(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】耐火性成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/10 20060101AFI20230322BHJP
A62C 2/00 20060101ALI20230322BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20230322BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230322BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20230322BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230322BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230322BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20230322BHJP
C08L 11/00 20060101ALI20230322BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230322BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230322BHJP
C09K 21/04 20060101ALN20230322BHJP
C09K 21/12 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
C08J9/10 CEQ
A62C2/00 X
A62C3/16 B
B32B5/18
B32B5/24 101
C08K3/04
C08K3/32
C08K5/12
C08L11/00
C08L101/00
E04B1/94 V
C09K21/04
C09K21/12
(21)【出願番号】P 2019052552
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】侘美 吉孝
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/116686(WO,A1)
【文献】特開2002-129022(JP,A)
【文献】特開2012-172052(JP,A)
【文献】特開2018-115319(JP,A)
【文献】特開2008-127725(JP,A)
【文献】特開2008-238557(JP,A)
【文献】特開2003-226772(JP,A)
【文献】特開2005-255921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00-13/08
C08J 9/00-9/42
B32B 25/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム又は熱可塑性樹脂からなるポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び可塑剤を含有する発泡体を備える耐火性成形体であって、
前記発泡体の外表面は、第1外表面と、前記第1外表面の反対側に位置する第2外表面と、前記第1外表面と前記第2外表面とを接続する接続外表面と、を有し、
前記耐火性成形体における前記第1外表面側及び前記第2外表面側のJIS K7312に準拠して測定されるアスカーC硬度は、10以上、30以下の範囲内である、耐火性成形体。
【請求項2】
不織布層をさらに備え、前記不織布層は、前記第1外表面に設けられる第1不織布層と前記第2外表面に設けられる第2不織布層との少なくとも一方の不織布層を含む、請求項
1に記載の耐火性成形体。
【請求項3】
前記発泡体は、スキン層と非スキン層とを有し、前記第1外表面及び前記第2外表面の少なくとも一方の外表面は、前記スキン層から形成され、前記接続外表面は、前記非スキン層から形成されている、請求項
1又は請求項
2に記載の耐火性成形体。
【請求項4】
前記ポリマー成分がクロロプレンゴムを含み、前記難燃剤がポリリン酸アンモニウムを含み、前記可塑剤がフタル酸系可塑剤を含む、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の耐火性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁、床等に形成された区画貫通部に、ケーブル類等の挿通部材が挿通された構造が知られている。このような区画貫通部と挿通部材との間には、耐火ブロックが配置される場合がある(特許文献1参照)。耐火ブロックは、火災の際に区画貫通部の内周面と挿通部材との間で熱膨張することで、区画貫通部を通じた炎や煙等の拡散を抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような耐火ブロックのような耐火性成形体は、例えば、壁、床等に形成された区画貫通部内の空間が比較的狭い場合、耐火性成形体を区画貫通部内の空間に配置する作業性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、区画貫通部内の空間に配置する作業性を向上することを可能にした耐火性成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する耐火性成形体は、ゴム又は熱可塑性樹脂からなるポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び可塑剤を含有する発泡体を備える耐火性成形体であって、アスカーC硬度は、10以上、30以下の範囲内である。
【0007】
この構成によれば、耐火性成形体は、アスカーC硬度が30以下の柔軟性を有しているため、耐火性成形体を容易に圧縮変形させることができる。このように耐火性成形体を一時的に圧縮変形させることで、耐火性成形体を区画貫通部内の空間に容易に挿入することが可能となる。
【0008】
上記耐火性成形体は、前記発泡体の外表面に設けられる不織布層をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、不織布層によって耐火性成形体の滑動性が高められることで、区画貫通部内の空間にさらに容易に挿入することが可能となる。
【0009】
上記耐火性成形体において、前記発泡体の外表面は、第1外表面と、前記第1外表面の反対側に位置する第2外表面と、前記第1外表面と前記第2外表面とを接続する接続外表面と、を有してもよい。
【0010】
例えば、上記のように発泡体を構成することができる。
上記耐火性成形体は、不織布層をさらに備え、前記不織布層は、前記第1外表面に設けられる第1不織布層と前記第2外表面に設けられる第2不織布層との少なくとも一方の不織布層を含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、耐火性成形体において、発泡体の第1外表面側及び第2外表面側の少なくとも一方の滑動性を高めることができるため、例えば、区画貫通部内の空間に耐火性成形体を順次重ねて配置することが容易となる。
【0012】
上記耐火性成形体において、前記発泡体は、スキン層と非スキン層とを有し、前記第1外表面及び前記第2外表面の少なくとも一方の外表面は、前記スキン層から形成され、前記接続外表面は、前記非スキン層から形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1外表面及び第2外表面の少なくとも一方を形成するスキン層によって発泡体の外表面が湾曲する変形を抑えることができる。また、接続外表面を形成する非スキン層は、第1外表面と第2外表面とを近づける圧縮変形に対する抵抗になり難いため、第1外表面と第2外表面とを近づけるように耐火性成形体を容易に圧縮変形させることができる。すなわち、不要な変形を抑えつつ、所定の方向に圧縮変形させることができる。
【0014】
上記耐火性成形体において、前記ポリマー成分がクロロプレンゴムを含み、前記難燃剤がポリリン酸アンモニウムを含み、前記可塑剤がフタル酸系可塑剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、区画貫通部内の空間に配置する作業性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の耐火性成形体を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、耐火性成形体の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、耐火性成形体11は、発泡体12と不織布層13とを備えている。耐火性成形体11は、配管類やケーブル類等の挿通部材を通すために形成された壁、床等に形成された区画貫通部内の空間に配置して用いられる。火災発生の際には、発泡体12に含有される熱膨張性黒鉛が熱により膨張することで、発泡体12から不燃性の膨張体が形成される。このように区画貫通部で形成された膨張体によって、区画貫通部内を通じた煙等の拡散を抑制したり、火災の炎が区画貫通部内に侵入することを抑制したりすることができる。
【0018】
図1に示すように、発泡体12の外表面は、第1外表面S1と、第1外表面S1の反対側に位置する第2外表面S2と、第1外表面S1と第2外表面S2とを接続する接続外表面S3とを有している。また、発泡体12は、スキン層と非スキン層とを有している。スキン層は、発泡体12を成形する際に発泡体12の外表面に形成される緻密な層である。非スキン層は、発泡体12においてスキン層の内側に形成される発泡層である。発泡剤を含む発泡体用組成物を加熱して発泡させる成形法によって、スキン層と非スキン層とを有する発泡成形物が得られる。この発泡成形物からスキン層を切断等によって除去することで、非スキン層(発泡層)を露出させることができる。すなわち、スキン層を除去することで露出した外表面は、非スキン層(発泡層)から形成された外表面となる。本実施形態の発泡体12の第1外表面S1及び第2外表面S2は、スキン層から形成されている。発泡体12の接続外表面S3は、非スキン層から形成されている。
【0019】
不織布層13は、発泡体12の第1外表面S1に設けられる第1不織布層13aと、発泡体12の第2外表面S2に設けられる第2不織布層13bとから構成されている。不織布層13は、綿、羊毛、パルプ等の天然繊維、レーヨン、ポリエステル等の化学繊維、鉱物繊維、ガラス繊維等の繊維を含む。不織布層13の形状としては、例えば、布状、紙状、綿状等が挙げられる。
【0020】
耐火性成形体11のアスカーC硬度は、10以上、30以下の範囲内である。耐火性成形体11のアスカーC硬度が10未満の場合、耐火性成形体11に外力が作用した際に耐火性成形体11が過剰に変形するため、挿通部材と壁や床等に形成された開口部の内周面との間に耐火性成形体11を配置する際の施工性に劣る。一方、耐火性成形体11のアスカーC硬度が30を超える場合、耐火性成形体11が変形し難くなるため、区画貫通部内の空間に耐火性成形体11を配置する際の施工性に劣る。耐火性成形体11のアスカーC硬度は、18以上であることが好ましい。耐火性成形体11のアスカーC硬度は、25以下であることが好ましい。耐火性成形体11のアスカーC硬度は、第1外表面S1側(第1不織布層13aの外表面)、及び第2外表面S2側(第2不織布層13bの外表面)をJIS K7312に準拠して測定した値である。
【0021】
次に、発泡体12の組成について説明する。
発泡体12は、ゴム又は熱可塑性樹脂からなるポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び可塑剤を含有する。ポリマー成分であるゴムとしては、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ジエン系合成ゴム、非ジエン系合成ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、常温でゴム状弾性の挙動を有するものが好ましく、その具体例としては、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、アミド系、塩ビ系等の熱可塑性樹脂が挙げられる。発泡体12に含有させるポリマー成分は、クロロプレンゴムを含むことが好ましい。
【0022】
熱膨張性黒鉛は、鱗片状黒鉛等の黒鉛の層に化学物質が挿入されたものである。熱膨張性黒鉛は、火災などの熱によって化学物質が膨張することで、不燃性の膨張体を形成する。すなわち、熱膨張性黒鉛を含有する発泡体12は、耐火性能を発揮する。
【0023】
発泡体12中における熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、10質量部以上、100質量部以下の範囲内であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量が10質量部以上の場合、発泡体12の耐火性能をより高めることができる。熱膨張性黒鉛の含有量が100質量部以下の場合、熱膨張後の膨張体の形状が維持され易くなる。
【0024】
発泡体12中における熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、15質量部以上であることがより好ましい。発泡体12中における熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、70質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは40質量部以下であり、最も好ましくは35質量部以下である。
【0025】
難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機化合物系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えば、リン酸アミン塩、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、ホスファゼン、ホスフォン酸エステル、ホスフィン酸金属塩、赤燐等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、メラミン、メラミンシアヌレート等が挙げられる。無機化合物系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等が挙げられる。発泡体12に含有させる難燃剤は、ポリリン酸アンモニウムを含むことが好ましい。
【0026】
発泡体12中における難燃剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、10質量部以上、100質量部以下の範囲内であることが好ましい。難燃剤の含有量が10質量部以上の場合、熱膨張後の膨張体の形状が維持され易くなる。難燃剤の含有量が100質量部以下の場合、耐火性成形体11のアスカーC硬度をより低くすることが可能となる。
【0027】
発泡体12中における難燃剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、20質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは27質量部以上である。発泡体12中における難燃剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、70質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは50質量部以下であり、最も好ましくは40質量部以下である。
【0028】
可塑剤としては、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系、トリメリット酸系等の可塑剤が挙げられる。また、可塑剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等のプロセス油が挙げられる。発泡体12に含有させる可塑剤は、フタル酸系可塑剤を含むことが好ましい。
【0029】
発泡体12中における可塑剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、10質量部以上、100質量部以下の範囲内であることが好ましい。可塑剤の含有量が10質量部以上の場合、耐火性成形体11のアスカーC硬度をより低くすることが可能となる。可塑剤の含有量が100質量部以下の場合、発泡体12からの可塑剤のブリードを抑えることができる。
【0030】
発泡体12中における可塑剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、15質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは20質量部以上である。発泡体12中における可塑剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、80質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0031】
発泡体12には、公知の充填剤や老化防止剤等をさらに含有させることもできる。充填剤としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、ガラス繊維、ガラスビーズ、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。老化防止剤としては、例えば、アミン系(アミン-ケトン系、芳香族第二級アミン系等)、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系等)、ベンズイミダゾール系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系、ワックス等が挙げられる。
【0032】
次に、耐火性成形体11の製造方法について説明する。
耐火性成形体11の製造方法は、発泡体用組成物をシート状に成形することで発泡性シート材を得る成形工程と、発泡性シート材に不織布を積層する積層工程とを備えている。耐火性成形体11の製造方法は、不織布が積層された発泡性シート材(発泡体用組成物)を加熱発泡させることで、不織布と発泡体12とが接合された耐火性シート材を得る発泡工程と、得られた耐火性シート材を、不織布と発泡体12とが積層される方向(厚さ方向)に沿って切断する切断工程とをさらに備えている。
【0033】
発泡体用組成物は、ポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び可塑剤を含有する。発泡体用組成物は、さらに発泡剤を含有する。発泡体用組成物には、必要に応じて加硫剤、加硫促進剤等を含有させることができる。また、発泡体用組成物には、上述した公知の充填剤や老化防止剤等をさらに含有させることもできる。
【0034】
耐火性成形体11のアスカーC硬度は、発泡体用組成物中の発泡剤、膨張性黒鉛、難燃剤等の含有量を変化させることで調整することができる。
また、発泡体用組成物中の発泡剤、膨張性黒鉛、難燃剤等の含有量を変化させることによって発泡体用組成物から発泡体12を形成する際の発泡率を調整することができる。この発泡率は、下記式(1)によって表される。
【0035】
発泡率(%)=(A1/A2-1)×100・・・(1)
上記式(1)中、A1は、発泡体用組成物の比重を示し、A2は、発泡体12の比重を示す。
【0036】
発泡体12の発泡率は、発泡の制御を容易にするという観点から、50%以上、500%以下の範囲内であることが好ましい。発泡体12の発泡率は、100%以上であることがより好ましい。発泡体12の発泡率は、250%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは150%以下である。
【0037】
発泡剤としては、例えば、熱分解型化学発泡剤、物理発泡剤等が挙げられる。熱分解型化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン等の炭化水素、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。また、他の物理発泡剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン等の低沸点炭化水素を熱可塑性樹脂からなるシェル内に内包したような熱膨張性マイクロカプセルが挙げられる。
【0038】
発泡体用組成物中における発泡剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上、30質量部以下の範囲内であることが好ましい。この場合、耐火性成形体11のアスカーC硬度を上述した範囲に容易に調整することができる。
【0039】
発泡体用組成物中における発泡剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは10質量部以上である。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤、酸化亜鉛等が挙げられる。発泡体用組成物中における加硫剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上、15質量部以下の範囲内であることが好ましい。加硫剤の含有量が1質量部以上の場合、ポリマー成分の加硫が促進されるため、発泡体12を成形し易くなる。加硫剤の含有量が15質量部以下の場合、耐火性成形体11のアスカーC硬度をより低くすることが可能となる。
【0040】
発泡体用組成物中における加硫剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、2質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは3質量部以上である。発泡体用組成物中における加硫剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、12質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0041】
加硫促進剤としては、例えば、ステアリン酸、脂肪酸誘導体、酸化マグネシウム、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、グアニジン系、チオウレア系等が挙げられる。発泡体用組成物中における加硫促進剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下の範囲内であることが好ましい。加硫促進剤の含有量が0.1質量部以上の場合、ポリマー成分の加硫が促進されることで、発泡体12を成形し易くなる。加硫促進剤の含有量が15質量部以下の場合、耐火性成形体11のアスカーC硬度をより低くすることが可能となる。
【0042】
発泡体用組成物中における加硫促進剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは1質量部以上である。発泡体用組成物中における加硫促進剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、12質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0043】
発泡体用組成物は、ニーダー等を用いて上述した原料を混練することで得られる。
次に、発泡体用組成物から発泡性シート材を得る成形工程が行われる。成形工程で用いる成形方法としては、例えば、ロール成形法、プレス成形法、射出成形法等が挙げられる。生産性を高めるという観点から、成形工程においてロール成形法を用いることが好ましい。
【0044】
次に、積層工程において、発泡性シート材の表裏面にそれぞれ不織布を積層する。続いて、発泡工程では、不織布が積層された発泡性シート材を、所定間隔を有する一組の鋼板の間に配置した後、発泡性シート材を加熱発泡させる。この発泡工程により、所定の厚さ寸法を有する発泡体12が形成されるとともに、発泡体12の表裏面にそれぞれ不織布が接合されることで、耐火性シート材が得られる。なお、発泡工程は、所定の形状のキャビティを有する成形用の金型を用いて行ってもよい。発泡工程における加熱温度や加熱時間は、発泡剤の種類に応じて設定することができる。
【0045】
得られた耐火性シート材における発泡体12の外表面全体は、スキン層で形成されている。切断工程では、上記のように耐火性シート材を切断することで、発泡層が露出した切断面、すなわち非スキン層から形成された接続外表面S3を有する発泡体12が得られる。例えば、耐火性シート材を平面視で四角形状に切断することで、発泡体12における4つの接続外表面S3について、いずれも非スキン層から形成することができる。このように切断工程によって耐火性シート材を切断することで、所定の寸法の耐火性成形体11が得られる。例えば、一枚の耐火性シート材から多数の耐火性成形体11を得ることも可能である。
【0046】
次に、耐火性成形体11の使用方法の一例について作用とともに説明する。
まず、壁に形成された区画貫通部の内底面に沿って最下段となる耐火性成形体11を配列する。次に、配列した耐火性成形体11上の所定の位置に配管類やケーブル類等の挿通部材を配置する。続いて、区画貫通部内の空間にさらに耐火性成形体11を配列する。
【0047】
このとき、耐火性成形体11は、アスカーC硬度が30以下の柔軟性を有しているため、耐火性成形体11を容易に圧縮変形させることができる。本実施形態の耐火性成形体11は、発泡体12の第1外表面S1と第2外表面S2とを近づける方向に押圧することで、容易に圧縮変形させることができる。このように耐火性成形体11を一時的に圧縮変形させた状態とすることで、耐火性成形体11を区画貫通部内の空間に容易に挿入することが可能となる。なお、耐火性成形体11は、押圧を解除することで元の形状に復元する。
【0048】
耐火性成形体11を圧縮変形させて区画貫通部内の空間に耐火性成形体11を配置する作業を繰り返すことで、複数の耐火性成形体11が密着するように積み重なった積層構造を形成することができる。なお、耐火性成形体11と挿通部材との間や耐火性成形体11と区画貫通部の内周面との間に隙間が生じる場合には、さらにパテ材等の充填材料を用いてその隙間を埋めてもよい。
【0049】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)耐火性成形体11は、ゴム又は熱可塑性樹脂からなるポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び可塑剤を含有する発泡体12を備えている。耐火性成形体11のアスカーC硬度は、10以上、30以下の範囲内である。
【0050】
この構成によれば、耐火性成形体11は、アスカーC硬度が30以下の柔軟性を有しているため、上述したように耐火性成形体11の変形を利用して耐火性成形体11を区画貫通部内の空間に容易に挿入することが可能となる。従って、区画貫通部内の空間に配置する作業性を向上することが可能となる。
【0051】
また、耐火性成形体11において熱膨張する本体部分について気泡を含む発泡体12から構成することで耐火性成形体11を軽量化することができる。これにより、複数の耐火性成形体11を輸送したり、区画貫通部の空間に複数の耐火性成形体11を配置したりする作業の負荷が軽減される。
【0052】
(2)耐火性成形体11は、発泡体12の外表面に設けられる不織布層13をさらに備えている。この場合、不織布層13によって耐火性成形体11の滑動性が高められることで、区画貫通部内の空間にさらに容易に挿入することが可能となる。従って、区画貫通部内の空間に配置する作業性をさらに向上することが可能となる。
【0053】
(3)不織布層13は、発泡体12の第1外表面S1に設けられる第1不織布層13aと第2外表面S2に設けられる第2不織布層13bとの少なくとも一方の不織布層13を含むことが好ましい。この場合、耐火性成形体11において、発泡体12の第1外表面S1側及び第2外表面S2側の少なくとも一方の滑動性を高めることができるため、例えば、区画貫通部内の空間に耐火性成形体11を順次重ねて配置することが容易となる。従って、区画貫通部内の空間に複数の耐火性成形体11を重ねて配置する作業性を向上することが可能となる。
【0054】
(4)発泡体12は、スキン層と非スキン層とを有し、第1外表面S1及び第2外表面S2の少なくとも一方の外表面は、スキン層から形成され、接続外表面S3は、非スキン層から形成されている。この場合、第1外表面S1及び第2外表面S2の少なくとも一方を形成するスキン層によって発泡体12の外表面が湾曲する変形を抑えることができる。また、接続外表面S3を形成する非スキン層は、第1外表面S1と第2外表面S2とを近づける圧縮変形に対する抵抗になり難いため、第1外表面S1と第2外表面S2とを近づけるように耐火性成形体11を容易に圧縮変形させることができる。すなわち、不要な変形を抑えつつ、所定の方向に圧縮変形させることができる。従って、区画貫通部内の空間に配置する作業性をさらに向上することが可能となる。
【0055】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・発泡体12の第1外表面S1、第2外表面S2、及び接続外表面S3のいずれの外表面についてもスキン層から形成することもできる。また、発泡体12の第1外表面S1、第2外表面S2、及び接続外表面S3のいずれの外表面についても、非スキン層から形成することもできる。
【0057】
・不織布層13は、第1外表面S1、第2外表面S2及び接続外表面S3のうち、少なくとも一つの外表面に設けることができる。
・不織布層13を省略することもできる。
【0058】
・耐火性成形体11は、平面視で四角形状であるが、例えば、平面視の形状を四角形状以外の多角形状等に変更することもできる。また、耐火性成形体11の全体形状は、例えば、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角推形状等の形状に変更してもよい。
【0059】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・前記発泡体中において、前記熱膨張性黒鉛の含有量は、前記ポリマー成分100質量部に対して10質量部以上、100質量部以下の範囲内であり、前記難燃剤の含有量は、前記ポリマー成分100質量部に対して10質量部以上、100質量部以下の範囲内である、耐火性成形体。
【0060】
・耐火性を有する発泡体を成形するための発泡体用組成物であって、ゴム又は熱可塑性樹脂からなるポリマー成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、可塑剤、発泡剤、及び加硫剤を含有する、発泡体用組成物。
【実施例】
【0061】
次に、実施例及び比較例について説明する。
(実施例1~10及び比較例1~5)
表1及び表2に示す原材料を、ニーダーを用いて混練することで、各例の発泡体用組成物を調製した。表1及び表2中の原材料の配合量を示す数値の単位は、質量部である。各例では、ポリマー成分としてクロロプレンゴム、加硫剤として酸化亜鉛、加硫促進剤(1)としてステアリン酸、加硫促進剤(2)として酸化マグネシウム、発泡剤としてp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、難燃剤としてポリリン酸アンモニウム、可塑剤としてフタル酸系可塑剤、充填剤としてカーボンブラックを用いた。
【0062】
得られた発泡体用組成物を用いて、上述した成形工程、積層工程、発泡工程、及び切断工程を順次行うことで、各例の耐火性成形体を得た。積層工程では、ポリエステル製のスパンボンド不織布を用いた。発泡工程の条件は、200℃、20分間とした。
【0063】
(アスカーC硬度の測定)
各例の耐火性成形体のサンプル(厚さ10mm×縦50mm×横50mm)をJIS K7312に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0064】
(発泡率)
各例の耐火性成形体の発泡率について、上記式(1)によって算出した。その結果を表1及び表2に示す。
【0065】
(作業性の評価)
各例の耐火性成形体を挿通部材とともに区画貫通部内に配置する際の作業性の評価を行った。この作業性の評価で用いる区画貫通部は、壁を水平に貫通するように形成されている。区画貫通部の形状は、壁面方向から見たとき、四角形状であり、区画貫通部の幅寸法は300mmであり、高さ寸法は150mmであり、奥行き寸法は80mmである。挿通部材の外径寸法は、100mmであり、区画貫通部の奥行き寸法よりも大きい長さ寸法を有している。耐火性成形体の幅寸法は100mmであり、高さ寸法(厚さ寸法)は40mmであり、奥行き寸法は80mmである。
【0066】
作業性の評価では、まず、区画貫通部の内底面に沿って最下段となる3つの耐火性成形体を配列した後、3つのうちの中央の耐火性成形体上に挿通部材を載置した。次に、挿通部材の両側にそれぞれ耐火性成形体を配置した。最後に、区画貫通部の天井面に沿って最上段となる3つの耐火性成形体を配列した。最上段となる3つの耐火性成形体については、耐火性成形体の厚さ方向に圧縮変形させた後、区画貫通部に挿入することで配列した。この一連の作業のうち、最上段となる3つの耐火性成形体を区画貫通部内に配列させる作業について、作業性が非常によい(◎)、作業性がよい(○)、作業性にやや劣る(△)の3段階で判定した。
【0067】
【0068】
【表2】
各実施例の耐火性成形体については、作業性が非常によい、又は作業性がよいとの評価結果が得られた。これに対して、比較例1,3,5の耐火性成形体のアスカーC硬度は、30を超えており、また比較例2,4の耐火性成形体のアスカーC硬度は、10未満であるため、各比較例の耐火性成形体についての作業性の評価は、各実施例よりも劣る結果となった。
【符号の説明】
【0069】
11…耐火性成形体、12…発泡体、13…不織布層、13a…第1不織布層、13b…第2不織布層、S1…第1外表面、S2…第2外表面、S3…接続外表面。