(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20230322BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
(21)【出願番号】P 2018104880
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴士
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0207186(US,A1)
【文献】国際公開第2016/158130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/04-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する第1シリンダおよび第2シリンダを有し、圧縮性流体が充填されているシリンダと、
前記第1シリンダに
収容され、第1方向に移動することで前記シリンダに充填されている圧縮性流体を圧縮し、圧縮された圧縮性流体の圧力により前記第1方向とは反対の第2方向に移動する第1ピストンと、
前記第2シリンダに
収容され、前記第1方向および前記第2方向に移動可能な第2ピストンと、
前記第2シリンダに収容され、前記第2ピストンを付勢する弾性体と、を有し、
前記第2シリンダの内部は、前記第2ピストンの前記第1方向側に位置し、前記第1シリンダと連通する第1の空間と、前記第2ピストンの前記第2方向側に位置し、前記第1シリンダと連通しない第2の空間と、に区画され、
前記弾性体は、前記第2の空間に収容され、
前記第2ピストンは、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力
を前記第2方向に作用する
ように受ける受圧面と、前記弾性体の付勢力
を前記第1方向に作用する
ように受ける押圧面と、を備え、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第1方向に移動する際に、前記受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力により、前記押圧面
が受ける前記第1方向の付勢力に抗して前記第2方向に移動し、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第2方向に移動する際に、前記押圧面
が受ける前記第1方向の付勢力により、前記受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力に抗して前記第1方向に移動する、
打込機。
【請求項2】
互いに連通する第1シリンダおよび第2シリンダを有し、圧縮性流体が充填されているシリンダと、
前記第1シリンダに
収容され、第1方向に移動することで前記シリンダに充填されている圧縮性流体を圧縮し、圧縮された圧縮性流体の圧力により前記第1方向とは反対の第2方向に移動する第1ピストンと、
前記第2シリンダに
収容され、前記第1方向および前記第2方向に移動可能な第2ピストンと、
前記第2シリンダに収容され、前記第2ピストンを付勢する弾性体と、を有し、
前記第2シリンダの内部は、前記第2ピストンの前記第1方向側に位置し、前記第1シリンダと連通する第1の空間と、前記第2ピストンの前記第2方向側に位置し、前記第1シリンダと連通しない第2の空間と、に区画され、
前記弾性体は、前記第2の空間に収容され、
前記第2ピストンは、前記弾性体の付勢力
を前記第1方向に作用する
ように受ける押圧面と、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力
を前記押圧面に対する付勢力の作用方向と同方向の前記第1方向に作用する
ように受ける第1受圧面と、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力
を前記押圧面に対する付勢力の作用方向と逆方向の前記第2方向に作用する
ように受ける第2受圧面と、を備え、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第1方向に移動する際に、前記第2受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力により、前記押圧面
が受ける前記第1方向の付勢力および前記第1受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力に抗して移動し、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第2方向に移動する際に、前記押圧面
が受ける前記第1方向の付勢力および前記第1受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力により、前記第2受圧面に作用する圧力に抗して移動する、
打込機。
【請求項3】
前記第1シリンダは、前記第2ピストンの一部を
収容する、
請求項2に記載の打込機。
【請求項4】
前記第2シリンダは前記第1シリンダよりも大径であり、
前記第2ピストンは、前記第1シリンダに
収容される小径部と、前記第2シリンダに
収容される大径部と、を含み、
前記第2ピストンの前記大径部は、前記第1シリンダを囲繞している、
請求項3に記載の打込機。
【請求項5】
前記第2シリンダは前記第1シリンダよりも大径であり、
前記第2ピストンは、前記第2シリンダの外壁及び内壁に対向する外周面と内周面を有し、前記第2シリンダの前記内壁は、前記第1シリンダを囲繞している、
請求項1に記載の打込機。
【請求項6】
前記シリンダの内外に連通し、前記第2ピストンによって開閉される貫通孔を有し、
前記シリンダ内の圧縮性流体の圧力が基準値を上回ると、前記貫通孔が開かれる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の打込機。
【請求項7】
互いに連通する第1シリンダおよび第2シリンダを有し、圧縮性流体が充填されているシリンダと、
前記第1シリンダに
収容され、第1方向に移動することで前記シリンダに充填されている圧縮性流体を圧縮し、圧縮された圧縮性流体の圧力により前記第1方向とは反対の第2方向に移動する第1ピストンと、
前記第2シリンダに
収容され、前記第1方向および前記第2方向に移動可能な第2ピストンと、
前記第2シリンダに収容され、前記第2ピストンを付勢する弾性体と、を有し、
前記第2シリンダの内部は、前記第2ピストンの前記第1方向側に位置し、前記第1シリンダと連通する第1の空間と、前記第2ピストンの前記第2方向側に位置し、前記第1シリンダと連通しない第2の空間と、に区画され、
前記第2ピストンは、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力を前記第2方向に作用する
ように受ける受圧面と、前記弾性体の付勢力
を前記第1方向に作用する
ように受ける押圧面と、を備え、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第1方向に移動する際に、前記受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力により、前記押圧面
が受ける前記圧縮性流体の付勢力に抗して移動し、
前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第2方向に移動する際に、前記押圧面
が受ける前記第1方向の付勢力により、前記受圧面
が受ける前記圧縮性流体の圧力に抗して移動し、
前記第2シリンダに形成されるとともに、前記圧縮性流体が充填される空間、及び、前記シリンダの外部に連通し、前記第2ピストンによって開閉される貫通孔を有し、
前記シリンダ内の圧縮性流体の圧力が基準値を上回ると、
前記第2ピストンが前記第2方向に移動することで、前記貫通孔が開かれる、
打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮性流体の圧力によって移動されるドライバブレード等の打撃子によって止具を打撃して当該止具を木材や石膏ボード等に打ち込む打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバブレード等の打撃子を移動させる手段として空気や不活性ガス等の圧縮性流体の圧力(ガススプリング)を利用する打込機がある。この種の打込機が備える打撃子は、圧縮性流体が充填されたシリンダ内に移動可能に収容され、圧縮性流体の圧力によってシリンダの軸方向に移動するピストンと一体化されている。
【0003】
シリンダ内に収容されているピストンは、電動モータ等の駆動源によって駆動され、シリンダの一端側(下端側)から他端側(上端側)へ移動(上昇)する。ピストンがシリンダの下端側から上端側に向かって移動すると、シリンダに充填されている圧縮性流体が圧縮され、シリンダの内圧が増大する。その後、ピストンが所定位置(上死点)に到達すると、ピストンへの駆動力の伝達が断絶される。すると、ピストンは、圧縮性流体の圧力(シリンダの内圧)によって上死点から下死点へ向かって移動(降下)する。かかるピストンの降下に伴って打撃子も降下し、打撃子によって止具が打撃される。以上がガススプリングを利用した打込機の基本動作である。
【0004】
ここで、ピストンを下死点側から上死点側に移動させるための駆動方式には様々な方式があるが、上記基本動作は、ピストンの駆動方式に関わらず共通である。例えば、ピストンの駆動方式の1つとして押上げ方式がある。押上げ方式では、打撃子の側面にその軸方向に沿って複数のラックが設けられるとともに、打撃子の近傍に、駆動源によって回転駆動されるホイールが設けられる。ホイールには複数のピンがその周方向に沿って設けられ、ホイールが回転すると、それぞれのピンが打撃子に設けられているそれぞれのラックと順次係合する。より具体的には、ホイールには、第1ピンと、ホイールの回転方向において第1ピンから最も離間した第2ピンと、これら第1ピンと第2ピンとの間に配置された複数の第3ピンと、が設けられる。ホイールが回転すると、まず第1ピンが打撃子のラックに係合する。その後、第1ピンに隣接する第3ピンが次のラックに係合し、この第3ピンに隣接する別の第3ピンがさらに次のラックに係合する。以後、それぞれの第3ピンがそれぞれのラックに順次係合し、打撃子を押し上げる。この結果、打撃子と一体のピストンがシリンダ内において下死点側から上死点側へ向かって上昇する。その後、ピストンが上死点に到達すると、第2ピンとラックとの係合が解除される。つまり、駆動源からピストンへの駆動力の伝達が断絶される。
【0005】
ピストンの駆動方式の他の1つとして巻上げ方式がある。巻上げ方式では、駆動源によって回転駆動される作動部と、作動部と係合するドラムと、が設けられ、ドラムとピストンとがワイヤ等によって連結される。作動部が回転すると、当該作動部と係合しているドラムが回転してワイヤ等がドラムに巻き取られ、ピストンが下死点側から上死点側へ向かって引き上げられる。その後、ピストンが上死点に到達すると、作動部とドラムとの係合が解除される。つまり、駆動源からピストンへの駆動力の伝達が断絶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガススプリングを利用する打込機では、ピストンを下死点側から上死点側に移動させるための駆動方式に関わらず、シリンダ内におけるピストンの移動に伴って圧縮性流体の圧力(シリンダの内圧)が変化する。
【0008】
しかし、ピストンの移動量(ストローク)は一定である一方、シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力は温度によって変化する。例えば、環境温度が高いときには、圧縮性流体の温度が高くなり圧力も高くなる。一方、環境温度が低いときには、圧縮性流体の温度が低くなり圧力も低くなる。つまり、ピストンが上死点に到達した際のシリンダの内圧が圧縮性流体の温度によって変化し、得られる打込力も変化する。
【0009】
本発明の目的は、ガススプリングを利用する打込機の打込力の安定化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、打込機は、圧縮性流体が充填されているシリンダと、前記シリンダに収容され、第1方向に移動することで前記シリンダに充填されている圧縮性流体を圧縮し、圧縮された圧縮性流体の圧力により前記第1方向とは反対の第2方向に移動する第1ピストンと、前記シリンダに収容され、前記第1方向および前記第2方向に移動可能な第2ピストンと、前記第2ピストンを付勢する弾性体と、を有する。前記第2ピストンは、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力が作用する受圧面と、前記弾性体の付勢力が作用する押圧面と、を備える。前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第1方向に移動する際に、前記受圧面に作用する圧力により、前記押圧面に作用する付勢力に抗して移動する。前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第2方向に移動する際に、前記押圧面に作用する付勢力により、前記受圧面に作用する圧力に抗して移動する。
【0011】
本発明の他の一態様では、打込機は、圧縮性流体が充填されているシリンダと、前記シリンダに収容され、第1方向に移動することで前記シリンダに充填されている圧縮性流体を圧縮し、圧縮された圧縮性流体の圧力により前記第1方向とは反対の第2方向に移動する第1ピストンと、前記シリンダに収容され、前記第1方向および前記第2方向に移動可能な第2ピストンと、前記第2ピストンを付勢する弾性体と、を有する。前記第2ピストンは、前記弾性体の付勢力が作用する押圧面と、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力が前記押圧面に対する付勢力の作用方向と同方向に作用する第1受圧面と、前記シリンダに充填されている圧縮性流体の圧力が前記押圧面に対する付勢力の作用方向と逆方向に作用する第2受圧面と、を備える。前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第1方向に移動する際に、前記第2受圧面に作用する圧力により、前記押圧面に作用する付勢力および前記第1受圧面に作用する圧力に抗して移動する。前記第2ピストンは、前記第1ピストンが前記第2方向に移動する際に、前記押圧面に作用する付勢力および前記第1受圧面に作用する圧力により、前記第2受圧面に作用する圧力に抗して移動する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガススプリングを利用する打込機の打込力の安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る打込機の全体構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図4】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図5】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図6】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図7】第1実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図8】第2実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図10】第2実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図11】第3実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係る打込機が備えるシリンダの内部構造を示す他の図である。
【
図13】第1実施形態に係る打込機の変形例を示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る打込機の変形例を示す他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の打込機の実施形態の一例について、
図1~
図7を参照しながら詳細に説明する。
図1に示される打込機1はハウジング2を有する。ハウジング2は、シリンダケース3と、シリンダケース3に連接するモータケース4と、シリンダケース3に連接するハンドル5と、モータケース4の端部とハンドル5の端部とを繋ぐ連結部6と、を有する。
【0015】
シリンダケース3内には、圧縮性流体(本実施形態では空気)が充填されたシリンダ10が収容されている。もっとも、シリンダ10に充填される圧縮性流体は空気に限られず、例えば、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスであってもよい。シリンダ10は、シリンダケース3内に設けられた上部ホルダ7a及び下部ホルダ7bにより径方向において位置決めされている。
【0016】
シリンダ10内には、第1ピストン20および第2ピストン30(
図2)が、それぞれ移動可能に収容されている。第1ピストン20および第2ピストン30の移動方向は、シリンダ10の軸線B1方向である。つまり、第1ピストン20および第2ピストン30は、シリンダ10の軸線B1に沿って、第1方向(D1)と、第1方向(D1)とは反対の第2方向(D2)と、に往復動可能である。本明細書では、第1方向(D1)を「上方」と定義し、第2方向(D2)を「下方」と定義する。
【0017】
第1ピストン20にはドライバブレード21が一体的に設けられている。第1ピストン20およびドライバブレード21は、シリンダ10内の空気の圧力によって第1方向および第2方向に移動する。つまり、第1ピストン20およびドライバブレード21は、シリンダ10内の空気の圧力によって上下に往復動する。図示されている第1ピストン20およびドライバブレード21はネジ結合により一体化されているが、別体の第1ピストン20とドライバブレード21とを溶接その他の手段によって一体化させてもよい。
【0018】
下部ホルダ7bの下方には下端ホルダ8が設けられている。下端ホルダ8はシリンダ10の下端を支持しており、上部ホルダ7aおよび下部ホルダ7bと協働してシリンダ10を軸線B1方向において位置決めしている。さらに、下端ホルダ8は、シリンダ10の下端に収容されている緩衝部材としてのバンパ9も支持している。本実施形態におけるバンパ9はゴム状弾性体により形成されている。バンパ9は、第2方向に移動する第1ピストン20を受け止める。具体的には、第2方向に移動する第1ピストン20は所定位置においてバンパ9に衝突する。バンパ9は、第1ピストン20の衝突の衝撃を減衰および低減させる。
【0019】
下端ホルダ8の下方には射出部50が設けられている。射出部50の内部には、軸線B1方向に延びる射出路51が設けられている。ドライバブレード21は、バンパ9の中心に設けられている貫通孔を通して射出路51内に延びており、射出路51内で軸線B1方向に往復動する。この際、射出路51は、ドライバブレード21の動きを案内するガイドとしても機能する。
【0020】
射出部50にはプッシュロッド52が設けられている。プッシュロッド52の先端は射出路51の出口(射出口)よりも下方に突出しており、被打込材W1に押し付けられる。プッシュロッド52は、コイルばねの力で常に第2方向(D2)に向けて付勢されており、被打込材W1に押し付けられると、コイルばねの付勢に抗して第1方向(D1)に移動する。言い換えれば、プッシュロッド52は、被打込材W1に押し付けられると、コイルばねの付勢に抗して上方に押し上げられる。
【0021】
第1ピストン20およびドライバブレード21を移動させる駆動機構60が主にモータケース4に収容されている。駆動機構60は、ピンホイール61および駆動軸62を備えている。ピンホイール61は駆動軸62を有し、その表面には複数のピン63が回転方向に沿って所定間隔で設けられている。一方、ドライバブレード21の側面には、その長手方向に沿って複数のラック64が所定間隔で設けられている。
【0022】
駆動機構60の動力源である電動モータ65は、ステータおよびロータを有するブラシレスDCモータである。電動モータ65は、連結部6に装着されているバッテリ66から電力の供給を受ける。また、電動モータ65は、複数のスイッチング素子を備えるインバータ回路などによって制御され、回転駆動力を出力する。電動モータ65から出力される回転駆動力は、減速機構を経由して駆動軸62に伝達される。本実施形態にけるバッテリ66は、連結部6に着脱可能なリチウムイオン電池である。もっとも、バッテリ66には、リチウムイオン電池に代えて、ニッケル水素電池,リチウムイオンポリマー電池,ニッケルカドミウム電池などの他の二次電池を用いることもできる。
【0023】
次に、打込機1の基本動作について説明する。所定条件が満たされた状態で、プッシュロッド52及びハンドル5に設けられているトリガ5aの双方が操作されると、電動モータ65が作動し、回転駆動力が出力される。電動モータ65から出力された回転駆動力は、減速機構を経由してピンホイール61に伝達され、ピンホイール61が回転する。ピンホイール61の回転力はピン63およびラック64を介してドライバブレード21および第1ピストン20に伝達され、これらを待機位置または上死点に向けて移動させる。つまり、第1ピストン20およびドライバブレード21を第1方向(D1)に移動させる。このとき、第1方向に移動する第1ピストン20は、シリンダ10に充填されている空気を圧縮する。
【0024】
第1ピストン20およびドライバブレード21が上死点に到達すると、ピン63とラック64との係合が解除される。すると、第1ピストン20およびドライバブレード21は、圧縮されたシリンダ10内の空気の圧力により、第1方向とは反対の第2方向(D2)に移動する。つまり、第1ピストン20およびドライバブレード21は、上死点から下死点に向けて降下する。そして、ドライバブレード21の先端が、射出路51内で待機している止具Aの頭部を打撃し、止具Aが被打込材W1に打ち込まれる。
【0025】
次に、主に
図2~
図5を参照しつつ、シリンダ10およびシリンダ10に収容されている第1ピストン20,第2ピストン30について説明する。
【0026】
図2,
図3に示されるように、シリンダ10は、全体として円筒状の第1シリンダ11と、全体として円環状の第2シリンダ12と、を含む。
図2に示されるように、第2シリンダ12は、第1シリンダ11の上部に連接しており、第1シリンダ11と第2シリンダ12とは互いに連通している。
【0027】
図2に示されるように、第1ピストン20は、第1シリンダ11内に移動可能に収容されている。言い換えれば、第1シリンダ11は、第1ピストン20を移動可能に支持している。具体的には、第1ピストン20は、第1シリンダ11の内部に、軸線B1に沿って上下に移動可能に収容されている。また、第1ピストン20の外周面には、第1シリンダ11の内周面に当接するシール部材としてのXリング22が装着されている。よって、第1ピストン20の上面23には、シリンダ10に充填されている空気の圧力が作用する。そこで、本実施形態に関する以下の説明では、第1ピストン20の上面23を「受圧面23」と呼ぶ場合がある。
【0028】
図2に示されるように、第2ピストン30は、第2シリンダ12内に収容されている。言い換えれば、第2シリンダ12は、第2ピストン30を移動可能に支持している。
図2,
図3に示されるように、第2シリンダ12は、第1シリンダ11よりも大径であり、第1シリンダ11の上端に帽子のように被せられている。具体的には、第2シリンダ12は、第1シリンダ11よりも直径が大きな環状の内壁13と、当該内壁13よりもさらに直径が大きな環状の外壁14と、を備える。第2シリンダ12の内壁13は第1シリンダ11の上部を囲繞しており、外壁14は内壁13を囲繞している。つまり、第2シリンダ12は、第1シリンダ11と連通し、かつ、第1シリンダ11の上部を囲繞する環状空間を形成している。第2シリンダ12は、内壁13および外壁14の下端に連接され、環状空間の下部を閉塞するリング状の底板15と、外壁14の上端に連接され、環状空間の上部を閉塞する円板状の天井板16と、をさらに備える。
【0029】
図2,
図3に示されるように、第2ピストン30は、全体としてリング状の外観を呈し、第1シリンダ11の上部を囲繞している第2シリンダ12内の環状空間に、軸線B1に沿って上下に移動可能に収容されている。言い換えれば、第2ピストン30は、第2シリンダ12と同様に、第1シリンダ11の上部を囲繞している。また、第2ピストン30の内周面には、第2シリンダ12の内壁13の内周面に当接するシール部材としての内側Oリング31が装着されており、第2ピストン30の外周面には、第2シリンダ12の外壁14の内周面に当接するシール部材としての外側Oリング32が装着されている。
【0030】
図2に示されるように、第2シリンダ12内には、第2ピストン30に加え、弾性体としてのコイルばね17が収容されている。コイルばね17は、第2シリンダ12内の環状空間に挿入されており、第2ピストン30と同様に第1シリンダ11を囲繞している。また、コイルばね17は、第2シリンダ12の底板15と第2ピストン30との間に配置されており、第2ピストン30を上方に向かって常に付勢している。具体的には、コイルばね17の上端は第2ピストン30の下面34に当接しており、コイルばね17の下端は第2シリンダ12の底板15に当接している。
【0031】
上記構造により、第2ピストン30の上面33には、シリンダ10に充填されている空気の圧力が作用する一方、第2ピストン30の下面34には、コイルばね17の付勢力が作用する。そこで、本実施形態に関する以下の説明では、第2ピストン30の上面33を「受圧面33」と呼び、第2ピストン30の下面34を「押圧面34」と呼ぶ場合がある。
【0032】
図2に示されている第1ピストン20は待機位置に位置している。このとき、第1ピストン20の受圧面23および第2ピストン30の受圧面33にはシリンダ10の内圧が作用しており、第2ピストン30の押圧面34にはコイルばね17の付勢力が作用している。ここで、当初のシリンダ10内の空気の圧力が図示されている状態よりも高かった場合、第2ピストン30は図示されている位置よりも低い位置に下がり、バンパ18からより離間する。つまり、第2ピストン30は、受圧面33に作用する空気の圧力により、押圧面34に作用するコイルばね17の付勢力に抗して、図示されている位置よりも低い位置に押し下げられる。一方、当初のシリンダ10内の空気の圧力が図示されている状態よりも低かった場合、第2ピストン30は図示されている位置よりも高い位置に上がり、バンパ18により近接する。つまり、第2ピストン30は、押圧面34に作用するコイルばね17の付勢力により、受圧面33に作用する空気の圧力に抗して、図示されている位置よりも高い位置に押し上げられる。
【0033】
もっとも、当初のシリンダ10内の空気の圧力に応じて第2ピストン30が上記のように上下動する結果、第2シリンダ12を含むシリンダ10全体の容積が増減するので、シリンダ10内の空気の圧力は、当初の圧力の高低に関わらず常に略一定に保たれる。つまり、シリンダ10の内圧が作用する受圧面33とコイルばね17の付勢力が作用する押圧面34とを備える第2ピストン30の調圧作用により、シリンダ10の内圧が常に一定に保たれる。要するに、第2ピストン30は、シリンダ10の内圧を略一定に保持する調圧機構として機能する。
【0034】
図2に示されている第1ピストン20が
図4に示されている上死点に向かって第1方向(上方)に移動すると、シリンダ10内の空気がさらに圧縮され、シリンダ10の内圧がさらに上昇する。言い換えれば、第1ピストン20は、第1方向に移動することで、シリンダ10に充填されている空気を圧縮する。
【0035】
シリンダ10の内圧が上昇すると、第2ピストン30の受圧面33に作用する圧力も増大するので、第2ピストン30は、押圧面34に作用する付勢力に抗して第2方向(下方)に移動する。つまり、第2ピストン30は、第1ピストン20が第1方向(上方)に移動する際に、受圧面33に作用する圧力により、押圧面34に作用する付勢力に抗して、第2方向(下方)に移動する。
【0036】
その後、
図4に示されている第1ピストン20が
図5に示されている下死点に向かって第2方向(下方)に移動すると、その移動に伴ってシリンダ10の内圧が低下する。シリンダ10の内圧が低下すると、第2ピストン30の受圧面33に作用する圧力も減少するので、第2ピストン30は、押圧面34に作用する付勢力によって第1方向(上方)に移動する。つまり、第2ピストン30は、第1ピストン20が第2方向(下方)に移動する際に、押圧面34に作用する付勢力により、受圧面33に作用する圧力に抗して、第1方向(上方)に移動する。このとき、第1ピストン20と逆向きに移動する第2ピストン30は、第1ピストン20の移動に伴う反力を打ち消すカウンタウエイトとして機能する。
【0037】
図6,
図7に示されるように、シリンダ10には、当該シリンダ10の内外に連通し、第2ピストン30によって開閉される貫通孔19が設けられている。本実施形態では、第2シリンダ12の外壁14に貫通孔19が設けられている。シリンダ10内の空気の圧力が所定の基準値を上回ると、貫通孔19が開かれ、シリンダ10が大気連通する。例えば、
図6に示されるように、第1ピストン20が上死点またはその近傍まで上昇した際に、何らかの原因でシリンダ10の内圧が基準値を上回ると、受圧面33に作用する圧力により、第2ピストン30がコイルばね17の付勢に抗して所定位置よりも低い位置まで押し下げられる。すると、第2シリンダ12と第2ピストン30との間の外側Oリング32による気密封止が解除され、第2シリンダ12を含むシリンダ10が貫通孔19を介して大気開放され、シリンダ10内の空気が排気される。空気が排気され、シリンダ10の内圧が基準値を下回ると、押圧面34に作用する付勢力により、第2ピストン30が所定位置よりも高い位置まで押し上げられる。すると、第2シリンダ12と第2ピストン30との間の外側Oリング32による気密封止が復活し、第2シリンダ12を含むシリンダ10が大気から遮断される。このとき、第2ピストン30は、シリンダ10の内圧が基準値を上回ったときにシリンダ10を大気開放させるリリーフバルブとして機能する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る打込機1は、シリンダ10の内圧を略一定に保持する調圧機構として機能する第2ピストン30を備えている。よって、環境温度などが変化してもシリンダ10の内圧が略一定に保持され、常に同一または略同一の打込力が得られる。
【0039】
また、第2ピストン30は、カウンタウエイトおよびリリーフバルブとしても機能する。よって、打込み動作時に打込機1が浮き上がることがなく、操作の安定性が向上する。さらに、シリンダ10の内圧が過剰に上昇することもない。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本発明の打込機の実施形態の他の一例について詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る打込機は、第1実施形態に係る打込機1(
図1~
図7)と同一の基本構成を有する。そこで、第1実施形態に係る打込機1との相違点について説明する一方、第1実施形態に係る打込機1と同一または実質的に同一の構成についての説明は適宜省略する。
【0041】
図8に示されるように、本実施形態に係る打込機が備える第2ピストン40は、全体としてリング状の外観を呈する点において第1実施形態に係る打込機1が備える第2ピストン30(
図2)と一致している。
【0042】
一方、本実施形態における第2ピストン40は、第1シリンダ11によって支持される小径部41と、第2シリンダ12によって支持される大径部42と、を含む二重のリング状に成形されている点において、
図2等に示されている第2ピストン30と相違している。
【0043】
図8に示されるように、第2ピストン40の小径部41の外径は、第1シリンダ11の内径よりも小さく、当該小径部41は第1シリンダ11の内側に配置されている。第2ピストン40の大径部42の内径は第1シリンダ11の外径よりも大きく、第2ピストン40の大径部42の外径は第2シリンダ12の内径よりも小さい。第2ピストン40の大径部42は、第2シリンダ12の内側に配置され、かつ、第1シリンダ11の上部を囲繞している。言い換えれば、第2ピストン40のうち、第1シリンダ11の径方向内側に位置している部分が小径部41であり、第1シリンダ11の径方向外側に位置している部分が大径部42である。
【0044】
図8に示されるように、本実施形態における第1シリンダ11は、第1ピストン20の全部および第2ピストン40の一部(小径部41)を移動可能に支持しており、第2シリンダ12は、第2ピストン40の他の一部(大径部42)を移動可能に支持している。
【0045】
第2ピストン40の小径部41の外周面には、第1シリンダ11の内周面に当接するシール部材としての内側Oリング43が装着されており、第2ピストン40の大径部42の外周面には、第2シリンダ12の内周面に当接するシール部材としての外側Oリング44が装着されている。
【0046】
上記構造により、第2ピストン40の小径部41の上面41aおよび大径部42の上面42aには、シリンダ10に充填されている空気の圧力が作用する。同じく、第2ピストン40の小径部41の下面41bにもシリンダ10に充填されている空気の圧力が作用する。また、第2ピストン40の大径部42の下面42bには、コイルばね17の付勢力が作用する。さらに、シリンダ10内の空気の圧力は、小径部41の下面41bに対しては、大径部42の下面42bに対する付勢力の作用方向と同方向(上方)に作用する。一方、シリンダ10内の空気の圧力は、小径部41の上面41aおよび大径部42の上面42aに対しては、大径部42の下面42bに対する付勢力の作用方向と逆方向(下方)に作用する。
【0047】
本実施形態に係る以下の説明では、コイルばね17の付勢力が作用する第2ピストン40の大径部42の下面42bを「押圧面42b」と呼ぶ場合がある。また、シリンダ10内に充填されている空気の圧力が押圧面42bに対する付勢力の作用方向と同方向に作用する小径部41の下面41bを「第1受圧面41b」と呼ぶ場合がある。さらに、シリンダ10内に充填されている空気の圧力が押圧面42bに対する付勢力の作用方向と逆方向に作用する小径部41の上面41aおよび大径部42の上面42aを「第2受圧面45」と総称する場合がある。
【0048】
図8に示されている第1ピストン20は待機位置に位置している。このとき、第1ピストン20の受圧面23,第2ピストン40の第1受圧面41bおよび第2受圧面45にはシリンダ10内の空気の圧力が作用しており、第2ピストン40の押圧面42bにはコイルばね17の付勢力が作用している。よって、本実施形態における第2ピストン40も、シリンダ10の内圧を一定に保持する調圧機構として機能する。
【0049】
図8に示されている第1ピストン20が
図9に示されている上死点に向かって第1方向(上方)に移動すると、シリンダ10内の空気がさらに圧縮され、シリンダ10の内圧がさらに上昇する。シリンダ10の内圧が上昇すると、第2ピストン40の第1受圧面41bおよび第2受圧面45に作用する空気の圧力は同じ割合で増大する。しかし、第2受圧面45の面積(上面41aの面積+上面42aの面積)は、第1受圧面41bの面積(下面41bの面積)よりも大きい。よって、押圧面42bに作用する付勢力(P1)および第1受圧面41bに作用する圧力(P2)の合計(P1+P2)よりも、第2受圧面45に作用する圧力(P3)の方が大きくなる。言い換えれば、このような大小関係が成立するように、第2受圧面45の面積,第1受圧面41bの面積および付勢力(P1)が設定されている。上記のような力の大小関係により、第2ピストン40は、第2受圧面45に作用する圧力(P3)により、押圧面42bに作用する付勢力(P1)および第1受圧面41bに作用する圧力(P2)に抗して、第2方向(下方)に移動する。つまり、第2ピストン40は、第1ピストン20が第1方向(上方)に移動する際に第2方向(下方)に移動する。
【0050】
その後、
図9に示されている第1ピストン20が
図10に示されている下死点に向かって第2方向(下方)に移動すると、その移動に伴ってシリンダ10の内圧が低下する。シリンダ10の内圧が低下すると、第2ピストン40の第1受圧面41bおよび第2受圧面45に作用する空気の圧力は同じ割合で減少する一方、押圧面42bに作用する付勢力は維持されている。よって、第2受圧面45に作用する圧力(P3)よりも、押圧面42bに作用する付勢力(P1)および第1受圧面41bに作用する圧力(P2)の合計(P1+P2)の方が大きくなる。この結果、第2ピストン40は、押圧面42bに作用する付勢力(P1)および第1受圧面41bに作用する圧力(P2)により、第2受圧面45に作用する圧力(P3)に抗して、第1方向(上方)に移動する。つまり、第2ピストン40は、第1ピストン20が第2方向(下方)に移動する際に第1方向(上方)に移動する。このとき、第1ピストン20と逆向きに移動する第2ピストン40はカウンタウエイトとして機能する。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る打込機も、シリンダ10の内圧を略一定に保持する調圧機構として機能する第2ピストン40を備えている。よって、環境温度などが変化してもシリンダ10の内圧が一定に保持され、常に同一または略同一の打込力が得られる。
【0052】
また、第2ピストン40は、第1実施形態における第2ピストン30(
図2)と同様に、カウンタウエイトおよびリリーフバルブとしても機能する。よって、打込み動作時に打込機が浮き上がることがなく、操作の安定性が向上するとともに、シリンダ10の内圧が過剰に上昇することもない。
【0053】
(第3実施形態)
以下、本発明の打込機の実施形態の他の一例について詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る打込機は、第1実施形態に係る打込機1(
図1~
図7)と同一の基本構成を有する。そこで、第1実施形態に係る打込機1との相違点について説明する一方、第1実施形態に係る打込機1と同一または実質的に同一の構成についての説明は適宜省略する。
【0054】
図11に示されるように、本実施形態に係る打込機が備える第2ピストン70は、全体として円板状または円柱状の外観を呈する。また、第1実施形態および第2実施形態におけるシリンダ10は、第1シリンダ11および第2シリンダ12を含んでいたが(
図2,
図8)、本実施形態におけるシリンダ10は単一のシリンダである。
【0055】
第2ピストン70の外周面には、シリンダ10の内周面に当接するシール部材としてのOリング71が装着されている。また、弾性体としてのコイルばね17が第2ピストン70の上面72とシリンダ10の天井10aとの間に配置されている。一方、第2ピストン70の下面73は、第1ピストン20の受圧面23と対向している。
【0056】
よって、第2ピストン70の上面72にはコイルばね17の付勢力が作用し、第2ピストン70の下面73にはシリンダ10に充填されている空気の圧力が作用する。そこで、本実施形態に関する以下の説明では、第2ピストン70の上面72を「押圧面72」と呼び、第2ピストン70の下面73を「受圧面73」と呼ぶ場合がある。
【0057】
ここで、コイルばね17の付勢力が作用する押圧面72とシリンダ10内の空気の圧力が作用する受圧面73とを備える第2ピストン70が調圧機構として機能する点は第1実施形態などと同様である。
【0058】
図11に示されるように、第1ピストン20が下死点から上死点に向かって第1方向(上方)に移動すると、シリンダ10内の空気が圧縮され、シリンダ10の内圧が上昇する。シリンダ10の内圧が上昇すると、第2ピストン70の受圧面73に作用する空気の圧力が増大する。この結果、第2ピストン70は、受圧面73に作用する空気の圧力により、押圧面72に作用する付勢力に抗して、第1方向(上方)に移動する。つまり、第2ピストン70は、第1ピストン20が第1方向(上方)に移動する際に、同じく第1方向(上方)に移動する。
【0059】
図12に示されるように、第1ピストン20が上死点から下死点に向かって第2方向(下方)に移動すると、その移動に伴ってシリンダ10の内圧が低下する。シリンダ10の内圧が低下すると、第2ピストン70の受圧面73に作用する空気の圧力は減少する。この結果、第2ピストン70は、押圧面72に作用する付勢力により、受圧面73に作用する空気の圧力に抗して、第2方向(下方)に移動する。つまり、第2ピストン70は、第1ピストン20が第2方向(下方)に移動する際に、同じく第2方向(下方)に移動する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る打込機も、シリンダ10の内圧を略一定に保持する調圧機構として機能する第2ピストン70を備えている。よって、環境温度などが変化してもシリンダ10の内圧が一定に保持され、常に同一または略同一の打込力が得られる。また、第2ピストン70はリリーフバルブとしても機能し、シリンダ10の内圧が過剰に上昇することを防止する。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第2ピストンに対する弾性体の付勢力が調節可能な実施形態もある。かかる実施形態の一例を
図13,
図14に示す。
図13,
図14に示される実施形態は、第1実施形態におけるコイルばね17の付勢力を調節可能とした実施形態である。
【0062】
図示されている実施形態では、第2シリンダ12の底板15とコイルばね17の下端との間に座金80が配置されている。また、第2シリンダ12の底板15を貫通して第2シリンダ12内に突出する調節ボルト81の先端が座金80に当接している。
【0063】
調節ボルト81を回転させ、当該調節ボルト81の第2シリンダ12内への突出長を増減させると、座金80が上下に移動する。座金80が押し上げられると、コイルばね17の圧縮量が増加し、当該コイルばね17が第2ピストン30に与える付勢力が大きくなる。一方、座金80が引き下げられると、コイルばね17の圧縮量が減少し、当該コイルばね17が第2ピストン30に与える付勢力が小さくなる。調圧機構,カウンタウエイトおよびリリーフバルブとしての機能する第2ピストン30に作用する付勢力を調節可能であることは、上記各機能の効果を調節可能であることを意味する。例えば、第2ピストン30に作用する付勢力を調節することにより、リリーフバルブとしての第2ピストン30によってシリンダ10が大気開放される基準値(シリンダ10の内圧)を調節することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…打込機,2…ハウジング,10…シリンダ,10a…天井,11…第1シリンダ,12…第2シリンダ,13…内壁,14…外壁,15…底板,16…天井板,17…コイルばね,18…バンパ,19…貫通孔,20…第1ピストン,21…ドライバブレード,22…Xリング,23…上面(受圧面),30…第2ピストン,31…内側Oリング,32…外側Oリング,33…上面(受圧面),34…下面(押圧面),40…第2ピストン,41…小径部,41a…上面,41b…下面(第1受圧面),42…大径部,42a…上面,42b…下面(押圧面),43…内側Oリング,44…外側Oリング,45…第2受圧面,70…第2ピストン,71…Oリング,72…上面(押圧面),73…下面(受圧面),80…座金,81…調節ボルト,B1…軸線