IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガイア アグリカルチャー シーオー., エルティーディー.の特許一覧

<>
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図1
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図2
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図2A
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図3
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図3A
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図4
  • 特許-魚醤における生体アミン低減方法 図4A
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】魚醤における生体アミン低減方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20230322BHJP
   A23L 27/24 20160101ALI20230322BHJP
【FI】
A23L27/50 B
A23L27/50 101B
A23L27/50 103Z
A23L27/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215973
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022045308
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0114462
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520512063
【氏名又は名称】ガイア アグリカルチャー シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】GAIA AGRICULTURE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】574-6, Seonbi-ro, Yeonsan-myeon Nonsan-si Chungcheongnam-do 32912 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドンファン
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0057926(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0031420(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2063303(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1918267(KR,B1)
【文献】特開平10-150948(JP,A)
【文献】特開2004-267187(JP,A)
【文献】特開2008-212051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カタクチイワシを粗砕し、ここでエンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼで処理し、その後塩を投与して塩度を16.5%に調整して、25℃で100日間発酵させ、次いで2次で塩度が20%~25%になるように加塩して熟成させるステップを含み、
粗砕していないカタクチイワシに塩を投与して粗砕し、その後、前記発酵と同じ塩度に調整し、前記発酵と同じ温度で発酵熟成させた場合と比較して、魚醤におけるヒスタミンを低減する、魚醤におけるヒスタミン低減方法。
【請求項2】
2次で塩度が24%になるよう加塩した後、50か月熟成させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粗砕していないカタクチイワシに塩を投与して粗砕し、その後塩度を16.5%に調整し、25℃で18か月間発酵熟成させた場合と比較して、魚醤におけるヒスタミンを低減することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚醤における生体アミン低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生体アミンは、発酵食品や醤類食品の製造過程で発生する人体に有害な成分であり、特に下痢や腹痛を誘発するヒスタミンや血圧上昇を誘発するチラミンなどによる食品の安全性問題が発生している。
【0003】
このような生体アミン(biogenic amine)は、肉類及び魚類食品、乳製品、堅果類、塩辛類、醤類などの様々な食品の製造過程で生成され、特に伝統的な食生活の大きな比重を占める醤油や味噌などの発酵食品の製造過程で生成されるが、殺菌や調理によっては破壊、除去されないので、食品の製造過程において衛生及び安全性、含有量の減少などの特別な注意を要する。
【0004】
前記生体アミンのうち最もよく知られた人体に有害な化学物質はヒスタミンとチラミンであり、過剰摂取すると発疹、アレルギー、嘔吐、下痢、低血圧、及び腹痛などの症状が発生するので、食品の製造過程においてこれらヒスタミンやチラミンなどの人体に有害な成分を減少させるための様々な研究及び開発が行われている。
【0005】
このような生体アミンのうちのヒスタミンの生成を減少、抑制する種菌と培養方法に関する従来の先行技術文献としては、特許文献1の「生体アミン生成抑制及び分解活性を有するバチルス属菌株及びその用途」が挙げられる。
【0006】
前述した従来の発明は、バチルス・サブティリスHJ0-6菌株から、生体アミン分解活性を有する菌株及びその培養液を有効成分として含む生体アミン低減用組成物を提供し、前記菌株または組成物を処理するステップを含む生体アミン低減化方法を提供するものである。
【0007】
また、他の従来の先行技術文献である特許文献2(発明の名称「カジメ抽出物またはルバーブ抽出物を含むサバ内のヒスタミン生成抑制用組成物及びそれを用いたサバの製造方法」)は、カジメ抽出物及びルバーブ抽出物の少なくとも1つの抽出物を有効成分として含むサバ内のヒスタミン生成抑制用組成物を提供すると共に、カジメ抽出物及びルバーブ抽出物の少なくとも1つの抽出物にサバを浸漬し、サバ内の微生物であるモルガネラ・モルガニー及びフォトバクテリウム・フォスフォリウムの生育を抑制し、前記微生物由来のヒスチジンデカルボキシラーゼの活性を抑制することにより、ヒスタミン生成が抑制されたサバを製造する方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0053471号公報
【文献】韓国登録特許第10-1438558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低塩調味料の製造過程における生体アミン低減技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、カタクチイワシを粗砕し、ここでエンドペプチダーゼ(Endo-peptidase)及びエキソペプチダーゼ(Exo-peptidase)で処理し、その後塩を投与して塩度を15%~19%に調整して発酵させ、次いで2次で塩度が20%~25%になるように加塩して熟成させるステップを含む、魚醤におけるヒスタミン低減方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施例において、前述した発酵の条件は、25℃で100日間発酵させるものとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明の他の実施例において、前記エンドペプチダーゼはProtex 6Lであり、前記エキソペプチダーゼはProzyme 2000Pであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0013】
以下、本発明について説明する。
【0014】
魚醤製造時の発酵及び熟成過程において、生体アミンの生成が問題となり、それにより収率が低くなり、経済性がなくなる。本発明においては、このような問題を解決し、経済的に収率が高く、不快な匂いや生臭みがなく、全窒素含有量が多く、味わいのある魚醤を製造するために、耐塩性環境で分解率の高い酵素を用いてカタクチイワシ魚醤を製造した。ここで、所定期間における生成率を調査するために、ヒスタミン(Histamine)を測定した。
【0015】
エンドペプチダーゼとしてProtex 6Lを用い、エキソペプチダーゼとしてProzyme 2000Pを用いて、16.5%(w/w)天日塩で処理したカタクチイワシを室温で90日間発酵させ、その後24%加塩して熟成させた。酵素で処理せず、粗砕及び多段発酵過程を経ていない実験群よりも、酵素であるProtex 6L及びProzyme 2000Pで処理して粗砕及び加塩し、1次発酵後に2次加塩熟成させたもののほうが、高いタンパク質分解率(AN)により全窒素含有量が多く、味わいや風味が高く、不快な匂いや生臭みがなく、ヒスタミンが低減し、収率が高いので、短期間で均一な品質に再現可能であり、大量生産を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、収穫した生のカタクチイワシに天日塩をまんべんなく振りかけて粗砕し、ここでエンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼで処理し、その後塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて100日間放置し、次いで1次発酵させ、2次で24%に加塩して安定して50カ月熟成させ、その後フィルターで濾過したものは、熟成期間が最も長いが、安定して分解され、不快な匂いや生臭みがなく、全窒素2.07%、ヒスタミン92.5mg/kgであった。長期間、短期間に関わらず安定して発酵及び熟成が行われるので経済的であり、収率も95%以上であり、廃棄物がほとんど発生しないので海洋投を行うこともなく、低塩複合調味料の原料に適した魚醤を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヒスタミン低減カタクチイワシ魚醤の製造工程図である。
図2】本発明の実験A)群のカタクチイワシ魚醤のヒスタミン試験成績書(92.5mg/kg、韓国SGS)。
図2A図2の日本語翻訳文である。
図3】本発明の実験B)群のカタクチイワシ魚醤のヒスタミン試験成績書(258mg/kg、韓国SGS)。
図3A図3の日本語翻訳文である。
図4】本発明の実験C)群のカタクチイワシ魚醤のヒスタミン試験成績書(926mg/kg、韓国SGS)。
図4A図4の日本語翻訳文である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、非限定的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものと解釈すべきではない。
【0019】
本発明に用いるカタクチイワシは巨済で購入し、塩は発明者らが保有している天日塩を用いた。カタクチイワシ熟成促進酵素のうち、エンドペプチダーゼとしてはProtex 6Lを用い、エキソペプチダーゼとしてはProzyme 2000Pを用いた。実験は、下記A)~C)の3つの群に分け、各条件下で生体アミンなどを測定するものとした。
【0020】
A)収穫した生のカタクチイワシを粗砕し、ここでエンドペプチダーゼとしてProtex 6Lを投与し、エキソペプチダーゼとしてProzyme 2000Pを投与し、その後天日塩をまんべんなく振りかけて塩度を16%に調整し、素焼きの器に入れて25℃で100日間発酵させ、次いで2次で塩度が24%になるように加塩して安定して50カ月熟成させ、その後フィルターで濾過する。
【0021】
B)収穫した生のカタクチイワシに天日塩をまんべんなく振りかけて粗砕し、その後塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて25℃の室内で18カ月間発酵熟成させる。
【0022】
C)収穫した生のカタクチイワシに天日塩をまんべんなく振りかけて粗砕し、その後塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて直射日光条件下の約30℃の室外で発酵熟成させる。
【0023】
生体アミンの測定方法
生体アミンの測定は、食品医薬品安全処と協力約定を結んだSGSに依頼し、Referance with KFDA Method、HPLC/PDA方法で行った。
【0024】
前記実施例の結果は、次の通りである。
【0025】
A)群においては、収穫した生のカタクチイワシを粗砕し、ここでエンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼで処理し、天日塩をまんべんなく振りかけて塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて平均温度25℃の室内で100日間発酵させた。
【0026】
100日間発酵させた魚醤に天日塩を2次加塩し、塩度24%で安定して50カ月熟成させ、その後フィルターで濾過したものは、熟成期間が最も長いが、安定してタンパク質が分解され、不快な匂いや生臭みがなく、全窒素含有量が非常に高く、ヒスタミンが92.5mg/kgであった。
【0027】
24%の塩度は、5カ月から50カ月までの熟成期間で安定して維持されることが確認された。
【0028】
B)群においては、収穫した生のカタクチイワシに天日塩をまんべんなく振りかけて粗砕し、その後塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて25℃の室内で18カ月発酵熟成させたものは、熟成が多少不安定であり、不快な匂いや生臭みが若干あり、ヒスタミンは258mg/kgであった。
【0029】
C)群においては、収穫した生のカタクチイワシに天日塩をまんべんなく振りかけて粗砕し、その後塩度を16.5%に調整し、素焼きの器に入れて直射日光条件下の約30℃の室外で発酵熟成させたものは、期間が短いが、熟成が不安定であり、不快な匂いや生臭みがあり、ヒスタミンは926mg/kgであった。
図1
図2
図2A
図3
図3A
図4
図4A