(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電動機システム
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20230322BHJP
A62C 35/00 20060101ALI20230322BHJP
H02K 16/00 20060101ALI20230322BHJP
H02K 17/36 20060101ALI20230322BHJP
H02P 1/58 20060101ALI20230322BHJP
H02P 1/32 20060101ALI20230322BHJP
H02P 5/747 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02P5/46 Z
A62C35/00
H02K16/00
H02K17/36
H02P1/58
H02P1/32
H02P5/747
(21)【出願番号】P 2019072721
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2019064417
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊本 一夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 なるみ
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-019116(JP,A)
【文献】特開昭61-124277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
A62C 35/00
H02K 16/00
H02K 17/36
H02P 1/58
H02P 1/32
H02P 5/747
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷機器と、電源と、前記電源からの電力によって前記負荷機器を作動させる駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備える電動機システムであって、
前記負荷機器は、その機能を発揮するための一の入力軸を有し、
前記駆動源は、第一誘導電動機と、第二誘導電動機と、前記第一誘導電動機の出力と前記第二誘導電動機の出力とを合わせて前記入力軸を作動させることが可能な連動部を有し、
前記第一誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第一ロータと第二ロータとを備えた誘導電動機であって、
前記制御部は、前記負荷機器が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで前記駆動源を制御する始動制御を行い、
前記始動制御には、第一誘導電動機を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれ、
前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一ロータを減電圧で運転させる第一ロータ減電圧運転制御と、前記第一ロータを通常電圧で運転させる第一ロータ通常運転制御と、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御と、前記第二ロータを減電圧で運転させる第二ロータ減電圧運転制御と、前記第二ロータを通常電圧で運転させる第二ロータ通常運転制御と、第二ロータ減電圧運転制御から前記第二ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれ、
前記制御部は、前記第一誘導電動機運転制御を開始した後に、前記第二誘導電動機運転制御を開始し、前記第二誘導電動機運転制御を開始する際には、前記第一誘導電動機運転制御を行っている始動制御を行う
ことを特徴とする電動機システム。
【請求項2】
前記第二誘導電動機運転制御には、前記第二誘導電動機を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御が含まれ、
前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替えた後であって、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第二誘導電動機通常運転制御を行う
ことを特徴とする請求項
1に記載の電動機システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替える前に、前記第二ロータ減電圧運転制御を行う
ことを特徴とする請求項
2に記載の電動機システム。
【請求項4】
負荷機器と、電源と、前記電源からの電力によって前記負荷機器を作動させる駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備える電動機システムであって、
前記負荷機器は、その機能を発揮するための一の入力軸を有し、
前記駆動源は、第一誘導電動機と、第二誘導電動機と、前記第一誘導電動機の出力と前記第二誘導電動機の出力とを合わせて前記入力軸を作動させることが可能な連動部を有し、
前記第一誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第一ロータと第二ロータとを備えた誘導電動機であって、
前記第二誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第三ロータと第四ロータとを備えた誘導電動機であって、
前記制御部は、前記負荷機器が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで前記駆動源を制御する始動制御を行い、
前記始動制御には、第一誘導電動機を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれ、
前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一ロータを減電圧で運転させる第一ロータ減電圧運転制御と、前記第一ロータを通常電圧で運転させる第一ロータ通常運転制御と、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御への運転へ切り替える制御と、前記第二ロータを減電圧で運転させる第二ロータ減電圧運転制御と、前記第二ロータを通常電圧で運転させる第二ロータ通常運転制御と、前記第二ロータ減電圧運転制御から前記第
二ロータ通常運転制御への運転へ切り替える制御とが含まれ、
前記第二誘導電動機運転制御には、前記第三ロータを通常電圧で運転させる第三ロータ通常運転制御と、前記第四ロータを通常電圧で運転させる第四ロータ通常運転制御とが含まれ、
前記制御部は、前記第一誘導電動機運転制御を開始した後に、前記第二誘導電動機運転制御を開始し、前記第二誘導電動機運転制御を開始する際には、前記第一誘導電動機運転制御を行っている始動制御を行う
ことを特徴とする電動機システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替えた後であって、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第三ロータ通常運転制御を行い、その後、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御と前記第三ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第四ロータ通常運転制御を行う
ことを特徴とする請求項
4に記載の電動機システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替える前に、前記第二ロータ減電圧運転制御を行う
ことを特徴とする請求項
5に記載の電動機システム。
【請求項7】
前記電源は、発電機であって、
前記負荷機器は
、防災機器である
ことを特徴とする請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の電動機システム。
【請求項8】
前記第一誘導電動機の定格出力は、前記第二誘導電動機の定格出力より小さい
ことを特徴とする請求項1乃至
7のうちいずれか1項に記載の電動機システム。
【請求項9】
前記駆動源は、さらに第三誘導電動機とを少なくとも有し、
前記連動部は、さらに前記第三誘導電動機の出力とを少なくとも合わせて前記入力軸を作動させることが可能であって、
前記始動制御には、さらに第三誘導電動機を運転させる第三誘導電動機運転制御とが含まれ、
前記制御部は、前記第二誘導電動機運転制御を開始した後、前記第三誘導電動機運転制御を開始して始動制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の電動機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災機器等の駆動源として好適な電動機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、消火ポンプ、排煙ファン等の防災機器には、機器ごとに1台の電動機およびその電源となる発電機が接続されている。
ところで、直入れによって誘導電動機を動かすと、出力160kWのものでは、
図1(イ)の実線にて示すように、始動時に最大で定格電流の600%程度の電流が流れ、
図1(ロ)の実線にて示すように、始動トルクが定格トルクの200%程度になる。
なお、図中、回転数1500回/minは同期電動機の理論上の定格値であり、誘導電動機の場合、同期回転数よりも2~3%の滑りが発生し、実際には1500回/minに達することなく定格運転が行われる。また、電動機に直入れしたときのトルク特性から基準特性となるトルクの二乗低減負荷特性Trが算出され、そのときの電流の二乗低減負荷特性Ecが算出される。
【0003】
ところで、発電機の容量は始動電流の強さに応じて選定されるため、始動電流が定格電流に比べてあまりに強いと、必要以上に大容量の発電機を使用しなければならず、設置スペースが増大するばかりか、設備費およびランニングコストが高くつく。
そこで、このような大きな出力の誘導電動機を用いる場合は、始動電流を低く抑えるべく、スターデルタ方式、リアクトル方式、コンドルファ方式のような減電圧始動方式を採用することが多い。
【0004】
スターデルタ方式は、ステータ巻線をスター結線として運転を開始し、
図2(イ)、
図2(ロ)に示すように、電流特性またはトルク特性が二乗低減負荷特性Ec、Trと交わった時点でデルタ結線に切り替えるものである。
このスターデルタ方式は、回路が単純で安価であり、定格電流を100%とした場合、始動電流が200%程度(直入れ時の約1/3)で済み、始動トルクの低減率は定格トルクの66%程度である。しかし、スターからデルタへの切り替え時に電流およびトルクの変化率が大きいという欠点がある。
また、リアクトル方式、コンドルファ方式は、始動時に高価な切替え装置を必要とするため、コストが非常に高くつく。
【0005】
本出願人は、先に、1つのケーシング内において、1本の回転軸に2個のロータを設け、それぞれのロータにステータを対峙して設け、一方のロータを運転した後、他方のロータを運転する双固定子電動機を提案した(特許文献1参照)。
この双固定子電動機によれば、単純な構造で始動電流を低くして、発電機容量を抑えることができ、始動切り替え時のショックも小さくてすむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高層ビルや大型の地下構造物などの施設に設備される消火ポンプや排煙ファン等をはじめとする防災機器などは大きな出力の電動機を必要とするが、90kWを超えるような電動機は、通常、受注生産品であり、故障した場合等には、新しい電動機を納入するまでに3ヶ月以上もの長期間を要することが多い。防災設備が使用不能であれば、安全上、それを備える施設も立ち入り禁止になることもあり、特に、集客施設のような場合では莫大な損害が発生することもある。
【0008】
上記特許文献1に記載のような双固定子電動機は、始動電流を抑えることはできるものの、負荷機器に応じた出力を必要とするのは変わらないため、大型の負荷機器に接続した場合、故障等の緊急時に直ちに納入できないという欠点を解消することはできなかった。
本発明が解決しようとする課題は、始動電流を低く抑えて設備負担を軽減することが可能であり、電動機が損傷した場合等に短期間で交換することができる電動機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
手段1は、負荷機器と、電源と、制御部と、前記電源からの電力によって前記負荷機器を作動させる駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備える電動機システムであって、前記負荷機器は、その機能を発揮するための一の入力軸を有し、前記駆動源は、第一誘導電動機と、第二誘導電動機と、前記第一誘導電動機の出力と前記第二誘導電動機の出力とを合わせて前記入力軸を作動させることが可能な連動部を有し、前記制御部は、前記負荷機器が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで前記駆動源を制御する始動制御を行い、前記始動制御には、第一誘導電動機を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれ、前記制御部は、前記第一誘導電動機運転制御を開始した後に、前記第二誘導電動機運転制御を開始し、前記第二誘導電動機運転制御を開始する際には、前記第一誘導電動機運転制御を行っている始動制御を行うことを特徴とする電動機システムである。
【0010】
手段2は、前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一誘導電動機を減電圧で運転する第一誘導電動機減電圧運転制御と、前記第一誘導電動機を通常電圧で運転する第一誘導電動機通常運転制御と、前記第一誘導電動機減電圧運転制御から前記第一誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御と、が含まれ、前記第二誘導電動機運転制御には、前記第二誘導電動機を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御が含まれ、前記制御部は、前記第一誘導電動機減電圧運転制御から前記第一誘導電動機通常電圧制御への運転に切り替える制御を行った後に、前記第二誘導電動機通常運転制御を行うことを特徴とする手段1に記載の電動機システムである。
【0011】
手段3は、前記第二誘導電動機運転制御には、前記第二誘導電動機を減電圧で運転する第二誘導電動機減電圧運転制御が含まれ、前記制御部は、前記第一誘導電動機減電圧運転制御から前記第一誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御を行う前に、前記第二誘導電動機減電圧運転制御を行うことを特徴とする手段2に記載の電動機システムである。
【0012】
手段4は、負荷機器と、電源と、前記電源からの電力によって前記負荷機器を作動させる駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備える電動機システムであって、前記負荷機器は、その機能を発揮するための一の入力軸を有し、前記駆動源は、第一誘導電動機と、第二誘導電動機と、前記第一誘導電動機の出力と前記第二誘導電動機の出力とを合わせて前記入力軸を作動させることが可能な連動部を有し、前記第一誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第一ロータと第二ロータとを備えた誘導電動機であって、前記制御部は、前記負荷機器が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで前記駆動源を制御する始動制御を行い、前記始動制御には、第一誘導電動機を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれ、前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一ロータを減電圧で運転させる第一ロータ減電圧運転制御と、前記第一ロータを通常電圧で運転させる第一ロータ通常運転制御と、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御と、前記第二ロータを減電圧で運転させる第二ロータ減電圧運転制御と、前記第二ロータを通常電圧で運転させる第二ロータ通常運転制御と、第二ロータ減電圧運転制御から前記第二ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれ、前記制御部は、前記第一誘導電動機運転制御を開始した後に、前記第二誘導電動機運転制御を開始し、前記第二誘導電動機運転制御を開始する際には、前記第一誘導電動機運転制御を行っている始動制御を行うことを特徴とする電動機システムである。
【0013】
手段5は、前記第二誘導電動機運転制御に、前記第二誘導電動機を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御が含まれ、前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替えた後であって、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第二誘導電動機通常運転制御を行うことを特徴とする手段4に記載の電動機システムである。
【0014】
手段6は、前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替える前に、前記第二ロータ減電圧運転制御を行うことを特徴とする手段5に記載の電動機システムである。
【0015】
手段7は、負荷機器と、電源と、前記電源からの電力によって前記負荷機器を作動させる駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備える電動機システムであって、前記負荷機器は、その機能を発揮するための一の入力軸を有し、前記駆動源は、第一誘導電動機と、第二誘導電動機と、前記第一誘導電動機の出力と前記第二誘導電動機の出力とを合わせて前記入力軸を作動させることが可能な連動部を有し、前記第一誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第一ロータと第二ロータとを備えた誘導電動機であって、前記第二誘導電動機は、同一の出力軸に設けられ各々に設けられたステータが対峙する第三ロータと第四ロータとを備えた誘導電動機であって、前記制御部は、前記負荷機器が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで前記駆動源を制御する始動制御を行い、前記始動制御には、第一誘導電動機を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれ、前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一ロータを減電圧で運転させる第一ロータ減電圧運転制御と、前記第一ロータを通常電圧で運転させる第一ロータ通常運転制御と、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御への運転へ切り替える制御と、前記第二ロータを減電圧で運転させる第二ロータ減電圧運転制御と、前記第二ロータを通常電圧で運転させる第二ロータ通常運転制御と、前記第二ロータ減電圧運転制御から前記第二ロータ通常運転制御への運転へ切り替える制御とが含まれ、前記第二誘導電動機運転制御には、前記第三ロータを通常電圧で運転させる第三ロータ通常運転制御と、前記第四ロータを通常電圧で運転させる第四ロータ通常運転制御とが含まれ、前記制御部は、前記第一誘導電動機運転制御を開始した後に、前記第二誘導電動機運転制御を開始し、前記第二誘導電動機運転制御を開始する際には、前記第一誘導電動機運転制御を行っている始動制御を行うことを特徴とする電動機システムである。
【0016】
手段8は、前記第一誘導電動機運転制御には、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替える制御が含まれ、前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替えた後であって、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第三ロータ通常運転制御を行い、その後、前記第一ロータ通常運転制御と前記第二ロータ通常運転制御と前記第三ロータ通常運転制御とを行っているときに、前記第四ロータ通常運転制御を行うことを特徴とする手段7に記載の電動機システムである。
【0017】
手段9は、前記制御部は、前記第一ロータ減電圧運転制御から前記第一ロータ通常運転制御に切り替える前に、前記第二ロータ減電圧運転制御を行うことを特徴とする手段8に記載の電動機システムである。
【0018】
手段10は、前記電源が発電機であって、前記負荷機器は、防災機器であることを特徴とする手段1乃至9のうちいずれかに記載の電動機システムである。
【0019】
手段11は、前記第一誘導電動機の定格出力が、前記第二誘導電動機の定格出力より小さいことを特徴とする手段1乃至10のうちいずれかに記載の電動機システムである。
【0020】
手段12に係る発明は、前記駆動源は、さらに第三誘導電動機とを少なくとも有し、前記連動部は、さらに前記第三誘導電動機の出力とを少なくとも合わせて前記入力軸を作動させることが可能であって、前記始動制御には、さらに第三誘導電動機を運転させる第三誘導電動機運転制御とが含まれ、前記制御部は、前記第二誘導電動機運転制御を開始した後、前記第三誘導電動機運転制御を開始して始動制御を行うことを特徴とする手段1乃至11のいずれかに記載の電動機システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、1台の負荷機器を2台の誘導電動機で動かすので、大型の負荷機器を用いた場合でも、1台あたりの誘導電動機の出力が、常時在庫されている汎用電動機程度の小さいものですみ、このため、電動機の故障等が発生しても短期間で復旧することが可能で、経済的および時間的な損失を抑制できる。
2台の誘導電動機の出力を組み合わせることにより、負荷機器を運転するのに必要な最適の出力を得ることができ、電力の無駄がない。
第一誘導電動機を運転した後に、第二誘導電動機を運転するので、出力が大きい1台の電動機を運転するのに比べて、始動電流が小さく抑えられ、この結果、電源容量を小さくでき、設備負担が軽減される。
【0022】
加えて、第一誘導電動機を運転する際に、減電圧で運転してから通常電圧で運転すると、始動電流をさらに小さくすることができる。
【0023】
加えて、第二誘導電動機を運転する際にも、減電圧で運転してから通常電圧で運転すると、第二誘導電動機の運転を開始した時の電流変化率が小さくてすむ。
【0024】
加えて、少なくとも第一誘導電動機として、同一の出力軸に設けられた第一ロータ及び第二ロータと、これらロータの各々に対峙するステータとを備えた誘導電動機を用い、第一ロータを減電圧で運転してから通常電圧で運転し、その後、第二ロータを減電圧で運転してから通常電圧で運転すれば、始動電流をいっそう小さくでき、電流の変化も滑らかとなる。
【0025】
加えて、前記第一誘導電動機の定格出力を、前記第二誘導電動機の定格出力より小さくすれば、始動電流をより小さくできる。
【0026】
加えて、1台の負荷機器を少なくとも3台以上の誘導電動機で動かすので、大型の負荷機器を用いた場合でも、1台あたりの誘導電動機の出力が、常時在庫されている汎用電動機程度のより小さいものですみ、このため、電動機の故障等が発生しても短期間で復旧することが可能となり、経済的および時間的な損失を抑制できる。また、3台以上の誘導電動機の出力を組み合わせることにより、負荷機器を運転するのに必要な最適の出力を得ることができるとともに電力の無駄がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】直入れした電動機の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図2】スターデルタ方式で始動した電動機の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図3】本発明の第1の実施形態を示す電動機システムの概略図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る駆動源及び負荷機器の概略図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る駆動源の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る駆動源及び負荷機器の概略図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る駆動源の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る駆動源の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る駆動源及び負荷機器の概略図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る駆動源の始動特性を示す図であり、(イ)は始動電流特性、(ロ)は始動トルク特性を示す。
【
図11】変形例1を示す駆動源及び負荷機器の概略図である。
【
図12】変形例2を示す駆動源及び負荷機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0029】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態を
図3~
図5と共に説明する。
図3は第1の実施形態を示す電動機システムの概略図であり、
図4は第1の実施形態に係る駆動源及び負荷機器の概略図であり、
図5は第1の実施形態に係る駆動源の始動電流特性及び始動トルク特性を示す図である。
【0030】
第1の実施形態において、
図3に示すように、電動機システム1は、負荷機器2と、電源3と、電源3からの電力によって負荷機器2を作動させる駆動源4と、駆動源4を制御する制御部5と、を備える。
【0031】
図4に示すように、負荷機器2は、消火ポンプ、排煙ファン、排水ポンプなどの防災機器であって、その機能を発揮するための一の入力軸2aを有する。
負荷機器2が防災機器の場合、電源3は、停電時にも負荷機器2を作動させることができるように、非常用の発電機を用いる。電源3の発電電力は制御部5を介して駆動源4に供給される。
【0032】
駆動源4は、第一誘導電動機6と、第二誘導電動機7と、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力とを合わせて入力軸2aを作動させることが可能な連動部8を有する。
第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7は、それぞれのケーシング内に一のロータ60、70とこれらに対峙する一のステータを備える出力90kWの汎用品である。出力90kWを二基としたのは、出力80kWのものは規格がなく、負荷機器2が必要とする出力を鑑みて従来の一つの誘導電動機であれば出力160kWとするところ、これを二基で相当させるための設定である。出力90kWの誘導電動機は、出力160kWのものに比べて広く市場に流通しているので、故障等が発生しても入手しやすく、短期間で交換できる。
【0033】
連動部8は、第一誘導電動機6の出力軸6aに取り付けられた駆動輪9と、第二誘導電動機7の出力軸7aに取り付けられた駆動輪10と、これら駆動輪9,10に巻回されたベルト11と、ベルト11で回転駆動され、その回転を負荷機器2の入力軸2aに伝える従動輪12と、を備える。
【0034】
制御部5は、負荷機器2が所定の機能を発揮するのに必要な定格運転まで駆動源4を制御する始動制御を行い、その後、負荷機器2が定格運転を継続するよう駆動源4を制御する。
始動制御には、第一誘導電動機6を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機7を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれる。そして、制御部5は、まず、第一誘導電動機運転制御を開始し、その後、第二誘導電動機運転制御を開始し、第二誘導電動機運転制御を開始する際には、第一誘導電動機運転制御を行っている。
【0035】
第一誘導電動機運転制御には、第一誘導電動機6を減電圧で運転する第一誘導電動機減電圧運転制御と、第一誘導電動機6を通常電圧で運転する第一誘導電動機通常運転制御と、第一誘導電動機減電圧運転制御から第一誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれる。
第二誘導電動機運転制御には、第二誘導電動機7を減電圧で運転する第二誘導電動機減電圧運転制御と、第二誘導電動機7を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御と、第二誘導電動機減電圧運転制御から第二誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれる。
【0036】
本実施形態において、第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7の始動制御は、スター結線からデルタ結線へ切り替えるスターデルタ方式を採用する。すなわち、誘導電動機減電圧運転制御は、誘導電動機のステータ巻線をスター結線として運転制御することであり、誘導電動機通常運転制御は、誘導電動機のステータ巻線をデルタ結線として運転制御することであり、誘導電動機減電圧運転制御から誘導電動機通常運転制御への切り替える運転制御は、誘導電動機のステータ巻線をスター結線からデルタ結線に切り替える運転制御である。
【0037】
以下に、制御部5による駆動源4の始動制御について具体的に説明する。
電源3から電力が入力される制御部5は、まず、第一誘導電動機6のステータ巻線をスター結線とする第一誘導電動機減電圧運転制御を行い、第一誘導電動機6のステータのみに給電する。すると、第一誘導電動機6の出力軸6a及び駆動輪9が回転し、この回転力がベルト11、従動輪12を介して入力軸2aに伝わる。
図5(イ)の実線Aに示すように、この時の始動電流は、定格運転時の電流とほぼ等しく、
図5(ロ)の実線Aに示すように、始動トルクは定格運転時のトルクの33%程度である。
【0038】
第一誘導電動機6を第一誘導電動機減電圧運転制御で制御し回転数が上昇して、実線Aのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わった時点で、制御部5は、第一誘導電動機減電圧運転制御に加えて、第二誘導電動機7のステータにも給電し、第二誘導電動機7のステータ巻線をスター結線とする第二誘導電動機減電圧運転制御を行う。
すると、第二誘導電動機7の出力軸7aが回転し、この第二誘導電動機7の出力が連動部8により第一誘導電動機6の出力と合わさって入力軸2aに伝わる。
第二誘導電動機減電圧運転制御を行った後の電流特性及びトルク特性を
図5(イ)及び図(ロ)の実線Bに示す。
【0039】
その後、第一誘導電動機6を第一誘導電動機減電圧運転制御で運転しつつ、第二誘導電動機7を第二誘導電動機減電圧運転制御で運転し、実線Bのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第二誘導電動機7への給電を停止し、第一誘導電動機6へ給電を続けステータ巻線をスター結線からデルタ結線に切り替える。すなわち、第二誘導電動機減電圧運転制御を停止するとともに、第一誘導電動機減電圧運転制御から第一誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御を行う。
第一誘導電動機減電圧運転制御から第一誘導電動機通常運転制御による運転へ切り替えた後の電流特性及びトルク特性を
図5(イ)及び
図5(ロ)の実線Cに示す。
【0040】
第一誘導電動機6を第一誘導電動機通常運転制御で運転した状態において、実線Cのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機通常運転制御を行いつつ、第二誘導電動機7への給電を開始し、第二誘導電動機7のステータ巻線をデルタ結線とする第二誘導電動機通常運転制御を行う。
第一誘導電動機6の第一誘導電動機通常運転制御による運転と第二誘導電動機7の第二誘導電動機通常運転制御による運転では、両誘導電動機6、7のステータ巻線はデルタ結線となっており、その電流特性及びトルク特性は、
図5(イ)及び
図5(ロ)の実線Dに示すように、直入れした電動機一基に相当する電流特性及びトルク特性に重なる。そして、駆動源4の回転数が定格回転数に達すると、始動制御が終了して定格運転が開始される。
【0041】
このように電流およびトルクはなだらかに変化し、始動電流は最大でも定格電流の2倍程度で済む。
【0042】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について
図6及び
図7と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0043】
第2の実施形態は、
図6に示すように、第1の実施形態の第一誘導電動機6を、出力が90kWの双固定子電動機としたものである。双固定子電動機とは、1つのケーシング内において、同一の出力軸6aに設けられた第一ロータ13および第二ロータ14と、第一ロータ13と第二ロータ14とに各々対峙するステータを備えた誘導電動機である。出力が90kWとは、第一ロータ13及び第二ロータ14の出力を合わせた際の出力に相当するものである。
第一ロータ13に対峙するステータ及び第二ロータ14に対峙するステータは、いずれも制御部5により巻線をスター結線からデルタ結線に切り替え可能である。
第二誘導電動機7は、出力が90kWで、第一の実施形態における第二誘導電動機7とほぼ同じ構造を有するが、ステータ巻線はデルタ結線に固定されている。
【0044】
制御部5が行う始動制御には、第一誘導電動機6を運転させる第一誘導電動機運転制御と、第二誘導電動機7を運転させる第二誘導電動機運転制御とが含まれる。そして、制御部5は、まず、第一誘導電動機運転制御を開始し、その後、第二誘導電動機運転制御を開始し、第二誘導電動機運転制御を開始する際には、第一誘導電動機運転制御を行っている。
【0045】
第一誘導電動機運転制御には、第一誘導電動機6の第一ロータ13を減電圧で運転させる第一ロータ減電圧運転制御と、第一ロータ13を通常電圧で運転させる第一ロータ通常運転制御と、第一ロータ減電圧運転制御から第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御と、第二ロータ14を減電圧で運転させる第二ロータ減電圧運転制御と、第二ロータ14を通常電圧で運転させる第二ロータ通常運転制御と、第二ロータ減電圧運転制御から第二ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれる。
第二誘導電動機運転制御には、第二誘導電動機7を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御が含まれる。
【0046】
本実施形態において、第一誘導電動機6の第一ロータ13及び第二ロータ14の始動制御は、スター結線からデルタ結線へ切り替えるスターデルタ方式を採用する。すなわち、ロータ減電圧運転制御は、ロータのステータ巻線をスター結線として運転制御することであり、ロータ通常運転制御は、ロータのステータ巻線をデルタ結線として運転制御することであり、ロータ減電圧運転制御からロータ通常運転制御への切り替える運転制御は、ロータのステータ巻線をスター結線からデルタ結線に切り替える運転制御である。第二誘導電動機7の始動制御は、デルタ結線の固定方式である。
【0047】
以下に、第2の実施形態における制御部5による駆動源4の始動制御について具体的に説明する。
電源3から電力が入力される制御部5は、まず、第一誘導電動機6の第一ロータ13に対峙するステータ巻線をスター結線とする第一ロータ減電圧運転制御を行い、第一誘導電動機6の第一ロータ13のステータのみに給電する。すると、第一ロータ13が回転して、第一誘導電動機6の出力軸6a及び駆動輪9が回転し、出力軸6aの出力のみが連動部8を介して入力軸2aへ入力される。
このときの始動電流は、
図7(イ)の実線Aに示すように、定格電流の50%程度であり、始動トルクは、
図7(ロ)の実線Aに示すように、定格トルクの約16%である。
【0048】
第一誘導電動機6の第一ロータ13を第一ロータ減電圧運転制御で制御し回転数が上昇して、実線Aのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わった時点で、制御部5は、第一ロータ減電圧運転制御に加えて、第二ロータ14のステータにも給電し、第二ロータ14のステータ巻線をスター結線とする第二ロータ減電圧運転制御を行う。
すると、空回り状態であった第二ロータ14も駆動し回転して、第一誘導電動機6の出力軸6aの回転数が上がる。
この第二ロータ減電圧運転制御を行った後の電流特性及びトルク特性を
図7(イ)及び
図7(ロ)の実線Bに示す。
【0049】
その後、第一誘導電動機6の第一ロータ13を第一ロータ減電圧運転制御で運転しつつ、第二ロータ14を第二ロータ減電圧運転制御で運転し、実線Bのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第二ロータ14のステータへの給電を停止し、第一ロータ13のステータへ給電を続けステータ巻線をスター結線からデルタ結線に切り替える。すなわち、第二ロータ減電圧運転制御を停止するとともに、第一ロータ減電圧運転制御から第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御を行う。
この第一ロータ13のみを通常運転制御したときの電流特性及びトルク特性を
図7(イ)及び
図7(ロ)の実線Cに示す。
【0050】
第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを第一ロータ通常運転制御で運転した状態において、実線Cのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一ロータ通常運転制御を行いつつ、第二ロータ14のステータ巻線をデルタ結線として給電を開始し、第二ロータ14を第二ロータ通常運転制御で運転する。このように第一ロータ13が第一ロータ通常運転制御で運転され、かつ第二ロータ14が第二ロータ通常運転制御で運転される状態が、第一誘導電動機6が通常運転される。
この第一誘導電動機6のみを通常運転し、第二誘導電動機7を停止しているときの電流特性及びトルク特性を
図7(イ)及び
図7(ロ)の実線Dに示す。
【0051】
第一誘導電動機6のみを通常運転している状態において、実線Dのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機6のみを通常運転している状態(第一誘導電動機通常運転制御状態)としつつ、ステータ巻線がデルタ結線された第二誘導電動機7への給電を開始し、第二誘導電動機通常運転制御を行う。
すると、第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7がいずれも通常運転され、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力が連動部8で合わせられて入力軸2aに入力される。
第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7を通常運転しているときの電流特性及びトルク特性は、
図7(イ)及び
図7(ロ)の実線Eに示すように、直入れした電動機一基に相当する電流特性及びトルク特性に重なる。そして、駆動源4の回転数が定格回転数に達すると、始動制御が終了して定格運転が開始される。
【0052】
第2の実施形態では、第1の実施形態よりも多段階で切り替えを行うので、電流及びトルクの変化がさらになだらかになる。
【0053】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明に係る第3の実施形態について
図8と共に説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
第3の実施形態は、第二誘導電動機7のステータ巻線を、スター結線からデルタ結線に切り替え可能とし、第二誘導電動機運転制御には、第二誘導電動機7を減電圧で運転する第二誘導電動機減電圧運転制御と、第二誘導電動機7を通常電圧で運転する第二誘導電動機通常運転制御と、第二誘導電動機減電圧運転制御から第二誘導電動機通常運転制御への運転に切り替える制御とが含まれる点で第2の実施形態と異なる。
【0054】
以下、第3の実施形態における制御部5による駆動源4の始動制御について具体的に説明する。
電源3から電源が入力される制御部5は、第一ロータ減電圧運転制御を行い第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを運転する。
このときの始動電流は、
図8(イ)の実線Aに示すように、定格電流の50%程度であり、始動トルクは、
図8(ロ)の実線Aに示すように、定格トルクの約16%である。
【0055】
第一ロータ減電圧運転制御を行い第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを運転させた状態で、実線Aのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わった時点で、制御部5は、第一ロータ減電圧運転制御に加えて、第二ロータ減電圧運転制御も行う。
この第二ロータ減電圧運転制御を行った後の電流特性及びトルク特性を
図8(イ)及び
図8(ロ)の実線Bに示す。
【0056】
その後、第一誘導電動機6の第一ロータ13を第一ロータ減電圧運転制御で運転しつつ、第二ロータ14を第二ロータ減電圧運転制御で運転し、実線Bのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第二ロータ減電圧運転制御を停止するとともに、第一ロータ減電圧運転制御から第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御を行う。
この第一ロータ13のみを通常運転制御したときの電流特性及びトルク特性を
図8(イ)及び
図8(ロ)の実線Cに示す。
【0057】
第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを第一ロータ通常運転制御で運転した状態において、実線Cのトルク特性が次に二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一ロータ通常運転制御を行いつつ、第二ロータ14を第二ロータ通常運転制御で運転して、第一誘導電動機6を通常運転とする制御を行う。
この第一誘導電動機6のみを通常運転し、第二誘導電動機7を停止しているときの電流特性及びトルク特性を
図8(イ)及び
図8(ロ)の実線Dに示す。
【0058】
第一誘導電動機6のみを通常運転している状態において、実線Dのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機6のみを通常運転している状態(第一誘導電動機通常運転制御状態)としつつ、ステータ巻線をスター結線とした第二誘導電動機7への給電を開始し、第二誘導電動機減電圧運転制御を行う。
このように第一誘導電動機6が通常運転され、第二誘導電動機7が減電圧運転されると、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力が連動部8で合わせられて入力軸2aに出力される。
この第一誘導電動機6を通常運転し、第二誘導電動機7を減電圧運転している時の電流特性及びトルク特性を
図8(イ)及び
図8(ロ)の実線Eに示す。
【0059】
第一誘導電動機6が通常運転され、第二誘導電動機7が減電圧運転されているときに、実線Eのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機6を通常運転している状態(第一誘導電動機通常運転制御状態)としつつ、第二誘導電動機7のステータ巻線をスター結線からデルタ結線に切り替える第二誘導電動機減電圧運転制御から第二誘導電動機通常運転制御の運転に切り替える制御を行う。
すると、第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7がいずれも通常運転され、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力が連動部8で合わせられて入力軸2aに入力される。
第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7を通常運転しているときの電流特性及びトルク特性は、
図8(イ)及び
図8(ロ)の実線Fに示すように、直入れした電動機一基に相当する電流特性及びトルク特性に重なる。そして、駆動源4の回転数が定格回転数に達すると、始動制御が終了して定格運転が開始される。
【0060】
第3の実施形態では、切り替えの回数がさらに増えるので、電流及びトルクの変化がよりなだらかになり、加速途中の最大電流は定格電流の150%程度に抑えられる。
【0061】
〔第4の実施形態〕
以下、本発明に係る第4の実施形態について
図9及び
図10と共に説明する。なお、第1~第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0062】
第4の実施形態は、
図9に示すように、第2の実施形態の第二誘導電動機7を、出力が90kWの双固定子電動機としたものである。第二誘導電動機7は、1つのケーシング内において、同一の出力軸7aに設けられると共に、各々に設けられたステータが対峙する第三ロータ15と第四ロータ16とを備える。また、第三ロータ15に対峙するステータ及び第四ロータ16に対峙するステータ巻線は、デルタ結線に固定されている。
制御部5による第二誘導電動機運転制御には、第三ロータ15のデルタ結線のステータに給電して通常電圧で第三ロータを運転させる第三ロータ通常運転制御と、第四ロータ16のデルタ結線のステータに給電して通常電圧で第四ロータを運転させる第四ロータ通常運転制御とが含まれる。
【0063】
以下、第4の実施形態における制御部5による駆動源4の始動制御について具体的に説明する。
電源3から電源が入力される制御部5は、第一ロータ減電圧運転制御を行い第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを運転する。
このときの始動電流は、
図10(イ)の実線Aに示すように、定格電流の50%程度であり、始動トルクは、
図10(ロ)の実線Aに示すように、定格トルクの約16%である。
【0064】
第一ロータ減電圧運転制御を行い第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを運転させた状態で、実線Aのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わった時点で、制御部5は、第一ロータ減電圧運転制御に加えて、第二ロータ減電圧運転制御も行う。
この第二ロータ減電圧運転制御を行った後の電流特性及びトルク特性を
図10(イ)及び
図10(ロ)の実線Bに示す。
【0065】
その後、第一誘導電動機6の第一ロータ13を第一ロータ減電圧運転制御で運転しつつ、第二ロータ14を第二ロータ減電圧運転制御で運転し、実線Bのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第二ロータ減電圧運転制御を停止するとともに、第一ロータ減電圧運転制御から第一ロータ通常運転制御への運転に切り替える制御を行う。
この第一ロータ13のみを通常運転制御したときの電流特性及びトルク特性を
図10(イ)及び
図10(ロ)の実線Cに示す。
【0066】
第一誘導電動機6の第一ロータ13のみを第一ロータ通常運転制御で運転した状態において、実線Cのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一ロータ通常運転制御を行いつつ、第二ロータ14を第二ロータ通常運転制御で運転して、第一誘導電動機6を通常運転とする制御を行う。
この第一誘導電動機6のみを通常運転し、第二誘導電動機7を停止しているときの電流特性及びトルク特性を
図10(イ)及び
図10(ロ)の実線Dに示す。
【0067】
第一誘導電動機6のみを通常運転している状態において、実線Dのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機6のみを通常運転している状態(第一誘導電動機通常運転制御状態)としつつ、第二誘導電動機7の第三ロータ15のデルタ結線とされているステータに給電する第三ロータ通常運転制御を行う。第二誘導電動機7の第四ロータ16のステータには給電しない。
このように第一誘導電動機6が通常運転され、かつ、第二誘導電動機7の第三ロータ15のみが通常運転されると、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の第三ロータ15による出力が連動部8で合わせられて入力軸2aに出力される。
第一誘導電動機6を通常運転し、第二誘導電動機7の第三ロータ15のみを通常運転しているときの電流特性及びトルク特性を
図10(イ)及び
図10(ロ)の実線Eに示す。
【0068】
次いで、第一誘導電動機6が通常運転され、第二誘導電動機7の第三ロータ15のみが通常運転されているときに、実線Eのトルク特性が二乗低減負荷特性Trと交わったら、制御部5は、第一誘導電動機6を通常運転している状態(第一誘導電動機通常運転制御状態)で第二誘導電動機7の第三ロータ15のみが通常運転している状態としつつ、第二誘導電動機7の第四ロータ16のデルタ結線されているステータに給電し、第四ロータ通常電圧運転制御を行う。すなわち、第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7がいずれも定格結線となって、通常運転される。
第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7を通常運転しているときの電流特性及びトルク特性は、
図10(イ)及び
図10(ロ)の実線Fに示すように、直入れした電動機一基に相当する電流特性及びトルク特性に重なる。そして、駆動源4の回転数が定格回転数に達すると、始動制御が終了して定格運転が開始される。
【0069】
第4の実施形態でも、電流及びトルクの変化がよりなだらかになり、始動電流も定格電流の150%程度に抑えられる。
【0070】
〔変形例1〕
図11に、駆動源4の変形例1を示す。
変形例1では、第一誘導電動機6の出力軸6aと第二誘導電動機7の出力軸7aとを第一カップリング17で直列に接続し、第一誘導電動機6の出力軸6aを第二カップリング18で負荷機器2の入力軸2aへ接続してある。
したがって、第一カップリング17および第二カップリング18から成る連動部8が、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力とを合わせて入力軸2aに入力し、負荷機器2を作動させることができる。
【0071】
〔変形例2〕
図12に、駆動源4の変形例2を示す。
変形例2では、連動部8は、第一誘導電動機6の出力軸6aに取り付けられた第一ギヤ19と、第二誘導電動機7の出力軸7aに取り付けられた第二ギヤ20と、負荷機器2の入力軸2aに取り付けられた第三ギヤ21とから成る。
第一ギヤ19および第二ギヤ20は第三ギヤ21と噛み合っており、第一誘導電動機6の出力と第二誘導電動機7の出力とが合わせて入力軸2aに入力される。
【0072】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0073】
本実施形態では、負荷機器を防災機器としたが、これに限られず、破砕機等の比較的大出力の駆動源を必要とし、繰り返し起動するような始動が問題となるような機器であっても良い。
【0074】
本実施形態では、電源を緊急時に有利な発電機として説明したが、これに限られず、電力会社によって給電される商用電源とすることもできる。商用電源を用いても、その容量を抑えるなどして契約料金を抑えることができる他、設備負担を軽減できる。
【0075】
本実施形態では、第一誘導電動機と第二誘導電動機を同じ出力としたが、異なる出力のものを組み合わせてもよい。
第一誘導電動機の出力を小さくし、第二誘導電動機の出力を大きくすれば、始動電流をさらに小さくして、必要な出力を得ることができる。例えば、第1の実施形態では、従来の一つの誘導電動機の出力160kWに対して、汎用品の90kWを二基としたが、第一誘導電動機を出力75kWとし、第二誘導電動機を出力90kWとしても良い。このようにすれば、より出力160kWに近づけることができて、経済的な設定を行うことができる。
始動時に大きいトルクを必要とする場合は、第一誘導電動機の出力を大きくし、第二誘導電動機の出力を小さくする。
負荷機器の種類に応じて、第一誘導電動機と第二誘導電動機を適宜組み合わせ、無駄のない最適な出力を得ることができる。
【0076】
本実施形態では、制御部が、第一誘導電動機のみ、あるいは、第一誘導電動機と第二誘導電動機の両者を減電圧運転制御から通常運転制御に切り替えて運転しているが、第一誘導電動機及び第二誘導電動機の始動制御を通常運転制御のみとしてもよい。このようにしても、運転開始時に、第一誘導電動機を単独で運転することで始動電流を低く抑え、設備負担を軽減することができる。
【0077】
本実施形態では、制御部が二乗低減負荷トルクとの交点でも回転数によって駆動源を制御しているが、温度、時間等によって制御することもできる。
また、減電圧で始動するのにスターデルタ方式を採用しているが、その他の減電圧始動方式を採用してもよい。
【0078】
本実施形態では、制御部5が、トルク特性と二乗低減負荷特性Trとの交点の回転数で、第一誘導電動機6及び第二誘導電動機7の運転制御を切り替える例について説明したが、電流特性と二乗低減負荷特性Ecとの交点の回転数で切り替えるようにしても良い。これ場合の例を
図5(イ)、
図7(イ)、
図8(イ)、
図10(イ)に示している。
【0079】
本実施形態では、駆動源の誘導電動機を第一誘導電動機及び第二誘導電動機と二基として説明したが、これに限られるものではないことを明確にする。誘導電動機を三基(第三誘導電動機)またはそれ以上備えるようなものでも良い。その際には、誘導電動機の基数の全てを合わせて必要な定格出力となるように組み合わせて、連動部も対応させる。また、三基目以降の誘導電動機についても第一誘導電動機や第二誘導電動機の始動制御に引き続き実施形態で行ったような同様の始動制御(例えば、第二誘導電動機通常運転制御に第三誘導電動機減電圧運転制御を加えて、その後第三誘導電動機通常運転制御に切り替えるといった第一誘導電動機運転制御に第二誘導電動機運転制御を加えたような制御を第三誘導電動機運転制御として行う)を行って始動制御を行う。
このように、本願発明は誘導電動機が三基以上となるようなものを除外するようなものでないことは明らかである。
このように三基以上の誘導電動機を用いれば、電流及びトルクの変化がよりなだらかになり、始動電流の最大値も抑えることができる。
【0080】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0081】
1 電動機システム
2 負荷機器
3 電源
4 駆動源
5 制御部
6 第一誘導電動機
7 第二誘導電動機
8 連動部
9,10 駆動輪
11 ベルト
12 従動輪
13 第一ロータ
14 第二ロータ
15 第三ロータ
16 第四ロータ
17 第一カップリング
18 第二カップリング
19 第一ギヤ
20 第二ギヤ
21 第三ギヤ
60,70 ロータ