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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】多層構造の自動車用チューブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/06 20060101AFI20230320BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
F16L11/06
B32B1/08 B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021033194
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2021156433
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】20161376.7
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シュラモスキー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘッケル
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018213140(DE,A1)
【文献】特開2004-176906(JP,A)
【文献】特表2008-507436(JP,A)
【文献】特開2008-044375(JP,A)
【文献】特開2006-118392(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02817320(FR,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03530454(EP,A1)
【文献】特開2019-207864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/06
B32B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流体媒体を導くための、多層構造の自動車用チューブ(1)であって、
前記チューブ(1)は、流体導管(2)と、前記流体導管(2)を取り囲む管壁(3)とを備え、
前記管壁(3)は、多層構造であり、
具体的には、外側から内側に向かって、
-少なくとも1つのポリアミド、特に、少なくとも1つの脂肪族ポリアミドからなる外層(4)と、
-接着促進層(5)と、
-少なくとも1つの熱可塑性エラストマーからなり、かつ、少なくとも90重量%の熱可塑性エラストマーから構成される内層(6)と
からなる層構成を有する少なくとも3つの層を備え、
前記管壁(3)の全層厚dは、0.3mmから3.0mm、好ましくは0.5mmから2.5mm、好ましくは0.75mmから2.0mmであり、
前記チューブ(1)は、少なくとも1つのバリア層(8)を備え、
前記バリア層(8)は、
少なくとも1つのポリオレフィンを主たる成分とし、
好ましくは、ポリプロピレンを主たる成分とし、
前記バリア層(8)は、該バリア層(8)が前記内層(6)の外側で繋がるように、前記内層(6)と前記外層(4)との間に配置されている
チューブ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブであって、
前記外層(4)は、
ナイロン6と、ナイロン10と、ナイロン11と、ナイロン12とからなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドから構成される又は実質的に構成される、
好ましくは、ナイロン6から構成される又は実質的に構成される
ことを特徴とするチューブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチューブであって、
前記熱可塑性エラストマーは、
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)と、ブチルゴムと、クロロブチルゴムと、スチレンブタジエンゴムと、ニトリルゴムと、ニトリルブタジエンゴムとからなる群から選択される少なくとも1つの成分を主たる成分とし、
好ましくは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主たる成分とする
ことを特徴とするチューブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記接着促進層(5)は、少なくとも1つのポリオレフィンを主たる成分とし、好ましくはポリプロピレンを主たる成分とする
ことを特徴とするチューブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記チューブ(1)は、アウター層(7)を備え、
前記アウター層(7)は、前記外層(4)の外側に繋がっており、
好ましくは、少なくとも1つのポリアミドを主たる成分とし、
好ましくは、少なくとも1つの脂肪族ポリアミドを主たる成分とし、
特に好ましくは、ナイロン6/12と、ナイロン6/6と、ナイロン6/10と、ナイロン6/16とからなる群から選択される少なくとも1つ成分を主たる成分とし、
非常に特に好ましくは、ナイロン6/12を主たる成分とする
ことを特徴とするチューブ。
【請求項6】
請求項5に記載のチューブであって、
前記アウター層(7)の層厚は、前記管壁(3)の前記全層厚dの5%から20%、好ましくは0%から15%である
ことを特徴とするチューブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記バリア層(8)の層厚は、前記管壁(3)の前記全層厚dの10%から60%、好ましくは15%から50%である
ことを特徴とするチューブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記外層(4)の層厚は、前記管壁(3)の前記全層厚dの10%から40%、好ましくは10%から20%である
ことを特徴とするチューブ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記接着促進層(5)の層厚は、前記管壁(3)の前記全層厚dの2%から15%、好ましくは7%から15%である
ことを特徴とするチューブ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記内層(6)の層厚は、前記管壁(3)の前記全層厚dの5%から20%、好ましくは7%から15%である
ことを特徴とするチューブ。
【請求項11】
請求項5から10のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記アウター層(7)は、層厚が前記接着促進層(5)よりも大きい
ことを特徴とするチューブ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のチューブであって、
前記バリア層(8)は、層厚が前記内層(6)よりも大きい
ことを特徴とするチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの流体媒体を導くための多層構造の自動車用チューブに関する。このチューブは、流体導管と、流体導管を取り囲む管壁とを備え、管壁は、多層構造であり、3つの層を備える。本発明によるチューブは、自動車の温度制御回路における温度制御チューブとして使用されることが好ましい。その場合、流体の温度制御媒体、例えば、液体又は気体の温度制御媒体が、チューブを通して案内される。したがって、本発明によるチューブは、温度制御チューブであることが好ましい。本発明による自動車用チューブの特に好ましい実施形態は、自動車の温度制御回路又は冷却回路において、該チューブが冷却チューブとして使用されることを特徴とする。該チューブが冷却チューブとして使用される場合、自動車の冷却回路の冷却媒体、具体的には、液体の冷却媒体が、冷却チューブを通して導かれる。本発明による多層構造のチューブは、例えば、自動車の空調システムにおける温度制御チューブ又は冷却チューブとして使用可能である。さらに、該チューブは、電気自動車又はハイブリッド自動車の温度制御回路で使用され、その場合、電池システムの温度を制御すること又はこの電池システムを冷却することに用られるのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
基本的には、多層構造の自動車用チューブ、温度制御チューブ又は冷却チューブは、実施され様々な実施形態で知られている。このような多層構造のチューブを自動車の温度制御回路で使用することも知られている。しかし、現在までに知られているチューブにはいくつかの欠点があることが分かっている。これらのチューブは、そのバリア特性の点でおよびその機械的な安定性又は抵抗性の点で又はその両方の点で、望まれるものには程遠いことが多々ある。チューブに十分なバリア特性を持たせつつ機械的安定性を高めようとすると、多大な手間と材料費をかけることでしか実現しないことが多い。さらに、様々な温度制御回路で使用する場合、例えば、自動車の空調システムで使用する場合や、ハイブリッド自動車若しくは電気自動車の温度制御システムで使用する場合は、温度制御チューブは様々な要件を満たさなければならない。実際には、つまり、利用分野が異なれば異なるチューブを使用しなければならない。この点において、改良の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対して、本発明の技術的課題は、冒頭で言及したタイプの自動車用チューブを提供することである。該チューブは、そのバリア特性および機械的安定性における要件を全て満たし、且つ、低い製造コストで生産可能であり、温度制御回路で、例えば、自動車の冷却回路で準汎用的に使用可能であり又は融通が利く。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つの流体媒体を導くための多層構造の自動車用チューブであって、チューブは、流体導管と、流体導管を取り囲む管壁とを備え、管壁は、多層構造であり、具体的には、外側から内側に向かって、
-少なくとも1つのポリアミド、特に、少なくとも1つの脂肪族ポリアミドからなる外層と、
-接着促進層と、
-少なくとも1つの熱可塑性エラストマーからなる内層と
からなる層構成を有する少なくとも3つの層を備え、
管壁の全層厚dは、0.3mmから3.0mm、好ましくは0.5mmから2.5mm、好ましくは0.75mmから2.0mmであるチューブを教示する。
【0005】
本発明は、多層構造の自動車用チューブ、又は、該チューブの、自動車の温度制御チューブとしての使用に関する。その場合、流体の温度制御媒体がチューブを通して案内され、特に、液体の温度制御媒体、好ましくは液体の冷却媒体が、チューブを通して案内される。本発明による自動車用チューブは、自動車の温度制御回路又は冷却回路において、温度制御チューブとして、特に冷却チューブとして使用可能である。したがって、本発明による多層構造の自動車用チューブは、温度制御チューブであることが好ましく、特に冷却チューブであることが好ましい。本発明の推奨される実施形態によれば、本発明によるチューブは、電気自動車若しくはハイブリッド自動車の電池システムの温度を制御するための又は同電池システムを冷却するための、温度制御回路において使用される。本発明では、本発明によるチューブは、自動車の空調システムにおいて温度制御チューブ又は冷却チューブとしても使用される。温度制御媒体として又は冷却媒体として、アルコールと水の混合物、好ましくは、グリコールと水の混合物を使用するとよい。しかしながら、他の温度制御媒体又は冷却媒体を使用可能であることは、本発明の範囲に含まれる。
【0006】
本発明は、本発明による多層構造の自動車用チューブが、そのバリア特性および機械的安定性における要件を全て満たし、且つ、少ない手間で生産可能であるという理解に基づく。さらに、本発明による多層構造の自動車用チューブは、その有利な特性により、自動車の温度制御回路又は冷却回路において、温度制御チューブ又は冷却チューブとして融通が利き又は汎用的に使用可能である。これに関連して、本発明によるチューブの特別な利点としては、該チューブの特徴的な層状複合物によって、空調システムの温度制御回路又は冷却回路にも該チューブが使用可能であり、且つ、電気自動車又はハイブリッド自動車又はその両方における電池システム用の温度制御回路又は冷却回路にも、該チューブが使用可能である。
【0007】
本発明による管壁の全層厚dは、0.3mmから3.0mmの範囲にあり、好ましくは0.5mmから2.5mmの範囲にあり、好ましくは0.75mmから2.0mmの範囲にあり、これについては、技術的課題を解決するという点で特に良好であることが証明されている。
【0008】
本発明の強く推奨される実施形態は、外層は、ナイロン6と、ナイロン10と、ナイロン11と、ナイロン12とからなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドから構成される又は実質的に構成される、好ましくは、ナイロン6から構成される又は実質的に構成されることを特徴とする。外層は、少なくとも1つのポリアミドのほかに、添加物を含むこともできる。外層は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、好ましくは少なくとも97重量%の、上記の群から選択される少なくとも1つのポリアミドから構成される、好ましくはナイロン6から構成されることが推奨される。
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーからなる内層が設けられる。熱可塑性エラストマーは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)と、ブチルゴムと、クロロブチルゴムと、スチレンブタジエンゴムと、ニトリルゴムと、ニトリルブタジエンゴムとからなる群から選択される少なくとも1つの成分を主たる成分とすることは、本発明の範囲に含まれる。特に推奨される実施形態によれば、熱可塑性エラストマーは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主たる成分とする。内層が少なくとも1つの熱可塑性エラストマーから構成されるか又は実質的に構成されることは、本発明の範囲に含まれる。好適には、内層は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、好ましくは少なくとも97重量%の熱可塑性エラストマーから構成される。内層は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーのほかに、添加物を含むことができる。
【0010】
EPDMは、本発明によるチューブの内層の熱可塑性エラストマーの成分として特に良好であり、特に、機械的安定性の点において、チューブに非常に有利な特性が得られることが分かった。本発明による自動車用チューブの実施形態の一つによれば、内層は、EPDMから構成されるか又は実質的に構成される。内層の熱可塑性エラストマーがオレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO:Thermoplastic Olefinic)であることは、本発明の範囲に含まれる。また、このようなTPOエラストマーは、好適には、EPDMおよびポリオレフィンを含み、好ましくはポリプロピレンを含むことは、本発明の範囲に含まれる。特に好ましくは、内層の熱可塑性エラストマーが熱可塑性加硫物(TPV:thermoplastic vulcanizate)であることは、本発明の範囲に含まれる。本発明の推奨される実施形態によれば、エラストマー又はゴムと、ポリオレフィン特にポリプロピレンとからなる混合物又は合金が、内層の熱可塑性加硫物(TPV)として使用される。エラストマー又はゴムは、EPDMであることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、外層と内層との間に接着促進層が設けられている。本発明の強く推奨される実施形態は、接着促進層が少なくとも1つのポリオレフィンを主たる成分とすることを特徴とする。接着促進層がポリプロピレン系であることが非常に特に好ましい。
【0012】
接着促進層は、ポリプロピレンから構成されるか又は実質的に構成されるのが好適である。接着促進層は、少なくとも1つのポリオレフィンのほかに添加物を含み、好ましくは、ポリプロピレンのほかに添加物を含むことができる。接着促進層は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、好ましくは少なくとも96重量%、非常に好ましくは少なくとも98重量%の、ポリオレフィン又はポリプロピレンから構成されることが推奨される。接着促進層は、機能的に信頼できる態様で、接着促進層を取り囲む層(外層や内層等)と互いに接続されることを特に確実にするものであり、且つ、チューブが機械的なひずみを受けるときに、層状複合物の望ましくない層間剥離を接着促進層が防止するものであり、これらは、本発明の範囲に含まれる。本発明による接着促進層によって、層間剥離は、驚くほど単純にかつ機能的に信頼できる態様で避けることができる。これは、接着促進層によって実現可能であり、特に手間やコストをあまりかけずに実現可能である。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態は、チューブがアウター層を備え、このアウター層が外層の外側に繋がっていることを特徴とする。したがって、このような変形例では、好ましくは、外層とアウター層とが接触する。ここで、「外側」とは、自動車用チューブの外側の方向を意味する。好適には、アウター層は、少なくとも1つのポリアミドを主たる成分とし、好ましくは少なくとも1つの脂肪族ポリアミドを主たる成分とし、特に好ましくはナイロン6/12と、ナイロン6/6と、ナイロン6/10と、ナイロン6/16とからなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドを主たる成分とし、非常に特に好ましくはナイロン6/12を主たる成分とする。アウター層が、少なくとも1つのポリアミドから構成されるか又は実質的に構成され、好ましくは、ナイロン6/12から構成されるか又は実質的に構成されることは、本発明の範囲に含まれる。アウター層は、ポリアミド又はナイロン6/12のほかに、添加物を含むこともできる。推奨によれば、アウター層は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、好ましくは少なくとも96重量%、非常に好ましくは少なくとも98重量%の、脂肪族ポリアミド又は上記の群から選択される少なくとも1つのポリアミドから構成される、好ましくはナイロン6/12から構成される。アウター層は、チューブの最も外側の層であることが推奨される。しかし、本発明によるチューブが、アウター層の外側に隣接する最外層を少なくとも1つさらに備えることも、基本的に本発明の範囲に含まれる。推奨される実施形態によれば、アウター層の層厚は、管壁の全層厚dの5%から20%、好ましくは、10%から15%に相当する。
【0014】
本発明の極めて好ましい実施形態によれば、チューブは、少なくとも1つのバリア層を備える。バリア層は、好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを主たる成分とする。バリア層は、特に好ましくは少なくとも1つのポリオレフィンを主たる成分とし、非常に特に好ましくはポリプロピレンを主たる成分とする。バリア層が、少なくとも1つのポリオレフィンから構成されるか又は実質的に構成されることは、本発明の範囲に含まれる。バリア層は、好ましくは、ポリプロピレンから構成されるか又は実質的に構成される。バリア層は、ポリオレフィン又はポリプロピレンのほかに、添加物を含むことができる。例えば、このような添加物は、導電性添加物であってもよく、これにより、バリア層は、好ましくは、導電性である。バリア層は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、好ましくは少なくとも96重量%、非常に好ましくは少なくとも98重量%の、少なくとも1つのポリオレフィンから構成される、好ましくはポリプロピレンから構成されることが好適である。
【0015】
ポリプロピレンは、少なくとも1つのバリア層の材料として、特にそのバリア特性に関しては、特に良好であることが分かった。ポリプロピレン製のバリア層を備える、本発明によるチューブの実施形態は、少なくとも1つのポリプロピレンバリア層と、少なくとも1つの熱可塑性エラストマー製の内層との間の相互作用によって、具体的には、チューブの残りの層との組み合わせによって、チューブの特に有利なバリア特性と優れた機械的安定性とを同時に実現できるという知見にも基づいている。
【0016】
少なくとも1つのバリア層がチューブのインナー層を形成することが好ましく、このインナー層は、好ましくは内層の内側に繋がっている。ここで、「内側」とは、自動車用チューブの内側の方向又は流体導管の方向を意味する。したがって、このような変形例では、好ましくは、内層とバリア層とが接触する。バリア層がチューブのインナー層を形成する場合、このインナー層は、チューブの最も内側の層であることが好ましい。しかし、バリア層又はインナー層の内側に隣接する最内層も設けられていることは、本発明の範囲に含まれる。
【0017】
本発明の代替の変形例によれば、少なくとも1つのバリア層は、内層とアウター層と間に配置される。このような変形例では、内層は、チューブの最も内側の層を形成することが好ましい。しかし、チューブの最内層が設けられておりこの最内層は内層の内側に隣接していることは、基本的に本発明の範囲に含まれる。この変形例では、少なくとも1つのバリア層が内層と外層との間に配置されることが非常に特に好ましい。この特に推奨される実施形態では、バリア層は、好ましくは内層の外側で繋がっており、非常に特に好ましくは、内層と接着促進層との間に配置される。
【0018】
本発明の推奨される実施形態によれば、バリア層の層厚は、管壁の全層厚dの10%から60%、好ましくは15%から50%である。外層の層厚は、好適には、管壁の全層厚dの10%から40%、好ましくは10%から20%である。接着促進層の層厚は、管壁の全層厚dの2%から15%、好ましくは7%から15%であることが推奨される。接着促進層の層厚は、0.025mm~0.45mmであり、好ましくは0.035mm~0.35mmであり、特に好ましくは0.04mm~0.3mmであり、非常に特に好ましくは0.05mm~0.2mmであることは、本発明の範囲に含まれる。
【0019】
推奨によれば、内層の層厚は、管壁の全層厚dの5%から20%、好ましくは7%から15%である。アウター層、外層、内層およびバリア層の少なくともいずれかの層厚は、好ましくは0.05mm~1.5mmであり、好ましくは0.07mm~1.2mmであり、特に好ましくは0.1mm~0.8mmであり、非常に特に好ましくは0.1mm~0.5mmである。
【0020】
本発明の強く推奨される実施形態は、アウター層の層厚が接着促進層の層厚よりも大きいことを特徴とする。外層又は内層又はバリア層又はこれらのいずれか又はすべてが、その層厚が接着促進層の層厚よりも大きいことは、本発明の範囲に含まれる。
【0021】
バリア層の層厚は内層の層厚よりも大きいことが好ましい。
【0022】
自動車用チューブの推奨される実施形態によれば、内層又はバリア層は、流体導管中を案内される流体と直接接触している。したがって、内層又はバリア層は、チューブの内側での最終層を形成するのが好適である。チューブの内側での最終層が、好ましくは導電性を有するように、少なくとも1つの導電性添加物を含むことは、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
さらに、本発明による自動車用チューブは、各層の押出し又は共押出しによって生産されることは、本発明の範囲に含まれる。
【0024】
特に好ましい実施形態によれば、チューブは、少なくとも5つの層を備え、好ましくはちょうど5つの層を備える。それらの層は、具体的には、外側から内側に向かって、ポリアミド特にナイロン6/12から構成されるアウター層と、ポリアミド特にナイロン6から構成される外層と、特にポリプロピレンから構成される接着促進層と、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーから構成され、特にEPDMを主たる成分とする内層と、特にポリプロピレンから構成されるバリア層とからなる層の並びを有する。別の実施形態によれば、バリア層は、接着促進層と内層との間に配置され、これにより、外側から内側に向かって以下の層構成を有する5層構造が形成される。ポリアミド特にナイロン6/12から構成されるアウター層と、ポリアミド特にナイロン6から構成される外層と、特にポリプロピレンから構成される接着促進層と、特にポリプロピレンから構成されるバリア層と、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーから構成され、特にEPDMを主たる成分とする内層とからなる。基本的には、自動車用チューブは、最内層と最外層とをさらに備え、これにより自動車用チューブが少なくとも6層又は7層を備えることは、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
自動車用チューブの少なくとも一部の領域、好ましくは全領域が、波型管として形成されることは、本発明の範囲に含まれる。ここで、「波型管」とは、チューブ又は管壁、特にチューブ又は管壁の外面が、チューブの周囲に沿って延びる波の山と谷を備えることを意味する。推奨によれば、チューブのそれらの波の山と谷は、チューブの長さの少なくとも一部に亘って、好ましくはチューブの全長に亘って又は実質的に全長に亘って、均等に又は実質的に均等に離間する。別の変形例では、チューブ又はチューブの外面が、少なくとも一部の領域で、好ましくは完全に平坦であるか又は実質的に平坦であることを特徴とする。
【0026】
本発明は、本発明による多層構造の自動車用チューブが、そのバリア特性の点において、且つ、その機械的な安定性又は抵抗性に関して、優れた特性を有するという知見に基づいている。したがって、流体導管中を案内される流体、特に、流体の温度制御媒体又は流体の冷却媒体、これらに対するバリア特性の点から、チューブは全ての要件を満たし、さらに、機械的安定性の点からも全ての要件を満たす。チューブ又は温度制御チューブは、広い温度範囲に亘って耐熱性があり、層は、強い機械的なひずみの下であっても層間剥離しない。さらに、本発明によるチューブは十分な程度の断熱性を示す。さらに、本発明によるチューブは、その特定の層構成のおかげで、自動車の温度制御回路又は冷却回路において準汎用的に使用でき、融通が利く。したがって、本発明によるチューブは、空調システムにおける温度制御チューブ又は冷却チューブとして使用することができ、同時に、電気自動車やハイブリッド自動車の温度制御回路における使用に適しており、特に、電池システムの温度制御や冷却にも適している。本発明による自動車用チューブのこうした融通が利く適応性は本発明の重大な利点を表す。また、本発明によるチューブは、製造労力をあまりかけずに、つまり、低い製造コストで、生産可能である。層状複合物の共押出しによってチューブを製造するのは好ましいものであり、問題が生じない、効果的かつ省エネルギーの態様で実施可能である。一実施形態のみを示す1組の図面に基づいて、以下で本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による自動車用チューブの概略斜視図である。
図2図1における物体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面は本発明による多層構造の自動車用チューブ1を示す。図における実施形態では、このチューブ1は、温度制御チューブであってもよく、具体的には、自動車の温度制御回路用又は冷却回路用の冷却チューブでよい。本発明によれば、チューブ1は、流体導管2と、流体導管2を取り囲む管壁3とを備える。チューブ1によって、流体媒体(不図示)が、具体的には、流体の温度制御媒体又は冷却媒体が、流体導管2の中を案内される。推奨によれば且つ図における実施形態においては、管壁3は多層構造であり、5つの層を備える。この5つの層は、外側から内側に向かって、アウター層7、外層4、接着促進層5、内層6、バリア層8である。図における本実施形態では、バリア層8はチューブ1のインナー層を形成し、推奨によれば且つ図における実施形態においては、このインナー層は、内層6の内側に繋がっている。図面に示していない本発明の別の実施形態によれば、まず接着促進層5があり、それにバリア層8、次いで、内層6が続く。
【0029】
実施形態の一つによれば、チューブ1の内側での最終層、好ましくは本実施形態のバリア層8は、導電性を有するように、導電性添加物を含むことができる。図面に示さない別の変形例によれば、内層6がチューブ1の内側での最終層を形成する場合は、内層6は導電性添加物を含むことができる。
【0030】
好適には且つ本実施形態においては、アウター層7は、脂肪族ポリアミドから実質的に構成され、好ましくはナイロン6/12から実質的に構成される。アウター層7も添加物を含有することができる。推奨によれば且つ本実施形態においては、アウター層7は、少なくとも95重量%のナイロン6/12から構成される。さらに、外層4が設けられており、この外層4は、好ましくは且つ図における本実施形態においては、アウター層7の内側に繋がっている。好ましい実施形態によれば且つ本実施形態においては、外層4は、実質的にナイロン6から構成され、さらに添加物を含むことができる。好適には且つ本実施形態においては、外層4は、少なくとも95重量%のナイロン6から構成される。
【0031】
本発明によれば、接着促進層5が設けられており、この接着促進層5は、好ましくはポリプロピレンを主たる成分とする。推奨によれば且つ本実施形態においては、接着促進層5は、外層4の内側に繋がっている。好適には且つ本実施形態においては、接着促進層5は、実質的にポリプロピレンから構成され、さらに添加物を含むことができる。本実施形態においては、接着促進層5は、少なくとも95重量%のポリプロピレンから構成されてもよい。
【0032】
本発明によれば、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーからなる内層6が設けられる。好適には、内層6は、接着促進層5の内側に繋がっている。推奨によれば且つ本実施形態においては、内層6の熱可塑性エラストマーは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を主たる成分とする。好ましくは且つ本実施形態においては、内層6の熱可塑性エラストマーは、EPDM系の熱可塑性加硫物である。非常に特に好ましくは、内層6は、実質的に熱可塑性加硫物から構成され、さらに添加物を含むことができる。これに関連して、内層6は、少なくとも95重量%の、EPDM系熱可塑性エラストマー又は熱可塑性加硫物から構成されることが特に好ましい。
【0033】
好適には且つ本実施形態においては、バリア層8が内層6の内側に繋がっている。そのとき、バリア層8は、そのままで、チューブ1のインナー層を形成する。バリア層8又はインナー層は、好ましくは且つ本実施形態においては、流体導管2中を案内される流体の温度制御媒体と直接的に接触している。推奨によれば、バリア層8は、実質的にポリプロピレンから構成される。バリア層8はさらなる添加物を含むことができる。好ましくは且つ本実施形態においては、バリア層8は、少なくとも95重量%のポリプロピレンから構成される。
【0034】
チューブ1の管壁3の全層厚dは、好適には、0.5mmから2.5mm、好ましくは、0.6mmから2.2mm、特に好ましくは、0.75mmから2.0mmである。推奨によれば且つ本実施形態においては、アウター層7は層厚が接着促進層5よりも大きい。好ましくは、図面に示す層状複合物では、接着促進層5は、層厚の最も小さい層である。したがって、好適には且つ本実施形態においては、アウター層7、外層4、内層6、バリア層8はそれぞれ、接着促進層5よりも厚い。本実施形態においては、バリア層8は、層厚が内層6よりも大きいことは、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車用チューブ
2 流体導管
3 管壁
4 外層
5 接着促進層
6 内層
7 アウター層
8 バリア層
図1
図2