(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】血圧を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230322BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61B5/022 400H
A61B5/02 310K
A61B5/02 310V
A61B5/022 100B
(21)【出願番号】P 2020567048
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2019088399
(87)【国際公開番号】W WO2019223796
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520463204
【氏名又は名称】アキュレイト メディテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ワン、コアンチェン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、チョンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、チンハン
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0340219(US,A1)
【文献】国際公開第2017/086071(WO,A1)
【文献】特開2016-174798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095168(US,A1)
【文献】特開2011-206383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205767(US,A1)
【文献】特表2018-508273(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104138253(CN,A)
【文献】特開2015-054223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/022
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧を測定するための装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された処理ユニットと、
前記ハウジングに配置され、前記処理ユニットと通信するディスプレイと、
2つの機械的波動センサと、光センサと
、加速度計と、ジャイロスコープとを備え、前記処理ユニットと通信し、ユーザの動脈を感知し、前記動脈に対応する複数の生理学的信号を前記処理ユニットに送信するように構成される複数のセンサと、を含み、
前記2つの機械的波動センサ及び前記光センサは直線に配置され、前記光センサは前記2つの機械的波動センサの間に配置され、
前記処理ユニットは、前記光センサによって得られた前記複数の生理学的信号のうちの1つに基づいて血管直径及び血液密度を決定し、1分以内の予め設定された期間において、前記2つの機械的波動センサによって得られた前記複数の生理学的信号のうちの2つに応じて、複数の第1の脈波伝播時間(PTT)を決定し、前記複数の第1の脈波伝播時間及び前記2つの機械的波動センサ間の距離に応じて、複数の第1の脈波伝播速度(PWV)を決定し、厚さの範囲内で複数の想定厚さを取得し、メーンズ・コルテベーク(MK)関数を介して、前記血管直径、前記血液密度、
前記複数の第1の脈波伝播速度、及び前記複数の想定厚さに応じて計算結果を得るために、前記複数の想定厚さのそれぞれに対応する複数の血圧を計算し、妥当な血圧範囲を選択することにより、前記計算結果に基づいて複数の潜在的な厚さを選択し、選択された前記複数の潜在的な厚さに対して統計的分析を実行することにより血管壁の厚さを決定し、前記2つの機械的波動センサによって得られた前記複数の生理学的信号のうちの2つに応じて第2の脈波伝播時間を決定し、前記第2の脈波伝播時間及び前記2つの機械的波動センサ間の前記距離に基づいて第2の脈波伝播速度(PWV)を決定し、
前記加速度計の出力、前記ジャイロスコープの出力、及び前記処理ユニットに格納されている姿勢-PWVのルックアップテーブルを用いて前記第2の脈波伝播速度(PWV)を校正し、前記メーンズ・コルテベーク(MK)関数を介して、前記血管直径、前記血液密度、前記血管壁の厚さ、及び
校正された前記第2の脈波伝播速度(PWV)に応じて平均動脈圧を決定し、前記平均動脈圧から収縮期血圧及び拡張期血圧を決定し、前記収縮期血圧及び前記拡張期血圧を表示するために前記ディスプレイを制御するように構成される、装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、複数の貫通孔を備え、
前記2つの機械的波動センサのそれぞれは、圧電センサであり、
前記ハウジングの前記複数の貫通孔は、前記圧電センサ及び前記光センサに対応して配置され、前記動脈に平行な直線を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記2つの機械的波動センサのサンプリングレートは、前記光センサのサンプリングレートとは異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のセンサは、圧電センサを備え、
前記装置は、前記圧電センサと通信する信号コントローラと信号検出器とをさらに含み、
前記信号検出器は、前記圧電センサから送られた少なくとも1つの生理学的信号の信号方向を検出するように構成され、
前記信号コントローラは、前記信号方向を変更するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記信号コントローラは、前記圧電センサのうちの1つの分極方向が予測される分極方向と反対である場合、前記生理学的信号に続く生理学的信号の信号方向を変更する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、複数の貫通孔を備え、
前記装置は、前記センサのうちの1つと、前記ハウジング上の前記複数の貫通孔のうちの1つとの間に配置される時間遅延構造をさらに含み、
前記時間遅延構造は、前記ユーザ上の測定点と前記センサとの間の経路距離を長くするように構成され、
前記処理ユニットによって得られた前記
複数の第1の脈波伝播時間及び前記第2の脈波伝播時間は、前記経路距離に関連付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記時間遅延構造は、螺旋形状又はジグザグ形状である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記時間遅延構造は、機械的波動を伝達するための媒体を有する管である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記加速度計及び前記ジャイロスコープは、前記装置の軸方向の変化を測定するように構成され、
前記処理ユニットは、前記軸方向の変化に応じて前記
第2の脈波伝播時間を調整するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記軸方向の変化に応じて前記処理ユニットによって決定された前記ユーザの姿勢が閾値よりも長い期間持続するとき、測定モードに入り、前記収縮期血圧及び前記拡張期血圧を表示する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記生理学的信号の変動が閾値を超えると判定されたときに、再検査通知を生成するように構成されたアラームをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、複数の貫通孔を備え、
前記ハウジング上の前記複数の貫通孔のうちの少なくとも1つは、円錐形状であり、前記機械的波動センサの受信を強化する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ハウジングは、複数の貫通孔を備え、
前記装置は、前記複数の貫通孔の開口の周囲に固定的に取り付けられ、前記開口と前記ユーザの皮膚表面との間の密閉性を高める接触材料をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ハウジングは、複数の貫通孔を備え、
前記装置は、前記複数の貫通孔の1つを覆って異物が前記貫通孔に侵入するのを防止するためのメッシュ材料又はフィルムをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記メッシュ材料は、ポリテトラフルオロエチレンで作られ、
前記フィルムは、シリコーンゴムで作られる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のセンサは、前記ハウジング内に配置され、前記装置の中心線と重ならない、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記複数のセンサの各々は、前記ユーザに取り外し可能に取り付けられ、前記装置に有線又は無線で接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記複数のセンサは、第1のセンサと、第2のセンサとを備え、
前記第1のセンサは、前記装置の前記ハウジングの外部に配置され、前記第2のセンサは、前記ハウジング内に配置される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2018年5月25日に出願された米国仮特許出願第62/676909号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、生理学的信号監視システムに関し、より詳細には、医療専門家によるヘルスケア又は診断使用のために、ユーザの様々なタイプの生理学的信号を感知し、その信号をモバイル装置及びクラウドサーバに送信することができる装置に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性疾患のモニタリングは、慢性疾患の持続性又はその他の長期間持続性だけでなく、それらの潜在的致死性についても、医療の分野において主な焦点となっている。慢性疾患の一般的な例の1つは高血圧であり、正確かつ定期的なモニタリングが必要である。高血圧は、未治療又は治療が不十分な場合、心臓病、血流不良、さらに脳卒中を引き起こす可能性がある。
【0004】
従来、血圧の測定は、手動血圧計、聴診器及び訓練された従事者によって行われる。最新の電子機器は、聴診器及び訓練された従事者の必要性を排除するために、オシロメトリック測定及び電子計算を採用することによって、デジタル化された血圧モニタリングを実現する。しかしながら、オシロメトリック測定では、ストラッピング及びポンピングが必要であるため、測定される人に不快感をもたらす。さらに、カフレス血圧測定では、不快感を軽減し得るが、少なくとも、いくつかの血行動態パラメータが測定において使用される線形又は非線形回帰計算において考慮されない点で、測定の精度には疑問が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、高い測定精度で血圧を監視するための方法及びウェアラブル装置を提供することである。
【0006】
本開示の他の目的は、血圧を監視するための人間工学的な小型カフレスウェアラブル装置を提供することである。
【0007】
本開示の別の目的は、ユーザの任意の姿勢での血圧を監視するためのウェアラブル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、血圧を測定するための装置を提供する。装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置された処理ユニットと、ハウジングに配置され、処理ユニットと通信するディスプレイと、処理ユニットと通信し、ユーザの動脈を感知し、動脈に対応する少なくとも1つの生理学的信号を処理ユニットに送信するように構成される複数のセンサと、を含む。処理ユニットは、少なくとも1つの生理学的信号を処理して、複数の血行動態パラメータ及び脈波伝播時間を取得し、メーンズ・コルテベーク(MK)関数を介して複数の血行動態パラメータ及び脈波伝播時間から平均動脈圧を決定し、平均動脈圧から収縮期動脈圧及び拡張期動脈圧を決定し、収縮期動脈圧及び拡張期動脈圧を表示するためにディスプレイを制御するように構成される。
【0009】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、機械的波動センサと、光センサとを備える。
【0010】
好ましい実施形態では、機械的波動センサは、圧電センサであり、ハウジングの複数の貫通孔は、圧電センサ及び光センサに対応して配置され、動脈に平行な直線を形成する。
【0011】
好ましい実施形態では、圧電センサ及び光センサは、異なるサンプリングレートで動作するように構成される。
【0012】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、2つの機械的波動センサと、光センサとを備え、ハウジングの複数の貫通孔は、2つの機械的波動センサ及び光センサに対応して配置され、動脈に平行な直線を形成する。
【0013】
好ましい実施形態では、2つの機械的波動センサのサンプリングレートは、光センサのサンプリングレートとは異なる。
【0014】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、圧電センサを備え、装置は、圧電センサと通信する信号コントローラと信号検出器とをさらに含み、信号検出器は、圧電センサから送られた少なくとも1つの生理学的信号の信号方向を検出するように構成され、信号コントローラは、信号方向を変更するように構成される。
【0015】
好ましい実施形態では、信号コントローラは、圧電センサのうちの1つの分極方向が予測される分極方向と反対である場合、上記生理学的信号に続く生理学的信号の信号方向を変更する。
【0016】
好ましい実施形態では、装置は、センサのうちの1つと、ハウジング上に形成された複数の貫通孔のうちの1つとの間に配置される時間遅延構造をさらに含み、時間遅延構造は、ユーザのパルスとセンサとの間の経路距離を長くするように構成され、処理ユニットによって得られた脈波伝播時間は、経路距離に関連付けられる。
【0017】
好ましい実施形態では、時間遅延構造は、スパイラル形状又はジグザグ形状である。
【0018】
好ましい実施形態では、時間遅延構造は、機械的波動を伝達するための媒体を有する管である。
【0019】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、加速度計と、ジャイロスコープとを備え、加速度計及びジャイロスコープは、装置の軸方向の変化を測定するように構成され、処理ユニットは、軸方向の変化に応じて脈波伝播時間を調整するようにさらに構成される。
【0020】
好ましい実施形態では、装置は、軸方向の変化に応じて処理ユニットによって測定されたユーザの姿勢が閾値よりも長い期間持続するとき、測定モードに入り、収縮期動脈圧及び拡張期動脈圧を表示する。
【0021】
好ましい実施形態では、生理学的信号の変動が閾値を超えると判定されたときに、再検査通知を生成するように構成されたアラームをさらに含む。
【0022】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、機械的波動センサを備え、ハウジング上に形成された複数の貫通孔のうちの少なくとも1つは、円錐形状であり、機械的波動センサの受信を強化する。
【0023】
好ましい実施形態では、装置は、複数の貫通孔の開口の周囲に固定的に取り付けられ、開口とユーザの皮膚表面との間の密閉性を高める接触材料をさらに含む。
【0024】
好ましい実施形態では、装置は、貫通孔の1つを覆って異物が貫通孔に侵入するのを防止するためのメッシュ材料又はフィルムをさらに含む。
【0025】
好ましい実施形態では、メッシュ材料は、ポリテトラフルオロエチレンで作られ、フィルムは、シリコーンゴムで作られる。
【0026】
好ましい実施形態では、血行動態パラメータは、動脈硬化レベルと、動脈拡張レベルとを含み、動脈拡張レベルは、脈圧を得るために処理ユニットによって動脈硬化レベルに応じて正規化され、脈圧及び係数kは、収縮期動脈圧及び拡張期動脈圧を測定するために利用され、係数kは、0~1の範囲である。
【0027】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、ハウジング内に配置され、装置の中心線と重ならない。
【0028】
好ましい実施形態では、複数のセンサの各々は、ユーザに取り外し可能に取り付けられ、装置に有線又は無線で接続される。
【0029】
好ましい実施形態では、複数のセンサは、第1のセンサと、第2のセンサとを備え、第1のセンサは、装置のハウジングの外部に配置され、第2のセンサは、ハウジング内に配置される。
【発明の効果】
【0030】
要約すると、本開示の様々な実施形態に係る装置及び方法は、脈波伝播時間及び血行動態パラメータを利用して、血圧モニタリングの高精度、着用体験の改善、及び便利なモニタリングを確保することができる。
【0031】
添付の図面は本発明の1つ又は複数の実施形態を示し、記述された説明とともに、本発明の原理を説明する。可能な限り、実施形態の同じ又は類似の要素を指すために、図面全体を通して同じ参照符号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示の一実施形態に係る生理学的信号監視システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る生理学的信号監視システムのウェアラブル装置の斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の全体構成のブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る増幅器を有するウェアラブル装置の構成ブロック図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の1つの増幅器の構成ブロック図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の別の増幅器の回路構成である。
【
図7】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の自動フィードバック制御方法の流れ図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る信号コントローラ及び信号検出器を含むウェアラブル装置のブロック図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る反転信号の存在を表す時間領域信号の特性及び特徴の概略図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る信号コントローラ及び統合された信号検出器を有するウェアラブル装置の構成ブロック図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の信号コントローラの回路図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の斜視図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る脈波伝播速度測定誤差とセンサ分離距離との間の関係の模式図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る時間遅延構造を有するウェアラブル装置の概略断面図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係るアルキメデス螺旋形状の時間遅延構造を有するウェアラブル装置の概略斜視図である。
【
図16】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置のセンサ配置の概略図である。
【
図17】本開示の一実施形態に係る外部センサを有するウェアラブル装置の概略図である。
【
図18】本開示の一実施形態に係る外部センサを有するウェアラブル装置の概略図である。
【
図19】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の補助構造の概略断面図である。
【
図20】本開示の一実施形態に係る別の補助構造を有するウェアラブル装置の概略断面図である。
【
図21】本開示の一実施形態に係る気圧計アレイを有するウェアラブル装置の斜視図である。
【
図22】本開示の一実施形態に係る接触材料を有するウェアラブル装置の概略断面図である。
【
図23】本開示の一実施形態に係るメッシュ材料を含むウェアラブル装置の概略断面図である。
【
図24】本開示の一実施形態に係るフィルムを含むウェアラブル装置の概略断面図である。
【
図25】本開示の一実施形態に係る応力感知構造を有するウェアラブル装置の斜視図である。
【
図26】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置と水平面との間の高さ、前腕の長さ及び角度の間の数学的関係を示す概略図である。
【
図27】本開示の一実施形態に係る血圧測定を受けるユーザの前腕の概略図である。
【
図28】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置のユーザインタフェースの概略図である。
【
図29】本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置のディスプレイ上のページビューの概略図である。
【
図30】本開示の一実施形態に係るAC/DC成分比と血管直径との間の関係の概略図である。
【
図31】本開示の一実施形態に係るユーザの前腕における生体組織光学の皮膚表面3層モンテカルロモデルの概略断面図である。
【
図32】本開示の一実施形態に係るセグメント化皮膚表面モデルの概略図である。
【
図33】本開示の一実施形態に係る血管壁の厚さの実際の範囲の統計的分析の概略図である。
【
図34】本開示の一実施形態に係る動脈血圧と動脈直径との間の関係の概略図である。
【
図35】本開示の一実施形態に係る拡張期及び収縮期血管直径の概略図である。
【
図36】本開示の一実施形態に係る収縮期血圧、平均動脈圧及び拡張期血圧の間の関係の概略図である。
【
図37】本開示の一実施形態に係る収縮期血圧、脈圧、及び拡張期血圧の間の関係の概略図である。
【
図38】本開示の一実施形態に係る2つの主要センサ及び1つの補助センサを含むウェアラブル装置の概略図。
【
図39】本開示の一実施形態に係る低サンプリングレートを有する1つのセンサに適用される補間の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一般的な慣行によれば、様々な説明された特徴は、縮尺通りに描かれておらず、本開示に関連する特徴を強調するために描かれている。類似の参照符号は、図や本文中では類似の要素を表す。
【0034】
以下、本発明の様々な例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより全体的に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。全体を通して、類似の参照符号は類似の要素を指す。
【0035】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数を表す用語、例えば、「1つの」、は、他の文脈が明確に示されない限り、複数も含むように意図される。「含む」などの用語は、本明細書で使用される場合、特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を妨げるものではない。
【0036】
用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の任意の組合せ及びすべての組合せを含むことが理解されるであろう。第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、部分及び/又はセクションを説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、部分及び/又はセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことも理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、部分又はセクションを別の要素、構成要素、領域、層又はセクションから区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の要素、構成要素、領域、部分、又はセクションは、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、又はセクションと呼ぶことができる。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されないことが理解されるであろう。
【0038】
図1を参照すると、本開示の一実施形態に係る生理学的信号監視システムの全体構成を示す模式図が示されている。生理学的信号監視システムは、ウェアラブル装置100と、モバイル装置200と、クラウドサーバ300とを含んでもよい。ウェアラブル装置100は、ユーザ101の生理学的信号を収集するように構成される。ウェアラブル装置100によって収集された生理学的信号は、モバイル装置200(例えば、スマートフォン、スマートスピーカ、スマートロボット等)及びクラウドサーバ300(例えば、Amazon Web Service(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)等)に送信されてもよい。クラウドサーバ300は、生理学的信号に関連付けられた生理学的情報を記憶、分析し、生理学的情報に基づいてユーザのアイデンティティを識別して、ヘルスケア専門家201によるさらなる分類、診断、及び監視を行うように構成されてもよい。
【0039】
本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100は、例えば、ナノ秒脈波近接場感知(NPNS)ベースのセンサ、近赤外分光法(NIRS)ベースのセンサ、圧電センサ、加速度計、ジャイロスコープ、気圧計、温度センサ、ドップラーセンサ、超音波トランスデューサ、レーザダイオードセンサ、フォトダイオードセンサ、GPS等を含む様々なタイプのセンサを含んでもよい。本開示の少なくとも一実施形態では、生理学的信号監視システムは、1つ又は複数のウェアラブル装置100を含んでもよい。ウェアラブル装置100は、時計、袖口、ベルト、ブレスレット、足首ブレスレット、止血帯、スカーフ、カラー、ネックレス、靴等を含んでもよいが、これらに限定されない。ウェアラブル装置100は、ユーザの体の四肢、腰及び/又は首に着用されて、心拍、血液酸素、脳波(EEG)、筋電図(EMG)、心電図(ECG)、フォトプレチスモグラフィ(PPG)、皮膚インピーダンス、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧(MAP)、体脂肪、脈拍、脈波到達時間(PAT)、脈波伝播時間(PTT)、脈波伝播速度(PVW)、呼吸、異常発生間隔脈波(IPP)、不規則脈拍(IHB)、心房細動(AF)及び心拍変動(HRV)を含むユーザの生理学的情報を測定するために、ユーザの生理学的信号を連続的に収集することができる。ユーザの生理学的情報は、生理学的信号に基づいて測定される。生理学的信号は、Bluetooth Low Energy(BLE)(登録商標)、Bluetooth(BT)(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Long Range(LoRa)(登録商標)、4G/LTE(登録商標)、Zigbee(登録商標)等の無線通信を介して、モバイル装置200又はクラウドサーバ300に送信され得る。生理学的信号の特性は、モバイル装置200及びクラウドサーバ300上の特徴抽出アルゴリズムを介して取得することができ、生理学的信号は、ユーザの識別のためにそれに応じて分類することができる。生理学的情報は、ヘルスケア専門家201によって解釈可能であり、ヘルスケア専門家201による診断又は分析使用のために、ユーザのアイデンティティに応じて、モバイル装置200及び/又はクラウドサーバ300に格納されてもよい。
【0040】
本開示の少なくとも一実施形態では、NPNSベースのセンサ、NIRSベースのセンサ、圧電センサ、加速度計、ジャイロスコープ、気圧計、温度センサ、ドップラーセンサ、超音波トランスデューサ、レーザダイオードセンサ、フォトダイオードセンサ、及びGPS等のセンサ110から受信された生理学的信号は、ウェアラブル装置100の処理ユニットによって処理されて、心拍、血液酸素、EEG、EMG、ECG、PPG、皮膚インピーダンス、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧(MAP)、体脂肪、脈拍、脈波到達時間(PAT)、脈波伝播時間(PTT)、脈波伝播速度(PWV)、呼吸、異常発生間隔脈波(IPP)、不規則脈拍(IHB)、心房細動(AF)及び心拍変動(HRV)を含む生理学的情報を取得する。
図1に示すように、ウェアラブル装置100によって取得された生理学的情報は、ゲートウェイ(図示せず)に送信され、次いで、Bluetooth Low Energy(BLE)(登録商標)、Bluetooth(BT)(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Long Range(LoRa)(登録商標)、4G/LTE(登録商標)、Zigbee(登録商標)等の無線通信を介してクラウドサーバ300(例えば、GCP、AWS)に送信されてもよく、又は、スマートフォン、スマートスピーカ、スマートロボット等のモバイル装置200に直接送信されてもよい。このような生理学的情報は、モバイル装置200からゲートウェイに送信され、次いでクラウドサーバ300に送信されてもよい。
【0041】
本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100がクラウドサーバ300又はモバイル装置200に初めて接続されるとき、クラウドサーバ300又はモバイル装置200はネットワークタイムプロトコル(NTP)を介して校正し、次いで、ウェアラブル装置100は、時系列で生理学的信号を収集し始め、対応する生理学的情報を対応するデータベースに格納するように、ゲートウェイを介してクラウドサーバ300又はモバイル装置200に対応する生理学的情報を送信する。
【0042】
本開示の少なくとも一実施形態では、生理学的信号及び生理学的情報は、JavaScript Object Notation(JSON)(登録商標)フォーマットで送信され得る。JSONフォーマットは2つのパケットを含み、そのうちの一方は元の生理学的信号を送信するためのRAWデータパケットであり、他方は処理された信号(又は生理学的情報)を送信するためのInfoパケットである。2つのパケットは、次のように記述される。
【0043】
図1を参照すると、本開示の少なくとも一実施形態では、クラウドサーバ300又はモバイル装置200のデータベースに様々なユーザ固有データシートを構築することができる。生理学的情報がクラウドサーバ300又はモバイル装置200に送信されると、クラウドサーバ300又はモバイル装置200は、対応するデータシートを見つけて、生理学的情報を保存する。また、クラウドサーバ300又はモバイル装置200は、生理学的情報内のパラメータを比較して、パラメータが妥当な範囲内にあるかどうかを判定し、特徴抽出アルゴリズムを使用することによってユーザのアイデンティティを判定することができる。パラメータが妥当な範囲外であるか、又はユーザのアイデンティティが特徴抽出アルゴリズムによって測定できない場合、クラウドサーバ300又はモバイル装置200は、ウェアラブル装置100に通知又はリマインダを送信するか、単に通知又はリマインダをモバイル装置200上に表示して、ユーザ101又はヘルスケア専門家201に通知することができる。通知又はリマインダが送信されると、ユーザ101に対応する新しいデータシートを作成するために、ウェアラブル装置の検査又はデータベースの更新を実行することができる。
【0044】
図2及び
図3を参照する。
図2は、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置100の斜視図を示す。
図3は、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置100の全体構成を示すブロック図である。ウェアラブル装置100は、複数のセンサ110と、処理ユニット120と、増幅器130と、電力モジュール140と、メモリユニット150と、ディスプレイ160と、複数のボタン170と、アラーム180と、ユニバーサルシリアルバス(USB)190と、ハウジング195とを含んでもよい。この実施形態では、センサ110は、ユーザの様々なタイプの生理学的信号を感知するために、センサとユーザの皮膚との直接的な接触を可能にするように、ウェアラブル装置100の内側に配置される。処理ユニット120は、センサ110と、複数のボタン170と、電力モジュール140と、ディスプレイ160と、メモリユニット150と、USB190と、アラーム180と、増幅器130とに電気的に接続される。増幅器130は、処理ユニット120と、センサ110とに電気的に接続され、複数のセンサ110から受信された生理学的信号を増幅し、増幅された生理学的信号を処理ユニット120に送信するように構成される。処理ユニット120は、増幅器130からの増幅された生理学的信号と、センサ110からの増幅されていない生理学的信号とを処理して、生理学的情報を取得するように構成される。処理ユニット120は、複数のボタン170からの入力を処理することもできる。処理ユニット120はさらに、ディスプレイ160と、電力モジュール140とを制御するように構成される。電力モジュール140は、ウェアラブル装置100内の構成要素に電力を供給するように構成される。メモリユニット150は、処理ユニット120から受信された生理学的信号に関連付けられた生理学的情報を記憶するように構成される。ディスプレイ160は、ユーザ101によって読み取られる生理学的情報を表示するために、ハウジング195上に配置される。ディスプレイ160は、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)等であってもよい。複数のボタン170は、ユーザ101がウェアラブル装置100を制御するように、ハウジング195上に配置される。USB190は、生理学的情報をエクスポートするか、又は電力モジュール140を充電するために、ウェアラブル装置100を1つ又は複数の外部デバイスに接続することを可能にする。アラーム180は、何らかの異常な生理学的信号が検出されたときに、例えば、ビープ音又は点滅によってユーザに通知するように構成される。ハウジング195は、処理ユニット120、増幅器130、電力モジュール140、メモリユニット150、センサ110、複数のボタン170及びディスプレイ160を完全に又は部分的に収容するように構成される。
【0045】
本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100の処理ユニット120は、時間領域及び周波数領域の両方でセンサ110から受信した生理学的信号をフィルタリングするために、無限インパルス応答(IIR)、有限インパルス応答(FIR)、RCフィルタ、カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、粒子フィルタ、相補フィルタ、高速フーリエ変換(FFT)、離散コサイン変換(DCT)、離散ウェーブレット変換(DWT)、又はこれらの任意の組合せなどの少なくとも1つのデジタルフィルタアルゴリズムを含んでもよい。フィルタリングされる周波数範囲は、信号の種類に応じて設定されてもよく、例えば、ECGセンサからの生理学的信号に対しては0.05Hz~300Hzの範囲の周波数が設定されてもよく、圧電センサからの生理学的信号に対しては0.05Hz~10Hzの範囲の周波数が設定されてもよい。ウェアラブル装置100内の信号をフィルタリングするためのデジタルフィルタアルゴリズムの使用は、異なる目的及び信号の種類に応じて、柔軟であり得る。例えば、NPNSベースのセンサ、NIRSベースのセンサ、圧電センサ、気圧計及びドップラーセンサ等のセンサからの生理学的信号は、フィルタ回路を介さずに処理ユニット120に直接送信されてもよい。生理学的信号の異なる周波数帯域は、特徴抽出又は診断等のさらなる用途のために、処理ユニット120内のデジタルフィルタアルゴリズムによって抽出されてもよい。したがって、デジタルフィルタアルゴリズムは、センサ110の種類及び用途に応じて柔軟に調整されることができる。
【0046】
図3に示すように、本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100の電力モジュール140は、処理ユニット120と、USB190とに電気的に接続される。電力モジュール140は、バッテリ141と、充電器142と、電源スイッチ(図示せず)と、電力管理ユニット(図示せず)と、電力検出ユニット(図示せず)とを含んでもよい。バッテリ141は、充電器142に電気的に接続され、ウェアラブル装置100に充電及び電力供給を行う。充電器142は、USB190を介して外部電源に接続され、バッテリ141を充電し、処理ユニット120に充電状態に関連付けられた信号を配信するように構成される。電源スイッチは、ウェアラブル装置100の電源をオン及びオフに切り替えるように構成される。電力管理ユニットは、異なる要求に応じてウェアラブル装置100の構成要素に電力を供給するために、バッテリ141に電気的に接続される。電力検出ユニットは、USB190と電気的に接続され、USB190の外部電源への接続状態を検出する。バッテリ141の状態は、ディスプレイ160に表示されてもよい。処理ユニット120が充電状態を表示するようにディスプレイ160を制御すると、充電器142は、処理ユニット120に充電状態の信号を送信する。本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100は、省電力機構をさらに含んでもよい。省電力機構がないと、ウェアラブル装置100が外部電源に接続されている場合、ウェアラブル装置100及び処理ユニット120の電源が切られているため、充電状態を表示することができない。したがって、電力検出ユニットは、ウェアラブル装置100に部分的に電源を入れて省電力機構を有効にするための電源スイッチに接続されるように設計されてもよい。これにより、充電器142は、充電状態の信号を、処理ユニット120に送信してディスプレイ160によって表示することができる。
【0047】
上述した本開示の様々な実施形態に係る生理学的信号監視システムは、以下の利点を有する。
1.ウェアラブル装置100は、省電力のために使用されていないときに電源を切ることができる。
2.ウェアラブル装置100を遠隔遮断することができる。
3.ディスプレイ160は、処理ユニット120によって制御されて、バッテリ電圧と、充電状態と、接続状態とを含む複数の状態を表示することができる。
4.ディスプレイ160は、ウェアラブル装置100が充電中に電源オフにされたとき、充電状態を表示することができる。
5.ウェアラブル装置100は充電されているときに、電源をオフにするか、又は未使用の構成要素を無効にすることができる。
6.ウェアラブル装置100は、外部入力が取り外されたときに、電源が入ったままであるか、又は処理ユニット120によってスイッチがオフにされてもよい。
7.処理ユニット120は、処理ユニット120によって低いバッテリ電圧が検出されたときに、アラーム180によって視覚的又は音響的通知を送信することができる。
8.低バッテリが検出されると、処理ユニット120は、バッテリ141を過放電から保護するために、ウェアラブル装置100の電源を切る前に、シャットダウンの前準備を実行することができる。このような準備は、メモリ150に生理学的信号及び生理学的情報を保存することと、アラーム180によって視覚的又は音響的通知を送信することとを含む。
【0048】
図4は、本開示の一実施形態に係る増幅器130を有するウェアラブル装置100の構成を示す。ウェアラブル装置100は、処理ユニット120と、増幅器130とを含む。処理ユニット120は、センサ110から生理学的信号を受信し、生理学的信号を処理ユニット120に送信するように構成されたアナログ/デジタル変換器(ADC)121をさらに含んでもよい。センサ110からの生理学的信号は、処理ユニット120が生理学的信号を分析して生理学的情報を取得するように、直接又は増幅器130を介してADC121に送信されてもよい。例えば、センサ110の圧電センサからの生理学的信号が増幅器130によって増幅されてもよい一方で、センサ110の光学センサからの生理学的信号が増幅されずにADC121に送信されてもよい。いくつかの生理学的信号は、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)、集積回路間(I
2C)、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス、汎用非同期送受信器(UART)、1-Wire(登録商標)、及びユニバーサルシリアルバス(USB)等のデジタルハードウェア通信プロトコル125を介して、処理ユニット120とセンサ110との間で交換されてもよい。
【0049】
図5は、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置100の増幅器130の構成を示す。増幅回路に加えて、増幅器130は、ローパスフィルタ131、ハイパスフィルタ132、バンドパスフィルタ133、又はそれらの任意の組み合わせをさらに含んでもよい。増幅器130のカットオフ周波数は、センサ110の種類に応じて構成されてもよく、例えば、0.05Hz~500Hzの周波数範囲が、ECGセンサから受信した生理学的信号に適用されてもよく、同様に、0.05Hz~20Hzの周波数範囲が、圧電センサ又は気圧計から受信した機械的波動の形態の生理学的信号に適用されてもよい。また、
図6に示すように、増幅器130は、動作環境に応じてノッチフィルタ134をさらに含んでもよい。ノッチフィルタの周波数は、好ましくは50Hz又は60Hzである。さらに、バンドパスフィルタ133は、ハイパスフィルタ132とローパスフィルタ131との組み合わせを置き換えてもよい。しかしながら、バンドパスフィルタ133のみを有する構成は、所望のカットオフ周波数外のノイズの受信をもたらすことがある。換言すれば、ハイパスフィルタ132とローパスフィルタ131との組み合わせであるがバンドパスフィルタ133を有さない構成は、より良い周波数応答を示す。
【0050】
図7及び
図8を参照する。
図8は、本開示の一実施形態に係る信号コントローラ及び信号検出器を有するウェアラブル装置の構成ブロック図である。
図7は、本開示の一実施形態に係る信号コントローラ及び信号検出器を有するウェアラブル装置の自動フィードバック制御方法の流れ図である。
図8に示すように、ウェアラブル装置は、センサ110の圧電センサから受信した生理学的信号の信号方向を制御するための自動フィードバック制御機構を有効にするように、信号コントローラ501と、信号検出器502とをさらに含んでもよい。
【0051】
正圧電効果における分極の方向は、圧電材料の変形及び結晶格子構造によって変化するだけでなく、圧電材料に印加される機械的エネルギーの方向によっても変化し得る。また、分極の方向は、種々の圧電感知の用途にとって重要である。したがって、本開示の少なくとも一実施形態では、圧電信号の精度を確保するために、ウェアラブル装置によって自動フィードバック制御方法が実行されてもよい。
図7に示すように、自動フィードバック制御方法は、S1~S5のステップを含んでもよい。ステップS1において、センサ110の圧電センサは、信号コントローラ501及び増幅器130を介して信号検出器502に生理学的信号を送信する。ステップS2において、信号検出器502は、生理学的信号の信号方向が反転しているか否かを判定する。自動フィードバック制御方法は、生理学的信号が反転している場合(すなわち、ステップS2の結果がはいである場合)、ステップS3に進み、そうでない場合、ステップS1に戻る。ステップS3において、信号検出器502は、CPU120にステップS2の結果を送信する。ステップS4において、CPUは、信号コントローラ501に制御信号を送信する。ステップS5において、信号コントローラ501は、制御信号に応じて入出力(I/O)の設定を反転させ、ステップS1と同様に、反転された生理学的信号に続く1つ又は複数の生理学的信号の信号方向を変更する。
【0052】
ステップS2の判定ステップについて、信号検出器502が予測される分極方向と反対である圧電センサの分極方向を検出したとき(すなわち、反転信号の存在が検出されたとき)に、生理学的信号が反転していると判定される。より具体的には、信号検出器502が生理学的信号の信号方向を判定するために、信号コントローラ501からの時間領域及び/又は周波数領域における生理学的信号の特性及び特徴を利用することができる。信号方向は、圧電センサの分極方向を表すことができる。
図9は、反転信号の存在を表す時間領域信号の特性及び特徴を例示する。
【0053】
図10を参照すると、本開示の一実施形態に係る信号コントローラ501及び統合された信号検出器を有するウェアラブル装置の構成が提供される。信号検出器502は、ICの代わりに、処理能力を有する集積回路(IC、図示せず)又は等価検出回路(図示せず)を含んでもよい。検出回路は、レジスタ転送言語(RTL)によって符号化された論理を持つ比較器、論理処理回路、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)であってもよい。
図10に示すように、信号検出器502はまた、ステップS1~S3を実行するためのソフトウェア又はアルゴリズムの形式で実現されるように、CPU120に統合されてもよい。本開示の一実施形態では、信号コントローラ501がソフトウェア制御の電子論理ゲート又は論理構造を有する電子回路であってもよい。信号コントローラ501は、圧電センサの電極に接続され、圧電センサから受信した生理学的信号を信号検出器502に送信するように構成される。同時に、信号コントローラ501は、CPU120からの制御信号を受信し、生理学的信号の出力方向を変更するようにも構成される。
【0054】
図11を参照すると、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の信号コントローラの回路レイアウトが提供される。
図11に示すように、制御回路は、2つの制御IC5011と、各制御IC5011内の複数の論理ゲート5012とを含んでもよい。複数の論理ゲート5012は、ブール論理を制御する能力を有するように構成されてもよい。一方の制御IC5011は、センサ110の圧電センサの正極1101に接続され、他方の制御IC5011は、センサ110の圧電センサの負極に接続される。いくつかの実施形態では、制御IC5011は、複数の論理ゲート5012と同一又は同等の処理能力を有するマイクロコントローラ(MCU)等であってもよい。制御IC5011は、複数の論理ゲート5012によって信号コントローラ501のI/O設定を制御するように構成される。これにより、信号コントローラ501のI/Oに応じて、CPUに送られる生理学的信号の信号方向が変更される。本開示の一実施形態では、処理能力を有する信号コントローラ501は、I/O設定を調整するか、又は信号検出器502からの制御信号を受動的に受信してI/O設定を調整するかを決定するように構成されてもよい。
【0055】
図12を参照すると、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の斜視図が提供される。ウェアラブル装置100aは、手首又はふくらはぎに着用されてもよい。ウェアラブル装置100aは、ウェアラブル装置100aの内側に配置され、橈骨動脈拍動を検出可能な複数の主要センサ110aを含む。例えば、主要センサは、NPNSベースのセンサ、NIRSベースのセンサ、圧電センサ、気圧計、ドップラーセンサ、及び/又はレーザダイオード、及びフォトダイオードセンサであってもよい。主要センサ110aの組み合わせ及び数量は、異なる要求に応じて選択されてもよい。
【0056】
図12に示すように、本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100aは、複数の補助センサ111aをさらに含んでもよい。複数の補助センサ111aは、主要センサ110aをユーザの動脈の位置に位置合わせするように、主要センサ110aに隣接して配置されてもよい。例えば、ウェアラブル装置100aの位置は、NIRS、レーザ、又はフォトダイオードを補助センサ111aとして利用して動脈の血中酸素レベルを測定し、主要センサ110aが動脈又は静脈の周りに配置されているかどうかを判定することによって検出されてもよい。したがって、ウェアラブル装置100aは、ウェアラブル装置100aを動脈に位置合わせするようにユーザに促すために、アラームによって通知を送信することができる。その結果、主要センサ110aは、動脈によって生成される脈拍の機械的波動を受信するための最適な位置に配置されることができる。
【0057】
補助センサ111aはまた、動脈内の内容物を検出するように構成されてもよい。なお、補助センサ111aの組み合わせや数量は、上述したものに限定されない。本開示の別の実施形態では、ウェアラブル装置100aは、2つの主要センサ110aと、1つの補助センサ111aとを含んでもよい。これらの主要センサ110aは、2つの圧電センサであってもよく、補助センサ111aは、2つの圧電センサの間に配置された光センサであってもよい。2つの圧電センサ及び光センサは直線を形成することができ、補助センサ111aは、処理ユニット120によって主要センサ110aが動脈の真上にあるかどうかを判定することができるように、動脈の周りに配置することができる。或いは、補助センサ111aは、主要センサ111aの間ではなく、主要センサ110aの一方の側に配置されてもよいが、主要センサ110a及び補助センサ111aは、直線を形成するように、依然として直線状に配置されなければならない。別の実施形態では、ウェアラブル装置は、補助センサを含まずに、2つの主要センサを含んでもよい。2つの主要センサは、2つの光学センサ、又は光学センサと圧電センサの組み合わせであってもよい。2つの光学センサの場合、光学センサによって測定されるPTTの性質が異なるため、PTT測定には補正機能が必要になる。
【0058】
図13に示すように、異なる脈波伝播速度(PWV)及び異なるセンサ間の物理的距離のため、脈波伝播時間(PTT)測定において異なる程度の誤差が生じ得る。センサ間の距離が一定のままである場合、高いPWVに対する測定誤差は低いPWVに対する測定誤差よりも大きくてもよく、PWVが一定のままである場合、センサ間の短い距離に対する測定誤差は長い距離に対する測定誤差よりも大きくてもよい。
【0059】
図14を参照すると、本開示の一実施形態に係る時間遅延構造を有するウェアラブル装置の断面図が提供される。測定誤差を増加させることなく、小型化のためのセンサ間の距離を減少させるために、ウェアラブル装置は、空気中の機械的波動の移動距離を長くするための時間遅延構造603をさらに含んでもよい。
図14に示すように、時間遅延構造603は、第1のセンサ601と第2のセンサ602との間のPTT測定のために、パルスt1の測定点と第2のセンサ602との間の経路距離を長くするように、第2のセンサ602に接続されてもよい。これにより、下記の式(1)が下記の式(2)になり、PTTの遅延効果が実現される。したがって、第1のセンサ601と第2のセンサ602との間の距離が不十分であることによって生じる測定誤差が低減される。
【数1】
【数2】
【0060】
また、PTTは、時間遅延構造603の既知の経路距離及び時間遅延構造603内を進行する機械的波動の特性に応じて、処理ユニット120によって測定され得る。別の実施形態では、校正関数である下記の式(3)は、時間遅延構造603を有するウェアラブル装置の測定値と、時間遅延構造603を有さないウェアラブル装置の測定値とを比較することによって得られてもよい。したがって、PTTは、処理ユニット120が校正関数を実行して決定されてもよい。
【数3】
【0061】
さらに、ウェアラブル装置100の全体的なサイズを大きく増大させることなく、時間遅延構造603をウェアラブル装置に統合するために、時間遅延構造603は、
図15に例示されるように、アルキメデス螺旋形状を有してもよい。アルキメデス螺旋は、ウェアラブル装置100のハウジング195内に配置されてもよく、螺旋及びセンサ2は、貫通孔1121に対して実質的に垂直な平面上にある。いくつかの実施形態では、時間遅延構造603が空間においてコンパクトでありながら、ジグザグ形状(図示せず)又は経路距離を長くする任意の形状を有してもよい。さらに、時間遅延構造は、機械的波動を伝達する媒体を有する管であってもよい。媒体は、気体(空気等)、ゲル状材料、又はソフトマターであってもよいが、時間遅延構造は、機械的波動の伝達が可能な固体材料で作られてもよい。
【0062】
図16を参照する。本開示の一実施形態では、ウェアラブル装置100内のセンサ110は、機械的波動センサと、光センサとを含んでもよい。機械的波動センサは、圧電センサ、気圧計、弾性表面波センサ、振動センサ等であってもよい。光学センサは、近赤外線センサ、磁気光学センサ、レーザドップラーセンサ等であってもよい。センサ110の配置は、測定精度及びユーザの快適性にとって重要である。
図16の右側に示すように、ハウジング195は、センサ110と皮膚表面との間に通路を形成して、動脈とセンサ110との間の信号伝送を可能にする複数の貫通孔1121を含んでもよい。或いは、
図16の左側に示すように、センサ110は、ユーザの皮膚表面に直接接触するようにハウジング195の表面上に配置されてもよい。この場合、センサ110は、橈骨動脈又は尺骨動脈の真上に配置されるべきであり、センサ110のうちの少なくとも2つは、橈骨動脈又は尺骨動脈の方向に平行な実質的に直線を形成するべきである。一方、センサ110がウェアラブル装置のハウジング195内に配置される場合、貫通孔1121のうちの少なくとも2つは、橈骨動脈又は尺骨動脈の方向に平行な実質的に直線を形成しなければならない。人間工学的目的のために、
図16に例示されるように、貫通孔1121は、ウェアラブル装置100の他方よりも一方の側に近接して配置されてもよく。換言すれば、貫通孔1121は、ウェアラブル装置100の中心線と重ならないように配置されてもよい。同様に、センサ110がウェアラブル装置の表面上に配置される場合、センサ110は、ウェアラブル装置の中心線に対して非対称に配置されてもよく、すなわち、ウェアラブル装置の他方よりも一方の側に近接して配置されてもよい。
【0063】
図17及び
図18を参照すると、本開示の一実施形態では、ウェアラブル装置100は、ハウジングの外側に外部配置されたセンサ110を含んでもよい。
図17に示すように、センサ110の各々は、ケーブル114によって外部からウェアラブル装置100に接続されてもよい。センサ110は、ユーザからの少なくとも1つの生理学的信号の測定を可能にするように、接着パッチ115によってユーザの動脈の周りに取り外し可能に取り付けられてもよい。したがって、センサ110によって測定された少なくとも1つの生理学的信号は、少なくとも1つの生理学的情報を決定するために、ケーブル114を介してウェアラブル装置100に送信され得る。
図18に示す別の実施形態では、ウェアラブル装置100は、他のセンサ(図示せず)の全てがハウジング内の内部センサである状態で、1つの外部センサ110を含む。外部センサ110は、ケーブル114によってウェアラブル装置100に接続され、接着パッチ115によってユーザに取り付けることができる。この場合、ウェアラブル装置100の処理ユニット(図示せず)は、外部及び内部の両方のセンサ110から受信した生理学的信号を利用して、少なくとも1つの生理学的情報を決定する。なお、外部センサ110の種類及び数量は、上述したものに限定されない。なお、センサ110は、ウェアラブル装置100に無線接続されてもよい。
【0064】
図19を参照すると、本開示の一実施形態に係る補助構造が提供される。
図19に例示されるように、補助構造112bは、主要センサ110bの下に配置されてもよい。補助構造112bは、衝撃を吸収し、望ましくない信号をフィルタリングするためのバッファとして作用する弾性材料を含んでもよい。補助構造112bの弾性材料は、ばね、発泡材料等であってもよく、ユーザの皮膚に直接接触する。
【0065】
図20を参照すると、本開示の一実施形態に従う、別の補助構造112cと、少なくとも1つの主要センサ110とを有するウェアラブル装置が提供される。空気伝播を介して機械的波動信号を受信するウェアラブル装置の主要センサの場合、貫通孔の構造を改善することにより、例えば、貫通孔の直径を調整して機械的波動信号の圧力を増加させることによって、主要センサの感度を高めることができる。本開示の少なくとも一実施形態では、主要センサ110cは、1つ又は複数の気圧計を含んでもよい。気圧計は、ハウジング195c内に収容される(部分的にのみ図示されている)。補助構造112cは、気圧計の位置に対応するハウジング195cの外面に配置されている。補助構造112cは、主要センサ110cの中央位置に対応して位置する1つ又は複数の貫通孔1121cを含むシリコーンゴムの層であってもよい。貫通孔1121cは、2つの開放端を有する円錐形状であってもよく、その一方の端部はより小さい直径を有し、ハウジング195cに接続され、他方の端部はより大きい直径を有し、ユーザの皮膚と直接接触する。ハウジング195cは、貫通孔1121cのより小さい開放端に対応して配置された1つ又は複数の円筒状のピンホール1951cを含んでもよい。円錐形状の貫通孔1121cは、機械的波動信号の受信及び主要センサ110cの感度を高めるように構成される。
【0066】
図21を参照する。一実施形態では、ウェアラブル装置の補助構造112cはまた、ハウジング195cの一部として一体化されてもよい。
図21に示すように、ウェアラブル装置は、複数の気圧計110cで構成される気圧計アレイを含んでもよい。なお、気圧計の構成や数量は、上述したものに限定されない。
【0067】
図22、
図23及び
図24を参照する。貫通孔1121と皮膚表面610との間のシール密閉性を増加させることは、より強い信号強度をもたらし得る。
図22に示すように、シールの気密性は、接触材料605によって強化されてもよい。接触材料605は、貫通孔1121の開口604の周囲に配置され、接着層606によってウェアラブル装置100に取り付けられたソフトマターであってもよい。また、
図23に示すように、貫通孔に異物(液体や汚れ等)が侵入するのを防止するために、貫通孔を覆うようにメッシュ材料607を用いてもよい。メッシュ材料607は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られてもよい。本開示の一実施形態では、メッシュ材料607を支持するために、下地材料をメッシュ材料607に固定してもよい。また、
図24に示すように、メッシュ材料607の代わりにシリコーンゴムフィルム608を用いても同様の機能を得ることができる。
【0068】
図25を参照すると、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置の応力感知構造が提供される。ウェアラブル装置は、動脈の変形を引き起こすように僅かな圧力でユーザの手首又はふくらはぎにクリップ留めされるように設計されている。動脈の変形に起因する誤差を補償するために、直線性の高い圧電センサ113a及び113bが、主要センサ(図示せず)及び補助センサ(図示せず)の対向する側に配置される。圧電センサ113a及び113bは、主要センサ及び補助センサからの生理学的信号に対する校正レベルを決定するために、ユーザ101に対する押付け強度を感知して決定するように構成される。校正のレベルは、応力、流速、及び/又は振幅統計モデルに基づいて、処理ユニットによって決定される。なお、圧電センサの構成及び数量は、上述したものに限定されない。
【0069】
本開示の少なくとも一実施形態では、ウェアラブル装置100は、ストラップによってユーザに固定されてもよい。そのため、面圧(P1)がユーザに加えられる。脈波伝播時間(PTT)測定のための信号、P1及び機械的波動振幅(Amp)は、センサ110のひずみゲージセンサを使用することによって取得することができる。ひずみゲージセンサのセンサ面積、機械的波動伝達空間、及び伝達媒体は変化しないので、P1、Amp、脈圧(P0)は、Amp=aP1b+cP0dで表すことができる。したがって、ひずみゲージセンサからのP1及びAmpは、P0を決定するために処理ユニット120によって分析されてもよい。ただし、P1、Amp、P0の関係は線形でも非線形でもかまわない。したがって、P1、Amp、及びP0の経験的データを使用して校正を行うことができる。
【0070】
本開示の一実施形態では、センサ110は、加速度計と、ジャイロスコープとを含んでもよい。加速度計は長期安定性に優れているが瞬時感度に欠けるのに対し、ジャイロスコープは角速度の瞬時変化に対しては優れた感度を有する。本開示の実施形態では、2つのセンサからの信号を融合するために、処理ユニット120によって、カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、粒子フィルタ又は相補フィルタが採用されてもよい。したがって、処理ユニット120は、ジャイロスコープによって得られた信号を使用して加速度計によって得られた信号を補正することで、ウェアラブル装置100の正確な3次元変換を得ることができる。ユーザ101の歩数は、融合された信号のXYZ軸方向寸法のいずれかにおいて生じる周期的変換に基づいて決定されてもよい。さらに、ユーザごとに異なる歩行習慣を有するので、取得された3次元変換は、ユーザのアイデンティティを決定するためのサブコレクションと見なすこともできる。
【0071】
ポアズイユの法則によれば、血管直径の4乗は脈波伝播速度(PWV)に反比例する。したがって、本開示の実施形態では、センサ110は、ウェアラブル装置100の片側に配置され、ユーザの前腕と直接接触する力感応抵抗器を含んでもよい。これにより、処理ユニット120によって実行されるPWVに対する重量ポンド毎平方インチ(PSI)の関係の統計的分析を可能にすることで、PSI校正係数を得る。したがって、PWVは、処理ユニット120によるPSI校正係数によって校正されてもよい。
【0072】
図26を参照する。本開示の少なくとも一実施形態において、ユーザの血圧は、血液レオロジー及び血行動態に基づいて決定され得る。したがって、ベルヌーイの定理による流体の流れの高さ及びポアズイユの法則による血管直径を利用して、脈波伝播速度(PWV)を校正することで、ウェアラブル装置100と水平面400との間の高さ(H)を補償することができる。
図26に示すように、高さHの決定は関数L×sinθ=Hに基づいており、ここで、Lは前腕102の長さであり、θは前腕102と水平面400との間の角度である。任意の軸方向(x、y、z等)の角度θは、加速度計又はジャイロスコープ等のセンサのうちの少なくとも1つを介して得ることができる。前腕102の長さLは、ユーザ101によって入力されてもよいし、ユーザ101の身長対腕の比率に基づいて決定されてもよい。センサ110は、超音波、レーザ飛行時間型、LED飛行時間型又はドップラーレーダをさらに含んでもよく、ウェアラブル装置100とユーザ101の肘との間の距離を検出して長さLを取得する。
【0073】
なお、高さHは、処理ユニット120によって決定されてもよい。本開示の別の実施形態では、高さHは、超音波、レーザ飛行時間、LED飛行時間、又はドップラーレーダ等のセンサのうちの1つによって、ウェアラブル装置100と水平面400との間の高さHを直接検出して取得されてもよい。血液は非ニュートン流体であるので、高さHとPWVとの間の関係を校正するために、実験統計から得られる補正係数が必要である。角度θ及び高さHがゼロに近い場合、例えば、睡眠中にユーザ101がウェアラブル装置100を着用するとき、又は前腕102がウェアラブル装置100と共に平坦に置かれるときに、ユーザ101の前腕102は、水平面400にほぼ平行であると決定され得る。
【0074】
脈波伝播速度(PWV)の校正については、加速度計及びジャイロスコープから受信した異なる角度及び角加速度に対応する補正係数を求めることにより、「姿勢-PWV」ルックアップテーブルを作成することができる。したがって、処理ユニット120に格納されている「姿勢-PWV」ルックアップテーブルを参照することにより、任意の姿勢での血圧測定を行うことができる。姿勢は、加速度計及びジャイロスコープによって検出される任意の軸方向(x、y、z等)変化に応じて、処理ユニット120によって決定される。したがって、PWV又は脈波伝播時間は、軸方向の変化に基づいて調整されてもよい。さらに、振動センサのような他の任意の類似の姿勢認識センサを利用することもできる。
【0075】
図27を参照する。24時間監視モードでは、ウェアラブル装置100は、
図27に例示されるように前腕102が持ち上げられたときに、統合された加速度計及びジャイロスコープによってユーザ101の姿勢を決定することができる。軸方向変化に応じてウェアラブル装置100の処理ユニット120によって決定されたユーザの姿勢が閾値より長い期間持続する場合、ウェアラブル装置100は、測定モードに入り、ユーザの収縮期血圧(DBP)及び拡張期血圧(DBP)を表示することができる。姿勢は、加速度計及びジャイロスコープによって測定される任意の軸方向変化によって決定される。振動センサのような他の任意の類似の姿勢認識センサを利用することもできる。
【0076】
図28を参照すると、本開示の一実施形態に係るウェアラブル装置のユーザインタフェースが示されている。ユーザインタフェースは、ディスプレイ160と、複数の制御ボタン170a、170b、170cと、複数のインジケータ180a、180b、180cとを含んでもよい。ディスプレイ160は、複数の生理学的状態161及びバッテリ状態162を表示することができる。複数の制御ボタンは、電源ボタン170aと、ページアップボタン170bと、ページダウンボタン170cとを含んでもよい。
【0077】
図29を参照すると、本開示の一実施形態に係る様々な生理学的信号を提示するためのウェアラブル装置のディスプレイ上のページが示されている。
図29に示すように、ページダウンボタン170cは、押されたときにページを次のページ160aにめくるように構成されてもよい。同様に、ページアップボタン170bは、押されたときにページを前のページ160bにめくるように構成されてもよい。ページアップボタン170b及びページダウンボタン170cがある期間同時に押されると、ディスプレイ160は例えば、以前に決定された生理学的情報を含む履歴データを表示するように切り替わり得る。複数のインジケータは、電力インジケータ180aと、アラームインジケータ180bと、処理状態インジケータ180cとを含んでもよく、インジケータは、LED等の異なる色の照明要素で構成されてもよい。電力インジケータ180aは、処理ユニットによって低バッテリ電圧が検出されたときに点灯するように構成されてもよい。アラームインジケータ180bは、処理ユニットによって異常な生理学的状態が検出されたときに点灯するように構成されてもよい。処理状態インジケータ180cは、処理ユニットが動作しているときに点灯するように構成されてもよい。
【0078】
本開示の少なくとも一実施形態では、センサ110は、異なるセンサからの同じパルスの複数の動脈拍動又は複数の読み取りに基づいて、脈波到達時間(PAT)、脈波伝播時間(PTT)、脈波伝播速度(PWV)、脈拍、異常発生間隔脈波(IPP)、不規則脈拍(IHB)、心房細動(AF)、心拍変動(HRV)、及び心拍数に関連付けられた生理学的信号を取得するように、NPNS、NIRS、圧電センサ、気圧計、ドップラーセンサ、超音波トランスデューサ、レーザダイオード、及びフォトダイオードのうちの少なくとも1つを含んでもよい。PWVは、下記の式(4)に基づいて処理ユニット120によって決定されてもよく、ここで、Δt(PTT)は、ウィンドケッセル効果によって引き起こされる脈波伝播時間(PTT)を表す。PTTは、センサ110間の既知の距離(Δd)を有するセンサ110のうちの少なくとも2つによって検出された同じパルスの複数の波形から決定される。PTTは人間の動脈に近接する任意の2つの点の間で測定されてもよく、2つの点は互いに0.5cm~15cm離れていてもよい。メーンズ・コルテベーク(Moens-Korteweg,MK)関数である下記の式(5)(ここで、Eはヤング率であり、hは血管壁の厚さであり、dは血管の直径であり、ρは血液密度である)は、長い真っ直ぐな弾性チューブのPWVを決定するために利用され得る。MK関数にヤング率方程式である下記の式(6)を代入することにより、MK関数は下記の式(7)のように書き換えることができる。PWVと動脈内圧(P)との間の関係は下記の式(8)であり、したがって、下記の式(9)に大量の実験室データを入力することによって、下記の式(10)の回帰校正を実行することができる(ここで、下記の式(11)及び下記の式(12))。したがって、動脈内圧(P)は、MK関数と、血管壁の厚さ(h)、血管直径(d)及び血液密度(ρ)から得られる少なくとも1つの血行動態パラメータとを利用することによって、処理ユニット120によって決定され得る。なお、血行動態パラメータには、血管のこわばり、動脈拡張、血管のヤング率等も含まれ得る。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0079】
現実的には、人間の動脈は理想的な弾性チューブではない。動脈内圧(P)のより正確な結果を得るために、血管壁の厚さ(h)、血管直径(d)、及び血液密度(ρ)の間接的な測定が、センサ110によって実行され、大規模な実験室データモデリングを受ける。したがって、処理ユニット120による動脈内圧力(P)の決定中に、追加の校正を実行することができる。収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び平均動脈圧(MAP)の関係は下記の式(13)である。心拍が速くなればなるほど、平均動脈圧(MAP)は、下記の式(14)によって説明されているように、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の平均値に近づく。これは、血圧の上昇に伴って動脈の形状が変化する可能性があることも示している。したがって、SBP、DBP、及びMAPはPによって決定されてもよい。また、センサ110によって測定単位時間(例えば、10秒又は30秒)にわたって取得された脈拍は、異常発生間隔脈波(IPP)、不規則脈拍(IHB)、心房細動(AF)、及び心拍変動(HRV)を処理ユニット120によって決定するために使用されてもよい。最初に、連続する脈拍間の時間差が決定され、平均化される。次に、平均化された時間差からの各時間差の偏差が決定される。最後に、偏差が閾値(例えば、15%、20%、又は25%)を超えると、IPPが決定される。さらに、不規則脈拍(IHB)は、IPPのカウントが同じ測定単位時間内のパルスピークの総カウントを閾値(例えば、15%、20%、又は25%)だけ超える場合に決定され得る。心房細動(AF)は、不規則脈拍(IHB)が複数の測定単位時間のセットにおいて閾値(例えば、60%、70%、又は80%)を超えると判定された場合に決定されてもよい。これらの条件(IPP、IHB、AF、及びHRV等)は、ユーザのアイデンティティを決定するための特性のサブコレクションのうちの1つとして分類されてもよい。なお、ヤング率である下記の式(15)は、式(15)の寸法をmmHgに変えるように書き換えて、下記の式(16)を求めることができる。そのため、MK関数である下記の式(17)を下記の式(18)に書き換えて、動脈内圧(P)を求めることができる。ここで、動脈内圧(P)をMAPとみなすことができる。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【0080】
MK関数によれば、血管壁の厚さ(h)、血管直径(d)及び血液密度(ρ)の関係は下記の式(19)で表ことができる。血管直径(d)及び血液密度(ρ)は、処理ユニット120によって、拡散反射分光法(DRS)及び拡散光学イメージング、及びトモグラフィ(DOT)を利用することによって決定されてもよく、DRS及びDOTは、センサ110のNIRSセンサを使用することによって実行されてもよい。混合流体の媒質がNIRSセンサによって測定されるとき、全光子は、吸収、反射、及び透過の和に等しくなり得る。光子の吸収は、以下のランベルト・ベールの法則である下記の式(20)に基づいて得ることができる。光透過エネルギー(I
t)は、下記の式(21)で説明されているように光入射エネルギー(I
0)から光減衰エネルギー(δI)を差し引くことによって得られ、δIは吸収と散乱の合計である。したがって、減衰係数(μ)は、吸収係数(μ
a)と散乱係数(μ
s)とに分解され得る。また、μは、モル濃度(c)とモル吸光係数(ε)との乗算である。混合液の媒体が血液である場合、血液のμ
aは、下記の式(22)のようにヘモグロビン(Hb)及びオキシヘモグロビン(HbO
2)で表されることができる。好ましくは、血液のμ
aがNIRSセンサによって420nm及び940nmの波長で測定されてもよいが、波長はこれらに限定されない。したがって、光路の距離(L)を考慮すると、ランベルト・ベールの法則は下記の式(23)及び下記の式(24)に書き換えることができ、Lの増加に伴いI
tが低下することが実証される。
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【0081】
Hbの吸収係数μ
aは、下記の式(25)で表され得る。ここで、γは血液体積分率であり、k(λ)は特定波長λにおけるμ
a
Hb(λ)の校正係数であり、μ
a
blood(λ)は特定波長λにおける血液の吸収係数である。μ
a
blood(λ)は、全血液におけるヘモグロビン吸収係数(μ
a
Hb)とオキシヘモグロビン吸収係数(μ
a
HbO2)の比率で表される。γは、下記の式(26)で表され、NIRSセンサによって測定され得る。したがって、血液の吸収係数μ
aは、下記の式(27)によって決定され得る。ここで、αはNIRSによって測定された酸素飽和度SPO
2のパーセントである。したがって、Hbの吸収係数μ
a及び血液の吸収係数μ
aは、酸素飽和度SPO
2によって決定され、k(λ)は、処理ユニット120によって、下記の式(28)で決定され得る。また、校正係数k(λ)は、下記の式(29)で表され得る。そのため、血管直径(d)は、血管半径(r)によって求めることができる。
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【0082】
本開示の少なくとも一実施形態では、血管直径(d)又は血管半径(r)を決定するための方法が提供される。ランベルト・ベールの法則によれば、拡散反射光源によって均一媒体が照射される場合、吸光度は吸収種の濃度に対して正の相関を示す。しかし、表皮層、真皮層、結合組織、脂肪等のヒト組織に覆われた血管に、ランベルト・ベールの法則に従う特定の波長で光源を照射すると、ウィンドケッセル効果による赤血球の定量的な変化に伴って血管の吸光度が変動する。この変動は、拡散反射光源の下で人体によって生成される脈動交流(AC)成分であり、センサ110のうちの光電センサによる反射率及び伝送の信号として測定可能である。
【0083】
変動の範囲外では、光電センサによって測定される残りの吸光度が非脈動直流(DC)成分である。同じ外部条件下では、AC成分とDC成分との比率である下記の式(30)が同じ血管サイズ及び赤血球に対して同一であるべきである。
図30に示すように、比率は、赤血球に対して直線的又は非直線的に変化し得る。血管の容量は、血管半径(r)に依存するため、血管直径(d)又は血管半径(r)の定量化を実現することができる。ただし、デフューズ反射を測定するために使用されるフォトプレチスモグラフィセンサは、放射照度又は光フルエンス率の動的調整のための自動利得制御を有しなければならない。さらに、センサ配置位置及び体組織組成は両方とも、吸収(absorption)、反射(reflectance)、透過(transmission)、及び散乱(scattering)のモデル(ARTSモデルと総称されてもよい)に影響を及ぼす。したがって、放射照度又は光フルエンス率は正規化され、ARTSモデルの差は補正されるべきである。
【数30】
【0084】
図31に示すように、生理学的信号監視システムについては、皮膚表面組織及び光電センサの数値モデリングを事前に実行してもよく、ARTSモデルの大量の光子の伝送プロセスをシミュレートするために、モンテカルロ法を使用してもよい。モンテカルロシミュレートして計算された数値モデルでは、光源量、光源位置、光源波長、受光センサ数、受光センサ位置が既知であり、モデルに予め設定されており、受光センサの位置は絶対位置と相対位置を含んでいてもよい。多層組織モデルは、皮膚表面組織及び血管のシミュレーションのために利用され得る。多層組織モデルは主に、表皮、真皮、及び血管の3つの層を含む。吸収係数、散乱係数、屈折率、及びHenyey-Greenstein関数等の他の周知の実験パラメータも、多層組織モデルで使用することができる。光電センサと皮膚表面組織との間のガラス、アクリル、又は空気等の媒体の屈折率も、入力モデルに含めることができる。
【0085】
図32に示すように、皮膚表面組織モデルは、全体分布のパラメータを得るために、複数の0.1mmの正方形にセグメント化することができる。大量の光子の伝送プロセスは、予測ARTSモデルでシミュレートすることができる。次に、予測ARTSモデルは、ウェアラブル装置100内の光電センサのフィッティング及び校正、並びに逆モンテカルロフィッティング及び校正のために使用される。光電センサによる光学測定の各校正、取得されたAC成分及びDC成分は、下記の式(31)に従って処理ユニット120によって正規化されてもよく、AC成分とDC成分との間の比率は、単一の血管直径と血管内の全血の量との間の比率を表してもよい。したがって、処理ユニット120による血管直径(d)又は半径(r)の定量化を実現することができる。なお、本実施形態の核心は、ウェアラブル装置100における実測値の偏差を校正することで、AC成分及びDC成分を定量化することにより、血管直径(d)又は血管半径(r)を求めることであるので、上記数値又はパラメータの例に限定されない。
【数31】
【0086】
赤血球(すなわち、Hb及びHbO2)と血漿との間の関連性は、NIRSセンサによって測定され得る。正常な全血は、血漿の約55%、及び血球の45%で構成されている。より具体的には、血漿は92%の水から構成され、残りの8%は血漿タンパク質の組合せであり、血球は90%の赤血球(すなわち、Hb及びHbO2)から構成され、残りの10%は白血球及び血小板である。血漿及び血球の密度はそれぞれ、約1.025g/ml及び1.115g/mlであることが知られている。したがって、全血の血液密度(ρ)は、密度に基づいて求められ、そして正常な健康な人の場合、1.03g/ml~1.075g/mlの間に近似され得る。血液密度(ρ)を校正するための校正係数は、NIRSセンサによって測定された統計データから得ることができ、異なるユーザの異なる状態に基づいて調整可能である。したがって、血液密度(ρ)は、上述したものに限定されない。血管直径(d)及び血液密度(ρ)のパラメータが既知であるという条件を考えると、血管壁の厚さ(h)は、MK関数を用いた統計的線形回帰又は非線形回帰を利用することによって、処理ユニット120によって決定されてもよい。ここで、血管壁の厚さ(h)は、血管直径(d)、血液密度(ρ)、及び校正されたPWVの既知のパラメータに基づいて、すべての個人について一定であると仮定される。
【0087】
本開示の少なくとも一実施形態では、血管壁の厚さ(h)を決定するための別の方法が提供される。血圧は約15秒~1分の測定単位時間内で大きく変動しないことが知られており、血管直径(d)及び血液密度(ρ)は既知のパラメータである。ただし、体の異なる部分における動脈は、異なる血管有効半径r及び血管壁の厚さ(h)を有する。血管壁の厚さ(h)を0.01mmから1mmまで0.01mmずつ増加させ、血管壁の厚さ(h)、血管直径(d)、血液密度(ρ)、及び脈波伝播時間(PTT)又は脈波伝播速度(PWM)の値をMK関数にとり、血圧(P)を得ることにより、100の計算ポイントを有する「血管壁の厚さ(h)対血圧(P)」の曲線をプロットすることができる。血圧(P)の決定は、測定単位時間内に得られるPTT又はPWMの複数の値を用いて、処理ユニット120によって繰り返され、「血管壁の厚さ(h)対血圧(P)」の曲線の複数のセットを得ることができる。「血管壁の厚さ(h)対血圧(P)」の曲線の複数のセットにおける血管壁の厚さ(h)のすべての値について、統計的分析のために、60mmHg~140mmHgの間など、血圧(P)の妥当な値を有するポイントが選択される。したがって、
図33に例示されるように、血管壁の厚さ(h)の最も一般的な値は、血管壁の厚さ(h)の実際の範囲に対応する。なお、血管壁の厚さ(h)の範囲は、人体の様々な部位によって異なり得るため、本開示は上述したものに限定されない。
【0088】
ウェアラブル装置100におけるE
0及びαの値を決定するために、一連の事前校正及び実験統計を実行してもよい。E
0及びαは、ヒト動脈組織に関連するヤング率の一部である。以前の調査研究によれば、E
0は約1428.7mmHgであり、αは0.015~0.033mmHgである。ただし、脈波伝播時間(PTT)を決定する際、生理学的信号監視システムに偏差が存在し得る。したがって、本開示の少なくとも一実施形態では、生理学的信号監視システムにおけるE
0及びαの校正及び決定法が提供される。ウェアラブル装置100は、シミュレータ(図示せず)に取り付けられてもよく、シミュレータによってシミュレートされたPTT(α0n)のセットは、ウェアラブル装置100によって測定されたPTT(α1n)のセットと比較され、PTT(α0n)とPTT(α1n)との間の変換関数を、下記の式(32)で表されるように取得する。したがって、E
0及びαの変化によるウェアラブル装置100のPTT測定値の偏差の表現である変換関数は、処理ユニット120に予め設定されてもよい。なお、本実施の形態で述べた演算値はあくまで説明のためのものであり、本開示の実施の形態を限定するものではない。
【数32】
【0089】
通常、脈圧(PP)は、30mmHg~50mmHgの範囲である。ただし、心血管疾患又は動脈疾患の症例では、PPは30mmHg~100mmHgの範囲となり得る。本開示の少なくとも一実施形態では、フォトプレチスモグラム強度比(PIR)及び脈波伝播時間(PTT)によってPPを決定するための方法が提供される。
図34及び
図35に示すように、PPは、動脈直径の拡張に関連し、PIRによって表されることができる。そのため、PIRは、異なるPPの下で線形又は非線形とすることができる。したがって、PPの変動は、動脈硬化レベルに応じて正規化されなければならない。動脈硬化レベルは、下記の式(33)におけるE
0及びαで表わされるようにPTTと正に相関するので、動脈硬化値のセットは、センサ110から取得されたPTT値のセットを使用して、処理ユニット120によって決定されてもよく、PIRは、下記の式(34)に応じて処理ユニット120によって決定されてもよい。したがって、PIR測定値は、処理ユニット120によって、動脈硬化レベルのセットによって正規化され、正規化されたPIRは、処理ユニット120に予め設定された動脈硬化正規化PIR対PPのルックアップテーブルを介してPPを決定するために利用されてもよい。この実施形態の核心は、動脈拡張レベルによってPPを決定することであるが、本開示の実施形態は、これに限定されない。
【数33】
【数34】
【0090】
本開示の少なくとも一実施形態では、収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を決定するためのアルゴリズムが提供される。SBPとDBPとの間の差は、心臓収縮の脈拍によって生成される圧力である脈圧(PP)と呼ばれてもよく、PP=SBP-DBPとして決定されてもよい。平均動脈圧(MAP)は、心拍数が増加することにつれて、SBPとDBPの算術平均に近づく。
図36に示すように、MAPは、SBPとDBPの間にある。したがって、MAP、SBP、DBP、及びPPの間の関係は、MAP及びPPに係数kを導入することによって、SBP及びDBPを決定するために使用することができる。ここで、係数kは0~1の範囲である。
図37に示すように、係数kがDBP=MAP-(k×PP)及びSBP=MAP+(1-k)・PPに調整され、SBP及びDBPは、PPでMAP値を上下に調整することで、処理ユニット120によって決定されてもよい。なお、係数kはSBP及びDBPを決定するための核心であるが、本開示の実施形態は、単一の係数のみに限定されるべきではない。
【0091】
本開示の少なくとも一実施形態では、脈波伝播時間(PTT)又は脈波伝播速度(PWV)をサンプリングするための方法は、センサ110によって異なる測定点間の動脈拍動の時間差を測定することによって実行されてもよい。ここで、時間差は、PTT又はPWVを表してもよい。機器測定の分野における既知の事実は、機器測定値が実際の値及び誤差を含むガウス分布の形成で表されることである。ここで、誤差は、系統誤差及びランダム誤差を含んでもよい。したがって、PTT又はPWVのセットが単位時間で測定される場合、それらのサンプリングされた値は、数値的方法によって決定されなければならない。例えば、中央値又は平均数は、PTT又はPWVを表す実際の値を決定するために、PTT又はPWVのグループから処理ユニット120によって決定されてもよい。なお、本開示におけるPTT又はPWVで表される実測値の取得方法は、それに限定されない。
【0092】
本開示の少なくとも一実施形態では、心拍数、脈波伝播時間(PTT)、及び脈波伝播速度(PWV)の実際の値の決定は、統計的方法によって実現されてもよい。したがって、実際の値の決定中に成功した測定は、測定単位時間あたりの分散の度合いに応じて、処理ユニット120によって判定されてもよい。例えば、ガウス分布の分散を決定することによって、大きなばらつきを有するセンサ110によって受信される任意の生理学的信号は、生理学的信号の変動が閾値を超える場合に満たさないものとして決定されてもよい。この場合には、再検査を促すために、視覚的及び/又は聴覚的な通知が、アラーム又はディスプレイによって生成されてもよい。
【0093】
本開示の少なくとも一実施形態では、複数のセンサ110による脈波伝播時間(PTT)の決定方法が提供される。ウェアラブル装置100のセンサ110は、主要センサと、補助センサとを含む。主要センサ及び補助センサによって取得されたPTTの値は、PTT測定中に互いに相互参照されてもよい。ただし、主要センサと補助センサのサンプリングレートは異なる。したがって、特定のアルゴリズムは、決定のために設計されてもよい。例えば、2つの主要センサM1及びM2と、
図38に示すような補助センサA1を含むウェアラブル装置100については、M1-M2、M1-A1、及びM2-A1である3つの値のPTTを得ることができる。なお、主要センサM1、M2及び補助センサA1の中でより高いサンプリング速度を有するものが、決定において支配的である。したがって、
図39に示すように、補間は、より低いサンプリングレートを有するものの感知点(すなわち、ピーク点又はトラフ点)の間で適用される。補間は、線形補間、双線形補間、又は任意の他の補間であってもよい。局所最大値又は局所最小値は、それぞれピーク点又は谷点からのN個の補間点において処理ユニット120によって決定され得る。ここで、Nは低サンプリングレートに対する高サンプリングレートの比に等しい。したがって、
図39に示すように、PTT測定のために、より高いサンプリングレートを有するセンサから得られる対応するパルスピーク又はパルストラフと共に、局所最大値又は局所最小値を使用することができる。本実施形態の核心は、ウェアラブル装置100によって異なるサンプリングレートを有するセンサ110でPTTを決定することであるが、上記の例示的な数値又はパラメータに限定されない。
【0094】
本開示の少なくとも一実施形態では、心拍数決定方法は、センサ110による動脈拍動の脈波の測定に基づく。心拍数(BPM)は、時刻tにおける電流パルスと、時刻t-1における前のパルスとの間の時間差に応じて決定され得る。測定単位時間内にN個のパルスが得られるので、パルス間の総周期数はN-1である。心拍数は、N-1の中央値又は平均数として、処理ユニット120によって決定されてもよく、決定された心拍数は、測定単位時間内の心拍数を表してもよい。本開示における心拍数を取得するための方法は、これに限定されない。
【0095】
本開示の文脈内で、「特徴抽出」及び「分類方法」という用語は、ECG、EMG、圧電等のセンサから取得された生理学的信号の各特性のコレクションを形成するプロセス又は技法を指し、これらのセンサは、そのサブコレクションに属してもよい。生理学的信号の特性のコレクションは、主成分分析(PCA)、線形判別分析(LDA)、局所線形埋め込み(LLE)、又はラプラシアン固有マップ等の分類方法によって、異なるカテゴリに分類することができる。分類を通じて、共分散値が大きい特性を追加カテゴリに分類して、元のコレクションよりも低い次元を持つ特性の新しいコレクションを出力することができる。新しいコレクションは、ユーザのアイデンティティを判別するために分類器によって訓練されてもよい。分類器は、サポートベクトルマシン(SVM)、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、k近傍法、又はナイーブベイズ等の従来の機械学習方法に基づいてプログラムすることができる。ユーザのアイデンティティが決定された後、ユーザ101の生理学的信号及び生理学的情報は、ユーザのアイデンティティに応じてモバイル装置200又はクラウドサーバ300に格納されてもよい。分類方法は、モバイル装置200上又は複数のクラウドサーバ300上でのみ実行されてもよく、ウェアラブル装置100は、生理学的信号及び生理学的情報のみを取得し、モバイル装置200及び複数のクラウドサーバ300に送信してもよい。
【0096】
本開示の少なくとも一実施形態では、センサ110は、手首から筋電図(EMG)の連続信号を読み取るための1対の電極を含んでもよい。処理ユニット120によって任意の信号読み取り値が連続信号の二乗平均平方根(RMS)値よりも大きいと判定された場合、信号は、ユーザのアイデンティティを決定するための生理学的信号の特性のサブコレクションとすることができる。連続信号は、周波数スペクトルを取得するために高速フーリエ変換(FFT)によって処理することができ、その結果、ユーザ識別のための特性の別のサブコレクションを形成することができる。
【0097】
本開示の少なくとも一実施形態では、センサ110は、2対の電極を含んでもよい。1対の電極は、皮膚の表面上に、5kHz、10kHz、50kHz、100kHz、500kHz、及び1MHz等の異なる周波数を有する異なるAC信号の組合せを印加するために、パルス波変調(PWM)発生器又はデジタルアナログ変換器(DAC)波形発生器の汎用入力/出力(GPIO)に接続される。同時に、他の1対の電極は、AC信号の変動を検出して、RLCモデル及び処理ユニット120による周波数スペクトル解析を通して皮膚及び体脂肪のインピーダンスの導出を可能にする。さらに、各ユーザは、表皮、結合組織、脂肪及び水分含量のような皮膚の明確で複雑な組成を有するため、取得された周波数スペクトルは、ユーザのアイデンティティを決定するための特性の別のサブコレクションであってもよい。
【0098】
本開示の少なくとも一実施形態では、センサ110は、300nm~1100nmの範囲の波長を有するレーザダイオード又はLEDによって形成された近赤外分光(NIRS)センサと、同じ波長を検出するように構成されたフォトダイオードとを含んでもよい。モンテカルロシミュレーションは、NIRSセンサの幾何光学特性に応じて、吸収、反射、透過について実行されて、NIRSセンサのART(すなわち、吸収、反射、透過)モデルが校正のために生成されてもよい。NIRSセンサは、オキシヘモグロビン(HbO2)、ヘモグロビン(Hb)、及び血糖を含む様々な血液含有量の比率を検出して、処理ユニット120によるモエンス・コートウェッグ(MK)関数の少なくとも1つの係数を校正するための対応するSpO2、SaO2、及び血流の決定を可能にすることができる。フォトプレチスモグラフィ(PPG)信号におけるダイクロティックノッチの特性を使用して、高血圧と心周期の関係等、心臓と動脈の特性を分析することができる。したがって、PGGから取得された特性は、ユーザのアイデンティティを決定するための特性のサブコレクションのうちの1つをさらに表すことができる。
【0099】
本開示の少なくとも一実施形態では、センサ110は、修正された四肢誘導II(MLII)心電図(ECG)信号を取得するための1対の電極であってもよい。QRS群のR波頂の検出は、処理ユニット120による異常発生間隔脈波(IPP)、不規則脈拍(IHB)、心房細動(AF)、心拍変動(HRV)及び心拍数を決定するために利用され得る。ECG信号のPQRST波は心周期全体を表すことができるので、PQRSTの時間領域信号は、ユーザのアイデンティティを決定するための特性のサブコレクションのうちの1つとすることができる。
【0100】
本開示の少なくとも一実施形態では、モンテカルロ法による光子輸送シミュレーションは、異なるタイプの皮膚組織に応答する校正を必要とし、したがって、光子輸送シミュレーションからの結果のカーブフィッティング、及びフィッツパトリック分類による実際の測定に適用されることができる。光子輸送シミュレーションは、異なる波長、強度、LEDの位置、及び光電センサの異なるサイズ及び位置で、光学パラメータを用いて実行されてもよい。フィッツパトリック分類による異なる皮膚タイプの光学パラメータは、屈折率、散乱率、吸収率、及びHenyey-Greenstein関数を含んでもよい。フィッツパトリック分類による異なる皮膚タイプに関連付けられた光子輸送シミュレーションの結果は、吸収、反射、透過、及び散乱を含んでもよい。実際の測定は、フィッツパトリック分類に従った異なる皮膚タイプでの「機械的波動時間遅延構造/脈波伝播時間リスケール」法によって行うことができる。したがって、校正は、光子輸送シミュレーション及び実際の測定からの結果のカーブフィッティングによって行うことができる。
【0101】
本開示の少なくとも一実施形態では、多層組織モデル、微小血管ランダム分布モデル、及び動脈ランダム分布モデルは、異なる波長の光源及び異なる光センサでのモンテカルロシミュレーションによって構築され、シミュレーションの結果は、特定の波長の光源での特定のタイプの組織モデルの表現である。したがって、「光源-光センサ-組織モデル」ルックアップテーブルは、シミュレーションの結果を組み合わせることによって構築されてもよい。センサ110によって実際の測定が実行されるとき、「光源-光センサ-組織モデル」ルックアップテーブルは、実際の測定の偏差を校正するために、処理ユニット120によって使用されてもよい。さらに、逆モンテカルロシミュレーションを「光源-光センサ-組織モデル」ルックアップテーブルに適用して、それに応じて光センサを設計してもよい。全体として、本開示の核心の1つは、モンテカルロ法の適用と、それに続く前後のカーブフィッティングであり、これは、実際の測定値の校正、又は光学センサの設計のための基準としてそれぞれ使用できる。
【0102】
要約すると、本開示の様々な実施形態に係る装置及び方法は、血圧モニタリングの高精度、着用体験の改善、及び便利なモニタリングを確保するために、脈波伝播時間及び血行動態パラメータを利用する。
【0103】
上記説明は、本開示の実施形態にすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。本開示の特許請求の範囲及び明細書による多くの変形及び修正は、依然として特許請求の範囲の開示の範囲内である。さらに、実施形態及び特許請求の範囲のそれぞれは、開示された利点又は特徴のすべてを達成する必要はない。さらに、要約書及び発明の名称は、特許文献の調査を容易にするのに役立つだけであり、クレームされた開示の範囲を限定することを決して意図したものではない。