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特許7248324コンパクトな逆流遠心分離システムおよびそれに用いる分離チャンバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】コンパクトな逆流遠心分離システムおよびそれに用いる分離チャンバ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20230322BHJP
   B04B 5/04 20060101ALI20230322BHJP
   B04B 11/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61M1/02 120
B04B5/04
B04B11/02
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020513380
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 AU2018050449
(87)【国際公開番号】W WO2018204992
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】2017901771
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2018900193
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519402719
【氏名又は名称】サイノジー プロダクツ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Scinogy Products Pty Ltd
【住所又は居所原語表記】59 Finlayson Avenue,Mount Martha,Victoria 3934,AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッツパトリック,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,スティーヴン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506556(JP,A)
【文献】特表2016-506861(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02701976(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 1/36
B04B 5/04
B04B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクトな逆流遠心分離システムであって、
再利用可能なサブシステムと、
一回使用の交換可能なサブシステムと
を備え、
前記再利用可能なサブシステムは、
回転モータヘッドと、
蠕動ポンプと、
バルブアセンブリと、
プログラムされた処理プロトコルに従い、前記回転モータヘッド、前記蠕動ポンプおよび前記バルブアセンブリの動作を制御するように構成されたシステムコントローラと、
前記回転モータヘッド、蠕動ポンプ、およびバルブ動作アセンブリを収容するケースとを有し、
前記一回使用の交換可能なサブシステムは、
小さい流体体積および小さい回転半径用に構成された分離チャンバであって、ネック部分に結合された実質的に円錐の流体エンクロージャ部分を有し、前記円錐流体エンクロージャの円錐先端へ流体経路を与えるべく前記ネック部分から前記円錐流体エンクロージャの前記円錐先端前記円錐流体エンクロージャを通じて中央で伸長する浸漬管を有し、前記ネック部分はさらに溶出流体経路を有する、ところの分離チャンバと、
流体分配マニホールドであって、前記分離チャンバと流体連通するように構成された第1流体ポートおよび第2流体ポートと、前記第1流体ポートおよび前記第2流体ポートで出し入れするよう流体を分配するための外部流体供給コンポーネントへ結合するように構成された複数の流体経路であって、少なくともひとつの前記流体経路は前記バルブアセンブリと係合するように構成されており、それにより、流体経路は前記バルブアセンブリの動作によって選択的に開閉可能であるところの複数の流体経路と、前記蠕動ポンプの動作によって前記流体分配マニホールド内に流体フローを生じさせるべく、前記蠕動ポンプと流体経路との間で動作的係合を可能にするように構成されたポンプ係合部分とを含む流体分配マニホールドと、
回転カップリングであって、当該回転カップリングは前記流体分配マニホールドを前記分離チャンバに結合するべく前記回転カップリングの回転軸線を通る前記分離チャンバの前記ネック部分結合し、前記浸漬管と前記第1流体ポートとの間に第1流体連通経路および前記溶出流体経路と前記第2流体ポートとの間に第2流体連通経路、その内部に形成されている回転カップリングであり、前記回転カップリングは、前記流体分配マニホールドが前記ケースによって固定位置で保持されたまま、前記流体分配マニホールドに関して前記ネック部分を通じる前記回転軸線の周りに前記分離チャンバの回転を可能にするように構成されており、前記浸漬管と連通する前記第1流体連通経路は、前記回転軸線とアライメントされている、ところの回転カップリングと、
を有し、
前記分離チャンバの前記ネック部分は、前記回転軸線の周りに前記分離チャンバの回転を生じさせる前記回転モータヘッドと直接的に係合するようにさらに構成されており、
前記一回使用の交換可能なサブシステムは、逆流遠心分離処理を実行するために、閉じた環境を与える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記バルブアセンブリは、複数のピンチバルブアクチュエータを含むピンチバルブ作用アセンブリを有し、それぞれのピンチバルブアクチュエータは、マニホールドの流体経路と係合するように構成されており、前記流体分配マニホールドは、前記ピンチバルブアクチュエータのひとつとアライメントした各流体経路内に少なくともひとつのフレキシブルな部分を含み、それにより、前記ピンチバルブアクチュエータの動作が前記流体経路の開閉を生じさせる、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流体分配マニホールドは、適切な流体結合を有するベッセルのアタッチメントおよびバルブの作用によって、系統的な細胞損失のリスクなしで、細胞サスペンション供給ベッセルから前記チャンバ内で流動床を確立するためのリサイクル流体経路の選択的構成を可能にするように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流体分配マニホールドは、前記マニホールドが前記ケース内に配置されたとき、前記ポンプ係合部分を前記蠕動ポンプにアライメントするように構成されており、前記ケースは前記ケースが閉じられているとき、前記蠕動ポンプへの前記ポンプの係合部分の動作的係合を有効にするように構成されており、任意で、前記ケースは、ケースドアの相対的ジオメトリおよびケースドアヒンジが、前記蠕動ポンプとの動作的係合を有効にするべく、前記ポンプ係合部分のチューブを動ポンプローラと合わせるように構成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
毎分8000回転までの回転速度で動作するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記円錐流体エンクロージャは、5mlから20mlの体積を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
50から70mmの回転半径を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
1000万から40億個の細胞に対して、1mlから10mlの流体体積回復を可能にするべく、細胞治療するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
毎分200,000回転までの回転速度で回転するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記円錐流体エンクロージャは、0.lmlから0.5mlの体積を有する、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
10から30mmの先端回転半径を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
コンパクトな逆流遠心分離システム用の分離チャンバであって、前記分離チャンバは、小さい流体体積および小さい回転半径用に構成されており、
実質的に円錐の流体エンクロージャ部分と、
前記実質的に円錐の流体エンクロージャ部分に結合されたネック部分と、
前記円錐流体エンクロージャの円錐先端の内部への流体経路を与えるべく、前記ネック部分から前記円錐流体エンクロージャの前記円錐先端へ、前記円錐流体エンクロージャを通じて中央に伸長する浸漬管と、
前記ネック部分を通じた溶出流体経路と、
回転カップリングであって、前記ネック部分を通じた回転軸線の周りに前記分離チャンバの回転を可能にするように、当該回転カップリングが前記回転カップリングの前記回転軸線を通る前記分離チャンバの前記ネック部分に結合され、前記回転カップリングの内部には、流体分配マニホールドへの結合用の第1流体ポートと流体連通するために前記浸漬管への第1流体連通経路と、流体分配マニホールドへの結合用の第2流体ポートへ流体連通するための前記溶出流体経路への第2流体連通経路とが形成されている、ところの回転カップリングと、
を備え、
前記浸漬管と連通する前記第1流体連通経路は、前記回転軸線とアライメントされており、
前記分離チャンバの前記ネック部分は、前記回転軸線の周りに、前記分離チャンバの回転を生じさせる回転モータヘッドと直接的に係合するようにさらに構成されている、ことを特徴とする分離チャンバ。
【請求項13】
前記第1流体連通経路は、前記回転カップリングの回転軸線を通じたチューブによって与えられる、ことを特徴とする請求項12に記載の分離チャンバ。
【請求項14】
前記ネックを通じた溶出流体経路は、前記円錐流体エンクロージャから前記回転カップリングを通じて前記第2流体連通経路と流体結合する前記ネック部分内の前記溶出経路への複数の流体経路を有する、ことを特徴とする請求項12または13に記載の分離チャンバ。
【請求項15】
前記分離チャンバは、前記円錐流体エンクロージャを前記ネック部分から分離する壁を有し、前記壁は、前記ネック内の前記溶出経路へ複数の流体経路を与えるようそこに形成されたアパーチャを有する、ことを特徴とする請求項14に記載の分離チャンバ。
【請求項16】
前記円錐流体エンクロージャの前記先端は、前記円錐流体エンクロージャを通じて前記浸漬管を介して導入された流体の分散を生じさせるように構成された流体チャネル構造を有する、ことを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の分離チャンバ。
【請求項17】
前記円錐流体エンクロージャは、5mlから20mlの体積を有する、ことを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の分離チャンバ。
【請求項18】
50から70mmの先端回転半径を有する、請求項17に記載の分離チャンバ。
【請求項19】
円錐直径が33mmで円錐高さが38mmである、請求項18に記載の分離チャンバ。
【請求項20】
前記円錐流体エンクロージャは、0.1mlから0.5mlの体積を有する、ことを特徴とする請求項12に記載の分離チャンバ。
【請求項21】
10から30mmの先端回転半径を有する、請求項20に記載の分離チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明の技術分野は、生物および他の小さい粒子の分離アプリケーション用の遠心分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療および進化した細胞治療は、構造を作成するための生きた人間由来の細胞の操作の上に築かれ、患者の人体内の免疫原生応答を分配するか、矯正応答を刺激する医学的治療技術を生んでいる。これらの技術のいくつかは、細胞の単一ソース(同種異系プロダクト)から複数の患者へ多くのドーズを分配することができ、患者または一致したドナーから導出された細胞を処理および分配することは、安全かつ効果があることの認識が広がっている。患者または一致したドナー特定細胞プロダクト(同種異系プロダクト)を生成することは、典型的に小さいバッチ処理を要求する。
【0003】
患者に広く利用可能な細胞治療を作成するべく規制当局の承認を得ることは、患者治療の安全性および効果を証明することに加え、安全かつ信頼できる細胞プロダクトを準備するのに使用されるイクイップメントおよび処理を要求する。プロダクト特定のクローズシステムは、細胞プロダクト製造に多くの利益をもたらす。このシステムは、専用の機能、すなわち、単一製造プロセスから導出された独自の細胞プロダクトまたは細胞プロダクトのセット用の単一の製造プロセス用に設計されている。この専用機能のクローズシステムは、クローズ材料トレーサビリティおよび適格な衛生プロトコルを通じて、医療プロダクト用の無菌処理環境を与えるように設計されている。使い捨て無菌処理システムは、流体バッグおよびチューブなどの通常の使い捨て可能な(一回使用)範囲のコンポーネントを使って組立てられている。これらの使い捨てシステムコンポーネントの組立は、複雑でありかつ時間を要する。
【0004】
同種異系プロダクト用に設計されたプロダクト特定システムは、典型的に、比較的大きなバッチを扱い、非常に少量のインプットおよびアウトプットプロダクトが関連するところの自己移植プロダクトへ簡単にスケーリングできない。自己移植細胞治療用の小さいバッチ細胞プロダクトの生成に使用可能なクローズシステムに対する要求が存在する。
【0005】
細胞治療で使用される細胞プロダクトを製造する典型的な工程は、遠心分離器を使った細胞プロダクト成分の精製および分離である。伝統的な遠心分離技術は、別個の遠心分離器の内外へプロダクトが手動で移されるベッセルを要求する。プロダクトを追加または除去するためにベッセルにアクセスすることは、オープン処理工程としてベッセルを開放すること、または、それを無菌パスに結合および取り外すことを要求する。回転システムを通じて流れる蓄積流体を有する逆流遠心分離器は、これらの相互作用を避けるために使用可能である。
【0006】
逆流遠心分離器は、遠心加速下の流体内の粒子の沈殿速度が、サポート媒質の流れによって弱められるところの技術である。粒子は、それによって、流動床として漂う。逆流遠心分離器は、非常に優しいので、細胞は培養可能であり、流動床状態で成長する。細胞凝集は劇的に減少する。また、この技術により、異なる密度および細胞ポピュレーションの生存能力を増加させるために現在利用可能な技術に対してのみ、逆流遠心分離を行う形態特性により、生きた細胞から死んだ細胞の分離が可能となる。
【0007】
遠心加速度の下で、細胞または粒子に対して、半径方向内側の流体フローを分配することは、対向する流れの状況を作成する。各粒子によって経験される遠心加速度は、回転の中心からのその粒子の半径方向距離に比例する。流動粒子の床を作成するために、対向流束は、回転の各半径に対して調節される必要がある。これは、半径方向外側に向かう円錐の先端を有する概して円錐状にチャンバを成形することによって達成される。対向流体フローは、円錐の先端を通じて流入される。流体流は、比較的大きい速度で円錐の先端に入り、流体フローの速度は、円錐の断面積が増加するため、半径方向内側に進むに従い徐々に減少する。歴史的に、逆流遠心分離器用のチャンバの形状および特定の円錐ジオメトリの多くの調査が存在する。その多くは、R. J. Sanderson, K. E. Bird、N. F. PalmerおよびJ. Brenmanによる論文 “Design Principles for a Counter Flow Centrifugation Cell Separation Chamber” Analytical Biochemistry 71, 615-622 (1976)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
逆流遠心分離器は、多くの利点を有し、商業的に入手可能な多くの専用機能クローズシステムで現在使用されている。しかし、既存の市場の装置は、器具として入手するには高価である。このシステム用の使い捨て可能コンポーネントもまた、典型的にコストが高い。これらの装置の操作はまた、使い捨てキットの搬入が複雑であり、ヒューマンエラーおよび誤操作のリスクを誘導するので、問題である。さらに、多くの現在入手可能なデバイスは、プロトコルのフレキシビリティおよび新型プロダクトプロトコルへのアプリケーション用のキット構成を制限する。
【0009】
各患者に対するバッチとして複雑な医療プロダクトを製造することは、一回使用の機能的にクローズシステム内で、細胞プロダクトを操作することができるデバイスに対する需要を生み出している。したがって、患者特定細胞プロダクトの製造を可能にする一回使用の小さいバッチ処理用に安全かつ高信頼で利用可能なイクイップメントのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ひとつの態様に従い、コンパクトな逆流遠心分離システムが与えられ、当該システムは、
再利用可能なサブシステムと、
一回使用の交換可能なサブシステムと
を有し、
当該再利用可能なサブシステムは、
回転モータヘッドと
蠕動ポンプと、
バルブアセンブリと、
プラグラムされた処理プロトコルに従い、回転モータヘッド、蠕動ポンプおよびバルブアセンブリの動作を制御するように構成されたシステムコントローラと、
回転モータヘッド、蠕動ポンプ、およびバルブ動作アセンブリを収容するケースと
を含み、
当該一回使用の交換可能なサブシステムは、
小さい流体体積および小さい回転半径用に構成された分離チャンバであって、ネック部分に接続された実質的に円錐の流体エンクロージャ部を有し、円錐流体エンクロージャの先端部に流体経路を与えるべく、ネックを通じて円錐先端から円錐流体エンクロージャを通じて中心方向に伸長する浸漬管を有し、ネック部分はさらに溶出流体経路を有する、分離チャンバと、
流体分配マニホールドであって、分離チャンバと流体連通するように構成された第1流体ポートおよび第2流体ポートと、第1流体ポートおよび第2流体ポートへまたはそれから流体を分配するために外部流体供給コンポーネントへ接続するように構成された複数の流体経路であって、複数の流体経路の少なくともひとつは、バルブアセンブリと係合するように構成されており、それにより、流体経路はバルブアセンブリの動作によって選択的に開放または閉止可能であるところの複数の流体経路と、蠕動ポンプの動作によってマニホールド内に流体フローを生じさせるべく蠕動ポンプと流体経路との間の動作可能な係合を可能にするように構成されたポンプ係合部と、
含む流体分配マニホールドと、
流体分配マニホールドへ分離チャンバを接続し、浸漬管と第1流体ポートとの間の第1流体連通経路および溶出流体経路と第2流体ポートとの間の第2流体連通経路を与える回転カップリングであって、当該回転カップリングは、流体分配マニホールドがケースによって固定位置に保持されたままで、流体分配マニホールドに関して回転軸線の周りに分離チャンバの回転を可能にするように構成されているところの回転カップリングと、
を含み、
ネック部分は、回転軸線の周りに分離チャンバの回転を生じさせるべく、回転モータヘッドと係合するようにさらに構成されており、
一回使用の交換可能なサブシステムは、逆流遠心分離処理を実行するためのクローズ環境を与える。
【0011】
ある実施形態において、浸漬管から第1流体ポートへの第1流体連通経路は、回転カップリングを通じて回転軸線にアライメントされている。ある実施形態において、第1流体連通経路は、回転カップリングの軸線を通じて、チューブによって与えられてよい。
【0012】
ある実施形態において、ネックを通じる溶出流体経路は、回転カップリングを通じて第2流体連通経路と流体的に連通して、円錐流体エンクロージャから溶出経路への少なくともひとつの流体経路を有する。
【0013】
ある実施形態において、分離チャンバは、ネック部分から円錐流体エンクロージャを分離する壁を有し、当該壁は、ネック内の溶出経路への少なくともひとつの流体経路を与えるようその内部に形成されたひとつ以上のアパーチャを有する。
【0014】
ある実施形態は、第2流体連通経路と流体連通する、回転カップリングを通じてネック部分内の溶出流体経路からの複数の流体経路をさらに有する。
【0015】
コンパクトな逆流遠心分離システムの実施形態が与えられ、ここで円錐流体エンクロージャの先端は、円錐流体エンクロージャを通じて浸漬管を介して導入された流体の分散を生じさせるように構成された流体チャネル構造を有する。流体チャネル構造は、動作位置において浸漬管を保持するようにさらに形成されてよい。
【0016】
ある実施形態において、円錐流体エンクロージャの円錐部分は、一体構造を有し、それにより、最大の遠心加速度領域での結合が避けられる。
【0017】
実施形態に従い、バルブアセンブリは、複数のピンチバルブアクチュエータを有するピンチバルブ作用アセンブリを有し、各ピンチバルブアクチュエータは、マニホールドの流体経路と係合するように構成され、流体分配マニホールドは、ピンチバルブアクチュエータのひとつとアライメントした各流体経路内に少なくともひとつのフレキシブル部分を有し、それによって、ピンチバルブアクチュエータの動作は、流体経路の開閉を生じさせる。
【0018】
ある実施形態において、流体分配マニホールドは、系統的な細胞損失のリスクがなく、細胞サスペンションの供給ベッセルからチャンバ内の流動床の確立のためのリサイクル流体経路の選択的構成を可能にするべく、適切な流体結合を有するベッセルのアタッチメントとバルブの作用によって構成される。
【0019】
ある実施形態において、流体分配マニホールドは、マニホールドがケース内に配置されているとき、ポンプ係合部を蠕動ポンプとアライメントさせるように構成され、ケースが閉止されているとき、ケースは、蠕動ポンプによってポンプ係合部分の動作係合を有効にするように構成されている。例えば、ケースは、蠕動ポンプによる動作係合を有効にするべく、ケースドアおよびケースドアヒンジの相対的ジオメトリが、ポンプ係合部分のチューブを蠕動ポンプローラと合わせるように構成されてよい。
【0020】
ある実施形態は、小さい回転半径および大きな回転速度の動作用に構成されてよい。
【0021】
ひとつの実施形態において、逆流遠心分離システムは、毎分8000回転までの回転速度で動作するように構成される。ひとつの実施形態において、円錐流体エンクロージャは、5mlから20mlの容積を有してよい。ひとつの実施形態において、円錐流体エンクロージャは、10mlの容積を有する。逆流遠心分離システムは、50から70mmの先端回転半径を有してよい。先端回転半径までの軸線は、67mmであってよい。ひとつの実施形態において、分離チャンバは、33mmの円錐直径および38mmの円錐高さを有する。ある実施形態は、これらの容積内で1千万個から20億個の細胞が回復するように、2mlから10mlの流体体積回復を可能にするべく、細胞治療用に使用可能であるように構成されてよい。
【0022】
他の実施形態において、コンパクトな逆流遠心分離システムは、毎分200,000回転までの回転速度で動作するように構成されている。本実施形態において、円錐流体エンクロージャは、0.1mlから0.5mlの容積を有してよい。ある実施形態において、円錐流体エンクロージャは、0.2mlの容積を有する。ある実施形態において、逆流遠心分離システムは、10から30mmの先端回転半径を有する。この実施形態は、エキソソーム(40~200nmスケール)およびマイクロベシクル(150~1000nmスケール)の濃度をアドレスするのに使用されてよい。微小粒子は、超遠心分離法によって要求される長い設定時間を避けるために、先端の安定領域に直接分配される。
【0023】
実施形態はまた、0.5から5mlの範囲の流体包囲体積を有すると想定される。実施形態はまた、30から50mmの範囲の先端回転半径を有すると想定される。
【0024】
他の態様において、コンパクトな逆流遠心分離システム用の分離チャンバが与えられ、当該分離チャンバは、小さい流体体積および小さい回転半径用に構成されており、
実質的に円錐の流体エンクロージャ部分と、
実質的に円錐の流体エンクロージャ部分に結合されたネック部分と、
円錐流体エンクロージャの先端へ流体経路を与えるべく、ネック部分を介して、円錐先端から円錐流体エンクロージャを通じて中央に伸長した浸漬管と、
ネック部分を通じた溶出経路と、
ネック部分に結合された回転カップリングであって、流体分配マニホールドへ結合するための第1流体ポートによって流体連通するために浸漬管へ第1流体連通経路を与え、かつ、流体分配マニホールドへ結合するための第2流体ポートによって流体連通するために溶出流体経路へ第2流体連通経路を与える回転カップリング
を有し、
回転カップリングは、回転軸線の周りに分離チャンバの回転が可能であるように構成されており、
ネック部分は、回転軸線の周りに分離チャンバの回転を生じさせるべく、回転モータヘッドと係合するようにさらに構成されている。
【0025】
第1流体連通経路は、浸漬管から第1流体ポートへ回転カップリングを通じて回転軸線とアライメントされてよい。第1流体連通経路は、回転カップリングの軸線を通じてチューブによって与えられてよい。チューブは、ある実施形態において、軸線の一部を形成してよい。
【0026】
ある実施形態において、溶出流体経路は、回転カップリングを通じて、第2流体連通経路と流体連通して、円錐流体エンクロージャからネック部分の溶出経路への少なくともひとつの流体経路を有する。
【0027】
ある実施形態において、分離チャンバは、ネック部分から円錐流体エンクロージャを分離する壁を有し、当該壁はネック内の溶出経路にひとつ以上の流体経路を与えるべく、その内部に形成されたひとつ以上のアパーチャを有する。
【0028】
本願発明のすべての態様を組み込む実施形態が、添付する図面を参照して以下で例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、本願発明の実施形態に従う逆流遠心分離システムの例を示す。
図1B図1Bは、本願発明の実施形態に従う逆流遠心分離システムの代替例を示す。
図1C図1Cは、図1Aの実施形態用のケース内で組み立てられたシステムコンポーネントの例を示す。
図1D図1Dは、図1Bの実施形態用の再利用可能なサブシステムおよび一回使用の交換可能サブシステムを別々に示す。
図2図2は、分離チャンバの実施形態を示す。
図3A図3Aは、逆流遠心分離処理に関連する基本コンセプトを示す。
図3B図3Bは、分離チャンバの重要なジオメトリ特徴を示す。
図3C図3Cは、ひとつの設定ポンプ(流体分配)速度および回転速度で、ひとつの粒子サイズの粒子に対して適用される力を示す。
図3D図3Dは、逆流遠心分離器を使った分離方法の単純な例を示すフローチャートである。
図3E図3Eは、処理中のシステム動作および流体フローの例を示す図である。
図3F図3Fは、処理中のシステム動作および流体フローの例を示す図である。
図4A図4Aは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図4B図4Bは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図4C図4Cは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図4D図4Dは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図4E図4Eは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図4F図4Fは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す。
図5図5は、回転カップリングの実施形態を示す。
図6図6は、逆流遠心分離器ケース内の動作可能位置の分離チャンバおよびマニホールドの例を示す。
図7図7は、流体分離マニホールドの例を示す。
図8A図8Aは、図1Aに示すシステムの実施形態用のバルブ動作アセンブリの例を示す。
図8B図8Bは、図1Bに示すシステムの実施形態用のバルブ動作アセンブリの例を示す。
図9図9は、マニホールド形成プロセスを示す。
図10図10は、ポンプインターフェースの例を示す。
図11図11は、システムの実施形態のコンポーネントのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明の実施形態は、小さい流体体積および小さい回転半径用に構成された逆流遠心分離システムを与える。システムの実施形態は、自動化されたプロトコルによる小スケール処理用のアプリケーションを有する。小さい流体体積および小さい回転半径の利点は、システムが、小さいバッチに対する増加した処理速度用に大きな回転速度を使用することができる点にある。システムは、卓上操作用に構成されるか、または、より複雑なシステムのコンポーネントとして組み込まれてもよい。これは、システムを使用して製造される医療プロダクト用の規制当局の承認を得るために有利である。処理技術は、医療開発を通じて規制局の調査官に対して生物学的同等性の保証を与えつつ、商業的製造用に一体処理で同様に展開されてよい。システムは、材料トレーサビリティおよび適格な殺菌プロトコルの使用を通じて医療プロダクト用のクローズ無菌処理環境を与えることができる。
【0031】
コンパクトな逆流遠心分離システムの実施形態が、図1及び図2に示されている。図1Cは、組立てられた状態の図1Aの実施形態のシステムコンポーネントを収容するケースの内部を示す。図1Dは、図1Bの実施形態用の再利用可能サブシステム1200および一回使用キット1205を別々に示す。図1Aおよび図1Dを通じて同一のコンポーネントには同じ符号を付している。システムコンポーネントは、図12でブロック形式でも示されている。コンパクトな逆流遠心分離システム100は、再利用可能なサブシステム1200および一回使用の交換可能なサブシステム1205を有する。交換可能なサブシステムは、搬入のためにプリアセンブリされかつ殺菌された使い捨てコンポーネントを有し、それにより、搬入プロトコルが簡単になる。またプリアセンブリはヒューマンエラーのリスクを減少させる。これはまた、現在の商業的な使い捨てコンポーネントキットに比べ、使い捨て可能コンポーネントのサイズおよび複雑さを減少させることにより、低い操作コストを提供しうる。
【0032】
再利用可能なサブシステムは、コントローラ、回転モータヘッド135、蠕動ポンプ110およびバルブアセンブリ120、これらのシステムコンポーネントを収容するケーシングを有する。交換可能なサブシステムは、分離チャンバ140、流体分配マニホールド150、および、分離チャンバ140を流体マニホールド150に結合する回転カップリング160を有する。一回使用の交換可能サブシステムは、逆流遠心分離処理の実行のためにクローズ環境を与える。
【0033】
分離チャンバ140は、小さい流体体積および小さい回転半径用に構成されている。分離チャンバの実施形態の例が、図2に示されている。分離チャンバ140は、ネック部分220に結合された実質的に円錐流体エンクロージャ部分210を有する。浸漬管230が、ネック220を通じて円錐先端240から円錐流体エンクロージャの中央を通じて伸長し、円錐流体エンクロージャの先端へ流体経路250を与える。ネック部分220はまた、溶出流体経路260を含む。ネック部分220はまた回転軸線の周りに分離チャンバの回転を生じさせるべく、回転モータヘッドと係合するように構成されている。ネック部分はまた、モータヘッド135と係合するように構成され、それは、ロック機構を含み、かつ、分離チャンバとバランスするようにカウンターウエイトを有する。
【0034】
流体分配マニホールド150は、分離チャンバと流体連通するように構成された第1流体ポート170および第2流体ポート175、および、第1流体ポート170および第2流体ポート175へまたはそこから流体を分配するための外部流体供給コンポーネント180へ結合するように構成された複数の流体経路を有する。少なくともひとつの流体経路は、バルブアセンブリの動作によって選択的に開閉するように、バルブアセンブリ120と係合するように構成されている。マニホールドはまた、蠕動ポンプ110の動作によってマニホールド150内に流体フローを生じさせるべく、蠕動ポンプ110と流体経路180との間に動作的係合を可能にするように構成されたポンプ係合部分190を有する。
【0035】
回転カップリング160は、流体分配マニホールド150へ分離チャンバ140を結合する。回転カップリングは、流体分配マニホールドがケース130によって固定位置に保持されたまま、流体分配マニホールド150に関して、回転軸線の周りに分離チャンバ140の回転を可能にするように構成されている。この回転カップリング150はまた、浸漬管230と第1流体ポート170との間の第1流体連通経路270、および、溶出流体経路260と第2流体ポート175との間の第2流体連通経路275を与える。
【0036】
システムの利点は、同じシステムコンポーネントおよび処理機能が、完全にスケーリングされた商業的製造システム用として設定された研究室タイプで利用可能であるということである。
【0037】
分離チャンバの構成により、小さい回転半径および大きい回転速度が可能になる。分離チャンバの例が図2に示されており、分離チャンバ140は、実質的に円錐形流体エンクロージャ210およびネック部分220を有する。実施形態は円錐流体エンクロージャを使用するように示されているが、完璧な円錐を常に使用しなくてよく、変形例が本願発明の態様内で適用可能である。例えば、短い直線側面部分が円錐の広い端部付近または先端において使用されてもよい。代替的に、階段状の円錐構造も使用可能である。浸漬管230は、円錐の先端240へ流体を分配するためにネックから流体エンクロージャ210を通じて伸長する。溶出経路260が、ネック部分220および回転カップリング160を通じて与えられる。
【0038】
内部浸漬管230を使用することは、分離チャンバの外部に流体経路を与え、分離チャンバに対してカウンタ流体フローを供給するべく先端においてインレットを有する商業的な逆流遠心分離アーキテクチャーとの大きな相違である。内部浸漬管および回転カップリングにより、チャンバ先端に対して外部流体経路を必要とする既知のシステムと比べ、回転コンポーネントのサイズを減少させることが可能となる。これにより、外部流体経路システムより、大きな遠心力を作成するより大きい速度で回転することが可能となり、その結果、チャンバサイズに対して比較的大きなスループットが得られる。したがって、本願発明の分離チャンバの実施形態の利点により、単一のチャンバが、自己移植細胞治療用の典型的なバッチサイズを処理するのに使用可能となる。これは、その治療を与えるためのコストを減少させる利点がある。また、より大きな遠心力を使用して動作可能であることにより、流量動作範囲も対応して増加可能となる。したがって、離散的な細胞タイプを分離するための設定を最適化するための能力が増加する。実施形態は、細胞タイプに基づいて流量の選択を可能にしつつ、遠心分離速度および流量の範囲を広くすることを可能にする。
【0039】
ひとつの実施形態において、50Gから3000G(円錐の先端から円錐の高さの1/3に対応する半径で計算した)の広い遠心分離速度範囲により、広範囲の流量が可能となる。例えば、毎分5ml、100Gで安定な細胞の流動床は、毎分150ml、3000Gのものと類似の床安定性を示す。したがって、低速で詳細な流量操作を可能にしつつ、この範囲内の任意の流量を選択して、対象物を通じて高い処理を満たすことが可能となる。一回使用キットをサポートする既知の商業的逆流遠心分離システムに比べ、当該実施形態は1000Gまでの範囲の遠心分離速度を提供できる。動作流量範囲は、結果的にこれらの商業的システムにおいて制限される。説明する逆流遠心分離システムの実施形態によって可能になる広範囲の速度はまた、カウンタフロー原理を利用する異なる細胞タイプの選択ストラテジーを促進する。ひとつの例は、死んだ細胞から生きた細胞を分離することであり、カウンタフロー遠心分離でユニークな細胞の生存数を増加させる。第2の例は、そのサイズおよび密度が他の商業的システムの動作エンベロープ内のほとんどの他の細胞の選択基準とオーバーラップするため、除去することが困難である赤血球の選択的分離である。高い速遠心分離能力を利用して、より多くの所望のPBMCがチャンバから溶出されながら、比較的高密度である小さい細胞は、流動床内に保持されうる。
【0040】
図3Aは、逆流遠心分離方法に関連する基本原理を示し、これは、入力流体内に浮遊する細胞ポピュレーションを濃縮する図3Dのフローチャートに示すような処理の文脈で議論される。処理の第1のフェーズ301において、回転チャンバおよび包囲する流体ラインは、プライマリ流体によって浸される。チャンバ310は、遠心加速度を作成するべく軸線350の周りに回転させられる(302)。細胞を含むインプット流体342はチャンバを通じてポンピングされる(303)。ポンピングされる流量は、それが円錐340の先端を通じて進入するに従い、細胞の流動床が形成されるように選択される。流体は、初期搬入で使用されるオリジナルの細胞流動流体であってよく、それによって、チャンバ内へ細胞を導入しつづけることができる。遠心加速度は、沈殿方向と反対方向の流体フロー342を付加することにより、チャンバ310の外側端の方向へ細胞を沈殿させる。細胞はサスペンション状態を保持されてよい。チャンバは、ワーキングゾーン345を作成するべく、局所的流体速度344が各半径において遠心加速度の方向346にアライメントされるように形成される。正しい流量、流体媒質および遠心分離速度により、細胞はワーキングゾーン345内に蓄積し、そのゾーン内に安定な流動床304を形成する。ゾーンに進入する細胞は、流動床345を作成しかつ一緒になる。これらの細胞は、流体フローおよび遠心加速度の組みあわせ作用によりチャンバに進入し、カウンタ流体フローによってチャンバへ導入されるに従い、完全に沈殿したポイントで効果的に堆積されるので、この方法を使うと“沈殿時間”は存在しない。
【0041】
アウトレットにより、この精製済み流体348はチャンバ310から出ることができる。遠心分離速度、流量および流体特性(すなわち、密度および速度)は、円錐の先端から流動床が形成されるに従い、保持される細胞をサポートする。しかし他の細胞は、チャンバから外へ溶出されてよい。高速処理のために、円錐の先端部において、大きいか、または、高密度の細胞が偽ペレットを形成する場合において、これは、適切に管理しないと、高速処理中に問題となる。この問題は、ターゲットポリューションに対する蓄積経路(または複数の経路)の前で、重いか、または、高密度の材料を蓄積し、かつ、除去するために、第1処理経路を実行するように設計された処理プロトコルを例えば使用することにより、管理されてよい。プロトタイプの実施形態の試験は、非常に高い値(約98%)を示し、高い細胞回復率が可能であった。ハイイールドのためには、複数の処理(蓄積)経路が実用的である。したがって、処理プロトコルは、そのいくつかを、ターゲットポリューションの蓄積および回復のためにゴミ等の除去しつつ、複数の蓄積経路を実行するように設計されてよい。
【0042】
細胞が流動床内に蓄積されたとき、回復工程305は、流体フロー方向342が逆転されるところの濃縮物として細胞を回収するのに使用される。流動床円錐の先端340の方向に移動し、流体インプット用に使用されたのと同じ流体チャネルを通じて円錐から流出する。
【0043】
逆流遠心分離はまた、チャンバ内の状態への応答によって、異なる細胞ポピュレーションを分離するのに使用可能である。流動床が形成されたところの逆流速度を増加させることは、最初に床を拡張し、各細胞間により大きな細胞間隔を生じさせ、床は円錐を膨張させる。より小さいかまたはより雑な外部モフォロジーを有するいくつかの細胞は、流動床内で不安定であり、かつ、円錐から内側に駆動させられる異なる沈殿速度を有してよい。このようにしてチャンバから細胞を洗い落とすことは、細胞ポピュレーションの異なる選択のための既知のプロトコルである水簸として説明される。
【0044】
小さいデバイスの回転円錐210内で細胞によって経験される処理は、逆流遠心分離のより大きな実装内での処理と同一である。生きた細胞の成長用の研究室スケールのシステムが処理する際に、このシステムは系統的なスケーリング効果無しで同一の処理を与える。これは、規制当局が処理はプロダクトである生きた細胞のポリューションと同様の複雑さでプロダクトを完全に特徴づける手段がないところの、正式に規制された治療プロダクトの成長にとって重要である。異なる処理のスケールを変更するとき、医療行為を通じて証明されたプロダクトおよびその性能が異なるという疑念を規制当局に起こさせるというリスクが存在する。技術的に、このシステムは、より大きなシステムに組み込まれるとき、研究室スケール用の同一の細胞処理機能を与えることができる。
【0045】
円錐流体エンクロージャ210は、小さい体積を有するが、逆流遠心分離の利点によって、それは1mlあたり1億個の細胞を超える細胞濃度をサポートすることができる、それにより、一回あたり10mlのチャンバ搬入は、多くの治療処理には十分な10億個細胞以上をサポートすることが可能となる。これらの数字は、細胞サイズに依存し、20億個以上の中国ハムスターの卵巣(CHO)細胞が、例えば回復率95%以上で10mlのチャンバ内で処理された。しかし、より小さい体積もまた以下で説明するように使用されてもよい。
【0046】
設計は、回転の中心軸線280に関して小さい半径で、円錐流体エンクロージャ210を意図的に配置している。これは、遠心加速度に関して回転システム内の運動エネルギーを意図的に最小化する。運動エネルギーは、半径の二乗および回転速度の二乗で増加する。加速度は、回転速度の二乗で増加するが、回転半径に正比例する。これの原理は、例えば、5800rpmで20ジュール以下の小さくかつ安全なレベルの運動エネルギーをうまく維持するために、システムの実施形態において適用された。これは、さらに器具を単純かしかつ消耗設計の利点を有する。これはまた使い捨てコンポーネント用の製造コストの点で利点を有する。またに、実施形態により、運動エネルギーは、正式な(またはより高いレベルの)装置品質を要求する規制閾値以下に維持することができる。再び、これは、コスト利点を有する。小さいシステムサイズはまた、使用可能性の利点を有し、配送、格納および移動をより簡単にし、システムは容易に携帯可能である。小さいキットはまた器具のフットプリントが小さいことを意味し、実験室またはクリーンルーム環境内で要求される空間を最小化する利点を有する。また、小さいキットサイズは、消耗コンポーネントの製造、配送および格納に関連したコストの点で、有意な長期的利点を与える。
【0047】
小さい回転半径および回転カップリング構成は、既知の商業的な逆流遠心分離システムに比べ大きな加速度を可能にする。流体経路一体性を保証するべくスキップロープ構成が他のシステムで使用されてもよい。回転カップリングは、スキップロープ構成に対して劣った解決策として関連してよい。しかし、回転カップリングはより大きな動作速度を可能にし、かつ、満足できる流体経路一体性を達成可能である。これはまた、従来の外部カウンタフロー流路と比べ、細胞損失を減少させる点で利点を有する。これは、カウンタフロー流体分配経路のセクション(すなわち、ベンド)で、蓄積を生じさせる流体経路構造を避けるためである。また、浸漬管が分離チャンバの先端へ直線の流路を与えるので、流体経路が分離チャンバの周りで方向を変える(ベンド)ところの流体フローにおける遠心力および慣性力の組みあわせによって生じるせん断力による潜在的な細胞ダメージが減少する。
【0048】
より大きい加速度の利点は、より大きい逆流流量を有する流動床内で細胞を安定化させることができることである。これにより、希釈サスペンションから流動床へ細胞を回収する際のスループット率を向上させることができる。他の逆流遠心分離システムは、並列に6個まで動作する、複数の処理チャンバを与えることにより、スループットが改善する。実用的な文脈において、より大きな回転速度は、所定時間内で処理可能な細胞サスペンションのより大きい体積を可能にする。
【0049】
全体サイズの減少に関連する他の利点は、処理中にシステム内にトラップされる体積の最小化である。これは、最小損失で、非常に小さい体積を処理することを可能にする。システムは、小さいインプット体積を処理すること、および、正確で小さい体積濃縮アウトプットを分配することを可能にする。
【0050】
非常に小数の細胞を処理することは、各細胞が有意に高価であるところの自己移植治療アプリケーションにおいて唯一の選択肢であってよい。処理に対するこれらの細胞の系統的な損失を避けることは重要である。流動床がチャンバ先端に形成されるとき、チャンバ内の流れの詳細は床によって影響される。床が形成される前に、チャンバ内の流れは、コリオリのフローアーチファクトによって強く影響を受ける。これらの条件の下で、チャンバ内の細胞は、床を形成することなく、内側の水簸ポートへスイープされる。通常のプラクティスは、流量を段階的に増加させる前に、床形成を奨励するべく、低い流量で細胞を補充することを開始する。
【0051】
例えば5百万から1千万個の細胞の非常に小さい細胞ポピュレーションが処理される状態で、この床育成期間から潜在的な損失は許容できない。
【0052】
設計実施形態に含まれる特徴の組みあわせは、これらの貴重な細胞の系統的な損失なしで、流動床の育成用のユニークなフロー構成を促進する。図3Eを参照して、フローは、バッグ395内に供給される細胞サスペンションがコネクション396を介して円錐内に引かれるように構成されている。細胞は、このようにして再循環され、流動床が形成されかつ蓄積可能となる。床が形成されると、チャンバ310からのアウトレットフローは、インプットバッグから細胞サスペンションが誘引されるまで、バルブ393を閉じかつバルブ399を開くことによりゴミ袋398の方向に向けられる。
【0053】
流体サスペンションが誘引された後、流体経路はバルブおよびポンプ構成を次のステップに進めるよう変更することにより再構成可能である。ひとの選択肢は、図3Fに示すように、リサイクルモードに入ることであり、その場合、バルブ391および392が開放され、他のすべてのバルブが閉止されている。ポンプは、流動床状態で細胞を保持しつつチャンバを通じてリサイクル流体を流しつづける。処理ストラテジーの範囲は、この証明されたリサイクル動作状態付近で形成される。
【0054】
実質的に円錐流体チャンバの例の重要な幾何学的特徴は、図3Bに要約されている。図3Bは、円錐310および溶出経路(図示せず)用のネック部分320を示す。円錐ベース330は、流体チャンバの最も広い部分であり、回転中心350が示されている。図3Bは、円錐先端半径が回転中心350から円錐先端340の最も遠位端までの距離として測定されることを示し、円錐の高さが円錐ベース330から円錐先端340までの距離として測定されることを示す。これらの半径方向距離は、異なる回転速度ごとに流体媒質内で経験される遠心加速度(Gフォース)の計算のキーとなる。チャンバ形状の詳細は、実施形態の間で変更可能であり、説明は省略する。処理に使用される媒質およびターゲット粒子の詳細に理想的に依存するチャンバ形状のファミリーが存在する。図3Cに示すチャートは、ひとつの設定ポンプ(流体分配)速度および回転速度におけるひとつの粒子サイズの粒子に印加される力を示す。このグラフは、粒子に印加される力(y軸)と、チャンバ半径(x軸)の関係を示す。このグラフは、遠心分離場364によって駆動されるストークス沈殿362が、局所的な対向流体フロー(異なる線360で示す)によって均衡されていることを示す。円錐の形状370は、流体フローに影響する。細胞に印加される異なる力が正であるところの領域382、385において、細胞は領域の中心方向へ駆動される。細胞に印加される異なる力が負であるところの領域380において、細胞は外側に駆動される。グラフにマークされた円錐プロファイル370を見ると、領域385は円錐の先端部付近のゾーンに対応し、そこでは流入流体の速度が最も大きい。領域382はチャンバからのアウトレットに対応し、そこで流体は溶出経路内へ濃縮される。領域380においてチャンバ内で観測されるものは、領域380内の流動床内への細胞の蓄積であり、領域382に対応する円錐の底のギャップは、細胞が流動床内の蓄積方向へ移動するところのチャンバ内の領域であり、それは、平衡ポイント390においてリーディングエッジを有する。細胞は、局所的な安定化作用を作成する流動床を形成する。
【0055】
チャンバのプロトタイプの実施形態(図2に示す構成を使った)は、10mlの容積、38mmの円錐高さ、および、回転中心350から円錐先端340までで測定される67mmの円錐先端半径を有する。この実施形態において、円錐先端半径に対する円錐高さの比は、0.56である。プロトタイプ試験結果および計算は、この実施形態が7000rpmまたは3000G@H/3を超える回転速度で使用可能であることを示した。これは、既知の商業的システムより有意に高いものである。
【0056】
逆流遠心分離機能を評価するための通常のプラクティスは、先端半径からのチャンバ高さの1/3での加速度を記述することである。これは、流動床が細胞沈殿速度と均衡するべく流体流量を管理する領域が形成されることを反映している。本願発明の実施形態は、小さいチャンバ体積および小さい半径を利用する。プロトタイプの実施形態の試験は、図2および3Bを参照して説明したように分離チャンバを使って達成される回転速度が、現在商業的に入手可能な逆流遠心分離システムの回転速度の2倍以上であることを示し、1000Gを達成する回転速度の円錐先端回転速度が、他のタイプの装置のそれより実質的に小さいことを示した。
【0057】
上述した小さい半径の利点に従い、円錐の先端部分の移動速度は、同じ速度で回転するより大きな回転半径を有する実施形態のそれより小さい。したがって、より小さい回転半径は、より低い運動エネルギーを使うターゲットシステムと同等の遠心加速度を生成することができる。代替的に、より小さい半径のシステムは、より大きいシステムと同じ運動エネルギーのより大きいチャンバ加速度を達成することができる。
【0058】
より小さい回転半径によって可能となる他の利点は、カウンタフロー流体の流量の増加である。流動床の均衡および構築は、相対的遠心加速度Caが、カウンタフロー流体の流束Fvと平衡となるところで達成される。重力効果は、問題の回転速度では無視してよく、均衡は以下の式(1)によって記載される。
【数1】
ここで、w(ラジアン/秒)は遠心分離速度であり、R(mm)は回転軸線までの半径距離、Fv(ml/秒)はインプット流体流量、r(mm)は、半径距離Rでの円錐半径を指す。流動床の生成の文脈において、rは一定として扱われる。式(1)より、回転速度(w)が増加するに従い、より小さい分離チャンバに対して、より高いインプット流量Frが、均衡を達成しかつ流動床を構築するのに要求される。
【0059】
典型的に、細胞の流動床の構築および細胞回復の処理時間は、流量に依存する。上述したように、より小さい回転半径およびより大きい回転速度を使用する能力は、カウンタフロー流体の増加した流量を要求し、ひいてはより短い処理時間を生じさせる。より大きな流量で動作する能力は、時間制限を有するプロトコルを、ひとつの小さいシステムによって完了可能にすることにより、複数の処理チャンバの必要性を回避する。例えば、複数細胞培養ファクトリから細胞プロダクトを収穫することは、数十リットルのプロダクトの処理を含む。図3を参照して上述した分離チャンバを使用するシステム実施形態は、大きいスケールのシステムよりも、迅速にこの体積を処理するキャパシティを有する。増加した回転速度および流量を使用する他の利点は、高い回復率を可能にしつつ、これが細胞回復中に流動床の安定性を改善することである。
【0060】
この原理をさらに小さいスケールの実施形態に適用して、代替的実施形態は、40から200ナノメートルのスケールのエキソソームの分離用のより小さい分離チャンバを有するように構成されてよい。この実施形態は、図3に示す10mlシステム用の約8000rpmに比べ、約100,000rpmで動作する。適用される設計原理は、非常に小さい回転半径を利用することにより、非常に大きい回転速度を可能にするものである。実施形態は200,000rpmまで回転速度を有して実装されることが予想される。例えば、理論的モデルは、200ナノメートルのエキソソームの流動床を作成する条件は、20mmの先端半径、10mmの円錐高さ、および、1時間に5mlの処理速度を有し、H/3で200,000Gを与える約100,000rpmの回転速度を有するチャンバを使用して達成され得ることを示す。この特性は、このチャンバ構成のスケーリングされたバージョンを使って達成可能であると予想される。上述したように、逆流遠心分離技術の利点は、カウンタ流体フローによってその沈殿位置へ粒子が効果的に直接導入されるような最小の沈殿であることである。この利点は、分離処理の時間が、カウンタ流体を通じて沈殿チャンバへ細胞/粒子を導入するのに必要な時間に依存することになるということである。したがって、処理時間は、特定の粒子タイプの沈殿特性ではなく、流体流量およびカウンタ流体内の粒子濃度に依存する。エキソソームなどの粒子を分離するために、これは非常に重要な利点である。現在、エキソソームに使用可能な逆流遠心分離システムは存在しない。エキソソームを分離するための現在の最新技術は、粒子を沈殿するために回転時間を必要とする超遠心分離器を使用する。
【0061】
小さい回転半径の分離チャンバに関連する懸念は、細胞および流動床に対するコリオリ力の影響である。コリオリ力は慣性であり、回転環境内で半径方向の流れが存在する場合に生じる。この効果は、ストロボスコープ照明の下で観察するか、記録されるとき、流体チャンバ内で観測可能である。コリオリ効果は、流体チャンバのリーディングエッジに細胞プロダクトのテールが引きずりこまれるように観測可能である。流動床が形成されると、このテールは急速に消滅する。床の形状はコリオリ反応を反映する。もしチャンバが回転中心近くに配置された場合、この振る舞いが系統的な細胞損失の増加を生じさせることが懸念された。しかし、発明者による解析は、遠心力に対するコリオリ力の比率は、回転半径によって影響されず、遠心力の比としてのコリオリ力は回転速度の増加により減少することを示した。物理的解析は、円錐内の粒子に作用する遠心力に対するコリオリ力の比は、2/wであり、ここでwは回転速度である。
【0062】
チャンバ内の粒子に作用する摩擦力は、以下の式(2)によって特徴づけられる。
【数2】
ここで、mは粒子質量であり、Rは半径距離であり、Ωは回転速度wに等しい大きさを有するチャンバの角速度ベクトル(以下の式)であり、vは半径距離Rにおける回転システムに関する粒子の速度である。
式(2)において、コリオリ力の成分は、(-2mΩ×v)によって特徴づけられ、遠心力成分は(-mΩ×(Ω×R))によって特徴づけられ、それはまた、mwR(t)(ここでR(t)は粒子の瞬間的な位置ベクトルである)によっても特徴づけられ、および、回転の速度変化によるオイラー力の成分は(-mdΩ/dt×R)によって特徴づけられる。定常回転速度での動作を考えると、オイラー力の成分は無視してよい。
【0063】
コリオリ力の相対的影響は以下の式(3)で表される。
【数3】
逆流遠心分離中、回転中のシステムに対する粒子の速度vは、チャンバの回転速度の接線速度に等しく、したがって粒子位置ベクトルR(t)に等しい。これは、コリオリ力が、システムの回転半径と独立であることを示す。また、コリオリ力の相対的影響は、回転速度の増加とともに減少することを示す。コリオリ力は、インプット流量および円錐ジオメトリによって影響されるが、先端の半径Rには影響されない。一定の回転速度において、一定のインプット流量が沈殿処理(流動床蓄積)フェーズ中に使用されることが理解されよう。式(1)に基づき、分離チャンバの先端半径Rが小さくなるに従い、チャンバのサイズもまたより小さく作成可能であり、回転速度が増加することが理解されよう。分離チャンバのサイズおよび体積の減少(先端半径Rの減少)により、円錐の断面積もまた減少し、コリオリ力のインパクトをさらに弱める。
【0064】
これは、コリオリ効果の相対的影響が、回転速度の増加によって弱くなり、それは半径と独立であることを意味する。したがって、本願発明によって実施される設計は、逆流設計用の改良された構成を提供し、このアプローチが、微小粒子凝集に非常に大きい加速度が要求されるところのアプリケーションに応用可能であることを示唆している。
【0065】
一回使用分離チャンバおよびサポート構造は、使い捨て用に経済的に製造可能なコンポーネントを与えるべく、物理原理の範囲の応用を実施する。
【0066】
ひとつの実施形態において、分離チャンバの基本構成は、単純な円錐チャンバコンポーネントを、人間工学的、流体的、および構造的なインターフェースを与えるシャーシ構造に結合するものである。この構造は、ユニタリー構造を有する円錐を使用し、それは、ネック部分を形成する支持シャーシへ、そのワイドエンドにおいて結合される。これは、半径方向の最も外側のジョイントを、回転の軸線に比較的近く(円錐先端に比べ)、円錐のベースに配置し、それにより、分離チャンバに沿ったポイントでは、円錐先端に比べ、比較的小さい遠心加速度が経験される。この構成はまた、大きな流体圧力を経験するところの位置での結合を回避する。例えば、円錐先端は、典型的に大きな流体圧力を経験する。したがって、ユニタリー円錐先端は、この大きな流体圧力領域での結合を避ける。
【0067】
回転する円錐内部の圧力解析は、1000Gの動作速度において、61psi(4.2BAR)の水圧を想定している。動作加速度は、円錐先端の回転半径からの円錐の高さの1/3で計算された。それは、円錐先端圧力が8.4BARと想定された2000Gで、流動床が形成されかつ動作するものであるからである。コンパクトなジオメトリがチャンバの内圧を減少させるために非常に有益である。例えば、円錐の先端での圧力は、P=row×w×R/2であり、ここで、rowは流体密度であり、Rは回転半径(回転軸までの距離)であり、wは回転速度である。流体は回転の中心までの通路を有し、したがって、圧力は、半径によって漸進的に増加するGフォースである遠心加速度に晒される全半径の流体カラムを表す。小さい半径でターゲットのGフォースを作成することは、回転半径に比例するより低い内部圧力を作成する。
【0068】
モノリシックチャンバ設計の先端領域での構造結合を避けることにより、プロダクトは実質的に、他のプロダクトより、製造変動に晒されにくい。円錐をシャーシに結合するために要求されるジョイントは、含まれる流体の質量を支持する円錐構造からの質量負荷をサポートすることを要求されるのみである。これは、通常の動作速度の7000rpmに対してまたは図3を参照して説明した実施形態の動作高さでの3000Gと、3900Gを示す8000rpmでの500ニュートンとの範囲で最悪のケースの負荷である。
【0069】
この分離チャンバ設計は、円錐の先端に流体結合するための内部ストロー(浸漬管ともいう)を使用する。これは、非常に有益な範囲を分配する。
・円錐の高圧力領域への外部流体結合が存在しないことは、外部配管構成に関連した製造およびハンドリングリスクを除去する。
・流体チャンバに流入する細胞サスペンションの流体フローパターンが、円錐チャンバジオメトリとアライメントするべく、それ自身に回帰することが要求される外部配管のジオメトリによって影響されない。
・外部流体ラインおよび関連するUベンドが、分離チャンバの外側に最大遠心分離領域を生じさせる。重い粒子および細胞凝集体は、この最大遠心分離領域内に蓄積する。周知の商業的システムにおいて、この最大遠心分離領域は、分離チャンバの外側で発生し、例えば、分離チャンバの先端部の流体インプット付近の外部配管内のベンドで発生する。本願発明の実施形態において、このクリティカルな最大遠心分離領域は、円錐先端の内部である。円錐が透明の場合、この最大遠心分離領域は管理された介入により明確に観測可能である。
・円錐中央の浸漬管は、皮下チューブから作成されてよく、それは、技術的に精巧であり、医療プロダクトのコンタクト用に承認され、かつ、低コストで十分な体積で製造される。皮下チューブはまた、使用後にこれらのプロダクト用の危険ゴミストリームの周知のコンポーネントである。これは、分離チャンバコンポーネント用の初期製造コストおよびゴミ廃棄コストの両方に対して利点を有する。
【0070】
円錐モールド内の特徴と組み合わせた浸漬管設計は、流体チャンバ内で、よく制御された再生可能な流体フロージオメトリを作成可能である。例えば、浸漬管とシャーシコンポーネントとの間に締まりばめを使用し、チューブカット長さモールド特徴と円錐結合との間のアセンブリトレランスは、締まりばめを通じてチューブを再配置する軸線によって除去される。分離チャンバの先端内に形成された流体チャネル構造の実施形態は、図4Aから4Fに示されている。円錐流体エンクロージャの先端400は、浸漬管410から流出される流体を受け取るための中央部420を有するチャネル構造、および円錐流体エンクロージャの周りで流体フローを分散させるための中心部の周りに離隔されたローブ430を有する。流体チャネル構造はまたは、浸漬管410を配置しかつサポートする際にアシストするように構成されている。例えば、図4Bおよび4Fに示すように、中央部分420は浸漬管410のエンドを受設するようなサイズを有し、それは遠心分離力(図4Cおよび4Fに示す)によって補強され、かつ、締まりばめによって適所に保持される。本実施形態において、中心部分420は、浸漬管の軸線配置を制御し、かつ、浸漬管410と流体チャンバとの間にコンスタントにオープンの流体連通通路を保証するべく、ローブ430の間にロッジ440を有する。浸漬管からの流体は、中央部分420から進入し、流体エンクロージャへの開口部を与えるローブ430を通じて流出する。示される実施形態は、先端の周りに均等に離隔された3つのローブを使用するが、他の構造が使用されてもよく、例えば、4つ以上のローブ、または複数の均等に離隔された半径方向チャネルであってもよい。この構造は、特に、浸漬管410の正確な配置を保証するべく組立処理中に要求される精度を減少させることにより、デバイスの製造および組立を単純化する。流体は、流動床(すなわち、濃縮された細胞)を浸漬管410を通じて引くために、流体フローを逆流することによって、チャンバから回復可能である。回復プロセス中の希釈を最小化しつつ、細胞がサスペンドされている媒質環境に対して最小の撹乱で円錐から流動床を引くことが所望される。床内の処理条件は、遠心分離速度および流体流量によって制御される。同様の流動床が流量を一致させることにより、速度の範囲で作成可能である。これにより、遠心分離回転速度および流体流量は、流動床を安定状態に保持するが、回復処理用のより好適な条件を作成するより遅い処理速度で、コーディネートされたアクション(例えば、マイクロプロセッサコントローラによる制御)として遅くされることが可能である。流動床の濃縮の制限は、究極的に、回復ステップ中に流体経路のブロックを回避する。流動床の密度は、サスペンション濃縮の最適化を可能にする回復ステップの前に、カウンタフローポンプによって調節可能である。カウンタフロー遠心分離処理速度は、カウンタフローポンプ速度と組み合わせた遠心分離速度によって定義される。処理速度は、細胞のダメージまたはチャンバからの細胞損失のリスクを最小化するために回復ステップ前のコーディネートされた動作として減速されてよい。このコーディネートされた減速は、遠心分離速度およびカウンタフローポンプ速度の制御された減速に関連する。
【0071】
遠心分離回転および流量を減速させることは、回復処理中に細胞ダメージのリスクも減少させうる。遠心分離済み流体の回復を最大化するために、流動床の最後で浸漬管内に引かれる無細胞流体の量を減少させるべく、および、流動床回復の端部方向の希釈を減少させるべく、浸漬管と円錐先端エンドとの間に非常に小さいギャップを有することが所望される。円錐先端400の構造は、良好な回復結果のために、ギャップを最小化するように設計されてよい。図4に示すような浸漬管をサポートするためのチャネル構造は、サポートロッジ440およびローブ430の構造が、流動床の背後の無細胞流体用の浸漬管入口の周りのアクセス領域を減少させるので、有利である。中央部分は、流動床がチューブから引かれる最後の瞬間まで、流動床の流体によって完全に占められるべきである。与えられる流量は、流動床の安定性を維持するように制御されており、ローブは、希釈を最小化するべく、後方の無細胞流体に先んじて、浸漬管へすべての濃縮流体を注ぎ込むべきである。
【0072】
多くのバイオプロセスのスペシャリストは、生きた細胞が流体環境内で過剰なせん断に晒されないことを保証するのを懸念している。せん断は、製造プロセス歩留まりを効果的に減少させる製造プロセス中で、細胞損失またはダメージを生じさせる。大きな流体せん断を避けることが所望されるが、せん断は、流体チャネル中で慣性力を経験するすべてのシステムで生じうる。逆流遠心分離処理の大きな貢献は、分離チャンバからの回復用に流動床内に捕捉されている誘導された細胞ポピュレーションの顕著な細胞回復(>98%)を分配可能であることである。したがって、分離後の細胞の系統的損失が問題である。
【0073】
このシステムの実施形態の特徴は、回転遠心分離と外部流体システムとの間での回転カップリングの使用である。多くの既存の逆流遠心分離プロダクトは、スライドシールを使用せずに、この回転結合を達成するスキップロープデバイスを使用する。しかし、このようなデバイスは、複雑でかつ製造コストが増加する。本願発明のシステムの実施形態において、回転カップリングが、単純化および潜在的コスト減少のために使用される。機能的に閉じた、生物学的デバイスとして回転カップリングのさらなる承認が商業的製造のために要求されるが、生物学的処理で受け入れられている多くの他のプロダクトが回転カップリングを使用しているので、規制当局認証プロトコルは、このデバイスに対してよく確立されている。これは、規制当局の承認コストを減少させる点で有利であり、それは、プロダクトコストにポジティブなインパクトを与えうる。回転カップリングを使用することはまた、代替的なスキップロープタイプのカップリング設計よりも高速回転を可能にする。
【0074】
経験的に、貧弱に構成された回転カップリングは細胞回復に対してインパクトを与えうる。細胞が大きな流体せん断シチュエーションを経験するところのポイントをアドレスするべく、設計検討の範囲が本実施形態において採用された。本願発明の設計検討はいくつかの原理を実施する。
・浸漬管へ接続する流体チャネルが、希釈細胞サスペンションが細胞床の蓄積中にチャンバへ移送されるところにある。
・このチャネルはまた、濃縮されたサスペンションがチャンバから目標ベッセルへ引かれるところにある。
・回転カップリングは、細胞サスペンションを移送するべく、回転アセンブリの中心と直接アライメントされた中心ポートを有する。
・細胞は、回転構造から回転カップリングボディ内で生じる際にのみ、デローテーションからのせん断にさらされる。
【0075】
回転カップリングおよび流体経路の実施形態が図2および図5に示されており、それは、回転カップリングをより詳細に示す。流体チャネル270、520は、搬入のために、浸漬管と連通し、回復経路250は、回転軸とアライメントされている。したがって、濃縮された細胞サスペンションの細胞回復用の流体チャネルは、回転環境の外へ移動するとき、少なくとも生じうるせん断ストレスを経験するところに細胞が配置される。
【0076】
水簸流体経路510は、同軸カニューレを通じて、搬入および回復チャネル520および回転カップリングのブッシュ503内の流体遷移溝540へ形成される。ブッシュ530は、同軸カニューレの同心性を制御し、細胞サスペンションフローを半径方向外側に再方向付けする。ブッシュ530は、管状流体遷移溝を有し、そこで、回転する半径方向の穴を通じて非回転領域へ、細胞サスペンションの制御された遷移が生じる。流体チャンバ210の内側の大きな直径の端部からの流体フローは、ゴミとなる細胞ポピュレーションを有しない、普通に精製された媒質である。流体が半径方向外側に移動し、かつ、回転カップリングを出る前に回転を停止しなければならないところに、このチャネルは論理的に存在する。しかし、このチャネル510は、細胞が流動床(水簸)から選択的に駆動されるところのアプリケーションの範囲、または、全体の細胞床がミキシングおよびサンプリングのための回復ループを通じて結集されるところのアプリケーションの範囲で使用される。
【0077】
実施形態は、回転カップリングのアウトレットで合流するように方向付けられる前の大きなせん断体積内で、半径方向外側に移動するよう流体(およびその内部の任意の細胞)を方向付けるキャビティ540を採用する。カップリング内の鋳造コンポーネントの詳細は、細胞が蓄積されかつ損失するところのデッドフローゾーンを最小化するように設計されている。
【0078】
図6に示すように、回転カップリング620はまた、分離チャンバ610を流体マニホールド630へ固定する。図7に詳細に記載されているように、鋳造マニホールド730は、チューブネットワーク735を流体制御バルブおよびセンサインスツルメントへ予めセットする。図7は、結合された分離チャンバ710を有するマニホールド730を示し、それは殺菌使い捨てサブシステムとして供給されてよい。マニホールド730は、例えば流体バッグのような流体供給コンポーネントおよび他の使い捨て可能キットと結合するための多くの外部流体ラインコネクタ760に結合されている。マニホールドチューブネットワーク735は、図8に示すようにバルブ動作アセンブリとアライメントされて構成されている。バルブ動作アセンブリは、動作の際に、カバー740に対して閉じられた流体ラインをピンチすることによりそれぞれの流体ラインを閉じるように構成された複数のピンチバルブアクチュエータ810を有する。マニホールドの予め構成された流体ラインにより、インスツルメント内への複雑なチューブおよびコンポーネントの螺刻および締め付けの必要がなくなる。これはオペレータによるエラーを有意に減少させる。インスツルメントドアは、マニホールドを所定位置にロックし、かつ、閉じられるたきにピンチバルブの機能を完了する。
【0079】
マニホールドは、遠心分離器の回転カップリングへの流体ネットワークをインターフェースする。これは、アセンブリ間のジオメトリックな変動を補償するべく、フレキシビリティを有するカップリングのねじり作用に対抗する構造を作成する。それは、遠心分離環境と静的流体との間に密接な結合を与え、非常に小さい体積回復能力を促進する。マニホールドは、システム内の流体体積を最小化するべく、特定の処理プロトコル用に設計可能である。また、マニホールドチューブネットワークは、異なる流体経路が、バルブの組みあわせの作用によって、処理中に選択的に構成されることを可能にするように設計されてよい。例えば、図3Eおよび3Fは、流体フローが処理中にどのように選択的に構成されるのかを示し、それは、分離チャンバを通じて流体媒質をリサイクルするように構成された流体経路を含む。バルブの開閉は、システムプロセッサの制御のもとで、自動化されてよい。
【0080】
マニホールドは、低コストのツールを使った方法で製造可能である。これにより、異なるプロセス構成を、低コストで製造可能な多くのプロトコル内に埋め込まれたユニークな詳細要件と一致させることが可能となる。ひとつの実施形態において、マニホールド製造は、ツインシートバキュームフォームとして記述される方法によって達成される。この方法は、図9に示されている。厚さが約0.6mmのポリマーシートが予熱され、加熱されたプラテン910、920の間に配置される。各ツールプラテンに対してシートを捕捉しかつ形成するよう真空引きされる。プラテン910、920は、クランプされて閉止され、ツールのヘッダキャビティ930内で薄膜935を貫通させることにより、2枚のシート間に圧力がインサートされる。形成されたシートは、形成済みマニホールド940を与えるようトリミングされる。ツール温度、ポリマーの予熱、および圧力は、ポリマー材料を熱接着する。重要な目的は、できるだけ低コストのツールである。ツール設計は、CNCマッチングセンター上の単一セットアップ内で完了可能なシングルサイドマッチングオペレーションにフォーカスされる。短時間の実行中のツール変形は、固定したイクイップメントインフラストラクチャーのツール部分のヘッダキャビティを作成することにより、かつ、プラテン910、920用のプロセス特定ツールインサート925を使うことで、さらにコスト削減可能である。この特質の組みあわせは、遠心分離システムのエンドユーザが、プロセス特定マニホールド構成を作成し、かつ、実用的なコスト内でそれを与えることができるように設計される。
【0081】
固定マニホールドは、キットコンポーネントの人間組立により導入されるエラーまたは変動がより小さい傾向があるため、体積精度に対して利点を有する。チューブ長さのミリメートルの変動が全体の内部システム流体体積に有意なインパクトを有するので、これは小さい体積処理に対して重要である。プロセス特定の、固定しかつ予熱したマニホールドは、内部システム流体体積を最小化するように設計されてもよい。これにより、より高い回復濃度が可能になる。言い換えれば、システム内により少ない媒質流体を単純に有することにより、媒質流体による濃縮細胞の希釈を最小化することが可能となる。これは、小さい体積の少ない細胞(または他の粒子)数のアプリケーションに対して非常に有利である。
【0082】
鋳造マニホールドはまた、図10に示すように、ポンプインターフェースをサポートする。蠕動ポンプ用に特化されたチューブ750は、鋳造コネクタを通じてマニホールドに取り付けられる。マニホールド730がインスツルメント上に搬入されたとき、チューブは自然にポンプローラ1010に近接して配置される。ドアヒンジジオメトリ1020と組み合わせたインスツルメントドア1030上の特徴は、蠕動ポンプチューブと一緒になって、ドアが閉まる際にポンプローラアセンブリに対して押圧する。これは、蠕動ポンプ搬入の際のエラーを消去する。ドアに取り付けられたポンプインターフェース1030の特徴は、蠕動ポンプチューブを捕捉し、かつ、制御されたクラッシュでポンプ駆動ローラへそれをクランプする。
【0083】
図11に示すように、システム1100は、モータ1150、ポンプ1120、1160、および、バルブアセンブリ1145のアクチュエータ1140の動作を制御するための再利用可能なサブシステム1200内に収容されたプログラム可能マイクロプロセッサのようなコントローラ1110を有する。コントローラは、エンド・ツー・エンド分離プロセスを制御するためのプロトコルにしたがって、プログラムされてよい。コントローラは、モータ、ひいては、上述したように、チャンバ1180の回転速度およびポンピング速度をコーディネートするように構成される。コントローラはまた、処理プロトコルに従い、バルブアセンブリ1145内の個々のバルブの開閉を生じさせるよう、バルブアクチュエータ1140を動作するように構成されてよい。例えば、マニホールド1170に結合されたひとつ以上の外部流体コンテナ1190からの流体の導入用に、または、外部チャンバへの流体回復用に、バルブを開くことは、マニホールドを通じる流路を再構成することにより、システム内で流体のリサイクルを実行する。ある実施形態において、システム内に埋め込まれたコントローラ1110は、コーディネートされた方法で、システムコンポーネントの動作を制御するべく構成されてよく、より高いレベルの処理プロトコルコントロールを制御する外部コントローラ(例えば外部のコンピュータシステム)へ、リンク(適切な配線または無線データ通信を介して)されてよい。例えば、外部コンピュータシステムは、モニター、データ捕捉、および解析などの機能用の強化されたユーザインターフェース機能およびリソースを可能にするように与えられてよい。外部コンピュータシステムを使用することは、システムを使用している実行用のプログラミングおよび処理プロトコルデザインにより大きなフレキシビリティを与えることができる。外部システムは、プロトコルの実行を制御するため、または、実行用のシステムにダウンロード用にプロトコルを設計するために使用されてよい。これらの実施形態の両方は、研究室または試験環境に特に適していると想定および考慮されている。システムが単一の処理プロトコル専用であり、かつ、システムコントローラが固定的にプログラムされている(ダウンロードされない)か、または特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用のプロセッサを使用するところの実施形態が考えられる。システムの固定された構成(すなわち、セットアップ接続変動のリスクを最小化するマニホールド)および自動化制御は、処理結果の高い均一性を可能にする。また、処理スループットは、早い段階の実験、医療措置およびラージスケールの手術に対して同じデバイスを実行可能にするように改善されうる。
【0084】
本発明のシステムの実施形態は、現在入手可能な遠心分離システムに対して大きな利点を提供する。細胞精製技術の一次的な特質は、
・収集可能な希釈細胞サスペンションの最大体積
・細胞を捕捉しながら希釈細胞サスペンションが処理可能な速度
・収集された細胞が分配可能な体積がどのくらい小さいか
・細胞の回復:供給細胞に対する分配細胞の割合(%)
【0085】
逆流遠心分離に従い、回復は系統的に98%の領域であり、他の任意の細胞ハンドリング方法を上回っている。
【0086】
収集ステップが共通に説明される際の収穫の速度は、流動床からの細胞の損失なしで流動床が許容できる流体流量によって管理される。これは、加速度Gによって反映されるチャンバ内で達成された沈殿速度によって管理される。図2および図3に示す設計は、4000Gまで動作するように開発されたが、控えめの3000Gで適用されてもよく、この控えめの使用は、市場での単一使用逆流遠心分離を最適に提供するものの3倍である。
【0087】
開示したシステムの実施形態は、非常に小さい体積回復を可能にする。このデザインの目立った能力は、非常に小さい体積内で、最終プロダクトを分配する能力である。細胞ベースの治療プロセス開発の重要目的は、機能的に閉じた一回使用環境内で全処理を完了することである。多くの治療プロダクトプロトコルの最終ステップは、全細胞プロダクトが小さい体積内で濃縮されることを要求する。通常、これは、手動のオープン介入ステップを有する非常に高グレードのクリーンルーム内で実行される伝統的なバケット遠心分離ステップを通じて達成される。
【0088】
説明する実施形態は、小さい体積内に非常に高い細胞回復に特化される特徴を組み込む。実施形態は、以下の特徴のひとつ以上の任意の組みあわせを有する。
・供給チューブへの方向軸インターフェースを有する回転カップリング
・ポンプを通じて目標ベッセルへの、チャンバからの流路距離を最小化する小さいフットプリント
・選択的な捕捉およびシャットオフ用の出力ライン内に光学密度センサを埋め込む機会
【0089】
このステップの自動制御と組み合わせたこれらの特徴は、高い回復率で、10億個細胞に対して10mlより小さく、1000万個の細胞ポピュレーションに対して2mlまでのトータル流体出力体積を可能にする。
【0090】
実施形態は、コスト的に有効な製造を可能にするように構成されている。多くの細胞ベースの治療プロダクトは、患者から治療エージェントへ引かれる細胞を移送することに基づく。これらの自己移植治療は、比較的小さいトータル細胞ポピュレーションに関して有効である。このデザインのキャパシティおよび機能性は、自己移植プロダクトによって与えられる問題を解決するために理想的である。自己移植プロダクトは、患者へ管理用にプロダクトがリリースされる前に、詳細なプロセス調査、レビュー、および、ロバストな品質保証試験を要求するcGMP(現在の製造管理および品質管理に関する基準)のもとで、共通に製造される。このプロダクトを低価格にすることは、コスト態様をアドレスするのに重要である。このデザインは、低コストで分配可能である一回使用コンポーネントのアセンブリを与えることによって貢献する。
【0091】
本システムの実施形態は、流体サスペンション内での回復用に、小さい粒子を分離または蓄積するための多くの処理アプリケーションに適している。細胞治療用の細胞の処理におけるアプリケーションの例は、
1)細胞濃縮
2)細胞精製
3)より大きく高密度の細胞の濃縮と、より小さく、軽い細胞およびデブリの水簸の組みあわせによる細胞分離
4)周囲の細胞ポピュレーションより、軽いかまたは重いビーズに付着した細胞を分離することによる細胞選択
5)液体の制御された体積(例えば、抗凍結剤)を濃縮細胞の既知のアウトプット体積に追加することによる製剤
【0092】
システムアプリケーションの例は、細胞処理と関連して説明したが、システムの実施形態は他のアプリケーションでの使用も可能である。特定のアプリケーションへの参照は、例示にすぎず、発明の態様を制限するものではない。
【0093】
システムは、単純な搬入を可能にし、かつ、オペレータによるアセンブリエラーを最小化するように設計されている。このインスツルメントは治療目的用に人体細胞を処理するように設計されている。処理エラーのリスクは高価な材料の損失を回避するべく常に最小化されることが重要である。この設計は、エラーのリスクを最小にするべく特定された使い捨て可能なキットの搬入を単純化する特徴の範囲を組み込む。この特徴は、遠心分離チャンバアセンブリおよびマニホールドに埋め込まれる。遠心分離チャンバアセンブリおよび遠心分離キャリアを有するそのインターフェースは、ラッチ係合の際に音が聞こえるクリックによってサポートされる直感的インターフェースを提供する。
【0094】
現在入手可能な商業的システムに対する開示されたシステムの有意な利点は、浸漬管スタイルの分離チャンバおよび回転カップリングの構成が、予め組み立てられた清浄な一回使用キットとして流体分配マニホールドへ取り付けられて与えられることである。また、分離チャンバは、モーターマウントからの最小の構造サポートを要求する。この構成はまた、動作中に減少した運動エネルギーを生じさせる。したがって、この構成は再利用可能なサブシステム上での物理的な要件を有意に減少させ、より小さいサイズ、より単純でかつより低いコストを実現する。
【0095】
本願発明の思想および態様から離れることなく、多くの修正が可能であることは当業者の知るところである。
【0096】
特許請求の範囲において、および発明の上記説明において、用語の表現または必要な暗示による文脈が要求する場合以外は、“有する”、“含む”、“備える”の用語は、発明のさまざまな実施形態において、記載した特徴の存在を特定するが、さらなる特徴の存在または付加を否定するものではない。
【0097】
ここで参照した従来技術は、その参照において公知文献がオーストラリアまたは他の国において共通の一般的な技術常識の一部を形成することを認めるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0098】
【文献】R. J. Sanderson, K. E. Bird、N. F. PalmerおよびJ. Brenmanによる論文 “Design Principles for a Counter Flow Centrifugation Cell Separation Chamber” Analytical Biochemistry 71, 615-622 (1976)
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11