IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケアコムの特許一覧

<>
  • 特許-ナースコールシステム 図1
  • 特許-ナースコールシステム 図2
  • 特許-ナースコールシステム 図3
  • 特許-ナースコールシステム 図4
  • 特許-ナースコールシステム 図5
  • 特許-ナースコールシステム 図6
  • 特許-ナースコールシステム 図7
  • 特許-ナースコールシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20230322BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H04M9/00 H
A61G12/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019079976
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020178263
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄
(72)【発明者】
【氏名】植村 英史
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-132929(JP,A)
【文献】特開2006-149770(JP,A)
【文献】特開2014-057180(JP,A)
【文献】特開2008-244791(JP,A)
【文献】特開2017-005479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/01
A61G9/00-15/12
99/00
G08B19/00-31/00
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-11/10
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナースコール子機と、上記ナースコール子機からの呼び出しを受けて報知動作を行うナースコール親機と、上記ナースコール子機と上記ナースコール親機との間に設置される中継器とを備えたナースコールシステムであって、
上記ナースコール子機は、
複数の用件ボタンと、
上記用件ボタンの押下に応じて、押下された用件ボタンを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を上記中継器に送信する呼出信号送信部とを備え、
上記中継器は、
上記呼出信号送信部により送信された呼出信号を受信し、特定の一の呼出種別の呼出信号として上記ナースコール親機に中継する呼出信号中継部と、
上記ナースコール親機との間に通話路が形成された後、上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に応じた合成音声を、上記通話路を介して上記ナースコール親機に送信する合成音声送信部とを備え、
上記ナースコール親機は、
上記呼出信号中継部により中継された呼出信号の受信に応じて行われる上記報知動作に対する応答操作を検出したときに、通話路を形成する通話路形成部と、
上記通話路形成部により形成された通話路を介して上記中継器から送られてくる上記合成音声を受信する合成音声受信部と、
上記合成音声受信部により受信された合成音声を出力する合成音声出力部とを備えた
ことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
上記中継器は、一または複数の呼出種別に対応する呼出ボタンを備えた第2のナースコール子機を接続可能に構成され、
上記呼出信号中継部は、上記ナースコール子機から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、上記特定の一の呼出種別の呼出信号として上記ナースコール親機に中継する一方、上記第2のナースコール子機から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、押下された呼出ボタンに応じた呼出種別の呼出信号として上記ナースコール親機に中継することを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
上記中継器は、
複数種類の合成音声に対応した複数の音声データと上記ボタン識別情報とを関連付けて記憶する音声データ記憶部と、
上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に応じた音声データを上記音声データ記憶部から読み出して上記合成音声を生成する合成音声生成部と、
上記音声データ記憶部に記憶される上記音声データと上記ボタン識別情報との関連付けをユーザ操作に応じて変更することにより、上記用件ボタンに対する上記合成音声の割り付けを編集する割り付け編集部とを更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
上記割り付け編集部は、ユーザ操作に応じて割り付け変更モードが設定された状態において、上記音声データ記憶部に記憶されている上記複数の音声データに基づいて複数の合成音声を順次生成してスピーカから出力するように制御し、上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信したときに出力されていた合成音声に対応する音声データと、上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報とを関連付けて上記音声データ記憶部に記憶させることを特徴とする請求項3に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
上記割り付け編集部は、ユーザ操作に応じて割り付け確認モードが設定された状態において、上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信した場合、当該受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に対応する音声データを上記音声データ記憶部から読み出して合成音声を生成し、スピーカから出力するように制御することを特徴とする請求項3または4に記載のナースコールシステム。
【請求項6】
上記中継器は、
複数種類の合成音声に対応した複数の音声データと上記ボタン識別情報とを関連付けて記憶する音声データ記憶部と、
上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に応じた音声データを上記音声データ記憶部から読み出して上記合成音声を生成する合成音声生成部と、
ユーザ操作に応じて割り付け変更モードが設定された状態において、上記音声データ記憶部に記憶されている上記複数の音声データに基づいて複数の合成音声を順次生成して上記第2のナースコール子機が備えるスピーカから出力するように制御し、上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信したときに出力されていた合成音声に対応する音声データと、上記ナースコール子機から受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報とを関連付けて上記音声データ記憶部に記憶させることにより、上記音声データ記憶部に記憶される上記音声データと上記ボタン識別情報との関連付けをユーザ操作に応じて変更し、これによって上記用件ボタンに対する上記合成音声の割り付けを編集する割り付け編集部とを更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のナースコールシステム。
【請求項7】
上記割り付け編集部は、ユーザ操作に応じて割り付け確認モードが設定された状態において、上記ナースコール子機から上記呼出信号を受信した場合、当該受信した呼出信号に含まれる上記ボタン識別情報に対応する音声データを上記音声データ記憶部から読み出して合成音声を生成し、上記第2のナースコール子機が備えるスピーカから出力するように制御することを特徴とする請求項6に記載のナースコールシステム。
【請求項8】
上記ユーザ操作に応じて上記割り付け変更モードが設定されていない通常動作モードの状態において、上記合成音声を上記ナースコール親機に送信することによって当該合成音声を上記ナースコール親機のスピーカから出力させる一方、上記第2のナースコール子機のスピーカからは上記合成音声を出力させないようにし、
上記ユーザ操作に応じて上記割り付け変更モードが設定されている状態において、上記合成音声を上記第2のナースコール子機に送信することによって当該合成音声を上記第2のナースコール子機のスピーカから出力させる一方、上記ナースコール親機のスピーカからは上記合成音声を出力させないようにすることを特徴とする請求項6に記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに関し、特に、患者が所定の呼出操作によって看護師を呼び出すことができるように成されたナースコールシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が医師や看護師のサポートを必要とする際、または介護施設の被介護者が介護師のサポートを必要とする際に、患者や被介護者(以下、単に「患者」と言う)が呼出ボタン等を押下することによって医師や看護師、介護師(以下、単に「看護師」と言う)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
ナースコールシステムは、患者が看護師と通話をすることで患者の要求や意思を伝える手助けをするシステムである。しかしながら、発声障害を持つ患者の場合は、音声による通話ができないため、患者が自身の要求や意思を看護師に適切に伝え、看護師がそれを正確に理解することが困難である。そのため、患者と看護師の双方がストレスを感じたり、看護師が用件を聞きに病室まで行かなければならなくなって看護師の動線が増えてしまったりするという問題があった。
【0004】
従来、このような問題を解決するためのナースコールシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のナースコールシステムでは、ナースコール子機からの呼び出しによってナースコール親機とナースコール子機との間に通話路が形成された後、通話による看護師からの質問に対して患者が複数の応答ボタンの中から何れかを選択して押下すると、押下された応答ボタンに対応する合成音声がナースコール親機に送信され、スピーカから出力される。これにより、話をすることができない患者でも、応答ボタンを利用することで看護師に対して要求や意思を簡単に伝達することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-244791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のナースコールシステムでは、患者は、呼出ボタンの操作と、それによって通話路が形成された後における応答ボタンの操作との2回の操作を行う必要がある。また、看護師は、ナースコール子機からの呼び出しに応答した後、通話によって患者に対して質問をしなければ患者の要求や意思を理解することができない。そのため、患者および看護師の双方とも手間がかかるという問題があった。しかも、特許文献1に記載のナースコールシステムでは、患者は呼出ボタンを操作した後に通話路が形成されたかどうかを判断してから応答ボタンを操作しなければならないため、不便である。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、発声障害を有する患者であっても、看護師のサポートを必要とする際に、簡単なナースコール操作で自分の要求や意思を看護師に的確に伝えることができ、用件の伝達と確認にかかる患者および看護師の手間を軽減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明のナースコールシステムでは、ナースコール子機が複数の用件ボタンを有し、何れかの用件ボタンの押下に応じて、押下された用件ボタンを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号をナースコール子機から中継器に送信し、中継器がこれを特定の一の呼出種別の呼出信号としてナースコール親機に中継する。そして、この呼出信号の受信に応じてナースコール親機にて行われる報知動作に対する応答操作によってナースコール親機と中継器との間に通話路が形成された後、中継器がナースコール子機から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた合成音声をナースコール親機に送信し、当該合成音声をナースコール親機にて出力するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、発声障害を有する患者が看護師のサポートを必要とする際に、自分の要求や意思に応じた用件ボタンを押下すれば、押下した用件ボタンに応じた合成音声がナースコール親機に送信されて出力されるので、患者は用件ボタンの押下のみで自分の要求や意思を看護師に的確に伝えることができる。このとき、患者は所望の用件ボタンを1回操作するだけでよく、通話路が形成されたかどうかを確認する必要もない。また、看護師は報知動作に応じて応答操作をするだけでよく、患者に対して通話による質問等をすることなく、患者の要求や意思を合成音声により確認することができる。これにより、本発明によれば、発声障害を有する患者であっても、看護師のサポートを必要とする際に、簡単なナースコール操作で自分の要求や意思を看護師に的確に伝えることができ、用件の伝達と確認にかかる患者および看護師の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1および第2の実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
図2】第1および第2の実施形態による用件伝達型子機の外観構成例を示す図である。
図3】第1の実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態による音声データ記憶部が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。
図5】第1の実施形態によるナースコールシステムの動作例を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態による音声データ記憶部が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。
図8】第2の実施形態による用件伝達型子機の外観構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。これは、後で説明する第2の実施形態も同様である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4、中継器5、ハンド形子機6(特許請求の範囲における第2のナースコール子機に相当)および用件伝達型子機7(特許請求の範囲におけるナースコール子機に相当)を備えて構成されている。ナースコール親機1は、ナースステーションに設置されるものであってもよいし、個々の看護師が携行する携帯型のナースコール親機であってもよい。壁埋込形子機4、中継器5、ハンド形子機6および用件伝達型子機7は、患者の病室内に設置される。
【0013】
ナースコール親機1は、患者(ハンド形子機6または用件伝達型子機7)からの呼び出しに対する応答の操作を行い、看護師が患者と通話を行うためのものである。ナースコール親機1は、患者からの呼び出しを受けたとき、所定の報知動作を行う。報知動作は、ナースコール親機1が備えるスピーカから呼出音を出力するとともに、ナースコール親機1が備えるディスプレイに対して呼び出しに係る患者および呼出種別などの情報を表示させることによって行われる。
【0014】
この報知動作の実行中に、看護師がオフフック等の応答操作を行うと、ナースコール親機1は上述の報知動作を停止するとともに通話路を形成する。詳細は後述するが、ハンド形子機6からの呼び出しに対して応答操作が行われた場合、ナースコール親機1はハンド形子機6との間に通話路を形成し、患者と通話を行うことができる状態とする。また、用件伝達型子機7からの呼び出しに対して応答操作が行われた場合、ナースコール親機1は中継器5との間に通話路を形成し、中継器5から送られてくる合成音声を受信してスピーカから出力する。
【0015】
制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間に配置され、通話やデータの送受信に関する制御を行う。送受信されるデータには、ハンド形子機6または用件伝達型子機7からナースコール親機1に送られる呼出信号、ナースコール親機1から用件伝達型子機7に送られる応答通知信号、中継器5からナースコール親機1に送られる合成音声の音声信号などが含まれる。
【0016】
廊下灯3は、病院の各病室の入口付近外部に設置される。この廊下灯3は、表示装置を備え、病室内の患者名が表示されるとともに、病室内の患者がハンド形子機6または用件伝達型子機7を用いて看護師の呼び出しを行うと、呼び出しが行われたことが表示されるようになっている。なお、呼び出しが行われたことの表示は、LEDの点灯または点滅により行うようにしてよい。LEDは、所定の復旧操作が行われたときに消灯する。
【0017】
廊下灯3は、ハンド形子機6または用件伝達型子機7から中継器5を介して送信された呼出信号を、制御機2を介してナースコール親機1に送信する。また、廊下灯3は、ナースコール親機1から制御機2を介して送信された応答通知信号を、壁埋込形子機4および中継器5を介して用件伝達型子機7に送信する。また、廊下灯3は、ナースコール親機1での応答操作により形成された通話路を介して中継器5から送信された音声信号(ハンド形子機6のマイクから入力された患者の通話音声、または中継器5にて生成された用件伝達のための合成音声に関するもの)を、制御機2を介してナースコール親機1に送信するとともに、ナースコール親機1から制御機2を介して送られてきた看護師の通話音声に係る音声信号を、壁埋込形子機4および中継器5を介してハンド形子機6に送信する。
【0018】
壁埋込形子機4は、病室の各ベッドサイドの壁に埋め込み設置される。この壁埋込形子機4は、廊下灯3に接続されている。壁埋込形子機4は、中継器5またはハンド形子機6を接続するための接続端子を備えている。ハンド形子機6を壁埋込形子機4に直接接続することも可能であるが、本実施形態では、壁埋込形子機4に中継器5を接続し、その中継器5にハンド形子機6を接続している。壁埋込形子機4は、廊下灯3と中継器5との間で上述した呼出信号、応答通知信号および音声信号を送受信する。なお、壁埋込形子機4は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカを備えてもよい。
【0019】
ハンド形子機6は、壁埋込形子機4または中継器5に接続され、患者のベッドサイドに設置される。上述のように、ハンド形子機6は壁埋込形子機4に直接接続することも可能であるが、本実施形態では、壁埋込形子機4に接続した中継器5に対してハンド形子機6を接続するようにしている。ハンド形子機6は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン6a、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイク(図示せず)およびスピーカ6bを備えている。
【0020】
ハンド形子機6は、一または複数の呼出種別に対応する呼出ボタン6aを備えており、患者が何れかの呼出ボタン6aを操作すると、操作された呼出ボタン6aに対応する呼出種別の呼出信号が中継器5、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介してナースコール親機1に送信されるようになっている。呼出種別は、例えば、一般呼出、緊急呼出、特定呼出(トイレまたは点滴)などである。
【0021】
用件伝達型子機7は、中継器5に無線で接続され、患者のベッドサイドに設置される。例えば、用件伝達型子機7は、Bluetooth(登録商標)の無線通信手段を用いて中継器5に接続される。用件伝達型子機7と中継器5とは1対1で無線通信を行う。無線通信をするに当たり、中継器5は用件伝達型子機7とのペアリング登録を行う。ペアリング登録に関する処理を行う機能は中継器5が備えている。例えば、中継器5が備える設定スイッチ5aを長押しすることによってペアリング待機状態とした後、ペアリングする用件伝達型子機7において所定の操作をすることによって用件伝達型子機7の識別情報を中継器5に無線送信し、この識別情報を中継器5に記憶することにより、ペアリング登録を行う。
【0022】
用件伝達型子機7は、患者が看護師を呼び出すための複数の用件ボタン7aを備えており、患者が何れかの用件ボタン7aを操作すると、操作された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号が中継器5に送信されるようになっている。用件伝達型子機7は、バッテリを内蔵し、当該バッテリからの電源を得て動作する。本実施形態では、ペアリング登録の機能や、後述する音声合成の機能を中継器5が備えることにより、用件伝達型子機7のバッテリの消耗を抑制するようにしている。
【0023】
中継器5は、用件伝達型子機7とナースコール親機1との間(具体的には、用件伝達型子機7と壁埋込形子機4との間)に設置される。中継器5は、一般電源のコンセントに接続され、当該コンセントから電源を得て動作する。中継器5は、壁埋込形子機4とハンド形子機6および用件伝達型子機7と間で上述した呼出信号、応答通知信号および音声信号を送受信する。音声信号に関して、中継器5は、用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に対応する合成音声を生成し、生成した合成音声の音声信号を、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介してナースコール親機1に送信する。この動作の詳細については後述する。
【0024】
図2は、用件伝達型子機7の外観構成例を示す図である。図2に示すように、用件伝達型子機7は、複数の用件ボタン7aを備えている。本実施形態では、8個の用件ボタン7aが筐体の正面の両サイドに4個ずつ並べて配置されている。1つ1つの用件ボタン7aには、患者が看護師に伝達する用件の内容を端的に表した文言が記されている。図2の例では、「トイレ」、「苦しい」、「くすり」、「経管栄養」、「痛い」、「痰を取って」、「点滴」、「用事」の各文言が8個の用件ボタン7aにそれぞれ記されている。
【0025】
これらの用件ボタン7aは、透光性を有する樹脂材料またはガラス材料などにより構成されており、その裏側(筐体の内側)にはLEDが設置されている。用件ボタン7aは、押下によって操作することができるようになされており、患者が何れかの用件ボタン7aを押下すると、押下された用件ボタン7aに対応するLEDが点灯するとともに、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号が中継器5に送信される。
【0026】
上述した通り、用件ボタン7aは透光性を有する材料により構成されているため、裏側のLEDが点灯すると、押下された用件ボタン7aが光って見え、どの用件ボタン7aを押下したのかが一目で分かるようになっている。すなわち、押下された用件ボタン7aに対応するLEDが点灯することにより、当該押下された用件ボタン7aに対応する用件の内容(用件ボタン7aに記された文言の内容)が識別可能に表示された状態となる。以下の説明において、用件ボタン7aの裏側に配置されたLEDが点灯または消灯することを、便宜的に「用件ボタン7aが点灯または消灯する」という。
【0027】
用件伝達型子機7は、照明スイッチ7bを備えている。照明スイッチ7bも押下によって操作することができるようになされており、患者が照明スイッチ7bを押下すると、全ての用件ボタン7aが点灯する。例えば、夜間において病室の照明が消灯された後、用件ボタン7aに記された用件の文言が見えないときに照明スイッチ7bを押下することにより、全ての用件ボタン7aを光らせて、文言の内容を確認することができるようにしている。なお、用件伝達型子機7が備える表示制御部(後述する)は、LEDを2段階の輝度で点灯させる調整機能を有しており、照明スイッチ7bが押下された場合は、全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させる。また、何れかの用件ボタン7aが押下された場合は、表示制御部はその押下された用件ボタン7aを高輝度で点灯させる。
【0028】
用件伝達型子機7は、応答表示ランプ7cを備えている。この応答表示ランプ7cは、用件ボタン7aの押下により行われた呼び出しに対して看護師が応答したことを知らせるためのランプである。この応答表示ランプ7cも、透光性を有する材料の裏側にLEDを配置した構成となっている。看護師がナースコール親機1にて応答操作を行うと、応答通知信号がナースコール親機1から用件伝達型子機7に送信される。そして、用件伝達型子機7がこの応答通知信号を受信すると、応答表示ランプ7cが点灯する。これにより、患者は、何れかの用件ボタン7aを押下することによって行った呼び出しに対して看護師が応答したか否かを確認することができる。
【0029】
用件伝達型子機7は、看護師が操作するための復旧ボタン7dを備えている。復旧ボタン7dは、これを患者が誤って操作してしまうことを抑制するために、患者が操作する用件ボタン7aおよび照明スイッチ7bが配置された筐体の正面とは異なる上面に配置されている。この復旧ボタン7dは、患者により押下された用件ボタン7aを消灯させて復旧状態とするためのボタンである。すなわち、ナースコール親機1にて応答操作を行った看護師が病室に到着したときにこの復旧ボタン7dを押下することにより、患者により押下された用件ボタン7aが点灯した状態を解除して、用件伝達型子機7を復旧状態に戻すことが可能である。
【0030】
図3は、第1の実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。ここでは、ナースコール親機1、中継器5および用件伝達型子機7の機能構成例を示している。
【0031】
図3に示すように、第1の実施形態によるナースコール親機1は、機能構成として、呼出信号受信部101、報知処理部102、応答操作検出部103、通話路形成部104、合成音声受信部105および合成音声出力部106を備えている。また、ナースコール親機1は、ハードウェア構成として、スピーカ111およびディスプレイ112を備えている。
【0032】
第1の実施形態による中継器5は、機能構成として、呼出信号中継部501、応答通知中継部502、通話路関連処理部503、合成音声生成部504および合成音声送信部505を備えている。また、中継器5は、記憶媒体として、音声データ記憶部511を備えている。第1の実施形態による用件伝達型子機7は、機能構成として、押下検出部701、呼出信号送信部702、表示制御部703および応答通知受信部704を備えている。
【0033】
上記ナースコール親機1、中継器5および用件伝達型子機7が備える各機能ブロックは、それぞれハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロックは、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0034】
用件伝達型子機7の押下検出部701は、患者による用件ボタン7a、照明スイッチ7bの押下を検出する。また、押下検出部701は、看護師による復旧ボタン7dの押下を検出する。押下検出部701は、患者による用件ボタン7aの押下を検出した場合、その旨を呼出信号送信部702および表示制御部703に通知する。押下検出部701は、患者による照明スイッチ7bの押下または看護師による復旧ボタン7dの押下を検出した場合、その旨を表示制御部703に通知する。
【0035】
呼出信号送信部702は、用件ボタン7aの押下に応じて、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5に送信する。なお、各用件ボタン7aに対応するボタン識別情報は、用件伝達型子機7の図示しない記憶媒体にあらかじめ記憶されている。
【0036】
表示制御部703は、用件ボタン7aおよび応答表示ランプ7cの表示を制御する。すなわち、表示制御部703は、照明スイッチ7bの押下が押下検出部701により検出された場合は、全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させる。例えば、表示制御部703は、照明スイッチ7bが押下されたときから一定時間だけ全ての用件ボタン7aを低輝度で点灯させた後、全ての用件ボタン7aを消灯させる。あるいは、表示制御部703は、照明スイッチ7bの押下に応じて全ての用件ボタン7aを点灯させた後、照明スイッチ7bが再び押下された時点で全ての用件ボタン7aを消灯させるようにしてもよいし、何れかの用件ボタン7aが押下された時点で、当該押下された用件ボタン7a以外の用件ボタン7aを消灯させるようにしてもよい。
【0037】
また、表示制御部703は、何れかの用件ボタン7aの押下が押下検出部701によりされた場合は、その押下された用件ボタン7aを高輝度で点灯させる。また、表示制御部703は、復旧ボタン7dの押下が押下検出部701により検出された場合は、点灯中の用件ボタン7aを消灯させる。また、表示制御部703は、ナースコール親機1から送られてくる応答通知信号を応答通知受信部704が受信した場合に、応答表示ランプ7cを点灯させる。
【0038】
応答通知受信部704は、上述の通り、ナースコール親機1から中継器5を介して送られてくる応答通知信号を受信し、その旨を表示制御部703に通知する。応答通知受信部704が受信する応答通知信号は、用件ボタン7aの押下によって看護師の呼び出しが行われた後、看護師がナースコール親機1にて応答操作をすることによって発生する信号である。
【0039】
中継器5の呼出信号中継部501は、ハンド形子機6の呼出ボタン6aの押下に応じてハンド形子機6から送信された呼出信号を受信し、押下された呼出ボタン6aに対応する呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。上述したように、ハンド形子機6が送信し得る呼出信号の呼出種別には、一般呼出、緊急呼出、特定呼出(トイレまたは点滴)がある。
【0040】
また、呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7の呼出信号送信部702により送信された呼出信号を受信した場合、その呼出信号に含まれるボタン識別情報を合成音声生成部504に通知するとともに、その呼出信号を特定の一の呼出種別の呼出信号(ボタン識別情報は含まない)としてナースコール親機1に中継する。呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合、その呼出信号に含まれるボタン識別情報の内容によらず(すなわち、どの用件ボタン7aが押下されたかによらず)、複数の呼出種別の中の特定の一の呼出種別(例えば、一般呼出)の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。
【0041】
すなわち、図2に示した「トイレ」、「点滴」の用件ボタン7aは、一般的には特殊呼出という呼出種別が割り当てられるものであり、「苦しい」、「痛い」などの用件ボタン7aは、一般的には緊急呼出という呼出種別が割り当てられる可能性のあるものであるが、これらの用件ボタン7aが押下された場合も、呼出信号中継部501は一般呼出の呼出信号をナースコール親機1に送信する。
【0042】
以上のように、呼出信号中継部501は、ハンド形子機6から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、押下された呼出ボタン6aに応じた呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する。一方、呼出信号中継部501は、用件伝達型子機7から呼出信号を受信した場合は、当該呼出信号を、特定の一の呼出種別の呼出信号としてナースコール親機に中継する。このように本実施形態では、ナースコールシステムに用意された呼出種別の1つを利用して、合成音声によって患者の用件を看護師に伝達する際の呼出信号をナースコール親機1に送信することができるようにしている。
【0043】
応答通知中継部502は、ナースコール親機1から送られてくる応答通知信号を受信し、用件伝達型子機7に中継する。通話路関連処理部503は、ナースコール親機1との間で通話路の形成に関する処理を行う。通話路の形成に関する処理とは、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して通話路を形成するための処理であり、例えば通話路形成部104からの要求に応じて、当該要求に応じた処理を実行する。
【0044】
ハンド形子機6からの呼び出しに対してナースコール親機1にて応答操作が行われた場合、通話路関連処理部503は、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して、ナースコール親機1とハンド形子機6との間に通話路を形成するために必要な処理を行う。この場合の処理のために、ハンド形子機6も通話路関連処理部を備えているが、図示を省略している。また、用件伝達型子機7からの呼び出しに対してナースコール親機1にて応答操作が行われた場合、通話路関連処理部503は、ナースコール親機1の通話路形成部104と協働して、ナースコール親機1と中継器5との間に通話路を形成するために必要な処理を行う。ナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された場合、通話路関連処理部503はその旨を合成音声生成部504に通知する。
【0045】
合成音声生成部504は、ナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された場合、呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する。音声データ記憶部511は、複数種類の合成音声に対応した複数の音声データとボタン識別情報とを関連付けて記憶している。複数種類の合成音声は、患者が看護師に伝える用件の内容を示したものである。
【0046】
図4は、第1の実施形態による音声データ記憶部511が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。図4に示す8個の合成音声は、図2に示した8個の用件ボタン7aに対応したものである。すなわち、「トイレ」、「苦しい」、「くすり」、「経管栄養」、「痛い」、「痰を取って」、「点滴」、「用事」の各文言が記された8個の用件ボタン7aのボタン識別情報「001」~「008」と関連付けて、図4に示す8個の合成音声を生成するための音声データが音声データ記憶部511に記憶されている。例えば、用件伝達型子機7の筐体において最も左上に配置された1番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「001」と関連付けて、「トイレに行きたいです。」という合成音声の音声データが記憶されている。また、用件伝達型子機7の筐体において最も右下に配置された8番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「008」と関連付けて、「用事があります。」という合成音声の音声データが記憶されている。
【0047】
合成音声送信部505は、ナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された後、呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた合成音声(合成音声生成部504により生成された合成音声)を、通話路を介してナースコール親機1に送信する。上述したように、用件伝達型子機7からの呼出信号に応じてナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された場合、合成音声生成部504は、当該呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する。合成音声送信部505は、合成音声生成部504により生成された合成音声の音声信号をナースコール親機1に送信する。なお、以下の説明において「合成音声を送信する」ということがあるが、これは「合成音声の音声信号を送信する」と同義である。
【0048】
このように、本実施形態では、ナースコールシステムに用意された限られた数の呼出種別を用いて、呼出種別の数よりも多い種類の用件を看護師に伝達するための合成音声をナースコール親機1に送信することができるようにしている。本実施形態では、例えば一般呼出という1つの呼出種別を用いて、8種類の用件の合成音声をナースコール親機1に送信することが可能である。
【0049】
ナースコール親機1の呼出信号受信部101は、中継器5の呼出信号中継部501により中継されたハンド形子機6からの呼出信号および用件伝達型子機7からの呼出信号を受信する。報知処理部102は、呼出信号受信部101による呼出信号の受信に応じて所定の報知動作を行い、応答操作検出部103により検出される所定の応答操作に応じて報知動作を停止する。すなわち、報知処理部102は、呼出信号受信部101が呼出信号を受信した場合、スピーカ111から呼出音を出力するとともに、ディスプレイ112に対して呼び出しに係る患者および呼出種別などの情報を表示させるといった報知動作を実行する。その後、応答操作検出部103がオフフック等の応答操作を検出すると、報知処理部102は上述の報知動作を停止するとともに、応答通知信号を中継器5に送信する。
【0050】
通話路形成部104は、呼出信号の受信に応じて行われる報知動作に対する応答操作を押下検出部701が検出したときに、中継器5またはハンド形子機6との間に通話路を形成する。すなわち、ハンド形子機6からの呼出信号に応じて行われる報知動作に対する応答操作を押下検出部701が検出した場合、通話路形成部104は、ハンド形子機6との間に通話路を形成する処理を行う。また、用件伝達型子機7からの呼出信号に応じて行われる報知動作に対する応答操作を押下検出部701が検出した場合、通話路形成部104は、中継器5との間に通話路を形成する処理を行う。
【0051】
合成音声受信部105は、通話路形成部104により形成された通話路を介して中継器5から送られてくる合成音声の音声信号を受信する。合成音声出力部106は、合成音声受信部105により受信された合成音声の音声信号に基づいて、用件の合成音声をスピーカ111から出力する。看護師は、スピーカ111から出力される合成音声を聞くことにより、患者との間で通話を行うことなく、患者が伝えてきている用件を把握することができる。
【0052】
図5は、以上のように構成した第1の実施形態によるナースコールシステムの動作例を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、患者が何れかの用件ボタン7aを押下したときに実行される合成音声の出力処理に関する動作例を示しており、その他の処理に関する動作は省略している。なお、図5に示すフローチャートにおいて、制御機2、廊下灯3および壁埋込形子機4の動作については説明を省略している。
【0053】
まず、患者により何れかの用件ボタン7aが押下されたことを押下検出部701が検出すると(ステップS1)、呼出信号送信部702は、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5に送信する(ステップS2)。中継器5の呼出信号中継部501は、呼出信号送信部702により送信された呼出信号を受信し、特定の一の呼出種別の呼出信号としてナースコール親機1に中継する(ステップS3)。
【0054】
ナースコール親機1の呼出信号受信部101は、用件伝達型子機7から中継器5、壁埋込形子機4、廊下灯3および制御機2を介して送られてきた呼出信号を受信する(ステップS4)。報知処理部102は、呼出信号受信部101による呼出信号の受信に応じて所定の報知動作を行う(ステップS5)。この報知動作の最中、応答操作検出部103は、看護師による応答操作が行われたか否かを監視する(ステップS6)。
【0055】
看護師による応答操作が応答操作検出部103により検出された場合、報知処理部102は、報知動作を停止する(ステップS7)。また、通話路形成部104は、中継器5との間に通話路を形成する(ステップS8)。ナースコール親機1と中継器5との間の通話路が形成されると、中継器5の合成音声生成部504は、ステップS3で呼出信号中継部501が用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた音声データを音声データ記憶部511から読み出して合成音声を生成する(ステップS9)。
【0056】
次いで、合成音声送信部505は、合成音声生成部504により生成された合成音声の音声信号をナースコール親機1に送信する(ステップS10)。ナースコール親機1では、中継器5から送信された合成音声の音声信号を合成音声受信部105により受信し(ステップS11)、合成音声出力部106がその合成音声の音声信号に基づいて合成音声をスピーカ111から出力する(ステップS12)。以上により、図5に示すフローチャートの処理が終了する。
【0057】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態によるナースコールシステムでは、用件伝達型子機7が備える用件ボタン7aの押下に応じて、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を用件伝達型子機7から中継器5に送信し、中継器5が呼出信号をナースコール親機1に中継する。そして、この呼出信号の受信に応じてナースコール親機1にて行われる報知動作に対する応答操作によってナースコール親機1と中継器5との間に通話路が形成された後、中継器5が用件伝達型子機7から受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報に応じた合成音声をナースコール親機1に送信し、当該合成音声をナースコール親機1にて出力するようにしている。
【0058】
このように構成した第1の実施形態によれば、発声障害を有する患者が看護師のサポートを必要とする際に、自分の要求や意思に応じた用件ボタン7aを押下すれば、押下した用件ボタン7aに応じた合成音声がナースコール親機1に送信されて出力されるので、患者は用件ボタン7aの押下のみで自分の要求や意思を看護師に的確に伝えることができる。このとき、患者は所望の用件ボタン7aを1回操作するだけでよく、通話路が形成されたかどうかを確認する必要もない。また、看護師は報知動作に応じて応答操作をするだけでよく、患者に対して通話による質問等をすることなく、患者の要求や意思を合成音声により確認することができる。これにより、第1の実施形態によれば、発声障害を有する患者であっても、看護師のサポートを必要とする際に、簡単なナースコール操作で自分の要求や意思を看護師に的確に伝えることができ、用件の伝達と確認にかかる患者および看護師の手間を軽減することができる。
【0059】
また、第1の実施形態によるナースコールシステムでは、用件伝達型子機7から中継器5に送信された呼出信号を、中継器5がこれを特定の一の呼出種別(例えば、一般呼出)の呼出信号としてナースコール親機1に中継するようにしている。このため、中継器5やナースコール親機1では、呼出種別を判別して必要な処理をするといった煩雑な処理を行う必要がないというメリットを有する。どの用件ボタン7aが押下された場合でも区別なく一般呼出として呼出信号を送信することとしても、看護師がナースコール親機1にて応答操作をすると直ちに用件の合成音声が出力されるので、看護師はその合成音声の内容から、特殊呼出に相当する内容(「トイレ」、「点滴」など)なのか、緊急呼出に相当する内容(「苦しい」、「痛い」など)なのかを直ちに判断することが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。第2の実施形態によるナースコールシステムの全体構成は、図1と同様である。図6は、第2の実施形態によるナースコールシステムの機能構成例を示すブロック図である。なお、この図6において、図3に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。第2の実施形態は、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに対する合成音声の割り付けを任意に設定できるようにしたものである。
【0061】
図6に示すように、第2の実施形態による中継器5’は、呼出信号中継部501、合成音声生成部504、合成音声送信部505および音声データ記憶部511に代えて、呼出信号中継部501’、合成音声生成部504’、合成音声送信部505’および音声データ記憶部511’を備えるとともに、操作受付部506、モード設定部507、割り付け編集部508を更に備えている。中継器5’は、第1の実施形態で説明したペアリング登録機能および音声合成機能に加え、合成音声の割り付け編集機能も備えることにより、用件伝達型子機7のバッテリの消耗を抑制するようにしている。
【0062】
また、第2の実施形態によるハンド形子機6’は、機能構成として、合成音声受信部601および合成音声出力部602を備えている。後述するように、ハンド形子機6’が備えるスピーカ6bは、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに対する合成音声の割り付けを確認したり変更したりする際にも使用され、中継器5’にて生成された合成音声が出力される。
【0063】
中継器5’の音声データ記憶部511’は、用件伝達型子機7が備える用件ボタン7aの数よりも多い複数種類の合成音声に対応した複数の音声データを記憶するとともに、当該複数の音声データの中の何れかと用件ボタン7aのボタン識別情報とを関連付けて記憶している。図7は、音声データ記憶部511’が記憶する複数の音声データに対応する合成音声の内容およびボタン識別情報との関連付けを模式的に示す図である。
【0064】
図7では、8個の用件ボタン7aよりも多い16個の合成音声の一例を示している。音声データ記憶部511’は、これら16個の合成音声に対応する音声データを記憶している。また、図7では、8個のボタン識別情報「001」~「008」がどの合成音声に関連付けられているかも示している。例えば、用件伝達型子機7の筐体において最も左上に配置された1番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「001」が、「トイレに行きたいです。」という合成音声の音声データに関連付けられている。また、用件伝達型子機7の筐体において最も右下に配置された8番目の用件ボタン7aに対応するボタン識別情報「008」が、「眠れないです。」という合成音声の音声データに関連付けられている。
【0065】
中継器5’の操作受付部506は、設定スイッチ5aの操作を受け付け、どのような操作が行われたかを検出する。設定スイッチ5aは、用件伝達型子機7のペアリング登録を行う際の他、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに対して現在設定されている合成音声の割り付けを確認する際や、用件伝達型子機7の用件ボタン7aに対する合成音声の割り付けの設定を変更する際にも使用され、これらの目的に応じて設定スイッチ5aの操作方法が異なる。
【0066】
モード設定部507は、操作受付部506が受け付けた設定スイッチ5aの操作内容に応じて、異なるモードを設定する。異なるモードとは、ペアリング登録モード、割り付け確認モード、割り付け変更モードである。上述したように、モード設定部507は、設定スイッチ5aの長押しが操作受付部506により検出された場合、ペアリング登録モードを設定する。また、モード設定部507は、設定スイッチ5aの短押しが操作受付部506により検出された場合、割り付け確認モードを設定する。また、モード設定部507は、設定スイッチ5aの短押しの後の長押しが操作受付部506により検出された場合、割り付け変更モードを設定する。これらのペアリング登録モード、割り付け確認モード、割り付け変更モードの何れも設定されていない状態は通常動作モードである。
【0067】
割り付け編集部508は、割り付け確認モードおよび割り付け変更モードの設定時における処理を実行する。すなわち、割り付け編集部508は、モード設定部507により割り付け確認モードが設定された状態において、合成音声生成部504’および合成音声送信部505’を制御して、合成音声をハンド形子機6’に送信してスピーカ6bから出力させる。また、割り付け編集部508は、モード設定部507により割り付け変更モードが設定された状態において、音声データ記憶部511に記憶される音声データとボタン識別情報との関連付けをユーザ操作に応じて変更する。この変更処理の際にも、割り付け編集部508は、合成音声生成部504’および合成音声送信部505’を制御して、合成音声をハンド形子機6’に送信してスピーカ6bから出力させる。以下に、割り付け確認モードおよび割り付け変更モードの設定時における動作を説明する。
【0068】
<割り付け確認モード>
まず、看護師が設定スイッチ5aを短押しすると、その操作内容が操作受付部506により検出され、モード設定部507により割り付け確認モードが設定される。このようにユーザ操作に応じて割り付け確認モードが設定された状態において、看護師が合成音声を確認したい用件ボタン7aを押下する。この押下を押下検出部701が検出すると、呼出信号送信部702は、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5’に送信する。
【0069】
この呼出信号を中継器5’の呼出信号中継部501’が受信すると、呼出信号中継部501’は、受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報を割り付け編集部508に通知する。この通知を受けて割り付け編集部508は、合成音声生成部504’および合成音声送信部505’を制御して、呼出信号中継部501’から通知されたボタン識別情報に対応する音声データを音声データ記憶部511’から読み出して合成音声を生成し、生成した合成音声の音声信号をハンド形子機6’に送信する。
【0070】
ハンド形子機6’の合成音声受信部601は、中継器5’から送信された合成音声の音声信号を受信する。合成音声出力部602は、合成音声受信部601により受信された合成音声の音声信号に基づいて、合成音声をスピーカ6bから出力する。看護師は、スピーカ6bから出力される合成音声を聞くことにより、押下した用件ボタン7aに割り付けられている合成音声の内容を確認することができる。
【0071】
<割り付け変更モード>
まず、看護師が設定スイッチ5aを短押した後に長押しをすると、その操作内容が操作受付部506により検出され、モード設定部507により割り付け変更モードが設定される。このようにユーザ操作に応じて割り付け変更モードが設定されると、割り付け編集部508からの制御を受けて動作する合成音声生成部504’および合成音声送信部505’は、音声データ記憶部511’に記憶されている複数の音声データに基づいて複数の合成音声を順次生成し、生成した複数の合成音声の音声信号をハンド形子機6’に順次送信する。
【0072】
ハンド形子機6’の合成音声受信部601は、中継器5’から送信された複数の合成音声の音声信号を順次受信する。合成音声出力部602は、合成音声受信部601により受信された合成音声の音声信号に基づいて、複数の合成音声をスピーカ6bから順次出力する。看護師は、スピーカ6bから順次出力される合成音声を聞くことにより、音声データ記憶部511’に記憶されている複数(図7の例では16個)の音声データに対応する合成音声の内容を順次確認することができる。
【0073】
このように複数の合成音声がスピーカ6bから順次出力されている状態において、割り付けをしたい合成音声が出力されている間に、看護師が所望の用件ボタン7aを押下する。この押下を押下検出部701が検出すると、呼出信号送信部702は、押下された用件ボタン7aを識別可能なボタン識別情報を含む呼出信号を中継器5’に送信する。この呼出信号を中継器5’の呼出信号中継部501’が受信すると、呼出信号中継部501’は、受信した呼出信号に含まれるボタン識別情報を割り付け編集部508に通知する。
【0074】
この通知を受けて割り付け編集部508は、呼出信号中継部501’が用件伝達型子機7から呼出信号を受信したときにスピーカ6bから出力されていた合成音声(合成音声送信部505’から用件伝達型子機7に送信されていた合成音声)に対応する音声データと、呼出信号中継部501’から通知されたボタン識別情報とを関連付けて音声データ記憶部511’に記憶させることにより、音声データ記憶部511’に記憶させる音声データとボタン識別情報との関連付けを変更する。
【0075】
なお、複数の合成音声がスピーカ6bから順次出力されている状態において、設定スイッチ5aを短押しすることにより、次の合成音声の再生にスキップするように構成してもよい。
【0076】
第2の実施形態では、中継器5’は、ユーザ操作に応じて割り付け確認モードも割り付け変更モードも設定されていない通常動作モードの状態において、合成音声送信部505’が合成音声をナースコール親機1に送信することによって当該合成音声をナースコール親機1のスピーカ111から出力させる一方、合成音声送信部505’が合成音声をハンド形子機6’には送信せず、ハンド形子機6’のスピーカ6bからは合成音声を出力させないようにする。
【0077】
また、中継器5’は、ユーザ操作に応じて割り付け確認モードまたは割り付け変更モードの何れかが設定されている状態において、割り付け編集部508による制御のもとで合成音声送信部505’が合成音声をハンド形子機6’に送信することによって当該合成音声をハンド形子機6’のスピーカ6bから出力させる一方、合成音声送信部505’が合成音声をナースコール親機1には送信せず、ナースコール親機1のスピーカ111からは合成音声を出力させないようにする。
【0078】
用件伝達型子機7の用件ボタン7aに対する合成音声の割り付けを変更した場合、それに合わせて用件ボタン7aに記す文言も変更する。例えば、用件ボタン7aの透光性を有する樹脂部材を着脱可能に構成し、この樹脂部材を交換することによって文言の変更を行うようにする。この場合は、16種類の用件に応じて16個の樹脂材料を用意しておく。別の例として、文言の部分以外が透明なシールを設け、用件ボタン7aに貼り付けるシールを交換するようにしてもよい。この場合は、16種類の用件に応じて16個のシールを用意しておく。図8は、右下の用件ボタン7aに記されている文言を図2の「用事」から「眠れない」に変更した状態を示している。
【0079】
このように構成した第2の実施形態によれば、8個の用件ボタン7aに対して、それより多い数の合成音声の中から所望のものを任意に割り付けて使用することが可能となる。すなわち、用件伝達型子機7を使用する患者に合わせて、その患者にとって使用頻度の高い用件を選んで8個の用件ボタン7aに割り付けることができる。また、患者にとって使用頻度の高い用件が8個より少ない場合は、1つの用件を複数の用件ボタン7aに重複して割り付けることも可能である。例えば、最も使用頻度の高い1つの用件を左側4個の用件ボタン7aに割り付けることも可能であり、そうすることで、患者が必要な用件ボタン7aを探す手間を減らすことができる。
【0080】
なお、8個の用件ボタン7aと16個の音声データとは一例に過ぎず、このような数の組み合わせに限定されるものではない。例えば、8個より少ない数の用件ボタン7aを備えて用件伝達型子機7をコンパクトな構成としつつ、16個より多くの種類の用件に対応する合成音声を用件ボタン7aに任意に割り付けて使用するようにすることも可能である。また、用件ボタン7aの数と音声データの数とを同数(例えば8個)とし、用件ボタン7aに割り付ける合成音声の順番を任意に変えられるような構成としてもよい。
【0081】
上記第2の実施形態では、割り付け確認モードまたは割り付け変更モードの何れかが設定されている状態において、合成音声をハンド形子機6’のスピーカ6bから出力させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、中継器5’にスピーカを設け、中継器5’のスピーカから合成音声を出力するようにしてもよい。ただし、ハンド形子機6’が元々備えているスピーカ6bを利用して合成音声を出力するようにすることで、中継器5’の構成を簡略化することができるというメリットを有する。
【0082】
また、上記第2の実施形態では、設定スイッチ5aの操作内容に応じて異なるモードを設定するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各モードの設定スイッチを中継器5’に個別に設けるようにしてもよい。ただし、1つの設定スイッチ5aだけでその操作内容に応じて異なるモードを設定するようにすることにより、中継器5’の構成を簡略化することができるというメリットを有する。
【0083】
また、上記第2の実施形態において、合成音声の割り付けの変更方法は一例であり、これに限定されるものではない。すなわち、上記第2の実施形態では、音声データ記憶部511’に記憶されている16個の音声データに基づいて16個の合成音声を順次再生しながら用件ボタン7aへの割り付けを変更する例を示したが、合成音声の再生を行わない方法で割り付けの変更を行うことができるようにしてもよい。例えば、8個の用件ボタン7aの他に合成音声選択ボタンを設け、合成音声選択ボタンによって何れかの合成音声を選択した状態で所望の用件ボタン7aを押下することによって合成音声の割り付けを変更するようにしてもよい。
【0084】
また、上記第1および第2の実施形態では、用件伝達型子機7と中継器5,5’との間を無線で接続する例を示したが、有線で接続するようにしてもよい。また、上記第1および第2の実施形態では、用件伝達型子機7が内蔵バッテリから電源を得て動作する例について説明したが、用件伝達型子機7を一般電源のコンセントに接続し、用件伝達型子機7がコンセントから電源を得て動作するようにしてもよい。
【0085】
また、上記第1および第2の実施形態では、用件伝達型子機7の筐体にハードウェアとしての用件ボタン7aを設ける構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タッチパネル付きのディスプレイに表示させたソフトウェアのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)により用件ボタン7aを構成するようにしてもよい。
【0086】
その他、上記第1および第2の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ナースコール親機
2 制御機
3 廊下灯
4 壁埋込形子機
5,5’ 中継器
6,6’ ハンド形子機(第2のナースコール子機)
7 用件伝達型子機(ナースコール子機)
102 報知処理部
104 通話路形成部
105 合成音声受信部
106 合成音声出力部
501,501’ 呼出信号中継部
504,504’ 合成音声生成部
505,505’ 合成音声送信部
508 割り付け編集部
511,511’ 音声データ記憶部
601 合成音声受信部
602 合成音声出力部
702 呼出信号送信部
703 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8