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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】スタッドピン及びそれを備えたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/16 20060101AFI20230322BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B60C11/16 A
B60C11/03 200A
B60C11/03 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546313
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029267
(87)【国際公開番号】W WO2022030610
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020133600
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】芝井 孝志
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/148262(WO,A1)
【文献】特開2016-215727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/16
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド部に埋設されるボディ部と、該ボディ部の先端側から突出するチップ部と、前記ボディ部の基端側に配置されたフランジ部とを有するスタッドピンにおいて、
前記チップ部はその先端面に溝部を有しており、前記ボディ部の中心軸方向に見たときの前記チップ部の総面積Sxと前記溝部の面積Syとが0.20≦Sy/Sx≦0.50の関係を満足すると共に、
前記チップ部の前記ボディ部からの突出高さHtと前記溝部の深さHgとが0.5≦Hg/Htの関係を満足することを特徴とするスタッドピン。
【請求項2】
前記チップ部は前記ボディ部の中心軸方向に見たときの形状が長手方向を有し、前記溝部は前記長手方向と直交する短手方向に延在して両端が前記チップ部の側面に開口していることを特徴とする請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項3】
前記チップ部は前記ボディ部の中心軸方向に見たときの形状が長手方向を有し、前記溝部は前記長手方向と直交する短手方向に延在して少なくとも一端が前記チップ部内で終端し、前記溝部の前記少なくとも一端の各々における前記チップ部の厚さWeと前記チップ部の短手方向の最大幅WzとがWe/Wz≦0.10の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項4】
前記スタッドピンの高さHsと前記溝部の深さHgとがHg/Hs≦0.15の関係を満足することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のスタッドピン。
【請求項5】
前記ボディ部の中心軸と直交する平面における断面積であって前記ボディ部の最大幅位置での断面積Saと前記ボディ部の中心軸方向に見たときの前記チップ部の総面積Sxとが0.10≦Sx/Sa≦0.20の関係を満足することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のスタッドピン。
【請求項6】
前記チップ部は、前記溝部と直交する方向に突出する凸部と、前記溝部の両端と前記凸部との間で前記ボディ部の中心軸に向かって窪んだ凹部とを有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のスタッドピン。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載されたスタッドピンがトレッド部に配設されていることを特徴とするタイヤ。
【請求項8】
前記スタッドピンは、前記溝部の長手方向がタイヤ周方向に対してなす角度が0°~10°の範囲にある複数の第1スタッドピンと、前記溝部の長手方向がタイヤ周方向に対してなす角度が前記第1スタッドピンよりも大きい複数の第2スタッドピンとを含み、前記第1スタッドピンに対して前記第2スタッドピンがタイヤ周方向に沿って点在していることを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部を接地幅内でタイヤ幅方向に3等分したときに形成される第1領域、第2領域及び第3領域の各々に少なくとも1つの第1スタッドピン及び少なくとも1つの第2スタッドピンが配置されていることを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部においてタイヤ周方向に最も近接する一対の第2スタッドピンのタイヤ周方向の間隔が前記トレッド部の接地長の1.0%~100.0%の範囲にあることを特徴とする請求項又はに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第2スタッドピンの平均突出量Pxと前記第1スタッドピンの平均突出量PyとがPx>Pyの関係を満足することを特徴とする請求項10のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第2スタッドピンの平均突出量Pxと前記第1スタッドピンの平均突出量Pyとが1.05≦Px/Pyの関係を満足することを特徴とする請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
回転方向が指定されたタイヤであって、前記トレッド部に、タイヤ幅方向の一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ前記回転方向に向かって傾斜する複数本の第1傾斜溝と、タイヤ幅方向の他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ前記回転方向に向かって傾斜する複数本の第2傾斜溝とを有することを特徴とする請求項12のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドピン及びそれを備えたタイヤに関し、更に詳しくは、軽量化を図ると共に、氷上性能の改善を可能にしたスタッドピン及びそれを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路面上での走行性能を改善した空気入りタイヤにおいて、トレッド部にスタッドピンが打ち込まれたスタッドタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。スタッドピンは、タイヤのトレッド部に埋設されるボディ部と、該ボディ部の先端側から突出していて路面と接触するチップ部と、ボディ部の基端側に配置されたフランジ部とを有している。そして、スタッドタイヤの走行時には、主としてスタッドピンのチップ部が氷路面と接触し、そのエッジ効果を発揮することにより、スタッドレスタイヤに比べて優れた氷上性能を発揮することができる。
【0003】
上述のように構成されるスタッドタイヤにおいて、スタッドピンの構造を工夫することにより、氷上性能を更に改善することが求められている。それと同時に、スタッドピンの軽量化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2018/078941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軽量化を図ると共に、氷上性能を改善することを可能にしたスタッドピン及びそれを備えたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のスタッドピンは、タイヤのトレッド部に埋設されるボディ部と、該ボディ部の先端側から突出するチップ部と、前記ボディ部の基端側に配置されたフランジ部とを有するスタッドピンにおいて、
前記チップ部はその先端面に溝部を有しており、前記ボディ部の中心軸方向に見たときの前記チップ部の総面積Sxと前記溝部の面積Syとが0.20≦Sy/Sx≦0.50の関係を満足すると共に、
前記チップ部の前記ボディ部からの突出高さHtと前記溝部の深さHgとが0.5≦Hg/Htの関係を満足することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤは、上述のスタッドピンがトレッド部に配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、スタッドピンのチップ部はその先端面に溝部を有しており、ボディ部の中心軸方向に見たときのチップ部の総面積Sxと溝部の面積Syとが0.20≦Sy/Sx≦0.50の関係を満足するので、チップ部の強度低下を抑制しながら、溝部の形成によりスタッドピンの軽量化を図ると共に、溝部に付随するエッジに基づいて氷上でのハンドリング性能及び制動性能に代表される氷上性能を改善することができる。また、チップ部の先端面に溝部を設けることにより、路面の損傷を低減する効果も期待することができる。
【0009】
本発明において、チップ部はボディ部の中心軸方向に見たときの形状が長手方向を有し、溝部は長手方向と直交する短手方向に延在して両端がチップ部の側面に開口していることが好ましい。この場合、短手方向のエッジが増加するため氷上性能を効果的に改善することができる。特に、チップ部の長手方向がタイヤ幅方向となるようにスタッドピンを設置した場合、チップ部がタイヤ幅方向に沿って延在することで氷上での制動性能が良化し、溝部がタイヤ周方向に沿って延在することで氷上でのハンドリング性能が良化する。
【0010】
或いは、チップ部はボディ部の中心軸方向に見たときの形状が長手方向を有し、溝部は長手方向と直交する短手方向に延在して少なくとも一端が前記チップ部内で終端し、溝部の少なくとも一端の各々におけるチップ部の厚さWeとチップ部の短手方向の最大幅WzとがWe/Wz≦0.10の関係を満足することが好ましい。この場合も、短手方向のエッジが増加するため氷上性能を効果的に改善することができる。特に、チップ部の長手方向がタイヤ幅方向となるようにスタッドピンを設置した場合、チップ部がタイヤ幅方向に沿って延在することで氷上での制動性能が良化し、溝部がタイヤ周方向に沿って延在することで氷上でのハンドリング性能が良化する点は前述の形態と同様であるが、溝部の少なくとも一端がチップ部内で終端することにより、チップ部のタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するため、氷上での制動性能の改善効果を高めることができる。
【0011】
チップ部のボディ部からの突出高さHtと溝部の深さHgとは0.5≦Hg/Htの関係を満足することが好ましい。これにより、軽量化の効果と氷上性能の改善効果を十分に得ることができる。
【0012】
スタッドピンの高さHsと溝部の深さHgとはHg/Hs≦0.15の関係を満足することが好ましい。これにより、チップ部の耐久性の低下を抑制しつつ、軽量化の効果と氷上性能の改善効果を十分に得ることができる。
【0013】
ボディ部の中心軸と直交する平面における断面積であってボディ部の最大幅位置での断面積Saとボディ部の中心軸方向に見たときのチップ部の総面積Sxとは0.10≦Sx/Sa≦0.20の関係を満足することが好ましい。これにより、チップ部の耐久性の低下を抑制しつつ、軽量化の効果を十分に得ることができる。また、路面の損傷を低減する効果も向上する。
【0014】
チップ部は、溝部と直交する方向に突出する凸部と、溝部の両端と凸部との間でボディ部の中心軸に向かって窪んだ凹部とを有することが好ましい。このようにチップ部の外周面に凸部と凹部を設けることにより、縦方向及び横方向のエッジ量が多くなるため、氷上での旋回性能や制動性能を改善することができる。
【0015】
上述のように構成されるスタッドピンがトレッド部に配設されたタイヤによれば、従来に比べて、軽量化を図ると共に、氷上性能を改善することができる。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、スタッドピンは、溝部の長手方向がタイヤ周方向に対してなす角度が0°~10°の範囲にある複数の第1スタッドピンと、溝部の長手方向がタイヤ周方向に対してなす角度が第1スタッドピンよりも大きい複数の第2スタッドピンとを含み、第1スタッドピンに対して第2スタッドピンがタイヤ周方向に沿って点在していることが好ましい。このように第1スタッドピンと第2スタッドピンとを混在させることにより、氷上でのハンドリング性能を飛躍的に改善することができる。
【0017】
トレッド部を接地幅内でタイヤ幅方向に3等分したときに形成される第1領域、第2領域及び第3領域の各々には少なくとも1つの第1スタッドピン及び少なくとも1つの第2スタッドピンが配置されていることが好ましい。この場合、トレッド部の接地領域の全域にわたって第1スタッドピン及び第2スタッドピンが存在するので、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。
【0018】
トレッド部においてタイヤ周方向に最も近接する一対の第2スタッドピンのタイヤ周方向の間隔はトレッド部の接地長の1.0%~100.0%の範囲にあることが好ましい。この場合、接地領域内に少なくとも1つの第2スタッドピンが配置されることになるので、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。また、接地領域内に第1スタッドピン及び第2スタッドピンが混在することにより、乾燥路面における騒音(ピンノイズ)を抑制する効果も期待することができる。
【0019】
第2スタッドピンの平均突出量Pxと第1スタッドピンの平均突出量PyとはPx>Pyの関係を満足することが好ましい。これにより、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。特に、乾燥路面の走行時において、第1スタッドピンに由来する振動周波数と第2スタッドピンに由来する振動周波数とが相違するので、第1スタッドピンの中に点在する第2スタッドピンの平均突出量Pxを相対的に大きくすることで、ピンノイズの周波数の分散効果を高めて乾燥路面での騒音性能を改善する一方で、第2スタッドピンによるエッジ効果を高めて氷上でのハンドリング性能を効果的に改善することができる。
【0020】
第2スタッドピンの平均突出量Pxと第1スタッドピンの平均突出量Pyとは1.05≦Px/Pyの関係を満足することが好ましい。上記関係を満足することにより、乾燥路面での騒音性能と氷上でのハンドリング性能をバランス良く改善することができる。
【0021】
回転方向が指定されたタイヤにおいては、トレッド部に、タイヤ幅方向の一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向に向かって傾斜する複数本の第1傾斜溝と、タイヤ幅方向の他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向に向かって傾斜する複数本の第2傾斜溝とを有することが好ましい。このようなV字基調のトレッドパターンは、第1傾斜溝及び第2傾斜溝に沿って形成される陸部にスタッドピンが配設されるので、スタッドピンがタイヤ周方向に重なり難いという利点があり、スタッドピンに基づいて優れた氷上性能を発揮することができる。
【0022】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであっても良い。空気入りタイヤの場合、その内部には空気、窒素等の不活性ガス又はその他の気体を充填することができる。
【0023】
本発明において、「接地幅」とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧(空気入りタイヤの場合)を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに形成される接地領域のタイヤ軸方向の最大幅である。「接地長」とは、接地領域のタイヤ周方向の最大長さである。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には250kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の70%に相当する荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の実施形態からなるスタッドピンを示す斜視図である。
図2図2図1のスタッドピンを示す平面図である。
図3図3図1のスタッドピンを示す側面図である。
図4図4は本発明の他の実施形態からなるスタッドピンを示す平面図である。
図5図5(a)~(f)はそれぞれスタッドピンのチップ部の変形例を示す平面図である。
図6図6は(a)~(d)はそれぞれスタッドピンのチップ部の更なる変形例を示す平面図である。
図7図7は本発明の空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。
図8図8図7に示す空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
図9図9は空気入りタイヤのトレッド部に配設される第1スタッドピン及び第2スタッドピンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3は本発明の実施形態からなるスタッドピンを示すものである。
【0026】
図1図3に示すように、本実施形態のスタッドピンPは、タイヤのトレッド部に埋設されるボディ部10と、該ボディ部10の先端側から突出していて路面と接触するチップ部11と、ボディ部10の基端側に配置されたフランジ部12を備えている。ボディ部10は、その中心軸Xに沿って延長し、その延長方向の中腹部分において最も膨らんだ構造を有している。ボディ部10の外周面には、ボディ部10の中心軸Xに向かって湾曲しながら窪んだ一対の窪み部13,13が形成されている。また、ボディ部10の先端側には複数の傾斜面14が形成されている。一方、チップ部11の先端面には溝部15が形成されている。チップ部11の先端面において溝部15には面取り加工が施されているが、このような面取り加工は任意である。チップ部11の先端面(溝部以外の部分)はボディ部10の中心軸Xに対して直交する平面であるが、チップ部11の先端側に向かって膨らんだ湾曲面であっても良く、或いは、これら平面と湾曲面との組み合わせであっても良い。また、ボディ部10及びフランジ部12は同一の金属材料から一体的に成形されている。チップ部11を構成する金属材料はボディ部10及びフランジ部12を構成する金属材料よりも高硬度であり、チップ部11はボディ部10に対して一体的に加工されている。
【0027】
上記スタッドピンPにおいて、ボディ部10の中心軸Xの方向に見たときのチップ部11の総面積Sxと溝部15の面積Syとが0.20≦Sy/Sx≦0.50の関係を満足している。図2において、チップ部11の総面積Sxはチップ部11の輪郭線により囲まれた領域の面積に相当し、溝部15の面積Syは溝部15(面取り部を含む)の輪郭線により囲まれた領域の面積に相当する。
【0028】
このようにスタッドピンPにおいて、チップ部11はその先端面に溝部15を有しており、ボディ部10の中心軸Xの方向に見たときのチップ部11の総面積Sxと溝部15の面積Syとが0.20≦Sy/Sx≦0.50の関係を満足するので、チップ部11の強度低下を抑制しながら、溝部15の形成によりスタッドピンPの軽量化を図ると共に、溝部15に付随するエッジに基づいて氷上性能(特に、氷上でのハンドリング性能や制動性能)を改善することができる。また、チップ部11の先端面に溝部15を設けることにより、路面の損傷を低減する効果も期待することができる。
【0029】
ここで、Sy/Sxの値が0.20よりも小さいと氷上でのハンドリング性能や軽量化の改善効果が不十分になり、逆に0.50よりも大きいとチップ部11の強度低下によりスタッドピンPの耐久性が不十分になる。特に、ボディ部10の中心軸Xの方向に見たときのチップ部11の総面積Sxと溝部15の面積Syとは0.25≦Sy/Sx≦0.45の関係を満足することが望ましい。また、ボディ部10の中心軸Xの方向に見たときのチップ部11の総面積Sxは2.0mm2~5.5mm2の範囲にあると良い。
【0030】
スタッドピンPにおいて、チップ部11はボディ部10の中心軸Xの方向に見たときの形状が長手方向Lを有し、溝部15は長手方向Lと直交する短手方向Sに延在している。そして、溝部15の両端はチップ部11の側面に開口している。この場合、チップ部11にいて短手方向Sに沿って延在するエッジが増加するため氷上性能を効果的に改善することができる。特に、チップ部11の長手方向Lがタイヤ幅方向となるようにスタッドピンPをタイヤのトレッド部に設置した場合、チップ部11がタイヤ幅方向に沿って延在することで氷上での制動性能が良化し、溝部15がタイヤ周方向に沿って延在することで氷上でのハンドリング性能が良化する。
【0031】
スタッドピンPにおいて、溝部15の溝幅Wgは0.5mm~1.0mmの範囲にあると良い。また、溝部15の溝幅Wgはチップ部11の長手方向Lにおける最大幅Wtの15%~45%の範囲にあると良い。溝部15の溝幅Wgを適切に設定することにより、氷上性能の改善効果と軽量化の効果を十分に得ることができる。
【0032】
スタッドピンPにおいて、チップ部11のボディ部10からの突出高さHtと溝部15の深さHgとは0.5≦Hg/Htの関係を満足していると良い。これにより、軽量化の効果と氷上性能の改善効果を十分に得ることができる。Hg/Htの値が0.5よりも小さいと軽量化の効果と氷上性能の改善効果が低下する。なお、チップ部11の耐久性の観点から、チップ部11のボディ部10からの突出高さHtと溝部15の深さHgとはHg/Ht≦1.0の関係を満足することが好ましく、更には、Hg/Ht≦0.85の関係を満足することが好ましい。
【0033】
スタッドピンPにおいて、スタッドピンPの高さHsと溝部15の深さHgとはHg/Hs≦0.15の関係を満足していると良い。これにより、チップ部11の耐久性の低下を抑制しつつ、軽量化の効果と氷上性能の改善効果を十分に得ることができる。つまり、溝部15を有するチップ部11は溝部がない場合に比べて耐久性が劣るので、Hg/Hsの値を0.15以下とすることで、耐久性の低下を回避することができる。また、氷上性能を改善する観点から、チップ部11の突出高さHt及び溝部15の深さHgをある程度確保することが必要であるので、0.05≦Ht/Hs≦0.15の関係を併せて満足することが望ましい。
【0034】
スタッドピンPにおいて、ボディ部10の中心軸Xと直交する平面における断面積であってボディ部10の最大幅位置での断面積Saとボディ部10の中心軸Xの方向に見たときのチップ部11の総面積Sxとは0.10≦Sx/Sa≦0.20の関係を満足していると良い。ボディ部10の最大幅位置とは、ボディ部10において中心軸Xと直交する方向の寸法が最大となる位置であり、図3においては、平面Aの位置である。Sx/Saを上記関係に設定することにより、チップ部11の耐久性の低下を抑制しつつ、軽量化の効果を十分に得ることができる。また、上記関係により、路面の損傷を低減する効果を改善することができる。
【0035】
ここで、Sx/Saの値が0.10よりも小さくなり、チップ部11の総面積Sxに対してボディ部10の最大幅位置での断面積Saが過度に大きくなると、軽量化の改善効果が低下する。一方、Sx/Saの値が0.20よりも大きくなり、チップ部11の総面積Sxに対してボディ部10の最大幅位置での断面積Saが過度に小さくなると、高負荷時にチップ部11の負担分担率が急激に増加し、チップ部11が折れ易くなる。
【0036】
図2において、スタッドピンPのチップ部11は、溝部15と直交する方向(長手方向L)に突出する一対の凸部16と、溝部15の両端と各凸部16との間でボディ部10の中心軸Xに向かって窪んだ凹部17とを有している。このようにチップ部11の外周面に凸部16と凹部17を設けた特異な構造を採用することにより、縦方向及び横方向のエッジ量が多くなるため、氷上での旋回性能や制動性能を改善することができる。このような構造はエッジ量の増大のみならず耐久性の観点からも好ましい。
【0037】
図4は本発明の他の実施形態からなるスタッドピンを示すものである。図4において、図1図3と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。本実施形態では、チップ部11はボディ部10の中心軸Xの方向に見たときの形状が長手方向Lを有し、溝部15は長手方向Lと直交する短手方向Sに延在している。そして、溝部15の少なくとも一端(図4では、両端)はチップ部11の側面に開口しておらずチップ部11内で終端している。更に、溝部15の少なくとも一端の各々におけるチップ部11の厚さWeとチップ部11の短手方向Sの最大幅WzとがWe/Wz≦0.10の関係を満足している。
【0038】
このように溝部15の少なくとも一端がチップ部11の側面に開口していない場合も、短手方向Sのエッジが増加するため氷上性能を効果的に改善することができる。特に、チップ部11の長手方向Lがタイヤ幅方向となるようにスタッドピンPをタイヤのトレッド部に設置した場合、チップ部11がタイヤ幅方向に沿って延在することで氷上での制動性能が良化し、溝部15がタイヤ周方向に沿って延在することで氷上でのハンドリング性能が良化する点は図2の形態と同様であるが、溝部15の少なくとも一端がチップ部11内で終端することにより、チップ部11のタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するため、氷上での制動性能の改善効果を高めることができる。
【0039】
ここで、We/Wzの値が0.10よりも大きいと、軽量化の効果が低下するばかりでなく、チップ部11の短手方向Sのエッジ量が減少するため氷上性能の改善効果が低下することになる。
【0040】
図5(a)~(f)はそれぞれスタッドピンのチップ部の変形例を示し、図6(a)~(d)はそれぞれスタッドピンのチップ部の更なる変形例を示すものである。図5(a)~(f)及び図6(a)~(d)において、チップ部11はボディ部10の中心軸Xの方向に見たときの形状が長手方向Lを有し、溝部15は長手方向Lと直交する短手方向Sに延在している。溝部15は、両端がチップ部11の側面に開口していても良く、一端のみがチップ部11内で終端していても良く、両端がチップ部11内で終端していても良い。チップ部11は、図5(a)~(f)では菱形を基調とする平面視形状を有し、図6(a)~(d)では扇形を基調とする平面視形状を有しているが、これ以外の平面視形状を採用することも可能である。
【0041】
図7は本発明の空気入りタイヤの一例を示し、図8はそのトレッドパターンを示すものである。本実施形態の空気入りタイヤは、回転方向Rが指定されたタイヤである。
【0042】
図7に示すように、空気入りタイヤTは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部21と、該トレッド部21の両側に配置された一対のサイドウォール部22,22と、これらサイドウォール部22のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部23,23とを備えている。
【0043】
一対のビード部23,23間にはカーカス層24が装架されている。このカーカス層24は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部23に配置されたビードコア25の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア25の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー26が配置されている。
【0044】
一方、トレッド部21におけるカーカス層24の外周側には複数層のベルト層27が埋設されている。これらベルト層27はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層27において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層27の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層27の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層28が配置されている。ベルトカバー層28の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0045】
図8に示すように、トレッド部21には、タイヤ幅方向の一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向Rに向かって傾斜する複数本の第1傾斜溝31と、タイヤ幅方向の他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向Rに向かって傾斜する複数本の第2傾斜溝32が形成されている。これら第1傾斜溝31及び第2傾斜溝32はタイヤ周方向に沿って交互に配置され、いずれもタイヤ赤道を横切る位置まで延在している。また、トレッド部21には、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ複数本の第1傾斜溝31を互いに連結する第1縦溝33と、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ複数本の第2傾斜溝32を連結する第2縦溝34が形成されている。これら第1傾斜溝31、第2傾斜溝32、第1縦溝33及び第2縦溝34により、トレッド部21には複数のブロック状陸部35が区画されている。これらブロック状陸部35には、スタッドピンPを植え込むための複数の植え込み穴36が形成されている。スタッドピンPは、そのボディ部10が植え込み穴36に挿入され、チップ部11がトレッド部21から突き出すようにトレッド部21に配設されている。植え込み穴36の内径はスタッドピンPの外径よりも若干小さくなっており、植え込み穴36に植え込まれたスタッドピンPはトレッド部21に対して強固に保持される。
【0046】
上述のように空気入りタイヤTのトレッド部21に所定の構造を有するスタッドピンPを配設することにより、軽量化を図ると共に、氷上性能を改善することが可能となる。特に、トレッド部21に、タイヤ幅方向の一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向Rに向かって傾斜する複数本の第1傾斜溝31と、タイヤ幅方向の他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在しつつ回転方向Rに向かって傾斜する複数本の第2傾斜溝32とを有するV字基調のトレッドパターンでは、第1傾斜溝31及び第2傾斜溝32に沿って形成される陸部35にスタッドピンPが配設されるので、スタッドピンPがタイヤ周方向に重なり難いという利点があり、スタッドピンPに基づいて優れた氷上性能を発揮することができる。
【0047】
なお、図7に示す空気入りタイヤTの補強構造は代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。また、空気入りタイヤTのトレッド部21に形成されるトレッドパターンも特に限定されるものではない。
【0048】
図9は空気入りタイヤのトレッド部に配設される第1スタッドピン及び第2スタッドピンを示すものである。図9において、Tcはタイヤ周方向である。図8のようなトレッド部21に配設される複数のスタッドピンPは、溝部15の長手方向がタイヤ周方向Tcに対してなす角度θが0°~10°の範囲にある複数の第1スタッドピンP1と、溝部15の長手方向がタイヤ周方向Tcに対してなす角度θが第1スタッドピンP1よりも大きい複数の第2スタッドピンP2とを含み、第1スタッドピンP1に対して第2スタッドピンP2がタイヤ周方向に沿って点在していることが好ましい。トレッド部21における第1スタッドピンP1の本数は第2スタッドピンP2の本数よりも多くなっている。このように第1スタッドピンP1と第2スタッドピンP2とを混在させることにより、氷上でのハンドリング性能を飛躍的に改善することができる。なお、このように第1スタッドピンP1と第2スタッドピンP2とを混在させる配置は、スタッドピンPの形状に拘わらず、チップ部11に溝部15を備えたスタッドピンPに適用可能である。
【0049】
第2スタッドピンP2において、溝部15の長手方向がタイヤ周方向Tcに対してなす角度θは好ましくは30°~90°の範囲、より好ましくは45°~85°の範囲に設定される。これにより、第1スタッドピンP1に対する角度差を十分に確保し、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。また、トレッド部21における第2スタッドピンP2の本数は全てのスタッドピンPの本数の10%~45%とすることが好ましい。
【0050】
図8において、Cは空気入りタイヤTを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに形成される接地領域であり、TCWは接地幅である。ここで、トレッド部21を接地幅TCW内でタイヤ幅方向に3等分したときに形成される3つの領域をそれぞれ第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3とする。第1領域R1及び第3領域R3はショルダー領域であり、第2領域R2はセンター領域である。これら第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3の各々には少なくとも1つの第1スタッドピンP1及び少なくとも1つの第2スタッドピンP2が配置されていることが好ましい。この場合、トレッド部21の接地領域Cの全域にわたって第1スタッドピンP1及び第2スタッドピンP2が存在するので、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。
【0051】
また、トレッド部21においてタイヤ周方向に最も近接する一対の第2スタッドピンP2,P2のタイヤ周方向の間隔D2はトレッド部21の接地長Lcの1.0%~100.0%の範囲にあると良い。この場合、接地領域C内に少なくとも1つの第2スタッドピンP2が確実に配置されることになるので、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。同様に、トレッド部21においてタイヤ周方向に最も近接する一対の第1スタッドピンP1,P1のタイヤ周方向の間隔D1もトレッド部21の接地長Lcの1.0%~100.0%の範囲にあると良い。接地領域C内に第1スタッドピンP1及び第2スタッドピンP2が混在することにより、乾燥路面における騒音(ピンノイズ)を抑制する効果も期待することができる。第2スタッドピンP2の間隔D2が接地長Lcの1.0%よりも小さいと、第2スタッドピンP2同士が接近するめピンノイズを悪化させる虞があり、逆に接地長Lcの100.0%よりも大きいと、氷上でのハンドリング性能の改善効果が低下する。
【0052】
第2スタッドピンP2の平均突出量Pxと第1スタッドピンP1の平均突出量PyとはPx>Pyの関係を満足することが好ましい。これにより、氷上でのハンドリング性能の改善効果を高めることができる。特に、乾燥路面の走行時において、第1スタッドピンP1に由来する振動周波数と第2スタッドピンP2に由来する振動周波数とが相違するので、第1スタッドピンP1の中に点在する第2スタッドピンP2の平均突出量Pxを相対的に大きくすることで、ピンノイズの周波数の分散効果を高めて乾燥路面での騒音性能を改善する一方で、第2スタッドピンP2によるエッジ効果を高めて氷上でのハンドリング性能を効果的に改善することができる。第2スタッドピンP2の平均突出量Pxとは、トレッド部21の踏面からの第2スタッドピンP2の突出量の平均値であり、第1スタッドピンP1の平均突出量Pyとは、トレッド部21の踏面からの第1スタッドピンP1の突出量の平均値である。
【0053】
特に、第2スタッドピンP1の平均突出量Pxと第1スタッドピンP2の平均突出量Pyとは1.05≦Px/Pyの関係を満足することが好ましい。上記関係を満足することにより、乾燥路面での騒音性能と氷上でのハンドリング性能をバランス良く改善することができる。但し、Px/Pyの値が1.20を超えると第2スタッドピンP2に由来するピンノイズが増大することになる。そのため、1.05≦Px/Py≦1.20の関係を満足することが望ましい。
【実施例
【0054】
タイヤサイズ205/55R16 94Tである空気入りタイヤにおいて、トレッド部に配設されるスタッドピンの構造だけを異ならせた従来例、比較例1~2及び実施例1~11のタイヤを製作した。なお、本明細書において、実施例1~5は参考例である。
【0055】
従来例、比較例1~2及び実施例1~11において、ボディ部の中心軸方向に見たときのチップ部の形状、チップ部の総面積Sx、溝部の面積Sy、Sy/Sx、チップ部における長手方向の有無、溝部の開口の有無、チップ部の短手方向の最大幅Wz、溝部両端でのチップ部の厚さWe、We/Wz、チップ部の突出高さHt、溝部の深さHg、Hg/Ht、スタッドピンの高さHs、Hg/Hs、Ht/Hs、ボディ部の最大幅位置での断面積Sa、Sx/Sa、第1スタッドピンの溝部の角度θ、第2スタッドピンの溝部の角度θ、第2スタッドピンの割合(%)を表1及び表2のように設定した。
【0056】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、氷上でのハンドリング性能、氷上での制動性能、スタッドピンの質量、スタッドピンの耐久性を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0057】
氷上でのハンドリング性能:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて排気量1.4リットルの前輪駆動車に装着し、車両指定空気圧を充填し、氷雪路面からなるテストコースにおいて、ハンドリング性能について、テストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど氷上でのハンドリング性能が優れていることを意味する。
【0058】
氷上での制動性能:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて排気量1.4リットルの前輪駆動車に装着し、車両指定空気圧を充填し、氷盤路面からなるテストコース(直線路)において、車速25km/hの走行状態からブレーキを掛けて、車速が20km/hから5km/hになるまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど氷上での制動性能が優れていることを意味する。
【0059】
スタッドピンの質量:
各試験タイヤについて、スタッドピンの質量を測定した。評価結果は、計測値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど軽量であることを意味する。
【0060】
スタッドピンの耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて排気量1.4リットルの前輪駆動車に装着し、車両指定空気圧を充填し、乾燥したアスファルト路面からなるテストコースにおいて、所定の走行モードで走行を行った後、スタッドピンのチップ折れ本数を計測した。評価結果は、計測値の逆数を用い、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスタッドピンの耐久性が優れていることを意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1及び表2から判るように、実施例1~11では、従来例との対比において、軽量化を図ると共に、氷上でのハンドリング性能及び制動性能を改善することができた。一方、比較例1では、Sy/Sxの値が小さ過ぎるため軽量化及び氷上性能について改善効果が殆どなかった。また、比較例2では、Sy/Sxの値が大き過ぎるためスタッドピンの耐久性の低下が著しかった。
【符号の説明】
【0064】
10 ボディ部
11 チップ部
12 フランジ部
13 窪み部
14 傾斜面
15 溝部
16 凸部
17 凹部
21 トレッド部
22 サイドウォール部
23 ビード部
P スタッドピン
T 空気入りタイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9