(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ファージ分注システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230320BHJP
A61J 1/20 20060101ALI20230320BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20230320BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20230320BHJP
A61K 35/76 20150101ALN20230320BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
A61J1/20 314Z
C12N7/00
C12Q1/04
A61K35/76
(21)【出願番号】P 2020531605
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018064645
(87)【国際公開番号】W WO2019118310
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517317347
【氏名又は名称】アダプティブ ファージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Adaptive Phage Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】メリル, カール
(72)【発明者】
【氏名】メリル, グレッグ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0066465(US,A1)
【文献】特表2015-512384(JP,A)
【文献】特表2009-541746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
A61J 1/00-19/06
A61K 35/00-35/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファージ分注装置であって、
コンピューティング装置であって、前記コンピューティング装置は、1つ以上のプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、ディスプレイと、1つ以上のプログラムとを備え、前記1つ以上のプログラムは、前記メモリの中に記憶され、前記1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、前記1つ以上のプログラムは、
ファージ/宿主感受性プロファイルに基づいて、患者および前記患者のためのファージ混合物治療に関する情報を受信するように構成される、コンピューティング装置と、
少なくとも1つのファージを含有する複数のガラス瓶を備える貯蔵部と、
分注部と、
1つ以上のロボットシステムであって、前記1つ以上のロボットシステムは、前記コンピューティング装置によって制御され、前記貯蔵部から前記分注部に1つ以上のガラス瓶を除去し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するように構成される、1つ以上のロボットシステムと
を備える、ファージ分注装置。
【請求項2】
前記貯蔵部は、複数のファージガラス瓶を備え、前記貯蔵部は、-40℃~-90℃に保たれる、請求項1に記載のファージ分注装置。
【請求項3】
前記コンピューティング装置は、前記貯蔵部内の前記複数のガラス瓶の保有量を維持するように構成され、センサが、前記貯蔵部からのガラス瓶の除去を検出するように構成され、検出に応じて、前記保有量は、更新され、貯蔵されたファージの保有量レベルが、閾値量未満になった場合、新しいファージ備蓄に関する要求が、前記通信インターフェースを介して供給元に伝達される、請求項1または2に記載のファージ分注装置。
【請求項4】
前記コンピューティング装置は、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量の調製を監視し、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量が調製され、分注するための準備ができると、警報が、前記通信インターフェースによって生成され、前記コンピューティング装置は、認定されたユーザのデータベースを記憶し、認定されたユーザに前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量のみを分注するように構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
【請求項5】
前記貯蔵部はさらに、多剤耐性菌の選択された群の1つに対する有効性を伴う複数のファージを含む複数の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を備え、前記ファージ混合物の1回分以上の用量を調製することは、前記貯蔵部から1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を選択することと、随意に、前記選択された、1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を解凍することとを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
【請求項6】
前記装置はさらに、調製部を備え、前記ロボットシステムは、1つ以上のガラス瓶を前記貯蔵部から前記調製部に移動させ、前記1つ以上のガラス瓶を混合し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療を生成し、次いで、前記ファージ混合物治療を前記分注部に移動させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の治療用ファージ分注装置。
【請求項7】
前記ファージ混合物治療は、1つのタイプのファージを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
【請求項8】
前記ファージ混合物治療は、1つよりも多くのタイプのファージを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物のための自動化された分注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論では、ある論説および方法が、背景および序論の目的のために説明されるであろう。本明細書に含有されるものは、先行技術の「承認」として解釈されるべきではない。本出願人は、適切である場合、本明細書において参照される論説および方法が、適用可能な法規条項下で先行技術を構成しないことを実証するための権利を明示的に留保する。
【0003】
多剤耐性(MDR)菌が、驚くべき率で出現している。現在、米国では、毎年、少なくとも2百万人の感染者数が、MDR生物によって引き起こされ、約23,000人の死亡者数をもたらしていると推定される。また、遺伝子工学および合成生物学もまた、付加的な強毒性の微生物の発生につながり得ると考えられる。
【0004】
例えば、黄色ブドウ球菌は、皮膚軟部組織感染(SSTI)、肺炎、壊死性腹膜炎、および血流感染を引き起こし得る、グラム陽性菌である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(「MRSA」)は、MRSAが、80,000人を超える侵襲性感染者数、12,000人に近い関連死者数に関わるため、臨床環境において大きく懸念されるMDR生物であり、院内感染の主因である。加えて、世界保健機構(WHO)は、MRSAを国際的に懸念される生物として同定している。
【0005】
急速に発生し、拡散する毒性微生物および抗菌剤耐性の潜在的脅威に照らして、細菌感染に対する代替の臨床的治療が、開発されている。MDR感染症のための1つのそのような潜在的治療は、ファージの使用を伴う。バクテリオファージ(「ファージ」)は、その中で複製するウイルスの種々のセットであり、具体的な細菌宿主を死滅させることができる。ファージを抗菌剤として利用する可能性が、20世紀初頭のそれらの初期の単離に続いて調査され、それらは、いくつかの国において抗菌剤として臨床的に使用され、ある成功を収めている。それにもかかわらず、ファージ療法は、ペニシリンの発見後、主として米国において放棄され、最近になってようやく、ファージ治療における関心が、新たになってきている。
【0006】
ファージの成功した治療的使用は、感染と関連付けられる細菌分離株を死滅させる、またはその増殖を阻害し得る、ファージ菌株を投与するための能力に依存する。加えて、細菌の変異率およびファージ菌株と関連付けられる狭い宿主範囲を前提として、抗菌剤として初期的に有効であるファージ菌株は、初期の標的細菌宿主が、変異するか、または排除されるかのいずれかであり、抗菌剤として採用された初期のファージに対して耐性である、1つ以上の新生細菌株によって自然に取って代わられるため、臨床的治療の間に急速に無効になり得る。
【0007】
経験的実験室技法が、細菌株上でのファージ感受性をスクリーニングするために開発されている。しかしながら、これらの技法は、時間がかかり、細菌の具体的な菌株毎に細菌増殖曲線を取得することに依存する。例えば、ファージ菌株が、現在、液体培養物または寒天培地上で育成された菌叢のいずれか一方を使用して、具体的な患者の細菌分離株に対して個々のファージ菌株を試験することによって、細菌増殖を溶解する(死滅させる)または阻害するためのそれらの能力に関してスクリーニングされている。本増殖要件は、速められることはできず、感受性結果は、スクリーニングの数時間、ある場合には、その数日後にのみ生成される。さらに、そのようなスクリーニングは、典型的には、患者から遠隔の、専門化された実験室において実施される。故に、患者サンプルが、適切に調製され、試験実験室に発送されなければならず、次いで、(感受性結果からの)潜在的ファージ治療の同定に応じて、同定されたファージ(または複数のファージ)を含む好適な医薬組成物が、適切に調製され、患者への後続の投与のために、治療を行う医師まで発送されなければならない。感受性結果を取得するステップ、および後続の分注するステップおよび送達における本遅延は、全身細菌感染を被る患者のための治療の遅延および合併症につながる。
【0008】
したがって、患者にファージベースの医薬組成物を送達するための分注システムを開発する、または少なくとも現行の分注システムに対して有用な代替物を提供するための必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概要は、発明を実施するための形態において下記にさらに説明される一連の概念を、単純化された形態で導入するために提供される。本発明の概要は、請求される主題の重要な、または本質的な特徴を識別するように意図されておらず、請求される主題の範囲を限定するために使用されるようにも意図されていない。請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、および利点が、付随の図面に図示され、添付の請求項で定義される、それらの側面を含む、以下に記述される発明を実施するための形態から明白となるであろう。
【0010】
本発明の実施形態は、患者のためのファージ混合物治療を同定し、次いで、臨床現場においてファージ混合物治療の用量を調製および分注するための、ファージ分注システムおよびその動作方法に関する。本システムは、患者サンプルからファージ混合物治療を同定するステップと、同定されたファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するステップの両方のプロセスを加速させる。
【0011】
第1の側面によると、
1つ以上のプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、ディスプレイと、1つ以上のプログラムとを備える、コンピューティング装置であって、1つ以上のプログラムは、メモリの中に記憶され、1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、1つ以上のプログラムは、患者および患者のためのファージ混合物治療に関する情報を受信するように構成される、コンピューティング装置と、
少なくとも1つのファージを含有する複数のガラス瓶を備える、貯蔵部と、
調製部と、
分注部と、
コンピューティング装置によって制御され、貯蔵部から1つ以上のガラス瓶を除去し、1つ以上のガラス瓶を調製部に移動させ、1つ以上のガラス瓶を混合し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療を生成し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するように構成される、1つ以上のロボットシステムと、
を備える、ファージ分注装置が、提供される。
【0012】
貯蔵部は、複数の単回用量ファージガラス瓶を備えてもよく、貯蔵部は、-40℃~-90℃に保たれる。
【0013】
コンピューティング装置は、貯蔵部内の複数のガラス瓶の保有量を維持するように構成されてもよく、センサが、貯蔵部からのガラス瓶の除去を検出するように構成され、検出に応じて、保有量は、更新され、貯蔵されたファージの保有量レベルが、閾値量未満になった場合、新しいファージ備蓄に関する要求が、通信インターフェースを介して供給元に伝達される。
【0014】
コンピューティング装置は、ファージ混合物治療の1回分以上の用量の調製を監視してもよく、ファージ混合物治療の1回分以上の用量が調製され、分注するための準備ができると、警報が、通信インターフェースによって生成され、コンピューティング装置は、認定されたユーザのデータベースを記憶し、認定されたユーザにファージ混合物治療の1回分以上の用量のみを分注するように構成される。
【0015】
貯蔵部はさらに、多剤耐性菌の選択された群の1つに対する有効性を伴う複数のファージを含む、複数の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を備えてもよく、ファージ混合物の1回分以上の用量を調製するステップは、貯蔵部から1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を選択するステップと、選択された、1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を解凍するステップとを含む。
【0016】
第2の側面によると、
(a)そのそれぞれが、1ml~50mlの体積を伴う無菌充填調製物を含有し、各調製物が、精製されたファージの1つ以上の菌株を含む、複数のシールされたガラス瓶を含有する、温度制御された貯蔵ボックスと、
(b)温度制御された貯蔵ボックスの中に貯蔵される複数のガラス瓶の保有量を追跡するように構成される、電子カタログ装置と、
を備える、治療用ファージ貯蔵および分注装置が、提供される。
【0017】
各調製物は、106~1014プラーク形成単位(PFU)の1つ以上のファージを含んでもよい。各ガラス瓶は、アンプルであってもよい。
【0018】
各ガラス瓶は、識別タグを備えてもよく、電子カタログ装置は、識別タグを使用して温度制御された貯蔵ボックスへの、またはそこからの各ガラス瓶の追加および除去を検出するための、1つ以上のセンサを備え、さらに、温度制御された貯蔵ボックス内の各ガラス瓶の場所を記録するように構成される。電子カタログ装置はさらに、温度制御されたボックス内の貯蔵場所に、またはそこからガラス瓶を移動させるように構成される、ロボット装置を備えてもよい。
【0019】
第3の側面によると、
1つ以上のプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、ディスプレイと、1つ以上のプログラムとを備え、1つ以上のプログラムは、メモリの中に記憶され、1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、1つ以上のプログラムは、
(a)ユーザインターフェースを介して、患者サンプルに関する情報であって、患者サンプル場所と、患者識別子と、治療場所とを含む、情報を受信し、
(b)受信された情報を使用して、ファージ試験実験室への患者サンプルの輸送を手配し、
(c)ファージ試験実験室からの1つ以上の試験および/または分析結果を受信し、ファージ試験実験室からの1つ以上のファージを含む、ファージ混合物治療を生成し、
(d)患者にファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するために、ファージ分注装置にファージ混合物治療および患者識別子を送信する、
ように構成される、コンピューティング装置が、提供される。
【0020】
輸送を手配するステップは、患者サンプルを受容し、それを試験するための能力を有する、最近傍のファージ試験実験室を識別するステップと、患者サンプルを、サンプル集荷時間にサンプル集荷場所から輸送するための、輸送サービスを予約するステップと、ユーザインターフェースに情報を送信し、ユーザが発送標識を印刷することを可能にし、ユーザにサンプル集荷時間および集荷場所を通知するステップとを含んでもよい。
【0021】
コンピュータ装置はさらに、ファージ分注装置からの新しいファージ備蓄に関する要求を受信し、ファージ分注装置への要求された新しいファージ備蓄の輸送を手配するように構成されてもよい。
【0022】
第4の側面によると、ファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)ユーザインターフェースを介して患者サンプルに関する情報を受信するステップであって、情報は、患者サンプル場所と、患者識別子と、治療場所とを含む、ステップと、
(b)受信された情報を使用して、ファージ試験実験室への患者サンプルの輸送を手配するステップと、
(c)患者サンプルを試験および/または分析し、1つ以上のファージを含む、ファージ混合物治療を同定するステップと、
(d)ファージ混合物治療をファージ分注装置に送出するステップと、
(e)ファージ分注装置によって貯蔵される1つ以上のファージガラス瓶を使用して、ファージ混合物治療の1回分以上の用量を調製するステップと、
(f)ファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するステップと、
を含む、方法が、提供される。
【0023】
輸送を手配するステップは、患者サンプルを受容し、それを試験するための能力を有する、最近傍のファージ試験実験室を識別するステップと、患者サンプルを、サンプル集荷時間にサンプル集荷場所から輸送するための、輸送サービスを予約するステップと、ユーザインターフェースに情報を送信し、ユーザが発送標識を印刷することを可能にするステップと、ユーザにサンプル集荷時間および集荷場所を通知するステップとを含んでもよい。
【0024】
種々の方法が、患者サンプルを試験および/または分析し、ファージ混合物治療を同定するために使用され得る。これらは、プラークアッセイまたは測光アッセイを使用するステップを含んでもよい。ファージ混合物治療は、複数のファージを含んでもよい。これらは、異なる宿主範囲を有し得、相互と共力して作用し得る。ファージ混合物中の各ファージは、
(i)細菌増殖において遅延を引き起こす、
(ii)ファージ耐性菌増殖の出現を阻害または防止する、
(iii)細菌を弱毒性にさせる、
(iv)細菌に1つ以上の薬物に対する感受性を回復させる、および/または
(v)細菌に対象内での増殖のための低減された適応度を示させる、
ことのうちのいずれかを行い得る。
【0025】
ファージ分注装置は、-40℃~-85℃に保たれる貯蔵部の中に貯蔵される、複数の単回用量ファージガラス瓶を備えてもよく、ファージ混合物の1回分以上の用量を調製するステップは、受容されたファージ混合物治療に従って貯蔵部から1つ以上の単回用量ファージガラス瓶を選択するステップと、選択された1つ以上の単回用量ファージガラス瓶を解凍するステップと、混合し、ファージ混合物治療を生成するステップとを含む。ファージ混合物治療の用量は、薬学的に容認可能な組成物として調合されてもよい。
【0026】
各ガラス瓶が、貯蔵部から除去されるにつれて、保有量が、更新されてもよく、貯蔵されたファージの保有量レベルが、閾値量未満になった場合、新しいファージ備蓄に関する要求が、供給元に伝達される。
【0027】
ファージ混合物治療が、調製され、分注するための準備ができると、警報が、生成されてもよく、調製されたファージ混合物治療が、認定されたユーザにのみ分注される。
【0028】
ファージ分注装置はまた、多剤耐性菌の選択された群の1つに対する有効性を伴う複数のファージを含む、複数の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を備えてもよい。ファージ混合物の1回分以上の用量を調製するステップは、貯蔵部から1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を選択するステップと、選択された、1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を解凍するステップとを含む。
【0029】
第5の側面によると、
(a)少なくとも1つのファージを含有する複数のガラス瓶を備える、貯蔵部と、調製部と、分注部と、貯蔵部から1つ以上のガラス瓶を除去し、調製部に1つ以上のガラス瓶を移動させ、1つ以上の部分を混合し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療を生成し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するように構成される、1つ以上のロボットシステムとを備える、ファージ分注装置と、
(b)1つ以上のプロセッサと、メモリと、1つ以上のプログラムとを備え、1つ以上のプログラムは、メモリの中に記憶され、1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、1つ以上のプログラムは、第4の側面に記載の方法を実行するための命令を含む、
ファージ分注システムが、提供される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
ファージ分注装置であって、
コンピューティング装置であって、前記コンピューティング装置は、1つ以上のプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、ディスプレイと、1つ以上のプログラムとを備え、前記1つ以上のプログラムは、前記メモリの中に記憶され、前記1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、前記1つ以上のプログラムは、患者および前記患者のためのファージ混合物治療に関する情報を受信するように構成される、コンピューティング装置と、
少なくとも1つのファージを含有する複数のガラス瓶を備える貯蔵部と、
分注部と、
1つ以上のロボットシステムであって、前記1つ以上のロボットシステムは、前記コンピューティング装置によって制御され、前記貯蔵部から前記分注部に1つ以上のガラス瓶を除去し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するように構成される、1つ以上のロボットシステムと
を備える、ファージ分注装置。
(項目2)
前記貯蔵部は、複数のファージガラス瓶を備え、前記貯蔵部は、-40℃~-90℃に保たれる、項目1に記載のファージ分注装置。
(項目3)
前記コンピューティング装置は、前記貯蔵部内の前記複数のガラス瓶の保有量を維持するように構成され、センサが、前記貯蔵部からのガラス瓶の除去を検出するように構成され、検出に応じて、前記保有量は、更新され、貯蔵されたファージの保有量レベルが、閾値量未満になった場合、新しいファージ備蓄に関する要求が、前記通信インターフェースを介して供給元に伝達される、項目1または2に記載のファージ分注装置。
(項目4)
前記コンピューティング装置は、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量の調製を監視し、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量が調製され、分注するための準備ができると、警報が、前記通信インターフェースによって生成され、前記コンピューティング装置は、認定されたユーザのデータベースを記憶し、認定されたユーザに前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量のみを分注するように構成される、項目1から3のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
(項目5)
前記貯蔵部はさらに、多剤耐性菌の選択された群の1つに対する有効性を伴う複数のファージを含む複数の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を備え、前記ファージ混合物の1回分以上の用量を調製することは、前記貯蔵部から1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を選択することと、随意に、前記選択された、1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を解凍することとを含む、項目1から4のいずれか1項に記載のファージ分注装置。
(項目6)
前記装置はさらに、調製部を備え、前記ロボットシステムは、1つ以上のガラス瓶を前記貯蔵部から前記調製部に移動させ、前記1つ以上のガラス瓶を混合し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療を生成し、次いで、前記ファージ混合物治療を前記分注部に移動させる、項目1から5のいずれか1項に記載の治療用ファージ分注装置。
(項目7)
治療用ファージ貯蔵および分注装置であって、
(a)温度制御された貯蔵ボックスであって、前記温度制御された貯蔵ボックスは、複数のシールされたガラス瓶を含有し、前記複数のシールされたガラス瓶のそれぞれは、1ml~50mlの体積を伴う無菌充填調製物を含有し、各調製物が、精製されたファージの1つ以上の菌株を含む、温度制御された貯蔵ボックスと、
(b)電子カタログ装置であって、前記電子カタログ装置は、前記温度制御された貯蔵ボックスの中に貯蔵される前記複数のガラス瓶の保有量を追跡するように構成される、電子カタログ装置と
を備える、治療用ファージ貯蔵および分注装置。
(項目8)
各調製物は、10
6
~10
14
プラーク形成単位(PFU)の1つ以上のファージを含む、項目7に記載の治療用ファージ貯蔵および分注装置。
(項目9)
各ガラス瓶は、アンプルである、項目8に記載の治療用ファージ貯蔵および分注装置。
(項目10)
各ガラス瓶は、識別タグを備え、前記電子カタログ装置は、前記識別タグを使用して前記温度制御された貯蔵ボックスへの、および前記温度制御された貯蔵ボックスからの各ガラス瓶の追加および除去を検出するための、1つ以上のセンサを備え、さらに、前記温度制御された貯蔵ボックス内の各ガラス瓶の前記場所を記録するように構成される、項目7に記載の治療用ファージ貯蔵および分注装置。
(項目11)
前記電子カタログ装置はさらに、前記温度制御されたボックス内の貯蔵場所に、および前記貯蔵場所からガラス瓶を移動させるように構成される、ロボット装置を備える、項目10に記載の治療用ファージ貯蔵および分注装置。
(項目12)
コンピュータ装置であって、
1つ以上のプロセッサと、メモリと、通信インターフェースと、ディスプレイと、1つ以上のプログラムとを備え、前記1つ以上のプログラムは、前記メモリの中に記憶され、前記1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、前記1つ以上のプログラムは、
(a)ユーザインターフェースを介して、患者サンプルに関する情報を受信することであって、前記情報は、患者サンプル場所と、患者識別子と、治療場所とを含む、ことと、
(b)前記受信された情報を使用して、ファージ試験実験室への前記患者サンプルの輸送を手配することと、
(c)前記ファージ試験実験室からの1つ以上の試験および/または分析結果を受信し、前記ファージ試験実験室からの1つ以上のファージを含むファージ混合物治療を生成することと、
(d)前記患者に前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するために、ファージ分注装置に前記ファージ混合物治療および前記患者識別子を送信することと
を行うように構成される、コンピュータ装置。
(項目13)
輸送を手配することは、前記患者サンプルを受容し、それを試験するための能力を有する最近傍のファージ試験実験室を識別することと、前記患者サンプルをサンプル集荷時間にサンプル集荷場所から輸送するための輸送サービスを予約することと、前記ユーザインターフェースに情報を送信し、ユーザが発送標識を印刷することを可能にし、前記ユーザに前記サンプル集荷時間および集荷場所を通知することとを含む、項目12に記載のコンピュータ装置。
(項目14)
ファージ分注装置からの新しいファージ備蓄に関する要求を受信し、前記ファージ分注装置への要求された新しいファージ備蓄の輸送を手配するようにさらに構成される、項目12または13に記載のコンピュータ装置。
(項目15)
ファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
(a)ユーザインターフェースを介して患者サンプルに関する情報を受信することであって、前記情報は、患者サンプル場所と、患者識別子と、治療場所とを含む、ことと、
(b)前記受信された情報を使用して、ファージ試験実験室への前記患者サンプルの輸送を手配することと、
(c)前記患者サンプルを試験および/または分析し、1つ以上のファージを含むファージ混合物治療を同定することと、
(d)前記ファージ混合物治療をファージ分注装置に送出することと、
(e)前記ファージ分注装置によって貯蔵される1つ以上のファージガラス瓶を使用して、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量を調製することと、
(f)前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注することと
を含む、方法。
(項目16)
輸送を手配することは、前記患者サンプルを受容し、それを試験するための能力を有する最近傍のファージ試験実験室を識別することと、前記患者サンプルをサンプル集荷時間にサンプル集荷場所から輸送するための輸送サービスを予約することと、前記ユーザインターフェースに情報を送信し、ユーザが発送標識を印刷することを可能にすることと、前記ユーザに前記サンプル集荷時間および集荷場所を通知することとを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記患者サンプルを試験および/または分析することは、プラークアッセイを実施することによってファージ/宿主感受性データを実験的に決定することを含む、項目15に記載の方法。
(項目18)
プラークのサイズ、濁度、透明度、および/またはハローの存在が、測定される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記患者サンプルを試験および/または分析することは、蛍光アッセイと、吸光アッセイと、透過アッセイとから成る群から選択される、測光アッセイを使用してファージ/宿主感受性データを実験的に決定することを含む、項目15に記載の方法。
(項目20)
ファージ混合物治療は、複数のファージを含み、各ファージは、異なる宿主範囲を有する、項目15に記載の方法。
(項目21)
ファージ混合物治療は、広い宿主範囲を有する1つ以上のファージと、狭い宿主範囲を有する1つ以上のファージとを含む、複数のファージを含む、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記複数のファージは、相互と共力して作用する、項目20または21に記載の方法。
(項目23)
前記ファージ混合物治療中の各ファージは、
(i)細菌増殖において遅延を引き起こすこと、
(ii)ファージ耐性菌増殖の出現を阻害または防止すること、
(iii)前記細菌を弱毒性にさせること、
(iv)前記細菌に1つ以上の薬物に対する感受性を回復させること、および/または
(v)前記細菌に対象内での増殖のための低減された適応度を示させること
のうちのいずれかを行う、項目17に記載の方法。
(項目24)
前記ファージ分注装置は、-40℃~-90℃に保たれる貯蔵部の中に貯蔵される複数の単回用量ファージガラス瓶を備え、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量を調製することは、前記受容されたファージ混合物治療に従って前記貯蔵部から1つ以上の単回用量ファージガラス瓶を選択することと、前記選択された1つ以上の単回用量ファージガラス瓶を解凍することと、混合し、前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量を生成することとを含む、項目17に記載の方法。
(項目25)
前記ファージ混合物治療の1回分以上の用量は、薬学的に容認可能な組成物として調合される、項目24に記載の方法。
(項目26)
各ガラス瓶が、前記貯蔵部から除去されるにつれて、保有量が、更新され、貯蔵されたファージの保有量レベルが、閾値量未満になった場合、新しいファージ備蓄に関する要求が、供給元に伝達される、項目24または25に記載の方法。
(項目27)
前記ファージ混合物治療が、調製され、分注するための準備ができると、警報が、生成され、前記調製されたファージ混合物治療が、認定されたユーザにのみ分注される、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記ファージ分注装置は、多剤耐性菌の選択された群の1つに対する有効性を伴う複数のファージを含む複数の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を備え、前記ファージ混合物の1回分以上の用量を調製することは、前記貯蔵部から1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を選択することと、前記選択された、1つ以上の事前調製されたファージ混合物治療のガラス瓶を解凍することとを含む、項目15に記載の方法。
(項目29)
ファージ分注システムであって、
(a)ファージ分注装置であって、前記ファージ分注装置は、少なくとも1つのファージを含有する複数のガラス瓶を備える貯蔵部と、随意の調製部と、分注部と、1つ以上のロボットシステムとを備え、前記1つ以上のロボットシステムは、前記貯蔵部から1つ以上のガラス瓶を除去し、前記随意の調製部に前記1つ以上のガラス瓶を移動させ、前記1つ以上のガラス瓶を混合し、薬学的に容認可能なファージ混合物治療を生成し、前記薬学的に容認可能なファージ混合物治療の1回分以上の用量を分注するように構成される、ファージ分注装置と、
(b)1つ以上のプロセッサ、メモリ、および1つ以上のプログラムであって、前記1つ以上のプログラムは、前記メモリの中に記憶され、前記1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、前記1つ以上のプログラムは、項目15から28のうちのいずれかに記載の方法を実行するための命令を含む、1つ以上のプロセッサ、メモリ、および1つ以上のプログラムと
を備える、ファージ分注システム。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の目的および特徴は、以下の発明を実施するための形態および付随の図面を参照してより深く理解されることができる。
【0031】
【
図1】
図1は、ファージ分注システムのある実施形態の概略図および動作フローチャートである。
【0032】
【
図2】
図2は、ファージ分注装置のある実施形態の概略図である。
【0033】
【
図3】
図3は、ある実施形態による、コンピューティング装置の概略図である。
【0034】
種々の図面における同一参照番号および記号は、同一要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の定義は、以下に記述される説明において使用される、具体的な用語に関して提供される。
(定義)
【0036】
本明細書および請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数の指示物を含む。例えば、用語「a cell(ある細胞)」は、その混合物を含む、複数の細胞を含む。用語「ある核酸分子」は、複数の核酸分子を含む。「あるファージ混合物」は、少なくとも1つのファージ混合物、および複数のファージ混合物、すなわち、1つを上回るファージ混合物を意味し得る。当業者によって理解されるように、用語「ファージ」は、単一のファージまたは1つを上回るファージを指すために使用され得る。
【0037】
本発明は、本発明の構成要素、および本明細書に説明される他の原料または要素「を備える」(非制約的に)またはそれら「から本質的に成り」得る。本明細書で使用されるように、「comprising(~を備える)」は、構造または機能において列挙される要素またはそれらの均等物、および列挙されていない任意の他の要素または複数の要素を意味する。用語「having(~を有する)」および「including(~を含む)」はもまた、文脈が別様に示唆しない限り、非制約的であると解釈されるべきである。本明細書で使用されるように、「consisting essentially of(~から本質的に成る)」は、発明が、付加的原料が本願発明の基本的かつ新規の特性を実質的に改変しない場合に限り、請求項に列挙されるものに加えて、原料を含み得ることを意味する。
【0038】
本明細書で使用されるように、「対象」は、脊椎動物であり、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物は、限定ではないが、ネズミ科動物、サル類、ヒト、家畜、競技動物、および愛玩動物を含む。他の好ましい実施形態では、「対象」は、齧歯動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、ハツカネズミ)、ネズミ科(例えば、ハツカネズミ)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、霊長類、サル類(例えば、サルまたは類人猿)、サル(例えば、キヌザル、ヒヒ)、または類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オラウータン、テナガザル)である。他の実施形態では、非ヒト哺乳動物、特に、従来、ヒトにおける治療の有効性を実証するためのモデルとして使用される哺乳動物(例えば、ネズミ科、霊長類、ブタ、イヌ科、またはウサギ科動物)が、採用され得る。好ましくは、「対象」は、任意の生物、例えば、細菌感染、特に、多剤耐性菌によって引き起こされる感染を被り得る、任意の動物またはヒトを包含する。
【0039】
本明細書において理解されるように、「それを必要とする対象」は、限定ではないが、多剤耐性菌感染を含む、細菌感染を被る任意のヒトまたは動物を含む。実際には、本方法は、具体的な病原性種を標的とするために使用され得ることが本明細書において考えられるが、本方法はまた、本質的には、限定ではないが、多剤耐性細菌性病原体を含む、全てのヒトおよび/または動物の細菌性病原体に対して使用されることができる。したがって、特定の実施形態では、本発明の方法を採用することによって、当業者は、多剤耐性(MDR)細菌性病原体を含む、多くの異なる臨床的に関連のある細菌性病原体に対して、個人に合わせられたファージ混合物を設計および作成することができる。
【0040】
本明細書において理解されるように、医薬組成物の「有効量」は、対象における治療上有益な応答を導出する、例えば、対象における細菌性病原体を根絶させるために好適な組成物の量を指す。そのような応答は、例えば、細菌感染と関連付けられる1つ以上の病的状態を防止するステップ、改善するステップ、治療するステップ、阻害するステップ、および/または低減させるステップを含み得る。
【0041】
本明細書に使用されるような用語「用量」または「投与量」は、対象への投与のために好適な物理的に離散した単位を指し、各投与量は、所望される応答を生産するように計算される、所定の量の医薬品有効成分を含有する。
【0042】
用語「約」または「略」は、当業者によって決定されるような特定の値に関して容認可能な範囲内であることを意味し、これは、部分的に、値が測定される、または決定される方法、例えば、測定システムの限界に依存するであろう。例えば、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは、最大10%、より好ましくは、最大5%、より好ましくは、依然として、最大1%の範囲を意味し得る。代替として、特に、生物学的システムまたはプロセスに関して、本用語は、ある値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、より好ましくは、2倍以内であることを意味し得る。別様に記載されない限り、用語「約」は、±1~20%、好ましくは、±1~10%、より好ましくは、±1~5%等の特定の値に関して、容認可能な誤差の範囲内であることを意味する。さらなる実施形態では、「約」は、±5%を意味するように理解されるべきである。
【0043】
ある範囲の値が、提供される場合、その範囲の上限および下限と、その記載される範囲における、任意の他の記載される、または介在する値との間の各介在値は、本発明の範囲内に包含されるものと理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、そのより小さい範囲内に含まれ得、また、記載される範囲内の任意の具体的に除外された限定を受けながら、本発明の範囲内に包含される。記載される範囲が限界のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれるものとする。
【0044】
本明細書に列挙される全ての範囲は、2つの値の「間の」範囲を列挙するものを含む、終点を含む。「約」、「概して」、「実質的に」、「略」、および同等物等の用語は、これが、絶対的なものではなく、先行技術を含めないように用語または値を修飾するものとして解釈されるべきである。そのような用語は、それらの用語が当業者によって理解されるように、それらが修飾する状況および用語によって定義されるであろう。これは、最低限でも、ある値を測定するために使用される所与の技法に関して予期される実験誤差、技法誤差、および器具誤差の程度を含む。
【0045】
本明細書において使用される場合、2つ以上の物品の列挙においてされるときの用語「および/または」は、列挙される特性のうちのいずれか1つが存在し得る、または列挙される特性のうちの2つ以上のものの任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、ある組成物が、特性A、B、および/またはCを含有するものとして説明される場合、組成物は、Aの特徴を単独で、Bを単独で、Cを単独で、AとBとを組み合わせて、AとCとを組み合わせて、BとCとを組み合わせて、またはAと、Bと、Cとを組み合わせて含有し得る。
【0046】
用語「ファージ感受性」または「感受性プロファイル」は、ファージによる、および/または増殖の阻止における感染および/または死滅に感受性である、細菌株を意味する。
【0047】
用語「ファージ非感受性」または「ファージ耐性(phage resistant)」または「ファージ耐性(phage resistance)」または「耐性プロファイル」は、ファージおよび/または増殖の阻止による感染および/または死滅に対して非感受性である、好ましくは、非常に非感受性である、細菌株を意味するように理解される。
【0048】
用語「中間ファージ感受性」は、ファージ感受性およびファージ非感受性菌株の感受性の間にある、ファージによる感染に対する感受性を呈する、細菌株を意味するように理解される。
【0049】
本明細書で使用されるように、「予測パターン」は、細菌の「感受性プロファイル」、「耐性プロファイル」、または「中間感受性プロファイル」と相関して関連付けられる、複数の細菌株および/または複数のファージ菌株内で同定される、ゲノムパターンである。
【0050】
本明細書で使用されるように、「ファージ/宿主特異性プロファイル」は、「ファージ/宿主感受性プロファイル」と同義的に使用され、複数の異なるファージに対する細菌の感受性または耐性に関連するデータを含む。ファージ/宿主特異性プロファイルは、実験的に導出され得る、計算的に予測され得る、またはある組み合わせとなり得る。
【0051】
本明細書において使用されるような、「治療用ファージ混合物」、「治療上有効なファージ混合物」、「ファージ混合物」または同様の用語は、それを必要とする対象に投与されると、細菌感染のために臨床的に有益な治療を提供し得る、複数のファージを含む組成物を指すように理解される。好ましい実施形態では、ファージ混合物は、異なる感受性プロファイルを有するファージを含むが、ファージ混合物はまた、単一のタイプのファージを含むことができる。好ましくは、治療上有効なファージ混合物は、感染性の親細菌株、および親細菌株の排除後に増殖し得る、新生耐性細菌株に感染することが可能である。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「組成物」は、限定ではないが、複数の精製されたファージを含む医薬組成物を含む、本明細書に開示されるような「ファージ混合物」を包含する。「医薬組成物」は、当業者によく知られており、典型的には、種々の従来の薬学的に容認可能な賦形剤、担体、緩衝剤、および/または希釈剤から選択される非活性成分と組み合わせて調合される、医薬品有効成分を含む。用語「薬学的に容認可能な」は、細胞、細胞培養物、組織、または生物等の生物学的システムと互換性のある、非毒性物質を指すために使用される。薬学的に容認可能な賦形剤、担体、緩衝剤、および/または希釈剤の実施例は、当業者によく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(最新版), Mack Publishing Company, Easton, Pa.において見出され得る。例えば、薬学的に容認可能な賦形剤は、限定ではないが、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、結合剤、安定剤、保存料、増量剤、吸着材、殺菌剤、洗浄剤、糖アルコール、ゲル化添加剤または増粘添加剤、香料、および着色料を含む。薬学的に容認可能な担体は、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、トレハロース、(油滴またはリポソーム等の)脂質凝集体、および不活性ウイルス粒子等の高分子を含む。薬学的に容認可能な希釈剤は、限定ではないが、水、生理食塩水、およびグリセリンを含む。
【0053】
本明細書において説明されるファージ混合物治療および組成物を使用して治療されるべき細菌は、対象に健康上の脅威をもたらす任意の細菌性病原体を含む。これらの細菌は、限定ではないが、「ESKAPE」病原体(エンテロコッカスフェシウム、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、アシネトバクターバウマンニ、緑膿菌、およびエンテロバクター属細菌)を含み、これは、多くの場合、本質的に院内性であり、重症の局部および全身の感染を引き起こし得る。ESKAPE病原体の間で、アシネトバクターバウマンニは、病院の集中治療室内で容易に拡散される、グラム陰性の、莢膜形成性日和見病原体である。多くのアシネトバクターバウマンニの臨床的分離株もまた、MDRであり、これは、対応可能な治療の選択肢を厳しく制限し、外傷における治療不可能な感染が、多くの場合、延長された治癒時間、徹底的な外科手術的創面切除の必要性、ある場合には、さらなる、または完全な四肢切断をもたらす。さらに好ましい細菌株は、ガレリアメロネラを含む。
【0054】
当業者は、本明細書に説明される方法を受ける細菌が、限定ではないが、多剤耐性菌株を含むことを理解するであろう。本明細書において理解されるように、用語「multidrug resistant(多剤耐性)」、「multiple drug resistant(多剤耐性)」、「multiple drug resistance(多剤耐性)」(MDR)および同様の用語は、本明細書において同義的に使用され得、かつ当業者によく知られており、すなわち、多剤耐性菌は、複数の抗菌性薬物、例えば、抗生物質に対する耐性を実証する、生物である。
【0055】
好ましい実施形態では、MDR細菌の実施例は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)である。
【0056】
本明細書において理解されるように、用語「種々の源」は、ファージが、限定ではないが、細菌が繁殖する可能性がある任意の位置を含む、環境内に見出され得る、多種多様な異なる位置を含む。事実上、ファージは、環境内に普遍的に豊富に存在し、新しいファージの単離を非常に容易にする。そのようなファージの成功した単離に影響を及ぼす主要因は、宿主としての役割を果たすための臨床的に関連のある細菌性病原体のロバストな収集の可用性、および種々の環境サンプリング用地へのアクセスである。
【0057】
着目細菌性病原体に特有の溶菌ファージを急速に単離し、それを増幅させるためのスクリーニング方法が、採用されることができ、それらの治療上の可能性が、調査されることができる。可能性として考えられる源は、例えば、土壌、海水、動物の腸(例えば、ヒトの腸)等の環境における自然源、および未処理の下水および排水処理プラントからの水等の人工源を含む。感染患者からの臨床サンプルもまた、ファージ源としての役割を果たし得る。一実施形態では、ファージの種々の源は、土壌と、排水処理プラントからの水と、生下水と、海水と、動物およびヒトの腸とから成る群から選択され得る。また、ファージは、全世界の種々の異なる場所からのあらゆる場所、例えば、米国内および国際的に調達され得る。好ましくは、ファージは、土壌、水処理プラント、生下水、海水、湖、川、小川、淀んだ汚水溜め、動物およびヒトの腸、または糞便物質、有機担体、生物膜を含む、種々の環境源、または医療/病院源から単離されることができる。
【0058】
本明細書において理解されるように、概念「明確に異なる、かつ重複する細菌宿主範囲」は、所与のファージに関して特有の細菌宿主範囲を指すが、これは、異なるファージの明確に異なる宿主範囲と重複し得る。例えば、本概念は、各円が、個々のファージの宿主範囲を表し得、1つ以上の他のファージの宿主範囲と交差し得る、ベン図の集合に類似する。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「精製される」は、限定ではないが、生体物質、例えば、内毒素、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、または細胞内オルガネラ等の、例えば、毒素、および/または混合物の有効性に干渉し得る、他の不純物、例えば、金属または他の微量元素を含む、組成物中に不要な物質を実質的に含まない調製物を指す。本明細書で使用されるように、「高力価および高純度」および「非常に高力価および非常に高純度」のような用語は、当業者によく知られている純度および力価の程度を指す。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「ガラス瓶」は、溶液またはファージ混合物中に個々のファージを含有または貯蔵し、蓋を含むために使用され得る、ある範囲の容器を包含する。ガラス瓶は、単回用量容器または多回用量容器であってもよい。アンプルと、他の密閉してシールされたガラス瓶とを含む、単回用量容器は、シールされてもよい。多回用量容器は、具体的な濃度におけるファージを貯蔵してよい、またはパーティション化された内部を備えてもよい。ガラス瓶は、ファージを-80℃または-90℃等の低温を含む、長時間にわたった生存可能な状態で貯蔵し得る、好適なガラス、プラスチック、複合物、または金属から作製されてもよい。
【0061】
本明細書で使用されるように、用語「決定するステップ」は、多種多様な作用を包含する。例えば、「決定するステップ」は、計算するステップ、算出するステップ、処理するステップ、導出するステップ、調査するステップ、参照するステップ(例えば、表、データベース、または別のデータ構造を参照するステップ)、確認するステップ、および同等物を含み得る。また、「決定するステップ」は、受信するステップ(例えば、情報を受信するステップ)、アクセスするステップ(例えば、メモリ内のデータにアクセスするステップ)、および同等物を含み得る。また、「決定するステップ」は、解決するステップ、選択するステップ、選定するステップ、確立するステップ、および同等物を含み得る。
ファージ分注システム
【0062】
図1を参照すると、ファージ分注システム1のある実施形態の概略図および動作フローチャートが、示される。ファージ分注システム1は、治療を行う医師と、患者サンプルを試験し、ファージ混合物治療を推奨する、ファージ実験室と、臨床医(例えば、薬剤師、看護師、または治療を行う医師)に対するファージ混合物治療の1回分以上の用量の実際の分注との相互作用を制御し、それを調整するように構成される。本実施形態では、ファージ分注システム1は、ユーザインターフェース10と、ファージ治療コンピューティングシステム20と、ファージ実験室30と、分注キオスク等のファージ分注装置40とを備える。
ファージ治療コンピューティングシステムおよびユーザインターフェース
【0063】
治療を行う医師が、ファージベースの治療から恩恵を受け得る患者を識別すると、彼らは、ユーザインターフェース10にアクセスし、ファージ実験室30による患者サンプル11の査定を要求する。ユーザインターフェースは、患者識別子、および患者および彼らの状態、および患者サンプル場所、および患者および医師が位置する場所、または彼らが治療されるべき場所等の物流詳細に関する任意の他の関連のある情報を収集するように構成される。ユーザインターフェースはまた、患者記録システム等の他のコンピューティングシステムと相互作用し、任意の要求される情報の収集を補助するように構成されてもよい。同様に、登録された、または以前のユーザに関して、ユーザインターフェースは、ファージ治療システム20に対して、すでに既知の既存の詳細(例えば、住所)を予め記入または使用してもよい。治療を行う医師用のユーザインターフェースは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピューティングタブレット、またはスマートフォン等の、医師と関連付けられるローカルコンピューティングデバイス上で起動する、ウェブブラウザまたはローカルアプリケーションであってもよい。ユーザインターフェースは、インターネット等のパブリックネットワークを経由することを含む、有線または無線リンク等の通信リンクを経由して、データをファージ治療コンピューティングシステム20に送信するように構成される。データ要求は、患者に関する守秘義務を確実にするために暗号化されてもよい。また、ユーザインターフェースへのデータ打込は、関連のある情報の知識を伴う、治療を行う伴う医師または別の人(例えば、看護師または管理者)を介し得ることを認識されたい。
【0064】
ファージ治療コンピューティングシステム20は、データベース21と、要求を受信し、患者サンプル詳細22をデータベース21の中にロギングする、通信インターフェースとを備える。サンプル試験モジュール23は、患者サンプルを試験するための好適なファージ実験室30を決定し、初期の試験サンプル場所からファージ実験室へのサンプルの輸送を調整する。いくつかの実施形態では、あるサービス面積を横断して分散される複数のファージ実験室30が、存在し得る。サンプル試験モジュール23は、治療を行う医師の場所、患者の場所、または患者サンプル収集設備であり得る、試験サンブル場所の地理的位置を決定し、サンプルを受容し、それを試験するための能力を有する、最近傍のファージ試験実験室30を決定することができる。サンプル試験モジュール23はまた、患者サンプルをファージ試験実験室30まで効率的に輸送し得る、宅急便(登録商標)または輸送サービスを決定する。ファージ治療コンピューティングシステム20は、ファージ実験室30と同じ場所に位置してもよい、またはユーザが複数の場所からログインし、システムと相互作用し得る、クラウドベースおよびデータセンターベースの実装を含む、分散型システムであってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、サンプル試験モジュール23は、詳細を印刷するステップを提供し、ユーザインターフェース10は、次いで、患者サンプル12のための発送標識を印刷するために使用され、サンプル集荷時間が、宅急便(登録商標)または輸送サービス13とともにスケジューリングされる。サンプルは、次いで、初期の試験サンプル場所から収集され、スケジューリングされた時間にファージ実験室に輸送される。他の実施形態では、サンプルが、すでに同定および発送を促進するための情報でマーキングまたはタグ付けされている場合、発送標識の印刷は、スキップされ得る。例えば、サンプル収集設備が、好適な詳細を伴う標識を印刷し、これを適用してもよく、これは、宅急便(登録商標)によって直接使用されることができる。別の実施形態では、サンプル収集設備は、患者サンプルに一意の識別情報を含有する、識別タグを適用してもよい、またはサンプル容器は、そのような識別タグを組み込んでもよい。識別タグは、印刷されたバーコードまたはQRコード(登録商標)、または近距離またはRFIDタグ等の無線の無線周波数(RF)タグ、または他の適切なタグであってもよい。本情報は、ユーザインターフェース、またはユーザインターフェースを提供するコンピューティングデバイスと関連付けられる、適切な読取または走査デバイスを使用して、ファージ治療コンピューティングシステム20に提供されることができる。本情報は、次いで、集荷において識別タグを走査し得る宅急便(登録商標)に情報を提供すること等によって、患者サンプルの輸送を調整するために使用されることができる。
ファージ実験室
【0066】
患者サンプルは、次いで、指定されたファージ実験室30において受容され(34)、これは、ファージ治療コンピューティングシステム20に戻すように報告され、データベース21の中にロギングされる。患者サンプルは、次いで、試験および/または分析され(35)、結果が、ファージ治療コンピューティングシステム20に提供され、患者サンプル中の細菌に対する潜在的な有効性を伴う1つ以上のファージを含む、ファージ混合物治療26を同定する。患者サンプルの試験および分析は、下記に概説されるように、患者サンプルのサンプルを増殖させるステップと、複数の候補ファージの有効性を評価するステップとを含んでもよい。例えば、これは、アッセイを実施し、患者サンプル中の細菌のファージ/宿主感受性(または耐性)プロファイルを決定するステップを含んでもよい。同様に、患者サンプルの試験および分析は、患者サンプル中に存在する細菌を同定するステップを含んでもよい。サンプルが、所与のファージによる感染を受けやすい細菌を含有する場合、そのファージは、ファージ混合物治療の中に含まれることができる。
【0067】
ファージの「細菌宿主範囲」を決定するステップは、所与のファージによる感染を受けやすい細菌株を同定するプロセスを指す。所与のファージの宿主範囲は、具体的な菌株レベルに特有である。ファージの細菌宿主範囲を決定するためのスクリーニングが、限定ではないが、ロボット工学および他のハイスループット方法論を使用するアッセイを含む、当業者によく知られている(かつ実施例において説明されるような)、従来の方法を使用して実施されてもよい。
【0068】
(例えば、10個を上回る細菌株に感染することが可能な)広い宿主範囲を伴うファージは、一般に、該ファージのための受容体が、菌株間で共通であることを示す。(例えば、5個未満の細菌株に感染することが可能な)狭い宿主範囲は、一意の受容体を示し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、患者サンプルの試験は、細菌の「ファージ/宿主感受性プロファイル」を決定するステップを含み、あるファージの細菌宿主範囲を分析するために使用される同一のタイプのアッセイに依拠する。ここでは、目標は、複数の異なるファージに対する1つの細菌株をスクリーニングし、細菌(「感受性プロファイル」)に感染する、および/またはそれを溶解することが可能であるそれらのファージ、対細菌(「耐性プロファイル」)に感染する、および/またはそれを溶解することが不可能であるそれらのファージを分類することである。
【0070】
一実施形態では、患者サンプルを試験し、治療を生成するために使用されるファージが、望ましくない、有害な、および/または有毒な特性に関して予めスクリーニングされる。望ましくない、有害な、および/または有毒な特性を有するものとして同定されたファージは、試験および治療のために使用される組成物から除外される。そのような望ましくない、有害な、および/または有毒な特性の実施例は、限定ではないが、毒素遺伝子を担持するファージ、溶原性性質を保有する、および/または溶原性遺伝子を担持するファージ、すでに患者の中に存在する因子と異なる、細菌の毒性因子遺伝子または抗生物質耐性遺伝子を形質導入し得るファージ、任意の抗生物質耐性遺伝子を担持する、または細菌株に抗生物質耐性を授与し得るファージ、および哺乳類系において拮抗的免疫応答を導出する、および/または強いアレルギー応答を誘発するファージを含む。
【0071】
ファージ/宿主感受性プロファイルを作成するときに考慮され得る殺菌作用の実施例は、細菌増殖における溶解、遅延、またはファージ耐性菌の増殖の出現の欠如を含む。さらに好ましい実施形態では、殺菌作用は、プラークアッセイによって測定されることができる。プラークアッセイから導出され得るデータは、限定ではないが、サイズ、測定されるプラークの濁度および/または透明度、および/またはプラークの周囲のハローの存在を含む。
【0072】
さらに好ましい実施形態では、殺菌作用は、(a)細菌サンプル上に透明点プラーク生成し得るファージ、(b)プレート上で急速ストリーク法を使用して溶解特性を実証するファージ、(c)小規模または大規模バッチアッセイにおける、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、または0.1~0.5のOD600吸光度差の濁度の溶菌、(d)静菌性ファージ感染における、少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2、または0.1~0.2のOD600吸光度差の濁度の細菌増殖における遅延、(e)感染後少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、または4~6時間にわたるファージ耐性菌増殖の出現の欠如、(f)宿主範囲クイック試験における、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、または4~6時間にわたるファージ感染後の生存細菌の低減された増殖曲線、または(g)宿主範囲クイック試験からの、ファージ感染細菌のOmnilogバイオアッセイを使用した、活性細菌代謝からのテトラゾリウム色素ベースの色変化における、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、または50~200の相対呼吸単位の防止または遅延によって測定されることができる。
【0073】
患者サンプルの試験および分析はまた、患者サンプル中に存在する細菌を同定するステップと、本細菌と、所与のファージによる感染を受けやすいことが公知である細菌の類似性を比較するステップとを含んでもよい。同一の細菌または非常に類似する細菌が、患者サンプル中に存在する場合、そのファージは、ファージ混合物治療の内に含まれることができる。類似性が、(例えば、ユーザインターフェースを介して取得される患者の記録を介して)治療を行う医師から、または限定ではないが、抗生物質耐性、種々の糖分を利用するための能力、種々の炭素源を利用するための能力、種々の塩類で増殖するための能力、酸素が存在する状態または存在しない状態で増殖するための能力、または細菌の運動性を含む、治療実験室30において行われる実験を通してのいずれかで取得される、任意の臨床的な遺伝子型および/または代謝情報に基づいて査定されてもよい。
【0074】
試験および分析はまた、患者サンプルを配列決定するステップを含んでもよい。これは、バイオインフォマティクスまたは配列分析を実施し、候補ファージを同定し、かつ後続のサンプルの後のバイオインフォマティクスベースの分析を補助し得る(すなわち、いったん治療結果が既知になると)データベースを蓄積するステップを含んでもよい。バイオインフォマティクス分析は、具体的なファージ有効性と関連付けられることが既知である配列またはモチーフに関して検索するための配列分析を含んでもよく、これらのファージは、次いで、試験または治療のために優先されてもよい。配列分析はまた、患者サンプル中の細菌が、公知の有効なファージ混合物治療を伴う細菌に類似することを同定し得、これらのファージは、次いで、試験または治療のために優先されてもよい。
【0075】
いったんファージ混合物治療が、同定されると(26)、提案された治療を詳述する報告が、生産され、これは、ユーザインターフェース10を介して治療を行う医師に提供される(17)。治療を行う医師は、次いで、提案された治療が、調製され、患者が入院している病院または治療設備等の患者の治療場所、または治療を行う医師の診療室、またはそこから分注されたファージ混合物治療が輸送される、または患者に提供され得る、ファージ実験室30に位置する、分注キオスク等のファージ分注装置40によって分注されることを可能にする、提案された治療を承認または認定することができる(18)。
ファージ分注装置(ファージキオスク)
【0076】
ファージ分注装置40は、治療要求を受信し(42)、患者を治療するためのファージ混合物用量を調製するように構成される。
【0077】
図2は、ファージ分注装置のある実施形態の概略図である。本実施形態では、ファージ分注装置は、構成要素を単一ユニットの中に統合する、キオスク200である。しかしながら、他の実施形態では、ファージ分注装置40は、他の構成の中に実装される、または複数の構成要素を備え得、1つ以上の部屋を横断して広げられてもよい。
【0078】
ファージ分注装置200は、貯蔵部210と、調製部220と、分注部230とを備える。コンピューティング装置233は、コンピューティング装置上で実行する、制御モジュール234を備え、治療要求を受信するように構成され、装置200による1つ以上のファージ混合物用量242の調製および分注を調整する。1つ以上のファージ混合物用量が、同時に調製されることができる。コンピューティング装置はまた、ユーザが、治療を承認する(18)、治療の調製の進行を確認する、および調製されたファージ混合物用量(または複数回分の用量)の分注を認定する等、装置と相互作用することを可能にする、ユーザインターフェースを提供する。コンピューティング装置は、有線または無線リンク236を介してシステムの種々のコンポーネントに接続され、制御モジュールが種々の機能性コンポーネントの動作を制御することを可能にする。これは、ロボットアーム、RFIDリーダ、コンベヤ、およびドア等のコンポーネントを直接制御する、またはローカルマイクロコントローラに制御コマンドを送信し、ローカル制御下で動作を作動させるためのものであってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、治療要求は、治療を行う医師がユーザインターフェース10を介して治療を承認すること(または認定すること)(18)に応答して生成される、治療承認またはメッセージである。いくつかの実施形態では、治療要求は、ファージ分注装置40がファージ混合物治療の1回分以上の用量を直接調製および分注することを可能にするために、承認されたファージ混合物治療に関する情報を配信するステップを含む。他の実施形態では、治療要求は、ファージ分注装置40がファージ治療コンピューティングシステムから情報を配信することを要求することを可能にし、ファージ分注装置40がファージ混合物治療の1回分以上の用量を直接調製および分注することを可能にする、情報を識別するステップを含む。一実施形態では、ファージ混合物治療は、ファージ治療コンピューティングシステム20によって、一意の治療識別子に割り当てられる。本一意の識別子は、治療を行う医師への報告の中に、かつファージ分注装置に提供される承認治療要求の中に含まれる。ファージ分注装置は、次いで、本識別子を、ファージ混合物治療の調製および分注を可能にするために要求される情報を受信するための、ファージ治療コンピューティングシステムに送信する。
【0080】
いくつかの実施形態では、ファージ混合物治療が、同定されると、ファージ治療コンピューティングシステムは、ファージ分注装置40が、ファージ混合物治療の1回分以上の用量を直接調製および分注することを可能にするために、ファージ混合物治療分注情報を直接送信する。いくつかの実施形態では、情報は、一意の治療識別子を含み、治療要求は、一意の治療識別子を含み、ファージ治療コンピューティングシステムが以前に受信された分注情報を参照することを可能にする。いくつかの実施形態では、ファージ混合物治療情報は、提案された治療が治療を行う医師に提供される(17)のと同一の時間頃にファージ分注装置40に送信される。これは、分注装置が、治療要求が受信されるとすぐに(例えば、承認が提供されるとすぐに)治療を調製し始める、および/または治療要求が受信されるとすぐにより迅速な分注を可能にするために任意の調製を実施し得るため、より急速な分注を可能にする。
【0081】
ファージ分注装置は、ガラス瓶またはシールされ得る類似する容器(例えば、アンプル)の中に貯蔵される、複数のファージの備蓄を備える。各ガラス瓶が、精製されたファージの1つ以上の菌株を含有し、複数のガラス瓶が、温度制御された貯蔵ボックスまたは容器の中に貯蔵または収容される。ファージ備蓄は、それぞれが単一のファージを伴う、予め充填された単回用量ガラス瓶、複数のファージで充填された、予め充填された単回用量ガラス瓶、具体的なファージ混合物で充填された、予め充填された単回用量ガラス瓶、またはある組み合わせを備えてもよい。いくつかの実施形態では、単回用量ガラス瓶は、アンプルまたは他の密閉状態にシールされる容器である。他の実施形態では、ガラス瓶のうちのいくつかまたは全てが、多回用量ガラス瓶であってもよい。いくつかの実施形態では、ファージ備蓄は、-40℃~-90℃の範囲内の温度等の超低温に保たれる、貯蔵部210のラッキングシステム211の中で維持される。いくつかの実施形態では、貯蔵部は、実質的に-80℃またはさらに-90℃に維持される。いくつかの実施形態では、貯蔵部は、内部のラッキングシステム211を伴って構成される、超低温冷凍庫である。いくつかの実施形態では、各ガラス瓶(またはアンプル)は、1ml~50mlの体積を伴う無菌充填調製物を含有する。各調製物は、精製されたファージの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、各調製物は、106~1014プラーク形成単位(PFU)の1つ以上のファージを含む。ガラス瓶は、アンプル(例えば、密閉状態にシールされたガラス瓶)として供給され、注入に関するFDA許容レベルを下回る内毒素レベルを含有してもよい。ガラス瓶はまた、識別タグを含有してもよい。
【0082】
ファージ分注装置内の制御モジュール234は、貯蔵部210からの1つ以上のファージガラス瓶43の回収を制御し、ロボットシステムまたは装置を使用してそれらを調製部220に移動させる。いくつかの実施形態では、電子カタログまたは保有量管理システムが、備蓄レベルを追跡および/または監視し、貯蔵部内のガラス瓶の場所を記憶するために使用される。ガラス瓶が、ファージ備蓄41から除去されるにつれて、保有量が、更新され(44)、特定のファージの少ない備蓄が、識別されると、新しい備蓄に関する要求(45)が、ファージ実験室30等の供給元に送信される。新しいファージ備蓄が、到着すると、これは、貯蔵部の中に装填され、保有量が、更新される。例えば、貯蔵ボックス210へのドアまたは入口に位置する1つ以上のセンサが、識別タグを使用して各ガラス瓶の貯蔵ボックス210へのかつそこからの追加および除去を検出するために使用されてもよい。例えば、センサは、RFIDリーダまたはバーコードスキャナであってもよい。カタログシステムはまた、貯蔵ボックス210内の各ガラス瓶の場所、例えば、ベイ番号および/またはラッキングシステム内の行/列アドレスを記録または記憶するように構成されてもよい。
【0083】
一実施形態では、貯蔵部または冷凍庫210は、一連のラックまたはベイ211として構成され、選択器アーム等のロボット装置212が、適切なラックアドレスまたはベイから選択されたガラス瓶を除去し、ガラス瓶214を、貯蔵部210および調製部220に跨架するコンベヤベルト215上のトレイ213の中に設置するように構成される。引き戸等のドア221が、調製部220から貯蔵部210を分離する。要求されたサンプルの全てが、ロボット選択器アームによって冷凍庫211から除去され、トレイ213の中に設置されると、ドア221が、開放され、コンベヤ215が、トレイ213を調製部220の中に移動させるように動作される。種々のロボット構成が、本機能性を実装するために使用されることができる。例えば、各ベイは、単一のガラス瓶の直径に合致する幅と、ロボットによって制御される正面ゲートと、可動背面パネルとを伴う箱状の長方形空間として構成され得る。ガラス瓶は、ベイの中に単一の列に貯蔵され、正面ゲートを開放し、最前列のガラス瓶がベイから外に押動されるまで背面からガラス瓶を押動することによって分注される。これは、ロボットグリッパのアームの中に押動される、またはコンベヤまたは可動トレイ上に設置され得る。装填は、逆の動作である。ガラス瓶の既知のサイズを使用して、背面パネル(または背面押動器)の場所が、ベイの中に貯蔵されるガラス瓶の数を示すために使用されることができる。別の実施形態では、ベイは、固定された数のガラス瓶(例えば、5×2個のアレイ)を受容および支持するための場所構造を伴うトレイを備え得る。装填および装填解除は、トレイの完全な除去および装填面積への移動によって実施され得る、またはトレイが、ベイから延在し(および後に後退し)、ロボット選択器アームが場所構造からトレイの中にガラス瓶を設置および除去することを可能にするように構成され得る。各場所構造内のセンサ(すなわち、存在または不在を示す)等の種々の機構が、場所構造が空であるまたは充填されていることを追跡するために使用されることができる。代替として、ロボット選択器は、具体的な場所においてガラス瓶の識別タグを検出または読み取るように試みる、スキャナを含み得る。コンピュータビジョン技法等の他の技法は、画像を捕捉および処理し、占有された場所を決定する。
【0084】
回収されたファージガラス瓶は、コンベヤ215から、任意の凍結されたガラス瓶が、(必要である場合)解凍され、次いで、混合されることが許容される、調製台223まで移動される。いくつかの実施形態では、調製部は、4℃~-10℃の温度に維持される、冷蔵部である。好ましい実施形態では、ガラス瓶の解凍は、貯蔵部210と調製部220との間の温度差に起因する、自然対流を通してもよい、またはガラス瓶は、ガラス瓶のより急速な解凍を補助するための槽または他の好適な解凍容器の中に設置されてもよい。任意の単回用量ガラス瓶の内容物が、調製台223上の調製容器241の中に空けられ、種々の従来の薬学的に容認可能な賦形剤、担体、緩衝剤、および/または希釈剤から選択される任意の他の不活性成分に加えて混合される。1つ以上のロボットアーム222等のロボット装置が、用量の混合および調製を制御するために、調製部内でガラス瓶を移動させる。いくつかの実施形態では、調製容器241は、分注容器242であり、内容物全体が、ファージ混合物用量を表す。他の実施形態では、内容物全体または所定の量が、分注容器に移送され、ファージ混合物用量242を生成する。
【0085】
いったん結果として生じるファージ混合物用量が調製されると、ファージ混合物の用量が分注される準備ができたことを示す警報が、生成される。これは、薬剤師、看護師、および/または治療を行う医師等の、患者を治療することに関わる1人以上の臨床医等の、1つ以上の人に送信されてもよい。警報を受信した薬剤師等の認定されたユーザが、認証情報を分注装置のユーザインターフェースに提供し、ファージ混合物用量が、分注容器48の中に分注される。本ファージ混合物用量は、次いで、患者を治療するために使用される。分注するステップは、ロボットアーム222が調製されたファージ混合物用量242をコンベヤ224上の分注容器の中に設置するステップを含んでもよい。ドア231が、分注部230から調製部220を分離する。ドア231は、開放され、コンベヤは、調製されたファージ混合物用量を分注容器242の中に移動させ、分注するように動作される。RFIDリーダ等のリーダが、分注容器242の識別子を登録する。
【0086】
いくつかの実施形態では、治療の有効性が、ファージ治療コンピューティングシステムに報告され(49)、将来の患者のためのファージ混合物治療を同定するステップを補助する。本有効性は、有効である、または有効ではない等の、治療を行う臨床医によるバイナリ査定であってもよい、または患者の応答を文書化するための試験結果と、見解とを含むさらに詳細な医療履歴が、提供されてもよい。そのような情報は、次いで、機械学習または他の査定システムの中に統合され、将来の患者のためのファージ治療を同定するステップを補助する、または安全性および有効性を監視することができる。
【0087】
一実施形態では、ラッキングシステム211は、数百個、または数千個、または数万個の単回用量ファージガラス瓶を貯蔵するように構成される。一実施形態では、ラッキングシステムは、各ベイが、具体的な単回用量ファージガラス瓶の複数のサンプルを貯蔵する、種々のベイに分割される。例えば、本システムは、それぞれが、10個の同じ単回用量ファージガラス瓶を貯蔵し、6,000回分の単回用量のシステム能力を与える、(例えば、24×25の行列、または50×12の行列における)600個のベイとして構成されてもよい。加えて、本システムは、それぞれが、特異性の細菌性病原体を標的とするための複数のファージを含有する、複数の予め混合/調製されたファージ治療混合物を貯蔵してもよい。例えば、本システムは、6つの主要な多剤耐性(MDR)病原性細菌のそれぞれに関して、予め混合/調製されたファージ治療混合物の20個のガラス瓶を貯蔵し得る。これらの予め混合/調製されたファージ治療混合物は、したがって、いったん患者が、これらのMDR病原性細菌のうちのいずれかに感染したとして識別されると、即座に分注されることができる。
【0088】
種々のロボットシステムが、ファージ分注装置の周囲でガラス瓶および物質を移動させるために使用され得る。これらは、ロボットアーム、XYおよびXYZプラットフォーム、コンベヤ、ピッカー、グリッパ等を備えてもよい。ラックは、コンピュータ選択可能なベイを伴うロボットラックであってもよい。
【0089】
貯蔵部内の各ガラス瓶214は、識別および追跡目的のための、バーコードまたはRFIDタグを提供されてもよい。RFIDリーダは、サンプル装置内の種々の方略的な点に位置してもよい。例えば、スキャナが、各ガラス瓶が、これが貯蔵ラック211から除去され、トレイ213の中に設置されるにつれて走査されるように、コンベヤ215に隣接して設置されてもよい。IDが、次いで、(通信リンク236を介して)制御モジュール234に提供され、保有量を更新し、要求に応じて順序付けを開始する。同様に、リーダが、調製台223に隣接して設置され、ガラス瓶214の空き動作を記録してもよい。さらに、分注容器242は、分注するときにリーダ232によって走査される、バーコードまたはRFIDタグを提供されてもよい。
【0090】
分注キオスクは、多数の病院薬局または治療センターにおける敷設を可能にし、いったん好適なファージ混合物治療が同定されると、急速な治療を可能にする、大型冷凍庫または冷蔵庫ユニットのサイズ(例えば、数立方メートル)等の比較的に小型のユニットの中に収容されることができる。分散型またはクラウドベースのファージ治療コンピューティングシステム20は、治療を行う医師および臨床医がシステムにログインし、患者のためのファージベースの治療を急速に手配することを可能にする。いったん患者サンプルの試験が実施されると(24~48時間かかり得る)、結果が、治療を行う医師および/またはファージ分注装置に急速に提供され、患者の急速な治療を促進する。
組成物および治療方法
【0091】
別の側面では、本発明は、ブロック26において説明されるプロセスにおいて同定されるファージ(ファージの混合物を含む)を含む、組成物(「混合物」)に関する。特定の実施形態では、組成物は、自然界には見出されない、非常に高力価および純度の治療上有効なファージ混合物である。
【0092】
当業者によって理解されるように、医薬組成物中に含まれる薬学的に容認可能な付加的成分のタイプおよび量は、例えば、組成物の所望される投与経路、および所望される物理的状態、溶解性、安定性、生体内の放出率に応じて変動し得る。
【0093】
本明細書において想定されるように、ファージ混合物、特に、ファージ混合物の医薬組成物は、対象への投与のために好適な重量または体積の単位におけるファージのある量を含む。対象に投与される組成物の体積(投与量単位)は、投与の方法に依存し、当業者によって判別可能である。例えば、注射液の場合では、投与される体積は、典型的には、0.1~1.0ml、例えば、約0.5mlであってもよく、注入される生成物中の最大限の許容可能な内毒素レベルは、70kgの人において5EU/kg/時間または350EU/時間である。
【0094】
静脈注射、皮膚注射、皮下注射、または他の注射による投与のために、調合薬は、典型的には、好適なpHおよび安定性の非経口的に容認可能な水溶液の形態にある、または当業者によく知られている、等張性賦形剤および薬学的に容認可能な安定剤、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、または他の添加剤を含有し得る。
治療方法
【0095】
本発明の方法に従って生成されるファージ混合物は、対象における細菌感染または環境における細菌汚染を治療するために使用されることができる。そのような治療方法は、本明細書に説明される方法に従って生成されたファージ混合物治療の用量の有効量の、それを必要とする対象への投与を含む。
【0096】
活性化合物または薬品の適切な投与量は、患者間で変動し得ることを理解されたい。最適投与量を決定するステップは、概して、投与の任意のリスクまたは有害な副作用に対する治療上の利点のレベルの平衡を伴うであろう。選択される投与量レベルは、限定ではないが、投与経路、投与時間、組み合わせられて使用される、活性化合物、他の薬物、化合物、および/または材料の排泄率、および患者の年齢、性別、体重、体調、健康全般、および以前の医療履歴を含む、種々の要因に依存するであろう。多数の活性化合物および投与経路が、最終的には医師の裁量によるであろうが、概して、投与量は、実質的な有害または有毒な副作用を引き起こすことなく、療法部位において活性化合物の濃度を達成することになるであろう。
【0097】
一般には、活性化合物または薬品の好適な用量は、体重1kgあたり約1μgまたはそれ未満~約100μg以上のものの範囲内である。一般的な指針として、本明細書に説明される方法に従って生成されるファージ混合物の用量の好適な量は、1回分の投与量あたり約0.1μg~約10mgの量であり得る。
【0098】
加えて、ファージ混合物の用量は、種々の投与形態で投与されることができる。これらは、例えば、選択されたpHに緩衝され得る、無菌等張性水溶液、懸濁液、乳濁液、または粘性組成物等の、非経口、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内(例えば、エアロゾル)または静脈内投与(例えば、注射液投与)のための調製物を含む、液体調製物および懸濁液を含む。特定の実施形態では、ファージ混合物は、限定ではないが、筋肉内、静脈内、皮下、または経皮注射による送達のための注射可能な組成物を含む、注射液として対象に投与されることが、本明細書において想定される。そのような組成物は、当業者によく知られている種々の医薬品賦形剤、担体、または希釈剤を使用して調合されてもよい。
【0099】
別の特定の実施形態では、ファージ混合物の用量は、経口的に投与され得る。本発明の方法による、投与のための経口調合物は、種々の投与量形態、例えば、溶液、粉末、懸濁液、タブレット、錠剤、カプセル、カプレット、徐放性製剤、または徐放性である、または液体充填物、例えば、それによって、腸への送達のために、ゼラチンが胃の中で分解される、ゼラチンで被覆された液体を有する調製物を含んでもよい。そのような調合物は、限定ではないが、マンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭素マグネシウムを含む、本明細書に説明される種々の薬学的に容認可能な賦形剤を含んでもよい。
【0100】
特定の実施形態では、経口投与のための組成物は、液体調合物であり得ることが、本明細書において想定される。そのような調合物は、例えば、胃壁との拡張された接触を提供することによって活性薬剤の粘膜送達を促進する、向上された粘性を伴う組成物を作成し得る、薬学的に容認可能な増粘剤を含んでもよい。従来の方法を採用し、医薬品賦形剤および試薬、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボマーを採用する、そのような粘着性組成物は、当業者によって作製され得る。
【0101】
例えば、圧搾噴霧ディスペンサ、ポンプディスペンサ、またはエアロゾルディスペンサの形態の鼻噴または呼吸(粘膜)投与のために好適な他の投与形態も、本明細書において想定される。直腸内または膣内送達のために好適な投与形態もまた、本明細書において想定される。構成体、抱合体、および組成物はまた、凍結乾燥されてもよく、従来の方法を使用して、再水和の有無にかかわらず、対象に送達されてもよい。
【0102】
本明細書において理解されるように、本明細書に説明される、ファージ混合物を対象に投与する方法は、異なる投与計画を介して、すなわち、対象に臨床的に意味のある利点を提供するために十分な量、様式、時間にわたって生じることができる。本発明との併用のための好適な投与計画は、従来の方法に従って当業者によって決定され得る。例えば、有効量が、単回用量、数日間の周期にわたって投与される、一連の多回用量、またはその後に用量を増加させるステップが続く、単回用量として対象に投与され得ることが、本明細書において想定される。
【0103】
投与計画、例えば、投与されるべき量、治療回数、および単位用量あたりの有効量等が、施術者の判断に依存し、対象に依存するであろう。この点について考慮されるべき要因は、対象の身体的および臨床的状態、投与経路、意図される治療目的、およびファージ混合物の効能、安定性、および有毒性を含む。当業者によって理解されるように、「用量を増加させる」は、初期投与量と同一の投与量、または異なる投与量を含み得る。実際には、一連の用量が、対象の中に所望される応答を生産するために投与されると、当業者は、その場合において、「有効量」が、1回分を上回る投与された投与量を含有し得ることを理解するであろう。
【0104】
本明細書における発明は、実施形態を参照して説明されているが、本明細書に提供されるこれらの実施形態および実施例は、本発明の原理および用途の例証にすぎないことを理解されたい。したがって、多数の修正が、例証的実施形態および実施例に成され得、他の配列もまた、添付の請求項によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、考案され得ることを理解されたい。本明細書に引用される全ての特許出願、特許、文献、および参考文献は、参照することによって、それらの全体として本明細書に組み込まれる。
コンピューティングシステム
【0105】
図3は、本明細書に説明されるコンピュータ実装プロセスのうちのいずれか1つを実施するように構成される、例示的コンピューティングシステムを描写する。本文脈では、コンピューティングシステムは、例えば、プロセッサと、メモリと、記憶装置と、入力/出力デバイス(例えば、モニタ、キーボード、ディスクドライブ、インターネット接続等)とを含んでもよい。しかしながら、コンピューティングシステムは、プロセスのいくつかまたは全ての側面を実行するための回路または他の特殊ハードウェアを含んでもよい。コンピュータシステムは、クラウドベースのコンピューティングシステムを含む、分散型システムであってもよい。いくつかの動作可能な環境では、コンピューティングシステムは、そのそれぞれが、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらのある組み合わせのいずれかでプロセスのうちのいくつかの側面を実行するように構成される、1つ以上のユニットを含む、システムとして構成されてもよい。例えば、ユーザインターフェースは、デスクトップコンピュータまたはタブレット型コンピュータ上に提供され得る一方、ファージ治療コンピューティングシステム20は、サーバベースのシステムであってもよい。ファージ分注キオスクは、ロボットアーム、コンベヤ、およびスキャナを制御するためのマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサベースのサブシステム、およびユーザインターフェースを提供し、ファージ治療コンピューティングシステム20内のデータベース21と通信するための、デスクトップコンピューティングシステムを備えてもよい。
【0106】
当業者はさらに、本明細書に開示される実施形態に関連して説明される種々の例証的論理的ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップが、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または命令、または両方の組み合わせとして実装され得ることを理解するであろう。ハードウェアおよびソフトウェアの本互換性を明確に例証するために、種々の例証的コンポーネント、ブロック、モジュール、回路、およびステップが、概してそれらの機能性の観点から上記に説明されている。そのような機能性がハードウェアまたはソフトウェアとして実装されているかどうかは、システム全体に課される特定の用途および設計制約に依存する。当業者は、特定の用途毎に種々の方法で説明される機能性を実装し得るが、そのような実装決定は、本発明の範囲からの逸脱をもたらすものとして解釈されるべきではない。
【0107】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法またはアルゴリズムのステップは、直接ハードウェアにおいて、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールにおいて、または2つのものの組み合わせにおいて具現化され得る。ハードウェア実装に関して、処理が、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書に説明される関数を実施するように設計される他の電子ユニット、またはそれらの組み合わせの中に実装されてもよい。コンピュータプログラム、コンピュータコード、または命令としても公知である、ソフトウェアモジュールが、いくつかのソースコードまたはオブジェクト区画、または命令を含有してもよく、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、ムーバブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク、または任意の他の形態のコンピュータ可読媒体等の任意のコンピュータ可読媒体の中に常駐してもよい。いくつかの側面では、コンピュータ可読媒体は、非一過性コンピュータ可読媒体(例えば、有形媒体)を含んでもよい。別の側面では、コンピュータ可読媒体は、プロセッサに一体化されてもよい。プロセッサおよびコンピュータ可読媒体は、ASICまたは関連するデバイス内に常駐してもよい。ソフトウェアコードは、メモリユニットの中に記憶されてもよく、プロセッサは、それらを実行するように構成されてもよい。メモリユニットは、プロセッサの中、またはプロセッサの外部に実装されてもよく、その場合、これは、当分野において公知であるような種々の手段を介してプロセッサに通信可能に結合されることができる。
【0108】
具体的には、
図3は、本明細書に説明されるプロセスを実施するために使用され得るいくつかのコンポーネントを伴う、コンピューティングシステム(300)を描写する。例えば、入力/出力(「I/O」)インターフェース330、1つ以上の中央処理ユニット(「CPU」)(340)、およびメモリ区分(350)。I/Oインターフェース(330)は、ディスプレイ(320)、キーボード(310)、ディスク記憶ユニット(390)、およびメディアドライブユニット(360)等の入力および出力デバイスに接続される。メディアドライブユニット(360)は、プログラム(380)および/またはデータを含有し得る、コンピュータ可読媒体(370)を読み取る/それに記述することができる。I/Oインターフェースは、所定の通信プロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、IEEE802.15、IEEE802.11、TCP/IP、UDP等)を使用して別のデバイス内の同等の通信モジュールと通信するためのネットワークインターフェースおよび/または通信モジュールを備えてもよい。
【0109】
本明細書に説明されるプロセスの結果に基づく、少なくともいくつかの値は、後続の使用のために保存されることができる。加えて、非一過性コンピュータ可読媒体が、コンピュータを用いて上記に説明されるプロセスのうちのいずれか1つを実施するための、1つ以上のコンピュータプログラムを記憶する(例えば、有形的に具現化する)ために使用されることができる。コンピュータプログラムは、例えば、汎用目的プログラミング言語(例えば、Pascal、C、C++、Java(登録商標)、Python、JSON等)またはある専門的な特定用途向け言語で記述されてもよい。
【0110】
また、提供されるものは、本明細書に説明される方法のうちのいずれかを実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体である。さらに提供されるものは、1つ以上のプロセッサと、メモリと、1つ以上のプログラムとを備える、コンピュータシステムであり、1つ以上のプログラムは、メモリの中に記憶され、1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成され、1つ以上のプログラムは、本明細書に説明される方法のうちのいずれかを実行するための命令を含む。
【0111】
当業者は、情報および信号が、種々の技術および技法のうちのいずれかを使用して表され得ることを理解するであろう。例えば、データ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップが、上記の説明の全体を通して参照され得、電圧、電流、電磁波、磁場または粒子、光場または粒子、またはそれらの任意の組み合わせによって表され得る。
(実施例)
【0112】
本発明は、ここでさらに、以下の実施例を参照して例証されるであろう。後に続くものは、実施例にすぎず、詳細に対する修正が、成され得ながら、依然として、本発明の範囲内に該当することを理解されたい。
【実施例1】
【0113】
実施例1:環境源からのファージ単離/特性評価。
粉末状のTSB培地(Becton, Dickinson and Company)が、3%w/vの最終濃度まで、生下水と混合され得る。異なる細菌株が、対数期まで増殖され、1mLの各菌株が、TSB/下水混合物の100mLのアリコートに添加され、一晩、37℃および250rpmにおいてインキュベートされ得る。翌日、1mLの感染したTSB/下水混合物が、採取され、5分間にわたって、8,000×gにおいてペレット細胞およびデブリに遠心分離される。浮遊物が、無菌の0.22μmのSpin-X(登録商標)遠心分離管フィルタ(Coming, NY)に移送され、6,000×gにおいて遠心分離され、いかなる残りの細菌も除去する。濾過物の10μLのアリコートが、細菌株の100μLの対数増殖培養物と混合され、20分にわたって37℃においてインキュベートされ、50℃まで調節された2.5mLの溶融された上層寒天(0.6%寒天)と混合され、TSB寒天プレート(1.5%TSB寒天)にわたって傾注される。プレートが、37℃において一晩インキュベートされ、後続のファージプラークが、個々に採取され、例えば、Sambrook et al.によって説明される標準的手技を使用して、適切な細菌株の分離株上で3回精製される。
【0114】
所望される場合、高力価ファージ備蓄が、当業者に公知の標準的手技によって対応する宿主細菌の中で伝搬および増幅されることができる。大規模なファージ調製物が、塩化セシウム密度遠心分離によって精製され、0.22μmフィルタ(Millipore Corporation, Billerica, MA)を通して濾過されることができる。
【0115】
例えば、ファージは、当分野において周知であるように、塩化セシウム勾配によって精製されることができる。ここで、生成された精製ファージ懸濁液(1ml)は、10%のポリエチレングリコール8000(Sigma-Aldrich)および0.5Mの塩化ナトリウムを用いて、一晩、40℃において沈殿されることができる。その後、懸濁液は、15分間にわたって17,700gにおいて遠心分離され、浮遊物が、除去されることができる。代替として、ファージ懸濁液は、透析されることができる。PEG/塩誘導沈殿物は、0.5mlのTE緩衝液(pH9.0)中に再懸濁され、20μlの20mg/mlのプロテイナーゼKで20分にわたって560℃において処理され、最終濃度2%のSDSで20分にわたる650℃における処理が続く。本混合物は、次いで、フェノール/クロロホルム(25:24:1フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールm、Sigma Aldrich製)で少なくとも2回処理され、水相が、次いで、2.5倍の体積の氷冷の96%エタノールと0.1倍の体積の酢酸ナトリウム(pH4.8)とを用いて沈殿される。遠心分離に続いて、ペレットが、70%エタノール中で洗浄され、100μlのTE緩衝液(pH8.0)中に再懸濁される。ファージ備蓄が、次いで、4℃で無期限に貯蔵されることができる。ファージ力価が、10倍の段階希釈物をプレーティングし、プラーク形成単位(PFU)を計算することによって査定されることができる。
【0116】
ファージ精製の他の方法は、限定ではないが、オクタノールまたはブタノールのいずれかを用いたパーティション分離を含む。本技法では、ファージは、通常、水相のままであるが、内毒素が、アルコール相によって吸着される傾向にある。
【実施例2】
【0117】
実施例2:ファージ/宿主感受性プロファイルを生成するために使用されるアッセイ。
本開示される方法を実行するために、類似するまたは同じファージ/宿主感受性プロファイルを有する複数の異なる細菌株のゲノムが、比較される必要がある。細菌のファージ/宿主感受性プロファイルがすでに既知である場合、以下のアッセイは、実施される必要はない。しかしながら、細菌のファージ/宿主感受性プロファイルが未知である場合、以下のアッセイのいずれかが、そのようなプロファイルを決定または実験的に導出するために使用されることができる。
【0118】
細菌の感受性/耐性プロファイルを決定する1つの方法は、自動化された間接的液体溶解アッセイに依拠する。手短に述べると、細菌株の一晩の培養物が、1%v/vのテトラゾリウム色素と混合されたTSBを含有する、96個ウェルプレートのウェルの中に植菌される。ファージが、次いで、各ウェルに添加され、プレートが、OmniLog(登録商標)システム(Biolog, InC, Hayward, CA)の中で一晩、37℃においてインキュベートされた。Henry, Bacteriophage 2:3, 159-167 (2012)を参照されたい。テトラゾリウム色素は、細菌細胞の呼吸を間接的に測定する。呼吸は、テトラゾリウム色素の還元を引き起こし、紫色への色変化をもたらす。各ウェルの色強度は、細菌増殖の相対単位として定量化される。宿主範囲の決定のために、細菌が、ウェルあたり105コロニー形成単位(CFU)で植菌され、ファージが、10のMOIに関してウェルあたり106プラーク形成単位(PFU)の濃度で添加される。混合物の相乗効果調査のために、細菌が、ウェルあたり106CFUで植菌され、ファージが、100のMOIに関してウェルあたり108PFUの濃度で添加されることができる。
【0119】
第2のアッセイもまた、細菌の感受性/耐性プロファイルを決定するために使用されることができる。本アッセイでは、希釈系列スポットプレートアッセイが、プラーク形成を観察するために使用される。具体的には、50μLの一晩の細菌培養物が、5mLの55℃まで調節された溶融された上層寒天を個々に植菌するために使用される。植菌された寒天は、次いで、短時間のボルテックスによって完全に混合され、次いで、正方形のLB寒天プレートにわたって広げられる。上層寒天は、約45分にわたって静置されることが許容され、その時間において、各ファージの10倍希釈物の1010~102PFUの4μLのアリコートが、表面上にスポット配置される。スポットは、上層寒天の中に完全に吸収されることが許容され、その後、プレートが、24時間にわたって37℃においてインキュベートされた。プラーク形成が、次いで、査定されることができる。
【0120】
時間/死滅実験もまた、細菌の定量的な感受性/耐性プロファイルを提供するために使用されることができる。ここでは、細菌の一晩の培養物が、新鮮LB培地内で1:1,000に、mLあたり約1×106CFUの最終濃度まで希釈される。20mLのアリコートが、次いで、250mLの三角フラスコ容器に移送され、2時間にわたる200rpmにおける振動を用いて37℃においてインキュベートされる。サンプルが、次いで、mLあたり2×1011PFUのファージまたは等しい体積の無菌リン酸緩衝食塩水(PBS)のいずれかを植菌され、インキュベーションに戻される。100μLのアリコートが、0、2、4、および24時間において採取され、PBS内で逐次希釈され、LB寒天上にプレーティングされる。プレートは、24時間にわたって37℃においてインキュベートされ、プラーク形成が、評価される。
【0121】
ファージの暴露に起因する細菌の変化もまた、ラマン分光法を使用して監視されることができる。ここでは、各サンプルが、LB寒天プレートから取得され、スペクトル収集のために使い捨て可能な秤量皿の中に直接移送される。ラマンスペクトルが、830nmラマンPhA Tシステム(Kaiser Optical Systems, InC, Ann Arbor, MI, USA)を使用して収集されることができる。スペクトルは、時間/死滅アッセイサンプルに関して、100秒の総取得時間を伴う3mmスポットサイズレンズ、および100秒の総取得時間を伴う1mmスポットサイズレンズを使用して収集される。スペクトルは、次いで、分析に先立って、6次多項式および1445cm-1ラマン振動帯域への強度正規化を使用した基準線除去によって前処理される。
【0122】
感受性/耐性プロファイルを作成するときに考慮され得る殺菌作用の一実施例は、細菌増殖における溶解、遅延またはファージ耐性細菌の増殖の出現の欠如を含む。さらに好ましい実施形態では、殺菌作用は、(a)細菌サンプル上に透明点プラークを生成し得るファージ、(b)プレート上で急速ストリーク法を使用して溶解特性を実証するファージ、(c)小規模または大規模バッチアッセイにおける、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、または0.1~0.5のOD600吸光度差の濁度の溶菌、(d)静菌性ファージ感染における、少なくとも0.1、少なくとも0.125、少なくとも0.15、少なくとも0.175、少なくとも0.2、または0.1~0.2のOD600吸光度差の濁度の細菌増殖における遅延、(e)感染後少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、または4~6時間にわたるファージ耐性菌増殖の出現の欠如、(f)宿主範囲クイック試験における、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、または4~6時間にわたるファージ感染後の生存細菌の低減された増殖曲線、または(g)宿主範囲クイック試験からの、ファージ感染細菌のOmnilogバイオアッセイを使用した、活性細菌代謝からのテトラゾリウム色素ベースの色変化における、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、または50~200の相対呼吸単位の防止または遅延によって測定されることができる。
【0123】
これらのアッセイを使用して、細菌株の種々のセットに対して複数のファージを試験し、ファージ/宿主感受性プロファイルを作成することができる。本プロファイルは、細菌に感染するためのファージの能力に基づき得ることと、また、例えば、各ファージが液体中での細菌宿主の増殖を防止し得る時間数(保留時間)、および/またはプラークの透明度/濁度に基づき得ることとの両方が当てはまる。いったんファージ/宿主感受性プロファイルが、複数の細菌株に関して実験的に生成されると、菌株は、類似するプロファイルを示す群に分類されることができ、本情報は、患者サンプル中の細菌とその群のうちの1つからの細菌との間の類似性の同定等によって、新しい患者サンプルのためのファージ混合物治療の同定を加速させるために使用されることができる。
【実施例3】
【0124】
実施例3:ゲノムの配列決定、アセンブリ、および注釈
ファージおよび細菌ゲノムは、標準的配列決定技法を使用して配列決定され、当分野において周知であるようなコンティグ分析を使用してアセンブリされることができる。例えば、ファージまたは細菌から単離された5μgのDNAが、抽出され、契約配列決定設備に発送されることができる。40~65倍の配列決定網羅面積が、454FLX器具上でパイロ配列決定技術を使用して取得される。454FLX器具によって生成される列が、GSアセンブラ(454, Branford, Conn.)を用いてアセンブリされ、共通配列を生成する。ゲノム配列の品質改良が、ゲノム全体を横断した15~25個のPCR生成物の配列決定を伴い、正しいアセンブリ、二重鎖の形成、ホモポリヌクレオチド尾部内に生じる任意の残りの塩基競合の解決を確実にすることができる。タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)は、当分野において公知である標準的プログラム(BLASTP等)を使用して予測されることができ、手動の査定、必要である場合、補正が続く。
【0125】
ゲノムの配列決定情報が、新しい患者サンプルのためのファージ混合物治療の同定を加速させるために使用されることができる。配列決定は、細菌/ファージゲノム全体の完全な配列決定、または予測パターンの一部として同定されている重要な着目領域の配列決定または具体的な領域の配列決定の両方を包含する。これらの領域は、大きい領域(例えば、50~90%)、または遺伝子コード領域等の具体的な標的領域、または以前に同定された予測領域(例えば、ファージ有効性と関連付けられる)であってもよい。例えば、患者サンプル中の細菌が、そのための有効なファージ混合物治療が、例えば、以前の試験または治療を通して既知である細菌と合致する場合、そのファージ混合物治療は、患者サンプルに対して試験され、ファージ混合物治療として提案され得る。同様に、1つ以上の細菌配列(または配列モチーフ)が、有効なファージ混合物治療と関連付けられ得る。この場合、患者サンプルは、配列決定され、次いで、関連付けられる配列モチーフに関して検索され得る。本ファージ混合物治療は、次いで、患者サンプルに対して試験され、ファージ混合物治療として提案される、またはそうでなければ意思決定プロセスにおいて使用され得る。そのようなバイオインフォマティクスベースの方法は、細胞培養に依拠せず、したがって、急速に実行され、試験のための潜在的ファージを同定する、または提案された治療として、対象に非常に必要な療法をより急速な方式で提供することのいずれかを行うことができる。
【0126】
本発明は、発明の精神から逸脱することなく、構成および詳細において変動され得る、説明される本明細書における実施形態に限定されるものではない。本明細書に言及されるいかなる特許、特許出願、または他の公開文書の教示全体も、本明細書に完全に記載されている場合と同様に、参照することによって本明細書に組み込まれる。