンカー1510を送達するように再度位置決めされる必要があり得る。アンカーカテーテル1500の遠位先端部を操縦するためにプルワイヤなどの操縦機構が備えられ得る。
【0115】
図15Bは、複数のアンカーを送達するアンカーカテーテル1600の別の実施形態を示している。
図15Bは、アンカーカテーテル1600の遠位先端部のみを示している。アンカーカテーテル1600は、1610.1および1610.2などの複数のアンカー1610を備えることができる。アンカーカテーテル1600は、5つのアンカーを示しているが、一度に装填できるアンカー1610は、増減され得る。アンカーカテーテル1600は、中心シャフト1630も有し得る。アンカーカテーテル1600は、ハウジング1605の内側に1620などのねじ山を備えることができる。これらのねじ山1620は、図示されているようにアンカー1610のコイルを収納することができる。最初にアンカーカテーテル1600を装填するために、アンカー1610は、ハウジング1605内に挿入される。アンカー1610は、中心シャフト1630上に挿入される。すでに説明されているように、中心シャフト1630の断面は、アンカー1610が中心シャフト1630上に装着できるようにアンカー1610の断面と一致するものとしてよい。中心シャフト1630の回転は、中心シャフト1630をアンカーカテーテル1600のハンドル(図示せず)に結合し得るトルクをかけることができるケーブル(図示せず)によって制御され得る。医者などの操作者は、回転を制御することができる。いくつかの実施形態において、トルクをかけることができるワイヤは、手動で制御され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、トルクをかけることができるワイヤは、電気モーターを介して制御され得る。中心シャフト1630が回転すると、ねじ山は、アンカー1610がアンカーカテーテル1600から出て、接合補助デバイス1200および組織と係合して、接合補助デバイス1200と組織とを一緒に結合する働きをする。アンカーカテーテル1600は、また、一方のアンカー1610が送達されると、アンカーカテーテル1600が次のアンカー1610を送達するように位置決めされるようにアンカーカテーテル1600の遠位先端部を操縦するプルワイヤを有し得る。
【0117】
図15Bは、中心縫合糸1635を例示している。中心縫合糸1635は、中心縫合糸1635の端部に結合されたボール1640を含み得る。
図15Cおよび
図15Dは、中心縫合糸1635およびボール1640がどのように使用され得るかを例示している。ボール1640は、第1のアンカー1610.1の内側のポケット内に収まることができる。中心縫合糸1635は、第1のアンカー1610.1を第2のアンカー1610.2および他のアンカー1610(図には示されていない)に接続することができる。この配置構成では、中心縫合糸1635をガイドワイヤとして使用して、アンカー1610が組織1645内にねじ込まれた後にアンカー1610に戻るようにすることができる。操作者は、アンカー1610に戻ってアンカー1610を再度位置決めするか、または調整したい場合がある。それに加えて、1つまたは複数のアンカー1610が緩んだ場合、中心縫合糸1635は、緩んだアンカー1610のテザーとなり、したがって塞栓症の事象を防ぐことができる。
【0118】
図16A~
図16Cは、複数のアンカーを送達するアンカーカテーテル1700の別の実施形態を示している。アンカーカテーテル1700は、中空シャフトを有することができる。中空シャフトは遠位端に向けられ、接合補助デバイス1200および組織を穿刺するために使用され得る。1710.1、1710.2などの複数のアンカー1710は、アンカーカテーテル1700の中空シャフト内に配置構成され得る。アンカー1710は、中空バレルとすることができる。
【0119】
縫合糸1720は、図示されているようにアンカー1710内に通され得る。縫合糸1720は、縫合糸1720を第2のアンカー1710.2から出て、第1のアンカー1710.1に、側部開口1740を通して入るように配置構成することによって第1のアンカー1710.1に固定され得る。次いで、縫合糸1720は、第1のアンカー1710.1内で点線で示されているような結び目を使って固定され得る。第1のアンカー1710.1を除く、他のアンカー1710内の縫合糸1720は、アンカー1710.2について例示されているように見えるものとしてよい。第1のアンカー1710.1を除く、アンカー1710は、切り欠いた壁の一部を有する。切欠は、組織内にアンカーをうまく捕らえるのを助けることができ、トグルボルトに似ている。アンカーカテーテル1700の近位端で、プッシャーチューブ1750などの特徴部は、1710.1および1710.2などのアンカー1710を遠位端のところでアンカーカテーテル1700から出すために存在するものとしてよい。プッシャー1750は、ハンドル(図示せず)に取り付けられ、それにより、医者などの操作者が適切なときに1つまたは複数のアンカー1710を堆積させることができる。矢印1760は、押す方向を示している。
【0120】
図16B~
図16Cは、
図16Aのアンカーカテーテル1700がどのように動作し得るかを例示している。
図16Bにおいて、アンカーカテーテル1700は前進させられて、接合補助デバイス1200を通り、
図5Aの520で説明されているようなスロットを通る。次いで、アンカーカテーテル1700は、組織1645を穿刺する。操作者は、第1の1710.1をアンカーカテーテル1700から押し出して、アンカー1710.1を組織内に堆積させる。第1のアンカー1710.1が堆積された後、アンカー1710の残りは、
図16Cに例示されているように堆積される。
図16Cにおいて、アンカーカテーテル1700は、第2の位置に入るために第1のアンカー1710.1を堆積した後に組織から引き出される。第2の位置で、アンカーカテーテル1700は、第2のアンカー1710.2を堆積することができる。このプロセスは、接合補助デバイス1200を組織に固定したくなるまで続けられる。最後のアンカー1710が送達された後、カッター(図示せず)がアンカーカテーテル1700の内側に前進させられて縫合糸1720を切断し、アンカー1710を置き去りにするようにできる。
【0121】
いくつかの実施形態において、アンカー1710は、放射線不透過性を有するか、またはX線写真撮影用マーカーによって覆われるものとしてよい。アンカー1710の送達のプロセスにおいて、放射線不透過性マーカーは、X線透視装置が使用される場合に可視化され得る。これは、アンカー1710を接合補助デバイス1200の弁輪の周りに間隔をあけて並べるのを助けることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、MRは、接合補助デバイス1200を固定しながら評価され、縫い付ける動作のピッチおよび/または配置は、MRが存在するか存在しないかに従って決定される。
【0123】
環状チューブを備える棘状突起部のないインプラント
図17Aは、棘状突起部のない接合補助デバイス1800の別の実施形態を例示している。この実施形態において、支持構造体1810は、心室突出部1820を下へ横断するのみであるものとしてよい。チューブまたは通路1830は、接合補助デバイス1800の環状縁の周りに存在し得る。支持構造体1810を利用して接合補助デバイス1800の形状を維持する代わりに、アンカーカテーテル1850が、
図17Bに示されているようにチューブ1830内に挿入され得る。
図17Bにおいて、アンカーカテーテル1850は、偏向可能なアンカーカテーテルとすることができる。
【0124】
図17Bは、また、
図15Aの1560で説明されているようなアンカーが送達され得る第1の部位1860.1も示している。この部位1860.1およびすべてのアンカー部位1860において、アンカーカテーテル1850の先端部は、本体部の外側に配置されているコントロール部によって偏向される。アンカー(図示せず)は送達されて、接合補助デバイス1800を組織に固定することができる。アンカーカテーテル1850の先端部は、放射線不透過性を有していてよく、次いで、アンカー送達プロセスにおいて可視化され得る。先端部の可視化は、接合補助デバイス1800の弁輪の周りにアンカーを配置するために利用され得る。
図17Bは、第1のアンカー配置1860.1を例示し、
図17Cは、第2のアンカー配置1860.2を例示している。適切な数のアンカーが送達された後、アンカーカテーテル1850は、
図17Dに示されているように完全に引っ込められる。最後に、支持構造体1810は、
図17Eに示されているように取り出され得る。
【0125】
図17A~
図17Eに示されている実施形態の一変更形態において、支持構造体1810は、心室突出部にのみ限定されなくてよい。また、所望の形状が維持され得るように環状チューブ1830に通して挿入され得る。支持構造体は、形状記憶材料であってよい。環状チューブ1830の周りに支持構造体を利用した結果、アンカーカテーテルは、
図17Aで説明されている接合補助デバイス1800に使用されるアンカーカテーテル1850に比べて、比較的単純な制御機構を有し得る。
【0126】
上で開示されている実施形態の具体的な特徴および態様の様々な組み合わせまたは部分的組み合わせがなされ、発明の1つまたは複数の範囲内に収まり得ることも企図されている。さらに、実施形態と併せて特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素、または同様のものの本明細書における開示は、本明細書において述べられている他のすべての実施形態において使用できる。したがって、開示された実施形態の様々な特徴および態様が、開示された発明の様々な形態を形成するために、互いに組み合わされ、または代わりに用いられることができることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、上記に説明した特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は、様々な修正および代替的形態の影響を受けやすいが、特定の例は、図面内に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、本発明は、開示されている特定の形態または方法に限定されるべきでなく、それどころか、本発明は、説明されている様々な実施形態および付属の請求項の精神および範囲内に収まるすべての修正形態、等価形態、および代替的形態を対象とすべきであることは理解されるべきである。本明細書において開示されている方法は、記載されている順序で実行される必要はない。本明細書において開示されている方法は、実施者が行ういくつかの行為を含むが、それらの行為の第三者命令も、明示的に、または暗に、のいずれかで含み得る。たとえば、「接合補助本体部を僧帽弁の近くに挿入する」などの行為は、「接合補助本体部を僧帽弁の近くに挿入することを命令する」を含む。本明細書において開示されている範囲は、そのあらゆる重なり、部分範囲、および組み合わせをも包含する。「まで」、「少なくとも」、「より多い」、「より少ない」、「~の間(または、~から~まで)」、および同様のものなどの言葉は、記載されている数を含む。本明細書で使用されているような「ほぼ」、「約」、および「実質的に」などの語が付く数は、記載されている数を含み、所望の機能をそのまま果たすか、または所望の結果をもたらす、述べられている量に近い量を表す。たとえば、「ほぼ」、「約」、および「実質的に」という語は、述べられている量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、および0.01%未満以内の量を指すものとしてよい。
【符号の説明】
【0127】
10 左心房
12 前尖
14 後尖
16 接合ゾーン
20 右心房
30 左心室
32 腱索
34、36 乳頭筋
40 右心室
50 三尖弁
60 僧帽弁
70 肺動脈弁
80 大動脈弁
110、114 交連
120 線維性弁輪
124 左(外側)線維性三角
126 右(中隔)線維性三角
128 中心線維体
160 横断面
215 腱索
220 動揺弁尖
230 心室収縮期
240 弁輪拡張
312 前尖
314 後尖
320 心室
330 乳頭筋
342 前尖
344 後尖
500 接合補助デバイス
505 支持構造体
505.1 第2のセクション
505.2 第1のセクション
510 ハブ
512 クロスピン
515 接合補助本体部
520 ミシン目、スロット、交連孔
525 心室突出部
530 遠位端
535 第1の接合面
540 第2の接合面
545 上縁
546 リブ
550.1 断面
550.2 断面
550.3 断面
550.4 断面
550.5 断面
555.1 遠位端
555.2 遠位端
555.3 遠位端
555.4 遠位端
555.5 遠位端
560 チューブ
565.1 チューブ
565.2 チューブ
600 小口径の操縦可能なカテーテル
605 本体部
610 ハンドル
612 エクステンション
615 口径
620 口径
625 プルワイヤ
630 真っ直ぐな位置
632 矢印
635 矢印
640 湾曲した位置
650 経中隔シース
655 左心房
660 左心室
665 僧帽弁の後尖
670 僧帽弁の前尖
700 送達用カテーテル
705 遠位係止タブ
710 シャフト本体部
715 タブ
720 剥がせる漏斗
725 インプラントシース
730 ハンドル
740 ポケット
745 クロスピン
750 ワイヤまたは縫合糸
755 ループ
760 矢印
765 腱索
800 アンカー
805 肩部
810 窓
815 螺旋状構造体
900 アンカーカテーテル
905 切欠
910 ループ
915 螺旋状アンカー
917 クロスバー
920 中心ピン
1000 送達用カテーテル
1010 シャフト
1020 シャフト
1030 シャフト
1040 内腔
1050 中心内腔
1200 棘状突起部のない接合補助デバイス
1210 チューブまたは通路
1210.1、1210.2、1210.3 支持構造体
1212 チューブまたは通路
1212 心室突出部
1220 構造体
1220 棘状ハブ
1300 アンカー部位
1310 シャフト
1320 送達用カテーテル
1330 ハブ係止特徴部
1335 出口開口
1340 インプラント導入器
1350 角度付き側部ポート
1360 漏斗
1370 ハンドル
1400 アンカー
1410 縫合糸またはテープ
1500 アンカーカテーテル
1510 アンカー
1510.1 アンカー
1510.2 アンカー
1520 中心シャフト
1540 バネ
1550 コイルセクション
1560 アンカーヘッド
1570 先の尖った端部
1600 アンカーカテーテル
1605 ハウジング
1610 アンカー
1620 ねじ山
1630 中心シャフト
1635 中心縫合糸
1640 ボール
1645 組織
1700 アンカーカテーテル
1710 アンカー
1710.1 第1のアンカー
1710.2 第2のアンカー
1720 縫合糸
1740 側部開口
1750 プッシャーチューブ
1760 矢印
1800 棘状突起部のない接合補助デバイス
1810 支持構造体
1820 心室突出部
1830 チューブまたは通路
1850 アンカーカテーテル
1860 アンカー部位
1860.1 第1の部位、第1のアンカー配置
1860.2 第2のアンカー配置