(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】コバルトクロムエッチング法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/28 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
C23F1/28
(21)【出願番号】P 2021534338
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019066538
(87)【国際公開番号】W WO2020124079
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-25
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521259208
【氏名又は名称】テック メット インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】ビドラ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シュッツァー ダニエル ジョン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04284468(US,A)
【文献】特表2015-515901(JP,A)
【文献】特開昭60-026675(JP,A)
【文献】米国特許第05922029(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0008365(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102980794(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F1/00-4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、
塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、及びフッ化水素酸(HF);並びに
前記コバルトクロム合金の成分金属を含み、
前記成分金属は、少なくとも3g/lのクロム(Cr)及び少なくとも0.5g/lのモリブデン(Mo)を含む、組成物。
【請求項2】
2N~5Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、及び
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分金属は、
3~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.5~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
50~225g/lの鉄(Fe)を更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分金属は、エッチングしようとする前記コバルトクロム合金中
に見出される各金属の比率で提供されるCo、Cr、及びMoを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも2Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、
50~225g/lの鉄(Fe)、
3~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.5~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも2Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、
7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
コバルトクロム合金ワークピースをエッチングするための方法であって、
前記ワークピースの少なくとも1つの表面を化学エッチング組成物と接触させるステップを含み、前記化学エッチング組成物は、
塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、及びフッ化水素酸(HF);並びに
前記コバルトクロム合金の成分金属を含み、
前記成分金属は、少なくとも3g/lのクロム(Cr)及び少なくとも0.5g/lのモリブデン(Mo)を含み、
前記接触ステップは、20℃~100℃の温度で1分~200分の期間にわたって実施され
る、
方法。
【請求項10】
前記化学エッチング組成物は、
少なくとも2Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3)、及び
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成分金属は、
3~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.5~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
50~225g/lの鉄(Fe)を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記成分金属は、エッチングしようとする前記コバルトクロム合金中
に見出される各金属の比率で提供されるCo、Cr、及びMoを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記成分金属は、
7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ワークピースを前記化学エッチング組成物と接触させるステップの前に、
前記ワークピースの前記少なくとも1つの表面を、鉱酸の10%~100%(容積/容積)水溶液を含む活性化溶液で活性化するステップ
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記接触ステップは、活性化ステップの120秒以内に実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接触ステップの前に、
化学エッチャントに耐性であるコーティングを前記ワークピースに施すステップ、及び
前記コーティングの部分を除去して、前記ワークピースの前記コーティングにパターン化デザインを形成するステップ
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記接触ステップの後に、
前記コーティングを前記ワークピースから剥脱するステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月14日に出願された米国特許仮出願第62/779,545号及び2019年8月28日に出願された米国特許仮出願第62/892,744号の優先権を主張するものである。これらの文献は両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、コバルトクロムベース合金の制御されたエッチングのための組成物、及びそれらを使用してコバルトクロムをエッチングするための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通例はコバルト-クロム(CoCr)と呼ばれるコバルトクロム合金は、一般に腐食耐性であり、極めて硬い。こうした優れた特性は、コバルトの結晶学的性質、クロム及び他の合金元素の強化効果、極めて硬いカーバイドの形成、並びにクロムにより付与される腐食耐性に起因する。こうした特質により、CoCr合金は、工業分野、医学分野、及び技術的分野において望ましいものになっている。また、こうした特質のため、この合金は化学研削又は化学加工が非常に難しくなる。本発明者らが意味する化学研削又は化学加工とは、予測可能で制御された様式で材料を意図的に腐食又はエッチングすることである。
CoCrが使用される幾つかの分野では、材料を過度に除去せずに、できるだけ実用的な平滑化表面状態を得ることが望ましい。これは、特に航空宇宙応用に関して該当し、航空宇宙応用の場合、目標は、染色浸透探傷検査又は他の検査のために表面を調製すること、気流パターン及び特徴を向上させること、並びに長期的な疲労性能を向上させることである。
コバルトクロム合金の平滑化には、歴史的には、アブレシブフロー(abrasive flow)平滑化又は機械加工が使用されている。このような方法では、研磨材を含む高粘度流体を、ワークピースの表面上及び内部通路を通して強制的に通過させ、そうした表面及び通路を研磨する。流体が粘性であり、流体をワークピースの通路に向かわせるために必要な配管接続システムは非常に複雑であることが多いため、この方法には時間及び費用がかかる。更に、独自のワークピースの1つ1つには、典型的には、独自に設計された配管接続システムが必要であるため、この方法では費用が増加する。
ある特定の化学物質、最も注目すべきは、濃過酸化水素及び濃塩酸の混合物は、比較的平滑な表面を提供することが示されているものの、これらは化学的攻撃により少量の材料を除去するに過ぎない。こうした方法は、混合物が揮発性であり急速に枯渇してしまうこと、及び金属イオンにより過酸化物の強力な分解が誘発されるという問題のため、材料の表面的な除去に好適であるに過ぎない。更に、この溶液は、一般的には、CoCr材料の著しい粒界攻撃(IGA)を引き起こす。
従って、化学加工によりCoCr合金から材料を確実に及び予測可能に除去するための制御された手段が望まれており、医療、航空宇宙、及び特殊産業を含む幾つかの異なる分野にその応用が見出されるだろう。更に、生体統合を強化若しくは加速させるための特定の表面粗さ若しくは微視的表面プロファイルを付与するために、又は気流パターン及び特徴を向上させ、染色浸透探傷検査若しくは他の検査を強化することができる、航空宇宙応用用の特定の表面平滑性を付与するために、CoCr合金から材料を除去するための手段が望まれている。部品の質量を低減し、3D印刷された支持構造を除去し、長期疲労性能を向上させるために、CoCr合金から材料を除去するための手段も望まれている。
【発明の概要】
【0004】
この必要性及び他の必要性を満たすために、本発明は、コバルトクロム合金の制御された化学エッチングに有用な組成物、及びそれらを使用して、航空宇宙産業において有用な平滑表面等の、微調整可能な特徴を有する表面を提供するための方法を提供する。
【0005】
本開示の発明は、コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、少なくとも2つの鉱酸、鉄(Fe)、及びエッチングしようとする合金の低濃度のある特定の成分金属を含む組成物を含む。例えば、コバルトクロムモリブデン合金をエッチングする場合、金属は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及び任意選択でコバルト(Co)を含んでいてもよい。ある特定の態様によると、組成物は、50~225g/lの鉄(Fe)、1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、及び0~10g/lのコバルト(Co)を含んでいてもよい。
また、本開示の発明は、コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、少なくとも2つの鉱酸、及びエッチングしようとする合金の高濃度の成分金属を含む。例えば、コバルトクロムモリブデン合金をエッチングする場合、金属は、コバルト(Co)、クロム(Cr)、及びモリブデン(Mo)を含んでいてもよい。組成物中のそのような金属の例示的な量としては、7~355g/lのコバルト(Co)、3~170g/lのクロム(Cr)、及び1~40g/lのモリブデン(Mo)が挙げられる。ある特定の態様によると、成分金属は、それらが金属合金に含まれている比率(つまり、合金中の金属の天然比率)を模倣する量で含まれていてもよい。例えば、合金がコバルトクロムモリブデン合金である場合、成分金属は、合金の総質量に基づき、約63~68質量%のCo、27~30質量%のCr、及び5~7質量%のMoで提供されていてもよい。
【0006】
ある特定の態様によると、少なくとも2つの鉱酸は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、ヨウ素酸(HIO3)、及びフッ化水素酸(HF)から選択してもよい。ある特定の態様によると、少なくとも2つの鉱酸は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、及びフッ化水素酸(HF)を含んでいてもよい。
ある特定の態様によると、組成物は、2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、及び0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)を含んでいてもよい。ある特定の態様によると、組成物は、水溶液であってもよい。
【0007】
本発明のある特定の態様によると、ワークピースを、本明細書で開示されている化学エッチング組成物のいずれかと接触させることにより、合金材料の1つ又は複数の表面をエッチングすることができる。ワークピースは、ワークピースを本開示の発明の化学エッチング組成物でエッチングし得る前に、活性化ステップを必要とする場合がある。例示的な活性化ステップは、エッチングしようとするワークピースの表面を、濃塩酸の10%~100%溶液(容積/容積;水性緩衝液又は水で希釈)等の鉱酸に曝露することを含む。表面は、室温等の温度範囲で鉱酸に曝露してもよく、温度がより高いほど、より低濃度の鉱酸が必要とされる。合金材料は、浸漬又は噴霧により鉱酸に曝露してもよい。
活性化の直後に、例えば30秒以内に、ワークピースを、本明細書の下記に記載されている通りの化学エッチング組成物に曝露してもよい。ある特定の態様によると、ワークピースは、活性化溶液(つまり、塩酸の10%~100%希釈物等の鉱酸)で依然として「濡れ」ていてもよい。
ワークピースの表面を活性化した後、化学エッチング組成物と接触させることによりワークピースをエッチングしてもよく、エッチングは、ワークピースを組成物に液浸又は浸漬すること、又はワークピースの1つ又は複数の表面に組成物を噴霧、ロール塗り、又ははけ塗りすることを含んでいてもよい。
従って、本開示の発明は、合金材料をエッチングするための方法も含む。ある特定の態様によると、1つの方法は、上記に記載の化学エッチング組成物の1つを調製するステップ、合金材料(例えば、ワークピース)を鉱酸で活性化するステップ、及び合金材料を化学エッチング組成物と接触させるステップを含んでいてもよい。ある特定の態様によると、化学エッチング組成物と接触させるステップは、合金材料が乾燥する前に(つまり、鉱酸に暴露してから)、又は鉱酸への暴露後30秒以内等、活性化ステップの直後に実施してもよい。
【0008】
ある特定の態様によると、合金材料は、約30℃~約100℃、又は約40℃~約100℃、又は約50℃~約100℃、又は約60℃~約100℃等、約20℃~約100℃の温度で、化学エッチング組成物と接触させてもよい。また更なる態様によると、合金材料は、約80℃~約95℃、約82℃~約88℃、又は約88℃~約91℃等、約65℃~約95℃の温度で、化学エッチング組成物と接触させてもよい。更に、合金材料を、化学エッチング組成物中で揺動させてもよい。更になお、合金材料は、所望のエッチングの深さに基づき、好ましくは20~35分間等の5~50分間等、非限定的な期間にわたって化学エッチング組成物と接触させてもよい。
本発明のある特定の態様によると、合金材料をエッチングするための別の方法は、ワークピースの少なくとも1つの表面を、化学エッチング組成物と接触させるステップを含んでいてもよい。化学エッチング組成物と接触させている間、合金材料を揺動してもよい。化学エッチング組成物、並びに合金材料を化学エッチング組成物に曝露するために使用される時間及び温度は、本明細書の上記に開示されている通りであってもよい。
【0009】
本開示の発明は、金属合金にパターン化デザインをエッチングするための方法を更に含む。この方法は、化学エッチャントに耐性であるコーティングを、金属合金の少なくとも部分に適用するステップ、コーティングの部分を除去して、コーティングにパターン化デザインを形成するステップ、及び化学エッチング組成物を適用することを含んでいてもよい。化学エッチング組成物、並びに合金材料を化学エッチング組成物に曝露するために使用される時間及び温度は、本明細書の上記に開示されている通りであってもよい。更に、エッチング前又は更にはコーティング材料を適用する前(つまり、パターン化前)等の、エッチングの以前に、合金材料を本明細書の上記に記載されている通りに活性化してもよい。
この方法は、パターン化エッチングが完了した後に、コーティングを金属合金から剥脱するステップを更に含んでいてもよい。金属合金は、ワークピースの一部又はその上のコーティングを含む、ワークピースの全て又は部分を形成してもよい。
ある特定の態様によると、本明細書に開示されている組成物又は方法によりエッチングしようとする金属合金は、例えば、コバルトクロムモリブデン合金、コバルトクロムタングステンニッケル合金、又はコバルトニッケルクロムモリブデン合金等のコバルトクロム合金であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図1B】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図1C】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図1D】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図1E】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図1F】コバルト-クロム合金表面の顕微鏡写真を示す図である。
図1A及び1Bは、それぞれ天然合金表面の150×及び1000×の拡大図であり、
図1C及び1Dは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して2ミル(50ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図であり、
図1E及び1Fは、本開示の発明のある特定の態様によるエッチング組成物を使用して12ミル(300ミクロン)の深さにエッチングした表面の、それぞれ150×及び1000×の拡大図である。
【
図2A】本開示の発明のある特定の態様による種々の化学物質でエッチングされたコバルト-クロム-モリブデン合金表面の断面の顕微鏡写真を示す図であり、スケールバーは5ミル(127ミクロン)である。
【
図2B】本開示の発明のある特定の態様による種々の化学物質でエッチングされたコバルト-クロム-モリブデン合金表面の断面の顕微鏡写真を示す図であり、スケールバーは5ミル(127ミクロン)である。
【
図2C】本開示の発明のある特定の態様による種々の化学物質でエッチングされたコバルト-クロム-モリブデン合金表面の断面の顕微鏡写真を示す図であり、スケールバーは5ミル(127ミクロン)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載では、本発明は、コバルトクロム合金から表面材料を選択的に除去するための化学組成物(つまり、化学エッチング組成物)及びそれらの使用方法を含む種々の代替的な実施形態及び実装形態の状況において説明されている。
本明細書に開示されている化学エッチング組成物及び方法の種々の態様は、一緒に連結、取付け、及び/又は接合される構成要素を記載することにより例示することができる。本明細書で使用される場合、「連結」、「取付け」、及び/又は「接合」という用語は、同義的に記載されており、2つの構成要素間が直接的に接続されていること、又は適切な場合は、介在構成要素又は中間構成要素を介して互いに間接的に接続されていることのいずれかを示す。対照的に、構成要素が、別の構成要素と「直接的に連結」、「直接的に取付け」、及び/又は「直接的に接合」されていると称されている場合、上記の例に示されている介在要素は存在しない。
【0012】
本明細書に開示されている化学エッチング組成物及び方法の種々の態様は、1つ又は複数の例示的な実装形態を参照して記載及び例示することができる。本明細書で使用される場合、「例示的」という用語は、「例、実例、又は例示として役目を果たす」ことを意味し、本明細書に開示されている組成物又は方法の他の変異形態よりも好ましい又は有利であるとは必ずしも解釈されるべきではない。「任意選択の」又は「任意選択で」とは、その後に記載されている事象又は状況が生じてもよく又は生じなくともよく、この記載は、事象が生じる場合及び事象が生じない場合を含むことを意味する。加えて、「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、「含む(including)が、それに限定されない」ことを意味する。
また、単数形「a」、「an」、及び「the」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、状況が明らかに別様の指示をしない限り、複数形の参照を含むことが留意されなければならない。従って、「a」組成物、「an」合金、又は「the」金属への言及は、本明細書に開示されているこれらの又は任意の他の成分の1つ又は複数への言及であってもよい。
【0013】
更に、任意の作業例又は別様の指示がある場合を除いて、例えば、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量を表す全ての数値は、いかなる場合でも「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。従って、そうではないと示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示されている数値パラメーターは、本発明により得られることになる所望の特性に応じて様々であり得る近似値である。最低でも、及び均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではないが、各数値パラメーターは、少なくとも、報告されている有効数字の桁数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきである。
本発明の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるとはいえ、特定の例に示されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値には、それぞれの試験測定にみられる標準偏差に必然的に起因するある特定の誤差が本質的に含まれている。
【0014】
「実質的に含まない」は、本明細書で使用される場合、微量の成分のみであれば含まれることを意味すると理解される。「微量」とは、かろうじて検出可能であり、本主題の組成物、方法、又はそれらから形成される物品の機能的特性に利益をもたらさない成分のそうした定量的レベルである。例えば、微量は、本明細書に開示されているアルカリ化学物質のいずれかの構成成分又は成分の1.0質量%、0.5質量%、0.1質量%、0.05質量%、又は更には0.01質量%を構成してもよい。「全く含まない」は、本明細書で使用される場合、構成成分又は成分が全く含まれていないことを意味すると理解される。
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書に開示されている化学エッチング組成物は、基材に対して減削工程、つまり化学加工又は化学研削とも呼ばれる化学エッチングを実施するための手段を提供する。化学エッチングは、例えば、物体若しくはワークピースの選択表面又はワークピース全体を、表面の部分を所望の深さまで除去するのに十分な期間にわたって、本明細書に開示されている化学エッチング組成物に曝露することを含んでいてもよい。
【0016】
化学エッチング組成物
本発明の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも2つの鉱酸を含む。鉱酸は、1つ又は複数の無機化合物に由来する無機酸である。鉱酸は全て、水に溶解すると水素イオンを放出する。鉱酸の好適な例としては、これらに限定されないが、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、リン酸(H3PO4)、硫酸(H2SO4)、フッ化水素酸(HF)、ヨウ素酸(HIO3)、及び臭化水素酸(HBr)が挙げられる。
本発明のある特定の態様によると、化学エッチング組成物中の少なくとも2つの鉱酸は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、ヨウ素酸(HIO3)、及びフッ化水素酸(HF)から選択される。ある特定の態様によると、化学エッチング組成物は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、及びフッ化水素酸(HF)を含む。
【0017】
ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、及び0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、3N~5NのHCl、又は4N~5NのHCl;0.05N~0.6NのHNO3、又は0.05N~0.4NのHNO3、又は0.05N~0.2NのHNO3、又は0.2N~0.8NのHNO3、又は0.3N~0.7NのHNO3、又は0.4N~0.6NのHNO3;及び0.7N~1.2NのHF、又は0.8N~1.1NのHF、又は0.7N~1.0NのHFを含む。
ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも2.2N、又は少なくとも2.4N、又は少なくとも2.6N、又は少なくとも2.8N、又は少なくとも3N、又は少なくとも3.2N、又は少なくとも3.4N、又は少なくとも3.6N、又は少なくとも3.8N、又は少なくとも4.0N等、少なくとも2Nの塩酸(HCl)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で4.9N、又は最大で4.8N、又は最大で4.7N、又は最大で4.6N、又は最大で4.5N、又は最大で4.4N、又は最大で4.3N、又は最大で4.2N、又は最大で4.1N、又は最大で4.0N等、最大で5Nの塩酸(HCl)を含む。
ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも0.1N、又は少なくとも0.2N、又は少なくとも0.3N、又は少なくとも0.4N、又は少なくとも0.5N、又は少なくとも0.6N、又は少なくとも0.7N等、少なくとも0.05Nの硝酸(HNO3)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で0.7N、又は最大で0.6N、又は最大で0.5N、又は最大で0.4N、又は最大で0.3N、又は最大で0.2N、又は最大で0.1N等、最大で0.8の硝酸(HNO3)を含む。
ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも0.7N、又は少なくとも0.8N、又は少なくとも0.9N、又は少なくとも1.0N、又は少なくとも1.1N、又は少なくとも1.2N等、少なくとも0.6Nのフッ化水素酸(HF)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で1.2N、又は最大で1.1N、又は最大で1.0N、又は最大で0.9N、又は最大で0.8N、又は最大で0.7N等、最大で1.3Nのフッ化水素酸(HF)を含む。
【0018】
本発明の態様によると、化学エッチング組成物は、エッチングしようとする金属合金の成分金属も含む。例えば、ASTM F75、F799、又はF1357等のコバルトクロムモリブデン合金で形成されたコバルトクロムワークピースのエッチングに使用するための化学エッチング組成物は、クロム(Cr)及びモリブデン(Mo)を含んでいてもよい。追加の例として、化学エッチング組成物は、ASTM F562等のコバルトニッケルクロムモリブデン合金で形成されたコバルトクロムワークピースのエッチングに使用するためには、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びニッケル(Ni)を含んでいてもよく、又はASTM F90等のコバルトクロムタングステンニッケル合金で形成されたコバルトクロムワークピースのエッチングに使用するためには、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びタングステン(W)を含んでいてもよい。
本発明の態様によると、化学エッチング組成物は、任意選択でコバルト(Co)を含んでいてもよい。
本発明の態様によると、化学エッチング組成物は、鉄(Fe)を更に含んでいてもよい。1つの理論に縛られないが、化学エッチング組成物に鉄を添加することは、組成物の反応速度を安定させるのに役立ち得ると考えられる。
本発明者らは、全ての酸が以前に考察した濃度範囲内にあり、成分金属クロム及びモリブデンが存在し、コバルト及び/又は鉄が存在する又は存在しない組成物の場合、処理された部品は、表面が向上し(より平滑になり、つまり、表面粗さ又はRaが減少し)、金属含有量が増加する組成物を発見している。
1つの理論に縛られないが、金属含有量の増加は、金属含有量を上昇させるために使用される金属に関わらず、表面仕上げ(平滑性)を向上させることができるが、向上のレベルは、使用される金属のタイプ及び比率に依存することが見出された。つまり、主に鉄含有量を増加させることにより金属の濃度を増加させると、表面粗さの向上が示されるが、表面は、鉄含有量を低くするか又は存在させずに、成分金属(例えば、クロム、モリブデン、及びコバルト)の含有量を増加させることにより更に向上する。
【0019】
従って、本開示の発明の第1の実施形態によると、化学エッチング組成物は、少なくとも2つの鉱酸、鉄、及びエッチングしようとする合金の低~中程度濃度のある特定の成分金属を含んでいてもよい。例えば、組成物は、本明細書に列挙されている鉱酸の任意の2つ又はそれよりも多く、及び50~225g/lの鉄(Fe)、エッチングしようとする合金がコバルトクロムモリブデン合金である場合は、1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、及び任意選択で0~10g/lのコバルト(Co)等のコバルト(Co)を含んでいてもよい。
【0020】
第1の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも50g/l、又は少なくとも70g/l、又は少なくとも90g/l、又は少なくとも110g/l、又は少なくとも130g/l、又は少なくとも150g/l、又は少なくとも170g/l、又は少なくとも200g/lの鉄(Fe)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で200g/l、又は最大で160g/l、又は最大で140g/l、又は最大で120g/l、又は最大で100g/l、又は最大で80g/l、又は最大で60g/l等、最大で225g/lの鉄(Fe)を含む。
第1の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも1g/l、又は少なくとも2g/l、又は少なくとも3g/l、又は少なくとも4g/l、又は少なくとも5g/l、又は少なくとも6g/l、又は少なくとも7g/l、又は少なくとも8g/l、又は少なくとも9g/lのクロム(Cr)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、例えば、最大で9g/l、又は最大で8g/l、又は最大で7g/l、又は最大で6g/l、又は最大で5g/l、又は最大で4g/l、又は最大で3g/l、又は最大で2g/l等、最大で10g/lのクロム(Cr)を含む。
第1の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも0.1g/l、又は少なくとも0.5g/l、又は少なくとも1g/l、又は少なくとも2g/l、又は少なくとも3g/l、又は少なくとも4g/lのモリブデン(Mo)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で4g/l、又は最大で3g/l、又は最大で2g/l、又は最大で1g/l、又は最大で0.5g/l等、最大で5g/lのモリブデン(Mo)を含む。
第1の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、コバルト(Co)を含まないか、又は少なくとも1g/l、若しくは少なくとも2g/l、若しくは少なくとも3g/l、若しくは少なくとも4g/l、若しくは少なくとも5g/l、若しくは少なくとも6g/l、若しくは少なくとも7g/l、若しくは少なくとも8g/l、若しくは少なくとも9g/lのコバルト(Co)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、例えば、最大で9g/l、又は最大で8g/l、又は最大で7g/l、又は最大で6g/l、又は最大で5g/l、又は最大で4g/l、又は最大で3g/l、又は最大で2g/l等、最大で10g/lのコバルト(Co)を含む。
【0021】
本開示の発明の第2の実施形態によると、化学エッチング組成物は、少なくとも2つの鉱酸、及びエッチングしようとする合金の高濃度のある特定の成分金属を含んでいてもよい。例えば、組成物は、本明細書に列挙されている鉱酸の任意の2つ又はそれよりも多く、並びにエッチングしようとする合金がコバルトクロムモリブデン合金である場合は、約7~355g/lのコバルト(Co)、約3~170g/lのクロム(Cr)、及び約1~40g/lのモリブデン(Mo)を含んでいてもよい。組成物は、鉄を実質的に含んでいなくてもよく又は全く含んでいなくてもよい。
第2の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも3g/l、又は少なくとも10g/l、又は少なくとも20g/l、又は少なくとも30g/l、又は少なくとも40g/l、又は少なくとも50g/l、又は少なくとも70g/l、又は少なくとも90g/l、又は少なくとも110g/l、又は少なくとも130g/l、又は少なくとも150g/lのクロム(Cr)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で160g/l、又は最大で150g/l、又は最大で140g/l、又は最大で130g/l、又は最大で120g/l、又は最大で100g/l、又は最大で80g/l、又は最大で60g/l、又は最大で40g/l、又は最大で20g/l、又は最大で10g/l等、最大で170g/lのクロム(Cr)を含む。
第2の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも1g/l、又は少なくとも5g/l、又は少なくとも10g/l、又は少なくとも20g/l、又は少なくとも30g/l、又は少なくとも35g/lのモリブデン(Mo)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で35g/l、又は最大で30g/l、又は最大で20g/l、又は最大で10g/l、又は最大で5g/l等、最大で40g/lのモリブデン(Mo)を含む。
【0022】
第2の実施形態のある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、少なくとも7g/l、又は少なくとも15g/l、又は少なくとも50g/l、又は少なくとも100g/l、又は少なくとも150g/l、又は少なくとも200g/l、又は少なくとも250g/l、又は少なくとも300g/l、又は少なくとも325g/lのコバルト(Co)を含む。ある特定の他の態様によると、化学エッチング組成物は、最大で325g/l、又は最大で300g/l、又は最大で250g/l、又は最大で200g/l、又は最大で150g/l、又は最大で100g/l、又は最大で50g/l、又は最大で25g/l等、最大で355g/lのモリブデン(Mo)を含む。
【0023】
第2の実施形態のある特定の態様によると、成分金属は、それらが金属合金に含まれる比率を模倣する量で含まれていてもよい。例えば、合金がASTM F75等のコバルトクロムモリブデン合金である場合、成分金属は、合金の総質量に基づき、約63~68質量%のCo、27~30質量%のCr、及び5~7質量%のMoとして提供されていてもよく、又は合金がASTM F562等のコバルトニッケルクロムモリブデン合金である場合、成分金属は、合金の総質量に基づき、約35質量%のCo、約35質量%のNi、約20質量%のCr、及び約10質量%のMoとして提供されていてもよい。合金及びそれらの成分金属比のある特定の例が、本明細書に例として提供されているが、コバルトクロムの他の合金も、本開示の発明の範囲内にある。当業者であれば、ある特定の他の合金中の成分金属の比率を知っており、本開示で提供される本発明の記載に従ってそれらが提供されることになる比率を理解することができるだろう。
化学エッチング組成物は、水性組成物であってもよい。そのため、鉱酸及び成分金属は、水又は別の水性緩衝液等の水性媒体に溶解することができる。
【0024】
本発明のある特定の態様によると、ワークピースを、本明細書に開示されている化学エッチング組成物のいずれかと接触させることにより、ワークピースの1つ又は複数の表面をエッチングすることができる。本発明のある特定の態様によると、合金を、本明細書に開示されている化学エッチング組成物のいずれかと接触させることにより、合金材料の1つ又は複数の表面をエッチングすることができる。
【0025】
表面活性化
ワークピース又は合金は、ワークピース又は合金を、本開示の発明の化学エッチング組成物でエッチングし得る前に、活性化ステップを必要とする場合がある。例示的な活性化ステップは、エッチングしようとするワークピースの表面を、鉱酸の10%~100%(容積/容積)水溶液等の鉱酸に曝露することを含む。例示的な活性化溶液は、濃塩酸又はフッ化水素酸の10%~100%水溶液(容積/容積;水性緩衝液又は水で希釈)を含む。表面は、室温又はそれよりも高温等の温度範囲で鉱酸に曝露してもよく、温度がより高いほど、より低濃度の鉱酸が必要とされる。ワークピースは、浸漬又は噴霧により鉱酸に曝露してもよい。
ある特定の態様によると、ある特定の合金、例えば、鍛錬及び/又は鍛造コバルトクロム合金は、濃過酸化水素(50%H2O2)及び濃塩酸(発煙塩酸;37%)の混合物による活性化から利益を得ることができる。例えば、ある特定の態様によると、活性化組成物は、少なくとも25%(容積/容積)の過酸化水素及び少なくとも25%の濃塩酸を含んでいてもよい。表面は、室温又はそれよりも高温等の温度範囲で混合物に曝露してもよく、温度がより高いほど、より低濃度の鉱酸が必要である。ワークピースは、浸漬又は噴霧により混合物に曝露してもよい。
【0026】
本明細書の上記で示されているように、そのような化学反応は、一般に、材料の表面的除去に好適であるに過ぎない。しかしながら、本開示の方法で使用される場合、活性化ステップは、合金表面のエッチングに使用されるのではなく、むしろ本明細書に開示されている新規組成物でエッチングするために合金表面を活性化するために使用される。更に、この活性化ステップにより被る可能性のあるCoCr材料のあらゆる粒界攻撃(IGA)は、活性化ステップに続くその後のより実質的なエッチング組成物及び方法により排除されることになる。
活性化の直後、例えば120秒以内に、ワークピースを、本明細書の下記に記載されている通りの化学エッチング組成物に曝露してもよい。ある特定の態様によると、ワークピースは、活性化溶液(つまり、塩酸の10%~100%希釈物等の鉱酸)で依然として「濡れ」ていてもよい。
ワークピースの表面を活性化した後、化学エッチング組成物と接触させることによりワークピースをエッチングしてもよく、エッチングは、ワークピースを組成物に液浸又は浸漬すること、又はワークピースの1つ若しくは複数の表面に組成物を噴霧、ロール塗り、又ははけ塗りすることを含んでいてもよい。
【0027】
エッチング方法
本開示の発明は、ワークピースの合金材料をエッチングするための方法を提供する。ある特定の態様によると、1つの方法は、上記に記載の化学エッチング組成物の1つを調製するステップ、合金材料を、鉱酸又は鉱酸及び過酸化水素の混合物で活性化するステップ、及び合金材料を化学エッチング組成物と接触させるステップを含んでいてもよい。ある特定の態様によると、化学エッチング組成物と接触させるステップは、合金材料が乾燥する前、又は活性化後120秒以内(つまり、鉱酸に暴露してから120秒以内)、又は活性化後90秒以内、又は活性化後60秒以内、又は活性化後30秒以内等、活性化ステップの直後に実施してもよい。
【0028】
ワークピースと化学エッチング組成物との接触は、ワークピースを組成物に液浸又は浸漬すること、又はワークピースの1つ若しくは複数の表面に組成物を噴霧、ロール塗り、又ははけ塗りすることを含んでいてもよい。
例えば、エッチングしようとするワークピースを、化学エッチング組成物に耐性である固定具に取り付けてもよく、ワークピース及び固定具の少なくとも部分を両方とも、指定の時間にわたって化学エッチング組成物に浸漬してもよい(例えば、一部が化学エッチング組成物上に/中に吊される)。
本発明者らは、エッチングしようとする表面を、目標の表面特徴に応じて、組成物中で水平に、例えば上向きに、又は垂直に配置することが好ましい場合があることを見出した。エッチング反応のガス副生成物は、その表面が水平のままエッチングされる場合、表面から離れて真上へと移動し、それ以外は工程に影響を与えることはない。エッチングしようとする表面が垂直に配置されている場合、気泡は垂直表面に沿って移動し、局所的な微小循環によりエッチング速度に影響を及ぼし、標的表面への未反応化学物質の補給に対して影響を及ぼす場合がある。このように、表面幾何形状は、処理中に部品の角度(水平に対して)を調整することにより操作することができる。
従って、本発明のある特定の態様によると、ワークピースを化学エッチング組成物内に角度を付けて配置することにより、ワークピースの1つ又は複数の表面をエッチングしてもよい。例示的な角度としては、化学エッチング組成物を含有する「浴」の表面に対して0°(つまり、水平上向き)、浴の表面に対して90°(つまり、垂直)、浴の表面に対して180°(つまり、水平下向き)、又はそれらの間の任意の角度が挙げられる。
その代わりに、ワークピースを、化学エッチング組成物で満たされたドラム内に入れてもよく、ドラムを回転させてもよい。回転中の部品への衝撃を和らげるため、不活性プラスチックビーズ又は不活性プラスチック片等の追加の基材をドラムに追加してもよい。
【0029】
化学エッチングステップは、ワークピースを化学エッチング組成物中で揺動させることを含んでいてもよい。化学エッチングステップは、エッチング組成物を再循環させることを含んでいてもよく、再循環は、元の化学エッチング組成物(つまり、方法の開始時に適用/使用したエッチング組成物)を循環させること、又は追加の新しい未使用化学エッチング組成物と共に元の化学エッチング組成物を循環させることを含んでいてもよい。化学エッチングステップは、ある特定量のエッチング時間後に、使用した化学エッチング組成物を、新しい未使用の化学エッチング組成物と交換することを含んでいてもよい。
【0030】
化学エッチングステップは、ワークピース及び/又は化学エッチング組成物を、約30℃~100℃、又は約40℃~約100℃、又は約50℃~約100℃、又は約60℃~約100℃、又は約65℃~約95℃、又は約80℃~約95℃、又は約82℃~約88℃、又は88℃~約91℃等、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱することを更に含んでいてもよい。ある特定の態様によると、合金材料を、約30℃~約100℃、又は40℃~約100℃、又は約50℃~約100℃、又は約60℃~約100℃、又は約65℃~約95℃、又は約80℃~約95℃、又は約82℃~約88℃、又は88℃~約91℃等、約20℃~約100℃の範囲の温度で化学エッチング組成物と接触させてもよい。
【0031】
ある特定の態様によると、所望のエッチングの深さに基づき、非限定的な期間にわたって合金材料を化学エッチング組成物と接触させてもよい。エッチングは、合金材料が化学エッチング組成物に曝露されるとすぐに始まり、所望のエッチングの深さが達成されるまで進行させることができる。そのため、合金材料は、0秒間よりも長い期間から数時間又は数日間よりも長い期間までにわたって、化学エッチング組成物と接触させてもよい。本開示の発明のある特定の態様によると、合金材料は、2~200分間、又は5~50分間等、1~1000分間の時間にわたって、化学エッチング組成物に、その中で揺動させながら曝露させてもよい。
本明細書に開示されている化学エッチング組成物及び方法を使用して、ワークピースの表面の部分又は全てを所望の深さまで除去することができる。更に、本明細書に開示されている組成物及び方法は、著しい粒界攻撃(IGA)を伴わずに材料の除去を提供する。
また、本明細書に開示されている組成物及び方法は、ワークピースの3D造形中に形成される支持構造、又はワークピースのレーザー造形中に残される島状構造等の造形のアーチファクトを除去するための手段、又は積層造形工程のアーチファクト、例えば、積層構築中に完全には溶融しなかったか又は完全には焼結されなかった粉末、粒子、顆粒等の、ワークピース表面からの残渣を低減するための手段を提供する。残渣としては、汚れ又は他の取扱いアーチファクト等の外部残渣も挙げることができる。
本発明者らは、本明細書に開示されている組成物及び方法を使用した表面材料の除去が、予測可能及び再現可能であることを見出したが、ほとんどの他の合金とは異なり、材料が除去されると、合金のエッチング表面は、上記で開示されている活性化ステップ等の表面の好適な化学的又は電気化学的再活性化、又は表面層の破壊(例えば、グリットブラスト等の機械的手段による)がない限り、更なるエッチングを阻害する極めて安定した不動態表面層を形成する。そのため、処理は、最も容易に及び経済的に実施され、完全な標的化除去が全て1つのステップで生じる。
【0032】
コバルト合金
本明細書に開示されている組成物及び方法は、これらに限定されないが、ASTM F75(外科インプラント用コバルト-28クロム-6モリブデン合金鋳造品及び鋳造合金の標準仕様)、ASTM F799(外科インプラント用コバルト-28クロム-6モリブデン合金鍛造品の標準仕様)、及びASTM F1537(外科インプラント用コバルト-28クロム-6モリブデン合金の標準仕様)等の配合を有する、鋳造、鍛造、機械加工、及び他の製品を含む、あらゆるタイプのコバルト-クロム-モリブデンベース合金に好適である。
本組成物は、ASTM F90(外科インプラントに応用するための鍛錬コバルト-20クロム-15タングステン-10ニッケル合金の標準仕様)及びASTM F562(外科インプラントに応用するための鍛練35コバルト-35ニッケル-20クロム-10モリブデン合金の標準仕様)等の、ニッケルを含有するコバルト-クロム合金にも好適である。
【0033】
パターン生成
本発明のある特定の態様によると、ワークピースの部分を、パターン状等に、エッチングしてもよい。未エッチングのままとなる部分は、マスキング材料を使用して化学エッチング組成物から保護することができる。マスキング材料は、化学エッチング組成物に耐性であるコーティング等、少なくとも、保護しようとする表面に施されるコーティングを含んでいてもよい。次いで、本発明の化学エッチング組成物に曝露させることにより、露出した非マスク表面を化学的にエッチングしてもよい。
化学エッチング組成物に耐性であるコーティング、及び活性化溶液(鉱酸)は、少なくとも液浸、注ぎ込み、噴霧、はけ塗り、又はロール塗り等、当技術分野で公知の任意の手段により適用することができる。本発明の化学エッチング組成物に耐性である例示的なコーティングとしては、例えば、ADCOAT AC-818等、AC Productsからのマスキング剤が挙げられる。
選択されたコーティングの固形分に応じて、適用間に十分な乾燥時間を取ってコーティングを複数回施すことが必要とされる場合がある。使用されるコーティングは、一般に、選択されたエッチャントから物体を保護しつつ、物体の下地材料に対する一切の有害性を回避するように特注されている。
【0034】
各適用後、コーティングは、その前の適用に対する損傷を防止し、及び/又はそれ以後の適用を阻害しない様式で硬化させることが可能であり得る。「硬化」という用語は、硬化したコーティングに関連して使用される場合、コーティングを形成する成分の少なくとも部分が、重合、架橋、又は乾燥して固化薄膜を形成することを意味する。固化薄膜を形成するための硬化反応又は乾燥反応は、周囲条件下で実施してもよく、又は高温高圧で若しくは種々のガスの存在下で実施してもよい。例えば、コーティングは、コーティングの乾燥又は硬化のために蒸発させることができる溶媒を含んでいてもよい。溶媒の蒸発は、新鮮な空気又は不活性ガスの供給と組み合わせた真空除去により加速させることができる。選択したコーティングの性質に応じて、熱源を使用して乾燥を促進してもよい。更に、ある特定のコーティング化学物質の場合、コーティングを目標のエッチング組成物に対して十分に耐性にするために、追加の処理ステップ(イメージング(imaging)、固化、固定等)が必要となる場合がある。
【0035】
コーティングは、エッチングしようとするワークピースの領域を露出させ、保護しようとする領域を覆うパターンで施してもよい。その代わりに、コーティングは、ワークピースのエッチングしようとする領域のコーティングを除去して、パターン化してもよい。そのような除去は、機械的なスクライビング及び剥離によるもの、又はレーザーアブレーションによるものであってもよく、レーザーアブレーションでは、レーザーを使用して、特定の領域又はパターンのコーティングを除去又はアブレーションする。どちらの場合でも、コーティングの厚さは、スクライビング装置又はレーザーアブレーション装置の特徴と適合させることができる。一般に、化学エッチングステップ中の十分な保護を可能にする最も薄い適用が望ましい。なぜなら、コーティングがより薄いと、より短い乾燥時間、より少ないコーティング材料、より低いレーザー強度、及びエッチング完了後のコーティング剥脱により短い時間しか必要としないからである。更に、レーザーアブレーション法の場合、アブレーション法を向上させるために、着色剤又は他の添加剤をコーティングに添加してもよい。着色剤及び/又は添加剤は、特定のレーザータイプ及び波長に適合させることができる。
【0036】
フォトレジストを使用してパターン化することになるワークピースの場合、フォトレジストをワークピースの表面に塗布してもよい。フォトレジストは、光に曝露されると特性が変化する感光性コーティングであり、電磁放射線、最も一般的にはUV光スペクトルに曝露された領域において、エッチャント又は溶媒による攻撃に対する耐性を獲得するか又は喪失するかのいずれかである。フォトレジスト(例えば、ポジティブ又はネガティブフォトレジスト)の厚さ及び特性は、フォトレジストに対するパターン露光に使用される装置に適合させることができる。
ワークピースの表面をコーティングするための幾つかの方法が本明細書に記載されているが、当技術分野で公知の他の方法も本発明の範囲内にある。更に、1つよりも多くのコーティング層をワークピースの表面に施してもよく、各コーティング層は、コーティング材料の厚さ及び種類が異なっていてもよい。以前に示されているように、特定のコーティング厚さ及びコーティング材料の選択は、少なくとも、その方法のそれ以降のステップで使用されることになるパターン生成法に依存する場合がある。
【0037】
「パターン生成」という用語は、一般に、特定のパターン又はデザインに従ってワークピースの表面からコーティングの部分を除去するために使用される種々の方法及び実装形態を記述するものである。パターンは、コーティングの部分を除去するために使用される種々のデバイスの動き及びワークピースの動きを一緒に又は個々にのいずれかで指図するコンピュータに事前設定又はプログラムされていてもよい(例えば、CAD図面から変換されてもよい)。
パターン化されたワークピースは、レーザーアブレーション、機械的スクライビング及び剥離、又はフォトレジスト法のいずれで生産されたかに関わらず、液浸、ロール塗り、はけ塗り、又は噴霧のいずれかを使用して化学エッチング組成物に曝露させることができる。本明細書の上記に示されているように、ワークピースを浴中で化学エッチング組成物と接触させる場合、ワークピースを、浴中にある間、揺動させてもよく、又はその代わりに化学エッチング組成物を材料流として提供してもよい(例えば、ワークピースを、化学エッチング組成物の流動中に配置してもよい)。
【0038】
化学エッチングの前に活性化ステップが含まれている場合、パターン化された表面を、本明細書の上記に開示されている化学物質のいずれかを用いること等により、活性化することができる。その代わりに、表面は、本明細書で考察されている方法(パターン化コーティング、除去された部分を有するコーティング、又はフォトレジスト)のいずれかを使用して、パターン化する前に活性化してもよい。
更に、ワークピース及び化学エッチング組成物のいずれか又は両方を、約30℃~100℃、又は約40℃~約100℃、又は約50℃~約100℃、又は約60℃~約100℃、又は約65℃~約95℃、又は約80℃~約95℃、又は約82℃~約88℃、又は88℃~約91℃等、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱してもよい。
エッチングが完了したら、ワークピースをすすいで、残留エッチャントを全て洗い流し、剥脱溶液(コーティングに適合した溶媒)の浴に入れて、残りのコーティング材料を全て除去することができる。その代わりに、剥脱溶液の代わりに、溶液を高圧噴霧することからなるウェットブラスト法を使用して、物体からコーティングを機械的に除去してもよい。残りのコーティングを除去(「剥脱」)した後、ワークピースを十分に洗浄及び乾燥させる。
【0039】
化学エッチング特徴
化学エッチング組成物により除去される材料の量、つまりエッチングの深さには制限がなく、化学エッチング組成物への曝露時間の長さ、及び例えば長時間曝露後の組成物の化学的性質の変化に依存する場合がある。そのような変化としては、少なくとも、酸含有量の低減、成分金属含有量の増加、又はそれらの任意の組合せを挙げることができる。
エッチングの速度、つまり材料除去の速度は、化学成分の互いに対する比率、温度、及び/又は化学エッチング組成物中でのワークピースの揺動量の組合せに依存する場合がある。例えば、本開示の方法のある特定の態様によると、コバルトクロムの試料を、本開示の化学エッチング組成物に室温で暴露した場合、0.3~1ミル/分又は0.5ミル/分等の0.1~1ミル/分の速度でエッチングしてもよい。
【0040】
エッチング表面は、天然の非エッチング表面よりも少なくとも40%小さい、又は少なくとも50%小さい、又は少なくとも60%小さい、又は少なくとも70%小さい、又は少なくとも80%小さい、又は更には少なくとも90%小さい表面粗さ等、天然の非エッチング表面よりも少なくとも25%小さい表面粗さを示すことができる。エッチング表面は、200μ-in未満、又は150μ-in未満、又は更には100μ-in未満(それぞれ、5μm未満、3.8μm未満、又は2.5μm未満)の表面粗さ(Ra)を有してもよい。
本化学エッチング組成物及び使用方法の1つの独特で予想外の特質は、化学エッチングが完了した後の最終表面が、方向性を持って配向されたエッチング模様又は「擦傷」を一切含まないことである。上記に考察されているように、本明細書に開示されているもの等、合金の表面を平滑化するための従来技術法としては、アブレシブフロー機械加工又は平滑化が挙げられる。そのような方法では、研削材を含む粘性液体を、平滑化しようとする表面に高流速で強制的に流す。研削材の流れに方向性があるため、方向性を持って配向された擦傷又は模様がもたらされる。従って、この方法は、本開示の組成物及び方法と比較して時間及びコストが増加するとはいえ、平滑な表面を提供することができるが、表面は、方向性を持って配向された模様を含む。
【0041】
本化学エッチング組成物及び使用方法の別の独特で予想外の特質は、化学エッチングが完了した後の最終表面が不動態化表面であるということである。つまり、一般に、その後の時点でエッチング工程を実施することは不可能である。本明細書の上記に開示されている活性化化学反応等の代替的化学反応、及び/又は機械的研磨若しくは研削を使用して、本発明の化学エッチング組成物を使用したその後のラウンドの化学エッチングを準備するために、下地表面(つまり、不動態化されていない表面)のより多くを露出させてもよい。
不動態化は、表面の複雑なパターン化を達成するのに有用な場合があり、第1のラウンドのエッチング中に保護されるある特定の領域は、コーティングされていなくともよく、第2のラウンドのエッチング中に、第1のラウンドのエッチング中に達成されたエッチングの深さとは異なる深さまでエッチングすることができる。そのような方法を使用すると、任意の数のコーティング工程及びエッチング工程にわたって、任意の数の様々な深さを基材において達成することができる。加えて、得られる表面は、高温で、プレエッチング基材合金よりも更に高度な腐食耐性を呈することが予想され得る。
更に、本発明者らは、化学エッチング組成物及びそれらの使用方法が、単一のエッチング工程において表面の無制限な化学エッチング又は研削(例えば、深さ、総面積等)を提供することを見出した。
この安定表面層は、存在する場合、標準的なコバルト-クロム-モリブデン表面の腐食電位よりも大きな腐食電位の増強に有益であり、整形外科デバイスとして移植された際に、標準的な合金よりも更に大幅に毒性を低減する。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、種々のコバルトクロム合金をエッチングするために使用することができる配合物を提供する。こうした実施例に列挙されている化学エッチングステップの各々の前に、合金材料を活性化する。本開示の方法の一部を形成する例示的な活性化ステップは、本明細書に開示されている化学エッチング組成物への曝露直前に合金材料を鉱酸に浸漬又は噴霧すること等により、化学エッチング組成物への曝露直前に合金材料を鉱酸に曝露することを含む。例えば、ワークピースを、塩酸の10%~100%(容積/容積)水溶液で液浸又は噴霧し、数分以内に、例えば120秒未満又は更には30秒未満で、下記の実施例I~IIIに詳述されている通りの化学エッチング溶液の1つに曝露させてもよい。本明細書では、活性化溶液は塩酸を含むことが特に示されているが、他の鉱酸又はそれらの混合物でも、実質的に同じ結果が提供されるだろう。加えて、鍛造コバルトクロム合金等、ある特定の合金は、濃塩酸及び過酸化水素の混合物等、様々な活性化溶液から利益を得ることができる。
ワークピースが依然として活性化溶液で濡れている際等、活性化溶液に曝露させた後の短時間以内にワークピースを化学エッチング組成物に曝露することが好ましいため、活性化ステップの前に、任意のコーティング又はパターン化を施しておくことが有益であり得る。そのため、ワークピースのある特定の部分又は表面を保護するためのコーティングを施すこと等によりワークピースをパターン化することになる場合、そのコーティングは、表面を活性化及び/又はエッチングする前に施してもよい。
【0043】
実施例I:本開示の発明のある特定の態様によるCoCr合金の化学溶解のための例示的な化学エッチング組成物は、表Iに示されている通りの成分及び量を含む。
上記組成物に有用なエッチング温度範囲としては、約82℃~約88℃等、約20℃~約100℃が挙げられる。
CoCrは、上記の範囲内の化学反応の多く(又は全て)を組み合わせでエッチングすることができるが、好ましい設定点条件では、測定可能なIGAを伴わずに、最大で0.0381センチメートル(0.015インチ)及びそれよりも多くの材料の均一除去が達成された。これは、フライトクリティカル(flight-critical)な航空宇宙部品に好適な組成物である。
【表1】
【0044】
実施例II:CoCr合金をエッチングするための例示的な本発明の高鉄組成物を表IIに示す。この組成物は、およそ400μ-in(約10マイクロメートル、μm)の開始状態からおよそ125μ-in(約3μm)の最終状態への表面粗さ(R
a)の向上を提供し、0.0127センチメートル(0.005インチ)の表面材料を除去したことが見出された。
【表2】
【0045】
実施例III:CoCr合金をエッチングするための例示的な本発明の鉄を含まない高金属組成物を表IIIに示す。この組成物は、およそ250μ-in(約6.4μm)の開始状態からおよそ70μ-in(約2μm未満)の最終状態への表面粗さ(R
a)の向上を提供し、0.0127センチメートル(0.005インチ)の表面材料を除去したことが見出された。
【表3】
【0046】
表IIIに示されている高金属化学エッチング組成物は、出発合金であるコバルトクロムモリブデンASTM F75中の元素成分の比率であるか又はそれに近い、溶液中の金属比率を提供する。これは、表面状態の劇的な向上をもたらした。従って、本発明者らは、金属濃度の増加が表面粗さを向上させること、つまり飽和点に達するまで指数関数的に、より平滑な表面を提供することを見出した。濃度がより高いとエッチング速度が低下することが見出された(つまり、金属濃度が上昇すると共に、エッチング速度は低下し始めることになり、処理時間の観点から、完全な又はほぼ完全な飽和状態での部品処理が非現実的になる可能性がある)。
元の合金に特有な比率で金属を増加させると優れた表面がもたらされることは、非天然金属又は金属塩の添加を必要としない処理組成物が提供されるため、重要な知見である。つまり、適切な酸濃度を維持しつつ組成物中の金属を濃縮し、単により多くの材料をエッチングすることにより、表面仕上げを向上させることができる。これは工程管理に大きく貢献し(つまり金属は、使用量が増加すると共に、常に合金濃度に向かって変転していくことになる)、生産設定においてかなりの処理コストを占める、非天然金属、即ち鉄塩の添加の必要性を排除する(例えば、鉄溶液は、鉄の酸化を防止するために不活性環境で製作する必要があり、鉄溶液は一般に高価である)。
【0047】
従って、航空宇宙応用に、又は表面仕上げが向上した均一除去の達成が試みられる任意の応用に好ましい化学エッチング組成物は、エッチングする部品の材料に存在する元素比率(つまり、天然比率)にて、高濃度の、最大で飽和状態の天然金属を含む。
高金属は、硝酸がより高い濃度で存在する場合、硝酸の急速な分解をもたらす場合があるため、こうした組成物の硝酸濃度は比較的低いことが留意されるべきである。
示されているように、本開示の発明の化学エッチング組成物は、測定可能なIGAと伴わずに、最大で0.0381センチメートル(0.015”)及びそれよりも多くの均一な材料除去を提供し、そのためフライトクリティカルな航空宇宙部品のエッチングに好適な組成物である。
本開示の発明の組成物及び方法から利益を得ることができる例示的な航空宇宙部品又は航空機部品としては、少なくとも、航空機外板及び胴体外板並びにアーキテクチャトリム(architectural trim)が挙げられる。例えば、ある特定の態様によると、本開示の組成物及び方法によりエッチングされた合金は、部分的に又は全体が、航空宇宙機の部品用であってもよい。そのため、部品は、航空宇宙機又は航空宇宙デバイスに取付け可能な又はそれらの一部を形成する航空宇宙部品であってもよい。
【0048】
図1A~1Fには、2ミルの表面が除去された(50ミクロンが除去されており、それぞれ
図1C及び
図1Dに150×及び1000×の倍率で示されている)及び12ミルの表面が除去された(300ミクロンが除去されており、それぞれ
図1E及び
図1Fに150×及び1000×の倍率で示されている)、本開示による組成物でエッチングしたコバルトクロム合金表面と比較した、非エッチング天然コバルトクロム合金の150×及び1000×倍率の顕微鏡写真(それぞれ、
図1A及び
図1B)が示されている。天然表面は、染色浸透探傷検査において色素が進入又は付着し得る深い裂け目を含み、本発明によるエッチング表面がこうした裂け目をどの程度欠如するかに留意されたい。
本開示の発明の組成物及び方法を使用してエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2A~2Cに示す。より高濃度の金属を含むエッチング組成物(つまり、エッチング組成物の第2の実施形態において開示されている通りの)を用いると、
図2Aのより平滑な表面が得られた。例示的な表面はいずれも、方向性のある表面擦傷又は模様を示していない(つまり、長い溝はない)ことに留意されたい。
【0049】
本発明の態様
本開示の発明は、以下の態様を提供する。
態様1:コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、少なくとも2つの鉱酸、コバルトクロム合金の主成分金属の一部又は全て、及び任意選択で鉄(Fe)を含む組成物。
態様2:少なくとも2つの鉱酸、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、任意選択で鉄(Fe)、及び任意選択でコバルト(Co)を含む、態様1に記載の組成物(comparison)。
態様3:少なくとも2つの鉱酸は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、及びフッ化水素酸(HF)から選択される、態様1又は2に記載の組成物。
態様4:少なくとも2つの鉱酸は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、及びフッ化水素酸(HF)を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物。
態様5:2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、及び0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)を含む、態様1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【0050】
態様6:1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、0~225g/lの鉄(Fe)、及び0~10g/lのコバルト(Co)を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
態様7:50~225g/lの鉄(Fe)、1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、及び0~10g/lのコバルト(Co)を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
態様8:2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、0~225g/lの鉄(Fe)、1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、及び0~10g/lのコバルト(Co)を含む、態様1~7のいずれか一項に記載の組成物。
態様9:50~225g/lの鉄(Fe)を含む、態様8に記載の組成物。
態様10:0.1~1.0ミル/分の速度でコバルトクロム合金をエッチングする、態様1~9のいずれか一項に記載の組成物。
態様10:7~355g/lのコバルト(Co)、3~170g/lのクロム(Cr)、及び1~40g/lのモリブデン(Mo)を含む、態様2~5のいずれか一項に記載の組成物。
【0051】
態様11:Co、Cr、及びMoは、コバルトクロム合金中の各金属の天然比率と同じ比率で提供される、態様2~5のいずれか一項に記載の組成物。
態様12:コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、7~355g/lのコバルト(Co)、3~170g/lのクロム(Cr)、及び1~40g/lのモリブデン(Mo)を含む組成物。
態様13:合金材料をエッチングするための方法であって、少なくとも2つの鉱酸、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、任意選択で鉄(Fe)、及び任意選択でコバルト(Co)を含む水性化学エッチング組成物を調製するステップ;並びに合金材料を水性化学エッチング組成物と接触させるステップを含む方法。
態様14:水性化学エッチング組成物は、2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、50~225g/lの鉄(Fe)、1~10g/lのクロム(Cr)、0.1~5g/lのモリブデン(Mo)、及び0~10g/lのコバルト(Co)を含む、態様13に記載の方法。
態様15:水性化学エッチング組成物は、2N~5Nの塩酸(HCl)、0.05N~0.8Nの硝酸(HNO3)、0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、7~355g/lのコバルト(Co)、3~170g/lのクロム(Cr)、及び1~40g/lのモリブデン(Mo)を含む、態様13に記載の方法。
【0052】
態様16:合金材料は、コバルトクロム合金である、態様13~15のいずれか一項に記載の方法。
態様16:合金材料を水性化学エッチング組成物と接触させるステップの前に、エッチングしようとする合金材料を活性化溶液で活性化するステップを更に含む、態様13~15のいずれか一項に記載の方法。
態様17:活性化ステップは、接触ステップの直前に、例えば120秒以内に実施される、態様16に記載の方法。
態様18:活性化溶液は、塩酸又はフッ化水素酸の10%~100%水溶液(容積/容積)等の濃鉱酸、又は濃塩酸及び過酸化水素等の、濃鉱酸及び過酸化水素の混合物を含む、態様16又は17に記載の方法。
態様19:コバルトクロム合金ワークピースをエッチングするための方法であって、ワークピースを、約20℃~約100℃の温度で、態様1~12のいずれか一項に記載の化学エッチング組成物と接触させるステップを含み、ワークピースは、化学エッチング組成物中で1分~200分の期間にわたって揺動される、方法。
態様20:接触ステップの前に、化学エッチャントに耐性であるコーティングをワークピースに施すステップ、及びコーティングの部分を除去して、ワークピースのコーティングにパターン化デザインを形成するステップを含む、態様19に記載の方法。
【0053】
態様21:接触ステップの前に、活性化溶液を適用するステップを含む、態様19又は20に記載の方法。
態様22:活性化溶液を適用するステップは、接触ステップの直前に、例えば120秒以内に実施される、態様20に記載の方法。
態様23:活性化溶液は、塩酸等の鉱酸の10%~100%水溶液(容積/容積)、又は少なくとも25%(容積/容積)50%の過酸化水素及び少なくとも25%(容積/容積)の発煙塩酸等の、濃過酸化水素及び濃塩酸の混合物を含む、態様21又は22に記載の方法。
態様24:接触ステップの後、ワークピースからコーティングを剥脱するステップを含む、態様20~23のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
態様25:3.81μm(150μ-in)未満又は2.54μm(100μ-in)未満等、5.08μm(200μ-in)未満の表面粗さ(Ra)を有する、態様13~24のいずれか一項に記載の方法により生産されるワークピース。
態様26:部分的に又は全体が航空宇宙機の部品を形成する、態様25に記載のワークピース。
態様27:5.08μm(200μ-in)未満の表面粗さ(Ra)を有し、方向性のある表面擦傷を有しないコバルトクロム合金で形成されるワークピース。
態様28:表面粗さ(Ra)は、2.54μm(100μ-in)未満であり、ワークピースは、航空宇宙機の構成部品の少なくとも部分を形成する、態様27に記載のワークピース。
【0055】
本発明の特定の実施形態が詳細に記載されているが、当業者であれば、本開示の全体的な教示に照らして種々の改変及び変更及び応用を開発することできることを理解するはずである。従って、開示されている特定の配置、システム、装置、及び方法は、例示が意図されているに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕コバルトクロム合金をエッチングするための組成物であって、
塩酸(HCl)、硝酸(HNO
3
)、硫酸(H
2
SO
4
)、及びフッ化水素酸(HF)からなる群から選択される少なくとも2つの鉱酸;並びに
前記コバルトクロム合金の成分金属を含み、
コバルトクロム合金を0.1~1.0ミル/分の速度でエッチングする組成物。
〔2〕2N~5Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3
)、及び
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)
を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記成分金属は、
1~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.1~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕50~225g/lの鉄(Fe)を更に含む、前記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕前記成分金属は、エッチングしようとする前記コバルトクロム合金中の各金属の天然比率で提供されるCo、Cr、及びMoを含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔6〕7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕2N~5Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3
)、
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、
50~225g/lの鉄(Fe)、
1~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.1~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔8〕2N~5Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3
)、
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)、
7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔9〕コバルトクロム合金ワークピースをエッチングするための方法であって、
前記ワークピースの少なくとも1つの表面を化学エッチング組成物と接触させるステップを含み、前記化学エッチング組成物は、
塩酸(HCl)、硝酸(HNO
3
)、硫酸(H
2
SO
4
)、及びフッ化水素酸(HF)からなる群から選択される少なくとも2つの鉱酸;並びに
前記コバルトクロム合金の成分金属を含み、
前記接触ステップは、20℃~100℃の温度で1分~200分の期間にわたって実施され、
前記組成物は、前記コバルトクロム合金ワークピースの表面を、0.1~1.0ミル/分の速度でエッチングする、方法。
〔10〕前記化学エッチング組成物は、
2N~5Nの塩酸(HCl)、
0.05N~0.8Nの硝酸(HNO
3
)、及び
0.6N~1.3Nのフッ化水素酸(HF)
を含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記成分金属は、
1~10g/lのクロム(Cr)、及び
0.1~5g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕50~225g/lの鉄(Fe)を更に含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記成分金属は、エッチングしようとする前記コバルトクロム合金中の各金属の天然比率で提供されるCo、Cr、及びMoを含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔14〕前記成分金属は、
7~355g/lのコバルト(Co)、
3~170g/lのクロム(Cr)、及び
1~40g/lのモリブデン(Mo)
を含む、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記ワークピースを前記化学エッチング組成物と接触させるステップの前に、
前記ワークピースの前記少なくとも1つの表面を、鉱酸の10%~100%(容積/容積)水溶液を含む活性化溶液で活性化するステップ
を更に含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔16〕前記接触ステップは、活性化ステップの120秒以内に実施される、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記接触ステップの前に、
化学エッチャントに耐性であるコーティングを前記ワークピースに施すステップ、及び
前記コーティングの部分を除去して、前記ワークピースの前記コーティングにパターン化デザインを形成するステップ
を含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔18〕前記接触ステップの後に、
前記コーティングを前記ワークピースから剥脱するステップ
を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕5.08μm(200μ-in)未満の表面粗さ(R
a
)を有し、方向性のある表面擦傷を有しないコバルトクロム合金で形成されるワークピース。
〔20〕前記表面粗さ(R
a
)は、2.54μm(100μ-in)未満であり、前記ワークピースは、航空宇宙機の構成部品の少なくとも部分を形成する、前記〔19〕に記載のワークピース。