(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】プレスパッドおよびプレスパッドを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/06 20060101AFI20230320BHJP
D03D 15/25 20210101ALI20230320BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20230320BHJP
D03D 15/513 20210101ALI20230320BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230320BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B30B15/06 Z
D03D15/25
D03D15/56
D03D15/513
D03D15/283
D03D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021535251
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2019083006
(87)【国際公開番号】W WO2020126402
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】102018133542.3
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514013967
【氏名又は名称】ヒュック ライニッシェ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HUECK Rheinische GmbH
【住所又は居所原語表記】Helmholtzstrasse 9, D-41747 Viersen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フリングス
(72)【発明者】
【氏名】ベルトルト テーレン
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】西独国実用新案公開第01957918(DE,U)
【文献】独国実用新案第202007006767(DE,U1)
【文献】国際公開第2004/054788(WO,A1)
【文献】米国特許第06413889(US,B1)
【文献】特開2014-136259(JP,A)
【文献】特表平09-507794(JP,A)
【文献】特開2018-075631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/06
D03D 15/25
D03D 15/56
D03D 15/513
D03D 15/283
D03D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の熱間プレス装置(15)に使用する
セットであって、
前記セットは、
少なくとも1つのプレス板(16)と、
織布(2)を有しており、
前記プレス板(16)に付属する少なくとも1つのプレスパッド(1)と、
を有しており、
前記プレス板(16)は、所定の構造を備えたプレスレリーフ(14)を有しており、
前記プレスパッド(1)の前記織布(2)は、経方向では経糸(3)により形成されておりかつ緯方向では緯糸(4)により形成されており、前記経糸(3)と前記緯糸(4)とが互いに織られて前記織布(2)を形成している、
セットにおいて、
経方向および/または緯方向において、機能糸(7)が、
前記織布(2)に結合されており、これにより、前記機能糸(7)の作用領域(21)内の前記織布(2)の厚さ(9)が、前記作用領域(21)以外の前記織布(2)の厚さ(10)に比べて変化して
おり、
前記織布(2)の厚さは、前記プレス板(16)の前記プレスレリーフ(14)に適合されていることを特徴とする、
セット。
【請求項2】
前記機能糸(7)の少なくとも一部、好適には全ての前記機能糸(7)が、厚肉
化糸(8)から形成されており、これにより、前記機能糸(7)の前記作用領域(21)における前記織布(2)の前記厚さ(9)が、前記作用領域(21)以外の前記織布(2)の前記厚さ(10)に比べて増加している、請求項1記載の
セット。
【請求項3】
前記機能糸(7)の少なくとも一部が、前記織布(2)に縫い付けられているか織り合わせられている、または前記織布(2)中に縫い込まれている、または前記織布(2)中に織り込まれている、請求項1または2記載の
セット。
【請求項4】
前記経糸(3)のうちの少なくとも複数、好適には全ての前記経糸(3)が、金属、特に黄銅から形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項5】
経方向に配置された前記機能糸(7)のうちの少なくとも複数、好適には経方向に配置された全ての前記機能糸(7)が、0.10mm~0.30mm、好適には0.15mm~0.25mmの直径を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項6】
前記緯糸(4)のうちの少なくとも複数、好適には全ての前記緯糸(4)が、エラストマ、特にシリコーンから形成されており、好適には、各前記緯糸(4)の直径は1.50mm~1.60mmである、請求項1から5までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項7】
前記織布(2)の経方向において、複数の前記機能糸(7)が、厚肉
化経糸(11)から形成されており、該厚肉
化経糸(11)は、好適には経方向において、前記織布(2)に縫い付けられているまたは織り合わせられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項8】
前記織布(2)の緯方向において、複数の前記機能糸(7)が、厚肉
化緯糸(12)から形成されており、該厚肉
化緯糸(12)は、好適には前記織布(2)中に織り込まれており、前記厚肉
化緯糸(12)の直径は、
前記緯糸(4)の直径に比べて増加している、請求項1から7までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項9】
前記厚肉
化緯糸(12)は、前記織布(2)中に織り込まれており、これにより、前記厚肉
化緯糸(12)の織込み箇所(13)において、さもなければそこに設けられた前記緯糸(4)が省かれているため、全ての前記緯糸(4)の糸総数は、前記厚肉
化緯糸(12)の織込みにより、前記厚肉
化緯糸(12)を有さない織布(2)に比べて等しくなっている、請求項8記載の
セット。
【請求項10】
前記機能糸(7)の少なくとも一部、特に経方向に延在する前記厚肉
化経糸(11)が、アラミド、特にパラ-アラミドから形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項11】
前記機能糸(7)の少なくとも一部、特に緯方向に延在する前記厚肉
化緯糸(12)が、シリコーンから形成されており、好適には、各前記機能糸(7)の直径は、少なくとも1.65mm、好適には少なくとも1.70mmである、請求項1から10までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項12】
前記機能糸(7)は、不規則に分散されて配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の
セット。
【請求項13】
液圧式の熱間プレス装置(15)に使用するためのプレスパッド(1)を製造する方法であって、以下の方法ステップ、すなわち、
a)前記熱間プレス装置(15)によりプレスしようとするプレス加工品(17)の表面を造形可能なプレス板(16)のデザインを設定するステップであって、前記プレス板(16)は、所定の構造を備えたプレスレリーフ(14)を有しており、前記プレス板(16)を前記プレス加工品(17)の表面層に押し込むことにより、前記プレス加工品(17)に、前記プレスレリーフ(14)に相応する表面構造を形成することができるようになっている、ステップと、
b)前記プレス板(16)の寸法に合わせられたプレスパッド(1)を製造し、このとき、経糸(3)と緯糸(4)とを織って1つの織布(2)を形成する、ステップと、
を含む方法において、
以下の方法ステップ、すなわち、
c)設定された前記プレス板(16)の前記デザインに応じて、前記プレスパッドの前記織布(2)の厚さ(9,10)を、少なくとも前記プレスレリーフ(14)の高さ領域(19)に対応する、前記プレスパッド(1)の複数の領域において調整するように、前記プレスパッド(1)を製造し、このとき、機能糸(7)を
前記織布(2)と結合し、これにより、前記機能糸(7)の作用領域(21)における前記織布(2)の厚さ(9)が、前記作用領域(21)以外の前記織布(2)の厚さに比べて異なるようにするステップを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記プレスパッド(1)と前記プレス板(16)とを、力が伝達されるように互いに結合し、これにより、前記プレスパッド(1)の前記機能糸(7)の前記作用領域(21)と、これらの作用領域(21)に対応する、前記プレスレリーフ(14)の領域との間の相対運動を、少なくとも実質的に、好適には完全に阻止する、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、請求項1の上位概念に記載のプレスパッドに関する。さらに本願は、請求項13の上位概念に記載の、プレスパッドを製造する方法に関する。
【0002】
プレスパッドは、特に液圧式の熱間プレス装置での使用に適している。このような液圧式の熱間プレス装置は、特に液圧式の多段熱間プレスの形態で形成されていてよい。プレスパッドは、経方向に延在する経糸と、緯方向に延在する緯糸とから形成された織布を有している。経糸と緯糸とが共に織られて、織布を形成している。
【背景技術】
【0003】
冒頭に述べた形式のプレスパッドは、熱間プレス装置において、液圧式に駆動される熱間プレスと、各プレス加工品と直接に接触するプレス板との間に均一な力分布を形成するために用いられる。プレス板は、一般にプレスレリーフを有する、構造化された表面を有している。このプレスレリーフは、プレス動作の進行中に各プレス加工品の表面に押し付けられまたは押し込まれ、これによりプレス加工品の表面に、プレスレリーフの構造の、いわばネガが生じることになる。プレス加工品は、プレス動作時に、少なくともその表面領域に軟性の粘稠度を有しており、この場合、プレス加工品は、典型的にはメラミン樹脂層を有している。この軟性の粘稠度は、プレス板のプレスレリーフをプレス加工品に押し付けることを可能にし、このとき、プレス加工品の軟性材料が変形し、局所的に圧縮されることになる。
【0004】
熱間プレスによりプレス加工品中に熱エネルギがもたらされた結果、プレス加工品は最終的に、プレスレリーフ構造のネガに相当する、押し込まれた表面構造が永続的に存在し続ける程度にまで硬化される。プレス加工品の表面を均一にひいては視覚的に魅力的に造形するためには、熱間プレス装置により与えられるプレス圧が、プレス板と、最終的にはプレス加工品とに均一に伝達されることが重要である。上述したように、プレス圧を熱間プレスからプレス板に均一に伝達するために、プレスパッドが用いられる。
【0005】
特に天然の木目や木材表面構造を模造することができる、プレス加工品の、人為的に造形される表面構造の製造クオリティは、近年大幅に向上した。その理由は特に、プレス加工品に与えられる型押し深さが増加し、これにより天然の表面構造の模造を効果的に改良することができた点にある。大きな型押し深さを有するこのような深い表面構造を与えるには、プレス板の使用が必要になり、プレス板のプレスレリーフは、プレス板面に対して垂直に測定した高さならびにプレス板面に関する高さがプレス加工品の各局所的な表面構造の所望の深さに相当する、高さ領域を備えている。この場合、各プレス加工品に特に深い局所的な表面構造を与えるには、プレス板のプレスレリーフの、反対に特に高い高さ領域も同様に必要となることは自明である。このような高さ領域を備えたプレスレリーフを有する前記のようなプレス板を各プレス加工品に押し込むことにより、反力の形でプレス板に作用する抵抗が、プレス板の全面にわたり、局所的に異なる強さで生じる。つまり、高さ領域をプレス加工品の表面に押し込むには、プレス板面に比べてほとんど突出していないプレスレリーフ構造を押し込む場合よりも大きな力を要することになる。その結果、実際には、プレス加工品にプレスレリーフの高さ領域をも完全に押し込むために必要な所要の力を、プレス板に確実に伝達することができていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本願の根底を成す課題は、従来技術に比べて改良されたプレスパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
根底を成す課題は、本発明に基づき、請求項1記載の特徴を有するプレスパッドによって解決される。本発明による構成は、下位請求項2~12から明らかである。
【0008】
本発明によるプレスパッドは、織布の経方向および/または緯方向において、機能糸が、その他の織布に結合されており、これにより、機能糸の作用領域内の織布の厚さが、作用領域以外の織布の厚さに比べて変化していることを特徴とする。機能糸は、織布の製造中またはその他の織布の製造後に導入されるまたはもたらされる、追加的な糸であってよい。代替的または追加的に、機能糸はいわば、その他の点で用いられる経糸および/または緯糸の代替として織布に織り込まれていることも同様に考えられる。したがって、機能糸の作用領域における織布の厚さは、織布の非変形状態、つまり織布に圧力が加えられない、力が加わっていない状態において、作用領域以外の厚さに比べて変化している。
【0009】
有利には、本発明によるプレスパッドは、機能糸の少なくとも一部、好適には全ての機能糸が、厚肉糸の形態で形成されているように形成されている。厚肉糸は、厚肉糸の作用領域における織布の厚さを、厚肉糸の作用領域以外の織布の厚さに比べて増加させるという技術的な効果を有している。
【0010】
本発明によるプレスパッドは、多くの利点を有している。特に、機能糸は、織布の厚さを、特定のプレスレリーフを備えて構成された各プレス板に個別に適合させるために適している。つまり、例えばプレスレリーフが局所的に特別に形成された高さ領域を有するプレス板の領域に、各プレス板に個別に合わせられたプレスパッドの、プレス板の高さ領域に対応する、少なくとも1つの機能糸を備えた領域が形成されていてよく、この機能糸が、プレスパッドの織布の厚さを増加させる。織布の厚さのこの増加は、プレス板のプレス加工品への押込み中に高まる抵抗に基づき発生する反力が加わると、プレスパッドはその、プレスレリーフの局所的な高さ領域に対応する機能糸の作用領域において、機能糸無しの場合に比べて圧縮性が低くなる、という技術的な効果を有している。このようにして、高さ領域を有して形成されたプレスレリーフの構造が、プレス加工品中に確実に完全に押し込まれ、結果的に、プレス加工品の所望の表面構造が形成されることが保証される。プレス加工品に対するプレス板の変形は、プレス板に対するプレス加工品の材料の所望の変形に比べて、少なくとも十分に阻止されている。
【0011】
事前に決定され、これに相応してプレス板のプレスレリーフの構造が形成される、プレス加工品用の表面構造のデザインに応じて、織布の経方向および緯方向の両方に機能糸を使用することが考えられる。好適には、織布の厚さを局所的に増加させるために、機能糸が使用される。それにもかかわらず、織布の厚さを減少させる機能糸が設けられていることも同様に考えられる。例えば、個々の緯糸を、通常の緯糸の直径に比べて直径が減少した機能糸に交換することが考えられる。これは、織布の厚さに直接に影響を及ぼし、このような機能糸の作用領域における織布の厚さも同様に減少する。
【0012】
特に好適には、機能糸の少なくとも一部が、完成した織布に縫い付けられているか、完成した織布に織り合わせられているか、または完成した織布中に縫い込まれていてよい。代替的または追加的に、さらに、機能糸の少なくとも一部が織布中に織り込まれていることが考えられ、この場合、各機能糸の組込みは、好適にはプレスパッドの織布の製造中に、既に行われている。また、機能糸の少なくとも一部を、プレスパッドのその他の織布と作用結合させる代替的な結合技術も考えられる。
【0013】
好適には、経糸のうちの少なくとも複数、好適には全ての経糸が、金属から形成されている。この場合は特に、良好な熱伝導率を有する黄銅が考慮される。良好な熱伝導率は、各熱間プレスにより供与された熱エネルギを、プレスパッドを介してプレス板に引き渡すために役立つ。これによりプレス板がプレス動作中に加熱されることで、プレス加工品の少なくとも1つの表面層を硬化させることができる。これは特に、熱入力により硬化する、メラミン樹脂から形成されたプレス加工品の表面層に当てはまる。
【0014】
特に、織布の経糸が、このように高い熱伝導率を有する金属糸から形成されている場合には、経方向においてその他の織布と結合された機能糸が、アラミド、特にパラ-アラミドから形成されていると、特に有利であり得る。このような機能糸は複数の利点を有している。すなわち、1つには、このような機能糸は耐熱性であり、プレス動作の進行中の典型的な温度レベルは機能糸にとって無害である。さらに、このような機能糸は低い熱膨張係数を有しているため、熱間プレスの運転中に生じ得る典型的な温度変動の進行中の、アラミドから形成された機能糸の長さ変化は最小限である。さらに、アラミド、特にパラ-アラミドは耐火性である。
【0015】
別の重要な技術的な利点は、アラミドが低い熱伝導率を有しているという点にある。これは、熱間プレスにより供与された熱エネルギが、機能糸が存在しない状況の場合と同様にプレス板に伝達されることはない、という技術的な効果を有している。換言すると、アラミド機能糸の導入により、熱間プレスとプレス板との間の熱伝達が「抑制」される。これは、プレス加工品の表面層の材料が、各機能糸の作用領域においてあまり急速には硬化せず、ひいては前記材料が、プレス板のプレスレリーフ構造の高さ領域を避けて変形し得る、という特別な利点を有している。これに対して、プレス加工品の特に急速な硬化は、特に深い表面構造を与えることを困難にすると考えられる。なぜなら、プレス加工品の表面層の領域における材料の粘度が、プレス動作の進行中に特に急速に上昇すると考えられるため、これによりやはり、プレスレリーフの各高さ領域を表面層に押し付けることが困難になると考えられるからである。
【0016】
経糸および/または織布の経方向に延在する機能糸を形成する材料とは関係なく、経方向に配置された機能糸のうちの少なくとも複数、好適には経方向に配置された全ての機能糸が、0.10mm~0.30mm、好適には0.15mm~0.25mmの直径を有していると、特に有利であり得る。このような機能糸は、機能糸の作用領域において織布の厚さを、所望の技術的な効果、すなわち特に熱間プレスからプレス板への均一な力伝達が生じる程度に増加させることに、特に良好に適している。
【0017】
本発明によるプレスパッドをさらに発展させるように、緯糸のうちの少なくとも複数、好適には全ての緯糸は、エラストマ、特にシリコーンから形成されている。このような緯糸は、プレスパッドに必要な弾性を保証するために、特に良好に適しており、この場合はさらに、エラストマ材料の低い熱伝導率が、熱間プレスからプレス板への、極度に急速な熱エネルギの伝達を阻止する。有利には、各緯糸の直径は1.50mm~1.60mmである。さらに、有利には、緯方向に延在する機能糸の少なくとも一部は、シリコーンから形成されている。
【0018】
本発明によるプレスパッドの1つの特に有利な構成では、織布の経方向において、複数の機能糸が厚肉経糸から形成されている。厚肉経糸は、これらの機能糸の作用領域における織布の厚さが、作用領域以外の織布が有する厚さに比べて増加していることに寄与する。厚肉経糸は、有利には経方向において、織布に縫い付けられているかまたは織り合わせられている。この場合、厚肉経糸は追加的な糸を成しているため、全ての経糸の糸総数は、このような厚肉経糸が入り込むことにより、経方向にこのような厚肉経糸を有さないプレスパッドの織布に比べて、増加している。
【0019】
さらに、織布の緯方向において、複数の機能糸が厚肉緯糸から形成されていると、有利であり得る。これらの厚肉緯糸により、厚肉緯糸の作用領域における織布の厚さは、作用領域以外よりも大きくなっている。厚肉緯糸は、好適には織布中に織り込まれている。厚肉緯糸は、有利には、各厚肉緯糸の直径が「標準的な」緯糸の直径に比べて増加しているように形成されていてよい。特に、厚肉緯糸の直径は、少なくとも1.65mm、好適には少なくとも1.70mmであってよい。
【0020】
各厚肉緯糸の織込みは、有利には、厚肉緯糸と比べて「標準的な」緯糸は省かれるように行われている。換言すると、このような織布を織る過程において、各緯糸は、標準的な緯糸に代えて、厚肉緯糸により構成されている。厚肉緯糸の直径は、標準的な緯糸の直径に比べて増加しているため、標準的な緯糸の、厚肉緯糸へのこの「交換」は、厚肉緯糸の作用領域における織布の厚さを所望のように増加させることになる。この構成では、全ての緯糸の糸総数は、厚肉緯糸の織込みにより、厚肉緯糸を有さない織布に比べて変わらない。
【0021】
本発明によるプレスパッドの別の特に有利な構成では、機能糸は、不規則に分散されて織布に配置されている。これは、不規則な分散により、プレス板のプレスレリーフ構造の同様に不規則な造形が再現され得る限り有利であり、機能糸はまさに、プレス板のプレスレリーフの造形を考慮した作用が所望されかつ必要とされているプレスパッドの領域において作用する。特に、本発明による各プレスパッドを、各プレス板またはプレス加工品の各表面構造のデザインに個別に適合させることが有利である。
【0022】
根底を成す課題は、本発明に基づきさらに、請求項13記載の特徴を有する方法によって解決される。この方法の有利な構成は、下位請求項14から明らかである。
【0023】
本発明による方法は、プレス板の決められたデザインに応じてプレスパッドを製造することを特徴とする。この場合、プレスパッドの織布がその厚さを、少なくともプレスレリーフの高さ領域に対応する複数のプレスパッド領域において調整されるように、プレスパッドを製造する。これには、織布の局所的な厚肉化または局所的な薄肉化が含まれていてよく、この場合、織布を第1の領域では厚肉にし、第2の領域では薄肉にするように組み合わせた構成も考えられる。織布の厚さを調整するために、本発明では機能糸をその他の織布と結合し、これにより、機能糸の作用領域における織布の厚さが、作用領域以外の織布の厚さに比べて異なるようにしている。機能糸は、機能糸を有さない織布には含まれない、追加的な糸を成していてよい。同様に、機能糸は、別に設けられた織布の糸を代替する「交換糸」の形で設けられていてもよく、これにより、織布の糸総数は不変のままである。1つの織布における2つの技術の組合せも同様に考えられる。
【0024】
本発明による方法は、多くの利点を有している。特にこの方法は、プレス動作の進行中、各プレス板に対する確実な力伝達を保証するプレスパッドの製造を可能にする。なぜなら、プレスパッドが、プレス板または対応するプレスレリーフ構造の造形に個別に適合されているからである。つまり、プレスパッドは、プレス板のプレスレリーフに対応するように特別に形成された箇所に、少なくとも1つの機能糸を有しており、機能糸により、プレスレリーフの造形に基づく技術的な設定に相応して、プレスパッドの結合性が適合されている。このようにして、プレスパッドの織布を、特にプレスレリーフ構造の高さ領域において厚肉に形成することができ、これにより、プレス板のこれらの箇所またはこれらの領域に作用する反力を、プレス動作の進行中に確実に与えることができる。その結果、プレス板はその各高さ領域でもってプレス加工品中に完全に押し込まれるため、プレス加工品に所望の表面構造が生じることになる。
【0025】
プレス板-プレスパッドユニットの製造に用いられる、本発明による方法の特に有利な構成では、プレスパッドとプレス板とを、力が伝達されるように互いに結合し、これにより、プレスパッドの機能糸の作用領域と、これらの作用領域に対応する、プレス板のプレスレリーフの領域との間の相対運動を、少なくとも実質的に、好適には完全に阻止している。力伝達式の結合は、有利には少なくとも、プレス板面に対して平行な向きの平面内で作用する。結合は、例えば接着により行われてよい。プレス板とプレスパッドとの力伝達式の結合は、プレス板に合わせて個別に形成されたプレスパッドの領域が如何なる場合でも、すなわち多数のプレスサイクルを経た後でも、対応するプレス板の領域と永続的に協働する、という、特別な利点を有している。このようにして、機能糸により得られた技術的な効果が、対応するプレス板の「正しい箇所」に、永続的に生じることになる。
【0026】
以下に、本発明を図示の実施例に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明によるプレスパッドを備えた熱間プレス装置の横断面図である。
【
図2】プレス加工品の表面構造のデザインを示す平面図である。
【
図3】プレス加工品の表面構造の代替的なデザインを示す平面図である。
【
図4】本発明によるプレスパッドを示す概略平面図である。
【
図5】対応するプレス板のプレスレリーフが重ねられた本発明によるプレスパッドを示す概略横断面図である。
【
図7】
図5に示した横断面の、さらに別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~
図7に示す実施例は、熱間プレス装置15に取り付けられた、本発明によるプレスパッド1に関する。ここでは、織布2から形成されたプレスパッド1は、プレス加工品17を加工するために、付属のプレス板16と組み合わせられて使用される。プレスパッド1は、熱間プレス装置15の熱間プレス18とプレス板16との間に配置されているため、熱間プレス18とプレス板16との間での力伝達は、プレスパッド1を介して行われる。プレスパッド1は、熱間プレス18とプレス板16との間で力を均一化するために用いられ、その結果、熱間プレス18側から供与される押圧力により、プレス板16はその全面にわたり均一に押圧されることになる。
【0029】
プレス板16は、図示の例ではプレス加工品17に表面構造20を押し込むことができる、プレスレリーフ14を有している。プレスレリーフ14は、典型的には対応するプレス板16の表面にエッチングされ、これにより、造形された表面構造が生じることになる。
図2および
図3に基づき、プレス加工品17の表面構造20のデザインをどのように形成することができるかが具体的に示されており、この場合、対応するプレス板16のプレスレリーフ14の構成は、この所望のデザインに倣う必要がある。その理由は、表面構造20は、この表面構造20のいわばネガを成すプレスレリーフ14の造形によってのみ生ぜしめられるという点にある。プレス板16のプレスレリーフ14は、プレス動作の進行中に熱間プレス装置15によりプレス加工品17の表面層に押し付けられ、これによりプレス加工品17の表面層に、プレスレリーフ14の隆起部に対して相補的に形成された凹部が生じることになる。特に、例えば木材の表面構造を模倣すべき、自然成長構造の再現には、各プレス加工品17の表面構造20が、それぞれ異なる形状の複数の凹部を得ていることが重要である。特に重要なのは、各プレス加工品17に所々、特に深い押込み部を形成することである。なぜなら、これらは相応する自然材料にも同様に存在すると考えられるからである。プレス加工品17における深い押込み部は、プレス板16のプレスレリーフ14では、反対に高さ領域19を必要とする。このような高さ領域19において、プレスレリーフ14は、プレス板16のプレス板面を比較的大幅に越えて突出している。
【0030】
このような高さ領域19を各プレス加工品17の表面層に押し付けるには、プレス板16に伝達されるべき、比較的高いプレス力が必要になる。表面層によって生じ、プレス板16に作用する反力は、プレス動作の進行中にプレス板16をやや変形させることがあり、これにより、表面層への高さ領域19の押込みが、より低い形状または高さを有するプレスレリーフ14の領域の場合と同様には行われなくなる。これは、完成したプレス加工品17の表面構造20が、所望のように想定したデザイン通りに形成されないという作用を有している。なぜなら、比較的深い押込み部を有するはずのプレス加工品17の領域が、所望のように形成されていないからである。
【0031】
プレス動作の進行中の、プレスレリーフ14の高さ領域19におけるプレス板16の局所的な「変形」を阻止するために、本発明により、プレスパッド1に機能糸7が装備されている。機能糸7は、図示の例では織布2の局所的な厚さ10を増加させるために用いられる厚肉糸8として形成されている。つまり、厚肉糸8を入れることにより、プレスパッド1またはその織布2が、厚肉糸8の作用領域21に、厚肉糸8の作用領域21以外の織布2の厚さ10に比べて増加した厚さ9を有するようになるという効果が得られる。よって、1つまたは複数の厚肉糸8の各作用領域21では、織布2は圧縮性が低くなっており、これにより、熱間プレス18の方向へのプレス板16の局所的な変形が、上述したように局所的に阻止されている。その結果、プレスレリーフ14の構造が相応の高さ領域19を有している、プレス板16の前記のような領域においても、プレス板16の、プレス加工品17内への確実な押込みが行われる。
【0032】
図2および
図3の各図に基づき、例えば各プレス加工品10の表面構造20が特に深く形成されている領域と、これに相応して、デザインに合わせられたプレスパッド1に、機能糸7用の作用領域21が個別に設けられている様子とが判る。
図3に示す例は、複数の間隙22を備えて形成されたプレス加工品17に関する。このような実施形態では、一度だけのプレス動作で、間隙22によって互いに分離された個々のプレス部材が形成される。これらの間隙22の領域に、対応するプレス板16は特別に成形された高さ領域19を有しており、この高さ領域19は、プレス加工品17の少なくとも表面層に深く押し付けるために適しており、したがって、完成したプレス加工品17は、相応の間隙22を、特に顕著に成形された凹部の形で有することになる。次いで、これらの間隙22に沿って、完成したプレス加工品17を例えば鋸断して、複数の個別のプレス部材を形成することができる。よって、対応するプレス板16に適合した本発明によるプレスパッド1は、有意には作用領域21に機能糸7、特に厚肉糸8を有しており、これらはプレスパッド1において、プレス加工品17における間隙22の形成にやはり責任を負うプレス板16の高さ領域19と合致する箇所に局所的に配置されている。これに相応して、本発明では、各プレスパッド1の織布2は基本的に、各プレス板16のデザインまたは各プレス加工品の表面構造20の所望のデザインに個別に合わせられており、この場合、プレス板16と、対応するプレスパッド1とは、共に1つの機能ユニットを形成しており、この機能ユニットでは、機能糸7の導入により得られる有利な効果は、対応する個々のプレス板16との組合せにおいてのみ得られる。これに相応して、本発明では、各プレスパッド1を、プレス加工品17の表面構造20の所定のデザインに個別に適合させることが想定されており、この場合、この適合は、本発明では各プレスパッドの機能糸7と、その他の織布2との結合により行われる。プレス板16とプレスパッド1とは、さらに好適には力を伝達するように互いに結合されるため、両コンポーネント間の、少なくともプレス板面の方向への相対運動が、少なくとも実質的に阻止されている。
【0033】
図4に示す、本発明による織布2は、互いに織られた経糸3と緯糸4とから周知の形式で形成されている。織布2は、図示の例では周方向に延在する縁部領域5と、縁部領域5により取り囲まれた中心領域6とを有している。図示の例では、織布2はその中心領域6に複数の機能糸7を有しており、この場合、機能糸7の一部は織布2の経方向に向けられており、機能糸7の別の部分は織布2の緯方向に向けられている。機能糸7は、ここでは全てが厚肉糸8により形成されており、厚肉糸8は、経方向では厚肉経糸11により形成されており、緯方向では厚肉緯糸12により形成されている。基本的に、機能糸7がその他の織布2に結合されている方法は、本発明の成功にとって付随的なものである。それでも、経方向に延在する厚肉経糸11を織布2に局所的に載置する、縫い付ける、または織り合わせることが、特に有利である。これにより、厚肉経糸11の作用領域21における織布2の厚さ9が、織布が作用領域21以外において有する織布2の厚さ10に比べて増加するという効果が得られる。このことは、
図5に具体的に示されている。そこに略示した織布2の横断面には、高さ領域19を有する個々のプレスレリーフ14を備えた、対応するプレス板16の局所的な部分が対向している。厚肉経糸11は、厚肉経糸11が織布2の厚さ9の所望の増加を生じさせる作用領域21がプレスレリーフ14の高さ領域19と合致するように、プレスレリーフ14に個別に適合させられて配置されている。このようにして、プレス動作の進行中にプレス加工品17の表面層内への所望の押込みに抗する最大抵抗が予想され得るプレス板16のまさにこの領域において、プレスパッド1は圧縮性が低くなるため、反力によって生じるプレス板の、熱間プレス18の方向への変形に抗して作用する、という上述の効果が得られる。
【0034】
機能糸7の特に不規則な導入の別の例が、
図6に具体的に示されている。ここでも機能糸7は同様に厚肉糸8の機能を果たすように、織布2の経方向に配置されており、したがって厚肉経糸11により形成されている。ここでは、織布2の略示部分が
図5に示した図におけるよりも大きく選択されており、この場合、図示のプレス板16のプレスレリーフ14は、複数の高さ領域19を有している。厚肉経糸11は、その作用領域21がプレスレリーフ14の高さ領域19と合致するように、織布2内に個別にかつ不規則に位置決めされている。このようにして、全ての高さ領域19において織布2の所望の厚肉化が生じる。
【0035】
厚肉経糸11は、ここではそれぞれ追加的な糸の形で形成されているため、このような機能糸7を導入すると、織布2の経方向の糸総数は、これらの機能糸7が設けられなかった場合よりも多くなる。厚肉経糸11は、図示の例ではパラ-アラミドから形成されており、残りの織布2に載置されている。パラ-アラミドの選択は、パラ-アラミドの有利な機械的特性の他に、特に熱伝導率が比較的低いという点において有利であり、これにより、熱間プレス18によって厚肉経糸11の作用領域21に供与される熱エネルギが、厚肉経糸11が配置されていない織布2の領域におけるよりも、プレス板16ひいてはプレス加工品17に伝達されにくくなる。厚肉経糸11の作用領域21におけるプレスパッド1の、この「より低い」熱伝導により、プレス加工品17の、典型的にはメラミン樹脂から形成された表面層が、より低速で硬化し、ひいてはより長い時間にわたり成形可能であり続ける、すなわち、比較的低い粘度を有することになる。その結果、厚肉経糸11の作用領域21において、プレス加工品17の表面層の硬化進行中に行われる粘度の上昇が抑制される。したがって、プレス加工品17の表面構造20の深い領域を、より長い有効時間にわたって形成することができる。
【0036】
最後に
図7には、織布2の緯糸4を表す、織布2の横断面が概略的に示されている。織布2には、緯方向にも同様に厚肉糸8から形成された機能糸7が装備されている。よって、厚肉糸8は緯方向に延在しているため、厚肉糸8は厚肉緯糸12から形成されている。上述した経方向とは異なり、厚肉緯糸12は、図示の例では織布2に載置されるか、縫い付けられるか、または織り合わせられるのではなく、織込み箇所13において織布2中に直接に織り込まれている。特に、織布2が厚肉緯糸12を有している箇所には、さもなければこの箇所に存在する「標準的な」緯糸4は存在していない。これにより、織布2の糸総数が、このような厚肉緯糸12の導入によって変化することはなくなる。
【0037】
厚肉緯糸12の直径23は、図示の例ではその他の緯糸4の直径24に比べて拡大されているため、厚肉緯糸12の作用領域21における織布2の厚さ9は、作用領域21以外の厚さ10に比べて大きくなっている。これによって生じる技術的な効果は、上述した、厚肉経糸11により達成される厚肉化と同じものである。厚肉緯糸12の直径23は、図示の例では1.65mmであるのに対し、その他の緯糸4の直径24は、図示の例では1.50mmである。厚肉緯糸12は、ここではシリコーンから形成されており、その材料は、その他の緯糸4に相応するものである。
【符号の説明】
【0038】
1 プレスパッド
2 織布
3 経糸
4 緯糸
5 縁部領域
6 中心領域
7 機能糸
8 厚肉糸
9 厚さ
10 厚さ
11 厚肉経糸
12 厚肉緯糸
13 織込み箇所
14 プレスレリーフ
15 熱間プレス装置
16 プレス板
17 プレス加工品
18 熱間プレス
19 高さ領域
20 表面構造
21 作用領域
22 間隙
23 直径
24 直径