(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒の製造装置
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20230320BHJP
B05C 3/109 20060101ALI20230320BHJP
B05C 7/04 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B01J37/02 101B
B01J37/02 ZAB
B01J37/02 301D
B05C3/109
B05C7/04
(21)【出願番号】P 2022001523
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2023-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】榊原 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 宜央
(72)【発明者】
【氏名】須藤 勝義
(72)【発明者】
【氏名】市川 和樹
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103131(JP,A)
【文献】特開2000-197840(JP,A)
【文献】特開2018-153720(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020777(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/007370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B05C 3/109
B05C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、前記筒状体内の中間部に設置され該筒状体の軸方向に各々が伸びた複数の孔を有しているハニカム構造体とを有するハニカム基材に、触媒層を形成するための排ガス浄化用触媒の製造装置であって、
前記ハニカム基材を直立させた状態で保持するホルダと、
前記ハニカム構造体の上方に位置する前記筒状体の開口部に、前記ハニカム構造体及び前記筒状体から離間するように挿入される筒状部を含み、前記筒状部の内部を通って前記ハニカム構造体の上面へ塗工液を供給可能とする第1流路を有し、前記筒状部と前記筒状体との間の隙間から前記ハニカム構造体の前記上面へガスを供給可能とする第2流路を形成する案内部材と、
前記案内部材へ前記塗工液を供給する供給装置と、
前記筒状体の下端から前記ハニカム基材内のガスを吸引する吸引装置と、
前記筒状部が前記筒状体の前記開口部に挿入されているときに、前記供給装置が前記案内部材へ前記塗工液を供給し、前記吸引装置が前記筒状体の前記下端から前記ハニカム基材内のガスを吸引するように、前記供給装置及び前記吸引装置の動作を制御するコントローラと
を備えた製造装置。
【請求項2】
前記第2流路に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給装置を更に備えた請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記案内部材は、前記筒状部の上部から外側へ突き出た鍔部を更に含み、前記筒状部が前記筒状体の前記開口部に挿入されているときに、該鍔部の下面が前記筒状体の上方の端面と隙間を隔てて向き合う請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記案内部材は、前記筒状部の上方に設けられ、上方へ向けて拡径した、前記塗工液を前記筒状部内に案内するための拡径部を更に含んだ請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項5】
前記案内部材を昇降させる昇降装置を更に備え、前記コントローラは、前記昇降装置が前記案内部材の昇降を停止している状態で、前記供給装置が前記案内部材へ前記塗工液を供給し、前記吸引装置が前記筒状体の前記下端から前記ハニカム基材内の前記ガスを吸引するように、前記昇降装置、前記供給装置及び前記吸引装置の動作を制御する請求項1乃至4の何れか1項に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化用触媒の製造では、例えば、ハニカム基材の隔壁上へ触媒層を形成するために、触媒金属等を含んだスラリーをハニカム基材の隔壁上へ塗工することがある。特許文献1には、そのような塗工を行う製造装置の一例が記載されている。この製造装置では、先ず、直立させたハニカム基材の上端へ、ハニカム基材の上方の端面とともに液溜めを形成する案内部材を設置する。次に、液溜めへスラリーを供給し、ハニカム基材の下端側からハニカム基材内のガスを吸引する。このようにして、ハニカム基材の貫通孔内へスラリーを侵入させて、ハニカム基材の隔壁にスラリーを塗工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハニカム基材として、筒状体とその中間部に設置されたハニカム構造体とを有するものがある。本発明者らは、そのようなハニカム基材の隔壁上へのスラリーの塗工を上記の方法によって行った場合、ハニカム構造体の隔壁上だけでなく、筒状体の内面のうち、筒状体の上方の開口とハニカム構造体との間の領域の一部の上にも、塗工層が形成されることを見出している。そこで、本発明は、筒状体の開口近傍への塗工層の形成を生じ難くすることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、筒状体と、前記筒状体内の中間部に設置され該筒状体の軸方向に各々が伸びた複数の孔を有しているハニカム構造体とを有するハニカム基材に、触媒層を形成するための排ガス浄化用触媒の製造装置であって、前記ハニカム基材を直立させた状態で保持するホルダと、前記ハニカム構造体の上方に位置する前記筒状体の開口部に、前記ハニカム構造体及び前記筒状体から離間するように挿入される筒状部を含み、前記筒状部の内部を通って前記ハニカム構造体の上面へ塗工液を供給可能とする第1流路を有し、前記筒状部と前記筒状体との間の隙間から前記ハニカム構造体の前記上面へガスを供給可能とする第2流路を形成する案内部材と、前記案内部材へ前記塗工液を供給する供給装置と、前記筒状体の下端から前記ハニカム基材内のガスを吸引する吸引装置と、前記筒状部が前記筒状体の前記開口部に挿入されているときに、前記供給装置が前記案内部材へ前記塗工液を供給し、前記吸引装置が前記筒状体の前記下端から前記ハニカム基材内のガスを吸引するように、前記供給装置及び前記吸引装置の動作を制御するコントローラとを備えた製造装置が提供される。
【0006】
本発明の他の側面によると、前記第2流路に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給装置を更に備えた上記側面に係る製造装置が提供される。
【0007】
本発明の更に他の側面によると、前記案内部材は、前記筒状部の上部から外側へ突き出た鍔部を更に含み、前記筒状部が前記筒状体の前記開口部に挿入されているときに、該鍔部の下面が前記筒状体の上方の端面と隙間を隔てて向き合う上記側面の何れかに係る製造装置が提供される。
【0008】
本発明の更に他の側面によると、前記案内部材は、前記筒状部の上方に設けられ、上方へ向けて拡径した、前記塗工液を前記第筒状部内に案内するための拡径部を更に含んだ上記側面の何れかに係る製造装置が提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、前記案内部材を昇降させる昇降装置を更に備え、前記コントローラは、前記昇降装置が前記案内部材の昇降を停止している状態で、前記供給装置が前記案内部材へ前記塗工液を供給し、前記吸引装置が前記筒状体の前記下端から前記ハニカム基材内の前記ガスを吸引するように、前記昇降装置、前記供給装置及び前記吸引装置の動作を制御する上記側面の何れかに係る製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、筒状体の開口近傍への塗工層の形成を生じ難くすることが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る製造装置のブロック図。
【
図2】
図2は、
図1の製造装置が含んでいる塗工装置の断面図。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る製造方法を示すフローチャート。
【
図7】
図7は、塗工液供給工程を開始した様子を示す断面図。
【
図10】
図10は、比較例に係る製造方法における吸引工程を示す断面図。
【
図11】
図11は、比較例に係る製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る製造方法における吸引工程を終了する直前の状態を拡大して示す断面図。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態に係る製造装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0014】
<1>第1実施形態
<1.1>製造装置
図1は、本発明の第1実施形態に係る製造装置のブロック図である。
図2は、
図1の製造装置が含んでいる塗工装置の断面図である。
図3は、
図2の塗工装置の一部を拡大して示す断面図である。
【0015】
図1に示す製造装置1Aは、排ガス浄化用触媒を製造するための装置である。製造装置1Aは、塗工装置10Aと、第1質量計14Aと、第2質量計14Bと、コントローラ17と、入力装置18と、出力装置19とを含んでいる。
【0016】
塗工装置10Aは、
図2及び
図3に示すハニカム基材20のハニカム構造体22を、塗工液で塗工するものである。
【0017】
ここで、ハニカム基材20は、筒状体21とハニカム構造体22とを含んでいる。
筒状体21は、円筒形状を有している。筒状体21は、楕円筒形状及び長円筒形状などの他の筒形状を有していてもよい。筒状体21は、例えば、金属製である。
【0018】
筒状体21の最大径は、例えば、33乃至89.5mmの範囲内にある。筒状体21の軸方向の寸法、即ち、筒状体21の長さは、例えば、50乃至160mmの範囲内にある。
【0019】
ハニカム構造体22は、筒状体21内の中間部に設置されている。即ち、ハニカム構造体22は、筒状体21の一方の開口部から離間するとともに、筒状体21の他方の開口部からも離間している。
【0020】
ハニカム構造体22は、筒状体21内の中間部とほぼ等しい外形を有している。ハニカム構造体22は、筒状体21の軸方向に各々が伸びた複数の孔を有している。これら孔は、ハニカム構造体22を間に挟んで隣り合った空間の間での通気を可能とする。
【0021】
ハニカム構造体22は、例えば、金属製である。この場合、ハニカム構造体22は、例えば、平板と波板との積層体を、波の配列方向へ多重に巻いた構造を有し得る。このようなハニカム構造体22は、平板と波板との間の隙間を貫通孔として有し得る。
【0022】
筒状体21の軸方向におけるハニカム構造体22の寸法は、例えば、40乃至150mmの範囲内にある。ハニカム構造体22から筒状体21の各開口までの距離は、例えば、5乃至10mmの範囲内にある。
【0023】
塗工装置10Aは、
図2に示すように、ホルダ11と、案内部材12と、供給装置15と、吸引装置13Aとを含んでいる。塗工装置10Aは、
図1に示す搬送装置16A及び昇降装置16Bを更に含んでいる。
【0024】
ホルダ11は、ハニカム基材20を着脱可能に保持する。ホルダ11は、
図2に示すように、後述する接続部材131と供給装置15との間で、ハニカム基材20を直立させた状態で保持する。即ち、ホルダ11は、接続部材131と供給装置15との間で、ハニカム基材20を、その筒状体21の軸方向が重力方向と一致するように保持する。
【0025】
ホルダ11は、例えば、ハニカム基材20を把持するメカニカルチャックである。ホルダ11は、他のチャック装置、例えば、負圧を利用してハニカム基材20を保持する真空チャック、又は、磁気を利用してハニカム基材20を保持するマグネットチャックであってもよい。
【0026】
ホルダ11は、後述する接続部材131と供給装置15との間で上下動可能である。また、ホルダ11は、塗工装置10Aと第1質量計14Aとの間で、及び、塗工装置10Aと第2質量計14Bとの間で移動可能である。なお、ここでは、ホルダ11は、搬送装置16Aの一部である。
【0027】
搬送装置16Aは、塗工装置10Aと第1質量計14Aとの間で、及び、塗工装置10Aと第2質量計14Bとの間でホルダ11を移動させる。搬送装置16Aは、ホルダ11とともに、第1質量計14Aから塗工装置10Aへのハニカム基材20の搬送と、塗工装置10Aから第2質量計14Bへのハニカム基材20の搬送とを可能とする。ここでは、搬送装置16Aは、ホルダ11を含んでいる。搬送装置16Aは、モータを更に含むことができる。一例によると、搬送装置16Aは、ホルダ11と、これを先端で上下動可能に支持したロボットアームとを含んでいる。
【0028】
案内部材12は、
図2及び
図3に示すように、第1部材121と、第2部材122と、第3部材123と、シール材124A及び124Bとを含んでいる。案内部材12は、図示しない固定部材を更に含んでいる。
【0029】
第1部材121は、一端側で拡径した筒形状を有している拡径部と、拡径部の他端から外側へ突き出た第1鍔状部とを含んでいる。第1部材121は、例えば、金属製である。
【0030】
第2部材122は、筒状部と、その一端から外側へ突き出た第2鍔状部とを含んでいる。筒状部の外径は、筒状体21の内径と比較してより小さい。第2部材122は、例えば、金属製である。
【0031】
第3部材123は、中央で開口した板である。第3部材123の内径は、筒状体21の外径と比較してより大きい。第3部材123は、例えば、金属製である。第3部材123の厚さを変更することにより、後述する距離D1及びD3を調節することができる。
【0032】
第1部材121と第2部材122とは、第1鍔状部と第2鍔状部とが接するように突き合わされている。第3部材123は、第2鍔状部を間に挟んで第1鍔状部と向き合っている。固定部材は、第1部材121と第2部材122と第3部材123とを互いに対して固定している。第1鍔状部と第2鍔状部とは、鍔部を構成している。
【0033】
シール材124A及び124Bは、ここでは、Oリングである。第2鍔状部の第1鍔状部と接している面及び第3部材123の第2鍔状部と接している面には、溝が環状に設けられている。シール材124A及び124Bは、それぞれ、第2鍔状部に設けられた溝及び第3部材123に設けられた溝内に設置されている。
【0034】
上記の通り、案内部材12は、第2部材122の一部である筒状部と、第1部材121の一部である拡径部と、第1鍔状部と第2鍔状部とによって構成された鍔部とを含んでいる。案内部材12は、拡径部が筒状部の上方に位置するように設置されている。鍔部は、筒状部の上部から外側へ突き出ている。鍔部の下面は、後述する第2状態において、筒状体21の上方の端面と隙間を隔てて向き合う。拡径部は、筒状部の上方に設けられ、上方へ向けて拡径している。拡径部は、塗工液を筒状部内に案内する。拡径部の上端における内径及び下端における内径は、筒状部の内径と比較してより大きい。拡径部の下端における内径は、筒状部の内径と等しくてもよい。
【0035】
昇降装置16Bは、案内部材12を昇降させる。昇降装置16Bは、例えば、モータを含んだ電動式の昇降装置である。昇降装置16Bは、ポンプを含んだ流体圧式の昇降装置であってもよい。
【0036】
昇降装置16Bは、搬送装置16Aが、ハニカム基材20を第1質量計14Aから塗工装置10Aへ搬送する際に、及び、ハニカム基材20を塗工装置10Aから第2質量計14Bへ搬送する際に、ハニカム基材20が案内部材12と接触しないように、案内部材12を十分な高さまで上昇させ得る。昇降装置16Bは、搬送装置16Aがハニカム基材20を接続部材131上に位置させている場合に、案内部材12を、ハニカム構造体22及び筒状体21から離間させたまま、その筒状部が筒状体21の上方の開口部に挿入されるように下降させ得る。以下、案内部材12の位置が最も高い状態を第1状態と呼び、案内部材12の位置が最も低い状態を第2状態と呼ぶ。
【0037】
昇降装置16Bは、第2状態において第3部材123の下面が当接する位置決め部材を更に含んでいる。そのような位置決め部材を設けると、第2状態における案内部材12の上下方向における位置精度を高めることができる。また、そのような位置決め部材を設けると、第3部材123による距離D1及びD3の調節が可能になる。
【0038】
第2状態では、
図2及び
図3に示すように、案内部材12の筒状部は、ハニカム構造体22の上方に位置する筒状体21の開口部に、ハニカム構造体22及び筒状体21から離間するように挿入されている。そして、案内部材12は、第1流路を有しており、第2状態では第2流路を形成している。
【0039】
第1流路は、筒状部の内部を通ってハニカム構造体22の上面へ塗工液を供給可能とする。ここでは、第1流路は、第1部材121の内部空間と第2部材122の内部空間とからなる。
【0040】
第2流路は、筒状部と筒状体21との間の隙間Fからハニカム構造体22の上面へガスを供給可能とする。ここでは、第2流路は、案内部材12の筒状部と筒状体21の内面とによって挟まれた空間と、案内部材12の鍔部と筒状体21の上側端面とによって挟まれた空間と、第3部材123と筒状体21の外面とによって挟まれた空間とからなる。
【0041】
第2状態において、案内部材12の筒状部からハニカム構造体22までの距離D1は、1乃至3mmの範囲内にあることが好ましく、1乃至2mmの範囲内にあることがより好ましい。距離D1を小さくすると、筒状体21の上側開口近傍への塗工層の形成はより生じ難くなる。但し、距離D1を小さくすると、ハニカム構造体22の上側端面の周縁部へ十分な量の塗工液を供給することが難しくなる可能性がある。
【0042】
第2状態において、案内部材12の筒状部から筒状体21の内面までの距離D2は、0.5乃至1.5mmの範囲内にあることが好ましく、1乃至1.5mmの範囲内にあることがより好ましい。距離D2を小さくすると、筒状体21の上側開口近傍への塗工層の形成はより生じ難くなる。但し、距離D2を小さくすると、第2状態において、案内部材12に高い位置精度が要求されるようになる。また、距離D2を過剰に小さくすると、後述する気流AF4が弱くなり、筒状体21の上側開口近傍への塗工層の形成を抑制する効果が小さくなる可能性がある。
【0043】
案内部材12の鍔部から筒状体21の上側端面までの距離D3、及び、第3部材123から筒状体21の外面までの距離D4の各々は任意である。一例によれば、距離D3及びD4の各々は、距離D2と等しいか又は距離D2と比較してより大きい。
【0044】
供給装置15は、案内部材12へ塗工液を供給する。供給装置15は、図示しないタンクと、図示しない定量ポンプと、図示しない送液管と、ノズルヘッド151とを含んでいる。
【0045】
タンクは、塗工液を収容している。
塗工液は、ハニカム構造体22の隔壁上に形成する触媒層又はその一部の原料であって、溶液又はスラリーである。塗工液は、例えば、触媒金属を含んだ溶液、耐熱性担体及び助触媒の少なくとも一方を含んだスラリー、又は、触媒金属と耐熱性担体及び助触媒の少なくとも一方とを含んだスラリーである。触媒金属と耐熱性担体及び助触媒の少なくとも一方とを含んだスラリーにおいて、触媒金属は、分散媒中に溶解していてもよく、分散媒中に分散していてもよく、耐熱性担体及び助触媒の少なくとも一方に担持されていてもよい。
【0046】
触媒金属は、例えば、白金、パラジウム及びロジウム化合物などの白金族金属;鉄及び銅などのその他の遷移金属;リチウム及びカリウムなどのアルカリ金属;バリウムなどのアルカリ土類金属;又はそれらの2以上である。
【0047】
耐熱性担体は、例えば、アルミナなどの耐火無機酸化物である。助触媒は、例えば、セリア及びセリア-ジルコニア複合酸化物などの酸素貯蔵材料;アルカリ金属を含んだ窒素酸化物(NOX)吸蔵材料;ゼオライトなどの炭化水素吸着剤;又はそれらの2以上である。
【0048】
分散媒は、例えば、水である。分散媒は、有機溶剤であってもよく、有機溶剤と水との混合物であってもよい。
【0049】
塗工液は、添加剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロースなどの増粘剤、分散安定剤及びバインダを更に含むことができる。塗工液がヒドロキシエチルセルロースなどの増粘剤を含む場合、その濃度は、0.3乃至1質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0050】
塗工液は、粘度E1が1500乃至3500cpsの範囲内にあり且つ粘度E100が80乃至250cpsの範囲内にあることが好ましい。ここで、粘度E1及び粘度E100は、25℃の温度環境下において、市販のせん断粘度計を用いて測定される粘度である。
【0051】
塗工液の粘度を高くすると、毛細管現象によるハニカム構造体22の吸液が抑制され、塗工液をハニカム構造体22の上側端面の縁まで広げ易くなる。但し、塗工液の粘度を高くすると、吸引装置13Aの吸引力をより強くする必要を生じ得る。
【0052】
定量ポンプは、タンクと送液管の一端とに接続されている。定量ポンプは、タンク内の塗工液から一定量を量り取り、これを送液管の一端へ排出する。定量ポンプは、例えば、ピストンポンプ及びプランジャポンプなどの往復ポンプである。
【0053】
送液管の他端には、ノズルヘッド151が接続されている。ノズルヘッド151は、定量ポンプを駆動することにより、一定量の塗工液を案内部材12内へ吐出する。
【0054】
吸引装置13Aは、図示しない真空ポンプと接続部材131とを含んでいる。接続部材131は、例えば、金属製である。接続部材131は、中空構造を有しており、真空ポンプに接続された開口と、上部に設けられた開口とを有している。接続部材131の上部は、その開口に沿った縁が凹んでおり、この凹みは、開口の周囲に段差を形成している。搬送装置16Aがハニカム基材20を接続部材131の上部へ設置した時に、筒状体21の下側端面は上記の段差へ当接する。吸引装置13Aは、この状態で真空ポンプを駆動することにより、ハニカム基材20内のガス、例えば空気を吸引する。
【0055】
第1質量計14Aは、塗工装置10Aによる塗工前のハニカム基材20の質量MS1を測定する。
【0056】
第2質量計14Bは、塗工装置10Aによる塗工後のハニカム基材20の合計質量MS2を測定する。
【0057】
コントローラ17は、処理部17Aと記憶部17Bとを含んでいる。
処理部17Aは、中央処理装置(CPU)を含んでいる。記憶部17Bは、処理部17Aに接続されている。記憶部17Bは、処理部17Aが読み込むプログラムや、処理部17Aから供給されたデータを記憶する不揮発性メモリを含んでいる。
【0058】
コントローラ17は、吸引装置13A、第1質量計14A、第2質量計14B、供給装置15、搬送装置16A、昇降装置16B、入力装置18、及び出力装置19に接続されている。コントローラ17は、入力装置18を介してオペレータが入力する指令及び情報、並びに、第1質量計14A及び第2質量計14Bが出力する信号等に基づいて、吸引装置13A、供給装置15、搬送装置16A、昇降装置16B、及び出力装置19の動作を制御する。
【0059】
入力装置18は、オペレータがコントローラ17へ指令及び情報を入力するためのヒューマンインターフェースデバイスである。入力装置は、例えば、釦、キーボード、マウス、タッチパネル、及び音声入力装置の1以上である。
【0060】
出力装置19は、オペレータが認識可能な警告情報を出力する。出力装置19は、例えば、ディスプレイ、警告灯、音声案内装置及びブザーの1以上である。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。警告灯は、例えば、発光ダイオードを含む。
【0061】
<1.2>製造方法
上記の製造装置1Aを使用すると、例えば、以下の方法により排ガス浄化用触媒を製造することができる。
【0062】
図4は、本発明の第1実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
図5は、第1質量測定工程を示す断面図である。
図6は、搬送工程を示す断面図である。
図7は、塗工液供給工程を開始した様子を示す断面図である。
図8は、吸引工程を示す断面図である。
図9は、第2質量測定工程を示す断面図である。
【0063】
ここで説明する方法では、先ず、オペレータが、入力装置18を介して、製造開始の指令をコントローラ17へ入力する。この際、オペレータは、入力装置18を介して、製造すべき排ガス浄化用触媒の数などの情報を、コントローラ17へ更に入力することもできる。
【0064】
次に、オペレータは、
図5に示すように、ハニカム基材20を第1質量計14Aの計量皿上に載置する。第1質量計14Aは、ハニカム基材20の質量M
S1を測定する(ステップS1)。第1質量計14Aは、この測定結果に対応した信号を、コントローラ17へ出力する。
【0065】
コントローラ17は、第1質量計14Aが出力する信号から、ハニカム基材20が第1質量計14Aの計量皿上に載置されたと判断する。そして、コントローラ17は、第1質量計14Aが測定したハニカム基材20の質量MS1を記憶する。
【0066】
次に、コントローラ17は、ホルダ11が塗工装置10A又は第2質量計14Bから第1質量計14Aへ移動し、そこで、ホルダ11がハニカム基材20を保持するように搬送装置16Aの動作を制御する。続いて、コントローラ17は、ホルダ11が第1質量計14Aから塗工装置10Aへ移動し、
図6に示すように、ホルダ11によって保持されたハニカム基材20の下側端面が接続部材131の上部に設けられた開口周囲の段差と当接するように、搬送装置16Aの動作を制御する。これにより、ハニカム基材20を、接続部材131上の塗工位置へ搬送する(ステップS2)。
【0067】
次に、コントローラ17は、案内部材12が下方へ移動するように、昇降装置16Bの動作を制御する(ステップS3)。具体的には、コントローラ17は、案内部材12が第1位置から第2位置へ移動するように、昇降装置16Bの動作を制御する。
【0068】
次に、コントローラ17は、予め定められている量の塗工液30をノズルヘッド151が吐出するように、供給装置15の動作を制御する。このとき、筒状体21の上方の開口部には、案内部材12の筒状部が挿入されている。それ故、ノズルヘッド151が吐出した塗工液30は、
図7に示すように、案内部材12とハニカム構造体22の上面とが形成している液溜めに溜まり、その一部は、案内部材12の筒状部とハニカム構造体22の上面との間の隙間を通ってハニカム構造体22の上面周縁部へと広がる。このようにして、供給装置15は、ハニカム基材20へ塗工液30を供給する(ステップS4)。
【0069】
次に、コントローラ17は、ハニカム基材20内のガスをその下側端部から吸引するように、吸引装置13Aの動作を制御する(ステップS5)。これにより、塗工液30は下方へ移動し、
図8に示すように、ハニカム構造体22の隔壁上に、塗工液30からなる塗工層30Cが隔壁上に形成される。ここでは、ハニカム構造体22の全体に塗工液を塗工しているが、ハニカム構造体22の上側部分にのみ塗工液を塗工してもよい。
【0070】
次に、コントローラ17は、案内部材12が上方へ移動するように昇降装置16Bの動作を制御する(ステップS6)。具体的には、コントローラ17は、案内部材12が第2位置から第1位置へ移動するように、昇降装置16Bの動作を制御する。
【0071】
続いて、コントローラ17は、ホルダ11が塗工装置10Aから第2質量計14Bへ移動するように、搬送装置16Aの動作を制御する。これにより、ハニカム基材20を塗工位置から搬送する(ステップS7)。
【0072】
図9に示すように、塗工後のハニカム基材20が計量皿上に載置された第2質量計14Bは、ハニカム基材20と塗工層30Cとの合計質量M
S2を測定する(ステップS8)。第2質量計14Bは、この測定結果に対応した信号をコントローラ17へ出力する。コントローラ17は、第2質量計14Bが測定した合計質量M
S2を記憶する。
【0073】
次に、コントローラ17は、合計質量MS2と質量MS1との差MS2-MS1を算出する。コントローラは、差MS2-MS1を、予め記憶している下限値MSL及び上限値MSUと対比する(ステップS9)。
【0074】
コントローラ17は、差MS2-MS1が下記不等式に示す関係を満たしている場合に、塗工量は適切であったと判断する。
MSL<MS2-MS1<MSU
コントローラ17は、差MS2-MS1が上記不等式に示す関係を満たしていない場合に、塗工量は不適切であった可能性があると判断する。この場合、コントローラ17は、オペレータが認識可能な警告情報を出力するように、出力装置19の動作を制御する(ステップS10)。以上のようにして、製造装置1Aによる処理を終了する。
【0075】
その後、このようにして塗工を行ったハニカム基材20に対し、必要に応じて、1以上の塗工を更に行う。次いで、これを焼成することにより、排ガス浄化用触媒を得る。
【0076】
<1.3>効果
上記のハニカム基材20では、ハニカム構造体22は、筒状体21内であって中間部の位置に設置されており、筒状体21の何れの端部内にも設置されていない。このようなハニカム基材20への塗工液の塗工は、例えば、筒状体21の一方の端部を塗工液に浸漬させ、他方の端部からハニカム基材20内のガスを吸引することにより行うことができる。しかしながら、この方法では、筒状体21のうち塗工液に浸漬させた部分と、筒状体21の内面のうち塗工液に浸漬させた部分からハニカム構造体22までの領域とに、塗工液が付着する。
【0077】
塗工層のうち筒状体21の外面に形成された部分は、排ガスの浄化に寄与しない。塗工層のうち筒状体21の端部内面に形成された部分も、塗工層のうちハニカム構造体22の隔壁上に形成された部分ほど効率的に排ガスを浄化し得ない。即ち、塗工層のうち筒状体21の端部に形成された部分が占める割合が大きくなると、排ガス浄化性能は殆ど向上せず、高コストになる。
【0078】
また、筒状体21が金属製である場合、排ガス浄化用触媒と他の金属部品との溶接の妨げになるのを防止するべく、筒状体21の端部から塗工層の少なくとも一部を除去する必要がある。このような追加の工程も、排ガス浄化用触媒の低コスト化を妨げる。
【0079】
更に、塗工層のうち筒状体21の端部に形成された部分が占める割合が大きくなると、塗工層のうちハニカム構造体22の隔壁上に形成された部分の量を正確に把握することが困難になる。即ち、製造した排ガス浄化用触媒が設計通りの性能を発揮するものであるかを、塗工量から推定することが困難になる。
【0080】
ハニカム基材20への塗工液の塗工は、案内部材12の筒状部の径を筒状体21の径と等しくして、筒状部の下端面を筒状体21の上端面に当接させること以外は、
図1乃至
図9を参照しながら説明したのと同様の製造装置及び方法により行うこともできる。この場合、筒状体21の外面への塗工液30の付着は防止できる。
【0081】
しかしながら、本発明者らは、この場合、筒状体21の上側端部の内面の大部分に塗工層が形成され得ることを見出している。本発明者らは、その理由を以下のように考えている。
【0082】
図10は、比較例に係る製造方法における吸引工程を示す断面図である。
図11は、比較例に係る製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図である。
【0083】
上記の通り、ハニカム構造体22の上面へ供給された塗工液30は、ハニカム構造体22の下面側からハニカム構造体22内のガスを吸引するのに伴い、ハニカム構造体22内へ引き入れられる。ハニカム構造体22の上面のうち、筒状体21の近傍では、筒状体21から十分に離れた位置と比較して、塗工液30のハニカム構造体22内への移動速度が遅い。それ故、
図10に示すように、ハニカム構造体22の上面中央部の位置で塗工液30が全てハニカム構造体22内へ移動した時点で、ハニカム構造体22の上面周縁部上には、塗工液30が残留し得る。
【0084】
この場合、ハニカム構造体22の上面中央部から下方へ向けて高い流速の気流AF2を生じ、筒状体21の上側端部内では、筒状体21の上方開口からハニカム構造体22の上面中央部へ向けて流れる気流AF1が生じるとともに、ハニカム構造体22の上面周縁部近傍に渦状の乱流AF3が生じる。この乱流AF3により、ハニカム構造体22の上面周縁部上に残留していた塗工液30が筒状体21の内面に沿って巻き上げられ、
図11に示すように、筒状体21の上側端部内面の大部分に塗工層30Dが形成され得る。
【0085】
図1乃至
図9を参照しながら説明した製造装置1A及び製造方法によると、以下に説明するように、塗工層30Dが形成される領域を小さくすることができる。
【0086】
図12は、第1実施形態に係る製造方法における吸引工程を終了する直前の状態を拡大して示す断面図である。
図13は、第1実施形態に係る製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図である。
【0087】
図1乃至
図9を参照しながら説明した製造装置1A及び製造方法では、案内部材12の筒状部を筒状体21の上側開口部へ挿入した状態で、塗工液30の供給及び吸引を行う。この吸引を行うと、上記と同様に、ハニカム構造体22の上面へ供給された塗工液30は、ハニカム構造体22内へ引き入れられる。
【0088】
ハニカム構造体22の上面のうち、筒状体21の近傍では、筒状体21から十分に離れた位置と比較して、塗工液30のハニカム構造体22内への移動速度が遅い。それ故、上記と同様に、ハニカム構造体22の上面中央部の位置で塗工液30が全てハニカム構造体22内へ移動した時点で、ハニカム構造体22の上面周縁部上には、塗工液30が残留し得る。従って、
図12に示すように、ハニカム構造体22の上面中央部から下方へ向けて高い流速の気流AF2を生じる。それ故、第1流路では、高速な下向きの気流AF1を生じる。
【0089】
一方、第2流路は第1流路と比較して通気抵抗が大きいため、第2流路内と第1流路内との間で圧力差を生じる。これにより、筒状体21の外部からハニカム構造体22の上面へ向けて流れる低速の気流AF4を生じる。それ故、ハニカム構造体22の上面周縁部近傍に渦状の乱流AF3が生じ難く、この乱流AF3による筒状体21の内面に沿った塗工液30の巻き上げも生じ難い。また、低速な上記の気流AF4は、筒状体21の上部内面に付着している塗工液30を押し下げ得る。従って、
図13に示すように、筒状体21の上部内面には、塗工層30Dは殆ど形成されない。
【0090】
このように、
図1乃至
図9を参照しながら説明した製造装置1A及び製造方法によると、筒状体21の開口近傍への塗工層30Dの形成を生じ難くすることができる。従って、排ガス浄化用触媒を低コストで製造することが可能となる。更に、質量測定により、製造装置1Aにおける異常の早期発見が可能となるとともに、質量測定による不合格品の選別の精度が向上し、それ故、品質管理が容易になる。
【0091】
<2>第2実施形態
図14は、本発明の第2実施形態に係る製造装置のブロック図である。
【0092】
図14に示す製造装置1Bは、以下の点を除き、
図1乃至
図9を参照しながら説明した製造装置1Aと同様である。
【0093】
即ち、製造装置1Bは、塗工装置10Aの代わりに塗工装置10Bを含んでいる。塗工装置10Bは、圧縮ガス供給装置13Bを更に含んでいること以外は、塗工装置10Aと同様である。
【0094】
圧縮ガス供給装置13Bは、第2状態において、第2流路へ圧縮ガス、例えば圧縮空気を供給する。これにより、圧縮ガス供給装置13Bは、第2状態において、ハニカム構造体22の上面へ圧縮ガスを供給する。圧縮ガス供給装置13Bは、圧縮機を含んでいる。
【0095】
コントローラ17は、例えば、吸引装置13Aが吸引を開始するのと同時に、又は、吸引装置13Aが吸引を開始した後であり且つ吸引装置13Aが吸引を停止する前に、圧縮ガス供給装置13Bが圧縮ガスの供給動作を開始するように、その動作を制御する。また、コントローラ17は、塗工液30の全てがハニカム構造体22の上面からハニカム構造体22内へ移動した後に、圧縮ガス供給装置13Bが圧縮ガスの供給動作を停止するように、その動作を制御する。
【0096】
製造装置1B及びこれを用いた製造方法は、以上の点を除き、
図1乃至
図9を参照しながら説明した製造装置1A及びこれを用いた製造方法と同様である。
【0097】
圧縮ガス供給装置13Bによる圧縮ガスの供給を行った場合、その動作条件を変更することにより、例えば、
図12を参照しながら説明した気流AF4の流速や、気流AF4を発生させるタイミングを調節することができる。それ故、第1実施形態において説明した効果が得られるのに加え、筒状体21の開口近傍への塗工層30Dの形成を更に生じ難くすることができる。
【0098】
<3>変形例
上記の製造装置及び製造方法には、様々な変形が可能である。
例えば、第1質量計14A及び第2質量計14Bの一方は、省略してもよい。例えば、第2質量計14Bを省略し、第1質量計14Aを利用して、塗工前後でハニカム基材20の質量を測定してもよい。
【0099】
コントローラ17による塗工量の適否に関する判断では、閾値として上限値及び下限値を設定しているが、閾値として上限値及び下限値の一方のみを設定してもよい。例えば、コントローラ17による塗工量の適否に関する判断では、差MS2-MS1を上限値MSUと対比することなしに、下限値MSLと対比してもよい。
【0100】
コントローラ17による塗工量の適否に関する判断は、行わなくてもよい。この場合、第1質量計14A、第2質量計14B及び出力装置19は、省略することができる。
【0101】
第1質量計14Aの計量皿上へのハニカム基材20の載置は、手動で行う代わりに、自動で行ってもよい。
【0102】
製造装置1A及び1Bは、それが自動で行う動作の1以上を、手動で行うように変更してもよい。例えば、供給装置15、搬送装置16A、及び昇降装置16Bの1以上が行う動作を、手動で行うように変更してもよい。例えば、搬送装置16Aを省略し、ホルダ11を塗工位置に上下動可能に設置して、ホルダ11へのハニカム基材20の着脱を手動で行ってもよい。
【0103】
製造装置1A及び1Bは、コントローラ17による制御の一部又は全てを、手動で行うように変更してもよい。
【実施例】
【0104】
以下に、本発明の例を記載する。
(実施例)
図1乃至
図3を参照しながら説明した製造装置1Aを使用し、
図4乃至
図9を参照しながら説明した方法により、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0105】
ここで使用したハニカム基材20において、筒状体21の形状は内径が40mmの円筒形状であり、筒状体21の各端面からハニカム構造体22までの距離は10mmであった。また、ここでは、距離D1は1mmとし、距離D2は1.5mmとした。距離D3及びD4は、何れも1.5mm以上とした。
【0106】
このようにして製造した排ガス浄化用触媒を分解して、筒状体21の内面への塗工層の形成状況を調べた。具体的には、塗工時に上方を向いていた筒状体21の端面から塗工層までの距離を、筒状体21の内周上の各位置で測定した。また、筒状体21の内面のうち、塗工時に上方を向いていた筒状体21の端面からの距離が5mm以内の領域について、この領域の面積に占める塗工層によって被覆された部分の面積の割合、即ち、被覆率を調べた。
【0107】
その結果、塗工時に上方を向いていた筒状体21の端面から塗工層までの距離は、5乃至6mmの範囲内にあり、その平均値は約5mmであった。また、被覆率は0%であった。
【0108】
(比較例)
案内部材12の筒状部の径を筒状体21の径と等しくして、筒状部の下端面を筒状体21の上端面に当接させたこと以外は、上記実施例と同様の方法により、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0109】
このようにして製造した排ガス浄化用触媒についても、上記実施例と同様に、筒状体21の内面への塗工層の形成状況を調べた。その結果、塗工時に上方を向いていた筒状体21の端面からの距離が5mm以内の領域は、全体が塗工層で被覆されていた。
【符号の説明】
【0110】
1A…製造装置、1B…製造装置、10A…塗工装置、10B…塗工装置、11…ホルダ、12…案内部材、13A…吸引装置、13B…圧縮ガス供給装置、14A…第1質量計、14B…第2質量計、15…供給装置、16A…搬送装置、16B…昇降装置、17…コントローラ、17A…処理部、17B…記憶部、18…入力装置、19…出力装置、20…ハニカム基材、21…筒状体、22…ハニカム構造体、30…塗工液、30C…塗工層、30D…塗工層、121…第1部材、122…第2部材、123…第3部材、124A…シール材、124B…シール材、131…接続部材、151…ノズルヘッド、AF1…気流、AF2…気流、AF3…乱流、AF4…気流、D1…距離、D2…距離、D3…距離、D4…距離、F…隙間。
【要約】
【課題】筒状体の開口近傍への塗工層の形成を生じ難くする。
【解決手段】排ガス浄化用触媒の製造装置1Aは、ハニカム基材20を直立させた状態で保持するホルダ11と、筒状体21の上方の開口部にハニカム構造体22及び筒状体から離間するように挿入される筒状部を含み、筒状部の内部を通ってハニカム構造体の上面へ塗工液を供給可能とする第1流路を有し、筒状部と筒状体との間の隙間からハニカム構造体の上面へガスを供給可能とする第2流路を形成する案内部材12と、案内部材へ塗工液を供給する供給装置15と、筒状体の下端からガスを吸引する吸引装置13Aと、筒状部が筒状体の開口部に挿入されているときに、供給装置が案内部材へ塗工液を供給し、吸引装置が筒状体の下端からハニカム基材内のガスを吸引するように、供給装置及び吸引装置の動作を制御するコントローラとを備えている。
【選択図】
図2