(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】帯状ゴム部材の厚さ測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 17/02 20060101AFI20230322BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01B17/02 Z
B29D30/06
(21)【出願番号】P 2019104972
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 哲也
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-086635(JP,A)
【文献】特開平08-021719(JP,A)
【文献】特表平07-503675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00-17/08
G01N 29/00-29/52
B29D 30/00-30/72
B29C 44/00-44/60
48/00-48/96
67/20-67/24
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の未加硫ゴムからなるシートを厚さ方向に積層して得られる帯状ゴム部材の厚さを測定するための方法であって、
前記帯状ゴム部材の二つの平面のうち、少なくとも一方の平面を、液体槽に入れた液体に浸ける工程と、
前記液体中で、前記液体に浸かった、前記帯状ゴム部材の一方の平面に向けて、超音波を発信し、その反射波を受信する工程と、
前記超音波を発信してからその反射波を受信するまでの伝搬時間と、前記超音波の伝搬速度とに基づいて、前記帯状ゴム部材を構成する各シートの厚さを算出する工程と
を含む、帯状ゴム部材の厚さ測定方法。
【請求項2】
前記帯状ゴム部材が搬送状態にある、請求項1に記載の帯状ゴム部材の厚さ測定方法。
【請求項3】
前記帯状ゴム部材を構成する複数のシートがそれぞれ異なる比重を有する、請求項1又は2に記載の帯状ゴム部材の厚さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状ゴム部材の厚さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タイヤのトレッドは、トレッド面を含むキャップ層と、このキャップ層の径方向内側に位置し、ベルトを覆うベース層とを有する。キャップ層は路面と接触するので、このキャップ層にはグリップ力が考慮されたゴム組成物が用いられる。ベース層には、転がり抵抗への影響が考慮され、発熱が抑えられたゴム組成物が用いられる。
【0003】
タイヤの製造では、押し出し機において、ベース層のためのゴム組成物と、キャップ層のためのゴム組成物とを同時に押し出すことで、ベース層のためのシートにキャップ層のためのシートが積層された、帯状ゴム部材が準備される。
【0004】
複数のゴム組成物を同時に押し出しして、帯状ゴム部材を成形する方法は、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
帯状ゴム部材は、積層された複数のシートを含む。帯状ゴム部材の成形では、高品質なタイヤを製造するために、それぞれのシートの厚さが確認される。このシートの厚さ確認では、例えば、帯状ゴム部材を切断して、帯状ゴム部材の断面が準備される。拡大鏡を用いて作業者がこの断面を目視で観察することにより、各シートの厚さが測定される。
【0007】
前述の従来の測定方法において、厚さ確認に用いた帯状ゴム部材は、タイヤの部品には用いられない。切断する位置によっては、端切れが生じることも懸念される。帯状ゴム部材の切断を伴う、厚さ測定方法では、帯状ゴム部材のロスが発生する。帯状ゴム部材のロスは、タイヤの生産性の向上を妨げる。
【0008】
X線を用いた測定装置によれば、帯状ゴム部材を切断せずに、シートの厚さの把握が可能である。しかしX線を用いた測定装置は高価である上に、X線の取扱いには注意が必要である。
【0009】
タイヤの生産性の向上の観点から、安全で、帯状ゴム部材のロスを伴わない、帯状ゴム部材の厚さ測定技術の確立が求められている。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、タイヤの生産性の向上に貢献できる、帯状ゴム部材の厚さ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る帯状ゴム部材の厚さ測定方法は、複数の未加硫ゴムからなるシートを厚さ方向に積層して得られる帯状ゴム部材の厚さを測定するための方法であって、
(1)前記帯状ゴム部材の二つの平面のうち、少なくとも一方の平面を、液体槽に入れた液体に浸ける工程、
(2)前記液体中で、前記液体に浸かった、前記帯状ゴム部材の一方の平面に向けて、超音波を発信し、その反射波を受信する工程、及び
(3)前記超音波を発信してからその反射波を受信するまでの伝搬時間と、前記超音波の伝搬速度とに基づいて、前記帯状ゴム部材を構成する各シートの厚さを算出する工程
を含む。
【0012】
好ましくは、この帯状ゴム部材の厚さ測定方法では、前記帯状ゴム部材は搬送状態にある。
【0013】
好ましくは、この帯状ゴム部材の厚さ測定方法では、前記帯状ゴム部材を構成する複数のシートはそれぞれ異なる比重を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の帯状ゴム部材の厚さ測定方法によれば、安全に、しかも帯状ゴム部材のロスを伴うことなく、帯状ゴム部材を構成する各シートの厚さを測定できる。この帯状ゴム部材の厚さ測定方法は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る帯状ゴム部材の厚さ測定方法で用いられる測定装置が示された概略図である。
【
図2】
図2は、測定装置による厚さの測定を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、他の測定装置が示された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係る帯状ゴム部材2の厚さ測定方法で用いられる測定装置4の一例が概略的に示される。この測定装置4は、帯状ゴム部材2の厚さを測定する装置である。
【0018】
帯状ゴム部材2は、その厚さ方向に積層された、複数のシート6を含む。それぞれのシート6は、未加硫ゴムからなる。詳述しないが、この帯状ゴム部材2は、例えば、押し出し機において複数の未加硫ゴムを同時に押し出しすることで得られる。複数のシート6を準備し、これらシート6を積層することで、帯状ゴム部材2が形成されてもよい。
【0019】
未加硫ゴムは、未加硫状態のゴム組成物である。未加硫ゴムは、バンバリーミキサー等の混錬機を用いて基材ゴム及び薬品を混合して得られる。この基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、このゴムが適用される構成要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0020】
この帯状ゴム部材2では、一のシート6を構成する未加硫ゴムの組成と、この一のシート6に積層される他のシート6を構成する未加硫ゴムの組成とは相違する。帯状ゴム部材2を構成する複数のシート6はそれぞれ、互いに異なる組成を有する。
【0021】
例えば、2つの未加硫ゴムの間で両者の組成が異なれば、未加硫ゴムを加硫して得られる加硫ゴムの比重も異なるのが一般的である。ここで、比重は、未加硫ゴムを加硫して得られる加硫ゴムからなるゴム片を用いて、JIS K6268(加硫ゴム-密度測定)に準拠して測定される。
【0022】
この測定方法では、未加硫ゴムの組成の相違は、未加硫ゴムを加硫して得られる加硫ゴムの比重により表される。つまり、一のシート6のための未加硫ゴムを加硫して得られる加硫ゴムの比重が、他のシート6のための未加硫ゴムを加硫して得られる加硫ゴムの比重と相違すれば、一のシート6のための未加硫ゴムの組成と他のシート6のための未加硫ゴムの組成とは相違すると判断される。
【0023】
前述したように、帯状ゴム部材2を構成する複数のシート6はそれぞれ、互いに異なる組成を有する。したがって、この帯状ゴム部材2を構成する複数のシート6はそれぞれ、互いに異なる比重を有する。
【0024】
図1に示された帯状ゴム部材2は、トレッドの部品である。この帯状ゴム部材2は、厚さ方向に積層された2枚のシート6を含む。一方のシート6aは、路面と接触するキャップ層のための未加硫ゴムからなる。他方のシート6bは、キャップ層の内側に位置するベース層のための未加硫ゴムからなる。
【0025】
帯状ゴム部材2は、2つの平面8を有する。これら平面8は、帯状ゴム部材2の幅方向及び長さ方向に拡がる。この帯状ゴム部材2では、一方の平面8a(以下、第一平面8aとも称される。)が、キャップ層のための未加硫ゴムからなるシート6a(以下、キャップシート6aとも称される。)により構成される。他方の平面8b(以下、第二平面8bとも称される。)が、ベース層のための未加硫ゴムからなるシート6b(以下、ベースシート6bとも称される。)により構成される。
【0026】
トレッドにおいて、ベース層の組成とキャップ層の組成は相違する。具体的には、ベース層の比重はキャップ層の比重よりも小さい。詳細には、キャップ層の比重に対する、キャップ層の比重とベース層の比重との差の比率は、5%以上15%以下の範囲にある。なお、ベース層の比重は1.05以上1.15以下の範囲にあり、キャップ層の比重は1.15以上1.25以下の範囲にある。
【0027】
詳述しないが、タイヤの製造では、押し出し機(図示されず)において、キャップ層のための未加硫ゴム及びベース層のための未加硫ゴムを同時に押し出しすることで、帯状ゴム部材2が得られる。裁断機(図示されず)を用いて、この帯状ゴム部材2を所定長さで裁断することで、トレッドの部品としてのトレッドゴムが得られる。トレッドゴムを他の部品と組み合わせることで、未加硫状態のタイヤ、すなわち生タイヤが得られる。この生タイヤを加圧及び加熱して、タイヤが得られる。
【0028】
図1に示された測定装置4は、トレッドゴムの製造ラインの一部を構成する。帯状ゴム部材2は、この測定装置4に紙面の右側から移送される。この帯状ゴム部材2は、この測定装置4から紙面の左側に移送される。この
図1において、紙面の右側は製造ラインの上流側であり、左側はこの製造ラインの下流側である。
【0029】
図示されないが、この測定装置4は、帯状ゴム部材2を成形する押し出し機の下流側に位置する。この測定装置4は、この帯状ゴム部材2を裁断してトレッドゴムを形成する裁断機の上流側に位置する。
【0030】
この測定装置4は、液体槽10と、液体12と、超音波センサー14とを備える。液体槽10には、液体12が張られる。この液体12としては、水が好適に用いられる。
【0031】
この測定装置4では、帯状ゴム部材2は、その裏面側が液体槽10に張った液体12と接触するようにセットされる。
図1に示された測定装置4には、帯状ゴム部材2は、第二平面8bを裏側にしてセットされる。したがって、この測定装置4では、第二平面8bをなすベースシート6bが液体12と接触する。なお、帯状ゴム部材2が第一平面8aを裏側にしてこの測定装置4にセットされた場合は、この第一平面8aをなすキャップシート6aが液体12と接触する。
【0032】
この測定装置4では、帯状ゴム部材2は一対の保持ローラー16によって支持される。これにより、この測定装置4では、帯状ゴム部材2の、液体12との接触状態が維持される。この測定装置4は、帯状ゴム部材2の、液体12との接触状態を維持する一対の保持ローラー16を備える。
【0033】
一対の保持ローラー16は、帯状ゴム部材2の幅方向に延びる。これら保持ローラー16は、帯状ゴム部材2の長さ方向に間隔をあけて配置される。各保持ローラー16は、図示されない支持手段(例えば、軸受)によって、回転可能に液体槽10に支持される。
図1において、符号ALは保持ローラー16の軸芯である。液体槽10において保持ローラー16は、軸芯ALを中心に回転できる。
【0034】
この測定装置4では、市販の超音波センサーが超音波センサー14として用いられる。この超音波センサー14は、プローブ18と、コントローラー20とを備える。プローブ18とコントローラー20とは、通信ケーブル22で接続される。プローブ18は、液体槽10に張った液体12中にセットされる。コントローラー20は、液体槽10の外側の任意の位置に配置される。
【0035】
プローブ18は、上流側の保持ローラー16と下流側の保持ローラー16との間において、帯状ゴム部材2の裏面と対向する位置に配置される。プローブ18は、圧電素子24を含む。この圧電素子24は、帯状ゴム部材2の裏面に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する。つまり、このプローブ18は、超音波を発信する発信部26と、反射波を受信する受信部28とを備える。
【0036】
コントローラー20は、例えばCPU等の演算部、RAM及びROMを含む記憶部等を有するマイクロコンピュータにより構成される。このコントローラー20は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。
【0037】
図2には、帯状ゴム部材2に向けて発信された超音波が帯状ゴム部材2内を伝搬する状況が概略的に示される。この
図2において、両矢印T1はプローブ18から、液体12とベースシート6bとの境界30(以下、第一境界30aとも称される。)までの距離を表す。両矢印T2は、プローブ18から、ベースシート6bとキャップシート6aとの境界30(以下、第二境界30bとも称される。)までの距離を表す。両矢印T3は、プローブ18から、キャップシート6aとその外側に位置する大気32との境界30(以下、第三境界30cとも称される。)までの距離を表す。両矢印TBは、ベースシート6bの厚さである。この厚さTBは、距離T2と距離T1との差により表される。両矢印TCは、キャップシート6aの厚さである。この厚さTCは、距離T3と距離T2との差により表される。
【0038】
この測定装置4では、液体12としての水とベースシート6bとの間には比重差がある。ベースシート6bとキャップシート6aとの間にも比重差がある。そして、キャップシート6aと大気32としての空気との間にも比重差がある。このため、プローブ18から発信された超音波の反射が、第一境界30a、第二境界30b、そして第三境界30cにおいて生じる。
【0039】
超音波センサー14のコントローラー20は、プローブ18に対し、所定の伝搬速度で超音波を発信するよう指示する機能を有する。この測定装置4では、コントローラー20がプローブ18に対して超音波の発信を指示することにより、プローブ18、すなわち発信部26が帯状ゴム部材2に向けて所定の伝搬速度で超音波を発信する。プローブ18、すなわち受信部28が反射波を受信し、この反射波の受信情報がコントローラー20に入力される。
【0040】
コントローラー20は、プローブ18が超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(以下、伝搬時間とも称される。)を計測する機能を有する。この測定装置4では、コントローラー20は、超音波の発信時刻と反射波の受信時刻とに基づいて、プローブ18と第一境界30aとの間を超音波が往復するのに要する時間、すなわち第一伝搬時間を算出する。コントローラー20はさらに、プローブ18と第二境界30bとの間を超音波が往復するのに要する時間、すなわち第二伝搬時間を算出する。そしてコントローラー20は、プローブ18と第三境界30cとの間を超音波が往復するのに要する時間、すなわち第三伝搬時間を算出する。
【0041】
コントローラー20は、伝搬速度と伝搬時間とに基づいて、帯状ゴム部材2の厚さを解析する機能を有する。この測定装置4では、コントローラー20において、第一伝搬時間と超音波の伝搬速度とを用いて、プローブ18から第一境界30aまでの距離T1が算出される。第二伝搬時間と伝搬速度とを用いて、プローブ18から第二境界30bまでの距離T2が算出される。この距離T2から距離T1を差し引くことで、ベースシート6bの厚さTBが算出される。第三伝搬時間と伝搬速度とを用いて、プローブ18から第三境界30cまでの距離T3が算出される。この距離T3から距離T2を差し引くことで、キャップシート6aの厚さTCが算出される。
【0042】
次に、以上説明した測定装置4を用いた帯状ゴム部材2の測定方法について説明する。この測定方法は、複数の未加硫ゴムからなるシート6を厚さ方向に積層して得られる帯状ゴム部材2の厚さを測定するための方法である。
【0043】
この測定方法は、帯状ゴム部材2の二つの平面8のうち、少なくとも一方の平面8を、液体槽10に入れた液体12に浸ける工程(以下、セッティング工程とも称される。)を含む。
【0044】
この測定方法では、帯状ゴム部材2は、図示されない移送手段により測定装置4に移送される。セッティング工程において、帯状ゴム部材2は、第二平面8bが液体槽10に入れた液体12(ここでは、水)に浸かるようにこの測定装置4にセットされる。
【0045】
この測定方法は、液体12中で、この液体12に浸かった帯状ゴム部材2の一方の平面8に向けて、超音波を発信し、その反射波を受信する工程(以下、計測工程とも称される。)を含む。
【0046】
この測定方法では、帯状ゴム部材2が測定装置4にセットされると、計測工程が開始される。この計測工程では、液体12中において、この帯状ゴム部材2に対向するように配置されたプローブ18から、液体12に浸かった帯状ゴム部材2の第二平面8bに向けて、所定の伝搬速度で超音波が発信される。前述したように、この測定装置4では、プローブ18から発信された超音波の反射が、第一境界30a、第二境界30b、そして第三境界30cにおいて生じる。このため、第一境界30aにおいて反射した超音波、第二境界30bにおいて反射した超音波、そして第三境界30cにおいて反射した超音波が、反射波として、プローブ18において受信される。
【0047】
計測工程では、液体12中で、液体12に浸かった帯状ゴム部材2の第二平面8bに向けて、超音波が発信され、その反射波が受信される。これにより、コントローラー20において、超音波の伝搬時間が計測される。具体的には、プローブ18と第一境界30aとの間を超音波が往復するのに要した第一伝搬時間、プローブ18と第二境界30bとの間を超音波が往復するのに要した第二伝搬時間、そしてプローブ18と第三境界30cとの間を超音波が往復するのに要した第三伝搬時間が計測される。
【0048】
この測定方法は、超音波を発信してからその反射波を受信するまでの伝搬時間と、超音波の伝搬速度とに基づいて、帯状ゴム部材2を構成する各シート6の厚さを算出する工程(以下、解析工程とも称される。)を含む。
【0049】
この測定方法では、第一伝搬時間、第二伝搬時間及び第三伝搬時間が計測されると、解析工程が開始される。この解析工程では、計測された第一伝搬時間、第二伝搬時間及び第三伝搬時間と、超音波の伝搬速度とにより、コントローラー20において、プローブ18から第一境界30aまでの距離T1、プローブ18から第二境界30bまでの距離T2、そしてプローブ18から第三境界30cまでの距離T3が算出される。さらにこの距離T1、距離T2及び距離T3から、ベースシート6bの厚さTBと、キャップシート6aの厚さTCとが、算出される。
【0050】
この測定方法では、液体12中で、しかもこの液体12に浸かった帯状ゴム部材2の平面8に向けて超音波が発信される。超音波の減衰が抑えられるので、反射波が明りょうに受信される。この測定方法は、厚さ方向に積層した複数のシート6の厚さを非接触でしかも安全に測定できる。各シート6の厚さを把握するために、帯状ゴム部材2を切断して、この帯状ゴム部材2の断面を準備する必要がないので、この測定方法は帯状ゴム部材2のロスを伴わない。製造した帯状ゴム部材2のほぼ全てが部品として利用できるので、この測定方法は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【0051】
前述したように、この測定装置4の上流側には押し出し機が位置し、下流側には裁断機が位置する。図示されないが、トレッドゴムの製造ラインでは、この押し出し機と裁断機との間は、帯状ゴム部材2を搬送する搬送ラインで構成される。これにより、押し出し機において帯状ゴム部材2を製造しつつ、裁断機においてこの帯状ゴム部材2を裁断することで、トレッドゴムが連続的に製造される。
【0052】
この測定方法では、測定装置4は搬送ラインの一部を構成する。このため、押し出し機において製造された帯状ゴム部材2は測定装置4を通過する。この測定方法では、この測定装置4を通過していく帯状ゴム部材2、すなわち、搬送状態にある帯状ゴム部材2について、それぞれのシート6の厚さが測定される。この測定方法は、帯状ゴム部材2の全長にわたって、各シート6の厚さを把握できる。この測定方法は、高品質なタイヤの製造に貢献できる。シート6の厚さに乱れが生じた帯状ゴム部材2の形成が効果的に防止されるので、帯状ゴム部材2のロスの発生も抑えられる。この測定方法は、タイヤの生産性の向上にさらに貢献できる。この観点から、この測定方法では、帯状ゴム部材2は搬送状態にあるのが好ましい。
【0053】
この測定方法では、帯状ゴム部材2を構成する一のシート6と、この一のシート6に積層される他のシート6との間の比重差が、超音波の反射に貢献する。各シート6の正確な厚さの把握の観点から、一のシート6の比重が他のシート6の比重よりも小さい場合、この他のシート6の比重に対する、他のシート6の比重と一のシート6の比重との差の比率で表される、比重差は、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。各シート6の正確な厚さの把握の観点においては、この比重差は大きいほど好ましいので、この比重差の上限は設定されない。
【0054】
前述したように、この測定方法ではプローブ18から帯状ゴム部材2に向けて超音波を発信することにより、各シート6の厚さが把握される。各シート6の正確な厚さの把握の観点から、プローブ18から発信される超音波の周波数は、1.5MHz以上が好ましく、5.0MHz以下が好ましい。この超音波の周波数は、2.0MHz以上がより好ましく、4.0MHz以下がより好ましい。
【0055】
この測定方法で用いられる測定装置4において、プローブ18に含まれる圧電素子24はディスク状である。この測定方法では、各シート6の正確な厚さの把握の観点から、この圧電素子24の外径は3.0mm以上が好ましく、10.0mm以下が好ましい。この外径は、4.0mm以上がより好ましく、8.0mm以下がより好ましい。
【0056】
この測定方法で用いられる測定装置4において、液体槽10に張った液体12の温度は30℃以下が好ましい。これにより、帯状ゴム部材2の冷却が促される。この測定方法は、形状が安定した状態で各シート6の厚さが測定されるので、各シート6の厚さを正確に把握できる。
【0057】
図3には、本発明の他の実施形態に係る帯状ゴム部材2の厚さ測定方法で用いられる測定装置42の一例が概略的に示される。この測定装置42も、
図1に示された測定装置4と同様、トレッドゴムの製造ラインの一部を構成する。この
図3において、紙面の右側は製造ラインの上流側であり、左側はこの製造ラインの下流側である。帯状ゴム部材2は、この測定装置42の上流側に位置する押し出し機(図示されず)で製造され、この測定装置42に移送される。この帯状ゴム部材2は、この測定装置42から、この測定装置42の下流側に位置する裁断機(図示されず)に移送される。
【0058】
この測定装置42は、液体槽44と、液体46と、一対の保持ローラー48と、超音波センサー50とを備える。この測定装置42では、一対の保持ローラー48以外は、
図1に示された測定装置4と同等の構成を有する。
図1に示された液体槽10、液体12及び超音波センサー14の要素と同じ要素については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0059】
この測定装置42では、一対の保持ローラー48は、帯状ゴム部材2の幅方向に延びる。これら保持ローラー48は、帯状ゴム部材2の長さ方向に間隔をあけて配置される。各保持ローラー48は、図示されない支持手段(例えば、軸受)によって、回転可能に液体槽44に支持される。
図3において、符号ALは保持ローラー48の軸芯である。液体槽44において保持ローラー48は、軸芯ALを中心に回転できる。
【0060】
この測定装置42では、一対の保持ローラー48は、液体槽44に張った液体46の液面52よりも下側にセットされる。この液体槽44における保持ローラー48の位置は、
図1に示された測定装置4の液体槽10における保持ローラー16の位置よりも深い。
【0061】
この測定装置42では、上流側から移送され、送り出しローラー54を通過した帯状ゴム部材2は、その向きを下方に変えて、液体槽44に張った液体46に導かれる。液体46に浸かった帯状ゴム部材2は、上流側の保持ローラー48aにおいてその向きを水平方向に変えて、下流側の保持ローラー48bに向かって移動する。この帯状ゴム部材2は、下流側の保持ローラー48aにおいてその向きを上方に変えて、引き出しローラー56に向かって移動する。この移動の途中において、帯状ゴム部材2は液体46から大気側に現れ、引き出しローラー56によって、下流側に移送される。
【0062】
この測定装置42では、一対の保持ローラー48によって、帯状ゴム部材2はその全体が液体槽44に張った液体46に沈められる。このため、この帯状ゴム部材2の第一平面8a及び第二平面8bの両平面8が、この液体46に浸けられる。
【0063】
この測定装置42では、超音波センサー50のプローブ18は、上流側の保持ローラー48と下流側の保持ローラー48との間において、帯状ゴム部材2の裏面と対向する位置に配置される。
図1に示された測定装置4と同様、プローブ18は、帯状ゴム部材2の裏面に向けて超音波を発信し、その反射波を受信する。この測定装置42では、帯状ゴム部材2の表面も液体46に浸けられるので、プローブ18をこの表面と対向する位置に配置し、この表面に向けて超音波が発信されてもよい。
【0064】
この測定装置42を用いた帯状ゴム部材2の測定方法においても、液体46中で、しかもこの液体46に浸かった帯状ゴム部材2の平面8に向けて超音波が発信される。超音波の減衰が抑えられるので、反射波が明りょうに受信される。この測定方法は、厚さ方向に積層した複数のシート6の厚さを非接触でしかも安全に測定できる。各シート6の厚さを把握するために、帯状ゴム部材2を切断して、この帯状ゴム部材2の断面を準備する必要がないので、この測定方法は帯状ゴム部材2のロスを伴わない。製造した帯状ゴム部材2のほぼ全てが部品として利用できるので、この測定方法は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【0065】
この測定方法では、搬送状態にある帯状ゴム部材2の厚さが測定される。このため、帯状ゴム部材2が液体46に浸けられるとき、空気を巻き込む恐れがある。この空気の巻き込みは、超音波の伝搬状態に影響する。
【0066】
この測定装置42では、帯状ゴム部材2全体を液体46に浸けた状態で、この帯状ゴム部材2の厚さが測定される。液体46の液面52よりも深い位置に帯状ゴム部材2がセットされるので、帯状ゴム部材2が液体46に進入する際の空気の巻き込みが抑えられる。この測定装置42を用いた測定方法は、厚さ方向に積層した複数のシート6の厚さをより正確に把握できる。この観点から、この測定方法では、帯状ゴム部材2の第一平面8a及び第二平面8bの両方が液体槽44に入れた液体46に浸けられるのが好ましい。
【0067】
以上説明したように、本発明によれば、安全に、しかも帯状ゴム部材2のロスを伴うことなく、帯状ゴム部材2を構成する各シート6の厚さを測定できる。この帯状ゴム部材2の厚さ測定方法は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【0068】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明された、帯状ゴム部材の厚さを測定する技術は種々のタイヤの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
2・・・帯状ゴム部材
4、42・・・測定装置
6、6a、6b・・・シート
8、8a、8b・・・平面
10、44・・・液体槽
12、46・・・液体
14、50・・・超音波センサー
18・・・プローブ
20・・・コントローラー
24・・・圧電素子
26・・・発信部
28・・・受信部
30、30a、30b、30c・・・境界
32・・・大気
52・・・液面