(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230322BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230322BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230322BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230322BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 658J
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 655F
(21)【出願番号】P 2020530027
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021292
(87)【国際公開番号】W WO2020012812
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018131497
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-110277(JP,A)
【文献】特開平11-233738(JP,A)
【文献】特開2014-049695(JP,A)
【文献】特開2017-168669(JP,A)
【文献】特開2016-015482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素半導体チップと、
前記炭化珪素半導体チップを覆う樹脂とを備え、
前記炭化珪素半導体チップは、炭化珪素基板と、前記炭化珪素基板上にある第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上にある第2絶縁膜とを含み、
前記炭化珪素基板は、前記第1絶縁膜に接する第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面および前記第2主面の各々の連なる外周面とを有し、
前記樹脂は、前記外周面および前記第2絶縁膜の双方を覆っており、
前記第2絶縁膜のヤング率は、前記樹脂のヤング率よりも小さく、
前記第2絶縁膜の熱膨張係数は、前記炭化珪素基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ前記樹脂の熱膨張係数よりも大きく、
前記第2絶縁膜は、前記第1主面に平行な方向における第1外周端部を有し、
前記第1主面に対して垂直な断面において、前記第1外周端部は、前記外周面に沿って設けられて
おり、
前記第1絶縁膜は、第1環状部と、前記第1環状部から離間しかつ前記第1環状部を取り囲む第2環状部とを有している、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2絶縁膜は、前記第1外周端部に連なりかつ角張っている肩部を有し、
前記樹脂は、前記肩部に接している、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1絶縁膜は、前記第1主面に平行な方向における第2外周端部を有し、
前記第1主面に対して垂直な断面において、前記第2外周端部は、前記外周面に沿って設けられている、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた充填部を有し、
前記充填部は、前記炭化珪素基板に接している、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
炭化珪素半導体チップと、
前記炭化珪素半導体チップを覆う樹脂とを備え、
前記炭化珪素半導体チップは、炭化珪素基板と、前記炭化珪素基板上にある第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上にある第2絶縁膜とを含み、
前記炭化珪素基板は、前記第1絶縁膜に接する第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面および前記第2主面の各々の連なる外周面とを有し、
前記樹脂は、前記外周面および前記第2絶縁膜の双方を覆っており、
前記第2絶縁膜のヤング率は、前記樹脂のヤング率よりも小さく、
前記第2絶縁膜の熱膨張係数は、前記炭化珪素基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ前記樹脂の熱膨張係数よりも大きく、
前記第2絶縁膜は、前記第1主面に平行な方向における第1外周端部と、前記第1外周端部に連なりかつ角張っている肩部を有し、
前記第1主面に対して垂直な断面において、前記第1外周端部は、前記外周面に沿って設けられており、
前記樹脂は、前記肩部に接しており、
前記第1絶縁膜は、前記第1主面に平行な方向における第2外周端部を有し、
前記第1主面に対して垂直な断面において、前記第2外周端部は、前記外周面に沿って設けられており、
前記第1絶縁膜は、第1環状部と、前記第1環状部から離間しかつ前記第1環状部を取り囲む第2環状部とを有しており、
前記第2絶縁膜は、前記第1環状部と前記第2環状部との間に設けられた充填部を有し、
前記充填部は、前記炭化珪素基板に接している、炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。本出願は、2018年7月11日に出願した日本特許出願である特願2018-131497号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2014-139967号公報(特許文献1)には、トレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素半導体チップと、炭化珪素半導体チップを覆う樹脂とを備えている。炭化珪素半導体チップは、炭化珪素基板と、炭化珪素基板上にある第1絶縁膜と、第1絶縁膜上にある第2絶縁膜とを含んでいる。炭化珪素基板は、第1絶縁膜に接する第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面および第2主面の各々の連なる外周面とを有している。樹脂は、外周面および第2絶縁膜の双方を覆っている。第2絶縁膜のヤング率は、樹脂のヤング率よりも小さい。第2絶縁膜の熱膨張係数は、炭化珪素基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ樹脂の熱膨張係数よりも大きい。第2絶縁膜は、第1主面に平行な方向における第1外周端部を有している。第1主面に対して垂直な断面において、第1外周端部は、外周面に沿って設けられている。
【0005】
本開示に係る炭化珪素半導体装置は、炭化珪素半導体チップと、炭化珪素半導体チップを覆う樹脂とを備えている。炭化珪素半導体チップは、炭化珪素基板と、炭化珪素基板上にある第1絶縁膜と、第1絶縁膜上にある第2絶縁膜とを含んでいる。炭化珪素基板は、第1絶縁膜に接する第1主面と、第1主面と反対側の第2主面と、第1主面および第2主面の各々の連なる外周面とを有している。樹脂は、外周面および第2絶縁膜の双方を覆っている。第2絶縁膜のヤング率は、樹脂のヤング率よりも小さい。第2絶縁膜の熱膨張係数は、炭化珪素基板の熱膨張係数よりも大きく、かつ樹脂の熱膨張係数よりも大きい。第2絶縁膜は、第1主面に平行な方向における第1外周端部と、第1外周端部に連なりかつ角張っている肩部を有している。第1主面に対して垂直な断面において、第1外周端部は、外周面に沿って設けられている。樹脂は、肩部に接している。第1絶縁膜は、第1主面に平行な方向における第2外周端部を有している。第1主面に対して垂直な断面において、第2外周端部は、外周面に沿って設けられている。第1絶縁膜は、第1環状部と、第1環状部から離間しかつ第1環状部を取り囲む第2環状部とを有している。第2絶縁膜は、第1環状部と第2環状部との間に設けられた充填部を有している。充填部は、炭化珪素基板に接している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す縦断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図4のII-II線に沿った横断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った縦断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った縦断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図2のVI-VI線に沿った縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”-”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0008】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素半導体チップ30と、炭化珪素半導体チップ30を覆う樹脂8とを備えている。炭化珪素半導体チップ30は、炭化珪素基板10と、炭化珪素基板10上にある第1絶縁膜60と、第1絶縁膜60上にある第2絶縁膜70とを含んでいる。炭化珪素基板10は、第1絶縁膜60に接する第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2と、第1主面1および第2主面2の各々の連なる外周面3とを有している。樹脂8は、外周面3および第2絶縁膜70の双方を覆っている。第2絶縁膜70のヤング率は、樹脂8のヤング率よりも小さい。第2絶縁膜70の熱膨張係数は、炭化珪素基板10の熱膨張係数よりも大きく、かつ樹脂8の熱膨張係数よりも大きい。第2絶縁膜70は、第1主面1に平行な方向における第1外周端部72を有している。第1主面1に対して垂直な断面において、第1外周端部72は、外周面3に沿って設けられている。
【0009】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100において、第2絶縁膜70は、第1外周端部72に連なりかつ角張っている肩部71を有していてもよい。樹脂8は、肩部71に接していてもよい。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1絶縁膜60は、第1主面1に平行な方向における第2外周端部67を有していてもよい。第1主面1に対して垂直な断面において、第2外周端部67は、外周面3に沿って設けられていてもよい。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第1絶縁膜60は、第1環状部61と、第1環状部61から離間しかつ第1環状部61を取り囲む第2環状部62とを有していてもよい。
【0012】
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置100において、第2絶縁膜70は、第1環状部61と第2環状部62との間に設けられた充填部76を有していてもよい。充填部76は、炭化珪素基板10に接していてもよい。
【0013】
(6)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素半導体チップ30と、炭化珪素半導体チップ30を覆う樹脂8とを備えている。炭化珪素半導体チップ30は、炭化珪素基板10と、炭化珪素基板10上にある第1絶縁膜60と、第1絶縁膜60上にある第2絶縁膜70とを含んでいる。炭化珪素基板10は、第1絶縁膜60に接する第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2と、第1主面1および第2主面2の各々の連なる外周面3とを有している。樹脂8は、外周面3および第2絶縁膜70の双方を覆っている。第2絶縁膜70のヤング率は、樹脂8のヤング率よりも小さい。第2絶縁膜70の熱膨張係数は、炭化珪素基板10の熱膨張係数よりも大きく、かつ樹脂8の熱膨張係数よりも大きい。第2絶縁膜70は、第1主面1に平行な方向における第1外周端部72と、第1外周端部72に連なりかつ角張っている肩部71を有している。第1主面1に対して垂直な断面において、第1外周端部72は、外周面3に沿って設けられている。樹脂8は、肩部71に接している。第1絶縁膜60は、第1主面1に平行な方向における第2外周端部67を有している。第1主面1に対して垂直な断面において、第2外周端部67は、外周面3に沿って設けられている。第1絶縁膜60は、第1環状部61と、第1環状部61から離間しかつ第1環状部61を取り囲む第2環状部62とを有している。第2絶縁膜70は、第1環状部61と第2環状部62との間に設けられた充填部76を有している。充填部76は、炭化珪素基板10に接している。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
まず、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の構成について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素半導体チップ30と、樹脂8と、金属フレーム74と、はんだ層73とを主に有している。金属フレーム74は、たとえば銅フレームである。当該銅フレームには、ニッケルが鍍金されていてもよい。炭化珪素半導体チップ30は、はんだ層73を介して金属フレーム74上に設けられている。別の観点から言えば、はんだ層73は、炭化珪素半導体チップ30と金属フレーム74との間に位置している。樹脂8は、炭化珪素半導体チップ30と、はんだ層73とを覆っている。
【0016】
炭化珪素半導体チップ30は、第3主面31と、第4主面32とを有している。第4主面32は、第3主面31と反対側にある。炭化珪素半導体チップ30は、第4主面32においてはんだ層73に接している。樹脂8は、炭化珪素半導体チップ30の第3主面31を覆っている。樹脂8は、はんだ層73および金属フレーム74に接している。炭化珪素半導体チップ30への電流等の供給は、図示しないワイヤー等を介して行われる。
【0017】
図2は、炭化珪素半導体チップ30の構成を示す平面模式図である。
図2に示されるように、炭化珪素半導体チップ30は、活性領域40と、外周領域50とを有している。
図2に示されるように、第1主面1に対して垂直な方向から見て、外周領域50は、活性領域40を取り囲んでいる。外周領域50は、第1外周領域部51と、第2外周領域部52とを有する。第1外周領域部51は、活性領域40に接する。第2外周領域部52は、第1外周領域部51の外側に位置している。炭化珪素半導体チップ30の肩部71は、角領域41と、辺領域42とを有している。
【0018】
第2外周領域部52は、第1外周領域部51を取り囲んでいる。第2外周領域部52は、肩部71を構成する。第1外周領域部51には、たとえばガードリング16(
図4参照)が設けられている。ガードリング16は、活性領域40を取り囲んでいる。
【0019】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面模式図である。
図3に示されるように、活性領域40には、炭化珪素半導体素子90が設けられている。炭化珪素半導体素子90は、たとえばMOSFETである。炭化珪素半導体素子90は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜24と、ゲート電極22と、層間絶縁膜23と、ソース電極28と、ドレイン電極25と、第1絶縁膜60(
図4参照)と、第2絶縁膜70(
図4参照)とを有している。なお
図2においては、炭化珪素基板10および第2絶縁膜70のみを記載しており、ゲート絶縁膜24と、ゲート電極22と、層間絶縁膜23と、ソース電極28と、ドレイン電極25と、第1絶縁膜60とは省略されている。
【0020】
図3に示されるように、炭化珪素基板10は、第1主面1と、第2主面2と、外周面3とを有している。第2主面2は、第1主面1と反対側にある。外周面3は、第1主面1および第2主面2の各々に連なっている。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板15と、炭化珪素単結晶基板15上にある炭化珪素エピタキシャル層20とを含んでいる。炭化珪素エピタキシャル層20は第1主面1を構成する。炭化珪素単結晶基板15は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板15および炭化珪素エピタキシャル層20は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板15は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。
【0021】
第1主面1は、たとえば{0001}面または{0001}面に対してオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。第1主面1は、たとえば(000-1)面であってもよいし、(0001)面であってもよい。第1主面1は、たとえば(000-1)面に対してオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面であってもよいし、(0001)面に対してオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面であってもよい。オフ方向は、たとえば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、たとえば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0022】
図2に示されるように、第1主面1が{0001}面である場合、第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第1主面1が{0001}面に対して傾斜している場合、第1方向101は、<11-20>方向が第1主面1に投影された方向である。同様に、第1主面1が{0001}面である場合、第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。第1主面1が{0001}面に対して傾斜している場合、第2方向102は、<1-100>方向が第1主面1に投影された方向である。第3主面31は、第1方向101および第2方向102の各々に沿って延在している。
【0023】
図3に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層20は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域14とを主に有している。ドリフト領域11は、炭化珪素単結晶基板15上に設けられている。ドリフト領域11は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11が含むn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板15が含むn型不純物の濃度よりも低くてもよい。
【0024】
ボディ領域12はドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域12のp型不純物の濃度は、ドリフト領域11のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。ボディ領域12は、第1主面1および第2主面2の各々から離間している。
【0025】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成している。ソース領域13のn型不純物の濃度は、ボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。ソース領域13のn型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3程度である。
【0026】
コンタクト領域14は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域14のp型不純物の濃度は、ボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。コンタクト領域14は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接している。コンタクト領域14は、第1主面1を構成する。コンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0027】
図3に示されるように、第1主面1には、ゲートトレンチ9が設けられている。ゲートトレンチ9は、側壁面91と、底部92とにより構成されている。側壁面91は、第1主面1に連なっている。底部92は、側壁面91に連なっている。側壁面91は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通してドリフト領域11に至っている。別の観点から言えば、側壁面91は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11とによって構成されている。底部92は、ドリフト領域11にある。別の観点から言えば、底部92は、ドリフト領域11によって構成されている。底部92は、たとえば第2主面2と平行な平面である。側壁面91と底部92とがなす角度θ1は、たとえば115°以上135°以下である。角度θ1は、たとえば120°以上であってもよい。角度θ1は、たとえば130°以下であってもよい。
【0028】
ゲート絶縁膜24は、たとえば酸化膜である。ゲート絶縁膜24は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜24は、ゲートトレンチ9の側壁面91および底部92の各々に接する。ゲート絶縁膜24は、底部92においてドリフト領域11と接している。ゲート絶縁膜24は、側壁面91において、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11と接している。ゲート絶縁膜24は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0029】
ゲート電極22は、ゲート絶縁膜24上に設けられている。ゲート電極22は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。ゲート電極22は、ゲートトレンチ9の内部に配置されている。ゲート電極22は、ドリフト領域11、ボディ領域12およびソース領域13に対向している。
【0030】
ソース電極28は、第1主面1に接している。ソース電極28は、コンタクト電極21と、ソース配線29とを有する。ソース配線29は、コンタクト電極21上に設けられている。コンタクト電極21は、第1主面1において、ソース領域13に接している。コンタクト電極21は、第1主面1において、コンタクト領域14に接していてもよい。コンタクト電極21は、たとえばTi(チタン)と、Al(アルミニウム)と、Si(シリコン)とを含む材料から構成されている。コンタクト電極21は、ソース領域13とオーミック接合している。コンタクト電極21は、コンタクト領域14とオーミック接合していてもよい。
【0031】
ドレイン電極25は、第2主面2に接する。ドレイン電極25は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板15に接している。ドレイン電極25は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極25は、たとえばNiSi(ニッケルシリコン)またはTiAlSi(チタンアルミニウムシリコン)を含む材料から構成されている。
【0032】
層間絶縁膜23は、ゲート電極22およびゲート絶縁膜24の各々に接して設けられている。層間絶縁膜23は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜23は、ゲート電極22とソース電極28とを電気的に絶縁している。層間絶縁膜23の一部は、ゲートトレンチ9の内部に設けられていてもよい。ソース配線29は、層間絶縁膜23を覆っていてもよい。ソース配線29は、たとえばAlを含む材料により構成されている。
【0033】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面模式図である。
図2に示されるように、IV-IV線は、第1主面1に垂直な方向から見た場合において、炭化珪素半導体チップ30の対角線に沿った直線である。
図4に示されるように、炭化珪素基板10の第1主面1は、第1絶縁膜60に接している。外周領域50において、炭化珪素基板10は、ガードリング16とドリフト領域11とを有している。ガードリング16は、たとえばアルミニウム(Al)またはホウ素(B)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)を有する。外周領域50におけるドリフト領域11は、活性領域40におけるドリフト領域11と連なっている。
図4に示す断面において、第2外周領域部52の幅は、たとえば20μm以下である。ガードリング16は、ボディ領域12よりも外周側に位置している。
【0034】
第1絶縁膜60は、第1主面1上に設けられている。第1絶縁膜60は、第1主面1において、ボディ領域12およびガードリング16の各々に接している。第1絶縁膜60は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。第2絶縁膜70は、第1絶縁膜60上に設けられている。第2絶縁膜70は、たとえばポリイミドを含む材料から構成されている。第2絶縁膜70は、たとえばポリエーテルイミド、ポリベンゾオキサゾールなどを含む材料であってもよい。第2絶縁膜70は、第3主面31を構成している。第2絶縁膜70は、ソース配線29上に設けられていてもよい(
図3参照)。第2絶縁膜70は、ゲートトレンチ9を覆っていてもよい。
【0035】
第2絶縁膜70は、第1主面1に平行な方向における第1外周端部72を有している。
図4に示されるように、第1主面1に対して垂直な断面において、第1外周端部72は、外周面3に沿って設けられている。具体的には、
図4に示される断面において、第1主面1に平行な方向における、第1外周端部72と外周面3との距離は、20μm以下である。当該距離は、より望ましくは10μm以下であり、さらにより望ましくは5μm以下である。第1絶縁膜60は、第1主面1に平行な方向における第2外周端部67を有している。
図4に示されるように、第1主面1に対して垂直な断面において、第2外周端部67は、外周面3に沿って設けられていてもよい。具体的には、
図4に示される断面において、第1主面1に平行な方向における、第2外周端部67と外周面3との距離は、20μm以下である。当該距離は、より望ましくは10μm以下であり、さらにより望ましくは5μm以下である。
【0036】
図4に示されるように、樹脂8は、外周面3および第2絶縁膜70の双方を覆っている。樹脂8は、第1絶縁膜60を覆っていてもよい。樹脂8は、第1絶縁膜60、第2絶縁膜70および外周面3の各々に接している。樹脂8は、第2外周端部67において、第1絶縁膜60に接している。樹脂8は、第1外周端部72および第3主面31の各々において、第2絶縁膜70に接している。樹脂8は、活性領域40および外周領域50の各々を覆っている。
【0037】
図4に示されるように、樹脂8は、肩部71(
図2参照)の角領域41に接している。樹脂8は、外周面3において、ドリフト領域11に接していてもよい。樹脂8は、炭化珪素単結晶基板15に接していてもよい。樹脂8は、ドレイン電極25に接していてもよい。樹脂8は、炭化珪素半導体チップ30を封止するための樹脂8である。樹脂8は、たとえばエポキシ樹脂である。樹脂8は、たとえばフェノール樹脂、マレイミド樹脂等の耐熱性の有機樹脂またはポリマー成分中に無機ナノ粒子を均一に単分散させた樹脂(ナノコンポジット樹脂)などであってもよい。
【0038】
第2絶縁膜70のヤング率は、樹脂8のヤング率よりも小さい。樹脂8のヤング率と第2絶縁膜70とのヤング率との差は、樹脂8のヤング率と炭化珪素基板10とのヤング率との差よりも小さい。第2絶縁膜70の熱膨張係数は、炭化珪素基板10の熱膨張係数よりも大きく、かつ樹脂8の熱膨張係数よりも大きい。本明細書においては、熱膨張係数は、線膨張率のことである。第2絶縁膜70を炭化珪素基板10と樹脂8との間に設けることにより、炭化珪素基板10と樹脂8とが直接接している場合と比較して、樹脂8の応力を低減することができる。つまり、第2絶縁層は、応力緩衝層として機能する。そのため、樹脂8が剥離することを抑制することができる。
【0039】
【0040】
表1は、各材料のヤング率および熱膨張係数(線膨張率)を示している。表1に示されるように、ポリイミド(第2絶縁膜70)のヤング率は、炭化珪素よりも小さい。ポリイミド(第2絶縁膜70)のヤング率は、シリカ樹脂充填エポキシ(樹脂8)よりも小さい。ポリイミド(第2絶縁膜70)の熱膨張係数は、炭化珪素よりも大きい。ポリイミド(第2絶縁膜70)の熱膨張係数は、シリカ樹脂充填エポキシ(樹脂8)よりも大きい。銅(金属フレーム)のヤング率は、シリカ樹脂充填エポキシ(樹脂8)よりも大きい。銅(金属フレーム)の熱膨張係数は、エポキシ(樹脂8)よりも小さいことが一般的であるが、エポキシに添加する樹脂の種類またはフィラー材の比率により熱膨張係数の調整を行うことも一般的である。シリカ粒子の充填率は、一例として、80%以上88%以下である。シリカ粒子は、一例として球状を有する。粒子径が20μm以上40μm以下のシリカ粒子が体積比率で30%以上70%以下を占め、粒子径が5μm以上20μm未満のシリカ粒子が体積比で30%以上70%を占める。エポキシ樹脂内で相対的に大きいサイズのシリカ粒子と、相対的に小さいサイズのシリカ粒子とが均一に分散するようにしている。
【0041】
図5は、
図4のV-V線に沿った横断面模式図である。
図5に示されるように、第1絶縁膜60は、第1環状部61と、第2環状部62と、第3環状部63と、内周領域64とを有していてもよい。第2環状部62は、第1環状部61から離間している。第2環状部62は、第1環状部61を取り囲んでいる。第2環状部62は、第1環状部61よりも外周側に位置している。第3環状部63は、第1環状部61および第2環状部62の各々から離間している。第3環状部63は、第2環状部62を取り囲んでいる。第3環状部63は、第2環状部62よりも外周側に位置している。第3環状部63は、第2外周端部67を構成している。内周領域64は、第1環状部61に取り囲まれている。
【0042】
図4に示されるように、第2絶縁膜70は、充填部76と、本体部75とを有している。充填部76は、第1環状部61と第2環状部62との間に設けられている。
図5に示されるように、充填部76は、第1環状部61の外周側であって、かつ第2環状部62の内周側に位置している。同様に、充填部76は、第2環状部62と第3環状部63との間に設けられている。充填部76は、第2環状部62の外周側であって、かつ第3環状部63の内周側に位置している。充填部76は、第1環状部61、第2環状部62および第3環状部63の各々に接している。
【0043】
図4に示されるように、充填部76は、炭化珪素基板10に接していてもよい。充填部76は、第1主面1において、ドリフト領域11に接していてもよい。
図4に示されるように、第1絶縁膜60の内周領域64は、第1主面1において、ガードリングおよびドリフト領域11の各々に接している。内周領域64は、第1外周領域部51に位置している。充填部76は、第2外周領域部52に位置していてもよい。第1環状部61、第2環状部62および第3環状部63の各々は、第2外周領域部52に位置していてもよい。充填部76は、ガードリング16よりも外周側に位置している。第2絶縁膜70の本体部75は、充填部76および第1絶縁膜60の各々の上に設けられている。第1絶縁膜60の厚み111は、たとえば0.3μm以上3μm以下である。第2絶縁膜70の本体部75の厚みは、たとえば3μm以上30μm以下であり、より好ましくは、5μm以上20μm以下である。
【0044】
図6は、
図2のVI-VI線に沿った断面模式図である。
図2に示されるように、VI-VI線は、第1主面1に垂直な方向から見た場合において、炭化珪素半導体チップ30の長辺を垂直に二等分する直線である。
図6に示されるように、樹脂8は、肩部71(
図2参照)の辺領域42に接している。
図4に示されるように、第1主面1に対して垂直な断面において、肩部71の角領域41は、外周面3に沿った直線上に位置している。
図6に示されるように、第1主面1に対して垂直な断面において、肩部71の辺領域42は、外周面3に沿った直線上に位置している。別の観点から言えば、第2絶縁膜70の第1外周端部72は、第3主面31の全周囲において、外周面3に沿って位置してもよい。
【0045】
図7は、
図6の領域VIIの拡大模式図である。
図7に示されるように、第2絶縁膜70は、肩部71を有している。肩部71は、第1外周端部72と、第3主面31との境界である。肩部71は、第1外周端部72および第3主面31の各々に連なっている。肩部71は、たとえば角張っている。具体的には、
図7に示される断面において、第1外周端部72は、直線状である。同様に、
図7に示される断面において、第3主面31は、直線状である。第3主面31と第1外周端部72とがなす角度θ2は、たとえば90°である。角度θ2は、90°以下であってもよい。樹脂8は、角張っている肩部71に接している。樹脂8は、角張っている肩部71を覆っている。
【0046】
次に、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の変形例の構成について説明する。
図8は、
図7の変形例の構成を示す図である。
【0047】
図8に示される断面において、第3主面31は、曲線状である。
図8に示される断面において、第1外周端部72は、直線状である。肩部71は、曲線状の第3主面31と、直線状の第1外周端部72との境界である。肩部71における第3主面31の接線と、第1外周端部72とがなす角度θ2は、90°よりも大きくてもよい。角度θ2は、例えば、150°であっても良い。第3主面31が曲線の場合であっても、第1外周端部72を直線とすることで、肩部71は角張って形成される。つまり、角張った肩部71は、第3主面31および第1外周端部72の少なくともいずれか一方が直線状の場合において形成され得る。
【0048】
なお上記においては、トレンチゲートを有するMOSFETを例示して、本開示に係る炭化珪素半導体装置100を説明したが、本開示に係る炭化珪素半導体装置100はこれに限定されない。本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、たとえば平面型MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SBD(Schottky Barrier Diode)、サイリスタ、GTO(Gate Turn Off thyristor)、PiNダイオード等であってもよい。
【0049】
また上記においては、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。また上記各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。
【0050】
次に、本開示に係る炭化珪素半導体装置100の作用効果について説明する。
一般的に炭化珪素半導体チップ30は樹脂8によって覆われている。外部環境から樹脂8の内部に入り込んだ水分は、高温下において膨張して内部に空間を形成する。これにより、樹脂8に応力がかかることで、樹脂8にクラックが発生する。次に、低温下においては、空間の内部が結露することで、空間が減圧状態になる。そのため、外部環境から水分が引き込まれる。次に、高温下になると、水分が膨張して空間がさらに拡大する。結果として、樹脂8に形成されたクラックが伸長する。以上のように、炭化珪素半導体装置100が、高温と低温とが交互に繰り返される環境化に配置されると、炭化珪素半導体チップ30上の樹脂8が剥離する場合がある(ポップコーン現象)。上記において、高温は、たとえば150℃である。低温は、たとえば-55℃である。
【0051】
樹脂8が剥離することを抑制するために、ポリイミドなどの応力緩衝層を炭化珪素基板10と樹脂8との間に配置することが考えられる。しかしながら、応力緩衝層は、炭化珪素基板10と比較して非常に軟らかい。通常、炭化珪素ウェハを個片化して炭化珪素半導体チップ30にする場合、ダイヤモンド等の硬質材料を砥粒としたブレードを用いて炭化珪素ウェハがダイシングされる。しかしながら、炭化珪素基板10とともにポリイミドなどの軟らかい材料をダイシングすると、ブレードに目詰まりが発生する場合がある。そのため、従来は、ポリイミドなどの応力緩衝層を炭化珪素半導体チップ30の外周端部まで延在するように形成することが困難であった。
【0052】
そこで、ダイヤモンド等の硬質材料を砥粒としたブレードを用いるダイシングの代わりに、レーザを用いて炭化珪素ウェハを切断することにした。具体的には、炭化珪素ウェハの切断予定ラインに沿ってパルスレーザが照射される。パルスレーザの波長は、たとえば1064nmである。パルス幅は、たとえば30ナノ秒である。パルスエネルギーは、たとえば150μJである。スポット径は、たとえば5μmである。レーザの偏光状態は、たとえば無偏光(つまり光の電場ベクトルが全ての方法において略均一に分布している状態)である。これにより、炭化珪素ウェハの切断予定ラインに沿って損傷が形成される。次に、炭化珪素ウェハに対して機械的応力を印加することにより、炭化珪素ウェハが切断予定ラインにおいて切断される。これにより、複数の炭化珪素半導体チップ30が形成される。
【0053】
以上のように、レーザ切断を利用する場合には、炭化珪素ウェハをブレードで切断する必要がない。そのため、炭化珪素ウェハの切断予定ライン上にポリイミドを形成することができる。その結果、応力緩衝層(第2絶縁膜70)の外周端部(第1外周端部72)を、炭化珪素基板10の外周面3に沿った位置に設けることができる。そのため、応力緩衝層の外周端部が、炭化珪素基板10の外周面3に沿った位置よりも内周側に位置している場合と比較して、樹脂8に印加される応力を低減することができる。従って、樹脂8が剥離することを抑制することができる。
【0054】
また本実施形態に係る炭化珪素半導体装置100において、第2絶縁膜70は、第1外周端部72に連なりかつ角張っている肩部71を有している。樹脂8は、角張っている肩部71に接している。第2絶縁膜70の肩部71を角張らせることにより、第2絶縁膜70に応力を積極的に集中させる。これにより、炭化珪素基板10に印加される応力を低減することができる。そのため、樹脂8が炭化珪素基板10から剥離することを抑制することができる。
【0055】
さらに本実施形態に係る炭化珪素半導体装置100において、第1絶縁膜60は、第1環状部61と、第1環状部61から離間しかつ第1環状部61を取り囲む第2環状部62とを有している。第2絶縁膜70は、第1環状部61と第2環状部62との間に設けられた充填部76を有している。これにより、水分が炭化珪素半導体チップ30の内部に侵入することを抑制することができる。
【実施例】
【0056】
(サンプル準備)
以下のサンプルを用いて、樹脂の剥離抑制効果の確認実験を行った。サンプルにおけるチップサイズの縦寸法×横寸法と実装用銅フレームの実装面の寸法を示す。第1のサンプルは、チップサイズが3mm×3mm、実装用銅フレームの実装面の寸法14mm×9.5mmである。第2のサンプルは、チップサイズが3mm×3mm、実装用銅フレームの実装面の寸法17mm×10mmである。第3のサンプルは、チップサイズが6mm×6mm、実装用銅フレームの実装面の寸法14mm×9.5mmである。第4のサンプルは、チップサイズが6mm×6mm、実装用銅フレームの実装面の寸法は17mm×10mmである。チップの厚みは、150μmから200μmである。これらのサンプルにおいて実施形態(
図4に示す構造)に示すように、ポリイミドが炭化珪素基板10と樹脂8との間に設けられているものと、ポリイミドが炭化珪素基板10と樹脂8との間に設けられていないものの2水準を準備した。
【0057】
なおチップサイズと実装用銅フレームの実装面の寸法との関係は、上記の例に限られない。つまり、サンプルの他にもチップサイズが実装用銅フレームの実装面の寸法よりも小さければ適用可能である。例えばチップサイズが3mm×3mmであれば、実装用銅フレームの実装面の寸法が20mm×14mmでも良い。チップサイズが5mm×6mmの場合は、実装用銅フレームの実装面の寸法が14mm×9.5mmまたは17mm×10mmまたは20mm×14mmでも良い。チップサイズが6mm×6mmの場合は、実装用銅フレームの実装面の寸法が20mm×14mmでも良い。チップサイズが10mm×12mmの場合は、実装用銅フレームの実装面の寸法が20mm×14mmでも良い。チップサイズが12mm×12mmの場合は、実装用銅フレームの実装面の寸法が20mm×14mmでも良い。
【0058】
(実験方法)
高温と低温とが交互に繰り返される環境化でのサイクル試験の前と後の状態を、超音波プローブを用いた超音波顕微鏡を用いて観察することにより、樹脂の剥離の有無を確認することが可能である。樹脂とチップ上面との間および樹脂とフレーム面との間の密着状態を観察することで、剥離発生の有無の判断をすることができる。まず、高温(150℃)と低温側(-55℃)との温度サイクルが、1000回、より望ましくは5000回繰り返される。その後、超音波の反射、透過分析に基づいて、剥離の発生の有無が判断される。横方向寸法100μm程度の剥離の発生を良否判断の基準としている。
【0059】
また、超音波顕微鏡で観察できない微小剥離は、以下の方法で検知することが可能である。まず、サイクル試験の途中またはサイクル試験後に高温高湿試験(例えば温度85℃、湿度85%)が行われる。樹脂に剥離または亀裂部があると、水分が樹脂内部に侵入し、チップが動作不良となる。チップの動作不良を検知することで、樹脂の剥離または亀裂部の有無が間接的に判断される。
【0060】
(実験結果)
剥離抑制対策がなされていないサンプルにおいては、1000回未満の温度サイクルで剥離が発生し、サイクル試験後の高温高湿試験でも動作不良が発生した。特に、チップ角部においては、500回未満の温度サイクルで剥離が発生するという特徴が確認されている。一方、剥離抑制対策がなされているサンプルにおいては、1000回以上でもチップの角部、辺部に剥離はなく、また、サイクル試験後の高温高湿試験でも良好な動作が確認された。同様の効果は、より厳しい高温側(175℃)と低温側(-55℃)での試験回数5000回のサイクル試験と、サイクル試験後の高温高湿試験後でも確認された。
【0061】
剥離抑制対策がなされていないサンプルについては、チップサイズが大きく、また、実装面の寸法が小さくなる場合に、サイクル試験での剥離発生が早く起こる傾向が確認された。また、チップサイズと実装面の比率が大きい方が、剥離発生が早く起こる傾向が確認された(なお今回の場合、チップ面積/実装面の面積の比率は、最小が3%である、最大が51%である)。剥離抑制対策がなされている実施例のサンプルについては、上述のチップサイズ、実装面の寸法いずれの場合であっても、試験回数5000回のサイクル試験と、サイクル試験後の高温高湿試験後とにおいて、樹脂の剥離が発生していないことが確認された。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 第1主面、2 第2主面、3 外周面、8 樹脂、9 ゲートトレンチ、10 炭化珪素基板、11 ドリフト領域、12 ボディ領域、13 ソース領域、14 コンタクト領域、15 炭化珪素単結晶基板、16 ガードリング、20 炭化珪素エピタキシャル層、21 コンタクト電極、22 ゲート電極、23 層間絶縁膜、24 ゲート絶縁膜、25 ドレイン電極、28 ソース電極、29 ソース配線、30 炭化珪素半導体チップ、31 第3主面、32 第4主面、40 活性領域、41 角領域、42 辺領域、50 外周領域、51 第1外周領域部、52 第2外周領域部、60 第1絶縁膜、61 第1環状部、62 第2環状部、63 第3環状部、64 内周領域、67 第2外周端部、70 第2絶縁膜、71 肩部、72 第1外周端部、73 はんだ層、74 金属フレーム、75 本体部、76 充填部、90 炭化珪素半導体素子、91 側壁面、92 底部、100 炭化珪素半導体装置、101 第1方向、102 第2方向。