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特許7247788基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230322BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20230322BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/312 A
H01L21/31 B
C23C16/04
C23C16/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019123719
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2020013994
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018129735
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕之
(72)【発明者】
【氏名】玉田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 仁視
(72)【発明者】
【氏名】白谷 宗大
(72)【発明者】
【氏名】永井 智樹
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216368(JP,A)
【文献】特開2009-246342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/312
H01L 21/31
C23C 16/04
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含む自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する工程と、
上記積層工程後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する工程と、
上記除去工程後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する工程と
を備える基板処理方法。
【請求項2】
上記化合物が下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する請求項1に記載の基板処理方法。
【化1】
(式(1)中、Rは、-CN又は-COORである。Rは、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。)
【化2】
(式(2)中、*は、上記化合物における上記式(2)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。
式(3)中、*は、上記化合物における上記式(3)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。)
【請求項3】
上記形成工程後に、上記第1領域に残存した上記化合物を除去する工程を備える請求項1又は請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
上記積層工程が、上記自己組織化材料を塗工する工程を含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含む自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する機構と、
上記積層後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する機構と、
上記膜除去後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する機構と
を備える基板処理システム。
【請求項6】
1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含み、
上記化合物が下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する自己組織化材料。
【化3】
(式(1)中、Rは、-CN又は-COOR である。R は、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。)
【化4】
(式(2)中、*は、上記化合物における上記式(2)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。
式(3)中、*は、上記化合物における上記式(3)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。)
【請求項7】
溶媒をさらに含む請求項6に記載の自己組織化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのさらなる微細化に伴い、30nmを切る微細パターンを形成する技術が要求されている。しかし、従来のリソグラフィーによる方法では、このような微細パターンを形成することは、光学的要因等により技術的に困難になってきている。
【0003】
そこで、いわゆるボトムアップ技術を用いて微細パターンを形成することが検討されている。このボトムアップ技術としては、重合体の自己組織化を利用する方法の他、微細な領域を表層に有する基板を選択的に修飾する方法が検討されるようになってきている。この選択的修飾方法には、簡便かつ高選択的に表面領域を修飾することができる材料が必要であり、種々のものが検討されている(特開2016-25315号公報、特開2003-76036号公報、ACS Nano,9,9,8710,2015、ACS Nano,9,9,8651,2015、Science,318,426,2007及びLangmuir,21,8234,2005参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-25315号公報
【文献】特開2003-76036号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】ACS Nano,9,9,8710,2015
【文献】ACS Nano,9,9,8651,2015
【文献】Science,318,426,2007
【文献】Langmuir,21,8234,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の材料では、金属基板の表面を十分に疎水化させることはできていない。また、最近では、基材の表面をALD(Atomic Layer Deposition)法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる金属オキサイド形成によってパターンを堆積させることが行われており、このパターンの堆積を領域を区別して高選択的に行うことが求められている。
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、表層に金属原子を有する領域を有する基板の表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含む自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する工程と、上記積層工程後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する工程と、上記除去工程後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する工程とを備える基板処理方法である。
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含む自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する機構と、上記積層後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する機構と、上記膜除去後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する機構とを備える基板処理システムである。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物を含む自己組織化材料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板処理方法及び基板処理システムによれば、疎水化された領域のALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能が発揮されることによって、基材表面を選択的に修飾する処理を行うことができる。本発明の自己組織化材料によれば、表層に金属原子を有する領域を有する基板の表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる。従って、当該基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の自己組織化材料により金属基板表面に選択的に自己組織化膜が形成されることを説明する模式図である。
図2】ALD法による金属オキサイド形成のブロッキング性能について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、当該基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料の実施の形態について詳説する。
【0014】
<自己組織化材料>
当該自己組織化材料は、1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)を含む。当該自己組織化材料は、[A]化合物以外に、好適成分として、[B]溶媒を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0015】
[[A]化合物]
[A]化合物は、1又は複数のシアノ基を有する炭素数6以上の化合物である。
【0016】
当該自己組織化材料は、[A]化合物を含むことで、表層に金属原子を有する領域を有する基板の表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる。当該自己組織化材料が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[A]化合物はそのシアノ基により、金属表面に選択的に相互作用することができ、また炭素数が6以上であることで、[A]化合物は互いにファンデルワールス力により相互作用して配向することができると考えられ、その結果、金属表面を高選択的に疎水化することができる。このような自己組織化材料から形成された膜(「自己組織化膜」ともいう)は、その凝集構造等に起因して、特にALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対して高いブロッキング性能を発揮されるものと考えられる。当該自己組織化材料によれば、図1に示すように、表層に金属原子を有する領域(第1領域)を有する基板の表面に選択的に自己組織化膜が形成され、また、図2に示すように、自己組織化膜が形成された領域は、ALD法による金属オキサイド形成のブロッキング性能が発揮される。
【0017】
[A]化合物のシアノ基の数としては、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が特に好ましく、1又は2がさらに特に好ましく、2が最も好ましい。
【0018】
[A]化合物の炭素数の下限としては、6であり、7が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記炭素数の上限としては、50が好ましく、40がより好ましく、30がさらに好ましく、25が特に好ましい。[A]化合物の炭素数を上記範囲とすることで、自己組織化膜の疎水性をより向上させることができる。
【0019】
[A]化合物としては、下記式(1)で表される構造、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
上記式(1)中、Rは、-CN又は-COORである。Rは、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。
【0022】
【化2】
【0023】
上記式(2)中、*は、上記化合物における上記式(2)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。
【0024】
上記式(3)中、*は、上記化合物における上記式(3)で表される構造以外の部分に結合する部位を示す。
【0025】
上記式(1)のRで表される炭素数1~6の1価の炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の鎖状炭化水素基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;
フェニル基等の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
[A]化合物は、上記式(1)~(3)で表される構造以外の部分が、例えば
メチル基、エチル基、ブチル基、ノニル基、ウンデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等の炭素数2~20のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の脂環;
ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環などを有していてもよい。
【0027】
[A]化合物は、これらの中で、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、脂環又は芳香環を有することが好ましく、炭素数4~15のアルキル基又は炭素数4~10のアルケニル基を有することがより好ましい。[A]化合物が上記構造を有することで、自己組織化膜の疎水性をより向上させることができる。
【0028】
[A]化合物としては、例えば下記式(i-1)~(i-5)で表される化合物(以下、「化合物(i-1)~(i-5)」ともいう)等が挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
また、[A]化合物としては、例えばヘキサンニトリル、オクタンニトリル、デカンニトリル、ドデカンニトリル、テトラデカンニトリル等の1個のシアノ基を有する化合物等も挙げられる。
【0031】
[A]化合物は、常温(25℃)で液体であっても、固体であってもよい。[A]化合物が常温で液体である場合、[A]化合物の150℃における蒸気圧の下限としては、0.1Paが好ましく、1Paがより好ましく、5Paがさらに好ましい。上記蒸気圧の上限としては、例えば10Paである。[A]化合物の蒸気圧を上記範囲とすることで、自己組織化膜の形成の際に、基板表面と相互作用していない[A]化合物は蒸発することができ、洗浄等による除去を不要とすることができる。
【0032】
[A]化合物の含有量の下限としては、当該自己組織化材料の[B]溶媒以外の全成分に対して、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。上記含有量は、100質量%であってもよい。[A]化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0033】
[[A]化合物の合成方法]
[A]化合物は、上記式(1)の構造を有する化合物の場合、例えばケトン又はアルデヒドと、マロノニトリル、シアノ酢酸又はシアノ酢酸エステルとを、酢酸アンモニウム及び酢酸等の存在下、トルエン等の溶媒中で、脱水縮合反応させることにより、合成することができる。上記以外の[A]化合物についても公知の方法で合成することができる。
【0034】
[[B]溶媒]
[B]溶媒としては、少なくとも[A]化合物及び必要に応じて含有されるその他の任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0035】
[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0036】
アルコール系溶媒としては、例えば
4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0037】
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0038】
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0039】
アミド系溶媒としては、例えば
N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0040】
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸エチル、酢酸n-ブチル等の酢酸エステル系溶媒;
乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の乳酸エステル系溶媒;
プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0041】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0042】
これらの中で、エステル系溶媒及び/又はケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒及び/又は鎖状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び/又はメチルアミルケトンがさらに好ましい。当該自己組織化材料は、[B]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0043】
[その他の任意成分]
その他の任意成分としては、例えば界面活性剤等が挙げられる。当該自己組織化材料は、界面活性剤を含有することで、基材表面への塗工性を向上させることができる。
【0044】
[自己組織化材料の調製方法]
当該自己組織化材料は、例えば[A]化合物、[B]溶媒及び必要に応じてその他の任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは0.45μm程度の細孔を有する高密度ポリエチレンフィルター等で濾過することにより調製することができる。当該自己組織化材料の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記固形分濃度の上限としては、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。「固形分濃度」とは、当該自己組織化材料の[B]溶媒以外の全成分の濃度(質量%)をいう。
【0045】
<自己組織化膜の形成方法>
当該自己組織化膜の形成方法は、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子(以下、「金属原子(a)」ともいう)を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する工程(以下、「積層工程」ともいう)を備える。当該自己組織化膜の形成方法によれば、上述の当該自己組織化材料を用いるので、表層に金属原子を有する領域を有する基板の表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる。以下、積層工程について説明する。
【0046】
[積層工程]
本工程では、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子(a)を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する。
【0047】
基板としては、例えば金属基板等が挙げられる。
【0048】
金属原子(a)としては、金属元素であれば特に限定されない。なお、ケイ素は、非金属であり、金属原子(a)に該当しない。金属原子(a)としては、例えば銅、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、スズ、タングステン、ジルコニウム、チタン、タンタル、ゲルマニウム、モリブデン、ルテニウム、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられる。これらの中で、銅、コバルト、タングステン又はタンタルが好ましい。
【0049】
金属基板の表層における金属原子(a)の含有形態としては、例えば金属単体、合金、導電性窒化物、金属酸化物、シリサイド等が挙げられる。
【0050】
金属単体としては、例えば銅、鉄、コバルト、タングステン、タンタル等の金属の単体等が挙げられる。
合金としては、例えばニッケル-銅合金、コバルト-ニッケル合金、金-銀合金等が挙げられる。
導電性窒化物としては、例えば窒化タンタル、窒化チタン、窒化鉄、窒化アルミニウム等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。
シリサイドとしては、例えば鉄シリサイド、モリブデンシリサイド等が挙げられる。
これらの中で、金属単体又は導電性窒化物が好ましく、銅単体、コバルト単体、タングステン単体又は窒化タンタルがより好ましい。
【0051】
基板の表層は、好ましくは金属原子(a)を有する第1領域(I)と、金属原子(a)を有さず、好ましくは実質的に非金属原子(b)のみからなる第2領域(II)とを有する。
【0052】
第2領域(II)中における非金属原子(b)の含有形態としては、例えば非金属単体、非金属酸化物、非金属窒化物、非金属酸化物窒化物等が挙げられる。
【0053】
非金属単体としては、例えばケイ素、炭素等の単体などが挙げられる。
非金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素等が挙げられる。
非金属窒化物としては、例えばSiNx、Si等が挙げられる。
非金属酸化物窒化物としては、例えばSiON等が挙げられる。
これらの中で、非金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
【0054】
基板の表層における第1領域(I)及び第2領域(II)の存在形状としては特に限定されず、例えば平面視で面状、点状、ストライプ状等が挙げられる。第1領域(I)及び第2領域(II)の大きさは特に限定されず、適宜所望の大きさの領域とすることができる。
【0055】
金属基板の形状としては、特に限定されず、板状等、適宜所望の形状とすることができる。
【0056】
上記膜の積層方法としては、特に限定されず、上記膜は、当該自己組織化材料の塗工、PVD(物理的気相蒸着)、CVD(化学的気相蒸着)等により積層することができる。当該自己組織化材料の塗工方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。
【0057】
当該自己組織化材料の塗工により膜を積層する場合、塗工により形成された塗膜を加熱又は焼成(以下、「加熱等」ともいう)してもよい。加熱等の手段としては、例えばオーブン、ホットプレート等が挙げられる。加熱等の温度の下限としては、80℃が好ましく、100℃がより好ましく、120℃がさらに好ましく、140℃が特に好ましい。加熱等の温度の上限としては、400℃が好ましく、300℃がより好ましく、200℃がさらに好ましく、160℃が特に好ましい。加熱等の時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましく、60秒がさらに好ましく、120秒が特に好ましい。加熱等の時間の上限としては、120分が好ましく、60分がより好ましく、10分がさらに好ましく、5分が特に好ましい。
【0058】
また、当該自己組織化膜の形成方法は、上記積層工程後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する工程(以下、「除去工程」ともいう)を備えてもよい。すなわち、上記加熱後の塗膜において、基板表面と相互作用していない[A]化合物を除去する目的で、加熱前又は加熱後の塗膜を有機溶媒などでリンスしてもよい。この有機溶媒としては、例えば当該自己組織化材料の[B]溶媒として例示した溶媒と同様のものが挙げられる。これらの中で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒が好ましい。以上のようにして、基板のうち表層に金属原子(a)を含む第1領域に[A]化合物が残存した自己組織化膜が形成される。
【0059】
<基板処理方法>
当該基板処理方法は、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する工程(積層工程)と、上記積層工程後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する工程(除去工程)と、上記除去工程後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する工程(以下、「形成工程」ともいう)とを備える。当該基板処理方法は、上記形成工程の後に、上記形成工程後の上記第1領域に残存した[A]化合物を除去する工程(以下、「化合物除去工程」ともいう)を有していてもよい。「金属オキサイドを主成分とするパターン」とは、パターンが金属オキサイド以外に不純物を含んでもよいことを意味する。以下、各工程について説明する。
【0060】
[積層工程]
本工程では、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する。本工程は、上述の自己組織化膜の形成方法における積層工程と同様である。
【0061】
[除去工程]
本工程では、上記積層工程後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する。本工程は、上述の自己組織化膜の形成方法における除去工程と同様である。
【0062】
[形成工程]
本工程では、上記除去工程後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域に、ALD(原子層堆積)法又はCVD(化学的気相蒸着)法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する。上記第1領域の膜(自己組織化膜)は、上述の当該自己組織化材料を用いて形成されており、金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能が発揮されるので、基板表面のうち自己組織化膜が形成されていない領域、つまり上記第1領域以外の領域、すなわち基板のうち表層に金属原子(a)を含む第1領域以外の表面領域に、選択的に金属オキサイドを主成分とするパターンを形成することができる。
【0063】
CVD法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、減圧CVD、レーザCVD有機金属CVD(MOCVD)等の種々の方法が挙げられる。
ALD法としては、熱ALD法、プラズマALD法等が挙げられる。
【0064】
CVD法又はALD法により形成されるパターンを構成する金属オキサイドとしては、例えばハフニウム、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ガリウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、マグネシウム等から選ばれる1種又は2種以上の金属の酸化物などが挙げられる。上記パターンは、実質的に金属オキサイドからなることが好ましい。
【0065】
CVD及びALDにおいて、例えば、酸化ハフニウムを含むパターンを形成する場合のプレカーサーとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミド)ハフニウム、テトラキス(ジエチルアミド)ハフニウム、ビス(メチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルハフニウム、ビス(メチル-η-シクロペンタジエニル)メトキシメチルハフニウム等が挙げられる。その他のプリカーサーとしては、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛、ビス(メチル-η-シクロペンタジエニル)メトキシメチルジルコニウム等が挙げられる。
【0066】
形成されるパターンの平均厚みの下限としては、0.1nmが好ましく、1nmがより好ましく、2nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、500nmが好ましく、100nmがより好ましく、50nmがさらに好ましい。
【0067】
[化合物除去工程]
本工程では、上記形成工程後の上記第1領域に残存した[A]化合物を除去する。この除去は、例えばドライエッチング、ウェットエッチング等により行うことができる。
【0068】
ドライエッチングの方法としては、例えば公知のドライエッチング装置を用いる方法等が挙げられる。また、ドライエッチングに用いるソースガスとしては、例えばCHF、CF、C、C、SF等のフッ素系ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、O、O等の酸素系ガス、H、NH、CO、CO、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、BCl等の還元性ガス、He、N、Ar等の不活性ガス等が挙げられる。これらのガスは混合して用いることができる。これらの中で、酸素系ガスが好ましい。
ウェットエッチングにはエッチング液が用いられ、このエッチング液として、例えば酸や塩基、これらの混合物などが用いられる。具体的には、SC-1洗浄液(水酸化アンモニウム水溶液と過酸化水素水の混合物)、SC-2洗浄液(塩化水素水溶液と過酸化水素水の混合物)、ピラニア溶液(硫酸と過酸化水素水の混合物)等が挙げられる。
【0069】
以上のようにして、表層に金属原子(a)を含む第1領域以外の表面領域に、選択的に金属オキサイドを主成分とするパターンが形成された基板を得ることができる。
【0070】
<基板処理システム>
当該基板処理システムは、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する機構(以下、「積層機構」ともいう)と、上記積層後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する機構(以下、「膜除去機構」ともいう)と、上記膜除去後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する機構(以下、「形成機構」ともいう)とを備える。
以下、各機構について説明する。
【0071】
[積層機構]
本機構は、当該自己組織化材料を用い、表層に金属原子を有する第1領域を有する基板の表面に膜を積層する機構である。積層機構は、当該自己組織化材料を貯蔵するタンク、基板の表面に膜を積層する積層部等を備えている。積層部は、例えば基板の表面に当該自己組織化材料を塗工する工程を行う塗工部、この塗工工程により形成された塗膜を加熱又は焼成する加熱部等を備えていてもよい。この機構により、基板表面のうち、金属を含む領域に、当該自己組織化材料による膜が積層される。
【0072】
[膜除去機構]
本機構は、上記積層後、上記第1領域以外の領域の膜を除去する機構である。膜除去機構は、上記膜を除去するための有機溶媒等のリンス液を貯蔵するタンク、上記膜が積層された基板を供給する基板供給部、この供給された基板上にリンス液を供給するリンス液供給部等を備えている。この機構により、基板表面のうち、金属原子(a)を含む第1領域に、[A]化合物が残存した自己組織化膜が形成された基板が得られる。
【0073】
[形成機構]
本機構は、上記膜除去後、上記基板表面のうち上記第1領域以外の領域にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する機構である。形成機構は、上記自己組織化膜が形成された基板を供給する基板供給部、この供給された基板上にALD法又はCVD法により金属オキサイドを主成分とするパターンを形成する形成部等を備えている。この機構により、基板表面のうち、金属原子(a)を含む第1領域の自己組織化膜が形成された領域以外の表面領域に、すなわち上記第1領域以外の領域に金属オキサイドを主成分とするパターンを有する基板が形成される。
【0074】
また、当該基板処理システムは、上記形成工程後に、上記第1領域に残存した[A]化合物を除去する機構(化合物除去機構)として、公知のドライエッチング又はウェットエッチングのための機構をさらに備えていてもよい。なお、上記積層機構、上記膜除去機構、上記形成機構及び上記化合物除去機構は、それぞれ別個の装置の中に組み込まれていてもよいし、上記機構のうちの2以上が単一の装置の中に組み込まれていてもよい。
【実施例
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0076】
H-NMR及び13C-NMR分析]
H-NMR及び13C-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-EX400」)を使用して行った。
【0077】
<[A]化合物の合成>
[合成例1]
ディーンスタークトラップを備えた300mLナスフラスコへ、メチルヘプテノン18.93g(150mmol)、マロノニトリル10.3g(125mmol)、酢酸アンモニウム0.96g(12.5mmol)、酢酸1.50g(25mmol)及びトルエン150gを加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱還流を行った。
反応終了後、ひだ折ろ紙にて濾過し、ろ液を超純水にて3回洗浄を行い、塩及び酸を除き、有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムで水を除去したのち、エバポレーターにて濃縮を行った。得られた濃縮物を減圧蒸留し、下記式(A-1)で表される化合物18.0gを得た。
【0078】
【化4】
【0079】
化合物(A-1)の沸点並びにH-及び13C-NMRの測定データを以下に示す。
沸点;103℃/15Pa
H-NMR(δ/ppm)(CDCl);5.00(s,1H,CH),2.63(br,2H,CH),2.24(s,5H,CH,CH),1.67(s,3H,CH),1.54(s,3H,CH
13C-NMR(δ/ppm)(CDCl);182(=C<),135(>C=),121(CN),111((CH>C=),86(-CH=),38(CH),25(CH),24(CH),22(CH),18(CH
【0080】
[合成例2]
ディーンスタークトラップを備えた300mLナスフラスコへ、12-トリコサノン12.00g(35.4mmol)、マロノニトリル2.11g(32mmol)、酢酸アンモニウム0.25g(3.2mmol)、酢酸0.42g(6.4mmol)及びトルエン150gを加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱還流を行った。
反応終了後、ひだ折ろ紙にて濾過し、ろ液を超純水にて3回洗浄を行い、塩及び酸を除き、有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムで水を除去したのち、再度、ひだ折ろ紙にて濾過を行いエバポレーターにて濃縮することで固体を得た。
次に、得られた固体にシクロヘキサン100gを加え、加熱溶解させた後、常温までゆっくりと戻し、白色結晶を析出させた。これを吸引濾過にて回収し、常温減圧下で乾燥させて下記式(A-2)で表される化合物9.83gを得た。
【0081】
【化5】
【0082】
化合物(A-2)の融点並びにH-及び13C-NMRの測定データを以下に示す。
融点;68℃
H-NMR(δ/ppm)(CDCl);1.55(br,4H,CH),1.25(br,36H,CH),0.87(t,6H,CH
13C-NMR(δ/ppm)(CDCl);186(=C<),112(CN),85(>C=),42(CH),35(CH),32×2(CH),29×10(CH),28(CH),23(CH),22(CH),14(CH
【0083】
[合成例3]
ディーンスタークトラップを備えた300mLナスフラスコへ、2-ウンデカノン17.09g(100mmol)、マロノニトリル6.28g(95mmol)、酢酸アンモニウム0.77g(10mmol)、酢酸1.20g(20mmol)及びトルエン150gを加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱還流を行った。
反応終了後、ひだ折ろ紙にて濾過し、ろ液を超純水にて3回洗浄を行い、塩及び酸を除き、有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムで水を除去したのち、エバポレーターにて濃縮を行った。得られた濃縮物を減圧蒸留し、下記式(A-3)で表される化合物15.3gを得た。
【0084】
【化6】
【0085】
化合物(A-3)の沸点並びにH-及び13C-NMRの測定データを以下に示す。
沸点;122℃/14Pa
H-NMR(δ/ppm)(CDCl);2.58(t,2H,CH),2.27(s,3H,CH),1.61(m,2H,CH),1.32(s,12H,CH),0.90(t,3H,CH
13C-NMR(δ/ppm)(CDCl);182(=C<),111(CN),85(>C=),38(CH),31(CH),29(CH),27(CH),22(CH),14(CH
【0086】
[合成例4]
ディーンスタークトラップを備えた300mLナスフラスコへ、4-ブチルベンズアルデヒド16.22g(100mmol)、マロノニトリル5.61g(85mmol)、酢酸アンモニウム0.77g(10mmol)、酢酸1.20g(20mmol)及びトルエン150gを加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱還流を行った。
反応終了後、ひだ折ろ紙にて濾過し、ろ液を超純水にて3回洗浄を行い、塩及び酸を除き、有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムで水を除去したのち、エバポレーターにて濃縮を行った。得られた濃縮物を減圧蒸留し、下記式(A-4)で表される化合物14.3gを得た。
【0087】
【化7】
【0088】
化合物(A-4)の沸点並びにH-及び13C-NMRの測定データを以下に示す。
沸点;140℃/7.3Pa
H-NMR(δ/ppm)(CDCl);7.86(d,2H,Ph),7.75(s,1H,Ph),7.34(d,2H,Ph),2.72(m,2H,CH),1.65(m,2H,CH),1.41(m,2H,CH),1.33(m,3H,CH
13C-NMR(δ/ppm)(CDCl);159(=C<),151(Ph-C=),130,129*3,128(Ph),114,113(CN),35.8(CH2),33.2(CH),22.2(CH),13.8(CH
【0089】
[合成例5]
ディーンスタークトラップを備えた300mLナスフラスコへ、4-(trans-4-ブチルシクロヘキシル)シクロヘキサノン20.00g(80mmol)、マロノニトリル4.40g(67mmol)、酢酸アンモニウム0.52g(6.7mmol)、酢酸0.80g(13.4mmol)及びトルエン150gを加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱還流を行った。
反応終了後、ひだ折ろ紙にて濾過し、ろ液を超純水にて3回洗浄を行い、塩及び酸を除き、有機層を回収し、無水硫酸マグネシウムで水を除去したのち、エバポレーターにて濃縮を行った。得られた濃縮物をシクロヘキサンにて再結晶することにより、下記式(A-5)で表される化合物14.5gを得た。
【0090】
【化8】
【0091】
化合物(A-5)の融点並びにH-及び13C-NMRの測定データを以下に示す。
融点;86℃
H-NMR(δ/ppm)(CDCl);3.02(d,2H,CH),2.31(m,2H,CH),2.08(m,2H,CH),1.78-1.55(m,4H,CH),1.41-0.84(m,17H,CH,CH
13C-NMR(δ/ppm)(CDCl);185(=C<),112(CN),82.3(>C=),41.9*2(CH),37.6,37.6,37.2,34.3,33.2,32.1,31.0,30.0,26.6,22.2(CH),14.1(CH
【0092】
化合物(A-6):オクタドデシルリン酸(和光純薬工業(株)のものをそのまま使用した)
【0093】
<自己組織化材料の調製>
自己組織化材料の調製に用いた[B]溶媒について以下に示す。
【0094】
[[B]溶媒]
B-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
B-2:メチルアミルケトン
【0095】
[実施例1]
[A]化合物としての(A-1)1.25gに、[B]溶媒としての(B-1)40gを加え、撹拌したのち、0.45μmの細孔を有する高密度ポリエチレンフィルターにて濾過することにより、自己組織化材料(S-1)を調製した。
【0096】
[実施例2~5及び比較例1]
下記表1に示す種類及び質量(g)の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、自己組織化材料(S-2)~(S-6)を調製した。
【0097】
【表1】
【0098】
<自己組織化膜の形成>
8インチ銅基板を5質量%シュウ酸水溶液に浸漬させたのち、窒素フローにて乾燥させ、表面の酸化被膜を除去した。シリコンオキサイド基板については、イソプロパノールにて表面処理をおこなった。
次に、トラック(東京エレクトロン(株)の「TELDSA ACT8」)を用いて、上記調製した各自己組織化材料を1,500rpmにてスピンコートし、150℃で180秒間焼成した後、焼成後の塗膜を以下のリンス条件でリンスすることにより自己組織化膜を形成した。
リンス条件:基板の中央にてPGMEAを1,000rpmで5秒間ダイナミック塗工した後、750rpmで1秒間振り切りを行った。この塗工と振り切りとをもう1回繰り返した後、さらに回転数を上げて振り切りを行った。
【0099】
<評価>
[接触角]
上記形成した自己組織化膜の表面の接触角の値を接触角計(協和界面科学(株)の「Drop master DM-501」)を用いて測定した。
【0100】
[金属オキサイドブロッキング評価]
金属オキサイドブロッキング評価は、スタンフォード大学内のCambridge Nanotech FIJIを用い、下記表2に示す条件で行った。プレカーサーは、テトラキス(ジメチルアミド)ハフニウムを用い、助触媒に水を用いた。ALDサイクルは、47cycleに固定し、種々の被覆膜へのオキサイド層形成の有無を確認した。
【0101】
【表2】
【0102】
上記ALDサイクル後の被覆膜上のHf成分について、ESCA分析より定量した。ESCAは、「Quantum200」(アルバック社)にて100μφの条件から被覆膜成分及び基板成分を除いたHf成分をHf4fにて定量したのち、パーセンテージを算出し、「HfO blocking rate」とした。この値が小さいほど、Hfブロッキング性能が高い膜であることを意味する。
【0103】
【表3】
【0104】
上記表3の結果から分かるように、実施例の自己組織化材料及び基板処理方法によれば、表層に金属原子を有する領域を有する基板表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の自己組織化材料によれば、表層に金属原子を有する領域を有する基板の表面を簡便かつ高選択的に疎水化することができ、この疎水化処理によってALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能を発揮することができる。本発明の基板処理方法及び基板処理システムによれば、疎水化された領域のALD法又はCVD法による金属オキサイド形成に対する高いブロッキング性能が発揮されることによって、基材表面を選択的に修飾する処理を行うことができる。従って、当該基板処理方法、基板処理システム及び自己組織化材料は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
図1
図2