(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】癌を処置するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230322BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230322BHJP
A61K 38/08 20190101ALN20230322BHJP
A61K 38/10 20060101ALN20230322BHJP
A61K 38/16 20060101ALN20230322BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20230322BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230322BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P37/04
C07K14/47
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2022209886
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2022149790の分割
【原出願日】2021-05-11
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020083905
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505443953
【氏名又は名称】株式会社癌免疫研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉辺 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵弥
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/081701(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157692(WO,A1)
【文献】特表2016-530290(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131722(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 38/08-38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(4):
【化1】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物、若しくは
式(5):
【化2】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物、またはその薬学上許容される塩を含む医薬組成物であって、
HLA-B
*15:01陽性対象において癌を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
式(5):
【化3】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物またはその薬学上許容される塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
MHCクラスII拘束性ペプチドをさらに含むか、MHCクラスII拘束性ペプチドと併用される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
MHCクラスII拘束性ペプチドが、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
式(4):
【化4】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物またはその薬学上許容される塩を含む、および
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、請求項3~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
式(5):
【化5】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物またはその薬学上許容される塩を含む、および
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、請求項3~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
癌が、WT1が発現している癌またはWT1の発現レベルの上昇を伴う癌である、請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃がん、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨癌、膵癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、直腸癌、肛門部癌、精巣癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形癌、腎臓または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系腫瘍、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、扁平上皮癌、扁平細胞癌、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌、および前記癌の組み合わせから選択される、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌ワクチンとして使用される、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌の細胞性免疫療法におけるCTL誘導剤として使用される、請求項1~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、日本国特許出願第2020-083905号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本開示は、癌免疫療法の分野に属し、特に、WT1タンパク質由来の癌抗原ペプチドの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
WT1は、白血病や種々の固形癌で高発現しており、癌ワクチンの標的抗原の中で特に注目を集めている癌抗原タンパク質である。生体による癌細胞の排除には、細胞性免疫、特に細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球ともいう。以下、CTLと記載する。)が重要な働きをしている。CTLは、癌抗原タンパク質由来のペプチド(すなわち、癌抗原ペプチド)とMHCクラスIとにより形成される複合体を認識した前駆体T細胞が分化増殖して生成されるものであり、癌細胞を攻撃する。WT1由来の癌抗原ペプチドとして、WT1126-134ペプチド(RMFPNAPYL、配列番号2)、WT1235-243ペプチド(CMTWNQMNL、配列番号3)、WT110-18ペプチド(ALLPAVPSL、配列番号4)、WT1187-195ペプチド(SLGEQQYSV、配列番号5)、WT1302-310ペプチド(RVPGVAPTL、配列番号6)およびWT137-45ペプチド(VLDFAPPGA、配列番号7)などが知られている。
【0003】
例えば、WT1126-134ペプチドは、HLA-A*02:01拘束性ペプチド特異的CTLを誘導可能な癌抗原ペプチドである。当該WT1126-134ペプチド特異的CTLはHLA-A*02:01陽性のWT1発現癌細胞に対して殺細胞作用を示すことから、WT1126-134ペプチドを含む癌ワクチンについてHLA-A*02:01陽性患者を対象とした臨床試験が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、WT1由来の癌抗原ペプチドまたはこれを含むペプチドコンジュゲートの適用対象を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、癌ペプチドワクチンを投与された癌患者の末梢血を用いることにより、WT1由来の癌抗原ペプチドについて、HLAクラスIに対する結合予測および薬剤投与前の癌患者末梢血由来T細胞を用いた試験では同定し得なかったHLAクラスI拘束性を見出し、本発明を完成した。
【0006】
ある態様において、本開示は、HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象において癌を処置するための、以下の(a)または(b)を含む医薬組成物を提供する:
(a)RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドまたはその薬学上許容される塩;または
(b)式(1):
【化1】
[式中、X
aおよびY
aは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
aのアミノ酸残基数とY
aのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり;
癌抗原ペプチドAは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドAのN末端アミノ酸のアミノ基が式(1)中のY
aと結合し、癌抗原ペプチドAのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(1)中の水酸基と結合し;
R
1は、水素原子、式(2):
【化2】
(式中、X
bおよびY
bは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
bのアミノ酸残基数とY
bのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドBは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドBのN末端アミノ酸のアミノ基が式(2)中のY
bと結合し、癌抗原ペプチドBのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(2)中の水酸基と結合し、式(2)中の硫黄原子が式(1)中の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合している。)
で表される基、または癌抗原ペプチドCを表し、
癌抗原ペプチドCは、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドまたは1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドCのシステイン残基の硫黄原子は式(1)中の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合しており、癌抗原ペプチドCのN末端に1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合していてもよく;
R
1が、水素原子である場合、癌抗原ペプチドAは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、式(2)で表される基である場合、癌抗原ペプチドAおよび/または癌抗原ペプチドBは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、癌抗原ペプチドCである場合、癌抗原ペプチドAおよび/または癌抗原ペプチドCは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、式(2)で表される基であり、癌抗原ペプチドBが1つのシステイン残基を含む場合、癌抗原ペプチドBのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化3】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子と、ジスルフィド結合を介して結合していてもよく;
R
1が、癌抗原ペプチドCであり、癌抗原ペプチドCのN末端に1つのシステイン残基を含む1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合している場合、癌抗原ペプチドCのN末端に結合しているペプチドのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化4】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合していてもよい]
で表される化合物またはその薬学上許容される塩。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象の癌の処置にWT1126-134ペプチドなどのWT1由来癌抗原ペプチドまたはこれを含むペプチドコンジュゲートを用いることが可能となり、これらペプチドまたはコンジュゲートの適用対象が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、HLA-A
*03:01陽性患者由来末梢血単核細胞(PBMC)を利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与前に調製され式(5)の化合物の存在下で培養された4名の患者由来PBMCにおけるHLA-A
*03:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図2】
図2は、HLA-B
*15:01陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与前に調製され式(5)の化合物の存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-B
*15:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図3】
図3は、HLA-A
*03:01陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され式(5)の化合物の存在下で培養された4名の患者由来PBMCにおけるHLA-A
*03:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図4】
図4は、HLA-B
*15:01陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され式(5)の化合物の存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-B
*15:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図5】
図5は、HLAテトラマー陽性T細胞を利用したELISPOT試験の結果を示す。WT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマー陽性CD8陽性T細胞を含むPBMCを、WT1
126-134ペプチドをパルスしたHLA-A
*03:01発現K562細胞(「K562-A3+Pep」)、または前記ペプチドをパルスしていないHLA-A
*03:01発現K562細胞(「K562-A3」)により刺激した。4名の結果を示す。
【
図6】
図6は、HLAテトラマー陽性T細胞を利用したELISPOT試験の結果を示す。WT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマー陽性CD8陽性T細胞を含むPBMCを、WT1
126-134ペプチドをパルスしたHLA-B
*15:01発現K562細胞(「K562-B15+Pep」)、または前記ペプチドをパルスしていないHLA-B
*15:01発現K562細胞(「K562-B15」)により刺激した。1名の結果を示す。
【
図7】
図7は、HLA-A
*02:07陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与前に調製され式(5)の化合物存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-A
*02:07拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図8】
図8は、HLA-A
*02:07陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され式(5)の化合物存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-A
*02:07拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図9】
図9は、HLAテトラマー陽性T細胞を利用したELISPOT試験の結果を示す。WT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマー陽性CD8陽性T細胞を含むPBMCを、WT1
126-134ペプチドをパルスしたHLA-A
*02:07発現K562細胞(「K562-A2.7+Pep」)、または前記ペプチドをパルスしていないHLA-A
*02:07発現K562細胞(「K562-A2.7」)により刺激した。1名の結果を示す。
【
図10】
図10は、HLA-A
*03:01陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され配列番号13のペプチド存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-A
*03:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図11】
図11は、HLA-B
*15:01陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され配列番号13のペプチド存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-B
*15:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【
図12】
図12は、HLA-A
*02:07陽性患者由来PBMCを利用したテトラマー試験の結果を示す。薬剤投与後に調製され配列番号13のペプチド存在下で培養された患者由来PBMCにおけるHLA-A
*02:07拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を解析した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、ペプチドまたはタンパク質分子上でペプチドまたはタンパク質を構成しているアミノ酸の一単位に当たる部分を意味する。「アミノ酸残基」としては、天然もしくは非天然のα-アミノ酸残基、β-アミノ酸残基、γ-アミノ酸残基またはδ-アミノ酸残基が挙げられる。具体的には、天然のα-アミノ酸残基、オルニチン残基、ホモセリン残基、ホモシステイン残基、β-アラニン残基、γ-アミノブタン酸またはδ-アミノペンタン酸などが挙げられる。「アミノ酸残基」に、光学活性体があり得る場合、L体、D体の何れであってもよいが、L体が好ましい。
【0010】
本明細書において、「アミノ酸残基」を略号で表示する場合、次の略号で記述する。
AlaまたはA:アラニン残基
ArgまたはR:アルギニン残基
AsnまたはN:アスパラギン残基
AspまたはD:アスパラギン酸残基
CysまたはC:システイン残基
GlnまたはQ:グルタミン残基
GluまたはE:グルタミン酸残基
GlyまたはG:グリシン残基
HisまたはH:ヒスチジン残基
IleまたはI:イソロイシン残基
LeuまたはL:ロイシン残基
LysまたはK:リジン残基
MetまたはM:メチオニン残基
PheまたはF:フェニルアラニン残基
ProまたはP:プロリン残基
SerまたはS:セリン残基
ThrまたはT:スレオニン残基
TrpまたはW:トリプトファン残基
TyrまたはY:チロシン残基
ValまたはV:バリン残基
Abu:2-アミノ酪酸残基(α-アミノ酪酸残基ともいう)
Orn:オルニチン残基
Cit:シトルリン残基
【0011】
本明細書において、「ペプチド」のアミノ酸配列は、常法に従って、N末端アミノ酸のアミノ酸残基が左側に位置し、C末端アミノ酸のアミノ酸残基が右側に位置するように記述する。また「ペプチド」において、特に断りのない限り、N末端アミノ酸のアミノ酸残基のアミノ基は水素原子と結合し、C末端アミノ酸のアミノ酸残基のカルボニル基は水酸基と結合している。ペプチドの二価基とは、N末端アミノ酸のアミノ酸残基のアミノ基およびC末端アミノ酸のアミノ酸残基のカルボニル基を介して結合する基を意味する。式(1)で表される化合物において、たとえば式(4)または(5)の化合物において、その部分構造にあたるペプチドについても、特に断りの無い限り、N末端アミノ酸のアミノ酸残基のアミノ基は水素原子と結合し、C末端アミノ酸のアミノ酸残基のカルボニル基は水酸基と結合している。
【0012】
本開示は、
(a)RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチド(本明細書において、前記(a)のペプチドとも記載する)またはその薬学上許容される塩;または
(b)式(1):
【化5】
で表される化合物またはその薬学上許容される塩
の用途に関する。
【0013】
「癌抗原ペプチドA」は、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドである。式(1)において、癌抗原ペプチドAのN末端アミノ酸のアミノ基は式(1)中のYaと結合し、癌抗原ペプチドAのC末端アミノ酸のカルボニル基は式(1)中の水酸基と結合している。
【0014】
「Xa」および「Ya」は、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表す。Xaのアミノ酸残基数とYaのアミノ酸残基数の和は、0~4の整数である。例えば、当該和が0の整数であるとは、XaおよびYaが単結合であることを意味する。また、当該和が4の整数である場合としては、例えばXaおよびYaが独立して2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xaが3残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYaが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xaが4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYaが単結合である場合などが挙げられる。
【0015】
当該和の整数としては、好ましくは0~2が挙げられ、より好ましくは0~1が挙げられ、最も好ましくは0が挙げられる。すなわち、XaおよびYaとしては、共に単結合である場合が最も好ましい。
【0016】
当該和の整数が2である場合としては、Xaが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYaが単結合である場合、XaおよびYaが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、またはXaが単結合であり且つYaが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。
【0017】
当該和の整数が1である場合としては、Xaが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYaが単結合である場合、またはXaが単結合であり且つYaが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。このうち好ましくは、Xaが単結合であり且つYaがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基、またはXaがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基であり且つYaが単結合である場合である場合が挙げられる。
【0018】
式(1)において、「R
1」は、水素原子、式(2):
【化6】
で表される基、または癌抗原ペプチドCを表す。好ましくは、「R
1」は、式(2)で表される基または癌抗原ペプチドCであり、より好ましくは癌抗原ペプチドCである。
【0019】
R
1が水素原子である場合、式(1)で表される化合物は、式(1-1):
【化7】
(式中、X
a、Y
aおよび癌抗原ペプチドAは、式(1)における前記と同義であり、Cysはシステイン残基を表す。)
で表される化合物、すなわちペプチドである。
【0020】
「癌抗原ペプチドB」は、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドである。式(2)において、癌抗原ペプチドBのN末端アミノ酸のアミノ基は式(2)中のYb(または式(1-2)中のYb)と結合し、C末端アミノ酸のカルボニル基は式(2)中の水酸基と結合している。
【0021】
「Xb」および「Yb」は、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表す。Xbのアミノ酸残基数とYbのアミノ酸残基数の和は0~4の整数である。例えば、当該和が0の整数であるとは、XbおよびYbが単結合であることを意味する。また、当該和が4の整数である場合としては、例えばXbおよびYbが独立して2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xbが3残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYbが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xbが4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYbが単結合である場合などが挙げられる。
【0022】
当該和の整数として、好ましくは0~2が挙げられ、より好ましくは0~1が挙げられ、最も好ましくは0が挙げられる。すなわち、XbおよびYbとしては、共に単結合である場合が最も好ましい。
【0023】
当該和の整数が2である場合としては、Xbが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYbが単結合である場合、XbおよびYbが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、またはXbが単結合であり且つYbが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。
【0024】
当該和の整数が1である場合としては、Xbが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYbが単結合である場合、またはXbが単結合であり且つYbが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。このうち好ましくは、Xbが単結合であり且つYbがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基である場合、またはXbがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基であり且つYbが単結合である場合が挙げられる。
【0025】
R
1が式(2)で表される基である場合、式(1)で表される化合物は、式(1-2):
【化8】
(式中、X
a、Y
aおよび癌抗原ペプチドAは、式(1)における前記と同義であり、X
b、Y
bおよび癌抗原ペプチドBは、式(2)における前記と同義である。)で表される化合物である。
【0026】
「癌抗原ペプチドC」は、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチド、または1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである。R1が癌抗原ペプチドCである場合、癌抗原ペプチドCのシステイン残基の硫黄原子は式(1)中の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合している。癌抗原ペプチドCのN末端に、1~4残基のアミノ酸からなるペプチド(すなわち、1残基のアミノ酸または2~4残基のアミノ酸からなるペプチド)が結合していてもよい。
【0027】
癌抗原ペプチドCは、当該ペプチドのアミノ酸配列において、少なくとも1つのシステイン残基を含んでいればよく、含まれるシステイン残基数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましく、1が最も好ましい。
【0028】
ある実施形態において、癌抗原ペプチドCのN末端に結合している1~4残基のアミノ酸からなるペプチドは、アラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、システイン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、プロリン残基、セリン残基、トレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基およびバリン残基から独立して選択される1~4残基のアミノ酸からなる。さらなる実施形態において、前記1~4残基のアミノ酸からなるペプチドは、アルギニン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、リシン残基、フェニルアラニン残基およびチロシン残基から独立して選択される1~4残基のアミノ酸からなる。
【0029】
ある実施形態において、癌抗原ペプチドCのN末端に結合している1~4残基のアミノ酸からなるペプチドは、1つのシステイン残基を含む。さらなる実施形態において、癌抗原ペプチドCのN末端に、CAからなるジペプチドが結合している。
【0030】
ある実施形態において、癌抗原ペプチドCのN末端に、アルギニン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、リシン残基、フェニルアラニン残基およびチロシン残基から選択される1残基のアミノ酸が結合している。
【0031】
ある実施形態において、式(1)で表される化合物は、ホモダイマーではなく、ヘテロダイマーである。ホモダイマーは、同じペプチド単量体が二量体化された二量体を意味し、ヘテロダイマーは、異なるペプチド単量体が二量体化された二量体を意味する。
【0032】
R
1が、式(2)で表される基であり、癌抗原ペプチドBが1つのシステイン残基を含む場合、癌抗原ペプチドBのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化9】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子と、ジスルフィド結合を介して結合していてもよい。
【0033】
R
1が、癌抗原ペプチドCであり、癌抗原ペプチドCのN末端に1つのシステイン残基を含む1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合している場合、癌抗原ペプチドCのN末端に結合しているペプチドのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化10】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子と、ジスルフィド結合を介して結合していてもよい。
【0034】
「癌抗原ペプチドD」は、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである。式(3)において、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基は式(3)中のYdと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基は式(3)中の水酸基と結合している。
【0035】
「癌抗原ペプチドE」は、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである。
【0036】
「Xd」および「Yd」は、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表す。Xdのアミノ酸残基数とYdのアミノ酸残基数の和は、0~4の整数である。例えば、当該和が0の整数であるとは、XdおよびYdが単結合であることを意味する。また、当該和が4の整数である場合としては、例えばXdおよびYdが独立して2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xdが3残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYdが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、Xdが4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYdが単結合である場合などが挙げられる。
【0037】
当該和の整数としては、好ましくは0~2が挙げられ、より好ましくは0~1が挙げられ、最も好ましくは0が挙げられる。すなわち、XdおよびYdとしては、共に単結合である場合が最も好ましい。
【0038】
当該和の整数が2である場合としては、Xdが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYdが単結合である場合、XdおよびYdが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合、またはXdが単結合であり且つYdが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。
【0039】
当該和の整数が1である場合としては、Xdが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つYdが単結合である場合、またはXdが単結合であり且つYdが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基である場合が挙げられる。このうち好ましくは、Xdが単結合であり且つYdがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基、またはXdがアラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基であり且つYdが単結合である場合である場合が挙げられる。
【0040】
本明細書において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」および「MHCクラスII拘束性ペプチド」は、配列番号1に記載のヒトWT1のアミノ酸配列中の連続するアミノ酸からなるペプチド、またはその改変ペプチド(本明細書において、「WT1ペプチド」ともいう)でありうる。
【0041】
「MHCクラスI拘束性」とは、主要組織適合抗原(Major Histocompatibility Complex、MHC)のクラスIであるMHCクラスI分子と結合してCTLを誘導する特性を意味する。本明細書において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」とは、インビトロおよび/またはインビボにおいてMHCクラスI分子と結合して細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導する能力を有するペプチド(すなわち、CTL誘導活性を有するペプチド)を意味する。「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、「キラーペプチド」と称することもある。
【0042】
MHCは、ヒトではヒト白血球型抗原(HLA)と呼ばれる。MHCクラスI分子に相当するHLAは、HLA-A、B、Cw、FおよびGなどのサブタイプに分類される。「MHCクラスI拘束性」としては、好ましくは、HLA-A拘束性、HLA-B拘束性またはHLA-Cw拘束性が挙げられる。
【0043】
HLAの各サブタイプについては、多型(対立遺伝子)が知られている。多型としては、例えば、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A24、HLA-A3、HLA-A11、HLA-A33、HLA-B7、HLA-B15、HLA-B27、HLA-B40、HLA-B44、HLA-Cw1、HLA-Cw3、HLA-Cw4、HLA-Cw6が挙げられ、さらに、HLA-A*01:01、HLA-A*02:01、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*24:02、HLA-A*03:01、HLA-A*11:01、HLA-A*33:01、HLA-A*33:03、HLA-B*15:01、HLA-B*27:05、HLA-B*40:01、HLA-B*40:02、HLA-B*40:03、HLA-B*40:06、HLA-B*44:03、HLA-Cw*01:01、HLA-Cw*03:01、HLA-Cw*04:0、HLA-Cw*06:02が挙げられる。
【0044】
「MHCクラスI拘束性ペプチド」のアミノ酸配列および長さは、特に限定されないが、ペプチドが長すぎると蛋白質分解酵素の作用を受けやすくなり、短すぎるとペプチド収容溝にうまく結合できない。MHCクラスI拘束性ペプチドのアミノ酸残基数は、通常、7~30残基であり、好ましくは、7~15残基、8~12残基、8~11残基、または8~9残基である。ある実施形態において、MHCクラスI拘束性ペプチドのアミノ酸残基数は、9~30残基であり、好ましくは、9~15残基、9~12残基、9~11残基、9~10残基、または9残基である。
【0045】
「MHCクラスI拘束性ペプチド」には、インビトロまたはインビボでのプロテオソームおよび/またはプロテアーゼによる分解、および/またはERAP1による最適な残基数への切断(トリミングとも言う。)等によって、「MHCクラスI拘束性エピトープ」を生じるペプチドが含まれる。本明細書において、「MHCクラスI拘束性エピトープ」とは、MHCクラスI分子と結合し、複合体として提示されるペプチドそのものを意味する。すなわち、「MHCクラスI拘束性ペプチド」には、インビトロまたはインビボでの分解および/またはトリミング等により、MHCクラスI分子に結合するペプチドを生じる(すなわち、インビトロまたはインビボでの分解および/またはトリミング等の後にMHCクラスI分子に結合する)ものが含まれる。
【0046】
MHCクラスI拘束性エピトープの生成過程の一例として、まずはプロテオソームおよび/またはプロテアーゼによる分解の結果「MHCクラスI拘束性エピトープ」のC末端アミノ酸が生じ、次にERAP1によるトリミング(切断)の結果、「MHCクラスI拘束性エピトープ」のN末端アミノ酸が生じるという生成過程が考えらえる。よって、「MHCクラスI拘束性ペプチド」としては、7~12残基のアミノ酸からなる「MHCクラスI拘束性エピトープ」のC末端アミノ酸のカルボニル基に0~23残基のアミノ酸が付加された7~30残基のアミノ酸からなるペプチドが好ましい。
【0047】
「MHCクラスI拘束性エピトープ」は、通常、7~12残基、好ましくは9残基のアミノ酸からなる。ある実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、「MHCクラスI拘束性エピトープ」のC末端側にアミノ酸を付加したものである。さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、「MHCクラスI拘束性エピトープ」のC末端アミノ酸のカルボニル基に1~23残基のアミノ酸が付加された8~30残基のアミノ酸からなるペプチドである。
【0048】
本明細書において、所定のアミノ酸配列を含むペプチドとは、通常のように、当該アミノ酸配列のN末端アミノ酸および/またはC末端アミノ酸に更なるアミノ酸が付加されていてもよいペプチドを意味する。「MHCクラスI拘束性ぺプチド」にアミノ酸を付加する場合、C末端側への付加が好ましい。
【0049】
本明細書において「改変ペプチド」とは、もとのペプチドのアミノ酸配列において1個または数個のアミノ酸残基が改変されたアミノ酸配列からなるペプチドを意味する。改変ペプチドは、もとのペプチドのアミノ酸配列において、1個または数個、例えば、1~9個、好ましくは、1~5個、1~4個、1~3個、さらに好ましくは1~2個、より好ましくは1個のアミノ酸が、欠失、置換および/または付加(本明細書において、挿入も包含する意味で用いられる)されたアミノ酸配列からなる。欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は、好ましくは1~5、1~4、1~3、さらに好ましくは1~2、より好ましくは1である。改変ペプチド中のアミノ酸の置換はいずれの位置でいずれの種類のアミノ酸との間で行われてもよい。保存的なアミノ酸置換が好ましい。例えば、Glu残基をAsp残基に、Phe残基をTyr残基に、Leu残基をIle残基に、Ala残基をSer残基に、His残基をArg残基に置換してもよい。アミノ酸の付加または欠失は、ペプチドのN末端またはC末端で行うことが好ましいが、配列内部において行われていてもよい。置換または付加されるアミノ酸は、遺伝子によりコードされる20種類のアミノ酸以外の非天然アミノ酸であってもよい。
【0050】
本明細書において、改変されたアミノ酸配列からなるキラーペプチドは、特に、「改変キラーペプチド」とも呼ばれる。改変キラーペプチドにおいて、置換されるアミノ酸の位置としては、9残基のアミノ酸からなるペプチドの場合、第1位(N末端)、第2位、第3位および第9位が挙げられる。付加されるアミノ酸の数は好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。好ましい付加位置としては、N末端またはC末端が挙げられる。欠失されるアミノ酸の数は好ましくは1である。
【0051】
HLAのサブタイプの多型ごとに、HLA抗原に結合できるペプチドのアミノ酸配列の規則性(結合モチーフ)が存在することが知られている。一例として、アミノ酸の置換を、結合モチーフを構成するアミノ酸において行うことが考えられる。例えば、HLA-A24の結合モチーフとしては、8~11残基のアミノ酸からなるペプチドにおいて、2位のアミノ酸がTyr、Phe、MetまたはTrpであり、C末端のアミノ酸が、Phe、Leu、Ile、TrpまたはMetであることが知られている(J. Immunol., 152, p3913, 1994; J.Immunol., 155, p4307, 1994; Immunogenetics, 41, p178, 1995)。よって、例えば9残基のアミノ酸からなるペプチドの場合、2位のアミノ酸をTyr、Phe、MetおよびTrpにより、および/または9位(C末端)のアミノ酸をPhe、Leu、Ile,TrpまたはMetにより、置換することが可能であり、当該置換がなされたペプチドが改変キラーペプチドとして好ましい。同様に、HLA-A0201の結合モチーフとして、8~11残基のアミノ酸からなるペプチドにおいて、2位のアミノ酸が、LeuまたはMetであり、C末端のアミノ酸が、ValまたはLeuであることが知られていることから、例えば9残基のアミノ酸からなるペプチドの場合、2位のアミノ酸をLeuまたはMetにより、および/または9位(C末端)のアミノ酸をValまたはLeuにより、置換することが可能であり、当該置換がなされたペプチドが改変キラーペプチドとして好ましい。
【0052】
「MHCクラスI拘束性ペプチド」としては、例えば、以下のアミノ酸配列:
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸残基が改変されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドが挙げられる。さらに好ましくは、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド、または前記いずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸残基が改変されたアミノ酸配列からなり、CTL誘導活性を有するペプチドが挙げられる。
【0053】
改変キラーペプチドとしては、次のようなペプチドが挙げられる。
RMFPNAPYL(配列番号2)の改変キラーペプチドである
RYFPNAPYL(配列番号8)(国際公開03/106682号参照);
FMFPNAPYL(配列番号9)、
RLFPNAPYL(配列番号10)、
RMMPNAPYL(配列番号11)、
RMFPNAPYV(配列番号12)、もしくは
YMFPNAPYL(配列番号13)(国際公開醍2009/072610号参照);
CMTWNQMNL(配列番号3)の改変キラーペプチドである
CYTWNQMNL(配列番号14)(国際公開02/79253号参照);
Xaa-Met-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号15)(本配列中Xaaは、SerまたはAlaを表す)もしくは
Xaa-Tyr-Thr-Trp-Asn-Gln-Met-Asn-Leu(配列番号16)(本配列中Xaaは、Ser、Ala、Abu、Arg、Lys、Orn、Cit、Leu、PheまたはAsnを表す)(国際公開2004/026897号参照);
ALLPAVPSL(配列番号4)の改変キラーペプチドである
AYLPAVPSL(配列番号17)(国際公開2003/106682号参照);
SLGEQQYSV(配列番号5)の改変キラーペプチドである
FLGEQQYSV(配列番号18)、
SMGEQQYSV(配列番号19)、もしくは
SLMEQQYSV(配列番号20)(国際公開2009/072610号参照);または
RVPGVAPTL(配列番号6)の改変キラーペプチドである
RYPGVAPTL(配列番号21)(国際公開2003/106682号参照)。
【0054】
ある実施形態において、改変キラーペプチドは、N末端に1~4残基のアミノ酸が付加された改変ペプチドである。ある実施形態において、付加されるアミノ酸は、アラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、システイン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、プロリン残基、セリン残基、トレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基、およびバリン残基から、好ましくは、アルギニン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、リシン残基、フェニルアラニン残基およびチロシン残基から独立に選択される。付加されるアミノ酸は、好ましくは1~3残基、さらに好ましくは1~2残基、最も好ましくは1残基である。
【0055】
改変キラーペプチドとしては、例えば、配列番号3または配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記配列のN末端システイン残基のアミノ基に1~3個のアミノ酸残基が付加した、10~12残基のアミノ酸からなるペプチドが挙げられる。
【0056】
ある実施形態において、改変キラーペプチドは、
RCMTWNQMNL(配列番号22)、
RCYTWNQMNL(配列番号23)
QCMTWNQMNL(配列番号24)、
QCYTWNQMNL(配列番号25)、
ECMTWNQMNL(配列番号26)、
ECYTWNQMNL(配列番号27)、
HCMTWNQMNL(配列番号28)、
HCYTWNQMNL(配列番号29)、
KCMTWNQMNL(配列番号30)、
KCYTWNQMNL(配列番号31)、
FCMTWNQMNL(配列番号32)、
FCYTWNQMNL(配列番号33)、
YCMTWNQMNL(配列番号34)および
YCYTWNQMNL(配列番号35)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるぺプチドである。
【0057】
ある実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである。
【0058】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、CTL誘導活性を有するペプチドである。
【0059】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または配列番号2、3、および7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである。
【0060】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド、または配列番号2、3、および7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、CTL誘導活性を有するペプチドである。
【0061】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
RYFPNAPYL(配列番号8)、
YMFPNAPYL(配列番号13)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
CYTWNQMNL(配列番号14)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである。
【0062】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、RMFPNAPYL(配列番号2)、RYFPNAPYL(配列番号8)、またはYMFPNAPYL(配列番号13)のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである。
【0063】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、RMFPNAPYL(配列番号2)、VLDFAPPGA(配列番号7)、またはYMFPNAPYL(配列番号13)のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである。
【0064】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである。
【0065】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)および
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるぺプチドである。
【0066】
さらなる実施形態において、「MHCクラスI拘束性ペプチド」は、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)および
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるぺプチドである。
【0067】
「MHCクラスII拘束性」とは、MHCクラスII分子と結合してヘルパーT細胞を誘導する特性を意味する。「MHCクラスII拘束性ペプチド」とは、インビトロおよび/またはインビボにおいてMHCクラスII分子に結合してヘルパーT細胞を誘導する能力を有するペプチド(すなわち、ヘルパーT細胞誘導活性を有するペプチド)を意味する。「MHCクラスII拘束性ペプチド」は、本明細書において「ヘルパーペプチド」と称することもある。
【0068】
MHCクラスII分子に相当するHLAは、HLA-DR、DQおよびDPなどのサブタイプに分類される。「MHCクラスII拘束性」として、好ましくは、HLA-DR拘束性、HLA-DQ拘束性またはHLA-DP拘束性が挙げられる。
【0069】
HLAの各サブタイプについては、多型(対立遺伝子)が知られている。多型としては、例えば、DRB1*0101、DRB1*0405、DRB1*0802、DRB1*0803、DRB1*0901、DRB1*1201、DRB1*1403、DRB1*1501、DRB1*1502、DPB1*0201、DPB1*0202、DPB1*0402、DPB1*0501、DPB1*0901、DQB1*0301、DQB1*0302、DQB1*0401、DQB1*0501、DQB1*0601、DQB1*0602、またはDRB5*0102が挙げられ、好ましくは、DRB1*0101、DRB1*0405、DRB1*1502、DPB1*0201、DPB1*0202、またはDQB1*0601が挙げられる。
【0070】
「MHCクラスII拘束性ペプチド」のアミノ酸配列および長さは、特に限定されないが、ペプチドが長すぎると蛋白質分解酵素の作用を受けやすくなり、短すぎるとペプチド収容溝にうまく結合できない。「MHCクラスII拘束性ペプチド」のアミノ酸残基数は、通常、9~30であり、好ましくは10~25であり、より好ましくは12~24であり、さらに好ましくは15~22である。
【0071】
「MHCクラスII拘束性ペプチド」には、インビトロまたはインビボでのプロテオソームおよび/またはプロテアーゼによる分解、および/またはERAP1による最適な残基数への切断(トリミングとも言う。)等によって、「MHCクラスII拘束性エピトープ」を生じるペプチドが含まれる。本明細書において、「MHCクラスII拘束性エピトープ」とは、MHCクラスII分子と結合し、複合体として提示されるペプチドそのものを意味する。すなわち、「MHCクラスII拘束性ペプチド」には、インビトロまたはインビボでの分解および/またはトリミング等により、MHCクラスII分子に結合するペプチドを生じる(すなわち、インビトロまたはインビボでの分解および/またはトリミング等の後にMHCクラスII分子に結合する)ものが含まれる。
【0072】
本明細書において、改変されたアミノ酸配列からなるヘルパーペプチドは、特に、「改変ヘルパーペプチド」とも呼ばれる。改変ヘルパーペプチドにおいて、置換されるアミノ酸の位置は、例えばHLA-DRB1*0405に対する結合モチーフ構造を有する9残基のアミノ酸からなるペプチドの場合、第1位、第4位、第6位および/または第9位のアミノ酸残基の置換が好ましい。さらに好ましくは、上記結合モチーフ構造を有する9残基のアミノ酸からなるペプチドの場合、第1位、第4位、第6位および/または第9位のアミノ酸残基が、
第1位:フェニルアラニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、
第4位:バリンイソロイシン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、
第6位:アスパラギン、セリン、スレオニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、
第9位:アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、
から選択されるいずれかのアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなるペプチドが例示される。
【0073】
「MHCクラスII拘束性ペプチド」としては、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むぺプチド、または、配列番号36~48のいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸残基が改変されたアミノ酸配列を含み、ヘルパーT細胞誘導活性を有するペプチドが挙げられる。さらに好ましくは、配列番号36~48から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド、または、配列番号36~48から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸残基が改変されたアミノ酸配列からなり、ヘルパーT細胞誘導活性を有するペプチドが挙げられる。
【0074】
ある実施形態において、R1は、癌抗原ペプチドCを表し、癌抗原ペプチドCは、以下のアミノ酸配列:
CMTWNQMNL(配列番号3)、
CYTWNQMNL(配列番号14)、
RCMTWNQMNL(配列番号22)、
RCYTWNQMNL(配列番号23)
QCMTWNQMNL(配列番号24)、
QCYTWNQMNL(配列番号25)、
ECMTWNQMNL(配列番号26)、
ECYTWNQMNL(配列番号27)、
HCMTWNQMNL(配列番号28)、
HCYTWNQMNL(配列番号29)、
KCMTWNQMNL(配列番号30)、
KCYTWNQMNL(配列番号31)、
FCMTWNQMNL(配列番号32)、
FCYTWNQMNL(配列番号33)、
YCMTWNQMNL(配列番号34)および
YCYTWNQMNL(配列番号35)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるぺプチドである。
【0075】
式(1)で表される化合物としては、
式(6):
【化11】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(4):
【化12】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(5):
【化13】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(7):
【化14】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(8):
【化15】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(9):
【化16】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(10):
【化17】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(11):
【化18】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(12):
【化19】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
式(13):
【化20】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(14):
【化21】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(15):
【化22】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(16):
【化23】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(17):
【化24】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(18):
【化25】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;および
式(19):
【化26】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物が挙げられる。
【0076】
式(1)で表される化合物は、さらに
CRMFPNAPYL(配列番号49)、
CCMTWNQMNL(配列番号50)、
CCYTWNQMNL(配列番号51)、
CALLPAVPSL(配列番号52)、
CSLGEQQYSV(配列番号53)
CRVPGVAPTL(配列番号54)および
CVLDFAPPGA(配列番号55)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドでありうる。
【0077】
ペプチドは、アミノ酸配列中のアミノ酸残基が修飾されていてもよい。アミノ酸残基は、公知の方法にて修飾することができる。例えば、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖中の官能基に、エステル化、アルキル化、ハロゲン化、リン酸化、スルホン化、アミド化などを施してもよい。また、ペプチドのN末端および/またはC末端に、種々の物質を結合させることができる。ペプチドに結合させる物質は、ペプチドの溶解性を調節するものであってもよく、耐プロテアーゼ作用等その安定性を向上させるものであってもよく、また例えば、所定の組織・器官に特異的にペプチドをデリバリーするものであってもよく、あるいはまた抗原提示細胞の取込み効率を増強させる作用などを有するものであってもよい。
【0078】
ペプチドは、そのN末端アミノ酸のアミノ基、またはC末端アミノ酸のカルボキシル基が修飾されたものであってもよい。N末端アミノ酸のアミノ基の修飾基としては、例えば、1~3個の炭素数1から6のアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、アシル基が挙げられ、アシル基の具体例としては炭素数1から6のアルカノイル基、フェニル基で置換された炭素数1から6のアルカノイル基、炭素数5から7のシクロアルキル基で置換されたカルボニル基、炭素数1から6のアルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、炭素数2から6のアルコキシカルボニル基、フェニル基で置換されたアルコキシカルボニル基、炭素数5から7のシクロアルコキシで置換されたカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。C末端アミノ酸のカルボキシ基を修飾したペプチドとしては、例えばエステル体およびアミド体が挙げられ、エステル体の具体例としては、炭素数1から6のアルキルエステル、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキルエステル、炭素数5から7のシクロアルキルエステル等が挙げられ、アミド体の具体例としては、炭素数1から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換された炭素数0から6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
【0079】
ペプチドは、炭素-炭素結合、炭素-窒素結合、炭素-硫黄結合などのペプチド結合以外の結合によってアミノ酸残基が結合したものであってもよい。さらにペプチドは1またはそれ以上のD-体アミノ酸を含んでいてもよい。
【0080】
前述のペプチド修飾は例示であり、当業者であれば容易にそのバリエーションを想定し、製造し、効果を調べ、用いることができる。
【0081】
ペプチドがCTL誘導活性またはヘルパーT細胞誘導活性を有することは、当業者が適宜確認することができる。例えば、CTL誘導活性は、HLAテトラマー法(Int.J.Cancer:100,565-570(2002))または限界希釈法(Nat.Med.:4,321-327(1998))によりCTLの数を測定することにより確認することができる。あるいは、例えばHLA-A24拘束性のCTL誘導活性の場合、国際公開第02/47474号およびInt. J. Cancer: 100, 565-570 (2002)に記述されたHLA-A24モデルマウスを用いることなどにより調べることができる。ヘルパーT細胞誘導活性は、例えばCancer Immunol. Immunother. 51: 271 (2002)に記載の方法などの方法や、本明細書実施例に記載の方法などにより調べることができる。
【0082】
本明細書に記載のペプチドおよび化合物並びにそれらの中間体に当たるペプチドは、通常のペプチド合成において用いられる方法に準じて製造することができる。例えば、Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966; The Proteins, Vol 2, Academic Press Inc., New York, 1976; ペプチド合成、丸善(株),1975; ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985; 医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成、広川書店,1991などに記載されている。例えば、Fmoc法もしくはBoc法を用いて固相合成機で製造する方法や、Boc-アミノ酸もしくはZ-アミノ酸を液相合成法で遂次縮合させて製造する方法が挙げられる(Fmocは9-フルオレニルメトキシカルボニル基、Bocはt-ブトキシカルボニル基、Zはベンジルオキシカルボニル基をそれぞれ表す)。ペプチドはまた、当該ペプチドをコードするヌクレオチド配列情報に基づき、遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。かかる遺伝子工学的手法は、当業者に周知であり、Molecular Cloning, T. Maniatis et al., CSH Laboratory (1983)、DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985)などの記載に準じて行うことができる。
【0083】
式(1)で表される化合物は、例えば、2つのMHCクラスI拘束性ペプチド、またはMHCクラスI拘束性ペプチドとMHCクラスII拘束性ペプチドとを、それぞれジスルフィド結合を介して結合することで合成することができる(国際公開第2014/157692号参照)。
【0084】
式(1)で表される化合物を製造するための中間体において、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などの官能基は、必要に応じて保護、脱保護の技術を用い、適当な保護基で保護し、また脱保護することができる。好適な保護基、保護する方法、および脱保護する方法としては、Protective Groups in Organic Synthesis 2nd Edition(John Wiley & Sons, Inc.; 1990)などに詳細が記載されている。たとえば、メルカプト基の保護基としてはアセトアミドメチル基またはトリチル基などが挙げられる。
【0085】
式(1)で表される化合物がジスルフィド結合を有する場合、通常のペプチド化学に用いられる方法に準じて、システイン残基を含む異なる2つのペプチド間で、またはシステイン残基を含むペプチドとシステイン間で、当該ジスルフィド結合を形成することができる。ジスルフィド結合の形成方法は、前述の文献(Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966; The Proteins, Vol 2, Academic Press Inc., New York, 1976; ペプチド合成、丸善(株),1975; ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985; 医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成、広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0086】
具体的には、ペプチドに含まれるシステイン残基が1個の場合、システイン側鎖上のメルカプト基の保護基を含むすべての保護基を除去した後、不活性溶媒中で酸化させることにより、ジスルフィド結合を有する化合物(ジスルフィド化合物)を製造することができる。また、メルカプト基を持つ2つの中間体を適当な溶媒中に混合し酸化することにより製造することができる。当該酸化の方法としては、通常のペプチド合成でジスルフィド結合を形成させる公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、ヨウ素酸化、アルカリ条件下で空気酸化反応に付す方法、またはアルカリ性もしくは酸性条件下酸化剤を添加してジスルフィド結合を形成する方法などが挙げられる。ここで、酸化剤としては、ヨウ素、ジメチルスルホキシド(DMSO)、フェリシアン化カリウムなどが挙げられる。溶媒としては水、酢酸、メタノール、クロロホルム、DMFもしくはDMSOなど、またはこれらの混合液を用いることができる。酸化反応により、しばしば、対称と非対称性のジスルフィド化合物の混合物が得られる。目的の非対称性ジスルフィド化合物は種々のクロマトグラフィー、または再結晶などで精製することによって得ることができる。あるいは、Npys基(3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル基)が結合したメルカプト基など、活性化されたメルカプト基をもつ中間体を用いてもよい。あらかじめ一方の中間体と例えば2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン)を混合することによりメルカプト基を活性化した後、他方の中間体を加えることにより、選択的なジスルフィド結合を形成することができる(Tetrahedron Letters. Vol.37. No.9, pp.1347-1350)。
【0087】
ペプチドに含まれるシステイン残基が2個以上の場合も、前記と同様の方法を用いることができる。この場合はジスルフィド結合様式が異なる異性体が得られる。システイン側鎖の保護基を特定の組み合わせにすることにより、目的のシステイン残基間でジスルフィド結合を形成した二量体を得ることができる。前記保護基の組み合わせとしては、MeBzl(メチルベンジル)基とAcm(アセトアミドメチル)基、Trt(トリチル)基とAcm基、Npys(3-ニトロ-2-ピリジルチオ)基とAcm基、S-Bu-t(S-tert-ブチル)基とAcm基などが挙げられる。例えば、MeBzl基とAcm基の組み合わせの場合、まずはMeBzl基とシステイン側鎖以外のその他の保護基を除去した後、ペプチド単量体を含む溶液を空気酸化反応に付して脱保護されたシステイン残基間にジスルフィド結合を形成し、次いでヨウ素による脱保護および酸化を行ってAcm基で保護されていたシステイン残基間にジスルフィド結合を形成する方法などが挙げられる。
【0088】
得られたペプチド、化合物および中間体は、当業者に公知の方法や通常のペプチド化学に用いられる方法に準じて精製することができる。例えば、種々のクロマトグラフィー(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過、もしくは逆相クロマトグラフィー)、または再結晶などで精製することができる。例えば、再結晶溶媒としては、メタノール、エタノール、もしくは2-プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ベンゼンもしくはトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミドもしくはアセトニトリルなどの非プロトン系溶媒、水、またはこれらの混合溶媒などを用いることができる。その他の精製方法としては、実験化学講座(日本化学会編、丸善)1巻などに記載された方法などを用いることができる。ジスルフィド化合物の精製方法は、前述の文献(Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966; The Proteins, Vol 2, Academic Press Inc., New York, 1976; ペプチド合成、丸善(株),1975; ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985; 医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成、広川書店,1991)などに記載されている。中でもHPLCが好ましい。
【0089】
式(1)で表される化合物において、1つ以上の不斉点がある場合、通常の方法に従って、その不斉点を有する原料(アミノ酸)を用いることによって、製造することができる。また、化合物の光学純度を上げるために、製造工程の適当な段階で光学分割などを行ってもよい。光学分割法としては例えば、式(1)で表される化合物またはその中間体を不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、もしくは2-プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエンなどの炭化水素系溶媒、またはアセトニトリルなどの非プロトン系溶媒、およびこれらの混合溶媒)、光学活性な酸(例えば、マンデル酸、N-ベンジルオキシアラニン、もしくは乳酸などのモノカルボン酸、酒石酸、о-ジイソプロピリデン酒石酸もしくはリンゴ酸などのジカルボン酸、またはカンファースルホン酸もしくはブロモカンファースルホン酸などのスルホン酸)と塩を形成させるジアステレオマー法により行うことができる。式(1)で表される化合物または中間体がカルボキシ基などの酸性官能基を有する場合は、光学活性なアミン(例えばα-フェネチルアミン、キニン、キニジン、シンコニジン、シンコニン、ストリキニーネなどの有機アミン)と塩を形成させることにより光学分割を行うこともできる。
【0090】
塩を形成させる温度としては、室温から溶媒の沸点までの範囲から選択される。光学純度を向上させるためには、一旦、溶媒の沸点付近まで温度を上げることが望ましい。析出した塩を濾取する際、必要に応じて冷却し、収率を向上させることができる。光学活性な酸、またはアミンの使用量は、基質に対し約0.5~約2.0当量の範囲、好ましくは1当量前後の範囲が適当である。必要に応じ結晶を不活性溶媒中(例えばメタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエンなどの炭化水素系溶媒、アセトニトリルなどの非プロトン系溶媒およびこれらの混合溶媒)で再結晶し、高純度の光学活性な塩を得ることもできる。また、必要に応じて光学分割した塩を通常の方法で酸または塩基で処理し、フリー体として得ることもできる。
【0091】
本明細書における「薬学上許容される塩」としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などの有機酸塩が挙げられ、塩基付加塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩などが挙げられ、さらにはアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩基性あるいは酸性アミノ酸といったアミノ酸塩が挙げられる。本明細書において、文脈上不適切でない限り、「ペプチド」または「化合物」なる用語は、その薬学上許容される塩を包含する。
【0092】
本明細書に記載の、前記(a)のペプチド、式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の、水和物およびエタノール溶媒和物などの溶媒和物も、本開示に含まれる。さらに、本開示は、本明細書に記載の化合物またはペプチドのジアステレオマー、エナンチオマーなどの存在し得るあらゆる立体異性体、およびあらゆる態様の結晶形も包含する。
【0093】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象における癌の処置に有用である。それゆえ、ある態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置するための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0094】
HLA-A*02:07陽性対象、HLA-A*03:01陽性対象、HLA-B*15:01陽性対象、またはHLA-B*27:05陽性対象とは、それぞれ、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05を含むHLAハプロタイプを有する対象を意味する。HLAアレル(HLAタイプ)は、通常用いられるHLAタイピング(特に、遺伝子型タイピング)の方法により、特定される。「対象」には、ヒト、および非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシのなど非ヒト動物が含まれるが、好ましくはヒトである。
【0095】
本明細書において、癌の処置には、癌の進行を完全または部分的に阻害するか、あるいは、癌の1以上の症状を少なくとも部分的に緩和することが含まれる。また、癌の処置には、寛解の導入、寛解の維持、および再発の抑制が含まれる。
【0096】
ある実施形態において、医薬組成物は、癌ワクチンである。別の実施形態において、医薬組成物は、癌の細胞性免疫療法におけるCTL誘導用組成物である。
【0097】
ある実施形態において、癌は、WT1が発現している癌、またはWT1遺伝子の発現レベルの上昇を伴う癌である。
【0098】
ある実施形態において、癌は、血液性癌または固形癌である。さらなる実施形態において、癌は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃がん、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨癌、膵癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、直腸癌、肛門部癌、精巣癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形癌、腎臓または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系腫瘍、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、扁平上皮癌、扁平細胞癌、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌、および前記癌の組み合わせから選択される。さらなる実施形態において、癌は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃がん、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、および神経膠腫から選択される。
【0099】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、またはこれを含む医薬組成物は、1以上の他の癌抗原ペプチド、例えば、MHCクラスI拘束性ペプチド、MHCクラスII拘束性ペプチドもしくはそのコンジュゲート体、またはその薬学上許容される塩と併用してもよい。他の癌抗原ペプチドとしては、以下の文献に記載のペプチドもしくはそれらの誘導体、またはこれらのコンジュゲート体が挙げられる:国際公開第2000/006602号、同第2002/079253、同第2003/106682号、同第2004/026897号、同第2004/063903号、同第2007/063903号、同第2010/123065号、同第2014/157692号、同第2005/053618号、同第2007/047764号、同第2007/120673号、同第2005/045027号、同第2010037395号、同第2000/018795号、同第2002/028414号、同第2003/037060号及び同第2004/100870号参照。
【0100】
ある実施形態において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、またはこれを含む医薬組成物は、MHCクラスII拘束性ペプチドと併用される。ある実施形態において、MHCクラスII拘束性ペプチドは、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである。
【0101】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、またはこれを含む医薬組成物はまた、1以上の他の薬物(本明細書中、併用薬物とも称する)と組み合わせて用いることができる。
【0102】
併用薬物は、「免疫調節剤」であってよい。本明細書において「免疫調節剤」とは、抗原提示細胞によるT細胞活性化において抗原提示細胞上及び/またはT細胞上の補助刺激シグナルの伝達に関与する分子に相互作用することにより補助刺激シグナルの伝達を制御する、または、免疫機構において直接的または間接的に免疫寛容(免疫抑制)の成立に関与する分子の機能を制御するもの全てをいう。癌抗原ペプチドは腫瘍内に腫瘍反応性のCTLを増加させる薬剤であるため、免疫調節剤との併用により、免疫調節剤の投与量を減弱し、有害事象を軽減できる可能性がある。すなわち、癌抗原ペプチドと免疫調節剤との併用により、より高い効果とより高い安全を併せ持った治療法を提供することができる。
【0103】
「免疫調節剤」は、抗体、核酸、タンパク質、ペプチドおよび低分子化合物から選択される薬剤であり得るが、これらに限定されない。「免疫調節剤」に関する記載において、「抗体」なる用語には抗体断片も含まれる。抗体断片としては、抗体の重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、Fd、sdFv、scFVなどが例示される。「免疫調節剤」に関する記載において、タンパク質は抗体を除くあらゆるタンパク質を意味する。「免疫調節剤」には、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激分子アゴニスト剤、免疫活性化剤、および低分子阻害剤が含まれる。
【0104】
「免疫チェックポイント阻害剤」は、癌細胞や抗原提示細胞による免疫抑制作用を阻害する。免疫チェックポイント阻害剤としては、特に限定されないが、以下からなる群から選択される分子に対する薬剤が挙げられる:(1)CTLA-4(イピリムマブ、トレメリムマブなど);(2)PD-1(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、AMP-224、AMP-514(MEDI0680)、ピディリズマブ(CT-011)など);(3)LAG-3(IMP-321、BMS-986016など);(4)BTLA;(5)KIR(IPH2101など);(6)TIM-3;(7)PD-L1(Durvalumab(MEDI4736)、MPDL3280A、BMS-936559、アベルマブ(MSB0010718C)など);(8)PD-L2;(9)B7-H3(MGA-271など);(10)B7-H4;(11)HVEM;(12)GAL9;(13)CD160;(14)VISTA;(15)BTNL2;(16)TIGIT;(17)PVR;(18)BTN1A1;(19)BTN2A2;(20)BTN3A2(Nat Rev Drug Discov. 2013; 12: 130-146;日経メディカル Cancer Review 2014; 9;Nat Rev Immunol. 2014; 14: 559-69);および(21)CSF1-R。
【0105】
「共刺激分子アゴニスト剤」は、T細胞上や抗原提示細胞上の共刺激分子を介した補助シグナルを伝達することにより、T細胞を活性化し、癌細胞や抗原提示細胞による免疫抑制作用を減弱させる。共刺激分子アゴニスト剤としては、特に限定されないが、以下の群から選択される分子に対する薬剤が挙げられる:(1)4-1BB(2)4-1BB-L;(3)OX40(4)OX40-L;(5)GITR;(6)CD28;(7)CD40;(8)CD40-L(9)ICOS;(10)ICOS-L;(11)LIGHT;および(12)CD27。
【0106】
「免疫活性化剤」は、T細胞や樹状細胞など免疫細胞を直接的あるいは間接的に活性化させることにより、リンパ節においてCTLを効率良く刺激する。免疫活性化剤としては、特に限定されないが、Toll様受容体(TLR)作動薬、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)作動薬、サイトカイン、またはヒートショックプロテイン(HSP)に対する薬剤が挙げられる。
【0107】
「Toll様受容体(TLR)作動薬」としては、特に限定されないが、例えば、TLR1/2作動薬、TLR2作動薬、TLR3作動薬(PolyI:Cなど)、TLR4作動薬(S型リポ多糖、パクリタキセル、リピドA、モノホスホリルリピドAなど)、TLR5作動薬(フランジェリンなど)、TLR6/2作動薬(MALP-2など)、TLR7作動薬(ガーディキモド、イミキモド、ロキソリビンなど)、TLR7/8作動薬(レシキモド(R848)など)、TLR7/9作動薬、TLR8作動薬(モトリモド(VTX-2337)など)、TLR9作動薬(CpG-ODNなど)、TLR11作動薬(プロフィリン)などが挙げられる。
【0108】
「サイトカイン」としては、特に限定されないが、例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、インターフェロン(INF)-α、INF-β、INF-γ、SCF、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、エリスロポエチン、トロンボポエチン、MIP(macrophage inflammatory protein)およびMCP(monocyte chemoattractant protein)などが挙げられる。
【0109】
「ヒートショックプロテイン(HSP)」としては、特に限定されないが、HSP70、HSP90、HSP90α、HSP90β、HSP105、HSP72,HSP40などが挙げられる。HSPに対する薬剤には、HSP阻害剤が含まれる。例えば、HSP90阻害剤として、特に限定されないが、タネスピマイシン(17-AAG)、ルミネスピブ(AUY-922、NVP-AUY922)、アルベスピマイシン(17-DMAG)塩酸塩、ガネテスピブ(STA-9090)、BIIB021、オナレスピブ(AT13387)、ゲルダナマイシン、NVP-BEP800、SNX-2112(PF-04928473)、PF-4929113(SNX-5422)、KW-2478、XL888、VER155008、VER-50589、CH5138303、VER-49009、NMS-E973、PU-H71、HSP990(NVP-HSP990)またはKNK437などが挙げられる。
【0110】
「低分子阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ヒストン脱アセチル化阻害剤、ヒストン脱メチル化阻害薬、ヒストンアセチル化酵素阻害剤、ヒストンメチル化酵素阻害剤、DNAメチル基転移酵素阻害剤、アントラサイクリン系抗生物質、白金製剤、MAPK阻害剤、β-カテニン阻害剤、STAT3阻害剤、NF-kB阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、IDO阻害剤、COX-2阻害剤CXCR4阻害剤およびアルギナーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0111】
「ヒストン脱アセチル化阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ボリノスタット(SAHA、MK0683)、エンチノスタット(MS-275)、パノビノスタット(LBH589)、トリコスタチンA(TSA)、モセチノスタット(MGCD0103)、BG45、BRD73954、ベリノスタット(PXD101)、ロミデプシン(FK228、デシペプチド)、4SC-202、HPOB、LMK-235、CAY10603、タスキニモド、TMP269、Nexturastat A、Rocilinostat(ACY-1215)、RGFP966、RG2833(RGFP109)、Scriptaid、ツバスタチンA、Pracinostat(SB939)、CUDC-101、M344、PCI-34051、ダシノスタット(LAQ824)、ツバスタチンA塩酸塩、アベキシノスタット(PCI-24781)、CUDC-907、AR-42、フェニル酪酸ナトリウム、レスミノスタット、ツバシン、キシノスタット(JNJ-26481585)二塩酸塩、MC1568、Givinostat(ITF2357)、Droxinostat、Chidamide(C S055、HBI-8000)、CHR-2485、CHR-3996、DAC-060、FRM-0334(EVP-0334)、MGCD-290、CXD-101(AZD-9468)、CG200745、アルギニン酪酸塩、スルフォラファン、SHP-141、CUDC-907、YM753(OBPー801)、バルプロ酸ナトリウム、アピシジンおよびCI994(Tacedinaline)などが挙げられる。
【0112】
「ヒストン脱メチル化阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、GSK J4 HCl、OG-L002、JIB-04、IOX1、SP2509、ORY-1001(RG-6016)、GSK J1、ML324、GSK-LSD1 2HClなどが挙げられる。
【0113】
「ヒストンアセチル化酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、C646、MG149、Remodelin、およびAnacardic Acidなどが挙げられる。
【0114】
「ヒストンメチル化酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、Pinometostat(EPZ5676)、EPZ005678、GSK343、BIX01294、Tazemetostat(EPZ6438)、3-deazaneplanocin A(DZNeP)HCl、UNC1999、MM-102、SGC0946、エンタカポン、EPZ015666、UNC0379、EI1、MI-2(Menin-MLL Inhibitor)、MI-3(Menin-MLL Inhibitor)、PFI-2、GSK126、EPZ04777、BRD4770、GSK-2816126およびUNC0631などが挙げられる。
【0115】
「DNAメチル基転移酵素阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、デシタビン、アザチジン、RG108、チオグアニン、ゼブラリン、SGI-110、CC-486、SGI-1027、ロメグアトリブおよびプロカイナミド塩酸塩などが挙げられる。
【0116】
「アントラサイクリン系抗生物質」は、DNA鎖間への挿入によって、DNAがほどかれることを阻害する。アントラサイクリン系抗生物質としては、特に限定されないが、例えば、ドキソルビシン、リポソーマルドキソルビシン、ダウノルビシン、ピラルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、アムルビシン、アロインまたはミトキサトロンなどが挙げられる。
【0117】
「白金製剤」としては、特に限定されないが、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン(JM-126)、オキサリプラチン(ELOXATIN)、四硝酸トリプラチンまたはそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0118】
「MAPK阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、SB203580、ドラマピモド(BIRB796)、SB202190(FHPI)、LY2228820、VX-702、SB239063、Pexmetinib(ARRY-614)、PH-797804、VX-745またはTAK-715などが挙げられる。
【0119】
「β―カテニン阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、XAV-939、ICG-001、IWR-1-endo、Wnt-C59(C59)、LGK-974、KY02111、IWP-2、IWP-L6、WIKI4またはFH535などが挙げられる。
【0120】
「STAT3阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、S3I-201、Stattic、ニクロサミド、ニフロキサジド、ナパブカシン(BBI608)、クリプトタンシノン、HO-3867、WHI-P154、FLLL32、STA-21、WP1066またはSH-4-54などが挙げられる。
【0121】
「NF-kB阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、QNZ(EVP4593)、4-アミノサリチル酸ナトリウム、JSH-23、カフェイン酸フェネチル、サリチル酸ナトリウム、アンドログラホリドまたはSC75741などが挙げられる。
【0122】
「JAK阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ルキソリチニブ(INCB018424)、トファシチニブ(CP-690550)クエン酸塩、AZD1480、フェドラチニブ(SAR302503、TG101348)、AT9283、チロホスチンB42(AG-490)、モメロチニブ(CYT387)、トファシチニブ(CP-690550、タソシチニブ)、WP1066、TG101209、ガンドチニブ(LY2784544)、NVP-BSK805 2HCl、バリシチニブ(LY3009104、INCB02850)、AZ960、CEP-33779、パクリチニブ(SB1518)、WHI-P154、XL019、S-ルキソリチニブ(INCB018424)、ZM39923 HCl、デセルノチニブ(VX-509)、Cerdulatinib(PRT062070、PRT2070)、フィルゴチニブ(GLPG0634)、FLLL32、ペフィシチニブ(ASP015K、JNJ-54781532)、GLPG0634 analogue、Go6976またはCurcumolなどが挙げられる。
【0123】
「mTOR阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、シロリムス(ラパマイシン)、デフォロリムス(AP23573、MK-8669)、エベロリムス(RAD-001)、テムシロリムス(CCI-779、NSC683864)、ゾタロリムス(ABT-578)、およびバイオリムスA9(ウミロリムス)、AZD8055、KU-0063794、Voxtalisib(XL765、SAR245409)、MHY1485、ダクトリシブ(BEZ235、NVP-BEZ235)またはPI-103、Torkinib(PP242)などが挙げられる。
【0124】
「IDO阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、NLG919、INCB024360アナログ、インドキシモド(NLG-8189)およびEpacadostat(INCB024360)などが挙げられる。
【0125】
「COX2阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、カルプロフェン、セレコキシブ、ルミラコキシブ、トルフェナム酸、ニメスリド、ニフルム酸、Asaraldehyde、ロルノキシカム、メクロフェナミン酸ナトリウム、アンフェナックナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラック、ナプロキセンナトリウム、インドメタシン、イブプロフェン、アスピリン、メフェナム酸、ブロムフェナクナトリウム、オキサプロジン、ザルトプロフェンおよびネパフェナックなどが挙げられる。
【0126】
「CXCR4阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、WZ811、Plerixafor(AMD3100)およびPlerixafor 8HCl(AMD3100 8HCl)などが挙げられる。
【0127】
併用薬物は、「ホルモン療法剤」、「免疫療法剤」、「生物学的製剤」、「細胞増殖因子」、「細胞増殖因子阻害剤」、「細胞増殖因子受容体阻害剤」、「放射線療法剤」、「補助剤」もしくは「化学療法剤」からなる群から選択される1又は複数の薬物であってもよい。例えば、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、またはこれを含む医薬組成物は、前記群から選択される1~5種類、1~3種類、または1種類の薬物と併用することができる。
【0128】
「ホルモン療法剤」としては、副腎皮質ホルモン系薬剤(例えば、ステロイド系抗炎症薬、エストロゲン製剤、プロゲステロン製剤、アンドロゲン製剤など)、抗エストロゲン剤、エストロゲン調整剤、エストロゲン合成阻害剤、抗アンドロゲン剤、アンドロゲン調整剤、アンドロゲン合成阻害剤、LH-RHアゴニスト製剤、LH-RHアンタゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤、ステロイドラクトナーゼ阻害剤、ピル製剤、またはレチノイド及びレチノイドの代謝を遅らせる薬剤などが挙げられる。
【0129】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、フルオキシメステロール、クロロトリアニセン、メチルテストステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、ヨードキシフェン、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン、ロイプロリド、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、エストラムスチン、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、テトラゾール、ケトコナゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、エンザルタミド、ミフェプリストン、フィナステリド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、アビラテロン、リアロゾール、ベキサロテンまたはDN101などが挙げられる。
【0130】
「免疫療法剤」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン(IFN)-α、インターフェロン(IFN)-β、インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体またはTLR作動薬(例えば、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR9作動薬)などが挙げられる。
【0131】
「生物学的製剤」としては、特に限定されないが、例えば、インターロイキン-2(Aldesleukin)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(フィルグラスチン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(サルグラモスチム)、IL13-PE38QQR、バチルスカルメット-ゲラン、レバミゾール、オクトレオチド、CPG7909、Provenge、GVAX、Myvax、Favld、レナリドマイド、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、アレムツズマブ、エンドスタチン、イブリツモマブ チウキセタン、トシツモマブ、セツキシマブ、ザノリムマブ、オファツムマブ、HGS-ETR1、ペルツズマブ、M200、SGN-30、マツズマブ、アデカツムマブ、デノスマブ、ザルツムマブ、MDX-060、ニモツズマブ、MORAb-003、Vitaxin、MDX-101、MDX-010、DPC4抗体、NF-1抗体、NF-2抗体、Rb抗体、p53抗体、WT1抗体、BRCA1抗体、BRCA2抗体、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、黒色腫関連抗原(MART-1、gap100、MAGE1,3チロシン)、乳頭腫ウイルスE6およびE7断片、またはそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0132】
前記「細胞増殖因子」、「細胞増殖因子阻害剤」および「細胞増殖因子受容体阻害剤」における細胞増殖因子は、細胞増殖を促進する物質であれば、どのようなものでもよく、例えば、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用を発揮する因子があげられる。
【0133】
「細胞増殖因子」として、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)、インスリン様成長因子(Insulin-Like Growth Factor:IGF(例えば、インスリン、IGF-1、IGF-2など))、トランスフォーミング成長因子(Transforming Growth Factor:TGF(例えば、TGFーalpha、TGF-beta))、神経成長因子(Nerve Growth Factor:NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor:BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular Endothelial Growth Factor:VEGF)、コロニー刺激因子(Colony Stimulating Factor:CSF(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-Colony Stimulating Factor:G-CSF))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-Macrophage-Colony Stimulating Factor:GM-CSF))、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor:PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin:EPO)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor:FGF、(例えば、酸性FGF、塩基性FGF、KGK(Keratinocyte Growth Factor)、FGF-10など))、肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor:HGF)へレグリン、またはアンジオポエチンなどが挙げられる。なお、細胞増殖因子は、成長因子と同義である。
【0134】
「細胞増殖因子阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子阻害剤(EGF阻害剤)、インスリン様成長因子阻害剤(IGF阻害剤)、神経成長因子阻害剤(NGF阻害剤)、脳由来神経栄養因子阻害剤(BDNF阻害剤)、血管内皮細胞増殖因子阻害剤(VEGF阻害剤)、コロニー刺激因子阻害剤(CSF阻害剤)、血小板由来成長因子阻害剤(PDGF阻害剤)、エリスロポエチン阻害剤(EPO阻害剤)、線維芽細胞増殖因子阻害剤(FGF阻害剤)、肝細胞増殖因子阻害剤(HGF阻害剤)、へレグリン阻害剤、またはアンジオポエチン阻害剤などが挙げられる。なお、細胞増殖因子阻害剤は、成長因子阻害剤と同義である。
【0135】
「細胞増殖因子受容体阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、上皮成長因子受容体阻害剤(EGFR阻害剤)、インスリン様成長因子受容体阻害剤(IGFR阻害剤)、神経成長因子受容体阻害剤(NGFR阻害剤)、脳由来神経栄養因子受容体阻害剤(BDNFR阻害剤)、血管内皮細胞増殖因子受容体阻害剤(VEGFR阻害剤)、コロニー刺激因子受容体阻害剤(CSFR阻害剤)、血小板由来成長因子受容体阻害剤(PDGFR阻害剤)、エリスロポエチン受容体阻害剤(EPOR阻害剤)、線維芽細胞増殖因子受容体阻害剤(FGFR阻害剤)、肝細胞増殖因子受容体阻害剤(HGFR阻害剤)、へレグリン受容体阻害剤、またはアンジオポエチン受容体阻害剤などが挙げられる。なお、細胞増殖因子受容体阻害剤は、成長因子受容体阻害剤と同義である。
【0136】
「放射線療法剤」として、特に限定されないが、例えば、放射性物質及び放射性増感剤などが挙げられる。
【0137】
「補助剤」は、抗癌剤による副作用や嘔吐を抑制するために用いられ、特に限定されないが、例えば、アプレピタント、オンダンセトロン、ロラゼパム、デキサメタゾン、ジフェンヒドラミン、ラニチジン、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、シメチジン、プロクリット、エポエチンアルファ、フィルグラスチム、オプレルベキン、ロイコボリン及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などが挙げられる。
【0138】
「化学療法剤」としては、特に限定されないが、例えば、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレータ、抗有糸分裂剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤、エピゲノム薬、免疫調整薬、分子標的治療薬、新脈管形成阻害剤及びその他の化学療法剤などが用いられる。代表的な例を次に記載する。
【0139】
「アルキル化剤」としては、特に限定されないが、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、クロラムブシル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、プロカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾジン、ピポブロマン、エトグルシド、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、セムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン、メクロエタミン、ウラシルマスタード、トラベクテジン、クロルメチン、マンノスルファン、トリアジコン、プロカルバシン、カンホスファミド、ニトロソウレア及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0140】
「白金製剤」としては、特に限定されないが、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、オキサリプラチン、四硝酸トリプラチン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0141】
「代謝拮抗剤」としては、特に限定されないが、例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリミジン代謝阻害薬、プリン代謝阻害薬、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬、及びヌクレオチドアナログが挙げられる。
【0142】
「代謝拮抗剤」としては、特に限定されないが、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エオシタビン、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例えば、フルオロウラシル、カルゾナール、ベンナン、ルナコール、ルナポン、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビンなど)、アミノプテリン、ネララビン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチン、フロクスウリジン、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、アスパラギナーゼ、ボルテゾミブ、ラルチトレキセド、クロファラビン、エノシタビン、サパシタビン、アザシチジン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、Liproxstatin-1、D4476、Xanthohumol、Epacadostat(INCB024360)、Vidofludimus、P7C3、GMX1778(CHS828)、NCT-501、SW033291、Ro61-8048及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0143】
「トポイソメラーゼ阻害薬」としては、特に限定されないが、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アントラセンジオン、ミトキサントロン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン、イリノテカン、カンプトテシン、ルビテカン、ベロテカン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、アムサクリン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0144】
「DNAインターカレータ」としては、特に限定されないが、例えば、プロフラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、サリドマイド及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0145】
「抗有糸分裂剤」としては、特に限定されないが、例えば、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体(例えば、DHAパクリタキセル、ポリグルタメート化パクリタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセルミセル、7α‐グルコシルオキシアセチルパクリタキセル、BMS-275183など)、ドセタキセル、ビノルレビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、エトポシド、テニポシド、イクサベピロン、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセル、イスピネシブ、コルヒチン、ビンフルニン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0146】
「抗癌性抗生物質」としては、特に限定されないが、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、ミトラマイシンA、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸アルムビシン、ネオカルチノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン、リポソーマルドキソルビシン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0147】
「植物由来抗癌剤」としては、特に限定されないが、例えば、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド、リン酸エトポシド、エリブリン、ソブゾキサン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、パクリタキセル注射剤、ドセタキセル、DJ-927、ビノレルビン、トポテカン及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0148】
「エピゲノム薬」としては、特に限定されないが、例えば、DNAメチル化阻害薬、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、DNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素活性化剤、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤およびメチル化ヌクレオチドなどが挙げられる。
【0149】
「エピゲノム薬」としては、特に限定されないが、例えば、ボリノスタット、ベリノスタット、モセチノスタット(MGCD0103)、エンチノスタット(SNDX-275)、ロミデプシン、アザシチジン、デシタビン、GSK2879552 2Hl、SGC707、ORY-1001(RG-6016)、PFI-4、SirReal2、GSK2801、CPI-360、GSK503、AMI-1、CPI-169及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0150】
「免疫調整薬」としては、特に限定されないが、例えば、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0151】
「分子標的治療薬」は、低分子化合物であっても抗体であってもよい。「分子標的治療薬」としては、特に限定されないが、例えば、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、モノクローナル抗体、mTOR阻害剤、TNF阻害薬、及びT細胞阻害薬などが挙げられる。
【0152】
「キナーゼ阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤、及びMEK(分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)阻害剤などが挙げられる。
【0153】
具体的には、「キナーゼ阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニンテダニブ、ニロチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、イブルチニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、パルボシクリブ、トラメチニブ、レゴラフェニブ、セジバニブ、レスタウルチニブ、バンデチニブ、バタラニブ、セリシクリブ、チバンチニブ、カネルチニブ、ペリチニブ、テセバチニブ、セジラニブ、モテサニブ、ミドスタウリン、フォレチニブ、カボザンテイニブ、セルメチニブ、ネラチニブ、ボラセルチブ、サラカチニブ、エンザスタウリン、タンデュチニブ、セマキサニブ、アルボシジブ、ICR-62、AEE788、PD0325901、PD153035、TK787、amcasertib(BBI503)、E6201、E7050及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0154】
「プロテアソーム阻害剤」としては、特に限定されないが、例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0155】
「モノクローナル抗体」としては、特に限定されないが、例えば、抗CD22抗体、抗CD20抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD5抗体、抗CD52抗体、抗上皮成長因子受容体抗体(EGFR抗体)、抗血管内皮細胞増殖因子抗体(VEGF抗体)、抗TNF-α抗体、抗IL-1レセプター抗体、抗IL-2レセプター抗体、抗IL-5レセプター抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗HER2抗体、抗IgE抗体、抗IgG抗体、抗RSウイルス抗体、抗CCR4抗体、抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4、CD152)抗体、抗PD-1抗体、抗RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)抗体、抗c-Met抗体、抗CXCR4抗体などが挙げられる。
【0156】
具体的には、「モノクローナル抗体」としては、特に限定されないが、例えば、イブリツモマブ チウキセタン、リツキシマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、オマリズマブ、メポリズマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、パリビズマブ、ラニビズマブ、セルトリズマブ、オクレリズマブ、モガムリズマブ、エクリズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、イノツズマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ、ラムシルマブ、ニボルマブ、アナキンラ、デノスマブ、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、マツズマブ、ファルレツズマブ、MORAb-004、MORA-b009及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0157】
「mTOR阻害剤」として、特に限定されないが、例えば、エベロリムス(RAD001)、ラパマイシン(シロリムス)、AZD8055、テムシロリムス(CCI-779、NSC683864)、KU-0063794、Voxtalisib(XL-765、SAR245409)、MHY1485、ダクトリシブ(BEZ235)、PI-103、Torkinib(PP242)、リダフォロリムス(デフォロリムス、MK-8669)、INK-128(MLN0128)、Torin1、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ(GDC-0980、RG7422)、GSK1059615、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、WYE-132、PP121、WYE-354、AZD2014、Torin2、WYE-687、CH5132799、WAY-600、ETP-46464、GDC-0349、XL388、ゾタロリムス(ABT-578)、タクロリムス(FK506)、BGT226(NVP-BGT226)、パロミド529(P529)、クリソファン酸及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0158】
「TNF阻害薬」として、特に限定されないが、例えば、エタネルセプト、レナリドミド(CC-5013)、ポマリドミド、サリドマイド、ネクロスタチン-1またはQNZ(EVP4593)などが挙げられる。
【0159】
「T細胞阻害薬」として、特に限定されないが、例えば、アバタセプトなどが挙げられる。
【0160】
「新脈管形成阻害剤」として、特に限定されないが、例えば、CM101、IFN-α、IL-12、血小板因子-4、スラミン、セマキサニブ、トロンボスポンジン、VEGFRアンタゴニスト、新脈管形成抑制ステロイドプラスヘパリン、軟骨由来新脈管形成阻止因子、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、バチマスタット、マリマスタット、アンギオスタチン、エンドスタチン、2-メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、αVβ3阻害剤、リノミド、ADH-1、E7820及びそれらのDDS製剤などが挙げられる。
【0161】
「その他の化学療法剤」としては、特に限定されないが、例えば、フィナステリド、ソブゾキサン、オバトクラックス、エファプロキシラール、チピファルニブ、ロナファルニブなどが挙げられる。
【0162】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を、他の癌抗原ペプチドまたはその薬学上許容される塩および/または併用薬物と併用する場合、各有効成分は、同じ組成物中に含まれてもよく、別の組成物中に含まれてもよい。ある実施形態において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩と、他の癌抗原ペプチドまたはその薬学上許容される塩とは、同じ組成物中に含まれる。別の実施形態において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩と、他の癌抗原ペプチドまたはその薬学上許容される塩とは、別の組成物中に含まれる。組成物は、1以上の前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、および/または1以上の他の癌抗原ペプチドを含んでもよい。各有効成分を含む組成物は、他の有効成分との併用における用法・用量等を記載した説明書等とともに提供されてもよい。あるいは、各有効成分を含む組成物が組み合わされ、キットとして提供されてもよい。キットは、併用における用法・用量等を記載した説明書、包装容器、等とともに提供されてもよい。複数の有効成分を併用する場合、これらは同一の投与スケジュールで投与しても、異なる投与スケジュールで投与してもよい。
【0163】
本開示の組成物は、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩以外に、薬学上許容される担体を含んでいてもよい。また本開示の組成物は、CTLおよび/またはヘルパーT細胞の誘導効率を増強させるために、適当なアジュバントを含むか、あるいは適当なアジュバントと共に投与されてもよい。
【0164】
「薬学上許容される担体」は、用いられる用量及び濃度で当該担体を曝露される細胞又は哺乳動物に対して毒性を示さない。薬学上許容される担体はしばしばpH緩衝水溶液である。薬学上許容される担体の例には以下が含まれる:緩衝剤(例えばリン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸及び他の有機酸);抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量ポリペプチド(約10残基未満);タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、メチオニン又はリジン);単糖類、二糖類及び他の炭水化物(例えばグルコース、マンノース又はデキストリン);キレート剤(例えばEDTA);糖アルコール(例えばマンニトール、トレハロース又はソルビトール):安定化剤(例えばジエチレントリアミン五酢酸);塩形成対イオン(例えばナトリウム);溶解補助剤(例えばポリソルベート80(登録商標))及び/又は非イオン性界面活性剤(例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(登録商標))。また、薬学上許容される担体は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳糖、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、および不活性ウイルス粒子などの大型の緩慢に代謝される巨大分子であってよい。また本明細書に記載の式(1)で表される化合物またはペプチドは、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子径の製剤、リピッドを結合させた製剤などにして投与することもできる。
【0165】
アジュバントとしては、文献(Clin. Microbiol. Rev., 7: 277-289, 1994)に記載のあるものなどが応用可能であり、具体的には、菌体由来成分、GM-CSF、インターロイキン-2、インターロイキン-7もしくはインターロイキン-12などのサイトカイン、植物由来成分、海洋生物由来成分、水酸化アルミニウムの如き鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールの如き界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、または油乳濁液(エマルジョン製剤)などが挙げることができる。菌体由来成分としては、リピドA(lipid A)、その誘導体であるモノホスホリノリピドA(monophosphoryl lipid A)、菌体(BCG菌などのMycobacterium属細菌が挙げられる)の死菌、細菌由来のタンパク質、ポリヌクレオチド、フロイント不完全アジュバント(Freund's Incomplete Adjuvant)、フロイント完全アジュバント(Freund's Complete Adjuvant)、細胞壁骨格成分(例えばBCG-CWSなどが挙げられる)、トレハロースジミコレート(TDM)などが挙げられる。
【0166】
また、アジュバントとして、沈降性アジュバントと油性アジュバントを挙げることができる。沈降性アジュバントは、ペプチドが吸着する無機物の懸濁剤を表す。沈降性アジュバントとしては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム(アラム、Alum)、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン、ペペス、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。油性アジュバントは、ペプチドを含む水溶液を鉱油で包みミセルをつくり乳化する油乳剤を表す。油性アジュバントとしては、具体的には、流動パラフィン、ラノリン、フロイントアジュバント(フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント)、モンタナイド、W/Oエマルション(WO2006/078059参照)等が挙げられるがこれに限定されない。
【0167】
本開示の組成物は、経口投与用または非経口投与用の製剤でありうるが、例えば、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、吸入剤、経鼻剤等として用いられる。好ましい実施形態において、本開示の組成物は、注射剤として用いられる。
【0168】
注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定化剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0169】
外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の有効成分を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造される。
【0170】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の有効成分を基剤に研和、または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0171】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の有効成分を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0172】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の有効成分を基剤に溶融または乳化させて調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、高級アルコール(2-ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0173】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の有効成分を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0174】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の有効成分を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0175】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0176】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定化剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。
【0177】
吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0178】
スプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定化剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば、米国特許第2,868,691号明細書および米国特許第3,095,355号明細書に詳しく記載されている。
【0179】
非経口投与のためその他の組成物としては、直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0180】
ある実施形態において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を含む組成物は、トレハロース、マンニトール、メチオニン、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびpH調整剤からなる群から選択される1以上の薬学上許容される担体を含む。
【0181】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩、並びに併用薬物の投与方法は、対象疾患、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。投与方法は、例えば、注射または輸液による非経口投与、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮膚内、または皮下投与である。本明細書に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩は、リンパ球療法またはDC(樹状細胞)療法に用いられてもよい。
【0182】
投与回数および投与間隔は、対象疾患、対象の状態、投与経路などの条件に応じて適宜選択することができる。通常、投与は複数回であり、数日ないし数月に一回投与するのが好ましい。
【0183】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の投与量、および併用薬物の投与量は、それぞれ、対象疾患、対象の状態、投与経路などの条件に応じて適宜選択することができる。例えば、前記ペプチドもしくは化合物またはその薬学上許容される塩の1回あたりの投与量は、通常、0.0001mg~1000mg、好ましくは、0.001mg~1000mg、より好ましくは0.1mg~10mgである。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。例えば、免疫調節剤の場合、その体重1kgあたりの投与量は、通常、0.0001mg~1000mg、好ましくは、0.001mg~1000mg、より好ましくは0.1mg~10mgである。
【0184】
有効成分が単一の組成物中に含まれる場合、その配合比は、対象疾患、対象の状態、投与経路などにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、免疫調節剤などの併用薬物は、本明細書に記載のペプチドおよび/または化合物1重量部に対し0.01~100重量部用いることができる。
【0185】
本明細書において、「有効量」とは、癌の進行を完全または部分的に阻害するか、癌の1以上の症状を少なくとも部分的に緩和しうる、有効成分の量、あるいは、癌の寛解を導入または維持しうる、および/または再発を抑制しうる、有効成分の量である。有効量は、対象の年齢および性別、処置される状態、状態の重篤度、ならびに求められている結果などにより決定される。所定の対象についての有効量は、当業者に知られる方法によって決定することができる。
【0186】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩は、非薬剤療法と組み合わせてもよい。非薬剤療法としては、例えば、手術、放射線療法、遺伝子治療、温熱療法、凍結療法、レーザー灼熱療法などが挙げられ、これらを2種以上組み合わせることもできる。例えば、前記ペプチドもしくは化合物またはその薬学上許容される塩を、手術等の非薬剤療法の前または後に、あるいは2または3種の非薬剤療法を組み合わせた治療前または後に使用することができる。
【0187】
前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩は、副作用抑制の目的として、制吐剤、睡眠導入剤、抗痙攣薬などの薬剤とさらに組み合わせて用いることができる。
【0188】
本開示は、別の態様において、前記(a)のペプチドを、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05を介して提示する抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、B-リンパ球、マクロファージなど)に関する。かかる抗原提示細胞を用いることで、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象においてCTLを誘導することができる。HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05を介して前記(a)のペプチドを提示する抗原提示細胞は、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の存在下、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性の未熟抗原提示細胞を培養することにより、得ることができる。
【0189】
本開示は、別の態様において、抗原提示細胞の誘導方法であって、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の存在下、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性の未熟抗原提示細胞を培養することを含む方法に関する。本明細書における「未熟抗原提示細胞」は、成熟して抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、B-リンパ球、マクロファージなど)になり得る細胞をいう。未熟抗原提示細胞は、例えば、PBMCなどに含まれているため、かかる細胞を前記ペプチドもしくは化合物またはその薬学上許容される塩存在下で培養してもよい。
【0190】
本開示は、別の態様において、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置する方法であって、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05を介して前記(a)のペプチドを提示する抗原提示細胞を、対応するHLAサブタイプが陽性の対象に投与することを含む方法に関する。抗原提示細胞の投与方法は、疾患の種類、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。投与方法は、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与などが挙げられるが、これらに限らない。
【0191】
本開示は、別の態様において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩により誘導されるCTLに関する。かかるCTLは、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌細胞を傷害することができる。
【0192】
本開示は、別の態様において、CTLの誘導方法であって、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の存在下、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象のPBMCを培養することを含む方法に関する。PBMCを前記ペプチドもしくは化合物またはそのまたはその薬学上許容される塩の存在下で培養することで、PBMC中の前駆細胞から前記ペプチドに特異的なCTLが誘導される。得られたペプチド特異的CTLをHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象に投与することで、癌を処置することができる。
【0193】
本開示は、別の態様において、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置する方法であって、前記(a)のペプチドに特異的なCTLを対象に投与することを含む方法に関する。ペプチド特異的CTLの投与方法は、疾患の種類、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。投与方法は、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、経鼻投与、経口投与などが挙げられるが、これらに限らない。
【0194】
本開示は、別の態様において、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を構成成分として含むキットに関する。ある実施形態において、キットは、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象における癌の処置に用いられる。別の実施形態において、キットは、上記の抗原提示細胞誘導方法またはCTL誘導方法に用いられる。キットは、前記ペプチドもしくは化合物またはその薬学上許容される塩のほかに、例えば、対象の試料(例えば、末梢血単核細胞)の取得手段、アジュバント、反応容器等を含んでいてもよい。一般的には、キットには取扱説明書を添付する。
【0195】
ある態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置するための方法であって、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩をHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象に投与することを含む方法
を提供する。
【0196】
ある態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置するために使用するための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩
を提供する。
【0197】
ある態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において癌を処置するための医薬の製造のための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の使用
を提供する。
【0198】
別の態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において良性腫瘍を処置するための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を含む医薬組成物を提供する。本態様は、前述の癌の処置に関する記載にしたがい、実施することができる。
【0199】
「良性腫瘍」は、病理学的に悪性所見を持たない腫瘍であり、悪性腫瘍または癌と区別される。良性腫瘍は、通常、転移や浸潤傾向を示さない。良性腫瘍の診断は、必ずしも臨床的な予後が良好であることを意味しない。例えば、脳幹部に発生した低異型度髄膜腫は良性腫瘍であるが、治療困難であり、かつ脳幹を圧迫して予後不良であるため、臨床悪性であり、治療や予防が必要とされうる。
【0200】
良性腫瘍としては、家族性大腸腺腫症、非遺伝性の大腸腺腫、膵管内乳頭粘液性腫瘍、脳の髄膜腫、神経鞘腫、各臓器の上皮性の腺腫、乳頭腫、非上皮性の筋腫、脂肪腫、軟骨腫、血管腫などが挙げられる。
【0201】
ある実施形態において、良性腫瘍は、家族性大腸腺腫症である。家族性大腸腺腫症は、癌抑制遺伝子APC(adenoma polyposis coli)の変異を特徴とし、腸管に多数の腺腫が形成される遺伝性疾患である。「家族性大腸腺腫症」、「家族性大腸ポリポーシス」、「家族性腺腫性ポリポーシス」、および「FAP」との用語は、互換的に使用されうる。本明細書において、家族性大腸腺腫症には、ガードナー症候群などの、腸管以外の組織における腫瘍を併発した疾患も包含される。
【0202】
さらなる態様において、本開示は、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において良性腫瘍を処置するための方法であって、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩をHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象に投与することを含む方法;HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において良性腫瘍を処置するために使用するための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩;およびHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、またはHLA-B*27:05陽性対象において良性腫瘍を処置するための医薬の製造のための、前記(a)のペプチドもしくは式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0203】
本開示の例示的な実施形態を以下に記載する。
[1]
HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象において癌を処置するための、以下の(a)または(b)を含む医薬組成物:
(a)RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドある、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドまたはその薬学上許容される塩;または
(b)式(1):
【化27】
[式中、X
aおよびY
aは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
aのアミノ酸残基数とY
aのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり;
癌抗原ペプチドAは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドAのN末端アミノ酸のアミノ基が式(1)中のY
aと結合し、癌抗原ペプチドAのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(1)中の水酸基と結合し;
R
1は、水素原子、式(2):
【化28】
(式中、X
bおよびY
bは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
bのアミノ酸残基数とY
bのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドBは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドBのN末端アミノ酸のアミノ基が式(2)中のY
bと結合し、癌抗原ペプチドBのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(2)中の水酸基と結合し、式(2)中の硫黄原子が式(1)中の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合している。)
で表される基、または癌抗原ペプチドCを表し、
癌抗原ペプチドCは、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスI拘束性ペプチドまたは1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドCのシステイン残基の硫黄原子は式(1)中の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合しており、癌抗原ペプチドCのN末端に1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合していてもよく;
R
1が、水素原子である場合、癌抗原ペプチドAは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、式(2)で表される基である場合、癌抗原ペプチドAおよび/または癌抗原ペプチドBは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、癌抗原ペプチドCである場合、癌抗原ペプチドAおよび/または癌抗原ペプチドCは、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)、ALLPAVPSL(配列番号4)、SLGEQQYSV(配列番号5)、RVPGVAPTL(配列番号6)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または、配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドであり;
R
1が、式(2)で表される基であり、癌抗原ペプチドBが1つのシステイン残基を含む場合、癌抗原ペプチドBのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化29】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子と、ジスルフィド結合を介して結合していてもよく;
R
1が、癌抗原ペプチドCであり、癌抗原ペプチドCのN末端に1つのシステイン残基を含む1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合している場合、癌抗原ペプチドCのN末端に結合しているペプチドのシステイン残基の硫黄原子が、式(3):
【化30】
(式中、X
dおよびY
dは、独立して、単結合または1~4残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基を表し、X
dのアミノ酸残基数とY
dのアミノ酸残基数の和は0~4の整数であり、癌抗原ペプチドDは、7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドを表し、癌抗原ペプチドDのN末端アミノ酸のアミノ基が式(3)中のY
dと結合し、癌抗原ペプチドDのC末端アミノ酸のカルボニル基が式(3)中の水酸基と結合している。)
中の硫黄原子と、または、1つのシステイン残基を含む7~30残基のアミノ酸からなるMHCクラスII拘束性ペプチドである癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合していてもよい]
で表される化合物またはその薬学上許容される塩。
[2]
前記対象が、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象である、前記1に記載の医薬組成物。
[3]
前記対象が、HLA-A
*02:07陽性対象である、前記1に記載の医薬組成物。
[4]
前記対象が、HLA-A
*03:01陽性対象である、前記1に記載の医薬組成物。
[5]
前記対象が、HLA-B
*15:01陽性対象である、前記1に記載の医薬組成物。
[6]
前記対象が、HLA-B
*27:05陽性対象である、前記1に記載の医薬組成物。
[7]
前記(a)のペプチドまたはその薬学上許容される塩を含む、前記1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
[8]
前記(a)のペプチドが、RMFPNAPYL(配列番号2)、CMTWNQMNL(配列番号3)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド、または、配列番号2、3、および7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、CTL誘導活性を有するペプチドである、前記7に記載の医薬組成物。
[9]
前記(a)のペプチドが、RMFPNAPYL(配列番号2)、RYFPNAPYL(配列番号8)、YMFPNAPYL(配列番号13)、CMTWNQMNL(配列番号3)、CYTWNQMNL(配列番号14)およびVLDFAPPGA(配列番号7)から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドである、前記7または8に記載の医薬組成物。
[10]
前記(a)のペプチドが、RMFPNAPYL(配列番号2)、RYFPNAPYL(配列番号8)、またはYMFPNAPYL(配列番号13)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記7~9のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]
前記(a)のペプチドが、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記7~10のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]
前記(b)の式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を含む、前記1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]
X
aが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
aが単結合であるか、X
aおよびY
aが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
aが単結合であり且つY
aが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
aが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
aが単結合であるか、X
aが単結合であり且つY
aが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、またはX
aおよびY
aが単結合である、前記12に記載の医薬組成物。
[14]
X
aが単結合であり、Y
aが単結合、アラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基である、前記12または13に記載の医薬組成物。
[15]
X
aが単結合または1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり、Y
aが単結合である、前記12~14のいずれかに記載の医薬組成物。
[16]
X
aおよびY
aが単結合である、前記12~15のいずれかに記載の医薬組成物。
[17]
癌抗原ペプチドAが、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド、または配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである、前記12~16のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]
癌抗原ペプチドAが、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記12~17のいずれかに記載の医薬組成物。
[19]
癌抗原ペプチドAが、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列を含むペプチドである、前記18に記載の医薬組成物。
[20]
癌抗原ペプチドAが、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記18に記載の医薬組成物。
[21]
R
1が水素原子である、前記12~20のいずれかに記載の医薬組成物。
[22]
式(1)で表される化合物が、
CRMFPNAPYL(配列番号49)、
CCMTWNQMNL(配列番号50)、
CCYTWNQMNL(配列番号51)、
CALLPAVPSL(配列番号52)、
CSLGEQQYSV(配列番号53)、
CRVPGVAPTL(配列番号54)および
CVLDFAPPGA(配列番号55)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記21に記載の医薬組成物。
[23]
R
1が式(2)で表される基である、前記12~20のいずれかに記載の医薬組成物。
[24]
X
bが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
bが単結合であるか、X
bおよびY
bが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
bが単結合であり且つY
bが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
bが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
bが単結合であるか、X
bが単結合であり且つY
bが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、またはX
bおよびY
bが単結合である、前記23に記載の医薬組成物。
[25]
X
bが単結合であり、Y
bが単結合、アラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基である、前記23または24に記載の医薬組成物。
[26]
X
bが単結合または1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり、Y
bが単結合である、前記23~25のいずれかに記載の医薬組成物。
[27]
X
bおよびY
bが単結合である、前記23~26のいずれかに記載の医薬組成物。
[28]
癌抗原ペプチドBが、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列含むペプチド、または配列番号2~7から選択されるいずれかのアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである、前記23~27のいずれかに記載の医薬組成物。
[29]
癌抗原ペプチドBが、
RMFPNAPYL(配列番号2)、
CMTWNQMNL(配列番号3)、
ALLPAVPSL(配列番号4)、
SLGEQQYSV(配列番号5)
RVPGVAPTL(配列番号6)および
VLDFAPPGA(配列番号7)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記23~28のいずれかに記載の医薬組成物。
[30]
癌抗原ペプチドBが、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列を含むペプチドである、前記29に記載の医薬組成物。
[31]
癌抗原ペプチドBが、RMFPNAPYL(配列番号2)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記29に記載の医薬組成物。
[32]
式(1)で表される化合物が、
式(6):
【化31】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記23~29のいずれかに記載の医薬組成物。
[33]
R
1が、癌抗原ペプチドCである、前記12~20のいずれかに記載の医薬組成物。
[34]
癌抗原ペプチドCが、MHCクラスI拘束性ペプチドである、前記33に記載の医薬組成物。
[35]
癌抗原ペプチドCが、
CMTWNQMNL(配列番号3)
のアミノ酸配列を含むペプチド、または配列番号3のアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、および/または付加されたアミノ酸配列を含み、CTL誘導活性を有するペプチドである、前記34に記載の医薬組成物。
[36]
癌抗原ペプチドCが、
CMTWNQMNL(配列番号3)および
CYTWNQMNL(配列番号14)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記34または35に記載の医薬組成物。
[37]
癌抗原ペプチドCが、CMTWNQMNL(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記34~36のいずれかに記載の医薬組成物。
[38]
癌抗原ペプチドCが、CYTWNQMNL(配列番号14)のアミノ酸配列からなるペプチドである、前記34~36のいずれかに記載の医薬組成物。
[39]
式(1)で表される化合物が、
式(4):
【化32】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物、または
式(5):
【化33】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記33~38のいずれかに記載の医薬組成物。
[40]
式(1)で表される化合物が、
式(5):
【化34】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記39に記載の医薬組成物。
[41]
癌抗原ペプチドCのN末端に1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合している、前記33~38のいずれかに記載の医薬組成物。
[42]
式(1)で表される化合物が、
式(7):
【化35】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(8):
【化36】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(9):
【化37】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(10):
【化38】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(11):
【化39】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;または
式(12):
【化40】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記41に記載の医薬組成物。
[43]
癌抗原ペプチドCが、MHCクラスII拘束性ペプチドである、前記33に記載の医薬組成物。
[44]
癌抗原ペプチドCが、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記43に記載の医薬組成物。
[45]
式(1)で表される化合物が、
式(13):
【化41】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(14):
【化42】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;
式(15):
【化43】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物;または
式(16):
【化44】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記44に記載の医薬組成物。
[46]
R
1が、式(2)で表される基であり、癌抗原ペプチドBが1つのシステイン残基を含み、癌抗原ペプチドBのシステイン残基の硫黄原子が、式(3)中の硫黄原子または癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子と、ジスルフィド結合を介して結合している、前記23~30のいずれかに記載の医薬組成物。
[47]
R
1が、癌抗原ペプチドCであり、癌抗原ペプチドCのN末端に1つのシステイン残基を含む1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが結合しており、癌抗原ペプチドCのN末端に結合しているペプチドのシステイン残基の硫黄原子が、式(3)中の硫黄原子または癌抗原ペプチドEのシステイン残基の硫黄原子とジスルフィド結合を介して結合している、前記33~38のいずれかに記載の医薬組成物。
[48]
癌抗原ペプチドCのN末端に結合している1つのシステイン残基を含む1~4残基のアミノ酸からなるペプチドが、CAからなるジペプチドである、前記47に記載の医薬組成物。
[49]
X
dが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
dが単結合であるか、X
dおよびY
dが独立して1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
dが単結合であり且つY
dが2残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、X
dが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり且つY
dが単結合であるか、X
dが単結合であり且つY
dが1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であるか、またはX
dおよびY
dが単結合である、前記46~48のいずれかに記載の医薬組成物。
[50]
X
dが単結合であり、Y
dが単結合、アラニン残基、ロイシン残基またはメチオニン残基である、前記46~49のいずれかに記載の医薬組成物。
[51]
X
dが単結合または1残基のアミノ酸からなるペプチドの二価基であり、Y
dが単結合である、前記46~50のいずれかに記載の医薬組成物。
[52]
X
dおよびY
dが単結合である、前記46~51のいずれかに記載の医薬組成物。
[53]
癌抗原ペプチドDが、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記46~52のいずれかに記載の医薬組成物。
[54]
癌抗原ペプチドEが、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドである、前記46~52のいずれかに記載の医薬組成物。
[55]
式(1)で表される化合物が、
式(17):
【化45】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記46に記載の医薬組成物。
[56]
式(1)で表される化合物が、
式(18):
【化46】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記47に記載の医薬組成物。
[57]
式(1)で表される化合物が、
式(19):
【化47】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記47に記載の医薬組成物。
[58]
MHCクラスII拘束性ペプチドをさらに含むか、MHCクラスII拘束性ペプチドと併用される、前記1~57のいずれかに記載の医薬組成物。
[59]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)、
CWAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号37)、
WAPVLDFAPPGASAYGSLC(配列番号38)、
SGQARMFPNAPYLPSC(配列番号39)、
SGQAYMFPNAPYLPSC(配列番号40)、
SGQARMFPNAPYLPSCLES(配列番号41)、
SGQAYMFPNAPYLPSCLES(配列番号42)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号43)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号44)、
PGCNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号45)、
CNKRYFKLSHLQMHSRK(配列番号46)、
CNKRYFKLSHLQMHSRKH(配列番号47)、および
CNKRYFKLSHLQMHSRKHTG(配列番号48)
から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記58に記載の医薬組成物。
[60]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列を含むペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記59に記載の医薬組成物。
[61]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記59に記載の医薬組成物。
[62]
式(1)で表される化合物が、
式(4):
【化48】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物であり
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記58~61のいずれかに記載の医薬組成物。
[63]
式(1)で表される化合物が、
式(5):
【化49】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物であり
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記58~61のいずれかに記載の医薬組成物。
[64]
癌が、WT1が発現している癌またはWT1の発現レベルの上昇を伴う癌である、前記1~63のいずれかに記載の医薬組成物。
[65]
癌が、血液性癌または固形癌である、前記1~64のいずれかに記載の医薬組成物。
[66]
癌が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃がん、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨癌、膵癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、直腸癌、肛門部癌、精巣癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形癌、腎臓または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系腫瘍、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、扁平上皮癌、扁平細胞癌、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌、および前記癌の組み合わせから選択される、前記1~65のいずれかに記載の医薬組成物。
[67]
癌が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、胃がん、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、脳腫瘍、および神経膠腫から選択される、前記66のいずれかに記載の医薬組成物。
[68]
癌ワクチンとして使用される、前記1~67のいずれかに記載の医薬組成物。
[69]
癌の細胞性免疫療法におけるCTL誘導剤として使用される、前記1~67のいずれかに記載の医薬組成物。
【0204】
[70]
HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象において癌を処置するための方法であって、前記[1]に記載の前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩、または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩をHLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象に投与することを含む方法。
[71]
前記対象が、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象である、前記70に記載の方法。
[72]
前記対象が、HLA-A
*02:07陽性対象である、前記70に記載の方法。
[73]
前記対象が、HLA-A
*03:01陽性対象である、前記70に記載の方法。
[74]
前記対象が、HLA-B
*15:01陽性対象である、前記70に記載の方法。
[75]
前記対象が、HLA-B
*27:05陽性対象である、前記70に記載の方法。
[76]
前記(b)の式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩を対象に投与することを含む、前記70~75のいずれかに記載の方法。
[77]
式(1)で表される化合物が、
式(4):
【化50】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記70~76のいずれかに記載の方法。
[78]
式(1)で表される化合物が、
式(5):
【化51】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記70~76のいずれかに記載の方法。
[79]
MHCクラスII拘束性ペプチドを投与することをさらに含む、前記70~78のいずれかに記載の方法。
[80]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、同じ組成物に含まれる、前記79に記載の方法。
[81]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、別の組成物に含まれる、前記79に記載の方法。
[82]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記79~81のいずれかに記載の方法。
【0205】
[83]
HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象において癌を処置するために使用するための、前記[1]に記載の前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩、または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩。
[84]
前記対象が、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象である、前記83に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[85]
前記対象が、HLA-A
*02:07陽性対象である、前記83に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[86]
前記対象が、HLA-A
*03:01陽性対象である、前記83に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[87]
前記対象が、HLA-B
*15:01陽性対象である、前記83に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[88]
前記対象が、HLA-B
*27:05陽性対象である、前記83に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[89]
前記(b)の式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩である、前記83~88のいずれかに記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[90]
式(1)で表される化合物が、
式(4):
【化52】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記83~89のいずれかに記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[91]
式(1)で表される化合物が、
式(5):
【化53】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記83~89のいずれかに記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[92]
MHCクラスII拘束性ペプチドと併用される、前記83~91のいずれかに記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[93]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、同じ組成物に含まれる、前記92に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[94]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、別の組成物に含まれる、前記92に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
[95]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記92~94に記載のペプチド、化合物またはその薬学上許容される塩。
【0206】
[96]
HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象において癌を処置するための医薬の製造のための、前記[1]に記載の前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩、または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩の使用。
[97]
前記対象が、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象である、前記96に記載の使用。
[98]
前記対象が、HLA-A
*02:07陽性対象である、前記96に記載の使用。
[99]
前記対象が、HLA-A
*03:01陽性対象である、前記96に記載の使用。
[100]
前記対象が、HLA-B
*15:01陽性対象である、前記96に記載の使用。
[101]
前記対象が、HLA-B
*27:05陽性対象である、前記96に記載の使用。
[102]
前記(b)の式(1)で表される化合物またはその薬学上許容される塩の使用である、前記96~101のいずれかに記載の使用。
[103]
式(1)で表される化合物が、
式(4):
【化54】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記96~102のいずれかに記載の使用。
[104]
式(1)で表される化合物が、
式(5):
【化55】
(式中、CとCの間の結合はジスルフィド結合を表す。)
の化合物である、前記96~102のいずれかに記載の使用。
[105]
医薬が、MHCクラスII拘束性ペプチドをさらに含むか、MHCクラスII拘束性ペプチドと併用される、前記96~104のいずれかに記載の使用。
[106]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、同じ組成物に含まれる、前記105に記載の使用。
[107]
前記(a)のペプチドもしくはその薬学上許容される塩または前記(b)の式(1)で表される化合物もしくはその薬学上許容される塩と、MHCクラスII拘束性ペプチドとが、別の組成物に含まれる、前記105に記載の使用。
[108]
MHCクラスII拘束性ペプチドが、WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩である、前記105~107のいずれかに記載の使用。
【0207】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、いかなる意味においても本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0208】
癌抗原ペプチドに特異的なCTLがペプチドによって刺激を受け増幅するメカニズムの第一ステップとして、そのペプチドがHLAクラスIに安定して結合する必要がある。HLAクラスIの各サブタイプはペプチド結合モチーフをもち、抗原ペプチドの特定部位に位置するアミノ酸残基とHLAクラスIとが相互作用することにより安定な立体構造を形成する。このようなモチーフをベースとしてペプチドとHLAクラスIとの結合活性を予測可能な複数のアルゴリズムが開発されており、例えば、NetMHC4.0、SYFPEITHI、BIMASなどが知られる。これらアルゴリズムの利用により、目的のタンパク質のアミノ酸配列情報からHLAクラスI拘束性のT細胞エピトープ候補を簡易的にリスト化することができるようになっている。このようなアルゴリズムによって候補となったエピトープが実際に癌免疫療法の開発に有用か否かを判断するため、癌患者末梢血単核細胞を利用して候補エピトープに対するT細胞の反応性について試験される。
【0209】
WT1126-134(RMFPNAPYL(配列番号2))は、WT1由来癌抗原ペプチドであり、HLA-A*02:01陽性癌患者における高い臨床効果が報告されている(Blood. 2009; 113: 6541-8.)。実際に、WT1126-134のHLA-A*02:01結合アフィニティをNetMHC4.0で計算すると、7.14nMと示され、HLA-A*02:01強結合性ペプチドであると予測された(表1)。
【0210】
HLA-A*02:01は、欧米において高頻度で認められるHLAクラスIのサブタイプの一つである。HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、およびHLA-B*27:05も、HLA-A*02:01と比較すると低い頻度であるものの、欧米において比較的に高頻度に認められる(Hum Immunol. 2001; 62: 1009-30.)。WT1126-134のHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、およびHLA-B*27:05に対する結合アフィニティをNetMHC4.0で計算したところ、それぞれ28,729.70nM、1,755.02nM、245.03nM、および2,060.74nMであった(表1)。このように、WT1126-134のHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、およびHLA-B*27:05に対するアフィニティは、HLA-A*02:01に対するアフィニティと比べると、それぞれ約4,023.8倍、約245.8倍、約34.3倍、および約288.6倍の低さであった。
【0211】
WT1126-134の改変ペプチドであるYMFPNAPYL(配列番号13)のHLA-A*02:01、HLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、およびHLA-B*27:05に対する結合アフィニティをNetMHC4.0で計算したところ、それぞれ2.73nM、19,806.32nM、8,341.40nM、190.54nM、および6,182.73nMであった(表2)。このように、前記改変ペプチドのHLA-A*02:07、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01、およびHLA-B*27:05に対するアフィニティは、HLA-A*02:01に対するアフィニティと比べると、それぞれ約7,255.1倍、約3,055.5倍、約69.8倍、および約2,264.7倍の低さであった。
【0212】
以上のように、WT1
126-134およびその改変ペプチドであるYMFPNAPYL(配列番号13)は、HLA-A
*02:07、HLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01、またはHLA-B
*27:05陽性対象に対する癌免疫療法に利用できる可能性は極めて低いと判断されるものであった。
【表1】
【表2】
【0213】
次に、癌患者末梢血由来T細胞のWT1
126-134に対する反応性について解析した。ここでは、臨床試験(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03149003およびNCT02436252)に登録された癌患者から提供された末梢血から調製したPBMCを利用した。具体的には、前記癌患者のうち、当該臨床試験における薬剤の投与前および投与後に採血可能だったHLA-A
*03:01陽性の患者(4名)およびHLA-B
*15:01陽性の患者(1名)およびHLA-A
*02:07陽性の患者(1名)のPBMCを利用した。前記薬剤は、下記式(5):
【化56】
の化合物のトリフルオロ酢酸塩、および
WAPVLDFAPPGASAYGSL(配列番号36)
のアミノ酸配列からなるペプチドの酢酸塩
を含む癌ペプチドワクチンである。
【0214】
前記薬剤投与前または投与後に調製され、凍結されたPBMCを、37℃の温浴槽で融解したのち、AIM-V培地に懸濁した。96穴U底マイクロプレートの各ウェルに、1.8-2.2×106細胞/mLの濃度で生細胞を播種した(容量:200μL/ウェル)。このとき、ヒトIL-2を100U/mL、および式(5)の化合物または配列番号13のペプチドを40μg/mLで添加した。その後、37℃ 5%CO2インキュベーター内で培養を開始した。培養開始3日後、各ウェルから上清100μLを除去したのち、ヒトIL-2を100U/mL、および式(5)の化合物または配列番号13のペプチドを40μg/mLを含む100μLのAIM-V培地を添加した。培養開始7日目にPBMCを回収し、一部をWT1126-134/HLA-A*03:01テトラマー、WT1126-134/HLA-B*15:01テトラマーまたはWT1126-134/HLA-A*02:07テトラマーと抗ヒトCD8抗体とで染色し、CD8陽性T細胞中のテトラマー陽性細胞をMACSQuant Analyzerにて検出した。テトラマー陽性T細胞の割合が0.1%以上を陽性とした。
【0215】
前記薬剤投与前のHLA-A
*03:01陽性患者から提供されたPBMCを式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーで染色したが、どの患者由来のPBMCにおいてもHLA-A
*03:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞は検出されなかった。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーによる染色を示す(
図1)。同様に、前記薬剤投与前のHLA-B
*15:01陽性患者から提供されたPBMCを式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーで染色したが、HLA-B
*15:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞は検出されなかった。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーによる染色を示す(
図2)。同様に、前記薬剤投与前のHLA-A
*02:07陽性患者から提供されたPBMCを式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーで染色したが、HLA-A
*02:07拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞は検出されなかった。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーによる染色を示す(
図7)。このように、癌患者末梢血由来T細胞を用いた試験において、WT1
126-134はHLA-A
*03:01、HLA-B
*15:01またはHLA-A
*02:07陽性患者の癌免疫療法のための抗原ペプチドとしての有用性は確認されなかった。
【0216】
以上のように、HLA結合予測と薬剤投与前の癌患者末梢血を用いた試験からは、WT1126-134をHLA-A*03:01陽性患者、HLA-B*15:01陽性患者またはHLA-A*02:07陽性患者の癌の処置に用いる薬剤として開発することは想定しがたいと考えられた。
【0217】
しかしながら、前記薬剤投与後の癌患者末梢血を用いた試験において、異なる結果が得られた。HLA-A
*03:01陽性患者の前記薬剤の投与後のPBMCを上述した方法で式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーで染色したところ、驚くべきことに、HLA-A
*03:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーによる染色を示す(
図3)。同様に、HLA-B
*15:01陽性患者の前記薬剤投与後のPBMCを式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーで染色したところ、HLA-B
*15:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーによる染色を示す(
図4)。同様に、HLA-A
*02:07陽性患者の前記薬剤投与後のPBMCを式(5)の化合物の存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーで染色したところ、HLA-A
*02:07拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーによる染色を示す(
図8)。
【0218】
さらに、培養によって増幅したHLA-A*03:01、HLA-B*15:01またはHLA-A*02:07に拘束性のWT1126-134特異的T細胞がWT1126-134を提示している癌細胞に反応するかを、IFNγ ELISPOTアッセイにより解析した。具体的には、WT1126-134ペプチドをパルスしたHLA-A*03:01、HLA-B*15:01またはHLA-A*02:07発現K562細胞(「K562-A3+Pep」、「K562-B15+Pep」または「K562-A2.7+Pep」と記載)、または前記ペプチドをパルスしていないHLA-A*03:01、HLA-B*15:01またはHLA-A*02:07発現K562細胞(「K562-A3」または「K562-B15」、「K562-A2.7」と記載)により、WT1126-134特異的T細胞を含むPBMCを刺激した。37℃ 5%CO2インキュベーター内で約18時間反応させたのち、各ウェルをImmunoSpot S5 Versaにて撮影した。
【0219】
HLA-A
*03:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を含むPBMCをK562-A3またはK562-A3+Pepで刺激培養したところ、K562-A3と比較して、K562-A3+Pepに反応を示した(
図5)。これより、HLA-A
*03:01拘束性のWT1
126-134特異的T細胞は、WT1
126-134を提示しているHLA-A
*03:01陽性癌細胞を認識し、反応することが判明した。同様に、HLA-B
*15:01拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を含むPBMCをK562-B15またはK562-B15+Pepで刺激培養したところ、K562-B15と比較して、K562-B15+Pepに反応を示した(
図6)。これより、HLA-B
*15:01拘束性のWT1
126-134特異的T細胞は、WT1
126-134を提示しているHLA-B
*15:01陽性癌細胞を認識・反応することが判明した。同様に、HLA-A
*02:07拘束性WT1
126-134特異的CD8陽性T細胞を含むPBMCをK562-A2.7またはK562-A2.7+Pepで刺激培養したところ、K562-A2.7と比較して、K562-A2.7+Pepに反応を示した(
図9)。これより、HLA-A
*02:07拘束性のWT1
126-134特異的T細胞は、WT1
126-134を提示しているHLA-A
*02:07陽性癌細胞を認識・反応することが判明した。
【0220】
以上のとおり、前記薬剤を投与された癌患者由来PBMCを利用することにより、WT1126-134は、HLA-A*02:01陽性患者のみならず、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01またはHLA-A*02:07陽性患者の癌を処置するための薬剤となりうることが示された。
【0221】
また、HLA-A
*03:01陽性患者の前記薬剤の投与後のPBMCを上述した方法で配列番号13のペプチド存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーで染色した場合にも、HLA-A
*03:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*03:01テトラマーによる染色を示す(
図10)。同様に、HLA-B
*15:01陽性患者の前記薬剤投与後のPBMCを配列番号13のペプチド存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーで染色した場合にも、HLA-B
*15:01拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-B
*15:01テトラマーによる染色を示す(
図11)。同様に、HLA-A
*02:07陽性患者の前記薬剤の投与後のPBMCを配列番号13のペプチド存在下で培養したのち、抗CD8抗体およびWT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーで染色した場合にも、HLA-A
*02:07拘束性のWT1
126-134特異的CD8陽性T細胞が検出された。横軸はFITC標識抗CD8抗体による染色を、縦軸はPE標識WT1
126-134/HLA-A
*02:07テトラマーによる染色を示す(
図12)。
【0222】
これらの結果から、WT1126-134の改変キラーペプチドはHLA-A*03:01拘束性のWT1126-134特異的CD8陽性T細胞、HLA-B*15:01拘束性のWT1126-134特異的CD8陽性T細胞およびHLA-A*02:07拘束性のWT1126-134特異的CD8陽性T細胞を活性化し増殖させることが判明した。WT1126-134の改変キラーペプチドは、WT1126-134と同様に、HLA-A*02:01陽性患者のみならず、HLA-A*03:01、HLA-B*15:01またはHLA-A*02:07陽性患者の癌を処置するための薬剤となりうることが示された。
【配列表】