(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20230322BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20230322BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D9/02 101
F01D17/16 A
(21)【出願番号】P 2021525963
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020019931
(87)【国際公開番号】W WO2020250635
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2019110818
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 功
(72)【発明者】
【氏名】モリソン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】スペンス ステファン
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-257011(JP,A)
【文献】特開2015-014252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-25/36
F02B 33/00-41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機であって、
タービンインペラを含む斜流タービンと、
前記タービンインペラの動翼の前縁に向けて延伸するガス流路を含み、前記タービンインペラを収容するタービンハウジングと、
前記ガス流路に設けられる複数のノズル翼であって、前記タービンインペラの周方向に配列するとともに互いに隣接する2つの間にスロートを形成する複数のノズル翼と
を備え、
各前記ノズル翼は、当該ノズル翼の後縁を捻り中心として、前記スロートの幅がハブ側よりもシュラウド側で狭くなるように捻られ
、
前記複数のノズル翼の配列方向に沿った前記スロートの長さをスロート幅とした場合、ハブ側のスロート幅は、スパン方向における中央のスロート幅の1倍よりも大きくかつ2倍以下の値に設定され、
前記スロート幅は、当該ノズル翼の前記ハブ側から当該ノズル翼のシュラウド側まで単調に減少し、
前記シュラウド側のスロート幅と前記ハブ側のスロート幅の和は、前記中央のスロート幅の2倍に等しい
過給機。
【請求項2】
各前記ノズル翼は前記ガス流路内で回転可能に設けられている、請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
各前記ノズル翼は前記ガス流路に固定されている、請求項1に記載の過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、斜流タービンを備える過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機等の回転機械に使用されるタービンとして、ラジアルタービン(Radial Flow Turbine)と斜流タービン(Mixed Flow Turbine)の2種類のタービンが知られている。斜流タービンは同容量のラジアルタービンと比べて軽量化が可能であり、過渡応答性に優れていることが一般的に知られている。特許文献1は、斜流タービンを用いた過給機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、回転するインペラの動翼に対して作動流体の相対流れ角(インシデンス角)が増加すると、動翼の背側で流れの剥離が発生しやすくなる。相対流れ角の増加による剥離の発生はタービン効率の損失(所謂インシデンス損失)を増加させる。
【0005】
斜流タービンにおける動翼の前縁の回転半径は、シュラウド側からハブ側に向かうにつれて減少しているため、前縁の周速もシュラウド側からハブ側に向かうにつれて減少する。この減少に伴い、作動流体の相対流れ角はシュラウド側からハブ側に向かうにつれて増加するため、ハブ側に近い領域ほど剥離が発生しやすい。従って、斜流タービンのインペラは、上述の利点があるものの、同径のラジアルタービンのそれよりも構造上、インシデンス損失を増加させやすい傾向がある。
【0006】
本開示は上述の事情を鑑みてなされたものである。即ち、本開示は、斜流タービンの特徴を活かしつつ、インシデンス損失を低減させることが可能な過給機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は過給機であって、タービンインペラを含む斜流タービンと、前記タービンインペラの動翼の前縁に向けて延伸するガス流路を含み、前記タービンインペラを収容するタービンハウジングと、前記ガス流路に設けられる複数のノズル翼であって、前記タービンインペラの周方向に配列するとともに互いに隣接する2つの間にスロートを形成する複数のノズル翼とを備え、各前記ノズル翼は、当該ノズル翼の前記後縁を捻り中心として、前記スロートの幅がハブ側よりもシュラウド側で狭くなるように捻られ、前記複数のノズル翼の配列方向に沿った前記スロートの長さをスロート幅とした場合、ハブ側のスロート幅は、スパン方向における中央のスロート幅の1倍よりも大きくかつ2倍以下の値に設定され、前記スロート幅は、当該ノズル翼の前記ハブ側から当該ノズル翼のシュラウド側まで単調に減少し、前記シュラウド側のスロート幅と前記ハブ側のスロート幅の和は、前記中央のスロート幅の2倍に等しいことを要旨とする。
【0008】
各前記ノズル翼は前記ガス流路内で回転可能に設けられてもよい。各前記ノズル翼は前記ガス流路に固定されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、斜流タービンの特徴を活かしつつ、インシデンス損失を低減させることが可能な過給機の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る過給機の正断面図(子午面図)である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、本開示の実施形態に係るノズル翼を示す図であって、
図2(a)はノズル翼をタービンインペラの軸方向から見た図、
図2(b)はノズル翼によって形成されるスロートを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るタービンブレードの前縁に沿った相対流れ角(インシデンス角)の変化を、幾つかのハブスロート開口比ごとに示したグラフである。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、タービンブレードの前縁近傍における作動流体の流線と、エントロピー(静的エントロピー)分布を示す図であり、
図4(a)は設計点においてハブスロート開口比O
msが1.0のときの図、
図4(b)は設計点においてハブスロート開口比O
msが1.9のときの図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、タービンブレードの前縁近傍における作動流体の流線と、エントロピー(静的エントロピー)分布を示す図であり、
図5(a)は非設計点においてハブスロート開口比O
msが1.0のときの図、
図5(b)は非設計点においてハブスロート開口比O
msが1.9のときの図である。
【
図6】
図6は、ハブスロート開口比O
msを1.0、1.3、1.9としたときの本実施形態に係る斜流タービンの効率を、低速域、中速域及び高速域ごとに示すグラフである。
【
図7】
図7は、本実施形態の変形例に係る可変容量型過給機における斜流タービンの正断面図(子午面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図面上の「L」は左方向、「R」は右方向、「ID」は径方向内側、「OD」は径方向外側、「RD」はタービンインペラ(ロータ軸)の回転方向、「SD」はノズル翼のスパン方向をそれぞれ示している。
【0013】
本実施形態の過給機1は、例えば車両や船舶に搭載される。過給機1は、エンジン(図示せず)からの排気ガス(ガスの一例)の圧力エネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る過給機1の正断面図(子午面図)である。
図2(a)及び
図2(b)は、本実施形態に係るノズル翼73を示す図であって、
図2(a)はノズル翼73をタービンインペラ35の軸方向から見た図、
図2(b)はノズル翼73によって形成されるスロート74を示す斜視図である。
図1に示すように、過給機1は、ベアリングハウジング3を備えている。ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、これらのベアリング5,7には、軸方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられている。換言すれば、ロータ軸9は、ベアリングハウジング3に、複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0015】
図1におけるベアリングハウジング3の右側にはコンプレッサ11が配設されている。コンプレッサ11は遠心力を利用して空気を圧縮する。コンプレッサ11は、コンプレッサハウジング13と、コンプレッサハウジング13内に回転可能に収容されるコンプレッサインペラ15とを備える。コンプレッサインペラ15は、ロータ軸9の右端部に連結され、ロータ軸9及び後述のタービンインペラ35と共に一体的に回転する。コンプレッサインペラ15は、コンプレッサディスク17を備える。コンプレッサディスク17のハブ面17hは、右側から径方向外側(コンプレッサインペラ15の径方向外側)へ延びている。更に、コンプレッサディスク17のハブ面17hには、複数のコンプレッサブレード19が周方向に間隔を置いて一体形成されている。
【0016】
コンプレッサハウジング13におけるコンプレッサインペラ15の入口側(空気の流れ方向から見て上流側)には、空気取入口21が形成されている。空気取入口21は、空気を浄化するエアクリーナ(図示せず)に接続する。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング13との間には、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は環状に形成され、コンプレッサインペラ15の出口側(空気の流れ方向から見て下流側)に位置する。ディフューザ流路23は、コンプレッサインペラ15から排出された空気を減速させながら圧縮する。
【0017】
コンプレッサハウジング13の内部には、コンプレッサスクロール流路25が形成されている。コンプレッサスクロール流路25は渦巻き状に延び、ディフューザ流路23に連通している。コンプレッサハウジング13の適宜位置には、空気排出口27が形成されている。空気排出口27は圧縮された空気をコンプレッサハウジング13の外側へ排出するために形成され、エンジンの吸気マニホールド(図示せず)に接続する。
【0018】
なお、ベアリングハウジング3の右側部には、シールプレート29が設けられている。シールプレート29は環状に形成され、スラストベアリング7側への圧縮空気の漏れを防止する。
【0019】
図1に示すように、ベアリングハウジング3の左側には斜流タービン31が配設されている。斜流タービン31は、エンジン(図示せず)からの排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させる。
【0020】
斜流タービン31は、タービンハウジング33と、タービンハウジング33内に回転可能に収容されるタービンインペラ35とを備える。タービンインペラ35はロータ軸9の左端部に連結され、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ15と共に一体的に回転する。
【0021】
タービンインペラ35は、タービンディスク37を備えている。タービンディスク37のハブ面37hは、左側(タービンインペラ35の軸方向一方側)から径方向外側(タービンインペラ35の径方向外側)へ延びている。更に、タービンディスク37のハブ面37hには、複数のタービンブレード(動翼)39が一体形成されている。上述した通り、本実施形態に係るタービンは斜流タービンである。従って、タービンブレード39の前縁39aは、シュラウド側からハブ側に向かうにつれて軸心Cに近づくように延伸し、軸心Cに対して傾斜している。
【0022】
タービンハウジング33の適宜位置には、ガス取入口41が形成されている。ガス取入口41は排気ガスをタービンハウジング33内に取入れるために形成され、エンジンの排気マニホールド(図示せず)に接続する。
【0023】
タービンハウジング33の内部におけるタービンインペラ35の入口側(排気ガスの流れ方向から見て上流側)には、タービンスクロール流路43が形成されている。タービンスクロール流路43は渦巻き状に形成され、ガス流路42を介してガス取入口41に連通している。
【0024】
ガス流路42は、タービンスクロール流路43から径方向内側に延伸し、タービンブレード39の前縁39aに向けて開口している。ガス流路42は、第1壁部材としてのハブ側内壁44と、第2壁部材としてのシュラウド側内壁46とを備える。
【0025】
ハブ側内壁44はタービンインペラ35と同心状に配設され、タービンインペラ35に向けて延伸している。ハブ側内壁44はタービンハウジング33とは別体として設けられ、例えば環状の形状を有する。ハブ側内壁44の内周縁部は、遮熱板49の外周縁部に嵌合している。
【0026】
シュラウド側内壁46は、ハブ側内壁44に対して軸方向に所定の間隔をおきながらタービンインペラ35に向けて延伸している。シュラウド側内壁46は、タービンハウジング33と一体に形成されてもよく、タービンハウジング33とは別体として設けられ、タービンハウジング33に取り付けられてもよい。
【0027】
タービンハウジング33におけるタービンインペラ35の出口側(排気ガスの流れ方向から見て下流側)には、ガス排出口45が形成されている。ガス排出口45はタービンハウジング33から排気ガスを排出するために形成され、接続管(図示せず)を介して触媒(図示せず)に接続する。
【0028】
ベアリングハウジング3の左側面には、環状の遮熱板49が設けられている。遮熱板49は環状に形成され、タービンインペラ35側からの熱を遮蔽する。ベアリングハウジング3の左側面と遮熱板49の外縁部との間には、波ワッシャ51が設けられている。
【0029】
ガス流路42内には、複数のノズル翼73が設けられている。本実施形態では、ノズル翼73は、タービンインペラ35の周方向に配列している。また、ノズル翼73はハブ側内壁44に固定され、シュラウド側内壁46に当接している。ノズル翼73はハブ側内壁44と共に一体形成されてもよい。また、ノズル翼73は、シュラウド側内壁46から離隔していてもよい。その場合の両者の間隔は、例えば、取付け等の制約や仕様等によって規定される。なお、シュラウド側内壁46はタービンハウジング33と別体に形成され、タービンハウジング33に取り付けられてもよい。この場合、シュラウド側内壁46にノズル翼73が固定されてもよい。
図2(a)に示すように、各ノズル翼73は、シュラウド側端面(端断面)73sからハブ側端面(端断面)73hに亘って、同一のコード長を有する。また、各ノズル翼73は、同一の翼形状(翼型)を呈している。なお、各ノズル翼73のコード長又は翼形状は、シュラウド側端面73sからハブ側端面73hに亘って同一でなくてもよい。
【0030】
図2(a)に示すように、後縁73bはノズル翼73の配列面に直交する方向に延伸する。換言すれば、後縁73bは、タービンインペラ35の軸芯Cと平行に設けられている。各ノズル翼73は、当該ノズル翼の後縁73bを捻り中心として、ハブ側のスロート幅O
1よりもシュラウド側のスロート幅O
2が狭くなるように(即ち、スロート74の幅が、ハブ側よりもシュラウド側で狭くなるように)捻られている。換言すれば、各ノズル翼73の翼型(翼断面)は、後縁73bを回転中心として、ハブ側端面(端断面)73hからシュラウド側端面(端断面)73sに向かうにつれて、径方向内側に回転している。後述するように、スロート幅とは複数のノズル翼73の配列方向に沿ったスロート74の長さである。
【0031】
ノズル翼73が上述のように捻られているため、子午面において、各ノズル翼73の前縁73aは、シュラウド側の端がハブ側の端よりも径方向内側に位置するようにタービンインペラ35の軸心Cに対して傾斜している(
図1参照)。
【0032】
複数のノズル翼73のうち、互いに隣接する2つのノズル翼73、73は、その間にスロート74を形成する。スロート74は、2つのノズル翼73、73のうちの一方のノズル翼73の腹側(正圧面)73cと、他方のノズル翼73の背側(負圧面)73dとの間隔が最も狭くなった位置に形成される。ここで、「他方のノズル翼73の腹側」は、例えば、当該ノズル翼73の後縁73bである。
【0033】
上述の通り、後縁73bは前縁73aの捻り中心である。従って、ノズル翼73の2つの側面である背側73d及び腹側73cは、ハブ側内壁44及びシュラウド側内壁46に対して後縁73bよりも傾斜している。従って、
図2(b)に示すように、スロート74の形状は、ハブ側の底がシュラウド側の底よりも長い台形となる。
【0034】
本実施形態では、複数のノズル翼73の配列方向に沿ったスロート74の長さをスロート幅Ohとした場合、ハブ側のスロート幅O1(即ちOh=O1)は、スパン方向SDにおける中央のスロート幅O0.5(即ちOh=O0.5)の1倍よりも大きくかつ2倍以下の値に設定されている。例えば、シュラウド側のスロート幅O2(即ちOh=O2)とハブ側のスロート幅O1は、その和が中央のスロート幅O0.5の2倍に等しくなるように設定される。また、スロート幅Ohは、シュラウド側からハブ側に向けて単調に増加し、その途中で減少しない。
【0035】
上述の通り、各ノズル翼73は、当該ノズル翼の後縁73bから前縁73aに向かうにつれて、前縁73aに対してタービンインペラ35の回転方向RDと逆方向への傾斜が大きくなるように捻られている。従って、スロート74を通過した後の作動流体の流れ角は、ノズル翼73のスパン方向SDに沿って変化し、タービンブレード39に対する相対流れ角(インシデンス角)も前縁39aに沿って変化する。具体的には、シュラウド側からハブ側までの相対流れ角の変化は、ノズル翼73が捻られていない場合に比べて小さくなる。
【0036】
図3は、タービンブレード39の前縁39aに沿った相対流れ角(インシデンス角)の変化を、幾つかのハブスロート開口比O
msごとに示したグラフである。なお、このグラフは、設計点における関係を示している。また、縦軸のスパン長は規格化されている。従って、この値が0に近いほどハブ側に近い位置を示し、逆に、この値が1に近いほどシュラウド側に近い位置を示す。
【0037】
図中のハブスロート開口比Omsは、スパン方向SDにおける中央のスロート幅O0.5に対するシュラウド側のスロート幅O2の比を表す。例えば、Omsが1.9のとき、シュラウド側のスロート幅O2は、中央のスロート幅O0.5の1.9倍である。また、Omsが1.0のとき、シュラウド側のスロート幅O2は、中央のスロート幅O0.5に等しい。即ち、ノズル翼73は捻られていない。
【0038】
図3に示す解析結果は、シュラウド側のスロート幅O
2とハブ側のスロート幅O
1の和が中央のスロート幅O
0.5の2倍に等しくなるように設定された条件の下で得られている。従って、シュラウド側のスロート幅O
2とハブ側のスロート幅O
1の変化に関わりなく、スロート74の面積は一定である。つまり、ハブスロート開口比O
msが何れの値のときも、ノズル翼73を通過する作動流体の総量は殆ど変化せず、同容量のタービン間の比較を示すことになる。
【0039】
この
図3から、シュラウド側からハブ側までの相対流れ角の変化は、ノズル翼73が捻られていない場合(即ち、O
ms=1.0)に比べて、ノズル翼73が捻られているほど小さくなることがわかる。従って、斜流タービンにおいてノズル翼73を捻ることにより、タービンインペラ35におけるハブ側での剥離の発生又は成長を抑制でき、その結果、インシデンス損失を低減させることできる。
【0040】
図4(a)及び
図4(b)は、タービンブレード39の前縁39a(LE)近傍における作動流体Gの流線と、エントロピー(静的エントロピー)分布を示す図であり、
図4(a)は設計点においてハブスロート開口比O
msが1.0のときの図、
図4(b)は設計点においてハブスロート開口比O
msが1.9のときの図である。
図5(a)及び
図5(b)は、タービンブレード39の前縁39a(LE)近傍における作動流体Gの流線と、エントロピー(静的エントロピー)分布を示す図であり、
図5(a)は非設計点においてハブスロート開口比O
msが1.0のときの図、
図5(b)は非設計点においてハブスロート開口比O
msが1.9のときの図である。何れの図も、3次元定常粘性CFD(Computational Fluid Dynamics)解析により求めたものであり、規格化スパン長が0.1のときのタービンブレード39の前縁39a(LE)を示している。また、PSはタービンブレード39の腹側(正圧面)、SSは同ブレードの背側(負圧面)を示している。
【0041】
図4(a)~
図5(b)における前縁39a(LE)の周囲に着目すると、ハブスロート開口比O
msが1.9のときの作動流体Gの相対流れ角(インシデンス角)は、ハブスロート開口比O
msが1.0のときのそれよりも小さく、また、作動流体の集中も緩和されていることが判る。また、ハブスロート開口比O
msが1.9のときのエントロピーが比較的高い領域は、ハブスロート開口比O
msが1.0のときのそれより狭くなっており、剥離が発生している領域が縮小し、エネルギーの損失が抑制されていることが判る。
【0042】
従って、これらの図からも理解されるように、斜流タービンにおいてノズル翼73を捻ることにより、タービンインペラ35におけるハブ側での剥離の発生又は成長を抑制でき、その結果、インシデンス損失を低減させることできる。
【0043】
図6は、ハブスロート開口比O
msを1.0、1.3、1.9としたときの本実施形態に係る斜流タービンの効率を、低速域、中速域及び高速域ごとに示すグラフである。この図に示すように、斜流タービンの効率は、ハブスロート開口比O
msが大きいほど良いことが判る。しかも、この傾向はあらゆる周速域に見られている。
【0044】
(変形例)
なお、本開示のノズル翼73は、上述の固定ノズル翼としての使用に限られず、可変ノズルユニットに用いられる可変ノズル翼として構成されてもよい。即ち、ノズル翼73は、ガス流路42内で回転可能に設けられていてもよい。ノズル翼73が可変ノズル翼である場合、当該可変ノズル翼は開状態から閉状態に至る間の何れか設定角で、上述したハブスロート開口部比をもつスロート74を形成するように構成されていればよい。
【0045】
例えば、ノズル翼73は、後述の可変ノズルユニット53に適用される。可変ノズルユニット53は、可変容量型過給機に搭載され、タービンインペラ35側へ供給される排気ガスの流路面積を調整する。
【0046】
以下、ノズル翼73を可変ノズルユニット53に適用した例について説明する。
図7は、本実施形態の変形例に係る可変容量型過給機における斜流タービンの正断面図(子午面図)である。
図7に示すように、タービンハウジング33内におけるタービンインペラ35の径方向外側(入口側)には、第1壁部材としてのノズルリング55がサポートリング57を介してタービンインペラ35と同心状に配設されている。ノズルリング55は例えば環状に形成されている。ノズルリング55の内周縁部は、遮熱板49の外周縁部に嵌合している。ノズルリング55には、複数の第1支持穴59が円周方向に等間隔に貫通形成されている。なお、サポートリング57の外周縁部は、ベアリングハウジング3とタービンハウジング33によって挟持されている。
【0047】
ノズルリング55に対して軸方向に離隔した位置には、第2壁部材としてのシュラウドリング61が設けられている。シュラウドリング61は、ノズルリング55と同心状に設けられ、複数の連結ピン63を介してノズルリング55と一体化されている。換言すれば、シュラウドリング61は、ノズルリング55に対向するように、ノズルリング55に対してタービンインペラ35の軸方向に離隔して設けられている。また、シュラウドリング61は例えば環状に形成されている。シュラウドリング61には、複数の第2支持穴65が貫通形成されている。複数の第2支持穴65は、ノズルリング55の複数の第1支持穴59に整合するように円周方向に等間隔に形成されている。なお、複数の連結ピン63は、ノズルリング55の対向面とシュラウドリング61の対向面との間隔を設定する機能を有している。
【0048】
シュラウドリング61は、内周縁側に、複数のタービンブレード39の外縁を覆う筒状のシュラウド部67を有している。シュラウド部67は、左方向(タービンインペラ35の軸方向一方側)へ突出しかつタービンハウジング33の段部47の内側に位置している。また、シュラウドリング61のシュラウド部67の外周面には、リング溝69が形成されている。更に、タービンハウジング33の段部47の内周面には、タービンスクロール流路43側からの排気ガスの漏れを抑える複数のシールリング71が自己の弾性力(複数のシールリング71の弾性力)によって圧接して設けられている。各シールリング71の内周縁部は、シュラウドリング61のリング溝69に嵌入している。
【0049】
図7に示すように、ノズルリング55とシュラウドリング61は、ガス流路42を構成する。ガス流路42内(換言すれば、ノズルリング55とシュラウドリング61の間)には、可変ノズル翼としての複数のノズル翼73が円周方向に配列している。各ノズル翼73は、タービンインペラ35の軸心Cに平行な軸心周りに回転(揺動)できる。ノズルリング55に対向する各ノズル翼73の右側面には、第1翼軸75が一体形成されている。第1翼軸75は、ノズルリング55の対応する第1支持穴59に回動可能に支持されている。シュラウドリング61に対向する各ノズル翼73の左側面には、第2翼軸77が第1翼軸75と同心状に一体形成されている。第2翼軸77は、シュラウドリング61の対応する第2支持穴65に回動可能に支持されている。各ノズル翼73は、第1翼軸75の基端側に、ノズルリング55の対向面に接触可能な第1鍔部(図示せず)を有する。また、各ノズル翼73は、第2翼軸77の基端側に、シュラウドリング61の対向面に接触可能な第2鍔部(図示せず)を有する。なお、各ノズル翼73は、第1翼軸75と第2翼軸77を備えた両持ちタイプであるが、第2翼軸77を省略した片持ちタイプでもよい。
【0050】
図7に示すように、ノズルリング55の対向面の反対側に形成した環状のリンク室79内には、複数のノズル翼73を同期して回動させるためのリンク機構81が配設されている。また、リンク機構81は、特開2009-243431号公報、特開2009-243300号公報、および特開2014-169642号公報(米国特許出願公開第2014/14178683号明細書)等に示す公知の構成からなる。リンク機構81は、複数のノズル翼73を開閉方向へ回動させるモータ又はシリンダ等の回動アクチュエータ(図示せず)に動力伝達機構83を介して接続されている。
【0051】
この変形例においても、上述の効果が得られる。即ち、斜流タービンにおいてノズル翼73を捻ることにより、タービンインペラ35におけるハブ側での剥離の発生又は成長を抑制でき、その結果、インシデンス損失を低減させることできる。
【0052】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。