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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】アンテナ装置、及び、無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/02 20060101AFI20230322BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20230322BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01Q19/02
H01Q9/30
H01Q1/24 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019016158
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123918
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 学
(72)【発明者】
【氏名】大平 淳一
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-145316(JP,A)
【文献】特開2010-118941(JP,A)
【文献】特開昭61-041205(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029235(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0002506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0263421(US,A1)
【文献】特開平04-172001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
前記アンテナエレメントが一方の表面に設けられるとともに、内層又は他方の表面に前記第1金属板が設けられる基板と
を含
前記接続部は、前記基板の端辺の一部の区間にわたって設けられており、
前記アンテナエレメントは、前記端辺のうち前記接続部が設けられる区間以外の区間内で、前記端辺に沿って設けられる、アンテナ装置。
【請求項2】
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
前記第1金属板を含む回路基板と、
前記回路基板に接続され、前記アンテナエレメントの通信周波数とは異なる周波数帯で通信する通信機が接続されるコネクタと
を含む、アンテナ装置。
【請求項3】
前記接続部は、平面視で前記第2金属板の端辺に設けられ、前記第2金属板の端辺と前記第1金属板とを接続する、請求項1又は2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記コネクタよりも前記アンテナエレメントの近くに配置される、請求項記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記通信機は、平面視で前記アンテナエレメントが配置される矩形状の領域よりも大きい、請求項又は記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記回路基板と前記アンテナエレメントの給電部との間を接続する給電線をさらに含む、請求項2、4、及び5のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記回路基板に設けられる、又は、前記アンテナエレメントの線路に接続される、整合素子をさらに含む、請求項2、4乃至6のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナエレメントは、前記回路基板の第1端辺に沿って延在する、請求項2、4乃至7のいずれか一項記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記コネクタは、前記回路基板の前記第1端辺とは反対の第2端辺側に設けられる、請求項記載のアンテナ装置。
【請求項10】
アンテナ装置と、
前記アンテナ装置を介して通信する通信部と、
前記通信部に接続され、通信制御を行う制御部と
を含む、無線通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
前記アンテナエレメントが一方の表面に設けられるとともに、内層又は他方の表面に前記第1金属板が設けられる基板と
を有
前記接続部は、前記基板の端辺の一部の区間にわたって設けられており、
前記アンテナエレメントは、前記端辺のうち前記接続部が設けられる区間以外の区間内で、前記端辺に沿って設けられる、無線通信装置。
【請求項11】
アンテナ装置と、
前記アンテナ装置を介して通信する通信部と、
前記通信部に接続され、通信制御を行う制御部と
を含む、無線通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
前記第1金属板を含む回路基板と、
前記回路基板に接続され、前記アンテナエレメントの通信周波数とは異なる周波数帯で通信する通信機が接続されるコネクタと
を有する、無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、及び、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空間を介して対向する位置に配置されている2つの導体面と、前記2つの導体面を少なくとも2箇所でそれぞれ接続する複数の接続導体と、前記複数の接続導体のうち少なくとも1つの接続導体に対して近接配置されたアンテナコイルと、を備えるアンテナ装置がある。
【0003】
前記複数の接続導体のうち2つの接続導体と前記2つの導体面とで、開口を有する閉ループが形成されていて、前記アンテナコイルは、前記閉ループの開口面を平面視したときに、前記開口面に重ならない位置で、且つ前記アンテナコイルの電磁誘導により前記接続導体に誘導電流が流れる位置に配置されていることを特徴とする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014-199861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のアンテナ装置は、2つの導体面の少なくとも一方に重なるように別の導電体が配置されると、別の導電体にも電流が流れることによって放射特性が変化し、所望の通信周波数における通信特性が劣化するおそれがある。
【0006】
そこで、導電体の近くに配置されても良好な通信特性が得られるアンテナ装置、及び、無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態のアンテナ装置は、グランド電位に保持される第1金属板と、前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と、前記アンテナエレメントが一方の表面に設けられるとともに、内層又は他方の表面に前記第1金属板が設けられる基板とを含前記接続部は、前記基板の端辺の一部の区間にわたって設けられており、前記アンテナエレメントは、前記端辺のうち前記接続部が設けられる区間以外の区間内で、前記端辺に沿って設けられる
【発明の効果】
【0008】
導電体の近くに配置されても良好な通信特性が得られるアンテナ装置、及び、無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態のアンテナ装置100を含む無線通信装置200を示す図である。
図2】アンテナ装置100の一部を示す図である。
図3】アンテナ装置100の一部を示す図である。
図4】無線通信装置200に通信機50を取り付けた状態を示す図である。
図5】アンテナ装置100のシミュレーションモデルの各パラメータを示す図である。
図6】アンテナ装置100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。
図7】アンテナ装置100の指向性を示す図である。
図8】アンテナ装置100の解析モデルを示す図である。
図9】アンテナ装置100の解析モデルを示す図である。
図10】距離aと厚さtを変化させた際のアンテナ装置100のトータル効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のアンテナ装置、及び、無線通信装置を適用した実施の形態について説明する。
【0011】
<実施の形態>
図1は、実施の形態のアンテナ装置100を含む無線通信装置200を示す図である。以下ではXYZ座標系を用いて説明する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視をいう。
【0012】
無線通信装置200は、アンテナ装置100、通信部210、及び制御部220を含む。無線通信装置200は、この他にアンテナ装置100、通信部210、及び制御部220を収納する筐体等を含むが、ここでは省略する。
【0013】
以下では、図1に加えて、図2乃至図4を用いて説明する。図2及び図3は、アンテナ装置100の一部を示す図である。図4は、無線通信装置200に通信機50を取り付けた状態を示す図である。図4では、通信機50の輪郭を破線で示す。
【0014】
アンテナ装置100は、回路基板110、基板120、アンテナエレメント130、接続ピン140、金属板150、接続部160、及びコネクタ170を含む。図2では、回路基板110、コネクタ170、通信部210、及び制御部220を省略する。図3では、さらに金属板150及び接続部160を省略する。
【0015】
回路基板110は、一例として、FR-4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板であり、グランド層110Aと、複数の絶縁層と、複数の配線層とを積層した構造を有する。グランド層110Aと、複数の絶縁層とは、一例として平面視で矩形状である。
【0016】
回路基板110は、4つの端辺111、112、113、114を有する。端辺111は、+X方向側でY方向に延在しており、端辺112は、+Y方向側でX方向に延在しており、端辺113は、-Y方向側でX方向に延在しており、端辺114は、-X方向でY方向に延在している。端辺111は第1端辺の一例であり、端辺114は第2端辺の一例である。
【0017】
グランド層110Aは、グランド電位に保持される。グランド層110Aは、平面視で回路基板110と略同一のサイズを有する。略同一のサイズを有するとは、絶縁層の端辺から微小なオフセットがあるが、実質的に等しいサイズを有することをいう。
【0018】
また、ここでは、一例として、グランド層110Aは、内層にあることとする。なお、グランド層110Aは、回路基板110のどの層にあってもよい。グランド層110Aは、第1金属板の一例である。
【0019】
基板120は、回路基板110と平面視で重なる位置において、回路基板110の+Z方向側に配置される。基板120の-Z方向側の表面(下面)にはアンテナエレメント130が設けられ、+Z方向側の表面(上面)には金属板150が設けられる。基板120は、絶縁体製の板状部材であればよく、一例としてFR-4規格の配線基板を用いることができる。また、基板120は、無線通信装置200の筐体の一部分であってもよい。
【0020】
アンテナエレメント130は、モノポール型の逆F型のアンテナ素子であり、給電部(給電点)131、分岐部132、折り曲げ部133、開放端134、折り曲げ部135、136、接続端137を有する。アンテナエレメント130は、一例として銅製である。
【0021】
給電部131は、給電線211を介して通信部210に接続されている。給電部131には、通信部210から給電線211を介して給電が行われる。給電部131の平面視での位置は、基板120の+X方向側及び-Y方向側の角部から少し-X方向側及び+Y方向側にオフセットした位置である。
【0022】
給電線211は、例えば、回路基板110に含まれる配線と、回路基板110の配線と給電部131との間を接続する同軸ケーブルの芯線とで実現される。給電線211のうち、回路基板110に含まれる配線の部分は、例えば、マイクロストリップラインのようにアンテナエレメント130とインピーダンスが整合する特性インピーダンスを有する線路を用いることができる。また、給電部131には、給電線211とのインピーダンスを整合させるための整合素子を接続してもよい。整合素子としては、コンデンサ及び/又はコイルを用いればよい。
【0023】
アンテナエレメント130は、給電部131から+Y方向に延在し、折り曲げ部133で-X方向に折り曲げられて開放端134まで延在する線路と、分岐部132から-X方向に延在し、折り曲げ部135、136で-Y方向、+X方向に折り曲げられて接続端137まで延在する線路とを有する。
【0024】
折り曲げ部133の平面視での位置は、基板120の+X方向側及び+Y方向側の角部から少し-X方向側にオフセットした位置であり、X方向の位置は給電部131と等しい。開放端134の平面視での位置は、基板120の-X方向側及び+Y方向側の角部の位置に等しい。折り曲げ部136の平面視での位置は、基板120の-X方向側及び-Y方向側の角部の位置に等しい。折り曲げ部135の平面視での位置は、折り曲げ部136の位置から+Y方向側にオフセットした位置である。接続端137の平面視での位置は、基板120の+X方向側及び-Y方向側の角部の位置に等しい。
【0025】
給電部131から折り曲げ部133を経て開放端134まで延在する線路の長さは、アンテナエレメント130の所定の共振周波数における波長の電気長の1/4に対応する長さに設定される。
【0026】
所定の共振周波数における波長の電気長の1/4に対応する長さとは、厳密に所定の共振周波数における波長の電気長の1/4の長さには限らず、アンテナエレメント130を所定の共振周波数で共振する逆Fアンテナとして機能させるための調整において、所定の共振周波数における波長の電気長の1/4の長さよりも少し短くされる場合の長さを含む意味である。
【0027】
また、分岐部132から折り曲げ部135、136を経て接続端137まで延在する線路(短絡線)は、接続端137で接続ピン140を介して回路基板110のグランド層110Aに接続される。
【0028】
このようなアンテナエレメント130は、給電部131と折り曲げ部133との間の区間が基板120の+X方向側でY方向に延在する端辺121に沿って延在しており、折り曲げ部133と開放端134との間の区間が基板120の+X方向側でY方向に延在する端辺122に沿って延在している。また、折り曲げ部136と接続端137との間の区間が基板120の-Y方向側でX方向に延在する端辺123に沿って延在している。
【0029】
基板120と金属板150は、平面視でサイズが等しいため、アンテナエレメント130は、給電部131と折り曲げ部133との間の区間が金属板150の+X方向側でY方向に延在する端辺151に沿って延在しており、折り曲げ部133と開放端134との間の区間が金属板150の+X方向側でY方向に延在する端辺152に沿って延在している。また、折り曲げ部136と接続端137との間の区間が金属板150の-Y方向側でX方向に延在する端辺153に沿って延在している。
【0030】
また、基板120及び金属板150の四辺(端辺121~124、151~154)は、回路基板110の四辺(4つの端辺)と平行である。このため、アンテナエレメント130は、回路基板110との関係では、給電部131と折り曲げ部133との間の区間が端辺111に沿って延在しており、折り曲げ部133と開放端134との間の区間が端辺112に沿って延在している。また、折り曲げ部136と接続端137との間の区間が端辺113に沿って延在している。このように、アンテナエレメント130は、回路基板110の端辺111、112、113に沿って配置されている。端辺114の近くに配置されるコネクタ170からなるべく離れた位置にアンテナエレメント130を配置して、コネクタ170及び通信機50からアンテナエレメント130が受ける影響を軽減するためである。
【0031】
接続ピン140は、接続端137を回路基板110のグランド層110Aに接続する導電体製のピンである。接続ピン140は、一例として銅又ははんだで作製することができる。
【0032】
金属板150は、基板120の上面(+Z方向側の表面)に設けられ、平面視で基板120と等しいサイズを有する。金属板150は、接続部160によって回路基板110のグランド層110Aに接続され、グランド電位に保持される。金属板150は、金属製であればどのような金属であってもよいが、一例として銅製である。金属板150は、第2金属板の一例である。
【0033】
接続部160は、金属板150の-X方向側でY方向に延在する端辺154のうち、+Y方向側の区間に接続されている。接続部160は、導電体製であればよく、回路基板110のグランド層110Aと金属板150とを接続できる部材であればよい。
【0034】
接続部160は、コネクタ170よりもアンテナエレメント130の近くに配置される。アンテナエレメント130のうち、接続部160に最も近いのは開放端134である。このような配置にするのは、アンテナエレメント130と接続部160を結合させて、金属板150にも電流を流すためである。アンテナエレメント130と接続部160を結合させて金属板150にも電流を流せば、コネクタ170に通信機50(図4参照)が装着されても、通信機50に電流が流れることを抑制できるからである。
【0035】
接続部160は、図2に示すように金属層をXY平面に平行な部分とYZ平面に平行な部分とに折り曲げた構成であってもよいし、複数の金属ピン等であってもよい。接続部160は、一例として銅等の金属製である。
【0036】
コネクタ170は、図1に示すように、接続部160の-X方向側に配置され、回路基板110のグランド層110Aと配線層とに接続されている。コネクタ170の端子171は+Z方向に突出しており、金属板150の上側に配置可能な通信機50のコネクタが接続される。コネクタ170は、通信機50側のコネクタに合わせた規格のコネクタであれば、どのような形式のものであってもよい。通信機50は、アンテナエレメント130が配置される平面視での矩形状の領域(基板120の平面視でのサイズと等しい領域)よりも大きい。通信機50は、アンテナ装置100とは異なる通信周波数で通信を行う。ここで、アンテナ装置100の通信周波数とは、アンテナ装置100の共振周波数と等しい周波数、又は、アンテナ装置100の共振周波数の前後でアンテナ装置100が通信可能な周波数帯に含まれる周波数である。
【0037】
通信部210は、回路基板110の上面に実装され、給電線211を介してアンテナエレメント130の給電部131に接続されるとともに、回路基板110の配線を介して制御部220に接続されている。通信部210は、一例として、DUP(Duplexer)、LNA(Low Noise Amplifier)/PA(Power Amplifier)、及び変調/復調器等を含み、アンテナエレメント130から送信する送信信号と、アンテナエレメント130で受信される受信信号との増幅又はノイズ除去等の信号処理を行う。
【0038】
制御部220は、回路基板110の上面に実装され、回路基板110の配線を介して通信部210に接続されている。制御部220は、送信信号及び受信信号の入出力制御を行う。
【0039】
図5は、アンテナ装置100のシミュレーションモデルの各パラメータを示す図である。図5では、グランド層110A及びアンテナエレメント130を簡略化して1つのブロックとして示す。ポート1は、給電部131である。また、図5では、整合回路としてコンデンサ2及びインダクタ3を示す。一例として、コンデンサ2の静電容量は2pFであり、インダクタのインダクタンスは、2.3nHである。コンデンサ2及びインダクタ3は、整合素子の一例である。また、波源1は、給電部131(ポート1)に高周波電力を供給する高周波源であり、内部インピーダンスは50Ωである。
【0040】
また、シミュレーションモデルでは、グランド層110Aは、X方向及びY方向に無限に延在するものであることを条件にした。また、グランド層110A、アンテナエレメント130等の導体は、銅製であることにした。このようなシミュレーションモデルを用いて、アンテナ装置100の放射特性を求めるために電磁界シミュレーションを行った。
【0041】
図6は、アンテナ装置100のS11パラメータの周波数特性を示す図である。横軸は周波数であり、アンテナ装置100の共振周波数f0に対して-45MHzから+55MHzまでの範囲を示す。縦軸はS11パラメータであり、最も上の目盛りが0dBであり、0dB以下は数値を示さずに等間隔の目盛りのみを示す。
【0042】
実線で示す特性は、コネクタ170に通信機50が装着されていない条件で取得したものである。また、破線で示す特性は、コネクタ170に通信機50が装着されている条件で取得したものである。
【0043】
コネクタ170に通信機50が装着されている条件では、金属板150の+Z方向側に銅製の金属板を配置した。通信機50としての金属板は、回路基板110と等しいサイズを有することとした。通信機50は、グランド層及びその他の金属部材を含むため、このような条件の金属板で代用した。
【0044】
図6に実線で示すように、コネクタ170に通信機50が装着されていない条件では、共振周波数f0を中心として、十分に良好な通信を行えるほどに反射係数が低いことが確認できた。また、破線で示すように、コネクタ170に通信機50が装着されている条件では、共振周波数f0を中心として、十分に良好な通信を行えるほどに反射係数が低く、実線で示す特性よりも反射係数が低いことが確認できた。
【0045】
実線で示す特性でも、十分に良好な通信を行えるレベルであるため、アンテナ装置100は、金属板150の+Z方向側に金属板が配置されても、良好な通信特性が得られることを確認できた。
【0046】
図7は、アンテナ装置100の指向性を示す図である。図7(A)にはコネクタ170に通信機50が装着されていない条件で取得した指向性を示し、図7(B)には、コネクタ170に通信機50が装着されている条件で取得した指向性を示す。また、図7(A)、(B)には、YZ平面における指向性を示す。YZ平面はアンテナエレメント130の所謂水平面であるため、図7(A)、(B)に示す指向性は、水平面における指向性である。
【0047】
図7(A)、(B)に示すように、アンテナ装置100は、コネクタ170に通信機50が装着されていなくても、コネクタ170に通信機50が装着されていても、略同様の指向性を示し、ともに水平面において無指向性が得られることが分かった。すなわち、アンテナ装置100は、金属板150の上側に通信機50が配置されても指向性への影響が非常に少ないことが分かった。
【0048】
図8及び図9は、アンテナ装置100の解析モデルを示す図である。図8及び図9に示す解析モデルのアンテナ装置100のコネクタ170には、通信機50のグランド層に相当する金属板51が接続されている。
【0049】
また、図9に示すように、基板120の厚さをt、アンテナエレメント130とグランド層110AとのZ方向の距離(間隔)をaとした。
【0050】
距離Lを固定して、距離aと厚さtを変化させたところ、図10に示すような結果を得た。図10は、距離aと厚さtを変化させた際のトータル効率(アンテナエレメント130のインピーダンスが完全に整合している状態での放射効率)を示す図である。ここでは、距離a、厚さt、及び放射効率を、それぞれ、A、T、Eという規格化した値で示す。
【0051】
図10に示すように、厚さtが厚くなるほど放射効率が向上し、厚くなるほど向上する幅は小さくなることが分かった。また、距離aが大きい方が放射効率が向上することが分かった。すなわち、距離aと厚さtが大きいほど放射効率が向上することが分かった。
【0052】
放射効率は、距離aが3.35Aで、厚さtが6.4Tのときに、約-1.5Eという最も高い値が得られた。
【0053】
以上のように、アンテナ装置100は、アンテナエレメント130の+Z方向側(グランド層110Aとは反対側)に、グランド電位に保持される金属板150を設けることにより、金属板150の+Z方向側(上側)に金属板51(図8参照)が配置されても通信特性が劣化せず、良好な通信特性を得ることができた。金属板51は、電磁界シミュレーションにおいて、通信機50を模したものである。
【0054】
したがって、導電体の近くに配置されても良好な通信特性が得られるアンテナ装置100、及び、無線通信装置200を提供することができる。
【0055】
このため、無線通信装置200と通信機50とを含む電子機器は、アンテナ装置100を含む無線通信装置200で良好な通信状態で通信を行うことができるとともに、通信機50で通信を行うことができる。
【0056】
アンテナ装置100では、アンテナエレメント130に対して通信機50が配置される可能性がある空間は、+Z方向側(上側)であり、通信機50の有無によらずに良好な通信特性を得るために、ここでは一例として、金属板150が平面視でアンテナエレメント130の全体に重なるようにしている。
【0057】
また、アンテナエレメント130は、グランド層110Aと金属板150とを接続する接続部160に対しては、平面視で接続部160と重ならない位置にあり、給電部131は、平面視で接続部160とは基板120の矩形形状における対角に位置するように配置されている。
【0058】
このような金属板150及び接続部160との位置関係の制約の下で、アンテナエレメント130は、基板120及び金属板の端辺に沿って配置されている。
【0059】
このような配置により、アンテナエレメント130は、金属板150の下側に配置されていても、金属板150によって遮られる空間は最小限に抑えられており、金属板150に遮られることなく放射できる空間が確保されている。
【0060】
このため、アンテナ装置100は、水平面での良好な放射効率(図7参照)を得ることができる。
【0061】
金属板150をアンテナエレメント130の+Z方向側に設けることによって、コネクタ170への通信機50の接続の有無(アンテナエレメント130の+Z方向側における通信機50の有無)によらずに良好な通信特性が得られるのは、次のような理由による。アンテナエレメント130が放射する際に金属板150にも電流が流れることにより、コネクタ170に通信機50が装着されても通信機50に電流が流れることを遮ってくれるからである。このような原理は、シミュレーションにおいて、通信機50を模した金属板51に電流が殆ど流れないことから確認できている。
【0062】
従って、接続部160は、コネクタ170よりもアンテナエレメント130に近い側に配置することが望ましい。接続部160とアンテナエレメント130の結合が強くなる配置にすることによって、コネクタ170に通信機50が接続されても、通信機50に電流が流れることを抑制することができる。この結果、通信機の有無によらずに、アンテナ装置100は良好な通信特性を得ることができる。
【0063】
なお、以上では、アンテナエレメント130が逆F型である形態について説明したが、アンテナエレメント130は、逆L型又はメアンダ型等のモノポール型のアンテナエレメントであってもよい。逆L型又はメアンダ型にする場合は、接続ピン140は不要になる。
【0064】
また、アンテナエレメント130が逆L型又はメアンダ型である場合に、図1乃至図3に示す給電部131に金属ピンを接続してもよい。この場合には、給電部は金属ピンの回路基板110側の端部になる。このように金属ピンに設けられる給電部を回路基板110の上面の近傍に配置し、コンデンサ又はコイルのような整合素子を回路基板110に実装してもよい。この場合には、金属ピンもアンテナエレメント130の一部になるため、モノポール型のアンテナエレメントとしての長さは、金属ピンの給電部からの長さとして設定すればよい。
【0065】
また、通信部210および制御部220が回路基板110に配置されていてもよい。
【0066】
また、以上では、接続部160が金属板150の-X方向側でY方向に延在する端辺154のうち、+Y方向側の区間に接続されている形態について説明したが、接続部160は、端辺154のY方向における中央部に接続されていてもよい。
【0067】
また、以上では、アンテナエレメント130が基板120及び金属板150の端辺121、151、122、152に沿って配置される形態について説明したが、アンテナ装置100の良好な通信特性が得られるのであれば、アンテナエレメント130の配置は上述のような配置に限られない。
【0068】
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ装置、及び、無線通信装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
を含む、アンテナ装置。
(付記2)
前記接続部は、平面視で前記第2金属板の端辺に設けられ、前記第2金属板の端辺と前記第1金属板とを接続する、付記1記載のアンテナ装置。
(付記3)
前記アンテナエレメントが一方の表面に設けられるとともに、内層又は他方の表面に前記第1金属板が設けられる基板をさらに含む、付記1又は2記載のアンテナ装置。
(付記4)
前記接続部は、前記基板の端辺の一部の区間にわたって設けられており、
前記アンテナエレメントは、前記端辺のうち前記接続部が設けられる区間以外の区間内で、前記端辺に沿って設けられる、付記3記載のアンテナ装置。
(付記5)
前記第1金属板を含む回路基板と、
前記回路基板に接続され、前記アンテナエレメントの通信周波数とは異なる周波数帯で通信する通信機が接続されるコネクタと
をさらに含む、付記1乃至4のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記6)
前記接続部は、前記コネクタよりも前記アンテナエレメントの近くに配置される、付記5記載のアンテナ装置。
(付記7)
前記通信機は、平面視で前記アンテナエレメントが配置される矩形状の領域よりも大きい、付記5又は6記載のアンテナ装置。
(付記8)
前記回路基板と前記アンテナエレメントの給電部との間を接続する給電線をさらに含む、付記5乃至7のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記9)
前記回路基板に設けられる、又は、前記アンテナエレメントの線路に接続される、整合素子をさらに含む、付記5乃至8のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記10)
前記アンテナエレメントは、前記回路基板の第1端辺に沿って延在する、付記5乃至9のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記11)
前記コネクタは、前記回路基板の前記第1端辺とは反対の第2端辺側に設けられる、付記10記載のアンテナ装置。
(付記12)
前記アンテナエレメントは、逆F型、逆L型、又はメアンダ型である、付記1乃至10のいずれか一項記載のアンテナ装置。
(付記13)
アンテナ装置と、
前記アンテナ装置を介して通信する通信部と、
前記通信部に接続され、通信制御を行う制御部と
を含む、無線通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
グランド電位に保持される第1金属板と、
前記第1金属板の一方の表面側で前記第1金属板から離間して配置されるモノポール型のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに対する前記第1金属板とは反対側において、平面視で前記第1金属板と重なる位置に配置される第2金属板と、
前記第1金属板と前記第2金属板とを接続する接続部と
を有する、無線通信装置。
【符号の説明】
【0069】
100 アンテナ装置
110 回路基板
110A グランド層
120 基板
130 アンテナエレメント
131 給電点
140 接続ピン
150 金属板
160 接続部
170 コネクタ
200 無線通信装置
210 通信部
220 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10