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特許7247317ダイナモエレクトリック回転機の材料層および材料層構造の製造方法
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  • 特許-ダイナモエレクトリック回転機の材料層および材料層構造の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ダイナモエレクトリック回転機の材料層および材料層構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230320BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H02K15/02 H
H02K1/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021500903
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019068480
(87)【国際公開番号】W WO2020011823
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】18183457.3
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ゾイフェルト,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ロルフ
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-034750(JP,A)
【文献】特開2013-074787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0226323(US,A1)
【文献】国際公開第2017/211477(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/136224(WO,A1)
【文献】特開2012-101070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072342(US,A1)
【文献】特開昭61-047831(JP,A)
【文献】特開2009-148156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~500μmの間の層厚(d)を有する材料層(1)を製造するための方法であって、
所定の形状のグリーン体を得るために、少なくとも1つの結合剤および固体粒子を含む懸濁液を、テンプレートを通じて基面上に塗布する工程、
前記グリーン体から前記結合剤を除去する工程、
加熱によっておよび/または圧縮を用いて、前記固体粒子の持続的凝集を作り出す工程、
を有し、
前記グリーン体は、互いに隣接する前記固体粒子の1つの層のみから構成され、
前記材料層(1)は、前記グリーン体における前記固体粒子が互いに結合された1つのシートのみから形成されている、方法。
【請求項2】
前記結合剤を脱バインダ処理によって前記グリーン体から除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
焼結によって前記固体粒子の持続的凝集を作り出す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体粒子は、電気伝導性および磁気伝導性の少なくとも一方を備える材料からなる粒子、を含む、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体粒子が軟磁性材料の粒子を含む、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液がずり粘性である、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の方法で形成された前記材料層(1)の少なくとも一方の表面上へ絶縁材料(2、3)を塗布すること、を含む、積層構造体の製造方法。
【請求項8】
前記材料層(1)の両方の表面上へ前記絶縁材料(2、3)を塗布する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記絶縁材料(2、3)は、ラッカーを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ダイナモエレクトリック回転機(15)のロータ(11)用の材料層構造(9)を製造するための方法であって、
第1の材料層(1)を付加製造する工程、ここで前記第1の材料層(1)は少なくとも1つの材料シートを含む、
前記第1の材料層(1)上へ絶縁材料(2、3)を塗布する工程、
少なくとも1つの第2の材料層(1)を付加製造する工程、ここで前記第2の材料層(1)は少なくとも1つの材料シートを含む、
前記第2の材料層(1)上へ絶縁材料(2、3)を塗布する工程、
前記絶縁材料を塗布された前記第1および第2の材料層(1)を接合する工程、および
接合された前記第1および第2の材料層(1)を相互に固着する工程、
を含み、
前記付加製造は、前記第1および第2の材料層(1)に含まれる前記材料シートのそれぞれを、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法で製造することを含む、
方法。
【請求項11】
0.5~500μmの層厚(d)を有する複数の前記材料層(1)を用いて前記材料層構造(9)を製造する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.5~500μmの層厚を有する材料層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナモエレクトリック回転機の磁気回路には、ステータとロータが含まれる。ロータおよびステータは、ダイナモエレクトリック回転機の能動部品とも呼ばれる発電構成要素であり、これまで積層鉄心として製造されてきた。
【0003】
現在の積層鉄心は、軟磁性材料の圧延された大型鋼板から切断または打ち抜かれた複数の鋼板を含む。これらの鋼板は次いで積層鉄心にパッケージされる。
【0004】
圧延による大型鋼板の従来の製造では、100μmより薄い鋼板を製造することができない。加えて、大型鋼板から鋼板を切り出したり、打ち抜いたりする際には屑が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、ダイナモエレクトリック回転機用の鋼板の製造を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決は、請求項1に記載の方法、すなわち、
- グリーン体を得るために、少なくとも1つの結合剤および固体粒子を含む懸濁液を、テンプレートを通じて基面上に塗布する工程、
- 特には脱バインダ処理よって、グリーン体から結合剤を除去する工程、
- 加熱によっておよび/または圧縮を用いて、特に焼結を用いて、固体粒子の持続的凝集を作る工程、
を有する層厚0.5~500μmの材料層を製造するための方法により達成される。
【0007】
さらに、この課題の解決は、請求項8に記載の材料層、並びに、請求項13に記載のダイナモエレクトリック回転機のロータのための材料層構造を製造するための方法、によって達成される。
【0008】
また、前記の課題の解決は、更に、ダイナモエレクトリック回転機のロータ用の請求項15に記載の材料層構造であって、上下に配置された複数の材料層を有する材料層構造、このような材料層構造を有するダイナモエレクトリック回転機のロータ、並びに、ダイナモエレクトリック回転機によって達成される。
【0009】
材料層は、有利には、従来のロータの積層鉄心における従来の鋼板の従前の機能を有し、鋼板の役割を果たす。
【0010】
有利には、材料層の輪郭は、基本的に鋼板の輪郭に対応する。
【0011】
材料層は、有利には、鋼板よりも薄く製造される及び/又はより薄く製造可能である。
【0012】
材料層構造は、有利には、積層鉄心の従前の機能を有し、ロータの積層鉄心の役割を果たす。
【0013】
複数の材料層が、材料層構造を形成するために上下に重ねて配置されている。好ましくは、材料層は、材料層構造の回転軸の方向に、言い換えれば、回転軸に沿って配置されている。
【0014】
好ましくは少なくとも2つの材料層が隣接されている別の配置も考えられる。
【0015】
材料層は、好ましくは、基本的に丸く、基本的に中央に配置された、材料切り欠きを有する。材料層構造は、好ましくは、シャフトに接続するための回転軸に沿った円筒状の材料切り欠きを有する。
【0016】
特に安定な材料層設計の場合、材料層は、好ましくは、10~100μmの層厚を有する。
【0017】
懸濁液は、好ましくはドクターブレードを用いて塗布される。
【0018】
懸濁液は、少なくとも1つの、特に脱バインダ処理によって、除去することができる結合剤、及び、固体粒子を有する。
【0019】
結合剤は、好ましくは有機結合剤である。結合剤は、好ましくは、加熱されると、完全に或いはほぼ完全に気体状の成分に解離する状態のものである。
【0020】
固体粒子は、好ましくは粉末の形態である。固体粒子は、好ましくは、少なくとも1つの導磁性および/または導電性の材料を含む。
【0021】
固体粒子は、好ましくは、0.1~100μmの直径を有する。
【0022】
固体粒子は、特別な実施形態において、好ましくは、0.5~10μmの直径を有する。固体粒子の直径が小さいほど、より薄い材料層を製造することができる。例えば、0.5μmの直径を有する固体粒子を有する懸濁液を用いて、0.5μmの薄い材料層を製造することができる。
【0023】
粉末は、もっぱら1つの材料の固体粒子を含んでいてもよい、または、少なくとも2つの異なる材料を含む粉末混合物であってもよい。
【0024】
粉末は、強度、磁気特性、電気特性および熱伝導に関して調整され得る。
【0025】
固体粒子は、加熱によっておよび/または圧縮を用いて、特に焼結を用いて、持続的に結合される。
【0026】
焼結は、好ましくは、特に使用される材料に依存する熱プロセスである。例えば、温度または温度範囲は、材料の合金、他の添加剤、および(焼結後の)所望の成果に依存する。
【0027】
テンプレートは、好ましくは、所望の形状および/または輪郭および/またはパターンおよび/または切り欠きなどを転写するための版下である。テンプレートは任意に何度でも使用できる。
【0028】
テンプレートを使用して、所望の材料層の形状を正確に形成することができる。従って屑は発生しない。1つの材料層に2つ以上のテンプレートを使用することもできる。
【0029】
テンプレートは、迅速かつ安価に(特に打抜き工具よりも迅速に)修正することができる。
【0030】
また、テンプレートによりフィリグリー形状を再現することもできる。フィリグリー形状を有する材料層は、ダイナモエレクトリック回転機の軽量構造、冷却および磁気散乱に対して、特に有利である。
【0031】
本発明のさらなる有利な実施形態では、絶縁材料が、少なくとも1つの層面上の材料層に、塗布される。
【0032】
好ましくは、絶縁材料はセラミックである、特に非磁性酸化物セラミック、例えば酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムである。
【0033】
塗布された絶縁材料は、好ましくは、電気絶縁のために使用される。
【0034】
塗布された絶縁材料は、好ましくは、少なくとも2つ以上の材料層が特に材料層構造を形成するため上下に配置される場合に、一方の材料層を少なくとも1つの他方の材料層に対して電気絶縁するために使用される。
【0035】
したがって、有利に塗布された絶縁材料は、一方の材料層から他方の材料層への通電を防止する。
【0036】
本発明のさらなる有利な実施形態では、両層面で材料層上へ絶縁材料が塗布される。
【0037】
絶縁材料が材料層の片側のみに塗布される場合には、材料層はより薄くなる。絶縁材料が材料層の両側に塗布される場合には、材料層はより良好に絶縁される。
【0038】
本発明の別の有利な実施形態では、ラッカー、特にベーキングラッカーが材料層に塗布される。
【0039】
ラッカー、特にベーキングラッカーは、絶縁材料であってもよい。しかしながら、ラッカーおよび絶縁材料は、2つの異なる材料であってもよい。
【0040】
有利に塗布されたベーキングラッカーは、特に材料層構造内の隣接する別の材料層に対する、材料層の特に良好な電気絶縁を可能にする。
【0041】
さらに、材料層は、特にベーキングラッカーを用いて、隣接する材料層または隣接する複数の材料層に固着可能である。
【0042】
有利に塗布されたベーキングラッカーは、材料層が面で接続されているので、材料層構造の高レベルの強度および剛性を可能にする。これにより、振動や騒音も低減される。
【0043】
本発明の別の有利な実施形態では、固体粒子は、電気的および/または磁気的に伝導性の材料から作製された粒子、特に金属粒子を含む。
【0044】
好ましくは、導電性材料は、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、鉄および/または鋼および/またはそれらの合金である。しかしながら、他の導電性材料も考えられる。
【0045】
好ましくは、磁気伝導性材料は強磁性材料である。
【0046】
本発明の別の有利な実施形態では、固体粒子は、軟磁性材料製の粒子を含む。
【0047】
例えば、軟磁性材料は、鉄、ニッケル、コバルトおよび/またはそれらの合金である。しかしながら、他の磁気伝導性材料、特に強磁性材料も考えられる。
【0048】
本発明の別の有利な実施形態では、懸濁液はずり減粘である。
【0049】
これは、グリーン体を生成するための、好ましくはドクターブレードを用いた、基面への塗布の間、懸濁液はより低い粘性を有し、また、所望の形状がテンプレートを通じて最適に転写され得る、という利点を有する。塗布が終了すると、グリーン体は所望の形状を保持する。
【0050】
本発明は更に、上述の方法で製造されている材料層に関しており、この材料層は、0.5~500μm、特に10~100μmの層厚を有し、材料層は、軟磁性材料を有し、材料層は、層の少なくとも1つの層面に絶縁材料を有する。
【0051】
本発明の別の有利な実施形態では、材料層は、両方の層面に絶縁材料を有する。
【0052】
本発明の別の有利な実施形態では、材料層はラッカー、特にベーキングラッカーを有する。
【0053】
本発明の別の有利な実施形態では、材料層は、少なくとも1つの別の材料層に固着され得る。
【0054】
本発明の別の有利な実施形態では、材料層は、基本的に中央に配置された材料切り欠きを有する。
【0055】
好ましくは、材料切り欠きは、基本的に円形である。材料切り欠きは、シャフトへの接続を可能にする。
【0056】
また本発明は更に、ダイナモエレクトリック回転機のロータ用の材料層構造を製造するための方法であって、
- 第1の材料層を付加製造する工程を有し、第1の材料層が少なくとも1つの材料層を含んでおり、
- 第1の材料層に絶縁材料を塗布する工程を有し、
- 少なくとも1つの別の材料層を付加製造する工程を有し、少なくとも1つの別の材料層が少なくとも1つの材料シートを含んでおり、
- 少なくとも1つの別の材料層に絶縁材料を塗布する工程を有し、
- 第1の材料層と少なくとも1つの別の材料層を接合する工程を有し、
- 材料層を相互に固着する工程を有する、
方法に関している。
【0057】
材料層は、少なくとも1つの材料シート、すなわち1層のみの固体粒子を含む。それにより、材料層は格別薄い。しかしながら、安定した材料層を維持するために、上下に2つ以上の材料シートがあることが有利である。
【0058】
塗布される絶縁材料は、好ましい実施形態では、ラッカー、特にベーキングラッカーである。ベーキングラッカーの塗布は容易であり、ベーキングによって2つ以上の材料層が相互に固着され得る。
【0059】
絶縁材料、特にベーキングラッカーおよび材料層は、好ましくは、物質接続的に結合されている。
【0060】
代替的な実施形態では、絶縁材料はセラミックである。
【0061】
絶縁材料としては更に、水ガラスや他のガラスも考えられる。
【0062】
他の絶縁材料も可能である。
【0063】
セラミック絶縁材料の塗布は、セラミック固体粒子および除去可能な結合剤を含むセラミック懸濁液が、ドクターブレードを用いて材料層に塗布される場合、特に良好に成功する。セラミック固体粒子は、特にはセラミック粉末として存在する。
【0064】
セラミック固体粒子は、酸化マグネシウム、二酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素および/または窒化アルミニウムを含むことができる。他の材料も考えられる。
【0065】
しかしながら、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムが好ましい。
【0066】
セラミック固体粒子は、好ましくは基本的に、0.1~2μmの直径を有する。
【0067】
セラミック固体粒子の直径が小さければ小さいほど、より薄い絶縁された材料層を製造することができる。例えば、0.5μmの直径を有する固体粒子を有する懸濁液と、1μmの直径を有するセラミック固体粒子を有する懸濁液とを用いて、片側で絶縁された1.5μmの薄さの材料層もしくは両側で絶縁された2.5μmの薄さの材料層を製造することができる。
【0068】
特に薄い材料層設計の場合、材料層は1μmの層厚を有する。
【0069】
セラミック固体粒子は、少なくとも1つの材料シートを形成する。しかしながら、2つ以上の材料シートも可能である。
【0070】
セラミック粉末は、1つの材料のみのセラミック固体粒子を含んでいてもよい、または、少なくとも2つの異なるセラミック材料を含むセラミック粉末混合物であってもよい。
【0071】
セラミック固体粒子は、加熱によっておよび/または圧縮を用いて、特に焼結を用いてによって持続的に結合される。セラミック固体粒子は、好ましくは、加熱によっておよび/または圧縮を用いて、特に焼結を用いて、固体粒子と持続的に結合される。持続的結合は、好ましくは、物質接続的な結合である。
【0072】
本発明の別の有利な実施形態では、0.5~500μmの層厚を有する複数の材料層を用いて、材料層構造は製造される。
【0073】
材料層構造はダイナモエレクトリック回転機のロータに適しており、この場合材料層構造は材料層構造のロータ軸の方向に配置された複数の材料層を有する。
【0074】
ダイナモエレクトリック回転機のロータは、このような材料層構造を有している。
【0075】
本発明は更に、このようなロータを有するダイナモエレクトリック回転機に関する。
【0076】
ダイナモエレクトリック回転機は、上下に配置された複数の材料層を有するロータを含む。材料層は、好ましくは、それぞれ、個別に互いに電気的に絶縁されている。このために配置面は、有利には、磁束の方向に平行に形成されている。
【0077】
材料層は非常に薄い層厚しか有していないので、渦電流損失は著しく低減される。これは、渦電流が材料層の厚さ内でのみ発生することができるからであり、それにより、材料層が薄い場合には、渦電流の強度が著しく減少されている。
【0078】
個々の材料層間の絶縁は、渦電流が損失の多い大きな渦電流へと重なり合うことが出来ることを、防止する。
【0079】
本発明は、好ましくは、ダイナモエレクトリック回転機に使用される。しかし、本発明は、他のエネルギー変換器、例えば変圧器にも適用することができる。
【0080】
本発明は更に、ダイナモエレクトリック回転機のステータにも適用可能である。この場合、上下に配置された複数の材料層が、好ましくは、従来の積層ステータ積層鉄心に取って代わる。
【0081】
本発明は、特に航空機、ヘリコプターおよびフォーミュラEのレーシングカーにおける、低重量で高性能を必要とするエンジンに、格別に良好に適している。
【0082】
以下において本発明は、図面に示された実施例に基づいてより詳細に説明および解説される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、0.5~500μmの層厚を有する材料層を製造するための本発明による方法を示す。
図2図2は、材料層を示す。
図3図3は、材料層を側面図で示す。
図4図4は、ダイナモエレクトリック回転機のロータ用の材料層構造を製造するための方法を示す。
図5図5はダイナモエレクトリック回転機のロータを示す。
図6図6は、ダイナモエレクトリック回転機の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、0.5~500μmの層厚を有する材料層を製造するための本発明による方法を示す。
【0085】
好ましくは、層厚は、安定した材料層のために、10~100μmである。
【0086】
工程S1では、少なくとも1つの結合剤および固体粒子を含む懸濁液が、グリーン体を得るために、テンプレートによって基面に塗布される。ここで塗布とは、好ましくは、懸濁液がドクターブレードを用いて基面上に施されることを意味する。
【0087】
工程S2では、結合剤が特に脱バインダ処理によってグリーン体から除去される。
【0088】
工程S3では、加熱によっておよび/または圧縮を用いて、特に焼結を用いて、固体粒子の持続的凝集が生成される。
【0089】
工程S4では、絶縁材料が一方の層面に塗布される。ここで塗布とは、好ましくは、層面に絶縁材料がドクターブレードを用いて塗布されるか、または層面が塗布工具で塗られるか、または層面が絶縁材料を含む容器に浸漬されることを意味する。
【0090】
好ましくは、絶縁材料は、ラッカー、特にベーキングラッカーである。
【0091】
しかしながら、他の絶縁材料も考えられる。例えば、絶縁材料は、少なくとも1つの結合剤およびセラミック固体粒子を含むセラミック懸濁液を用いて層面に塗布され得て、結合剤は、特には脱バインダ処理によって、除去され得る。
【0092】
さらに、図示されていない工程S4aにおいて絶縁材料を塗布しまた図示されていない工程S4bにおいてラッカー、特にベーキングラッカーを追加的に塗布することが可能である。
【0093】
両方の層面に絶縁材料および/またはラッカーが施される予定の場合(b?とYesで示されている)、これは工程S41で実行される。
【0094】
一方の層面のみに絶縁材料および/またはラッカーが施される予定の場合、b?とNoを用いる方法で、材料層は工程S5で完成される。
【0095】
図2は、材料層1を示す。
【0096】
材料層1は、層厚dを有する。材料層は、好ましくは一体である。
【0097】
好ましくは、各材料層1は、少なくとも一方の層面に絶縁材料を有している。図は、各材料層1が両方の層面に絶縁材料を有する実施を示している。絶縁材料は、図ではラッカー、特にベーキングラッカーである。これは、好ましい実施に対応する。
【0098】
好ましくは、絶縁材料および材料層は、物質接続的に結合されている。
【0099】
材料層1は、上側の層面に絶縁厚さd2のラッカー2を有し、下側の層面に絶縁厚さd3のラッカー3を有する。
【0100】
材料層1が異なる種類の絶縁材料とさらにはラッカーを有することも、可能である。材料層1が一方の層面に異なる種類の絶縁材料を有し、他方の層面にラッカーを有することも、可能である。また材料層1が異なる種類の絶縁材料とラッカーとの混合形態を有することも可能である。
【0101】
この図は更に、(後にシャフトに接続するための(図5参照))中央に配置された材料切り欠き5を示している。
【0102】
回転軸Rは、材料切り欠き5の中心点を通る。
【0103】
説明された符号は各実施例において存在している限り他の図面に対しても有効であり、簡略化の理由から改めて説明されはしない。
【0104】
図3は、材料層1を側面図で示す。
【0105】
この図は、1層のみの固体粒子が材料層1を形成するので、材料層1の最も薄い実施を示している。固体粒子は、図では粒状材料である。言い換えれば、固体粒子は、互いに隣接し、好ましくは図1に記載された焼結によって互いに結合されている小さな球体である。
【0106】
層厚dは、図中では固体粒子の直径に相当する。
【0107】
同様に、図は、1層のみの絶縁材料2を上側の層面に示し、1層のみの絶縁材料2を下側の層面に示している。絶縁厚さd2および絶縁厚さd3は、図では、セラミック固体粒子またはラッカー固体粒子の直径に相応する。
【0108】
しかしながら、2つ以上の固体粒子が互いに重ね合わさって材料層1を形成することもできる。また2つ以上のセラミック固体粒子が互いに重ね合わさって絶縁部を形成することも可能である。また2つ以上のラッカー固体粒子が互いに重ね合わさって絶縁部を形成することも可能である。
【0109】
図4は、ダイナモエレクトリック回転機のロータ用の材料層構造を製造するための方法を示す。
【0110】
工程S10では、第1の材料層が付加製造され、第1の材料層は少なくとも1つの材料シートを含む。
【0111】
工程S11では、第1の材料層への絶縁材料の塗布が続く。絶縁材料は、ここでは好ましくはラッカー、特にはベーキングラッカーである。しかしながら、絶縁材料は、セラミック又は他の物質であってもよい。
【0112】
工程S12では、少なくとも1つの別の材料層が付加製造され、この少なくとも1つの別の材料層は、少なくとも1つの材料シートを含む。
【0113】
工程S13では、この少なくとも1つの別の材料層への絶縁材料の塗布が続く。
【0114】
工程S14では、第1の材料層と少なくとも1つの別の材料層とが互いに接合される。
【0115】
工程S15では、材料層が相互に固着される。工程S11またはS13で材料層にベーキングラッカーが塗布された場合は、材料層はベーキングによって互いに固着される。
【0116】
ここで、ベーキングとは、材料層が、好ましくは、圧力及び熱を用いて互いに接着されることを意味する。ベーキングラッカーは、圧力および熱によって軟化し、材料層を互いに接着して硬化する。これは溶接、打抜き及びリベット締めのような他の接続方法と比較して、材料層が材料を損傷させる接触部分を有しないという利点を有する。さらに、磁束は乱されず、材料応力または材料変形は生じない。
【0117】
図示された方法は、ダイナモエレクトリック回転機のステータに対しても適している。
【0118】
図5は、ダイナモエレクトリック回転機のロータ11を示す。
【0119】
ロータ11は材料層構造9を有する。材料層構造は、図中では、回転軸に沿って上下に配置された複数の材料層1を含む。材料層構造9はシャフト7に接続されている。
【0120】
材料層1は、図中では、少なくとも1つの別の材料層に固着されている。図は、互いに固着された複数の材料層1を示す。
【0121】
固着は、ベーキングラッカーが簡単な方法で塗布され得るので、ベーキングラッカーによって格別に良好に行われる。材料層1のとりわけ続いて行われるベーキングは、安定した堅牢な接続を作り出す。
【0122】
図6は、ダイナモエレクトリック回転機15の側面図を示す。
【0123】
機械15は、シャフト7と材料層構造9とを含むロータ11を有する。ロータ11は、ステータ12内で回転軸Rに従って回転することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 材料層
2 絶縁材料
3 絶縁材料
5 材料切り欠き
7 シャフト
9 材料層構造
11 ロータ
12 ステータ
15 ダイナモエレクトリック回転機
図1
図2
図3
図4
図5
図6