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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】微小試料用保持具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
G01N1/04 J
G01N1/04 V
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021133289
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027924
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】593230176
【氏名又は名称】株式会社ユニケミー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱地 清市
(72)【発明者】
【氏名】今井 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】今村 直樹
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309495(JP,A)
【文献】特開2010-054433(JP,A)
【文献】特開平11-044616(JP,A)
【文献】特開2001-255263(JP,A)
【文献】特開2016-070861(JP,A)
【文献】特開2002-243594(JP,A)
【文献】特開2008-309509(JP,A)
【文献】実開昭57-076729(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小な試料を採取、運搬、及び測定するための保持具であって、
微小な試料を保持可能な保持面(12)を有する基台(3、23)と、
前記保持面に粘着材(5)を介して形成する金、又は、前記保持面に形成する、希少金属から選ばれる1種以上の金属材(6、24)と、
前記基台の前記保持面と異なる部分に連結する保持具本体(7、25)と、
前記保持具本体に着脱可能であって、前記保持具本体と協働して前記基台及び金又は前記1種以上の金属材を保管可能な蓋体(10、26)と、を備える微小試料用保持具。
【請求項2】
前記保持面に貼付された前記粘着材と、
貼付された前記粘着材に形成される金又は前記1種以上の金属材からなる薄膜層と、を備える請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項3】
前記粘着材は、グリップシートであることを特徴とする請求項2に記載の微小試料用保持具。
【請求項4】
前記保持面に形成する、希少金属から選ばれる1種以上の金属材は、インジウムである請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項5】
前記保持面に形成する、希少金属から選ばれる1種以上の金属材は、インジウムと他の希少金属から選ばれる1種以上の金属材である請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項6】
前記保持具本体は、方形の底板(8)と、前記底板の四辺から立ち上がる側板(9)とからなり、前記底板の上面(11)に接合される前記基台の前記保持面の水準は、前記側板の天面(13)の水準よりも上位にある請求項記載の微小試料用保持具。
【請求項7】
前記保持具本体は、微小な試料を採取する際に金又は前記1種以上の金属材に微小試料を押し当てる手の操作をする把持部を備える請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項8】
前記保持具本体は、透明の樹脂からなる請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項9】
前記基台は、ビーズであることを特徴とする請求項1に記載の微小試料用保持具。
【請求項10】
前記薄膜層は、200~300Åの厚さを有する金の材料である請求項2に記載の微小試料用保持具。
【請求項11】
前記保持具本体は、一端(251)に前記基台を連結するペン型ホルダ本体(25)であって、前記ペン型ホルダ本体の前記一端と協働して内部に前記基台及び金又は前記1種以上の金属材を保管可能な、前記一端に着脱可能な有底筒状のキャップ(26)を備える請求項1記載の微小試料用保持具。
【請求項12】
前記基台と前記ペン型ホルダ本体の前記一端とを着脱可能な連結部(34)を備える請求項11記載の微小試料用保持具。
【請求項13】
前記ペン型ホルダ本体は、微小な試料を採取する際に金、又は、希少金属から選ばれる1種以上の金属材に微小試料を押し当てる手の把持部(252)を有する請求項11又は12記載の微小試料用保持具。
【請求項14】
微小な試料を採取、運搬、及び測定するための請求項1記載の微小試料用保持具の使用方法であって、
前記保持具本体を操作し、微小な試料に対し前記保持面を押圧する工程と、
金、又は、希少金属から選ばれる1種以上の金属材に微小な試料を保持する工程と、
前記保持具本体を目的場所に移動する工程と、
微小な試料を金又は前記1種以上の金属材から分離することなしに測定する工程と、を含む、請求項1記載の微小試料用保持具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な試料を採取し運搬する微小試料用保持具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微小な試料(以下、微小試料という)を分析する前段階において、微小試料を採取し、搬送し、分析する場所に到達するまでに、微小試料を紛失したり汚染したり変質したりすることがある。
【0003】
例えば微小試料をピンセットによりつまんでシャーレに入れ、シャーレに入れた微小試料を目的地に運ぶまでに紛失することがある。また、シャーレを開けたときに埃が入り、分析対象の試料か他の異物なのか不明になることがある。また、微小試料を薬包紙に包むこともあるが、運搬の際、薬包紙の隙間から流出したりして紛失することがある。
【0004】
微小試料を採取するとき、セロテープ(登録商標)を粘着材に使うと、測定の際、セロテープの成分が検出されることや、セロテープの粘着材が混じることにより検出成分を誤認することがある。また、シャーレを開けたときに微小試料が壊れたり、破片により微小試料が割れてしまったり、微小試料に摩耗や傷が付くことがある。
【0005】
微小試料を採取するプローブとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。このものは、プローブ先端の局所のみ加熱することのできる局所加熱機構を備える。
しかし、微小試料を採取し、運搬し、途中紛失し難く、採取前の微小試料のあるがままの状態を維持し、変質しにくい環境を保つ微小試料用保持具は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-003016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微小試料を分析する前段階において、微小試料を採取し、保管し、それを運搬し、分析室まで到達するまでに、微小試料に関わる紛失、汚染、または変質などを起こりにくくするという課題を解決することが求められる。
【0008】
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、微小試料を採取し、運搬し、途中紛失し難く変質し難い微小試料用保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の微小試料用保持具は、微小な試料を採取、運搬、及び測定するための保持具であって、微小な試料を保持可能な保持面(12)を有する基台(3、23)と、前記保持面に粘着材(5)を介して形成する金、又は、前記保持面に形成する、希少金属から選ばれる1種以上の金属材(6、24)と、前記基台の前記保持面と異なる部分に連結する保持具本体(7、25)と、前記保持具本体に着脱可能であって、前記保持具本体と協働して前記基台及び金又はインジウムの希少金属材を保管可能な蓋体(10、26)と、を備える構成を採用する。
【0010】
この微小試料用保持具によると、異物などの分析対象となる微小試料に基台を押し付けると、基台の保持面に形成される希少金属の粘着性などの特性をもつ薄膜層又は希少金属材に微小試料が埋め込まれ保持される。このため、希少金属の薄膜層又は希少金属材に埋め込まれ保護された状態で微小試料を目的地に運搬することができる。したがって、紛失し難く、汚染も変質もし難く、安全に分析室に届けることができ、分析の際には成分検知の誤認を起こりにくくするという効果がある。
【0011】
また、本発明の微小試料用保持具の使用方法は、微小な試料を採取、運搬、及び測定するための微小試料用保持具の使用方法であって、対象試料に対し前記保持面を押圧し、前記対象試料を前記薄膜層に埋め込み保持する工程と、前記保持具本体を目的場所に移動する工程と、前記対象試料を前記薄膜層から分離することなしに測定する工程と、を含む。
【0012】
したがって、本発明の微小試料用保持具によると、微小試料を分析する前段階において、微小試料を採取し、保管し、それを運搬し、分析室などの目的地に到達するまで、保持具本体の基台の保持面に形成される薄膜層に微小試料が分離することなしに保持されるため、紛失、汚染、または変質などの問題の発生を防止することができる。
【0013】
本発明の微小試料用保持具の前記基台は、例えばビーズである。
本発明の微小試料用保持具の前記粘着材は、例えばグリップシートである。
【0014】
本発明の微小試料用保持具の前記粘着材上に蒸着された金は、例えば、200~300Åの厚さである。
【0015】
本発明の微小試料用保持具は、微小試料を採取、運搬、及び測定するための保持具であり、インジウム(24)を含む採取部(22)と、前記採取部と連結する持ち手(25)と、前記採取部に被せるキャップ(26)と、を備える。
【0016】
本発明の微小試料用保持具は、基台、グリップシート、及び金を備える。基台により、高さの効果がある。グリップシートにより、粘着性の効果がある。金により、導通性がある。さらに、金により、測定の際、赤外線の吸収をしないため、グリップシートの波長を検出させない効果がある。
【0017】
本発明の微小試料用保持具は、インジウムを備えることで、金属に微小試料をめり込ませて測定することができる。
【0018】
ンジウムはレアメタル(希少金属)であり、検出対象物となる異物にならない。また、金とインジウムは、柔らかい金属である。金とインジウムは、採取、運搬、または測定の際、汚染することはほとんどない。
鉛は、検出対象物である異物となることから、前記薄膜層からは除かれる。
【0019】
例として、複写機のコピードラムに付着する微小試料を採取するとき、本発明の微小試料用保持具を用いることにより、印刷における点の印影の検出や、画像に表示される異物の検出に使用することも可能である。
【0020】
錆や腐食している場合、錆や腐食に影響を与える異物の有無の確認や検出をすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一実施形態による微小試料用保持具の斜視図。
図2】第一実施形態による微小試料用保持具の断面図。
図3】グリップシートの貼付のみの微小試料用保持具を用いたATR法による実験データを示す赤外吸収スペクトル。
図4】第一実施形態によるグリップシートの貼付及び金の蒸着された微小試料用保持具を用いたATR法による実験データを示す赤外吸収スペクトル。
図5】第一実施形態による微小試料用保持具を用いたATR法による毛の実験データを示す赤外吸収スペクトル。
図6】第二実施形態による微小試料用保持具の斜視図。
図7】第二実施形態による微小試料用保持具の採取部及び固定治具の斜視図。
図8】第二実施形態による微小試料用保持具を用いたATR法によるセルロースの実験データを示す赤外吸収スペクトル。
図9】第二実施形態による微小試料用保持具を用いたATR法による消しゴムの実験データを示す赤外吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による微小試料用保持具について図1から図5に基づいて説明する。
第一実施形態の微小試料用保持具は、特許請求の範囲の請求項1、2、36、7、8、9、10に記載の発明に相当する。
【0024】
図1及び図2に示すように、微小試料用保持具1は、保持具本体に相当する容器7と、容器7に嵌合可能な蓋体10とを備える。
【0025】
容器7は、例えば、クリアケースを用いることができる。クリアケースは、透明色であり、内部の基台に相当するビーズ3、粘着材に相当するグリップシート5、及び金からなる薄膜層6を、外側から見ることが可能である。この容器7は、遊離ケイ酸測定試料保管用のクリアケースを用いることができる。容器7は、蓋体10をつけた状態で、例えば縦が35mm、横が35mm、そして高さが15mmである。
【0026】
図1は、容器7の蓋体10を被せていないときの微小試料用保持具を示す。図2は、容器7と蓋体10とを分離した仮想状態の微小試料用保持具を示す。蓋体が閉じるときは、容器7の天面13と蓋体10の下面14とが合わされる。
【0027】
立方体形状の基台3は、下面が容器7の底板8の上面に接合され、微小な試料を保持可能な保持面12を有する。基台3の保持面12と異なる部分である下面が容器7の上面に接合されている。
【0028】
基台3は、例えば、一辺が7mmのキューブである手芸用のビーズを用いることができる。基台は、保持面12に相当する採取面が容器壁(後述する側板9の天面13)の高さより高い。また基台は、蓋体10が採取面に接触しないものを用いる。
基台3の保持面12に貼り付けられる粘着材5は、グリップシートである。グリップシートは、例えば株式会社マイクロサポートのHG70-58を用いる。グリップシートは、非導通性の薄い粘着テープである。
【0029】
薄膜層6は、金からなり、基台3の保持面12に貼り付けられたグリップシート5の上に、例えば200~300Åの金を蒸着する。金は赤外線を反射する。グリップシートによる粘着性で捕捉した微小試料の赤外線吸収スペクトルのみを検出する。さらに、測定の際、グリップシートによる波長を検出しない。
このとき、蒸着する金が多いと、グリップシートによる粘着性がなくなる。また、蒸着する金が少ないと、測定の際、グリップシートによる波長が検出されてしまう。
【0030】
蓋体10は、容器7に着脱可能であって、容器7と協働して基台3及び薄膜層6を保護管理可能である。
【0031】
容器7は、方形の底板8と、底板8の四辺から立ち上がる側板9とからなり、底板8の上面11に接合される基台3の保持面12の水準は、側板9の天面13の水準よりも上位にある。容器7の側板9の外壁が把持部に相当する。微小試料の採取時、操作者の手が容器7の側板9の外壁を把持する。このとき、手でもつ把持部に相当する側板9の天面13の水準よりも突き出した水準(位置)に基台3の保持面12が設けられている。
【0032】
これにより、異物などの分析対象となる微小試料に基台3を押し付けると、基台3の保持面12に形成される希少金属の粘着性などの特性をもつ薄膜層6に微小試料が埋め込まれ保持される。このため、希少金属の薄膜層6に埋め込まれ保護された状態で微小試料を目的地に運搬することができる。したがって、紛失し難く、汚染も変質もし難く、安全に分析室に届けることができ、分析の際には成分検知の誤認を起こりにくくする。
(使用方法の例示)
【0033】
次に、本発明の微小試料用保持具を用いた分析の実験例を以下に示す。
微小試料用保持具1は、分析機器の採取キットとして、例えば赤外分光法、走査電子顕微鏡SEM、または電子プローブマイクロアナライザEPMA等に使用可能である。
【0034】
微小試料用保持具1のサンプリングは、採取キットの容器7の蓋体10を外し、異物となる対象試料(微小試料)が付着している面に、ハンコを押すような感じに、直接、表面に金の薄膜層6を形成するグリップシート5を押し付ける。すると、対象試料はグリップシート5に埋め込まれ保持される。その後、容器7に蓋体10をつけ、対象試料を保管し、目的地となる分析室に移動する。
【0035】
微小試料用保持具1の分析方法は、採取キットの蓋体10を外し、そのままFT-IRのステージの上に載せ、試料位置及びアパーチャサイズを定めプリズムを押し当て、測定する。グリップシートはハードタイプなので、押し込まれる深さは少しだけである。オートでも測定可能である。このとき、アパーチャ径を対象物より広くしても測定することができる。
【0036】
微小試料の分析において、微小とは、1mm以下とする。異物は、微小であり、立体形、膜形、または粒形等である。
【0037】
(実験データ)
次に、図3から図5に微小試料用保持具をATR法において用いた実験データを示す。
【0038】
微小試料用保持具は、例えば、基台に樹脂製のビーズ3、粘着材にグリップシート5、薄膜層に金、容器にクリアケース、及び透明な蓋体を備えた。
【0039】
実験データ1は、アパーチャサイズが100μm×100μmであり、図3に示すように、ビーズである基台の上に、グリップシートである粘着材のみを貼付した微小試料用保持具による実験データである。この実験データ1によると、グリップシートの波長が検出された。
【0040】
実験データ2は、アパーチャサイズが100μm×100μmであり、図4に示すように、ビーズである基台の上に、グリップシートである粘着材を貼付し、その上に金を蒸着した微小試料用保持具による実験データである。この実験データ2によると、金が赤外線の吸収をすることにより、図3のようなグリップシート5の波長が検出されず、ブランクとなった。
【0041】
これより、ビーズである基台の上に、グリップシートである粘着材を貼付し、その上に金を蒸着すると、分析機器の微小試料用保持具として機能することが判明した。
【0042】
実験データ3は、アパーチャサイズが400μm×200μmであり、図5に示すように、ATR法において、微小試料である対象物を毛とすると、微小試料用保持具により、分析機器で測定すると、毛の波長が検出される。
図5図4と対比すると、図5に示す毛の波長が検出されている点が図4に示すブランクとの対比から明らかである。
【0043】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について図6から図9に基づいて説明する。
【0044】
第二実施形態の微小試料用保持具は、特許請求の範囲の請求項1、4、7、11、12、13に記載の発明に相当する。
【0045】
図6に示すように、微小試料用保持具21は、ペン型ホルダ本体に相当する持ち手25と、この持ち手25に着脱可能な有底筒状のキャップ26を備える。
図6は、円筒状の持ち手25から蓋体に相当するキャップ26を取り外した状態を示している。
持ち手25の一端251に連結部34を経由して基台に相当する試料容器23が連結されている。試料容器23として、例えば、アルミニウムからなり、縦断形状がT字状である。
【0046】
連結部34は、試料容器23の取付部と、持ち手25の一端251にこの取付部を挟持する嵌合部と、持ち手25の一端251と試料容器23とを係止と解放と切り替える図示しないスプリング機構とを有する。図6に示す状態は持ち手25と試料容器23とが係止され固定された状態を示している。
【0047】
手でもつ把持部252よりも突き出した位置に試料容器23が設けられ、その突き出した位置側に試料容器23の保持面12が形成される。
【0048】
試料容器23の保持面12は、持ち手25と反対側にインジウムからなる板材24を有する。インジウムからなる板材24と試料容器23とで採取部22を構成する。採取部22は、持ち手25の一端251に連結されている。
【0049】
蓋体に相当するキャップ26は、アートナイフのキャップと同様の有底筒状のキャップである。キャップ26は、開口部27を図6に示す矢印31方向に持ち手25に挿入することにより、持ち手25と協働して内部に採取部22を保管可能である。キャップ26は、持ち手25に対し着脱可能である。
【0050】
インジウムからなる板材24は保持面12に固定する。インジウムからなる板材24は微小試料を埋め込んで保持可能である。
【0051】
インジウムを用いたのは、インジウムは、常温で可撓性を有し、異物を押し当てれば塑性変形し、異物を捕捉し、捕捉した異物と化学反応を起こさず変質させにくい特性をもつからである。
【0052】
(採取時)
微小試料用保持具21による微小試料の採取(サンプリング)は、採取キットのキャップ26を外し、鉛筆を押し付けるような感じに、対象物としての微小試料が付着している面に直接、採取部22を押し付け、試料容器23のインジウムからなる板材24に微小試料を埋め込む。
【0053】
(運搬時)
次に、微小試料をインジウムからなる板材24に埋め込んだ状態で、試料容器23に捕獲した微小試料を採取部22で保護するようにキャップ26を矢印31方向から嵌め込んだ持ち手25を目的地例えば分析室まで移動する。このとき、ペン型ホルダ形式の保持具であるから、ポケットに入れて持ち運びも可能である。
【0054】
(分析時)
微小試料用保持具21の分析方法は、採取キットの図6に示す微小試料用保持具21のキャップ26を外し、アートナイフの刃先を取り替えるように、採取部22を取り外し、図7に示すように、基台に相当する試料容器23を固定治具(クリップ)28に挟んで、置台32の上に固定治具28を載せる。ここに固定治具28は、試料容器の保持面を水平に維持できる形態のものを用いる。
【0055】
次いで試料容器23に保持した微小試料の観察またはFT-IR ATR測定を行う。
【0056】
図7に示すように、微小試料用保持具21の採取部22は、例えばアートナイフの刃に相当する部分に採取治具が付いたものであり、観察または測定の時は水平を維持して固定治具28により固定する。固定治具28に採取部22を挟む。
【0057】
(実験データ)
次に、図8図9は、図6に示す微小試料用保持具21をATR法において用いた実験データを示す。
【0058】
実験データ4は、図8に示すように、ATR法において、アパーチャサイズが100μm×100μmであり、微小試料である対象物をセルロースとすると、微小試料用保持具により、分析機器で測定すると、セルロースの波長が検出された。
【0059】
実験データ5は、図9に示すように、ATR法において、アパーチャサイズが100μm×100μmであり、微小試料である対象物を消しゴムとすると、微小試料用保持具により、分析機器で測定すると、消しゴムの波長が検出された。
【0060】
(他の実施形態)
第一実施形態に用いた粘着材としてのグリップシート5と金の薄膜層6は、本発明としてはインジウムの板材を用いてもよい。
【0061】
第一実施形態において、容器7の天面13と蓋体10の下面14は平面にしたが、他の実施形態として、容器と蓋体の噛み合わせを安定させるため、噛み合わせ面を互いに嵌合する凹凸面としてもよい。
第一実施形態では、容器7にクリアケースを用いたが、本発明では非透明の保持具本体であってもよい。
本発明の基台は、ビーズでなくてもよく、他の材質であってもよい。
本発明の粘着材は、グリップシートでなくてもよく、他の粘着材であってもよい。
【0062】
第二実施形態では、基台に相当する試料容器は、材料にアルミニウムを用い、縦断形状がT字状にしたが、本発明では、基台の材料及び形状はこれらに限られないことはもちろんである。
第二実施形態の試料容器23の保持面12に形成したインジウムの板材24は、本発明としては、グリップシートなどの粘着材とその上に形成する金の薄膜層に代えてもよい。
本発明の基台は、インジウム等の希少金属を固定可能な保持面を有する。
【0063】
第二実施形態で用いた固定治具はクリップを用いたが、本発明はクリップ以外の固定治具であってもよい。
【0064】
上記実施形態における金、インジウムは、他の希少金属から選ばれる1種以上の希少金属であってもよい。
【0065】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 微小試料用保持具、
3 ビーズ(基台)、
5 グリップシート(粘着材)、
6 薄膜層、
7 容器(保持具本体)、
8 底板、
9 側板(把持部)、
10 蓋体、
11 上面
12 保持面、
21 微小試料用保持具、
22 採取部、
23 試料容器(基台)、
24 インジウムからなる板材、
25 持ち手(保持具本体)、
26 キャップ(蓋体)、
28 クリップ(固定治具)、
34 連結部、
251 一端、
252 把持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9