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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 652D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652H
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652J
H01L29/78 655A
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/44 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019558926
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2018036896
(87)【国際公開番号】W WO2019116684
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2017240856
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日吉 透
(72)【発明者】
【氏名】築野 孝
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-373988(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138215(WO,A1)
【文献】特開2008-294157(JP,A)
【文献】特開2009-164183(JP,A)
【文献】特開2006-310782(JP,A)
【文献】特表2009-522807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/41
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、第1導電型を有する第1不純物領域と、前記第1不純物領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域と、前記第1不純物領域から隔てられるように前記第2不純物領域上に設けられ、かつ前記第1導電型を有する第3不純物領域とを含み、
前記第1主面には、ゲート電極トレンチと、ゲートランナートレンチとが設けられており、
前記ゲート電極トレンチは、側面と、前記側面に連なる底面とにより規定されており、
前記側面は、前記第1不純物領域と、前記第2不純物領域と、前記第3不純物領域とにより構成されており、
前記底面は、前記第1不純物領域により構成されており、さらに、
前記側面および前記底面の双方に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、
前記ゲートランナートレンチ内に設けられ、かつ前記第1ゲート電極と電気的に接続されている第2ゲート電極と、
前記第1主面において、前記第3不純物領域に接する第1電極と、
前記第2主面に接する第2電極と、
前記第2ゲート電極上に設けられたゲートランナーとを備え、
前記ゲートランナートレンチの深さは、前記ゲート電極トレンチの深さよりも大きい、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第2ゲート電極と前記ゲートランナーとの境界は、前記第1主面と前記第2主面との間にある、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記炭化珪素基板は、前記ゲートランナートレンチと前記第2主面との間にあり、かつ前記第2導電型を有する第4不純物領域を含む、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第4不純物領域は、前記ゲートランナートレンチに接している、請求項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第3不純物領域は、前記ゲートランナートレンチから離間している、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートランナートレンチの延在方向に対して垂直な断面における前記ゲートランナートレンチの幅は、前記ゲート電極トレンチの延在方向に対して垂直な断面における前記ゲート電極トレンチの幅よりも大きい、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2ゲート電極の延在方向に対して垂直な断面における前記第2ゲート電極の幅は、前記ゲートランナーの延在方向に対して垂直な断面における前記ゲートランナーの幅よりも大きい、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第2不純物領域と電気的に接続されているソースパッドをさらに備え、
前記ゲートランナーは、前記第2主面に対面する第3主面と、前記第3主面と反対側の第4主面とを含み、
前記ソースパッドは、前記第2主面に対面する第5主面と、前記第5主面と反対側の第6主面とを含み、
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第4主面と前記第2主面との距離は、前記第6主面と前記第2主面との距離よりも短い、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第2ゲート電極と前記ゲートランナーとの境界は、前記第1主面と前記第2主面との間にあり、
前記炭化珪素基板は、前記ゲートランナートレンチと前記第2主面との間にあり、かつ前記第2導電型を有する第4不純物領域を含み、
前記第2ゲート電極の延在方向に対して垂直な断面における前記第2ゲート電極の幅は、前記ゲートランナーの延在方向に対して垂直な断面における前記ゲートランナーの幅よりも大きく、
前記第2不純物領域と電気的に接続されているソースパッドをさらに備え、
前記ゲートランナーは、前記第2主面に対面する第3主面と、前記第3主面と反対側の第4主面とを含み、
前記ソースパッドは、前記第2主面に対面する第5主面と、前記第5主面と反対側の第6主面とを含み、
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第4主面と前記第2主面との距離は、前記第6主面と前記第2主面との距離よりも短い、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。本出願は、2017年12月15日に出願した日本特許出願である特願2017-240856号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
国際公開2013/035818号(特許文献1)には、トレンチゲート型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が記載されている。当該IGBTにおいては、トレンチゲート用のゲート電極と導通されたゲートランナーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2013/035818号
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素基板と、ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1電極と、第2電極と、ゲートランナーとを備えている。炭化珪素基板は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを有する。炭化珪素基板は、第1導電型を有する第1不純物領域と、第1不純物領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域と、第1不純物領域から隔てられるように第2不純物領域上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域とを含んでいる。第1主面には、ゲート電極トレンチと、ゲートランナートレンチとが設けられている。ゲート電極トレンチは、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面は、第1不純物領域と、第2不純物領域と、第3不純物領域とにより構成されている。底面は、第1不純物領域により構成されている。ゲート絶縁膜は、側面および底面の双方に接する。第1ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられている。第2ゲート電極は、ゲートランナートレンチ内に設けられ、かつ第1ゲート電極と電気的に接続されている。第1電極は、第1主面において、第3不純物領域に接する。第2電極は、第2主面に接する。ゲートランナーは、第2ゲート電極上に設けられている。
【0005】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素基板と、ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1電極と、第2電極と、ゲートランナーとを備えている。炭化珪素基板は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを有する。炭化珪素基板は、第1導電型を有する第1不純物領域と、第1不純物領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域と、第1不純物領域から隔てられるように第2不純物領域上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域とを含んでいる。第1主面には、ゲート電極トレンチと、ゲートランナートレンチとが設けられている。ゲート電極トレンチは、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面は、第1不純物領域と、第2不純物領域と、第3不純物領域とにより構成されている。底面は、第1不純物領域により構成されている。ゲート絶縁膜は、側面および底面の双方に接する。第1ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられている。第2ゲート電極は、ゲートランナートレンチ内に設けられ、かつ第1ゲート電極と電気的に接続されている。第1電極は、第1主面において、第3不純物領域に接する。第2電極は、第2主面に接する。ゲートランナーは、第2ゲート電極上に設けられている。炭化珪素基板は、ゲートランナートレンチと第2主面との間にあり、第2導電型を有し、かつゲートランナートレンチに接している第4不純物領域を含んでいる。
【0006】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素基板と、ゲート絶縁膜と、第1ゲート電極と、第1電極と、第2電極と、ゲートランナーとを備えている。炭化珪素基板は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを有する。炭化珪素基板は、第1導電型を有する第1不純物領域と、第1不純物領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域と、第1不純物領域から隔てられるように第2不純物領域上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域と、第2不純物領域上に設けられ、第2導電型を有し、かつ第2不純物領域よりも高い不純物濃度を有する第5不純物領域とを含んでいる。第1主面には、ゲート電極トレンチと、ゲートランナートレンチとが設けられている。ゲート電極トレンチは、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面は、第1不純物領域と、第2不純物領域と、第3不純物領域とにより構成されている。底面は、第1不純物領域により構成されている。ゲート絶縁膜は、側面および底面の双方に接する。第1ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられている。第2ゲート電極は、ゲートランナートレンチ内に設けられ、かつ第1ゲート電極と電気的に接続されている。第1電極は、第1主面において、第3不純物領域に接する。第2電極は、第2主面に接する。ゲートランナーは、第2ゲート電極上に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図であり、図2のI-I線に沿った矢視断面模式図に対応する。
図2図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す平面模式図である。
図3図3は、図3は、図2の領域IIIにおけるゲート電極トレンチおよびゲートランナートレンチの構成を示す平面模式図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った矢視断面模式図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿った矢視断面模式図である。
図6図6は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
図7図7は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0009】
ゲートランナーは、主にゲート電極に対してゲート信号を伝達する役割をはたしている。通常、ゲートランナーは、ゲート酸化膜を介して炭化珪素基板上に設けられたゲート電極の上に配置される。一方、ソースパッドは、絶縁層を介することなく炭化珪素基板の表面上に配置される。そのため、ゲートランナーの表面の位置は、ゲート酸化膜とゲート電極の分だけソースパッドの表面の位置よりも高くなる。たとえばソースパッドに対してワイヤーボンディングを行う際に、ワイヤーがソースパッドよりも突出しているゲートランナーに接触することがある。ワイヤーがゲートランナーに接触すると、ゲートランナーに衝撃が加えられ、ゲートランナーに亀裂が生じることがある。
【0010】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜51と、第1ゲート電極41と、第1電極26と、第2電極60と、ゲートランナー53とを備えている。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1の反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13とを含んでいる。第1主面1には、ゲート電極トレンチ23と、ゲートランナートレンチ33とが設けられている。ゲート電極トレンチ23は、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面21は、第1不純物領域11と、第2不純物領域12と、第3不純物領域13とにより構成されている。底面22は、第1不純物領域11により構成されている。ゲート絶縁膜51は、側面21および底面22の双方に接する。第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられ、かつ第1ゲート電極41と電気的に接続されている。第1電極26は、第1主面1において、第3不純物領域13に接する。第2電極60は、第2主面2に接する。ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。
【0011】
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100においては、第1主面1には、ゲート電極トレンチ23と、ゲートランナートレンチ33とが設けられている。ゲート電極トレンチ23は、側面21と、側面21に連なる底面22とにより規定されている。ゲート絶縁膜51は、側面21および底面22の双方に接する。第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられ、かつ第1ゲート電極41と電気的に接続されている。ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。これにより、第1主面1にゲートランナートレンチ33が設けられていない場合と比較して、ゲートランナー53の高さを低くすることができる。そのため、たとえばワイヤーなどの外部配線をソースパッドに接続する際に、外部配線がゲートランナー53に接触して、ゲートランナー53に衝撃が加えられる可能性を低減することができる。結果として、ゲートランナー53に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第2ゲート電極42とゲートランナー53との境界は、第1主面1と第2主面2との間にあってもよい。これにより、ゲートランナー53の高さをさらに低減することができる。そのため、ゲートランナー53に亀裂が生じることをさらに抑制することができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置100において、ゲートランナートレンチ33の深さは、ゲート電極トレンチ23の深さよりも大きくてもよい。
【0014】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、炭化珪素基板10は、ゲートランナートレンチ33と第2主面2との間にあり、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14を含んでいてもよい。これにより、ゲートランナー絶縁膜52に電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲートランナー絶縁膜52が破壊されることを抑制することができる。
【0015】
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置100において、第4不純物領域14は、ゲートランナートレンチ33に接していてもよい。これにより、ゲートランナー絶縁膜52に電界が集中することをさらに抑制することができる。そのため、ゲートランナー絶縁膜52が破壊されることをさらに抑制することができる。
【0016】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第3不純物領域13は、ゲートランナートレンチ33から離間していてもよい。
【0017】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、ゲートランナートレンチ33の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナートレンチ33の幅W2は、ゲート電極トレンチ23の延在方向に対して垂直な断面におけるゲート電極トレンチ23の幅W1よりも大きくてもよい。
【0018】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2ゲート電極42の延在方向に対して垂直な断面における第2ゲート電極42の幅W3は、ゲートランナー53の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナー53の幅W4よりも大きくてもよい。第2ゲート電極42の幅W3がゲートランナー53の幅W4と同じ場合、位置決めの誤差が大きいと、ゲートランナー53がゲートランナートレンチ33の外部にはみ出て第1主面1に乗り上げるおそれがある。第2ゲート電極42の幅W3をゲートランナー53の幅W4よりも大きくすることにより、位置決めの誤差がある程度大きい場合であっても、ゲートランナー53をゲートランナートレンチ33の内部に配置して、ゲートランナー53が第1主面1に乗り上げることを防止することができる。結果として、位置決めの誤差がある程度大きい場合であっても、ゲートランナー53の高さを低減することができる。
【0019】
(9)上記(1)~(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2不純物領域13と電気的に接続されているソースパッド25をさらに備えていてもよい。ゲートランナー53は、第2主面2に対面する第3主面7と、第3主面7と反対側の第4主面5とを含んでいてもよい。ソースパッド25は、第2主面2に対面する第5主面6と、第5主面6と反対側の第6主面4とを含んでいてもよい。第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面5と第2主面2との距離H4は、第6主面4と第2主面2との距離H5よりも短くてもよい。これにより、ゲートランナー53をソースパッド25よりも低くすることができる。そのため、たとえばワイヤーなどの外部配線をソースパッド25に接続する際に、外部配線がゲートランナー53に接触して、ゲートランナー53に衝撃が加えられる可能性をさらに低減することができる。結果として、ゲートランナー53に亀裂が生じることをさらに抑制することができる。
【0020】
(10)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第2ゲート電極42とゲートランナー53との境界は、第1主面1と第2主面2との間にあってもよい。炭化珪素基板10は、ゲートランナートレンチ33と第2主面2との間にあり、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14を含んでいてもよい。第2ゲート電極42の延在方向に対して垂直な断面における第2ゲート電極42の幅W3は、ゲートランナー53の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナー53の幅W4よりも大きくてもよい。炭化珪素半導体装置100は、第2不純物領域13と電気的に接続されているソースパッド25をさらに備えていてもよい。ゲートランナー53は、第2主面2に対面する第3主面7と、第3主面7と反対側の第4主面5とを含んでいてもよい。ソースパッド25は、第2主面2に対面する第5主面6と、第5主面6と反対側の第6主面4とを含んでいてもよい。第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面5と第2主面2との距離H4は、第6主面4と第2主面2との距離H5よりも短くてもよい。
【0021】
(11)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜51と、第1ゲート電極41と、第1電極26と、第2電極60と、ゲートランナー53とを備えている。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1の反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13とを含んでいる。第1主面1には、ゲート電極トレンチ23と、ゲートランナートレンチ33とが設けられている。ゲート電極トレンチ23は、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面21は、第1不純物領域11と、第2不純物領域12と、第3不純物領域13とにより構成されている。底面22は、第1不純物領域11により構成されている。ゲート絶縁膜51は、側面21および底面22の双方に接する。第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられ、かつ第1ゲート電極41と電気的に接続されている。第1電極26は、第1主面1において、第3不純物領域13に接する。第2電極60は、第2主面2に接する。ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。炭化珪素基板10は、ゲートランナートレンチ33と第2主面2との間にあり、第2導電型を有し、かつゲートランナートレンチ33に接している第4不純物領域14を含んでいる。
【0022】
(12)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜51と、第1ゲート電極41と、第1電極26と、第2電極60と、ゲートランナー53とを備えている。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1の反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13と、第2不純物領域12上に設けられ、第2導電型を有し、かつ第2不純物領域12よりも高い不純物濃度を有する第5不純物領域18とを含んでいる。第1主面1には、ゲート電極トレンチ23と、ゲートランナートレンチ33とが設けられている。ゲート電極トレンチ23は、側面と、側面に連なる底面とにより規定されている。側面21は、第1不純物領域11と、第2不純物領域12と、第3不純物領域13とにより構成されている。底面22は、第1不純物領域11により構成されている。ゲート絶縁膜51は、側面21および底面22の双方に接する。第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられ、かつ第1ゲート電極41と電気的に接続されている。第1電極26は、第1主面1において、第3不純物領域13に接する。第2電極60は、第2主面2に接する。ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”-”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0024】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の一例としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成について説明する。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜51と、第1ゲート電極41と、ソース電極26(第1電極26)と、ドレイン電極60(第2電極60)と、第2ゲート電極42と、ゲートランナー53と、ゲートパッド80(図2参照)と、第1層間絶縁膜36と、第2層間絶縁膜38と、パッシベーション層34とを主に有している。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板16と、炭化珪素単結晶基板16上にある炭化珪素エピタキシャル層17とを含む。
【0026】
炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層17は第1主面1を構成する。炭化珪素単結晶基板16は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板16および炭化珪素エピタキシャル層17は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板16は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。
【0027】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、たとえば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、たとえば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0028】
炭化珪素エピタキシャル層17は、ドリフト領域11(第1不純物領域11)と、ボディ領域12(第2不純物領域12)と、ソース領域13(第3不純物領域13)と、第4不純物領域14と、コンタクト領域15とを主に有する。ドリフト領域11は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11のn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板16のn型不純物の濃度よりも低くてもよい。ドリフト領域11のn型不純物の濃度は、たとえば1×1014cm-3以上5×1016cm-3以下である。
【0029】
ボディ領域12はドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域12におけるp型不純物の濃度は、たとえばドリフト領域11のn型不純物の濃度よりも高い。ボディ領域12におけるp型不純物の濃度は、たとえば1×1016cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0030】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域13は、第1主面1の一部を構成している。ソース領域13のn型不純物の濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。ソース領域13のn型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3程度である。
【0031】
コンタクト領域15は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域15のp型不純物の濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域15は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域15は、第1主面1の一部を構成する。コンタクト領域15のp型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0032】
第1主面1には、ゲート電極トレンチ23が設けられている。ゲート電極トレンチ23は、第1側面21と第1底面22とにより規定されている。第1側面21は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通してドリフト領域11に至る。第1底面22は、第1側面21と連なる。第1底面22は、ドリフト領域11に位置する。第1側面21は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13とにより構成されている。第1底面22は、ドリフト領域11により構成されている。
【0033】
第1底面22は、たとえば第2主面2と平行な平面である。第1側面21は、たとえば第1底面22に対してほぼ垂直な方向延在している。第1側面21は、ゲート電極トレンチ23の幅が第1底面22から第1主面1に向かって拡がるように、第1底面22に対して傾斜していてもよい。ゲート電極トレンチ23は、たとえば第2主面2と平行な方向に沿ってストライプ状に伸長している。ゲート電極トレンチ23は、ハニカム状に伸長していてもよいし、アイランド状に点在していてもよい。
【0034】
ゲート絶縁膜51は、たとえば酸化膜である。ゲート絶縁膜51は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜51は、第1側面21および第1底面22の双方に接する。ゲート絶縁膜51は、第1底面22においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜51は、第1側面21においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11の各々と接する。
【0035】
第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第1ゲート電極41は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。第1ゲート電極41は、たとえばゲート電極トレンチ23の内部に配置されている。ゲート絶縁膜51は、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11の各々と、第1ゲート電極41との間に設けられている。
【0036】
第1主面1には、ゲートランナートレンチ33が設けられている。ゲートランナートレンチ33は、第2側面31と第2底面32とにより規定されている。第2側面31は、コンタクト領域15およびボディ領域12を貫通してドリフト領域11に至る。第2底面32は、第2側面31と連なる。第2底面32は、ドリフト領域11に位置する。第2側面31は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、コンタクト領域15とにより構成されている。第2底面32は、ドリフト領域11により構成されている。第2底面32は、たとえば第2主面2と平行な平面である。第2側面31は、たとえば第2底面32に対してほぼ垂直な方向延在している。第2側面31は、ゲートランナートレンチ33の幅が第2底面32から第1主面1に向かって拡がるように、第2底面32に対して傾斜していてもよい。ゲートランナートレンチ33は、たとえば第2主面2と平行な方向に沿ってストライプ状に伸長している。
【0037】
ゲートランナー絶縁膜52は、たとえば酸化膜である。ゲートランナー絶縁膜52は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲートランナー絶縁膜52は、第2側面31および第2底面32の双方に接する。ゲートランナー絶縁膜52は、第2底面32においてドリフト領域11と接する。ゲートランナー絶縁膜52は、第2側面31においてコンタクト領域15、ボディ領域12およびドリフト領域11の各々と接する。別の観点から言えば、ソース領域13は、ゲートランナートレンチ33から離間している。
【0038】
第2ゲート電極42は、ゲートランナー絶縁膜52上に設けられている。第2ゲート電極42は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられている。第2ゲート電極42を構成する材料は、たとえば第1ゲート電極41を構成する材料と同じである。第2ゲート電極42は、第1ゲート電極41と電気的に接続されている。第2ゲート電極42と第1ゲート電極41とは、一体として形成されていてもよいし、別体として形成されていてもよい。第2ゲート電極42は、第1ゲート電極41に直接連なっていてもよいし、別の導電体を介して第1ゲート電極41と電気的に接続されていてもよい。
【0039】
ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。ゲートランナー53を構成する材料は、第1ゲート電極41および第2ゲート電極42の各々を構成する材料とは異なっている。ゲートランナー53を構成する材料の電気伝導率は、第1ゲート電極41および第2ゲート電極42の各々を構成する材料の電気伝導率よりも高くてもよい。ゲートランナー53は、たとえばアルミニウムを含む材料により構成されている。
【0040】
ゲートランナー53の一部は、ゲートランナートレンチ33内に配置されていてもよい。ゲートランナー53は、たとえば第2底面32に対向して設けられている。ゲートランナー53の一部は、第2側面31に対向していてもよい。ゲートランナー53がゲートランナートレンチ33に入り込んでいる深さH3は、たとえば0.1μm以上2μm以下である。深さH3は、第2主面2に対して垂直な方向における第1主面1と境界との距離である。
【0041】
第2主面2に対して垂直な方向において、第2ゲート電極42とゲートランナー53との境界3は、第1主面1と第2主面2との間にあってもよい。特定的には、第2主面2に対して垂直な方向において、境界3は、第1主面1と第2底面32との間にある。境界3は、第1主面1に対して第2底面32側に位置している。ゲートランナー53は、境界3と反対側にある第4主面5を有している。
【0042】
ゲートランナートレンチ33の深さH2は、ゲート電極トレンチ23の深さH1よりも大きくてもよい。ゲート電極トレンチ23の深さH1は、たとえば0.5μm以上2.5μm以下である。ゲートランナートレンチ33の深さH2は、たとえば0.5μm以上3.0μm以下である。
【0043】
ゲートランナートレンチ33の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナートレンチ33の幅W2は、ゲート電極トレンチ23の延在方向に対して垂直な断面におけるゲート電極トレンチ23の幅W1よりも大きくてもよい。ゲート電極トレンチ23の幅W1は、たとえば0.25μm以上3.0μm以下である。ゲートランナートレンチ33の幅W2は、たとえば0.30μm以上1000μm以下である。なお、トレンチの延在方向とは、トレンチの底面に平行な方向であって、かつトレンチの側面に平行な方向である。
【0044】
第2ゲート電極42の延在方向に対して垂直な断面における第2ゲート電極42の幅W3は、ゲートランナー53の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナー53の幅W4よりも大きくてもよい。第2ゲート電極42の幅W3は、たとえば0.30μm以上1000μm以下である。ゲートランナー53の幅W4は、たとえば0.4μm以上995μm以下である。なお、第2ゲート電極42の延在方向とは、第2ゲート電極42の長手方向である。ゲートランナー53の延在方法についても同様である。
【0045】
第4不純物領域14は、たとえばゲートランナートレンチ33と第2主面2との間にある。具体的には、第4不純物領域14は、第2底面32と第2主面2との間にある。第4不純物領域14は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。第4不純物領域14のp型不純物の濃度は、たとえば1×1016cm-3以上1×1019cm-3以下である。ゲートランナートレンチ33の延在方向に対して垂直な断面において、第4不純物領域14の幅は、第2底面32の幅W2よりも大きくてもよい。
【0046】
第4不純物領域14は、ゲート電極トレンチ23の直下には配置されていなくてもよい。具体的には、第4不純物領域14は、第1底面22と第2主面2との間の領域には配置されていない。第1底面22と第2主面2との間の領域には、たとえばドリフト領域11が配置されている。当該ドリフト領域11は、たとえば第4不純物領域14に挟まれている。第4不純物領域14は、ソース電極26に電気的に接続されていてもよいし、フローティングであってもよい。
【0047】
ソース電極26は、たとえば第1主面1において、ソース領域13と、コンタクト領域15とに接する。ソース電極26は、コンタクト電極24と、ソースパッド25とを有する。ソース電極26は、第1主面1に設けられたソーストレンチ(図示せず)内に設けられており、ソーストレンチの壁面においてソース領域13と接していてもよい。ソースパッド25は、コンタクト電極24上にある。ソースパッド25は、ソース領域13と電気的に接続されている。コンタクト電極24は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域15に接していてもよい。コンタクト電極24は、たとえばTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されている。コンタクト電極24は、ソース領域13とオーミック接合している。コンタクト電極24は、コンタクト領域15とオーミック接合していてもよい。
【0048】
図1に示されるように、ゲートランナー53は、第2主面2に対面する第3主面7と、第3主面7と反対側の第4主面5とを含んでいる。ソースパッド25は、第2主面2に対面する第5主面6と、第5主面6と反対側の第6主面4とを含んでいる。第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面5と第2主面2との距離H4は、第6主面4と第2主面2との距離H5よりも短くてもよい。別の観点から言えば、ゲートランナー53は、ソースパッド25よりも低くてもよい。
【0049】
ドレイン電極60は、第2主面2に接する。ドレイン電極60は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板16と接している。ドレイン電極60は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極60は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。
【0050】
第1層間絶縁膜36は、たとえば第1ゲート電極41およびゲート絶縁膜51の各々上に設けられている。たとえば第1層間絶縁膜36は、第1ゲート電極41およびゲート絶縁膜51の各々に接している。第1層間絶縁膜36は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。第1層間絶縁膜36は、たとえば第1ゲート電極41とソース電極26とを電気的に絶縁している。第1層間絶縁膜36は、たとえばソース電極26に覆われている。第1層間絶縁膜36の上面は、たとえばソースパッド25に接している。第1層間絶縁膜36の側面は、たとえばソースパッド25およびコンタクト電極24の各々に接している。
【0051】
第2層間絶縁膜38は、たとえばコンタクト領域15上に設けられている。第2層間絶縁膜38は、たとえば第1主面1においてコンタクト領域15に接している。第2層間絶縁膜38は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。第2層間絶縁膜38は、たとえばゲートランナー53とソース電極26とを電気的に絶縁している。第2層間絶縁膜38の一部は、ゲートランナートレンチ33の一部に入り込み、第2ゲート電極42の上面に接していてもよい。第2層間絶縁膜38は、たとえばゲートランナー53とゲートランナー絶縁膜52とに接している。第2層間絶縁膜38の一部は、たとえばゲートランナー53とゲートランナー絶縁膜52との間に配置されていてもよい。
【0052】
パッシベーション層34は、ソース電極26と、ゲートランナー53と、第2層間絶縁膜38とを覆うように設けられている。パッシベーション層34は、ソース電極26、ゲートランナー53および第2層間絶縁膜38の各々に接している。パッシベーション層34は、たとえば窒化珪素(SiN)、二酸化珪素またはポリイミドなどの材料により構成されている。
【0053】
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートパッド80は、たとえば長方形の形状を有している。ゲートランナー53は、たとえば第1ゲートランナー部81と、第2ゲートランナー部82と、第3ゲートランナー部83とを有している。図2に示されるように、第1ゲートランナー部81および第2ゲートランナー部82の各々は、たとえばL字型を有している。第1ゲートランナー部81は、ゲートパッド80の一端から、第1方向101に平行であって、かつゲートパッド80から離れる方向に延在する。第1ゲートランナー部81は、途中でほぼ90°折れ曲がり、第2方向102に平行な方向に延在する。第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第2方向102は、たとえば第1方向101に垂直な方向であり、かつ第2主面2に平行な方向である。第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。
【0054】
第2ゲートランナー部82は、ゲートパッド80の他端から、第1方向101に平行であって、かつゲートパッド80から離れる方向に延在する。第2ゲートランナー部82は、途中でほぼ90°折れ曲がり、第2方向102に平行な方向に延在する。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第3ゲートランナー部83は、細長い長方形の形状を有している。第3ゲートランナー部83は、第1ゲートランナー部81と、第2ゲートランナー部82との間に位置している。第3ゲートランナー部83は、たとえば第2方向102と平行な方向に延在している。
【0055】
図3は、図2の領域IIIにおけるゲート電極トレンチおよびゲートランナートレンチの構成を示す平面模式図である。図3に示されるように、ゲートランナートレンチ33は、たとえば第2方向102に平行な方向に延在している。ゲート電極トレンチ23は、たとえば第1方向101に平行な方向に延在している。ゲート電極トレンチ23は、ゲートランナートレンチ33の両側に位置していてもよい。ゲート電極トレンチ23は、ゲートランナートレンチ33に連なっている。
【0056】
図4に示されるように、ゲート電極トレンチ23の第1底面22は、ゲートランナートレンチ33の第2側面31に連なっていてもよい。ゲート絶縁膜51は、ゲートランナー絶縁膜52に連なっている。第1ゲート電極41は、第1底面22と第2側面31との境界において、第2ゲート電極42に連なっていてもよい。第2ゲート電極42上には、ゲートランナー53が配置されている。ゲートランナー53の一部は、たとえば第1ゲート電極41に接している。ゲートランナー53の一部は、第1ゲート電極41に乗り上げていてもよい。
【0057】
図4に示されるように、ゲートランナー53の一部は、第1底面22に対向して配置されていてもよい。ゲートランナー53は、第1底面22と第2側面31との境界上に配置されていてもよい。ゲートランナー53は、第1層間絶縁膜36に接していてもよい。ゲートランナー53の一部は、第1ゲート電極41とパッシベーション層34とに挟まれていてもよい。
【0058】
図5に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、第1絶縁層39と、第2絶縁層37と、接続ゲート電極43とをさらに有していてもよい。第1絶縁層39は、第1主面1上に設けられている。第1絶縁層39は、たとえば第1主面1において、ボディ領域12と接していてもよい。第1絶縁層39は、たとえばゲートランナー絶縁膜52に接している。第2絶縁層37は、第1絶縁層39上に設けられている。第2絶縁層37は、ボディ領域12に対向して設けられていてもよい。接続ゲート電極43は、たとえば第2ゲート電極42に連なっている。接続ゲート電極43の一部は、たとえば第1絶縁層39に乗り上げている。接続ゲート電極43は、たとえば第2ゲート電極42と同じ材料により構成されている。
【0059】
第2絶縁層37の一部は、たとえば接続ゲート電極43上に乗り上げていてもよい。接続ゲート電極43の一部は、たとえば第1絶縁層39と第2絶縁層37とに挟まれていてもよい。ゲートランナー53の一部は、接続ゲート電極43に乗り上げていてもよい。ゲートランナー53は、接続ゲート電極43上において、ゲートパッド80と連なっていてもよい。ゲートパッド80は、第2絶縁層37上に設けられている。ゲートパッド80は、接続ゲート電極43に接していてもよい。ゲートパッド80は、ボディ領域12に対向して設けられていてもよい。ゲートパッド80は、第4不純物領域14に対向して設けられていてもよい。
【0060】
次に、第1実施形態に係るMOSFET100の作用効果について説明する。
第1実施形態に係るMOSFET100においては、第1主面1には、ゲート電極トレンチ23と、ゲートランナートレンチ33とが設けられている。ゲート電極トレンチ23は、側面21と、側面21に連なる底面22とにより規定されている。ゲート絶縁膜51は、側面21および底面22の双方に接する。第1ゲート電極41は、ゲート絶縁膜51上に設けられている。第2ゲート電極42は、ゲートランナートレンチ33内に設けられ、かつ第1ゲート電極41と電気的に接続されている。ゲートランナー53は、第2ゲート電極42上に設けられている。これにより、第1主面1にゲートランナートレンチ33が設けられていない場合と比較して、ゲートランナー53の高さを低くすることができる。そのため、たとえばワイヤーなどの外部配線をソースパッド25に接続する際に、外部配線がゲートランナー53に接触して、ゲートランナー53に衝撃が加えられる可能性を低減することができる。結果として、ゲートランナー53に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0061】
また第1実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第2ゲート電極42とゲートランナー53との境界は、第1主面1と第2主面2との間にあってもよい。これにより、ゲートランナー53の高さをさらに低減することができる。そのため、ゲートランナー53に亀裂が生じることをさらに抑制することができる。
【0062】
さらに第1実施形態に係るMOSFET100によれば、炭化珪素基板10は、ゲートランナートレンチ33と第2主面2との間にあり、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14を含んでいてもよい。これにより、ゲートランナー絶縁膜52に電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲートランナー絶縁膜52が破壊されることを抑制することができる。
【0063】
さらに第1実施形態に係るMOSFET100によれば、第2ゲート電極42の延在方向に対して垂直な断面における第2ゲート電極42の幅は、ゲートランナー53の延在方向に対して垂直な断面におけるゲートランナー53の幅よりも大きくてもよい。第2ゲート電極42の幅がゲートランナー53の幅と同じ場合、位置決めの誤差が大きいと、ゲートランナー53がゲートランナートレンチ33の外部にはみ出て第1主面1に乗り上げるおそれがある。第2ゲート電極42の幅をゲートランナー53の幅よりも大きくすることにより、位置決めの誤差がある程度大きい場合であっても、ゲートランナー53をゲートランナートレンチ33の内部に配置して、ゲートランナー53が第1主面1に乗り上げることを防止することができる。結果として、位置決めの誤差がある程度大きい場合であっても、ゲートランナー53の高さを低減することができる。
【0064】
さらに第1実施形態に係るMOSFET100によれば、第2不純物領域13と電気的に接続されているソースパッド25をさらに有している。ゲートランナー53は、第2主面2に対面する第3主面7と、第3主面7と反対側の第4主面5とを含んでいる。ソースパッド25は、第2主面2に対面する第5主面6と、第5主面6と反対側の第6主面4とを含んでいる。第2主面2に対して垂直な方向において、第4主面5と第2主面2との距離は、第6主面4と第2主面2との距離よりも短い。これにより、ゲートランナー53をソースパッド25よりも低くすることができる。そのため、たとえばワイヤーなどの外部配線をソースパッド25に接続する際に、外部配線がゲートランナー53に接触して、ゲートランナー53に衝撃が加えられる可能性をさらに低減することができる。結果として、ゲートランナー53に亀裂が生じることをさらに抑制することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るMOSFET100の構成について説明する。第2実施形態に係るMOSFET100は、第4不純物領域14がゲートランナートレンチ33に接している構成において、第1実施形態に係るMOSFET100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るMOSFET100とほぼ同じである。以下、第1実施形態に係るMOSFET100と異なる構成を中心に説明する。
【0066】
図6に示されるように、第4不純物領域14は、ゲートランナートレンチ33に接していてもよい。具体的には、ゲートランナートレンチ33の一部は、第4不純物領域14内に埋め込まれている。ゲートランナートレンチ33の第2底面32は、第4不純物領域14に接している。ゲートランナートレンチ33の第2側面31の一部は、第4不純物領域14に接している。別の観点から言えば、ゲートランナー絶縁膜52は、第2底面32において、第4不純物領域14に接している。ゲートランナー絶縁膜52は、第2側面31の一部において、第4不純物領域14に接している。第2底面32は、第4不純物領域14により構成されている。第2側面31は、第4不純物領域14と、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、コンタクト領域15とにより構成されている。
【0067】
第2実施形態に係るMOSFET100によれば、第4不純物領域14は、ゲートランナートレンチ33に接している。これにより、ゲートランナー絶縁膜52に電界が集中することをさらに抑制することができる。そのため、ゲートランナー絶縁膜52が破壊されることをさらに抑制することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るMOSFET100の構成について説明する。第3実施形態に係るMOSFET100は、第5不純物領域18がボディ領域12上に設けられている構成において、第1実施形態に係るMOSFET100と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係るMOSFET100とほぼ同じである。以下、第1実施形態に係るMOSFET100と異なる構成を中心に説明する。
【0069】
図7に示されるように、炭化珪素基板10は、第5不純物領域18をさらに有していてもよい。第5不純物領域18は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。第5不純物領域18のp型不純物の濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。第5不純物領域18は、第1主面1の一部を構成する。第5不純物領域18のp型不純物の濃度は、コンタクト領域15のp型不純物濃度と同じであってもよい。第5不純物領域18は、たとえばボディ領域12と第1絶縁層39との間に位置する。
【0070】
第5不純物領域18は、たとえばゲートランナートレンチ33の第2側面31に接している。別の観点から言えば、第2側面31の一部は、第5不純物領域18により構成されていてもよい。第5不純物領域18は、ゲートパッド80に対向して配置されていてもよい。第1主面1に対して垂直な方向において、第1絶縁層39は、第5不純物領域18と接続ゲート電極43との間に位置していてもよい。第2側面31に対して垂直な方向において、ゲートランナー絶縁膜52は、第5不純物領域18と、接続ゲート電極43との間に位置していてもよい。
【0071】
第3実施形態に係るMOSFET100によれば、第5不純物領域18は、ボディ領域12と第1絶縁層39との間に位置している。これにより、第1絶縁層39に電界が集中することを抑制することができる。そのため、第1絶縁層39が破壊されることを抑制することができる。
【0072】
なお上記各実施の形態では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。また上記実施の形態では、炭化珪素半導体装置としてMOSFET100を例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえばIGBTなどであってもよい。さらに上記各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。またp型領域とn型領域との境界面(つまりPN界面)の位置は、たとえばSCMまたはSIMSなどにより特定することができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 第1主面、2 第2主面、3 境界、4 第6主面、5 第4主面、6 第5主面、7 第3主面、10 炭化珪素基板、11 ドリフト領域(第1不純物領域)、12 ボディ領域(第2不純物領域)、13 ソース領域(第3不純物領域)、14 第4不純物領域、15 コンタクト領域、16 炭化珪素単結晶基板、17 炭化珪素エピタキシャル層、18 第5不純物領域、21 側面(第1側面)、22 底面(第1底面)、23 ゲート電極トレンチ、24 コンタクト電極、25 ソースパッド、26 第1電極(ソース電極)、31 第2側面、32 第2底面、33 ゲートランナートレンチ、34 パッシベーション層、36 第1層間絶縁膜、37 第2絶縁層、38 第2層間絶縁膜、39 第1絶縁層、41 第1ゲート電極、42 第2ゲート電極、43 接続ゲート電極、51 ゲート絶縁膜、52 ゲートランナー絶縁膜、53 ゲートランナー、60 第2電極(ドレイン電極)、80 ゲートパッド、81 第1ゲートランナー部、82 第2ゲートランナー部、83 第3ゲートランナー部、100 MOSFET(炭化珪素半導体装置)、101 第1方向、102 第2方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7