(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230322BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230322BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20230322BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20230322BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230322BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230322BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 E
H05K7/14 G
H01L23/40
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2019101609
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 薫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 一善
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159767(JP,A)
【文献】特開2017-103338(JP,A)
【文献】特開2019-134648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0207020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H05K 7/20
H05K 7/14
H01L 23/40
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクに固定されており、半導体素子が実装され
た基板と、
前
記基板の板厚方向に前
記基板と間隔を空けて配置されており、電子部品が実装された制御基板と、
前記制御基板と前記ヒートシンクとの間に設けられたブラケットと、
前記制御基板を挿通して前記ヒートシンクに締結される固定ネジと、を備え
、
前記ブラケットは、
ブラケット本体と、
前記ブラケット本体から前記板厚方向のうちの前記ヒートシンク側に突出
する第1ピンと、
前記ブラケット本体から前記板厚方向のうちの前記制御基板側に突出し、かつ、前記第1ピンと同軸上に位置しないように設けられ
ている第2ピンと、を備え、
前記第1ピンは、
第1主位置決めピンと、
第1副位置決めピンと、を含み、
前記第2ピンは、
第2主位置決めピンと、
第2副位置決めピンと、を含み、
前記ヒートシンク又は前記基板は、前記第1主位置決めピンが挿入される第1位置決め孔を形成する第1形成面と、前記第1副位置決めピンが挿入される第1位置決め孔を形成する第1形成面と、を備え、
前記制御基板は、前記第2主位置決めピンが挿入される第2位置決め孔を形成する第2形成面と、前記第2副位置決めピンが挿入される第2位置決め孔を形成する第2形成面と、を備え、
前記第1副位置決めピンが挿入される前記第1位置決め孔を形成する前記第1形成面と前記第1副位置決めピンとの間のクリアランスは、前記第1主位置決めピンが挿入される前記第1位置決め孔を形成する前記第1形成面と前記第1主位置決めピンとの間のクリアランスよりも大きく、
前記第2副位置決めピンが挿入される前記第2位置決め孔を形成する前記第2形成面と前記第2副位置決めピンとの間のクリアランスは、前記第2主位置決めピンが挿入される前記第2位置決め孔を形成する前記第2形成面と前記第2主位置決めピンとの間のクリアランスよりも大きく、
前記第1主位置決めピンから前記第1副位置決めピンに向かう方向と、前記第2主位置決めピンから前記第2副位置決めピンに向かう方向とは逆向きである半導体装置。
【請求項2】
前記第1主位置決めピンの中心軸と
前記第1主位置決めピンが挿入される前記第1位置決め孔の中心軸とが一致し、前記第2主位置決めピンの中心軸と
前記第2主位置決めピンが挿入される前記第2位置決め孔の中心軸とが一致している状態で、
前記第2副位置決めピン
の中心軸は、
前記第2副位置決めピンが挿入される
前記第2位置決め孔の中心軸から前記固定ネジを締結する際の前記固定ネジの回転方向の反対方向にずれている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクが
前記第1主位置決めピンが挿入される前記第1位置決め孔を形成する前記第1形成面、及び前記第1副位置決めピンが挿入される前記第1位置決め孔を形成する前記第1形成面を備える請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を備える半導体装置では、基板同士を層状に配置するためにブラケットを用いる場合がある。例えば、特許文献1に記載の半導体装置は、ヒートシンクと、半導体素子が実装された回路基板と、ブラケットと、制御基板と、制御基板をブラケットに固定する固定ネジと、を備える。回路基板は、ヒートシンクに載置されている。制御基板は、固定ネジが挿通される貫通孔を備える。ブラケットは、位置決めピンを備え、位置決めピンが制御基板の孔に挿入されることで制御基板が位置決めされている。制御基板をブラケットに固定する際には、位置決めピンによって制御基板の位置決めを行った後に貫通孔を挿通した固定ネジが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定ネジを締結する際には、固定ネジの回転力が制御基板に伝わることで、制御基板が回転しようとする。位置決めピンを複数設けることで、制御基板の回転を抑制することができる。しかしながら、位置決めピンと、位置決めピンが挿入される孔を形成する面との間には位置決めピンを挿入しやすくするためのクリアランスが確保されている。従って、位置決めピンによる制御基板の位置決めによって制御基板の回転は抑制できるものの、クリアランスに起因して制御基板には位置ずれが生じる。制御基板に生じる位置ずれが大きいと、固定ネジによる締結を行えなかったり、固定ネジによる締結が行いにくくなる場合がある。また、制御基板に位置ずれが生じたとしても固定ネジによる締結を行いやすくしようとすると、制御基板の貫通孔を大きくする必要がある。
【0005】
本発明の目的は、制御基板の組み付け性を向上させることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する半導体装置は、ヒートシンクと、前記ヒートシンクに固定されており、半導体素子が実装された半導体基板と、前記半導体基板の板厚方向に前記半導体基板と間隔を空けて配置されており、電子部品が実装された制御基板と、前記制御基板と前記ヒートシンクとの間に設けられたブラケットと、前記制御基板を挿通して前記ヒートシンクに締結される固定ネジと、を備え、前記ヒートシンク又は前記半導体基板は、第1位置決め孔を形成する第1形成面を複数備え、前記制御基板は、第2位置決め孔を形成する第2形成面を複数備え、前記ブラケットは、ブラケット本体と、前記ブラケット本体から前記板厚方向のうちの前記ヒートシンク側に突出し、前記第1位置決め孔に挿入される第1ピンと、前記ブラケット本体から前記板厚方向のうちの前記制御基板側に突出し、かつ、前記第1ピンと同軸上に位置しないように設けられており、前記第2位置決め孔に挿入される第2ピンと、を備え、前記第1ピンは、第1主位置決めピンと、前記第1主位置決めピンよりも前記第1形成面との間のクリアランスが大きい第1副位置決めピンと、を含み、前記第2ピンは、第2主位置決めピンと、前記第2主位置決めピンよりも前記第2形成面との間のクリアランスが大きい第2副位置決めピンと、を含み、前記第1主位置決めピンから前記第1副位置決めピンに向かう方向と、前記第2主位置決めピンから前記第2副位置決めピンに向かう方向とは逆向きである。
【0007】
制御基板を組み付ける際には、ブラケットの第1ピンを第1位置決め孔に挿入し、ブラケットの第2ピンを第2位置決め孔に挿入した状態で固定ネジをヒートシンクに締結する。第1主位置決めピンによってヒートシンクに対するブラケットの位置決めが行われ、第1副位置決めピンによりブラケットの回転が抑制されている。第2主位置決めピンによってブラケットに対する制御基板の位置決めが行われ、第2副位置決めピンにより制御基板の回転が抑制されている。固定ネジによる締結を行う際には、制御基板及びブラケットは固定ネジからの回転力によって回転しようとする。ブラケットの回転による位置ずれは、第1副位置決めピンと第1形成面との間のクリアランスの大きさに依存しており、クリアランスが大きいほどブラケットの位置ずれも大きくなる。制御基板の回転による位置ずれは、第2副位置決めピンと第2形成面との間のクリアランスの大きさに依存しており、クリアランスが大きいほど制御基板の位置ずれも大きくなる。
【0008】
仮に、第1主位置決めピンと第2主位置決めピンとを同軸上に位置するように設けて、第1副位置決めピンと第2副位置決めピンとを同軸上に位置するように設けたとする。この場合、第1主位置決めピン及び第2主位置決めピンが回転軸となってブラケット及びヒートシンクは位置ずれする。第1主位置決めピン及び第2主位置決めピンに近い位置では、ブラケット及びヒートシンクの位置ずれは小さい一方で、第1副位置決めピン及び第2副位置決めピンに近い位置ではブラケット及びヒートシンクの位置ずれが大きくなりやすい。即ち、ブラケットの位置ずれが大きくなりやすい位置と、ヒートシンクの位置ずれが大きくなりやすい位置とが同一方向に集中し、制御基板とヒートシンクとの相対位置のずれが大きくなりやすい。
【0009】
これに対して、本構成では、第1ピンと第2ピンとが同軸上に位置しないようにし、かつ、第1主位置決めピンから第1副位置決めピンに向かう方向と、第2主位置決めピンから第2副位置決めピンに向かう方向とを逆向きにしている。これにより、ヒートシンクに対するブラケットの位置ずれが大きくなりやすい位置と、ブラケットに対する制御基板の位置ずれが大きくなりやすい位置とを分散させることができる。従って、制御基板とヒートシンクとの相対位置のずれを小さくすることができ、制御基板の組み付け性を向上させることができる。
【0010】
上記半導体装置について、前記第1主位置決めピンの中心軸と前記第1位置決め孔の中心軸とが一致し、前記第2主位置決めピンの中心軸と前記第2位置決め孔の中心軸とが一致している状態で、前記第1副位置決めピン及び前記第2副位置決めピンの少なくとも一方の副位置決めピンの中心軸は、当該副位置決めピンが挿入される位置決め孔の中心軸から前記固定ネジを締結する際の前記固定ネジの回転方向の反対方向にずれていてもよい。
【0011】
固定ネジを締結する際には、固定ネジからの回転力によって制御基板及びブラケットが固定ネジの回転方向と同一方向に回転しようとする。この回転方向の反対方向に第1副位置決めピンの中心軸をずらすと、ブラケットが回転した際に第1副位置決めピンが第1形成面に当たりやすい。同様に、固定ネジの回転方向の反対方向に第2副位置決めピンの中心軸をずらすと、制御基板が回転した際に第2副位置決めピンが第2形成面に当たりやすい。従って、制御基板とヒートシンクとの相対位置のずれを小さくすることができ、制御基板の組み付け性を更に向上させることができる。
【0012】
上記半導体装置について、前記ヒートシンクが前記第1形成面を備えていてもよい。
第1形成面を半導体基板に設けた場合、ブラケットは半導体基板に対して位置決めされることになる。半導体基板がヒートシンクに対して位置ずれした状態で固定されている場合、半導体基板の位置ずれによって、制御基板とヒートシンクの相対位置にずれが生じる原因になる。これに対して、ヒートシンクに第1形成面を設けることで、半導体基板の位置ずれを原因として制御基板とヒートシンクの相対位置のずれが大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御基板の組み付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】制御基板を省略した状態での半導体装置の断面図。
【
図3】ヒートシンクに載置された半導体基板の平面図。
【
図8】(a)及び(b)は各位置決め孔に挿入された第1ピン及び第2ピンを示す図。
【
図9】半導体基板及びコンデンサ基板をヒートシンクに組み付けた状態の図。
【
図10】半導体基板にブラケットを載置した状態の図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、半導体装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、フォークリフト等の産業車両に搭載されるインバータである。インバータは、バッテリから入力された直流電力を交流電力に変換して、三相モータに出力する。これにより、三相モータが駆動する。三相モータの駆動により産業車両は走行する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、半導体装置10は、ヒートシンク11と、半導体基板20と、コンデンサ基板40と、制御基板60と、を備える。ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ヒートシンク11は、板状の載置部12と、載置部12の板厚方向の一面から突出するフィン13と、載置部12の板厚方向に延びるネジ孔H1を形成している締結部14と、載置部12の板厚方向に延びる第1位置決め孔P1,P2を形成している第1形成面15,16と、を備える。締結部14は、ネジ孔H1を囲む雌ネジ溝が設けられた部位である。第1形成面15,16は、第1位置決め孔P1,P2を囲む環状の面である。第1位置決め孔P1,P2は、円形状である。載置部12は、2つの第1形成面15,16を備え、第1形成面15,16のそれぞれによって2つの第1位置決め孔P1,P2が形成されている。第1位置決め孔P1,P2同士は、互いに間隔を空けて配置されている。2つの第1位置決め孔P1,P2の直径は同一である。なお、ここでいう同一は、公差の範囲内での寸法のずれを許容するものである。
【0018】
半導体基板20は、載置部12の板厚方向の両面のうちフィン13が設けられた面の反対面に固定されている。本実施形態の半導体基板20は、絶縁金属基板であり、金属製のベースに絶縁層を設けたものである。半導体基板20は、パターン21と、第1貫通孔H2を形成する第1貫通孔形成面22と、第2貫通孔H3を形成する第2貫通孔形成面23と、を備える。第1貫通孔形成面22は、第1貫通孔H2を囲む環状の面である。第2貫通孔形成面23は、第2貫通孔H3を囲む環状の面である。第1貫通孔H2及び第2貫通孔H3はネジ孔H1と向かい合って配置されている。半導体基板20は、第1位置決め孔P1,P2を塞がないように配置されている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、半導体装置10は、複数の半導体素子24と、正極入力端子25と、負極入力端子26と、3つの出力端子30と、2つの内部端子35と、を備える。半導体素子24、正極入力端子25、負極入力端子26、出力端子30及び内部端子35は、半導体基板20に実装されている。本実施形態の半導体素子24は、MOSFETである。なお、半導体素子24としては、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のスイッチング素子を用いることもできる。複数の半導体素子24は、6つの半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6に分かれて配置されている。各半導体素子群G1~G6において、各半導体素子24は、一列に並んでいる。以下、各半導体素子群G1~G6を構成する半導体素子24の並ぶ方向を第1方向とする。
【0020】
各半導体素子群G1~G6は、間隔を空けて並んで配置されている。詳細にいえば、各半導体素子群G1~G6は、半導体基板20の板厚方向の面に沿う方向のうち、第1方向に交差する方向に並んでいる。以下、各半導体素子群G1~G6の並ぶ方向を第2方向とする。各半導体素子群G1~G6は、インバータにおける三相の上下アームを構成している。なお、第1位置決め孔P1,P2は、第2方向に間隔を空けて配置されている。第2方向において、第1位置決め孔P1は第1位置決め孔P2よりも正極入力端子25側に位置している。
【0021】
正極入力端子25と、負極入力端子26と、3つの出力端子30とは、第2方向に間隔を空けて並んでいる。正極入力端子25と、負極入力端子26とは、各半導体素子群G1~G6を挟んで配置されている。即ち、正極入力端子25及び負極入力端子26は、第2方向において、半導体素子群G1~G6よりも半導体基板20の外縁に寄って配置されている。3つの出力端子30は、正極入力端子25と負極入力端子26との間に配置されている。正極入力端子25と負極入力端子26とは、同一形状である。正極入力端子25及び負極入力端子26は、それぞれ、基部27と、基部27から突出する柱状部28と、柱状部28の周面から突出する台座部29と、を備える。出力端子30は、基部31と、基部31から突出する柱状部32と、を備える。正極入力端子25、負極入力端子26及び出力端子30は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。正極入力端子25にはバッテリの正極が接続される。負極入力端子26には、バッテリの負極が接続される。出力端子30には、三相モータが接続される。2つの内部端子35は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。各内部端子35は、出力端子30同士の間に配置されている。内部端子35は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
【0022】
制御基板60は、半導体基板20の板厚方向に対して、半導体基板20と間隔を空けて配置されている。コンデンサ基板40は、半導体基板20と、制御基板60との間に配置されている。半導体基板20の板厚方向と、制御基板60の板厚方向と、コンデンサ基板40の板厚方向とは一致している。ヒートシンク11、半導体基板20、コンデンサ基板40及び制御基板60は、層状に配置されているといえる。
【0023】
コンデンサ基板40は、正極入力端子25の基部27、負極入力端子26の基部27、出力端子30の基部31及び内部端子35に重ねて配置されている。コンデンサ基板40は、3つの出力孔41を形成している出力孔形成面42と、第3貫通孔H4を形成している第3貫通孔形成面43と、を備える。出力孔41は、コンデンサ基板40を板厚方向に貫通した孔であり、出力端子30の柱状部32が挿通される。第3貫通孔H4は、コンデンサ基板40を板厚方向に貫通した孔である。第3貫通孔形成面43は、第3貫通孔H4を囲む環状の面である。第3貫通孔H4同士の間隔は、第1貫通孔H2同士の間隔と同一である。半導体装置10は、コンデンサ基板40に実装された複数のコンデンサ50を備える。
【0024】
図4に示すように、制御基板60は、出力孔61を形成する出力孔形成面62と、第4貫通孔H5を形成している第4貫通孔形成面63と、第5貫通孔H6を形成している第5貫通孔形成面64と、第2位置決め孔P3,P4を形成している第2形成面65,66と、を備える。出力孔61は、制御基板60を板厚方向に貫通した孔であり、出力端子30の柱状部32が挿通される。第4貫通孔H5同士の間隔は、第2貫通孔H3同士の間隔と同一である。第4貫通孔形成面63は、第4貫通孔H5を囲む環状の面である。第5貫通孔形成面64は、第5貫通孔H6を囲む環状の面である。
【0025】
第2形成面65,66は、第2位置決め孔P3,P4を囲む環状の面である。第2位置決め孔P3,P4は、円形状である。制御基板60は、2つの第2形成面65,66を備え、第2形成面65,66のそれぞれによって2つの第2位置決め孔P3,P4が形成されている。第2位置決め孔P3,P4は、互いに間隔を空けて配置されている。2つの第2位置決め孔P3,P4の直径は同一である。なお、ここでいう同一は、公差の範囲内での寸法のずれを許容するものである。
【0026】
図5に示すように、制御基板60は、2つの第2位置決め孔P3,P4が、第2方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。第2方向において、第2位置決め孔P3は第2位置決め孔P4よりも正極入力端子25側に位置している。
【0027】
半導体装置10は、制御基板60に実装された複数の電子部品67を備える。電子部品67は、各半導体素子群G1~G6を制御する制御回路を構成している。制御回路により各半導体素子群G1~G6が制御されることで、電力変換が行われる。
【0028】
図1に示すように、半導体装置10は、制御基板60とヒートシンク11との間に設けられたブラケット70を備える。ブラケット70は、ヒートシンク11との間隔を維持した状態で制御基板60をヒートシンク11に固定するための部材である。
【0029】
図6及び
図7に示すように、ブラケット70は、板状のブラケット本体71と、ブラケット本体71の縁からブラケット本体71の板厚方向に直交する方向に突出する板状の介在部72と、ブラケット本体71からブラケット本体71の板厚方向に突出する2つの第1ピン73,74及び2つの第2ピン77,78と、を備える。第1ピン73,74及び第2ピン77,78は、ブラケット本体71の板厚方向のうち互いに異なる方向に突出している。第1ピン73,74と第2ピン77,78とは、同軸上に位置しないように設けられている。即ち、第1ピン73,74と第2ピン77,78とは、互いの中心軸が同一直線上に位置しないように配置されている。第1ピン73,74は、ブラケット本体71の板厚方向に直交する方向であり、かつ、介在部72が突出する方向に交差する方向に並んで配置されている。本実施形態において、第1ピン73,74同士の並ぶ方向と、第2ピン77,78同士の並ぶ方向とは同一方向である。
【0030】
第1ピン73は、基部75Aと、基部75Aから突出する挿入部76Aと、を備える。基部75Aは、挿入部76Aよりもブラケット本体71寄りの部分である。第1ピン74は、基部75Bと、基部75Bから突出する挿入部76Bと、を備える。基部75Bは、挿入部76Bよりもブラケット本体71寄りの部分である。基部75A,75Bは、第1位置決め孔P1,P2に挿入不能な大きさである。基部75Aのブラケット本体71からの突出方向の寸法と、基部75Bのブラケット本体71からの突出方向の寸法とは同一である。挿入部76A,76Bは、軸線方向に直交する方向の断面が円形状になる柱状である。挿入部76A,76Bの直径は、基部75A,75Bから離れるにつれて徐々に小さくなる。第1ピン73の挿入部76Aの直径は、第1ピン74の挿入部76Bの直径よりも小さい。詳細にいえば、基部75Aから第1ピン73の軸線方向に第1距離離間した位置の挿入部76Aの直径と、基部75Bから第1ピン74の軸線方向に第2距離離間した位置の挿入部76Bの直径と、を比較すると、第1距離と第2距離とが同一であれば、挿入部76Aの直径は挿入部76Bの直径よりも小さい。即ち、第1ピン73,74において、軸線方向の同一位置同士で比較を行うと、挿入部76Aの直径は挿入部76Bの直径よりも小さい。挿入部76A,76Bのうち最も直径が大きい部分の直径は、第1位置決め孔P1,P2の直径よりも小さい。2つの第1ピン73,74は、第1副位置決めピン73と、第1主位置決めピン74と、を含む。挿入部76Bの直径が大きい第1ピン74が第1主位置決めピン74であり、挿入部76Aの直径が小さい第1ピン73が第1副位置決めピン73である。
【0031】
第2ピン77は、基部79Aと、基部79Aから突出する挿入部80Aと、を備える。基部79Aは、挿入部80Aよりもブラケット本体71寄りの部分である。第2ピン78は、基部79Bと、基部79Bから突出する挿入部80Bと、を備える。基部79Bは、挿入部80Bよりもブラケット本体71寄りの部分である。基部79A,79Bは、第2位置決め孔P3,P4に挿入不能な大きさである。基部79Aのブラケット本体71からの突出方向の寸法と、基部79Bのブラケット本体71からの突出方向の寸法とは同一である。挿入部80A,80Bは、軸線方向に直交する方向の断面が円形状になる柱状である。挿入部80A,80Bの直径は、基部79A,79Bから離れるにつれて徐々に小さくなる。第2ピン77の挿入部80Aの直径は、第2ピン78の挿入部80Bの直径よりも大きい。詳細にいえば、基部79Aから第2ピン77の軸線方向に第3距離離間した位置の挿入部80Aの直径と、基部79Bから第2ピン78の軸線方向に第4距離離間した位置の挿入部80Bの直径と、を比較すると、第3距離と第4距離とが同一であれば、挿入部80Aの直径は挿入部80Bの直径よりも大きい。即ち、第2ピン77,78において、軸線方向の同一位置同士で比較を行うと、挿入部80Aの直径は挿入部80Bの直径よりも大きい。挿入部80A,80Bのうち最も直径が大きい部分の直径は、第2位置決め孔P3,P4の直径よりも小さい。2つの第2ピン77,78は、第2主位置決めピン77と、第2副位置決めピン78と、を含む。挿入部80Aの直径が大きい第2ピン77が第2主位置決めピン77であり、挿入部80Bの直径が小さい第2ピン78が第2副位置決めピン78である。
【0032】
2つの第1ピン73,74及び2つの第2ピン77,78は、ブラケット本体71の板厚方向の面のうち第2ピン77,78が設けられた面を平面視した場合に、時計回りに第2副位置決めピン78→第1主位置決めピン74→第1副位置決めピン73→第2主位置決めピン77の順に並んでいる。2つの第1ピン73,74と2つの第2ピン77,78は、時計回りに、主位置決めピンと副位置決めピンとが交互に並ぶように配置されているといえる。
【0033】
第1ピン73,74及び第2ピン77,78はヒートシンク11と制御基板60との相対位置を定めるためのピンである。詳細にいえば、第1ピン73,74及び第2ピン77,78による位置決めによって、ヒートシンク11のネジ孔H1と、制御基板60の第4貫通孔H5とが制御基板60の板厚方向に重なるように第1ピン73,74及び第2ピン77,78は設けられている。
【0034】
ブラケット70は、第1ボス81と、第2ボス82と、を備える。第1ボス81は、ブラケット本体71からブラケット本体71の板厚方向の両側に突出したボスである。第1ボス81は、3つ設けられている。第1ボス81同士の間隔は、第4貫通孔H5同士の間隔と同一である。第2ボス82は、介在部72から介在部72の板厚方向の一方に突出したボスである。
【0035】
図1に示すように、ブラケット70は、ヒートシンク11と、制御基板60との間に配置されている。ブラケット70のブラケット本体71は、半導体基板20と制御基板60との間に配置されている。ブラケット本体71の板厚方向と、半導体基板20の板厚方向とは一致している。ブラケット本体71の一部は、半導体基板20と制御基板60との間から突出して、載置部12の板厚方向の面に向かい合っている。ブラケット70の介在部72は、コンデンサ基板40と制御基板60との間に介在している。第1ピン73,74同士は、第2方向に並ぶように配置されている。第2ピン77,78同士は、第2方向に並ぶように配置されている。第1ピン73,74はブラケット本体71からヒートシンク11に向けて突出するように配置されている。第2ピン77,78はブラケット本体71から制御基板60に向けて突出するように配置されている。第1ボス81の軸線方向の両端面のうちの一方は半導体基板20に面接触し、他方は制御基板60に面接触している。第2ボス82の軸線方向の端面は、制御基板60に面接触している。各ボス81,82によって制御基板60が支持され、これにより、制御基板60とヒートシンク11との間隔が維持されている。
【0036】
図5に示すように、2つの第1ピン73,74のうち第1主位置決めピン74の挿入部76Bは、2つの第1位置決め孔P1,P2のうち負極入力端子26側の第1位置決め孔P2に挿入されている。2つの第1ピン73,74のうち第1副位置決めピン73の挿入部76Aは、2つの第1位置決め孔P1,P2のうち正極入力端子25側の第1位置決め孔P1に挿入されている。第1主位置決めピン74は、第2方向のうちの負極入力端子26側に位置しており、第1副位置決めピン73は、第2方向のうちの正極入力端子25側に位置している。
【0037】
2つの第2ピン77,78のうち第2主位置決めピン77の挿入部80Aは、2つの第2位置決め孔P3,P4のうち正極入力端子25側の第2位置決め孔P3に挿入されている。2つの第2ピン77,78のうち第2副位置決めピン78の挿入部80Bは、2つの第2位置決め孔P3,P4のうち負極入力端子26側の第2位置決め孔P4に挿入されている。第2主位置決めピン77は、第2方向のうち正極入力端子25側に位置しており、第2副位置決めピン78は、第2方向のうちの負極入力端子26側に位置している。
【0038】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第1副位置決めピン73と第1形成面15との間のクリアランスC1は、第1主位置決めピン74と第1形成面16との間のクリアランスC2よりも大きい。第2副位置決めピン78と第2形成面66との間のクリアランスC1は、第2主位置決めピン77と第2形成面65との間のクリアランスC2よりも大きい。第1主位置決めピン74及び第2主位置決めピン77は、制御基板60の位置決めを目的として設けられたピンであるため、クリアランスC2を小さくして位置決め精度を向上させている。第1副位置決めピン73及び第2副位置決めピン78は、制御基板60の回転を抑止するためのピンであるため、クリアランスC1を大きくすることで組み付け性を向上させている。
【0039】
図5に示すように、第2方向における正極入力端子25から負極入力端子26に向かう方向において、第1ピン73,74は第1副位置決めピン73→第1主位置決めピン74の順に並んでいるのに対し、第2ピン77,78は第2主位置決めピン77→第2副位置決めピン78の順に並んでいる。第1主位置決めピン74から第1副位置決めピン73に向かう方向と、第2主位置決めピン77から第2副位置決めピン78に向かう方向とは逆向きである。なお、逆向きとは、ブラケット本体71の板厚方向に直交する方向のうち第1ピン73,74同士が並ぶ方向に交差する方向から見て、第1主位置決めピン74から第1副位置決めピン73に向かう方向と、第2主位置決めピン77から第2副位置決めピン78に向かう方向とが逆向きとなっていればよい。
【0040】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第1主位置決めピン74の中心軸と第1位置決め孔P2の中心軸とが一致し、第2主位置決めピン77の中心軸と第2位置決め孔P3の中心軸とが一致している状態で、第2副位置決めピン78の中心軸A1は、第2位置決め孔P4の中心軸A2からずれている。第2副位置決めピン78の中心軸A1は、第2位置決め孔P4の中心軸A2から、半導体装置10を制御基板60側から平面視した場合の反時計回り方向にずれている。なお、説明の便宜上、
図8(b)では、第1主位置決めピン74の中心軸と第1位置決め孔P2の中心軸とが一致し、第2主位置決めピン77の中心軸と第2位置決め孔P3の中心軸とが一致している状態で、第1副位置決めピン73の中心軸を第1位置決め孔P1の中心軸からずらしている。実際には、第1主位置決めピン74の中心軸と第1位置決め孔P2の中心軸とが一致し、第2主位置決めピン77の中心軸と第2位置決め孔P3の中心軸とが一致している状態で、第1副位置決めピン73の中心軸は第1位置決め孔P1の中心軸と一致している。
【0041】
図1に示すように、半導体装置10は、半導体基板20、コンデンサ基板40及び制御基板60をヒートシンク11に固定するための複数のネジS1,S2,S3と、インシュレータIと、を備える。複数のネジS1,S2,S3は、第1ネジS1と、第2ネジS2と、第3ネジS3とを含む。
【0042】
複数の第1ネジS1は、インシュレータI、第3貫通孔H4及び第1貫通孔H2を挿通して締結部14に締結されている。これにより、第1ネジS1は、半導体基板20とコンデンサ基板40とを共締めしている。
【0043】
複数の第2ネジS2は、第4貫通孔H5、第1ボス81及び第2貫通孔H3を挿通して、締結部14に締結されている。これにより、第2ネジS2は、半導体基板20と制御基板60とブラケット70とを共締めしている。第2ネジS2は、制御基板60を挿通してヒートシンク11に締結される固定ネジである。
【0044】
複数の第3ネジS3のうちの一本の第3ネジS3は、第5貫通孔H6を挿通して、第2ボス82に締結されている。複数の第3ネジS3のうちの1本は、第5貫通孔H6を挿通して、正極入力端子25の台座部29に締結されている。複数の第3ネジS3のうちの1本は、第5貫通孔H6を挿通して、負極入力端子26の台座部29に締結されている。
【0045】
次に、半導体基板20、コンデンサ基板40、制御基板60及びブラケット70をヒートシンク11に組み付ける方法について半導体装置10の作用とともに説明する。なお、半導体装置10を構成する部材のうち、上記した部材以外の組み付けについては省略する。
【0046】
まず、
図9に示すように、ヒートシンク11に半導体基板20が載置される。次に、コンデンサ基板40が半導体基板20と向かい合うように配置される。次に、第1ネジS1が締結されることでコンデンサ基板40及び半導体基板20がヒートシンク11に固定される。
【0047】
次に、
図10に示すように、半導体基板20にブラケット70が載置される。ブラケット70の第1主位置決めピン74は第1位置決め孔P2に挿入され、ブラケット70の第1副位置決めピン73は第1位置決め孔P1に挿入される。第1主位置決めピン74によってヒートシンク11に対するブラケット70の位置決めが行われる。第1副位置決めピン73によって、ブラケット70の回転が抑制されている。
【0048】
次に、
図5に示すように、ブラケット70に制御基板60が載置される。ブラケット70の第2主位置決めピン77は第2位置決め孔P3に挿入され、ブラケット70の第2副位置決めピン78は第2位置決め孔P4に挿入される。第2主位置決めピン77によってブラケット70に対する制御基板60の位置決めが行われる。第2副位置決めピン78によって、制御基板60の回転が抑制されている。ブラケット70によって、制御基板60とヒートシンク11との相対位置が定まることになる。詳細にいえば、制御基板60を挿通した第2ネジS2をヒートシンク11の締結部14に締結できるように制御基板60は位置決めされている。次に、第2ネジS2及び第3ネジS3が締結されることで、制御基板60及びブラケット70がヒートシンク11に組み付けられる。
【0049】
第2ネジS2の締結を行う際には、制御基板60及びブラケット70は第2ネジS2からの回転力によって回転しようとする。なお、第2ネジS2からの回転力によって制御基板60及びブラケット70が回転する方向は、半導体装置10を制御基板60側から平面視した場合の時計回り方向である。前述したように、第2副位置決めピン78の中心軸A1は第2位置決め孔P4の中心軸A2よりも半導体装置10を平面視した場合の反時計回り方向にずれている。第2副位置決めピン78の中心軸A1は第2位置決め孔P4の中心軸A2よりも、第2ネジS2を締結する際の第2ネジS2の回転方向の反対方向にずれているといえる。ブラケット70の回転による位置ずれの大きさは、第1副位置決めピン73と第1形成面15との間のクリアランスC1の大きさに依存しており、クリアランスC1が大きいほどブラケット70の位置ずれは大きくなりやすい。制御基板60の回転による位置ずれの大きさは、第2副位置決めピン78と第2形成面66との間のクリアランスC1の大きさに依存しており、クリアランスC1が大きいほど制御基板60の位置ずれは大きくなりやすい。
【0050】
仮に、第1主位置決めピン74と第2主位置決めピン77とを同軸上に位置するように設けて、第1副位置決めピン73と第2副位置決めピン78とを同軸上に位置するように設けたとする。この場合、第1主位置決めピン74及び第2主位置決めピン77が回転軸となってブラケット70及びヒートシンク11は回転する。第1主位置決めピン74及び第2主位置決めピン77に近い位置では、ブラケット70及び制御基板60の位置ずれが小さい一方で、第1副位置決めピン73及び第2副位置決めピン78に近い位置ではブラケット70及び制御基板60の位置ずれが大きい。即ち、ブラケット70の位置ずれが大きい位置と、制御基板60の位置ずれが大きい位置とが同一方向に集中する。制御基板60の位置は、ブラケット70の位置によって定まるため、ブラケット70に位置ずれが生じると、制御基板60とヒートシンク11との相対位置にずれが生じる。即ち、ブラケット70の位置ずれが大きい位置と、ヒートシンク11の位置ずれが大きい位置とを同一方向に集中させると、制御基板60とヒートシンク11との相対位置に大きなずれが生じやすい。
【0051】
本実施形態では、第1ピン73,74と第2ピン77,78とが同軸上に位置しないようにし、かつ、第1主位置決めピン74から第1副位置決めピン73に向かう方向と、第2主位置決めピン77から第2副位置決めピン78に向かう方向とを逆向きにしている。ヒートシンク11に対するブラケット70の位置ずれが大きい位置と、ブラケット70に対する制御基板60の位置ずれが大きい位置とを分散させることができる。これにより、制御基板60とヒートシンク11との相対位置のずれを小さくすることができる。以下、詳細に説明を行う。
【0052】
第2方向のうち正極入力端子25側から負極入力端子26側に向けて順番に第2ネジS2を締結していく場合を想定する。
図5にY1で示すように、最も正極入力端子25側に位置する第4貫通孔H5に第2ネジS2を締結しようとすると、第2ネジS2から制御基板60に回転力が加わる。制御基板60は、第2主位置決めピン77を回転軸として、第2ネジS2の回転方向と同一方向に回転しようとする。制御基板60は、第2副位置決めピン78と第2形成面66とのクリアランスC1の範囲内で回転可能であり、制御基板60のブラケット70に対する位置ずれ量は大きくなりやすい。本実施形態では、第2副位置決めピン78の中心軸A1を制御基板60の回転方向とは反対方向にずらしているため、第2副位置決めピン78の中心軸A1が第2位置決め孔P4の中心軸A2に一致している場合に比べて、第2副位置決めピン78が第2形成面66に当たりやすい。従って、制御基板60の回転方向への位置ずれを抑制できる。ブラケット70は、第2形成面66から第2副位置決めピン78に加わる力によって回転しようとする。第1主位置決めピン74及び第1副位置決めピン73のうち、第1主位置決めピン74の方が第2副位置決めピン78の近くに配置されている。このため、第2形成面66から第2副位置決めピン78に加わる力によってブラケット70が回転しようとすると、第1主位置決めピン74と第1形成面16との間のクリアランスC2の範囲内でブラケット70は回転する。第1主位置決めピン74と第1形成面16との間のクリアランスC2は、第1副位置決めピン73と第1形成面15との間のクリアランスC1よりも小さいため、ブラケット70の位置ずれは小さくなる。即ち、第2方向のうち正極入力端子25側から負極入力端子26側に向けて順番に第2ネジS2を締結していく場合、制御基板60の位置ずれは大きくなりやすい一方で、ブラケット70の位置ずれは小さくなる。
【0053】
また、第2方向のうち負極入力端子26側から正極入力端子25側に向けて順番に第2ネジS2を締結する場合、ブラケット70の位置ずれは大きくなりやすい一方で、制御基板60の位置ずれは小さくなる。従って、ブラケット70の位置ずれ量と、制御基板60の位置ずれ量とが積み重なり、制御基板60の第4貫通孔H5とヒートシンク11のネジ孔H1とが制御基板60の板厚方向に重なり合わなくなることを抑制することができる。
【0054】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ヒートシンク11に対するブラケット70の位置ずれが大きい位置と、ブラケット70に対する制御基板60の位置ずれが大きい位置とが同一方向に集中しないように第1ピン73,74及び第2ピン77,78を配置している。ヒートシンク11と制御基板60との相対位置のずれが大きくなることを抑制でき、制御基板60の組み付け性を向上させることができる。
【0055】
(2)ヒートシンク11と制御基板60との相対位置のずれが大きくなることを抑制することで、制御基板60の組み付け性を向上させている。ヒートシンク11と制御基板60との相対位置のずれが大きい場合であっても、制御基板60の第4貫通孔H5の直径を大きくすることで、制御基板60を組み付けることができる。しかしながら、この場合、制御基板60の実装面積が少なくなったり、制御基板60ががたつくおそれがある。本実施形態のように、ヒートシンク11と制御基板60との相対位置のずれを小さくすることで、制御基板60の第4貫通孔H5の直径が大きくなることが抑制され、制御基板60の実装面積が少なくなったり、制御基板60ががたつくことを抑制できる。
【0056】
(3)第2副位置決めピン78の中心軸A1を第2位置決め孔P4の中心軸A2からずらすことで、制御基板60が回転した際の制御基板60の位置ずれを抑制している。従って、制御基板60の組み付け性を更に向上させることができる。
【0057】
(4)ヒートシンク11が第1形成面15,16を備える。第1形成面15,16を半導体基板20に設けた場合、ブラケット70は半導体基板20に対して位置決めされることになる。半導体基板20がヒートシンク11に対して位置ずれした状態で固定されている場合、半導体基板20の位置ずれによって、制御基板60とヒートシンク11の相対位置にずれが生じる原因になる。これに対して、ヒートシンク11に第1形成面15,16を設けることで、半導体基板20の位置ずれを原因として制御基板60とヒートシンク11の相対位置のずれが大きくなることを抑制できる。
【0058】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○第1主位置決めピン74の中心軸と第1位置決め孔P2の中心軸とが一致し、第2主位置決めピン77の中心軸と第2位置決め孔P3の中心軸とが一致している状態で、第1副位置決めピン73の中心軸が第1位置決め孔P1の中心軸からずれていてもよい。この場合、第1副位置決めピン73の中心軸を第1位置決め孔P1の中心軸よりも、第2ネジS2を締結する際の第2ネジS2の回転方向の反対方向にずらす。第2方向のうち負極入力端子26側から正極入力端子25側に向けて順番に第2ネジS2を締結する場合に、ブラケット70の位置ずれを抑制することができる。この場合、第2副位置決めピン78の中心軸A1は、第2位置決め孔P4の中心軸A2からずらされていてもよいし、ずらされていなくてもよい。
【0059】
○第1主位置決めピン74の中心軸と第1位置決め孔P2の中心軸とが一致し、第2主位置決めピン77の中心軸と第2位置決め孔P3の中心軸とが一致している状態で、第2副位置決めピン78の中心軸A1が第2位置決め孔P3の中心軸A2と一致していてもよい。
【0060】
○第1副位置決めピン73の挿入部76Aの直径と、第1主位置決めピン74の挿入部76Bの直径とを同一にしてもよい。この場合、第1副位置決めピン73が挿入される第1位置決め孔P1の直径を第1主位置決めピン74が挿入される第1位置決め孔P2の直径よりも大きくすればよい。同様に、第2副位置決めピン78の挿入部80Bの直径と、第2主位置決めピン77の挿入部80Aの直径とを同一にしてもよい。この場合、第2副位置決めピン78が挿入される第2位置決め孔P4の直径を第2主位置決めピン77が挿入される第2位置決め孔P3の直径よりも大きくすればよい。
【0061】
○半導体基板20が第1位置決め孔P1,P2を形成する第1形成面15,16を備えていてもよい。この場合、ブラケット70は半導体基板20に対して位置決めされる。ブラケット70を位置決めする時点では、半導体基板20はヒートシンク11に固定されている。従って、ブラケット70を半導体基板20に対して位置決めすることで、ヒートシンク11に対するブラケット70の位置決めが行われる。
【0062】
○第1ピン73,74及び第2ピン77,78は、それぞれ、2つ以上設けられていてもよい。この場合、第1主位置決めピンから第1副位置決めピンに向かう方向とは、互いに最も離間した第1主位置決めピンから第1副位置決めピンに向かう方向である。第2主位置決めピンから第2副位置決めピンに向かう方向とは、互いに最も離間した第2主位置決めピンから第2副位置決めピンに向かう方向である。
【0063】
○ヒートシンク11としては、フィン13を有さないものであってもよい。なお、ヒートシンク11としては、気体状の冷媒によって冷却されるものでもよいし、液状の冷媒によって冷却されるものでもよい。
【0064】
○半導体装置10は、インバータ以外であってもよい。例えば、半導体装置10は、コンバータなど、インバータ以外の電力変換装置であってもよい。また、半導体素子24としてダイオード等のスイッチング素子以外のものを用いた半導体装置であってもよい。
【0065】
○半導体装置10は、産業車両に搭載されるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0066】
A1…中心軸、A2…中心軸、C1,C2…クリアランス、H1…ネジ孔、P1,P2…第1位置決め孔、P3,P4…第2位置決め孔、S2…固定ネジとしての第2ネジ、10…半導体装置、11…ヒートシンク、15,16…第1形成面、20…半導体基板、24…半導体素子、60…制御基板、65,66…第2形成面、67…電子部品、70…ブラケット、71…ブラケット本体、73…第1ピン及び第1副位置決めピン、74…第1ピン及び第1主位置決めピン、77…第2ピン及び第2主位置決めピン、78…第2ピン及び第2副位置決めピン。