(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】透明導電層形成用基材、透明導電性フィルム、タッチパネルおよび透明導電層形成用基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230320BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230320BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230320BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230320BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230320BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230320BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B7/023
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
G06F3/041 495
G06F3/044 127
G06F3/044 128
H01B5/14 A
(21)【出願番号】P 2020559280
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048453
(87)【国際公開番号】W WO2020122114
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018232723
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕伸
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佳弘
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-348189(JP,A)
【文献】特開2005-104025(JP,A)
【文献】特開2014-131782(JP,A)
【文献】特開平09-123333(JP,A)
【文献】特開2009-032475(JP,A)
【文献】特表2015-525387(JP,A)
【文献】特表2016-502170(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114056(WO,A1)
【文献】特表2016-519836(JP,A)
【文献】特開2013-123825(JP,A)
【文献】特開2017-155152(JP,A)
【文献】特開2010-073495(JP,A)
【文献】特開2011-128239(JP,A)
【文献】特開2004-269605(JP,A)
【文献】特表2017-522581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H01B5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電層を形成するための基材となる透明導電層形成用基材であって、
基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成された第一樹脂層と、前記基材フィルムと前記第一樹脂層の間に設けられた第二樹脂層と、を有し、
前記第一樹脂層が、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂
と、樹脂粒子を含む硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第二樹脂層が、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第一樹脂層および前記第二樹脂層の少なくとも一方が、測定波長589.3nmにおいて、1.55~1.80の範囲内の屈折率を有
し、
前記第一樹脂層と前記第二樹脂層が直接接していることを特徴とする透明導電層形成用基材。
【請求項2】
前記第一樹脂層に含まれる前記シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂が、シルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリートであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項3】
前記第一樹脂層において、前記シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂の含有量が、硬化性組成物の固形分全量基準で、1質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項4】
前記第一樹脂層が、測定波長589.3nmにおいて、1.55~1.80の範囲内の屈折率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項5】
前記第一樹脂層は、前記基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、前記基材フィルムの他方の面上に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第三樹脂層を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項6】
前記第一樹脂層は、前記基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、前記基材フィルムの他方の面上に、粘着剤層を介して保護フィルムを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項7】
前記第一樹脂層は、前記基材フィルムの両方の面上に有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項8】
前記第一樹脂層の表面の算術平均粗さRaが、2~20nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材の第一樹脂層の面上に透明導電層を有することを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記透明導電層は、前記第一樹脂層の表面に直接形成されることを特徴とする請求項
9に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
前記透明導電層が、タッチパネルの電極に用いられることを特徴とする請求項
9または10に記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
請求項
11に記載の透明導電層が電極に用いられていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項13】
透明導電層を形成するための基材となる透明導電層形成用基材の製造方法であって、
基材フィルムの面上に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層を形成した後、
前記第二樹脂層の面上に、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂
と樹脂粒子を含む硬化性組成物の硬化物からなる第一樹脂層を形成することで、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の透明導電層形成用基材を製造することを特徴とする透明導電層形成用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層形成用基材、透明導電性フィルム、タッチパネルおよび透明導電層形成用基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートホンやタブレット端末など、画面上の表示に触れることで機器を操作することが可能な入力装置として、静電容量方式のタッチパネルが知られている。この種のタッチパネルには、透明導電性フィルムが用いられている。透明導電性フィルムは、例えば、プラスチック基材(樹脂基材)の面上に酸化インジウム錫(ITO)などの金属酸化物からなる透明導電層が形成されたものからなる(特許文献1)。
【0003】
プラスチック基材の面上に直接、金属酸化物からなる透明導電層を形成すると、プラスチック基材と透明導電層の密着性が低い。そこで、例えば特許文献2では、プライマー層を積層したプラスチック基材のプライマー層の面上に、金属酸化物からなる透明導電層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-068690号公報
【文献】特開2012-007065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のプライマー層は、チオール基含有シルセスキオキサン、水酸基含有ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート類を含有する組成物を熱硬化させて得られたものであり、耐擦傷性が低く、金属酸化物からなる透明導電層を形成する際の取扱い時に、プライマー層の表面に傷が付くおそれがある。プライマー層の表面に傷が付くと、透明導電性フィルムの外観不良が発生する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、積層する透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れる透明導電層形成用基材およびその製造方法と、これを用いた透明導電性フィルムおよびタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る透明導電層形成用基材は、透明導電層を形成するための基材となる透明導電層形成用基材であって、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成された第一樹脂層と、を有し、前記第一樹脂層が、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることを要旨とするものである。
【0008】
シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂は、シルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリートであることが好ましい。シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、1質量%以上であることが好ましい。基材フィルムと第一樹脂層の間には、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層を有することが好ましい。第一樹脂層は、基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、基材フィルムの他方の面上に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第三樹脂層を有していてもよい。第一樹脂層は、基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、基材フィルムの他方の面上に、粘着剤層を介して保護フィルムを有していてもよい。第一樹脂層は、基材フィルムの両方の面上に有していてもよい。
【0009】
そして、本発明に係る透明導電性フィルムは、本発明に係る透明導電層形成用基材の第一樹脂層の面上に透明導電層を有することを要旨とするものである。
【0010】
透明導電層は、タッチパネルの電極に用いられるとよい。
【0011】
そして、本発明に係る透明導電性フィルムは、本発明に係る透明導電性フィルムの透明導電層が電極に用いられていることを要旨とするものである。
【0012】
そして、本発明に係る透明導電層形成用基材の製造方法は、透明導電層を形成するための基材となる透明導電層形成用基材の製造方法であって、基材フィルムの面上に、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第一樹脂層を形成することを要旨とするものである。
【0013】
本発明に係る透明導電層形成用基材の製造方法においては、基材フィルムの面上に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層を形成した後、第二樹脂層の面上に第一樹脂層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る透明導電層形成用基材によれば、基材フィルムの面上に形成された第一樹脂層がシルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることから、積層する透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れる。
【0015】
そして、基材フィルムと第一樹脂層の間に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層を有すると、光学調整機能やブロッキング防止機能の設計が容易になる。
【0016】
そして、第一樹脂層は、基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、基材フィルムの他方の面上に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第三樹脂層を有していると、基材フィルムの他方の面側も耐擦傷性に優れる。
【0017】
そして、第一樹脂層は、基材フィルムの一方の面上にのみ有しており、基材フィルムの他方の面上に、粘着剤層を介して保護フィルムを有していると、取扱い時において、基材フィルムの他方の面に傷が付くのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図5】本発明の第五実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図6】本発明の第六実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図7】本発明の第七実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第一実施形態に係る透明導電層形成用基材の断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された第一樹脂層14と、を有する。第一樹脂層14は、基材フィルム12に接している。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面上にのみ有している。
【0022】
基材フィルム12は、透明性を有していれば、特に限定されるものではない。基材フィルム12としては、透明高分子フィルム、ガラスフィルムなどが挙げられる。透明性とは、可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいい、全光線透過率は、より好ましくは85%以上である。上記全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定することができる。基材フィルム12の厚みは、特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れるなどの観点から、2~500μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2~200μmの範囲内である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、厚さが0.25mm以上のものであってもロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
【0023】
基材フィルム12の高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,シクロオレフィンコポリマー樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。これらのうちでは、光学特性や耐久性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂がより好ましい。
【0024】
基材フィルム12は、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層からなる単層で構成されていてもよいし、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層と、この層とは異なる高分子材料の1種または2種以上を含む層など、2層以上の層で構成されていてもよい。
【0025】
第一樹脂層14は、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる。第一樹脂層14は、シルセスキオキサン骨格を有する化合物を含むことで、積層する透明導電層の密着性に優れる。また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物が紫外線硬化性の樹脂であることで、第一樹脂層14の耐擦傷性に優れる。シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂は、下記の式(1)で表される構造を有する。
(化1)
(R-SiO1.5)n (1)
【0026】
式(1)中、nは、2以上の整数である。nとしては、2~200の整数が好ましく、2~150の整数がより好ましく、2~100の整数がさらに好ましい。式(1)中、Rは有機基であり、複数のRのうちの少なくとも一部は紫外線反応性の反応性基である。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が、耐候性や光学的な透明性に優れるため、特に好ましい。すなわち、シルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。
【0027】
シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂の官能基当量は、80~10000g/eqの範囲内であることが好ましい。より好ましくは100~1000g/eqの範囲内、さらに好ましくは150~300g/eqの範囲内である。官能基当量がこの範囲であると、紫外線硬化性に優れる。本発明において、官能基当量は、官能基1当量当たりの質量(g)を表す。また、前記官能基とは紫外線反応性の反応性基のことを言う。
【0028】
シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂は、硬化前や硬化後のシルセスキオキサン骨格において、水酸基やアルコキシ基を含むことが好ましい。水酸基やアルコキシ基を含むことで、積層する透明導電層の密着性が向上する。シルセスキオキサンには、完全カゴ型構造、ハシゴ型構造、ランダム構造、不完全カゴ型構造などがある。完全カゴ型構造やハシゴ型構造には水酸基やアルコキシ基が含まれないが、ランダム構造や不完全カゴ型構造には水酸基やアルコキシ基が含まれる。したがって、シルセスキオキサン骨格の一部または全部がランダム構造あるいは不完全カゴ型構造であることが好ましい。
【0029】
シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂としては、東亞合成製のAC-SQ TA-100、MAC-SQ TM-100、AC-SQ SI-20、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDM、OX-SQ TX-100、OX-SQ SI-20、OX-SQ HDXなどが挙げられる。
【0030】
第一樹脂層14を形成する硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂に加え、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、非紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、第一樹脂層14を形成する硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、硬化性組成物に添加する添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。
【0031】
第一樹脂層14を形成する硬化性組成物において、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、0.5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。硬化性組成物の固形分は、溶剤を除いた成分である。上記含有量が1質量%以上であると、積層する透明導電層の密着性により優れる。また、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、100質量%であってもよい。好ましくは98質量%以下である。含有量を前記範囲とすることで透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れたものに優れたものにすることができる。
【0032】
シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂としては、紫外線反応性の反応性基を有する、シルセスキオキサン骨格を有していないモノマー,オリゴマー,プレポリマーなどが挙げられる。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、シルセスキオキサン骨格を有していない(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0033】
シルセスキオキサン骨格を有していない(メタ)アクリレートとしては、シルセスキオキサン骨格を有していない、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちでは、柔軟性に優れるなどの観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0034】
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0035】
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0036】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、0.1~10質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1~5質量%の範囲である。
【0037】
無機粒子は、例えば第一樹脂層14に表面凹凸を形成したり、第一樹脂層14を高屈折率に調整したりする目的で添加される。また、樹脂粒子は、例えば第一樹脂層14に表面凹凸を形成したりする目的で添加される。第一樹脂層14に表面凹凸を形成することで、透明導電層形成用基材をロール状に巻き付けた際に、表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすい。第一樹脂層14を高屈折率に調整することで、積層する透明導電層の導電パターンが視認されにくくすることができる。高屈折率とは、測定波長589.3nmにおける屈折率が1.50以上をいい、好ましくは1.55~1.80の範囲内、より好ましくは1.60~1.70の範囲内である。
【0038】
第一樹脂層14を高屈折率に光学調整可能な無機粒子としては、チタン,ジルコニウム,スズ,亜鉛,ケイ素,ニオブ,アルミニウム,クロム,マグネシウム,ゲルマニウム,ガリウム,アンチモン,白金などの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、光学調整可能な無機粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、高屈折率と透明性の両立に優れるなどの観点から、チタン酸化物,ジルコニウム酸化物が特に好ましい。
【0039】
第一樹脂層14に表面凹凸を形成する無機粒子や樹脂粒子の種類は、特に限定されるものではない。このような無機粒子としては、例えば、チタン,ジルコニウム,ケイ素,アルミニウム,カルシウムなどの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。また、このような樹脂粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロースなどの樹脂からなる樹脂粒子が挙げられる。
【0040】
第一樹脂層14に表面凹凸を形成するためには、無機粒子や樹脂粒子の平均粒子径は、第一樹脂層14の厚み以上とすることが好ましい。より好ましくは第一樹脂層14の厚みの1.1倍以上20倍以下、さらに好ましくは第一樹脂層14の厚みの1.5倍以上10倍以下、特に好ましくは第一樹脂層14の厚みの1.5倍以上5倍以下である。平均粒子径は、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値である。
【0041】
第一樹脂層14の厚みは、特に限定されるものではないが、膜の連続性に優れるなどの観点から、0.005μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.010μm以上、さらに好ましくは0.020μm以上である。一方、第一樹脂層14の厚みは、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。第一樹脂層14の厚みは、厚み方向において無機粒子や樹脂粒子が存在しない部分における比較的平滑な部分の厚みである。
【0042】
第一樹脂層14の表面凹凸が形成されている表面の算術平均粗さRaは、透明導電層形成用基材の表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすいなどの観点から、0.1~130nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5~50nmの範囲内、さらに好ましくは2~20nmの範囲内である。
【0043】
そして、ブロッキングを抑えつつ、ヘイズの上昇を抑え、透明性により優れるなどの観点から、上記平均粒子径の範囲内、上記平均算術粗さの範囲内において、無機粒子や樹脂粒子の分布密度は、100~2000個/mm2の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは100~1000個/mm2の範囲内である。
【0044】
硬化性組成物において用いられる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0045】
硬化性組成物の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)は、塗工性、膜厚などを考慮して適宜定めればよい。例えば、1~90質量%、1.5~80質量%、2~70質量%などとすればよい。
【0046】
透明導電層形成用基材10は、第一樹脂層14を形成する硬化性組成物を基材フィルム12の面上に塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させることにより製造することができる。この際、基材フィルム12と第一樹脂層14の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0047】
塗工には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いて行うことができる。
【0048】
乾燥工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去できれば特に限定されるものではないが、50~150℃の温度で10秒~180秒程度行うことが好ましい。特に、乾燥温度は、50~120℃が好ましい。
【0049】
紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cm2が好ましく、100~300mJ/cm2がより好ましい。
【0050】
以上の構成の透明導電層形成用基材10によれば、基材フィルム12の面上に形成された第一樹脂層14がシルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることから、積層する透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れる。
【0051】
本発明に係る透明導電層形成用基材は、第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10の構成に限定されるものではない。以下に、本発明に係る透明導電層形成用基材の他の実施形態について説明する。
【0052】
図2には、第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20を示している。第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成された第二樹脂層16と、第二樹脂層16の面上に形成された第一樹脂層14と、を有する。第二樹脂層16は、基材フィルム12に接しており、第一樹脂層14は、第二樹脂層16に接している。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面上にのみ有している。透明導電層形成用基材20は、基材フィルム12側から順に、基材フィルム12、第二樹脂層16、第一樹脂層14を有している。
【0053】
第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20は、第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10と比較して、基材フィルム12と第一樹脂層14の間に第二樹脂層16を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0054】
第二樹脂層16は、基材フィルム12と第一樹脂層14の間に配置されており、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる。第二樹脂層16を形成するための硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂は含まれない。
【0055】
シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂としては、紫外線反応性の反応性基を有する、シルセスキオキサン骨格を有していないモノマー,オリゴマー,プレポリマーなどが挙げられる。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、シルセスキオキサン骨格を有していない(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0056】
シルセスキオキサン骨格を有していない(メタ)アクリレートとしては、シルセスキオキサン骨格を有していない、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちでは、柔軟性に優れるなどの観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。第二樹脂層16を形成するための硬化性組成物が紫外線硬化性樹脂としてウレタン(メタ)アクリレートを含む場合には、例えば基材フィルム12がポリシクロオレフィンやシクロオレフィンコポリマーなどから形成され、比較的割れやすいものでも、基材フィルム12の割れを抑えやすい。
【0057】
第二樹脂層16は、ハードコート層であることが好ましい。この観点から、鉛筆硬度が2B~6Hの範囲内であることが好ましい。鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠して測定することができる。第二樹脂層16は、紫外線硬化性樹脂を含む組成物から形成されることで、上記鉛筆硬度を満足しやすい。
【0058】
第二樹脂層16を形成する硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂に加え、非紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、第二樹脂層16を形成する硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、硬化性組成物に添加する添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。非紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤は、第一樹脂層14を形成する硬化性組成物において記載したものから適宜選択することができる。
【0059】
無機粒子は、例えば第一樹脂層14に表面凹凸を形成したり、第二樹脂層16を高屈折率に調整したりする目的で添加される。また、樹脂粒子は、例えば第一樹脂層14に表面凹凸を形成したりする目的で添加される。第一樹脂層14に表面凹凸を形成することで、透明導電層形成用基材をロール状に巻き付けた際に、表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすい。第二樹脂層16を高屈折率に調整するとともに第一樹脂層14を低屈折率に調整することで、積層する透明導電層の導電パターンを視認されにくくすることができる。高屈折率とは、測定波長589.3nmにおける屈折率が1.50以上をいい、好ましくは1.55~1.80の範囲内、より好ましくは1.60~1.70の範囲内である。低屈折率とは、測定波長589.3nmにおける屈折率が1.50未満をいい、好ましくは1.30~1.50の範囲内、さらに好ましくは1.40~1.50の範囲内である。
【0060】
第二樹脂層16を高屈折率に光学調整可能な無機粒子としては、チタン,ジルコニウム,スズ,亜鉛,ケイ素,ニオブ,アルミニウム,クロム,マグネシウム,ゲルマニウム,ガリウム,アンチモン,白金などの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、光学調整可能な無機粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、高屈折率と透明性の両立に優れるなどの観点から、チタン酸化物,ジルコニウム酸化物が特に好ましい。
【0061】
一方、第一樹脂層14を低屈折率に光学調整可能な無機粒子としては、フッ化マグネシウム、シリカ、シルセスキオキサン、フッ化カルシウムなどの粒子が挙げられる。これらの粒子は、低屈折率にしやすいなどの観点から、中空構造であることがより好ましい。
【0062】
第二樹脂層16を形成する硬化性組成物に添加する粒子であって、第一樹脂層14に表面凹凸を形成する無機粒子や樹脂粒子の種類は、第一樹脂層14を形成する硬化性組成物において記載したものから適宜選択することができる。また、硬化性組成物の固形分濃度は、第一樹脂層14を形成する硬化性組成物と同様に調整することができる。
【0063】
第一樹脂層14に表面凹凸を形成するためには、無機粒子や樹脂粒子の平均粒子径は、第一樹脂層14と第二樹脂層16の合計の厚み以上とすることが好ましい。より好ましくは第一樹脂層14と第二樹脂層16の合計の厚みの1.1倍以上20倍以下、さらに好ましくは第一樹脂層14と第二樹脂層16の合計の厚みの1.5倍以上10倍以下、特に好ましくは第一樹脂層14と第二樹脂層16の合計の厚みの1.5倍以上5倍以下である。
【0064】
第二樹脂層16の厚みは、特に限定されるものではないが、膜の連続性に優れるなどの観点から、0.005μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.010μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上である。一方、第二樹脂層16の厚みは、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。また、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、第一樹脂層14と第二樹脂層16の合計の厚みは、10μm以下であることが好ましい。第二樹脂層16の厚みは、厚み方向において無機粒子や樹脂粒子が存在しない部分における比較的平滑な部分の厚みである。
【0065】
第一樹脂層14の表面凹凸が形成されている表面の算術平均粗さRaは、ブロッキングなどの観点から、0.1~130nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5~50nmの範囲内、さらに好ましくは2~20nmの範囲内である。
【0066】
そして、ブロッキング性を維持しつつ、ヘイズの上昇を抑え、透明性により優れるなどの観点から、上記平均粒子径の範囲内、上記平均算術粗さの範囲内において、無機粒子や樹脂粒子の分布密度は、100~2000個/mm2の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは100~1000個/mm2の範囲内である。
【0067】
透明導電層形成用基材20は、基材フィルム12の面上に第二樹脂層16を形成する硬化性組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させて、基材フィルム12の面上に第二樹脂層16を形成した後、第二樹脂層16の面上に第一樹脂層14を形成する硬化性組成物をを塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させて、第二樹脂層16の面上に第一樹脂層14を形成することにより製造することができる。この際、基材フィルム12と第二樹脂層16の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0068】
以上の構成の透明導電層形成用基材20によれば、基材フィルム12の面上に形成された第一樹脂層14がシルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることから、積層する透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れる。また、基材フィルム12と第一樹脂層14の間に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層16を有することから、光学調整機能やブロッキング防止機能の設計が容易になる。
【0069】
図3には、第三実施形態に係る透明導電層形成用基材30を示している。第三実施形態に係る透明導電層形成用基材30は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成された第二樹脂層16と、第二樹脂層16の面上に形成された第一樹脂層14と、基材フィルム12の他方の面上に形成された第三樹脂層18と、を有する。第二樹脂層16は、基材フィルム12の一方の面に接しており、第一樹脂層14は、第二樹脂層16に接している。また、第三樹脂層18は、基材フィルム12の他方の面に接している。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面上にのみ有している。透明導電層形成用基材は、第三樹脂層18側から順に、第三樹脂層18、基材フィルム12、第二樹脂層16、第一樹脂層14を有している。
【0070】
第三実施形態に係る透明導電層形成用基材30は、第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と比較して、基材フィルム12の他方の面上に第三樹脂層18を有する点が相違し、これ以外については第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0071】
第三樹脂層18は、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる。第三樹脂層18を形成する硬化性組成物は、第二樹脂層16を形成する硬化性組成物と同様の組成物とすることができる。
【0072】
第三樹脂層18は、ハードコート層であることが好ましい。この観点から、鉛筆硬度が2B~6Hの範囲内であることが好ましい。鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠して測定することができる。第三樹脂層18は、紫外線硬化性樹脂を含む組成物から形成されることで、上記鉛筆硬度を満足しやすい。
【0073】
第三樹脂層18の厚みは、特に限定されるものではなく、第二樹脂層16の厚みと同様の厚みにすることができる。そして、第三樹脂層18の厚みが第二樹脂層16の厚みもしくは第二樹脂層16と第一樹脂層14の合計の厚みに近い厚み(例えば±10%以内)とすることで、硬化時の収縮に伴うカールを抑えやすい。
【0074】
透明導電層形成用基材30は、基材フィルム12の一方の面上に第二樹脂層16を形成する硬化性組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させて、基材フィルム12の一方の面上に第二樹脂層16を形成した後、第二樹脂層16の面上に第一樹脂層14を形成する硬化性組成物をを塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させて、第二樹脂層16の面上に第一樹脂層14を形成し、また、基材フィルム12の他方の面上に第三樹脂層18を形成する硬化性組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線照射により硬化させて、基材フィルム12の他方の面上に第三樹脂層18を形成することにより製造することができる。この際、基材フィルム12と第二樹脂層16の密着性や基材フィルム12と第三樹脂層18の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0075】
以上の構成の透明導電層形成用基材30によれば、基材フィルム12の一方の面上に形成された第一樹脂層14がシルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることから、積層する透明導電層の密着性に優れるとともに耐擦傷性に優れる。また、基材フィルム12と第一樹脂層14の間に、シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第二樹脂層16を有することから、光学調整機能やブロッキング防止機能の設計が容易になる。また、基材フィルム12の他方の面上にシルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなる第三樹脂層18が形成されていることから、基材フィルム12の他方の面側も耐擦傷性に優れる。
【0076】
図4には、第四実施形態に係る透明導電層形成用基材40を示している。第四実施形態に係る透明導電層形成用基材40は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成された第二樹脂層16と、第二樹脂層16の面上に形成された第一樹脂層14と、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤層22を介して配置された保護フィルム24と、を有する。第二樹脂層16は、基材フィルム12の一方の面に接しており、第一樹脂層14は、第二樹脂層16に接している。また、保護フィルム24は、基材フィルム12の他方の面に粘着剤層22を介して接している。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面上にのみ有している。透明導電層形成用基材40は、保護フィルム24側から順に、保護フィルム24、粘着剤層22、基材フィルム12、第二樹脂層16、第一樹脂層14を有している。
【0077】
第四実施形態に係る透明導電層形成用基材40は、第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と比較して、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤層22を介して保護フィルム24を有する点が相違し、これ以外については第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0078】
保護フィルム24は、例えばロールプロセスなどで連続加工するなどの取扱い時において、基材フィルム12の他方の面に傷が付くのを抑えることができるものである。保護フィルム24は、粘着剤層22を介して基材フィルム12の他方の面に貼り付けられている。保護フィルム24は、加工後などにおいては、粘着剤層22とともに基材フィルム12の他方の面から剥がされる。このため、粘着剤層22は、基材フィルム12と粘着剤層22の間の接着力よりも保護フィルム24と粘着剤層22の間の接着力のほうが強く、基材フィルム12と粘着剤層22の間で界面剥離可能な接着力に調整される。
【0079】
保護フィルム24を構成する材料は、基材フィルム12を構成する材料として例示したものなどを適宜選択することができる。保護フィルム24を形成する材料は、特に限定されるものではないが、加熱処理によるカールの抑制に優れるなどの観点から、基材フィルム12と加熱収縮率や線膨張係数が近い材料が好ましい。例えば、基材フィルム12と同じか同種の材料であることが好ましい。同種とは、例えば、ポリエステル同士、ポリ(メタ)アクリレート同士、ポリアミド同士などを示すことができる。
【0080】
保護フィルム24の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、基材フィルム12と加熱収縮率や線膨張係数が近くなるように、基材フィルム12と同程度の厚みであればよい。具体的には、例えば、2~500μmの範囲内、2~200μmの範囲内とすることができる。
【0081】
粘着剤層22を形成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを好適に用いることができる。特に、アクリル系粘着剤は、透明性や耐熱性に優れるため、好適である。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
【0082】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体もしくは共重合体である。(メタ)アクリルモノマーとしては、アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。
【0083】
アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数2~30のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。炭素数2~30のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0084】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチルなどが挙げられる。カルボキシル基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
【0085】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。水酸基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
【0086】
(メタ)アクリル重合体を形成する(メタ)アクリルモノマーは、上記のいずれか1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0087】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体、架橋剤以外に、その他添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘着性付与樹脂(タッキファイヤー)、帯電防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、剥離助剤、顔料、染料、湿潤剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属不活性剤、アルキル化剤、難燃剤などが挙げられる。これらは粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して使用される。
【0089】
粘着剤層22の厚みは、特に限定されるものではないが、1~10μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2~7μmの範囲内である。
【0090】
図5には、第五実施形態に係る透明導電層形成用基材50を示している。第五実施形態に係る透明導電層形成用基材50は、基材フィルム12の両方の面上に第二樹脂層16が形成され、両方の第二樹脂層16の面上にそれぞれ第一樹脂層14が形成されている。第二樹脂層16は、基材フィルム12に接しており、第一樹脂層14は、第二樹脂層16に接している。透明導電層形成用基材50は、第一樹脂層14側から順に、第一樹脂層14、第二樹脂層16、基材フィルム12、第二樹脂層16、第一樹脂層14を有している。
【0091】
第五実施形態に係る透明導電層形成用基材50は、第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と比較して、第二樹脂層16および第一樹脂層14が基材フィルム12の両側に形成されている点が相違し、これ以外については第二実施形態に係る透明導電層形成用基材20と同様であり、その説明を省略する。
【0092】
透明導電層形成用基材50は、基材フィルム12の両側に第一樹脂層14を有することから、基材フィルム12の両側に透明導電層を有する構成の透明導電性フィルムを形成する基材として好適である。
【0093】
図6には、第六実施形態に係る透明導電層形成用基材60を示している。第六実施形態に係る透明導電層形成用基材60は、
図1に示す透明導電層形成用基材10を2枚用い、粘着剤層28を介して、互いの基材フィルム12側が貼り合されたもので構成されている。透明導電層形成用基材60は、順に、第一樹脂層14、基材フィルム12、粘着剤層28、基材フィルム12、第一樹脂層14を有している。
【0094】
透明導電層形成用基材60は、両側に第一樹脂層14を有することから、透明導電層形成用基材50と同様、両側に透明導電層を有する構成の透明導電性フィルムを形成する基材として好適である。透明導電層形成用基材60は、
図1に示す透明導電層形成用基材10を2枚用いており、基材フィルム12を2枚有することから、透明導電層形成工程で破断しにくい等、ハンドリング性に優れる。
【0095】
粘着剤層28は、2つの基材フィルム12どうしを密着性よく貼り付けるためのものである。
図4に示す透明導電層形成用基材40の粘着剤層22とは、剥がれにくい点において異なる。粘着剤層28を形成する粘着剤(粘着剤組成物)は、後述する第七実施形態に係る透明導電層形成用基材70における粘着剤(粘着剤組成物)を好適に用いることができる。
【0096】
粘着剤層28の厚みは、特に限定されるものではないが、5~100μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10~50μmの範囲内である。
【0097】
粘着剤層28は、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、基材フィルム12の他方の面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の他方の面上に転写する方法などにより形成することができる。
【0098】
図7には、第七実施形態に係る透明導電層形成用基材70を示している。第七実施形態に係る透明導電層形成用基材70は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成された第一樹脂層14と、基材フィルム12の他方の面上に形成された粘着剤層32と、粘着剤層32の面上に形成された離型フィルム34と、を有する。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面に接しており、粘着剤層32は、基材フィルム12の他方の面に接している。第一樹脂層14は、基材フィルム12の一方の面上にのみ有している。透明導電層形成用基材70は、離型フィルム34側から順に、離型フィルム34、粘着剤層32、基材フィルム12、第一樹脂層14を有している。
【0099】
第七実施形態に係る透明導電層形成用基材70は、第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10と比較して、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤層32と離型フィルム34を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る透明導電層形成用基材10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0100】
粘着剤層32は、透明導電層形成用基材70を高分子フィルムやガラスなどの基板に密着性良く貼り付けるためのものである。
【0101】
粘着剤層32を形成する粘着剤組成物は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの公知の粘着性樹脂を含有することができる。中でも、光学的な透明性や耐熱性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤組成物は、粘着剤層32の凝集力を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0102】
粘着剤組成物には、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、可塑剤、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、硬化促進剤、硬化遅延剤などの公知の添加剤が挙げられる。また、生産性などの観点から、有機溶剤を使用して希釈してもよい。
【0103】
粘着剤層32の厚みは、特に限定されるものではないが、5~100μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10~50μmの範囲内である。
【0104】
粘着剤層32は、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルム34の面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、基材フィルム12の他方の面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の他方の面上に転写する方法などにより形成することができる。
【0105】
粘着剤層32は、良好な密着性の観点から、ガラスに対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは6N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上である。
【0106】
離型フィルム34は、使用前に粘着剤層32の保護層として機能し、使用時には、粘着剤層32から剥がされる。離型フィルム34としては特に限定されず、基材フィルム12に用いた材料と同様の材料を用いることができる。
【0107】
離型フィルム34の、粘着剤層32と接する面には、離型処理が施されていてもよい。離型処理に使用される離型剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等の離型剤が挙げられる。
【0108】
次に、本発明に係る透明導電性フィルムについて説明する。
【0109】
図8には、本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム80を示している。
図8に示すように、本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム80は、透明導電層形成用基材10の第一樹脂層14の面上に透明導電層26を有する。透明導電層形成用基材10は、本発明に係る透明導電層形成用基材である。透明導電性フィルム80は、基材フィルム12側から順に、基材フィルム12、第一樹脂層14、透明導電層26を有している。
【0110】
透明導電層26は、導電性物質を含有する。導電性物質は、特に限定されるものではないが、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化イッテルビウム、酸化イットリウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。これらのうちでは、透明性と導電性を高度に両立できるなどの観点から、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛が特に好ましい。
【0111】
透明導電層26の厚みは、特に限定されないが、10~40nmの範囲内が好ましい。より好ましくは15~30nmの範囲内である。
【0112】
透明導電層26は、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらのうちでは、低抵抗で均質な膜を安定して製造できるなどの観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0113】
透明導電層26は、導電性物質の結晶化を促進させるために、成膜後において導電性物質を焼成する工程を有することが好ましい。焼成方法は特に限定されるものではないが、例えばスパッタリングを行う際のドラム加熱や、熱風式加熱炉、遠赤外線加熱炉などを用いて行うとよい。焼成の際の加熱温度は、導電性物質の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、50~200℃、80~180℃、100~160℃などとすることができる。焼成の際の加熱時間は、特に限定されるものではないが、3~180分、5~120分、10~90分などとすることができる。
【0114】
以上の構成の透明導電性フィルム80によれば、本発明に係る透明導電層形成用基材10の第一樹脂層14の面上に透明導電層26を有することから、第一樹脂層14と透明導電層26の密着性に優れる。また、第一樹脂層14が耐擦傷性に優れることから、取扱い時において、第一樹脂層14の表面に傷が付くのを抑えることができる。
【0115】
本発明に係る透明導電性フィルム80は、透明導電層26をタッチパネルの電極として用いることができるものである。タッチパネルの電極は、透明導電層26を所望の電極パターンに形成したものからなる。電極パターンは、透明導電層26のエッチング処理などにより形成することができる。
【0116】
次に、本発明に係るタッチパネルについて説明する。
【0117】
本発明に係るタッチパネルは、本発明に係る透明導電性フィルム80を用いて構成されており、透明導電性フィルム80の透明導電層26がタッチパネルの電極として用いられるものである。タッチパネルは、静電容量方式や抵抗膜方式などのタッチパネルである。本発明に係るタッチパネルとしては、GFF方式や、GF2方式のものが挙げられる。GFF方式のタッチパネルは、例えば、
図6に示すような、2枚の透明導電層形成用基材10の、互いの基材フィルム12側が、粘着剤層28を介して貼り合わされてなる透明導電層形成用基材60の、それぞれの第一樹脂層12の面上に透明導電層26を形成した透明導電性フィルムや、
図8に示すような、基材フィルム12の一方の面側にのみ第一樹脂層14および透明導電層26を有する構成の透明導電性フィルム80の、2枚の互いの基材フィルム12側を透明な粘着剤で貼り合わせたものを、さらに透明な粘着剤を用いて一方の透明導電層26の面をガラスや樹脂フィルムなどの透明基材に貼り合わせたものからなる。また、GF2方式のタッチパネルは、例えば
図5に示すような、基材フィルム12の両面側に第一樹脂層14および透明導電層26を有する構成の透明導電層形成用基材50から形成した透明導電性フィルムを透明な粘着剤でガラスや樹脂フィルムなどの透明基材に貼り合わせたものからなる。
【0118】
本発明に係るタッチパネルの画像表示方式は特に限定されず、液晶表示装置、有機EL表示装置などの任意の表示装置に用いることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0120】
例えば上記実施形態では、基材フィルム12と第一樹脂層14、第二樹脂層16、あるいは第三樹脂層18との密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面に表面処理を施してもよい記載をしているが、表面処理に代えて、基材フィルム12の表面に、易接着層を設ける構成であってもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、第一樹脂層14の表面凹凸は、粒子を添加する層の厚みよりも大きい平均粒子径の粒子を添加することとしているが、凹凸の形成方法としては、これに限定されるものではない。例えば、型転写によって第一樹脂層14など表面凹凸を形成する層に表面凹凸を形成するものであってもよい。また、粒子を添加して表面凹凸を形成する場合でも、粒子に表面処理を施したり、界面活性剤を併用することで、粒子の表面自由エネルギーを小さくし、粒子を添加する層の表面に粒子を偏在させて粒子による表面凹凸を形成する方法であってもよい。この場合、粒子の平均粒子径は、粒子を添加する層の厚みよりも小さいものであってもよい。例えば、第一樹脂層14にこのような粒子を添加する場合、粒子の平均粒子径は、50~500nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは80~400nmの範囲内、さらに好ましくは120~400nmの範囲内である。また、その平均粒子径は、粒子を添加する層の厚みの1/2以下であることが好ましい。
【0122】
そして、上記保護フィルム24は、
図4に示すように、
図2に示す第二実施形態の透明導電層形成用基材20に追加する形で示しているが、
図1に示す第一実施形態の透明導電層形成用基材10に追加する形であってもよい。また、
図8に示す透明導電性フィルム80などの透明導電性フィルムに追加する形であってもよい。
【0123】
そして、上記粘着剤層32は、
図7に示すように、
図1に示す第一実施形態の透明導電層形成用基材10に追加する形で示しているが、
図2~3に示す透明導電層形成用基材20~30に追加する形であってもよい。また、
図8に示す透明導電性フィルム80などの透明導電性フィルムに追加する形であってもよい。
【0124】
また、
図6に示す第六透明導電層形成用基材60は、2枚の透明導電層形成用基材10の、互いの基材フィルム12側が、粘着剤層28を介して貼り合わされてなる形で示しているが、2枚の透明導電層形成用基材10のうちの一方または両方が、
図2~3に示す透明導電層形成用基材20~30であってもよい。また、
図8に示す透明導電性フィルム80などの透明導電性フィルムであってもよい。
【0125】
そして、透明導電性フィルム80は、
図8に示すように、
図1に示す第一実施形態の透明導電層形成用基材10を透明導電層形成用基材とする例を示しているが、
図2~7に示す透明導電層形成用基材20~70を透明導電層形成用基材とするものであってもよい。
【0126】
そして、基材フィルム12の表面には、各層を形成する前に、ガスバリア性向上層、帯電防止層、オリゴマーブロック層などの各種機能層を予め設けてもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。以下において、実施例1~4はそれぞれ参考例1~4と読み替えるものとする。
【0128】
(第一樹脂層形成用の硬化性組成物の調製)
表1に記載の配合組成(質量%)で各成分を配合することにより、第一樹脂層形成用の硬化性組成物を調製した。
【0129】
(第二樹脂層形成用の硬化性組成物の調製)
表1に記載の配合組成(質量%)で各成分を配合することにより、第二樹脂層形成用の硬化性組成物を調製した。
【0130】
(第三樹脂層形成用硬化性組成物の調製)
表1に記載の配合組成(質量%)で各成分を配合することにより、第三樹脂層形成用の硬化性組成物を調製した。
【0131】
(透明導電層形成用基材の作製)
(実施例1~3)
基材フィルム(東レ製PETフィルム「ルミラーUH1H」、厚み50μm)の一方面上に、#5のワイヤーバーを用いて第二樹脂層形成用の硬化性組成物を塗工し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用い、光量200mJ/cm2で塗膜に紫外線を照射して塗膜を紫外線硬化させることにより、第二樹脂層を形成した。
次いで、第二樹脂層の面上に、#4のワイヤーバーを用いて第一樹脂層形成用の硬化性組成物を塗工し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用い、窒素雰囲気下、光量200mJ/cm2で塗膜に紫外線を照射して塗膜を紫外線硬化させることにより、第一樹脂層を形成した。
そして、基材フィルムの他方面上に、#4のワイヤーバーを用いて第三樹脂層形成用の硬化性組成物を塗工し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用い、光量200mJ/cm2で塗膜に紫外線を照射して塗膜を紫外線硬化させることにより、第三樹脂層を形成した。
以上により、実施例1~3に係る透明導電層形成用基材を作製した。
【0132】
(実施例4)
基材フィルムを日本ゼオン製COPフィルム「Zeonor Film ZF16-55」(厚み55μm)に変更し、その一方面上にコロナ処理を施した後、第二樹脂層を形成しないで、#5のワイヤーバーを用いて第一樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る透明導電層形成用基材を作製した。基材フィルムの他方面上には、第三樹脂層を形成しなかった。
【0133】
(実施例5~8)
基材フィルムを日本ゼオン製COPフィルム「Zeonor Film ZF16-55」(厚み55μm)に変更し、その一方面上にコロナ処理を施した後、第二樹脂層を形成し、第二樹脂層の面上に#5のワイヤーバーを用いて第一樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例5~8に係る透明導電層形成用基材を作製した。基材フィルムの他方面上には、第三樹脂層を形成しなかった。
【0134】
(比較例1)
第一樹脂層形成用の硬化性組成物が異なる以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る透明導電層形成用基材を作製した。比較例1の第一樹脂層形成用の硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂が含まれていない。
【0135】
(比較例2)
第一樹脂層形成用の硬化性組成物が異なる以外は実施例3と同様にして、比較例2に係る透明導電層形成用基材を作製した。比較例2の第一樹脂層形成用の硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂が含まれていない。
【0136】
(比較例3)
第一樹脂層形成用の硬化性組成物が異なる以外は実施例3と同様にして、比較例3に係る透明導電層形成用基材を作製した。比較例3の第一樹脂層形成用の硬化性組成物には、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂が含まれておらず、シルセスキオキサン骨格を有する熱硬化性エポキシ樹脂が含まれている。
【0137】
第一樹脂層、第二樹脂層、第三樹脂層の材料として用いた材料は以下の通りである。
・SQ含有UV樹脂<1>:シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂(東亞合成製「MAC-SQ HDM」、メタクリル樹脂、溶剤(PGB)固形分濃度50質量%、官能基;メタクリロイル基、官能基当量239g/eq)
・SQ含有UV樹脂<2>:シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂(東亞合成製「MAC-SQ SI-20」、メタクリル樹脂、固形分濃度100質量%、官能基;メタクリロイル基、官能基当量224g/eq)
・UV樹脂<1>:シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂(トーヨーケム製「リオデュラスTYZ59-10-S」、ジルコニウム粒子含有(メタ)アクリル樹脂、溶剤(PGM、MIBK、脂肪族系溶剤、及びシクロヘキサノン)、固形分濃度40質量%、高屈折率ハードコート剤)
・UV樹脂<2>:シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂(荒川化学工業製「オプスターZ7527」、シリカ粒子含有(メタ)アクリル樹脂、溶剤(MEK)、固形分濃度50質量%)
・UV樹脂<3>:シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂(トーヨーケム製「リオデュラスTYZ65-01」、ジルコニウム粒子含有(メタ)アクリル樹脂、溶剤(PGM、MIBK、脂肪族系溶剤、及びシクロヘキサノン)、固形分濃度40質量%、高屈折率ハードコート剤)
・UV樹脂<4>:シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂(アイカ工業製「アイカアイトロンZ-735-35L」、(メタ)アクリル樹脂、溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、及びMEK)、固形分濃度50質量%)
・UV樹脂<5>:シルセスキオキサン骨格を有していない紫外線硬化性樹脂(DIC製「GRANDIC PC16-2291」、(メタ)アクリル樹脂、溶剤(MEK、BuAc、及びMIBK)、固形分濃度40質量%)
・樹脂粒子:ポリメタクリル酸メチル粒子(綜研化学製「ケミスノーMX-80H3wT」の1質量%MEK分散液、平均粒径800nm)
・光重合開始剤:BASFジャパン製「IRGACURE127」
・SQ含有EP樹脂:シルセスキオキサン骨格を有する熱硬化性エポキシ樹脂(荒川化学工業製「コンポセランSQ506」)
・EP硬化剤:1-ベンジル-2-メチルイミダゾール
・溶剤<1>:メチルエチルケトン(MEK)
・溶剤<2>:酢酸ブチル(BuAc)
・溶剤<3>:プロピレングリコールノルマルブチルエーテル(PGB)
・溶剤<4>:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)
・溶剤<5>:メチルイソブチルケトン(MIBK)
【0138】
作製した透明導電層形成用基材の第一樹脂層、第二樹脂層、第三樹脂層の厚みは、フィルメトリクス製「Filmetrics F20 膜厚測定システム」を用いて分光干渉法により測定した。なお、樹脂粒子を含む層の厚みは、厚み方向において樹脂粒子が存在しない部分の厚みとした。
【0139】
作製した各透明導電層形成用基材を用い、第一樹脂層の面上に、酸化インジウム錫を20nmの厚みでスパッタリングしてITO層を形成し、このITO層の面上に銅を200nmの厚みでスパッタリングして銅層を形成した後、恒温槽で150℃×1時間静置し、ITO層を結晶化させた。以上により、透明導電性フィルムを作製した。
【0140】
(ITO密着性)
作製した透明導電性フィルムの銅面側からITO層と第一樹脂層の界面まで格子状に切れ目を入れ、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に基づく密着試験を実施した。100マス中、全てに剥がれが見られなかったものを良好「○」、1マスでも剥がれが見られたものを不良「×」とした。良好なもののうち、100マスの外側の切り込み周辺にも剥がれが見られなかったものを特に良好「◎」とした。
【0141】
(耐擦傷性)
作製した各透明導電層形成用基材を用い、テスター産業製の学振式摩擦堅牢度試験器にセットし、日本スチールウール製「スチールウール#0000」で200gの荷重にて第一樹脂層の表面を20回擦った。その後、第一樹脂層の表面を蛍光灯下で真上から目視にて観察し、擦傷が見られなかったものを良好「○」、擦傷が見られたものを不良「×」とした。
【0142】
【0143】
実施例および比較例から、第一樹脂層がシルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含む硬化性組成物の硬化物からなることで、透明導電層の密着性に優れるとともに、第一樹脂層の耐擦傷性に優れることがわかる。比較例1,2は、第一樹脂層を形成するための硬化性組成物が、シルセスキオキサン骨格を有する紫外線硬化性樹脂を含まないため、透明導電層の密着性に劣る。比較例3は、第一樹脂層を形成するための硬化性組成物が、シルセスキオキサン骨格を有するものの紫外線硬化性樹脂ではなく熱硬化性エポキシ樹脂を含むだけなので、膜厚が厚いにもかかわらず、第一樹脂層の耐擦傷性に劣る。そして、実施例どうしの比較から、第一樹脂層のSQ含UV樹脂の含有量が5質量%以上であると、ITOとの密着性に特に優れることがわかる。
【0144】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0145】
10,20,30,40,50,60,70 透明導電層形成用基材
12 基材フィルム
14 第一樹脂層
16 第二樹脂層
18 第三樹脂層
22 粘着剤層
24 保護フィルム
26 透明導電層
28 粘着剤層
32 粘着剤層
34 離型フィルム
80 透明導電層性フィルム