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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】トリガーポイント圧迫ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
A61F5/02 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022159678
(22)【出願日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501004796
【氏名又は名称】鈴木 信正
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木信正
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-224966(JP,A)
【文献】実開平06-083010(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0486741(KR,Y1)
【文献】登録実用新案第3221465(JP,U)
【文献】特開2004-229783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体の筋付着部に生じたトリガーポイントを継続的に圧迫することによって筋付着部障害を改善することができるトリガーポイント圧迫ベルトであって、前記トリガーポイント圧迫ベルトは、

患者の体に巻き付けて装着することができる所定の長さと幅を有する可撓性ベルトと、

患者の体の筋付着部を体に対して垂直方向に圧迫することができるトリガーポイントパッド、を備え、

前記可撓性ベルトは、ベルトの長手方向略中央部にパッド取付け部を有すると共に、ベルトの端部に留め具を備えており、前記可撓性ベルトを患者の身体に巻き付けた状態で、前記留め具を用いて巻き付け強さを維持しながら固定することが可能なように構成されており、

前記トリガーポイントパッドは、サイズ、形状、又は材質が異なる複数の種類のパッドの中から前記患者の患部の症状に合わせて選択されたパッドが前記可撓性ベルトの長手方向の略中央部に位置するパッド取付け部に取付られて構成されており、

前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて装着し、前記トリガーポイントパッドを前記患者のトリガーポイントに当てた状態で、前記患者の体に巻き付けられた前記可撓性ベルトの締め付け強さを調節して前記留め具を用いて固定することによって、前記トリガーポイントパッドが前記患者のトリガーポイントを調節された強さで垂直方向に継続的に圧迫することが可能であり、

前記トリガーポイントパッドは取付け部材を介して前記可撓性ベルトに摺動移動可能に取り付けられており、前記取付け部材はプレート板の前後に前記可撓性ベルトを貫通させることが可能な大きさの二つの貫通溝孔が設けられて構成されており、前記トリガーポイントパッドは前記プレート板の前記二つの貫通溝孔の中間位置に取付けられており、前記取付け部材の前後に設けられた二つの貫通溝孔に前記可撓性ベルトを通して、前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて締め付けると、前記トリガーポイントパッドが前記可撓性ベルトによって前記取付け部材を介して外側から圧迫されて、前記患者の患部を局所的に圧迫する、

前記トリガーポイント圧迫ベルト。
【請求項2】
前記可撓性ベルトは、患者の背部、腰部、及び臀部に巻き付けることが可能なコルセットと共に患者の体に巻き付けて装着される、請求項1に一項に記載のトリガーポイント圧迫ベルト。
【請求項3】
前記トリガーポイントパッドは、フェルト、EVA、塩化ビニル、又はポリウレタン製である請求項1又は2に記載のトリガーポイント圧迫ベルト。
【請求項4】
前記取付け部材を構成するプレート板は、木製、プラスチック製、又は金属製である、請求項1又は2に記載のトリガーポイント圧迫ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体に巻き付けて、その背部、腰部、腰仙部、臀部の筋付着部を適度な力で局所的に継続して圧迫することによって痛みを軽減又は解消することができるトリガーポイント圧迫ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛症は現代病の一つとして増加傾向にある。腰痛症に対しては、コルセットを腰に巻いて腹部内圧を高めて、腰仙部結合、仙腸関節を安定化させることによって、腰仙部不安定性を治療改善することが行われている(図8参照)。
【0003】
しかし、腰痛症は、腰仙部不安定性に起因する場合の他、骨と筋肉をつなぐ筋付着部の障害によって生じる場合がある。柔らかい筋肉が関節付近で腱に変化して硬い骨に結合する筋付着部には、筋肉の収縮に伴って負荷が集中しやすく、障害が起こる原因となり易い。有痛性の筋硬結部は、トリガーポイントと呼ばれ、慢性痛を呈する筋・筋膜性疼痛症候群や、他疾患によって二次的に生じた筋緊張による痛みの原因部位となっている。腰痛の原因が筋付着部障害である場合には、コルセットは無力である。
【0004】
筋骨格性疼痛の鎮痛治療には、指圧によって圧迫を加えることが効果があることが知られている。テニス肘はテニス選手の腕に生じる筋付着部障害であるが、腕にサポーターを巻き付けて筋付着部を圧迫することによって、痛みを和らげる治療効果があることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-125705公開公報 発明の名称:アームサポーター
【文献】特開平6-335488公開公報 発明の名称:テニス肘用装具
【非特許文献】
【0006】
【文献】トリガーポイント圧迫による痛み軽減と、自立神経機能および脳血行動態の変化 福田紗恵子他 東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会 2011年12月22日
【文献】筋腱付着部障害(筋腱付着部症) 松井智裕 恩賜財団済生会Webサイト 2021年11月6日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
慢性腰痛症は高齢者の日常生活を大きく損ない、生活の質低下の重大な要因となる。その症状は、腰部の持続的鈍痛、重圧感と、動作開始時の強度の疼痛が主体をなす。本発明の発明者は、整形外科医として長年にわたって臨床に携わった経験から、毎日の長時間にわたるデスクワーク、特定の箇所の筋肉の使い過ぎ、加齢等に起因して、患者の背部、腰部、腰仙部、臀部等に筋付着部障害を起こしている場合が多いことに気が付いた。そのような場合には、痛みが発生している箇所を指圧することによって痛みを和らげることができる。しかし、指圧の効果は一時的であって持続性がないし、患者が身体の背部、腰部、腰仙部、臀部等に自分で指圧を加えることは、実際上困難である。このような状況下で、患者が体の背部、腰部、腰仙部、臀部等に生じた筋付着部障害に起因する痛みの発生を自分で簡単な器具を用いて容易に解消又は和らげることができる方法・手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の発明者は鋭意検討した結果、ベルトにパッドを取り付けて患者の体に巻き付けて装着して、痛みが生じている箇所(トリガーポイント)にパッドを当てて適度な力で一定時間継続的に圧迫すると、患者の背部、腰部、腰仙部、臀部等に生じる痛みを驚くほど効果的に鎮めることができることを発見した。さらに、パッドでトリガーポイントに圧迫を加えることにより激痛が低減し又は消失した後に、圧迫強度を弱めた状態でパッドと通常の腰痛ベルトとを併用することにより、より一層の疼痛低減と、活動性増加効果が得られることを発見した。
【0009】
上記発見に基づいて、本発明の発明者は、患者の体の筋付着部に生じたトリガーポイントを継続的に圧迫することによって筋付着部障害を改善することができるトリガーポイント圧迫ベルトであって、前記トリガーポイント圧迫ベルトは、

患者の体に巻き付けて装着することができる所定の長さと幅を有する可撓性ベルトと、

患者の体の筋付着部を体に対して垂直方向に圧迫することができるトリガーポイントパッド、を備え、

前記可撓性ベルトは、ベルトの長手方向略中央部にパッド取付け部を有すると共に、ベルトの端部に留め具を備えており、前記可撓性ベルトを患者の身体に巻き付けた状態で、前記留め具を用いて巻き付け強さを維持しながら固定することが可能なように構成されており、

前記トリガーポイントパッドは、サイズ、形状、又は材質が異なる複数の種類のパッドの中から前記患者の患部の症状に合わせて選択されたパッドが前記可撓性ベルトの長手方向の略中央部に位置するパッド取付け部に取付られて構成されており、

前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて装着し、前記トリガーポイントパッドを前記患者のトリガーポイントに当てた状態で、前記患者の体に巻き付けられた前記可撓性ベルトの締め付け強さを調節して前記留め具を用いて固定することによって、前記トリガーポイントパッドが前記患者のトリガーポイントを調節された強さで垂直方向に継続的に圧迫することができる、

前記トリガーポイント圧迫ベルト、という発明に到達した。
【0010】
本発明の発明者はさらに、患者の体の筋付着部に生じたトリガーポイントを継続的に圧迫することによって筋付着部障害を改善することができるトリガーポイント圧迫ベルトセットであって、前記セットは、

患者の体に巻き付けて装着することができる所定の長さと幅を有する可撓性ベルトと、

サイズ、形状、又は材質が異なる複数の種類のパッドを備え、

前記可撓性ベルトは、ベルトの長手方向略中央部にパッド取付け部を有すると共に、ベルトの端部に留め具を備えており、患者の身体に前記可撓性ベルトを巻き付けた状態で、前記留め具を用いて巻き付け強さを維持しながら固定することが可能なように構成されており、

前記複数の種類のパッドの中から前記患者の患部の症状に応じて選択されたパッドを前記可撓性ベルトの長手方向の略中央部に位置するパッド取付け部に取付けてトリガーポイントパッドを構成し、

前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて装着し、前記トリガーポイントパッドを前記患者の体のトリガーポイントに当てた状態で、前記患者の体に巻き付けられた前記可撓性ベルトの締め付け強さを調節して前記留め具を用いて固定することによって、前記トリガーポイントパッドが前記患者のトリガーポイントを調節された強さで垂直方向に継続的に圧迫することができる、

前記トリガーポイント圧迫ベルトセット、という発明に到達した。
【0011】
好ましくは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルト又はそのセットが用いるパッドは、患者の患部の状態に応じて、複数の種類のパッドの中から患者又は医師が選択したものを用いる。
【0012】
好ましくは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトにおいて、パッド取付け部はベルトの長手方向の略中央部に位置する。パッドがベルトの中央部から離れた端部付近に取り付けられると、ベルトを締め付けた時にトリガーポイントパッドがトリガーポイントを圧迫する力が弱くなる。
【0013】
好ましくは、前記トリガーポイント圧迫ベルト又はそのセットは、さらに取付け部材を備えており、前記取付け部材を介して前記可撓性ベルトの長手方向略中央部に位置するパッド取付け部にパッドが取り付けられてトリガーポイントパッドが構成される。可撓性ベルトの長手方向略中央部に取付け部材を取り付けることによって、患者の筋付着部障害に対してより強い垂直方向の圧迫を加えることが可能になる。本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの使用に際しては、患者を診察した医師がパッドの種類を選定し、かつ取付け部材を用いるかどうかを決めることが望ましい。
【0014】
好ましくは、前記取付け部材はサイズ・形状・材質が異なる複数のタイプのものを用意しておき、トリガーポイントパッドとして用いるパッドの種類に合わせて選択したものを用いる。
【0015】
好ましくは、前記取付け部材は小厚板の前後に前記可撓性ベルトを通すことが可能な大きさの二つの貫通溝が設けられており、前記トリガーポイントパッドは前記小厚板の前記二つの貫通溝に挟まれた位置にマジックベルトによって取付けられており、前記取付け部材の前後に設けられた二つの貫通溝孔に前記可撓性ベルトを通して、前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて締め付けると、前記トリガーポイントパッドが前記可撓性ベルトによって前記取付け部材を介して外側から圧迫されて、前記患者の患部を垂直方向に継続的に圧迫する。
【0016】
好ましくは、前記トリガーポイント圧迫ベルトは患者の身体に1日に数回、各20分程度装着して、筋付着部に生じたトリガーポイントを適度な力で継続的に圧迫する。圧迫する強さは、患者がパッドをトリガーポイントに当てて圧迫して、気持ちがよいと感じる程度の強さが望ましい。
【0017】
好ましくは、前記可撓性ベルトのパッド取付け部にはベルトの長手方向に一定の距離にわたってマジックベルトが設けられており、前記トリガーポイントパッドは前記マジックベルトを介して前記可撓性ベルトのパッド取付け部の所望の位置に取付けられる。
【0018】
好ましくは、前記可撓性ベルトを装着した上から、患者の背部、腰部、及び/又は臀部を覆うコルセットを患者の体に巻き付けて装着する。
【0019】
好ましくは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのトリガーポイントパッドに用いるパッドのサイズは、一定の高さと、パッドが患部に当たる部分が一定以上の面積を有する。パッドの高さが高いとパッドが患部に対して垂直方向にあたる強さが大きくなり、パッドが患部にあたる面積が広いと、パッドが患部にあたる力は当接する面全体に分散されて、圧迫強さは弱くなる。また、圧迫強さはパッドの材質によっても変わる。従って、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトを用いて筋付着障害の治癒を得るためには、サイズ、形状、材質が異なる複数の種類のパッドを用意しておき、患者の患部の状態に適合するものを選択して用いることが望ましい。
【0020】
好ましくは、前記複数のパッドの形状は、直方体形状、楕円形状、又はボール形状を含む。
【0021】
好ましくは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのトリガーポイントパッドに用いるパッドは、フェルト、EVA、塩化ビニル、又はポリウレタン製のものを用いる。
【0022】
好ましくは、前記取付け部材を構成する小厚板は、木製、プラスチック製、又は金属製である。厚さは4mm前後のものが好ましい。
【0023】
好ましくは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、それを用いて強い痛みを軽減又は消失させた後に、圧迫強度を弱めた状態で、通常の腰痛ベルトをトリガーポイント圧迫ベルトの上から重ねて巻き付けることによって併用する。このように用いることで、より一層の疼痛低減と活動性増加効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトを用いてトリガーポイントをパッドで圧迫することにより、患者の動作開始時の激痛を抑え、活動性を増加させることが出来、その結果、運動療法の開始を可能とし、鈍痛、重圧感の低減、解消を得ることができる。
【0025】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、患者の身体の背部、腰部、腰仙部、臀部等の筋付着部に生じたトリガーポイントにパッドを当てて適度に調整された強さで継続的に圧迫することができる。本発明のトリガーポイント圧迫ベルトを用いて筋付着部障害の治癒又は改善を得るためには、パッドを患部に当てて患者が気持ちが良いと感じる程度の強さで15~20分程度の時間継続して圧迫することが効果的である。
【0026】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、個々の患者の様々な症状に合わせて筋付着部にパッドを当てて適度に調整された強さで継続的に圧迫することができる。患者の体に生じる筋付着部障害は、その位置、症状、大きさ等は様々であり、治癒させるために要求される圧迫範囲・強さはそれぞれにおいて異なる。本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、複数のパッドの中から患者の症状に合わせて選択されたパッドを、身体の所望の位置に当てて、その位置で、圧迫強さを調整することができる。
【0027】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、トリガーポイントが発生した筋付着部にトリガーポイントパッドを当てて一定時間継続的に垂直方向に圧迫を加えることで、筋肉の収縮に伴って筋付着部にかかる過度の負荷を減少することができる。
【0028】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、トリガーポイントパッドを患部に当てて適度な圧迫を加えることによって、硬縮した筋肉が隣接する神経組織を刺激して疼痛を発する状態を鎮静化することができる。
【0029】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、トリガーポイントパッドをトリガーポイントに当てて適度な圧迫を加えることによって、体幹部の交感神経の部分的興奮状態を鎮静化することができる。
【0030】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、患者の身体にコルセットを巻いた上からベルトを巻いて装着することによって、コルセットと併用することができる。腰痛の原因が腰仙部不安定性と筋付着部障害にある場合は、トリガーポイント圧迫ベルトとコルセットを併用することは、極めて効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの一つの実施態様を示す。
図2図2は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのパッドを取付け部材にマジックベルトを用いて貼り付けた一つの実施態様を示す。
図3図3(A)及び(B)は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの取付け部材にパッドを取り付けた状態を示す。
図4図4は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの一つの実施態様を患者の体に巻き付けて装着した状態を示す。
図5図5は、患者の体の背部、腰部、及び臀部に生じるトリガーポイントの位置を示す。
図6図6は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの第二の実施態様を示す。
図7図7は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトセットの例を示す。
図8図8(A)は、腰痛帯として用いられる簡易コルセットを示す。図8(B)は、腰痛帯として用いられる簡易コルセットを患者の腰に巻き付けて装着した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
<定義>
【0033】
本発明において「筋付着部」とは、筋肉が骨に付着する部分をいう。筋付着部は、人体の部位に応じて、腱、靭帯を含む。
【0034】
本発明において、「筋付着部障害」とは、筋肉が骨に付着する部分が炎症等の障害を起こした状態をいう。
【0035】
本発明において「トリガーポイント」とは、痛みを引き起こす体内のセンサーであり、我が国では発痛点とも呼ばれる。トリガーポイントは、長時間同じ姿勢でいたり、或いは筋肉を使いすぎたりすることによって筋付着部に生じることが知られている。図5は患者の体の背部、腰部、及び臀部に生じるトリガーポイントの位置を示す。
【0036】
本発明において「トリガーポイントパッド」とは、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトを用いて患者のトリガーポイントに当てるパッドをいう。ベルトの長さは患者の身体に巻き付けるために必要な長さであればよいが、他面長すぎると使いづらくなるので、それらを考慮して適当な長さに作製される。トリガーポイントパッドは、柔軟な素材を用いて、トリガーポイントに当てたときに接触面積が広くなるものが好適に用いられる。しかし、患者の症状によっては、ゴルフボールのように硬い球形であって、トリガーポイントに当てたときの接触面積が小さいものを用いて患部に局所的に強く当てる場合もある。
【0037】
本発明において「トリガーポイント圧迫ベルト」とは、留め具を備えた可撓性ベルトにパッドを取り付けたものをいう。留め具には、ベルトの端部に設けられた金属製バックルとマジックベルトの組み合わせを好適に用いることができる。
【0038】
本発明において「取付け部材」とは、パッドを可撓性ベルトに取り付けるための器具をいう。本発明の一つの実施例において、取付け部材は、小厚板の前後に前記可撓性ベルトを通すことが可能な大きさの二つの貫通溝が設けられて構成されている。トリガーポイントパッドを小厚板の前記二つの貫通溝の略中間位置に取付けて、その状態で前記取付け部材の前後に設けられた二つの貫通溝孔に前記可撓性ベルトを通して、前記可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて締め付けると、前記トリガーポイントパッドが前記可撓性ベルトによって前記取付け部材を介して外側から圧迫されて、患者の体に対して垂直方向に患部を押圧する。
【実施態様1】
【0039】
図1は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの第一の実施態様を示す。図1において、取り付け部材11にパッド12をマジックベルトを用いて固定した状態で、ベルトを前後二つの貫通溝に通している。図2は、取り付け部材11に固定したパッド12の寸法を示す。図3は、パッドの断面図を示す。図4は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルト1を患者の腰に巻き付けた状態を示す。
【0040】
図1~4を参照して、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの第1の実施態様は、可撓性ベルト10と、トリガーポイントパッド12と、可撓性ベルト10にトリガーポイントパッド12を取り付けるための取付け部材11とからなる。
【0041】
図1図2を参照して、取付け部材は長方形の小厚板であり、長方形の長手方向の前後に、可撓性ベルトを通すための溝孔が二つ設けられている。二つの溝孔の間は、トリガーポイントパッド取付けエリアとして用いられる。図3に示す例では、トリガーポイントパッド取付けエリアにはマジックベルトが設けられており、マジックベルトを用いてパッドを取り付け部材に取り付けることができる。
【0042】
図1及び4を参照して、取付け部材11のトリガーポイントパッド取付けエリアにパッド12を取り付け、かつ、取付け部材11の前後二つの溝孔に可撓性ベルト10を通して、可撓性ベルト10を患者の腰に巻き付けて装着する。その後、取付け部材11を可撓性ベルトに沿って長手方向に摺動移動させることで、取付け部材11に取付けられたパッド12を患者が痛みを感じる箇所に移動させて、パッド12を患部に当接させる。留め具としては、ベルトの端にバックル13を取付け、ベルト10をバックル13に通して折り返し、ベルトの反対面に設けられたマジックベルトで固定することができる。
【0043】
図1を参照して、可撓性ベルト10の端には留め具としてバックル13が設けられており、可撓性ベルト10を患者の体に巻き付けた後、パッドを患部の位置に移動させた後、所望の強さで締めつけた状態で、留め具を用いてその位置に固定することができる。
【0044】
図1図2図4を参照して、取付け部材11のパッド取付けエリアにパッド12を取り付け、取付け部材11の前後二つの溝孔に可撓性ベルトを通して、可撓性ベルトを長手方向の引っ張ると、トリガーポイントパッドが存在することによって湾曲状態になった可撓性ベルトがまっすぐになろうとする力が働き、そのまっすぐになろうとする力が、トリガーポイントパッドを患者の体の患部に垂直方向に押し付ける力として作用する。その結果、患者の体に巻き付けた可撓性ベルトを締め付ける力がトリガーポイントパッドが患者の体に対して垂直方向に患部を押す力として転化される。患者は可撓性ベルトを締め付ける力を調節することによって、トリガーポイントパッドが患部を押す力を調節することができる。
【0045】
トリガーポイントパッドは、ポリウレタン等の樹脂又はスポンジのような柔軟材料を好適に用いる。トリガーポイントパッドの形状は丸みを有した形状を好適に用いる。しかし、患者の筋付着部障害の症状によっては、ゴルフボールのような硬い素材も用いることができる。押圧部材にゴルフボールのような小さくて硬い材料でできた部材を用いることは、局所的に強い力を与えるのには適しているが、痛みのある箇所を押すのであるから、可撓性ベルトの締め付け強さは慎重に調節する必要がある。
【実施態様2】
【0046】
図6は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの第二の実施態様を示す。
図6を参照して、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトの第2の実施態様は、可撓性ベルトと、パッドとからなり、取付け部材を用いない。可撓性ベルトの長手方向中心部には、マジックベルト15が設けられており、マジックベルト15にパッドを貼り付けて、トリガーポイントパッドを構成する(図6(A)、(B)参照)。
【0047】
図6(C),(D)を参照して、可撓性ベルトをベルトの端部に設けられたバックルに通して、可撓性ベルトを長手方向に引っ張ると、トリガーポイントパッドが存在することによって湾曲状態になった可撓性ベルトがまっすぐになろうとする力が働き、そのまっすぐになろうとする力が、トリガーポイントパッドを患者の体の患部に押し付ける力として作用する。その結果、患者の体に巻き付けた可撓性ベルトを締め付ける力を、トリガーポイントパッドが患者の体に対して垂直方向に患部を垂直方向に押す力として転化される。しかし、実施態様1と比べると、実施態様2の構成では、可撓性ベルトを締め付けることによってトリガーポイントパッドがトリガーポイントを押す力は弱い。従って、第2の実施態様のトリガーポイント圧迫ベルトは、患部をソフトな力で圧迫するのに適している。
【0048】
図7は、本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのセットの例を示す。図7(A)に示すように、パッドは、異なる材質の4つのタイプのものが用意されている他、小さい形状のもの、及び球状のものが用意されている。図7(B)は、図7(A)に示す6つのパッドと2つの取付け部材の中から患者の症状に合わせて選択して、可撓性ベルトに取り付けた状態を示す。
【実験】
【0049】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのサンプルを作製し、患者の身体に装着して使用することによって、それぞれについて患者の腰痛の治癒・改善が得られるかどうかを観察した。
【0050】
<サンプルの作製>
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトのサンプルを以下の部品材料を用いて作製した。
・可撓性ベルト:牛革製の幅10cmのベルト。端部に金属製バックルを備え、反対側の端部にマジックベルトが設けられ、留め具を構成している。
・パッド:縦 6cm、横 7.7cm 高さ 3.2 cm ウレタン製
・ベルトへのパッドの取付け:縦 7cm、横 12cm、厚さ 4ミリの小厚板を取り付け部材として用いる。小厚板の前後には、貫通溝が2つ設けられている。
【0051】
上記の構成部品で構成されたトリガーポイント圧迫ベルトを発明者が自らの腰に巻き付けて装着して、腰痛の箇所にパッドを1日2回、各20分間当てて、症状の緩和を観察した。
また、発明者とは別に4名の希望者に装着を実験的に行った。圧迫パッドの硬さは、患者自身に選択してもらった。結果は以下の通りであった。 ( QOL;Quality of Life, 生活の質、TPB: トリガーポイント圧迫ベルト)

【0052】
<実験結果の評価・考察>
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、適切な大きさと材質のパッドを障害が生じた筋付着部にあてて、適度に調整された強さで1日に一定時間継続的に圧迫を加えることによって、顕著な痛み治癒効果を得ることができた。
【0053】
本発明のトリガーポイント圧迫ベルトは、患者がトリガーポイントパッドをトリガーポイントに当てる力を自らの感覚に基づいて容易に調節できるので、トリガーポイントに起因する痛みを医師に頼らずに自分で軽減又は解消することができる。このような治療器具は、コルセットによって治癒できない腰痛に対して治療効果を発揮するものであり、これまでも長く必要とされていたにもかかわらず、実現されていなかったものである。
【0054】
以上、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内において種々の実施形態に変更して実施することが可能である。
【符合の説明】
【0055】
1:トリガーポイント圧迫ベルト
10:可撓性ベルト
11:取付け部材
12:トリガーポイントパッド
13:バックル
14:パッド取付け用テープ
15:マジックベルト
【要約】      (修正有)
【課題】患者の背部、腰部、腰仙部、臀部の筋付着部に生じたトリガーポイントに起因する疼痛を患者が自分で緩快できるようにする。
【解決手段】可撓性ベルトと患者の体の筋付着部を外部から局所的に圧迫することができるトリガーポイントパッドとを用い、トリガーポイントパッドは複数の異なるタイプのパッドの中から前記患者の症状に応じて選択されたパッドを用い、前記選択されたパッドを取り付けた可撓性ベルトを患者の体に巻き付けて装着して留め具を用いて固定し、トリガーポイントパッドを患者の体の患部に当てて患者の体に対して垂直方向に継続的に圧迫する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8