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特許7247378ニッケル・コバルト合金粉末およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ニッケル・コバルト合金粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230320BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20230320BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20230320BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20230320BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20230320BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230320BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230320BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20230320BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20230320BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230320BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230320BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20230320BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B22F1/00 M
B22F3/15 M
B22F3/24 C
B22F9/08 A
B22F10/00
B22F10/28
B22F10/34
B22F10/64
B22F10/66
B33Y10/00
B33Y70/00
C22C1/04 B
C22C19/05 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021576077
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 DE2020100577
(87)【国際公開番号】W WO2021004581
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】102019118224.7
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020116868.3
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516236078
【氏名又は名称】ファオデーエム メタルズ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDM Metals International GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2, D-58791 Werdohl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボード ゲーアマン
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ ヘントリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ブルナート
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020145(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/110050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,3/15,3/24,9/08,10/00,
10/28,10/34,10/64,10/66
B33Y 10/00,70/00
C22C 1/04,19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末用のニッケル・コバルト合金であって、含有量(重量%単位)が、以下:
0%超、0.1%以下
.015%以下
Cr 13~23%
Ni 残部(30%超)
Mn .0%以下
Si .0%以下
Mo 1~6%
Ti 0%超、3.0%以下
Nb+Ta 3~8%
Cu .5%以下
Fe 0%超、10%以下
Al 0%超、4.0%未満
V 4%以下
Zr 0%超、0.1%以下
Co 12%超、35%未満
W 4%以下
Hf 3.0%以下
.1%以下
0%超、0.1%以下
Mg 0%超、0.01%以下
0%超、0.02%以下
0%超、0.03%以下
Ar 0%以上、0.08%以下
Se .0005%以下
Bi .00005%以下
Pb .002%以下
のとおりに定められている、合金。
【請求項2】
含有量(重量%単位)が、以下:
Fe 0%超、5%以下
Co 15%超、27%未満
Cr 16~22%
Mo 2~6%
W 4%以下
Hf 2.5%以下
Nb+Ta 3.5~7.5%
Al 1.6~3.5%
Mn .6%以下
Ti 0.0005%以上、2%未満、特に1.0%未満
Si 0.0005~0.4%
0%超、0.05%以下
0%超、0.025%以下
0%超、0.1%以下
Mg 0%超、0.008%以下
0%超、0.02%以下
Zr 0%超、0.1%以下
Ar .05%以下
Ni 残部(30%超)
のとおりに定められている、請求項1記載の合金。
【請求項3】
以下:
Mo+W≧2.5
0.0005<B+Zr+P<0.15
S+Se+Bi+Pb<0.1
900℃<γ’ソルバス<1130℃
析出アニールされた状態で20%<γ’体積割合<45%
の要件および基準を満たす、請求項1または2記載の合金。
【請求項4】
Al 1.8~2.4;Co 15~23の含有量(重量%単位)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合金。
【請求項5】
Al 2.3~2.8;Co 19~25;Nb 4.5~5.5;Mo 3.0~5.0の含有量(重量%単位)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合金。
【請求項6】
Al 2.4~3.0;Co 18~22;Nb 3.5~5.0の含有量(重量%単位)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合金。
【請求項7】
Al 2.4~3.0;Co 18~22;Nb 4.5~6.0の含有量(重量%単位)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合金。
【請求項8】
Al 2.4~3.3;Co 18~22;Nb 3.8~6.0;Ta 0.5~2.5の含有量(重量%単位)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の合金。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のニッケル・コバルト合金粉末の製造方法であって、
- 合金をVIM炉内で溶融させて、溶融物を得た後
- 前記溶融物を5分~2時間、特に20分~2時間保持して均質化させ、
- 密閉式のアトマイザーを、供給ガスにより露点が-10℃~-120℃となるように調整し、
- 前記溶融物を、ノズルを通じて、2m/min~150m/minのガス流量のガス流に吹き込み、アトマイズを行い、
- 凝固した粉末粒子を気密の密閉容器に回収し、その際、
- 前記粉末粒子は、5μm~250μmの粒度を有し、
- 前記粉末粒子は、球状であり、
- 前記粉末粒子は、評価対象物の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(μmの細孔)のガス封入物を有し、
- 前記粉末粒子は、2g/cm~合金密度である約8g/cmの嵩密度を有し、
- 前記粉末粒子を、アルゴン含有保護ガス雰囲気下で気密包装する
ことによる、方法。
【請求項10】
- VIM炉、VIM/ESU、VIM/ESU/VAR、VIM/VAR、VODまたはVLFでの溶融を行い、次いで、必要であればESUおよび/またはVARでの再溶解を行うことにより、規定の化学分析値を有するマスターアロイのインゴットとして前記合金を製造し、
- 前記マスターアロイのインゴットをのこ引きで小片に分け、
- 前記マスターアロイ片をVIM炉内で溶融させる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記供給ガスが、不活性ガスである、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記供給ガスが、アルゴンである、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ガス流が、アルゴンであり、その中でアトマイズを行う、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ガス流が、窒素であり、その中でアトマイズを行う、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ガス流が、窒素とアルゴンとの混合物であり、その中でアトマイズを行う、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記アトマイズを、0.5~80kg/minで行う、請求項9から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記方法により印刷した部材に対して実施すべき、300℃~600℃で0.5時間~10時間のアニール時間、および850℃~1250℃の溶体化アニール温度で30分~30時間のアニール時間での応力低減アニールと、600℃~900℃の範囲のアニール温度で1~30時間の範囲のアニール時間での1段階または2段階での析出熱処理とによって、0.5μm~2000μmの所定の結晶粒度、ガンマ’相の割合(25%)および粒度(10~300nm)、ならびに高い機械的強度特を設定する、請求項9から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
コンポーネントまたは部材のアディティブ・マニュファクチャリングまたはHIPのために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項19】
コンポーネントまたは部材上の層のアディティブ・マニュファクチャリングまたはHIPのために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項20】
タービンのコンポーネントの製造のために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項21】
石油・ガス産業用コンポーネントの製造のために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項22】
バルブまたはフランジの製造のために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項23】
自動車産業用コンポーネントの製造のために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【請求項24】
化学プロセス産業および炉の建設のためのコンポーネントの製造のために製造された、請求項1から8までのいずれか1項記載の粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル・コバルト合金粉末の化学組成、およびより高い使用温度での強度や耐酸化性といった高温特性の向上と良好な加工性とを同時に実現するためのその改良に関する。
【0002】
ニッケルおよびニッケル・コバルト合金であるalloy 718、Waspaloy、Udimet 720、alloy 939、alloy 738LCは、(固溶強化および析出硬化による)優れた機械的強度と、(材料に応じて)約900℃までの高温でのCr酸化物層による耐酸化性や耐食性とを兼ね備えているため、広く使用されている。これらの合金は、鋳造や鍛造、あるいは鋳造のみによる加工や、そこでの凝固条件に合わせて開発され、継続的に最適化されてきた。
【0003】
ニッケルおよびニッケル・コバルト合金における優勢な析出硬化効果は、名目上の化学量論NiAlおよび格子構造L1を有するγ’相(ガンマ’相)に基づくものであり、この相は、ミスフィットが小さいために優先的な場所を必要とせず、結晶粒内に均一に析出する。様々な置換の可能性により、材料中に相応する合金の含有量で含まれるNiおよびAl原子をCo、Ti、TaおよびNbに置換することができる。Al、Ti、Ta、Nbなどの含有量が増加すると、ソルバス温度やγ’相の体積割合が増加し、さらに通常は析出速度が高まるため、alloy 939や738LCなどの高γ’(ガンマ’)含有合金では、急冷してもγ’相の析出が避けられない。
【0004】
ジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセスでは、偏析効果やγ’相の析出による追加応力によって加工中にクラックが発生する危険性があるため、合金の化学組成だけでなく、γ’相の析出速度も重要である。このため、一般にγ’を含むニッケルおよびニッケル・コバルト合金の溶接は困難である。
【0005】
B、Zr、SiおよびMnなどの偏析性の高い元素は、ニッケルおよびニッケル・コバルト合金の溶接性を低下させる。BおよびZrは、高温特性を向上させるために使用される。SiおよびMnは、溶融物の脱酸に使用される。さらに、S、O、N、PおよびPbなどのマイナーな元素は、ジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセスにおける加工能力を低下させる。
【0006】
独国特許出願公開第102015016729号明細書には、50%超のニッケルを含む合金から金属製の半製品を製造する方法であって、
- 電極をVIMにより製造するプロセスステップと、
- 電極を、炉内で、応力低減および過時効のために、400~1250℃の温度範囲で10~336時間にわたる熱処理に供するプロセスステップと、
- 電極を、空気中または炉内で、寸法に応じて、特に直径に応じて、室温~1250℃未満、特に900℃未満の温度に冷却するプロセスステップと、
- 次いで、冷却された電極を、VARにより3.0~10kg/minの再溶解速度で再溶解させて、VARインゴットを製造するプロセスステップと、
- VARインゴットを、炉内で、400~1250℃の温度範囲で10~336時間にわたって熱処理するプロセスステップと、
- VARインゴットを、空気中または炉内で、寸法に応じて、特に直径に応じて、室温~1250℃未満、特に900℃未満の温度に冷却するプロセスステップと、
- VARインゴットを再度、3.0~10kg/minの再溶解速度で再溶解するプロセスステップと、
- 再溶解されたVARインゴットを、400~1250℃の温度範囲で10~336時間にわたる熱処理に供するプロセスステップと、
- 次いで、VARインゴットを、熱間および/または冷間成形により目的の製品形状および寸法に成形するプロセスステップと
を含む方法が開示されている。
【0007】
欧州特許出願公開第2949768号明細書には、偏析性の高い元素を減少させることでほぼクラックフリーの部材を製造するための、γ’体積割合が60~70%である合金alloy 738LCの適合組成が開示されている。そのために以下の式が用いられる:C/B=10~32、C/Hf>2、C/Zr>8、C/Si>1。
【0008】
カナダ国特許出願公開第2704874号明細書には、ニッケル基合金およびそれから形成された部材が開示されており、例として、クリープおよびクリープクラック成長挙動を含む改善された高温寿命を特徴とする「ガスタービン用途に向けて粉末冶金的に製造された部材」が挙げられており、該合金は、(重量%単位で)Co 16.0~30.0%、Cr 11.5~15.0%、Ta 4.0~6.0%、Al 2.0~4.0%、Ti 1.5~6.0%、W 5.0%以下、Mo 1.0~7.0%、Nb 3.5%以下、Hf 1.0%以下、C 0.02~0.20%、B 0.01~0.05%、Zr 0.02~0.10%、Ni 残部からなり、ここで、Ti:Al比は、0.5~2.0である。
【0009】
カナダ国特許出願公開第1253363号明細書には、γ’体積割合が42%~48%であるニッケル基合金が開示されており、該合金は、(重量%単位で)Co 10.0~14.0%、Cr 14.0~18.0%、Ta 3.0%以下、Al 2.0~3.0%、Ti 2.0~3.0%、W 3.0~5.0%、Mo 3.0~5.0%、Nb 2.0~3.0%、Hf 50ppm以下、C 0.1%以下、B 0.01~0.05%、Zr 0.02~0.08%、S 50ppm以下、Mg 50ppm以下、Ni 残部からなる。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0166258号明細書には、線材から耐熱性のあるスプリングを製造するためのニッケル基合金が開示されており、該合金は、(重量%単位で)Co 5.0~18.0%、Cr 13.0~25.0%、Al 0.1~3.0%、Ti 0.5~4.0%、W 0.15~2.5%、Mo 1.5~7.0%、Nb 0.3~6.0%、Cu 0.03~2.0%、Fe 5.0%以下、C 0.1%以下、P 0.01%以下、B 0.001~0.02%、Zr 0.01~0.3%、S 0.01%以下、N 0.1%以下、Mn 1.5%以下、Si 1.0%以下、Mg 0.05%以下、Ca 0.05%以下、O 0.1%以下、H 0.05%以下、Ni 残部からなる。
【0011】
カナダ国特許発明第2874304号明細書には、クリープ破断強度と再熱割れ耐性が改善されたニッケル基合金が開示されており、該合金は、(重量%単位で)Co 5.0~25.0%、Cr 15.0~28.0%、Ta 8.0%以下、Al 0.2~2.0%、Ti 0.2~3.0%、W 15.0%以下、Mo 3.0~15.0%、Nb 3.0%以下、Fe 15.0%以下、Re 8.0%以下、C 0.001~0.15%、Hf 1.0%以下、B 0.0005~0.01%、Zr 2.0%以下、Y 0.5%以下、La 0.5%以下、Ce 0.5%以下、Nd 0.5%以下、S 0.01%以下、N 0.03%以下、Mn 0.01~3.0%、Si 0.01~2.0%、Mg 0.05%以下、Ca 0.05%以下、Ni 残部からなる。
【0012】
英国特許出願公開第813948号明細書には、(重量%単位で)Co 55.0%以下、Cr4.0~30.0%、Al 0.3~8.0%、Ti0.5~8.0%、W 5.0%以下、Mo 20.0%以下、Nb 5.0%以下、Fe 40.0%以下、C 0.01~0.5%、B 0.01~0.8%、Zr 0.5%以下、Ni 残部からなるニッケル基焼結合金が開示されている。
【0013】
独国特許出願公開第2108978号明細書および独国特許出願公開第2108973号明細書には、アルゴンビームで金属溶融物をアトマイズし、形成された液滴を底部の大量の水溜めで急冷することによる超合金の製造方法が開示されている。アトマイズ工程の後、粉末をアセトンで数回洗浄し、次いで乾燥させ、80メッシュのふるいで分級した後、高温でハンマー鍛造を施す。
【0014】
国際公開第2014/124626号には、航空機のエンジンに使用されるNiCo合金が開示されている。該合金は、以下の組成を有する(重量%単位):Ni 30.0~65.0%、Fe 10.0%以下、Co 12.0~35.0%、Cr 13.0~23.0%、Mo 1.0~6.0%、W 4.0%以下、Nb+Ta 4.0~6.0%、Al 3.0%以下、Mn 1.0%以下、Ti 2.0%、Si 1.0%以下、C 0.1%以下、P 0.03%以下、Mg 0.01%以下、0.02%以下、Zr 0.1%以下。この合金はalloy 780とも呼ばれ、750℃までの高温強度や耐酸化性に優れ、成形性や溶接性にも優れている。VDM alloy 780の良好な成形性や溶接性は、特に、比較的大きなミスフィット(Udimet 720および他の高γ’含有合金の0.04%~最大で+0.34%に対して、0.48%)に基づいている(R. A. Ricks, A. J. Porter, R. C. Ecob, Acta Metall., 31, 43-53 (1983)。
【0015】
本発明は、VDM alloy 780をベースとするコンポーネントのジェネレーティブ・マニュファクチャリングのための粉末を提供するとともに、より高い使用温度での強度や耐酸化性といった高温特性の向上と、ジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセス(クラックフリーの部材の製造)やその高品質で経済的な製造のための良好な加工性とを同時に実現するための該粉末の改良を提供するという課題に基づくものである。ここで、粉末の粒度分布、粒子形状および流動性に関する特別な要件を満たすだけでなく、合金元素の最適な組み合わせを調整して、最終部材の要件や加工性に合わせた合金の改良を行うことも重要である。
【0016】
この課題は、粉末用のニッケル・コバルト合金であって、含有量(重量%単位)が以下のとおりに定められている合金によって解決される:
C >0~最大で0.1%
S 最大で0.015%
Cr 13~23%
Ni 残部(>30%)
Mn 最大で1.0%
Si 最大で1.0%
Mo 1~6%
Ti >0~3%
Nb+Ta 3~8%
Cu 最大で0.5%
Fe >0~最大で10%
Al >0~<4.0%
V 4%以下
Zr >0~最大で0.1%
Co >12~<35%
W 4%以下
Hf 3.0%以下
O 最大で0.1%
N >0~最大で0.1%
Mg >0~最大で0.01%
B >0~最大で0.02%
P >0~最大で0.03%
Ar 0~最大で0.08%
Se 最大で0.0005%
Bi 最大で0.00005%
Pb 最大で0.002%
【0017】
有利には、以下の元素を以下のように調整することができる(データは重量%単位):
C 最大で0.05%
S 最大で0.010%
Cr 16~22%
Mn 最大で0.6%
Si 最大で0.4%
Mo 2~6%
Fe >0~5%
Ti 0.0005~2.0%、特に<1%未満
Al 1.6~3.5%
Co 15~27%
Ni 残部(>30)
【0018】
以下に、alloy 780をベースとするニッケル・コバルト合金粉末の例を示す(データは重量%単位):
Ni 30~65%
Fe >0~最大で5%
Co >15~<27%
Cr 16~22%
Mo 2~6%
W 4%以下
Hf 2.5%以下
Nb+Ta 5~7.5%
Al 1.6~3.5%
Mn 最大で0.6%
Ti 0.0005~2.0%、特に<1.0%
Si 0.0005~0.4%
C >0~最大で0.05%
P >0~最大で0.025%
N >0~最大で0.1%
Mg >0~最大で0.008%
B >0~最大で0.02%
Ar 最大で0.05%
Zr >0~最大で0.1%
【0019】
以下の関係を満たす必要がある:
Mo+W≧2.5
0.0005<B+Zr+P<0.15
S+Se+Bi+Pb<0.1
900℃<γ’ソルバス<1130℃
析出アニールされた状態で20%<γ’体積割合<45%
【0020】
表1に、先行技術としての従来のベンチマーク合金を示す。該合金は、VDM alloy 780の化学組成を本発明により適合および改良することにより、ジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセスでの使用においてより優れた高温特性および/または加工性に代替することができる。ここで、γ’体積含有量は、高温強度に重要な役割を果たすことから、特に留意される。加えて、高温域でのさらなる細分化が必要である(グループNo.2および3、ならびに4および5)。ここでは、部材の用途に応じて、クリープ破断強度または荷重変動強度の領域での組織の設計が有用である。これは、デルタ相の安定性によって実現される。デルタ相は粒界に析出してこれを固定し、クラックの伝播を大幅に遅らせる。
【0021】
【表1】
【0022】
合金の生産性および使用性を保証するためには、酸素の含有量は0.100%以下でなければならない。酸素の含有量が低すぎるとコストが高くなる。そのため、酸素の含有量は≧0.00001%とする。酸素の含有量の制限としては、以下のようなものが考えられる:
- 0.00001~0.1
- 0.00002~0.1
- 0.00005~0.1
- 0.00008~0.1
- 0.0001~0.1
- 0.0002~0.1
- 0.0005~0.1
- 0.0008~0.1
- 0.001~0.1
- 0.002~0.1
- 0.005~0.1
- 0.008~0.1
- 0.010~0.1
- 0.00001~0.10
- 0.00001~0.08
- 0.00001~0.05
- 0.00001~0.03
- 0.00001~0.02
【0023】
合金の生産性および使用性を保証するためには、窒素は0.100%以下でなければならない。窒素の含有量が多すぎると、合金の特性に悪影響を及ぼす窒化物が形成されてしまう。窒素の含有量が少なすぎるとコストが高くなる。そのため、窒素の含有量は≧0.00001%とする。窒素の含有量の制限としては、以下のようなものが考えられる:
- 0.00001~0.1
- 0.00002~0.1
- 0.00005~0.1
- 0.00008~0.1
- 0.0001~0.1
- 0.0002~0.1
- 0.0005~0.1
- 0.0008~0.1
- 0.001~0.1
- 0.002~0.1
- 0.005~0.1
- 0.008~0.1
- 0.010~0.1
- 0.00001~0.10
- 0.00001~0.08
- 0.00001~0.05
- 0.00001~0.03
- 0.00001~0.02
【0024】
粉末も、製造されたコンポーネント(3D印刷済みのサンプル)もどちらも、窒化物の粒度のみならず炭化物および/または炭窒化物の粒度も、非常に小さい(約<8μm)。場合によっては、上記の粒子が存在しないか、または熱処理後にのみ見えるようになることがある。従来どおりに製造された合金ではN含有析出物がクラック発生の原因となるため、N含有析出物の粒度が小さいことは、高温特性に良い影響を与える。
【0025】
合金の生産性および使用性を保証するためには、アルゴンの含有量は0.08%以下でなければならない。アルゴンはγマトリックスに溶解することができず、アルゴン含有物がクラック発生の原因となり得るため、部材の機械的特性に悪影響を及ぼすおそれがある。アルゴンの含有量が少なすぎるとコストが高くなる。そのため、アルゴンの含有量は≧0.0000001%(≧1ppb)とする。アルゴンの含有量については、粉末製造時だけでなく部材製造時のアルゴンの含有量も含めて、以下のような制限が考えられる:
- 0.0000001~0.05
- 0.0000002~0.05
- 0.0000001~0.005
- 0.0000001~0.002
- 0.0000001~0.001
【0026】
必要に応じて最大で3.0%のHfを添加することで、γ’相の硬化に良い影響を与えることができる。また、Hfを添加することで、凝固過程でのクラックの発生を防ぐことができる。
【0027】
より高い温度で高い機械的特性が求められる場合には、必要に応じてVの含有量を増やすことができる。この場合、Vは粒界に集中する傾向があり、高温での機械的特性に良い影響を与える。
【0028】
以下に、上述したニッケル・コバルト合金粉末の本発明による製造方法であって、
- 合金をVIM炉内で溶融させ、
- 液状溶融物を5分~2時間、特に20分~2時間保持して均質化させ、
- 密閉式のアトマイザーを、供給ガスにより露点が-10℃~-120℃となるように調整し、
- 溶融物を、ノズルを通じて、2m/min~150m/minのガス流量のガス流に吹き込み、
- 凝固した粉末粒子を気密の密閉容器に回収し、その際、
- 粒子は、5μm~250μmの粒度を有し、
- 粉末の粒子は、球状であり、
- 粉末は、評価対象物の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(>1μmの細孔)のガス封入物を有し、
- 粉末は、2g/cm~合金密度である約8g/cmの嵩密度を有し、
- 粉末を、アルゴン含有保護ガス雰囲気下で気密包装する
ことによる方法を示す。
【0029】
本発明による方法の有利なさらなる実施形態は、本方法の従属請求項から得ることができる。
【0030】
以下のような初期製造ステップが考えられる:
- VIM炉、VIM/ESU、VIM/ESU/VAR、VIM/VAR、VODまたはVLFでの溶融を行い、次いで、必要であれば材料の純度要件に応じてESUおよび/またはVARでの再溶解を行うことにより、規定の化学分析値を有するマスターアロイのインゴットを製造し、
- マスターアロイのインゴットをのこ引きで小片に分け、
- マスターアロイ片をVIM炉内で溶融させるか、
または
- 所定の重量の合金元素を、化学分析に従ってVIM内で溶融させるか、
または
- マスターアロイ材料と、プロセスに起因するスクラップ(再生粉末などの顧客からのスクラップや、支持体または不良部材を含む)と、新たな合金元素とを0~100%の比率で組み合わせる。正確な比率は、質的、経済的および環境的な観点を考慮して、それぞれのケースで検討される。マスターアロイのインゴットを切断する前に、表面処理(例えば、ブラッシング、研磨、酸洗、切断、剥離など)に供すると有利であり得る。ここでは、さらに再溶解させても解消されず、後の使用に悪影響を及ぼすおそれのある欠陥を取り除くことができる。さらに、可能な限りのマスターアロイを使用することで、事前の再溶解プロセスによってしか保証することができない、粉末の化学的純度に関する最高の品質要件が満たされ、
- 液状溶融物を5分~2時間、特に20分~2時間保持して均質化させ、
- 密閉式のアトマイザーを、アルゴンガスにより露点が-10℃~-120℃、好ましくは-30℃~-100℃の範囲となるように調整し、
- 溶融物を、ノズルを通じて、2m/min~150m/minのガス流量のアルゴンガス流に吹き込み、
- 凝固した粉末粒子を気密の密閉容器に回収し、
- 粒子は、5μm~250μmの粒度を有し、その際、好ましい範囲は、5~150μm、または10~150μmであり、
- 粉末の粒子は、球状であり、
- 粉末は、評価対象物の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(>1μmの細孔)のガス封入物を有し、その際、好ましい範囲は、0.0~2%である。粉末のガス封入物をこのような量とすることで、製造される部材の残留気孔率を低くすることができ、
- 粉末は、2g/cm~合金密度である約8g/cmの嵩密度を有し、その際、好ましい範囲は、4~5g/cmの値であり、
- 粉末を、アルゴン含有保護ガス雰囲気下で気密包装する。
【0031】
本発明による粉末は、好ましくは真空不活性ガスアトマイザー(VIGA)内で製造される。この装置では、真空誘導溶解(VIM)炉内で合金を溶融させ、ガスノズルにつながる注湯ホッパーに供給し、この溶融金属を5~100バールの高圧下で不活性ガスによりアトマイズして金属粒子を形成する。溶融物を、溶融るつぼ内で融点を5~400℃上回る温度で加熱する。アトマイズ時の金属流量は0.5~80kg/minであり、ガス流量は2~150m/minである。急冷により、金属粒子は球状に凝固する(球状粒子)。アトマイズに使用される不活性ガスは、必要に応じて0.01~100%の窒素を含むことができる。その後、サイクロンで気相と粉末とを分離し、次いで粉末を包装する。
【0032】
また、本発明による粉末を、VIGAプロセスではなく、いわゆるEIGAプロセスで製造することも可能である。このプロセスでは、回転電極の形態の予め製造された合金インゴットが、誘導コイルによって非接触式で溶融される。溶融物は、電極からガスノズルのガス流に直接滴下する。
【0033】
EIGA用の合金インゴットも、VIM、ESU、VAR、VOD、あるいはVLF、およびそれらの組み合わせによる溶融プロセスで製造され、任意に鍛造や圧延などの熱間成形プロセスを経ることができる。EIGAプロセスで使用する前に、インゴットの表面を研磨または/および剥離などの処理で清浄化しておくと有利である。
【0034】
粉末製造における不活性ガスは、任意に、アルゴン、あるいはアルゴンと0.01~100%の窒素との混合物であってよい。考えられる窒素の含有量の制限は、以下のものであり得る:
0.01~80%
0.01~50%
0.01~30%
0.01~20%
0.01~10%
0.01~10%
0.1~5%
0.5~10%
1~5%
2~3%
【0035】
また、任意に、不活性ガスとしてヘリウムを使用することもできる。
【0036】
好ましくは、不活性ガスは、少なくとも99.996体積%の純度を有することができる。特に、窒素の含有量は0.0~10ppmvとし、酸素の含有量は0.0~4ppmvとし、HOの含有量は≦5ppmvとする。
【0037】
特に、不活性ガスは、好ましくは、少なくとも99.999体積%の純度を有することができる。特に、窒素の含有量は0.0~5ppmvとし、酸素の含有量は0.0~2ppmvとし、HOの含有量は≦3ppmvとする。装置内の露点は、-10~-120℃の範囲である。装置内の露点は、好ましくは-30~-100℃の範囲である。
【0038】
粉末をアトマイズする際の圧力は、好ましくは10~80バールであり得る。
【0039】
アディティブ・マニュファクチャリングにより製造された部材やコンポーネント、あるいは部材やコンポーネント上の層は、5~500μmの層厚から構築され、製造直後には、構築方向に延びる平均結晶粒度0.5μm~2000μmの粒子を有するテクスチャ形成された組織を有する。好ましい範囲は5μm~500μmである。さらに、上記の粉末は、必要に応じて、熱間静水圧プレス法(HIP)または従来の焼結および押出プロセスによる部材の製造に使用することができる。さらに、アディティブ・マニュファクチャリングとそれに続くHIP処理というプロセスの組み合わせも可能である。ここで、以下に説明するジェネレーティブ・マニュファクチャリング向けの後処理ステップは、HIP部材にも適用可能である。
【0040】
アディティブ・マニュファクチャリングにより製造された部材やコンポーネント、あるいは部材やコンポーネント上の層は、任意に、均質化アニール、応力低減アニール、溶体化アニールおよび/または析出硬化アニールに供することができる。熱処理は、任意に、例えばアルゴンや水素などの保護ガス下で行うことができ、その後、炉内で任意に、保護ガス下、空気中、撹拌されたアニール雰囲気中、または水浴中で冷却することができる。
【0041】
部材に、必要に応じて、300℃~600℃の温度で0.5時間~10時間にわたって応力低減アニールを行い、1000℃~1250℃の温度で1時間~300時間にわたって空気または保護ガス下で均質化または応力除去のためにアニールを行う。その後、部材に、必要に応じて、空気または保護ガス下で850℃~1250℃の温度で0.5時間~30時間にわたって溶体化アニールまたは応力低減アニールを行う。析出アニールは、必要に応じて1段階でも2段階でもよく、600℃~850℃の温度で、空気または保護ガス下で1時間~30時間にわたって行うことができる。
【0042】
その後、任意に表面を、酸洗、ブラスト、研削、旋削、剥離、フライス加工により清浄化または加工することができる。このような加工は、任意に、アニールの前にも部分的または完全に行うことができる。
【0043】
アディティブ・マニュファクチャリングにより製造された部材やコンポーネント、あるいは部材やコンポーネント上の層は、アニール後に2μm~2000μmの平均結晶粒度を有する。好ましい範囲は、20μm~500μmである。
【0044】
このプロセスで製造された粉末も、この粉末から製造されたコンポーネント(3D印刷済みのサンプル)も、窒化物のみならず炭化物および/または炭窒化物も含まない。窒化物も炭化物も存在する場合には、これらは、直径が<100nm、特に<50nmの粒度を有する。
【0045】
この粉末から製造されたコンポーネント(3D印刷済みのサンプル)を、均質化、拡散アニールのために、900℃超、特に1000℃超、理想的には1100℃超で1時間超にわたって熱処理した後、製造されたコンポーネント(3D印刷済みのサンプル)において、窒化物だけでなく、炭化物および/または炭窒化物が生じ得る。これらは、直径が<8μm、あるいは<5μm、理想的には<1μm、特に<500nmの粒度を有する。
【0046】
本発明により製造された粉末からアディティブ・マニュファクチャリングにより製造された部材やコンポーネント、あるいは部材やコンポーネント上の層は、その材料が、関連する分析をともなって鍛錬用合金または鋳造用合金としても使用される分野で使用されることが好ましい。
【0047】
「アディティブ/ジェネレーティブ・マニュファクチャリング」という用語は、適用水準に応じて、ラピッドプロトタイピング、ラピッドツーリング、ラピッド・マニュファクチャリングなどに分類される。
【0048】
ここで、一般的には以下のものが区別される:
粉末を用いた3D印刷
選択的レーザー焼結、および
選択的レーザー溶融
電子ビーム溶解
レーザービルドアップ溶接
選択的電子ビーム溶接など。
【0049】
本明細書において用いられる略語は、以下のように定義される:
VIM 真空誘導溶解
VIGA 真空不活性ガスアトマイゼーション
VAR 真空アーク再溶解
VOD 真空酸素脱炭
VLF 真空取鍋精錬
EIGA 電極誘導溶融ガスアトマイゼーション
【0050】
粉末の粒度の広がり範囲は、5~250μmであり、その際、好ましい範囲は、5~150μm、または10~150μmである。
【0051】
粉末は、評価対象物の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(>1μmの細孔)のガス封入物を有し、その際、好ましい範囲は、
0.0~2%
0.0~0.5%
0.0~0.2%
0.0~0.1%
0.0~0.05%
である。
【0052】
粉末は、2g/cm~合金密度である約8g/cmの嵩密度を有し、その際、好ましい範囲は、以下の値であり得る:
4~5g/cm
2~8g/cm
2~7g/cm
3~6g/cm
【0053】
粉末のガス封入物をこのような量とすることで、製造される部材の残留気孔率を低くすることができる。
【0054】
先行技術と比較して、遠心分離プロセスを使用しないため、装置の稼働時間が最適化される。その後の精錬プロセスでは、粉末の品質をアディティブ・マニュファクチャリング向けに最適化する。さらに、VDM alloy 780合金の組成をジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセスでの適用に向けて最適化するとともに、加工性を維持しつつより高い温度での適用に向けて組成を最適化することも行われる。
【0055】
表2に、本発明による方法で製造された粉末の化学組成を示す(データは重量%単位)。
【0056】
粒度5μm~250μmの粉末が得られる。
【0057】
5μm未満の小さすぎる粒度は、流動挙動を悪化させるので避けるべきであり、250μm超の大きすぎる粒度は、アディティブ・マニュファクチャリング時の挙動を悪化させる。
【0058】
2g/cmという低すぎる嵩密度は、アディティブ・マニュファクチャリング時の挙動を悪化させる。最大限の高さである約8g/cmの嵩密度は、合金の密度によって与えられる。
【0059】
この方法で製造された粉末は、アディティブ・マニュファクチャリングにおいて、ベースとなる合金(VDM alloy 780およびその高温改良体)の特性を有するコンポーネントの製造に使用することができる。標準的なVDM alloy 780は、SLMプロセスでのプロセスパラメータウィンドウ内でalloy 718からクラックフリーで製造することができる。その際、相対密度99.98%が達成される。
【0060】
ジェネレーティブ・マニュファクチャリング・プロセスでは、プロセスパラメータをいくつかのパラメータにより記述することができる。SLMプロセスや一部のEBMプロセスでは、体積エネルギー密度が特性とされることが多い。原理的には、体積エネルギー密度は、以下の式により算出される[L. A. Al-Juboori, T. Niendorf, F. Brenne; On the Tensile Properties of Inconel 718 Fabricated by EBM for As-Built and Heat-Treated Components; Metallurgical and Materials Transactions B, Volume 49B, 2018]:
E=P/(v*d*h) (単位:J/mm
ここで、レーザー出力(P)、走査速度(v)、層厚(d)、および経路距離(h)である。
【0061】
alloy 718では、通常40~120J/mmのエネルギー密度が使用される。典型的な値は、どちらのプロセスでも約90J/mmである。
【0062】
alloy 780の粉末組成P10047、P10048、P10056、P10085およびP10086のパラメータ決定では、alloy 718の40~120J/mmの範囲のエネルギー密度を使用し、相対密度は99%以上であった。例えば、約80J/mmのエネルギー密度、および99.98%の相対密度を達成することができる。粉末合金780の高温タイプ(組成1~57、およびN1~N5)では、エネルギー密度を40~600J/mmで変化させることができ、それにより材料の高い相対密度を保証することができる。しかし、プロセスパラメータは、プロセスによって大きく変化し得る。
【0063】
バッチP10056の材料を用いて、SLMプロセスによりサンプルを製造した。プロセスに起因する散発的な細孔を除いて、クラックフリーの組織を得ることができる。
【0064】
熱処理の違いにより、例えば約75μmの結晶粒度(例えば、ASTM 4.5)を有する均一な組織が得られた。より小さな結晶粒度やより大きな結晶粒度も、所定の熱処理パラメータによって設定することができる。a)b)
【表2】
【0065】
熱間鍛造ビレット用合金alloy 780の工業的に製造された例示的なバッチ(バッチNo.420420)の典型的な化学組成を、例えば表3(およびさらなる表)に示す。この工業的に製造されたバッチ420420の化学組成は、特に元素Co、Al、TiおよびNbの含有量が、ガンマ’ソルバス温度が非常に高く(実験により求めたところ約990℃であった)、それに対応する高温まで組織の安定性が得られるように選択されている。また、標準的な合金であるalloy 718と比較して、ガンマ’の体積割合は大幅に高い。その結果、高い強度値を保ちつつ、使用温度を大幅に上げることが可能となった。一方、化学組成が適切に定められているため、ガンマ’ソルバス温度はさほど高くない。したがって、この合金は、再溶解したインゴットからビレットへと十分に熱間成形可能であり、つまり、鍛造可能である。約2.1%のAlおよび約0.3%のTiを用いて鍛造品向けに大規模に製造されたこのバッチ420420(さらなる検討のための参照材料)の化学組成は、良好な溶接が可能な材料の分析範囲内にある(図1参照)。これは、電子ビームおよびプラズマによる溶接試験で実験的に証明された。このことは、VIGA装置を用いた粉末アトマイズで製造された同様の化学組成の粉末では、試験体を3D印刷しても全くクラックが発生しなかったという観察結果ともよく一致している。これにより、選択的レーザー溶融などのアディティブ・マニュファクチャリングプロセス用の粉末製品の場合、特許文献に記載されている限界分析の範囲内で、鍛造製品に使用される化学組成を適合させることができるようになり、適合した化学組成を有する合金は、選択的レーザー溶融によりクラックフリーで印刷可能であるが、例えばガンマ’ソルバス温度やガンマ’体積割合をも高めることができる。これにより、3D印刷されるコンポーネントにおいてより高い温度でさらに高い強度値で使用できる化学組成を有する材料が得られる。
【0066】
さらに、ここではVDM alloy 780の合金コンセプトが使用されており、これは、同時にジェネレーティブ・マニュファクチャリングプロセスに向けた本発明による最適化が行われている:
(a) Crの含有量が多いと、高温での材料の耐酸化性の向上が保証される。
(b) Coの含有量が多いと、積層欠陥エネルギーが大きくなり、γ’相のNiサイトに置換され、γ’相の格子定数が大きくなる。
(c) Tiの含有量が少ないと、γ’相のAlの置換が遅くなり、その結果、析出速度が低くなるため、溶接性も向上する(図1参照)。また、高温耐酸化性が向上する。Tiの含有量が減少するとイータ相やNを含むインコヒーレントな析出物の不安定化に好影響を与え、その結果、高温特性が改善される。
(d) NbおよびTaの含有量を調整し、Hfを添加すると、高温でのγ’相の粗大化が遅くなり、ミスフィットが大きくなってγ’相が硬化される。
(e) マイナーな元素が減少すると、合金の加工性が向上し、γ’相の体積割合が高くても、クラックフリーの部材を製造することができる。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
TTNi8データベースを用いた熱力学的シミュレーション(JMatProおよびThermoCalc)により、化学組成を変化させた広範な試験マトリックスを算出し、これらの合金のガンマ’ソルバス温度およびガンマ’体積割合を調べた(次の表および次頁の図を参照)。
【0070】
ここで、以下の元素および元素の含有量を変化させた:
Cr:16/18/20%
Ni:43%~55.5%(残部元素)
Mo:3/3.5/4/6%
Ti:0.1/0.3/0.6/0.9/1.2/1.6/2.1%(3%まで)
Nb:3.5/4.0/5.0/5.4%
Ta:0.5/1/2%
Al:1.6/1.9/2.2/2.4/2.5/2.6/2.8/3.1/3.5/4.0%
Co:15/17.5/20/22.5/24.5/27.5%
W:0.5/1/2%
Hf:0.5/1/2%
【0071】
表3a~表3dは、Alの含有量を変化させた場合の代表的な合金分析物、ならびにCoの含有量を24.5%(表3aおよび表3b-1)および20%(表3cおよび表3d-1)に固定した場合の相特性の算出値を示したものである。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
JMatProプログラム(バージョン11.1)を用いて、ガンマ’相の割合[重量%]および粒度[nm]に加えて、降伏点Rp0.2[MPa]の値を各試験温度[℃]に対して算出した。この算出では、溶体化アニールのパラメータとして、温度1100℃、冷却速度10K/sを用いた。ガンマ’ソルバス温度が1100℃超の合金分析物では、溶体化アニール温度を1150℃に設定した。溶体化アニールの後の析出熱処理について、次の表ではほとんどの合金タイプについて、アニールパラメータ700℃/8h、850℃/8h、および850℃/24hに対するRp0.2の結果を示す。代表的な合金タイプについて、Rp0.2の結果を、析出温度650℃、700℃、750℃、800℃、850℃および900℃、アニール時間8hについてより詳細に示す。それぞれの合金でRp0.2が最大値を示す析出温度については、析出アニール時間16hおよび24hについての結果も加えられている。ガンマ’相の割合および粒度は、化学組成だけでなく、析出アニールパラメータにも依存する。その結果、降伏点Rp0.2の値に影響を与えることになる。さらに、降伏点Rp0.2の値は、組織の結晶粒度にも依存する(表では、結晶粒度をASTMサイズで表記している)。ここで、結晶粒度ASTM 4.5は、溶体化アニール温度が1100℃の場合の粗い結晶粒度にほぼ相当する。一方、ASTM 12は、より低い溶体化アニール温度(例えば1000℃前後)で設定可能な微細な結晶粒度に相当する。
【0075】
表3b-2~表3b-7は、表3aの合金について、先に述べたアニールパラメータおよび結晶粒度に対する、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに降伏点Rp0.2の算出値を示したものである。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
表3b-2の値から、Alの含有量の増加にともなってガンマ’相の割合が増加し、粒度の増加はわずかであることがわかる。また、降伏点Rp0.2は、合金のAlの含有量の増加、すなわちガンマ’相の割合の増加にともなって増加している。さらに、各試験温度に対する値Rp0.2の推移から、合金N1およびN2において、すなわちAlの含有量が3.5%および4.0%と比較的多い場合に、比較的高い試験温度で発生するRp0.2の急激な低下が、800℃付近のより高い試験温度の方向にシフトしていることがわかる。Alの含有量が比較的少ない合金では、Rp0.2の急激な減少は、750℃前後の比較的低い試験温度ですでに見られる。これと比較すると、表3b-3のデータから、より細かい結晶粒度のASTM 12では、より粗い結晶粒度のASTM 4.5に比べて降伏点Rp0.2の値が著しく大きいことがわかる。表3b-2および表3b-3に、700℃/8hでの析出熱処理についての結果データを示す。
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】
850℃/8hでの析出熱処理の後、ガンマ’相の割合は確かに700℃/8hでの析出熱処理の後よりも小さいが、ガンマ’相の析出粒子は、より大きい(対応するデータを表3b-4および表3b-5に示す)。粒度がより大きいことが降伏点Rp0.2に及ぼすプラスの効果は、相割合がより低いというマイナスの効果を上回っている。降伏点Rp0.2の値の水準は、850℃/8hでの析出熱処理の後の方が、700℃/8hでのアニールの後よりも有意に高い。
【0082】
析出温度850℃で24時間というより長いアニール時間を経た後、降伏点Rp0.2の値の水準は、同じ析出アニール温度850℃で8時間のアニール時間を経た後に比べて有意に低い。これは、ガンマ’相の粒度がより大きいことが原因のようである。これらの結果データを、結晶粒度ASTM 4.5およびASTM 12について、表3b-6および表3b-7の双方に示す。
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
図2aから、降伏点Rp0.2が、比較的高温でAlの含有量の増加にともなって増加していることがわかる。さらに、比較的高いAlの含有量での降伏点Rp0.2の急激な低下は、800℃超の温度でのみ見られる。
【0087】
【表14】
【0088】
【表15】
【0089】
【表16】
【0090】
【表17】
【0091】
【表18】
【0092】
また、表3d-3の値から、Alの含有量の増加にともなってガンマ’相の割合が増加し、この場合、粒度の増加はわずかであることがわかる。また、降伏点Rp0.2は、合金のAlの含有量の増加、すなわちガンマ’相の含有量の増加にともなって増加している。さらに、各試験温度に対する値Rp0.2の推移から、合金36、37、HT1、HT2、HT1-aおよびHT2-aにおいて、すなわちAlの含有量が3%~4%と比較的多い場合に、比較的高い試験温度で発生するRp0.2の急激な低下が、800℃付近のより高い試験温度の方向にシフトしていることがここでもわかる。Alの含有量が比較的少ない合金では、Rp0.2の急な減少は、750℃前後の比較的低い試験温度ですでに見られる。表3d-3に、700℃/8hでの析出熱処理についての結果データを示す。
【0093】
【表19】
【0094】
850℃/8hでの析出熱処理の後、この場合にも、ガンマ’相の割合は700℃/8hでの析出熱処理の後に比べて小さく、ガンマ’相の析出粒子はより大きい(対応するデータを表3d-4に示す)。粒度がより大きいことが降伏点Rp0.2に及ぼすプラスの効果は、相割合がより低いというマイナスの効果を上回っている。降伏点Rp0.2の値の水準は、850℃/8hでの析出熱処理の後の方が、700℃/8hでのアニールの後よりも有意に高い。
【0095】
析出温度850℃で24時間というより長いアニール時間を経た後、降伏点Rp0.2の値の水準は、同じ析出アニール温度850℃で8時間のアニール時間を経た後に比べて有意に低い。これは、ガンマ’相の粒度がより大きいことが原因のようである。これらの結果データを、結晶粒度ASTM 4.5について、表3d-5に示す。
【0096】
【表20】
【0097】
表3a~表3dの合金分析物のガンマ’ソルバス温度の算出値を、Alの含有量に対して図3にプロットした。
【0098】
【表21】
【0099】
ここから、ガンマ’ソルバス温度は、バッチ420420の参照合金でAlが2.16%の場合の1009℃から、Alの含有量を4.0%に増加した場合の1105℃にまで高めることができることがわかる。
【0100】
【表22】
【0101】
ここから、600℃でのガンマ’割合は、バッチ420420の参照合金でAlが2.16%の場合の25.3%から、Alの含有量を4.0%に増加させた場合の約47.7%にまで高めることができることがわかる(図4参照)。
【0102】
表3a~表3dから、Alの含有量の増加にともなって、γ’相が安定化することがわかる。ソルバス温度は1106℃にまで、体積割合は50%にまで高めることができる。また、Alの含有量が多いとデルタ相が不安定となり得ることがわかる。CoおよびNbの含有量が同時に高く、Alの含有量が中程度の場合、デルタ相は非常に安定する。一例として、合金19をalloy 939と比較することができる。alloy 939のγ’ソルバス温度は1110℃であり、最大のγ’体積割合は約39.5%である。シグマ相は870℃で析出し、600℃での体積割合は15%である。合金19の合金組成の有利な組み合わせにより、体積割合を41%とわずかに増加させながら、1067℃までのγ’ソルバス温度を実現することができる。γ’相のソルバス温度の低下により、合金の加工性が大幅に改善され、さらに、少なくとも同じ機械的特性を有しつつ、クラックの発生傾向が顕著に低くなる。また、Tiの含有量が少ないため、合金19はalloy 939よりも優れた耐酸化性を示す。
【0103】
合金19では、alloy 939と比較して、CoおよびCrの含有量が多いため、体積割合を1%増加させるとシグマソルバス温度が11℃高まる。総じて、シグマ相はインコヒーレントゆえに非常に遅い析出速度を示すため、参照合金420420では800℃で2000時間超の高温時効試験を行ってもこの相は存在しなかった。本研究において組成がほぼ同じである合金1は、ソルバス温度774℃でシグマ相を示し、600℃での体積割合は8.6%である。シグマ相の熱力学的安定性の範囲がより高温にシフトした場合、適合した熱処理などの措置が必要になることがある。
【0104】
表3d-6に、実験用溶融物として製造された3つの代表的な化学組成を示す。LB 250756と表示された分析物は、2.1%のAlを含む。他の2つの分析物であるLB 250757およびLB 250760は、それぞれ約3%および3.8%のAlを含む。
【0105】
【表23】
【0106】
表3d-7~表3d-18に、これらの分析物についての、結晶粒度ASTM 4.5およびASTM 12についての650℃/8h、700℃/8、750℃/8h、800℃/8h、850℃/8hおよび900℃/8hでの析出熱処理の後の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の算出値を示す。いくつかの析出アニール温度については、16hおよび24hの2つの追加のアニール時間での結果が補足されている。
【0107】
【表24】
【0108】
【表25】
【0109】
【表26】
【0110】
【表27】
【0111】
【表28】
【0112】
【表29】
【0113】
【表30】
【0114】
【表31】
【0115】
【表32】
【0116】
【表33】
【0117】
【表34】
【0118】
【表35】
【0119】
これらの表から、合金分析物のAlの含有量が多いほど、降伏点Rp0.2が高くなることがわかる。さらに、Alの含有量が多いほど、降伏点Rp0.2のより大幅な低下がより高い試験温度へとシフトする。これらの効果は、一方ではAlの含有量の増加にともなうガンマ’相の割合の増加(ガンマ’相の粒度を最適化した場合)に関連し、他方ではAlの含有量の増加にともなうガンマ’相のソルバス温度の上昇に関連している。
【0120】
2.1%のAlを含むLB 250756では、降伏点Rp0.2の最大値は、検討した析出温度において、析出アニール温度800℃(アニール時間8hと比較して検討)に位置している。他の2つの合金LB 250757およびLB 250760は、3%あるいは3.8%のAlを含んでおり、降伏点Rp0.2の最大値は、析出アニール温度850℃に位置している。ここで追加的に検討した900℃の析出アニール温度では、降伏点Rp0.2の値がより低く、すなわち、降伏点Rp0.2の値が最も高くなるための最適な析出アニール温度を超えてしまう(しかし、他の機械的特性に関して、850℃を超える析出アニール温度が好ましく有用である場合もある)。
【0121】
検討した結晶粒度を比較すると、表から、より細かい結晶粒度であるASTM 12では、より粗い粒度のASTM 4.5の場合よりも、降伏点Rp0.2の値が有意に高いことがわかる。
【0122】
2.1%のAlを含む合金LB 250756の場合には、降伏点Rp0.2の最大値が、検討した8時間の析出アニール温度の後に生じるが、より長い16時間および24時間のアニール時間では降伏点Rp0.2の値が増加することがわかる(表3d-10および表3d-16参照)。一方、LB 250757およびLB 250760の2つの合金では、検討した析出アニール温度850℃でのアニール時間をより長く16hおよび24hとすると、降伏点Rp0.2の値が低下する。
【0123】
最大Alの含有量が4%の合金について検討する。Alの含有量が4%を超える合金では、溶接や凝固の挙動に悪影響を与え、積層印刷プロセスのみならずその後の熱処理でも組織に重大な欠陥、すなわちクラックが発生するおそれがあるほどリスクが高まる。
【0124】
【表36】
【0125】
図4aは、達成すべき降伏点Rp0.2の最大値が、Alの含有量の増加にともない、より高い硬化温度へとシフトしていることを示している。Alの含有量が2.1%の場合(LB 250256)には、800℃の硬化温度で最高の降伏点Rp0.2に達するが、Alの含有量が3%および3.8%の場合には、ここで検討した温度では850℃の硬化温度で最高の値が得られる。900℃の温度では、降伏点Rp0.2の値は、3つの組成すべてにおいて再び低下する。しかし、850~900℃の温度では、Alの含有量が比較的多い(3%および3.8%)と降伏点Rp0.2のさらなる増加が生じることは排除できない。
【0126】
表3d-19に、LB 250756の化学組成を、非常に類似した分析物の含有量を有するP10231の化学組成と比較して示す。
【0127】
【表37】
【0128】
前述のように、分析物LB 250756について、各試験温度に対する降伏点の値を算出した。800℃/8hおよび650℃/8hでの析出熱処理についての試験温度650℃および700℃での表3d-6からの抜粋を表3d-20に示す。P10231の印刷済みのサンプル(45°、90°および180℃の3つの空間方向)に対して、650℃および700℃で熱間引張試験を行い、降伏点Rp0.2の値を測定した。熱間引張試験の前に、印刷済みのサンプルに800℃/8h+650℃/8hの2段階の析出熱処理に供した。P10231のサンプルの選択された溶体化アニールも、組織はほぼASTM 4.5の結晶粒度を有する。比較のために、P10231についてRp0.2の測定値を表3d-20に示す。
【0129】
LB 250756のRp0.2降伏点の算出値は、P10231のRp0.2の測定値と非常に類似の水準である。
【0130】
【表38】
【0131】
表4a~表11c-3は、さらなる代表的な合金の相および機械的降伏点の特性の算出結果を含む。
【0132】
【表39】
【0133】
【表40】
【0134】
これらの表から、16~20%のCrでは、ガンマ’ソルバス温度のみならず600℃でのガンマ’割合も、Crの含有量の増加にともなってわずかに増加していることがわかる。また、Crの含有量が減少するとシグマ相が不安定になることにも留意すべきである(表4b 合金2参照)。
【0135】
使用に対して重要なCrの含有量のもう1つの効果は、これらの合金の高温耐酸化性の向上である。実験で行われた800℃および900℃での酸化試験において、17.75%のCrを含む参照バッチ420420の合金分析物は、約16%のCrを含む合金alloy 720 LIの分析物の約10分の1の質量増加を示した。Crの含有量を20%とすると、alloy 780をベースとした新たな合金の耐酸化性をさらに高めることができる。
【0136】
表4c-1~表4c-3に、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表4aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0137】
【表41】
【0138】
【表42】
【0139】
【表43】
【0140】
表4c-1~表4c-3から、合金1および2よりも多い20%のCrの含有量を有する2つの合金3および4は、より高い降伏点Rp0.2の値を達成していることがわかる。
【0141】
【表44】
【0142】
【表45】
【0143】
【表46】
【0144】
表5aおよび表5bから、Coの含有量が減少するとガンマ’ソルバス温度は数℃しか下がらず、デルタ相およびシグマ相は不安定になることがわかる。これにより、Coの含有量が減少して金属値がより低いために商業的観点からよりコスト効率の高い、alloy 780をベースとした新たな合金が可能となる。さらに、Coの含有量が減少するとイータ相が不安定になり、高温での機械的特性に良好な影響を与える。
【0145】
表5c-1~表5c-3に、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hの析出熱処理に対する表5aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0146】
【表47】
【0147】
【表48】
【0148】
【表49】
【0149】
まず、表5c-1~表5c-3において試験温度650℃および700℃について検討すると、降伏点Rp0.2の値は、Coの含有量に対して試験温度内でほとんど変化していないことがわかる。一方、より高い700℃超の試験温度では、降伏点Rp0.2の値は、Coの含有量の増加にともなって(Alの含有量が2.2%であるこれらの合金において)1つの試験温度内で増加していることがわかる。
【0150】
ここで検討した合金の中でCoの含有量が最も少ない15%の合金6の場合、700℃/8hでの析出熱処理で、より高い降伏点Rp0.2の値が得られている。一方、ここで検討した合金の中でCoの含有量が最も多い27.5%の合金16の場合、850℃/8hでの析出熱処理で、より高い降伏点Rp0.2の値が得られている。
【0151】
表6a-1および表6a-2に、2つの異なるAlの含有量に対してTiの含有量を変化させた場合の化学組成を示す。
【0152】
【表50】
【0153】
【表51】
【0154】
表6a-1および表6bから、ガンマ’ソルバス温度のみならず600℃でのガンマ’割合も、予想どおり、Tiの含有量の増加とともに増加することがわかる。しかし、Tiの含有量が多いと、デルタ相およびγ’相を犠牲にして、イータ相およびシグマ相が安定する。イータ相を不安定にしたい場合や、イータ相の割合を可能な限り低く抑えたい場合には、Tiの含有量を可能な限り少なくする必要がある。
【0155】
【表52】
【0156】
表6c-1~表6c-3に、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表6a-1の合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0157】
【表53】
【0158】
【表54】
【0159】
【表55】
【0160】
表6c-1~表6c-3のデータから、24.5%および20%のCoを含む2つの合金系列では、それぞれAlおよびTiの元素の含有量の合計が最も多い2つの合金が、降伏点Rp0.2の最も高い値を達成していることがわかる。これは、24.5%のCoについては、2.2%のAlおよび0.9%のTiを含む合金23と、2.2%のAlおよび1.2%のTiを含む合金24との、検討した2つの合金であり、20%のCoを含む系列では、1.6%のAlおよび1.6%のTiを含む合金14、ならびに1.6%のAlおよび2.1%のTiを含む合金15である。2つの合金23および24の場合、850℃/8hでの析出熱処理を行うと、700℃/8での熱処理の場合に比べて降伏点Rp0.2の値がわずかに高くなる。2つの合金14および15の場合、降伏点Rp0.2の値の水準は、これらの2つの析出熱処理で同等の水準である。析出アニール温度を700℃~850℃とし、アニール時間を8時間とすれば、降伏点の値の水準をさらに上げることができる。ここで検討した4つの合金すべてにおいて、850℃/24hでの析出熱処理の後の降伏点の値の水準は、他の2つの熱処理に比べて低い。
【0161】
表6c-4~表6c-7に、結晶粒度ASTM 4.5についての650℃/8h、700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表6a-2の合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0162】
【表56】
【0163】
【表57】
【0164】
【表58】
【0165】
【表59】
【0166】
表6c-4~表6c-7のデータから、Tiの含有量がより多い合金系列では、AlおよびTiの元素の含有量の合計が最も多い合金が降伏点Rp0.2の最大値を達成していることがわかる。析出温度が850℃の場合、合金N4およびN5は、降伏点Rp0.2が最も高い値に達する。しかし、析出時間は、24hよりも8hの方が有利である。これは、24hでの粒度が約60nmであったのに対し、粒度が約40nmと比較的小さいためと考えられる。チタンの含有量が1%の場合、700℃/8hでの析出熱処理で最も高い降伏点Rp0.2が得られた。Tiの含有量が3%の場合、850℃での強度水準は、1000MPa超であり、依然として非常に高い。さらに、急激な低下は、AlおよびTiの元素の合計の含有量が多いと、800℃超のより高温へとシフトし、Tiの含有量が3%の場合には、さらに850℃超へとシフトする。
【0167】
【表60】
【0168】
【表61】
【0169】
表6および表7から、前述したように、ガンマ’ソルバス温度および600℃でのガンマ’割合は、Tiの含有量の増加とともに増加することがわかる。Tiが0.3%の場合、ガンマ’ソルバス温度および600℃でのガンマ’割合は、Alの含有量の増加とともに増加する。Tiの含有量をさらに減少させ、Alの含有量を2.4%と多くすると、ガンマ’ソルバス温度はほとんど変わらず、600℃でのガンマ’割合はわずかに増加する。また、表からは、高Ti含有量と高Nb含有量および高Co含有量との組み合わせがイータ相を非常に安定させることがわかる。ここで、本実験では、限度範囲も考慮されていたことがよくわかる。各元素の効果を理解した上での組成物のマッチングは、次の表のようになる。これらの合金は、合金420420とは対照的にイータ相を示さない。
【0170】
表7c-1~表7c-3に、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表7aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0171】
【表62】
【0172】
【表63】
【0173】
【表64】
【0174】
表7c-1~表7c-3のデータから、ここで検討した化学組成では、AlおよびTiの元素の含有量の合計が最も多い2つの合金が、降伏点Rp0.2の最大値を達成していることが同様にわかる。これには、24.5%のCoについて、表7aですでに検討した2.2%のAlおよび0.9%のTiを含む合金23と、2.2%のAlおよび1.2%のTiを含む合金24とが該当する。
【0175】
【表65】
【0176】
【表66】
【0177】
表8aおよび表8bから、0.3%のTiおよび2.2%のAlの場合、ガンマ’ソルバス温度が5.4%のNbから5.0%のNbへと数℃低下することがわかる。600℃でのガンマ’割合はほとんど変化しない。5.0%のNbおよび0.3%のTiの場合、Al含有量が2.6%とより多い場合にはガンマ’ソルバス温度は大きく上昇し、600℃でのガンマ’割合も同様である。5.0%のNb含有量と、2.6%のAl含有量と、0.1%の比較的低いTi含有量との組み合わせでは、ガンマ’ソルバス温度はわずかに上昇するだけだが、600℃でのガンマ割合は、5.0%のNb、0.3%のTiおよび2.2%のAlを含む合金に比べて大幅に増加している。
【0178】
表8c-1~表8c-3に、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表8aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0179】
【表67】
【0180】
【表68】
【0181】
【表69】
【0182】
表8c-1から表8c-3のデータから、この合金系列の中でAl(2.6%)およびTi(0.3%)の元素の含有量の合計が最も多い合金28は、ここで検討した他の合金と比較して降伏点Rp0.2の値が最も高くなっていることがわかる。また、合金29は、合金28と同様により高いAlの含有量2.6%を含んでいるが、この合金29ではTiの含有量が0.1%に減少している。
【0183】
【表70】
【0184】
【表71】
【0185】
表9aおよび表9bから、Moの含有量の増加にともなって、ガンマ’ソルバス温度がわずかに低下することがわかる。600℃でのガンマ’割合は、Moの含有量の増加とともにわずかに増加する。Nbの含有量を維持しながらMoの含有量を増加させると、デルタ相、イータ相、およびシグマ相が安定する。このため、合金が高温でのYマトリックス硬化に高含有量の固溶強化剤を必要とする場合には、Nbの含有量を調整する必要がある。
【0186】
表9c-1~表9c-3には、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表9aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0187】
【表72】
【0188】
【表73】
【0189】
【表74】
【0190】
合金30~35の3.5%、4%および6%という比較的高いMoの含有量(Nbの含有量は5.4%および5%の2種類である)は、Moの含有量が3%である参照合金1と比較して、降伏点値Rp0.2の水準にほとんど顕著な影響を与えない。
【0191】
表10aでは、参照バッチ420420、ならびに参照分析物No.1および9の分析物に加えて、Nb、Ta、WおよびHfの含有量が変化するさらなる分析物が検討されている。これは、分析物No.38~48である。これらの分析物タイプの算出結果を表10bに示す。標準的なVDM alloy 780と比較して、γ’体積割合は最大で36.5%まで増加している。さらに、示されているすべての合金はいずれもイータ相を有しない。これらの合金では、かなり低いγ’ソルバス温度でほぼ等しいγ’相の体積を達成することができる。Taを合金化することで、γ’相の硬化に加えて、より高度のミスフィット、およびそれにともなうγ’相の遅い析出速度を実現することができる。合金9、39、43~48では、900℃で少量のデルタ相が粒界に析出することがあり、粒界が強化されるため、高温特性にプラスの影響を与える。さらに、シグマ相の安定性は、alloy 939に比べて著しく低い。
【0192】
【表75】
【0193】
【表76】
【0194】
表10c-1~表10c-3には、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表10aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0195】
【表77】
【0196】
【表78】
【0197】
【表79】
【0198】
まず、Co(20%)、Al(2.6%)およびTi(0.3%)の含有量が一定で、元素NbおよびTaの含有量が異なる合金9および38~42について検討する。その中で、合金9および39はどちらもNb含有量が5.4%とやや多めであり、降伏点Rp0.2の最大値を達成している。また、850℃/8hでの析出熱処理の場合、Ta含有量が0.5%と合金9よりも多い合金39は、降伏点Rp0.2の値がやや高い。合金38、40および41の降伏点の値の水準は、2つの合金9および39に比べて低い。合金38、40および41は、2つの合金9および39に比べてNbの含有量が5%とやや少ない。3つの合金38、40および41のうち、合金41はやや高い降伏点値を達成している。この合金は、1%のやや高いTa含有量を有する。合金42の降伏点値は、合金9の降伏点値の水準とほぼ同等である。合金42は、Nbの含有量がより少ないが、Taの含有量は2%であり、この合金系列の中でも最も高い。
【0199】
ここで、Wの含有量が0.02%と非常に低い合金9に対して、Wの含有量が0.5%、1%および2%の合金43、44および45について検討する。850℃/8hでの析出熱処理の場合、合金43、44および45の降伏点値の水準は、合金9の降伏点値の水準と比較して、Wの含有量の増加にともなってわずかにしか増加しない。
【0200】
ここで、Hfを含まない合金9に対して、Hfの含有量が0.5%、1%および2%の合金46、47および48について検討する。850℃/8hでの析出熱処理の場合、降伏点値の水準は、Hfの含有量の増加とともに増加し、この合金系列の中で最もHfの含有量の多い合金48(2%)の降伏点値は、Hfを含まない合金9に比べて著しく高い。
【0201】
表11aでは、参照バッチ420420および参照分析物No.1の分析物に加えて、Nb、TaおよびWの含有量が変化するさらなる分析物が検討されている。これは、分析物No.50~57である。これらの分析物タイプの算出結果を表11bに示す。高温用途では、部材の要件に応じて、高い熱機械的負荷が発生するおそれがある。このような用途では、Nbの一部をTaで置換することが推奨される。Taは、γ’相におけるAlの置換だけでなく、合金内での拡散プロセスを遅延させる。加えて、これは大幅に高められる。この場合、析出速度が加工性に好影響を与える。合金50~52および57では、デルタ相を高温の粒界強化に利用することができる。
【0202】
【表80】
【0203】
【表81】
【0204】
表11c-1~表11c-3には、結晶粒度ASTM 4.5についての700℃/8h、850℃/8hおよび850℃/24hでの析出熱処理に対する表11aの合金の、ガンマ’相の割合および粒度の算出結果、ならびに各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値を示す。
【0205】
【表82】
【0206】
【表83】
【0207】
【表84】
【0208】
特に、表11c-2のデータ、すなわち850℃/8hでの析出熱処理の場合を検討すると、この合金系列の中で最もAlの含有量が多い3.5%、3%、3.1%および2.8%の合金54、55、56および57が高水準の降伏点値を達成していることがわかる。また、合金54~57は、Taの含有量が0.5%あるいは1%とより高いが、Tiの含有量はわずか0.1%と低い。Alの含有量が2.6%とさほど高くない合金50も、同様にかなり高い水準の降伏点値を達成している。合金50は、0.5%のTaに加えて、0.3%のやや多いTi含有量を有する。
【0209】
表12は、本発明による分析物例を示したものであり、同じおよび/またはより優れた高温特性を有する改善された加工性に基づき、従来のベンチマーク合金を、適合した組成に置き換えることができる。
【0210】
【表85】
【0211】
グループ0:標準的なVDM alloy 780(表13)
グループ1:加工性および組織安定性が改善されたVDM alloy 780粉末の適合した組成 - 表14(a、b)。
グループ2:VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温用途向けに最適化されたVDM alloy 780HT粉末の組成。これらの合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。このグループでは、800℃~900℃の温度範囲でデルタ相の割合が少ない合金が例示されている(表15)。
グループ3:VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温用途向けに最適化されたVDM alloy 780HT粉末の組成。これらの合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。このグループでは、グループ2に対して、デルタ相を有しない合金が例示されている(表16)。
グループ4および5:VDM alloy 780粉末と比較してより高温用途向けに最適化されたVDM alloy 780HT粉末の組成。これらの合金は、γ’相の体積割合がより高い。グループ2および3に類似して、デルタ相を有する合金と有しない合金とがまとめられている。5つのグループすべてにおいて、イータ相は、存在しないかあるいは熱力学的に安定していない(表17および表18)。
【0212】
【表86】
【0213】
【表87】
【0214】
【表88】
【0215】
【表89】
【0216】
【表90】
【0217】
【表91】
【0218】
【表92】
【0219】
【表93】
【0220】
【表94】
【0221】
【表95】
【0222】
【表96】
【0223】
本発明による粉末合金は、以下の要件および基準を満たす場合、VDM alloy 780粉末と比較して、改善された加工性および組織安定性を示す:
Al 1.8~2.4重量%
Co 15~23重量%
【0224】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。800°~900℃の温度範囲に少量のデルタ相が存在する。この合金は、高温での加工性と荷重変動強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.3~2.8重量%
Co 19~25重量%
Nb 4.5~5.5重量%
Mo 3.0~5.0重量%
【0225】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。800°~900℃の温度範囲に少量のデルタ相が存在する。この合金も同様に、高温での加工性と荷重変動強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.4~3.0重量%
Co 18~22重量%
Nb 3.5~5.0重量%
【0226】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。800°~900℃の温度範囲に少量のデルタ相が存在する。この合金も、高温での加工性と荷重変動強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.4~3.0重量%
Co 18~22重量%
Nb 4.5~6.0重量%
【0227】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高いが、35%に制限されている。800°~900℃の温度範囲に少量のデルタ相が存在する。この合金は、高温での加工性と荷重変動強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.4~3.3重量%
Co 18~22重量%
Nb 3.8~6.0重量%
Ta 0.5~2.5重量%
【0228】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高い。この合金は、高温での加工性と高い機械的強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.4~4重量%
Co 12~35重量%
Nb 3.8~6.0重量%
Ti 0~1重量%
【0229】
本発明による粉末合金は、最適化された組成のVDM alloy 780 HT粉末により、VDM alloy 780標準粉末と比較してより高温での用途に適している。この合金は、γ’体積割合がより高い。この合金は、高温での加工性と高い機械的強度との組み合わせが特に優れている。以下の要件および基準を満たす必要がある。
Al 2.4~3.2重量%
Co 12~35重量%
Nb 3.8~6.0重量%
Ti 0.5~3.0重量%
【0230】
記載された本発明による粉末合金alloy 780 HTは、従来の標準的な参照分析物であるalloy 780と同等または著しくより高い強度水準を達成しており、これは、各試験温度に対する降伏点Rp0.2の値により確認される。特に、ガンマ’ソルバス温度がより高い合金(例えば、Alの含有量が2.2%よりも著しく高い合金)では、降伏点Rp0.2の大幅な低下が、より高い試験温度へとシフトする。これは特に、部材の使用温度を可能な限り高くするために重要である。
【0231】
規定の化学組成の中で、いくつかのパラメータが、試験温度に依存する機械的強度の水準に影響を与える:
- 析出熱処理のアニール温度およびアニール時間、さらには溶体化熱処理後の冷却速度もすでに、ガンマ’相の割合と粒度との双方に影響を与える。これらのパラメータが組み合わさっても、試験温度に依存する強度の水準に影響を与える。
- 組織の結晶粒度は、試験温度に依存する強度の水準に影響する。組織、特に結晶粒度は、特に溶体化熱処理のアニール温度およびアニール時間に影響を受ける。