(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】配線モジュールおよび蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/50 20210101AFI20230322BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230322BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20230322BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230322BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20230322BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20230322BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01M50/50 101
H01M50/284
H01M50/507
H01M50/298
H01M50/519
H01M50/522
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/569
H01M10/48 P
H01G11/12
H01G11/74
H01G4/228 J
(21)【出願番号】P 2021528177
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023210
(87)【国際公開番号】W WO2020255876
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019112789
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】平光 宏臣
(72)【発明者】
【氏名】董 雪清
(72)【発明者】
【氏名】筒木 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠人
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228216(JP,A)
【文献】特開2015-138604(JP,A)
【文献】特開2015-022965(JP,A)
【文献】特開2015-049931(JP,A)
【文献】特開2020-205175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
H01G 4/228
H01G11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の蓄電素子が並べられた蓄電素子群に取り付けられる配線モジュールであって、
前記電極端子に接続されるバスバーと、導電路が形成された回路基板と、前記バスバーと前記回路基板とを接続する中継部材と、を備え、
前記中継部材は、前記バスバーに接続されるバスバー接続部と、前記回路基板の前記導電路に接続される基板接続部と、を有し、
前記中継部材は、前記バスバー接続部と前記基板接続部とをつなぐとともに前記複数の蓄電素子の並び方向と交差する方向に延びる板状の連結部を有し、
前記連結部は前記並び方向に変形可能な第1変形部を有し、前記第1変形部の板面は前記並び方向と交差している配線モジュール。
【請求項2】
前記連結部は複数の前記第1変形部を有する請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項3】
前記第1変形部には、前記第1変形部の板面に交差する方向に凸状または凹状に屈曲する第1屈曲部が形成されている請求項1または請求項2に記載の配線モジュール。
【請求項4】
前記連結部は、前記並び方向と交差する方向に変形可能な第2変形部をさらに有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項5】
前記第2変形部には、前記第2変形部の板面に交差する方向に凸状または凹状に屈曲する第2屈曲部が形成されて
おり、
前記第2変形部の板面は前記蓄電素子の前記並び方向と板状の前記連結部の延びる方向に沿っている請求項4に記載の配線モジュール。
【請求項6】
前記バスバーはアルミニウムを含み、前記中継部材はニッケルを含み、前記バスバーと前記中継部材とは溶接されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項7】
前記導電路は銅を含み、
前記中継部材は金属の表面がニッケルまたはスズでメッキされており、
前記導電路と前記中継部材は半田付けされている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項8】
前記回路基板はフレキシブルプリント基板である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項9】
車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであって、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の配線モジュールと、
電極端子を有する複数の蓄電素子が並べられた蓄電素子群と、を備えた蓄電モジュールであって、
前記導電路と前記基板接続部とがはんだ付けされており、前記電極端子と前記バスバー接続部とが溶接されている蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュールおよび蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のモジュール電池を収納している電池ホルダーと、この電池ホルダーに収納されたモジュール電池の電極端子に連結されて、モジュール電池を接続しているバスバーと、複数のバスバーを定位置に保持している絶縁材であるエンドプレートと、エンドプレートの表面に固定されると共に、モジュール電池に接続されてモジュール電池の電圧を外部に出力する信号出力ラインを配線しているプリント基板とを備える電源装置が知られている(特開2001-345082号公報)。バスバーとプリント基板とは連結端子によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のモジュール電池を構成する各蓄電素子は、例えば、充電時に膨張し、放電時に収縮する場合がある。このような場合、モジュール電池の電極端子に接続されたバスバーと、プリント基板とが、複数のモジュール電池の並び方向についてずれてしまう。すると、バスバーとプリント基板とを接続する連結端子に力が加わり、バスバーと連結端子との電気的な接続信頼性、または連結端子とプリント基板との電気的な接続信頼性が低下することが懸念される。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電気的な接続信頼性が向上された配線モジュールにかかる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子が並べられた蓄電素子群に取り付けられる配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、導電路が形成された回路基板と、前記バスバーと前記回路基板とを接続する中継部材と、を備え、前記中継部材は、前記バスバーに接続されるバスバー接続部と、前記回路基板の前記導電路に接続される基板接続部と、を有し、前記中継部材は、前記バスバー接続部と前記基板接続部とをつなぐとともに前記複数の蓄電素子の並び方向と交差する方向に延びる板状の連結部を有し、前記連結部は前記並び方向に変形可能な第1変形部を有し、前記第1変形部の板面は前記並び方向と交差している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線モジュールの電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる蓄電モジュールを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大平面図である。
【
図4】
図4は、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態2にかかる蓄電モジュールにおいて、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態3にかかる蓄電モジュールにおいて、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大斜視図である。
【
図11】
図11は、回路基板と、中継部材と、バスバーとの接続構造を示す一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0010】
(1)本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子が並べられた蓄電素子群に取り付けられる配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、導電路が形成された回路基板と、前記バスバーと前記回路基板とを接続する中継部材と、を備え、前記中継部材は、前記バスバーに接続されるバスバー接続部と、前記回路基板の前記導電路に接続される基板接続部と、を有し、前記中継部材は、前記バスバー接続部と前記基板接続部とをつなぐとともに前記複数の蓄電素子の並び方向と交差する方向に延びる板状の連結部を有し、前記連結部は前記並び方向に変形可能な第1変形部を有し、前記第1変形部の板面は前記並び方向と交差している。
【0011】
上記の構成によれば、蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーと、回路基板とが、複数の蓄電素子の並ぶ方向について位置ずれした場合に、第1変形部変形することにより、バスバーとバスバー接続部との接続部分、および導電路と基板接続部との接続部分に荷重が作用することが抑制される。これにより、バスバーと回路基板との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0012】
連結部に第1変形部のように比較的に変形しやすい部分を形成すると、連結部の強度が低下することが懸念される。すると、異物との衝突等により、連結部が意図されない時期に変形したり、意図されない方向に変形したりすることが懸念される。そこで、本開示は、第1変形部の板面が、複数の蓄電素子の並ぶ方向と交差する構成とされている。これにより、第1変形部は、複数の蓄電素子が並ぶ方向と交差する方向には変形しにくくなっている。これにより、連結部に意図されない変形が生じることを抑制できる。
【0013】
(2)前記連結部は複数の前記第1変形部を有することが好ましい。
【0014】
連結部が複数の第1変形部を有することにより、連結部が1つの第1変形部をする場合よりも、連結部の強度を向上させることができる。この結果、連結部に形成される第1変形部の個数を調節することにより、連結部の変形のしやすさと、強度との調節を図ることが容易にできる。
【0015】
(3)前記第1変形部には、前記第1変形部の板面に交差する方向に凸状または凹状に屈曲する第1屈曲部が形成されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成よれば、第1変形部に第1屈曲部が形成されることにより、第1変形部は第1屈曲部で変形しやすくなっている。これにより、蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーと、回路基板の導電路とが、複数の蓄電素子の並ぶ方向について位置ずれした場合に、第1変形部が容易に変形することができる。この結果、バスバーとバスバー接続部との接続部分、および導電路と基板接続部との接続部分に荷重が作用することが抑制されるので、バスバーと回路基板との電気的な接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0017】
(4)前記連結部は、前記並び方向と交差する方向に変形可能な第2変形部をさらに有することが好ましい。
【0018】
第2変形部が、複数の蓄電素子の並び方向と交差する方向に変形することにより、蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーと、回路基板の導電路とが、複数の蓄電素子の並ぶ方向と交差する方向について位置ずれした場合でも、バスバーとバスバー接続部との接続部分、および導電路と基板接続部との接続部分に荷重が作用することが抑制される。これにより、バスバーと回路基板との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0019】
(5)前記第2変形部には、前記第2変形部の板面に交差する方向に凸状または凹状に屈曲する第2屈曲部が形成されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、第2変形部に第2屈曲部が形成されることにより、第2変形部は第2屈曲部で変形しやすくなっている。これにより、蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーと、回路基板の導電路とが、複数の蓄電素子の並ぶ方向と交差する方向についての位置ずれした場合に、第2変形部が容易に変形することができる。この結果、バスバーとバスバー接続部との接続部分、および導電路と基板接続部との接続部分に荷重が作用することが抑制されるので、バスバーと回路基板との電気的な接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0021】
(6)前記バスバーはアルミニウムを含み、前記中継部材はニッケルを含み、前記バスバーと前記中継部材とは溶接されていることが好ましい。
【0022】
バスバーをアルミニウムを含む材料により形成した場合、中継部材の材料によっては、バスバーと中継部材とを溶接すると、比較的にもろい合金が、バスバーと中継部材との境界部分に形成される場合がある。本開示によれば、中継部材はニッケルを含む材料からなり、バスバーがアルミニウムを含む材料からなる。このため、中継部材のバスバー接続部と、バスバーとの間に安定性の高い合金が形成されるので、バスバーと中継部材とを強固に溶接できる。
【0023】
(7)前記導電路は銅を含み、前記中継部材は金属の表面がニッケルまたはスズでメッキされており、前記導電路と前記中継部材は半田付けされていることが好ましい。
【0024】
銅またはアルミニウム等の金属の表面をニッケルやスズなどでめっき処理した金属材料は、溶融状態の半田との濡れ性がよいので、回路基板の導電路と中継部材の基板接続部とを強固に接続できる。
【0025】
(8)前記回路基板はフレキシブルプリント基板であることが好ましい。
【0026】
本開示によれば、回路基板はフレキシブルプリント基板であるので、蓄電素子の電圧を検知するための回路を複数の電線で形成する場合に比べて配線密度を向上させることができる。この結果、配線モジュールを小型化できる。
【0027】
(9)車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであることが好ましい。
【0028】
(10)本開示は、上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の配線モジュールと、電極端子を有する複数の蓄電素子が並べられた蓄電素子群と、を備えた蓄電モジュールであって、前記導電路と前記基板接続部とがはんだ付けされており、前記電極端子と前記バスバー接続部とが溶接されている。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0030】
<実施形態1>
本開示を車両1に搭載される蓄電パック2に適用した実施形態1が
図1から
図7を参照しつつ説明される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0031】
[全体構成]
図1に示されるように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。
【0032】
[蓄電素子11]
蓄電素子11は前後方向に扁平な直方体形状をなしている。蓄電素子11の上面には、左端部と右端部のそれぞれから、電極端子13が上方に突出している。1つの蓄電素子11に形成された2つの電極端子13のうち、一方が正極で他方が負極となっている。複数の蓄電素子11は前後方向(並び方向の一例)に沿って並べられることにより蓄電素子群12を構成する。
【0033】
[配線モジュール20]
配線モジュール20は、蓄電素子群12の上面の、左端部寄りの部分と、右端部寄りの部分とに配設される。
図2においては、複数の蓄電素子11の左端部側に配された配線モジュール20が省略されている。
【0034】
配線モジュール20は、複数のバスバー21と、回路基板30とを備える。回路基板30の下方には、絶縁性の合成樹脂からなる補強板40が配されている。
【0035】
[バスバー21]
図2に示されるように、バスバー21は、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。バスバー21を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態においては、バスバー21はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、アルミニウムを含有する。バスバー21は、上方から見て前後方向に長い長略方形状をなしている。
【0036】
バスバー21は、異なる蓄電素子11の隣り合う電極端子13同士に接続される。バスバー21の前後方向の長さ寸法は、隣り合う電極端子13を上方から覆う程度に設定されている。バスバー21と電極端子13とを接続する手法は、レーザー溶接、半田付け等、特に限定されない。本実施形態においては、バスバー21と電極端子13とはレーザー溶接されている。バスバー21には上方から見て円形状をなす溶接痕24が形成されている。溶接痕24の形状は限定されず、直線状でもよい。
【0037】
[回路基板30]
図2に示されるように、本実施形態にかかる回路基板30は、フレキシブルプリント基板(FPC)である。回路基板30は、絶縁フィルムからなる支持基板35の上面または下面に銅を含む金属製の導体箔によって導電路32が形成されており、導電路32がカバーレイ層(図示せず)によって覆われている。導電路32は、公知のプリント配線技術により支持基板35上に形成された導体箔がパターニングされることにより形成される。導電路32を構成する金属としては、銅、銅合金等、銅を含む金属を用いることができる。本実施形態では銅箔によって導電路32が形成されている。
【0038】
支持基板35は絶縁性の合成樹脂製のフィルムまたはシートにより形成される。支持基板35を構成する合成樹脂としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリアミド等の公知の合成樹脂を適宜に選択できる。
【0039】
導電路32の端部にはランド34が形成されている。ランド34は導電路32の一部を構成している。ランド34は上方から見て四角形状をなしている。回路基板30は配線モジュール20から導出されて、図示しないECU(Electronic Control Unit)に接続される。ランド34の周囲のカバーレイ層が剥離されることにより、ランド34はカバーレイ層から露出するようになっている。
【0040】
[補強板40]
図2に示されるように、補強板40は、前後方向に細長く延びて形成されている。補強板40の左右方向の幅寸法は、回路基板30の左右方向の幅寸法よりも大きく形成されている。補強板40の上面には回路基板30が取り付けられている。補強板40と回路基板30とを固定する手段は特に限定されず、例えば、接着剤によって接着されていてもよく、ネジ、クリップ等の別部材によって固定されていてもよく、熱溶着によって固定されていてもよい。
【0041】
補強板40の右側縁には右方に突出する複数の離隔部41が間隔を空けて形成されている。離隔部41は、バスバー21が回路基板30に接続された状態で、バスバー21の前方と、後方に位置するようになっている。これにより、前後方向について隣り合うバスバー21同士が離隔部41によって隔てられるようになっている。
【0042】
補強板40の左側縁には、左方に突出する複数の突出部42が前後方向に間隔を空けて形成されている。配線モジュール20が複数の蓄電素子11に取り付けられた状態で、突出部42は、隣り合う蓄電素子11の間に位置するようになっている。
【0043】
[中継部材50]
図3および
図4に示されるように、中継部材50は、金属板材を所定の形状にプレス加工することにより形成される。中継部材50を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金等、必要に応じて任意の金属を選択できる。本実施形態においては、中継部材50はニッケルまたはニッケル合金からなり、ニッケルを含む。
【0044】
中継部材50の表面には金属からなるメッキ層が形成されていてもよい。メッキ層を構成する金属としては、スズ、ハンダ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属を選択できる。
【0045】
中継部材50は、バスバー21に接続されるバスバー接続部54と、回路基板30のランド34に接続される基板接続部51と、バスバー接続部54と基板接続部51とをつなぐ連結部52と、を有する。
【0046】
図5に示されるように、本実施形態にかかるバスバー接続部54は上方から見て略四角形状をなしている。バスバー接続部54の形状は限定されず、円形状、長円形状等、任意の形状とすることができる。バスバー接続部54とバスバーとは、半田付け、溶接等の公知の手法により接続されている。本実施形態においては、バスバー接続部54とバスバーとはレーザー溶接により溶接されている。バスバー接続部54にはレーザー溶接により形成された溶接痕25が上方から見て円形状に形成されている(
図3参照)。溶接痕25の形状は限定されず、直線状でもよい。
【0047】
図3および
図4に示されるように、本実施形態にかかる基板接続部51は上方から見て略四角形状をなしており、ランド34よりもやや小さく形成されている。基板接続部51とランド34とは、半田付けにより接続されている。
【0048】
図5に示されるように、バスバー接続部54と、基板接続部51とは、連結部52によりつながれている。連結部52は、複数の蓄電素子11が並ぶ方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に延びて形成されている。
【0049】
図5に示されるように、連結部52は、
基板接続部51の前端縁から右方に延出された前第1変形部55A(第1変形部の一例)と、
基板接続部51の後端縁から右方に延出された後第1変形部55B(第1変形部の一例)と、前第1変形部55Aの右端部と後第1変形部55Bの右端部とをつなぐ中間板部56と、中間板部56と
バスバー接続部54とをつなぐ第2変形部57と、を有する。
【0050】
図3に示されるように、前第1変形部55Aの板面と、後第1変形部55Bの板面は、前後方向と交差している。左右方向について、前第1変形部55Aの長さ寸法と、後第1変形部55Bの長さ寸法とは同じに設定されている。上下方向について、前第1変形部55Aの高さ寸法と、後第1変形部55Bの高さ寸法とは同じに設定されている。前第1変形部55Aと、後第1変形部55Bとは、
図3において矢線Aで示される前後方向について撓み変形可能となっている。
【0051】
中間板部56は、前第1変形部55Aの右端部の下端縁と、後第1変形部55Bの右端部の下端縁とつながっている。中間板部56は上方から見て略四角形状をなしている。中間板部56の形状は、バスバー接続部54の形状を略同じに設定されている。
【0052】
中間板部56とバスバー接続部54とをつなぐ第2変形部57は、左右方向(複数の蓄電素子11の並ぶ方向と交差する方向)に延びて形成されている。
図6および
図7に示されるように、第2変形部57は、上方に凸状に屈曲する第2屈曲部58を有する。この第2屈曲部58により、第2変形部57は、左右方向(並び方向と交差する方向の一例)について変形可能になっているとともに、上下方向(並び方向と交差する方向の一例)についても変形可能になっている。なお、第2屈曲部58の突出方向は限定されず、下方に凸状に屈曲する形状としてもよい。
【0053】
前後方向について、第2変形部57の幅寸法は、中間板部56の幅寸法およびバスバー接続部54の幅寸法よりも小さく設定されている。これにより第2変形部57は比較的に変形しやすくなっている。
【0054】
[実施形態の製造工程]
続いて、本実施形態にかかる蓄電モジュール10および配線モジュール20の製造工程の一例について説明される。蓄電モジュール10および配線モジュール20の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0055】
回路基板30にプリント配線技術により、導電路32が形成される。回路基板30の下面に補強板40が接着される。
【0056】
中継部材50の基板接続部51が、回路基板30のランド34に載置された状態で、ランド34に半田付けされる。基板接続部51とランド34とは、公知のリフロー半田付けによって接続されてもよく、また、はんだごて等の治具によって半田付けされてもよい。
【0057】
複数のバスバー21が、回路基板30の側方に、前後方向に並べられる。中継部材50のバスバー接続部54がバスバー21に載置される。バスバー接続部54とバスバー21とがレーザー溶接される。これにより配線モジュール20が完成する。
【0058】
複数の蓄電素子11が前後方向に沿って並べられることにより形成された蓄電素子群12の上面に、配線モジュール20が載置される。バスバー21と、蓄電素子11の電極端子13とがレーザー溶接される。これにより蓄電モジュール10が完成する。
【0059】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、電極端子13を有する複数の蓄電素子11が並べられた蓄電素子群12に取り付けられる配線モジュール20であって、電極端子13に接続されるバスバー21と、導電路32が形成された回路基板30と、バスバー21と回路基板30とを接続する中継部材50と、を備え、中継部材50は、バスバー21に接続されるバスバー接続部54と、回路基板30の導電路32に形成されたランド34に接続される基板接続部51と、を有し、中継部材50は、バスバー接続部54と基板接続部51とをつなぐとともに左右方向(複数の蓄電素子11の並び方向と交差する方向)に延びる板状の連結部52を有し、連結部52は左右方向に変形可能な前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bを有し、前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bの板面は並び方向と交差している。
【0060】
また、本実施形態は、配線モジュール20と、電極端子13を有する複数の蓄電素子11が並べられた蓄電素子群12と、を備えた蓄電モジュール10であって、導電路32のランド34と基板接続部51とがはんだ付けされており、電極端子13とバスバー接続部54とが溶接されている。
【0061】
本実施形態によれば、蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー21と、回路基板30のランド34とが、
図3において矢線Aで示される前後方向(複数の蓄電素子11の並ぶ方向)について位置ずれした場合に、前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bが前後方向に変形することにより、バスバー21とバスバー接続部54との接続部分、およびランド34と基板接続部51との接続部分に荷重が作用することが抑制される。これにより、バスバー21と回路基板30との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0062】
蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー21と、回路基板30のランド34との間に、複数の蓄電素子11の並ぶ方向(前後方向)についての位置ずれが生じる原因としては、例えば、蓄電素子11が、充電時または放電時に、膨張または収縮することが挙げられる。また、各蓄電素子11の製造公差および組み付け公差が、複数の蓄電素子11を並べることにより累積されることが挙げられる。また、車両に搭載された場合に振動により位置ずれが生じることが挙げられる。なお、位置ずれの原因は上記のもの限定されない。
【0063】
連結部52に前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bのように比較的に変形しやすい部分を形成すると、連結部52の強度が低下することが懸念される。すると、異物との衝突等により、連結部52が意図されない時期に変形したり、意図されない方向に変形したりすることが懸念される。そこで、本実施形態は、前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bの板面が前後方向と交差する構成とされている。これにより、前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bは、複数の蓄電素子11が並ぶ方向と交差する方向(左右方向および上下方向)には変形しにくくなっている。これにより、連結部52に意図されない変形が生じることを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、連結部52は、前第1変形部55Aと後第1変形部55Bを有している。このように連結部52が前第1変形部55Aと後第1変形部55Bという2つの第1変形部を有することにより、連結部52が1つの第1変形部を有する場合よりも、連結部52の強度を向上させることができる。この結果、連結部52に形成される第1変形部の個数を調節することにより、第1変形部の変形のしやすさと、強度との調節を図ることが容易にできる。
【0065】
また、本実施形態によれば、連結部52は、複数の蓄電素子11の並び方向と交差する方向(上下方向および左右方向)に変形可能な第2変形部57をさらに有する。
【0066】
第2変形部57が、複数の蓄電素子11の並び方向と交差する方向に変形することにより、蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー21と、回路基板30のランド34とが、
図4に矢線Bで示される左右方向および矢線Cで示される上下方向(複数の蓄電素子11の並ぶ方向と交差する方向)について位置ずれした場合でも、バスバー21とバスバー接続部54との接続部分、およびランド34と基板接続部51との接続部分に荷重が作用することが抑制される。これにより、バスバー21と回路基板30との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0067】
本実施形態によれば、第2変形部57には、第2変形部57の板面に交差する方向(上方)に凸状に屈曲する第2屈曲部58が形成されている。
【0068】
本実施形態によれば、第2変形部57に第2屈曲部58が形成されることにより、第2変形部57は第2屈曲部58で変形しやすくなっている。これにより、蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー21と、回路基板30のランド34とが、複数の蓄電素子11の並ぶ方向と交差する方向(上下方向および左右方向)についての位置ずれした場合に、第2変形部57が容易に変形することができる。この結果、バスバー21とバスバー接続部54との接続部分、およびランド34と基板接続部51との接続部分に荷重が作用することが抑制されるので、バスバー21と回路基板30との電気的な接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0069】
本実施形態によれば、バスバー21はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、中継部材50はニッケルまたはニッケル合金からなり、バスバー21と中継部材50とは溶接されている。
【0070】
バスバー21をアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成した場合、中継部材50の材料によっては、バスバー21と中継部材50とを溶接すると、比較的にもろい合金が、バスバー21と中継部材50との境界部分に形成される場合がある。本実施形態によれば、中継部材50がニッケルまたはニッケル合金からなり、バスバー21がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。このため、中継部材50のバスバー接続部54と、バスバー21との間に安定性の高い合金が形成されるので、バスバー21と中継部材50とを強固に溶接できる。
【0071】
本実施形態によれば、回路基板30はフレキシブルプリント基板である。これにより、蓄電素子11の電圧を検知するための回路を複数の電線で形成する場合に比べて配線密度を向上させることができるので、配線モジュール20を小型化できる。
【0072】
本実施形態にかかる配線モジュール20は車両1に搭載されて用いられる車両用の配線モジュール20である。車両1からの振動が配線モジュール20に伝わった場合でも、バスバーと回路基板との電気的な接続信頼性を向上させることができる。このため、本実施形態にかかる配線モジュール20は、走行時に振動が発生する車両1に好適に用いることができる。
【0073】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2が
図8から
図9を参照しつつ説明される。
図8および
図9には、本実施形態にかかる中継部材60が示される。中継部材60は連結部63を有する。前第1変形部61Aには、左右方向の中央付近に、前方に凸状に屈曲した前第1屈曲部62Aが形成されている。後第1変形部61Bには、左右方向の中央付近であって、前第1屈曲部62Aと対応する位置に、後方に凸状に屈曲した後第1屈曲部62Bが形成されている。前第1屈曲部62Aおよび後第1屈曲部62Bは、上方から見て略半円弧状に形成されている。本実施形態においては、第2変形部57には第2屈曲部が形成されていない。
【0074】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
本実施形態によれば、前第1変形部55Aに前第1屈曲部62Aが形成されることにより、前第1変形部55Aは前第1屈曲部62Aで変形しやすくなっている。同様に、後第1変形部55Bに後第1屈曲部62Bが形成されることにより、後第1変形部55Bは後第1屈曲部62Bで変形しやすくなっている。これにより、蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー21と、回路基板30のランド34とが、複数の蓄電素子11の並ぶ方向(前後方向)について位置ずれした場合に、前第1変形部55Aおよび後第1変形部55Bが容易に変形することができる。この結果、バスバー21とバスバー接続部54との接続部分、およびランド34と基板接続部51との接続部分に荷重が作用することが抑制されるので、バスバー21と回路基板30との電気的な接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0076】
<実施形態3>
続いて、本開示の実施形態3が
図10から
図11を参照しつつ説明される。
図10および
図11には、本実施形態にかかる中継部材が70示される。中継部材70は連結部71を有する。連結部71は、基板接続部51の後端縁から右方に延びる後第1変形部55Bを有する。本実施形態に係る中継部材70には、前第1変形部が形成されていない点で、実施形態1と異なる。上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0077】
本実施形態によれば、中継部材70は1つの後第1変形部55Bを有するので、複数の第1変形部を有する場合に比べて、中継部材70を軽量化できる。これにより、配線モジュール20を全体として軽量化できる。
【0078】
<他の実施形態>
(1)第2変形部57は省略してもよい。
【0079】
(2)1つの中継部材に、第1変形部が3つ以上形成されていてもよい。
【0080】
(3)電極端子13とバスバー21とはボルト締結されてもよい。
【0081】
(4)導電路32が銅箔で、バスバー21が銅または銅合金で、中継部材が銅または銅合金で形成される構成としてもよい。
【0082】
(5)回路基板は、絶縁性の基板にプリント配線技術によって導電路が形成されたプリント配線基板でもよい。また、回路基板は、絶縁性のベースシートに金属箔による導電路が貼着された、いわゆるフレキシブルフラットケーブルでもよい。
【0083】
(6)蓄電素子11は、二次電池でもよく、キャパシタでもよい。
【0084】
(7)バスバー21は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面にニッケルまたはニッケル合金からなるメッキ層が形成される構成としてもよい。
【0085】
(8)実施形態1においては、中継部材50はニッケルまたはニッケル合金からなる構成としたが、これに限られず、中継部材50を構成する金属の表面がニッケルまたはスズでメッキされていてもよい。銅またはアルミニウム等の金属の表面をニッケルやスズなどでめっき処理した金属材料は、溶融状態の半田との濡れ性がよいので、回路基板30のランド34と中継部材50の基板接続部51とを強固に接続できる。
【0086】
(9)バスバー21は、1つ、または3つ以上の電極端子13に接続される構成としてもよい。
【0087】
(10)蓄電素子11は二次電池でもよく、また、キャパシタでもよい。
【0088】
(11)実施形態2においては、前第1屈曲部62Aおよび後第1屈曲部62Bは上方から見て略半円弧状に形成されていたが、これに限られず、上方から見て直線的に折れ曲がった形状に形成されていてもよい。
【0089】
(12)実施形態2においては、前第1屈曲部62Aは前方に凸状に形成され、後第1屈曲部62Bは後方に凸状に形成される構成としたが、これに限られず、前第1屈曲部は前方に凹状に形成され、後第1屈曲部は後方に凹状に形成される構成としてもよく、また、前第1屈曲部および後第1屈曲部の双方が前方に凸状に形成されていてもよく、また、前第1屈曲部および後第1屈曲部の双方が前方に凹状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1: 車両
2: 蓄電パック
3: PCU
4: ワイヤーハーネス
10: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
12: 蓄電素子群
13: 電極端子
20: 配線モジュール
21: バスバー
24: 溶接痕
25: 溶接痕
30: 回路基板
32: 導電路
34: ランド
35: 支持基板
40: 補強板
41: 離隔部
42: 突出部
50,60,70: 中継部材
51: 基板接続部
52,63,71: 連結部
54: バスバー接続部
55A,61A: 前第1変形部
55B,61B: 後第1変形部
56: 中間板部
57: 第2変形部
58: 第2屈曲部
62A: 前第1屈曲部
62B: 後第1屈曲部