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特許7247399クリック反応を用いた高密度および高安定性のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法
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  • 特許-クリック反応を用いた高密度および高安定性のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法 図1
  • 特許-クリック反応を用いた高密度および高安定性のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】クリック反応を用いた高密度および高安定性のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20230320BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230320BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20230320BHJP
   C09D 1/00 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C09D201/00
C09D5/24
C09D1/00
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022059296
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2022165397
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0050714
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 3PS-208 of Abstracts of the Annual Spring Meeting of the Polymer Society Korea: ISSN 2384-0307 (Print) and ISSN 2508-4704 (Online)
(73)【特許権者】
【識別番号】305026873
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】リム ボギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ソ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン モク
(72)【発明者】
【氏名】コン ホ ユル
(72)【発明者】
【氏名】ユン スヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム イェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ガ ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク クァン フン
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0021200(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0066631(US,A1)
【文献】特表2008-507404(JP,A)
【文献】特開2019-147383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0088668(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112608486(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112592488(CN,A)
【文献】Darryl Fong,Functionalization of polyfluorene-wrapped carbon nanotubes via copper-mediated azide-alkyne cycloaddition,Polymer Chemistry,UK,2018年,9,2873-2879
【文献】Carbon,2020年,161,599-611
【文献】Chemical Engineering Journal,2023年,452,139500
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 9/00
C09D 201/00
C09D 5/24
C09D 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板層と、
前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、
前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層と
を含み、
前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、
前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されている、CNTフィルムコーティング基板。
【請求項2】
下記化学式1を含むものである、請求項1に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化1】
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物のクリック反応により形成されるものであり、
前記クリック反応は、下記反応式1で表される反応である、請求項2に記載のCNTフィルムコーティング基板。
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル官能基であり、xは、1以上の整数である。
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
【化2】
【請求項4】
前記化学式2は、下記化学式4または化学式5で表される、請求項3に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化3】
前記化学式4および化学式5中、
は、アルキニル官能基であり;
は、エポキシ官能基であり;
~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;
は、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;
z、kおよびtは、1~7の整数であり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項5】
前記化学式4は、下記化学式6で表される、請求項4に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化4】
前記化学式6中、
Arは、3価芳香族ラジカルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;
前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、
は、アルキニル官能基であり;
zおよびkは、1~7の整数であり;
aおよびbは、1以上の整数である。
【請求項6】
前記化学式6は、下記化学式7で表される、請求項5に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化5】
前記化学式7中、
~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;
aおよびbは、1以上の整数である。
【請求項7】
前記化学式5は、下記化学式8で表される、請求項4に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化6】
前記化学式8中、
Arは、3価芳香族ラジカルであり;
およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;
前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、
は、水素またはC1-3アルキルであり;
は、アルキニル官能基であり;
は、エポキシ官能基であり;
z、kおよびtは、1~7の整数であり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項8】
前記化学式8は、下記化学式9で表される、請求項7に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化7】
前記化学式9中、
~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;
は、水素またはメチルであり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項9】
前記化学式3は、下記化学式10で表される、請求項3に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【化8】
前記化学式10中、
~Rは、独立して、C5-50アルキレンであり;
~Rは、独立して、C5-50アルキルであり;
nは、1以上の整数である。
【請求項10】
ベース基板層とP高分子コーティング層との間に自己組織化単分子層(SAM)をさらに含む、請求項1に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【請求項11】
前記P(CNT)高分子コーティング層のCNTは、金属性単層カーボンナノチューブ(m-SWCNT)、半導体性単層カーボンナノチューブ(sc-SWCNT)またはこれらの混合物である、請求項1に記載のCNTフィルムコーティング基板。
【請求項12】
ベース基板層と、
前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、
前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層と
を含み、
前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、
前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されている、CNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【請求項13】
(a)ベース基板層上に下記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップと、
(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップと、
(c)下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップと、
(d)反応終結後、有機溶媒で未反応化合物を洗浄するステップと、
を含む、請求項12に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル官能基であり、xは、1以上の整数である。
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
【請求項14】
前記(a)ベース基板層上に下記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a-2)自己組織化単分子層(SAM)をコーティングするステップと、
(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a-4)UV硬化ステップと、
(a-5)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、
を含む、請求項13に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【請求項15】
前記(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップにおいて、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式4で表される、請求項14に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化9】
前記化学式4中、
は、アルキニル官能基であり;
~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;
zおよびkは、1~7の整数であり;
aおよびbは、1以上の整数である。
【請求項16】
前記化学式4は、下記化学式6で表される、請求項15に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化10】
前記化学式6中、
Arは、3価芳香族ラジカルであり;
~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;
前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、
は、アルキニル官能基であり;
zおよびkは、1~7の整数であり;
aおよびbは、1以上の整数である。
【請求項17】
前記化学式6は、下記化学式7で表される、請求項16に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化11】
前記化学式7中、
~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;
aおよびbは、1以上の整数である。
【請求項18】
前記(a)ベース基板層上に下記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a’-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a’-3)熱処理ステップと、
(a’-4)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、
を含む、請求項13に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【請求項19】
前記化学式2で表される化合物は、下記化学式5で表される、請求項18に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化12】
前記化学式5中、
は、アルキニル官能基であり;
は、エポキシ官能基であり;
~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;
は、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;
z、kおよびtは、1~7の整数であり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項20】
前記化学式5は、下記化学式8で表される、請求項19に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化13】
前記化学式8中、
Arは、3価芳香族ラジカルであり;
およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;
前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、
は、水素またはC1-3アルキルであり;
は、アルキニル官能基であり;
は、エポキシ官能基であり;
z、kおよびtは、1~7の整数であり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項21】
前記化学式8は、下記化学式9で表される、請求項20に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【化14】
前記化学式9中、
~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;
は、水素またはメチルであり;
a、bおよびcは、1以上の整数である。
【請求項22】
前記(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップにおいて、
前記P(CNT)溶液は、前記化学式3で表される化合物、CNTおよび溶媒を含む、請求項13に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【請求項23】
前記P(CNT)溶液は、CNTをラッピングした前記化学式3で表される化合物が溶媒に溶解されたものである、請求項22に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【請求項24】
前記(c)前記化学式2で表される化合物と前記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップにおいて、
前記クリック反応する時間に応じてCNTフィルムの密度を調節する、請求項13に記載のCNTフィルムコーティング基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリック反応を用いたCNTフィルムコーティング基板に関し、具体的に、クリック反応を用いてCNTフィルムをコーティングすることで、水や有機溶媒に対する高い安定性を有するとともに高密度のCNTフィルムがコーティングされた基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、CNT)とは、1つの炭素が他の炭素原子と六角形の蜂の巣状に結合してチューブ状をなしている物質であって、優れた機械的特性および電気伝導度を有する。このため、CNTは半導体素子、フレキシブルディスプレイおよび太陽電池などの導電性素材として応用されており、このためにCNTの電気的特性を阻害することなく基材上にCNTを高密度にコーティングするための多様な方法が試みられている。
【0003】
韓国公開特許KR10-2004-0030553Aにおいては、外径が3.5nmのCNTを用いてコーティング膜を製造したが、CNTの分散性が不十分であり、基材との接着力が劣るため、洗浄過程でCNTフィルムが剥離されやすいという短所がある。
【0004】
これを解決するために、界面活性剤を用いたCNT分散液のスプレーコーティング方式およびスピンコーティング方式などが試みられたが、残留界面活性剤の問題と、CNT密度および基材とCNTの接着力が不十分であるという問題が発生した。また、韓国公開特許KR10-2007-0051979Aにおいては、カルボキシル基が形成されたCNT分散液をアミン基が露出された基材に繰り返しコーティングし、高純度および高密度のCNTフィルムを製造したが、フィルムの均一性が劣るため再現性が低く、製造工程が複雑であるという問題が依然として存在する。
【0005】
韓国公開特許KR10-0869163B1においては、1液型CNT/バインダー混合コーティング液で透明導電性フィルムを製造し、CNT透明電極の物理化学的安定性、工程の容易性および界面接着力を確保したが、臨界バインダー含量以上になると、CNTがバインダー内部に埋もれて面抵抗が急激に増加し、高密度のCNTフィルムを製造するには限界がある。
【0006】
したがって、CNTの電気的特性を維持しながらも、基材との接着力が良く、CNTフィルムが均一であって素子間の再現性に優れ、水や有機溶媒に対する安定性を有する、高密度のCNTフィルムコーティング基板に対する研究開発が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】KR10-2004-0030553A(2004.04.09)
【文献】KR10-2007-0051979A(2007.05.21)
【文献】KR10-0869163B1(2008.11.11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術の問題を解決するために、本発明は、クリック反応を用いて、基材との優れた接着力、および水や有機溶媒に対する高い安定性を有する、高密度のCNTフィルムが均一にコーティングされた基板を提供する。
【0009】
また、本発明は、クリック反応を用いて、工程が比較的に容易であり、再現性が高い、高密度のCNTフィルムコーティング基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、CNTフィルムが均一であって再現性が高く、基材との接着力に優れ、水や有機溶媒に安定性を有する、高密度のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法を開発するために絶え間ない研究を重ねた結果、驚くべきことに、クリック反応を用いてCNTフィルムコーティング基板を製造する場合、CNTフィルムが高密度に均一に形成され、CNTフィルムと基材との接着力に優れ、水や有機溶媒に対する安定性が良いため洗浄後にも剥離されない、高密度のCNTフィルムコーティング基板を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、ベース基板層と、前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層とを含み、前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されている、CNTフィルムコーティング基板を提供する。
【0012】
具体的に、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板は、下記化学式1を含むものであってよい。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1は、下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物のクリック反応により形成されるものであり、前記クリック反応は、下記反応式1で表されてもよい。
【0015】
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル(alkynyl)官能基であり、xは、1以上の整数である。
【0016】
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
【0017】
【化2】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式2のPは、アクリル系共重合体であってもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る前記化学式2は、下記化学式4または化学式5で表されてもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
前記化学式4および化学式5中、Fは、アルキニル官能基であり;Fは、エポキシ官能基であり;p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0022】
より好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式4は、下記化学式6で表されてもよい。
【0023】
【化5】
【0024】
前記化学式6中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Fは、アルキニル官能基であり、zおよびkは、1~7の整数であり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0025】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式6は、下記化学式7で表されてもよい。
【0026】
【化6】
【0027】
前記化学式7中、R~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0028】
本発明の一実施形態に係る前記化学式5は、下記化学式8で表されてもよい。
【0029】
【化7】
【0030】
前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはC1-3アルキルであり、Fは、アルキニル官能基であり、Fは、エポキシ官能基であり、z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0031】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式8は、下記化学式9で表されてもよい。
【0032】
【化8】
【0033】
前記化学式9中、R~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;Rは、水素またはメチルであり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0034】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式3のPは、フルオレン系共重合体であってもよい。
より好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式3は、下記化学式10で表されてもよい。
【0035】
【化9】
【0036】
前記化学式10中、R~Rは、互いに独立して、C5-50アルキレンであり;R~Rは、互いに独立して、C5-50アルキルであり;nは、1以上の整数である。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板は、ベース基板層とP高分子コーティング層との間に自己組織化単分子層(SAM)をさらに含んでもよく、具体的に、前記自己組織化単分子層は、前記ベース基板層およびP高分子コーティング層と化学的に結合されてもよい。
【0038】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の自己組織化単分子層(SAM)は、下記化学式11で表される化合物から誘導された単位であってもよい。
【0039】
【化10】
【0040】
前記化学式11中、R10は、C1-10アルキレンであり;R11~R13は、互いに独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシまたはC1-10アルコキシカルボニルである。
【0041】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の前記P(CNT)高分子コーティング層のCNTは、金属性単層カーボンナノチューブ(m-SWCNT)、半導体性単層カーボンナノチューブ(sc-SWCNT)またはこれらの混合物であってもよい。
【0042】
本発明は、ベース基板層と、前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層とを含み、前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されている、CNTフィルムコーティング基板の製造方法を提供する。
【0043】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法は、
(a)ベース基板層上に下記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップと、
(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップと、
(c)下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップと、
(d)反応終結後、有機溶媒で未反応化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0044】
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル官能基であり、xは、1以上の整数である。
【0045】
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
【0046】
より好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a)ベース基板層上に前記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a-2)自己組織化単分子層(SAM)をコーティングするステップと、
(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a-4)UV硬化ステップと、
(a-5)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0047】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-2)自己組織化単分子層をコーティングするステップは、洗浄したベース基板層を自己組織化単分子層溶液に浸漬する過程を含んでもよい。
【0048】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記自己組織化単分子層溶液は、下記化学式11で表される化合物を含んでもよい。
【0049】
【化11】
【0050】
前記化学式11中、R10は、C1-10アルキレンであり;R11~R13は、互いに独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシまたはC1-10アルコキシカルボニルである。
【0051】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法の(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップにおいて、前記化合物は、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロッピング、スプレーコーティング、溶液キャスティング、バーコーティング、ロールコーティングおよびグラビアコーティングなどから選択される1つの方法でコーティングされてもよい。
【0052】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップの前記化学式2で表される化合物は、下記化学式4で表されてもよい。
【0053】
【化12】
【0054】
前記化学式4中、Fは、アルキニル官能基であり;p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;zおよびkは、1~7の整数であり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0055】
より好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記化学式4は、下記化学式6で表されてもよい。
【0056】
【化13】
【0057】
前記化学式6中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Fは、アルキニル官能基であり、zおよびkは、1~7の整数であり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0058】
具体的に、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記化学式6は、下記化学式7で表されてもよい。
【0059】
【化14】
【0060】
前記化学式7中、R~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0061】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-4)UV硬化ステップは、パターン形成ステップをさらに含んでもよい。
【0062】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a)ベース基板層上に前記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a’-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a’-3)熱処理ステップと、
(a’-4)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0063】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式5で表されてもよい。
【0064】
【化15】
【0065】
前記化学式5中、Fは、アルキニル官能基であり;Fは、エポキシ官能基であり;p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり;z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0066】
より好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記化学式5は、下記化学式8で表されてもよい。
【0067】
【化16】
【0068】
前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはC1-3アルキルであり、Fは、アルキニル官能基であり、Fは、エポキシ官能基であり、z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0069】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式8は、下記化学式9で表されてもよい。
【0070】
【化17】
【0071】
前記化学式9中、R~Rは、互いに独立して、C1-10アルキレンであり;Rは、水素またはメチルであり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0072】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップの前記化合物は、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロッピング、スプレーコーティング、溶液キャスティング、バーコーティング、ロールコーティングおよびグラビアコーティングなどから選択される1つの方法でコーティングされてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(c)前記化学式2で表される化合物と前記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップは、前記クリック反応する時間に応じてCNTフィルムの密度を調節してもよい。
【0074】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記P(CNT)溶液は、前記化学式3で表される化合物、CNTおよび溶媒を含んでもよい。具体的に、前記P(CNT)溶液は、CNTをラッピングした前記化学式3で表される化合物が溶媒に溶解されたものであってもよい。
【0075】
好ましくは、前記CNTは、金属性単層カーボンナノチューブ(m-SWCNT)、半導体性単層カーボンナノチューブ(sc-SWCNT)またはこれらの混合物であってもよい。
【0076】
本発明の一実施形態に係る下記化学式6で表されるアクリレート共重合体を提供することができる。
【0077】
【化18】
【0078】
前記化学式6中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Fは、アルキニル官能基であり、zおよびkは、1~7の整数であり;aおよびbは、1以上の整数である。
【0079】
本発明の一実施形態に係る下記化学式8で表されるアクリレート共重合体を提供することができる。
【0080】
【化19】
【0081】
前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはC1-3アルキルであり、Fは、アルキニル官能基であり、Fは、エポキシ官能基であり、z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。
【発明の効果】
【0082】
本発明に係るCNTフィルムコーティング基板は、クリック反応を用いてCNTを基板に固定することで、CNTフィルムが高密度に均一に形成され、CNTフィルムと基材との接着力に優れ、水や有機溶媒に対する高い安定性を有することができる。従来のCNT溶液をスプレーおよびスピンコーティングして製造したCNTフィルムは、洗浄過程でCNTの大部分が剥離されるが、本発明に係るCNTフィルムコーティング基板は、洗浄後にも高密度の均一なCNTフィルムコーティング基板を製造することができ、基板間の再現性を確保することができる。
【0083】
また、本発明に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法の場合、クリック反応の時間を制御して所望の密度のCNTフィルムを製造することができ、短い反応時間で高密度のCNTフィルムを効率的に得ることができるため、製造工程が簡便であるという長所がある。
【0084】
そこで、本発明に係るCNTフィルムコーティング基板は、優れた基材との接着力、高密度、均一性、水や有機溶媒に対する高い安定性、高い再現性および工程容易性を有するため、半導体素子、ディスプレイおよび透明電極などの多様な導電性複合素材として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】本発明に係る製造例5のP(CNT)溶液の製造工程を示した工程概念図である。
図2】本発明に係る製造例5のP(CNT)溶液の紫外線-可視光線-近赤外線分光分析(UV-Vis-NIR spectroscopy)の結果を示したグラフである。
図3】本発明に係る実施例1において、自己組織化単分子層(SAM)コーティング後にコーティング層の接触角(Contact angle)を測定したイメージである。
図4図4の(a)は、本発明に係る実施例1において、コーティングしたアクリレート共重合体(i)溶液をUV硬化した後、溶媒で洗浄する前後の紫外線-可視光線分光分析(UV-Vis spectroscopy)の結果を示したグラフであり、図4の(b)は、本発明に係る実施例12において、コーティングしたアクリレート共重合体(ii)溶液を熱硬化した後、溶媒で洗浄する前後の紫外線-可視光線分光分析の結果を示したグラフである。
図5図5の(A)は、本発明に係る実施例1のクリック反応の過程を示した工程概念図であり、図5の(B)は、本発明に係る実施例12のクリック反応の過程を示した工程概念図である。
図6】本発明に係る実施例1~11のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフである。
図7】本発明に係る実施例12~15のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフである。
図8図8の(a’)は、比較例1において、超音波洗浄前のコーティング層のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフであり、図8の(b’)は、超音波洗浄後のコーティング層のラマン分光分析の結果を示したグラフである。
図9】本発明に係る実施例1~11のコーティング層表面のSEMイメージである。
図10】本発明に係る実施例12~15のコーティング層表面のSEMイメージである。
図11図11の(A)は、比較例1において、超音波洗浄前のコーティング層表面のSEMイメージであり、図11の(B)は、超音波洗浄後のコーティング層表面のSEMイメージである。
図12】本発明の一実施形態に係るクリック反応を用いたCNTフィルムを製造する過程を示した概略的な工程概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、本発明に係るクリック反応を用いた高密度のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法について詳しく説明する。この際、用いられる技術的用語および科学的用語に他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明において、本発明の要旨を不要に濁す恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0087】
本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
また、本明細書において、特に言及なしに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義しない限り、全体組成物のうち何れか1つの成分が組成物中に占める重量%を意味する。
【0088】
また、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、この中で限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0089】
また、本発明において、ある層が他の層の「上に」位置しているとする際、これは、ある層が他の層に接している場合だけでなく、2つの層の間に1つ以上のまた他の層が存在する場合も含む。
【0090】
本明細書の用語「高分子」は、重合体および共重合体を含む。
本明細書の用語「アクリル系」は、メタクリル系およびアクリル系の何れも含む。
本明細書の用語「アクリレート」は、メタクリレートおよびアクリレートの何れも含む。
【0091】
本明細書の用語「ラッピング(wrapping)」は、静電気的相互作用により高分子がCNTを取り囲むことを意味し、コーティング、塗布、結合および付着の意味を含んでもよい。また、前記静電気的相互作用は、π電子相互作用(π-π stacking interaction)を意味し得る。
【0092】
本明細書の用語「アルキル」は、直鎖状または分岐状を何れも含み、1~30個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子であってもよい。
本明細書の用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0093】
本明細書の用語「ハロアルキル」は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。例えば、ハロアルキルは、-CF、-CHF、-CHF、-CBr、-CHBr、-CHBr、-CC1、-CHC1、-CHCI、-CI、-CHI、-CHI、-CH-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CBr、-CH-CHBr、-CH-CHBr、-CH-CC1、-CH-CHC1、-CH-CHCI、-CH-CI、-CH-CHI、-CH-CHI、およびこれと類似したものを含む。ここで、アルキルおよびハロゲンは、上記で定義されたとおりである。
【0094】
本明細書の用語「アルケニル」は、2~30個、好ましくは2~20の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む飽和された直鎖状または分岐状の非環状炭化水素を意味する。
【0095】
本明細書の用語「アルキニル」は、2~30個、好ましくは2~20の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む飽和された直鎖状または分岐状の非環状炭化水素を意味する。
【0096】
本明細書の用語「アルコキシ」は、-OCH、-OCHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、-O(CHCH、およびこれと類似したものを含む-O-(アルキル)を意味し、ここで、アルキルは、上記で定義されたとおりである。
【0097】
本明細書の用語「アリール」は、5~10の環原子を含有する炭素環芳香族基を意味する。代表的な例としては、フェニル、トリル(tolyl)、キシリル(xylyl)、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル(anthracenyl)、フルオレニル(fluorenyl)、インデニル(indenyl)、アズレニル(azulenyl)などを含むが、これに限定されない。さらに、アリールは、炭素環芳香族基と基がアルキレンまたはアルケニレンで連結されるか、またはB、O、N、C(=O)、P、P(=O)、S、S(=O)およびSi原子から選択される1つ以上のヘテロ原子で連結されたものも含む。
【0098】
本明細書の用語「アルコキシカルボニル」は、アルコキシ-C(=O)-*ラジカルを意味するものであって、ここで、アルコキシは、上記で定義されたとおりである。このようなアルコキシカルボニルラジカルの例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0099】
本明細書の用語「シクロアルキル(cycloalkyl)」は、炭素および水素原子を有し、炭素-炭素多重結合を有しない単環または多環の飽和環(ring)を意味する。シクロアルキル基の例としては、C3-10シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル)を含むが、これに限定されない。シクロアルキル基は、選択的に置換されていてもよい。一実施形態において、シクロアルキル基は、単環または二環の環である。
【0100】
本明細書の用語「アリールアルキル」は、アルキルの1つ以上の水素がアリールで置換されたものであって、ベンジルなどが含まれる。
本明細書の用語「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、「シクロアルキレン」、「アリーレン」、「ヘテロアリーレン」および「アルコキシカルボニレン」は、それぞれ「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」および「アルコキシカルボニル」において1つの水素除去により誘導された2価の有機ラジカルを意味し、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびアルコキシカルボニルのそれぞれの定義に従う。
【0101】
本明細書の用語「ヒドロキシ」は-OHを意味し、「ニトロ」は-NOを意味し、「シアノ」は-CNを意味し、「アミノ」は-NHを意味し、「カルボキシル」は-COOHを意味し、「カルボン酸塩」は-COOMを意味する。前記Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であってもよい。
【0102】
本明細書の用語「アルカリ金属」は、周期律表の1族のうち水素を除いた残りの化学元素である、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)を意味し、「アルカリ土類金属」は、周期律表の2族元素であるベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)を意味する。
【0103】
本発明に記載された「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料または工程を排除するものではない。
【0104】
本発明は、ベース基板層と、前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層とを含む、CNTフィルムコーティング基板を提供する。具体的に、前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されてもよい。
【0105】
前記ベース基板層は、ガラス、石英およびシリコンなどを含む無機基板、またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、アクリル樹脂およびオレフィンマレインイミド共重合体などを含む有機基板であってもよいが、これに制限されない。また、前記ベース基板層は、通常のシリコンウェハや前記無機基板に酸化膜を形成した基板であってもよく、前記有機基板およびプラスチックなどを含むフレキシブル基板であってもよいが、基板上にCNTフィルムが形成可能であれば特に制限されない。さらに前記ベース基板とCNTフィルムの接着力を向上させるために物理的、化学的処理をしてもよい。前記ベース基板にCNTフィルムを形成し、半導体素子、透明電極およびディスプレイなどに応用してもよい。
【0106】
具体的に、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板は、下記化学式1を含むものであってもよい。
【0107】
【化20】
【0108】
前記化学式1は、下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物のクリック反応により形成されるものであり、前記クリック反応は、下記反応式1で表されてもよい。
【0109】
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル官能基であってもよく、xは、1以上の整数である。
【0110】
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
【0111】
【化21】
前記反応式1を具体的に表すと、下記反応式2であってもよい。
【0112】
【化22】
【0113】
前記反応式1~2から分かるように、前記化学式2のアルキニル官能基と前記化学式3のアジド官能基は、銅触媒の存在下でクリック反応を介してトリアゾール環を形成することができる。前記トリアゾール環によりPとP(CNT)が化学的に結合されることで、前記ベース基板層上にP高分子コーティング層およびP(CNT)高分子コーティング層を形成することができる。前記P高分子は、アルキニル官能基があれば、その種類が特に制限されず、前記P高分子も、アジド官能基があれば、その種類が特に制限されない。
【0114】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る前記化学式2のPは、アクリル系共重合体であってもよい。前記アクリル系共重合体は、2種以上の単量体を重合してもよく、前記単量体は、アクリル系単量体またはメタクリル系単量体であってもよい。前記単量体は、ヒドロキシ、エポキシ、カルボキシル、チオール、アルケンおよびアルキニルを官能基として有してもよく、好ましくは、エポキシおよびアルキニル官能基を有してもよい。前記単量体は、直接合成して用いてもよく、市販中の製品を用いてもよいが、これに制限されない。
【0115】
また、前記アクリル系共重合体は、通常用いられる重合法により合成されてもよい。好ましくは、溶液重合であってもよいが、これに制限されない。前記溶液重合は、前記単量体、開始剤および溶媒を含んで重合されてもよく、前記開始剤および溶媒は、通常用いられるものであれば特に制限されないが、好ましくは、開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いてもよく、溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)であってもよい。また、その含量は、本発明で述べられる物性を阻害しないのであれば特に制限されない。
【0116】
また、前記P高分子は、数平均分子量(Mn)が5,000~100,000Da、好ましくは10,000~60,000Da、より好ましくは10,000~30,000Daであってもよいが、これに制限されない。前記数平均分子量は、前記単量体の含量比および重合条件に応じて調節されてもよい。
【0117】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式2は、下記化学式4または化学式5で表されてもよい。
【0118】
【化23】
【0119】
前記化学式4中、Fは、アルキニル官能基であり、p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり、zおよびkは、独立して1~7の整数であり、a、およびbは、1以上の整数である。具体的に、前記zおよびkは、独立して1~3の整数であってもよく、前記aとbは、0.1~10:1を満たしてもよく、好ましくは0.5~5:1、より好ましくは0.8~2:1を満たしてもよいが、特にこれに制限されない。また、前記アルキニル官能基は、前記化学式3のアジド官能基とクリック反応してトリアゾール環を形成してもよい。
【0120】
また、前記p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であってもよく、具体的に、前記単量体は、縮合重合または付加重合が可能な単量体であれば大きく制限されないが、好ましくは、ラジカル重合が可能なアクリル系、メタクリル系およびビニル系などから選択される1つ以上の単量体であってもよい。
【0121】
前記化学式4中、aおよびbは、P共重合体におけるpおよびp繰り返し単位のモル比を意味し得る。pおよびp繰り返し単位に該当する単量体の投入モル比を調節するかまたは重合条件を調節してaおよびbの割合を調節してもよいが、これに制限されない。
【0122】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式4は、下記化学式6で表されてもよい。
【0123】
【化24】
【0124】
前記化学式6中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R~Rは、独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり、前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールなどから選択される1つ以上で置換されていてもよく、zおよびkは、1~7の整数であり、aおよびbは、1以上の整数である。
【0125】
好ましくは、前記化学式6中、R~Rは、独立して、C1-20アルキレン、C6-20アリーレン、C1-20アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記アルキレン、アリーレンおよびヘテロアリーレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、C1-7アルキル、C1-7ハロアルキル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシカルボニル、(C6-20)アリール(C1-7)アルキルおよびC6-20アリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、zおよびkは、1~3の整数であり、前記aとbは、0.1~10:1を、好ましくは0.5~5:1を満たしてもよい。
【0126】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式6は、下記化学式7で表されてもよい。
【0127】
【化25】
【0128】
前記化学式7中、R~Rは、独立して、直接結合またはC1-10アルキレンであり、aおよびbは、1以上の整数である。好ましくは、R~Rは、独立して、C1-3アルキレンであってもよく、より好ましくは、R~Rは、メチレンであってもよく、前記aとbは、好ましくは0.8~2:1を満たしてもよい。
【0129】
また、前記化学式4のzおよびkは、それぞれpおよびp繰り返し単位に連結されたFの個数を意味するが、前記化学式7の場合を例に挙げると、zは2であり、kは1であってもよい。
【0130】
【化26】
【0131】
前記化学式5中、Fは、アルキニル官能基であり、Fは、エポキシ官能基であり、p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり、pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり、z、kおよびtは、独立して1~7の整数であり、a、bおよびcは、1以上の整数である。好ましくは、前記z、kおよびtは、独立して1~3の整数であってもよく、前記a、bおよびcは、0.1~10:0.1~10:1を満たしてもよく、好ましくは0.5~5:0.5~5:1、より好ましくは1~3:1~3:1を満たしてもよいが、これに制限されない。また、前記エポキシ官能基は、前記ベース基板層と化学的に結合されてもよく、前記アルキニル官能基は、前記化学式3のアジド官能基とクリック反応してトリアゾール環を形成してもよい。
【0132】
また、前記p~pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であり、pは、末端にF官能基を有する単量体から誘導された繰り返し単位であってもよく、具体的に、前記単量体は、縮合重合または付加重合が可能な単量体であれば大きく制限されないが、好ましくは、ラジカル重合が可能なアクリル系、メタクリル系およびビニル系などから選択される1つ以上の単量体であってもよい。
【0133】
前記化学式5中、a~cは、P共重合体におけるp~p繰り返し単位のモル比を意味し得る。p~p繰り返し単位に該当する単量体の投入モル比を調節するかまたは重合条件を調節してa~cの割合を調節してもよいが、これに制限されない。
【0134】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式5は、下記化学式8で表されてもよい。
【0135】
【化27】
【0136】
前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R およびR は、独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり、前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはC1-3アルキルであり、z、kおよびtは、1~7の整数であり、a、bおよびcは、1以上の整数である。
【0137】
好ましくは、前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R およびR は、独立して、C1-20アルキレン、C6-20アリーレン、C1-20アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記アルキレン、アリーレンおよびヘテロアリーレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、C1-7アルキル、C1-7ハロアルキル、C1-7アルコキシ、C1-7アルコキシカルボニル、(C6-20)アリール(C1-7)アルキルおよびC6-20アリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはメチルであり、zおよびkは、1~3の整数であり、前記a、bおよびcは、0.1~10:0.1~10:1を、好ましくは0.5~5:0.5~5:1を満たしてもよい。
【0138】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式8は、下記化学式9で表されてもよい。
【0139】
【化28】
【0140】
前記化学式9中、R~Rは、独立して、C1-10アルキレンであり、Rは、水素またはメチルであり、a、bおよびcは、1以上の整数である。好ましくは、R~Rは、独立して、C1-3アルキレンであり、Rは、メチルであってもよく、前記a、bおよびcは、1~3:1~3:1を満たしてもよい。
【0141】
また、前記化学式5のz、kおよびtは、それぞれp、pおよびp繰り返し単位に連結されたFおよびFの個数を意味するが、前記化学式9の場合を例に挙げると、zは2、kは1、tは1であってもよい。
【0142】
本発明の一実施形態に係る化学式4および5中、p~pは、互いに独立して、化学式2のP高分子を構成している繰り返し単位を意味し得る。前記化学式4および5中、pおよびp繰り返し単位は、互いに独立して、末端に1つ以上のF官能基を含む単量体から誘導されてもよく、前記化学式5中、p繰り返し単位は、末端に1つ以上のF官能基を含む単量体から誘導されてもよい。前記F官能基は、アルキニル官能基であり、F官能基は、エポキシ官能基であってもよく、前記単量体は、重合が可能であれはその種類に大きく制限されず、具体的には、縮合重合または付加重合が可能な単量体であれば、その種類が特に制限されない。好ましくは、ラジカル重合が可能なアクリル系、メタクリル系およびビニル系などの単量体を含んでもよいが、これに制限されない。
【0143】
また、前記単量体のモル比を調節することで、前記化学式4および5のa~cの割合を調節してもよい。具体的に、重合に投入する単量体のモル比を調節して前記化学式4のaおよびbの割合を調節してもよく、前記化学式5のa~cの割合を調節してもよい。すなわち、重合に投入された当該単量体のモル比と繰り返し単位p~pの割合が類似もしくは同一であってもよい。具体的に、繰り返し単位pはa、pはb、pはcに対応し、それぞれのp~pに該当する単量体を2:2:1のモル比で投入して重合した場合、a:b:cは、2:2:1と同一もしくは類似してもよいが、特にこれに制限されず、各単量体の反応性および重合条件に応じて前記割合が調節されてもよい。
【0144】
本発明の一実施形態に係る前記化学式3のPは、末端にアジド官能基を有すれば、その種類が特に制限されない。具体的に、前記Pは、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フルオレン系、カルバゾール系、チオフェン系およびオレフィン系高分子などから選択されてもよいが、これに制限されない。前記Pは、1種以上の単量体を重合して合成されてもよく、前記重合は、縮合重合または付加重合の形式で合成されてもよいが、特に制限されず、前記Pの単量体は、末端にアジド官能基を有し、CNTをラッピング可能であれば、特に制限されずに用いてもよい。
【0145】
好ましくは、前記Pは、フルオレン系共重合体であってもよく、具体的に、前記フルオレン系共重合体は、2種以上のフルオレン系単量体を共重合したものであってもよい。電気伝導性を帯びる共役型高分子であるフルオレン系共重合体を用いてCNTフィルムコーティング基板を製造する場合、CNTフィルムの電気的特性を阻害することなく高密度のCNTフィルムを形成することができるため非常に好ましい。
【0146】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記化学式3は、下記化学式10で表されてもよい。
【0147】
【化29】
【0148】
前記化学式10中、R~Rは、互いに独立して、C5-50アルキレンであり、R~Rは、独立して、C5-50アルキルであり、nは、1以上の整数である。好ましくは、R~Rは、独立して、C5-20アルキレンであり、R~Rは、独立して、C5-20アルキルであってもよく、前記範囲の炭素数を満たすアルキレンおよびアルキルの場合、CNT側壁面とπ電子相互作用(π-π stacking interaction)によりCNTを効果的にラッピングすることができる。より好ましくは、選択的にsc-SWCNTをラッピングしてP(CNT)層を形成することで、さらに向上した電気的特性を有する高密度のCNTフィルムコーティング基板を製造することができるため非常に好ましい。
【0149】
また、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板は、ベース基板層とP高分子コーティング層との間に自己組織化単分子層(SAM)をさらに含んでもよい。具体的に、自己組織化単分子層は、基板層の表面と容易に反応する物質、一例としてシランカップリング剤を含み、エネルギーを効果的に吸収してラジカルを形成して架橋反応を起こすことができる光重合開始剤、一例としてベンゾフェノン構造を含む化合物から誘導された単位であってもよい。
【0150】
好ましくは、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の自己組織化単分子層(SAM)は、下記化学式11で表される化合物から誘導された単位であってもよい。
【0151】
【化30】
【0152】
前記化学式11中、R10は、C1-10アルキレンであり、R11~R13は、独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-10アルキル、C1-10ハロアルキル、C1-10アルコキシまたはC1-10アルコキシカルボニルである。具体的に、R10は、C1-7アルキレンであり、R11~R13は、独立して、ハロゲン、C1-7アルキルまたはC1-7ハロアルキルであってもよく、前記ハロゲンは、ClまたはFであってもよく、より好ましくは、前記化学式11は、下記化学式12で表されてもよい。
【0153】
【化31】
【0154】
前記化学式11および12で表される化合物は、ベンゾフェノン構造を含んでエネルギービームを効果的に吸収し、ベンゾフェノンのカルボニル基のn-軌道の電子と接触する高分子のアルキル鎖と反応することができる。したがって、前記化学式11および12で表される化合物と前記化学式2のPがエネルギービーム照射により架橋されることができ、好ましくは、エネルギービームは、紫外線(UV)であってもよい。
【0155】
前記化学式11で表される化合物から誘導された単位を含んで自己組織化単分子層を形成することができ、前記自己組織化単分子層は、前記ベース基板層と化学的に結合するとともに前記化学式2のPと架橋されることで、ベース基板層上にP高分子コーティング層を固定化し、本発明が目的とする水および有機溶媒に安定的であり、CNTフィルムと基板層の接着力に優れた、高密度のCNTフィルムコーティング基板を製造することができるため非常に好ましい。
【0156】
本発明は、ベース基板層と、前記ベース基板層上に形成されたP高分子コーティング層と、前記P高分子コーティング層上に形成されたP(CNT)高分子コーティング層とを含み、前記P(CNT)高分子コーティング層はP高分子によりCNTがラッピングされ、前記P高分子コーティング層とP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されている、CNTフィルムコーティング基板の製造方法を提供する。
【0157】
具体的に、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法は、
(a)ベース基板層上に下記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップと、
(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップと、
(c)下記化学式2で表される化合物と下記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップと、
(d)反応終結後、有機溶媒で未反応化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0158】
[化学式2]
-(F
前記化学式2中、Fは、アルキニル官能基であり、xは、1以上の整数である。
【0159】
[化学式3]
-(F
前記化学式3中、Fは、アジド官能基であり、yは、1以上の整数である。
前記化学式2および化学式3に関する説明は、前述したとおりである。
【0160】
より具体的に、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a)ベース基板層上に前記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a-2)自己組織化単分子層(SAM)をコーティングするステップと、
(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a-4)UV硬化ステップと、
(a-5)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0161】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップは、ベース基板層表面の不純物を除去するために行われてもよく、前記溶媒としては、通常用いられる無機溶媒、有機溶媒またはこれらの混合物を用いてもよい。具体的に、前記溶媒は、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエンおよびテトラヒドロフラン(THF)などを含む溶媒であってもよい。より具体的に、水、アセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)などを用いてもよく、これらの混合物を用いてもよく、好ましくは、水、アセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)を順次用いてベース基板層を洗浄してもよいが、これに制限されない。
【0162】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-2)自己組織化単分子層をコーティングするステップは、スピンコーティング、浸漬コーティング、気相蒸着、ドクターブレードコーティングおよびカーテンコーティング方法などで行われてもよい。好ましくは、浸漬コーティング方法であってもよく、前記浸漬コーティング方法は、洗浄したベース基板層を自己組織化単分子層溶液に1~20時間浸漬する過程を含んでもよく、より好ましくは、3~10時間浸漬してもよい。
【0163】
また、浸漬する過程の完了後、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエンおよびテトラヒドロフラン(THF)などからなる群から選択される1つ以上の溶媒で洗浄してもよく、好ましくは、エタノールで1次洗浄し、トルエンで2次洗浄してもよい。前記自己組織化単分子層のコーティング可否は接触角の測定により確認することができ、接触角が40度(°)以上である場合に自己組織化単分子層がコーティングされたと見ることができる。
【0164】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記自己組織化単分子層溶液は、前記化学式11で表される化合物および溶媒を含んでもよく、前記自己組織化単分子層溶液において、前記化学式11で表される化合物の濃度は、好ましくは0.1~3Mであってもよいが、特に制限されない。また、前記化学式11は、前記化学式12で表されてもよく、前記化学式11および12に関する説明は、前述したとおりである。
【0165】
好ましくは、前記自己組織化単分子層溶液の溶媒は、前記化学式11で表される化合物と反応しない溶媒であってもよく、具体的に、前記溶媒は、トルエン、キシレンおよびメシチレンなどを含む芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンおよびシクロノナンなどを含むシクロアルカン;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカンなどを含むアルカン、およびメタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールなどを含むアルキルアルコールなどから選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、トルエンであってもよいが、前記化学式11で表される化合物と反応しない溶媒であれば特に制限されない。
【0166】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップの前記化合物は、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロッピング、スプレーコーティング、溶液キャスティング、バーコーティング、ロールコーティングおよびグラビアコーティングなどから選択される1つの方法でコーティングされてもよく、好ましくは、スピンコーティング、スプレーコーティング、溶液キャスティングおよびロールコーティングなどから選択されてもよいが、前記方法のうちコーティング液の特性および用いる用途に応じて適切な方法が選択されてもよい。また、前記化学式2で表される化合物を含むコーティング液を製造してコーティングしてもよい。前記コーティング液は、前記化学式2で表される化合物および溶媒を含んでもよく、前記溶媒は、前記化学式2で表される化合物が溶解されれば特に制限されないが、具体的に、エチルアセテート(EA、Ethyl Acetate)、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン(1,4-Dioxane)、ジメチルアセトアミド(DMA、N,N-dimethylacetamide)、ジメチルホルムアミド(DMF、Dimethylformamide)、テトラヒドロフラン(THF、Tetrahydrofuran)およびクロロホルムなどから選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、1,4-ジオキサンまたはクロロホルムであってもよい。前記コーティング液は、化学式2で表される化合物を0.1~40mg/mlの濃度で含んでもよいが、これに制限されず、所望のコーティング厚さに応じてその濃度を調節してもよい。
【0167】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-3)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップの前記化学式2で表される化合物は、前記化学式4で表されてもよい。好ましくは、前記化学式4は、前記化学式6で表されてもよく、前記化学式6は、前記化学式7で表されてもよい。前記化学式4、6および7に関する説明は、前述したとおりである。
【0168】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a-4)UV硬化ステップは、前記化学式11で表される化合物と前記化学式2で表される化合物を架橋させ、前記ベース基板層上にP高分子コーティング層を固定化するために行われてもよく、これにより、水および有機溶媒に安定的であり、高密度のCNTフィルムがコーティングされた基板を製造することができる。前記UV硬化時間は、0.1~30分間行われてもよいが、これに制限されない。
【0169】
また、前記UV硬化ステップにおいて、パターンが形成されたマスクを用いてUV硬化マスクパターンの形成後、洗浄過程を経て基板層にパターンを形成する過程を含んでもよい。パターンを形成する過程を介してベース基板層上にCNTパターンを形成してもよく、これは、半導体素子、トランジスタおよびディスプレイなどのような導電性素材が用いられる産業分野に多様に活用可能である。
【0170】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、前記UV硬化ステップ後、未反応化合物を除去するために溶媒で基板層を洗浄してもよい。前記溶媒としては、通常用いられる溶媒を用いてもよく、前記未反応化合物が溶解される溶媒であれば特に制限されないが、好ましくは、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン、EA、DMA、DMF、THFおよびクロロホルムなどから選択される1つ以上の溶媒を用いてもよい。
【0171】
また、本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a)ベース基板層上に前記化学式2で表される化合物をコーティングおよび固定化するステップは、
(a’-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップと、
(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップと、
(a’-3)熱処理ステップと、
(a’-4)溶媒で基板層に固定されていない化合物を洗浄するステップと、を含んでもよい。
【0172】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a’-1)溶媒でベース基板層を洗浄するステップは、ベース基板層に残っている有機、無機汚染物質を除去するために行われ、前記溶媒としては、通常用いられる無機溶媒、有機溶媒またはこれらの混合物を用いてもよい。好ましくは、水、硝酸、硫酸、過酸化水素、アセトン、IPA、THF、ベンゼン、クロロホルムおよびトルエンなどからなる群から選択される1つ以上であるかまたはこれらの混合物であってもよく、より好ましくは、硫酸と過酸化水素の混合物で1次洗浄し、水で2次洗浄した後、トルエンで3次洗浄してもよく、前記硫酸と過酸化水素の重量比は、1~9:9~1を満たしてもよいが、これに制限されない。
【0173】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法の(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップにおいて、前記化合物は、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロッピング、スプレーコーティング、溶液キャスティング、バーコーティング、ロールコーティングおよびグラビアコーティングなどから選択される1つの方法でコーティングされてもよい。好ましくは、スピンコーティング、スプレーコーティング、溶液キャスティングおよびロールコーティングなどから選択されてもよいが、前記方法のうちコーティング液の特性および用いる用途に応じて適切な方法を選択してもよい。また、前記化学式2で表される化合物を含むコーティング液を製造してコーティングしてもよい。前記コーティング液は、化学式2で表される化合物および溶媒を含んでもよく、前記溶媒は、化学式2で表される化合物が溶解されれば特に制限されないが、具体的に、EA、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン、DMA、DMF、THFおよびクロロホルムなどから選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、1,4-ジオキサンまたはクロロホルムであってもよい。前記コーティング液は、化学式2で表される化合物を0.1~40mg/mlの濃度で含んでもよいが、これに制限されず、所望のコーティング厚さに応じてその濃度を調節してもよい。
【0174】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a’-2)前記化学式2で表される化合物をコーティングするステップの前記化学式2は、前記化学式5で表されてもよい。好ましくは、前記化学式5は、前記化学式8で表されてもよく、より好ましくは、前記化学式8は、前記化学式9で表されてもよい。前記化学式5、8および9の説明は、前述したとおりである。
【0175】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(a’-3)熱処理ステップは、前記ベース基板層と化学式2で表される化合物が化学的に結合され、ベース基板層上にP高分子層が形成されてもよい。具体的に、熱処理温度は100~150℃であり、熱処理時間は1時間以上であってもよいが、前記P高分子層の厚さなどに応じて前記温度および時間が調節されてもよく、本発明が目的とする物性を阻害しないのであれば、前記温度および時間の範囲は特に制限されない。
【0176】
前記熱処理ステップ後、未反応化合物を除去するために溶媒で基板層を洗浄してもよい。前記溶媒としては、通常用いられる溶媒を用いてもよく、前記未反応化合物が溶解される溶媒であれば特に制限されないが、好ましくは、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン、EA、DMA、DMF、THFおよびクロロホルムなどから選択される1つ以上の溶媒を用いてもよい。
【0177】
本発明の一実施形態に係るP(CNT)溶液は、前記化学式3で表される化合物、CNTおよび溶媒を含んでもよい。具体的に、前記P(CNT)溶液は、溶媒にCNTをラッピングした前記化学式3で表される化合物が溶解された溶液であってもよい。
【0178】
前記CNTは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT、Single-walled Carbon Nanotube)、二層カーボンナノチューブ(double-walled Carbon Nanotube)、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled Carbon Nanotube)およびロープ状カーボンナノチューブ(Rope Carbon Nanotube)からなる群から選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であってもよい。具体的に、金属性単層カーボンナノチューブ(m-SWCNT)、半導体性単層カーボンナノチューブ(sc-SWCNT)またはこれらの混合物であってもよく、当該応用分野に応じて適した物性のCNTを選択してベース基板上にCNTフィルムを形成してもよい。また、前記CNTは、外径が0.1nm以上、好ましくは0.1~10nm、より好ましくは0.1~5nmであってもよいが、P(CNT)溶液の製造時に分散性に影響を与えないのであれば特に制限されない。
【0179】
前記P(CNT)溶液の溶媒としては、本発明の前記化学式3で表される化合物が溶解可能であれば特に制限されず、好ましくは、非極性溶媒を用いてもよい。前記非極性溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、およびヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサン(MCH)などの脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエンまたはメチルシクロヘキサンを用いてもよい。クロロホルムまたはテトラヒドロフラン(THF)などのような極性溶媒を用いてもよいが、これに制限されない。
【0180】
本発明の一実施形態に係るP(CNT)溶液の製造方法は、前記化学式3で表される化合物を溶媒に溶解させた後、CNTを分散させる過程を含んでもよい。好ましくは、前記化学式3で表される化合物は、溶媒に対して0.1~30mg/ml、より好ましくは0.1~20mg/mlの濃度であってもよいが、これに制限されず、前記CNTは、0.05~5mg/mlの濃度であってもよい。前記化学式3で表される化合物は、溶媒に完全に溶解させることが好ましく、50~100℃の温度範囲で溶解させてもよい。その後、遠心分離によりカーボンナノチューブをラッピングした前記化学式3で表される化合物を分離し、濾過過程および再分散過程を経て製造してもよいが、これに制限されない。前記再分散過程において、再分散過程後のP(CNT)溶液におけるP(CNT)の濃度は、0.001~10mg/mlであってもよく、前記濃度を調節してCNTフィルムの密度を調節してもよいが、これに制限されない。前記再分散過程で用いられる溶媒は、上記で述べられたP(CNT)溶液の溶媒の具体的な化合物の例と同一または異なってもよく、前記分散および再分散過程は、超音波処理を介して行われてもよいが、これに制限されない。前記範囲を満たすP(CNT)溶液で基板を製造する場合、基板層上に適切な密度のCNTフィルムを形成することができ、本発明が目的とする高安定性および高密度のCNTフィルムを製造することができるためさらに好ましく、前記製造されたP(CNT)溶液は、前記(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップにて用いてもよい。
【0181】
好ましくは、本発明の一実施形態に係る(b)前記コーティングされたベース基板層をP(CNT)溶液に浸漬するステップにおいて、前記P(CNT)溶液の化学式3で表される化合物は、前記化学式10で表される化合物であってもよく、これに関する説明および具体的な化合物の例は、前述したとおりである。
【0182】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(c)前記化学式2で表される化合物と前記化学式3で表される化合物がクリック反応するステップは、銅触媒下で加熱もしくは超音波処理過程を介して行われてもよい。前記ステップを介してP高分子コーティング層およびP(CNT)高分子コーティング層を形成することができ、前記P高分子コーティング層およびP(CNT)高分子コーティング層はトリアゾール環により結合されてもよい。好ましくは、窒素雰囲気下で50~60℃の温度で90~120Wの強さで超音波処理してもよく、前記超音波処理時間は、1秒~10時間であってもよく、具体的には1分以上、または5分~6時間、より具体的には10分~4時間行われてもよいが、前記温度、強さおよび時間は、本発明において目的とする物性を阻害しないのであれば特に制限されない。また、前記範囲ではなくても所望のCNTフィルム密度を実現するために、多様に時間を調節して反応を行ってもよい。前記CNTフィルムの密度は、ラマン分光分析(Raman spectroscopy)するか、または走査型電子顕微鏡(SEM)または光学顕微鏡を介してコーティング層の表面を観察することで確認することができる。
【0183】
また、前記化学式2で表される化合物と前記化学式3で表される化合物がクリック反応する過程は、下記反応式1で表されてもよい。
【0184】
【化32】
前記反応式1を具体的に表すと、下記反応式2であってもよい。
【0185】
【化33】
前記反応式1~2に関する説明は、前述したとおりである。
【0186】
本発明の一実施形態によると、前記クリック反応を介してCNTフィルムコーティング基板を製造する場合、速い時間に高密度のCNTフィルムを均一にコーティングすることができるため、作業が容易であり、効率的であるだけでなく、CNTフィルムが化学的結合により基板層にコーティングされることで接着力に優れ、水および有機溶媒に対する安定性が確保されて洗浄後にもCNTが剥離されない、高密度のCNTフィルムコーティング基板を製造することができるため非常に好ましい。
【0187】
本発明の一実施形態に係るCNTフィルムコーティング基板の製造方法において、(d)反応終結後、有機溶媒で未反応化合物を洗浄するステップを行ってもよく、これは、反応に用いられた触媒、単量体および高分子のような未反応化合物を除去して高純度のCNTフィルムを製造するために行われてもよい。前記有機溶媒としては、通常用いられる溶媒であれば特に制限されずに用いてもよく、具体的に、好ましくは、トルエン、アセトン、1,4-ジオキサン、EA、DMA、DMF、THFおよびクロロホルムなどから選択される1つ以上の溶媒を用いてもよい。前記洗浄過程は、超音波洗浄により行われてもよく、本発明に係る高密度のCNTフィルムコーティング基板は、超音波洗浄過程後にも高密度のCNTフィルムを維持して水および有機溶媒に対する安定性を確保することができるため非常に好ましい。
【0188】
本発明の一実施形態に係る下記化学式6で表されるアクリレート共重合体を提供することができる。
【0189】
【化34】
【0190】
前記化学式6中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R~Rは、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Fは、アルキニル官能基であり、zおよびkは、1~7の整数であり;aおよびbは、1以上の整数である。前記化学式6に関する説明は、前述したとおりである。
【0191】
前記化学式6は、下記化合物で表されてもよいが、これに制限されない。
【化35】
前記化合物のaおよびbは、前記化学式6で述べられたとおりである。
【0192】
本発明の一実施形態に係る下記化学式8で表されるアクリレート共重合体を提供することができる。
【0193】
【化36】
【0194】
前記化学式8中、Arは、3価芳香族ラジカルであり;R 、R およびR は、互いに独立して、C1-50アルキレン、C3-50シクロアルキレン、C6-50アリーレン、C3-50ヘテロアリーレン、C1-50アルコキシカルボニレンまたはこれらの組み合わせであり;前記アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびアルコキシカルボニレンは、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、カルボキシル、カルボン酸塩、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20ハロアルキル、C1-20アルコキシ、C1-20アルコキシカルボニル、C3-30シクロアルキル、(C6-30)アリール(C1-20)アルキル、C6-30アリールおよびC3-30ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換されていてもよく、Rは、水素またはC1-3アルキルであり、Fは、アルキニル官能基であり、Fは、エポキシ官能基であり、z、kおよびtは、1~7の整数であり;a、bおよびcは、1以上の整数である。前記化学式8に関する説明は、前述したとおりである。
【0195】
前記化学式8は、下記化合物で表されてもよいが、これに制限されない。
【化37】
前記化合物のa、bおよびcは、前記化学式8で述べられたとおりである。
【0196】
また、本発明の一実施形態に係る化学式6および8中、前記Arは、2つの同一のRが連結されてもよく、2つのそれぞれ異なるRが連結されてもよい。前記Rは、Fをz個含んでもよく、前記Arに2つのそれぞれ異なるRが連結されている場合、それぞれ異なるRのzは、独立して1~7の整数であってもよい。
【0197】
以下、実施例により、本発明に係るクリック反応を用いた高密度のCNTフィルムコーティング基板およびその製造方法についてより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳しく説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、種々の形態で実現されてもよい。また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。また、本発明において、説明で用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0198】
また、下記の実施例および比較例において、製造会社が記載されていない物質は、Sigma-Aldrich社から購入して用いた。
【0199】
[製造例1]化合物DPAP(Dipropargyl-5-acryloyloxyisophthalate)の製造
【化38】
【0200】
-APA(5-Acryloyloxyisophthalic acid)の製造
5-ヒドロキシイソフタル酸(5-HPA、5-Hydroxyisophthalic acid)5.5mmol(1g)を10mLの2M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液で充填された三口フラスコに添加し、10分間窒素パージさせた。前記混合物を0~5℃に冷却および維持させ、塩化アクリロイル(Acryloyl chloride)5.8mmolを1時間非常に徐々にドロッピングして添加した後、室温で1時間撹拌させた。これにHClを添加し、生成物である5-アクリロイルオキシイソフタル酸(APA、5-Acryloyloxyisophthalic acid)を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過および洗浄し、アルコールで再結晶した後、50℃で24時間真空状態で乾燥し、APAを得た(収率55%)。
【0201】
APAのH NMRスペクトル
H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ (ppm): 13.54 (s, 2H), 8.37 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 6.59 (dd, J = 17.2, 1.5 Hz, 1H), 6.43 (dd, J = 17.2, 10.2 Hz, 1H), 6.19 (dd, J = 10.2, 1.5 Hz, 1H)
【0202】
-DPAP(Dipropargyl-5-acryloyloxyisophthalate)の製造
フラスコにテトラヒドロフラン(THF)40mLと前記APA 16.34mmol(3.86g)を準備した。これにプロパルギルアルコール(Propargyl alcohol)163.4mmol(8.2g)とAPA 100molに対して4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、4-dimethylaminopyridine)15mol%を添加した。前記混合物を0~5℃に冷却させ、窒素雰囲気下で1時間撹拌させた。これにTHF 30mLにN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、N,N’-Dicyclohexylcarbodiimide)24.51mmol(5g)を溶解させた溶液を徐々にドロッピングし、徐々に温度を室温に上げた後に20時間さらに撹拌させた後、沈殿物を濾過した。次にクロロホルム(Chloroform)に溶解させ、再び濾過して残留尿素(urea)を除去した。これを10%重炭酸水溶液(aqueous bicarbonate solution)で3回洗浄および精製し、白色粉末の表題化合物DPAPを得た(収率29%)。
【0203】
DPAPのH NMR、13C NMRおよびFT-IRスペクトル
H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 8.64 (t, J = 1.5 Hz, 1H), 8.05 (d, 2H), 6.66 (m, 1H), 6.34 (m, 1H), 6.09 (m, 1H), 4.96 (d, 4H), 2.55 (t, 2H)
13C NMR (75 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 164.13, 164.09, 150.77, 133.95, 131.51, 128.63, 127.92, 127.27, 77.29, 75.68, 53.17
FT-IR (cm-1, KBr): 1731 (ester C=O); 1630 (CH2=CH-); 3305 (HC≡CH);
【0204】
[製造例2]アクリレート共重合体(i)の製造
【化39】
【0205】
フラスコに前記製造例1のDPAP 0.8mmol(0.25)g、プロパルギルアクリレート(propargyl acrylate、PA)0.8mmol(0.088g)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.008mmol(1.3mg)をジメチルホルムアミド(DMF、Dimethylformamide)0.6mLとともに投入し、20分間窒素パージさせた。前記混合物を80℃で16時間撹拌させて重合を行った後、重合媒質をジクロロメタン(dichloromethane)に希釈し、前記反応物をジエチルエーテル(diethyl ether)に2回沈殿させた後に真空下で乾燥させ、アクリレート共重合体(i)を得た。
【0206】
得られた高分子は、H NMRで分析して目標生成物であるアクリレート共重合体(i)が製造されたことを確認し、GPCで分析して数平均分子量(Mn)が16,762Da、PDIが3.3であることを確認した。
H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 8.49 (br, 1H), 7.92 (br, 2H), 4.78 (br, 6H), 2.89 (br, 1H), 2.54 (s, 4H)
【0207】
[製造例3]アクリレート共重合体(ii)の製造
【化40】
【0208】
フラスコに前記製造例1のDPAP 0.8mmol(0.25g)、プロパルギルアクリレート(propargyl acrylate、PA)0.8mmol(0.088g)、グリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate、GMA)0.4mmol(0.057g)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.001mmol(1.6mg)をジメチルホルムアミド(DMF)0.6mLとともに投入し、20分間窒素パージさせた。前記混合物を80℃で16時間撹拌させて重合を行った。重合媒質をジクロロメタンに希釈し、前記反応物をジエチルエーテルに2回沈殿させた後、真空下で乾燥させ、アクリレート共重合体(ii)を得た。
【0209】
得られた高分子は、H NMRで分析して目標生成物であるアクリレート共重合体(ii)が製造されたことを確認し、GPCで分析して数平均分子量(Mn)が17,800Da、PDIが2.11であることを確認した。
H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 8.49 (br, 1H), 7.92 (br, 2H), 4.78 (br, 6H), 2.89 (br, 1H), 2.54 (s, 4H)
【0210】
[製造例4]フルオレン系共重合体(iii)の製造
【化41】
【0211】
フラスコに2,2’-(9,9-ジドデシル-9H-フルオレン-2,7-ジイル)ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン)(Macromolecules 2018、51、3、755-762の方法に従って製造)0.5mmol(0.3774g)、9,9-ビス(12-アジドドデシル)-2,7-ジブロモ-9hフルオレン(Solarmer社)0.5mmol(0.3713g)、Pd(dba)(トリス(ジベジリデンアセトン)ジパラジウム)0.01mmol(0.0092g)、トリス(o-トリル)ホスフィン0.041mmol(0.0012g)、トルエン8mLおよびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド1mLを投入し、窒素パージさせた。前記混合物を80℃に昇温し、20時間撹拌させた。クロロホルムとメタノールを用いて沈殿および濾過させ、黄色固体状の高分子(iii)を得た(収率45%)。
【0212】
[製造例5]P(CNT)溶液の製造
製造例4のフルオレン系共重合体(iii)をメチルシクロヘキサン(MCH)20mLに1mg/mlの濃度で投入し、80℃で1時間加熱して完全に溶解させた。それを冷却した後、Purified Powder SWCNT(Nanointegris Inc.、 RN-220)を10mg投入し、常温で超音波処理機(Sonics & Materials Inc.、 VCX-750、750W)で分散させ、遠心分離機(Hanil Scientific Inc.、 Supra R30)を用いて85,000gで1時間遠心分離した。沈殿物を除いた溶液を0.20μmのMCE(Mixed Cellulose Ester)メンブレンで濾過し、sc-SWCNTをラッピングしているフルオレン系共重合体(iii)を得た。得られたペレットを何度も洗浄した後、トルエン10mLに0.03mg/mlの濃度で投入して5分間超音波処理および再分散させ、P(CNT)溶液を製造した。前記P(CNT)溶液の製造工程を図1に示し、製造されたP(CNT)溶液の紫外線-可視光線-近赤外線分光分析(UV-Vis-NIR spectroscopy)した結果を図2に示した。図2において、600~800nm付近のMetalic SWCNT(金属性CNT)ピークが現れないことから、sc-SWCNT(半導体性CNT)が選択的に分類されたことを確認した。
【0213】
[製造例6]自己組織化単分子層溶液(BPS溶液)の製造
【化42】
【0214】
-ABP(4-Allyloxybenzophenone)の製造
無水アセトン(Anhydrous acetone)10mLに、4-ヒドロキシベンゾフェノン(4-HBP、4-hydroxybenzophenone)5.2mmol(1.02g)と臭化アリル(allyl bromide)7.8mmol(0.945g)を溶解させ、炭酸カリウム(KCO)1.08gを添加した。前記混合物を75℃に昇温して8時間撹拌させた後、室温に冷却させた。水を添加し、生成された溶液を50mLのジエチルエーテル(diethyl ether)で抽出し、次いで50mLの10% NaOHで2回洗浄し、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。それをメタノールで再結晶し、やや黄色がかかったABPを得た(収率80%)。
【0215】
ABPのH NMRスペクトル
H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 7.82 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.78 - 7.72 (m, 2H), 7.60 - 7.53 (m, 1H), 7.50 - 7.44 (m, 2H), 6.98 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.14 - 6.00 (m, 1H), 5.49 - 5.30 (m, 2H), 4.62 (m, 2H)
【0216】
-BPS(4-(3’-クロロジメチルシリル)プロピルオキシベンゾフェノン)およびBPS溶液の製造
フラスコに前記ABP 2gとジメチルクロロシラン(dimethyl chlorosilane)20mLを入れて撹拌させ、懸濁液を準備した。これにPt-C(10% Pt)10mgを添加し、50℃で8時間攪拌および還流させた。トルエンに前記反応物を1Mの濃度で溶解後に濾過して触媒を除去した後、化合物BPSを含むオイル状の自己組織化単分子層溶液であるBPS溶液を得た。
【0217】
BPSのH NMRスペクトル
H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ (ppm): 7.91 (m, 2H), 7.84 (m, 2H), 7.60 (m, 1H), 7.55 - 7.48 (m, 2H), 7.01 (m, 2H), 4.08 - 4.00 (m, 2H), 2.02 - 1.89 (m, 2H), 1.05 - 0.94 (m, 2H), 0.26 - 0.21 (s, 6H)
【0218】
[実施例1~11]
100nmのSiO基板層(Chung king enterprise社)を水、アセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)の順にきれいに洗浄した後、製造例6のBPS溶液に前記洗浄された基板層を浸漬し、8時間放置した後、基板をエタノールとトルエンで洗浄し、自己組織化単分子層(SAM、Self-assembled monolayer)をコーティングした。SAMがコーティングされた基板層上に、製造例2のアクリレート共重合体(i)をクロロホルムに10mg/mlの濃度で溶解させた溶液を1000rpmの条件でスピンコーティングし、7分間UV硬化した後、クロロホルムで1時間超音波洗浄して基板層に固定されていない化合物を洗浄した。
【0219】
図3に示されたように、接触角(Contact angle)の測定により自己組織化単分子層(SAM)のコーティング可否を確認し、図4の(a)に示されたように、紫外線-可視光線分光分析(UV-Vis spectroscopy)によりアクリレート共重合体(i)のコーティング可否を確認し、具体的に、アクリレート共重合体(i)溶液のコーティング後にUV硬化した後、クロロホルムで基板層を洗浄する前後の結果を比較した。
【0220】
前記アクリレート共重合体(i)がコーティングされた基板層を製造例5のP(CNT)溶液1mLに浸漬させた後、バイアルに硫酸銅(CuSO)0.003g、アスコルビン酸ナトリウム(Sodium ascorbate)0.04gおよび蒸留水0.5mLを投入し、窒素パージした。前記バイアルを超音波洗浄機に浸し、50℃の温度で110Wの強さで30秒間超音波処理してクリック反応を行った。反応終結後、トルエンで超音波洗浄して基板と反応しなかった化合物を除去することで、実施例1によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。前記クリック反応の工程概念図を図5の(A)に示した。
【0221】
実施例2は1分、実施例3は2分、実施例4は3分、実施例5は5分、実施例6は10分、実施例7は15分、実施例8は20分、実施例9は30分、実施例10は1時間、実施例11は2時間超音波処理してクリック反応を行ったことを除いては、前記実施例1の方法と同様に行い、CNTフィルムコーティング基板を製造した。
【0222】
前記実施例7、9、10および11は、ラマン分光分析(Raman spectroscopy)により基板層に形成されたCNT密度を確認し、その結果を図6に示した。また、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を介して前記実施例1および11のコーティング層表面の形態を観察し、それを図9に示した。図6および図9に示されたように、クリック反応時間が長くなるほど、CNTフィルムの密度が増加することを確認した。
【0223】
図6は、本発明に係る実施例7、9、10および11のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフである。
図9は、本発明に係る実施例1~11のコーティング層表面のSEMイメージである。
【0224】
[実施例12~15]
100nmのSiO基板層(Chung king enterprise社)を硫酸(HSO)と過酸化水素(H)を7:3で混合した溶液できれいに洗浄した後、水とトルエンで再び洗浄した。基板層に、製造例3のアクリレート共重合体(ii)をクロロホルムに10mg/mlで溶解させた溶液を1000rpmの条件でスピンコーティングし、110℃で2時間熱処理した後、クロロホルムで30分間超音波洗浄して基板層に固定されていない化合物を洗浄した。
【0225】
図4の(b)に示されたように、紫外線-可視光線分光分析(UV-Vis spectroscopy)によりアクリレート共重合体(ii)のコーティング可否を確認し、具体的に、アクリレート共重合体(ii)溶液のコーティング後に熱硬化した後、クロロホルムで基板層を洗浄する前後の結果を比較した。
【0226】
前記アクリレート共重合体(ii)がコーティングされた基板層を製造例5のP(CNT)溶液1mlに浸漬させた後、バイアルに硫酸銅(CuSO)0.003g、アスコルビン酸ナトリウム(Sodium ascorbate)0.04gおよび蒸留水0.5mLを投入し、窒素パージした。前記バイアルを超音波洗浄機に浸し、50℃の温度で110Wの強さで15分間超音波処理してクリック反応を行った。反応終結後、トルエンで超音波洗浄して基板と反応しなかった化合物を除去することで、実施例12によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。前記クリック反応の工程概念図を図5の(B)に示した。
【0227】
前記バイアルを30分間超音波処理してクリック反応を行ったことを除いては、前記実施例12の方法と同様に行い、実施例13によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。
【0228】
前記バイアルを1時間超音波処理してクリック反応を行ったことを除いては、前記実施例12の方法と同様に行い、実施例14によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。
【0229】
前記バイアルを2時間超音波処理してクリック反応を行ったことを除いては、前記実施例12の方法と同様に行い、実施例15によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。
【0230】
前記実施例12~15は、ラマン分光分析(Raman spectroscopy)により基板層に形成されたCNT密度を確認し、その結果を図7に示した。また、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を介して前記実施例12~15のコーティング層表面の形態を観察し、それを図10に示した。図7および図10に示されたように、クリック反応時間が長くなるほど、CNTフィルムの密度が増加することを確認した。
【0231】
図7は、本発明に係る実施例12~15のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフである。
図10は、本発明に係る実施例12~15のコーティング層表面のSEMイメージである。
【0232】
[比較例1]
100nmのSiO基板層(Chung king enterprise社)を硫酸(HSO)と過酸化水素(H)を7:3で混合した溶液できれいに洗浄した後、水とトルエンで再び洗浄した。基板層に製造例5のP(CNT)溶液を2000rpmの条件でスピンコーティングし、ホットプレートにて乾燥した。前記過程を3回繰り返してフィルムコーティング後、トルエンで超音波洗浄して基板と反応しなかった化合物を除去することで、比較例1によるCNTフィルムコーティング基板を製造した。
【0233】
前記比較例1は、ラマン分光分析(Raman spectroscopy)により基板層に形成されたCNT密度を確認し、その結果を図8に示した。また、走査型電子顕微鏡を介して前記比較例1のコーティング層表面の形態を観察し、それを図11に示した。
【0234】
図8の(a’)は、比較例1において、超音波洗浄前のコーティング層のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフであり、(b’)は、トルエンで超音波洗浄後のコーティング層のラマン分光分析(Raman spectroscopy)の結果を示したグラフであって、洗浄後のコーティング層のラマン分光分析ピークが顕著に減少したことを確認した。
【0235】
図11の(A)は、比較例1において、超音波洗浄前のコーティング層表面のSEMイメージであり、(B)は、超音波洗浄後のコーティング層表面のSEMイメージであって、洗浄後のコーティング層の表面からCNTフィルムの大部分が剥離されたことを確認した。
【0236】
本発明に係る実施例1~8から分かるように、クリック反応を介して基板層とCNTとの接着力を向上させることで、高密度でありながらも均一なCNTフィルムコーティング基板が製造可能であることを確認した。また、図8および図11から分かるように、スピンコーティングのみを行った比較例1は、トルエン洗浄後にCNTフィルムの大部分が剥離されたが、本発明の一実施形態のCNTフィルムコーティング基板は、洗浄後にも高密度のCNTフィルムを維持し、本発明に係るCNTフィルムコーティング基板の水、有機溶媒に対する高い安定性および優れたフィルム耐久性を確認することができた。
【0237】
また、図6および7から分かるように、超音波処理する時間、すなわち、クリック反応時間が長いほど、CNTフィルムの密度が高くなることを確認することができ、図6図7を比較した際に、クリック反応時間が30分以上である場合には、時間が同一であるとしても、アクリレート共重合体(i)よりはアクリレート共重合体(ii)を用いる場合に、さらに高密度のCNTフィルムコーティング基板が製造可能であることを確認した。
【0238】
以上、特定の事項と限定された実施例および比較例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0239】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
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