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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20230322BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230322BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20230322BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20230322BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230322BHJP
【FI】
H01M10/617
H01G11/12
H01G11/18
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/647
H01M10/6555
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M10/6568
H01M50/204 401H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019236685
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106107
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】野村 博之
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-092722(JP,A)
【文献】特開2014-086414(JP,A)
【文献】特開2015-072924(JP,A)
【文献】特開2010-272284(JP,A)
【文献】特開平10-201121(JP,A)
【文献】特開2010-225344(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、
複数の蓄電モジュールが積層された積層体を備える蓄電装置と、
少なくとも前記積層体の積層方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、前記複数の流路部を連通可能に接続する連通部とを有し、冷却された媒体を前記積層体における前記積層方向の中央部側の前記流路部から積層端側の前記流路部まで連続して流通させる第1流路と、
少なくとも前記積層方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に配置され、冷却された媒体を前記積層方向に交差する方向に流通させる第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に冷却された媒体を供給する供給部と、を備え、
前記供給部は、前記中央部の温度と前記積層端の温度との差が予め設定された閾値以上である場合、冷却された媒体を前記第1流路に供給し、前記差が前記閾値未満である場合、冷却された媒体を前記第2流路に供給する、
温度調節システム。
【請求項2】
蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、
複数の蓄電モジュールが積層された積層体を備える蓄電装置と、
少なくとも前記積層体の積層方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、前記複数の流路部を連通可能に接続する連通部とを有し、加熱された媒体を前記積層体における積層端側の前記流路部から前記積層方向の中央部側の前記流路部まで連続して流通させる第1流路と、
少なくとも前記積層方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に配置され、加熱された媒体を前記積層方向に交差する方向に流通させる第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に加熱された媒体を供給する供給部と、を備え、
前記供給部は、前記中央部の温度と前記積層端の温度との差が予め設定された閾値以上である場合、加熱された媒体を前記第1流路に供給し、前記差が前記閾値未満である場合、加熱された媒体を前記第2流路に供給する、
温度調節システム。
【請求項3】
前記蓄電モジュールは、電極体と、前記電極体の一方の面上に設けられた正極活物質層と、前記電極体の他方の面上に設けられた負極活物質層と、を含む電極がセパレータを介して積層された電極積層体を有する、請求項1又は2に記載の温度調節システム。
【請求項4】
前記積層体は、少なくとも前記積層方向で隣り合う前記蓄電モジュール間に設けられた複数の集電板を有し、
前記流路部及び前記第2流路は、前記複数の集電板を貫通する複数の貫通孔により構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項5】
前記中央部の温度及び前記積層端の温度をそれぞれ検出する検出部を更に備え、
前記検出部は、前記中央部の温度として、前記中央部に配置された前記集電板の温度を検出し、前記積層端の温度として、前記積層端に配置された前記集電板の温度を検出する、請求項4に記載の温度調節システム。
【請求項6】
前記流路部及び前記第2流路は、前記積層方向に交差する方向において交互に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項7】
前記流路部及び前記第2流路は、前記積層方向において交互に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の温度調節システム。
【請求項8】
前記積層端には前記流路部が配置されている、請求項7に記載の温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の蓄電モジュールを備える蓄電装置の温度を調節する温度調節システムが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の温度調節システムでは、積層方向で隣り合う蓄電モジュール間及び積層端に配置された複数の集電板に貫通孔が形成されており、当該貫通孔に冷却媒体を流すことによって蓄電モジュールが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-305425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の温度調節システムでは、蓄電装置に温度ムラが発生する。蓄電モジュールの性能は、温度が高くなると劣化し易い。したがって、蓄電装置に温度ムラが発生すると、蓄電モジュールの性能が局所的に劣化し、蓄電装置全体の寿命が短くなるおそれがある。よって、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムが求められている。
【0005】
本開示は、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る温度調節システムは、蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、複数の蓄電モジュールが積層された積層体を備える蓄電装置と、少なくとも積層体の積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、複数の流路部を連通可能に接続する連通部とを有し、冷却された媒体を積層体における積層方向の中央部側の流路部から積層端側の流路部まで連続して流通させる第1流路と、少なくとも積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置され、冷却された媒体を積層方向に交差する方向に流通させる第2流路と、第1流路及び第2流路に冷却された媒体を供給する供給部と、を備え、供給部は、中央部の温度と積層端の温度との差が予め設定された閾値以上である場合、冷却された媒体を第1流路に供給し、差が閾値未満である場合、冷却された媒体を第2流路に供給する。
【0007】
上記温度調節システムでは、蓄電装置に第1流路及び第2流路が設けられている。第1流路は、冷却された媒体を積層体における積層方向の中央部側の流路部から積層端側の流路部まで連続して流通させる。第2流路は、冷却された媒体を積層方向に交差する方向に流通させる。積層体では、中央部側で蓄電モジュールの温度が低下し難く、積層端側で蓄電モジュールの温度が低下し易い。そこで、供給部は、中央部の温度と積層端の温度との差が閾値以上である場合、冷却された媒体を第1流路に供給する。冷却された媒体の温度は第1流路を流通するにつれて上昇し、冷却能力が低下する。したがって、第1流路によれば、蓄電モジュールの温度が低下し難い中央部側には、冷却能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュールの温度が低下し易い積層端側には、中央部側よりも冷却能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。これにより、蓄電装置の温度ムラを抑制することができる。また、供給部は、上記差が閾値未満である場合、冷却された媒体を第2流路に供給する。これにより、蓄電装置の温度ムラが抑制された状態が維持され易い。
【0008】
本開示の他の側面に係る温度調節システムは、蓄電装置の温度を調節する温度調節システムであって、複数の蓄電モジュールが積層された積層体を備える蓄電装置と、少なくとも積層体の積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置された複数の流路部と、複数の流路部を連通可能に接続する連通部とを有し、加熱された媒体を積層体における積層端側の流路部から積層方向の中央部側の流路部まで連続して流通させる第1流路と、少なくとも積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に配置され、加熱された媒体を積層方向に交差する方向に流通させる第2流路と、第1流路及び第2流路に加熱された媒体を供給する供給部と、を備え、供給部は、中央部の温度と積層端の温度との差が予め設定された閾値以上である場合、加熱された媒体を第1流路に供給し、差が閾値未満である場合、加熱された媒体を第2流路に供給する。
【0009】
上記温度調節システムでは、蓄電装置に第1流路及び第2流路が設けられている。第1流路は、加熱された媒体を積層体における積層端側の流路部から積層方向の中央部側の流路部まで連続して流通させる。第2流路は、加熱された媒体を積層方向に交差する方向に流通させる。積層体では、中央部側で蓄電モジュールの温度が上昇し易く、積層端側で蓄電モジュールの温度が上昇し難い。そこで、供給部は、中央部の温度と積層端の温度との差が閾値以上である場合、加熱された媒体を第1流路に供給する。加熱された媒体の温度は第1流路を流通するにつれて低下し、加熱能力が低下する。したがって、第1流路によれば、蓄電モジュールの温度が上昇し難い積層端側には、加熱能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュールの温度が上昇し易い中央部側には、積層端側よりも加熱能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。これにより、蓄電装置の温度ムラを抑制することができる。また、供給部は、上記差が閾値未満である場合、加熱された媒体を第2流路に供給する。これにより、蓄電装置の温度ムラが抑制された状態が維持され易い。
【0010】
蓄電モジュールは、電極体と、電極体の一方の面上に設けられた正極活物質層と、電極体の他方の面上に設けられた負極活物質層と、を含む電極がセパレータを介して積層された電極積層体を有してもよい。このような蓄電モジュールを備える蓄電装置においても、温度ムラを抑制することができる。
【0011】
積層体は、少なくとも積層方向で隣り合う蓄電モジュール間に設けられた複数の集電板を有し、流路部及び第2流路は、複数の集電板を貫通する複数の貫通孔により構成されてもよい。この場合、流路部及び第2流路を構成するための部材を別途設ける必要がない。
【0012】
上記温度調節システムは、中央部の温度及び積層端の温度をそれぞれ検出する検出部を更に備え、検出部は、中央部の温度として、中央部に配置された集電板の温度を検出し、積層端の温度として、積層端に配置された集電板の温度を検出してもよい。この場合、集電体の温度を検出することで、蓄電モジュールの内部温度に近い温度を検出することができる。
【0013】
流路部及び第2流路は、積層方向に交差する方向において交互に配置されてもよい。この場合、蓄電装置の積層方向における温度ムラが抑制され易い。
【0014】
流路部及び第2流路は、積層方向において交互に配置されてもよい。この場合、第1流路及び第2流路を形成し易い。
【0015】
積層端には流路部が配置されてもよい。この場合、蓄電装置の温度ムラを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、蓄電装置の温度ムラを抑制可能な温度調節システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図2図2は、図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図5は、一実施形態に係る温度調節システムを示すブロック図である。
図6図6は、第2実施形態に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿っての断面図である。
図8図8は、第1変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
図9図9は、第2変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本開示に係る実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1を参照し、第1実施形態に係る温度調節システム100(図5参照)が備える蓄電装置1について説明する。図1は、第1実施形態に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール11が積層されたモジュールスタック(積層体又は配列体)2と、モジュールスタック2に電気的に接続される接続部材3,4と、モジュールスタック2を拘束する一対の拘束部材5,5と、モジュールスタック2と拘束部材5との間に配置される絶縁部材7,7と、を備える。以下では、拘束部材5,5がモジュールスタック2を拘束する方向を方向Zとし、方向Zと交差(例えば直交)する方向を方向Xとし、方向Z及び方向Xと交差(例えば直交)する方向を方向Yとする。方向X及び方向Yは例えば水平方向である。
【0020】
モジュールスタック2は、積層(又は配列)された複数の蓄電モジュール11と、複数の蓄電モジュール11に接触して配置された複数の集電板12と、を有する。複数の蓄電モジュール10の積層方向(又は配列方向)は、拘束部材5,5がモジュールスタック2を拘束する方向Zと一致している。集電板12は、積層方向(方向Z)で隣り合う蓄電モジュール10,10間、および、モジュールスタック2の積層端に配置されている。本実施形態のモジュールスタック2は、例えば、二つの蓄電モジュール11と、三つの集電板12と、を含む。一つの集電板12は、積層方向(方向Z)で隣り合う蓄電モジュール10,10間に配置され、正極集電板として機能する。二つの集電板12,12は、モジュールスタック2の積層端に配置され、負極集電板として機能する。蓄電モジュール11の構成の詳細については、後述する。
【0021】
接続部材3は、蓄電装置1の正極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材3は、蓄電モジュール11の積層方向(方向Z)に沿って設けられている。接続部材3は、例えば、金属板である。金属板は、例えば、銅板、アルミニウム板、チタン板、もしくはニッケル板である。金属板は、例えばステンレス鋼板(SUS301、SUS304等)であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金板であってもよい。接続部材3は、正極集電板として機能する集電板12に電気的に接続されている。
【0022】
接続部材4は、蓄電装置1の負極として機能する導電部材(バスバー)である。接続部材4は、蓄電モジュール11の積層方向(方向Z)に沿って設けられている。接続部材4は、接続部材3と同様に、例えば、金属板である。接続部材4は、接続部材3と同一の金属板であってもよいし、異なる金属板であってもよい。接続部材4は、負極集電板として機能する二つの集電板12に電気的に接続されている。
【0023】
モジュールスタック2では、電流は接続部材3に接続された集電板12を通って一対の蓄電モジュール11に流れた後、接続部材4に接続された一対の集電板12に流れる。したがって、モジュールスタック2では、蓄電モジュール11,11は電気的に並列に接続される。
【0024】
拘束部材5,5のそれぞれは、モジュールスタック2に対して方向Zに沿った拘束力(荷重)を付加する部材である。拘束部材5,5のそれぞれは、導電性の金属材料(例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、又はステンレス鋼等の合金)から形成されている。拘束部材5,5は、例えば、締結部材(例えば、ボルト6A及びナット6B)等を用いた連結部材6を介して互いに連結されてもよい。この場合、拘束部材5,5のそれぞれには、方向Zに沿って延在するボルト等の連結部材が挿通される貫通孔等が設けられてもよい。
【0025】
図1に示される絶縁部材7,7のそれぞれは、シート状の絶縁部材であり、略直方体形状を呈している。絶縁部材7,7のそれぞれは、方向Zにおいてモジュールスタック2と拘束部材5との間に配置されている。絶縁部材7のそれぞれは、積層端に配置された集電板12に接触する。
【0026】
絶縁部材7,7のそれぞれを形成する材料の例には、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン66(PA66)が含まれる。絶縁部材7,7の少なくとも一つは、弾性を示してもよい。絶縁部材7,7の方向Zに沿った長さ(厚み)は、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0027】
次に、図2を参照しながら、モジュールスタック2に含まれる蓄電モジュール11の詳細について説明する。図2は、図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。図2では、一方の蓄電モジュール11が示されている。他方の蓄電モジュール11は、一方の蓄電モジュール11が方向Zにおいて反転した構造を有している。すなわち、一対の蓄電モジュール11,11は、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と、他方の蓄電モジュール11の正極終端電極18とが互いに対向するように配置されている。
【0028】
図2に示されるように、蓄電モジュール11は、方向Zに積層された複数の単電池を含む。蓄電モジュール11は、略直方体形状を呈する。蓄電モジュール11は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール11は、電気二重層キャパシタでもよい。蓄電モジュール11は、全固体電池でもよい。
【0029】
本実施形態の蓄電モジュール11は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。蓄電モジュール11は、方向Zにおいて集電板12,12(図1参照)によって挟まれている。蓄電モジュール11は、集電板12,12を介して接続部材3,4(図1参照)に電気的に接続される。
【0030】
蓄電モジュール11は、電極積層体14と、封止部材15と、を備える。電極積層体14は、複数のバイポーラ電極(電極)16と複数のセパレータ17とを含む電極群114と、正極終端電極(終端電極)18と、負極終端電極(終端電極)19と、を有する。複数のバイポーラ電極16と、複数のセパレータ17とは、方向Zに沿って交互に配置されている。電極積層体14は、方向Zに交差する一対の主面及び主面をつなぐ外周面(側面)を有する。
【0031】
複数のバイポーラ電極16のそれぞれは、電極体21と、正極層(正極活物質層)22と、負極層(負極活物質層)23とを備える。電極体21は、方向Zに交差する一対の主面21a,21bを有する。電極体21の主面(一方の面)21a上には正極層22が設けられ、電極体21の主面(他方の面)21b上には負極層23が設けられる。このため、電極体21は、方向Zに沿って正極層22と負極層23とによって挟まれている。なお、バイポーラ電極16は、一方の面に正極層22が形成された導電板と、一方の面に負極層23が形成された別の導電板とを、電極層が形成されていない面同士が接触するように重ね合されて電極体21が形成されていてもよい。
【0032】
電極体21は、シート状の導電部材であり、略矩形状を呈している。電極体21は、例えば、互いに異なる種類の金属を含む複数の金属箔が一体化された構造を有する。複数の金属箔は、互いに接合されている。各金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、もしくはニッケル箔である。各金属箔は、例えば、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)、メッキ処理が施された鋼板(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等))、又はメッキ処理が施されたステンレス鋼板であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、電極体21はアルミニウム箔を含んでもよい。電極体21がアルミニウム箔を含まない場合、金属箔の表面にはアルミニウムが被覆されていてもよい。電極体21の厚みは、例えば、5μm以上70μm以下である。
【0033】
正極層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも一つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。結着剤は、活物質又は導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
【0034】
導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等である。
【0035】
負極層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材であり、略矩形状を呈している。本実施形態の負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は正極層22と同様のものを用いることができる。
【0036】
正極終端電極18は、電極積層体14の方向Zにおける一方の端部に設けられている。正極終端電極18は、電極体21の主面21aにのみ上記の正極層(活物質)22が塗工されて形成された電極である。すなわち、方向Zにおいて電極積層体14の一端に配置される電極体21の主面21b上には、負極層23が配置されていない。
【0037】
負極終端電極19は、電極積層体14の方向Zにおける他方の端部に設けられている。負極終端電極19も、正極終端電極18と同様に、電極体21の一方の主面21bにのみ負極層(活物質)23が塗工されて形成された電極である。すなわち、方向Zにおいて電極積層体14の他端に配置される電極体21の主面21a上には、正極層22が配置されていない。
【0038】
セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間のそれぞれを隔てる層状部材であり、略矩形状を呈している。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間の短絡を防止する部材である。セパレータ17は、正極層22及び負極層23に含まれる電解質によって構成されてもよい。セパレータ17が固体電解質によって構成される場合、セパレータ17は、略矩形板形状を呈してもよい。セパレータ17の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0039】
セパレータ17は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ17は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ17は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。
【0040】
封止部材15は、電極積層体14に含まれる複数のバイポーラ電極16、複数のセパレータ17、正極終端電極18、及び負極終端電極19を保持する部材であり、絶縁性を有している。より詳細には、封止部材15は、バイポーラ電極16、正極終端電極18、及び負極終端電極19を構成する電極体21を保持している。封止部材15は、電極体21の主面21a及び主面21bの少なくとも一方に接合(例えば溶着)されている。封止部材15は、電極積層体14の外周面(側面)を封止するように略矩形枠形状を呈する封止部材、及び、電極積層体14内のバイポーラ電極16同士の短絡を防止する短絡防止部材としても機能し得る。
【0041】
封止部材15を形成する材料の例には、耐熱性を示す樹脂部材等が含まれる。耐熱性を示す樹脂部材の例には、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)及びPA66等が含まれる。
【0042】
封止部材15によって封止された空間Sには、図示しない電解液が収容されている。電解液の例としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。電解液に含まれる支持塩は、例えばリチウム塩である。リチウム塩は、例えば、LiBF、LiPF、LiN(FSO、LiN(SOCF、LiN(SO、もしくはこれらの混合物である。
【0043】
次に、図1に示される集電板12の構成についてより詳細に説明する。集電板12は、電極積層体14に接触する導電部材であり、板形状を呈している。集電板12は、方向Zにおいて蓄電モジュール11に隣接している。正極集電板として機能する集電板12は、正極終端電極18の電極体21に接触するように配置される。負極集電板として機能する集電板12は、負極終端電極19の電極体21に接触するように配置される。集電板12は、電極体21に接触する本体部12aと、方向Xにおいて本体部12aの縁12bの一部から突出する突出部12cとを有する。突出部12cは接続部材3又は接続部材4に接続される。本体部12aは、方向Zにおいてバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なる部分であり、略矩形状を呈している。集電板12の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0044】
図3は、図1のIII-III線に沿っての断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿っての断面図である。図1図3及び図4に示されるように、各集電板12には、各集電板12を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に貫通する貫通孔が設けられている。本実施形態では、各集電板12において、複数の貫通孔が方向Xに沿って配列されていると共に、方向Yに沿って延在している。
【0045】
蓄電装置1には、第1流路30A,30Bと、第2流路31と、が設けられている。第1流路30A,30B、及び第2流路31には、それぞれ冷却又は加熱された媒体が流通される。図3及び図4では、冷却された媒体の流れが実線の矢印A1で示され、加熱された媒体の流れが破線の矢印A2で示される。第1流路30Aは、蓄電装置1の方向Zの中央部から一方側に設けられている。第1流路30Bは、蓄電装置1の方向Zの中央部から他方側に設けられている。本実施形態では、複数の第1流路30Aが方向Xに沿って配列されていると共に、複数の第1流路30Bが方向Xに沿って配列されている。以下では、「方向Zの中央部」を単に「中央部」とも言う。
【0046】
各第1流路30A,30Bは、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、又は、モジュールスタック2の積層端に配置された複数の流路部32と、複数の流路部32を連通可能に接続する連通部33と、を有している。連通部33は、複数の流路部32を中央部側から積層端側まで順に連通させる。本実施形態では、複数の流路部32は、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、及び、モジュールスタック2の積層端に設けられている。各第1流路30A,30Bは、冷却された媒体を中央部側の流路部32から積層端側の流路部32まで連続して流通させる。また、各第1流路30A,30Bは、加熱された媒体を積層端側の流路部32から中央部側の流路部32まで連続して流通させる。
【0047】
流路部32は、各集電板12を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に貫通する上述の貫通孔により構成されている。本実施形態では、流路部32は、各集電板12を方向Yに貫通する貫通孔により構成されている。すなわち、流路部32は、方向Yに沿って延在し、方向Yの一端32a及び他端32bを有している。各集電板12には、複数の流路部32が方向Xに沿って配列されている。中央部に配置された流路部32は、二つの第1流路30A,30Bに共有されている。第1流路30A,30Bは、共有する流路部32を含め、二つの流路部32をそれぞれ有している。
【0048】
連通部33は、例えば、絶縁性部材により形成されている。連通部33は、方向Zで隣り合う流路部32の他端32b同士を互いに接続している。本実施形態では、中央部に配置された流路部32が二つの第1流路30A,30Bに共有されているので、連通部33も二つの第1流路30A,30Bに共有されている。連通部33は、例えば、集電板12において方向Xに配列された複数の流路部32のそれぞれと連結される小さな複数の貫通孔が設けられた部材である。
【0049】
各第1流路30A,30Bは、中央部に配置された流路部32の一端32aに設けられた第1流出入口30aと、積層端に配置された流路部32の一端32aに設けられた第2流出入口30bと、を有する。本実施形態では、中央部に配置された流路部32が二つの第1流路30A,30Bに共有されているので、第1流出入口30aも二つの第1流路30A,30Bに共有されている。
【0050】
第2流路31は、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、又は、モジュールスタック2の積層端に配置された複数の流路部34を有している。本実施形態では、複数の流路部34は、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、及び、モジュールスタック2の積層端に設けられている。第2流路31は、冷却又は加熱された媒体を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に流通させる。
【0051】
流路部34は、各集電板12を方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)に貫通する上述の貫通孔により構成されている。本実施形態では、流路部34は、各集電板12を方向Yに貫通する貫通孔により構成されている。すなわち、流路部34は、方向Yに沿って延在し、方向Yの一端34a及び他端34bを有している。各集電板12には、複数の流路部34が方向Xに沿って配列されている。
【0052】
第1流路30A,30Bの流路部32及び第2流路31の流路部34は、方向Zに交差する方向(例えば、方向X又は方向Y)において交互に配置されている。本実施形態では、流路部32及び流路部34は、方向Xにおいて1本ずつ交互に配置されている。流路部32及び流路部34は、複数本ずつ交互に配置されていてもよい。方向Zで隣り合う集電板12,12において、方向Zで流路部32,32が隣り合うと共に、方向Zで流路部34,34が隣り合う。
【0053】
続いて、蓄電装置1の温度を調節する温度調節システム100について説明する。図5は、一実施形態に係る温度調節システムを示すブロック図である。図5に示されるように、温度調節システム100は、蓄電装置1と、第1流路30A,30Bと、第2流路31と、供給部40と、検出部50と、を備える。図5においても、冷却された媒体の流れが実線の矢印A1で示され、加熱された媒体の流れが破線の矢印A2で示される。
【0054】
供給部40は、第1流路30A,30B及び第2流路31に冷却又は加熱された媒体を供給する。媒体は、例えば、絶縁性の流体である。媒体は、例えば、LLC(Long Life Coolant)等の液体、又は、空気等の気体である。液体の熱伝導率は、気体の熱伝導率よりも高いので、媒体として液体が用いられてもよい。本実施形態では、媒体として、LLCが用いられる。
【0055】
本実施形態では、供給部40が冷却する媒体と、供給部40が加熱する媒体とは互いに共通である。すなわち、冷却用の媒体と加熱用の媒体とは互いに共通である。このため、冷却用と加熱用とで別の媒体を備える必要がない。また、冷却された媒体が供給される第1流路30A,30Bと、加熱された媒体が供給される第1流路30A,30Bとは互いに共通である。このため、冷却用と加熱用とで別の第1流路30A,30Bを備える必要がない。また、冷却された媒体が供給される第2流路31と、加熱された媒体が供給される第2流路31とは互いに共通である。このため、冷却用と加熱用とで別の第2流路31を備える必要がない。
【0056】
供給部40は、冷却部41と、加熱部42と、ポンプ43と、三方弁44,45,51,52と、流路46,47,48,49,53,54,55,56と、を有している。冷却部41は、例えば、ラジエータであり、媒体を冷却(降温)する。加熱部42は、例えば、ヒータであり、媒体を加熱(昇温)する。ポンプ43は、例えば、双方向ポンプである。三方弁44は、三つのポート44a,44b,44cを有している。三方弁45は、三つのポート45a,45b,45cを有している。三方弁51は、三つのポート51a,51b,51cを有している。三方弁52は、三つのポート52a,52b,52cを有している。
【0057】
流路46は、ポート44aと、ポート51aとを接続する。流路47は、ポート44bと、ポート45bとを接続する。流路47上には冷却部41が設けられている。流路48は、ポート44cと、ポート45cとを接続する。流路48上には加熱部42が設けられている。流路49は、ポート45aと、ポート52aとを接続する。流路49上にはポンプ43が設けられている。流路53は、第1流出入口30aと、ポート51bとを接続する。流路54は、第2流出入口30bと、ポート52bとを接続する。流路55は、第1流出入口31aと、ポート51cとを接続する。流路56は、第2流出入口31bと、ポート52cとを接続する。
【0058】
流路53と流路54とは、第1流路30A,30Bにより連通可能に接続されている。流路55と流路56とは、第2流路31により連通可能に接続されている。
【0059】
制御部60は、例えば、冷却部41、加熱部42、ポンプ43、三方弁44,45,51,52、及び、検出部50と通信可能に接続されている。制御部60は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリと、を備えたコンピュータ装置として構成され得る。制御部60の処理は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、実現され得る。制御部60は、蓄電装置1が用いられる車両の制御部であってもよいし、蓄電装置1の制御部であってもよい。
【0060】
検出部50は、モジュールスタック2(図1参照)の中央部の温度及び積層端の温度をそれぞれ検出する。検出部50は、例えば、モジュールスタック2の中央部の温度を検出する温度センサと、積層端の温度を検出する温度センサとを有している。検出部50は、例えば、モジュールスタック2の中央部の温度として、中央部に配置された集電板12の温度を検出し、積層端の温度として積層端に配置された集電板12の温度を検出する。検出部50は、例えば、制御部60と通信可能に接続されており、検出した温度を示す情報を制御部60に送信する。
【0061】
制御部60は、蓄電装置1の温度に基づき、蓄電装置1の温度調節の要否を判定する。制御部60は、例えば、検出部50からモジュールスタック2の中央部の温度及び積層端の温度を示す情報を受信し、これらの温度の平均値を蓄電装置1の温度とする。制御部60は、蓄電装置1の温度が予め設定された第1温度(例えば、50度)以上であれば、蓄電装置1を冷却する必要があると判定する。制御部60は、蓄電装置1の温度が予め設定された第2温度(例えば、5度)未満であれば、蓄電装置1を加熱する必要があると判定する。制御部60は、蓄電装置1の温度が第2温度以上第1温度未満であれば、蓄電装置1の温度調節が不要であると判定する。蓄電モジュール11の性能は、温度が高過ぎても、低過ぎても劣化し易くなる。第1温度及び第2温度は、蓄電モジュール11の性能が劣化し易い温度範囲に基づき設定される。すなわち、第2温度以上第1温度未満の温度範囲では、蓄電モジュール11の劣化が抑制される。
【0062】
制御部60は、蓄電装置1を冷却又は加熱する必要があると判定した場合、検出部50から受信した情報に基づき、モジュールスタック2の中央部の温度と積層端との温度との差を計算する。続いて、制御部60は、計算した差が予め設定された閾値(例えば、10度)以上であるか否かを判定する。
【0063】
供給部40は、蓄電装置1を冷却する必要があり、かつ、上記差が閾値以上である場合、冷却された媒体を第1流出入口30aから第1流路30A,30Bに供給する。これにより、冷却された媒体は、第1流路30A,30Bを中央部側の流路部32から積層端側の流路部32まで連続して流通する。冷却された媒体は、第1流出入口30aから第1流路30A,30Bに流入し、第2流出入口30bから流出する。
【0064】
制御部60は、具体的には、ポート44aとポート44bとが連通するように三方弁44を制御し、ポート45aとポート45bとが連通するように三方弁45を制御し、ポート51aとポート51bとが連通するように三方弁51を制御し、ポート52aとポート52bとが連通するように三方弁52を制御する。これにより、冷却部41が設けられた流路47が流路46,49と連通し、流路53が流路46と連通し、流路54が流路49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第1流出入口30aに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、冷却部41により冷却された媒体を第1流路30A,30Bとの間で循環させる。
【0065】
供給部40は、蓄電装置1を冷却する必要があり、かつ、上記差が閾値未満である場合、冷却された媒体を第2流路31に供給し、方向Zに交差する方向に流通させる。ここでは、冷却された媒体は、第1流出入口31aから第2流路31に流入し、Y方向に流通した後、第2流出入口31bから流出する。
【0066】
制御部60は、具体的には、ポート44aとポート44bとが連通するように三方弁44を制御し、ポート45aとポート45bとが連通するように三方弁45を制御し、ポート51aとポート51cとが連通するように三方弁51を制御し、ポート52aとポート52cとが連通するように三方弁52を制御する。これにより、冷却部41が設けられた流路47が流路46,49と連通し、流路55が流路46と連通し、流路56が流路49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第1流出入口30aに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、冷却部41により冷却された媒体を第2流路31との間で循環させる。
【0067】
供給部40は、蓄電装置1を加熱する必要があり、かつ、上記差が閾値以上である場合、加熱された媒体を第2流出入口30bから第1流路30A,30Bに供給する。これにより、加熱された媒体は、第1流路30A,30Bを積層端側の流路部32から中央部側の流路部32まで連続して流通する。加熱された媒体は、第2流出入口30bから第1流路30A,30Bに流入し、第1流出入口30aから流出する。
【0068】
制御部60は、具体的には、ポート44aとポート44cとが連通するように三方弁44を制御し、ポート45aとポート45cとが連通するように三方弁45を制御し、ポート51aとポート51bとが連通するように三方弁51を制御し、ポート52aとポート52bとが連通するように三方弁52を制御する。これにより、加熱部42が設けられた流路48が流路46,49と連通し、流路53が流路46と連通し、流路54が流路49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第2流出入口30bに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、加熱部42により加熱された媒体を第1流路30A,30Bとの間で循環させる。
【0069】
供給部40は、蓄電装置1を加熱する必要があり、かつ、上記差が閾値未満である場合、加熱された媒体を第2流路31に供給し、方向Zに交差する方向に流通させる。ここでは、加熱された媒体は、第2流出入口31bから第2流路31に流入し、方向Yに流通した後、第1流出入口31aから流出する。
【0070】
制御部60は、具体的には、ポート44aとポート44cとが連通するように三方弁44を制御し、ポート45aとポート45cとが連通するように三方弁45を制御し、ポート51aとポート51cとが連通するように三方弁51を制御し、ポート52aとポート52cとが連通するように三方弁52を制御する。これにより、加熱部42が設けられた流路48が流路46,49と連通し、流路55が流路46と連通し、流路56が流路49と連通する。制御部60は、更に、媒体が供給部40から第2流出入口31bに向かう方向にポンプ43を動作させる。これにより、供給部40は、加熱部42により加熱された媒体を第2流路31との間で循環させる。
【0071】
供給部40は、蓄電装置1の温度調節が不要である場合、第1流路30A,30B及び第2流路31に対する媒体の供給を停止する。制御部60は、具体的には、三方弁44,45,51,52を閉じ、かつ、冷却部41、加熱部42及びポンプ43を停止させる。
【0072】
以上説明したように、温度調節システム100では、蓄電装置1に第1流路30A,30B及び第2流路31が設けられている。蓄電装置1を冷却する際、第1流路30A,30Bは、冷却された媒体をモジュールスタック2における中央部側の流路部32から積層端側の流路部32まで連続して流通させる。第2流路31は、冷却された媒体を方向Yに流通させる。モジュールスタック2では、中央部側で蓄電モジュール11の温度が低下し難く、積層端側で蓄電モジュール11の温度が低下し易い。
【0073】
そこで、供給部40は、モジュールスタック2の中央部の温度と積層端の温度との差が閾値以上である場合(すなわち蓄電装置1の方向Zにおける温度ムラが大きい場合)、冷却された媒体を第1流出入口30aから第1流路30A,30Bに供給し、中央部側の流路部32から積層端側の流路部32まで連続して流通させる。冷却された媒体の温度は第1流路30A,30Bを流通するにつれて上昇し、冷却能力が低下する。したがって、第1流路30A,30Bによれば、蓄電モジュール11の温度が低下し難い中央部側には、冷却能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュール11の温度が低下し易い積層端側には、中央部側よりも冷却能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。これにより、蓄電装置1の温度ムラを抑制することができる。
【0074】
仮に、上記差が閾値未満である場合(すなわち蓄電装置1の方向Zにおける温度ムラが小さい場合)に、冷却された媒体が第1流路30A,30Bに供給されると、蓄電装置1の中央部側の温度が積層端側の温度よりも低くなり、温度ムラが大きくなるおそれがある。そこで、供給部40は、上記差が閾値未満である場合、冷却された媒体を第2流路31に供給し、方向Yに流通させる。各第2流路31には、積層方向の位置によらず同じ冷却能力を有する媒体が供給される。このため、蓄電装置1の温度ムラが抑制された状態が維持され易い。
【0075】
蓄電装置1を加熱する際、第1流路30A,30Bは、加熱された媒体をモジュールスタック2における積層端側の流路部32から中央部側の流路部32まで連続して流通させる。第2流路31は、加熱された媒体を方向Yに流通させる。モジュールスタック2では、中央部側で蓄電モジュールの温度が上昇し易く、積層端側で蓄電モジュール11の温度が上昇し難い。
【0076】
そこで、供給部40は、モジュールスタック2の中央部の温度と積層端の温度との差が閾値以上である場合(すなわち蓄電装置1の方向Zにおける温度ムラが大きい場合)、加熱された媒体を第2流出入口30bから第1流路30A,30Bに供給し、積層端側の流路部32から中央部側の流路部32まで連続して流通させる。加熱された媒体の温度は第1流路30A,30Bを流通するにつれて低下し、加熱能力が低下する。したがって、第1流路30A,30Bによれば、蓄電モジュール11の温度が上昇し難い積層端側には、加熱能力が高い状態で媒体を流通させると共に、蓄電モジュール11の温度が上昇し易い中央部側には、積層端側よりも加熱能力が低下した状態で媒体を流通させることができる。これにより、蓄電装置1の温度ムラを抑制することができる。
【0077】
仮に、上記差が閾値未満である場合(すなわち蓄電装置1の方向Zにおける温度ムラが小さい場合)に、加熱された媒体が第1流路30A,30Bに供給されると、蓄電装置1の積層端側の温度が中央部側の温度よりも高くなり、温度ムラが大きくなるおそれがある。そこで、供給部40は、上記差が閾値未満である場合、加熱された媒体を第2流路31に供給し、方向Yに流通させる。各第2流路31には、積層方向の位置によらず同じ冷却能力を有する媒体が供給される。このため、蓄電装置1の温度ムラが抑制された状態が維持され易い。
【0078】
蓄電モジュール11は、電極体21と、電極体21の主面21a上に設けられた正極層22と、電極体21の主面21b上に設けられた負極層23と、を含むバイポーラ電極16がセパレータ17を介して積層された電極積層体14を有している。このような蓄電モジュール11を備える蓄電装置1においても、温度ムラを抑制することができる。
【0079】
モジュールスタック2は、方向Zで隣り合う蓄電モジュール11,11間、及び、モジュールスタック2の積層端に設けられた複数の集電板12を有し、第1流路30A,30Bの流路部32及び第2流路31の流路部34は、複数の集電板12を貫通する複数の貫通孔により構成されている。このため、流路部32,34を構成するための部材を別途設ける必要がない。
【0080】
温度調節システム100は、モジュールスタック2の中央部及び積層端の温度をそれぞれ検出する検出部50を備える。検出部50は、モジュールスタック2の中央部の温度として、モジュールスタック2の中央部に配置された集電板12の温度を検出し、モジュールスタック2の積層端の温度として、モジュールスタック2の積層端に配置された集電板12の温度を検出する。集電板12は、蓄電モジュール11の電極積層体14と接触して配置されている。このため、集電板12の温度を検出することで、蓄電モジュール11の内部温度に近い温度を検出することができる。
【0081】
流路部32及び流路部34は、方向Xにおいて交互に配置されている。このため、蓄電装置1の方向Zにおける温度ムラが抑制され易い。
【0082】
積層端には流路部32が配置されている。このため、蓄電装置1の温度ムラを効果的に抑制することができる。
【0083】
供給部40は、第1流路30A,30B又は第2流路31との間で媒体を循環させる。このため、同じ媒体を繰り返して使用できる。
【0084】
(第2実施形態)
図6は、第1変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。図7は、図6のVII-VII線に沿っての断面図である。図6及び図7に示されるように、第3変形例に係る温度調節システム100Aは、蓄電装置1(図1参照)の代わりに蓄電装置1Aを備える点で、温度調節システム100(図5参照)と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Aでは、第1流路30A,30Bの流路部32及び第2流路31の流路部34は、方向Zにおいて交互に配置されている。各集電板12には、流路部32及び流路部34のいずれか一方が設けられている。本実施形態では、積層端に配置された集電板12、及び、中央部に配置された集電板12には、流路部32のみが設けられ、それ以外の集電板12には、流路部34のみが設けられている。
【0085】
接続部材3は、中央部に配置された集電板12の突出部12cと接続されている。接続部材4は、積層端に配置された集電板12の突出部12cと接続されている。それ以外の集電板12には、突出部12cが設けられていない。蓄電装置1Aにおいても、蓄電モジュール11は電気的に並列に接続される。
【0086】
温度調節システム100Aにおいても、蓄電装置1Aには第1流路30A,30B及び第2流路31が設けられており、供給部40は、蓄電装置1の温度、及び、モジュールスタック2の中央部の温度と積層端の温度との差に応じて、冷却又は加熱された媒体を第1流路30A,30B又は第2流路31に供給する。よって、温度調節システム100Aによっても、蓄電装置1Aの温度ムラを抑制することができ、更に、蓄電装置1Aの温度ムラが抑制された状態が維持され易い。また、流路部32及び第2流路31は、方向Zにおいて交互に配置されているので、各集電板12には、流路部32及び流路部34のいずれか一方を形成すればよい。このため、第1流路30A,30B及び第2流路31を形成し易い。
【0087】
以上、実施形態に係る温度調節システム100について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0088】
図8は、第1変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第1変形例に係る温度調節システム100Bは、蓄電装置1の代わりに蓄電装置1Bを備える点で、温度調節システム100と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Bでは、一方の積層端に配置された一つの集電板12に接続部材3が電気的に接続され、他方の接続端に配置された一つの集電板12に接続部材4が電気的に接続される。蓄電モジュール10,10間に配置された一つの集電板12には、接続部材3,4が接続されていないので、突出部12cが設けられていない。一対の蓄電モジュール11,11は、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と、他方の蓄電モジュール11の負極終端電極19とが互いに対向するように配置されている。
【0089】
蓄電装置1Bでは、電流は接続部材3に接続された集電板12を通って一方の蓄電モジュール11に流れ、蓄電モジュール11,11に配置された集電板12を通って、他方の蓄電モジュール11に流れ、更に、接続部材4に接続された集電板12に流れる。したがって、蓄電装置1では、蓄電モジュール11,11は電気的に直列に接続される。
【0090】
図9は、第2変形例に係る温度調節システムが備える蓄電装置を示す概略側面図である。第2変形例に係る温度調節システム100Cは、蓄電装置1の代わりに蓄電装置1Cを備える点で、温度調節システム100と相違し、その他の点で一致している。蓄電装置1Cは、中央部に配置された集電板12の代わりに、集電ユニット71を備えると共に、積層端に配置された集電板12,12の代わりに、集電ユニット72,72を備える。
【0091】
集電ユニット71は、方向Zで互いに対向する一対の集電板73,73と、一対の集電板73,73間に配置された絶縁性の板部材74と、一対の集電板73,73の方向Xの端部同士を電気的に接続する接続部75と、を有している。一方の集電板73は、一方の蓄電モジュール11における正極終端電極18の電極体21(図2参照)と接触し、一方の蓄電モジュール11と電気的に接続される。他方の集電板73は、他方の蓄電モジュール11における正極終端電極18の電極体21と接触し、他方の蓄電モジュール11と電気的に接続される。
【0092】
各集電板73は、正極終端電極18の電極体21に接触する本体部73aを有している。一方の集電板73は、方向Xにおいて本体部73aの縁73bの一部から突出する突出部73cを有する。突出部73cは、接続部材3に接続される。板部材74は、一対の集電板73,73と接触している。板部材74には、流路部32を構成する貫通孔が設けられている。
【0093】
各集電ユニット72は、方向Zで互いに対向する集電板76と、絶縁性の板部材77と、を有している。集電板76は、蓄電モジュール11における負極終端電極19の電極体21(図2参照)と接触し、蓄電モジュール11と電気的に接続される。集電板76は、負極終端電極19の電極体21と接触する本体部76aと、方向Xにおいて本体部76aの縁76bの一部から突出する突出部76cとを有する。突出部76cは、接続部材4に接続される。板部材77は、集電板76及び絶縁部材7のそれぞれに接触している。板部材77には、流路部32を構成する貫通孔が設けられている。
【0094】
蓄電装置1Cにおいても、蓄電モジュール11,11は電気的に並列に接続される。電流は接続部材3に接続された一方の集電板73に流れると共に、接続部75を通じて、他方の集電板73に流れる。その後、電流は、一対の集電板73から蓄電モジュール11に流れ、接続部材4に接続された一対の集電板76に流れる。蓄電装置1Cでは、流路部32が絶縁性の板部材74,77に設けられているため、媒体として、絶縁性の流体だけでなく、導電性の流体を用いることができる。導電性の流体としては、例えば、水等が挙げられる。
【0095】
温度調節システム100,100A,100B,100Cでは、供給部40のポンプ43が双方向ポンプであるが、二つの一方向ポンプを備えてもよい。この場合、一つの一方向ポンプで供給部40から第1流出入口30aに向かう方向に媒体を送ると共に、もう一つの一方向ポンプで供給部40から第2流出入口30bに向かう方向に媒体を送る。
【0096】
モジュールスタック2及びこれを構成する蓄電モジュール11は、上記実施形態に限定されない。例えば、角型あるいは丸形のケースに封止された蓄電モジュールを配列し、モジュールスタックを構成してもよい。この場合も、配列方向で隣り合う蓄電モジュール間及び配列方向の端にケースと隣接して流路部が設けられる。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B,1C…蓄電装置、2…モジュールスタック(積層体)、11…蓄電モジュール、12…集電板、14…電極積層体、16…バイポーラ電極(電極)、17…セパレータ、21…電極体、21a…主面、21b…主面、22…正極層(正極活物質層)、23…負極層(負極活物質層)、30A,30B…第1流路、30a…第1流出入口、30b…第2流出入口、31…第2流路、31a…第1流出入口、31b…第2流出入口、32…流路部(貫通孔)、33…連通部、40…供給部、50…検出部、100,100A,100B,100C…温度調節システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9