(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】非水性電解質組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20230320BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230320BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230320BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/052
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082236
(22)【出願日】2021-05-14
(62)【分割の表示】P 2019104957の分割
【原出願日】2014-04-04
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2013-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514326926
【氏名又は名称】ソルベー エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・イー・ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュドーン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ジェイ・デュボワ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エル・ホルスタイン
(72)【発明者】
【氏名】コスタンティノス・コータキス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ゲリット・ロエロフス
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/033595(WO,A1)
【文献】特開2003-282138(JP,A)
【文献】特開2006-114388(JP,A)
【文献】特開2010-062132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)総電解質組成物の50重量%~80重量%の式:
R
1-COO-R
2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル
(式中、R
1、およびR
2は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R
1およびR
2における炭素原子の合計は2~7であり;R
1および/またはR
2中の少なくとも2個の水素は、フッ素で置き換えられており;R
1もR
2も、FCH
2またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)総電解質組成物の10重量%~40重量%のエチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの共溶媒と;
c)総電解質組成物の0.01重量%~
2重量%の
無水マレイン酸と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
を含み、ただし、b)とc)とは異なる、リチウムイオン電池に使用するための電解質組成物。
【請求項2】
前記電解質組成物が、Li/Li
+参照電極に対して1.0V以上の電位でフィルムを形成しない、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
a)総電解質組成物の50重量%~80重量%の式:
R
1
-COO-R
2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル
(式中、R
1
、およびR
2
は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R
1
およびR
2
における炭素原子の合計は2~7であり;R
1
および/またはR
2
中の少なくとも2個の水素は、フッ素で置き換えられており;R
1
もR
2
も、FCH
2
またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)総電解質組成物の10重量%~40重量%の共溶媒であって、エチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選
択される少なくとも1つのメンバー、
およびエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、およびエチルメチルスルホンからなる群
から選択される少なくとも1つの
追加のメンバーからなる前記共溶媒
と;
c)総電解質組成物の0.01重量%~2重量%の無水マレイン酸と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
を含み、ただし、b)とc)とは異なる、リチウムイオン電池に使用するための電解質組成物。
【請求項4】
前記フッ素化非環式カルボン酸エステルが、CH
3-COO-CH
2CF
2H、CH
3CH
2-COOCH
2CF
2H、F
2CHCH
2-COO-CH
3、F
2CHCH
2-COO-CH
2CH
3、CH
3-COO-CH
2CH
2CF
2H、CH
3CH
2-COO-CH
2CH
2CF
2H、F
2CHCH
2CH
2-COO-CH
2CH
3、およびCH
3-COO-CH
2CF
3からなる群の1つ以上のメンバーから選択される、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項5】
前記フッ素化非環式カルボン酸エステルが2,2-ジフルオロエチルアセテートである、請求項4に記載の電解質組成物。
【請求項6】
無水マレイン酸が、総電解質組成物の0.25重量%~
2重量%の量で存在する、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記電解質組成物が、2,2-ジフルオロエチルアセテート、エチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに無水マレイン酸を含む、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項8】
前記電解質組成物が、前記総電解質組成物の50重量%~80重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート;10重量%~40重量%のエチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、またはそれらの混合物;および0.25重量%~
2.0重量%の無水マレイン酸を含む、請求項7に記載の電解質組成物。
【請求項9】
前記電解質組成物が、前記総電解質組成物の50重量%~80重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、20重量%~30重量%のエチレンカーボネート、0.25重量%~5.0重量%のフルオロオエチレンカーボネートおよび0.25重量%~
2.0重量%の無水マレイン酸を含む、請求項7に記載の電解質組成物。
【請求項10】
(a)ハウジングと;
(b)前記ハウジング中に配置され、互いにイオン伝導性接触したアノードおよびカソードと;
(c)前記ハウジング中に配置され、前記アノードと前記カソードとの間にイオン伝導性経路を提供する請求項1に記載の電解質組成物と;
(d)前記アノードと前記カソードとの間の多孔質セパレータと
を含む
リチウムイオン電池。
【請求項11】
請求項10に記載の
リチウムイオン電池を含む、電子デバイス、輸送機器、電気通信機器。
【請求項12】
a)総電解質組成物の50重量%~80重量%の式:
R
1-COO-R
2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル
(式中、R
1、およびR
2は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R
1およびR
2における炭素原子の合計は2~7であり;R
1および/またはR
2中の少なくとも2
個の水素は、フッ素で置き換えられており;R
1もR
2も、FCH
2またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)総電解質組成物の10重量%~40重量%のエチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの共溶媒と;
c)総電解質組成物の0.01重量%~
2重量%の
無水マレイン酸と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
(ただし、b)とc)とは異なる)
を組み合わせてリチウムイオン電池に使用するための電解質組成物を形成する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年4月4日出願の米国仮特許出願第61/808335号明細書、2013年10月2日出願の同第61/885585号明細書、2013年12月20日出願の同第61/919160号明細書、および2014年3月14日出願の同第61/952967号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書での開示は、フッ素化溶媒、共溶媒、およびある種のフィルム形成化合物を含有する電解質組成物であって、リチウムイオン電池などの、電気化学セルで有用である組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボネート化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの金属を含む化合物でできた電極を含有する非水性電池、例えばリチウムイオン電池用の電解質溶媒として現在使用されている。現在のリチウムイオン電池電解質溶媒は典型的には、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートなどの、1つ以上の線状カーボネート;およびエチレンカーボネートなどの環状カーボネートを含有する。しかし、4.4Vよりも上のカソード電位でこれらの電解質溶媒は分解し得、それは電池性能の損失をもたらし得る。さらに、これらの電解質溶媒の使用に対して、それらの低沸点および高引火性のために安全上の懸念がある。
【0004】
様々なアプローチが、一般に使用される非水性電解質溶媒の限界を克服するために研究されてきた。例えば、環状カルボン酸無水物などの、添加物が、現在使用されている電解質溶媒と組み合わせて使用されてきた(例えば、Jeonら、特許文献1を参照されたい)。さらに、様々なフッ素化カルボン酸エステル電解質溶媒が、リチウムイオン電池での使用のために研究されてきた(例えば、ナカムラ(Nakamura)ら、特許文献2、特許文献3、および特許文献4を参照されたい)。これらの電解質溶媒は、4VスピネルLiMn2O4カソードなどの、高電位カソードを有するリチウムイオン電池に使用することができるが、サイクリングパフォーマンスは、特に高温で、制限され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0273064 A1号明細書
【文献】特公平4-328,915-B2号公報
【文献】特公3-444,607-B2号公報
【文献】米国特許第8,097,368号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に記載されたような当該技術分野における努力にもかかわらず、特に高電位カソード(すなわち、約5Vまで)で動作する電池のような、リチウムイオン電池に使用される場合に高温で向上したサイクリングパフォーマンスを有するであろう、電解質溶媒、およびそれらの組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、
a)(i)式:
R1-COO-R2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル、
(ii)式:
R3-OCOO-R4
で表されるフッ素化非環式カーボネート、および
(iii)式:
R5-O-R6
で表されるフッ素化非環式エーテル
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R1およびR2、R3およびR4、ならびにR5およびR6のいずれにおける炭素原子の合計も2~7であり;R1および/またはR2、R3および/またはR4、ならびにR5および/またはR6中の少なくとも2個の水素は、フッ素で置き換えられており;R1、R2、R3、R4、R5も、R6も、FCH2またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)エチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの共溶媒と;
c)ある濃度で電解質組成物中に存在する少なくとも1つのフィルム形成化合物であって、その濃度でフィルム形成化合物が、電解質組成物がフィルムを形成するように、Li/Li+参照電極に対して+1.0V未満の電位で分解する化合物と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
を含み、ただし、b)とc)とは異なる、電解質組成物が本明細書で提供される。
【0008】
別の実施形態では電解質組成物は、Li/Li+参照電極に対して1.0V以上上の電位でフィルムを形成しない。
【0009】
別の実施形態では、上に定義されたようなa)、b)、c)、およびd)を組み合わせて電解質組成物を形成する工程を含む電解質組成物の調製方法が提供される。
【0010】
別の実施形態では、
a)(i)式:
R
1-COO-R
2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル、
(ii)式:
R
3-OCOO-R
4
で表されるフッ素化非環式カーボネート、および
(iii)式:
R
5-O-R
6
で表されるフッ素化非環式エーテル
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R1およびR
2、R
3およびR
4、ならびにR
5およびR
6のいずれにおける炭素原子の合計も2~7であり;R
1および/またはR
2、R
3および/またはR
4、ならびにR
5および/またはR
6中の少なくとも2個の水素は、フッ素で置き換えられており;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5も、R
6も、FCH
2またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)エチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの共溶媒と;
c)
【化1】
(式中、R
7~R
14が独立して、H、F;フッ素、アルコキシ、もしくはチオアルキルの1つ以上で任意選択的に置換されたC1~C10アルキル;C2~C10アルケン、またはC6~C10アリールである)からなる群から選択される少なくとも1つの環状カルボン酸無水物と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
を含む電解質組成物が本明細書で提供される。
【0011】
別の実施形態では、上に定義されたようなa)、b)、c)、およびd)を組み合わせて電解質組成物を形成する工程を含む電解質組成物の調製方法が提供される。
【0012】
別の実施形態では、本明細書で開示される電解質組成物を含む電気化学セルが本明細書で提供される。
【0013】
さらなる実施形態では、電気化学セルはリチウムイオン電池である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書の実施例48に記載されるような、未処理黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図2】本明細書の実施例48に記載されるような、フィルムが形成されなかったことを示す、リチウムに対して1.0Vというより低い電位にサイクルされたコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図3】本明細書の実施例48に記載されるような、フィルムが形成されたことを示す、リチウムに対して0.01Vというより低い電位にサイクルされたコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】本明細書の比較例19に記載されるような、フィルムが形成されなかったことを示す、リチウムに対して0.01Vというより低い電位にコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図5】本明細書の比較例20に記載されるような、フィルムが形成されなかったことを示す、リチウムに対して0.01Vというより低い電位にコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図6】本明細書の実施例49に記載されるような、フィルムが形成されなかったことを示す、リチウムに対して1.0Vというより低い電位にコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【
図7】本明細書の実施例49に記載されるような、フィルムが形成されたことを示す、リチウムに対して0.01Vというより低い電位にコイン電池でサイクルされた黒鉛電極の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記および本開示の全体にわたって用いられるところでは、以下の用語は、特に明記しない限り、次の通り定義されるものとする。
【0016】
用語「電解質組成物」は本明細書で用いるところでは、電気化学セルでの電解質としての使用に好適な化学組成物を意味する。
【0017】
用語「電解質塩」は本明細書で用いるところでは、電解質組成物の溶媒に少なくとも部分的に可溶であり、電解質組成物の溶媒中で少なくとも部分的にイオンに解離して導電性電解質組成物を形成するイオン性塩を意味する。
【0018】
用語「アノード」は、酸化が起こる、電気化学セルの電極を意味する。バッテリーなどの、ガルバーニ電池では、アノードは負に帯電した電極である。二次(すなわち、再充電可能な)バッテリーでは、アノードは、放電中に酸化が起こり、充電中に還元が起こる電極である。
【0019】
用語「カソード」は、還元が起こる、電気化学セルの電極を意味する。バッテリーなどの、ガルバーニ電池では、カソードは正に帯電した電極である。二次(すなわち、再充電可能な)バッテリーでは、カソードは、放電中に還元が起こり、充電中に酸化が起こる電極である。
【0020】
用語「リチウムイオン電池」は、リチウムイオンが放電中にアノードからカソードに、充電中にカソードからアノードに移動するタイプの再充電可能な電池を意味する。
【0021】
用語「フィルム形成」は、本明細書で用いるところでは、黒鉛電極および電解質組成物を含有する電気化学セルが、本明細書の実施例に記載されるように、Li/Li+参照電極に対して+1.0V未満の電位にサイクルされる場合に露出黒鉛表面が20nmの解像度で走査電子顕微鏡法によってまったく検出されないような黒鉛電極の実質的に完全なカバレージを意味する。実質的に完全なカバレージは、黒鉛電極表面の少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%、または少なくとも約99.98%がフィルムでカバーされていることを意味する。
【0022】
リチウムとリチウムイオンとの間の平衡電位は、リチウム塩を約1モル/リットルのリチウムイオン濃度を与えるのに十分な濃度で含有する非水性電解質と接触したリチウム金属を使用する、および参照電極の電位がその平衡値(Li/Li+)から有意に変わらないように十分に少量の電流にかけられる参照電極の電位である。そのようなLi/Li+参照電極の電位は、0.0Vの値をここでは割り当てられる。アノードまたはカソードの電位は、アノードまたはカソードとLi/Li+参照電極のそれとの間の電位差を意味する。本明細書では電圧は、電池のカソードとアノードとの間の電圧差を意味し、そのどちらの電極も、0.0Vの電位で動作していない可能性がある。
【0023】
少なくとも1つのフッ素化溶媒、少なくとも1つの共溶媒、および少なくとも1つのフィルム形成化合物を含む電解質組成物が本明細書で開示される。本電解質組成物は、電気化学セル、特にリチウムイオン電池に有用である。具体的には、本明細書で開示される電解質組成物は、フッ素化非環式カルボン酸エステル、フッ素化非環式カーボネート、およびフッ素化非環式エーテルから選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒;エチレンカーボネート(本明細書ではECとも言われる)、フルオロオエチレンカーボネート(本明細書ではFECまたは4-フロオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、CAS No.114435-02-8とも言われる)、およびプロピレンカーボネートから選択される少なくとも1つの共溶媒;本明細書で開示されるような少なくとも1つのフィルム形成化合物;ならびに少なくとも1つの電解質塩を含む。
【0024】
好適なフッ素化非環式カルボン酸エステルは、式R1-COO-R2で表され、ここで、R1およびR2は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し、R1およびR2中の炭素原子の合計は2~7であり、R1および/またはR2中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられており(すなわち、R1中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR2中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR1中の少なくとも2個の水素およびR2中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられており)、R1もR2も、FCH2またはFCH基を含有しない。カルボン酸エステル中のモノフルオロアルキル基(すなわち、FCH2またはFCH)の存在は、毒性をもたらし得る。好適なフッ素化非環式カルボン酸エステルの例としては、限定なしにCH3-COO-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルアセテート、CAS No.1550-44-3)、CH3-COO-CH2CF3(2,2,2-トリフルオロエチルアセテート、CAS No.406-95-1)、CH3CH2-COO-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルプロピオネート、CAS No.1133129-90-4)、CH3-COO-CH2CH2CF2H(3,3-ジフルオロプロピルアセテート)、CH3CH2-COO-CH2CH2CF2H(3,3-ジフルオロプロピルプロピオネート)、およびHCF2-CH2-CH2-COO-CH2CH3(エチル4,4-ジフルオロブタノエート、CAS No.1240725-43-2)が挙げられる。一実施形態では、フッ素化非環式カルボン酸エステルは2,2-ジフルオロエチルアセテート(CH3-COO-CH2CF2H)である。
【0025】
一実施形態では、上式のR1中の炭素原子の数は1、3、4、または5である。
【0026】
別の実施形態では、上式のR1中の炭素原子の数は1である。
【0027】
別の実施形態では、上式のR1およびR3はフッ素を含有せず、R2およびR4はフッ素を含有する。
【0028】
好適なフッ素化非環式カーボネートは、式R3-OCOO-R4で表され、ここで、R3およびR4は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し、R3およびR4中の炭素原子の合計は2~7であり、R3および/またはR4中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられており(すなわち、R3中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR4中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR3中の少なくとも2個の水素およびR4中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられており)、R3もR4も、FCH2またはFCH基を含有しない。好適なフッ素化非環式カーボネートの例としては、限定なしにCH3-OC(O)O-CH2CF2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート、CAS No.916678-13-2)、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、CAS No.156783-95-8)、CH3-OC(O)O-CH2
CF2CF2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート、CAS
No.156783-98-1)、HCF2CH2-OCOO-CH2CH3(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート、CAS No.916678-14-3)、およびCF3CH2-OCOO-CH2CH3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、CAS No.156783-96-9)が挙げられる。
【0029】
好適なフッ素化非環式エーテルは、式:R5-O-R6で表され、ここで、R5およびR6は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し、R5およびR6中の炭素原子の合計は2~7であり、R5および/またはR6中の少なくとも2個の水素は(すなわち、R5中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR6中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられているか、またはR5中の少なくとも水素はフッ素で置き換えられており、R6中の少なくとも2個の水素はフッ素で置き換えられており)フッ素で置き換えられており、R5もR6も、FCH2またはFCH基を含有しない。好適なフッ素化非環式エーテルの例としては、限定なしにHCF2CF2CH2-O-CF2CF2H(CAS No.16627-68-2)およびHCF2CH2-O-CF2CF2H(CAS No.50807-77-7)が挙げられる。
【0030】
これらのフッ素化非環式カルボン酸エステル、フッ素化非環式カーボネート、および/またはフッ素化非環式エーテル溶媒の2つ以上の混合物がまた使用されてもよい。非限定的な例は、2,2-ジフルオロエチルアセテートと2,2-ジフルオロエチルプロピオネートとの混合物または2,2-ジフルオロエチルアセテートと2,2 ジフルオロエチルメチルカーボネートとの混合物である。
【0031】
本明細書で開示される電解質組成物では、フッ素化溶媒またはその混合物は、電解質組成物の所望の特性に依存して様々な量で使用することができる。一実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約5重量%~約95重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約10重量%~約80重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約30重量%~約70重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約50重量%~約70重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約45重量%~約65重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約6重量%~約30重量%を占める。別の実施形態では、フッ素化溶媒は、電解質組成物の約60重量%~約65重量%を占める。
【0032】
本明細書での使用に好適なフッ素化非環式カルボン酸エステル、フッ素化非環式カーボネート、およびフッ素化非環式エーテルは、既知の方法を用いて製造され得る。例えば、アセチルクロリドが、2,2-ジフルオロエチルアセテートを形成するために2,2-ジフルオロエタノールと(塩基性触媒ありまたはなしで)反応されられてもよい。さらに、2,2-ジフルオロエチルアセテートおよび2,2-ジフルオロエチルプロピオネートは、Wiesenhoferら(国際公開第2009/040367 A1号パンフレット、実施例5)によって記載されている方法を用いて製造され得る。あるいは、2,2-ジフルオロエチルアセテートは、本明細書で下の実施例に記載される方法を用いて製造することができる。他のフッ素化非環式カルボン酸エステルは、異なる出発カルボキシレ-ト塩を使用して同じ方法を用いて製造され得る。同様に、クロロギ酸メチルが、メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネートを形成するために2,2-ジフルオロエタノールと反応させられてもよい。HCF2CF2CH2-O-CF2CF2Hの合成は、塩基(例えば、NaHなど)の存在下で2,2,3,3-テトラフルオロプロパノールをテトラフルオロオエチレンと反応させることによって行うことができる。同様に、2,2-ジフルオロエタノールとテトラフルオロオエチレンとの反応は、HCF2CH2-O-CF2CF2Hを生成する。あるいは、これらのフッ素化溶媒のいくつかは、Matrix Scientific(Columbia SC)などの会社から購入されてもよい。最良の結
果のためには、フッ素化非環式カルボン酸エステルおよびフッ素化非環式カーボネートを、少なくとも約99.9%、より特に少なくとも約99.99%の純度レベルまで精製することが望ましい。これらのフッ素化溶媒は、真空蒸留または回転バンド蒸留などの蒸留法を用いて精製され得る。
【0033】
本明細書で開示される電解質組成物はまた、エチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートから選択される少なくとも1つの共溶媒を含む。これらの共溶媒の2つ以上の混合物がまた使用されてもよい。一実施形態では、共溶媒はエチレンカーボネートである。別の実施形態では、共溶媒はフルオロオエチレンカーボネートである。バッテリーグレードであるかまたは少なくとも約99.9%、より特に少なくとも約99.99%の純度レベルを有する共溶媒を使用することが望ましい。これらの共溶媒は、Novolyte,(インディペンデンス(Independence),OH)などの会社から商業的に入手可能である。
【0034】
本明細書で開示される電解質組成物はまた、限定なしに、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、およびエチルメチルスルホンなどの少なくとも1つの追加の共溶媒を含むことができる。
【0035】
本明細書で開示される電解質組成物では、共溶媒またはその混合物は、電解質組成物の所望の特性に依存して様々な量で使用することができる。一実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の10重量%超~約80重量%を占める。別の実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の10重量%超~約60重量%を占める。別の実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の10重量%超~約50重量%を占める。別の実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の約10重量%~約40重量%または電解質組成物の約20重量%~約40重量%を占める。別の実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の約20重量%~約30重量%を占める。別の実施形態では、共溶媒は、電解質組成物の約26重量%を占める。
【0036】
一実施形態では、電解質組成物は、少なくとも1つのフッ素化非環式カルボン酸エステルおよびエチレンカーボネートを含む。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテートおよびエチレンカーボネートを含む。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテートおよびフルオロオエチレンカーボネートを含む。
【0037】
本明細書で開示される電解質組成物はさらに、ある濃度で電解質組成物中に存在する、少なくとも1つのフィルム形成化合物であって、その濃度でフィルム形成化合物がLi/Li+参照電極に対して+1.0V未満の電位で分解する化合物を含む。本明細書で用いるところでは、用語「分解する」は、フィルム形成化合物が、リチウムイオン電池などの、電気化学セルのアノード上のフィルムの形成に関与する化学形態に列挙された電位範囲で化学的に変換することを意味する。フィルム形成化合物は、分解した場合、共溶媒および/またはフッ素化溶媒などの電解質組成物の他の成分と反応してフィルムを形成し得るか、または共溶媒および/またはフッ素化溶媒などの他の成分は、分解した場合、フィルム形成化合物と反応してフィルムを形成し得る。共溶媒もまた、ある濃度範囲で+1.0V未満の電位で分解し得るが、本発明の目的のためには、共溶媒およびフィルム形成化合物は、異なる、すなわち、同じ化合物ではない。フィルム形成化合物が分解する電位範囲は、その化学構造およびその濃度に依存する。例えば、フルオロオエチレンカーボネートおよび無水マレイン酸は、Li/Li+参照電極に対して+1.0V未満の電位で分解してフィルム形成に関与する。当業者は、本明細書の実施例に記載されるように、走査電子顕微鏡法を用いて列挙された電位範囲でフィルム形成化合物がアノード上にフィルムを形成する濃度を容易に測定することができる。いかなる理論に制約されることなく、フィルムは、アノードがバッテリー評価条件下で電解質成分と追加の持続反応をするのを防ぐと
仮定される。
【0038】
別の実施形態では、電解質組成物は、Li/Li+参照電極に対して1.0V以上でフィルムを形成しない。
【0039】
フィルム形成化合物の好適な例としては、限定なしに、フルオロオエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、および環状カルボン酸無水物が挙げられる。フルオロオエチレンカーボネートおよびエチレンカーボネートなどの、いくつかの化合物は、それらが使用される濃度に依存して、共溶媒またはフィルム形成化合物としての機能を果たすことができる。共溶媒のための濃度範囲は、上に与えられている。フィルム形成化合物またはその混合物は一般に、総電解質組成物の重量で約0.01%~約10%、より特に約0.05%~約10%、より特に約0.1%~約10%、より特に約0.1%~約5.0%、より特に約0.25%~約5.0%、より特に約0.25%~約3.0%の量で電解質組成物中に存在する。一実施形態では、電解質は、約0.25重量%~約5.0重量%で電解質組成物中に存在する。
【0040】
ある実施形態では、フィルム形成化合物は環状カルボン酸無水物である。好適な環状カルボン酸無水物は、次式:
【化2】
(式中、R
7~R
14が独立して、H、F;フッ素、アルコキシ、もしくはチオアルキルの1つ以上で任意選択的に置換されたC1~C10線状もしくは分岐アルキル、C2~C10アルケン、またはC6~C10アリールである)で表される。好適な環状カルボン酸無水物の例としては、限定なしに無水マレイン酸、無水コハク酸、グルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、2,3-ジヒドロ-1,4-ジチイオノ-[2,3-c]フラン-5,7 ジオン、およびフェニルマレイン酸無水物が挙げられる。これらの環状カルボン酸無水物の2つ以上の混合物がまた使用されてもよい。一実施形態では、環状カルボン酸無水物は無水マレイン酸である。これらの物質は、Sigma-Aldrich,Inc
.(ミルウォーキー(Milwaukee),WI)などのスペシャルティケミカル会社から入手することができる。環状カルボン酸無水物を少なくとも約99.0%、より特に少なくとも約99.9%の純度レベルまで精製することが望ましい。精製は、上に記載されたような、既知の方法を用いて行われ得る。
【0041】
一実施形態では、電解質組成物は、フッ素化非環式カルボン酸エステル、エチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテート、エチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。ある実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で約50%~約80%、または約70%、または約60%~約65%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約20%~約30%のエチレンカーボネート、および約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%の無水マレイン酸を含む。
【0042】
別の実施形態では、電解質組成物は、フッ素化非環式カルボン酸エステル、エチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに無水マレイン酸を含む。エチレンカーボネートおよび/またはフルオロエチレンカーボネートとは、エチレンカーボネート単独、フルオロエチレンカーボネート、またはエチレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとの混合物を意味する。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテート、エチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテート、フルオロオエチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で約50%~約80%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約10%~約40%、または約20%~約30%総合計のエチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに約0.25%~約5.0%の無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で約50%~約80%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約20%~約30%のエチレンカーボネート、約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%のフルオロオエチレンカーボネートおよび約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%の無水マレイン酸を含む。
【0043】
a)(i)式:
R
1-COO-R
2
で表されるフッ素化非環式カルボン酸エステル、
(ii)式:
R
3-OCOO-R
4
で表されるフッ素化非環式カーボネート、および
(iii)式:
R
5-O-R
6
で表されるフッ素化非環式エーテル
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、線状もしくは分岐アルキル基を独立して表し;R1およびR
2、R
3およびR
4、ならびにR
5およびR
6のいずれにおける炭素原子の合計も2~7であり;R
1および/またはR
2、R
3および/またはR
4、ならびにR
5および/またはR
6中の少なくとも2個の水素は、フッ素で置き換えられており;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5も、R
6も、FCH
2またはFCH基を含有しない)
からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化溶媒と;
b)エチレンカーボネート、フルオロオエチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの共溶媒と;
c)
【化3】
(式中、R
7~R
14が独立して、H、F;フッ素、アルコキシ、もしくはチオアルキルの1つ以上で任意選択的に置換されたC1~C10アルキル;C2~C10アルケン、またはC6~C10アリールである)からなる群から選択される少なくとも1つの環状カルボン酸無水物と;
d)少なくとも1つの電解質塩と
を含む電解質組成物が本明細書で提供される。
【0044】
電解質組成物は、電気化学セル、特にリチウムイオン電池に有用である。フッ素化溶媒および共溶媒は、上に記載された通りである。好適な環状カルボン酸無水物の例としては、限定なしに無水マレイン酸、無水コハク酸、グルタル酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、2,3-ジヒドロ-1,4-ジチイオノ-[2,3-c]フラン-5,7 ジオン、およびフェニルマレイン酸無水物が挙げられる。これらの環状カルボン酸無水物の2つ以上の混合物がまた使用されてもよい。一実施形態では、環状カルボン酸無水物は無水マレイン酸である。これらの物質は、Sigma-Aldrich,Inc.(ミルウォーキー,WI)などのスペシャルティケミカル会社から入手することができる。環状カルボン酸無水物を少なくとも約99.0%、より特に少なくとも約99.9%の純度レベルまで精製することが望ましい。精製は、上に記載されたような、既知の方法を用いて行われ得る。
【0045】
環状カルボン酸無水物、またはそれらの混合物は一般に、総電解質組成物の重量で約0.01%~約10%、より特に、約0.05%~約10%、より特に約0.1%~約10%、より特に約0.1%~約5.0%、より特に約0.25%~約5.0%、より特に約0.25%~約3.0%の量で存在する。
【0046】
一実施形態では、電解質は、約0.25重量%~約5.0重量%で電解質組成物中に存在する。
【0047】
一実施形態では、電解質組成物は、フッ素化非環式カルボン酸エステル、エチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテート、エチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。ある実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で約50%~約80%、または約70%、または約60%~約65%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約20%~約30%のエチレンカーボネート、および約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%の無水マレイン酸を含む。
【0048】
別の実施形態では、電解質組成物は、フッ素化非環式カルボン酸エステル、エチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに無水マレイン酸を含む。エチレンカーボネートおよび/またはフルオロエチレンカーボネートとは、エチレンカーボネート単独、フルオロエチレンカーボネート、またはエチレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとの混合物を意味する。別の実施形態では、電解質組成物は、2,2-ジフルオロエチルアセテート、フルオロオエチレンカーボネート、および無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で50%~約80%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約10%~約40%、または約20%~約40%、または約20%~約30%合計のエチレンカーボネートおよび/またはフルオロオエチレンカーボネート、ならびに約0.25%~約5.0%の無水マレイン酸を含む。別の実施形態では、電解質組成物は、総電解質組成物の重量で約50%~約80%の2,2-ジフルオロエチルアセテート、約20%~約30%のエチレンカーボネート、約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%のフルオロオエチレンカーボネートおよび約0.25%~約5.0%、または約0.25%~約3.0%の無水マレイン酸を含む。
【0049】
別の実施形態では、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、または他のリチウムボレート塩などの他の添加物が存在してもよい。
【0050】
本明細書で開示される電解質組成物はまた、少なくとも1つの電解質塩を含有する。好適な電解質塩としては、限定なしに
リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、
リチウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(LiPF3(C2F5)3)、
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウムビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム(フルオロスルホニル)(ノナフルオロブタン)イミド、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、
リチウムテトラフルオロボレート、
リチウムパークロレート、
リチウムヘキサフルオロアルセネート、
リチウムトリフルオロメタンスルホネート、
リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、
リチウムビス(オキサラト)ボレート、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、
Li2B12F12-xHx(ここで、xは、0~8に等しい)、および
フッ化リチウムとB(OC6F5)3などのアニオン受容体との混合物
が挙げられる。
【0051】
これらのまたは匹敵する電解質塩の2つ以上の混合物がまた使用されてもよい。一実施形態では、電解質塩はリチウムヘキサフルオロホスフェートである。電解質塩は、約0.
2~約2.0M、より特に約0.3~約1.5M、より特に約0.5~約1.2Mの量で電解質組成物中に存在することができる。
【0052】
本明細書で開示される電解質組成物はさらに、または任意選択的に、従来の電解質組成物に、特にリチウムイオン電池での使用のために有用であることが当業者に知られている添加剤を含むことができる。例えば、本明細書で開示される電解質組成物はまた、リチウムイオン電池の充電および放電中に発生するガスの量を低減するために有用であるガス低減添加剤を含むことができる。ガス低減添加剤は、任意の有効な量で使用することができるが、電解質組成物の約0.05重量%~約10重量%、あるいは約0.05重量%~約5重量%、またはあるいは電解質組成物の約0.5重量%~約2重量%を占めるように含めることができる。
【0053】
従来知られている好適なガス発生添加剤は、例えば:フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼンなどのハロベンゼン、またはハロアルキルベンゼン;1,3-プロパンサルトン;無水コハク酸;エチニルスルホニルベンゼン;2-スルホ安息香酸環状酸無水物;ジビニルスルホン;トリフェニルホスフェート(TPP);ジフェニルモノブチルホスフェート(DMP);γ-ブチロラクトン;2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン;1,2-ナフトキノン;2,3-ジブロモ-1,4-ナフトキノン;3-ブロモ-l,2-ナフトキノン;2-アセチルフラン;2-アセチル-5-メチルフラン;2-メチルイミダゾール1-(フェニルスルホニル)ピロール;2,3-ベンゾフラン;2,4,6-トリフルオロ-2-フェノキシ-4,6-ジプロポキシ-シクロトリホスファゼンおよび2,4,6-トリフルオロ-2-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)-6-エトキシ-シクロトリホスファゼンなどのフルオロ-シクロトリホスファゼン;ベンゾトリアゾール;パーフルオロオエチレンカーボネート;アニソール;ジエチルホスホネート;2-トリフルオロメチルジオキソランおよび2,2-ビストリフルオロメチル-1,3-ジオキソランなどのフルオロアルキル置換ジオキソラン;トリメチレンボレート;ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,5,5-トリメチル-2(3H)-フラノン;ジヒドロ-2-メトキシ-5,5-ジメチル-3(2H)-フラノン;ジヒドロ-5,5-ジメチル-2,3-フランジオン;プロペンサルトン;ジグリコール酸無水物;ジ-2-プロピニルオキサレート;4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸γ-ラクトン;CF3COOCH2C(CH3)(CH2OCOCF3)2;CF3COOCH2CF2CF2CF2CF2CH2OCOCF3;α-メチレン-γ-ブチロラクトン;3-メチル-2(5H)-フラノン;5,6-ジヒドロ-2-ピラノン;ジエチレングリコール、ジアセテート;トリエチレングリコールジメタクリレート;トリグリコールジアセテート;1,2-エタンジスルホン酸無水物;1,3-プロパンジスルホン酸無水物;2,2,7,7-テトラオキシド1,2,7-オキサジチエパン;3-メチル-、2,2,5,5-テトラオキシド1,2,5-オキサジチオラン;ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン;4,5-ジメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン;2-エトキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-1,3,5,2,4,6-トリアザトリホスホリン;2,2,4,4,6-ペンタフルオロ-2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-1,3,5,2,4,6-トリアザトリホスホリン;4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン;1,4-ビス(エテニルスルホニル)-ブタン;ビス(ビニルスルホニル)-メタン;1,3-ビス(エテニルスルホニル)-プロパン;1,2-ビス(エテニルスルホニル)-エタン;エチレンカーボネート;ジエチルカーボネート;ジメチルカーボネート;エチルメチルカーボネート;ならびに1,1’-[オキシビス(メチレンスルホニル)]ビス-エテンである。
【0054】
別の実施形態では、ハウジングと、ハウジング中に配置され、互いにイオン伝導性接触したアノードおよびカソードと、アノードとカソードとの間にイオン伝導性経路を提供する、上に記載されたような、電解質組成物と、アノードとカソードとの間の多孔質または
微孔質セパレータとを含む電気化学セルが本明細書で提供される。ハウジングは、電気化学セル構成要素を収納するための任意の好適な容器であってもよい。アノードおよびカソードは、電気化学セルのタイプに依存して任意の好適な導電性材料からなってもよい。アノード材料の好適な例としては、限定なしにリチウム金属、リチウム金属合金、リチウムチタネート、アルミニウム、白金、パラジウム、黒鉛、遷移金属酸化物、およびリチウム化酸化スズが挙げられる。カソード材料の好適な例としては、限定なしに黒鉛、アルミニウム、白金、パラジウム、リチウムまたはナトリウムを含む電気活性遷移金属酸化物、酸化インジウムスズ、ならびにポリピロールおよびポリビニルフェロセンなどの導電性ポリマーが挙げられる。
【0055】
多孔質セパレータは、アノードとカソードとの間の短絡を防ぐのに役立つ。多孔質セパレータは典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせなどの微孔質ポリマーの単層もしくは多層シートからなる。多孔質セパレータの細孔径は、イオンの移送を可能にするのに十分に大きいが、直接にか粒子透過またはアノードおよびカソード上からであり得る樹状突起によるかのどちらかでアノードとカソードとの接触を防ぐのに十分に小さい。
【0056】
別の実施形態では、電気化学セルはリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池用の好適なカソード材料としては、限定なしにLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiCo0.2Ni0.2O2もしくはLiV3O8;
LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、および0.001≦b≦0.1);
LiaNibMncCodReO2-fZf(ここで、0.8≦a≦1.2、0.1≦b≦0.5、0.2≦c≦0.7、0.05≦d≦0.4、0≦e≦0.2、b+c+d+eは約1であり、および0≦f≦0.08);
LiaA1-b,RbD2(0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5);
LiaE1-bRbO2-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5および0≦c≦0.05);
LiaNi1-b-cCobRcO2-dZd(ここで、0.9≦a≦1.8、0≦b≦0.4、0≦c≦0.05、および0≦d≦0.05);
Li1+zNi1-x-yCoxAlyO2(ここで、0<x<0.3、0<y<0.1、および0<z<0.06);
LiNi0.5Mn1.5O4;LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、ならびにLiVPO4F
などの、リチウムおよび遷移金属を含む電気活性化合物が挙げられる。
【0057】
上の化学式においてAは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、Zr、Ti、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり;Zは、F、S、P、またはそれらの組み合わせである。好適なカソードとしては、米国特許第5,962,166号明細書、同第6,680,145号明細書、同第6,964,828号明細書、同第7,026,070号明細書、同第7,078,128号明細書、同第7,303,840号明細書、同第7,381,496号明細書、同第7,468,223号明細書、同第7,541,114号明細書、同第7,718,319号明細書、同第7,981,544号明細書、同第8,389,160号明細書、同第8,394,534号明細書、および同第8,535,832号明細書、ならびにそれら中の参考文献に開示されているものが挙げられる。「希土類元素」とは、La~Luのランタニド元素、ならびにYおよびScを意味する。
【0058】
別の実施形態では、本明細書で開示されるリチウムイオン電池でのカソードは、Li/Li+参照電極に対して4.6V超の電位範囲で30mAh/g超の容量を示すカソード活性材料を含む。そのようなカソードの一例は、カソード活性材料としてスピネル構造を有するリチウム含有マンガン複合酸化物を含む安定化マンガンカソードである。本明細書での使用に好適なカソードでのリチウム含有マンガン複合酸化物は、式LixNiyMzMn2-y-zO4-d(式中、xは0.03~1.0であり;xは、充電および放電中にリチウムイオンおよび電子の放出および取込みに従って変化し;yは0.3~0.6であり;Mは、Cr、Fe、Co、Li、Al、Ga、Nb、Mo、Ti、Zr、Mg、Zn、V、およびCuの1つ以上を含み;zは0.01~0.18であり;dは0~0.3である)の酸化物を含む。一実施形態では上式において、yは0.38~0.48であり、zは0.03~0.12であり、dは0~0.1である。一実施形態では上式において、Mは、Li、Cr、Fe、CoおよびGaの1つ以上である。安定化マンガンカソードはまた、米国特許第7,303,840号明細書に記載されているように、マンガン含有スピネル構成要素およびリチウムに富む層状構造を含有するスピネル層状複合材料を含んでもよい。
【0059】
別の実施形態では、本明細書で開示されるリチウムイオン電池でのカソードは、Li/Li+参照電極に対して約4.35V以上、または4.5V超の、または4.6V超の電位まで充電されるカソード活性材料を含む。他の例は、4.5Vよりも上の上方充電電位まで充電される米国特許第7,468,223号明細書に記載されているものなどの層状-層状高容量酸素放出カソードである。
【0060】
本明細書での使用に好適なカソード活性材料は、Liuら(J.Phys.Chem.C 13:15073-15079,2009)によって記載されている水酸化物前駆体法などの方法を用いて調製することができる。その方法では、水酸化物前駆体は、KOHの添加によって必要量のマンガン、ニッケルおよび他の所望の金属アセテートを含有する溶液から沈澱させられる。結果として生じた沈澱物はオーブン乾燥させられ、次に本明細書の実施例に詳細に記載されるように、3~24時間酸素中約800~約950℃で必要量のLiOH・H2Oと焼成される。あるいは、カソード活性材料は、米国特許第5,738,957号明細書(Amine)に記載されているような固相反応プロセスまたはゾル-ゲルプロセスを用いて調製することができる。
【0061】
本明細書での使用に好適な、カソード活性材料がその中に含有されるカソードは、有効量のカソード活性材料(例えば約70重量%~約97重量%)と、ポリ二フッ化ビニリデンなどの、ポリマーバインダーと、N-メチルピロリドンなどの、好適な溶媒中の導電性カーボンとを混合してペーストを生み出し、ペーストが次に、アルミ箔などの電流コレクタ上へコートされ、カソードを形成するために乾燥させられるなどの方法によって調製され得る。
【0062】
本明細書で開示されるようなリチウムイオン電池はさらに、リチウムイオンを貯蔵するおよび放出することができるアノード活性材料を含む、アノードを含有する。好適なアノード活性材料の例としては、限定なしにリチウム-アルミニウム合金、リチウム-鉛合金、リチウム-ケイ素合金、リチウム-スズ合金などのリチウム合金;黒鉛およびメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)などのカーボン材料;黒リン、MnP4およびCoP3などのリン含有材料;SnO2、SnOおよびTiO2などの金属酸化物;アンチモンまたはスズを含有するナノ複合材料、例えば、Yoonら(Chem.Mater.21,3898-3904,2009)によって記載されているものなどの、アンチモンと、アルミニウム、チタン、もしくはモリブデンの酸化物と、カーボンとを含有するナノ複合材料;ならびにLi4Ti5O12およびLiTi2O4などのリチウムチタネートが挙げられる。一実施形態では、アノード活性材料は、リチウムチタネートまたは黒鉛である。
【0063】
アノードは、カソードについて上に記載されたものに似た方法によって製造することができ、ここで、例えば、フッ化ビニルベースのコポリマーなどのバインダーが有機溶媒または水に溶かされるかまたは分散させられ、それは次にペーストを得るために活性の、導電性材料と混合される。ペーストは、電流コレクタとして使用される、金属箔、好ましくはアルミもしくは銅箔上へコートされる。ペーストは、好ましくは熱を使って、乾燥させられ、その結果活性マスは電流コレクタに接合される。好適なアノード活性材料およびアノードは、Hitachi NEI Inc.(サマセット(Somerset),NJ)、およびFarasis Energy Inc.(ヘイワード(Hayward),CA)などの会社から商業的に入手可能である。
【0064】
本明細書で開示されるようなリチウムイオン電池はまた、アノードとカソードとの間に多孔質セパレータを含有する。多孔質セパレータは、アンードとカソードとの間の短絡を防ぐのに役立つ。多孔質セパレータは典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドもしくはポリイミド、またはそれらの組み合わせなどの微孔質ポリマーの単層もしくは多層シートからなる。多孔質セパレータの細孔径は、イオンの移送を可能にしてアノードとカソードとの間のイオン伝導性接触を提供するのに十分に大きいが、直接にか粒子透過またはアノードおよびカソード上からであり得る樹状突起によるかのどちらかでアノードとカソードとの接触を防ぐのに十分に小さい。本明細書での使用に好適な多孔質セパレータの例は、米国特許出願第12/963,927号明細書(2010年12月9日出願、米国特許出願公開第2012/0149852号明細書)に開示されている。
【0065】
本明細書のリチウムイオン電池のハウジングは、上に記載されたリチウムイオン電池構成要素を収納するための任意の好適な容器であってもよい。そのような容器は、小さいまたは大きいシリンダー、プリズム状ケースまたはポーチの形状に製造されてもよい。
【0066】
本明細書で開示されるリチウムイオン電池は、コンピュータ、カメラ、ラジオもしくは電動工具などの様々な電子的に動くまたは電子的に支援されたデバイス(「電子デバイス」)、様々な電気通信機器、または様々な輸送機器(動力車、自動車、トラック、バスもしくは飛行機など)においてグリッド蓄積用にまたは動力源として用いられ得る。
【実施例】
【0067】
用いられる省略形の意味は次の通りである:「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「L」はリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mol」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「M」はモル濃度を意味し、「重量%」は重量パーセントを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「ppm」は百万当たりの部を意味し、「h」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「A」はアンペアを意味し、「mA」はミリアンペアを意味し、「mAh/g」は1グラム当たりのミリアンペア時を意味し、「V」はボルトを意味し、「kV」はキロボルトを意味し、「eV」は電子ボルトを意味し、「keV」はキロ電子ボルトを意味し、「xC」は、xとAh単位で表されるバッテリーの呼び容量に数値的に等しいA単位の電流との積である定電流を意味し、「Pa」はパスカルを意味し、「kPa」はキロパスカルを意味し、「rpm」は1分当たりの回転数を意味し、「psi」は1平方インチ当たりのポンドを意味し、「NMR」は核磁気共鳴分光法を意味し、「GC/MS」はガスクロマトグラフィー/質量分析法を意味する。
【0068】
原材料および方法
2,2-ジフルオロエチルアセテートの調製
以下の実施例に使用される2,2-ジフルオロエチルアセテートは、酢酸カリウムをHCF2CH2Brと反応させることによって調製した。下記は、調製のために用いられる
典型的な手順である。
【0069】
酢酸カリウム(Aldrich,ミルウォーキー,WI,99%)を、4~5時間0.5~1mmのHg(66.7~133Pa)の真空下に100℃で乾燥させた。乾燥原材料は、カールフィッシャー滴定によって測定されるように、5ppm未満の含水率を有した。ドライボックス中で、212g(2.16モル、8モル%過剰)の乾燥酢酸カリウムを、重い磁気攪拌子を含有する1.0Lの3口丸底フラスコに入れた。フラスコをドライボックスから取り出し、ドラフトへ移し、熱電対ウェル、ドライアイス冷却器、および滴下漏斗を備え付けた。
【0070】
スルホラン(500mL,Aldrich,99%,カールフィッシャー滴定によって測定されるように600ppmの水)を溶融させ、窒素の流れ下に液体として3口丸底フラスコに添加した。攪拌を開始し、反応媒体の温度を約100℃にした。HCF2CH2Br(290g,2モル,E.I.du Pont de Nemours and Co.,99%)を滴下漏斗に入れ、反応媒体にゆっくり添加した。添加は穏やかに発熱であり、反応媒体の温度は、添加の開始後15~20分で120~130℃に上昇した。HCF2CH2Brの添加を、内温を125~135℃に維持する速度に保った。添加は約2~3時間を要した。反応媒体を追加の6時間120~130℃で攪拌した(典型的にはこの時点での臭化物の転化率は、約90~95%であった)。次に、反応媒体を室温に冷却し、一晩攪拌した。翌朝、加熱の別の8時間再開した。
【0071】
この時点で出発臭化物はNMRによって検出されず、粗反応媒体は、0.2~0.5%の1,1-ジフルオロエタノールを含有した。反応フラスコ上のドライアイス冷却器を、Teflon(登録商標)バルブ付きホースアダプタで置き換え、フラスコを、冷トラップ(-78℃、ドライアイス/アセトン)を通して機械的真空ポンプに連結した。反応生成物を、1~2mmHg(133~266Pa)の真空下に40~50℃で冷トラップ中へ移した。この移動は約4~5時間を要し、約98~98.5%純度の220~240gの粗HCF2CH2OC(O)CH3をもたらし、それは、少量のHCF2CH2Br(約0.1~0.2%)、HCF2CH2OH(0.2~0.8%)、スルホラン(約0.3~0.5%)および水(600~800ppm)で汚染されていた。粗生成物のさらなる精製は、大気圧で回転バンド蒸留を用いて実施した。106.5~106.7℃の沸点を有する留分を集め、不純物プロフィールを、GC/MS(キャピラリーカラムHP5MS、フェニル-メチルシロキサン、Agilent 19091S-433、30m、250μm、0.25μm;キャリアガス-He、流量1mL/分;温度プログラム:40℃、4分、温度ランプ30℃/分、230℃、20分)を用いて監視した。典型的には、240gの粗生成物の蒸留は、99.89%純度、(250~300ppmのH2O)の約120gのHCF2CH2OC(O)CH3および99.91%純度(約280ppmの水を含有する)の80gの物質を与えた。水は、水がカールフィッシャー滴定によって検出できなくなる(すなわち、1ppm未満)まで3Aモレキュラーシーブでの処理によって蒸留生成物から除去した。
【0072】
LiMn1.5Ni0.45Fe0.05O4カソード活性材料の調製
下記は、本カソード活性材料の調製のために用いられる典型的な手順である。LiMn1.5Ni0.45Fe0.0504の調製のために、401gの酢酸マンガン(II)四水和物(Aldrich,ミルウォーキー WI,製品No.63537)、125gの酢酸ニッケル(II)四水和物(Aldrich,製品No.72225)および10gの酢酸鉄(II)無水(Alfa Aesar,ワードヒル(Ward Hill),MA,製品No.31140)を、天秤上のボトル中へ秤量し、次に5.0Lの脱イオン水に溶かした。KOHペレットを、30L反応器内で10Lの脱イオン水に溶かして3.0M溶液を生成した。金属酢酸塩を含有する溶液を滴下漏斗に移し、迅速に攪拌される反
応器中へ注入して混合水酸化物材料を沈澱させた。いったん金属酢酸塩溶液の全5.0Lを反応器に添加すると、攪拌を1時間続行した。次に、攪拌を停止し、沈澱物を一晩沈降させた。沈降後に、液体を反応器から除去し、15Lの新鮮脱イオン水を添加した。反応器の内容物を攪拌し、再び沈降させ、液体を除去した。このリンスプロセスを繰り返した。次に、沈澱物を、Dacron(登録商標)紙でカバーされた2つの(等分された)粗いガラスフリット濾過漏斗に移した。固形分を、濾液pHが6.0(脱イオンリンス水のpH)に達するまで脱イオン水でリンスし、さらに20Lの脱イオン水を各フィルターケーキに添加した。最後に、ケーキを一晩真空オーブン中120℃で乾燥させた。この時点での収率は典型的には80~90%であった。
【0073】
水酸化物沈澱物をすり潰し、炭酸リチウムと混合した。この工程は、Pulverisette自動乳鉢および乳棒(FRITSCH,ドイツ)を用いて50gバッチで行った。各バッチについて水酸化物沈澱物を秤量し、次にPulveresetteにて5分間単独ですり潰した。次に、少過剰の化学量論量の炭酸リチウムをシステムに添加した。50gの水酸化物沈澱物に対して、10.5gの炭酸リチウムを添加した。すり潰しは、鋭い金属スパチュラで乳鉢および乳棒の表面から材料をこすり落とすために10~15分毎に止めて合計60分間続行した。湿気が材料に塊を形成させる場合には、塊をすり潰し中に一回40メッシュスクリーンによって篩分けし、次に再びすり潰しに進んだ。
【0074】
すり潰した材料を、浅い長方形のアルミナトレイ内でエアボックス炉にて焼成した。トレイは、サイズが158mm×69mmであり、それぞれ約60gの材料を保持した。焼成手順は、15時間で室温から900℃までのランピング、12時間900℃での保持、次に15時間で室温への冷却からなった。
【0075】
焼成後に、粉末をボールミルにかけて粒径を下げた。次に、54gの粉末を、ポリエチレンジャー内で54gのイソプロピルアルコールおよび160gの5mm直径ジルコニアビーズと混合した。ジャーを次に6時間一対のローラー上で回転させて粉砕した。スラリーを遠心分離によって分離し、粉末を120℃で乾燥させて水分を除去した。
【0076】
カソード調製
下記は、本明細書の実施例に使用されるカソードの調製のために用いられる典型的な手順である。バインダーは、NMP(N-メチルピロリドン,KFL No.1120,Kureha America Corp.ニューヨーク,NY)中のポリフッ化ビニリデンの12%溶液として入手した。次の原材料を使用して電極ペーストを作った:上に調製されたような4.16gのLiMn1.5Ni0.45Fe0.05O4カソード活性粉末;0.52gのカーボンブラック(非圧縮Denka、電気化学工業株式会社、日本);4.32gのPVDF(ポリ二フッ化ビニリデン)溶液;および7.76g+1.40gのNMP(Sigma Aldrich)。原材料を、下に記載されるように、80:10:10、カソード活性粉末:PVDF:カーボンブラックの比で組み合わせた。最終的なペーストは、28.6%の固体を含んでいた。
【0077】
カーボンブラック、NMPの第1部分、およびPVDF溶液を先ずプラスチックバイアル中で組み合わせ、毎回2000rpmで60秒間、2回遠心力を利用して混合した(ARE-310,Thinky USA,Inc.,ラグーナヒルズ(Laguna Hills),CA)。カソード活性粉末およびNMPの第2部分を添加し、ペーストを、2回遠心力を利用して混合した(2000rpmで2×1分)。バイアルを氷浴に入れ、ホモジナイザー(モデルPT 10-35 GT、7.5mm直径固定子、Kinematicia,ボヘミア(Bohemia),NY)の回転子-固定子シャフトをバイアル中へ挿入した。バイアルトップと固定子との間の隙間をアルミ箔でラップしてバイアル中への水浸入を最小限にした。結果として生じたペーストを、6500rmpで各15分間2
回、次に9500rpmで15分間さらに2回均質にした。4回の均質化期間のそれぞれの間に、ホモジナイザーをペーストバイアルの別の場所に移動させた。
【0078】
ペーストを、自動コーター(AFA-II,MTI Corp.,リッチモンド(Richmond),CA)を用い、アルミ箔(25μm厚さ,1145-0,Allfoils,ブルックリンハイツ(Brooklyn Heights),OH)上へ0.41~0.51mmゲート高さのドクターブレードを用いてキャストした。電極を、機械的対流オーブン(モデルFDL-115,Binder Inc.,グレートリバー(Great River),NY)中95℃で30分間乾燥させた。結果として生じた51mm幅カソードを、125μm厚さの真ちゅうシート間に入れ、周囲温度で100mm直径スチールロールを用いて3回カレンダーを通過させ、ニップ力は、260kgでスタートして770kgでの最終パスで、パスのそれぞれにおいて増加した。カソード活性材料のローディングは、9~12mg/m2であった。
【0079】
アノード調製
下記は、本明細書の実施例に使用されるアノードの調製のために用いられる典型的な手順である。アノードペーストは、次の原材料から調製した:5.00gの黒鉛(Cpreme(登録商標)G5,Conoco-Philips,ヒューストン(Huston),TX);0.2743gのカーボンブラック(Super C65,Timcal,ウェストレイク(Westlake),OH);3.06gのPVDF(NMP.KFL #9130,Kureha America Corp.中の13%);11.00gの1-メチル-2-ピロリジノン(NMP);および0.0097gのシュウ酸。原材料を、下に記載されるように、88:0.17:7:4.83、黒鉛:シュウ酸:PVDF:カーボンブラックの比で組み合わせた。最終ペーストは、29.4%の固形分を含有した。
【0080】
シュウ酸、カーボンブラック、NMP、およびPVDF溶液をプラスチックバイアル中で組み合わせた。原材料を、プラネタリー遠心ミキサーを用いて2000rpmで60秒間混合した。混合を2度繰り返した。黒鉛を次に添加した。結果として生じたペーストを、2回遠心力を利用して混合した。バイアルを氷浴中に取り付け、毎回6500rmpで15分間回転子-固定子を用いて2回、次に9500rpmで15分間さらに2回均質にした。固定子シャフトがバイアルに入るポイントをアルミ箔でラップしてバイアルへの水蒸気侵入を最小限にした。4回の均質化期間のそれぞれの間に、ホモジナイザーをペーストバイアルの別の場所に移動させた。ペーストを次に3回遠心力を利用して混合した。
【0081】
ペーストを、自動コーターを用い、銅箔(CF-LBX-10、福田金属箔粉工業株式会社(Fukuda)、京都、日本)上へ230μmゲート高さのドクターブレードを用いてキャストした。電極を、機械的対流オーブン中95℃で30分間乾燥させた。結果として生じた51mm幅アノードを、125μm厚さの真ちゅうシート間に入れ、周囲温度で100mm直径スチールロールを用いて3回カレンダーを通過させ、ニップ力は、260kgでスタートして770kgでの最終パスで、パスのそれぞれにおいて増加した。
【0082】
コイン電池
円形アノード14.3mm直径およびカソード12.7mm直径を、上に記載された電極シートからパンチアウトし、グローブボックス(Vacuum Atmospheres,ホーソン(Hawthorne),CA,HE-493清浄器付き)の副室のヒーター中に入れ、90℃で一晩真空下にさらに乾燥させ、アルゴン充満グローブボックスに持ち込んだ。非水性電解質リチウム-イオンCR2032コイン電池は、電気化学的評価のために調製した。コイン電池パーツ(ケース、スペーサー、波形ばね、ガスケット、および蓋)ならびにコイン電池クリンパーは、宝泉株式会社(大阪、日本)から入手した。セ
パレータは、ポリイミドナノファイバー(Energain(登録商標),E.I.du
Pont de Nemours and Company,ウィルミントン(Wilmington),DE)であった。コイン電池の調製に使用される非水性電解質は、以下の実施例に記載される。
【0083】
実施例1~43および比較例1~16
コイン電池の高温性能
コイン電池を、おおよそ0.1Cレートである、カソード活性材料の1グラム当たり12mAの電流で3.4~4.9Vの電位限界間で充電するおよび放電する定電流を用いて周囲温度で市販のバッテリーテスタ(Series 4000,Maccor,タルサ(Tulsa),OK)を用いるフォーメーションについて2回サイクルさせた。コイン電池を55℃でオーブン中に入れ、おおよそ2Cレートである、カソード活性材料の1グラム当たり240mAの電流で3.4~4.9Vの電圧限界間で充電するおよび放電する定電流を用いてサイクルさせた。
【0084】
結果を、使用される溶媒および添加物、フォーメーションの第1サイクルにおいて測定されるクーロン効率(CE)、CE=(放電容量)/(充電容量)、カソード活性材料の1グラム当たりの55℃での第1サイクルにおける放電容量、第10サイクルにおけるCE、ならびに55℃でのサイクル寿命を提供する、表1にまとめる。サイクル寿命は、55℃でのサイクリングの第2サイクルにおいて測定される容量の80%まで放電容量を低下させるのに必要とされるサイクルの数として測定した。Nは、サイクル寿命データについて平均された実験の数を示す。
【0085】
実施例1および2では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC,BASF,インディペンデンス,OH)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%の無水マレイン酸(MA,Sigma Aldrich,ミルウォーキー,WI)、および11.4重量%のLiPF6(BASF,インディペンデンス,OH)の混合物であった。電解質は、DFEAをECおよびMAと組み合わせることによって調製し、この混合物をさらに3Aモレキュラーシーブで乾燥させた。このシーブを除去した後、塩を添加した。
【0086】
実施例3および4では、電解質は、実施例1および2の方法に似た方法によって調製された、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%のグルタル酸無水物(GA,Sigma Aldrich,ミルウォーキー,WI)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0087】
実施例5~7では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%の2,3-ジメチルマレイン酸無水物(Sigma-Aldrichから入手した、DMMA)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0088】
実施例8~10では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%のシトラコン酸無水物(Sigma-Aldrichから入手した、MMA)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0089】
実施例11~13では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%の1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物(Sigma-Aldrichから入手
した、CpMA)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0090】
実施例14~16では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%のフェニルマレイン酸無水物(Sigma-Aldrichから入手した、PhMA)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0091】
実施例17では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.50%のMA、0.50%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0092】
実施例18では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.25%のMA、0.75%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0093】
実施例19では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.75%のMA、0.25%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0094】
実施例20では、電解質は、26.11重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1,0%のCA(Aldrichから入手したシトラコン酸無水物)、1.0%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0095】
実施例21では、電解質は、26.11重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1,0%のIA(Aldrichから入手したイタコン酸無水物)、1.0%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0096】
実施例22では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.1%のグルタル酸無水物(GA)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0097】
実施例23では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.5%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0098】
実施例24では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0099】
実施例25では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のMA、0.3%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0100】
実施例26では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のMA、0.1%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0101】
実施例27では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.
3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.3%のMA、0.3%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0102】
実施例28では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.3%のMA、0.1%のGA、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0103】
実施例29では、電解質は、25.55重量%のエチレンカーボネート(EC)、60.95重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、3.0%のMA、および10.49重量%のLiPF6の混合物であった。
【0104】
実施例30では、電解質は、24.55重量%のエチレンカーボネート(EC)、59.95重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、3.0%のMA、3.0%のFEC、および9.49重量%のLiPF6の混合物であった。
【0105】
実施例31では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のGA、1.0%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0106】
実施例32では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のGA、1.0%のIA、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0107】
実施例33では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のMA、1.0%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0108】
実施例34では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.5%のMA、0.5%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0109】
実施例35では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.25%のMA、0.75%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0110】
実施例36では、電解質は、26.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.75%のMA、0.25%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0111】
実施例37では、電解質は、25.22重量%のエチレンカーボネート(EC)、60.62重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、2.0%のMA、2.0%のFEC、および10.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0112】
実施例38では、電解質は、25.55重量%のエチレンカーボネート(EC)、60.95重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0%のMA、2.0%のFEC、および10.49重量%のLiPF6の混合物であった。
【0113】
実施例39では、電解質は、25.55重量%のエチレンカーボネート(EC)、60.95重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、2.0%のMA、1.0%のFEC、および10.49重量%のLiPF6の混合物であった。
【0114】
実施例40では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、0.5%のMA、1.5%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0115】
実施例41では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.5%のMA、0.5%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0116】
実施例42では、電解質は、25.89重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.29重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、2.0%のMA、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0117】
比較例1および2では、電解質は、26.5重量%のEC、62.0%のDFEA、および11.5%のLiPF6の混合物であった。
【0118】
比較例3および4では、電解質は、26.5重量%のEC、62.0%のEMC、および11.5%のLiPF6の混合物(標準電解質,BASF,インディペンデンス,OH)であった。
【0119】
比較例5および6では、電解質は、31.8重量%のEC、54.8重量%のEMC、および12.4重量%のLiPF6、ならびに1%のMAの混合物であった。
【0120】
比較例7および8では、電解質は、26.3重量%のエチレンカーボネート(EC)、61.3重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテート(DFEA)、1.0重量%の無水フタル酸(PA,Sigma Aldrich,ミルウォーキー,WI)、および11.4重量%のLiPF6の混合物であった。
【0121】
比較例9では、電解質は、26.22重量%のEC、61.62%のEMC、1.0%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0122】
比較例10では、電解質は、26.22重量%のEC、61.62%のDFEA、1.0%のFEC、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0123】
比較例11では、電解質は、25.89重量%のEC、61.29%のEMC、1.0%のMA、1.0%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0124】
比較例12では、電解質は、26.22重量%のEC、61.62%のDFEA、1.0%のES(Aldrichから入手した、エチレンスルフィド)、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0125】
比較例13では、電解質は、26.22重量%のEC、61.62%のDFEA、1.0%のVEC(Aldrichから入手した、ビニルエチレンカーボネート)、および11.16重量%のLiPF6の混合物であった。
【0126】
比較例14では、電解質は、25.89重量%のEC、61.29%のDFEA、2.0%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0127】
比較例15では、電解質は、25.55重量%のEC、60.95%のDFEA、3.0%のFEC、および10.49重量%のLiPF6の混合物であった。
【0128】
比較例16では、電解質は、25.89重量%のEC、61.29%のEMC、1.0%のMA、1.0%のFEC、および10.83重量%のLiPF6の混合物であった。
【0129】
表1に示される結果は、本明細書で(実施例1~13)開示されるような、フッ素化非環式カルボン酸エステル(すなわち、DFEA)、共溶媒(すなわち、EC)、および環状カルボン酸無水物を含有する電解質が、環状カルボン酸無水物なしでフッ素化非環式カルボン酸エステル(すなわち、DFEA)および共溶媒(すなわち、EC)を含有する電解質(比較例1および2)、標準電解質(比較例3および4)、ならびに環状カルボン酸無水物(すなわち、MA、比較例5および6)を含有する標準電解質よりも著しく長いサイクル寿命を与えたことを実証する。DFEA、EC、およびPhMAを含有する電解質(実施例14~16)は、環状カルボン酸無水物なしでECおよびDFEAを含有する電解質(比較例1および2)ならびにEC、EMCおよびMAを含有する電解質(比較例5および6)よりも長いサイクル寿命を与えた。標準電解質への環状カルボン酸無水物の添加(比較例5および6)は、環状カルボン酸無水物添加物なしの標準電解質(比較例3および4)と比較してサイクル寿命の低下を生み出した。しかし、フッ素化溶媒を含有する電解質への環状カルボン酸無水物の添加(実施例1~16)は、環状カルボン酸無水物添加物なしの同じ電解質(比較例1および2)と比較してサイクル寿命の著しい改善を生み出した。明らかに、フッ素化溶媒電解質と本明細書で開示される環状カルボン酸無水物添加物との間に予期しない相乗効果が存在する。
【0130】
無水フタル酸の添加(比較例7~8)は、第1フォーメーションサイクルにおける非常に低いクーロン効率、それ故に55℃での第1サイクルにおける低い放電容量のセルをもたらし、選択された環状カルボン酸無水物添加物のみが、この電解質システムにおいて高容量と高サイクル寿命との組み合わせの改善された性能を提供することを実証した。
【0131】
比較例12~13は、フッ素化溶媒電解質と組み合わせられた、一般に使用されるエチレンサルファイトおよびビニルエチレンカーボネートが不十分な性能を与えたことを示す。
【0132】
実施例33は、フッ素化溶媒システムと1%のFECおよび1%のMAとの組み合わせが、電解質組成物が同じ添加物入りの非フッ素化システムである、比較例11と比べてサイクル寿命(4倍)およびクーロン効率を大きく改善したことを示す。環状カルボン酸無水物添加物が、比較例10のフッ素化溶媒システムまたは比較例9の非フッ素化溶媒システムにおいてのどちらにも使用されなかった場合、サイクル寿命は大きく低下した。
【0133】
電解質組成物が、3%の総添加物濃度のために、1%のMAおよび2%のFECを含有した、実施例38は、電解質組成物が3%で、ただ一つの非酸無水物添加物、FECを含有した、比較例15と比較して4倍超のサイクル寿命耐久性を示す。
【0134】
電解質組成物が、2%の総添加物濃度のために、1%のMAおよび1%のFECのフッ素化溶媒システムを含有した、実施例33は、電解質組成物が2%のFECを含有したが、環状カルボン酸無水物添加物をまったく含有しなかった、比較例14と比較して2倍増加したサイクル寿命耐久性を示す。
【0135】
電解質組成物が1%のFECおよび1%のMAならびにフッ素化溶媒を含有した、実施例33は、電解質組成物が同じ試料添加物濃度を含有したが、非フッ素化溶媒を含有しなかった、比較例11と比較して4倍のサイクル寿命耐久性を有する。この結果は、環状カルボン酸無水物と他の添加物(例えば、FEC)との間の相乗効果がフッ素化溶媒なしの電解質にまで及ばないことを示す。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
実施例43~46および比較例16~17
ポーチ電池および面積固有インピーダンス
カソードは、乾燥カソード中の重量比が活性:PVDFバインダー:カーボンブラック=86:7:7であり、そしてカーボンブラックがSuper C65(Timcal,ウェストレイク,OH)であることを除いて、上に記載されたものに似た手順で調製した。カソードを31.3×45mm2サイズにパンチアウトし、カソード活性材料の平均ローディングは、9.1mg/cm2であった。アノードは、上に記載されたものに似た手順で調製したが、32.4×46.0mm2にパンチアウトし、アノード活性ローディングは、4.8mg/cm2であった。単層ポーチ電池を、微孔質ポリオレフィンセパレータ(Celgard 2500,シャーロット(Charlotte),NC)と、電流コレクタに超音波溶接されたAlおよびNiタブと、箔-ポリマーラミネートポーチ材料
(MTI Corp.,リッチモンド,CA)とを使用して組み立てた。1エッジが依然としてオープンであるセルを60℃で真空下に乾燥させ、Ar充満ドライボックスに持ち込んだ。次に、表2に示される電解質をセルへ注入し、セルを真空シールした。表2に示される電解質を調製する際に、溶媒ECおよびDFEAを先ず混合し、シーブを使用して乾燥させ、次に塩を添加してベース電解質を作った。MAを昇華によって精製し、乾燥させ、FECをモレキュラーシーブで乾燥させた。最後に、添加物MAおよび/またはFECをベース電解質に添加した。セルを固定具に取り付け、それにポーチの活性面積に0.32MPa圧力を加えた。
【0140】
セルを、25℃でおよびカソード活性材料の1g当たり12mAの定電流(CC)を用いて3.4~4.9Vの電圧限界間で2つのフォーメーションサイクルにかけた。セルを次に、40mA/gプラス2.4mA/gへの定電圧(CV)での電流漸減でCC充電と、CVなしで40mA/gのCC放電とを用いて3.4~4.9Vで2回サイクルさせた。セル容量は、CVなしで40mA/gの第2CC放電から計算した。セルを次に、充電および放電の両方とも240mA/gで5回サイクルさせた。
【0141】
室温で5サイクルの後、セルのパルス電力特性を次の通り測定した。セルを、電流が0.02Cに達するまでC/3引き続きCVホールドで3.4Vまで放電することによって室温で完全に放電した。上で計算されたセル容量に基づき、セルを、C/3で60%充電状態(SOC)まで25℃で充電し、次に電圧を安定させるために10分間開回路で保持した。短い放電パルスへのバッテリーの反応を、下に記載されるように、C/3、C/1、3C、および5Cの順次放電電流について測定した。
【0142】
C/3での測定は、バッテリーをC/3放電電流で10秒パルスにかけることによって実施した。パルスの終わりに、バッテリーを10分間開回路で放置した。放電パルスは、バッテリーの充電状態の小さい低下をもたらした。バッテリーを60%SOCに戻すために、バッテリーを次にC/3で10分間再充電した。バッテリーを次に10分間開回路で保持した。C/1での測定は、次に10秒間1Cの放電電流を流すことによって実施した。これに、開回路での10分間、30秒間C/3で充電することによる60%SOCへのバッテリーのバック再充電、および開回路での10分ホールドが続いた。3Cでの測定は、10秒間3Cの放電電流を流すことによって次に実施した。これに、開回路での10分間、90秒間C/3で60%SOCへのバッテリーのバック再充電、および開回路での10分ホールドが続いた。最後の5Cでのパルス電力測定は、10秒間5Cでバッテリーを放電するによって実施した。これに、開回路での10分間、150秒間C/3で60%SOCへのバッテリーのバック再充電、および開回路での10分ホールドが続いた。
【0143】
パルス電力性能は、DC電流パルスに対するセルの抵抗、つまりインピーダンスで特徴づけられる。オーム(Ω)の単位を有する、このインピーダンスは、セルが高い出力を提供する能力ならびに短い放電および充電パルスの高いバッテリー効率の尺度である。低いインピーダンスが好ましい。研究所間で結果を比較するために、インピーダンスにセル中の制限電極の幾何学的面積を乗じることによってセルの面積に対してインピーダンスを正規化してΩ・cm2の単位の、面積固有インピーダンス(ASI)をもたらす。
【0144】
測定されるASIは、バッテリー設計、バッテリーに使用される材料の特性、ならびにDCパルスの特性(時間および電流)の関数である。バッテリーの他の構成要素を一定に保ち、同一の電流パルスを用いながら電解質を変えることによって、本技術は、電解質の性能特性に関する情報を提供する。
【0145】
ASIは、次の通りC/3、C/1、3Cおよび5Cでの電力パルスのそれぞれについて計算した。10秒パルス中の電圧降下ΔVは、DC電流パルスの印加の直前の電圧から
(バッテリーが依然として開回路にありながら)DC電流パルスの終わりに(放電電流が依然として流されながら)測定される電圧を差し引くことによって測定した。ASIを次に、式:
ASI(ohm・cm2)=ΔV(ボルト)×A(cm2)/I(A)
(ここで、Iは、放電パルス中の電流であり、Aは、制限電極の幾何学的面積であり、それは、この測定が実施されるポーチ電池についてはカソードであった)
から計算した。ここで報告される測定に使用される材料の組み合わせについては、ASIは放電電流に弱依存性であった。5Cおよび25℃で測定されたASIについての値を表2に報告する。
【0146】
表2のデータから理解できるように、実施例45および46でのMA添加物とFEC添加物との組み合わせは、23~23.8ohm・cm2のASIを与えた。この添加物組み合わせは、FEC単独の電解質(比較例10)よりも著しく高いサイクル寿命(実施例33)を同時に与えながら、MA単独(実施例43および44に示されるように、27.2~27.8ohm・cm2)よりも低いASIを与えることができる。
【0147】
【0148】
比較例18
2,2-ジフルオロエチルプロピオネートおよびエチレンカーボネートを含有する電解質組成物-伝導性および凝固点
2,2-ジフルオロプロピオネートの調製
下記は、2,2-ジフルオロエチルプロピオネートを調製するために用いられる典型的な手順である。プロピオン酸カリウム(Aldrich,99%)を、4~5時間0.5~1mmのHg(66.7~133Pa)の真空下に100℃で乾燥させた。乾燥原材料は、カールフィッシャー滴定によって測定されるように、5ppm未満の含水率を有した。ドライボックス中で、75g(0.67モル、10モル%過剰)の乾燥プロピオン酸カリウムを、重い磁気攪拌子を含有する500mLの3口丸底フラスコに入れた。フラスコをドライボックスから取り出し、ドラフトへ移し、熱電対ウェル、ドライアイス冷却器、および滴下漏斗を備え付けた。スルホラン(300mL,Aldrich,99%,カールフィッシャー滴定によって測定されるように600ppmの水)を溶融させ、窒素の流れ下に液体として3口丸底フラスコに添加した。攪拌を開始し、反応混合物の温度を約100℃にした。HCF2CH2Br(87g,0.6モル,E.I.du Pont de Nemours and Co.,99%)を滴下漏斗に入れ、反応混合物にゆっくり添加した。添加は穏やかに発熱であり、温度は、添加の開始後15~20分で120~130℃に上昇した。HCF2CH2Brの添加を、内温を125~135℃に維持する速度に保った。添加は約2~3時間を要した。反応混合物を追加の6時間120~130℃で攪拌した(典型的にはこの時点での臭化物の転化率は、約90~95%であった)。
次に、反応混合物を室温に冷却し、一晩攪拌した。翌朝、加熱の別の8時間再開した。
【0149】
この時点で、出発臭化物および1,1-ジフルオロエタノールは、NMRによって粗反応混合物中に検出されなかった。反応フラスコ上のドライアイス冷却器を、Teflon(登録商標)バルブ付きホースアダプタで置き換え、フラスコを、冷トラップ(-78℃、ドライアイス/アセトン)を通して機械的真空ポンプに連結した。反応生成物を、1~2mmHg(133~266Pa)の真空下に40~50℃で冷トラップ中へ移した。この移動は約3時間を要し、約98%純度の48gの粗HCF2CH2OC(O)C2H5をもたらした。粗生成物のさらなる精製は、大気圧で回転バンド蒸留を用いて実施した。120.3~120.6℃の沸点を有する留分を集め、不純物プロフィールを、GC/MS(キャピラリーカラムHP5MS、フェニル-メチルシロキサン、Agilent 19091S-433、30m、250μm、0.25μm;キャリアガス-He、流量1mL/分;温度プログラム:40℃、4分、温度ランプ30℃/分、230℃、20分)を用いて監視した。粗生成物(43g)は、99.91%純度を有し、約300ppmの水を含有した。水は、水がカールフィッシャー滴定によって検出できなくなる(すなわち、1ppm未満)まで3Aモレキュラーシーブでの処理によって生成物から除去した。
HCF2CH2OC(O)C2H5:1H NMR(CDCl3):1.10(3H.t),2.35(2H,q),4.21(2H td),5.87(1H,tt)ppm;19F NMR(CDCl3):-125.68(dt,56.6,13.7Hz)ppm,GS/MS(m/z):138(M+,C5H8F2O2
+).
【0150】
2,2-ジフルオロエチルプロピオネート(DFEP)およびエチレンカーボネート(EC)を含有する非水性電解質組成物の調製
上に記載された通り調製された、2,2-ジフルオロエチルプロピオネートを、質量分析検出器を用いるガスクロマトグラフィーによって測定されるように、99.990%純度まで2回回転バンド蒸留によって精製した。精製2,2-ジフルオロエチルアセテートとエチレンカーボネート(無水,Novolyte,インディペンデンス,OH)とを混ぜ合あせて70:30w/w比の9.0mLの全溶液を作り、結果として生じた混合物を3Aモレキュラーシーブ(Sigma-Aldrich,ミルウォーキー,WI)上で乾燥させた。乾燥後に、含水率はカールフィッシャー滴定を用いて0.5ppm未満であると測定された。この溶液を、0.2μmのPTFEシリンジフィルターを通してシリンジ濾過した。9.0mLの結果として生じた溶液に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(バッテリーグレード、Novolyte)を添加して1.0Mの濃度を得た。混合物を、固体のすべてが溶けるまで2、3分間振盪した。
【0151】
電解質組成物のイオン伝導率
電解質のイオン伝導率は、0.1~1,000,000Hzの周波数範囲にわたってインピーダンス分光法を用いて測定した。インピーダンス結果を等価回路モデルと一致させてdc抵抗をもたらした。
【0152】
2つのワイヤを含有する電気プローブを先ず、塩化ナトリウムの標準水溶液を使用して10~100,000Hzの伝導率範囲にわたって更正した。次に、電気プローブを測定されるべき電解質組成物中に入れた。イオン伝導率測定値を、ドライボックス中22~25℃の温度で記録した。結果を、2.0%/℃の温度依存性を用いて25℃に外挿した。25℃での電解質の伝導率は6.8mS/cmであると測定された。
【0153】
電解質を-30℃の温度で凍結させた。
【0154】
実施例47
2,2-ジフルオロエチルプロピオネートおよび2,2-ジフルオロエチルアセテートと
エチレンカーボネートとの混合物を含有する電解質組成物-伝導率および凝固点
比較例18からの2,2-ジフルオロエチルプロピオネートおよびエチレンカーボネートを含有する電解質組成物(30重量部)を、比較例1および2に記載された電解質組成物(70重量部)と組み合わせてフッ素化溶媒2,2-ジフルオロエチルプロピオネートおよび2,2-ジフルオロエチルアセテートと、エチレンカーボネートとの混合物を含有する電解質組成物を調製した。この電解質組成物のイオン伝導率は、比較例18に記載されたように測定され、25℃で7.4mS/cmであることが分かった。
【0155】
この電解質は-30℃で液体であった。
【0156】
この実施例は、2,2-ジフルオロエチルプロピオネートのみを含有する電解質組成物(比較例18)と比較して2,2-ジフルオロエチルプロピオネートと2,2-ジフルオロエチルアセテートとの混合物を含有する電解質組成物のより高い伝導性およびより高い凝固点という利点を実証する。
【0157】
実施例48
黒鉛電極上へのフィルム形成
黒鉛アノードは、上記の通り調製した。
【0158】
コイン電池の調製および電気化学サイクリング
非水性電解質リチウム-イオンCR2032コイン電池を、電気化学的評価のために調製した。コイン電池パーツ(ケース、スペーサー、波形ばね、ガスケット、および蓋)ならびにコイン電池クリンパーは、宝泉15株式会社(大阪、日本)から入手した。コイン電池を次の順にアルゴンドライボックス中で組み立てた:缶、ポリプロピレンガスケット、16.0mm×0.5mmスペーサー、14.3mm黒鉛電極、4滴の電解質、16.8mmのCelgard CG2500セパレータ、3滴の電解質、14.5mm×275μmリチウム電極、16.0mm×1.0mmスペーサー、波形ばね、およびキャップ。電池を、宝泉自動クリンパーを用いてクリンプした。
【0159】
非水性電解質は、2,2-ジフルオロエタノールおよびエチレンカーボネートを1.0Mリチウムヘキサフルオロホスフェートと組み合わせることによって調製して70/30v/v溶液を得た。無水マレイン酸およびグルタル酸無水物(Sigma-Aldrich)を、それぞれ、1%および0.3%w/wで上の溶液に添加した。
【0160】
組み立てられたコイン電池をそれぞれ、Solartron 1470Eポテンシオスタット/ガルバノスタット(Solartron Analytical,ファーンバラ(Farnborough),UK)を用い、3つの電圧範囲間:2Vで5分ホールド、次に2V-1V-2V、2Vで5分ホールド、次に2V-0.5V-2V、および2Vで5分ホールド、次に2V-0.01V-2Vを0.1mV/秒でサイクリックボルタンメトリーを用いてサイクルさせた。1サイクル後に、セルをアルゴンドライボックス中で解体した。黒鉛電極をエチルメチルカーボネートでリンスし、乾燥させた。乾燥電極をアルゴン下に密封バイアル中で保管し、次に走査電子顕微鏡法(SEM)によって分析した。未処理黒鉛電極もまたSEMを用いて分析した(
図1)。
【0161】
SEM分析
黒鉛電極を先ず、試料の全域で一貫した外観について調べた。3mm×5mm長方形セクションを、解剖用はさみを用いて電極のほぼ中心からカットした。このセクションを、両面導電性カーボンテープを使用してSEM試料キャリアに装着した。この黒鉛電極試料を次に、Noran System Six EDSアタッチメントを備え付けた日立モデルS-5000SPX HRSEMで分析した。画像は、1280×960キャプチャ
ー解像度および128フレームのフレーム積分を用いて、1.5kVの加速電圧で5,000X、25,000X、50,000X、および100,000Xの倍率で取得した。
【0162】
エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いる化学分析は、半値全幅(FWHM)で40,000カウント超を含有する炭素ピークを発生させるのに十分な期間、X線が0~5keVのエネルギー範囲で集められる状態で、5kVの加速電圧を用いて黒鉛電極試料の選択領域に関して行った。
【0163】
SEM結果は、1V以上の電位条件下で、
図2の電子顕微鏡写真に示されるように、薄い、不完全なカバレージが起こることを示した。露出黒鉛の領域は、本明細書で定義されるような、フィルムが形成されなかったことを示す。
【0164】
黒鉛電極の1つのセクション(
図2のセクション3)の化学分析は、高い炭素含量を見いだしたが、観察できるフッ素、酸素、またはリンをまったく見いださなかった。しかし、2つの他のセクション(
図2のセクション1および2)では、炭素、フッ素、酸素、およびリンが観察され、それは、黒鉛電極表面のカバレージが、得られた電子顕微鏡写真にほとんど~まったく見られないことを示し、フィルムがこの電位範囲では形成されなかったことを示した。セクション2は、セクション1よりも観察できるC、F、O、およびPが少なかった。
【0165】
1Vよりも下の電位条件下で、厚いコーティングが黒鉛電極上に形成され、露出黒鉛は電子顕微鏡写真(
図3)でまったく観察されず、フィルムの形成を示した。大量のC、F、O、およびPがまた、分析されたすべてのエリアで化学分析によって見いだされた。
【0166】
比較例19
黒鉛電極上に形成されなかったフィルム
コイン電池を、EC:DFEA 30:70および1.0MのLiPF
6を含有する電解質を使用して実施例48に記載されたように調製した。実施例48に記載されたように、コイン電池をサイクルさせ、黒鉛電極をSEMによって分析した。黒鉛電極表面上のカバレージが、得られた電子顕微鏡写真(
図4)にほとんど~まったく見られず、フィルムが0.01~2V範囲で形成していなかったことを示した。
【0167】
比較例20
黒鉛電極上に形成されなかったフィルム
コイン電池を、EC:DFEA 30:70プラス1%のFECおよび1.0MのLiPF
6を含有する電解質を使用して実施例48に記載されたように調製した。実施例48に記載されたように、コイン電池をサイクルさせ、黒鉛電極をSEMによって分析した。電極表面上の露出黒鉛が、得られた電子顕微鏡写真(
図5)に見られ、フィルムが0.01V~2Vの範囲で形成していなかったことを示した。
【0168】
実施例49
黒鉛電極上へのフィルム形成
コイン電池を、EC:DFEA 30:70プラス1%のFEC、1%のMAおよび1.0MのLiPF
6を含有する電解質を使用して実施例48に記載されたように調製した。黒鉛電極を実施例48に記載されたように、コイン電池をサイクルさせ、SEMによって分析した。SEM結果は、1V以上での電位条件下で、薄い、不完全なカバレージが起こることを示した(
図6)。
図6のセクション3の化学的特徴づけは、高炭素含量しかし少量の観測できるフッ素、酸素、またはリンを見いだした。しかし
図6のセクション1および2では、炭素、フッ素、酸素、およびリンが観察され、それは、添加物の崩壊または分解によると考えられる。セクション2は、観察できるC、F、O、およびPがセクショ
ン1よりも少なかった。露出黒鉛がセクション2および3に観察でき、フィルムが形成されていなかったことを示した。
【0169】
1Vよりも下の電位条件下で、厚いコーティングが形成され、露出黒鉛は顕微鏡写真(
図7)にまったく観察されず、フィルムが形成されていたことを示した。大量のC、F、O、およびPがまた化学分析によって見いだされた。
【0170】
実施例50および比較例19
カソード、アノード、および単層ポーチ電池は、実施例43~46および比較例16~17に記載されたものと同じ手順で調製した。溶媒は、75重量%のFECと25重量%のDFEAとの混合物であった。1.0MのLiPF6の添加後に、1.0重量%の無水マレイン酸を添加物として添加した。比較例は、75重量%のFECと、25重量%のDFEAと、1.0MのLiPF6との混合物を使用して調製した。電池を次に、上に記載されたのと同じフォーメーションプロセス、セル容量の測定および5つの室温サイクルにかけた。
【0171】
パルス電力を上に記載されたように測定し、面積固有インピーダンスをもたらした。面積固有インピーダンスについての値を表3に示す。
【0172】
ポーチ電池を次に55℃でオーブン中に入れ、おおよそ2Cレートである、カソード材料の1グラム当たり240mAの電流でサイクルさせた。結果を表4にまとめ、表4は、使用された溶媒および添加物、55℃で完了したサイクルの数、フォーメーションの第1サイクルにおいて測定されたクーロン効率(CE)、カソード活性材料の1グラム当たりの55℃での第1サイクルにおける放電容量、第10サイクルにおけるCE、ならびに55℃でのサイクル寿命を提供する。
【0173】
【0174】
【0175】
実施例51
DFEA/DFMC/DMC/EC/LiBOB
1MのLiPF6、2重量%のLiBOB、98重量%の(共溶媒およびLiPF6)とともに28重量%のDFEA/28重量%のDFMC/14重量%のDMC/30重量%のECカソード電極カソード電極の調製
カソード電極は、次の手順で調製した。
【0176】
アルミ箔電流コレクタ上のプライマーの調製-ポリイミド/カーボン複合材料を使用する
ポリアミド酸を調製するために、プレポリマーを先ず調製した。20.6重量%のPMDA:ODA(ピロメリット酸二無水物//ODA(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル))プレポリマーを、0.98:1の化学量論PMDA/ODAプレポリマーを使用して調製した。これは、穏やかに攪拌しながら室温でおおよそ45分にわたってODAをN-メチルピロリドン(NMP)に溶かすことによって調製した。PMDA粉末を、溶液のいかなる温度上昇をも制御するために混合物に(小アリコートで)ゆっくり添加し;PMDAの添加は、おおよそ2時間にわたって行った。制御された温度条件下での結果として生じた溶液の添加および攪拌。ポリアミド酸の最終濃度は、20.6重量%であり、酸無水物対アミン成分のモル比は、おおよそ0.98:1であった。
【0177】
別個の容器中で、ピロメリット酸無水物(PMDA)の6重量%溶液を、1.00gのPMDA(Aldrich 412287,アレンタウン(Allentown),PA)と15.67gのNMP(N-メチルピロリドン)とを組み合わせることによって調製した。4.0グラムのPMDA溶液をプレポリマーにゆっくり添加し、粘度は(ブルックフィールド粘度計-#6スピンドルによって測定されるように)おおよそ90,000ポアズに増加した。これは、計算された最終PMDA:ODA比が1.01:1である完成プレポリマー溶液をもたらした。
【0178】
5.196グラムの完成プレポリマーを次に、15.09グラムのNMPで希釈して5重量%溶液を作り出した。バイアル中で、16.2342グラムの希釈された完成プレポリマー溶液を0.1838グラムのTimCal Super C-65カーボンブラックに添加した。これをさらに、2.72のプレポリマー:カーボン比で、3.4重量%の最終固形分に向けて9.561グラムのNMPで希釈した。Paasche VL#3Airbrush噴霧器(Paasche Airbrush Company,シカゴ,IL)を用いてこの材料をアルミ箔(25μm厚さ,1145-0,Allfoils,ブルックリンハイツ,OH)上へ噴霧した。箔は、0.06mg/cm2という所望の密度に達するのに必要なコーティングを特定するために噴霧前に秤量した。箔を次にガラス
板上へ平らにし、コートされるまでエアブラシを使って手で噴霧した。箔を次にホットプレート上で125℃で乾燥させ、所望の密度に達したことを確実にするために測定した。箔はポリアミド酸の0.06mg/cm2でコートされていることが分かった。箔が乾燥され、所望のコーティングにあったらすぐに、箔を、下のイミド化手順に従って400℃でイミド化した。
40℃~125℃(4℃/分でランプ)
125℃~125℃(ソーク 30分)
125℃~250℃(4℃/分でランプ)
250℃~250℃(ソーク 30分)
250℃~400℃(5℃/分でランプ)
400℃~400℃(ソーク 20分)
【0179】
下塗りAl箔上へのカソード電気活性層のコーティング
ペーストの調製
使用されたバインダーは、Solef(登録商標)5130(Solvay,ヒューストン,TX)バインダーであり、それをNMP(N-メチルピロリドン,Sigma Aldrich,セントルイス,MO)中の5.5%溶液に希釈した。次の原材料を使用して電極ペーストを作った:6.0352gのFarasis 1,1,1 NMC(NiCoMg,Farasis Energy,ヘイワード,CA)カソード活性粉末;0.3342gのカーボンブラック(非圧縮Denka、電気化学工業株式会社、日本);6.0971gのPVDF(ポリ二フッ化ビニリデン)溶液;および2.1491g(部分1)+0.3858gのNMP(部分2)(Sigma Aldrich)。原材料を、下に記載されるように、90:5:5、カソード活性粉末:PVDF:カーボンブラックの比で組み合わせた。最終ペーストは、44.7重量%の固形分を含有した。
【0180】
カーボンブラック、NMPの第1部分、およびPVDF溶液を先ず、プラスチックTHINKY容器中で組み合わせ、2000rpmで2分間遠心力を利用して混合した(ARE-310,Thinky USA,Inc.,ラグーナヒルズ,CA)。カソード活性粉末およびNMPの第2部分を添加し、ペーストを2分間2000rpmで再度遠心力を利用して混合した。ペーストを次に、3秒間音波ホーンに浸した。
【0181】
アルミ箔(25μm厚さ,1145-0,Allfoils,ブルックリンハイツ,OH)を、ポリイミド/カーボンプライマーで前処理した。
【0182】
カソード電極のコーティングおよびカレンダー掛け
ペーストを、5ミルゲート高さプラス2ミルのKapton(登録商標)テープのドクターブレードを用いて手作業で下塗りアルミ箔上へキャストした。電極を真空オーブン中90℃で60分間乾燥させた。結果として生じた51mm幅カソードを、125μm厚さの真ちゅうシート間に入れ、125℃で100mm直径スチールロールを用いて3回カレンダーを通過させ、圧力が、18psi、24pai、および30psiの圧力で、各パスにおいて増加した。カレンダーは、ニップ力(ポンド単位)=37.8×調整器圧(psi)を有するようにセットする。カソード活性材料のローディングは、おおよそ7.85~8.06mg/cm2であった。
【0183】
アノード電極の調製
下記は、下の実施例に使用されるアノードの調製のために用いられる典型的な手順である。アノードペーストは、次の原材料から調製する:5.00gの黒鉛(Cpreme(登録商標)G5,Conoco-Philips,ヒューストン,TX);0.2743gのカーボンブラック(Super C65,Timcal,ウェストレイク,OH);3.06gのPVDF(NMP.KFL #9130,Kureha America
Corp.中の13%);11.00gの1-メチル-2-ピロリジノン(NMP);および0.0097gのシュウ酸。原材料を、下に記載されるように、88:0.17:7:4.83、黒鉛:シュウ酸:PVDF:カーボンブラックの比で組み合わせる。最終ペーストは、典型的には29.4%の固形分を含有する。
【0184】
シュウ酸、カーボンブラック、NMP、およびPVDF溶液をプラスチックバイアル中で組み合わせる。原材料を、プラネタリー遠心ミキサーを用いて2000rpmで60秒間混合する。混合を2度繰り返す。黒鉛を次に添加する。結果として生じたペーストを、2回遠心力を利用して混合する。バイアルを氷浴中に取り付け、各回6500rmpで15分間回転子-固定子を用いて2回、次に9500rpmで15分間さらに2回均質にした。固定子シャフトがバイアルに入るポイントをアルミ箔でラップしてバイアルへの水蒸気侵入を最小限にする。4回の均質化期間のそれぞれの間に、ホモジナイザーをペーストバイアルの別の場所に移動させる。ペーストを次に3回遠心力を利用して混合する。
【0185】
ペーストを、自動コーターを用い、銅箔(CF-LBX-10、福田金属箔粉工業株式会社、京都、日本)上へ230μmゲート高さのドクターブレードを用いてキャストする。電極を、機械的対流オーブン中95℃で30分間乾燥させる。結果として生じた51mm幅アノードを、125μm厚さの真ちゅうシート間に入れ、周囲温度で100mm直径スチールロールを用いて3回カレンダーを通過させ、ニップ力は、260kgでスタートして770kgでの最終パスで、パスのそれぞれにおいて増加する。
【0186】
アノード活性成分のローディングは、おおよそ4.4~4.5mg/cm2である。
【0187】
2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネートの合成
1Lの無水ジクロロメタン(ECD)中の2,2-ジフルオロエタノール(125g;1.52モル;mw=82.05;D=1.30;bp=95℃;Synquest 2101-3-02)およびピリジン(139g;1.76モル;mw=79.1;D=0.98;Aldrich 270970)の溶液を、オーバーヘッド攪拌および滴下漏斗を取り付けた3口の3LのRBフラスコに窒素下に入れた。溶液を、氷浴中で攪拌することによって冷却した。クロロギ酸メチル(166g;1.76モル;mw=94.50;D=1.22;bp=70℃,Aldrich M35304)を滴下漏斗に入れ、30分にわたってジフルオロエタノールおよびピリジンの攪拌溶液に添加した。約100mLのクロロギ酸メチルが添加されたときに、ピリジンHClが突然沈澱し、混合物は白色スラリーになった。混合物を30分間攪拌した。氷浴を取り除き、混合物をRTで65時間攪拌した。
【0188】
反応混合物を濾過してピリジン塩酸塩を除去し、白色固体を100mLのジクロロメタンで1回リンスした。濾液を、先ず150mLの1N水性HCl、次に60mLの10%HCl、最後に40mLの10%HClで洗浄した。濾液を80mLの5%炭酸ナトリウムで洗浄し、有機層を分離し、3時間無水MgSO4上で乾燥させた。
【0189】
吸引濾過後に、濾液を、50cmのPTFE回転バンドスチルによって130℃油浴から窒素下に蒸留して750mLのジクロロメタンを除去した。油浴温度を次に165℃に上げ、生成物を蒸留した。カラムヘーターバンドへの入力電圧を、Variacポテンシオスタットで20Vに設定した。
【0190】
蒸留留分をGC(30mのDB-5;30℃/5分、次に10℃/分;He:14.8cc/分)によって分析した。保持時間:0.92分(2,2-ジフルオロエタノール;DFE);1.06(ジクロロメタン;DCM);1.87分(ジメチルカーボネート;DMC;これは、クロロギ酸メチル中の副生成物である);4.75分(2,2-ジフル
オロエチルメチルカーボネート、DFMC);4.95分(メチルイソブチルケトン;MIBK;これは、DFE中の不純物である)。
【0191】
【0192】
2,2-ジフルオロオエチルアセテート(DFEA)の蒸留収量は175g(82%)であった;GC:0.04%のDCM、0.17%のDMC、99.79%の2,2-ジフルオロオエチルアセテート。留分2A~5Aを組み合わせ(164g)、17Vに設定されたカラムヒーターバンドで再蒸留した。
【0193】
【0194】
留分2Bを再蒸留し、3.3gの前留分(bp=128.3~132.9℃)を排斥した。次に生成物(63.7g)を集めた(bp=133.0~133.7℃);GC:0.01%のDCM;99.98%のDFMC。この留出物を3Bおよび4Bと組み合わせて149gのGC:99.97%のDFMCを得た。これを、3留分にもう一度回転バンド蒸留し、GCによって再び分析した:留分1(82g):99.97%;留分2(38g):99.98%;留分3(21g):99.97%。これらの留分を再び組み合わせ(140g)、バッテリー電解質溶媒として使用した。
【0195】
電解質の調製
リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)精製
窒素パージされるドライボックス中で、リチウムビス(オキサレート)ボレート精製(LiBOB,Sigma-Aldrich,ミルウォーキー,WI)を、次の手順で精製した。11.25gのLiBOBを、50mlの無水アセトニトリル入りの400mlビーカーに添加した。混合物を攪拌し、約30分間40℃に加熱した。暖かい混合物をワットマン#1濾紙を通して濾過し、第2ビーカーへ移し、室温に冷却した。無色透明溶液が得られた。この無色透明溶液に、約50mlの冷たい無水トルエン(-30℃)を添加した。これを追加の30分間攪拌して沈澱物を形成した。溶液を、ワットマン#1濾紙を通して濾過し、フィルターケーキを、冷たい無水トルエンで再び洗浄した。フィルターケーキを真空濾過漏斗上で乾燥させた後、固形分をドライボックスから取り出し、130℃で真空オーブン中に入れ、15時間わずかに窒素パージしながら乾燥させて最終生成物を形成し、それはその後、窒素パージされるドライボックス中で取り扱った。
【0196】
調合物
電解質調合物は、12.6298グラムのエチレンカーボネート(BASF,インディペンデンス,OH)、5.908グラムのジメチルカーボネート、(BASF,インディペンデンス,OH)、11.8045gの2,2 ジフルオロエチルアセテートおよび11.7943グラムの2,2 ジフルオロエチルメチルカーボネートを組み合わせることによって調製した。混合物を、含水率が1ppmよりも下になるまで3Aモレキュラーシーブ上で乾燥させた。混合物を、0.2ミクロンのPTFEシリンジフィルターを用いて濾過し、5.422グラムのLiPF6(BASF,インディペンデンス,OH)を次に添加した。
【0197】
上に記載された2.9547gの混合物を0.06gのLiBOBと組み合わせて調合電解質を調製した。最終調合物は、1MのLiPF6で、28重量%のDFEA/28重量%のDFMC/14重量%のDMC/30重量%のEC共溶媒;2重量%のLiBOB、98重量%の調合物(98重量%の共溶媒およびLiPF6)であった。
【0198】
コイン電池製造
円形アノード14.3mm直径およびカソード12.7mm直径を、上に記載された電極シートからパンチアウトし、グローブボックス(Vacuum Atmospheres,ホーソン,CA,HE-493清浄器付き)の副室のヒーター中に入れ、90℃で一晩真空下にさらに乾燥させ、アルゴン充満グローブボックスに持ち込んだ。非水性電解質リチウム-イオンCR2032コイン電池を、電気化学的評価のために調製した。コイン電池パーツ(ケース、スペーサー、波形ばね、ガスケット、および蓋)ならびにコイン電池クリンパーは、宝泉株式会社(大阪、日本)から入手した。セパレータは、Celgard 2500(Celgard/Polypore International,シャーロット,NC)であった。
【0199】
25℃でのコイン電池評価
コイン電池を、おおよそ0.1Cレートである、カソード活性材料の1グラム当たり17.5mAの電流で3.0~4.6Vの電圧限界間で充電するおよび放電する定電流を用いて周囲温度で市販のバッテリーテスタ(Series 4000,Maccor,タルサ,OK)を用いるフォーメーションについて2回サイクルさせた。この手順の後に、コイン電池を、おおよそC/2レートである、カソード活性材料の1グラム当たり87.5mAの電流で3.0~4.6Vの電圧限界間で充電するおよび放電する定電流を用いてサイクルさせた。各充電工程中に、電圧をその後、電流がC/20(活性カソード材料の1グラム当たりおおよそ8.75mA)に漸減するまで4.6Vに保持した。
【0200】
コイン電池サイクリングデータからの容量保持率:
290サイクルでのセル1は、その初期容量の90.3%を保持し;セル2は、87.7%を保持していた。
【0201】
実施例51
70重量%のDFEA/30重量%のEC溶媒比/1MのLiPF6
2重量%のFEC、2重量%のLiBOB、96重量%の共溶媒およびLiPF6
実施例50に記載されたのと同じ手順を用いた。
【0202】
使用されたバインダーは、Solef(登録商標)5130(Solvay,ヒューストン,TX)バインダーであり、それをNMP(N-メチルピロリドン、Sigma Aldrich,セントルイス,MO)中の5.5%溶液に希釈した。次の原材料を使用して電極ペーストを作った:6.1592gのFarasis 1,1,1 NMC(Ni
CoMg,Farasis Energy,ヘイワード,CA)カソード活性粉末;0.3524gのカーボンブラック(非圧縮Denka、電気化学工業株式会社、日本);6.2141gのPVDF(ポリ二フッ化ビニリデン)溶液;および2.061g+0.5181gのNMP(Sigma Aldrich)。原材料を、下に記載されるように、90:5:5、カソード活性粉末:PVDF:カーボンブラックの比で組み合わせた。最終ペーストは、44.7重量%の固形分を含有した。
【0203】
カーボンブラック、NMPの第1部分、およびPVDF溶液を先ずプラスチックTHINKy容器中で組み合わせ、2000rpmで2分間遠心力を利用して混合した(ARE-310,Thinky USA,Inc.,ラグーナヒルズ,CA)。カソード活性粉末およびNMPの第2部分を添加し、ペーストを、2分間2000rpmで再度遠心力を利用して混合した。ペーストを次に3秒間音波ホーン処理した(sonic horned)。
【0204】
ペーストを、手で高分子量Kapton(登録商標)H下塗りアルミ箔(25μm厚さ,1145-0,Allfoils,ブルックリンハイツ,OH)上へ6ミルゲート高さプラス2ミルのKapton(登録商標)テープのドクターブレードを用いてキャストした。電極を真空オーブン中90℃で30分間乾燥させた。結果として生じた51mm幅カソードを、125μm厚さの真ちゅうシート間に入れ、125℃で100mm直径スチールロールを用いて3回カレンダーを通過させ、圧力が、18psi、24pai、および30psiの圧力で、各パスにおいて増加した。カレンダーは、ニップ力(ポンド単位)=37.8×調整器圧(psi)を有するようにセットする。カソード活性材料のローディングは、おおよそ8.0~8.5mg/cm2であった。
【0205】
アノード:
実施例50に記載されたのと同じアノードを使用した。アノード活性材料のローディングは、おおよそ4.45~4.67mg/cm2であった。
【0206】
調合電解質:
電解質を、70重量%の2,2-ジフルオロエチルアセテートと30重量%のエチレンカーボネート(EC,BASF,インディペンデンス,OH)とを窒素パージされるドライボックス中に組み合わせることによって調製した。モレキュラーシーブ(3A)を添加し、混合物を1ppm未満の水まで乾燥させた。0.2ミクロンのPTFEシリングフィルターでの濾過後に、LiPF6(リチウムヘキサフルオロホスフェート,(BASF,インディペンデンス,OH)を添加して1M濃度で調合電解質を作った。
【0207】
1.925gのこの混合物を0.0400gの精製LiBOB(実施例?に記載された)および0.0410gのフルオロオエチレンカーボネート(BASF,インディペンデンス,オハイオ州)と組み合わせた。最終調合物は、70重量%のDFEA/30重量%のEC溶媒比、1MのLiPF6、2重量%のFEC、2重量%のLiBOB、(96重量%の共溶媒およびLiPF6を加える)であった。
【0208】
コイン電池サイクリングデータからの容量保持率:
290サイクルでのセル1は、200サイクル後のその初期容量の90.6%保持し;セル2は、80%を保持していた。