(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】フォークリフトのサイドシフト制御装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230322BHJP
B66F 9/14 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B66F9/24 N
B66F9/24 P
B66F9/14 A
(21)【出願番号】P 2019167676
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2021-12-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-186200(JP,A)
【文献】特開平11-278799(JP,A)
【文献】特開2018-158779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0312382(US,A1)
【文献】特開2019-091295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のフォークをパレットに差し込む際に、前記1対のフォークを左右方向に移動させるサイドシフトシリンダを制御するフォークリフトのサイドシフト制御装置であって、
前記パレットを検出するパレット検出部と、
前記パレット検出部の検出データに基づいて、前記フォークリフトに対する前記パレットの姿勢を検知する姿勢検知部と、
前記パレット検出部の検出データに基づいて、前記パレットの正面の幅方向中心の位置を求めると共に、前記パレットの正面の幅方向中心の位置と前記姿勢検知部により検知された前記フォークリフトに対する前記パレットの姿勢とに基づいて、前記パレットの背面の幅方向中心の位置を求める位置算出部と、
前記位置算出部により求められた前記パレットの正面及び背面の幅方向中心の位置を通るパレット中心線と前記1対のフォーク間の中心点との距離を求める距離算出部と、
前記フォークリフトが前記パレットの正面側に位置した状態で、前記1対のフォークが前記パレットに差し込まれる前に、前記距離算出部により求められた前記パレット中心線と前記中心点との距離が所定値以下になるように前記サイドシフトシリンダを制御する制御部とを備えるフォークリフトのサイドシフト制御装置。
【請求項2】
前記位置算出部は、前記パレット検出部の検出データに基づいて、前記フォークリフトの規定位置を原点としたフォークリフト座標系における前記パレットの正面の幅方向中心の位置を第1パレット中心位置として求め、前記第1パレット中心位置を地球の緯度及び経度で表されるワールド座標系に変換すると共に、前記第1パレット中心位置と前記フォークリフトに対する前記パレットの姿勢とに基づいて、前記フォークリフト座標系における前記パレットの背面の幅方向中心の位置を第2パレット中心位置として求め、前記第2パレット中心位置を前記ワールド座標系に変換し、
前記距離算出部は、前記ワールド座標系において、前記パレット中心線と前記中心点との距離を求める請求項1記載のフォークリフトのサイドシフト制御装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのサイドシフト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、サイドシフトフォークを備えたフォークリフトが記載されている。特許文献1に記載のサイドシフトフォークは、左右1対のリフトブラケットに固定された上下1対のフィンガーバーと、これらのフィンガーバーに対して左右に移動可能なシフターと、このシフターをフィンガーバーに対して左右に移動させるシフトシリンダとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトの荷役作業では、パレットの幅方向中央部にフォークを差し込んだ状態で、フォークによりパレットを持ち上げる必要がある。しかし、フォークリフトの自動運転において、フォークをパレットに差し込む際に、フォークとパレットとの位置関係が不明であると、パレットの幅方向中央部からずれた位置にフォークを差し込んだ状態でパレットを持ち上げる虞がある。この場合には、フォークに保持されたパレットが不安定になりやすい。
【0005】
本発明の目的は、パレットの幅方向中央部にフォークを差し込んだ状態でパレットを持ち上げることができるフォークリフトのサイドシフト制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、1対のフォークをパレットに差し込む際に、1対のフォークを左右方向に移動させるサイドシフトシリンダを制御するフォークリフトのサイドシフト制御装置であって、パレットを検出するパレット検出部と、パレット検出部の検出データに基づいて、フォークリフトに対するパレットの姿勢を検知する姿勢検知部と、パレット検出部の検出データに基づいて、パレットの正面の幅方向中心の位置を求めると共に、パレットの正面の幅方向中心の位置と姿勢検知部により検知されたフォークリフトに対するパレットの姿勢とに基づいて、パレットの背面の幅方向中心の位置を求める位置算出部と、位置算出部により求められたパレットの正面及び背面の幅方向中心の位置を通るパレット中心線と1対のフォーク間の中心点との距離を求める距離算出部と、距離算出部により求められたパレット中心線と中心点との距離が所定値以下になるようにサイドシフトシリンダを制御する制御部とを備える。
【0007】
このようなサイドシフト制御装置においては、パレット検出部によりパレットが検出され、パレット検出部の検出データに基づいて、フォークリフトに対するパレットの姿勢が検知される。そして、パレット検出部の検出データに基づいて、パレットの正面の幅方向中心の位置が求められると共に、パレットの正面の幅方向中心の位置とフォークリフトに対するパレットの姿勢とに基づいて、パレットの背面の幅方向中心の位置が求められる。そして、パレットの正面及び背面の幅方向中心の位置を通るパレット中心線と1対のフォーク間の中心点との距離が求められ、当該距離が所定値以下になるようにサイドシフトシリンダが制御される。このため、フォークとパレットとの位置関係が把握され、1対のフォーク間の中心点がパレットの正面及び背面の幅方向中心の位置を通るパレット中心線に近づくようになる。これにより、パレットの幅方向中央部にフォークを差し込んだ状態でパレットを持ち上げることができる。
【0008】
位置算出部は、パレット検出部の検出データに基づいて、フォークリフトの規定位置を原点としたフォークリフト座標系におけるパレットの正面の幅方向中心の位置を第1パレット中心位置として求め、第1パレット中心位置を地球の緯度及び経度で表されるワールド座標系に変換すると共に、第1パレット中心位置とフォークリフトに対するパレットの姿勢とに基づいて、フォークリフト座標系におけるパレットの背面の幅方向中心の位置を第2パレット中心位置として求め、第2パレット中心位置をワールド座標系に変換し、距離算出部は、ワールド座標系において、パレット中心線と中心点との距離を求めてもよい。
【0009】
このような構成では、フォークリフト座標系におけるパレットの正面の幅方向中心の位置がワールド座標系に変換されると共に、フォークリフト座標系におけるパレットの背面の幅方向中心の位置がワールド座標系に変換される。そして、ワールド座標系において、パレット中心線と1対のフォーク間の中心点との距離が求められる。従って、フォークをパレットに差し込むためにフォークリフトがパレットに向かって走行するときに、フォークとパレットとの位置関係が逐次変化しても、パレットの正面及び背面の幅方向中心の位置を求め直さなくて済む。これにより、計算処理の簡素化を図ることができる。
【0010】
制御部は、1対のフォークがパレットに差し込まれる前に、パレット中心線と中心点との距離が所定値以下になるようにサイドシフトシリンダを制御してもよい。
【0011】
このような構成では、フォークがパレットに差し込まれる前に、1対のフォーク間の中心点がパレット中心線に近づくようになる。従って、フォークがパレットに差し込まれたときにフォークの先端がパレットに接触することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パレットの幅方向中央部にフォークを差し込んだ状態でパレットを持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサイドシフト制御装置を具備したフォークリフトを網パレットと共に示す概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るサイドシフト制御装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図2に示されたコントローラにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】フォークと網パレットとの位置関係を示す概念図である。
【
図5】フォークが網パレットの脚部に接触した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るサイドシフト制御装置を具備したフォークリフトを網パレットと共に示す概略平面図である。
図1において、フォークリフト1は、車体2と、この車体2の前側に配置され、網パレット3の荷役を行う荷役装置4とを備えている。
【0016】
荷役装置4は、車体2の前端部に取り付けられたマスト5と、このマスト5にリフトブラケット6及びロードブラケット7を介して昇降可能に取り付けられ、網パレット3を持ち上げる1対のフォーク8と、ロードブラケット7をリフトブラケット6に対して左右方向(車幅方向)に移動させることにより、1対のフォーク8を左右方向に移動させるサイドシフトシリンダ9(
図2参照)とを有している。フォーク8は、通常タイプよりも長いロングタイプのフォークである。なお、荷役装置4は、特に図示はしないが、フォーク8を昇降させるリフトシリンダも有している。
【0017】
網パレット3は、荷物を収容する略直方体形状の箱状パレットである。網パレット3は、例えばトラックの荷台に複数列で載置されている。網パレット3は、各列の奥行方向(I方向)に2つずつ配置されている。フォーク8は、ロングタイプであるため、手前側及び奥側の2つの網パレット3を一緒に持ち上げることが可能である。
【0018】
網パレット3は、正面3aと、この正面3aと対向する背面3bと、正面3a及び背面3bと直交する2つの側面3cとを有している。正面3aは、フォーク8により網パレット3を持ち上げる際に、フォークリフト1と向き合う面である。網パレット3の下端の4つの角部には、脚部39が設けられている。フォーク8により網パレット3を持ち上げるときは、網パレット3の左右両側に位置する脚部39間にフォーク8が差し込まれる。
【0019】
網パレット3の正面3aには、網パレット3の幅方向(J方向)に延びるプレート10が取り付けられている。プレート10には、2つの正方形状のマーカ11が左右両側に設けられている。なお、マーカ11の形状としては、矩形状等であってもよい。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係るサイドシフト制御装置を示す概略構成図である。
図2において、本実施形態のサイドシフト制御装置12は、フォークリフト1に搭載されている。サイドシフト制御装置12は、フォークリフト1の自動運転によって網パレット3の荷役作業を行うときに、サイドシフトシリンダ9を制御する装置である。具体的には、サイドシフト制御装置12は、1対のフォーク8を網パレット3に差し込む際に、サイドシフトシリンダ9を制御する。
【0021】
サイドシフト制御装置12は、カメラ13と、GPS受信機14と、コントローラ15とを有している。
【0022】
カメラ13は、網パレット3を撮像し、その撮像画像データを取得する。具体的には、カメラ13は、網パレット3の正面3aに設けられた2つのマーカ11を撮像する。カメラ13は、網パレット3を検出するパレット検出部を構成する。カメラ13は、特に図示はしないが、ロードブラケット7に取り付けられている。これにより、カメラ13は、フォーク8と一緒に左右方向に移動可能である。
【0023】
GPS受信機14は、GPS衛星からの信号を受信し、所定の計算を行ってフォークリフト1の現在位置を測定する。GPS受信機14は、例えばGPSを利用してフォークリフト1の方位を測定するGPS方位計を有している。なお、フォークリフト1の方位は、他の方位計を使用して測定してもよい。
【0024】
コントローラ15は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ15は、姿勢検知部16と、位置算出部17と、距離算出部18と、制御部19とを有している。
【0025】
姿勢検知部16は、カメラ13の撮像画像データに基づいて、フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢を検知する。カメラ13の撮像画像データは、カメラ13の検出データに相当する。
【0026】
位置算出部17は、カメラ13の撮像画像データに基づいて、手前側に位置する網パレット3(以下、網パレット3Aという)の正面3aの幅方向中心の位置を求めると共に、手前側に位置する網パレット3Aの正面3aの幅方向中心の位置と姿勢検知部16により検知されたフォークリフト1に対する網パレット3の姿勢とに基づいて、奥側に位置する網パレット3(以下、網パレット3Bという)の背面3bの幅方向中心の位置を求める。
【0027】
距離算出部18は、位置算出部17により求められた網パレット3Aの正面3aの幅方向中心の位置及び網パレット3Bの背面3bの幅方向中心の位置を通るパレット中心線と1対のフォーク8間の中心点との距離を算出する。
【0028】
制御部19は、距離算出部18により算出されたパレット中心線と1対のフォーク間の中心点との距離が所定値以下になるようにサイドシフトシリンダ9を制御する。ここでは、制御部19は、パレット中心線と1対のフォーク間の中心点との距離がゼロになるようにサイドシフトシリンダ9を制御する。なお、所定値は、ゼロに近い正(+)の値でもよい。
【0029】
図3は、コントローラ15により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、例えばフォークリフト1が荷役対象の網パレット3の正面側に位置した時点で実行される。つまり、本処理は、フォーク8が網パレット3に差し込まれる前に実行される。
【0030】
図3において、コントローラ15は、まずカメラ13の撮像画像データを取得する(手順S101)。また、コントローラ15は、GPS受信機14の位置情報を取得する(手順S102)。
【0031】
続いて、コントローラ15は、カメラ13の撮像画像データに基づいて、フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢を検知する(手順S103)。フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢は、
図4に示されるように、フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmで表される。
【0032】
具体的には、フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmは、フォークリフト1の前後方向と網パレット3の奥行方向とがなす角度である。フォークリフト1が網パレット3の正面3aをまっすぐ向いているときは、フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmは0度となる。
【0033】
フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmは、撮像画像データ上における2つのマーカ11の形状から検知される。フォークリフト1が網パレット3の正面3aをまっすぐ向いているときは、撮像画像データ上におけるマーカ11の形状は正方形である。しかし、フォークリフト1が網パレット3の正面3aに対して傾いているときは、撮像画像データ上におけるマーカ11の形状は、フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmに応じた台形となる。
【0034】
続いて、コントローラ15は、カメラ13の撮像画像データに基づいて、
図4に示されるように、フォークリフト座標系における手前側の網パレット3Aの正面3aの幅方向中心の位置Aを算出する(手順S104)。手前側の網パレット3Aの正面3aの幅方向中心の位置Aは、網パレット3Aの正面3aにおける2つのマーカ11間の中心位置である。
【0035】
フォークリフト座標系は、フォークリフト1の規定位置を原点とした座標系である。フォークリフト1の規定位置は、フォークリフト1の中心位置(例えば前輪の車軸の車幅方向中心の位置)である。
【0036】
フォークリフト座標系における手前側の網パレット3Aの正面3aの幅方向中心の位置A(以下、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置Aという)は、下記式のように位置座標(xa,ya)で表される。なお、手前側網パレット正面中心位置Aは、第1パレット中心位置である。
xa=xm
ya=ym+(-act)
【0037】
ここで、xaは、フォークリフト1の前後方向に沿った手前側網パレット正面中心位置Aの座標である。xbは、フォークリフト1の左右方向に沿った手前側網パレット正面中心位置Aの座標である。xmは、カメラ座標系におけるフォークリフト1の前後方向に沿った手前側網パレット正面中心位置Aの座標である。ymは、カメラ座標系におけるフォークリフト1の左右方向に沿った手前側網パレット正面中心位置Aの座標である。なお、上述したフォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmは、カメラ座標系における角度であると共に、フォークリフト座標系における角度である。
【0038】
actは、フォーク8の基準位置に対するフォーク8のサイドシフト量(左右方向の移動量)である。フォーク8の基準位置は、フォークリフト1の車幅方向の中心位置である。フォーク8は、通常は基準位置にある。actは、フォーク8を右側にシフトさせたときを正(+)としている。
【0039】
続いて、コントローラ15は、GPS受信機14の位置情報に基づいて、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置Aをワールド座標系に変換する(手順S105)。
【0040】
ワールド座標系は、地球の緯度及び経度で表される座標系である。ワールド座標系において、フォークリフト1の現在位置の座標は(X,Y)であり、フォークリフト1の方位はθである。
【0041】
ワールド座標系における手前側網パレット正面中心位置Aは、下記式のように位置座標(Xa,Ya)で表される。
Xa=X+xa×cosθ-ya×sinθ
Ya=Y+xa×sinθ+ya×cosθ
【0042】
続いて、コントローラ15は、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置Aとフォークリフト1に対する網パレット3の姿勢とに基づいて、
図4に示されるように、フォークリフト座標系における奥側の網パレット3Bの背面3bの幅方向中心の位置Bを算出する(手順S106)。フォークリフト座標系における奥側の網パレット3Bの背面3bの幅方向中心の位置B(以下、フォークリフト座標系における奥側網パレット背面中心位置Bという)は、下記式のように位置座標(xb,yb)で表される。なお、奥側網パレット背面中心位置Bは、第2パレット中心位置である。
xb=xa+P×cosθm
yb=ya+(-act)+P×sinθm
【0043】
ここで、xbは、フォークリフト1の前後方向に沿った奥側網パレット背面中心位置Bの座標である。ybは、フォークリフト1の左右方向に沿った奥側網パレット背面中心位置Bの座標である。Pは、手前側の網パレット3Aの正面3aから奥側の網パレット3Bの背面3bまでの距離である。
【0044】
続いて、コントローラ15は、GPS受信機14の位置情報に基づいて、フォークリフト座標系における奥側網パレット背面中心位置Bをワールド座標系に変換する(手順S107)。ワールド座標系における奥側網パレット背面中心位置Bは、下記式のように位置座標(Xb,Yb)で表される。
Xb=X+xb×cosθ-yb×sinθ
Yb=Y+xb×sinθ+yb×cosθ
【0045】
続いて、コントローラ15は、GPS受信機14の位置情報に基づいて、
図4に示されるように、ワールド座標系における1対のフォーク8間の中心点Cを算出する(手順S108)。1対のフォーク8間の中心点Cは、具体的には、フォーク8の長さの1/2の位置における1対のフォーク8間の中心の点である。フォーク8の長さの1/2の位置は、フォーク8の延在方向(長手方向)の中間位置である。
【0046】
ワールド座標系における1対のフォーク8間の中心点Cは、下記式のように位置座標(Xc,Yc)で表される。
Xc=X+Q×cosθ-(-act)×sinθ
Yc=Y+Q×sinθ+(-act)×cosθ
【0047】
ここで、xcは、フォークリフト1の前後方向に沿った1対のフォーク8間の中心点Cの座標である。ycは、フォークリフト1の左右方向に沿った1対のフォーク8間の中心点Cの座標である。Qは、フォークリフト1の中心位置からフォーク8の長さの1/2の位置までの距離である。
【0048】
続いて、コントローラ15は、
図4に示されるように、ワールド座標系における手前側網パレット正面中心位置Aとワールド座標系における奥側網パレット背面中心位置Bとを通るパレット中心線Gと、ワールド座標系における1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lを算出する(手順S109)。パレット中心線Gと中心点Cとの距離Lは、パレット中心線Gに直交する方向に沿った中心点Cからのパレット中心線Gまでの距離である。距離Lは、下記式で表される。
L=((xb-xa)(yc-ya)-(yb-ya)(xc-xa))
/(√((xa-xb)^2+(ya-yb)^2))
【0049】
続いて、コントローラ15は、PID制御により距離Lが0になるようなフォーク8のサイドシフト量を決定する(手順S110)。このとき、距離L>0となる場合は、1対のフォーク8間の中心点Cがパレット中心線Gの左側に位置している。距離L<0となる場合は、1対のフォーク8間の中心点Cがパレット中心線Gの右側に位置している。
【0050】
続いて、コントローラ15は、手順Sで決定されたサイドシフト量に応じてサイドシフトシリンダ9を制御する(手順S111)。
【0051】
ここで、姿勢検知部16は、手順S101,S103を実行する。位置算出部17は、手順S101,S102,S104~S107を実行する。距離算出部18は、手順S108,S109を実行する。制御部19は、手順S110,S111を実行する。
【0052】
以上において、フォークリフト1が網パレット3の手前に位置すると、カメラ13により網パレット3の正面3aが撮像される。そして、カメラ13の撮像画像データに基づいて、フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢が検知される。
【0053】
次いで、カメラ13の撮像画像データ及びGPS受信機14の位置情報に基づいて、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置Aが算出され、その手前側網パレット正面中心位置Aがワールド座標系に変換される。そして、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置A、フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢及びGPS受信機14の位置情報に基づいて、フォークリフト座標系における奥側網パレット背面中心位置Bが算出され、その奥側網パレット背面中心位置Bがワールド座標系に変換される。
【0054】
次いで、ワールド座標系において、手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bを通るパレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが算出される。そして、パレット中心線Gと中心点Cとの距離Lがゼロになるようなサイドシフト量が決定され、そのサイドシフト量に応じてサイドシフトシリンダ9が自動制御される。これにより、1対のフォーク8間の中心点Cがパレット中心線Gに一致するようになる。
【0055】
その状態で、特に詳述はしないが、操舵制御装置(図示せず)によって、フォークリフト1が網パレット3の正面3aに対してまっすぐ向くようにステアリング(図示せず)が自動制御されてもよい。
【0056】
その後、フォークリフト1を網パレット3に向かって前進させることで、フォーク8が網パレット3の左右両側の脚部39間に差し込まれる。そして、荷役装置4のリフトシリンダ(前述)によりフォーク8を上昇させることで、網パレット3が持ち上げられる。
【0057】
ところで、1対のフォーク8間の中心点Cがパレット中心線Gからずれた状態で、フォーク8が網パレット3に差し込まれる場合には、
図5に示されるように、フォークリフト1に対する網パレット3の傾き角θmによっては、フォーク8の先端が手前側に位置する網パレット3Aの脚部39に接触してしまう。この場合には、フォーク8により網パレット3を持ち上げることができない。
【0058】
これに対し、本実施形態では、カメラ13により網パレット3が撮像され、カメラ13の撮像画像データに基づいて、フォークリフト1に対する網パレット3の姿勢が検知される。そして、カメラ13の撮像画像データに基づいて、手前側網パレット正面中心位置Aが求められると共に、手前側網パレット正面中心位置Aとフォークリフト1に対する網パレット3の姿勢とに基づいて、奥側網パレット背面中心位置Bが求められる。そして、手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bを通るパレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが求められ、当該距離Lが所定値以下になるようにサイドシフトシリンダ9が制御される。このため、フォーク8と網パレット3との位置関係が把握され、1対のフォーク8間の中心点Cが手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bを通るパレット中心線Gに近づくようになる。これにより、網パレット3の幅方向中央部にフォーク8を差し込んだ状態で網パレット3を持ち上げることができる。その結果、網パレット3を安定して持ち上げることが可能となる。このとき、フォークリフト1が網パレット3の正面3aに対してまっすぐ向くように網パレット3に対するフォークリフト1の姿勢を制御することにより、網パレット3を一層安定して持ち上げることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置Aがワールド座標系に変換されると共に、フォークリフト座標系における奥側網パレット背面中心位置Bがワールド座標系に変換される。そして、ワールド座標系において、パレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが求められる。従って、フォーク8を網パレット3に差し込むためにフォークリフト1が網パレット3に向かって走行するときに、フォーク8と網パレット3との位置関係が逐次変化しても、手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bを求め直さなくて済む。これにより、計算処理の簡素化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、1対のフォーク8が網パレット3に差し込まれる前に、パレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが所定値以下になるようにサイドシフトシリンダ9が制御される。このため、フォーク8が網パレット3に差し込まれる前に、1対のフォーク8間の中心点Cがパレット中心線Gに近づくようになる。従って、フォーク8が網パレット3に差し込まれたときにフォーク8の先端が網パレット3に接触することを防止できる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、網パレット3の正面3aに設けられたマーカ11をカメラ13で撮像することにより、網パレット3を検出しているが、特にその形態には限られず、ディープラーニング等を用いてカメラ13の撮像画像データから網パレット3を検出してもよい。
【0062】
また、網パレット3を検出するパレット検出部としては、特にカメラ13には限られず、例えば網パレット3に向けてレーザを照射し、レーザの反射光を受光するレーザセンサ等を使用してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、フォークリフト座標系における手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bがワールド座標系に変換されているが、特にその形態には限られず、フォークリフト座標系において、手前側網パレット正面中心位置A及び奥側網パレット背面中心位置Bを通るパレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lを算出してもよい。この場合には、1対のフォーク8間の中心点Cは、固定値であり、計算不要となる。
【0064】
また、上記実施形態では、フォーク8が網パレット3に差し込まれる前に、パレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが所定値以下になるようにサイドシフトシリンダ9が制御されているが、特にその形態には限られず、網パレット3を検出することが可能であれば、フォーク8の先端側部分が網パレット3に差し込まれた状態で、パレット中心線Gと1対のフォーク8間の中心点Cとの距離Lが所定値以下になるようにサイドシフトシリンダ9を制御してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ロングタイプのフォーク8により手前側の網パレット3Aと奥側の網パレット3Bとを一緒に持ち上げているが、本発明は、通常タイプのフォークにより1段または複数段の網パレット3を持ち上げるフォークリフトにも適用可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、フォーク8により網パレット3を持ち上げているが、本発明は、網パレット3以外のパレット、例えばフォークが差し込まれる2つのパレット穴を有するプラスチック製または木製の平パレット等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…フォークリフト、3,3A,3B…網パレット(パレット)、3a…正面、3b…背面、8…フォーク、9…サイドシフトシリンダ、12…サイドシフト制御装置、13…カメラ(パレット検出部)、16…姿勢検知部、17…位置算出部、18…距離算出部、19…制御部、A…手前側網パレット正面中心位置、B…奥側網パレット背面中心位置、C…中心点、G…パレット中心線。