(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/46 20060101AFI20230322BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/38
(21)【出願番号】P 2019008021
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】大岩 尚樹
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115977(JP,A)
【文献】特開2016-128720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56
F16C 33/30-33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に内側軌道面を備えた第1軌道輪と、
前記第1軌道輪の径方向外側に配置され、内周に外側軌道面を備えた第2軌道輪と、
前記内側軌道面と外側軌道面の間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記転動体を保持する保持器と、を備えた転がり軸受装置であって、
前記保持器は、
前記第1又は第2軌道輪の中心軸の方向を軸方向として、
前記転動体に沿って前記転動体の軸方向一方向側に配置された第1環状体と、
前記第1環状体の軸方向他方向側の側面から、互いに周方向に隣接する前記転動体の間を通って軸方向他方向側に延在する複数の柱を有し、
前記第1環状体の
外周に、周方向に断続的に第1の摺動部材が溶接接合され
るとともに、
前記第1環状体の内周に、周方向に断続的に第2の摺動部材が溶接接合され、
前記第1の摺動部材の少なくとも軸方向他方向側に、前記第1環状体と前記第1の摺動部材とを接合する第1のビードが形成されており、
前記第1のビードは、前記第1環状体の軸方向他方向側の側面より軸方向一方向側に形成されて
おり、
前記第2の摺動部材の少なくとも軸方向他方向側に、前記第1環状体と前記第2の摺動部材とを接合する第2のビードが形成されており、
前記第2のビードは、前記第1環状体の軸方向他方向側の側面より軸方向一方向側に形成されていることを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項2】
前記保持器は、前記転動体に沿って前記転動体の軸方向他方向側に配置された第2環状体を更に有し、複数の前記柱は、前記第2環状体の軸方向一方向側の側面とつながることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受装置。
【請求項3】
前記第2環状体の外周及び内周の少なくともいずれか一方に、周方向に断続的に
第3の摺動部材が溶接接合され、少なくとも前記
第3の摺動部材の軸方向一方向側に、前記第2環状体と前記
第3の摺動部材とを接合する
第3のビードが形成されており、
前記
第3のビードは、前記第2環状体の軸方向一方向側の側面より軸方向他方向側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載する転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削機などの大型の機械では、回転軸が、大型の転がり軸受装置で支持されている。例えば、特許文献1のトンネル掘削機では、
図8に示すように、地盤を掘削するカッターヘッド81が、転がり軸受装置80で支持されている。
【0003】
転がり軸受装置80は、一組の外輪82a、82bと内輪83を備えている。カッターヘッド81は、転がり軸受装置80の中心軸mと直交する向きで内輪83と一体に固定されている。
外輪82aと内輪83との間には複数の円筒ころ84が組み込まれており、外輪82aは、円筒ころ84を介して、トンネル掘削時に作用するアキシアル荷重を支持している。また、外輪82aの径方向内方には、内輪83との間に円筒ころ85が組み込まれており、内輪83に固定されたカッターヘッド81が、外輪82aと同軸に回転する。更に、外輪82bと内輪83との間に円筒ころ86が組み込まれており、内輪83が軸方向の所定の位置で保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジアル荷重を支持する複数の円筒ころ85は、保持器87によって、周方向に予め決められた間隔で保持されている。保持器87は、いわゆるもみ抜き保持器であって、円筒ころ85の軸方向両側に配置された一対の環状体88、88と、これらを軸方向に繋ぐ複数の柱89とを備えている。円筒ころ85は、周方向に互に隣り合う柱89、89の間にひとつずつ組み込まれている。
転がり軸受装置80が回転すると、保持器87は、円筒ころ85とともに中心軸mの回りで回転する。このとき、一対の環状体88、88が、外輪82や内輪83とすべり接触をするので、通常、保持器87を黄銅などの銅合金で製造することにより、すべり面に凝着等の不具合が生じるのを防いでいる。
【0006】
しかしながら、銅合金は鉄などの材料に比べて高価であり、特に、大型の転がり軸受装置では、その直径が数メートルにも及ぶため、保持器87が大型化し、転がり軸受装置80の製造コストが高くなるという問題がある。
そこで、本発明は、内輪や外輪とすべり接触しても凝着等の問題を生じにくい保持器を安価に製造することによって、転がり軸受装置の製造コストを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外周に内側軌道面を備えた第1軌道輪と、前記第1軌道輪の径方向外側に配置され、内周に外側軌道面を備えた第2軌道輪と、前記内側軌道面と外側軌道面の間に転動自在に設けられた複数の転動体と、前記転動体を保持する保持器と、を備えた転がり軸受装置であって、前記保持器は、前記第1又は第2軌道輪の中心軸の方向を軸方向として、前記転動体に沿って前記転動体の軸方向一方向側に配置された第1環状体と、前記第1環状体の軸方向他方向側の側面から、互いに周方向に隣接する前記転動体の間を通って軸方向他方向側に延在する複数の柱を有し、前記第1環状体の外周に、周方向に断続的に第1の摺動部材が溶接接合されるとともに、前記第1環状体の内周に、周方向に断続的に第2の摺動部材が溶接接合され、前記第1の摺動部材の少なくとも軸方向他方向側に、前記第1環状体と前記第1の摺動部材とを接合する第1のビードが形成されており、前記第1のビードは、前記第1環状体の軸方向他方向側の側面より軸方向一方向側に形成されており、前記第2の摺動部材の少なくとも軸方向他方向側に、前記第1環状体と前記第2の摺動部材とを接合する第2のビードが形成されており、前記第2のビードは、前記第1環状体の軸方向他方向側の側面より軸方向一方向側に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、安価に製造することができて、かつ、内輪や外輪とすべり接触しても凝着等の問題を生じにくい保持器を提供できる。これにより、転がり軸受装置、特に大型の転がり軸受装置の耐久性能を確保しつつ製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態であるトンネル掘削機用転がり軸受装置の軸方向断面図である。
【
図2】
図1におけるラジアル列の軸受部近傍の要部拡大図である。
【
図3】第1実施形態のラジアル列に組み込まれている保持器の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3のZの位置における第1環状体を含む軸方向部分断面図である。
図4(b)は、切削加工をする前の同位置の軸方向部分断面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図3のZの位置における第2環状体を含む軸方向部分断面図である。
図5(b)は、切削加工をする前の同位置の軸方向部分断面図である。
【
図6】
図4(a)、
図5(a)の矢印Pの向きに見たときの保持器の中心軸nを中心とする径方向の外方から見た平面図である。
【
図7】第2実施形態の保持器の
図6と同様に径方向の外方から見た平面図である。
【
図8】従来のトンネル掘削機用転がり軸受装置の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(以下、「第1実施形態」という)である転がり軸受装置1を備えた、トンネル掘削機の軸方向断面図である。
トンネル掘削機は、地盤を掘削して円形断面の穴を施工する機械装置であって、地盤を掘削する刃を備えたカッターヘッド2が、転がり軸受装置1で支持されている。以下の説明では、転がり軸受装置1の中心軸mの方向を軸方向といい、中心軸mと直交する方向を径方向、中心軸mの周囲を周回する方向を周方向という。また、軸方向で図の左方を「軸方向一方」といい、右方を「軸方向他方」という。
【0011】
転がり軸受装置1は、内輪4(第1軌道輪)、外輪5(第2軌道輪)、転動体としての第1円筒ころ6、第2円筒ころ7、第3円筒ころ8、各円筒ころ6、7、8をそれぞれ保持する第1保持器9(請求項の「保持器」に対応する)、第2保持器10、第3保持器11、及び、第1シール13、第2シール14を備えている。内輪4は、分離した第1内輪4aと第2内輪4bとが互いに中心軸を一致させて、軸方向に接するように組み合わされている。外輪5は、分離した第1外輪5aと第2外輪5bとが互いに中心軸を一致させて、軸方向及び径方向に接するように組み合わされている。
【0012】
第1内輪4aは、鋼製の環状体で、内輪4の軸方向一方側に配置される。第1内輪4aは、JIS G4053-2016 機械構造用合金鋼鋼材のクロムモリブデン鋼(SCM430、SCM432、SCM435、SCM440、SCM445等から選ばれる鋼材)を用いて製造されている。第1内輪4aは、ラジアル荷重を支持する内側軌道面15と、アキシアル荷重を支持する第1アキシアル軌道面16と、第1径方向延在面25と、第1軸方向延在面26と、第2軸方向延在面27と、第1側面28と、第2側面30と、第1内周面29と、を備えている。
【0013】
内側軌道面15は、第1内輪4aの軸方向他方側に備えられており、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。第1径方向延在面25は、内側軌道面15の軸方向一方側端部から径方向外方に延在しており、中心軸mと直交する向きに形成された平面である。第1軸方向延在面26は、第1径方向延在面25の外周から軸方向一方側に延在しており、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。第1アキシアル軌道面16は、第1軸方向延在面26の軸方向一方側端部から径方向外方に延在しており、中心軸mと直交する向きに形成された平面である。第2軸方向延在面27は、第1アキシアル軌道面16の外周から軸方向一方側に延在しており、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。
こうして、第1内輪4aでは、第1アキシアル軌道面16は、内側軌道面15より径方向外方側で軸方向一方側にずれた位置に備えられている。
【0014】
第1側面28は、第1内輪4aの軸方向一方側の側面である。第1側面28は、第2軸方向延在面27の軸方向一方側端部から径方向内方に延在しており、中心軸mと直交する平面である。第2側面30は第1内輪4aの軸方向他方側の側面である。第2側面30は、内側軌道面15の軸方向他方側端部から径方向内方に延在しており、中心軸mと直交する平面である。第1側面28と第2側面30とは、互いに平行である。第2側面30は、後述する第2内輪4bと当接する面であって、複数の第1ねじ孔21が、各々周方向の異なる位置で軸方向に延在している。
また、第1内輪4aの第1内周面29は、中心軸mと同軸の円筒形状の内周面である。第1内周面29は第1側面28の軸方向他方側であって第2側面30の軸方向一方側に備えられている。
【0015】
第2内輪4bは、鋼製の環状体で、内輪4のうち軸方向他方側に配置される。第2内輪4bは、JIS G4053-2016 機械構造用合金鋼鋼材のクロムモリブデン鋼(SCM430、SCM432、SCM435、SCM440、SCM445等から選ばれる鋼材)を用いて製造されている。第2内輪4bは、アキシアル荷重を支持する第4アキシアル軌道面17と、第3軸方向延在面31と、第3側面32と、第4軸方向延在面35と、第4側面34と、第2内周面33と、を備えている。
【0016】
第4アキシアル軌道面17は、第2内輪4bの軸方向一方側で、中心軸mと直交する向きに形成された平面である。
第3軸方向延在面31は、第4アキシアル軌道面17の内周から軸方向一方側に延在しており、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。第3軸方向延在面31の直径は、第1軸方向延在面26の直径と、略同じである。第3側面32は、第2内輪4bの軸方向一方側の側面である。第3側面32は、第3軸方向延在面31の軸方向一方側端部から径方向内方に延在しており、中心軸mと直交する平面である。第3側面32は、第2側面30と当接する。
【0017】
第4軸方向延在面35は、第4アキシアル軌道面17の外周から軸方向他方側に延在しており、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。第4側面34は、第2内輪4bの軸方向他方側の側面である。第4側面34は、第4軸方向延在面35の軸方向他方側端部から径方向内方に延在しており、中心軸mと直交する平面である。第3側面32と第4側面34とは、互いに平行である。
また、第2内輪4bの第2内周面33は、中心軸mと同軸の円筒形状の内周面である。第2内周面33は、第3側面32の軸方向他方側であって第4側面34の軸方向一方側に備えられている。第1内輪4aの第1内周面29の直径と、第2内輪4bの第2内周面33の直径とは、略同じである。
【0018】
第2内輪4bには、第3側面32と第4側面34とを軸方向に貫通する複数の第1貫通穴22が形成されている。第1貫通穴22は、第1内輪4aと第2内輪4bとの中心線を一致させたとき複数の第1ねじ孔21と連通するよう備えられている。
【0019】
第1外輪5aは、鋼製の環状体である。第1実施形態では、第1外輪5aは、JIS G4053-2016 機械構造用合金鋼鋼材のクロムモリブデン鋼(SCM430、SCM432、SCM435、SCM440、SCM445等から選ばれる鋼材)を用いている。第1外輪5aは、軸方向断面の形状が略長方形である。第1外輪5aは、外側軌道面18と、第2アキシアル軌道面19と、第3アキシアル軌道面20と、第2径方向延在面37と、第5軸方向延在面36と、を備えている。
【0020】
外側軌道面18は第1外輪5aの内周に備えられている。外側軌道面18は、中心軸mを中心とする円筒形状の内周面である。第2アキシアル軌道面19は、外側軌道面18の軸方向一方側で外側軌道面18の径方向外方側に備えられている。第2アキシアル軌道面19は、中心軸mと直交し、軸方向一方側の表面である平面である。第2アキシアル軌道面19は、外側軌道面18の軸方向一方側端部から径方向外方に延在する。第3アキシアル軌道面20は、外側軌道面18の軸方向他方側で外側軌道面18の径方向外方側に備えられている。第3アキシアル軌道面20は、中心軸mと直交し、軸方向他方側の表面である平面である。第3アキシアル軌道面20は、外側軌道面18の軸方向他方側端部から径方向外方側に延在する。
【0021】
第2径方向延在面37は、第2アキシアル軌道面19の径方向外方側に備えられている。第2径方向延在面37は、中心軸mと直交し、軸方向一方側の表面であり、第2アキシアル軌道面19と連続する単一の平面である。複数の第2ねじ孔23が、各々周方向の異なる位置で、第2径方向延在面37から軸方向他方側に延在している。第5軸方向延在面36は、第2径方向延在面37の軸方向他方側であって第3アキシアル軌道面20の軸方向一方側に備えられている。第5軸方向延在面36は、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。
【0022】
第2外輪5bは、鋼製の環状体である。第1実施形態では、第2外輪5bは、JIS G4053-2016 機械構造用合金鋼鋼材のクロムモリブデン鋼(SCM430、SCM432、SCM435、SCM440、SCM445等から選ばれる鋼材)を用いている。第2外輪5bは、第6軸方向延在面38と、第3径方向延在面39と、第7軸方向延在面40と、第6側面41と、第7側面44と、第1外周面42と、歯43と、を備える。第2外輪5bは、歯43を備える歯車である。
【0023】
第6軸方向延在面38は、第2外輪5bの軸方向他方側であって径方向内方側に備えらえている。第6軸方向延在面38は、中心軸mを中心とする円筒形状の内周面である。第3径方向延在面39は、第6軸方向延在面38の軸方向一方側に備えられている。第3径方向延在面39は、中心軸mと直交する、軸方向他方側の表面である平面である。第3径方向延在面39は、第6軸方向延在面38の軸方向一方側端部から径方向内方に延在する。第7軸方向延在面40は、第3径方向延在面39の軸方向一方側に備えられている。第7軸方向延在面40は、中心軸mを中心とする円筒形状の内周面である。第7軸方向延在面40は、第3径方向延在面39の内周から軸方向一方側に延在する。第6側面41は、第7軸方向延在面40の軸方向一方側に備えられている。第6側面41は、中心軸mと直交する、軸方向一方側の表面である平面である。第6側面41は、第7軸方向延在面40の軸方向一方向側端部から径方向外方に延在する。
【0024】
第7側面44は、第6軸方向延在面38の軸方向他方側に備えられている。第7側面44は、中心軸mと直交する、軸方向他方側の表面である平面である。第7側面44は、第6軸方向延在面38の軸方向他方側端部から径方向外方に延在する。
【0025】
第1外周面42は、第6側面41の軸方向他方側に備えられている。第1外周面42は、中心軸mを中心とする円筒形状の外周面である。第1外周面42は、第6側面41の外周から軸方向他方側に延在する。
歯43は、第1外周面42の軸方向他方側であって第7側面44の軸方向一方側に備えられている。歯43は、径方向外方側に中心軸mを中心とする歯先円、径方向内方側に中心軸mを中心とする歯底円を備える。
第2外輪5bには、第6側面41と第3径方向延在面39とを軸方向に貫通する複数の第2貫通穴24が設けられている。第2貫通穴24は、第1外輪5aと第2外輪5bとの中心線を一致させたとき複数の第2ねじ孔23と連通するよう備えられている。
【0026】
図1に示すように、転がり軸受装置1は、第1外輪5aを挟んで、第1内輪4aと第2内輪4bとをそれぞれの中心軸を一致させて結合させた形態である。第1内輪4aと第2内輪4bは、それぞれ、第1アキシアル軌道面16と第4アキシアル軌道面17とが互いに軸方向に向き合うように、組み合わされている。第1内輪4aと第2内輪4bとは、第2側面30と第3側面32とを軸方向に当接させて結合されている。第1内輪4aと第2内輪4bとは、第1貫通穴22を通して第1ねじ孔21に螺合される図示しないボルトによって、相対変位不能に結合されている。
【0027】
また、転がり軸受装置1は、第1外輪5aと第2外輪5bとをそれぞれの中心軸を一致させて結合させた形態である。第1外輪5aと第2外輪5bとは、第2径方向延在面37と第3径方向延在面39とを軸方向に当接させ、第5軸方向延在面36と第6軸方向延在面38とを径方向に当接させて結合されている。第1外輪5aと第2外輪5bとは、第2貫通穴24を通して第2ねじ孔23に螺合した図示しないボルトによって相対変位不能に結合されている。
【0028】
外側軌道面18は、内側軌道面15と径方向に対向している。外側軌道面18と内側軌道面15の間に、複数の第1円筒ころ6が組み込まれている。各第1円筒ころ6は、第1円筒ころ6の中心軸を軸方向に向けて組み込まれており、周方向に転動自在である。また、後で詳細に説明するが、各第1円筒ころ6は、第1保持器9によって周方向に予め決められた間隔で保持されている。以下の説明では、外側軌道面18、内側軌道面15、及び複数の第1円筒ころ6で構成される軸受部を、ラジアル列という。
【0029】
第2アキシアル軌道面19は、第1アキシアル軌道面16と軸方向に対向している。第1アキシアル軌道面16と第2アキシアル軌道面19の間には複数の第2円筒ころ7が、第2円筒ころ7の中心軸を径方向に向けて、転動自在に組み込まれている。各第2円筒ころ7は、第2保持器10によって周方向に予め決められた間隔で保持されている。第2保持器10は第2保持器10の中心軸を中心とした周方向に複数個の円弧状の第2保持器セグメント(図示を省略)を並べてなる。以下の説明では、第1アキシアル軌道面16、第2アキシアル軌道面19、及び複数の第2円筒ころ7で構成される軸受部を、第1スラスト列という。
【0030】
第2保持器10は、第1内輪4aの第1軸方向延在面26と第2外輪5bの第7軸方向延在面40とで、径方向に保持されている。第2保持器10の中心軸と転がり軸受装置1の中心軸mとを一致させた際、第2保持器10は、第1アキシアル軌道面16、第2アキシアル軌道面19、第1軸方向延在面26、及び第7軸方向延在面40のそれぞれと隙間を持って対向する。第2保持器10は、第1アキシアル軌道面16と第2アキシアル軌道面19と第1軸方向延在面26と第7軸方向延在面40と接触可能に配置される。
第2円筒ころ7は、JIS G4805-2008 高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2、SUJ3、SUJ5から選ばれる鋼材)を用いている。第2保持器10を構成する第2保持器セグメントは、JIS H3250-2015 銅及び銅合金の棒のアルミニウム青銅(C6161、C6191、C6241)、高力黄銅(C6782、C6783)、JIS H5121-2016 銅合金連続鋳造鋳物の高力黄銅(CAC301C、CAC302C、CAC303C、CAC304C)から選ばれる銅合金を用いている。
【0031】
第3アキシアル軌道面20は、第1外輪5aの、第2径方向延在面37と軸方向の反対側に、中心軸mと直交する軸方向他方側向きに形成されており、第2内輪4bの、同じく中心軸mと直交する軸方向一方側向きに形成された第4アキシアル軌道面17と軸方向に対向している。第3アキシアル軌道面20と第4アキシアル軌道面17との間には2列の複数の第3円筒ころ8が、2列の複数の第3円筒ころ8の中心軸を径方向に向けて、転動自在に組み込まれている。2列の各第3円筒ころ8は、第3保持器11によって周方向に予め決められた間隔で保持されている。第3保持器11は第3保持器11の中心軸を中心とした周方向に複数個の円弧状の第3の保持器セグメント(図示を省略)を並べてなる。以下の説明では、第3アキシアル軌道面20、第4アキシアル軌道面17、及び複数の第3円筒ころ8で構成される軸受部を、第2スラスト列という。
【0032】
第3円筒ころ8は、周方向に2列で組み込まれており、各列の第3円筒ころ8は、中心軸が径方向に沿って1列となるように配置されている。径方向に沿って1列に配置された2つの第3円筒ころ8は、第3保持器11の一つのポケット58に保持されている。第3保持器11は、第2内輪4bの第3軸方向延在面31と第2外輪5bの第6軸方向延在面38とで、径方向に保持されている。第3保持器11の中心軸と転がり軸受装置1の中心軸mとを一致させた際、第3保持器11は、第3アキシアル軌道面20、第4アキシアル軌道面17、第3軸方向延在面31、及び第6軸方向延在面38のそれぞれと、隙間を持って対向する。第3保持器11は、第3アキシアル軌道面20と第4アキシアル軌道面17と第3軸方向延在面31と第6軸方向延在面38と接触可能に配置される。
第3円筒ころ8は、JIS G4805-2008 高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2、SUJ3、SUJ5から選ばれる鋼材)を用いている。第3保持器11を構成する第3の保持器セグメントは、JIS H3250-2015 銅及び銅合金の棒のアルミニウム青銅(C6161、C6191、C6241)、高力黄銅(C6782、C6783)、JIS H5121-2016 銅合金連続鋳造鋳物の高力黄銅(CAC301C、CAC302C、CAC303C、CAC304C)から選ばれる銅合金を用いている。
【0033】
こうして、第1実施形態の転がり軸受装置1では、外輪5が、内輪4に対してラジアル列軸受部で径方向に支持されており、内輪4の中心軸を中心に回転することができる。
カッターヘッド2は、第2外輪5b(歯車)の外周の歯43と組み合わされる歯を有する、図示しない回転駆動する歯車を介して動力原から伝達される動力で駆動される。カッターヘッド2が、回転しながら、転がり軸受装置1とともに軸方向一方側に移動することによって、地盤にトンネルなどの穴を施工することができる。地盤を掘削するときには、軸方向に大きなアキシアル荷重が作用する。この荷重は、第2スラスト列の軸受部で支持される。このとき、ラジアル列の軸受部には、主に、外輪5やカッターヘッド2の重量が、ラジアル荷重として作用している。
【0034】
第1スラスト列は、外輪5を、軸方向一方側で支持しており、外輪5が軸方向一方側に位置ずれするのを防止ししている。第1スラスト列に作用する荷重は、第2スラスト列に作用する荷重に比べて小さいものとなっている。
【0035】
また、第1シール13が、軸方向一方側における第2外輪5bと第1内輪4aとのすきまを密封している。第1シール13は、中心軸mを中心として第2外輪5bの第7軸方向延在面40に形成された径方向外方側に窪む環状溝に固定されている。第1シール13は第1内輪4aの第1側面28と摺動可能に接触する。
第2シール14が、軸方向他方側における第2外輪5bと第2内輪4bとのすきまを密封している。第2シール14は、中心軸mを中心として第2内輪4bの第4軸方向延在面35に形成された径方向内方側に窪む環状溝に固定されている。第2シール14は第2外輪5bの第7側面44と摺動可能に接触する。
これにより、地盤掘削時の水や塵埃等が転がり軸受装置1の内輪4と外輪5と第1シール13と第2シール14とで囲まれた空間に浸入するのを防止している。
【0036】
ラジアル列の軸受部について更に詳細に説明する。
図2は、
図1におけるラジアル列の軸受部の要部拡大図である。ラジアル列では、第1円筒ころ6及び第1保持器9が内輪4と外輪5との間に配置される。第1円筒ころ6及び第1保持器9は第1径方向延在面25と第3側面32との間に軸方向のわずかな隙間を有して配置される。第1保持器9は、第1径方向延在面25及び第3側面32に案内されて、周方向に回転することができる。
第1円筒ころ6は、鋼製のころである。第1実施形態では、第1円筒ころ6は、JIS G4805-2008 高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2、SUJ3、SUJ5から選ばれる鋼材)を用いている。
【0037】
図3は、ラジアル列に組み込まれている第1保持器9の斜視図であって、周方向の一部の形態を示している。第1保持器9は、第1保持器9の中心軸nを中心として全体として環状であって、
図3の第1保持器セグメント9sを、周方向に複数連続して配置することによって、環状に構成されている。第1保持器9は、中心軸nが、転がり軸受装置1の中心軸mと同軸となるように組み込まれている。以下の説明では、特に断らない場合には、第1保持器9、及び第1保持器9を構成する第1環状体51と第2環状体52については、第1保持器セグメント9sが周方向に並べられて形成される環状の第1保持器9、及びそれぞれ環状の第1環状体51と第2環状体52をいうものとする。
【0038】
第1保持器セグメント9sは、円弧状の第1環状体51と円弧状の第2環状体52と複数の柱53と複数の外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とを備えている。
【0039】
第1環状体51と第2環状体52と柱53とは、いずれも鋼製である。第1実施形態では、第1環状体51と第2環状体52と柱53とは、JIS G3101-2015 一般構造用圧延鋼材(SS330、SS400、SS490、SS540)、JIS G4051-2016 機械構造用炭素鋼鋼材(S10C、S12C、S15C、S17C、S20C、S22C、S25C、S28C、S30C、S33C、S35C、S38C、S40C、S43C、S45C、S48C、S50C、S53C、S55C、S58C、S60C、S65C、S70C、S75C、S09CP、S15CK、S20CK)、JIS G3106-2015 溶接構造用圧延鋼材(SM400A、SM400B、SM400C、SM490A、SM490B、SM490C、SM490YA、SM490YB、SM520B、SM520C、SM570)から選ばれる鋼材を用いている。
【0040】
第1環状体51と第2環状体52とは、それぞれ軸方向断面が略長方形で、互いに略同一の形状である。互いに軸方向に離れて、それぞれの中心軸を中心軸nに一致させて配置されている。第1環状体51と第2環状体52とは、軸方向に延在する複数の柱53によって互いに連結されている。各柱53は、中心軸nと直交する向きの断面の形状が、略長方形である。また、各柱53は、周方向に所定の間隔で配置されている。
なお、周方向に隣り合う第1保持器セグメント9sと第1保持器セグメント9sとの接続部では、双方の周方向端部の柱53が組み合わされて、一の柱を構成している。
【0041】
こうして、第1保持器セグメント9sには、第1環状体51及び第2環状体52と、周方向に隣接する二本の柱53とで囲まれて、径方向に貫通する空間(以下、「ポケット58」という)が、周方向に並んで形成される。複数の第1円筒ころ6が、その中心軸を軸方向に向けて各ポケット58にひとつずつ組み込まれている。ポケット58の軸方向の寸法は、第1円筒ころ6の軸方向長さよりわずかに大きい。また、第1保持器セグメント9sが内側軌道面15と外側軌道面18との間のいずれの位置にある時も、第1円筒ころ6の隣り合う二本の柱53の両方に同時に接触しない。これにより、各第1円筒ころ6は、ポケット58内で、それぞれの中心軸を中心に自転することができる。
【0042】
外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とは、黄銅やアルミニウム青銅などの銅合金製である。第1実施形態では、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とは、JIS H3250-2015 銅及び銅合金の棒のアルミニウム青銅(C6161、C6191、C6241)、高力黄銅(C6782、C6783)、JIS H5121-2016 銅合金連続鋳造鋳物の高力黄銅(CAC301C、CAC302C、CAC303C、CAC304C)から選ばれる銅合金を用いている。
【0043】
内径側第1摺動部材55(第2の摺動部材)は、第1環状体51の内周に、内径側第2摺動部材57(第3の摺動部材)は、第2環状体52の内周に、それぞれ周方向に所定の間隔をあけて溶接接合によって取り付けられている。第1実施形態では、内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とは、各第1保持器セグメント9sについて、第1及び第2環状体51、52の内周のそれぞれ三か所(各第1保持器セグメント9sの周方向の両端近傍と中央付近)に設置されている。各内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とは、互いに略同一の形状で、第1又は第2環状体51、52に接する面が各環状体51、52に沿って湾曲し、内周面が第1保持器9の中心軸nを中心とする円筒面の一部である円弧状の形状である。
第1環状体51の内周に取り付けた各内径側第1摺動部材55の内周面をつなぐ仮想の内周面の直径と、第2環状体52の内周に取り付けた各内径側第2摺動部材57の内周面をつなぐ仮想の内周面の直径とは、内輪4の内側軌道面15の外径よりわずかに大径である。
【0044】
外径側第1摺動部材54(第1の摺動部材)は、第1環状体51の外周に、外径側第2摺動部材56(第3の摺動部材)は、第2環状体52の外周に、それぞれ周方向に所定の間隔をあけて溶接接合によって取り付けられている。第1実施形態では、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56とは、各第1保持器セグメント9sについて、第1及び第2環状体51、52の外周のそれぞれ三か所(各第1保持器セグメント9sの周方向の両端近傍と中央付近)に設置されている。各外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56とは、互いに略同一の形状で、第1又は第2環状体51、52に接する面が各環状体51、52に沿って湾曲し、外周面が第1保持器9の中心軸nを中心とする円筒面の一部である円弧状の形状である。
第1環状体51の外周に取り付けた各外径側第1摺動部材54の外周面をつなぐ仮想の外周面の直径と、第2環状体52の外周に取り付けた各外径側第2摺動部材56の外周面をつなぐ仮想の外周面の直径とは、外輪5の外側軌道面18の内径よりわずかに小径である。
【0045】
また、第1実施形態では、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57との周方向の長さは、
図3に示すように、ポケット58の2~3個に跨る程度の大きさである。こうして、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とを各環状体51,52の外周又は内周に断続的に配置しているので、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とを各環状体51、52の外周又は内周の全周に配置したり、第1保持器9全体を銅合金で製造するのに比べて、一つの第1保持器9に使用する銅合金の量を削減することができる。
こうして、価格の高い銅合金の使用量を削減することによって、第1保持器9の製造コストを大幅に低減することができる。なお、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57の形状や、一つの第1保持器9に組み込む個数などは例示であり、ここで説明した形態に限定されるものではない。
【0046】
図4乃至
図6によって、外径側第1摺動部材54及び内径側第1摺動部材55と、第1環状体51との接合状態について、また、外径側第2摺動部材56及び内径側第2摺動部材57と、第2環状体52との接合状態について、詳細に説明する。各内径側第1摺動部材55と第1環状体51との接合状態と、各内径側第2摺動部材57と第2環状体52との接合状態は同様であり、各外径側第1摺動部材54と第1環状体51との接合状態と、各外径側第2摺動部材56と第2環状体52との接合状態は同様である。
【0047】
図4では、
図3におけるZで示した位置における、第1環状体51の内周に取り付けられた内径側第1摺動部材55と、第1環状体51の外周に取り付けられた外径側第1摺動部材54について説明する。
図4(a)は、
図3においてZで示した位置における第1保持器セグメント9sの軸方向部分断面図である。
図4(b)は、
図4(a)と同一の向きの部分断面図で、内径側第1摺動部材55と第1環状体51を溶接接合した後であって、かつ、外径側第1摺動部材54と第1環状体51を溶接接合した後であって、研削加工(詳細について後述する)をする前の状態を示している。
図5(a)は、
図3においてZで示した位置における第1保持器セグメント9sの軸方向部分断面図である。
図5(b)は、
図5(a)と同一の向きの部分断面図で、内径側第2摺動部材57(第2の摺動部材)と第2環状体52を溶接接合した後であって、かつ、外径側第2摺動部材56(第2の摺動部材)と第2環状体52を溶接接合した後であって、研削加工(詳細について後述する)をする前の状態を示している。
【0048】
また、
図6は、
図4(a)と
図5(a)の矢印Pの向きに見たときの第1保持器9の中心軸nを中心とする径方向の外方から見た平面図である。
図6では、外径側第1摺動部材54と内径側第1摺動部材55と第1環状体51と、及び、外径側第2摺動部材56と内径側第2摺動部材57と第2環状体52と、をそれぞれ溶接接合した後であって、研削加工する前のビードの形状を、破線で示している。なお、
図4、
図5、
図6においても、
図1と対応させて、図の左側を軸方向一方、図の右側を軸方向他方として説明する。
【0049】
図6に示すように、第1環状体51の軸方向一方側の側面59には、第1保持器9の中心軸nを中心とする周方向に断続的に凹部60が形成されている。凹部60は、底面60bと、周方向両側の傾斜面60a、60cとで画定される。底面60bは、側面59よりも軸方向他方側(軸方向にポケット58に近い側)にt1だけずれた位置に存在する。第2環状体52の軸方向他方側の側面61には、第1保持器9の中心軸nを中心とする周方向に断続的に凹部62が形成されている。凹部62は、底面62bと、周方向両側の傾斜面62a、62cとで画定される。底面62bは、側面61よりも軸方向一方側(軸方向にポケット58に近い側)にt2だけずれた位置に存在する。t1とt2は互いにほぼ同等の大きさである。
【0050】
図4及び
図5を参照する。第1保持器セグメント9sを製造する時には、外径側第1摺動部材54を第1環状体51に溶接して固定し、外径側第2摺動部材56を第2環状体52に溶接して固定し、内径側第1摺動部材55を第1環状体51に溶接して固定し、内径側第2摺動部材57を第2環状体52に溶接して固定する。これらの順番は順不同である。
【0051】
図4(b)は、第1環状体51と外径側第1摺動部材54が溶接接合され、また、第1環状体51と内径側第1摺動部材55が溶接接合され、外径側第1ビード69、外径側第2ビード70、内径側第1ビード71、内径側第2ビード72が形成された状態を示す。
図5(b)は、第2環状体52と外径側第2摺動部材56が溶接接合され、また、第2環状体52と内径側第2摺動部材57が溶接接合され、外径側第3ビード73、外径側第4ビード74、内径側第3ビード75、内径側第4ビード76が形成された状態を示す。
【0052】
図4(b)に示すように、外径側第1摺動部材54の軸方向一方側の側面65と、第1環状体51の軸方向一方側の底面60bとが面一となるように、外径側第1摺動部材54が第1環状体51の外周に載置される。外径側第1摺動部材54の軸方向の厚さt54は、第1環状体51の軸方向の厚さt51より小さい。このため、外径側第1摺動部材54の軸方向他方向側の側面54bは、第1環状体51の軸方向他方向側の側面63より軸方向一方向側に位置ずれしており、外径側第1摺動部材54の軸方向他方向側では、第1環状体51の外周面51bの一部が径方向に露出している。
外径側第1摺動部材54の内周と第1環状体51の外周には、それぞれ概ね45°の傾斜角の開先が設けられている。この状態で、外径側第1摺動部材54の軸方向両側において、第1環状体51と外径側第1摺動部材54との当接部が、第1環状体51の周方向に沿って溶接接合される。溶接方法としては、アーク溶接が好適に使用される。こうして、外径側第1摺動部材54の軸方向両側に、第1環状体51と外径側第1摺動部材54とを接合する外径側第1ビード69、外径側第2ビード70が形成される。
【0053】
図5(b)に示すように、外径側第2摺動部材56の軸方向他方側の側面67と、第2環状体52の軸方向他方側の底面62bとが面一となるように、外径側第2摺動部材56が第2環状体52の外周に載置される。外径側第2摺動部材56の軸方向の厚さt56は、第2環状体52の軸方向の厚さt52より小さい。このため、外径側第2摺動部材56の軸方向一方向側の側面56bは、第2環状体52の軸方向一方向側の側面64より軸方向他方向側に位置ずれしており、外径側第2摺動部材56の軸方向一方向側では、第2環状体52の外周面52bの一部が径方向に露出している。
外径側第2摺動部材56の内周と第2環状体52の外周には、それぞれ概ね45°の傾斜角の開先が設けられている。この状態で、外径側第2摺動部材56の軸方向両側において、第2環状体52と外径側第2摺動部材56との当接部が、第2環状体52の周方向に沿って溶接接合される。溶接方法としては、アーク溶接が好適に使用される。こうして、外径側第2摺動部材56の軸方向両側に、第2環状体52と外径側第2摺動部材56とを接合する外径側第3ビード73、外径側第4ビード74が形成される。
【0054】
図4(b)に示すように、内径側第1摺動部材55の軸方向一方側の側面66と、第1環状体51の軸方向一方側の底面60bとが面一となるように、内径側第1摺動部材55が第1環状体51の内周に載置される。内径側第1摺動部材55の軸方向の厚さt55は、第1環状体51の軸方向の厚さt51より小さい。このため、内径側第1摺動部材55の軸方向他方向側の側面55bは、第1環状体51の軸方向他方向側の側面63より軸方向一方向側に位置ずれしており、内径側第1摺動部材55の軸方向他方向側では、第1環状体51の内周面51aの一部が径方向に露出している。
内径側第1摺動部材55の外周と第1環状体51の内周には、それぞれ概ね45°の傾斜角の開先が設けられている。この状態で、内径側第1摺動部材55の軸方向両側において、第1環状体51と内径側第1摺動部材55との当接部が、第1環状体51の周方向に沿って溶接接合される。溶接方法としては、アーク溶接が好適に使用される。こうして、内径側第1摺動部材55の軸方向両側に、第1環状体51と内径側第1摺動部材55とを接合する内径側第1ビード71、内径側第2ビード72が形成される。
【0055】
図5(b)に示すように、内径側第2摺動部材57の軸方向他方側の側面68と、第2環状体52の軸方向他方側の底面62bとが面一となるように、内径側第2摺動部材57が第2環状体52の内周に載置される。内径側第2摺動部材57の軸方向の厚さt57は、第2環状体52の軸方向の厚さt52より小さい。このため、内径側第2摺動部材57の軸方向一方向側の側面57bは、第2環状体52の軸方向一方向側の側面57bより軸方向他方向側に位置ずれしており、内径側第2摺動部材57の軸方向一方向側では、第2環状体52の内周面52aの一部が径方向に露出している。
内径側第2摺動部材57の外周と第2環状体52の内周には、それぞれ概ね45°の傾斜角の開先が設けられている。この状態で、内径側第2摺動部材57の軸方向両側において、第2環状体52と内径側第2摺動部材57との当接部が、第2環状体52の周方向に沿って溶接接合される。溶接方法としては、アーク溶接が好適に使用される。こうして、内径側第2摺動部材57の軸方向両側に、第2環状体52と内径側第2摺動部材57とを接合する内径側第3ビード75、内径側第4ビード76が形成される。
【0056】
図4(b)に示すように、外径側第1摺動部材54の軸方向一方側の外径側第1ビード69は、第1環状体51の底面60bから軸方向一方側に向けて側面59を超えて盛り上がった状態で形成される。
また、外径側第1摺動部材54の軸方向他方向側の外径側第2ビード70(第1のビード)は、外径側第1摺動部材54の側面54bから軸方向他方向側に向けて盛り上がった状態で形成される。第1実施形態では、外径側第1摺動部材54の軸方向他方向側で径方向に露出する第1環状体51の外周面51bの軸方向の寸法δ54(δ54=t51-t54)が、軸方向で外径側第2ビード70の盛上り量より大きく設定されている。このため、溶接終了後においても、外径側第2ビード70より軸方向他方向側で、第1環状体51の外周面51bの一部が径方向に露出しており、外径側第2ビード70は、側面63より軸方向一方向側に形成されている。このため、外径側第2ビード70が、側面63(ポケット58の内側の面である)に突出しない。
【0057】
内径側第1摺動部材55の軸方向一方側の内径側第1ビード71は、第1環状体51の底面60bから軸方向一方側に向けて側面59を超えて盛り上がった状態で形成される。
また、内径側第1摺動部材55の軸方向他方向側の内径側第2ビード72(第2のビード)は、内径側第1摺動部材55の側面55bから軸方向他方向側に向けて盛り上がった状態で形成される。第1実施形態では、内径側第1摺動部材55の軸方向他方向側で径方向に露出する第1環状体51の内周面51aの軸方向の寸法δ55(δ55=t51-t55)が、軸方向で内径側第2ビード72の盛上り量より大きく設定されている。このため、溶接終了後においても、内径側第2ビード72より軸方向他方向側で、第1環状体51の内周面51aの一部が径方向に露出しており、内径側第2ビード72は、側面63より軸方向一方向側に形成されている。このため、内径側第2ビード72が、側面63(ポケット58の内側の面である)に突出しない。
【0058】
図5(b)に示すように、外径側第2摺動部材56の軸方向他方側の外径側第3ビード73は、第2環状体52の底面62bから軸方向他方側に向けて側面61を超えて盛り上がった状態で形成される。
また、外径側第2摺動部材56の軸方向一方向側の外径側第4ビード74(第
3のビード)は、外径側第2摺動部材56の側面56bから軸方向一方向側に向けて盛り上がった状態で形成される。
第1実施形態では、外径側第2摺動部材56の軸方向一方向側で径方向に露出する第2環状体52の外周面52bの軸方向の寸法δ56(δ56=t52-t56)が、軸方向で外径側第4ビード74の盛上り量より大きく設定されている。このため、溶接終了後においても、外径側第4ビード74より軸方向他方向側で、第2環状体52の外周面52bの一部が径方向に露出しており、外径側第4ビード74は、側面64より軸方向他方向側に形成されている。このため、外径側第4ビード74が、側面64(ポケット58の内側の面である)に突出しない。
【0059】
内径側第2摺動部材57の軸方向他方側の内径側第3ビード75は、第2環状体52の底面62bから軸方向他方側に向けて側面61を超えて盛り上がった状態で形成される。
また、内径側第2摺動部材57の軸方向一方向側の内径側第4ビード76(第3のビード)は、内径側第2摺動部材57の側面57bから軸方向一方向側に向けて盛り上がった状態で形成される。第1実施形態では、内径側第2摺動部材57の軸方向一方向側で径方向に露出する第2環状体52の内周面52aの軸方向の寸法δ57(δ57=t52-t57)が、軸方向で内径側第4ビード76の盛上り量より大きく設定されている。このため、溶接終了後においても、内径側第4ビード76より軸方向一方向側で、第2環状体52の内周面52aの一部が径方向に露出しており、内径側第4ビード76は、側面64より軸方向他方向側に形成されている。このため、内径側第4ビード76が、側面64(ポケット58の内側の面である)に突出しない。
【0060】
この後、
図4(a)に示すように、第1環状体51の底面60b及び外径側第1摺動部材54の軸方向一方側の側面65と同じ平面になるように、外径側第1ビード69の盛り上がり部(外径側第1ビード69のうち側面65及び底面60bより軸方向一方側に盛り上がっている部分をいう)が研削によって除去される。また、第1環状体51の底面60b及び内径側第1摺動部材55の軸方向一方側の側面66と同じ平面になるように、内径側第1ビード71の盛り上がり部(内径側第1ビード71のうち側面66及び底面60bより軸方向一方側に盛り上がっている部分をいう)が研削によって除去される。
図4(a)は外径側第1ビード69と内径側第1ビード71とが底面60bと同じ平面になるよう研削された後の状態を示す。
【0061】
また、
図5(a)に示すように、第2環状体52の底面62b及び外径側第2摺動部材56の軸方向他方側の側面67と同じ平面になるように、外径側第3ビード73の外径側他の盛り上がり部(外径側第3ビード73のうち側面67及び底面62bより軸方向他方側に盛り上がっている部分をいう)が研削によって除去される。また、第2環状体52の底面62b及び内径側第2摺動部材57の軸方向他方側の側面68と同じ平面になるように、内径側第3ビード75の内径側他の盛り上がり部(内径側第3ビード75のうち側面68及び底面62bより軸方向他方側に盛り上がっている部分をいう)が研削によって除去される。
図5(a)は外径側第3ビード73と内径側第3ビード75とが底面62bと同じ平面になるよう研削された後の状態を示す。
【0062】
図6に示すように、凹部60の底面60bの周方向の幅W1は、外径側第1ビード69と内径側第1ビード71とが形成されている範囲L1と同一か若しくはこれよりやや広い。外径側第1ビード69と内径側第1ビード71との盛り上がり部は研削により除去されている。このため、外径側第1ビード69と内径側第1ビード71とは、第1環状体51の側面59よりも軸方向他方側(軸方向にポケット58に近い側)に窪んでいる。
また、凹部62の底面62bの周方向の幅W2は、外径側第3ビード73と内径側第3ビード75とが形成されている範囲L2と同一か若しくはこれよりやや広い。外径側第3ビード73と内径側第3ビード75との盛り上がり部は研削により除去されている。このため、外径側第3ビード73と内径側第3ビード75とは、第2環状体52の側面61よりも軸方向一方側(軸方向に第1円筒ころ6に近い側)に窪んでいる。
【0063】
凹部60の側面59からの深さt1は、0より大きく、かつ、外径側第1ビード69と内径側第1ビード71との溶け込み深さD1(
図4(b)参照)より小さい値であればよい。更に好ましくは、深さt1は、外径側第1摺動部材54と第1環状体51及び内径側第1摺動部材55と第1環状体51を確実に接合するために、溶け込み深さD1の2分の1以下とするのがよい。
凹部62の側面61からの深さt2は、0より大きく、かつ、外径側第3ビード73と内径側第3ビード75との溶け込み深さD2(
図5(b)参照)より小さい値であればよい。更に好ましくは、深さt2は、外径側第2摺動部材56と第2環状体52及び内径側第2摺動部材57と第2環状体52を確実に接合するために、溶け込み深さD2の2分の1以下とするのがよい。
【0064】
外径側第1ビード69と内径側第1ビード71とが、第1環状体51の軸方向一方側の側面59より、軸方向他方側に凹んだ位置に形成される。同時に、外径側第1ビード69が残存しているので、外径側第1摺動部材54と第1環状体51とが確実に接合された状態にすることができる。また、内径側第1ビード71が残存しているので、内径側第1摺動部材55と第1環状体51とが確実に接合された状態にすることができる。
また、外径側第3ビード73と内径側第3ビード75とが、第2環状体52の軸方向他方側の側面61より、軸方向一方側に凹んだ位置に形成される。同時に、外径側第3ビード73が残存しているので、外径側第2摺動部材56と第2環状体52とが確実に接合された状態にすることができる。また、内径側第3ビード75が残存しているので、内径側第2摺動部材57と第2環状体52とが確実に接合された状態にすることができる。
【0065】
こうして、
図2に示したように、ラジアル列の軸受部では、複数の第1円筒ころ6が、第1内輪4aの内側軌道面15と第1外輪5aの外側軌道面18との間に組み込まれ、第1保持器9によって、周方向にほぼ等しい間隔で、転動自在に保持されている。第1保持器9は、第1環状体51が、第1円筒ころ6の軸方向一方側で、第1円筒ころ6に沿って中心軸mと同軸に配置され、第2環状体52が、第1円筒ころ6の軸方向他方側で第1円筒ころ6に沿って中心軸mと同軸に配置されている。柱53は、第1環状体51の軸方向他方側の側面63から、周方向に隣接する第1円筒ころ6と第1円筒ころ6の間を通って軸方向に延在し、第2環状体52の軸方向一方側の側面64とつながっている。
【0066】
外輪5が回転すると、第1円筒ころ6が、内側軌道面15と外側軌道面18とを転動して、中心軸mの周りを公転する。同時に、第1保持器9の柱53が、第1円筒ころ6に付勢されて、第1保持器9が、第1円筒ころ6とともに中心軸mの回りで回転する。外径側第1摺動部材54の外周と外径側第2摺動部材56の外周は、外輪5の外側軌道面18とわずかなすきまをもって接触可能に組み込まれている。また、内径側第1摺動部材55の内周と内径側第2摺動部材57の内周は、内輪4の内側軌道面15とわずかなすきまをもって接触可能に組み込まれている。このため、第1保持器9は、状態によって、外輪5、若しくは、内輪4で案内されて、中心軸mを中心に回転する。
【0067】
このとき、外径側第1摺動部材54の外周と外径側第2摺動部材56の外周とは外輪5の外側軌道面18と、内径側第1摺動部材55の内周と内径側第2摺動部材57の内周とは内輪4の内側軌道面15と、すべり接触をする。一般的に、異種金属が互いにすべり接触をするときには、同種の金属同士がすべり接触をする場合と比較して、その摺動面に凝着等の不具合が生じにくい。第1実施形態の転がり軸受装置1では、外径側第1摺動部材54と外径側第2摺動部材56と内径側第1摺動部材55と内径側第2摺動部材57とが銅合金製で、外輪5及び内輪4が鋼製であるため、第1保持器9が回転するときに、外径側第1摺動部材54の外周と外径側第2摺動部材56の外周とは外輪5の外側軌道面18と、内径側第1摺動部材55の内周と内径側第2摺動部材57の内周とは内輪4の内側軌道面15と、すべり接触することによって、これらの接触により凝着等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0068】
また、第1保持器9は、第1径方向延在面25と第3側面32とで案内されて、周方向に回転している。第1環状体51が第1径方向延在面25と軸方向に対向しており、第2環状体52が第3側面32と軸方向に対向している。第1保持器9が周方向に回転すると、第1環状体51の軸方向で最も一方側にある側面59(
図4参照)と第1径方向延在面25とが摺接し、第2環状体52の軸方向で最も他方側にある側面61(
図5参照)と第3側面32とが摺接する。
【0069】
第1実施形態の第1保持器9の外径側第1摺動部材54と第1環状体51と、及び、内径側第1摺動部材55と第1環状体51とをそれぞれ溶接接合した位置は、第1環状体51の側面59より軸方向他方側に凹んだ凹部60の底面60bにある。また、第1保持器9の外径側第2摺動部材56と第2環状体52と、及び、内径側第2摺動部材57と第2環状体52とをそれぞれ溶接接合した位置は、第2環状体52の側面61より軸方向一方側に凹んだ凹部62の底面62bにある。
第1環状体51の外径側第1ビード69と内径側第1ビード71とが底面60bと同じ平面になるよう研削されているため、外径側第1ビード69と第1径方向延在面25と、及び、内径側第1ビード71と第1径方向延在面25とは接触しない。また、第2環状体52の外径側第3ビード73と内径側第3ビード75とが底面62bと同じ平面になるよう研削されているため、外径側第3ビード73と第3側面32と、及び、内径側第3ビード75と第3側面32とは接触しない。
【0070】
このため、第1環状体51にある各外径側第1ビード69と各内径側第1ビード71とが第1径方向延在面25と接触せず、第2環状体52にある各外径側第3ビード73と各内径側第3ビード75とが第3側面32と接触しないので、第1保持器9が回転するときに、第1環状体51にある各外径側第1ビード69と各内径側第1ビード71と第2環状体52にある各外径側第3ビード73と各内径側第3ビード75とが摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。
また、第1環状体51にある各凹部60、第2環状体52にある各凹部62は、グリースなどの潤滑剤を保持するので、第1保持器9と第1径方向延在面25、第3側面32との潤滑状態を良好にすることができる。
【0071】
図4に示すように、外径側第1摺動部材54の軸方向他方向側では、第1環状体51と外径側第1摺動部材54を接合する外径側第2ビード70が、第1環状体51の軸方向他方側の側面63から軸方向一方向側に離れて形成されており、ポケット58の内側に突出しない。このため、外径側第2ビード70が、円筒ころ21と接触しない。これにより、第1保持器9が回転するときに、外径側第2ビード70が摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。
また、内径側第1摺動部材55の軸方向他方向側では、第1環状体51と内径側第1摺動部材55を接合する内径側第2ビード72が、第1環状体51の軸方向他方側の側面63から軸方向一方向側に離れて形成されており、ポケット58の内側に突出しない。このため、内径側第2ビード72が、円筒ころ21と接触しない。これにより、第1保持器9が回転するときに、内径側第2ビード72が摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。
【0072】
図5に示すように、第2環状体52と外径側第2摺動部材56を、軸方向一方向側で接合する外径側第4ビード74は、第2環状体52の軸方向一方向側の側面64から軸方向他方向側に離れて形成されている。このため、外径側第4ビード74は、ポケット58の内側に突出しない。このため、外径側第4ビード74が、円筒ころ21と接触しない。これにより、第1保持器9が回転するときに、外径側第4ビード74が摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。
また、第2環状体52と内径側第2摺動部材57を、軸方向他方向側で接合する内径側第4ビード76は、第2環状体52の軸方向一方向側の側面64から軸方向他方向側に離れて形成されている。このため、内径側第4ビード76は、ポケット58の内側に突出しない。このため、内径側第4ビード76が、円筒ころ21と接触しない。これにより、第1保持器9が回転するときに、内径側第4ビード76が摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。
【0073】
更に、第1実施形態の第1保持器9は、銅合金製の外径側第1摺動部材54と銅合金製の内径側第1摺動部材55と銅合金製の外径側第2摺動部材56と銅合金製の内径側第2摺動部材57とが、鋼製の第1環状体51及び第2環状体52の外周及び内周に断続的に取り付けられた形態である。このため、第1保持器9の構成の大部分を比較的価格の安い鋼材で製造し、価格が高い銅合金の使用量を少なくすることができるので、第1保持器9を安価に製造することができる。こうして、転がり軸受装置1の製造コストを低減することができる。
また、第1保持器9が回転するときには、鋼製の外輪5の外側軌道面18と銅合金製の外径側第1摺動部材54や銅合金製の外径側第2摺動部材56とが、又は、鋼製の内輪4の内側軌道面15と銅合金製の内径側第1摺動部材55又は銅合金製の内径側第2摺動部材57とが、すべり接触をするので、すべり面で凝着等の不具合が生じにくい。
【0074】
図7は、他の実施形態(第2実施形態)の保持器109の、
図6と同様の保持器109の中心軸nを中心とする径方向の外方から見た図である。第2実施形態では、第1環状体151の軸方向一方側に凹部160が形成されている。凹部160は、底面160bと周方向両側の傾斜面160a、160cで画定される。外径側第1摺動部材154と内径側第1摺動部材155とは、外径側第1摺動部材154の軸方向一方側の側面165と内径側第1摺動部材155の軸方向一方側の側面166とが凹部160の底面160bと面一の状態で、外径側第1摺動部材154が第1環状体151の外周に、内径側第1摺動部材155が第1環状体151の内周に溶接接合されている。
このとき、凹部160は、軸方向の深さt3が、外径側第1ビード169と内径側第1ビード171の盛上り高さh1より深く形成されており(t3>h1)、外径側第1ビード169と内径側第1ビード171は、第1環状体151の最も軸方向一方側にある側面159より、軸方向他方側に凹んだ状態で形成されている。
外径側第1摺動部材154及び内径側第1摺動部材155の軸方向他方側では、外径側第2ビード170及び内径側第2ビード172が形成されている。外径側第2ビード170及び内径側第2ビード172は、第1環状体151の軸方向他方側の側面163から軸方向一方向側に離れて形成されており、ポケット158の内側に突出しない。
【0075】
また、第2環状体152の軸方向他方側に凹部162が形成されている。凹部162は、底面162bと周方向両側の傾斜面162a、162cで画定される。外径側第2摺動部材156と内径側第2摺動部材157とは、外径側第2摺動部材156の軸方向他方側の側面167と内径側第2摺動部材157の軸方向他方側の側面168とが凹部162の底面162bと面一の状態で、外径側第2摺動部材156が第2環状体152の外周に、内径側第2摺動部材157が第2環状体152の内周に溶接接合されている。
このとき、凹部162は、軸方向の深さt4が、外径側第3ビード173と内径側第3ビード175の盛上り高さh2より深く形成されており(t4>h2)、外径側第3ビード173と内径側第3ビード175は、第2環状体152の最も軸方向他方側にある側面161より、軸方向一方側に凹んだ状態で形成されている。
外径側第2摺動部材156及び内径側第2摺動部材157の軸方向一方側では、外径側第4ビード174及び内径側第4ビード176が形成されている。外径側第4ビード174及び内径側第4ビード176は、第2環状体152の軸方向他方側の側面164から軸方向他方向側に離れて形成されており、ポケット158の内側に突出しない。
【0076】
これにより、第1実施形態と同様に、保持器109が回転するときに、外径側第2ビード170と内径側第2ビード172と外径側第4ビード174と内径側第4ビード176とが摩耗したり、脱落したりする不具合を確実に防止できる。同時に、外輪5又は内輪4との摺動面の凝着等を防止しつつ、保持器109を安価に製造することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【0078】
例えば、上記に例示した第1保持器9は、第1保持器セグメント9sを周方向に並べて環状に構成されているが、一体のものとして形成されていてもよい。また、各環状体51、52が、第1円筒ころ6の軸方向両側にそれぞれ設置されているが、いずれか一方のみに設置されて、一の環状体51(又は52)と、第1円筒ころ6を周方向に所定の間隔で配置する複数の柱53とで構成されるものであってもよい。
また、上記に例示した実施形態では、外径側第1摺動部材54が第1環状体51の外周に、外径側第2摺動部材56が第2環状体52の外周に、それぞれ取り付けられている。また、内径側第1摺動部材55が第1環状体51の内周に、内径側第2摺動部材57が第2環状体52の内周に、それぞれ取り付けられている。しかしながら、第1保持器9が一体の環状で、中心軸mの周りで回転するときは、外径側第1摺動部材54及び外径側第2摺動部材56が、それぞれ外輪5の外側軌道面18と摺動するか、内径側第1摺動部材55及び内径側第2摺動部材57が、それぞれ内輪4の内側軌道面15と摺動するか、何れか一方で案内される場合もあるため、外径側第1摺動部材54が第1環状体51の外周に、及び/又は、外径側第2摺動部材56が第2環状体52の外周に取り付けられる一方、第1環状体51の内周に摺動部材を取り付けず、第2環状体52の内周に摺動部材を取り付けなくてもよい。
あるいは、内径側第1摺動部材55が第1環状体51の内周に、及び/又は、内径側第2摺動部材57が第2環状体52の内周に取り付けられる一方、第1環状体51の外周に摺動部材を取り付けず、第2環状体52の外周に摺動部材を取り付けなくてもよい。
また、上記に例示した実施形態では、外径側第1摺動部材54が第1環状体51の外周に、外径側第2摺動部材56が第2環状体52の外周に、それぞれ取り付けられている。また、内径側第1摺動部材55が第1環状体51の内周に、内径側第2摺動部材57が第2環状体52の内周に、それぞれ取り付けられている。しかしながら、第1環状体51の外周に外径側第1摺動部材54を取り付けるともに、第1環状体51の内周に内径側第1摺動部材55を取り付けて、第2環状体52に摺動部材をとりつけなくてもよい。あるいは、第2環状体52の外周に外径側第2摺動部材56を取り付けるともに、第2環状体52の内周に内径側第2摺動部材57を取り付けて、第1環状体51に摺動部材をとりつけなくてもよい。
さらには、第1環状体51の外周に外径側第1摺動部材54を取り付けるともに、第2環状体52の内周に内径側第2摺動部材57を取り付けて、その他の位置に摺動部材をとりつけなくてもよい。あるいは、第2環状体52の外周に外径側第2摺動部材56を取り付けるともに、第1環状体51の内周に内径側第1摺動部材55を取り付けて、その他の位置に摺動部材をとりつけなくてもよい。これらの第1実施形態の変更例は、第2実施形態の保持器109においても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1:転がり軸受装置、2:カッターヘッド、4:内輪、4a:第1内輪、4b:第2内輪、5a:第1外輪、5b:第2外輪、6:第1円筒ころ、7:第2円筒ころ、8:第3円筒ころ、9:第1保持器、9s:第1保持器セグメント、10:第2保持器、11:第3保持器、51:第1環状体、52:第2環状体、53:柱、54:外径側第1摺動部材、55:内径側第1摺動部材、56:外径側第2摺動部材、57:内径側第2摺動部材、58:ポケット、59:第1環状体の軸方向一方側の側面、60:第1環状体の凹部、60b:第1環状体の凹部の底面、61:第2環状体の軸方向他方側の側面、62:第2環状体の凹部、62b:第2環状体の凹部の底面、63:第1環状体の軸方向他方側の側面、64:第2環状体の軸方向一方側の側面、69:外径側第1ビード、70:外径側第2ビード、71:内径側第1ビード、72:内径側第2ビード、73:外径側第3ビード、74:外径側第4ビード、75:内径側第3ビード、76:内径側第4ビード