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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】改質システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20230322BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230322BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J23/46 311M
B01J23/72 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019131425
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014393
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】河内 浩康
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0059376(US,A1)
【文献】特開2010-241675(JP,A)
【文献】特開2013-252988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
B01J 23/46
B01J 23/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを水素に分解する改質触媒を有し、前記燃料ガスを改質して前記水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器に供給される前記燃料ガス及び酸化性ガスが流れるメイン流路と、
前記メイン流路と分岐接続され、前記改質器に向けて前記燃料ガス及び前記酸化性ガスが流れる起動用流路と、
前記起動用流路を流れる前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部と前記改質器との間に配置され、前記酸化性ガスにより前記燃料ガスを燃焼させる燃焼触媒と、
前記メイン流路を流れる前記燃料ガスの流量を制御する第1燃料ガスバルブと、
前記メイン流路を流れる前記酸化性ガスの流量を制御する第1酸化性ガスバルブと、
前記起動用流路を流れる前記燃料ガスの流量を制御する第2燃料ガスバルブと、
前記起動用流路を流れる前記酸化性ガスの流量を制御する第2酸化性ガスバルブと、
前記改質器の起動時に、前記燃焼触媒への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第2燃料ガスバルブ及び前記第2酸化性ガスバルブを制御すると共に、前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を開始するように前記ヒータ部を制御し、その後前記改質器への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第1燃料ガスバルブ及び前記第1酸化性ガスバルブを制御する制御部とを備え、
前記燃焼触媒は、前記改質触媒よりも小型であると共に、前記起動用流路における前記ヒータ部よりも下流側に配設されている改質システム。
【請求項2】
前記燃焼触媒における燃焼に関する温度を検出する第1温度検出部と、
前記改質触媒の温度を検出する第2温度検出部とを更に備え、
前記制御部は、前記第1温度検出部により検出された前記燃焼触媒における燃焼に関する温度が予め定められた第1規定温度以上であるときは、前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させるように前記ヒータ部を制御し、その後前記第2温度検出部により検出された前記改質触媒の温度が予め定められた第2規定温度以上であるときは、前記燃焼触媒への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を停止させるように前記第2燃料ガスバルブ及び前記第2酸化性ガスバルブを制御する請求項記載の改質システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1温度検出部により検出された前記燃焼触媒における燃焼に関する温度が前記第1規定温度以上であるときは、前記改質器への前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第1酸化性ガスバルブを制御すると共に、前記燃焼触媒に供給される前記燃料ガスの流量を増加させるように前記第2燃料ガスバルブを制御し、その後前記第2温度検出部により検出された前記改質触媒の温度が前記第2規定温度以上であるときは、前記改質器への前記燃料ガスの供給を開始するように前記第1燃料ガスバルブを制御する請求項記載の改質システム。
【請求項4】
燃料ガスを水素に分解する改質触媒を有し、前記燃料ガスを改質して前記水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器に供給される前記燃料ガス及び酸化性ガスが流れるメイン流路と、
前記メイン流路と分岐接続され、前記改質器に向けて前記燃料ガス及び前記酸化性ガスが流れる起動用流路と、
前記起動用流路を流れる前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部と前記改質器との間に配置され、前記酸化性ガスにより前記燃料ガスを燃焼させる燃焼触媒と、
前記メイン流路を流れる前記燃料ガスの流量を制御する第1燃料ガスバルブと、
前記メイン流路を流れる前記酸化性ガスの流量を制御する第1酸化性ガスバルブと、
前記起動用流路を流れる前記燃料ガスの流量を制御する第2燃料ガスバルブと、
前記起動用流路を流れる前記酸化性ガスの流量を制御する第2酸化性ガスバルブと、
前記改質器の起動時に、前記燃焼触媒への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第2燃料ガスバルブ及び前記第2酸化性ガスバルブを制御すると共に、前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を開始するように前記ヒータ部を制御し、その後前記改質器への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第1燃料ガスバルブ及び前記第1酸化性ガスバルブを制御する制御部と、
前記燃焼触媒における燃焼に関する温度を検出する第1温度検出部と、
前記改質触媒の温度を検出する第2温度検出部とを備え、
前記燃焼触媒は、前記改質触媒よりも小型であると共に、前記メイン流路における前記起動用流路との接続点と前記改質器との間に配設されており、
前記制御部は、前記第1温度検出部により検出された前記燃焼触媒における燃焼に関する温度が予め定められた第1規定温度以上であるときは、前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させるように前記ヒータ部を制御し、その後前記第2温度検出部により検出された前記改質触媒の温度が予め定められた第2規定温度以上であるときは、前記燃焼触媒への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を停止させるように前記第2燃料ガスバルブ及び前記第2酸化性ガスバルブを制御する改質システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1温度検出部により検出された前記燃焼触媒における燃焼に関する温度が前記第1規定温度以上であるときは、前記改質器への前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの供給を開始するように前記第1燃料ガスバルブ及び前記第1酸化性ガスバルブを制御し、その後前記第2温度検出部により検出された前記改質触媒の温度が前記第2規定温度以上であるときは、前記改質器に供給される前記燃料ガス及び前記酸化性ガスの流量を変更するように前記第1燃料ガスバルブ及び前記第1酸化性ガスバルブを制御する請求項記載の改質システム。
【請求項6】
前記燃焼触媒は、複数の細孔がランダムに空いている多孔質形状を呈している請求項4または5記載の改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の改質システムとしては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の改質システムは、燃料を気化する燃料気化器と、この燃料気化器により気化された燃料、空気及び水蒸気が供給され、改質反応により水素を生成する改質反応装置とを備えている。改質反応装置には、上流側から下流側に向かって、通電により発熱すると共に触媒燃焼によって発熱を促進する発熱触媒を担持するハニカム型の触媒ヒータと、主に部分酸化反応を促進するハニカム触媒と、主に自己熱改質(ATR)反応を促進するハニカム触媒とが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-154805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、上流の触媒ヒータで発生した熱を利用して、下流のハニカム触媒を加熱している。しかし、触媒ヒータのサイズがハニカム触媒のサイズと同程度であるため、触媒ヒータの熱容量が大きくなり、改質反応装置(改質器)が定常動作に達するまでの起動時間が長くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、改質器が定常動作に達するまでの起動時間を短縮することができる改質システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る改質システムは、燃料ガスを水素に分解する改質触媒を有し、燃料ガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、改質器に供給される燃料ガス及び酸化性ガスが流れるメイン流路と、メイン流路と分岐接続され、改質器に向けて燃料ガス及び酸化性ガスが流れる起動用流路と、起動用流路を流れる燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方を加熱するヒータ部と、ヒータ部と改質器との間に配置され、酸化性ガスにより燃料ガスを燃焼させる燃焼触媒と、メイン流路を流れる燃料ガスの流量を制御する第1燃料ガスバルブと、メイン流路を流れる酸化性ガスの流量を制御する第1酸化性ガスバルブと、起動用流路を流れる燃料ガスの流量を制御する第2燃料ガスバルブと、起動用流路を流れる酸化性ガスの流量を制御する第2酸化性ガスバルブと、改質器の起動時に、燃焼触媒への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を開始するように第2燃料ガスバルブ及び第2酸化性ガスバルブを制御すると共に、燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を開始するようにヒータ部を制御し、その後改質器への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を開始するように第1燃料ガスバルブ及び第1酸化性ガスバルブを制御する制御部とを備え、燃焼触媒は、改質触媒よりも小型である。
【0007】
このような改質システムにおいては、改質器の起動時に、燃料ガス及び酸化性ガスが起動用流路を流れて燃焼触媒に供給されると共に、起動用流路を流れる燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方がヒータ部により加熱される。すると、暖められた燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方が燃焼触媒に供給され、燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の熱によって燃焼触媒が加熱されるため、燃焼触媒において燃料ガスが燃焼され、燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスが改質器に供給され、燃焼ガスの熱によって改質器が加熱される。その状態で、燃料ガス及び酸化性ガスがメイン流路を流れて改質器に供給されると、改質器の改質触媒において燃料ガスの燃焼及び改質が行われ、改質器が定常動作となる。ここで、燃焼触媒は、改質触媒よりも小型である。従って、燃焼触媒に合わせてヒータ部を小型化することで、ヒータ部の熱容量が小さくなるため、燃焼触媒が早期に加熱される。そして、燃焼触媒で発生した燃焼ガスの熱によって改質触媒が加熱されるため、改質触媒の昇温速度が速くなる。これにより、改質器が定常動作に達するまでの起動時間が短縮される。
【0008】
燃焼触媒は、起動用流路におけるヒータ部よりも下流側に配設されていてもよい。このような構成では、燃焼触媒が起動用流路に配設されているため、ヒータ部により暖められた燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の熱によって燃焼触媒がより早期に加熱される。
【0009】
改質システムは、燃焼触媒における燃焼に関する温度を検出する第1温度検出部と、改質触媒の温度を検出する第2温度検出部とを更に備え、制御部は、第1温度検出部により検出された燃焼触媒における燃焼に関する温度が予め定められた第1規定温度以上であるときは、燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させるようにヒータ部を制御し、その後第2温度検出部により検出された改質触媒の温度が予め定められた第2規定温度以上であるときは、燃焼触媒への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を停止させるように第2燃料ガスバルブ及び第2酸化性ガスバルブを制御してもよい。このような構成では、ヒータ部による燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させることにより、ヒータ部の省電力化を図ることができる。また、燃焼触媒への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を停止させることにより、燃料ガス及び酸化性ガスを起動用流路に無駄に流さなくて済む。
【0010】
制御部は、第1温度検出部により検出された燃焼触媒における燃焼に関する温度が第1規定温度以上であるときは、改質器への酸化性ガスの供給を開始するように第1酸化性ガスバルブを制御すると共に、燃焼触媒に供給される燃料ガスの流量を増加させるように第2燃料ガスバルブを制御し、その後第2温度検出部により検出された改質触媒の温度が第2規定温度以上であるときは、改質器への燃料ガスの供給を開始するように第1燃料ガスバルブを制御してもよい。このような構成では、燃焼触媒に供給される燃料ガスの流量を増加させることにより、燃焼触媒における燃焼に関する温度の上昇が抑制される。
【0011】
燃焼触媒は、メイン流路における起動用流路との接続点と改質器との間に配設されていてもよい。このような構成では、燃焼触媒がメイン流路に配設されているため、燃焼触媒で発生した燃焼ガスとメイン流路を流れる燃料ガス及び酸化性ガスとが混合されて分散するようになる。従って、燃焼ガスと燃料ガス及び酸化性ガスとを均一性良く改質器に供給することができる。
【0012】
改質システムは、燃焼触媒における燃焼に関する温度を検出する第1温度検出部と、改質触媒の温度を検出する第2温度検出部とを更に備え、制御部は、第1温度検出部により検出された燃焼触媒における燃焼に関する温度が予め定められた第1規定温度以上であるときは、燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させるようにヒータを制御し、その後第2温度検出部により検出された改質触媒の温度が予め定められた第2規定温度以上であるときは、燃焼触媒への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を停止させるように第2燃料ガスバルブ及び第2酸化性ガスバルブを制御してもよい。このような構成では、ヒータ部による燃料ガス及び酸化性ガスの少なくとも一方の加熱を停止させることにより、ヒータ部の省電力化を図ることができる。また、燃焼触媒への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を停止させることにより、燃料ガス及び酸化性ガスを起動用流路に無駄に流さなくて済む。
【0013】
制御部は、第1温度検出部により検出された燃焼触媒における燃焼に関する温度が第1規定温度以上であるときは、改質器への燃料ガス及び酸化性ガスの供給を開始するように第1燃料ガスバルブ及び第1酸化性ガスバルブを制御し、その後第2温度検出部により検出された改質触媒の温度が第2規定温度以上であるときは、改質器に供給される燃料ガス及び酸化性ガスの流量を変更するように第1燃料ガスバルブ及び第1酸化性ガスバルブを制御してもよい。このような構成では、第1燃料ガスバルブと第1酸化性ガスバルブとが同じタイミングで制御されると共に、第2燃料ガスバルブと第2酸化性ガスバルブとが同じタイミングで制御される。従って、燃料ガス及び酸化性ガスの流量の制御処理を簡素化することができる。
【0014】
燃焼触媒は、複数の細孔がランダムに空いている多孔質形状を呈していてもよい。このような構成では、燃焼触媒で発生した燃焼ガスとメイン流路を流れる燃料ガス及び酸化性ガスとの混合及び分散が促進されるため、燃焼ガスと燃料ガス及び酸化性ガスとをより均一性良く改質器に供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、改質器が定常動作に達するまでの起動時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る改質システムを示す概略構成図である。
図2図1に示された改質器の正面図である。
図3図1に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
図4図1に示された改質システムの動作を示すタイミング図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る改質システムを示す概略構成図である。
図6図5に示された燃焼触媒の概略正面図である。
図7図5に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
図8図5に示された改質システムの動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る改質システムを示す概略構成図である。図1において、本実施形態の改質システム1は、アンモニアタンク2と、気化器3と、空気供給部4と、改質器5と、電気ヒータ6と、燃焼触媒7とを備えている。
【0019】
アンモニアタンク2は、アンモニア(NH)を液体状態で貯蔵するタンクである。気化器3は、アンモニア流路8を介してアンモニアタンク2と接続されている。気化器3は、ポンプ(図示せず)によりアンモニアタンク2から導出された液体状態のアンモニアを気化させて、燃料ガスであるアンモニアガスを生成する。空気供給部4は、酸化性ガスである空気を改質器5に供給する。空気供給部4としては、例えば送風機等が用いられる。
【0020】
改質器5は、気化器3により生成されたアンモニアガスを改質して、水素を含有した改質ガスを生成する。改質器5は、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒5aを有している。改質触媒5aは、メイン触媒である。改質触媒5aは、アンモニアガスを水素に分解する機能に加え、アンモニアガスを燃焼させる機能も有している。改質触媒5aとしては、例えばルテニウム、ロジウムまたは白金等が用いられる。
【0021】
改質器5は、図2に示されるように、ハニカム構造の担体9を有している。担体9は、円筒状を有している。担体9は、例えばコージェライトまたはSiC等といったセラミックスからなっている。改質触媒5aは、担体9に担持されている。
【0022】
改質器5には、共通メイン流路10が接続されている。共通メイン流路10は、メインアンモニアガス流路11を介して気化器3と接続されていると共に、メイン空気流路12を介して空気供給部4と接続されている。メインアンモニアガス流路11は、改質器5の定常動作時(後述)にアンモニアガスが流れるメイン流路である。メイン空気流路12は、改質器5の定常動作時に空気が流れるメイン流路である。共通メイン流路10は、改質器5の定常動作時に改質器5に供給されるアンモニアガス及び空気が流れるメイン流路である。
【0023】
メインアンモニアガス流路11には、電磁式の第1アンモニアガスバルブ13が配設されている。第1アンモニアガスバルブ13は、メインアンモニアガス流路11を流れるアンモニアガスの流量を制御する第1燃料ガスバルブである。メイン空気流路12には、電磁式の第1空気バルブ14が配設されている。第1空気バルブ14は、メイン空気流路12を流れる空気の流量を制御する第1酸化性ガスバルブである。
【0024】
共通メイン流路10には、共通起動用流路15が分岐接続されている。共通起動用流路15は、起動用アンモニアガス流路16を介してメインアンモニアガス流路11と分岐接続されていると共に、起動用空気流路17を介してメイン空気流路12と分岐接続されている。起動用アンモニアガス流路16は、改質器5の起動時(後述)にアンモニアガスが流れる起動用流路である。起動用空気流路17は、改質器5の起動時に空気が流れる起動用流路である。共通起動用流路15は、改質器5の起動時にアンモニアガス及び空気が改質器5に向けて流れる起動用流路である。
【0025】
起動用アンモニアガス流路16には、電磁式の第2アンモニアガスバルブ18が配設されている。第2アンモニアガスバルブ18は、起動用アンモニアガス流路16を流れるアンモニアガスの流量を制御する第2燃料ガスバルブである。起動用空気流路17には、電磁式の第2空気バルブ19が配設されている。第2空気バルブ19は、起動用空気流路17を流れる空気の流量を制御する第2酸化性ガスバルブである。
【0026】
電気ヒータ6は、共通起動用流路15に配設されている。電気ヒータ6は、共通起動用流路15を流れるアンモニアガス及び空気を加熱するヒータ部である。電気ヒータ6は、例えば熱を発生させる発熱体を有している。
【0027】
燃焼触媒7は、共通起動用流路15における電気ヒータ6よりも下流側に配設されている。つまり、燃焼触媒7は、電気ヒータ6と改質器5との間に配置されている。燃焼触媒7は、酸化触媒であり、アンモニアガスを燃焼させる機能を有している。燃焼触媒7としては、例えばCuO/10Al・2B等が用いられる。燃焼触媒7は、改質器5と同様に、円筒状のハニカム構造を有する担体に担持されている。
【0028】
燃焼触媒7は、改質器5の改質触媒5aよりも小型である。例えば、燃焼触媒7を担持する担体の容積及び表面積等は、改質触媒5aを担持する担体9の容積及び表面積等よりも小さい。具体的には、燃焼触媒7を担持する担体の外径及び長さ寸法は、改質触媒5aを担持する担体9の外径及び長さ寸法よりも小さい。
【0029】
改質器5には、改質ガス流路20を介して水素利用装置21が接続されている。改質ガス流路20は、改質器5により生成された改質ガスが流れる流路である。水素利用装置21は、改質ガスに含有された水素を利用する装置である。水素利用装置21としては、例えば水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池、アンモニアを燃料としたアンモニアエンジンまたはアンモニアガスタービン等が挙げられる。
【0030】
また、改質システム1は、温度センサ22,23と、コントローラ24とを備えている。温度センサ22は、燃焼触媒7における燃焼に関する温度を検出する第1温度検出部である。温度センサ22は、燃焼触媒7における燃焼に関する温度として、共通起動用流路15における燃焼触媒7の下流側の温度を検出する。温度センサ23は、改質器5の改質触媒5aの温度を検出する第2温度検出部である。温度センサ23は、例えば改質触媒5aの上流側端部の温度を検出する。
【0031】
コントローラ24は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ24は、温度センサ22,23の検出値に基づいて、電気ヒータ6、第1アンモニアガスバルブ13、第1空気バルブ14、第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19を制御する制御部である。
【0032】
コントローラ24は、改質器5の起動時に、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給を開始するように第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19を制御すると共に、アンモニアガス及び空気の加熱を開始するように電気ヒータ6を制御し、その後改質器5へのアンモニアガス及び空気の供給を開始するように第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14を制御する。
【0033】
図3は、図1に示されたコントローラ24により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理は、図示しない手動スイッチ等により改質システム1の起動が指示されると実行される。また、本処理の実行前は、第1アンモニアガスバルブ13、第1空気バルブ14、第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19は、何れも閉じた状態となっている。
【0034】
図3において、コントローラ24は、改質システム1の起動が指示されると、電気ヒータ6の通電を開始するように電気ヒータ6を制御する(手順S101)。
【0035】
そして、コントローラ24は、第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19を開くように制御する(手順S102)。すると、アンモニアガスが改質器5に向けて起動用アンモニアガス流路16及び共通起動用流路15を流れると共に、空気が改質器5に向けて起動用空気流路17及び共通起動用流路15を流れる。つまり、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給が開始される。このとき、第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19の開度は、アンモニアガスの流量a1と空気の流量a2とが当量(例えばa1:a2=1:3/4)となるように設定される(図4(b),(c)参照)。
【0036】
アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を流れると、電気ヒータ6によりアンモニアガス及び空気が加熱され、暖められたアンモニアガス及び空気の熱によって燃焼触媒7が加熱される。すると、燃焼触媒7においてアンモニアガスが燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、燃焼ガスが改質器5に供給され、燃焼ガスの熱によって改質器5の改質触媒5aが加熱される。
【0037】
続いて、コントローラ24は、温度センサ22により検出された燃焼触媒7の下流側の温度が予め定められた第1規定温度以上であるかどうかを判断する(手順S103)。第1規定温度は、例えば改質器5の改質触媒5aによりアンモニアガスの燃焼を可能にするような燃焼ガスが生成される温度である。なお、改質触媒5aにおいてアンモニアガスの燃焼が可能となる温度は、例えば200℃程度である。
【0038】
コントローラ24は、燃焼触媒7の下流側の温度が第1規定温度以上であると判断したときは、電気ヒータ6の通電を停止させるように電気ヒータ6を制御する(手順S104)。
【0039】
そして、コントローラ24は、第2アンモニアガスバルブ18の開度が大きくなるように第2アンモニアガスバルブ18を制御する(手順S105)。すると、起動用アンモニアガス流路16及び共通起動用流路15を流れるアンモニアガスの流量が増加するため、燃焼触媒7に供給されるアンモニアガスの流量が増加する。
【0040】
そして、コントローラ24は、第1空気バルブ14を開くように制御する(手順S106)。すると、空気が改質器5に向けてメイン空気流路12及び共通メイン流路10を流れ、改質器5への空気の供給が開始される。このとき、第2アンモニアガスバルブ18及び第1空気バルブ14の開度は、アンモニアガスの流量の増加分b1と空気の流量b2とが当量(例えばb1:b2=1:3/4)となるように設定される(図4(b),(e)参照)。
【0041】
続いて、コントローラ24は、温度センサ23により検出された改質触媒5aの温度が予め定められた第2規定温度以上であるかどうかを判断する(手順S107)。第2規定温度は、改質触媒5aにおいてアンモニアガスの改質反応が安定化する定常動作となるような温度であり、例えば400℃~600℃程度である。
【0042】
コントローラ24は、改質触媒5aの温度が第2規定温度以上であると判断したときは、第2アンモニアガスバルブ18及び第2空気バルブ19を閉じるように制御する(手順S108)。すると、アンモニアガスが起動用アンモニアガス流路16及び共通起動用流路15を流れなくなると共に、空気が起動用空気流路17及び共通起動用流路15を流れなくなるため、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給が停止する。
【0043】
また、コントローラ24は、第1アンモニアガスバルブ13を開くように制御すると共に、第1空気バルブ14の開度を変更するように第1空気バルブ14を制御する(手順S109)。すると、アンモニアガスが改質器5に向けてメインアンモニアガス流路11及び共通メイン流路10を流れ、改質器5へのアンモニアガスの供給が開始されると共に、メイン空気流路12及び共通メイン流路10を流れる空気の流量が変更されるため、改質器5に供給される空気の流量が変更される。
【0044】
このとき、第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14の開度は、改質器5の改質性能または必要な水素量に応じたアンモニアガス及び空気の流量が得られるように設定される。例えば、アンモニアガスが空気に対してリッチとなるように、アンモニアガスの流量c1と空気の流量c2とが決定される(図4(d),(e)参照)。
【0045】
図4は、改質システム1の動作を示すタイミング図である。図4において、改質器5を含む改質システム1の起動が指示されると、電気ヒータ6の通電が開始される(図4(a)参照)。また、アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を改質器5に向けて流れる(図4(b),(c)参照)。すると、電気ヒータ6によりアンモニアガスと空気との混合ガスが加熱され、暖められた混合ガスの熱によって燃焼触媒7が加熱される(図4(f)参照)。
【0046】
燃焼触媒7の温度が燃焼可能な温度(例えば200℃以上)に達すると、燃焼触媒7によりアンモニアガスが燃焼され、燃焼ガスが生成される。そして、燃焼ガスが改質器5に供給され、燃焼ガスの熱によって改質器5の改質触媒5aが加熱される(図4(g)参照)。
【0047】
時刻t1において燃焼触媒7の下流側の温度が第1規定温度に達すると、電気ヒータ6の通電が停止する(図4(a)参照)。また、共通起動用流路15を改質器5に向けて流れるアンモニアガスの流量が増加する(図4(b)参照)と共に、空気が共通メイン流路10を改質器5に向けて流れるようになる(図4(e)参照)。このとき、共通起動用流路15を流れるアンモニアガスの流量が共通起動用流路15を流れる空気の流量よりも多くなるが、流量増加分のアンモニアガスは燃焼触媒7での燃焼に寄与しないため、燃焼触媒7の温度が僅かに低下する(図4(f)参照)。流量増加分のアンモニアガスは、燃焼触媒7の燃焼熱により加熱される。
【0048】
暖められたアンモニアガスは、共通メイン流路10を流れる空気と混合されて改質器5に供給される。燃焼ガスの熱によって加熱された改質触媒5aの温度が燃焼可能な温度に達すると、改質触媒5aによりアンモニアガスが燃焼される。すると、燃焼熱により改質触媒5aが更に加熱される。そして、改質触媒5aの温度が改質可能な温度に達すると、改質触媒5aによりアンモニアガスの改質が行われ、水素を含有した改質ガスが生成される。
【0049】
そして、時刻t2において改質触媒5aの温度が第2規定温度に達すると、アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を流れなくなり、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給が停止する(図4(b),(c)参照)。また、アンモニアガスが共通メイン流路10を流れて改質器5に供給される(図4(d)参照)と共に、共通メイン流路10を流れて改質器5に供給される空気の流量が増加し(図4(e)参照)、その状態でアンモニアガスの改質が継続される。以上により、改質器5の起動が完了し、改質器5が定常動作に移行する。
【0050】
以上のように本実施形態にあっては、改質器5の起動時に、アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を流れて燃焼触媒7に供給されると共に、共通起動用流路15を流れるアンモニアガス及び空気が電気ヒータ6により加熱される。すると、暖められたアンモニアガス及び空気が燃焼触媒7に供給され、アンモニアガス及び空気の熱によって燃焼触媒7が加熱されるため、燃焼触媒7においてアンモニアガスが燃焼され、燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスが改質器5に供給され、燃焼ガスの熱によって改質器5が加熱される。その状態で、アンモニアガス及び空気が共通メイン流路10を流れて改質器5に供給されると、改質器5の改質触媒5aにおいてアンモニアガスの燃焼及び改質が行われ、改質器5が定常動作となる。ここで、燃焼触媒7は、改質触媒5aよりも小型である。従って、燃焼触媒7に合わせて電気ヒータ6を小型化することで、電気ヒータ6の熱容量が小さくなるため、燃焼触媒7が早期に加熱される。そして、燃焼触媒7で発生した燃焼ガスの熱によって改質触媒5aが加熱されるため、改質触媒5aの昇温速度が速くなる。これにより、改質器5が定常動作になるまでの起動時間T(図4参照)が短縮される。
【0051】
また、本実施形態では、燃焼触媒7が共通起動用流路15における電気ヒータ6よりも下流側に配設されているため、電気ヒータ6により暖められたアンモニアガス及び空気の熱によって燃焼触媒7がより早期に加熱される。
【0052】
また、本実施形態では、燃焼触媒7の下流側の温度が第1規定温度以上になると、電気ヒータ6によるアンモニアガス及び空気の加熱を停止させることにより、電気ヒータ6の省電力化を図ることができる。また、改質触媒5aの温度が第2規定温度以上になると、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給を停止させることにより、アンモニアガス及び空気を共通起動用流路15に無駄に流さなくて済む。
【0053】
また、本実施形態では、改質触媒5aの温度が第2規定温度以上になると、燃焼触媒7に供給されるアンモニアガスの流量を増加させることにより、燃焼触媒7の下流側の温度の上昇が抑制される。
【0054】
なお、本実施形態では、電気ヒータ6と燃焼触媒7とが別々の部品として構成されているが、特にその形態には限られず、電気ヒータと燃焼触媒とが一体構成の通電加熱触媒(EHC:ElectricalHeating Catalyst)を使用してもよい。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態に係る改質システムを示す概略構成図である。図5において、本実施形態の改質システム1Aは、上記の第1実施形態における燃焼触媒7に代えて、燃焼触媒30を備えている。燃焼触媒30は、共通メイン流路10における共通起動用流路15との接続点10aと改質器5との間に配設されている。つまり、燃焼触媒30は、電気ヒータ6と改質器5との間に配置されている。
【0056】
燃焼触媒30は、図6に示されるように、複数の細孔30aがランダムに空いている多孔質形状を呈している。燃焼触媒30では、未反応のアンモニアガスがすり抜けることができる程度に細孔30aの目が粗くなっている。燃焼触媒30は、例えばステンレス鋼等の金属ワイヤーをランダムに折り曲げて形成された担体にCuO/10Al・2B等が担持された構造を有している。担体は、円筒状を有している。燃焼触媒30は、改質器5の改質触媒5aよりも小型である。
【0057】
また、改質システム1Aは、上記の第1実施形態と同様に、温度センサ22,23及びコントローラ24を備えている。温度センサ22は、燃焼触媒30における燃焼に関する温度を検出する。温度センサ22は、燃焼触媒30における燃焼に関する温度として、共通メイン流路10における燃焼触媒30の下流側の温度を検出する。
【0058】
図7は、図5に示されたコントローラ24により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。図7において、コントローラ24は、上記の第1実施形態と同様に、手順S101~S104を順次実行する。
【0059】
コントローラ24は、手順S104を実行した後、第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14を開くように制御する(手順S111)。すると、アンモニアガスが改質器5に向けてメインアンモニアガス流路11及び共通メイン流路10を流れると共に、空気が改質器5に向けてメイン空気流路12及び共通メイン流路10を流れる。このため、改質器5へのアンモニアガス及び空気の供給が開始される。このとき、第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14の開度は、アンモニアガスの流量d1と空気の流量d2とが当量(例えばd1:d2=1:3/4)となるように設定される(図8(d),(e)参照)。
【0060】
続いて、コントローラ24は、上記の第1実施形態と同様に、手順S107,S108を順次実行する。コントローラ24は、手順S108を実行した後、第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14の開度を変更するように第1アンモニアガスバルブ13及び第1空気バルブ14を制御する(手順S112)。すると、メインアンモニアガス流路11及び共通メイン流路10を流れるアンモニアガスの流量が変更されると共に、メイン空気流路12及び共通メイン流路10を流れる空気の流量が変更される。このため、改質器5に供給されるアンモニアガス及び空気の流量が変更される。このとき、例えばアンモニアガスが空気に対してリッチとなるように、アンモニアガスの流量e1と空気の流量e2とが決定される(図8(d),(e)参照)。
【0061】
図8は、改質システム1Aの動作を示すタイミング図である。図8において、改質器5を含む改質システム1Aの起動が指示されると、電気ヒータ6の通電が開始される(図8(a)参照)。また、アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を改質器5に向けて流れる(図8(b),(c)参照)。すると、電気ヒータ6によりアンモニアガスと空気との混合ガスが加熱され、暖められた混合ガスの熱によって燃焼触媒30が加熱される(図8(f)参照)。
【0062】
燃焼触媒30の温度が燃焼可能な温度(例えば200℃以上)に達すると、燃焼触媒30によりアンモニアガスが燃焼され、燃焼ガスが生成される。そして、燃焼ガスが改質器5に供給され、燃焼ガスの熱によって改質器5の改質触媒5aが加熱される(図8(g)参照)。
【0063】
時刻t1において燃焼触媒30の下流側の温度が第1規定温度に達すると、電気ヒータ6の通電が停止する(図8(a)参照)。また、アンモニアガス及び空気が共通メイン流路10を改質器5に向けて流れるようになる(図8(d),(e)参照)。すると、アンモニアガスの一部が燃焼触媒30において燃焼すると共に、未燃のアンモニアガス及び空気が燃焼触媒30の燃焼熱により加熱される。
【0064】
暖められたアンモニアガス及び空気は、改質器5に供給される。燃焼ガスの熱によって加熱された改質触媒5aの温度が燃焼可能な温度に達すると、アンモニアガスが燃焼される。すると、その燃焼熱により改質触媒5aが更に加熱される。そして、改質触媒5aの温度が改質可能な温度に達すると、改質触媒5aによりアンモニアガスの改質が行われ、水素を含有した改質ガスが生成される。
【0065】
そして、時刻t2において改質触媒5aの温度が第2規定温度に達すると、アンモニアガス及び空気が共通起動用流路15を流れなくなり、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給が停止する(図8(b),(c)参照)。また、共通メイン流路10を流れて改質器5に供給されるアンモニアガス空気の流量が増加し(図8(d),(e)参照)、その状態でアンモニアガスの改質が継続される。以上により、改質器5の起動が完了し、改質器5が定常動作に移行する。
【0066】
以上のような本実施形態においても、燃焼触媒30に合わせて電気ヒータ6を小型化することで、電気ヒータ6の熱容量が小さくなるため、燃焼触媒30が早期に加熱される。そして、燃焼触媒30で発生した燃焼ガスの熱によって改質器5の改質触媒5aが加熱されるため、改質触媒5aの昇温速度が速くなる。これにより、改質器5が定常動作になるまでの起動時間T(図8参照)が短縮される。
【0067】
また、本実施形態では、燃焼触媒30は、共通メイン流路10における共通起動用流路15との接続点10aと改質器5との間に配設されている。このため、燃焼触媒30で発生した燃焼ガスと共通メイン流路10を流れるアンモニアガス及び空気とが混合されて分散するようになる。従って、燃焼ガスとアンモニアガス及び空気とを均一性良く改質器5に供給することができる。
【0068】
また、本実施形態では、燃焼触媒30は、複数の細孔30aがランダムに空いている多孔質形状を呈している。従って、燃焼触媒30で発生した燃焼ガスと共通メイン流路10を流れるアンモニアガス及び空気との混合及び分散が促進されるため、燃焼ガスとアンモニアガス及び空気とをより均一性良く改質器5に供給することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1アンモニアガスバルブ13と第1空気バルブ14とが同じタイミングで制御されると共に、第2アンモニアガスバルブ18と第2空気バルブ19とが同じタイミングで制御される。従って、アンモニアガス及び空気の流量の制御処理を簡素化することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、燃焼触媒30は改質器5とは別の部品であるが、特にその形態には限られず、例えば改質器5の担体9の上流側端部に燃焼触媒30が塗られていてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、燃焼触媒7,30の下流側の温度が燃焼触媒7,30における燃焼に関する温度として検出されているが、特にその形態には限られず、例えば燃焼触媒7,30自体の温度を燃焼触媒7,30における燃焼に関する温度として検出してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、温度センサ22により燃焼触媒7,30における燃焼に関する温度が検出されているが、特にその形態には限られず、例えばアンモニアガス及び空気の流量、時間及び室温等に基づいて、燃焼触媒7,30における燃焼に関する温度を推定してもよい。また、温度センサ23により改質器5の改質触媒5aの温度が検出されているが、特にその形態には限られず、例えばアンモニアガス及び空気の流量、時間及び室温等に基づいて、改質触媒5aの温度を推定してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、燃焼触媒7,30における燃焼に関する温度が第1規定温度以上であるかどうかを判断して、後の処理手順が実行されているが、特にその形態には限られず、例えば温度センサ23により検出された改質触媒5aの温度が予め定められた規定温度以上であるかどうかを判断して、後の処理手順を実行してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、電気ヒータ6によりアンモニアガス及び空気が加熱されているが、特にその形態には限られず、アンモニアガス及び空気を別々の電気ヒータにより加熱してもよい。また、アンモニアガスのみを加熱してもよいし、空気のみを加熱してもよい。
【0075】
また、小型の燃焼触媒7,30の数としては、特に1つには限られず、複数であってもよい。この場合には、複数の燃焼触媒にアンモニアガス及び空気の少なくとも一方が当たるようにする。
【0076】
また、上記実施形態では、改質器5の改質触媒5aの温度が第2規定温度以上になると、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給が停止しているが、燃焼触媒7へのアンモニアガス及び空気の供給を停止させるタイミングとしては、特にその形態には限られず、例えば電気ヒータ6の通電の停止と同時でもよいし、或いは改質器5の改質触媒5aの温度が第2規定温度以上になってから所定時間の経過後でもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、酸化性ガスとして空気を使用しているが、特にその形態には限られず、酸化性ガスとして酸素を使用してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、燃料ガスとしてアンモニアガスを使用しているが、本発明は、燃料ガスとして炭化水素ガス等を使用した改質システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1,1A…改質システム、5…改質器、5a…改質触媒、6…電気ヒータ(ヒータ部)、7…燃焼触媒、10…共通メイン流路(メイン流路)、10a…接続点、13…第1アンモニアガスバルブ(第1燃料ガスバルブ)、14…第1空気バルブ(第1酸化性ガスバルブ)、15…共通起動用流路(起動用流路)、18…第2アンモニアガスバルブ(第2燃料ガスバルブ)、19…第2空気バルブ(第2酸化性ガスバルブ)、22…温度センサ(第1温度検出部)、23…温度センサ(第2温度検出部)、24…コントローラ(制御部)、30…燃焼触媒、30a…細孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8