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  • 特許-包丁の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】包丁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B26B 9/00 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
B26B9/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023013956
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2022031733の分割
【原出願日】2022-03-02
【審査請求日】2023-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】月本 拓延
(72)【発明者】
【氏名】三品 順司
(72)【発明者】
【氏名】仲村 聡弥
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 孝一
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143309(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0137654(KR,A)
【文献】特開2019-098109(JP,A)
【文献】特開2011-161064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材を、刃先側から見て波打ち形状となるよう加工する湾曲加工ステップと、
前記刃側部材を、背側部材と接合する接合加工ステップと、
接合された前記刃側部材と前記背側部材とに対して研削及び研磨の少なくとも一方を行うことで前記異なる金属材料がおもて面及び裏面の少なくとも一方に露出して模様を形成する研削研磨加工ステップと、を含み、
前記湾曲加工ステップ前の前記刃側部材は、前記背側部材よりも薄く、
前記湾曲加工ステップ後であって前記研削研磨加工ステップ前の前記刃側部材は、前記刃先側から見た厚さが前記背側部材と同じ厚さになっている、
包丁の製造方法。
【請求項2】
前記接合加工ステップにおいて、前記刃側部材の厚み方向の中心線が、前記背側部材の厚み方向の中心線と重なるよう接合され
請求項1に記載の包丁の製造方法
【請求項3】
前記刃側部材の厚み方向の中心線は、刃先側から見て、前記刃側部材のおもて面側の頂点を結んだ線と、裏面側の頂点を結んだ線との真中を通る線である、
請求項2に記載の包丁の製造方法
【請求項4】
前記研削研磨加工ステップの後、前記刃側部材エッチング加工するエッチング加工ステップをさらに含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の包丁の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、包丁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の金属板材が積層された素材を用いて湾曲させたうえで研削及び研磨等を施すことで、刃体に模様を施した包丁があった。このような従来の包丁は、例えば特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6377788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の包丁は、複数種類の金属板材が積層された素材を用いていたため、単一の金属板材を素材として用いた包丁よりも素材のコストが高くなり、包丁の製造コストが高くなるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を提供する。
【0006】
本発明の一態様の包丁は、
背側に位置する背側部材と、
刃側に位置し、2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材と、を備え、
刃側部材は、背側部材よりも薄い積層材を、刃先側から見て少なくとも一部が湾曲するよう加工されたうえで背側部材と接合され、接合後に研削及び研磨の少なくとも一方を行うことで模様を形成している。
【0007】
上記の包丁は、刃側部材に積層材を用い、背側部材は積層材以外の材料を用いており、積層材を用いた刃側部材の部分に模様を形成した構成にすることができる。このような包丁では、背側部材には積層材よりも単価の安い一層の材料を用いることができるため、材料費が安くなり、全体に積層材を用いた包丁よりも安価に製造することが可能となる。
【0008】
また、刃側部材と背側部材との材料を異なるものとすることができるため、刃側部材には優れた切れ味を出すことのできる材料を用い、背側部材には破損しづらい材料を用いることなどが可能であり、それぞれの目的に適した材料を選択可能になる。
【0009】
また、刃側部材の刃先に異なる金属材料が現れるので、摩耗性の異なる金属材料を用いた場合には、摩耗により刃先がのこぎり状となり、より鋭い切れ味が得られるようになる。
【0010】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材は、刃先側から見て波打ち形状となるよう加工される。
【0011】
上記の包丁によれば、研削または研磨等によって刃側部材に見た目に優れる波型の模様を形成することができる。
【0012】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材は、研削及び研磨の少なくとも一方を施されることで、刃側部材の異なる金属材料がおもて面及び裏面の少なくとも一方に露出して模様を形成している。
【0013】
上記構成の包丁によれば、おもて面及び裏面の双方または一方に、異なる金属材料が露出する模様を持った包丁とすることができる。
【0014】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材は、湾曲するよう加工された状態において、刃先側から見た厚さが背側部材と略同じ厚さとなっている。
【0015】
上記構成の包丁によれば、刃側部材と背側部材とを接合する際、両者を平らな台上に寝かせた状態にすることで両者の中心線を合せることができるため、接合の際に特別な治具等を用いることなく、位置ずれを抑えつつ両者を接合させることができる。
【0016】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材の厚み方向の中心線が、背側部材の厚み方向の中心線と略重なるよう接合されている。
【0017】
上記構成の包丁によれば、背側部材と刃側部材との位置ずれを最小限にしつつ、両者を接合させることができる。
【0018】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材の厚み方向の中心線は、刃先側から見て、刃側部材のおもて面側の頂点を結んだ線と、裏面側の頂点を結んだ線との真中を通る線である。
【0019】
上記包丁において好ましくは、
刃側部材はエッチング加工が施されている。
【0020】
上記構成の包丁によれば、刃側部材を形成する異なる金属材料の化学変化に対する特性を生かすことで、より美しい模様をはっきりと形成することなどが可能となる。
【0021】
本発明の一態様の包丁の製造方法は、
2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材を、刃先となる方向から見て少なくとも一部が湾曲するよう加工する湾曲加工ステップと、
刃側部材を背側部材と接合する接合加工ステップと、
接合された刃側部材と背側部材とに対して研削及び研磨の少なくとも一方を行い模様を形成する研削研磨加工ステップと、を含む。
【0022】
上記のようなステップにより模様を有する包丁を製造すると、模様を有する包丁を比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、接合前の包丁の平面図である。
図2図2は、接合後、研削前の包丁の平面図である。
図3図3は、接合後、研削前の包丁を刃先側から見た図である。
図4図4は、研磨後の包丁の平面図である。
図5図5は、研磨を行った刃側部材の模様発現部分を拡大した概念図である。
図6図6は、研磨を行った刃側部材の模様発現部分を拡大した平面図である。
図7図7は、包丁の製造工程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一形態の包丁は、複数の金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材と、単一材料の背側部材とを接合させたうえで研削及び研磨を行うことで製造される、刃側部材に模様が形成された包丁である。
【0025】
以下、本発明の一形態の包丁について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0026】
図1は、背側部材2と刃側部材3とが接合される前の包丁1の平面図である。
【0027】
背側部材2は、一層の平板状の金属で形成され、刃側部材3と接合された状態では背側に位置する。背側部材2は、例えば、マルテンサイト系ステンレスであるSUS420J2などで形成される。背側部材2は平面視で、背側の縁部が直線状で、刃側部材3と接合される刃側の縁部が湾曲している。背側部材2は、刃側部材3と接合する際の位置決めとして用いられる突部21及び22を有する。突部21は、背側部材2の背側の先端側に設けられる。突部22は、背側部材2の刃側の後端側に設けられる。背側部材2は、後端側に、図示しない柄を取り付けるための孔部23を有する。背側部材2は、例えば厚さ2.5mmの金属材料で形成される。
【0028】
刃側部材3は、2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成され、背側部材2と接合された状態では刃側に位置する。刃側部材3の積層材は、例えば、異なる合金が10以上100以下の層になるよう積層された材料を採用する。具体的には、積層材には、鉄(Fe)をベースに炭素(C)0.65%、クロム(Cr)14.00%、及びモリブデン(Mo)0.15%を添加した金属と、鉄(Fe)をベースに炭素(C)1.00%、クロム(Cr)15.00%、モリブデン(Mo)1.00%、バナジウム(V)0.25%、及びコバルト(Co)1.55%を添加した金属とを交互に積層させた金属を用いることができる。ただし、刃側部材3の積層材は任意に選択可能である。
【0029】
刃側部材3は、湾曲させる工程の前の状態では平板状である。刃側部材3は、背側部材2と接合される背側の縁部が、対向する背側部材2の縁部と同じ形状で湾曲している。刃側部材3は、背側部材2の突部21及び22に対向する位置に、それぞれ接合する際の位置決めに用いられる突部31及び32を有する。突部31は、刃側部材3の背側の先端側に設けられる。突部32は、刃側部材3の背側の後端側に設けられる。加工前の平板の状態では、刃側部材3の厚さは、例えば2.2mmとする。湾曲加工前の刃側部材3の厚さは、背側部材2よりも薄くなっている。
【0030】
上記の背側部材2及び刃側部材3は、以下に具体的に説明する製造工程で加工されて包丁1となる。包丁1の製造工程は、図7に示すように、刃側部材3を湾曲させる湾曲加工工程S1、背側部材2と刃側部材3とを接合する接合加工工程S2、接合された背側部材2及び刃側部材3を研削する研削工程S3、研磨する研磨工程S4、エッチングするエッチング工程S5、及びバフ研磨を行うバフ研磨工程S6を含む。
【0031】
刃側部材3は、上記のように加工前は平板状であるが、湾曲加工工程S1で、刃先側から見て波打ち形状となるよう加工する湾曲加工が施されることで、図1及び図3に示された形状となる。図3には、図1の矢印Aで示される刃先側から見た、刃側部材3と背側部材2とが接合された状態が示されている。図3において、背側部材2は、おもて面2aと裏面2bとを有する。刃側部材3の湾曲の態様は任意に決定可能であるが、包丁1として完成した状態ではおもて面及び裏面の少なくとも一方に模様が形成される程度に湾曲させられる。図3に示されるように、本実施形態の刃側部材3は、刃先側から見て波打ち形状が周期的に繰り返された形状となっている。このような、刃先側から見て波打ち形状が繰り返された形状にすると、完成した包丁1には、美観に優れる周期的な波打ち模様が形成される。
【0032】
湾曲加工された刃側部材3は、背側部材2と位置ずれすることなく互いの中心線で接合されるよう、厚さが背側部材2の厚さと同じ2.5mmとなっている。図3に示されるように、湾曲加工された刃側部材3の厚さは、刃側部材3のおもて面3aにおける複数の頂点33aを結んだ線と、裏面における複数の頂点33bを結んだ線との距離をいう。本明細書では、この刃側部材3のおもて面3aにおける複数の頂点33aを結んだ線と、裏面における複数の頂点33bを結んだ線と真中を通る直線を、湾曲加工された刃側部材3の中心線3cという。
【0033】
刃側部材3の湾曲加工は種々の方法で行うことができるが、例えば、刃側部材3に対して複数回にわたりプレス加工を施すなどの方法によって行われる。刃側部材3の湾曲加工は、その他の方法により行ってもよい。
【0034】
湾曲加工が施された刃側部材3は、接合加工工程S2で、背側部材2と接合される。背側部材2と刃側部材3とを接合する接合加工は、例えば、背側部材2と刃側部材3とを、位置決め用の突部21及び22と突部31と32とが対向するよう縁部を合せて台上に置いた状態で、ろう付け加工を施すことで行われる。上記のとおり、湾曲加工が施された刃側部材3と背側部材2とは、いずれも2.5mmの厚さになっており、台上に置いたときに同じ高さとなる。接合加工を行うとき、台上に置かれた背側部材2及び刃側部材3は、図3に示すように、刃先側から見て、刃側部材3の中心線3cが背側部材2の中心線と重なる。ろう付けは、例えば、りん銅ろうを用いて行われるが、これに限るものではなく、銀ろうなどを用いてもよい。これにより、図2に示されるように、刃側部材3と背側部材2とが接合される。
【0035】
背側部材2と刃側部材3とを接合した後、接合した材料に所定の処理を施した後、両者を研削及び研磨することで包丁1として仕上げる。また、背側部材2と刃側部材3とを接合した後、位置決め用の突部21、22、31、及び32は研削等により除去され、図4のような状態となる。研削工程S3では、接合された背側部材2及び刃側部材3をおもて面及び裏面から研削し、刃先に向かって薄くする。その後、研磨工程S4では、刃先に向かって薄くなるよう、少なくとも刃側部材3を研磨することで表面を滑らかにする。
【0036】
このとき、研削工程S3または研磨工程S4では、刃側部材3を形成する積層材のうちの2以上の金属材料がおもて面及び裏面に露出し、例えば図4及び図6で示すような模様が刃側部材3の表面に現れる。図5は、研磨を行った刃側部材3の模様発現部分を拡大した概念図である。図5に示されるように、刃側部材3のおもて面及び裏面には、刃側部材3を形成する異なる金属材料の層である301、302、303、304、及び305が表面に露出することで模様が形成される。なお、図5では、図4及び図6とは逆側の面が示されているため、形成される模様が異なっている。ただし、この時点では、露出した金属材料の境界がはっきりとは視認しづらい場合がある。
【0037】
次に、研削及び研磨が完了した包丁1に、例えば液剤を用いたエッチング加工を施すエッチング工程S5が行われる。エッチング加工を施した、刃側部材3のおもて面及び裏面に露出した金属材料は、溶解度の違いにより段差が生じることで層間の境界を判別しやすくなり、はっきりとした模様が見られるようになる。
【0038】
次に、包丁1の、特に刃側部材3に対して、バフ研磨を施すバフ研磨工程S6が行われる。バフ研磨は、従来から知られる方法を採用可能である。包丁1に対して、バフ研磨が施すことで、形成された模様がさらにはっきりと見られるようになる。なお、バフ研磨は必ずしも行わなくてもよい。
【0039】
さらに、刃側部材3の刃先に対して刃付けを行うことで鋭利にし、包丁として使用可能な状態とする。なお、刃付けを行うことなく包丁として提供してもよい。
【0040】
このようにして、図4に示すような包丁1が得られる。包丁1には、図示しない柄が孔部23が設けられた後端に連結されることで完成する。
【0041】
[変形例]
実施形態で具体的に説明した包丁1、及び包丁1の製造方法には、以下に示す変形例を適用可能である。
【0042】
実施形態では、接合後の背側部材2及び刃側部材3に対して研削及び研磨を施していたが、研削または研磨の一方のみを施して包丁1を形成してもよい。
【0043】
実施形態の湾曲加工工程S1では、刃先側から見て、全体にわたって波打ち形状となるよう刃側部材3を加工する湾曲加工が施されたが、刃側部材3の一部のみが湾曲するよう加工してもよい。すなわち、湾曲加工における湾曲箇所を1か所以上としてもよい。この場合、研削及び研磨により、刃側部材3の湾曲した部分にのみ模様が形成されることがある。
【0044】
また、刃側部材3には、おもて面または裏面の一方にのみ模様が現れるよう加工されてもよい。
【0045】
実施形態の刃側部材3は、おもて面と裏面とで異なる模様が現れるよう加工されたが、おもて面と裏面とで同じ模様が現れるよう加工されてもよい。
【0046】
実施形態では、背側部材2として一層の平板状の金属材料を用いたが、目的に応じて複数層の金属材料を用いてもよい。
【0047】
実施形態では、湾曲加工で、刃側部材3が、背側部材2と略同じ厚さとなるよう加工されていたが、厚さが異なるよう加工してもよい。ただし、このような湾曲加工後の刃側部材3を用いる場合、刃側部材3と背側部材2とを接合する際に中心線を合せようとすると、両者を同一の平らな台上に置くことができず、段差を設けるか、または治具を用いることとなる。
【0048】
実施形態の接合加工では、ろう付けにより背側部材2と刃側部材3とを接合したが、例えば、レーザー溶接、ガス溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接、またはその他の溶接などの別の既存の方法を用いて両者を接合してもよい。
【0049】
また、実施形態では厚さが均一の刃側部材3を用いることを前提として説明したが、背側から刃先側に向かって薄くなるよう形成された刃側部材3を用いてもよい。
【0050】
[本実施形態の特徴]
本実施形態の包丁1は、例えば以下のような特徴を有する。
【0051】
包丁1は、背側部材2及び刃側部材3を備える。刃側部材3は、背側部材2よりも薄い積層材を、刃先側から見て少なくとも一部が湾曲するよう加工されたうえで背側部材2と接合され、研削及び研磨の少なくとも一方を行うことで、刃側部材3に模様が形成されている。このような包丁1は、背側部材2には刃側部材3の積層材よりも単価の安い一層の金属材料を用いることができるため、材料費が安くなり、全体に積層材を用いた包丁よりも安価に製造することが可能となる。
【0052】
また、刃側部材3と背側部材2との材料を異なるものとすることができるため、刃側部材3には優れた切れ味を出すことのできる材料を用い、背側部材2には破損しづらい材料を用いることなどが可能であり、それぞれの目的に適した材料を選択しやすくなる。
【0053】
また、刃側部材3の刃先に異なる金属材料が現れるので、刃側部材3の各層を形成する金属材料として摩耗性の異なる金属材料を用いると、刃先がのこぎり状となり、より鋭い切れ味が得られるようになる。
【0054】
包丁1は、刃側部材3が、刃先側から見て波打ち形状となるよう加工されることが好ましい。このような包丁1では、研削または研磨等によって、優れた美観の波型の模様を刃側部材3に形成することができる。
【0055】
包丁1では、刃側部材3が、研削及び研磨の少なくとも一方を施されることで、刃側部材3の異なる金属材料がおもて面及び裏面の少なくとも一方に露出して模様を形成させることが好ましい。このような包丁1では、おもて面及び裏面の双方または一方に、異なる金属材料が断続的に露出する模様を持った包丁とすることができる。
【0056】
包丁1では、刃側部材3は、波打ち形状となるよう加工された状態において、刃先側から見た厚さが背側部材2と略同じ厚さとすることが好ましい。このようにすると、刃側部材3と背側部材2とを接合する際、両者を平らな台上に寝かせた状態にすることで両者の中心線を合せることができるため、接合の際に特別な治具や段差を用いることなく、位置ずれを抑えつつ両者を接合させることができる。
【0057】
包丁1では、刃側部材3の厚み方向の中心線3cが、背側部材2の厚み方向の中心線と略重なるよう接合されることが好ましい。なお、刃側部材3の厚み方向の中心線3cは、刃先側から見て、刃側部材3のおもて面側の頂点33aを結んだ線と、裏面側の頂点33bを結んだ線との真中を通る線である。このようにすると、背側部材2と刃側部材3との位置ずれを最小限にしつつ、両者を接合させることができる。
【0058】
包丁1では、刃側部材3にエッチング加工を施すことが好ましい。これにより、刃側部材3を形成する異なる金属材料が互いに異なる化学変化を起こすことで変質し、より美しい模様をはっきりと形成することなどが可能となる。
【0059】
また、包丁1の製造方法では、湾曲加工工程S1、接合加工工程S2、研削工程S3及び研磨工程S4の少なくとも一方を含む。湾曲加工工程S1では、2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材3を、刃先となる方向から見て少なくとも一部が湾曲するよう加工する。接合加工工程S2では、刃側部材3を背側部材2と接合する。研削工程S3では、少なくとも刃側部材3を研削する。研磨工程S4では、少なくとも刃側部材3を研磨する。このようなステップにより刃側部材3に模様を有する包丁1を製造すると、模様を有する包丁を比較的安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…包丁
2…背側部材
3…刃側部材
21、22、31、32…突部
【要約】
【課題】刃先に模様を施しつつ比較的安価に製造可能な包丁を提供する。
【解決手段】本発明の包丁は、背側に位置する背側部材と、刃側に位置し、2以上の異なる金属材料が積層された積層材により形成された刃側部材と、を備え、刃側部材は、背側部材よりも薄く、刃先側から見て少なくとも一部が湾曲するよう加工されたうえで背側部材と接合され、接合後に研削及び研磨の少なくとも一方を行うことで模様を形成している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7