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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20230322BHJP
   B60J 10/25 20160101ALI20230322BHJP
   B60J 10/21 20160101ALI20230322BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/25
B60J10/21
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020062172
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160440
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 博敬
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058523(JP,A)
【文献】特開2016-132265(JP,A)
【文献】実開昭60-150121(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/76
B60J 10/25
B60J 10/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアのサッシュフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するガラスランであって、
該ガラスランは、
前記サッシュフレームの上辺部に取付けられるガラスラン上辺部と、
前記サッシュフレームの縦辺部に取付けられるガラスラン縦辺部と、
前記ガラスラン上辺部と前記ガラスラン縦辺部を接続しつつ、前記サッシュフレームの角部に嵌合保持される型成形部を有し、
前記ガラスラン上辺部は、
少なくとも上辺部底壁と、
該上辺部底壁に接続される上辺部車外側側壁及び上辺部車内側側壁と、
前記上辺部車外側側壁に接続される車外側モールリップと、
前記上辺部車内側側壁に接続される車内側モールリップを有し、
前記ガラスラン縦辺部は、
少なくとも縦辺部底壁と、
該縦辺部底壁に接続される縦辺部車外側側壁及び縦辺部車内側側壁を有し、
前記型成形部は、前記ガラスラン上辺部が、前記ガラスラン縦辺部の上端の真上位置まで延長形成され、
前記型成形部には、
車外側から前記上辺部底壁を乗り越えた水を、前記上辺部車内側側壁と前記車内側モールリップの間の空間を封鎖して止水するための止水壁と、
該止水壁の前記ガラスラン上辺部側の前記上辺部車内側側壁と前記車内側モールリップの間の空間に連通し、前記水を前記ガラスラン縦辺部の前記縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導く水誘導壁が形成され、
前記止水壁と前記水誘導壁から構成される水誘導部は、前記自動車の幅方向において、車内側上方から車外側下方に傾斜して形成されていることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記水誘導部の前記自動車の幅方向における車内側上方から車外側下方への傾斜は、前記止水壁の最下点をA、前記誘導壁が前記ガラスラン縦辺部の前記縦辺部車外側側壁に到達した点をBとし、線分ABと前記ガラスランを前記ドアの前記サッシュフレームの内周に取付けたときの水平線となす角度をαとすると、αが20度以上、70度以下である請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
前記型成形部の前記上辺部底壁には、車両長手方向、且つ上方に延設される単数又は複数の壁部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のガラスラン。
【請求項4】
前記止水壁の前記車内側モールリップ側の上端部は、前記止水壁を形成する前記車内側モールリップの先端部より下方に形成される請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等、車両のドアの窓枠を構成するサッシュフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等、車両のドアの窓枠を構成するサッシュの内周に取付けられるガラスランは、ドアガラスの昇降を案内すると同時に、遮音効果や防水効果を奏する。
【0003】
図2に示すように、ドアガラスの昇降を案内するガラスラン100は、サッシュフレーム(ドアフレームとも称される)の上辺部に沿って配設されるガラスラン上辺部200と、サッシュフレームの前後の縦辺部に沿って配設されるガラスラン縦辺部300、310とを有している。そして、押出成形によって成形されたガラスラン上辺部200と前後のガラスラン縦辺部300、310とが前後の型成形部500、510によって相互に接合接続され、一本の連続したものとして形成される。
【0004】
例えば、特許文献1には、図9(a)に示すガラスラン上辺部200の断面が、図9(b)に示す後側のガラスラン縦辺部310の断面が記載されている。なお、図9(b)では、サッシュフレーム内に配設される断面チャンネル状のロアフレーム790が記載されている。
【0005】
特許文献1には、図10図11に示すように、後側の型成形部510が記載されている。この型成形部510では、ガラスラン上辺部200の車外側モールリップ240がガラスラン縦辺部310の上端の真上位置まで延長形成され、少なくとも真上位置で収束するモールリップ角部900が形成されており、モールリップ角部900に、ガラスラン縦辺部310を超えてガラスラン上辺部200とは反対方向に突出するリップ延長部910が形成されている。
【0006】
又、モールリップ角部900のうちロアフレーム790の上端に近接する位置に、モールリップ角部900とガラスラン縦辺部310の縦辺部車外側側壁330とを接続して、ロアフレーム790の上端を覆う補強壁部620が形成されている。
【0007】
その結果、図10に矢印a2で示すように、モールリップ角部900の裏側に回り込んだ水は、さらに矢印a3で示すように補強壁部620上をあたかも樋として流れた上で、ロアフレーム790から外れた位置で外部に排出されることになる。
【0008】
さらに、モールリップ角部900に連続してリップ延長部910が延長形成されていることにより、リップ延長部910を含むモールリップ角部900にてシールされた水は、同図に矢印a4で示すようにリップ延長部910を伝わり、ロアフレーム790から一段と離れた位置にて流下することになる。そのため、ロアフレーム790とガラスラン縦辺部310との隙間に水が流入するような事態の発生を一段と抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-58523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、高圧洗車等により、図9(a)において、サッシュフレームのアウタサッシュ770と車外側モールリップ240の間から浸入した水が、ガラスラン上辺部200の上辺部底壁210側に向かう場合がある。この場合は、図9(a)に示すように、ガラスラン上辺部200では、ガラスラン上辺部200の上辺部底壁210から車外側に突出して形成された当接リップ290によってその水の車内側への浸入を防止することができるが、型成形部510においては、型成形時にガラスラン上辺部200をクランプする関係で当接リップ290が消失する。
【0011】
その結果、型成形部510において、特に、ガラスラン上辺部200との接続部近傍で、サッシュフレームのアウタサッシュ770と車外側モールリップ240の間から浸入した水がガラスラン上辺部200の上辺部底壁210を越えて車内側に浸入した場合は、水は、図11において、上辺部車内側側壁230と車内側モールリップ250の間の空間を伝い、車内側モールリップ250の端末251から滴下する。その結果、車内側の配設される部材にかかる場合がある。車内側に浸入した水は、錆発生の原因となり、例えば、ラッチ等にかかるとその錆により、ラッチの動作不良の原因になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、自動車のドアのサッシュフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するガラスランであって、ガラスランは、サッシュフレームの上辺部に取付けられるガラスラン上辺部と、サッシュフレームの縦辺部に取付けられるガラスラン縦辺部と、ガラスラン上辺部とガラスラン縦辺部を接続しつつ、サッシュフレームの角部に嵌合保持される型成形部を有し、ガラスラン上辺部は、少なくとも上辺部底壁と、上辺部底壁に接続される上辺部車外側側壁及び上辺部車内側側壁と、上辺部車外側側壁に接続される車外側モールリップと、上辺部車内側側壁に接続される車内側モールリップを有し、ガラスラン縦辺部は、少なくとも縦辺部底壁と、縦辺部底壁に接続される縦辺部車外側側壁及び縦辺部車内側側壁を有し、型成形部は、ガラスラン上辺部が、ガラスラン縦辺部の上端の真上位置まで延長形成され、型成形部には、車外側から上辺部底壁を乗り越えた水を、上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間を封鎖して止水するための止水壁と、止水壁のガラスラン上辺部側の上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間に連通し、水をガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導く水誘導壁が形成され、止水壁と水誘導壁から構成される水誘導部は、自動車の幅方向において、車内側上方から車外側下方に傾斜して形成されていることを特徴とするガラスランである。
【0013】
請求項1の本発明では、型成形部は、ガラスラン上辺部が、ガラスラン縦辺部の上端の真上位置まで延長形成され、型成形部には、車外側から上辺部底壁を乗り越えた水を、上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間を封鎖して止水するための止水壁と、止水壁のガラスラン上辺部側の上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間に連通し、水をガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導く水誘導壁が形成され、止水壁と水誘導壁から構成される水誘導部は、自動車の幅方向において、車内側上方から車外側下方に傾斜して形成されているので、サッシュフレームのアウタサッシュと車外側モールリップの間から浸入した水がガラスラン上辺部の上辺部底壁を越えて車内側に浸入した場合であっても、水誘導部によってガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に戻すことができる。その結果、水が車内側に配設される部材にかかることがなくなり、例えば、ラッチ等にかかることによる錆の発生及びその錆によるラッチの動作不良を防止することができる。
【0014】
請求項2の本発明は、水誘導部の自動車の幅方向における車内側上方から車外側下方への傾斜は、止水壁の最下点をA、誘導壁がガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁に到達した点をBとし、線分ABとガラスランをドアのサッシュフレームの内周に取付けたときの水平線となす角度をαとすると、αが20度以上、70度以下であるガラスランである。
【0015】
請求項2の本発明では、水誘導部の自動車の幅方向における車内側上方から車外側下方への傾斜は、止水壁の最下点をA、誘導壁がガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁に到達した点をBとし、線分ABとガラスランをドアのサッシュフレームの内周に取付けたときの水平線となす角度をαとすると、αが20度以上、70度以下であるので、車外側から上辺部底壁を乗り越えた水をスムーズにガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導くことができる。又、水誘導部が形成された型成形部が、上下方向に必要以上に大きくなることを防止することができる。
【0016】
なお、αが20度未満の場合は、特に、自動車が幅方向に傾斜した時に車外側から上辺部底壁を乗り越えた水をスムーズにガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導き難くなる。
【0017】
又、αが70度を越える場合は、水誘導部が上下方向に長くなるので、水誘導部が形成された型成形部が上下方向に必要以上に大きくなり、型成形部をサッシュフレームの角部に嵌合保持することが難しくなる。
【0018】
ところで、水誘導部においては、角度をαは、αが20度以上、70度以下であれば、AとBとの間は、直線状でもよく、下方に凸状でもよく、又は階段状でもよく、さらにそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
請求項3の本発明は、型成形部の上辺部底壁には、車両長手方向、且つ上方に延設される単数又は複数の壁部が形成されているガラスランである。
【0020】
請求項3の本発明では、型成形部の上辺部底壁には、車両長手方向、且つ上方に延設される単数又は複数の壁部が形成されているので、車外側から浸入する水の一部を壁部によって車外側に戻し、上辺部車外側側壁と車外側モールリップとの間の空間を利用してガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁方向に誘導することができる。その結果、止水壁に向かう水を少なくすることができ、水が止水壁を越えて車内側に流れ込む量を抑制することができる。
【0021】
又、複数の壁部の場合は、車外側から浸入する水を車外側に形成された壁部で止めきれず、水が上記壁部を乗り越えた場合も、車内側に形成された壁によって止め、止水壁に向かう水を少なくすることができる。さらに、壁部間の空間を利用して、水を水誘導部に導き、ガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に誘導することができる。
【0022】
請求項4の本発明は、止水壁の車内側モールリップ側の上端部は、止水壁を形成する車内側モールリップの先端部より下方に形成されるガラスランである。
【0023】
請求項4の本発明では、止水壁の車内側モールリップ側の上端部は、止水壁を形成する車内側モールリップの先端部より下方に形成されるので、止水壁を成形する時の材料の流動性に悪影響を及ぼすことがなく、例えば、欠肉などの不良の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
型成形部は、ガラスラン上辺部が、ガラスラン縦辺部の上端の真上位置まで延長形成され、型成形部には、車外側から上辺部底壁を乗り越えた水を、上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間を封鎖して止水するための止水壁と、止水壁のガラスラン上辺部側の上辺部車内側側壁と車内側モールリップの間の空間に連通し、水をガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に導く水誘導壁が形成され、止水壁と水誘導壁から構成される水誘導部は、自動車の幅方向において、車内側上方から車外側下方に傾斜して形成されているので、サッシュフレームのアウタサッシュと車外側モールリップの間から浸入した水がガラスラン上辺部の上辺部底壁を越えて車内側に浸入した場合であっても、水誘導部によってガラスラン縦辺部の縦辺部車外側側壁の車外側面方向に戻すことができる。その結果、水が車内側に配設される部材にかかることがなくなり、例えば、ラッチ等にかかることによる錆の発生及びその錆によるラッチの動作不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】自動車のドアの一例を示す図であり、右側後部のドアを車外側から見た概略正面図である。
図2図1のドアに適用されるガラスランを単独で車外側から見た概略正面図である。
図3図1のX-X断面図である。
図4図1のY-Y断面図である。
図5図2に示したガラスランの後側の型成形部を車内側から見た拡大図である。
図6図5におけるC方向から見た斜視図である。
図7図2に示したガラスランの後側の型成形部を車外側から見た拡大図である。
図8図7におけるD方向から見た斜視図である。
図9】従来技術における(a)は、図3に相当する図、(b)は図4に相当する図である(特許文献1)。
図10】従来技術におけるガラスランの後側の型成形部を車外側から見た拡大図である(特許文献1)。
図11】従来技術におけるガラスランの後側の型成形部を車内側から見た斜視図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図1から図8に基づき説明する。図1は、例えば、4ドアタイプの自動車のうち右側後部のドア70を車外側から見た概略正面図である。又、図2は、図1のドア70に適用されるガラスラン10を単独で車外側から見た概略正面図である。さらに図3図4は、図1のX-X断面図、Y-Y断面図を示している。なお、本実施形態は、右側後部のドア70のみならず、左側後部のドアや、左右の前部ドアにも適用可能である。
【0027】
図1に示すドア70は、ドア70のベルトライン71よりも上方であって、且つドアガラス開口部の枠部分を構成するサッシュフレーム72(ドアフレームとも称される)と、ベルトライン71の下方の図示しないドアガラス昇降駆動機構等が内蔵されるドア本体73から構成される。又、ドアガラス開口部の枠部分を構成するサッシュフレーム72は、上辺部74と、車両前後のピラー部に沿った形の前後の縦辺部75、76によって構成される。なお、本実施形態では、縦辺部76の車内側にラッチ83が配設されている。
【0028】
図3に示すように、サッシュフレーム72の上辺部74は、アウタサッシュ77と、インナサッシュ78と補強パネル82を有している。又、図1図4に示すように、サッシュフレーム72の車両後方の縦辺部76には、ドア本体73からサッシュフレーム72に跨るようにしてロアフレーム79(ロアサッシュ、ドアチャンネルとも称される)が配設されている。ロアフレーム79は、図4に示すように、断面チャンネル状の長尺状の金属又は樹脂部材であり、ロアフレーム79には、後述するガラスラン10のガラスラン縦辺部31が装着され、ドア70の内部でドアガラス81の昇降を案内し、ドアガラス81の下降時には、ドアガラス81を収容する。
【0029】
サッシュフレーム72には、図2に示すガラスラン10が装着される。このガラスラン10は、サッシュフレーム72の上辺部74に沿って配設される押出成形によって成形されたガラスラン上辺部20と、サッシュフレーム72の前後の縦辺部75、76に沿って配設される押出成形によって成形されたガラスラン縦辺部30、31を有している。押出成形によって成形されたガラスラン上辺部20とガラスラン縦辺部30、31は、所定の長さに切断された後に、前後の型成形部50、51で接合接続され、一本の連続したものとして形成される。図5及び図7において示す三角印は、白抜き側が押出成形部、黒く塗り潰した側が型成形部を示している。
【0030】
ガラスラン上辺部20は、図3に示すように、上辺部底壁21と、上辺部底壁21に接続される上辺部車外側側壁22及び上辺部車内側側壁23と、上辺部車外側側壁22に接続される車外側モールリップ24(意匠リップとも称される)と、上辺部車内側側壁23に接続される車内側モールリップ25と、上辺部車外側側壁22に接続される上辺部車外側シールリップ27と、上辺部車内側側壁23に接続される上辺部車内側シールリップ28を有している。又、上辺部底壁21には、上方に、且つ車外側に突出する当接リップ29が形成されている。
【0031】
そして、図3に示すように、アウタサッシュ77を上辺部車外側側壁22と車外側モールリップ24で挟み、インナサッシュ78を上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25で挟み、さらに当接リップ29が補強パネル82に弾接することによりガラスラン上辺部20とサッシュフレーム72の上辺部74間がシールされる。
【0032】
一方、ガラスラン縦辺部31は、図4に示すように、縦辺部底壁32と、縦辺部底壁32に接続される縦辺部車外側側壁33及び縦辺部車内側側壁34と、縦辺部車外側側壁33に接続される車外側カバーリップ35と、縦辺部車内側側壁34に接続される車内側カバーリップ36と、縦辺部車外側側壁33に接続される縦辺部車外側シールリップ39と、縦辺部車内側側壁34に接続される縦辺部車内側シールリップ40と、縦辺部車外側側壁33から車外側に突出する車外側保持リップ37及び縦辺部車内側側壁34から車内側に突出する車内側保持リップ38を有している。
【0033】
そして、図4に示すように、縦辺部底壁32、車外側カバーリップ35と車外側保持リップ37、車内側カバーリップ36と車内側保持リップ38によって、ガラスラン縦辺部31とロアフレーム79間がシールされる。
【0034】
図5から図8は、ガラスラン10の内の図2の後側の型成形部51を説明する図であり、図5は車内側から型成形部51を見た拡大部であり、図6は、図5におけるC方向から見た斜視図、一方、図7は、車外側から型成形部51を見た拡大図であり、図8は、図7におけるD方向から見た斜視図である。
【0035】
後側の型成形部51は、サッシュフレーム72の上辺部74とロアフレーム79とのなす内隅部に両者を跨ぐかたちで嵌合保持される。
【0036】
本実施形態においては、ガラスラン上辺部20が、ガラスラン縦辺部31の上端の真上位置まで延長されて接続され、形成されているが、図5に示すように、車内側においては、車内側モールリップ25がガラスラン縦辺部31の上端の真上よりもさらに後側まで延長されて形成されている。なお、この車内側モールリップ25の後側への延長は、後に装着される図示しない車内側パネルの形状に基づくものである。
【0037】
一方、図7図8に示すように、車外側においては、車外側モールリップ24がガラスラン縦辺部31の上端の真上位置で収束するように形成され、上辺部車外側側壁22が縦辺部車外側側壁33に引き継がれるように形成されている。又、型成形部51においては、車外側カバーリップ35と車外側保持リップ37は消失している。
【0038】
図6及び図8に示すように、ガラスラン上辺部20と型成形部51の接続部分の型成形部51側では、ガラスラン上辺部20の上辺部底壁21の当接リップ29が消失している。これは、型成形部51においては、型成形時にガラスラン上辺部20をクランプして成形を行うことよるものである。
【0039】
図6に示すように、型成形部51側の車内側の上辺部車内側側壁23には、車内側に突出する複数のリブ52が形成されている。これは、型成形部51がサッシュフレーム72の上辺部74と縦辺部76の角部に嵌合保持される時に、インナサッシュ78からの脱落を防止するためである。
【0040】
図6に示すように、型成形部51側の車内側において、上記のリブ52のさらに後側には、上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の間の空間を封鎖する止水壁53が形成されている。
【0041】
又、この止水壁53の車内側モールリップ25側の上端部54は、止水壁53を形成する車内側モールリップ25の先端部26より下方に形成されている。すなわち、止水壁53の上端部54と車内側モールリップ25の先端部26は一致せず、止水壁53の上端部54が低く形成されている。これは、止水壁53の上端部54と車内側モールリップ25の先端部26を一致させると、止水壁53を成形する時の、材料の流動性に悪影響を及ぼし、例えば、欠肉などの不良の発生の懸念があり、この不良発生を防止するためである。
【0042】
一方、図6に示すように、型成形部51側の縦辺部底壁32側には、型成形部51がサッシュフレーム72の上辺部74と縦辺部76の角部に嵌合保持される時の位置決め用として、車内側モールリップ25の先端部26とほぼ同じ位置の高さまで突出する背面ブロック59が形成されている。又、背面ブロック59は型成形部51の下方まで延びて形成されている。これは、位置決めの背面ブロック59として剛性を持たせるためである。
【0043】
そして、背面ブロック59の上部車内側は、止水壁53に接続されており、さらに、背面ブロック59には、ガラスラン上辺部20側の上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の空間に連通する水誘導壁55が形成されている。
【0044】
この結果、止水壁53と水誘導壁55によって、ガラスラン上辺部20側の車内側モールリップ25と上辺部車内側側壁23の空間から、ガラスラン縦辺部31の縦辺部車外側側壁33に至る連絡通路、すなわち、水誘導部56が形成される。
【0045】
ここで、図6における点A、すなわち、止水壁53の最下点と、図8における水誘導壁55がガラスラン縦辺部31の縦辺部車外側側壁33に到達した点をBとし、線分ABとガラスラン10をドア70のサッシュフレーム72の内周に取付けたときの水平線となす角度αは50度である。なお、角度αは、上記の通り、20度以上、70度以下であることが、水のスムーズな流れ確保の観点と、水誘導部56の上下方向が長くなることに伴う、水誘導部56が形成された型成形部51が必要以上に大きくなることを防止する観点から望ましい。
【0046】
さらに、図6において、止水壁53と上辺部車内側側壁23のなす角度βは50度であり、図8における水誘導壁55の角度γは45度である。これは、角度βについては、水の流れを、角度γについては、水の流れと型成形時の型抜き方向を考慮して設定した。
【0047】
図5から図8に示すように、型成形部51の上辺部底壁21には、車両の長手方向、且つ上方に延設される車外側の第1壁57と第1壁57とは間隔を有して車内側に第2壁58が形成されている。第1壁57は、第2壁58より後方まで延び、後方側で背面ブロック59と面一になっている。又、第1壁57の車外側から第2壁58の車内側までの距離は、背面ブロック59の自動車の幅方向の厚さと同じである。図において、第1壁57の後側が傾斜を有して高くなっており、さらに後方に延設されているのは、型成形部51がサッシュフレーム72の上辺部74と縦辺部76の角部に嵌合する際の位置決めと作業性を良好にする観点からである。
【0048】
なお、第2壁58は、第1壁57のバックアップのために形成したものであるので、第1壁57のみで後述する水の浸入を阻止できる場合は、第2壁58は、形成しなくてもよい。
【0049】
さらに、上記の水誘導部56のみで後述する水の浸入を阻止できる場合は、第1壁57と第2壁58は、共に形成しなくてもよい。
【0050】
以下に、本実施形態における車外側からの水の浸入とその排水について説明する。図6において、例えば、高圧洗車等、水の勢いが強いときには、車外側からの水が車外側モールリップ24と上辺部車外側側壁22を潜り抜け、上辺部底壁21に到達する場合がある(矢印a5)。
【0051】
このとき、型成形部51ではないガラスラン上辺部20では、当接リップ29によって、受止めることができる。但し、当接リップ29によっても阻止できない場合は、水は車内側に向かう。
【0052】
一方、型成形部51においては、図8に示すように、第1壁57によってその水を受け止め、上辺部車外側側壁22側に戻すことにより車内側へのさらなる浸入を阻止する。
【0053】
図6に示すように、型成形部51において、第1壁57が形成されていない部分、すなわち、型成形時にガラスラン上辺部20をクランプする関係で当接リップ29が消失した部分では、水は、上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の間に進む(矢印a6)。そして、上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の間の空間を利用して後側に流れる(矢印a7)。
【0054】
型成形部51には、上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の間の空間を封鎖する止水壁53が形成されており、止水壁53は、背面ブロック59に形成されたガラスラン上辺部20側の上辺部車内側側壁23と車内側モールリップ25の空間に連通する水誘導壁55と連結して、水誘導部56が形成されているので、水は、止水壁53から水誘導壁55に、すなわち、水誘導部56を流れる(矢印a8)。
【0055】
背面ブロック59は、型成形部51側の縦辺部底壁32側に形成されているので、背面ブロック59から出た水は、縦辺部車外側側壁33に到達し、縦辺部車外側側壁33を下方に流れる(図8の矢印a9)。
【0056】
したがって、水は、車内側の配設されるラッチ83にかかることはなく、ラッチ83にかかることによる錆の発生、その錆によるラッチ83の動作不良を防止することができる。
【0057】
上記において、第1壁57によってその水を受け止め、上辺部車外側側壁22側に戻すことにより車内側へのさらなる浸入を阻止することを述べたが、水の勢いが強く、第1壁57を乗り越えた場合は、第2壁58によって、その流れを堰き止め、第1壁57と第2壁58の間の空間を利用して、水を水誘導壁55(水誘導部56)側に導くことができる(図6の矢印a10)。そして、水誘導壁55(水誘導部56)に流れ込んだ水は、縦辺部車外側側壁33に到達し、縦辺部車外側側壁33を下方に流れる(図8の矢印a9)。
【0058】
したがって、この場合も、水は、車内側の配設されるラッチ83にかかることがなくなり、ラッチ83にかかることによる錆の発生、その錆によるラッチ83の動作不良を防止することができる。
【0059】
前後の型成形部50、51を含むガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が対候性、リサイクル性、コスト等の観点から望ましい。
【0060】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 ガラスラン
20 ガラスラン上辺部
21 上辺部底壁
22 上辺部車外側側壁
23 上辺部車内側側壁
24 車外側モールリップ
25 車内側モールリップ
29 当接リップ
31 ガラスラン縦辺部
32 縦辺部底壁
33 縦辺部車外側側壁
34 縦辺部車内側側壁
51 型成形部
53 止水壁
55 水誘導壁
56 水誘導部
57 第1壁
58 第2壁
59 背面ブロック
72 サッシュフレーム
79 ロアフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11