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特許7247406焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/08 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A23N12/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022119124
(22)【出願日】2022-07-26
【審査請求日】2022-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316014342
【氏名又は名称】テクノワールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】磴 一郎
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-336377(JP,A)
【文献】実開昭62-083490(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風式焙煎部(10)を備えた珈琲焙煎機(1)であって、
焙煎機本体(20)内の前記熱風式焙煎部(10)が、前記焙煎機本体(20)に対して傾斜する傾斜角調整機構(30)を備え
前記傾斜角調整機構(30)が焙煎状態に対応してセンサー(31)から時間と熱量と豆の分量を信号により演算し、最も適した傾斜角となるように熱風式焙煎部(10)の角度を決定し、その角度へと駆動することを特徴とする珈琲焙煎機(1)。
【請求項2】
拌装置(2)が備えられる前記珈琲焙煎機(1)において、
前記攪拌装置(2)は焙煎容器(11)の外側に配置される回転支持軸(40)と、
該回転支持軸(40)を介して回転駆動される螺旋羽根固定フランジ(50)と、
回転状態において回転軸心中央に空洞部を形成する帯状の螺旋羽根(60)と、から成り、
前記螺旋羽根(60)は、一方の端部が前記螺旋羽根固定フランジ(50)に固定され、他方の端部は開放されている撹拌装置(2)を備え、該撹拌装置(2)が前記熱風式焙煎部(10)とともに前記傾斜角調整機構(30)により傾斜することを特徴とする請求項1に記載の珈琲焙煎機(1)。
【請求項3】
前記螺旋羽根(60)が二枚又は三枚で構成されて成ることを特徴とする請求項2に記載の珈琲焙煎機(1)。
【請求項4】
前記螺旋羽根(60)が半周型又は一周型で構成されて成ることを特徴とする請求項2に記載の珈琲焙煎機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風式珈琲焙煎機の攪拌技術に関し、詳しくはヒーターで加熱した熱風を満遍なく珈琲豆へ伝達し、より斑無く煎ることができ、且つ熱効率に優れた焙煎装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
美味しい珈琲を淹れるためには、珈琲豆の選択から始まり、焙煎の仕方、挽き方、淹れ方が問題となる。特に焙煎においては加熱の方法や時間などの加減で苦みや酸味が変化してしまうため重要な工程といえる。また、珈琲の味や香りを損なわないためには淹れる直前に焙煎するのが最善だが、まだまだ自宅用や小さな店舗用の小型焙煎機の普及は浸透したとは言えず、大型の焙煎機を有する業者等に焙煎工程は任せているという現状がある。しかしながら、大型の焙煎機は沢山の豆を入れての焙煎となることから、焦げたものや焙煎が浅いものなど焙煎斑も起きやすい。このように適度でない焼け方の珈琲豆の混入は、味や風味に大きく影響してしまうため、ハンドピッキングにより取り除くこととなり、その作業負担も大きいものといえる。そこで、小型の自宅用焙煎機や業者用の大型焙煎機等、どのような大きさでも珈琲豆の焙煎斑が出来にくく、より美味しい珈琲を提供するための焙煎技術が求められている。
【0003】
焙煎機の加熱方法には、直火、熱風、半熱風と大きく種類を分けることができ、直火式は回転ドラムの下にバーナー等を設置し、ドラムを回転させ加熱されたドラムからも伝導熱と釜全体からの輻射熱によって珈琲豆を煎るというものである。この方式は、炎の外縁部を珈琲豆に向けるため他の熱供給形式に比べてメリハリのある香味を作り出すことができるという特徴がある。これに対し、熱風式は熱源がドラムと切り離したところにあり、外部バーナーや電熱ヒーターによってドラム内に熱風を送り込み加熱する。この方式は、直火や半熱風に比べるとドラムからの伝導熱の影響が少なく、熱風の温度や風量を調整することによって珈琲豆への熱量供給をコントロールできる。従って、熱風式では強い熱風を用いて短時間で焙煎することも可能であり、逆にじっくり長時間焙煎することも可能になるという特徴がある。即ち熱風式は焙煎の自由度が高いという長所から、焙煎機として導入されるケースが増えてきている。なお、相対的に直火や半熱風の味に比べるとあっさりした味わいに感じられるという特徴を有している。しかし、このような多くの特徴を有する熱風式焙煎機ではあるものの、熱風焙煎においては大きな風量によって珈琲豆を撹拌するため、電気ヒーターとファンモーターの消費電力が大きくなるという問題に加えて送風音が大きいという最大のデメリットを有している。
【0004】
また、熱風式焙煎機の特徴を生かし、焙煎機内の豆が熱風により踊るように撹拌される構造にすることによって、パフォーマンスとして視覚も楽しませるような焙煎機があれば好適であるといえる。そうすることによって、個人においても店舗においてもより一層の満足感を満たすことができるという利点となり、パフォーマンスの提供を含んだ焙煎機が求められているといえる。
【0005】
そこで、従来からも、種々の技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「熱風式焙煎機」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「熱交換を効率よく行うことが可能な焙煎機を提供する。」ことを課題とし、解決手段としては「熱風式焙煎機は、筐体と、筐体内に空気を吸い込むファンユニットと、空気流入口および焙煎室を有する、内部が中空の焙煎筒と、焙煎筒内の空気流入口から焙煎室までの間に配置され、空気流入口から流れ込んだ空気を加熱するヒータユニットと、焙煎筒の外周壁の一部を覆い、焙煎筒の外周壁の一部から間隙を設けて配置された焙煎筒カバーとを備えている。焙煎筒は、所定以上の熱伝導率を有する材料で形成されている。焙煎筒カバーの内周壁および焙煎筒の外周壁の一部は、ファンユニットによって吸い込まれた空気を焙煎筒の空気流入口に導く間隙風路を形成する。」というものである。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、羽根の回転を利用して熱風を攪拌させることによって均一な焙煎が可能となるという点は本願発明の技術と共通しているものの、焙煎容器は直立しており傾斜角を備えていない点で相違する。
【0006】
また、発明の名称を「コーヒー生豆焙煎機」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「コーヒー生豆容器から排出された熱風を一部の外気と混合して再循環させることにより、電力の消耗を低減することのできるコーヒー生豆焙煎機を提供する。」ことを課題とし、解決手段を「本発明によるコーヒー生豆焙煎機、コーヒー生豆を環状に収容する生豆容器外部から生豆容器の内部に延長形成された空気流路;空気流路上に設置され、外気を生豆容器の内部に流動させるファン空気流路上に設置され、生豆容器の内部に流動してきた空気を加熱するためのヒータ生豆容器の一側に設置され、コーヒー生豆から剥離される皮を収容するフィルター及び生豆容器からフィルターの一側まで形成され、上記剥離された皮を流動させた空気を排出するための排出流路を有している。」とするものである。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、排出された熱風を一部の外気と混合して再循環させることで省エネという課題は解決するものの、焙煎容器は直立しており傾斜角を備えていない点で相違する。即ち、回転する螺旋羽根と焙煎容器の傾斜角を調整することで、より斑の無い焙煎ができるようにする本発明とでは、課題を解決する技術的手段が相違している。
【0007】
また、発明の名称を「コーヒー焙煎機」とする技術が開示されている(特許文献3参照)。
具体的には、「焙煎によって珈琲の生豆から出る油がドラム内面に焼けこげて付着した場合でも、珈琲の生豆を撹拌する羽根はドラム内面に引っ掛ったり、異音を発生したりするのを防止して、常にコーヒーの豆の均一な焙煎が出来るようにする事」を課題とし、解決手段としては「モーターで同点する軸に腕を取り付け、この腕の端部に枢支した羽根でドラム内に収納したコーヒーの生豆を撹拌しながら焙煎するコーヒー焙煎機において、上記羽根はドラム内面に対して湾曲形成し、この羽根を弾発部材で前記ドラム内面に付着した。」というものである。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、ドラムの回転を利用して攪拌させることで均一な焙煎が可能となるという点では本願発明の技術と共通しているものである。しかしながら、係る技術は熱風焙煎によるものではなく、直火式であると考えられ、構成を異にするといえる。また、ドラム内が見えず、視覚からのパフォーマンスを意識した構造ではなく、本発明の課題を解決するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-088908号
【文献】特開平11-276139号
【文献】実全平4-110489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、珈琲豆の焙煎において、より斑のない焙煎を可能とし、省エネ且つ、パフォーマンス性に勝れた焙煎機用の撹拌羽根とこれを利用した焙煎機の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱風式焙煎部を備えた珈琲焙煎機であって、焙煎機本体内の前記熱風式焙煎部が、前記焙煎機本体に対して傾斜する傾斜角調整機構を備えた構成を採用する。
【0011】
また、本発明は、前記珈琲焙煎機に用いる攪拌装置であって、焙煎容器の外側に配置される回転支持軸と、該回転支持軸を介して回転駆動される螺旋羽根固定フランジと、回転状態において回転軸心中央に空洞部を形成する帯状の螺旋羽根と、から成り、前記螺旋羽根は、一方の端部が前記螺旋羽根固定フランジに固定され、他方の端部は開放されている構成を採用することもできる。
【0012】
また、本発明は、前記螺旋羽根が二枚又は三枚で成る構成を採用することもできる。
【0013】
また、本発明は、前記螺旋羽根が半周型又は一周型で成る構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明は、前記傾斜角調整機構が焙煎状態に対応してセンサーから時間と熱量と豆の分量を信号により演算し、最も適した傾斜角となるように熱風式焙煎部の角度を決定し、その角度へと駆動する採用することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機によれば、焙煎部を傾斜させることにより焙煎容器の中の珈琲豆を容器内に均等に分散させることができるため、一粒当たりの熱風を受ける量が均等となり、斑なく煎ることが出来るという優れた効果を発揮する。
【0016】
また、本発明に係る焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機によれば、焙煎容器内に設けられる撹拌羽根が螺旋状の羽根を有して構成されるため、熱風式焙煎機において撹拌のために用いられる高い圧力の送風が必要なく、小電力での可動を可能とし、光熱費等のコストを軽減できるという優れた効果を発揮するものである。
【0017】
また、本発明に係る焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機によれば、焙煎初期の水分の多い状態の珈琲豆と焙煎中期から後期にかけて水分が除去された状態の珈琲豆では撹拌状態が異なり、従来の焙煎機では火力やドラムの回転速度を変化させることで対応するしかなかったが、本発明では、焙煎部の傾斜角度を変化させるという新たな機能を備えたことにより、含水量に合わせて傾斜させることができ、これによって撹拌状態を調整することが可能となるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る珈琲焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機の基本構成を説明する基本構成説明図である。
図2】本発明に係る珈琲焙煎機における螺旋羽根の半周型を説明する構成説明図である。
図3】本発明に係る珈琲焙煎機における螺旋羽根の一周型を説明する構成説明図である。
図4】本発明に係る螺旋羽根が焙煎容器に組み込まれた状態を示す組み立て説明図である。
図5】本発明に係る傾斜角調整機構の稼働状態を説明する稼働状態説明図である。
図6】本発明に係る傾斜角調整機構により焙煎容器の中の珈琲豆の収容状態示す状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る珈琲焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機1は、熱風式焙煎部を備えた珈琲焙煎機であって、焙煎機本体内の熱風式焙煎部が、焙煎機本体に対して傾斜する傾斜角調整機構を備えた構成を採用したことを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0020】
図1は、本発明に係る珈琲焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機の基本構成を説明する基本構成説明図である。次に、焙煎機用螺旋羽根とこれを利用する焙煎機の各構成について説明する。
【0021】
珈琲焙煎機1は、直火式と熱風式と半熱風式と大別される。熱風式は煎りムラが少なく、あっさりとした仕上がりで長時間でも短時間でも焙煎が可能だという特徴を有している。これに対して直火式はメリハリが分かりやすく香ばしい風味を作り出すことが可能であるが、煎りムラが出やすくなる等の短所も有している。また、半熱風式は煎りムラを抑えてまろやかで香り豊かな仕上がりを得ることができるという三者三様の特徴を有している。一般的な熱風式焙煎機には外気を取り込む吸気部、珈琲豆Cを煎るための焙煎部、焙煎後の熱風を処理する排気部など、熱風式珈琲焙煎機として通常備える構成を含むものである。また、熱風式は、熱源がドラムと切り離したところにあり、外部バーナーや電熱ヒーターによってドラム内に熱風を送り込み加熱するものである。従って、直火や半熱風に比べるとドラムからの伝導熱の影響が少なく、熱風の温度や風量を調整することによって珈琲豆への熱量供給をコントロールできるといえる。
【0022】
攪拌装置2は、熱風式焙煎部10における焙煎部の焙煎容器11内で回転し、珈琲豆Cを攪拌する撹拌機であり、焙煎容器11の外側に配置される回転支持軸40と、該回転支持軸40を介して回転駆動される螺旋羽根固定フランジ50と、回転状態において回転軸心中央に空洞部を形成する帯状の螺旋羽根60とから構成され、螺旋羽根60は、一方の端部が前記螺旋羽根固定フランジ50に溶接などの結合手段により強固に固定され、他方の端部は開放されていること、並びに帯状の螺旋羽根60が回転することにより回転領域において中心軸方向に中空となる空間を設ける構成であることを特徴とする撹拌装置である。
【0023】
熱風式焙煎部10は、ヒーターから発生した熱をファン及び案内部によって、前記珈琲豆Cへ伝えて焙煎する装置であり、また、焙煎後の熱風の排出や豆の冷却、及びチャフの処理を行うものである。
【0024】
焙煎容器11は、珈琲豆Cを焙煎するために熱風を当てる領域であり、熱風の送風圧で撹拌するのではなく、螺旋羽根60による撹拌装置が回転することで撹拌を行うための容器である。なお、商業的な効果としての美観や演出のため並びに焼き色を観察できるように透明な素材を採用すると好適である。
【0025】
焙煎機本体20は、熱風焙煎機として必要な構成部材を全て備える為の筐体である。本発明に係る珈琲焙煎機1では熱風式焙煎部10がモーターによりその角度を変化させるため、熱風式焙煎部10を保持できるように強固な構成とする。なお、商業的な効果としての美観や演出のため並びに焼き色を観察できるように透明なガラス等で覆われる構成を採用すると好適である。
【0026】
傾斜角調整機構30は、焙煎機本体内において熱風式焙煎部10を回動させるためにモーターや歯車等の機械要素部材を用いてその角度を構成するものである。具体的には、図5に示すように傾斜角調整機構30はサーボモーター又はステッピングモーターを用い、扇状の内歯歯車と外歯歯車とを組み合わせて駆動する実施例である。
【0027】
センサー31は、温度センサー、ポジションセンサー、圧力センサーなどの各種センサーであり、熱風式焙煎部10内の温度や湿度を検知し、係る情報に基づいてヒーターの温度制御やファンモーターの回転制御をさせるために用いるものである。また、傾斜角度調整機構30において、傾斜角度を検出するためのエンコーダーやポテンショメーターを用いることも好適である。
【0028】
回転支持軸40は、螺旋羽根固定フランジ50に固定されモーターによって回転する回転軸である。本発明に係る珈琲焙煎機1では焙煎容器11内に螺旋羽根60のみが配置されるようにするために、回転支持軸40は、焙煎容器11の外側に配置される。
【0029】
螺旋羽根固定フランジ50は、モーターにより回転する回転支持軸40からその駆動力を螺旋羽根60へ伝達するためのフランジであって、回転支持軸40の中心から放射方向へと延びるアームである。その延びたアームに螺旋羽根60の一方の端部を溶接等により強固に固定し、例えば螺旋羽根60を三枚で構成する場合には120度の間隔でアームを備え、図面には示していないが螺旋羽根60を二枚で構成する場合には180度隔ててアームを備える。また、アームとアームの間に隙間があることによって熱風が焙煎容器11の中へ入り込む入口となる。係る隙間は、螺旋羽根固定フランジ50の横方向から見た場合に中心軸の中心から帯状の螺旋羽根60の幅方向を溶接可能とするだけの幅を有する開口穴であり、係る開口穴を通じて熱風が出入りするものである。
【0030】
螺旋羽根60は、別名でヘリカル、スパイラル、渦巻き状などと呼ばれる帯状の羽根であり、図2で示した実施例では、螺旋羽根60の片側の固定端から半回転ひねって他方の開放端までとなる半周型の場合を示し、図3では螺旋羽根60の片側の固定端から一回転ひねって他方の開放端までとなる一周型を示している。これ等の実施例に示されるように、片側の固定端では螺旋羽根固定フランジ50に固定されるが、反対側の端部は開放され、その軸芯の周辺部には空洞領域が形成されるというものである。枚数については図面に示すような三枚構成のみならず二枚構成や四枚構成など多様な態様が考えられる。
【0031】
図2は、本発明に係る珈琲焙煎機における攪拌用羽根2の半周型を説明する構成説明図である。図2(a)は左側面図、図2(b)は正面図、図2(c)は右側面図、図2(d)は斜視図をそれぞれ示している。係る半周型は図3に示した一周型と比較すると、珈琲豆Cの搬送量が少なくなり同じ搬送量とするには回転数を上げなければならない。しかし本発明では傾斜角調整機構30を備えているため、回転数を抑えたままでも良好な撹拌が可能であり、特に粒径の小さなゴマなどを煎る際の撹拌に適している。そして、焙煎機本体20の小型化に貢献する。
【0032】
図3は、本発明に係る珈琲焙煎機における攪拌用羽根2の一周型を説明する構成説明図である。図3(a)は左側面図、図3(b)は正面図、図3(c)は右側面図、図3(d)は斜視図をそれぞれ示している。係る一周型は図2に示した半周型と比較すると、珈琲豆Cの搬送量が多くなり同じ搬送量であれば回転数を抑えることができる。そして本発明では傾斜角調整機構30を備えているため、より回転数を抑えたままでも良好な撹拌が可能であり、穏やかな回転で優雅な動作に魅せるパフォーマンスに貢献する。
【0033】
図4は、本発明に係る攪拌用羽根2が焙煎容器11に組み込まれた状態を示す組み立て説明図である。図4(a)攪拌用羽根2の組み立て斜視図、図4(b)攪拌用羽根2の組み立て正面図、図4(c)は焙煎容器11と攪拌用羽根2を組み立てた組み立て斜視図をそれぞれ示している。
【0034】
図5は、本発明に係る傾斜角調整機構30の稼働状態を説明する稼働状態説明図である。図5(a)は、傾斜角調整機構30により熱風式焙煎部11が垂直な状態に配置される場合を示し、図5(b)は、傾斜角調整機構30により熱風式焙煎部11が略45度傾斜した状態に配置される場合を示し、図5(c)は、傾斜角調整機構30により熱風式焙煎部11が水平な状態に配置される場合をそれぞれ示している。
【0035】
図6は、本発明に係る傾斜角調整機構30により焙煎容器11の傾斜角度を調整することによる珈琲豆Cの容器内における収容状態を示し、図6(a1)、図6(b1)、図6(c1)は、撹拌羽根60が回転していないときの焙煎容器11内の珈琲豆Cの状態を示し、図6(a2)、図6(b2)、図6(c2)は、螺旋羽根60が回転している状態の容器内の珈琲豆の状態を示し、左から順に垂直状態、中央が傾斜状態、右側が水平状態をそれぞれ示している。図6に示すように焙煎容器11内の珈琲豆Cは、自重によって容器内で安定した状態で落ち着いており、これに攪拌部材を用いてかき回せば当然その状態は変化する。即ち、垂直状態では底部にまとまって集積され、傾斜させればこれに応じて珈琲豆の状態も傾斜する。このように、自重により落ち着いた状態にあると、珈琲豆同士がお互いの存在により遮熱され、熱が伝わらない。そこで撹拌機を用いるわけであるが、従来の熱風焙煎機では送風圧により珈琲豆を撹拌していたため、高い圧力の熱風が必要となり、前記の問題を生じていた。そこで、撹拌機を利用することが好適であるが、撹拌機でも珈琲豆Cが片側によってしまうという問題が起こることとなる。これを回転数で制御することは難しく、本発明においては、螺旋羽根60を備えることとしたが、図6(c2)に示したように、螺旋羽根60を備えても撹拌装置を回転させると送り方向に若干偏ってしまう。そこで、本発明では、図6(b2)に示した様に傾斜角度調整機構30を利用して傾斜角を調整することによりこれを解決することとした。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る焙煎機用螺旋羽根とこれを利用した焙煎機によれば、熱風を螺旋羽根と傾斜角調整機構により効率よく珈琲豆を均一に撹拌ができることで美味しい珈琲を提供することが可能であり、また、消費電力の削減もできることから、家庭や店舗においても、多くの方々の利用が期待でき、産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 珈琲焙煎機
2 攪拌用羽根
10 熱風式焙煎部
11 焙煎容器
20 焙煎機本体
30 傾斜角調整機構
31 センサー
40 回転支持軸
50 螺旋羽根固定フランジ
60 螺旋羽根
C 珈琲豆
【要約】
【課題】
本発明は、珈琲の焙煎において、より斑がない焙煎を可能とし、省エネ、且つ、パフォーマンス性に勝れた焙煎機用の撹拌羽根の提供を課題とするものである。
【解決手段】
本発明は、熱風式焙煎部を備えた珈琲焙煎機であって、焙煎機本体内の前記熱風式焙煎部が、前記焙煎機本体に対して傾斜する傾斜角調整機構を備えた構成を採用し、また、係る珈琲焙煎機に用いる攪拌装置であって、焙煎容器の外側に配置される回転支持軸と、該回転支持軸を介して回転駆動される螺旋羽根固定フランジと、回転状態において回転軸心中央に空洞部を形成する帯状の螺旋羽根と、から成り、前記螺旋羽根は、一方の端部が前記螺旋羽根固定フランジに固定され、他方の端部は開放されていることを特徴とする撹拌装置を備えた珈琲焙煎機とした。

【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6