(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20230322BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230322BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230322BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230322BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230322BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20230322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230322BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/24
C12N15/863 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K35/768
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2020518664
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2018093404
(87)【国際公開番号】W WO2019062234
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201710882027.1
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520106404
【氏名又は名称】ハンジョウ コンバート カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU CONVERD CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】7th Floor,Building #4,2959 Yuhangtang Road,Yuhang District Hangzhou,Zhejiang 311121 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,ロンファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ファン
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/073479(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/043815(WO,A1)
【文献】特表2005-530716(JP,A)
【文献】特表2017-511136(JP,A)
【文献】Leonard, W. J. et al. ,IL-21 Signaling in Immunity,F1000Res,2016年,Vol. 5:F1000 Faculty Rev-224,pp. 1-10
【文献】McCart, J. A. et al.,Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes,Cancer Res.,2001年,Vol. 61(24),pp. 8751-8757
【文献】Thorne, S. H. et al.,Rational strain selection and engineering creates a broad-spectrum, systemically effective oncolytic poxvirus, JX-963,J. Clin. Invest.,2007年,Vol. 117(11),pp. 3350-3358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスがTK遺伝子およびVGF遺伝子を機能欠損し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムが外来性のIL-21遺伝子をインテグレーションされ、IL-21遺伝子が腫瘍細胞内で発現されることができ、
前記組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスがWR株であり
、
前記外来性のIL-21遺伝子がTK遺伝子内に挿入され、それにより、GenBankのNC_006998と付番されたワクシニアウイルス遺伝子の80962~81032bpに示されている配列断片が欠失された、
単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項2】
VGF遺伝子が、ノックアウトされることまたは外来性のヌクレオチド配列を挿入されることによって機能欠損する、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項3】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムがさらに外来性のスクリーニング遺伝子をインテグレーションされ、外来性のスクリーニング遺伝子がgpt遺伝子および/またはLacZ遺伝子を包含するが、蛍光蛋白質遺伝子を包含しない、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項4】
外来性のIL-21遺伝子がマウスまたはヒトに由来する、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項5】
医薬組成物が、活性成分としての請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物が組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを1×10
5~5×10
9pfu/日の用量で含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、それが腫瘍内注射または静脈内投与によって投与されるように製剤される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ベクターがプロモーターのコントロール下の外来性のIL-21遺伝子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを調製するためのベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの使用。
【請求項11】
腫瘍および/または癌が肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌を包含する、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に属し、具体的には、腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍細胞を殺傷するが、正常細胞を害さない型のウイルスである。感染した腫瘍細胞内で複製した後に、新たなウイルス粒子を放出し、これが今度はそれらの周りの腫瘍細胞に感染し、さらに腫瘍溶解効果を行使する。この直接的な腫瘍溶解効果に加えて、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスそれ自体および感染した腫瘍細胞に対する免疫応答を生ずるように体を有効に刺激し得る。腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果は、腫瘍細胞を選択的に殺傷することと、系統的な抗腫瘍免疫応答を生ずるように体を誘導することとの両方によって達成されるということが分かる。
【0003】
19世紀の終わりほども早くに、複数のウイルスが腫瘍発生の進行を緩和することが見いだされ、腫瘍治療の分野におけるウイルスのポテンシャルを指示した。遺伝子テクノロジーの発展によって、ウイルスゲノム構造はそれが腫瘍細胞内で選択的に複製され得るように改変され得、それによってその腫瘍標的化特性を強化する。過去10年に、研究者は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、小型RNAウイルス、ワクシニアウイルス、および他のウイルスを遺伝子改変するための遺伝子組換え、遺伝子伝達、遺伝子ノックアウト、および他のテクノロジーによって、一連の腫瘍溶解性ウイルス製品を開発した。今までに、20個よりも多くの製品が臨床研究の異なる段階に入っている。それらの中でも、中国CFDAは、頭頸部腫瘍の処置について、上海三維生物技術有限公司の遺伝子改変された腫瘍溶解性アデノウイルスH101の上市を2005年に承認しており、これは世界で最初の腫瘍溶解性ウイルス医薬であった。10年後になって、第2の腫瘍溶解性ウイルス医薬、Amgenの遺伝子改変された腫瘍溶解性ヘルペスウイルスT-Vecが、進行した悪性黒色腫の処置について、米国FDAおよび欧州連合EMAによって2015年に承認された。現行では、医薬として上市されている遺伝子改変された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスはない。
【0004】
腫瘍溶解性ウイルスによる腫瘍および/または癌の免疫療法により有効な医薬を開発する必要がなおある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
先行技術の既存の問題を解決するために、本発明は、腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。
【0006】
具体的には、本発明は次を提供する。
(1) 単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスはTK遺伝子およびVGF遺伝子を機能欠損し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムは外来性のIL-21遺伝子をインテグレーションされ、IL-21遺伝子は腫瘍細胞内で発現されることができる。
(2) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、TK遺伝子は、外来性のヌクレオチド配列が挿入されることによって機能的に欠損する。
(3) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、外来性のIL-21遺伝子はTK遺伝子内に挿入され、それによってTK遺伝子の機能欠損を引き起こす。
(4) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、VGF遺伝子はノックアウトされることまたは外来性のヌクレオチド配列を挿入されることによって機能欠損する。
(5) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスはWyeth株またはWR株である。
(6) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムはさらに外来性のスクリーニング遺伝子をインテグレーションされ、外来性のスクリーニング遺伝子はgpt遺伝子および/またはLacZ遺伝子を包含するが、蛍光蛋白質遺伝子を包含しない。
(7) (1)または(5)に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、外来性のIL-21遺伝子はマウスまたはヒトに由来する。
(8) 医薬組成物であって、医薬組成物は活性成分としての(1)~(7)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む。
(9) (8)に従う医薬組成物であって、医薬組成物は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを1×105~5×109pfu/日の用量で含む。
(10) (8)に従う医薬組成物であって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは腫瘍内注射または静脈内投与によって投与される。
(11) (1)~(7)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを調製するためのベクターであって、ベクターはプロモーターのコントロール下の外来性のIL-21遺伝子を含む。
(12) (11)に従うベクターを含む宿主細胞。
(13) 腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、(1)から(7)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの使用。
(14) (13)に従う使用であって、腫瘍および/または癌は肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌を包含する。
(15) 腫瘍および/または癌を処置するための方法であって、(1)~(7)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与することを含む。
(16) (15)に従う方法であって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、1×105~5×109pfu/日の用量で、1日1回、連続1~6日に渡って投与される。
(17) (15)に従う方法であって、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは腫瘍内注射または静脈内投与によって投与される。
(18) (15)に従う方法であって、腫瘍および/または癌は肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌を包含する。
【0007】
先行技術と比較して、本発明は次の利点および有益な効果を有する。
【0008】
本発明は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのTK遺伝子およびVGF遺伝子の両方を機能欠損させることと、同時に腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが免疫制御因子IL-21の遺伝子を保有するようにさせることとを初めて提案し、その結果、得られた組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは腫瘍細胞内で選択的に複製し得、免疫制御因子IL-21を発現する。本概念に基づいて提供される腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、医薬組成物、および方法は、腫瘍細胞内で選択的に複製および腫瘍細胞を殺傷し、さらに体の爾後の免疫応答を引き起こす腫瘍溶解性ウイルスの役割を充分に行使し得、外来性のIL-21の抗腫瘍免疫効果をもまた充分に行使し得る。本発明は、IL-21遺伝子を腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにインテグレーションすることによって、本発明が腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍溶解性殺傷効果とIL-21の抗腫瘍免疫刺激効果とを相乗化し得るということを見いだした。
【0009】
加えて、ワクシニアウイルスのTKおよびVGF遺伝子の両方の機能欠損はその腫瘍標的化特性を有効に強化し、それによって安全性を改善する。
【0010】
加えて、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは腫瘍細胞内で選択的に複製し、同時に外来性のIL-21を発現するので、それは体の抗腫瘍免疫応答を相乗的に刺激し得、それによって本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスをNK細胞と組み合わせることを可能にする。この概念に基づいて提供される医薬組成物および方法は、腫瘍細胞内で選択的に複製および腫瘍細胞を殺傷しかつさらに体の爾後の免疫応答を引き起こす本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの役割を充分に発揮するのみならず、腫瘍細胞を殺傷するNK細胞の機能をもまた行使し得、腫瘍細胞内で選択的に複製する本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの特徴を巧妙に利用し、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含有する腫瘍細胞がNK細胞の特異的標的になるようにする。発現される外来性のIL-21もまたNK細胞の致死性を強化し得、それによってNK細胞の腫瘍殺傷効果をさらに強化する。これは最終的にさらに強化された相乗的な腫瘍殺傷効果を生ずる。
【0011】
さらに、研究によって、本発明によって提案される組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞のそれぞれの投与用量、投与順序、および投与間隔は、それらの組み合わせが最大の相乗効果を達成することを可能にし、同時にそれらの相互の制約を回避し、それゆえに腫瘍および/または癌を処置する有効な効果を達成する。
【0012】
定義
本願において用いられる用語「腫瘍」、「癌」、「腫瘍細胞」、および「癌細胞」は当分野において通常認識される意味を包摂する。
本願において用いられる用語「腫瘍溶解性ウイルス」は、腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍細胞を溶解し得るウイルスを言う。
本願において用いられる用語「治療有効量」は、検出測定可能な治療もしくは阻害効果を見せるかまたは抗腫瘍応答を誘起するために有用な機能性薬剤または医薬組成物の量を言う。効果は当分野において公知のいずれかのアッセイ方法によって検出測定され得る。
本願において用いられる用語「投与する」または「投与」は、化合物、複合物、または組成物(ウイルスおよび細胞を包含する)を対象に提供することを言う。
本願において用いられる用語「患者」はヒトまたは非ヒト生物を言う。それゆえに、本願に記載される方法および組成物はヒトおよび獣類の疾患両方に適用可能である。ある種の実施形態では、患者は腫瘍を有する。いくつかのケースでは、患者は1つ以上の型の癌に同時に罹患し得る。
本願において用いられる用語「相乗効果」は、それらの単体の効果の合計よりも多大な効果を生ずる2つ以上の薬剤の間に生起する効果を言う。
本願において用いられる用語「pfu」または「プラーク形成単位」はプラークを形成するウイルス数を言う。
本願において用いられる用語「MOI」または「多重感染度」は、ウイルス数および細胞数の間の比、すなわち細胞あたりのウイルス感染を開始するために用いられるウイルス粒子数を言う。MOI=pfu/細胞、すなわち細胞数×MOI=トータルのPFU。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ワクシニアウイルスVSC20のTK遺伝子にIL-21遺伝子を挿入するように構築された組換え体プラスミドの図解(すなわち、図に示されている「Dvv-VSC20/VGF-」)と、本発明の実施形態に従う組換えメカニズムの略図とを示している。本発明の1つの実施形態に従う組換え体の二重遺伝子欠損ワクシニアウイルス(組換え体DDvv)が、示されている組換えメカニズムによって得られる。
【
図2】
図2は、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを得るための1つの実施形態のフローチャートを示している。
【
図3】
図3は、本発明の例1において構築されたプラスミドの図解を示している。
【
図4】
図4は、PCRおよびELISA法によってP0世代組換え体ウイルスDDvv-IL21を鑑定した結果を示している。AはPCR法によるP0世代ウイルスDDvv-mIL21の検出測定であり、BはPCR法によるP0世代ウイルスDDvv-hIL21の検出測定である。レーンM:D000マーカー、レーン1:負のコントロール(すなわちPCR反応溶液)、レーン2:VSC20、レーン3:CV1細胞、レーン4:P0世代ウイルス。Cは、ELISAによって鑑定されたP0世代ウイルスの培養上清のIL21の発現レベルを示している。
図4Cでは、横軸は群であり、縦軸はIL21の濃度(pg/mL)である。横軸上に示されている「NC」はCV1細胞を言い、「プラスミド」はpCB-mIL21を言う。
【
図5】
図5はプラークスクリーニング後の組換え体ウイルスの鑑定結果を示している。AおよびBはそれぞれPCRによる腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDvv-mIL21およびDDvv-hIL21の鑑定である。レーンM:D000マーカー、レーン1:負のコントロール(すなわちPCR反応溶液)、レーン2:P0世代ウイルス、レーン3:DDvv-mIL21(
図5A)またはDDvv-hIL21(
図5B)。CおよびDはPCR法によるTK領域鑑定である。図中のレーンM:D000マーカー、レーン1:負のコントロール(すなわちPCR反応溶液)、レーン2:VSC20、レーン3:P0世代ウイルス、レーン4:DDvv-mIL21(
図5C)またはDDvv-hIL21(
図5D)。EおよびGは、抗IL-21抗体を用いるウエスタンブロットによってそれぞれ腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDvv-mIL21およびDDvv-hIL21のIL21蛋白質の発現を示している。図に示されている「NC」はCV1細胞を言う。FおよびHは、細胞をそれぞれ腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDvv-mIL21およびDDvv-hIL21に感染させた後の培養培地および細胞ライセートのIL21含量を示しており、ELISAキットによって検出測定した。
【
図6】
図6は、5種類のマウス由来癌細胞に対するネズミIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-mIL21の殺傷効果を示している。AはB16細胞の実験結果であり、Bは4T1細胞の実験結果であり、CはLLC細胞の実験結果であり、DはGL261細胞の実験結果であり、EはCT26細胞の実験結果である。
図6A~Eは横軸に時間(h)、縦軸に細胞殺傷率(%)を示す。
【
図7】
図7は、5種類のマウス由来癌細胞に対するネズミIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-mIL21の殺傷効果曲線(A~E)およびIC
50値(F)を示している。AはB16細胞の実験結果であり、BはCT26細胞の実験結果であり、Cは4T1細胞の実験結果であり、DはLLC細胞の実験結果であり、EはGL261細胞の実験結果である。
図7A~Eは横軸にMOIのlog値、縦軸に細胞殺傷率(%)を示す。
図7Fは横軸に細胞群、縦軸にIC
50値(MOI)を示す。
【
図8】
図8は、4種類のヒト癌細胞に対するヒトIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-hIL21の殺傷効果を示している。AはA549細胞の実験結果であり、BはHela細胞の実験結果であり、CはSKOV3細胞の実験結果であり、DはU251細胞の実験結果である。
図8A~Dは横軸に時間(h)、縦軸に細胞殺傷率(%)を示す。
【
図9】
図9は、8種類のヒト癌細胞に対するヒトIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-hIL21の殺傷効果曲線(A~H)およびIC
50値(I)を示している。AはA549細胞の実験結果であり、BはHepG2細胞の実験結果であり、CはHela細胞の実験結果であり、DはHT29細胞の実験結果であり、EはSKOV3細胞の実験結果であり、FはPANC1細胞の実験結果であり、GはSK-HEP-1細胞の実験結果であり、HはFaDu細胞の実験結果である。
図9A~Hは横軸にMOIのlog値、縦軸に細胞殺傷率(%)を示す。
図9Iは横軸に細胞群、縦軸にIC
50値(MOI)を示す。
【
図10】
図10は、B16腫瘍を持つマウスに対するネズミIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-mIL21の抗腫瘍効果を示している。
図10Aは腫瘍体積の時間曲線を示しており、横軸は投与時間(日)であり、縦軸は腫瘍体積(mm
3)である。
図10BはT/Cの時間曲線を示しており、横軸は投与時間(日)であり、縦軸はT/C(%)である。
図10Cは異なる用量群の腫瘍重量の比較結果を示しており、横軸は群であり、縦軸は腫瘍重量(g)である。
【
図11】
図11は、腫瘍を持つB16マウスに対するDDvv-mIL21の免疫効果のフローサイトメトリー分析を示している。AおよびBは、CD4
+細胞の変化(A)およびCD8
+細胞の変化(B)を検出測定するための脾臓から抽出されたPBMCのフローサイトメトリー分析である。CおよびDは、CD4
+細胞の変化(C)およびCD8
+細胞の変化(D)を検出測定するための腫瘍組織から抽出された腫瘍細胞のフローサイトメトリー分析である。
図11A~Dでは、横軸は投与群であり、縦軸はCD4
+TまたはCD8
+T細胞のパーセンテージ(%)である。
【
図12】
図12は、LLC腫瘍を持つマウスに対するネズミIL-21断片を保有する組換え体ワクシニアウイルスDDvv-mIL21の腫瘍阻害効果を示している。
図12Aは腫瘍体積の時間曲線を示しており、横軸は投与時間(日)であり、縦軸は腫瘍体積(mm
3)である。
図12BはT/Cの時間曲線を示しており、横軸は投与時間(日)であり、縦軸はT/C(%)である。
【
図13】
図13は、ヒト腫瘍細胞SK-HEP-1に対するヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組み合わせの殺傷効果を示している。横軸は群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である。
【
図14】
図14は、B16腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスに対するネズミIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの抗腫瘍効果を示している。
図14Aは処置後の腫瘍体積の変化曲線を示しており、横軸はB16腫瘍細胞接種時間(日)であり、横軸上の矢印はDDvv-mIL21投与の時点を指示しており、縦軸は腫瘍体積(mm
3)である。
図14Bは処置後のT/Cの変化曲線を示しており、横軸はB16腫瘍細胞接種時間(日)であり、縦軸はT/C(%)である。
【
図15】
図15は、B16腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスに対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスおよびコントロールワクシニアウイルスの抗腫瘍効果の比較を示している。
図15Aは処置後の腫瘍体積の変化曲線を示しており、横軸は投与後の時間(日)であり、縦軸は腫瘍体積(mm
3)である。
図15Bは処置後のT/Cの変化曲線を示しており、横軸は投与後の時間(日)であり、縦軸はT/C(%)である。
図15Cは処置後の腫瘍重量を示しており、横軸は群であり、縦軸は腫瘍重量(g)である。
【
図16】
図16は、B16腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスに対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスおよびコントロールワクシニアウイルスの免疫効果のフローサイトメトリー比較を示している。
図16A~Cは、フローサイトメトリーによって検出測定されたCD4
+細胞(A)、CD8
+細胞(B)、およびNK細胞(C)の変化を示している。
図16A~Cでは、横軸は投与群であり、縦軸は、腫瘍組織中のトータルの免疫細胞に対する相対的な腫瘍組織中のCD4
+T細胞数のパーセンテージ(%)(A)、腫瘍組織中のトータルの免疫細胞に対する相対的な腫瘍組織中のCD8
+T細胞数のパーセンテージ(%)(B)、または腫瘍組織中のトータルの免疫細胞に対する相対的な腫瘍組織中のNK細胞数のパーセンテージ(%)(C)である。
【
図17】
図17は、HCT116腫瘍を持つ重度免疫不全マウスに対する、ヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの抗腫瘍効果の比較を示している。
図17Aは処置後の腫瘍体積の変化曲線を示しており、横軸はHCT116腫瘍細胞の接種時間(日)であり、横軸上の矢印はDDvv-hIL21投与の時点を指示し、縦軸は腫瘍体積(mm
3)である。
図17Bは処置後のT/Cの変化曲線を示しており、横軸はHCT116腫瘍細胞接種時間(日)であり、縦軸はT/C(%)である。
【
図18】
図18A~Dは、ヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせによる、HCT116腫瘍を持つ重度免疫不全マウスの処置後の腫瘍組織分析の比較を示している(定量PCR法を用いている)。分析は、腫瘍組織のワクシニアウイルスA46R遺伝子の相対的な発現レベル(A)、IL-21遺伝子の相対的な発現レベル(B)、NK細胞のNKG2D遺伝子の相対的な発現レベル(C)、IFN-γ遺伝子の相対的な発現レベル(D)を包含する。
図18A~Dでは、横軸は投与群であり、縦軸は、GAPDH遺伝子の発現レベル(単位:μg)に対して相対的な腫瘍組織の標的遺伝子(腫瘍のワクシニアウイルスのA46R遺伝子(A)、腫瘍のIL-21遺伝子(B)、腫瘍のNK細胞のNKG2D遺伝子(C)、腫瘍のIFN-γ遺伝子(D))のそれぞれの発現レベル(単位:pg)の比(pg/μg)である。
【
図19】
図19は、B16腫瘍マウスにおける静脈内投与されたDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの分布を示している。横軸は組織および臓器の型であり、縦軸は、腎臓臓器のワクシニアウイルスA46R遺伝子の発現量に対するそれぞれ各組織および臓器のワクシニアウイルスA46R遺伝子の発現量の比較倍数である。
【
図20】
図20は、ヒト腫瘍細胞HepG2に対するヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの殺傷効果を示している。横軸は群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である。
【
図21】
図21は、ヒト腫瘍細胞HCT116に対する、ヒトIL-21断片を保有するDDVV-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの殺傷効果の比較を示している。
図21AはNK群、DDvv-hIL21群、およびDDvv-hIL21+NK群の比較を示す。
図21Bは各実験群の比較を示す。
図21AおよびBでは、横軸は群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である。
【
図22】
図22は、ヒト腫瘍細胞FaDuに対する、ヒトIL-21断片を保有するDDVV-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの殺傷効果の比較を示している。
図22AはNK群、DDvv-hIL21群、およびDDvv-hIL21+NK群の比較を示す。
図22Bは各実験群の比較を示す。
図22AおよびBでは、横軸は群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である。
【0014】
各図において、示されている場合には、*はp<0.05を意味し、**はp<0.01を意味し、***はp<0.001を意味し、****はp<0.0001を意味する(一元配置ANOVA統計分析法を用いて、示されているコントロール群と比較)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、付随する図面を参照して好ましい実施形態の次の詳細な記載によってさらに説明される。ただし、これは本発明を限定するわけではない。種々の改変または改善が本開示の趣旨から外れることなしに然るべくなされ得、よって、これらは本開示の範囲内であるということは当業者には明らかであろう。
【0016】
本発明では、用語「腫瘍」、「癌」、「腫瘍細胞」、および「癌細胞」は当分野において通常認識される意味を包摂する。
【0017】
人体は複雑なシステムであり、呼吸、循環、および消化などの十大システムから構成される。これらのシステムは協調連携して、人体内の種々の複雑な生命活動が正常に進むことを可能にする。腫瘍が生ずるときには、体は種々の免疫エフェクターメカニズムによって抗腫瘍効果を行使し得る。体の抗腫瘍メカニズムは細胞性免疫および液性免疫を包含する。それらは密接に結びついており、互いに影響し、種々の免疫エフェクター分子およびエフェクター細胞が関わる。通常は、細胞性免疫は抗腫瘍プロセスにおいて主導的な役割を発揮し、液性免疫はいくつかのケースでは相乗的な役割を発揮するということが信じられている。本発明は、腫瘍細胞内で選択的に複製し、および腫瘍細胞を殺傷する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの特徴を利用することと、同時にそれが免疫制御因子IL-21を保有するようにさせることとを提案し、その結果、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは選択的な腫瘍溶解性および体の抗腫瘍免疫効果の強化の機能を相乗的に行使する。この概念に基づき、本発明の発明者は、実験研究および理論的検討から、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのTK遺伝子およびVGF遺伝子の両方を機能欠損させることとIL-21遺伝子をゲノム中にインテグレーションすることとによって、上述の相乗効果を達成することが可能であるということを発見した。
【0018】
ワクシニアウイルス(VV)は今までに発見された最も大きくかつ最も複雑なウイルスの1つであり、これは痘瘡を防止するためのワクチンウイルスである。ウイルスの特殊な生物学的特性は、それが腫瘍免疫療法/遺伝子治療の分野において増々大きくなる注目を得るようにさせている。(1)安全性:ワクシニアウイルスは、細胞の細胞質内で複製し、宿主細胞ゲノムにはインテグレーションしないDNAウイルスであり、外来性遺伝子によって誘導される変異を縮減する(文献:“Hruby, DE Vaccinia Virus Vectors:New Strategies for Producing Recombinant Vaccines.Clin.Microbiol.Rev.3,153-170(1990).”参照)。(2)高い発現効率:ワクシニアウイルスは非常に高い力価(>109pfu/ml)まで培養され得、通常は1~3時間の感染が、感染した細胞の90%よりも多くが目当ての遺伝子産物を発現するようにさせ得る(文献:“Pfleiderer,M.,Falkner,FG & Dorner,F.A novel vaccinia virus expression system allowing construction of recombinants without the need for selection markers, plasmids and bacterial hosts.J.Gen.Virol.76,2957-2962(1995).”参照)。(3)広い範囲の感染細胞:分裂および非分裂細胞を包含するほぼ全ての型の哺乳類細胞に感染する(文献:“Hruby,DE Vaccinia Virus Vectors:New Strategies for Producing Recombinant Vaccines.Clin. Microbiol. Rev.3,153-170(1990).”参照)。(4)大きいゲノム容量:少なくとも25kbの外来性遺伝子が、その遺伝子安定性に影響することなしに挿入され得る(文献:“Hruby,DE Vaccinia Virus Vectors:New Strategies for Producing Recombinant Vaccines.Clin.Microbiol.Rev.3,153-170(1990).”参照)。(5)安定性:温度に対して敏感でなく、医薬利用性が良好、用いることおよび輸送することが容易(文献:“Hruby,DE Vaccinia Virus Vectors: New Strategies for Producing Recombinant Vaccines.Clin.Microbiol.Rev.3,153-170(1990).”参照)。(6)発現産物は天然の構造を有する:発現された産物はその天然配置に近い正しいグリコシル化および翻訳後プロセシングを有し得る(文献:“Hruby,DE Vaccinia Virus Vectors:New Strategies for Producing Recombinant Vaccines.Clin.Microbiol.Rev.3,153-170 (1990).”参照)。これはウイルスが体の免疫応答を刺激するための免疫制御遺伝子を保有するために必須である。
【0019】
ワクシニアウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子はワクシニアウイルス複製プロセスが依存する遺伝子の1つである。ワクシニアウイルスがTK遺伝子を欠失する場合には、TK蛋白質を宿主細胞から供給することが必要である。しかしながら、TK蛋白質は正常な細胞周期においては一過的にのみ発現され得るが、TK蛋白質はほとんどの腫瘍細胞においては一貫して高発現される。よって、腫瘍組織におけるTK蛋白質の発現特徴を用いることは、TK欠損ワクシニアウイルスの複製が正常細胞よりもむしろ腫瘍組織に限定されることを許し、それによって腫瘍標的化を改善する。ワクシニアウイルス遺伝子改変系が用いられ始めた1982年から、TK遺伝子領域は外来性遺伝子の挿入領域である(文献:“Byrd,C.&Hruby,D.Construction of Recombinant Vaccinia Virus.In Vaccinia Virus and Poxvirology:Methods and Protocols 269,31-40(2004).”参照)。
【0020】
第2に、ワクシニアウイルスの細胞内複製および細胞間伝播は、宿主細胞の上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達経路の活性化に密接に関連する。ワクシニアウイルスは細胞に感染し、ウイルス成長因子(VGF)を分泌し、これは感染したまたは近傍の未感染の細胞の表面のEGFRに結合し、EGFR/Rasシグナル伝達経路を活性化し、これはワクシニアウイルスが複製および近傍の細胞に感染することにとって有利である。よって、VGF欠損ワクシニアウイルスは正常細胞のEGFR/Ras経路を活性化し得ず、これは正常細胞に感染するそれらの能力を限定する。しかしながら、腫瘍細胞のEGFRシグナル伝達経路は活性化され、その結果、腫瘍細胞におけるVGF遺伝子を欠失するワクシニアウイルスの複製および感染は影響されない。つまり、腫瘍に対する効果の特異性は相対的に改善される(文献:“Autio,K.et al.Safety and biodistribution of a double-deleted oncolytic vaccinia virus encoding CD40 ligand in laboratory Beagles.Mol.Ther.-Oncolytics 1,1-8(2014).”参照)。
【0021】
IL-21(インターロイキン-21)は多指向性のI型サイトカインであり、主にT細胞によって産生される。これは自然および獲得免疫応答を制御し、抗腫瘍免疫応答において重要な役割を発揮する。種々の免疫細胞およびシグナルトランスダクションに対するIL-21の効果が文献に報告されている(文献:“Leonard,WJ & Wan,C.IL-21 Signaling in Immunity.F1000Research 5,1-10(2016).”参照)。種々の型の免疫細胞は、主に次を包含する。1)CD4+T細胞:増殖を促進し、サイトカインを産生する。Tfh細胞:分化を促進し、胚中心機能を改善する。Th17細胞:分化および増殖を促進する。Treg細胞:その産生および生存を阻害する。2)NKT細胞:増殖し、細胞傷害性を強化する。3)CD8+T細胞:細胞傷害性、増殖および/または生存、抗腫瘍効果を改善する。4)NK細胞:細胞成熟、増殖を促進し、細胞傷害効果を増大させ、抗腫瘍活性を強化する。5)DC細胞:抗原提示機能を阻害し、アポトーシスを誘導する。6)マクロファージ:ファゴサイトーシスを強化する。7)B細胞:増殖および/またはアポトーシスを促進し、プラズマ細胞分化およびイムノグロブリン産生を促進する。8)加えて、IL-21は、JAK/STAT、MARK/PI3K、および他のシグナル経路を包含する種々の腫瘍関連シグナル経路を活性化し、腫瘍発生を制御し得る。腫瘍免疫療法では、NK細胞およびCD8+T細胞の細胞傷害性の活性化が鍵であり、多くの研究が、IL-21がこの手続きにおいて重要な役割を発揮するということを充分に示している。IL-21はNK細胞の成熟を促進してIFN-γおよびパーフォリンを産生し、NK細胞によって媒介される抗腫瘍細胞傷害性を誘導して腫瘍細胞の表面のNKG2Dリガンドを標的化し、抗体依存性細胞媒介性傷害性(ADCC)を介してNK細胞の致死性を増大させる(文献:“Spolski,R.& Leonard,WJ Interleukin-21:a double-edged sword with therapeutic potential.Nat.Rev.Drug Discov.13,379-395(2014).”参照)。第2に、IL-21はCD8+T細胞の増殖を誘導し、メモリーT細胞の生成を誘導し、IFNγ/グランザイムの分泌を促進して、CD8+T細胞による腫瘍の殺傷を強化し、再発腫瘍細胞に対する記憶免疫応答に寄与し得る。重要なことに、IL-2とは違って、IL-21はTreg細胞の拡大を誘導せず、さらにCD8+T細胞の免疫機能応答を強化する(文献:“Spolski,R.& Leonard,WJ Interleukin-21:a double-edged sword with therapeutic potential.Nat.Rev.Drug Discov.13,379-395(2014).”参照)。免疫細胞に対するIL-21の多様な効果に基づいて、IL-21は腫瘍微小環境において種々のエフェクター細胞を「再活性化」し得るということが示されている。いくつかの臨床研究が、IL-21を単独でまたは腫瘍処置のための他の医薬との組み合わせで用いている。
【0022】
よって、本発明は単離された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを提供し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスはTK遺伝子およびVGF遺伝子を機能欠損し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムは外来性のIL-21遺伝子をインテグレーションされ、IL-21遺伝子は腫瘍細胞内で発現されることができる。
【0023】
本発明において用いられる用語「機能欠損」は、腫瘍溶解性ウイルスの遺伝子を言うときには、腫瘍溶解性ウイルスが、遺伝子が本来有するべき機能を果たし得ないということを意味する。つまり、機能は失われている。この目的は、例えば外来性の断片を遺伝子内に挿入することまたは遺伝子のノックアウトによって達成され得る。
【0024】
よって、外来性のヌクレオチド配列がTK遺伝子内に挿入されてその機能を欠損させ得る。外来性のヌクレオチド配列をVGF遺伝子内に挿入してその機能を欠損させることもまた可能であるが、VGF遺伝子をノックアウトすることが好ましい。
【0025】
好ましくは、外来性のIL-21遺伝子がTK遺伝子内に挿入され、その結果、TK遺伝子は機能欠損し得、IL-21遺伝子は腫瘍細胞の感染後に発現され得る。
【0026】
本発明に用いられ得るワクシニアウイルスはWyeth株またはWR株を包含し、WR株の例はVSC20である。
【0027】
好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスはVSC20ワクシニアウイルスを遺伝子改変することによって得られる。VSC20ワクシニアウイルスはVGF遺伝子を欠失するワクシニアウイルスであり、LacZ遺伝子がC11R部位に挿入されている。その調製方法は、科学文献:“McCart,JA,et al.Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes.Cancer Res(2001)61:8751-8757”に見いだされ得る。遺伝子改変は、外来性のIL-21遺伝子をVSC20ワクシニアウイルスのTK遺伝子内に挿入することを包含し、その結果、TK遺伝子が機能欠損する。具体的には、IL-21遺伝子をワクシニアウイルスVSC20のTK遺伝子内に挿入するためのプラスミドの図解と、組換えメカニズムによる挿入の略図とが
図1に示されている。
【0028】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムは外来性のスクリーニング遺伝子をもまたインテグレーションされ得る。外来性のスクリーニング遺伝子はgpt(グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)遺伝子および/またはLacZ遺伝子を包含するが、患者における蛍光蛋白質発現の潜在的危険性を回避するために蛍光蛋白質遺伝子を包含しない。
【0029】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノムは外来性のスクリーニング遺伝子をインテグレーションされ得ない。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれワクシニアウイルス初期/後期プロモーターp7.5によってgpt遺伝子をコントロールし、合成ワクシニアウイルス初期プロモーターpSELを用いることによって外来性のIL-21遺伝子をコントロールする。腫瘍溶解性ウイルスを構築するために、gptおよびIL-21遺伝子はインビトロ細胞内組換えテクノロジーを用いることによってワクシニアウイルスVSC20株のTK遺伝子領域内に挿入された。2つのプロモーターはそれぞれ背中合わせでそれぞれの制御される遺伝子の発現を活性化した。
【0031】
本発明は、さらに、外来性のIL-21遺伝子がTK遺伝子内に挿入されてその機能欠損を引き起こし、かつ腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのVGF遺伝子が機能欠損させられるときにのみ、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍細胞を殺傷し、体の爾後の免疫応答を引き起こし得、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによって保有される外来性のIL-21遺伝子は抗腫瘍免疫効果を直接的に誘導し得るということを見いだしている。
【0032】
好ましくは、外来性のIL-21遺伝子はマウスまたはヒトに由来する。
【0033】
本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは生物工学の分野の関連する公知の方法によって得られ得、具体的な実施形態が
図2に示されている。
【0034】
本発明は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびIL-21のそれぞれの特徴を考慮し、それらの役割を発揮するようにそれらを巧妙に組み合わせる。腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは腫瘍溶解を行使し、同時に、腫瘍細胞内で複製する機能によって、腫瘍細胞内でのIL-21の発現、それから細胞外への分泌を増大させて、さらに体の腫瘍免疫効果を誘導する。組み合わせられたそれらの効果は、より良好な治療効果を有する。
【0035】
本発明によって開発された組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスに基づいて、本発明は医薬組成物をもまた提供し、医薬組成物は、活性成分としての本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む。
【0036】
好ましくは、医薬組成物は治療有効量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む。ある種の実施形態では、医薬組成物の活性成分は、本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを1×105から5×109pfu/日(例えば、1×105から3×109pfu/日、1×105から1×108pfu/日など)の用量で含む。
【0037】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、当分野において通常用いられる投与方法、例えば腫瘍内注射または静脈内投与によって投与され得る。
【0038】
本発明の医薬組成物は、当分野において公知の他の活性成分、例えばインターロイキン-2(IL-2)、IL-15、IL-18、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、および同類をもまた含有し得、その用量及び投与経路はそれらのそれぞれの従来の様式で行われ得る。他の活性成分が包含される場合には、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは他の活性成分と混合されることなしに独立して医薬組成物中に存在するべきである。例えば、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは別個の容器に単体でパッケージングされる。
【0039】
当業者は、本発明の医薬組成物がさらに好適な薬学的に許容される添加剤を含み得るということを理解するであろう。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。医薬製剤は当分野において公知の手続きによって調製され得る。例えば、化合物および同類を包含する活性成分は、通常の添加剤、希釈剤(例えばリン酸緩衝液または食塩水)、組織培養培地、および担体(例えば自家血漿またはヒト血清アルブミン)によって製剤され、懸濁液として投与され得る。他の担体はリポソーム、ミセル、ナノカプセル、ポリマーナノ粒子、固体脂質粒子を包含し得る(例えばE.Koren and V.Torchilin,Life,63:586-595,2011 参照)。本願において開示される医薬組成物の製剤のための技術の詳細は科学および特許文献に良く記載されている。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co., Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを調製するためのベクターをもまた提供する。
【0042】
ベクターは組換えメカニズムによってワクシニアウイルスのTK遺伝子およびVGF遺伝子の機能欠損を引き起こし得る。例えば、具体的な実施形態では、
図1に示されている通り、組換え体ベクターは、TK相同断片TK-L、TK-R、ならびにIL-21遺伝子を活性化するための発現カセット、および外来性のスクリーニング遺伝子gptを包含する。ワクシニアウイルスがWR株であるときには、TK遺伝子の配列は、NCBI(すなわち、国立生物工学情報センター。URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov)のGenBankのNC_006998と付番されたワクシニアウイルス遺伝子の80724~81257bpに示されている配列であり、TK-Lの配列は例えば80724~80961bpに示されている配列断片であり得、TK-Rの配列は例えば81033~81257bpに示されている配列断片であり得る。ベクターは、IL-21遺伝子発現カセットおよびgpt遺伝子発現カセットを細胞内組換えメカニズムによってワクシニアウイルスのTK遺伝子領域内に挿入し得る(それゆえに、例えば、GenBankのNC_006998と付番されたワクシニアウイルス遺伝子の80962~81032bpに示されている配列断片が欠失させられる)。その結果、組換え体ワクシニアウイルスはTK遺伝子の機能を失う。本発明の別の態様に従うと、本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0043】
本発明の別の態様は、腫瘍および/または癌を処置するための医薬の調製における本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの使用をもまた提供する。
【0044】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の別の態様は、腫瘍および/または癌を処置するための方法をもまた提供し、腫瘍および/または癌患者に本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを投与することを含む。
【0046】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与用量は、1~6日連続投与で1日1回の治療有効量である(1日、2日、3日、4日、5または6日の連続投与を包含する)。治療有効量は好ましくは1×105から5×109pfu/日の用量である(例えば、1×105から3×109pfu/日の用量、1×105から1×108pfu/日の用量など)。
【0048】
必要な場合には、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、他の医薬、例えばインターロイキン-2(IL-2)、IL-15、IL-18、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、および同類との組み合わせでもまた用いられ得、それらの用量および投与経路はそれらのそれぞれの従来の様式で行われ得る。
【0049】
具体的な状況および必要に基づいて、本開示に従う腫瘍および/または癌の処置のための方法は患者に1回または複数回適用され得る。
【0050】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、当分野において通常用いられる投与方法、例えば腫瘍内注射または静脈内投与によって投与され得る。
【0051】
本発明は、
(A) 第1の医薬組成物が本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第1の薬学的に許容される担体中に含む、第1の医薬組成物と、
(B) 第2の医薬組成物がNK細胞を第2の薬学的に許容される担体中に含む、第2の医薬組成物と、
を含む治療薬をもまた提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1および第2の薬学的に許容される担体は同じである。他の実施形態では、第1の薬学的に許容される担体および第2の薬学的に許容される担体は異なる。
【0053】
いくつかのケースでは、治療薬は医薬の組み合わせとしてもまた理解され得る。
【0054】
腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を殺傷するメカニズムは通常は類似である。種々の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与される。腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞との接触をするときに、それらは腫瘍細胞に感染し、それらに入るであろう。腫瘍溶解性ウイルスは主に腫瘍細胞内で複製および生殖するが、正常細胞内では複製しないかまたはほとんど複製しないので、感染した腫瘍細胞内では、大量の子孫腫瘍溶解性ウイルスが産生され、腫瘍細胞の溶解および死に至り得る。腫瘍細胞が溶解するときには、大量の腫瘍抗原および子孫腫瘍溶解性ウイルスが放出され得、それから、抗原がさらにインビボの免疫系を活性化し得、インビボのNK細胞およびT細胞を刺激して残りの腫瘍細胞を攻撃し続ける。同時に、子孫腫瘍溶解性ウイルスはまだ感染していない腫瘍細胞に感染し得る。
【0055】
NK細胞は幅広いスペクトルの腫瘍細胞を殺傷し得る免疫細胞であり、NK細胞は腫瘍細胞を正常細胞から見分け得る。NK細胞が腫瘍細胞との接触をするときに、それらは腫瘍細胞を異常細胞として認識し得、多種の相乗的プロセス、例えば受容体認識、抗体による標的認識(ADCC)、ならびに腫瘍細胞を間接的に殺傷することができるグランザイム、パーフォリン、およびインターフェロンの放出を介して腫瘍細胞を殺傷するであろう。インビトロの研究は、健康なNK細胞はそのライフサイクルの間に最高で27個の腫瘍細胞を殺傷し得るということを指示している。
【0056】
NK細胞は抗ウイルス機能をもまた有する。正常細胞がウイルスによって感染される場合には、ウイルスは大量に複製し、感染した細胞は老化変性を呈し、それらの細胞膜上の蛋白質群の組成変化を示すであろう。このプロセスの間に、NK細胞は感染した細胞を敏感かつ有効に認識し、上に記載されているそれらが腫瘍細胞を殺傷するために用いる類似のアプローチによってこれらの細胞を殺傷し得、それによって正常細胞内でのウイルスの複製および増殖を阻害する。その後、抗原の刺激およびインターフェロンなどの免疫因子の効果の存在下で、他の型の免疫細胞がウイルスと戦い続けるであろう。
【0057】
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞の単体の特徴を考慮しており、それらを巧妙に組み合わせようとする。一緒に組み合わせられたときには、NK細胞の抗ウイルスメカニズムは腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞にもまた適用可能であり、抗腫瘍メカニズムを補完する。加えて、組み合わせ治療は、腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞がNK細胞の特異的標的になることを許し、これはそれらの腫瘍殺傷効果を改善し得る。腫瘍溶解性ウイルスは癌細胞内で選択的に複製するのみならず、それらを内側から殺傷するが、細胞膜上の蛋白質受容体群が変化することをもまた引き起こし、それゆえにNK細胞による癌細胞の認識を容易化し得る。その結果、NK細胞は癌細胞を外側から攻撃し得る。よって、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は癌細胞を相乗的に殺傷し、改善された効力を達成する。さらに、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは外来性のIL-21をもまた発現し、発現された外来性のIL-21はNK細胞の殺傷力を強化し得、それによってNK細胞の殺傷効果をさらに強化する。上に記載されている組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用は、腫瘍殺傷効果に対して驚くべき効果を生じ得る。
【0058】
好ましくは、第1の医薬組成物の活性成分は本発明に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであり、第2の医薬組成物の活性成分はNK細胞である。
【0059】
好ましくは、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物は互いと混合されることなしにそれぞれ独立して治療薬中に存在する。
【0060】
本発明では、NK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。好ましくは、NK細胞はインビトロ拡大から得られる自家NK細胞またはインビトロ拡大から得られる同種NK細胞である。NK細胞の大スケールインビトロ拡大培養技術は公知であり、基本的に成熟している(例えば、次の科学文献を参照:“Somanchi SS,Lee DA.Ex Vivo Expansion of Human NK Cells Using K562 Engineered to Express Membrane Bound IL21 Methods Mol Biol.2016;1441:175-93.”または“Phan MT,Lee SH,Kim SK,Cho D. Expansion of NK Cells Using Genetically Engineered K562 Feeder Cells.Methods Mol Biol.2016;1441:167-74.”)。臨床データは、自家NK細胞、半同種NK細胞(同種NK細胞に属する)、および臍帯血から調製されたNK細胞が、人体への再循環後に、毒性の副作用がなく、長期依存性がなく、安全かつ有効であるということを確認した。
【0061】
処置に用いられ得るNK細胞の純度範囲は次の通りである。自家NK細胞の純度は85%以上であり得、同種NK細胞の純度は90%以上であり得る。不純物細胞はNK-Tおよび/またはγδT細胞であり得る。好ましくは、NK細胞活性(生存率)は90%以上であり、NK細胞殺傷活性は80%以上である。
【0062】
本発明の組み合わせ処置スキームでは、本発明は、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞のそれぞれの投与用量をさらに検討および最適化し、これは極めて重要である。好ましくは、第1の医薬組成物は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを1×105~5×109pfu/日の用量で含み(例えば、1×105~3×109pfu/日の用量の組換え体腫瘍溶解性ウイルス、1×105~1×108pfu/日の用量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)、第2の医薬組成物はNK細胞を1×107~1×1010細胞/日の用量で含有する(好ましくは、第2の医薬組成物はNK細胞を1×108から5×109細胞/日の用量で含み、好ましくは、第2の医薬組成物はNK細胞を1×109から4×109細胞/日の用量でもまた含む。より好ましくは、第2の医薬組成物はNK細胞を1×109から3×109細胞/日の用量で含む)。好ましくは、治療薬の活性成分は、1×105から5×109pfu/日の用量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(例えば、1×105から3×109pfu/日の用量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、1×105から1×108pfu/日の用量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスなど)および1×107から1×1010細胞/日の用量のNK細胞(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、1×109から3×109細胞/日など)から構成される。
【0063】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、当分野において通常用いられる投与方法、例えば腫瘍内注射または静脈内投与によって投与され得る。
【0064】
NK細胞は、当分野において通常用いられる投与方法を用いて、例えば静脈内投与され得る。
【0065】
当業者は、本発明の治療薬がさらに好適な薬学的に許容される添加剤を含み得るということを了解するであろう。
【0066】
本発明の治療薬は、当分野において公知の他の活性成分、例えばインターロイキン-2(IL-2)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などをもまた含有し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の治療薬は1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。医薬製剤は当分野において公知の方法によって調製され得る。例えば、化合物などの活性成分は、通常の添加剤、希釈剤(例えばリン酸緩衝化食塩水または食塩水)、組織培養培地、および担体(例えば自家血漿またはヒト血清アルブミン)によって製剤され、懸濁液として投与され得る。他の担体はリポソーム、ミセル、ナノカプセル、ポリマーナノ粒子、固体脂質粒子を包含し得る(例えば文書“E.Koren and V.Torchilin,Life,63:586-595,2011”を参照)。本発明の治療薬を製剤する具体的な方法は科学および特許文献に見いだされ得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Company,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照。
【0068】
本発明の治療薬は、種々の腫瘍および/または癌の処置のために用いられ得、肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0069】
本開示の治療薬の適用方法は次の通りである。最初に、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18~72時間(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)後に、NK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する。「組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18~72時間(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)後に、NK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する」は、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの最初の投与との間の時間間隔が18~72時間の範囲であるか(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)、またはNK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔が18~72時間の範囲である(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)ということを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔は18~72時間の範囲である(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔は24~48時間の範囲である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは治療有効量で1日1回、連続1~6日に渡って投与され、NK細胞は1×107から1×1010細胞/日の用量で(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、1×109から3×109細胞/日の用量)、1日1回、連続1~6日に渡って投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与用量は、治療有効量、隔日、2~6日の連続投与であり、NK細胞の投与用量は、1×107から1×1010細胞/日(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、1×109から3×109細胞/日)、隔日、2~6日の連続投与である。NK細胞が組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18から72時間後に腫瘍および/または癌患者に与えられるはずである限りは、上述の実施形態のいずれか1つまたはいずれかの他の代替的な実施形態が本開示に従って採用され得る。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞は間をおいて投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第1日に投与し、NK細胞を第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第3日に投与し、NK細胞を第4日に投与するなど)、または逐次に投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第1日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第3日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第4日に投与するなど)、あるいは他の用量レジメンを用いて投与され得る(例えば、最初に、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを連続1から6日に渡って1日1回投与し、18から72時間の間隔の後に、NK細胞を連続1から6日に渡って1日1回投与する)。好ましくは、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは最初に投与され、NK細胞は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの全ての用量を投与した18から72時間後に投与される。本開示の好ましい実施形態では、最初に、腫瘍および/または癌患者は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを与えられ、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは治療有効量で1回のみ与えられる。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18から72時間後に、腫瘍および/または癌患者はNK細胞を投与され、NK細胞は1×107から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで1回のみ投与される(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、または1×109から3×109細胞/日)。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの治療有効量は好ましくは1×105から5×109pfu/日の用量である(例えば、1×105から3×109pfu/日の用量、1×105から1×108pfu/日の用量)。
【0071】
本発明は、腫瘍および/または癌を処置するための医薬の調製における本発明の治療薬の使用をもまた提供する。
【0072】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の別の態様に従うと、腫瘍および/または癌の処置のための相乗効果を備える組み合わせ医薬のキットもまた提供され、本開示に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含有する第1の容器およびNK細胞を含有する第2の容器を包含し、第1の容器は第2の容器とは別個である。さらに、キットは投与のタイミングおよび経路を定める説明書を含む。好ましくは、キットは、それぞれ本開示に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を含有する独立した容器と、投与のタイミングおよび経路を定める説明書とからなる。
【0074】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0075】
好ましくは、本発明の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含有する第1の容器は治療有効量の組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含有し、NK細胞を含有する第2の容器は1×107~1×1010細胞/日の用量を提供するために十分なNK細胞を含有する(例えば、1×108から5×109細胞/日の用量のNK細胞、1×109から4×109細胞/日の用量のNK細胞、1×109から3×109細胞/日のNK細胞など)。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの治療有効量は好ましくは1×105から5×109pfu/日の用量である(例えば、1×105から3×109pfu/日の用量、1×105から1×108pfu/日の用量)。
【0076】
好ましくは、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含有する第1の容器は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを1×105~1×108pfu/日の用量で含有し、NK細胞を含有する第2の容器はNK細胞を1×109から3×109細胞/日の用量で含有する。
【0077】
本発明では、NK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。好ましくは、NK細胞はインビトロ拡大から得られる自家NK細胞またはインビトロ拡大から得られる同種NK細胞である。
【0078】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、当分野において通常用いられるそれらのそれぞれの投与方法、例えば腫瘍内注射または静脈内投与を用いて投与され得る。
【0079】
NK細胞は、当分野において通常用いられる投与方法を用いて、例えば静脈内投与され得る。
【0080】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0081】
本開示の別の態様は腫瘍および/または癌の処置のための方法をもまた提供し、逐次の様式で次のステップを含む。
1) 本開示に従う組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与すること、
2) 組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18~72時間(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)後に、本開示に従うNK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与すること。
【0082】
「組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18~72時間(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)後に、本開示に従うNK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する」は、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの最初の投与との間の時間間隔が18~72時間の範囲であるか(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)、またはNK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔が18~72時間の範囲である(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)ということを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔は18~72時間の範囲である(例えば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの直近の投与との間の時間間隔は24~48時間の範囲である。
【0083】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0084】
腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍または癌細胞内で選択的に複製し、一定時間後にピークに達し得る。本発明の発明者は、一定時間の複製後に、腫瘍細胞内の腫瘍溶解性ウイルスがNK細胞による腫瘍細胞の殺傷を促進し得ることを見いだした。よって、本発明によって提案される組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の投与順序および間隔は、2つの効果のピークのダブルピークオーバーラップを達成する。
【0085】
本発明は、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞のそれぞれの投与用量をさらに検討および最適化し、上述の投与順序および間隔によるそれらの連携が極めて重要であり、これは組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの抗腫瘍効力、NK細胞の抗腫瘍効力、および腫瘍細胞に対する上の2つの最も良好な相乗的な殺傷を決定する。
【0086】
本開示の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは治療有効量で1日1回、連続1~6日に渡って与えられ、NK細胞は1×107から1×1010細胞/日の範囲の用量レベルで(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、または1×109から3×109細胞/日)、1日1回、連続1~6日に渡って与えられる。本開示の別の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは治療有効量で、隔日で連続2から6日に渡って与えられ、NK細胞は1×107から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、または1×109から3×109細胞/日)、隔日で連続2から6日に渡って与えられる。NK細胞が組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18から72時間後に腫瘍および/または癌患者に与えられるはずである限りは、上述の実施形態のいずれか1つまたはいずれかの他の代替的な実施形態が本開示に従って採用され得る。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞は間をおいて投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第1日に投与し、NK細胞を第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第3日に投与し、NK細胞を第4日に投与するなど)、または逐次に投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを第1日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第3日に投与し、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第4日に投与するなど)、あるいは他の用量レジメンを用いて投与され得る(例えば、最初に、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを連続1から6日に渡って1日1回投与し、18から72時間の間隔の後に、NK細胞を連続1から6日に渡って1日1回投与する)。好ましくは、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは最初に投与され、NK細胞は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの全ての用量を投与した18から72時間後に投与される。本開示の好ましい実施形態では、最初に、腫瘍および/または癌患者は組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを与えられ、組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは治療有効量で1回のみ与えられる。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与の18から72時間後に、腫瘍および/または癌患者はNK細胞を与えられ、NK細胞は1×107から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで1回のみ投与される(例えば、1×108から5×109細胞/日、1×109から4×109細胞/日、または1×109から3×109細胞/日)。組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの治療有効量は好ましくは1×105から5×109pfu/日である(例えば、1×105から3×109pfu/日の用量、1×105から1×108pfu/日の用量など)。
【0087】
具体的な状況および必要に基づいて、本開示に従う腫瘍および/または癌の処置のための方法は患者に1回または複数回適用され得る。
【0088】
本発明では、NK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。好ましくは、NK細胞はインビトロ拡大から得られる自家NK細胞またはインビトロ拡大から得られる同種NK細胞である。
【0089】
腫瘍および/または癌は肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、精巣癌などを包含する。
【0090】
組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、当分野において通常用いられる投与方法、例えば腫瘍内注射または静脈内投与によって投与され得る。
【0091】
NK細胞は、当分野において通常用いられる投与方法を用いて、例えば静脈内投与され得る。
【0092】
本願の以降においては、本開示は例によってさらに説明または記載されるが、これらの例は本開示の保護の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例】
【0093】
別様に定められていない限り、次の例に用いられる実験法は生物工学の分野の従来の実験手続き、操作、材料、および条件を用いて行う。
【0094】
別様に定められていない限り、それぞれの試薬の全てのパーセンテージ濃度(%)は体積によるパーセンテージ(%(v/v))を指示する。
【0095】
次の例に用いた材料は次の通りである。
【0096】
1. CV1細胞およびHu-143B細胞は武漢大学の中国典型培養物保蔵センターに由来する。
【0097】
2. 腫瘍細胞
杭州市第一人民医院に由来するFaDuヒト頭頸部癌細胞を例外として、残りの腫瘍細胞は中国典型培養物保蔵センターおよびATCCに由来する。細胞はマッコイ5A+10%FBSおよびMEM+10%FBSの正常な環境において培養した。マッコイ5AおよびMEMはGIBCOから購入した。ウシ胎児血清FBSはSIGMAから購入した。
【0098】
3. NK細胞
実験に用いたNK細胞の起源は次の通りである。
各例に用いたNK細胞は杭州康万達医薬科技有限公司によって培養および凍結保存されたヒトNK細胞であった。ヒトNK細胞は次のプロセスによって調製した。当分野の通常用いられる技術として、採血針を尺骨静脈に挿入して、免疫細胞PBMCの抽出のために健康人の末梢静脈血を採集した。放射線照射済みK562フィーダー細胞(杭州鼎云生物技術有限公司から購入)を用いて、自家血漿培養によってNK細胞を拡大し、NK細胞は最高で90%の最終純度、最高で90%の生存可能性、および最高で85%のインビトロ腫瘍細胞殺傷率を有した。
【0099】
4. コントロールウイルス
コントロールウイルスとしての腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPは公知であり、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスWR株に属する(例えば“X Song,et al.T-cell Engager-armed Oncolytic Vaccinia Virus Significantly Enhances Antitumor TherapyMolecular Therapy.(2014);22 1,102-111”を参照)。腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPはTK遺伝子およびVGF遺伝子両方を機能欠損し、外来性の赤色蛍光蛋白質(RFP)遺伝子を保有する。RFP遺伝子はスクリーニング/レポーターの役割のみを発揮するので、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPの抗腫瘍機能はTK遺伝子およびVGF遺伝子を機能欠損する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと実質的に同等である。腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPは当分野の従来技術を用いるVSC20ワクシニアウイルスの遺伝子改変によってもまた得られ得る。VSC20ワクシニアウイルスはVGF遺伝子を欠失するワクシニアウイルスである。VSC20ワクシニアウイルスの調製方法は、“McCart,JA,et al.Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes.Cancer Res(2001)61: 8751-8757”を参照。遺伝子改変は、外来性のDsRed遺伝子(すなわちRFP遺伝子)を制御するための人工の合成ワクシニアウイルス初期/後期プロモーターpSELの使用と、インビトロ細胞内組換え技術を用いるワクシニアウイルスVSC20株のTK遺伝子領域内へのDsRed遺伝子の挿入とを包含し、それによって腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPを構築する。その産生および精製は下に記載される調製例2に従って行われ得る。
【0100】
5. C57BL/6マウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から購入した。重度免疫不全NCGマウスは浙江省動物センターから得た。
【0101】
6. 培養プレート
6ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり2ml培養体積)、24ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり500μl培養体積)、96ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり200μl培養体積)は全てコーニング社から入手可能である。
【0102】
7. gptスクリーニングドラッグの調製方法:0.1MのNaOHを用いて、それぞれ10mg/mlのミコフェノール酸(400×)、10mg/mlの40×キサンチン(40×)、10mg/mlのヒポキサンチン(670×)を調製し、暗所で-20℃に保存する。用いるときに1×ワーキング溶液を調製する:25μlミコフェノール酸+250μlキサンチン+15μlヒポキサンチンを10mlのDMEMに追加する。
【0103】
8. PBS調合:8mMのNa2HPO4、136mMのNaCl、2mMのKH2PO4、2.6mMのKCl、pH7.2~7.4。
【0104】
9. STE緩衝液調合:10mMのTris-Cl、0.1MのNaCl、1mMのEDTA、pH8.0。
【0105】
10. 次の例に用いた細胞計数方法は次の通りである。
MTTアッセイ:10μlのMTT溶液(5mg/ml)を各ウェルの細胞に追加し、それから細胞をインキュベータ内で、37℃で4時間に渡ってインキュベーションし、培養培地を吸って捨て、150μlのDMSOを各ウェルに追加し、それからシェーカー上で低速で10分に渡って振盪し、結晶物が充分に溶解することを許し、マイクロプレートリーダーを用いて490nmの吸光度値(OD490)を測定した。阻害率の計算式:細胞増殖阻害率(IR%)=1-(OD490試験産物-OD490ブランク)/(OD490負のコントロール-OD490ブランク)×100%。
トリパンブルー染色法を用いる細胞計数:細胞をPBSによって洗浄し、トリプシンを用いて消化し、それから細胞をPBSに懸濁した。懸濁液に、0.04%(w/v)の終濃度でトリパンブルー溶液を追加した。それから、細胞計数を顕微鏡下で行った。これの間に、死細胞は青く染色され、生細胞はいずれかの色なしで透明に見えた。生細胞数を最終的なデータとして用いた。
【0106】
次の例に用いた略語を下に説明する。
FBS:ウシ胎児血清
PSG:ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン
PBMC:末梢血単核細胞
RFP:赤色蛍光蛋白質
TIL:腫瘍浸潤リンパ球
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0107】
調製例1:DDvv-IL21腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの構築
次のプロセスは
図2に見られ得る。
【0108】
(1) プラスミド構築
それぞれヒトIL-21およびネズミIL-21遺伝子を保有するように、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの2つの株を構築した。これらはそれぞれDDvv-hIL21およびDDvv-mIL21と呼ぶ。
1) NCBI遺伝子ライブラリー配列NM_001291041およびNM_021803に従って、トータルで2つのマウスIL21のDNA断片(mIL-21)およびヒトIL21のDNA断片(hIL-21)を遺伝子合成法によって合成した。具体的には、mIL-21は正常配列を有するマウス由来IL21断片(すなわち、Genbank番号NM_001291041のヌクレオチド配列の72~560bp断片)を含有する。その配列(配列番号1)を下に示す。
【0109】
【0110】
AGATCTはBglII認識配列であり、ACTAGTはSpeI認識配列である。
【0111】
hIL-21は正常配列を有するヒトIL21断片(すなわち、Genbank番号NM_021803のヌクレオチド配列の47~535bp断片)を含有する。その配列(配列番号2)は次の通りである。
【0112】
【0113】
AGATCTはBglII認識配列であり、ACTAGTはSpeI認識配列である。
【0114】
BglIIエンドヌクレアーゼおよびSpeIエンドヌクレアーゼを用いて切断を行い、IL21遺伝子をpCBプラスミド内に挿入した(起源は文献“Yourong FANG et al,Construction of Recombinant Vaccinia Virus Vector with Zeocin and GFP Double Screening labels “International Journal of Epidemiology and Infectious Disease”,2012.39(3):148-152.”に見られ得る)。大腸菌DH5αを用いて、プラスミドpCB-mIL21およびpCB-hIL21を形質転換および抽出した(
図3)。
【0115】
2) T7ユニバーサルプライマーシーケンシングを用いてプラスミドpCB-mIL21およびpCB-hIL21を検出測定し、配列が正しいことを確認した。
【0116】
3) TIANprepラピッドミニプラスミドキット(TIANGEN、DP105-03)を中量プラスミドDNA抽出に用いた。
【0117】
(2) 組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのパッケージングおよび鑑定
1) 良好な成長状態のCV1細胞を選択し、6ウェルプレートに約4×105細胞/ウェルで広げ、次の日の細胞密度が80%~90%に達するようにさせた。
【0118】
2) 6ウェルプレートの培地を捨て、9×103pfuのDvv-VSC20ウイルスを含有する1mlの血清不含かつ抗生物質不含のDMEM培地(ウイルスの起源は、“McCart,JA,et al.Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes. Cancer Res(2001)61:8751-8757.”を参照)を、濃度が0.03pfu/細胞に達するように2つのウェルのそれぞれに追加し、上下左右に均一混合し、2時間に渡って37℃で培養し、20分毎に均一混合した。同時に、ウイルス溶液を追加することなしのコントロールウェルを設けた。
【0119】
3) プラスミド/Lipo2000(Lipofectamine(登録商標)2000トランスフェクション試薬、ライフテクノロジーズ、11668-019)混合溶液を調製する。溶液A-5μgのプラスミドを吸い取り、それを300μlのOpti-MEMI(Gibco、1802679)に追加して均一混合し、室温で5分に渡ってインキュベーションする。溶液B-12μlのLipo2000を吸い取り、300μlのOpti-MEMIに追加して均一混合し、室温で5分に渡ってインキュベーションする。製剤された溶液Aおよび溶液Bを混合し、穏やかに均一混合し、室温で15分に渡ってインキュベーションして、プラスミド/Lipo2000混合物を得る。300μlのプラスミド/Lipo2000混合溶液を感染したウェルの1つに追加し、トランスフェクションプラスミドのみによるコントロールウェルを設ける。37℃で4時間に渡ってインキュベーションする。10%FBS+1%PSGを含有する2mlのDMEM培地を各ウェルに補充する。
【0120】
4) 24時間後に、古い培地を捨て、それを5%FBS+1%PSGを含有するDMEM培地に交換し、培養を約48時間続ける。顕微鏡下で細胞の完全な変性を観察した後に、上清および細胞を採集し、3分間に渡って繰り返し凍結融解してウイルスを放出する。
【0121】
5) 200μlのウイルス溶液を取り出し、TIANampウイルスDNA/RNAキット(TIANGEN、DP315)を用いてウイルスゲノムを抽出し、PCR法を用いて、挿入されたIL-21遺伝子がバックボーンウイルス内にインテグレーションされたかどうかを検出測定する。同時に、50μlのウイルス溶液を取り、遠心し、上清をELISA試験用に取って(マウスIL-21DuoSet-ELISA、R&D、DY594-05;ヒトIL-21Uncoated-ELISA、インビトロジェン、88-8218)、組換え体ワクシニアウイルスがIL-21蛋白質を発現したかどうかをさらに決定する。残りのウイルス溶液は-80℃で保存し、P0と標識した。PCR鑑定に用いたプライマー配列を表1に示す。陽性のウイルスのPCR検出測定によって得られた鑑定バンドのサイズを表2に示す。
【0122】
【0123】
【0124】
PCR結果は、IL-21遺伝子配列がウイルスのTK領域内にインテグレーションされているということを示した。つまり、ウイルスは首尾よく組換えられた(
図4A~B)。ELISA結果は、IL21を含有する組換え体ウイルス上清(図では「DDvv-mIL-21」として示す)がIL-21蛋白質発現を示し、残りの細胞(図では「NC」として示す)、トランスフェクションプラスミド(pCB-mIL21)、およびVSC20コントロールはIL-21発現を示さない(
図4C)ということを示した。
【0125】
(3) 組換え体腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのスクリーニング
1) CV1細胞を60mmペトリ皿で培養した。80%コンフルに達したときに、1mlのウイルス希釈液を追加し、これは150μlのP0ウイルスを含有した。2時間の感染後に、3mlの1×gpt含有スクリーニング試薬を追加し、スクリーニングを行った。細胞変性を観察し、ウイルスを採集し、P1ウイルスと標識する。ウイルスゲノム抽出キットを用いてPCR検証のためにウイルス遺伝子を抽出した。
【0126】
2) ステップ1)を2回繰り返して、P3ウイルスを得る。これをPCR法によって検証する。
【0127】
3) 密度が80%に達するまで、CV1細胞を10cm皿で培養した。培地を捨て、3mlの段階希釈したP3ウイルスを追加し、2時間に渡って感染させ、培養培地を除去し、0.8×gptスクリーニング試薬を含有する8mlの1%(w/v)アガロースゲルを追加し(V5%アガロースゲル:V1×gptワーキング溶液=1:4)、37℃で48時間に渡って培養し、シングルプラークを300μlの無菌PBSに拾い、繰り返し3回凍結融解してウイルスを放出する。150μlのウイルス溶液を各プラークから取り、24ウェルプレートでCV1細胞を用いて小スケールの拡大を行った。ウイルスの完全な変性を約48時間待った後に、ウイルスを採集し、200μlのウイルス溶液を用いてゲノムを抽出し、これをPCR法による検証に用いた。残りのウイルス溶液はP4と標識し、-80℃で保存した。
【0128】
4) ステップ3)を2~3回繰り返す。PCR法は、組換え体ウイルスがバックボーンウイルスVSC20を含有しないということを確認した。ELISAおよびウエスタンブロット法(一次抗体:ウサギ抗マウスIL21、PeproTech社、#500-P278;ウサギ抗IL21抗体、abcam、ab5978;二次抗体:ヤギ抗Rb、Abcam、ab97051)を用いて、IL21蛋白質の発現を確認した。
【0129】
結果は、上のステップ4)から得られたウイルスがPCR鑑定によるP1/P2のPCR結果ではバンドを示さないということを示し、組換え体ウイルスが外来性の標的遺伝子IL-21を保有する純粋なウイルスであり、そのバックボーンバックグラウンドウイルスVSC20を含有しないということを指示した(
図5A~D)。ウエスタンブロット結果は、DDvv-IL21ウイルスがIL-21蛋白質を有効に発現し得、正しいサイズであることをもまた示した(
図5E、G)。ELISA結果は、IL-21蛋白質が組換え体ウイルスDDvv-IL21においては細胞培養上清および細胞ライセート(図では「細胞」として示されている)中に検出測定され得るということを示した。これはさらに分泌蛋白質としてのIL-21蛋白質の特徴を反映している(
図5F、H)。
【0130】
調製例2:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生および精製
(1) 産生および精製
1) DDvv-mIL21のP5-1サンプルおよびDDvv-hIL21のP4-3サンプルの大量増幅50枚の150mmペトリ皿を用いて、Hu-143B細胞が約80%まで成長したときに、およそ2×104PFUの50μLの小スケール増幅したウイルスを各ペトリ皿に追加して細胞を感染させ、37℃かつ5%CO2で培養する。約2から3日の後に、細胞は顕微鏡下で丸く数珠状になることが観察され、いくつかの細胞はペトリ皿から剥離した。培養溶液/細胞を、セルスクレーパーを用いて採集し、-80℃冷凍庫に保存した。
【0131】
2) 液体窒素およびオートクレーブ滅菌水を用いて、採集されたウイルス溶液を繰り返し3回凍結融解し、2000rpmで3分に渡って遠心し、上清を採集する。
【0132】
3) 採集された上清を12,000rpmで10分に渡って遠心し、上清を捨て、ペレットを5mLのPBSに再懸濁し、12,000rpmで10minに渡って遠心し、上清を捨て、ペレットを4mLの30%(w/v)ショ糖に再懸濁する。
【0133】
4) ショ糖勾配の調製:60%(w/v)、50%(w/v)、40%(w/v)ショ糖溶液を超遠心チューブの底から最も上へ順にそれぞれ2mL追加し、最も上の層に4mLの30%(w/v)ショ糖に再懸濁したウイルス溶液を追加した。
【0134】
5) ショ糖勾配を重層した後、20分の39,000g超遠心後に、ウイルスは50%(w/v)ショ糖層に分布した乳白色のバンドとして観察され得る。ウイルスバンドを1mLの平らに切った/大口のチップによって吸い取り、新たな遠心管の中に置いた(吸い取ったウイルスバンドの体積をV1として記録した)。
【0135】
6) ウイルスをV1体積の2倍のSTE緩衝液によって洗浄して残余のショ糖を除去し、35,000×gで1時間に渡って遠心し、上清を捨て、ペレットをキープする。
【0136】
7) ペレットをV1体積のSTEに再懸濁し、35,000×gで30分に渡って遠心し、ペレットをキープし、この操作を2回繰り返し、それからPBSによって3回洗浄する。
【0137】
8) 最後に、予冷したPBSにペレットを再懸濁し、均一混合し、それを無菌EPチューブに小分けし、-80℃に保存し、1つのチューブはウイルス力価検出測定のために4℃に取り置く。
【0138】
(2) ウイルス力価検出測定
1) 2つの6ウェルペトリ皿を用い、ウェルあたり約4×105個のHuTK-143B細胞を接種し、37℃の5%CO2インキュベータ内で一晩インキュベーションし、次の日の細胞量が80%~90%に接近するようにさせる。
【0139】
2) 試験されるべき200μlのウイルスを1800μlの血清不含DMEMによって10倍段階希釈し、希釈が10-4~10-8の範囲であるようにさせる。
【0140】
3) 6ウェルプレートの細胞培養溶液を吸い取り、0.5mlの希釈ウイルス溶液を追加し、各ウェルの希釈をマークし、同時に2つのブランクコントロールウェルを設け、それらを37℃で2時間に渡って感染させる。6ウェルプレートを20分毎に1回振盪して、ウェル内の一様な濡れを保証し、局所的乾燥を回避する。
【0141】
4) 5%FBSを含有する2mlのDMEMを各ウェルに追加し、37℃で48時間に渡ってインキュベーションする。
【0142】
5) 培養溶液を吸い取り、0.5mlの0.1%クリスタルバイオレット染色溶液を各ウェルに追加し、室温で10分に渡って染色し、染色溶液を除去し、PBSによって3回洗浄し、プレートをひっくり返して風乾し、撮影する。
【0143】
6) 各ウェルのウイルスプラーク数を計数する。ウイルス力価=平均のウイルスプラーク数/(ウイルス希釈度×追加したウイルスの体積)。
【0144】
例えば、10-5希釈ウェルに30個のウイルスプラークがある場合には、ウイルス力価は30/(10-5×0.5)=6×106pfu/mlである。
【0145】
増幅/精製後の各バッチのDDvv-mIL21ウイルスおよびDDvv-hIL21ウイルスの力価は2×108から4×108PFU/mlであった。
【0146】
例1:異なるマウス腫瘍細胞に対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの殺傷効果
B16細胞(マウス黒色腫細胞)、GL261細胞(マウスグリオーマ細胞)、LLC細胞(マウスルイス肺癌細胞)、CT-26細胞(マウス結腸癌細胞)、4T-1細胞(マウス乳癌細胞)を包含するマウス腫瘍細胞を、96ウェルプレートにウェルあたり5000細胞で広げ、一晩培養して壁に接着するようにさせた。細胞を上の方法によって調製された1MOIのDDvv-mIL21ウイルスに感染させ、腫瘍細胞のアポトーシスを、24時間、48時間、および60時間後に(LLC細胞、GL261細胞)、または24時間、48時間、および72時間後に(B16細胞、CT-26細胞、4T-1細胞)、MTTによって検出測定した(n=3。2~3回の繰り返し実験)。この試験のコントロール群は負のコントロール群(ウイルス感染なし)、組換え体マウス由来IL-21蛋白質(rmIL-21。R&Dシステムズから購入)、および正のコントロール群(1μMパクリタキセル。北京双鷺薬業から購入)であり、各実験群およびコントロール群について3つのデュプリケートウェルを設け、細胞殺傷率は負のコントロール群に対する実験群の比%であった。結果は、DDvv-mIL21ウイルスの殺傷率が60時間または72時間後に種々の腫瘍細胞に対して60%よりも多くを達成するということを示した。それらの中でも、CT-26および4T1細胞に対するDDvv-mIL21ウイルスの殺傷率は24時間の感染後に70%に達した(
図6参照)。
【0147】
例2:異なるネズミ腫瘍細胞に対する、ネズミIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの殺傷効果のIC
50
B16細胞、CT26細胞、4T1細胞、LLC細胞、およびGL261細胞を96ウェルプレートにウェルあたり5000細胞で広げた。これらを、上の方法によって調製した0.002MOI、0.02MOI、0.2MOI、1MOI、2MOIのDDvv-mIL21ウイルスを用いて72時間に渡って感染させ、それから細胞を細胞殺傷についてMTT試薬を用いて試験し、異なる腫瘍細胞に対するDDvv-mIL21組換え体ワクシニアウイルスの殺傷効果の半数致死用量(IC
50値)を計算した(n=3。1回の実験)。結果は、B16細胞、CT26細胞、4T1細胞、LLC細胞、およびGL261細胞に対する組換え体ワクシニアウイルスのIC
50がそれぞれ0.232MOI、0.216MOI、0.07MOI、0.304MOI、および0.227MOIであるということを示した(
図7参照)。異なる腫瘍細胞に対する本発明の組換え体ワクシニアウイルスDDvv-mIL21のIC
50値は低く(0.3MOIよりも小さいかまたはおよそ等しい)、それは医薬利用の良好な見込みを有するということが分かる。
【0148】
例3:異なるヒト腫瘍細胞に対するヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスの殺傷効果
A549(ヒト非小細胞肺癌細胞)、SKOV3(ヒト卵巣腺癌細胞)、Hela(ヒト子宮頚癌細胞)、U251(ヒト神経膠細胞腫細胞)を96ウェルプレートにウェルあたり5000細胞で広げ、一晩の培養および壁への接着後に、細胞を上の方法によって調製された1MOIのDDvv-hIL21ウイルスに感染させた。24時間、48時間、および72時間後に、MTTアッセイを用いて腫瘍細胞アポトーシスを検出測定した(n=3。3回の繰り返し実験)。この試験のコントロール群は、負のコントロール群(ウイルス感染なし)、組換え体ヒト由来IL-21蛋白質(rhIL-21。R&Dシステムズから購入)、および正のコントロール群(1μMパクリタキセル)であった。各実験群および各コントロール群について3つのデュプリケートウェルを設け、細胞殺傷率は負のコントロール群に対する実験群の比%値であった。結果は、Hela、A549、SKVO3、U251細胞に対する組換え体ウイルスの殺傷効果が時間依存的であり、経時的に強化されるということを示した(
図8参照)。加えて、結果は、DDvv-hIL21ウイルスが各腫瘍細胞に対して48時間後には60%よりも多くの殺傷率を、72時間後には70%よりも多くの殺傷率を有するということをもまた示した。
【0149】
例4:異なるヒト腫瘍細胞に対するヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスの殺傷効果のIC
50
A549、HepG2(ヒト肝臓癌細胞)、Hela、HT29(ヒト結腸直腸癌細胞)、SKOV3(ヒト卵巣腺癌細胞)、PANC1(ヒト膵臓癌細胞)、SKHEP-1(ヒト肝臓癌細胞)、FaDu(ヒト咽頭扁平上皮癌細胞)を96ウェルプレートにウェルあたり5000細胞で広げた。細胞を、3倍段階希釈のMOIの上の方法によって調製されたDDvv-hIL21ウイルスに感染させ、その結果、DDvv-hIL21ウイルスのMOI濃度は0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10であった。感染の48時間後に、MTT試薬を用いて細胞殺傷を検出測定し、異なる腫瘍細胞に対するウイルスの殺傷のIC
50値を計算した(n=3。1回の実験)。この研究の処置群およびコントロール群のそれぞれについては3つのデュプリケートウェルを設けた。結果は、種々の腫瘍細胞に対する組換え体ワクシニアウイルスの殺傷のIC
50値が0.05および0.4MOIの間であり、これらは全て相対的に低いことを示した(
図9参照)。本発明の組換え体ワクシニアウイルスDDvv-hIL21は医薬利用の良好な見込みを有することが分かる。
【0150】
例5:B16腫瘍マウスに対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの抗腫瘍効果
腫瘍を持つ免疫健康マウスの構築:対数増殖期のB16細胞を用い、各C57BL/6マウス(北京維通力華実験動物センター)の後ろ足背側に200,000細胞を皮下接種して、腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が約100~200mm
3と測定されたときに、投与を開始した。マウスを、それぞれ上の方法によって調製された5×10
6pfu(低用量)、1×10
7pfu(高用量)のDDvv-mIL21を含有する100μlのPBSおよびPBSの腫瘍内投与によって、群あたり3匹のマウスで処置した。マウスの腫瘍サイズおよび体重を3日毎に測定した。結果は、組換え体ウイルスDDvv-mIL21が腫瘍成長を有効に阻害し得、用量依存的であるということを示した(
図10A)。投与後の第9日には、各投与群のT/C(腫瘍抑制有効性。つまり、コントロール群の腫瘍サイズに対する投与群の腫瘍サイズのパーセンテージ比。これは値が<40%であるときに有効である)は40%よりも小さかった(
図10B)。マウスを第12日に屠殺し、腫瘍を除去して腫瘍重量を検出測定した。これもまた類似の結果を示した(
図10C)。
【0151】
例6:B16腫瘍マウスに対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの抗腫瘍免疫活性化効果
対数増殖期のB16細胞を用いた。各C57/Bl6マウスの後ろ足背側に200,000細胞を皮下接種した。腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が約100~200mm
3と測定されたときに、投与を開始した。マウスを、それぞれ5×10
6pfu(低用量)、1×10
7pfu(高用量)の上の方法によって調製されたDDvv-mIL21を含有する100μlのPBSおよびPBSの腫瘍内投与によって、群あたり3匹のマウスで処置した。マウスを2週後に屠殺して脾臓および腫瘍組織を採集し、脾臓のPBMCおよび腫瘍組織の腫瘍細胞を抽出し、CD8
+T細胞(CD3
+CD8
+)(抗体:抗マウスCD3、抗マウスCD8a、eBioscience)およびCD4
+T細胞(CD3
+CD4
+)(抗体:抗マウスCD4、eBioscience)を、フローサイトメトリーを用いて検出測定した。結果は、組換え体ウイルスDDvv-mIL21を与えられたマウスの脾臓PBMC中のCD8
+T細胞およびCD4
+T細胞の割合がPBS群と比較して有意に増大するということを示した(
図11A~B)。同時に、腫瘍組織の免疫細胞浸潤の分析は、DDvv-mIL2高用量群のCD8
+T細胞およびCD4
+T細胞(TIL)の割合がPBS群に対して相対的に増大するということを明らかにした(
図11C~D)。
【0152】
例7:LLC腫瘍マウスに対するネズミIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの抗腫瘍効果
対数増殖期のLLC細胞を用い、各C57BL/6マウスの後ろ足背側に100万細胞を皮下接種して、腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が大体100~200mm
3であるときに、投与を開始した。マウスを、それぞれ1×10
6pfu(低用量)、1×10
7pfu(高用量)の上の方法によって調製されたDDvv-mIL21を含有する100μlのPBSまたはコントロール群としての100μlのPBSの腫瘍内投与によって、群あたり5匹のマウスで処置した。各群の腫瘍サイズおよび体重を3日毎に測定した。結果は、組換え体ウイルスDDvv-mIL21がLLC腫瘍の成長を用量依存的な様式で有効に阻害し得るということを示した(
図12A)。投与後の第9日に、高用量投与群のT/Cは40%よりも小さかった(
図12B)。
【0153】
例8:ヒト腫瘍細胞SK-HEP-1に対する、ヒトIL-21断片を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組み合わせの殺傷効果
SK-HEP-1細胞を24ウェル培養プレートに30%コンフルエントで播種し、37℃かつ5%CO2で24時間に渡ってMEM+10%FBS環境においてインキュベーションした。MOI=0.15の上の方法によって調製されたDDvv-hIL21ウイルスをDMEM血清不含環境において追加した。6時間に渡って感染させた後で、MEM+10%FBSを培地交換のために追加し、37℃かつ5%CO2で24時間に渡って培養した。それから、新しいMEM+10%FBSを培地交換のために追加し、NK細胞を追加し(エフェクター対標的細胞比NK:SK-HEP-1=5:1)、48時間に渡ってインキュベーションし続け、死細胞および破片を洗い落とした。残りのSK-HEP-1生細胞をトリパンブルー染色によって計数した。実験群はDDvv-hIL21+NK群であった。実験では、SK-HEP-1細胞の1つの群はウイルスおよびNKを追加せず、ブランク群とした。1つの群はDDvv-hIL21ウイルスを対応する時点で追加したが、ただしNKは追加せず、DDvv-hIL21ウイルス群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加したが、DDvv-hIL21ウイルスは追加せず、NK群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加し、同時にヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で追加したが、DDvv-hIL21ウイルスは追加せず、NK+IL21群とした。1つの群はウイルスおよびNKは追加しなかったが、ヒトIL21組換え体蛋白質は50ng/mlの終濃度で対応する時点で追加し、ブランク+IL21群とした。各群の実験は3回以上繰り返し、平均値を取って統計分析をした。
【0154】
結果を
図13に示す(横軸は異なる群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)。DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)はSK-HEP-1に対する有意な相乗的な殺傷効果を示した。相乗的な阻害率は約87%である。この実験では、DDvv-hIL21ウイルス単独の阻害率はおよそ47%であり、NK細胞単独の阻害率はおよそ11%であり、NK+IL21群の阻害率はおよそ22%であり、ブランク+IL21群の阻害率は約1%であった。ブランク群の阻害率は約0であった(
図13には示されていない)。
【0155】
結果は、DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)が、SK-HEP-1細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約87%であるということを示した。
【0156】
例9:B16腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスに対する、ネズミIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの抗腫瘍効果
腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスの構築:対数増殖期のB16細胞を用い、各C57BL/6マウスの後ろ足背側に200,000細胞を皮下接種して、腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が大体80~150mm
3と測定されたときに、実験の終わりまでの毎日30mg/kgのシクロスポリンの腹腔内注射を開始した。次の日に(すなわち、接種の10日後に)、マウスを、それぞれ1×10
5pfu(低用量)、1×10
6pfu(中用量)、1×10
7pfu(高用量)の上の方法によって調製されたDDvv-mIL21を含有する100μlのPBSおよび100μlのPBSの腫瘍内投与によって、群あたり5匹で処置した。腫瘍サイズおよび体重を3日毎に測定した。結果は、組換え体ウイルスDDvv-mIL21が腫瘍成長を有効に阻害し得、用量依存的であることを示した(
図14A)。投与後の第9日(すなわち、接種後の第19日)には、中用量群および高用量群のT/C(有効腫瘍阻害率。つまり、コントロール群の腫瘍サイズに対する投与群の腫瘍サイズのパーセンテージ。これは、40%よりも低いときに、医薬が有効であるということを指示する)は40%よりも小さかった(
図14B)。
【0157】
例10:B16腫瘍を持つ薬剤性免疫低下マウスに対するマウスIL-21断片を保有するDDvv-mIL21ワクシニアウイルスおよびコントロールワクシニアウイルスの抗腫瘍効果の比較
対数増殖期のB16細胞を用いた。各C57BL/6マウスの後ろ足背側に200,000細胞を皮下接種した。腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が大体80~150mm
3と測定されたときに、実験の終わりまでの毎日30mg/kgのシクロスポリンの腹腔内注射を開始した。次の日に、マウスを、それぞれ1×10
6pfuの上の方法によって調製されたDDvv-mIL21、1×10
6pfuのDDvv-RFPを含有する100μlのPBS、および100μlのPBSの腫瘍内投与によって、群あたり3匹で処置した。各群の腫瘍サイズおよび体重を3日毎に測定した。結果は、DDvv-RFPと比較して、DDvv-mIL21が腫瘍成長を有効に阻害し得るということを示した(
図15A)。投与後の第6日から、DDvv-mIL21群のT/Cは全て40%よりも小さかった(
図15B)。実験後に、マウスを屠殺し、腫瘍組織を採集および秤量した。DDvv-mIL21群の腫瘍重量は有意に縮減された(
図15C)。同時に、腫瘍組織のTIL(CD8
+T細胞(CD3
+CD8
+)(抗体:抗マウスCD3、抗マウスCD8a、eBioscience)およびCD4
+T細胞(CD3
+CD4
+)(抗体:抗マウスCD3、抗マウスCD4、eBioscience)を包含する)およびNK細胞(CD3
-NK1.1
+)(抗体:抗マウスNK1.1、eBioscience)の含量を、フローサイトメトリーによって検出測定した。結果は、DDvv-RFPおよびDDvv-mIL21の投与が腫瘍組織のTIL含量を有意に改善し得るということを示した。DDvv-RFP群と比較して、腫瘍TIL中のCD4
+T細胞がDDvv-mIL21群では有意に増大しているということが示された(
図16A~C)。
【0158】
例11:HCT116腫瘍を持つ重度免疫不全マウスに対する、ヒトIL-21を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの抗腫瘍効果の比較
重度免疫不全NCGマウス(浙江省動物センターから得た)を用いて、マウスの後ろ足背側に500万個のHCT116細胞を皮下接種した。腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が約80~150mm
3と測定されたときに(接種後の約第7日に)、マウスを、それぞれ5×10
6pfuのDDvv-hIL21ウイルス、5×10
6pfuのコントロールワクシニアウイルスを含有する100μlのPBS、および100μlのPBSの腫瘍内投与によって、群あたり5匹のマウスで処置した。次の日から、各マウスの尾静脈に5×10
7個のNK細胞/日を投与し、投与を3日に渡って続け、3日に渡って止め、これを1サイクルとした。トータルで3サイクルのNK細胞を投与した。腫瘍サイズおよび体重をウイルス投与の始まりから2~5日毎に測定した。結果は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDvv-RFPおよびDDvv-hIL21両方が腫瘍成長を有効に阻害し得、DDvv-hIL21がDDvv-RFPよりも良好な腫瘍抑制効果を示すということを示した(
図17A)。DDvv-RFPおよびDDvv-hIL21群の両方は投与の12日後から40%よりも小さいT/Cを有した(
図17B)。実験後に、マウスを屠殺し、腫瘍組織を採集した。定量PCRによって、腫瘍組織のワクシニアウイルスのA46R遺伝子の発現レベル(標的遺伝子のプライマー配列は5’-CAGGGAAACGGATGTATA-3’(配列番号8)および5’-TGTGTTACAGAATCATATAAGG-3’(配列番号9)であった)、IL-21遺伝子の発現レベル(標的遺伝子のプライマー配列は5’-CCAACTAAAGTCAGCAAATACAGG-3’(配列番号10)および5’-CTTTCTAGGAATTCTTTGGGTGG-3’(配列番号11)であった)、NK細胞のNKG2D遺伝子の発現レベル(標的遺伝子のプライマー配列は5’-GGCTTTTATCCACAAGAATCAAGATC-3’(配列番号12)および5’-GTGCACGTCTACCGCAGAGA-3’(配列番号13)であった)、IFN-γ遺伝子の発現レベル(標的遺伝子のプライマー配列は5’-AGTGTGGAGACCATCAAGGAAG-3’(配列番号14)および5’-GTATTGCTTTGCGTTGGACAT-3’(配列番号15)であった)を検出測定した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHを内部参照として用いた(標的遺伝子のプライマー配列は5’-GGTCTCCTCTGACTTCAACA-3’(配列番号16)および5’-AGCCAAATTCGTTGTCATAC-3’(配列番号17)であった)。標的遺伝子の発現量はpg/GAPDHのμgとする。結果は、腫瘍内のDDvv-hIL21腫瘍溶解性ウイルスの複製がコントロールワクシニアウイルスDDvv-RFPと有意には異ならないということを示し(
図18A)、IL21の発現は、腫瘍組織内のDDvv-hIL21腫瘍溶解性ウイルスの存在をさらに検証した(
図18B)。DDvv-RFPウイルスを投与されたコントロール群と比較して、腫瘍のNK含量はDDvv-hIL21腫瘍溶解性ウイルスを投与された群では有意に増大し(
図18C)、免疫因子INF-γの発現もまた増大する(
図18D)ということが見いだされた。
【0159】
例12:B16腫瘍マウスにおける静脈内投与したDDvv-mIL21ワクシニアウイルスの分布
対数増殖期のB16細胞を用いた。各雌C57/Bl6マウスの後ろ足背側に200,000細胞を皮下接種した。腫瘍成長を観察した。腫瘍体積が約100~200mm
3と測定されたときに、マウスに、上の方法によって調製された5×10
9pfuのDDvv-mIL21腫瘍溶解性ウイルスを含有する100μlのPBSを、トータル4匹のマウスで静脈内投与した。マウスを1週後に屠殺して心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳、卵巣、および腫瘍組織を採集した。PCR法を用いて種々の臓器におけるワクシニアウイルスの分布を検出測定した。具体的には、各組織および臓器におけるワクシニアウイルスのA46R遺伝子の発現量を腎臓におけるワクシニアウイルスのA46R遺伝子の発現量と比較した(標的遺伝子のプライマー配列は5’-CAGGGAAACGGATGTATA-3’(配列番号8)および5’-TGTGTTACAGAATCATATAAGG-3’(配列番号9)であった)。結果は、投与されたDDvv-mIL21腫瘍溶解性ウイルスが主に腫瘍組織に分布するということを示した。DDvv-mIL21腫瘍溶解性ウイルスはそれらの中の1匹のマウスの卵巣組織においてもまた検出測定され、ウイルスは他の臓器では検出測定されなかった(
図19)。
【0160】
例13:ヒト腫瘍細胞HepG2に対するヒトIL-21を保有するDDvv-hIL21ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組み合わせの殺傷効果
HepG2細胞を24ウェル培養プレートに30%コンフルエントで播種し、DMEM+10%FBS環境において37℃かつ5%CO2で24時間に渡ってインキュベーションした。DMEM血清不含環境において、MOI=0.027の上の方法によって調製されたDDvv-hIL21ウイルスを追加して細胞を6時間に渡って感染させ、それから溶液をDMEM+10%FBSに交換し、インキュベーションを37℃かつ5%CO2で18時間に渡って続けた。それから、液を新しいDMEM+10%FBSに交換し、NK細胞を追加し(エフェクター対標的細胞比NK:HepG2=3:1)、インキュベーションを48時間に渡って続け、死細胞および破片を洗い落とし、残りのHepG2生細胞をトリパンブルー染色によって計数した。この実験群はDDvv-hIL21+NK群である。実験では、HepG2細胞の1つの群はウイルスおよびNKを追加せず、ブランク(BK)群とした。1つの群はDDvv-hIL21ウイルスを対応する時点で追加したが、ただしNKは追加せず、DDvv-hIL21ウイルス群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加したが、ただしDDvv-hIL21ウイルスは追加せず、NK群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加し、同時にヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で追加したが、ただしDDvv-hIL21ウイルスは追加せず、NK+IL21群とした。1つの群はウイルスおよびNKは追加しなかったが、ただしヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で上のNK追加時点に対応する時点で追加し、ブランク+IL21群とした。上のコントロール群では、対応する時点で液を交換した。各群の実験は3回以上繰り返し、平均値を取って統計分析をした。
【0161】
結果を
図20に示す(横軸は異なる群であり、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)。DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)はHepG2に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約71%である。この実験では、DDvv-hIL21ウイルス単独の阻害率は約34%であり、NK細胞単独の阻害率は約14%であった。2つの合計を図中の点線によって示す。加えて、NK+IL21群の阻害率は約25%であり、ブランク+IL21群の阻害率は約2%であった。ブランク群の阻害率は約0であった(
図20には示されていない)。
【0162】
結果は、DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)がHepG2細胞に対する有意な相乗的殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約71%であるということを示した。
【0163】
例14:ヒト腫瘍細胞HCT116に対する、ヒトIL-21断片を保有するDDVV-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの殺傷効果の比較
実験から、HCT116細胞に対するDDVV-RFPの殺傷用量は好適には約MOI=0.7であり、HCT116細胞に対するNK細胞の殺傷用量は好適にはエフェクター対標的細胞比NK:HCT116が約5:1であるということが決定された。
【0164】
HCT116細胞を24ウェル培養プレートに30%コンフルエントで播種し、マッコイ5A+10%FBS環境において37℃かつ5%CO2で24時間に渡ってインキュベーションした。マッコイ5Aの血清不含環境において、MOI=0.7の上の方法によって調製されたDDVV-hIL21またはDDVV-RFPを追加して、細胞を6時間に渡って感染させ、それからマッコイ5A+10%FBS環境において18時間に渡って37℃かつ5%CO2でさらにインキュベーションした。NK細胞(エフェクター対標的細胞比NK:HCT116=5:1)を爾後に追加し(培地は交換しなかった)、インキュベーションを48時間に渡って続けた。死細胞および破片を洗い落とし、残りのHCT116生細胞をトリパンブルー染色によって計数した。実験群はそれぞれDDVV-RFP+NK群およびDDVV-hIL21+NK群であった。実験では、HCT116細胞の1つの群をキープし、ウイルスおよびNKは追加せず、ブランク群とした。1つの群は、ウイルスおよびNKは追加しなかったが、ただしヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で上のNK追加時点に対応する時点で追加し、ブランク+IL21群とした。1つの群は、DDVV-RFPのみを対応する時点で追加したが、ただしNKを追加せず、DDVV-RFP群とした。1つの群はDDVV-hIL21のみを対応する時点で追加したが、ただしNKは追加せず、DDVV-hIL21群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加したが、ただしウイルスは追加せず、NK群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加し、同時にヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で追加したが、ウイルスは追加せず、NK+IL21群とした。1つの群はDDVV-RFPおよびNKを対応する時点で追加し、ヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度でNK追加と同じ時点で追加し、DDVV-RFP+NK+IL21群とした。コントロール群では、対応する時点で液交換操作をした。各群の実験は3回以上繰り返し、平均値を取って統計分析をした。
【0165】
図21Aに示されている通り(X軸は異なる群であり、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)、DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)はHCT116細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約86%である。この実験では、DDvv-hIL21ウイルス単独の阻害率は約43%であり、NK細胞単独の阻害率は約10%であった。2つの合計を図中の点線によって示す。ブランク群の阻害率は約0であった(
図21AまたはBには示されていない)。
【0166】
加えて、
図21Bに示されている通り(X軸は異なる群であり、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)、HCT116細胞に対するDDVV-hIL21およびNK細胞の組み合わせ使用の殺傷効果(阻害率は約86%であった)は、同じ用量のDDVV-RFPおよびNK細胞の組み合わせの殺傷効果(阻害率は約67%であった)よりも有意に高く、同じ用量のDDVV-RFPおよびNK細胞ならびにヒトIL21組換え体蛋白質の組み合わせの殺傷効果(阻害率は約64%であった)よりもまた有意に高い。DDVV-RFP単独の阻害率は約37%であり、ブランク+IL21群の阻害率は検出測定されず、NK+IL21群の阻害率は約12%であった。他の群のデータは上と同じであった。
【0167】
上の結果は、DDVV-hIL21がHCT116細胞内で選択的に複製し、それゆえにHCT116細胞を殺傷し、同時に外来性のIL-21を発現し、それによって、発現された外来性のIL-21がNK細胞の致死性を強化し、HCT116に対するNK細胞の殺傷効果をさらに強化し、その結果、DDVV-hIL21およびNK細胞の組み合わせがHCT116細胞を殺傷する点で驚くべき効果を見せるということを指示している。
【0168】
例15:ヒト腫瘍細胞FaDuに対する、ヒトIL-21断片を保有するDDVV-hIL21ワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせならびにコントロールワクシニアウイルスおよびヒトNK細胞の組み合わせの殺傷効果の比較
FaDu細胞を24ウェル培養プレートに30%コンフルエントで播種し、MEM+10%FBS環境において37℃かつ5%CO2で24時間に渡ってインキュベーションした。MEMの血清不含環境において、MOI=0.2の上の方法によって調製されたDDVV-hIL21またはDDVV-RFPを追加して6時間の感染を許し、それからMEM+10%FBS環境において37℃かつ5%CO2で18時間に渡ってさらにインキュベーションした。NK細胞(エフェクター対標的細胞比NK:FaDu=5:1)を爾後に追加し(培地は交換しなかった)、インキュベーションを48時間に渡って続けた。死細胞および破片を洗い落とした。残りのFaDu生細胞をトリパンブルー染色によって計数した。実験群はそれぞれDDVV-RFP+NK群およびDDVV-hIL21+NK群であった。実験では、FaDu細胞の1つの群はウイルスおよびNKを追加せず、ブランク群とした。1つの群はウイルスおよびNKを追加しなかったが、ヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で上のNK追加時点に対応する時点で追加し、ブランク+IL21群とした。1つの群はDDVV-RFPのみを対応する時点で追加したが、ただしNKは追加せず、DDVV-RFP群とした。1つの群はDDVV-hIL21のみを対応する時点で追加したが、ただしNKは追加せず、DDVV-hIL21群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加したが、ウイルスは追加せず、NK群とした。1つの群はNKを対応する時点で追加し、同時にヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で追加したが、ただしウイルスを追加せず、NK+IL21群とした。1つの群はDDVV-RFPおよびNKを対応する時点で追加し、NKの追加と同時にヒトIL21組換え体蛋白質を50ng/mlの終濃度で追加し、DDVV-RFP+NK+IL21群とした。コントロール群では、対応する時点で対応する液交換操作をした。各群の実験は3回以上繰り返し、平均値を取って統計分析をした。
【0169】
図22Aに示されている通り(X軸は異なる群であり、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)、DDvv-hIL21ウイルスおよびNK細胞の組み合わせ使用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、後でNK細胞を投与した)はFaDu細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約73%である。この実験では、DDvv-hIL21ウイルス単独の阻害率は約37%であり、NK細胞単独の阻害率は約13%であった。2つの合計は図中の点線によって示されている。ブランク群阻害率は約0であった(
図22AまたはBには示されていない)。
【0170】
加えて、
図22Bに示されている通り(X軸は異なる群であり、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージ値である)、FaDu細胞に対するDDVV-hIL21およびNK細胞の組み合わせ使用の殺傷効果(阻害率は約73%であった)は、同じ用量のDDVV-RFPおよびNK細胞の組み合わせの殺傷効果(阻害率は約66%であった)よりも有意に高く、同じ用量のDDVV-RFPおよびNK細胞ならびにヒトIL21組換え体蛋白質の組み合わせのもの(阻害率は約65%であった)よりもまた有意に高い。DDVV-RFP単独の阻害率は約39%であり、ブランク+IL21群の阻害率は検出測定されず、NK+IL21群の阻害率は約14%であった。他の群のデータは上と同じであった。
【0171】
上の結果は、DDVV-hIL21がFaDu細胞内で選択的に複製し、それゆえにFaDu細胞を殺傷し、同時に外来性のIL-21を発現し、それによって、発現された外来性のIL-21がNK細胞の致死性を増大させ、それゆえにFaDuに対するNK細胞の殺傷効果をさらに強化し、その結果、DDVV-hIL21およびNK細胞の組み合わせがFaDu細胞を殺傷する点で驚くべき効果を見せるということを指示している。
【配列表】