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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】白色ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
C08J9/00 A CFD
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019528785
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017684
(87)【国際公開番号】W WO2019220918
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018095873
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 崇志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】舩冨 剛志
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-322153(JP,A)
【文献】特開平07-118433(JP,A)
【文献】特開平06-080798(JP,A)
【文献】特開2018-072496(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105295(WO,A1)
【文献】特開2016-147980(JP,A)
【文献】特開2012-135952(JP,A)
【文献】特開平02-147641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 67/20
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、
かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)がドメインを形成している白色フィルムであって、
熱可塑性樹脂(B)が環状オレフィン系樹脂であり、
前記白色フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、沈殿物を除去した浮遊不溶物の質量Bwと浮遊不溶物中の無機粒子の質量Cbwについての式(1)を満たす白色フィルム。
0.01<Cbw/(Bw-Cbw)<1 …(1)
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、
かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)を核とする空隙を有する白色フィルムであって、
熱可塑性樹脂(B)が環状オレフィン系樹脂であり、
フィルムの垂直断面において、
該熱可塑性樹脂(B)のうち、熱可塑性樹脂(B)断面中に無機粒子(C)が存在する熱可塑性樹脂(B)が存在し、該熱可塑性樹脂(B)の核の数をNB1とした場合に、該熱可塑性樹脂(B)のうち内部に無機粒子(C)を含むものの数NB2の割合NB2/NB1×100(%)が、15%以上である、白色フィルム。
【請求項3】
無機粒子(C)が酸化チタンを主成分とする請求項1または2に記載の白色フィルム
【請求項4】
無機粒子(C)表面のSEM-EDXにおいて、Si(ケイ素)の検出強度とM(無機粒子主成分の金属元素)の検出強度比が式(2)を満たす請求項に記載の白色フィルム
EDX(Si)/EDX(M)>0.5 式(2)
【請求項5】
無機粒子(C)表面にケイ素を含む有機物層を1nm以上有する請求項またはに記載の白色フィルム
【請求項6】
少なくとも3層からなり、内層がポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層である請求項1~のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項7】
比重が0.6以上1.0以下である請求項1~のいずれかに記載の白色フィルム。
【請求項8】
LEDバックライト用途である請求項1~のいずれかに記載の白色フィルム
【請求項9】
照明用途である請求項1~のいずれかに記載の白色フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型液晶ディスプレイ用途に好ましく用いられる白色ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、テレビ、携帯電話などの表示装置として、液晶を利用したディスプレイが数多く用いられている。これらの液晶ディスプレイは、裏側からバックライトと呼ばれる面光源を設置して光を照射することにより表示が可能となっている。バックライトは、画面全体を均一に照射せねばならないという要求に応えるため、エッジライト型もしくは直下型と呼ばれる面光源の構造をとっている。なかでも、薄型・小型化が望まれるノート型パソコン等に使用される薄型液晶ディスプレイ用途には、エッジライト型、つまり画面に対し側面に光源を設置するタイプのバックライトが適用されている。
【0003】
このエッジライト型バックライトでは、冷陰極線管またはLEDを光源とし、導光板のエッジから光を均一に伝播・拡散して、液晶ディスプレイ全体を均一に照射する。そして、光をより効率的に活用するため、光源の周囲に反射フィルムが設けられ、更に導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に照射させるために導光板の背面に反射フィルムが設けられている。これにより光源からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくする機能を付与している。
【0004】
このような液晶ディスプレイ用バックライトに用いられる反射フィルムには、従来、白色顔料を添加したフィルムや内部に微細な気泡を含有させたフィルムが単独で、もしくはこれらのフィルムと金属板、プラスチック板などを張り合わせたものが使用されてきた。特に内部に微細な気泡を含有させたフィルムは、輝度の向上効果や、画面輝度の均一化に一定の効果があることから広く使用されている(特許文献1、2)。
【0005】
携帯電話・スマートフォンおよびノート型パソコンの薄型化、小型化やテレビの大画面化に伴い、反射フィルムに対して薄膜であるにも係わらず高い反射性、光の高隠蔽性、および高い剛性が要求されるようになってきた。特に、いわゆる4Kや8Kと呼ばれる高精細な液晶テレビでは、液晶パネルの透過率が低下する傾向にあり、より高い反射性が求められている。
【0006】
反射フィルムには、フィルム内部に含有された微細な気泡とマトリックス樹脂との界面での屈折率差による光の反射を利用した構成が広く採用されている。より高い反射性を達成するためには、界面数を多くする必要がある。界面数を多くするために、粒径が比較的小さい無機粒子を核とするボイドの形成が検討されてきた(特許文献3,4)。
【0007】
しかし、界面数を多くすると製膜性が低下するため、十分な厚みが必要であり、薄膜化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-160682号公報
【文献】特公平8-16175号公報
【文献】特許第3946183号公報
【文献】特開2013-136232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決し、反射フィルムの厚みを厚くすることなく、高い反射率と隠蔽性を達成する白色フィルムを製膜安定性良く提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、以下の構成を有するフィルムにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、
かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)がドメインを形成している白色フィルムであって、
熱可塑性樹脂(B)が環状オレフィン系樹脂であり、
前記白色フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、沈殿物を除去した浮遊不溶物の質量Bwと浮遊不溶物中の無機粒子の質量Cbwについての式(1)を満たす白色フィルム。
0.01<Cbw/(Bw-Cbw)<1 …(1)
(2)ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、
かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)を核とする空隙を有する白色フィルムであって、
熱可塑性樹脂(B)が環状オレフィン系樹脂であり、
フィルムの垂直断面において、
該熱可塑性樹脂(B)のうち、熱可塑性樹脂(B)断面中に無機粒子(C)が存在する熱可塑性樹脂(B)が存在し、該熱可塑性樹脂(B)の核の数をNB1とした場合に、該熱可塑性樹脂(B)のうち内部に無機粒子(C)を含むものの数NB2の割合NB2/NB1×100(%)が、15%以上である、白色フィルム。
)無機粒子(C)が酸化チタンを主成分とする(1)または)に記載の白色フィルム。
)無機粒子(C)表面のSEM-EDXにおいて、Si(ケイ素)の検出強度とM(無機粒子主成分の金属元素)の検出強度比が式(2)を満たす()に記載の白色フィルム。
【0011】
EDX(Si)/EDX(M)>0.5 式(2)
)無機粒子(C)表面にケイ素を含む有機物層を1nm以上有する()または()に記載の白色フィルム。
)少なくとも3層からなり、内層がポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層である(1)~()のいずれかに記載の白色フィルム。
)比重が0.6以上1.0以下である(1)~()のいずれかに記載の白色フィルム。
)LEDバックライト用途である(7)のいずれかに記載の白色フィルム。
)照明用途である(1)~()のいずれかに記載の白色フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、係る課題について鋭意検討した結果、薄膜であるにも係わらず高い反射性と光の高隠蔽性を持つ反射フィルムを製膜安定性良く得るには、ボイドとボイド核剤とを有し、ボイド核剤の中に無機粒子を含有している構成であることが重要であることを究明し、本発明をなすに到った。
【0013】
本発明者らが鋭意検討したところによれば、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)がドメインを形成している白色フィルムであって、前記白色フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、沈殿物を除去した浮遊不溶物の質量BWと浮遊不溶物中の無機粒子の質量Cbwについての式(1)を満たす白色フィルム。
0.01<Cbw/(Bw-Cbw)<1 …(1)
あるいは、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも有し、
かつ、該層中に熱可塑性樹脂(B)を核とする空隙を有する白色フィルムであって、フィルムの垂直断面において、該熱可塑性樹脂(B)において、熱可塑性樹脂(B)断面中に無機粒子(C)が存在する熱可塑性樹脂(B)が存在し、該熱可塑性樹脂(B)の核の数をNB1とした場合に、該熱可塑性樹脂(B)のうち内部に無機粒子(C)を含むものの数NB2の割合NB2/NB1×100(%)が、15%以上であれば、薄膜であるにも係わらず高い反射性と光の高隠蔽性を持つ白色フィルムを製膜安定性良く提供できることを見いだしたものである。
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
[フィルム構成]
本発明の白色フィルムは、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層を少なくとも1層有する必要がある。フィルム中のある層を構成する成分の内、少なくとも50重量%以上であれば、主成分といえる。
【0016】
ポリエステル樹脂(A)について、好ましい態様を以下に記載する。ポリエステル樹脂とはエステル結合を主鎖に持つ高分子をいうが、本発明に用いるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとが縮重合した構造を持つポリエステル樹脂が好ましい。ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸では、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分として、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)などの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物など各成分が挙げられる。これらはそれぞれ1種だけであっても2種以上用いられるものであっても良い。また、フィルムとして製膜性に影響が出なければまたトリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体を少量共重合されたものであっても構わない。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の具体的な例は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどは安価に入手でき、かつ製膜性も良好であるため、特に好適に用いることができる。また、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合の共重合成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、炭素数2~15のジオール成分を挙げることができ、これらの例としては、たとえばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、スルホン酸塩基含有イソフタル酸、およびこれらのエステル形成性化合物、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、数平均分子量400~20,000のポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。
【0018】
ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)は、後述する空隙(ボイド)を形成するボイド核剤として使用される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの直鎖状または分鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素系樹脂などが選ばれる。なかでも好ましいのはオレフィン系樹脂またはスチレン系樹脂であり、オレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルペンテン-1(以下、「ポリメチルペンテン」または「PMP」と略称することがある)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、環状オレフィンが、スチレン系樹脂としてはポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレンなどが好ましい。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の熱可塑性樹脂(B)を併用してもよい。本発明の熱可塑性樹脂(B)は、ポリオレフィンであることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの直鎖状または分鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などであり、特に好ましいのは、ポリメチルペンテンもしくは環状オレフィンである。ポリオレフィンであれば、ポリエステル樹脂(A)中にボイドを形成しやすく、かつ製膜性との両立がしやすいため好ましい。
ボイド核剤に好ましく用いられるポリメチルペンテンとしては、分子骨格中に4-メチルペンテン-1から誘導される二価の有機基を繰返し単位として、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。また、その他の繰返し単位としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、3-メチルブテン-1、あるいは4-メチルペンテン-1以外で炭素数6~12の炭化水素から誘導される二価の有機基などが挙げられる。ポリメチルペンテンは単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、組成や溶融粘度などが異なる複数のポリメチルペンテンを混合して用いたり、他のオレフィン系樹脂やその他樹脂と併用したりしてもよい。
ボイド核剤に好ましく用いられる環状オレフィンは、シクロアルケン、ビシクロアルケン、トリシクロアルケン及びテトラシクロアルケンなどのシクロオレフィン成分と、エチレン、プロピレンなどの直鎖オレフィン成分からなる共重合体である。
【0019】
シクロオレフィン成分の代表例としては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、6-メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、5,6-ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、1-メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、6-エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、6-n-ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、6-i-ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、7-メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕-3-デセン、2-メチル-トリシクロ〔4,3,0,12.5〕-3-デセン、5-メチル-トリシクロ〔4,3,0,12.5〕-3-デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5〕-3-デセン、10-メチル-トリシクロ〔4,4,0,12.5〕-3-デセンなどが挙げられる。
直鎖オレフィン成分の代表例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンなどが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂(B)(主にボイド核剤として機能する)に好ましく用いられるシクロオレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましい。110℃以上とすることで高い反射率と、寸法安定性を両立することが可能となる。具体的には130℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。かかる範囲にすることにより、混練時において樹脂中に微分散化し、延伸工程においてより確実にボイドを形成し、熱処理工程におけるボイド消失を抑制することができるためである。シクロオレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)の上限は250℃が好ましい。
【0021】
シクロオレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)を110℃以上に制御するためには、例えばシクロオレフィン共重合体中のシクロオレフィン成分の含有量を多くし、エチレンなどの直鎖オレフィン成分の含有量を少なくすることが挙げられる。具体的には、シクロオレフィン成分は60モル%以上であり、エチレンなどの直鎖オレフィン成分の含有量は40モル%未満であることが好ましい。より好ましくは、シクロオレフィン成分は70モル%以上であり、エチレンなどの直鎖オレフィン成分の含有量は30モル%未満、さらに好ましくはシクロオレフィン成分が80モル%以上であり、エチレンなどの直鎖オレフィン成分の含有量が20モル%未満である。特に好ましくはシクロオレフィン成分が90モル%以上であり、エチレンなどの直鎖オレフィン成分の含有量が10モル%未満である。かかる範囲にすることにより、シクロオレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)を前述の範囲まで高めることができる。
【0022】
シクロオレフィン共重合体を用いる場合、直鎖オレフィン成分は、反応性の観点からエチレン成分が好ましい。さらに、シクロオレフィン成分は、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-2-エン(ノルボルネン)やその誘導体が生産性・透明性・高Tg化の点から好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂(B)(主にボイド核剤として機能する)は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層100質量%に対して、5~50質量%含有することが反射率の点から好ましい。より好ましくは10~40質量部である。5質量%未満であると形成されるボイドが少なくなり、反射率が低くなる場合がある。また、50質量%より多いと、反射率の低下や製膜時の破れが発生しやすく生産性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の白色フィルムは、無機粒子(C)が酸化チタンを主成分とすることが好ましい。酸化チタンを主成分とすることで、反射率を向上させやすい。無機粒子(C)を構成する成分のうち、少なくとも50質量%以上が酸化チタンであれば、主成分であると言える。
【0025】
無機粒子(C)の平均粒径(D50、モード平均粒径)は0.05~1μmであることが好ましい。より好ましくは平均粒径0.1~0.5μm、さらに好ましくは0.15~0.35μmである。平均粒径が0.05μm未満であると、分散性が低下して凝集を起こしやすくなり、1μmより大きいと、後述する無機粒子(C)が熱可塑性樹脂(B)中に含まれる構造が得られない場合があり好ましくない。
【0026】
無機粒子(C)は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層のうち、10質量%より多く、40質量%より少ないことが好ましい。より好ましくは15質量%より多く、35質量%より少ないことである。10質量%より少ない場合、反射率が低下する場合があり好ましくない。40質量%より多い場合、生産性が低下する場合があり好ましくない。特に、フィルム厚みが薄くなるほど生産性は低下しやすくなる。
【0027】
本発明の白色フィルムは、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層中に熱可塑性樹脂(B)を核とするボイド(空隙)を有する必要がある。
【0028】
本発明における空隙とは、ボイド核剤によって形成される該層中に存在する空間のことを指す。空隙の形状は、フィルム断面から観察される略円、略楕円状である。空隙の形成方法は、上記に記載のポリエステル樹脂(A)とボイド核剤を任意の割合で混合した樹脂を延伸により外力を加え、ポリエステル樹脂(A)とボイド核剤とを引き剥がす方法で形成させることができる。具体的には、ポリエステル樹脂(A)とボイド核剤とを含有する混合物を溶融押出しした後、少なくとも一方向に延伸することで、内部に気泡を形成させる方法が挙げられる。
本発明の白色フィルムは、ヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、沈殿物を除去した浮遊不溶物の質量Bwと浮遊不溶物中の無機粒子の質量Cbwについての式(1)を満たす必要がある。
【0029】
0.01<Cbw/(Bw-Cbw)<1 …(1)
白色フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させた際の不溶物は、沈殿物と浮遊不溶物に分かれ、浮遊不溶物にはヘキサフルオロイソプロパノールの密度(1.6g/cm)より軽い熱可塑性樹脂(B)が主に含まれる。この浮遊不溶物を回収、乾燥し、その質量をBwとする。さらに、この浮遊不溶物中に含まれる無機粒子の質量を例えばICP分析により測定し、質量Cbwとする。このCbwと浮遊不溶物中の無機粒子以外の成分(Bw-Cbw)の比Cbw/(Bw-Cbw)が大きいほど、熱可塑性樹脂(B)の内部に無機粒子(C)が含まれていることを示す。熱可塑性樹脂(B)の内部に無機粒子(C)が含まれていることで、製膜安定性と光学特性の両立が可能にない好ましい。より好ましくは、0.02<Cbw/(Bw-Cbw)<0.7であり、さらに好ましくは0.03<Cbw/(Bw-Cbw)<0.5である。Cbw/(Bw-Cbw)が0.01以下であれば、製膜安定性と良好な光学特性(反射率、透過率)を両立することが困難になる。この比を1以上とすると、無機粒子が凝集しやすく好ましくない。なお、回収した沈殿物にも熱可塑性樹脂(B)が含まれる場合は、臭化ナトリウム水溶液など、より高比重の液体を使用したり、遠心分離により分離した上で回収したりしても良い。
【0030】
本発明の白色フィルムは、フィルムの垂直断面において観察される、該熱可塑性樹脂(B)において、熱可塑性樹脂(B)断面中に無機粒子(C)が存在する熱可塑性樹脂(B)が存在し、該熱可塑性樹脂(B)の核の数をNB1とした場合に、該熱可塑性樹脂(B)のうち内部に無機粒子(C)を含むものの数NB2の割合NB2/NB1×100(%)が、15%以上である必要がある。より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。熱可塑性樹脂(B)中に無機粒子(C)が含まれることで、従来は透明で、直接的に反射率向上に寄与できなかったボイド核剤部で光の反射が起こり、反射効率が向上できるため、薄いフィルムであっても反射率を高めることができる。NB2の割合が15%より小さい場合、反射率が十分に向上できない場合があり好ましくない。また、熱可塑性樹脂(B)中に存在している無機粒子(C)は、ポリエステル樹脂(A)の結晶化を促進しにくい。白色フィルムを後述するように二軸延伸により製造する場合、結晶化が促進されると、製膜安定性が低下しやすい。無機粒子(C)が熱可塑性樹脂(B)中に存在することで、反射率が高い白色フィルムを製膜安定性良く得られる。無機粒子(C)は、熱可塑性樹脂(B)中に存在していれば、一部がポリエステル樹脂(A)中に存在しても構わない。
【0031】
本発明の白色フィルムの垂直断面を得る方法について、一例を示す。イオンミリング装置を用いて、フィルムを厚み方向に潰すことなく、フィルム面に対して垂直かつフィルム長手方向平行に切断し測定試料を作成し、また、同様にフィルム面に対して垂直かつフィルム幅方向に平行に切断し測定試料となる垂直断面を作製する。次いで、走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて長手方向および幅方向のサンプルの切断面を観察し、10000倍に拡大観察した画像を得る。観察範囲は100μm×100μmとする。なお、観察場所はポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層内において無作為に定めるものとする。層の厚みが100μmより小さい場合は、厚み方向は層全体、フィルム面に対して平行な方向には100μmの範囲とする。得られた画像から、ボイドの核となっており、断面に表れている熱可塑性樹脂(B)のドメイン数NB1をカウントする。この際、ボイドの奥に見えていても断面に出ていないドメインは除外する。
【0032】
ボイド中に存在する熱可塑性樹脂(B)のドメインのうち、その断面に無機粒子(C)が現れているドメイン数NB2をカウントする。ドメインに無機粒子が内包されている状態のものをカウントし、ドメインの表面部に付着しているだけのものはカウントしない。無機粒子(C)が熱可塑性樹脂(B)中に含まれるようにする方法として、無機粒子(C)に熱可塑性樹脂(B)との相溶性を高めるための表面処理を施すことが好ましい。表面処理剤としては、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素などが好ましく用いられる。特に好ましくはシランカップリング剤である。
表面処理方法は特に限定されないが、例えば、乾式法または湿式法を挙げることができる。乾式法とは、攪拌機によって高速攪拌している無機材料の中に表面処理剤を滴下または噴霧して反応させる手法であり、湿式法とは、無機材料にアルコール等の有機溶剤を加えスラリーとした状態で表面処理剤を加え反応させる手法である。
例えばシランカップリング剤による処理の場合、常法に従って予め無機粒子(C)をシランカップリング剤により表面処理し、ついで熱可塑性樹脂(B)と溶融混練する方法が好ましく用いられる。また、予め無機粒子(C)の表面処理を行わずに、無機粒子(C)と熱可塑性樹脂(B)を溶融混練する際に、カップリング剤を添加するインテグラブルブレンド法を用いることもできる。
無機粒子(C)と熱可塑性樹脂(B)を溶融混練したマスターバッチを、さらにポリエステル樹脂(A)などの樹脂と溶融混練し、シート化することで、無機粒子(C)が熱可塑性樹脂(B)の内部に含まれる構造を得ることができる。
【0033】
本発明の白色フィルムは、無機粒子(C)表面のSEM-EDX(エネルギー分散型X線分析)において、Si(ケイ素)の検出強度とM(無機粒子主成分の金属元素)の検出強度比が式(2)を満たすことが好ましい。
EDX(Si)/EDX(M)>0.5 式(2)
金属元素の検出強度に対するケイ素の検出強度が高いほど、無機粒子の表面をケイ素が含まれる化合物で十分に被覆されていると言える。検出強度比が0.6より大きいことがより好ましく、0.7より大きいことがさらに好ましい。ケイ素が含まれる化合物で十分に被覆されていると、無機粒子(C)と熱可塑性樹脂(B)の相溶性を高めやすいため好ましい。0.5以下である場合、無機粒子(C)と熱可塑性樹脂(B)の相溶性が悪化する場合があり、好ましくない。
【0034】
本発明の白色フィルムは、無機粒子(C)表面にケイ素を含む有機物層を1nm以上有することが好ましい。より好ましくは1.5nm以上であり、さらに好ましくは2nm以上である。ケイ素を含む有機物層が10nmより厚い場合、無機粒子(C)の反射率が低下する場合があり好ましくない。
【0035】
本発明の白色フィルムは、少なくとも3層からなり、芯層がポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層であることが好ましい。例えば、芯層(Y)と、表層(X)がX/Y/Xの順に3層に積層した構成が好ましい。表層(X)と芯層(Y)をX/Y/Xの順に積層することにより、高い製膜安定性を得ることができる場合がある。また、本発明の白色フィルムは、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さと強度を考慮すると3層構成が好ましい。また、表層(X)と芯層(Y)は共押出し法により製膜ライン中で一挙に積層された後に、2軸方向に延伸されることが好ましい。さらに、必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0036】
本発明の本発明の白色フィルムは比重が0.6以上1.0以下であることが好ましい。より好ましくは、0.7以上0.85以下である。比重が0.6より小さい場合、フィルム中のボイドの割合が高く、生産性が低下する場合があり好ましくない。また、比重が1.0より大きい場合、ボイドの形成が不十分であり、反射率が低下する場合があり好ましくない。比重をかかる範囲とするためには、ボイド核剤となる熱可塑性樹脂(B)および無機粒子(C)を前述の添加量とすることが好ましい。
本発明の効果を損なわない範囲で、無機粒子(C)と異なる無機粒子(D)を含有しても良い。無機粒子(D)は、ボイド核剤として作用しても良い。無機粒子(D)の平均粒径(D50、モード平均粒径)は0.05~1μmであることが好ましい。より好ましくは平均粒径0.1~0.5μm、さらに好ましくは0.15~0.35μmである。平均粒径が0.05μm未満であると、分散性が低下して凝集を起こしやすくなり、1μmより大きいと、ボイドが連結しやすくなり、生産性が低下する場合がある。
【0037】
無機粒子(D)を含有する場合は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層のうち、1~40質量%であることが好ましい。より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは、10~25質量%である。1質量%より少ない場合、十分な効果が得られない場合があり好ましくない。40質量%より多い場合、生産性が低下する場合があり好ましくない。無機粒子(D)の含有量の添加量を増やすことで反射率と透過率は向上するが、製膜安定性は低下する。
また、無機粒子(C)と無機粒子(D)の総量は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、無機粒子(C)を主成分とする層のうち、50質量%未満であることが好ましい。無機粒子(C)と無機粒子(D)の総量が50質量%以上の場合、生産性が低下する場合があり好ましくない。より好ましくは、無機粒子(C)と無機粒子(D)の総量が10~40質量%、さらに好ましくは、15~35質量%である。
【0038】
無機粒子(D)は、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミ、リン酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、の中から選ばれる無機粒子である。また、それらは単独もしくは2種類以上の混合で使用することが出来るが、中でも高い光学特性を製膜安定性が得られることから、シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化亜鉛粒子が特に好ましい。
【0039】
次に本発明の白色フィルムの製造方法について、その一例を説明するが特に限定されるものではない。少なくとも2台の一軸または二軸押出機、主押出機と副押出機を有する複合製膜装置において、主押出機に芯層(Y)の原料となる樹脂、副押出機に表層(X)の原料となる樹脂を投入する。それぞれの原料は水分率が50ppm以下となるように乾燥されていることが好ましい。このようにして各押出機に原料を供給し、例えば2台の押出機とTダイ上部に設置したフィードブロックやマルチマニホールドにてX/Y/Xの3層積層フィルムとすることができる。押出された未延伸シートは、冷却されたドラム上で密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを得る。このとき、均一なフィルムを得るために静電気を印加してドラム上に密着させることが望ましい。その後、必要により延伸工程、熱処理工程を経て目的のポリエステルフィルムを得る。
【0040】
この未延伸フィルムをロール加熱、必要に応じて赤外線加熱等でポリマーのガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、長手方向(以降、縦方向と呼ぶ)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行う。縦延伸の倍率は用途の要求特性にもよるが、好ましくは2~6倍、より好ましくは3~4倍である。2倍未満とすると反射率が低い場合があり、6倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。縦延伸後のフィルムは、続いて、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)に延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。このとき、横延伸のための予熱および延伸温度はポリマーのガラス転移温度(Tg)以上(Tg+20℃)で行うのが好ましい。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5~6倍、より好ましくは3~4倍である。2.5倍未満であると反射率が低い場合がある。6倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。得られた二軸延伸積層フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて180~230℃の温度で1~60秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却し、ロールに巻き取る。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に3~12%弛緩させつつ行ってもよい。
【0041】
またここでは逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明のポリエステルフィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよく、さらに必要に応じて、二軸延伸後、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0042】
こうして得られた二軸延伸積層フィルムに平面安定性、寸法安定性を付与するため、引き続いてテンター内で熱処理(熱固定)を行い、均一に徐冷後、室温付近まで冷却した後、巻き取ることにより、本発明の白色フィルムを得ることができる。
【0043】
また、本発明の効果が損なわれない範囲で、樹脂層(A)の少なくとも片面に、易滑性や帯電防止性、紫外光吸収性能等を付与するために、周知の技術を用いて種々の塗液を塗布したり、耐衝撃性を高めるためにハードコート層などを設けても良い。塗布は、フィルム製造時に塗布(インラインコーティング)してもよいし、フィルム製造後の白色フィルム上に塗布(オフラインコーティング)してもよい。
【0044】
なお、本発明における白色フィルムの厚みは30μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。さらに好ましくは、50μm以上140μm以下である。厚みが30μm未満の場合、製膜性が低下したり、十分な反射性が得られないため好ましくない。一方、300μmより厚い場合、液晶ディスプレイの薄膜化の要求に応えることができず好ましくない。光反射フィルムの厚みは、押出機からの樹脂の溶融押出量及び未延伸シートを延伸する工程の速度を調整するなどの公知の方法で調整することができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0046】
・ Bw、Cbw
白色フィルムを1g秤量し、HFIP 100mlを加えて十分に攪拌し、溶解させた。静置後、浮遊する不溶物を回収し、乾燥後の重量をBwとした。さらに、硫酸、硝酸、過塩素酸およびふっ化水素酸で加熱分解したのち、希硝酸で加温溶解して定容とした。この溶液について、ICP 発光分光分析法で金属元素を測定し、試料中の含有量を求め、酸化物値に換算した値をCbwとした。
【0047】
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121-1987、JIS K7122-1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステル層もしくはポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた、ガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読み取り、各ベースラインの延長した直線から縦軸(熱流を示す軸)方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の中間点ガラス転移温度を求め、ガラス転移温度とした。なお、ベースライン上に見られる、極微小なピーク面積(結晶融解エネルギー換算で0.5J/g以下)の吸熱ピークについてはノイズとして除去した。表層のみを測定する場合は、カッターで表層を削りとって測定を行った。
【0048】
(3)断面SEM、NB1、NB2
日立イオンミリング装置IM4000を用いて、フィルムを厚み方向に潰すことなく、フィルム面に対して垂直かつフィルム長手方向平行に切断し測定試料を作成し、また、同様にフィルム面に対して垂直かつフィルム幅方向に平行に切断し測定試料を作製した。フィルムの長手方向が分からない場合は、任意の一方向と、それに対して垂直な方向に切断する。次いで、走査電子顕微鏡(日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4000)を用いて長手方向および幅方向のサンプルの切断面を観察し、10,000倍に拡大観察した画像を得た。それぞれ100μm×100μmの範囲を観察し、ボイドの核となっており、断面に表れている熱可塑性樹脂(B)のドメイン数NB1をカウントする。この際、ボイドの奥に見えていても断面に出ていないドメインは除外する。
ボイド中に存在する熱可塑性樹脂(B)のドメインのうち、その断面に無機粒子が現れているドメイン数NB2をカウントする。ドメインに無機粒子が内包されている状態のものをカウントし、ドメインの表面部に付着しているだけのものはカウントしない。
【0049】
(4)SEM-EDX、EDX強度
断面SEM観察時にサンプルを25000倍に拡大し、付属するエネルギー分散型X線検出器(株式会社堀場製作所EDX EMAX-7000)による分析を行った。長手方向断面と幅方向断面から、熱可塑性樹脂(B)ドメインの断面から見えている無機粒子(C)をそれぞれ15個ずつ合計30個選択し、その中央部でEDX強度をBa、Ti、Ca,Znに対して評価した。30点の平均強度が最も高い元素を無機粒子(C)の主成分金属元素とする。同様に、Si元素の強度を評価した。Si元素の強度が高い方から10個の粒子について、EDX(Si)/EDX(M)を評価し、その平均を本願のEDX強度比とした。
【0050】
(5)無機粒子の平均粒径(D50、モード平均粒径)
フィルム幅方向に平行に切断した断面SEM画像を、画像処理ソフト「PerfectView7」に取り込み、測定視野内の計100個の無機粒子を真円に換算したときの直径を算出し、直径のヒストグラムを作成し、積算値が50%となる粒径を、無機粒子の平均粒径とした。複数の種類の無機粒子が存在する場合は、EDXなどで同定し、それぞれの無機粒子について平均粒径を求める。
【0051】
(6)表面処理厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム面に対して垂直かつフィルム長手方向平行にミクロトーム(ライカ製:RM2265)で切り出した。走査透過型電子顕微鏡(STEM) 日本電子製JEM2100F型(環状暗視野検出器付き)により、熱可塑性樹脂(B)ドメインの断面から見えている無機粒子(C)の表面処理厚みを観察した。5個以上の無機粒子(C)を観察し、その平均を表層処理厚みとした。
観測方式:高角度散乱暗視野法(HAADF法)
測定条件:加速電圧 100~200kV
測定倍率:20万倍
検出角 :75mrad
加速電圧:30~40KeV
ここで、HAADF像は原子番号の約二乗に比例する弾性散乱電子のみを用いる結像法であり、Z-コントラスト法とも呼ばれている。各層厚みはHAADF-STEM像コントラストから算出されている。
【0052】
(7)反射率
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に60mmφ積分球を取り付け、酸化アルミニウムの標準白色板(日立ハイテクノロジーズ製、部品No.210-0740)を100%としたときの反射率を400~700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、算術平均値を計算し、反射率とする。
【0053】
A:100%以上
B:99%以上100%未満
C;98%以上99%未満
D:97%以上98%未満
E:97%未満。
【0054】
(8)透過率(全光線透過率)
日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361-1、1997年版)に従って測定した。
【0055】
A:2.5%未満
B:2.5%以上3.0%未満
C:3.0%以上3.5%未満
D:3.5%以上4.0%未満
E:4.0%以上。
【0056】
(9)フィルム厚み
フィルムの幅方向の中心部分の断面を5枚切り出し、走査電子顕微鏡(日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4000)を用いて500~5,000倍に拡大観察して撮影した断面写真より、フィルムの厚みを計測した。5枚の数値の平均値をフィルム厚みとした。
【0057】
(10)フィルム比重
得られたフィルムを5cm×5cmの大きさに切りだし、JIS K7112(1980版)に基づいて電子比重計SD-120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。なお、各フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値をもって該フィルムの比重とした。
【0058】
(11)製膜安定性
48時間製膜し、フィルムが12時間あたりに破れた回数を求めた。
【0059】
A:1回未満
B:1回以上2回未満
C:2回以上3回未満
D:3回以上
E:製膜不可。
【0060】
(12)総合評価
反射率、透過率、製膜安定性の評価(A~E)について、A:5点、B:4点、C:3点、D:2点、E:1点とする。3つの評価の合計点が10点以上を合格とした。
【0061】
[使用原料]
(1)ポリエステル樹脂(a)
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、ポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。得られたPETのガラス転移温度は77℃、融点は255℃、固有粘度は0.63dl/g、末端カルボキシル基濃度は40eq./tであった。
【0062】
(2)共重合ポリエステル樹脂(b)
市販の1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステル(イーストマン・ケミカル社製 GN001)を使用した。
【0063】
(3)共重合ポリエステル樹脂(c)
市販のPBT-PAG(ポリアルキレングリコール)共重合体「ハイトレル7247」(東レ・デュポン(株)製)を用いた。該樹脂はPBT(ポリブチレンテレフタレート)とPAG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体である。
【0064】
(4)熱可塑性樹脂(d)
市販の環状オレフィン樹脂「TOPAS 6017」(日本ポリプラスチックス株式会社)を用いた。
【0065】
(5)二酸化チタンマスター(e)
二酸化チタン粒子(数平均粒径0.25μm)50質量部に対し、シランカップリング剤「11-100Additive」(東レダウ・コーニング社製)を0.025質量部添加し、常法により表面処理したのち、ポリエステル樹脂(a)を50重量部と二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(e)を得た。
【0066】
(6)二酸化チタンマスター(f)
熱可塑性樹脂(d)を50重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.25μm)50重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(f)を得た。
【0067】
(7)二酸化チタンマスター(g)
二酸化チタン粒子(数平均粒径0.25μm)50質量部に対し、シランカップリング剤「11-100Additive」(東レダウ・コーニング社製)を0.25質量部添加し、常法により表面処理したのち、熱可塑性樹脂(d)を50重量部と二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(g)を得た。
【0068】
(8)二酸化チタンマスター(h)
二酸化チタン粒子(数平均粒径0.25μm)50質量部に対し、シランカップリング剤「11-100Additive」(東レダウ・コーニング社製)を0.025質量部添加し、常法により表面処理したのち、熱可塑性樹脂(d)を50重量部と二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(h)を得た。
【0069】
(9)硫酸バリウムマスター(i)
硫酸バリウム粒子(数平均粒径0.5μm)50質量部と、ポリエステル樹脂(a)を50重量部と二軸押出機にて混練し、硫酸バリウムマスターペレット(i)を得た。
【0070】
(10)炭酸カルシウムマスター(j)
炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)50質量部と、ポリエステル樹脂(a)を50重量部と二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウムマスターペレット(j)を得た。
【0071】
(11)熱可塑性樹脂(k)
市販のポリメチルペンテン樹脂(三井化学(株)製、“TPX”)を用いた。
(12)二酸化チタンマスター(l)
二酸化チタン粒子(数平均粒径0.25μm)50質量部に対し、シランカップリング剤「11-100Additive」(東レダウ・コーニング社製)を0.25質量部添加し、常法により表面処理したのち、熱可塑性樹脂(k)を50重量部と二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(l)を得た。
【0072】
(実施例1~11、比較例1~3)
表1に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に芯層(Y)の原料を供給し280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行い、副押出機に表層(X)の原料を供給し290℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金内で、表層(X)が芯層(Y)の両表層に積層(X/Y/X)されるよう合流せしめた。
【0073】
次いで、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。続いて、該未延伸フィルムを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、赤外線ヒーターで両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に表2の倍率にて延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の予熱ゾーンに導き、引き続き120 ℃ で長手方向に垂直な方向(横方向)に表2の倍率にて延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表2の温度の熱処理を施し、次いで均一に徐冷後、ロールに巻き取り、表2に記載の厚みの白色フィルムを得た。
【0074】
(比較例4)
表1に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に芯層(Y)の原料を供給し280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行い、副押出機に表層(X)の原料を供給し290℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金内で、表層(X)が芯層(Y)の両表層に積層(X/Y/X)されるよう合流せしめた。
【0075】
次いで、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。続いて、該未延伸フィルムを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、赤外線ヒーターで両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に表2の倍率にて延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の予熱ゾーンに導き、引き続き120 ℃ で長手方向に垂直な方向(横方向)に表2の倍率にて延伸した。しかし、フィルムの破れが頻発し、評価可能なフィルムを採取することができなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、反射フィルムの厚みを厚くすることなく、高い反射率と隠蔽性を達成する白色フィルムを製膜安定性良く提供することができる。