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特許7248367改良された種子発芽特性を有する種子の生産のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】改良された種子発芽特性を有する種子の生産のための方法
(51)【国際特許分類】
   A01H 1/02 20060101AFI20230322BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A01H1/02 Z
A01H1/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019534204
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017084301
(87)【国際公開番号】W WO2018115396
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】2018059
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】508186875
【氏名又は名称】キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】スターマン, ジェローン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/120820(WO,A1)
【文献】THE PLANT CELL,米国,AMERICAN SOCIETY OF PLANT BIOLOGISTS,1992年09月,VOL:4, NR:9,PAGE(S):1089 - 1100,http://dx.doi.org/10.1105/tpc.4.9.1089
【文献】THE PLANT JOURNAL,2013年07月19日,VOL:75, NR:6,PAGE(S):1039 - 1049,http://dx.doi.org/10.1111/tpj.12250
【文献】NEW ZEALAND JOURNAL OF BOTANY,1995年03月,VOL:33, NR:1,PAGE(S):79 - 92,http://dx.doi.org/10.1080/0028825X.1995.10412945
【文献】PLANT BREEDING REVIEWS,2016年01月,VOL:40,PAGE(S):235 - 269,http://dx.doi.org/10.1002/9781119279723.ch5
【文献】PLANT CELL, TISSUE AND ORGAN CULTURE,NL,2002年07月,VOL:70, NR:1,PAGE(S):13 - 21,http://dx.doi.org/10.1023/A:1016088621471
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための方法であって、前記種子の1つ又は複数の発芽特性が、前記第1の植物Aを前記第2の植物Bと交配することによって得られた種子と比較して改良されており、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層、並びに第3の植物Cの遺伝子型を有するL1及び/又はL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと、
b)前記周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた前記種子を採取するステップと
を含み、
植物Aと植物Cの遺伝子型が互いに異なり、
前記発芽特性が、発芽能力、均質な発芽、発芽率及び実生生重量からなる群から選択され、
前記第1の植物A、前記第2の植物B、及び前記第3の植物Cがソラナム属に属する種に由来する植物である、方法。
【請求項2】
d)ステップc)において得られた前記種子を発芽させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e)ステップc)において得られた前記種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有し、前記第1の植物Aを前記第2の植物Bと交配することによって得られた種子と比較して、1つ又は複数の改良された発芽特性を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、前記周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層、並びに第3の植物Cの遺伝子型を有するL1及び/又はL3シュート分裂組織層を含み、
植物Aと植物Cの遺伝子型が互いに異なり、
前記発芽特性が、発芽能力、均質な発芽、発芽率及び実生生重量からなる群から選択され、
前記第1の植物A、前記第2の植物B、及び前記第3の植物Cがソラナム属に属する種に由来する植物である、使用。
【請求項5】
植物Cがハイブリッドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項6】
前記周縁キメラ植物において、植物Cの遺伝子型は、植物A及び/又は植物Bの遺伝子型の一部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
前記周縁キメラ植物において、前記L1シュート及び/又はL3分裂組織層の遺伝子型は、植物Bの遺伝子型の一部を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項8】
植物Aの遺伝子型が、植物Bの遺伝子型と同一であるか、請求項1~3のいずれか一項で、ステップb)において、前記周縁キメラ植物が、自家受精している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記第1の植物A及び前記第3の植物Cが、ソラナム属の種のハイブリッドに属する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記第1の植物A、前記第2の植物B、及び前記第3の植物Cが、すべて前記属の種のハイブリッドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項11】
台木品種の種子が生産される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記植物又はハイブリッド植物が、ソラナム・リコペルシクム種、ソラナム・ペンネリイ種、ソラナム・ハブロカイテス種、及びソラナム・ピンピネリフォリウム種、又はそれらのハイブリッドの群から選択される種に由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項13】
物Cが、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのハイブリッド植物、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのハイブリッド植物、又はソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ピンピネリフォリウムのハイブリッド植物であ請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は使用
【請求項14】
前記ハイブリッド植物が、F1ハイブリッド植物である、請求項13に記載の方法又は使用
【請求項15】
前記L2シュート分裂組織層が、ソラナム・リコペルシクム植物に由来する、請求項13又は14に記載の方法又は使用
【請求項16】
植物Aと植物Bとの交配によって得られる遺伝子型と同一の遺伝子型を有する胚、及び植物Cの遺伝子型を有する外皮を含み、
植物A及び植物Cの遺伝子型が互いに異なり、
植物Aを植物Bと交配することによって得られたか又は得ることができる種子と比較して、少なくとも1つの改良された発芽特性を有し、
前記発芽特性が、発芽能力、均質な発芽、発芽率及び実生生重量からなる群から選択され、
前記植物A、前記植物B、及び前記植物Cがソラナム属に属する種に由来する植物である、種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業の分野に関する。特に、本発明は、種子の生産、並びに生産される種子の品質を改良する方法、特に、種子発芽特性を改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の形質を強化するための標準的な解決策は、遺伝学法及び交配である。しかしながら、古典的な交配技法は、種子の特性が影響を受けるという副作用を有し得る。たとえば、トマトについては、新しいF1ハイブリッドは、かなりの割合で、低い種子品質、すなわち、低い種子発芽能力、種子発芽均質性、種子発芽率、並びに/又は実生生重量及び活力のために、市場に出ることはなく、これは、植物交配分野に対する研究投資の実質的な損失、並びに交配における進歩の阻止を意味する。ハイブリッド種子は、プライミング後に、商用として実現可能となるためには、少なくとも80~85%が発芽する必要がある。植物の形質を改良させるだけでなく、良好な発芽特性を有する種子を生産することが、種子企業にとっての主な関心の対象である。
【0003】
たとえば、高い果実若しくは葉収量、又は強調的/半自然的特徴、たとえば、ビーフトマトの場合では非常に大きな果実サイズは、種子の品質に対して多面的な負の作用を示し得、この作用は、他の可能性の中でもとりわけ、発生する種子から離れた望ましくない同化物分配によりもたらされ得、低い種子発芽能力、種子発芽均質性、種子発芽率、並びに/又は実生生重量及び活力をもたらし得る。そのような事例においては、植物産量形質と種子形質との間で、両方の側面が負に妥協されるバランスを探さなければならない。
【0004】
種子品質が、原則として、交配によって改良され得る場合、それは、時間がかかり、困難なものであり、最も重要なことには、他の望ましいゲノム特性に影響を及ぼし得る。定量的形質として、これには、複数の望ましい遺伝子座を所望されるゲノムに導入することが必要となろう。特に、生殖質の交配においては、種子品質は選択の標的としては見過ごされており、良好な種子発芽特性を再度獲得する必要性は、交配プログラムの主な妨げとなるであろう。
【0005】
したがって、所望される農業上又は園芸上の形質を有する植物を生産するために開発された近親交配種子又はハイブリッド種子の遺伝子組成に干渉すること、並びに系譜をたどり、古典的な交配及び選択によって種子品質の欠点を補正する必要性なしに、種子発芽能力、種子発芽均質性、種子発芽率、並びに/又は実生生重量及び活力など、植物によって生産される種子の特性を改良することが、当該技術分野において早急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
〔発明によって提供される解決策〕
本発明者は、周縁キメラ植物を利用して、既存の商用近親交配株又はF1ハイブリッド栽培種の種子を、別の栽培種の果実において生産させることによって、上述の問題に対する解決策が提供され得るという見識に至った。この生産系は、使用される特定の栽培種の遺伝子における適応を必要としないため、交配及び/又は遺伝子が関与する標準的な解決策に関する上述の問題が、克服される。
【0007】
周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層が、配偶子の遺伝子型を決定することが、公知である(たとえば、Filippisら、Using a periclinal chimera to unravel layer-specific gene expression in plants,The Plant Journal,2013,75:1039-1049)。さらに、新しい栽培種を提供することにおける、この技術の有用性を調査するために、たとえば、イヌホオズキ(nightshade)及びトマトを使用してキメラを作製することによって、予備的調査が行われたが、結果は残念なものとなった(Lindsayら、Graft chimeras and somatic hybrids for new cultivars,New Zealand journal of Botany,1995,Vol.33:79-92)。
【0008】
雌性親のL1及び/又はL3シュート分裂組織層の遺伝子型を改変することによって、結果として得られる種子の遺伝子型を変更することなく、種子の発芽特性を劇的に強化することができることが見出されたというのは、驚くべきことである。この強化は、商用に不利益なハイブリッド株が、商用で実現可能となり得ることを意味し得る。蒔く種子の生産の間、母体植物(すなわち、種子をその後代として保持するもの)の健康状態及び活力は、良好な品質の種子を得ることに役立つ。これは、近親交配種子の生産に基づくかF1ハイブリッド種子の生産に基づくかに関係なく、すべての生産系に当てはまり、本発明は、非常に汎用性の高い解決策を提供する、すなわち、優れた品質の、任意の近親交配又はF1ハイブリッド交雑、並びに新しい品種の種子の直接的な商用生産を可能にする単純な手順を提供する。本発明の概念によると、種子は、先行技術の重大な欠点、並びに所望される近親交配種子又はハイブリッド種子の価値のある遺伝子組成の妨害を回避すると同時に、最適な種子発生に役立つ、すなわち、改良された種子品質、たとえば、改良された発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を有する種子をもたらす、その母系特性だけについて選択した、意図的に選択した異なる母体植物に基づいて生産される。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明者は、まず、周縁キメラ植物を作製し、続いて、そのような植物において種子を生産させることによって、種子を生産する手段を見出した。この方法では、植物において生産される種子の表現型特性が改良され、特に、該種子の発芽特性、たとえば、発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量が、植物自体の遺伝子型の果実において生産される種子と比較して、改良される。
【0010】
本開示は、以下の付記に表される方法、使用、態様、及び実施形態を教示する。
【0011】
付記1
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子と比較して、改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む、方法。
【0012】
付記2
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子と比較して、改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む、方法。
【0013】
付記3
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための方法であって、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む方法。
【0014】
付記4
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための方法であって、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む方法。
【0015】
付記5
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良するための方法であって、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む方法。
【0016】
付記6
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良するための方法であって、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む方法。
【0017】
付記7
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと、
d)ステップc)において得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップと
を含む、方法。
【0018】
付記8
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと、
d)ステップc)において得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップと
を含む方法。
【0019】
付記9
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子を発芽させるための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと、
d)ステップc)において得られた種子を発芽させるステップと、
e)任意選択で、ステップc)において得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップと
を含む方法。
【0020】
付記10
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子を発芽させるための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製又は提供するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと、
d)ステップc)において得られた種子を発芽させるステップと、
e)任意選択で、ステップc)において得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップと
を含む、方法。
【0021】
付記11
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0022】
付記12
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0023】
付記13
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0024】
付記14
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を改変及び/又は改良するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0025】
付記15
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0026】
付記16
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0027】
付記17
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0028】
付記18
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0029】
付記19
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を評価するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0030】
付記20
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を評価するための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0031】
付記21
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を評価するための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0032】
付記22
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の1つ又は複数の発芽特性を評価するための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0033】
付記23
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の発芽のための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0034】
付記24
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の発芽のための周縁キメラ植物の使用であって、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0035】
付記25
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の発芽のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0036】
付記26
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の発芽のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL3シュート分裂組織層を含む、使用。
【0037】
付記27
周縁キメラ植物において、L1及びL3シュート分裂組織層が、いずれも、第3の植物Cの遺伝子型を有する、付記1~26のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0038】
付記28
植物Aの遺伝子型が、植物Bの遺伝子型と同一であるか、又は植物BのL2層の遺伝子型と同一である、付記1~27のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0039】
付記29
植物Aの遺伝子型が、植物Bの遺伝子型とは異なるか、又は植物BのL2層の遺伝子型とは異なる、付記1~28のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0040】
付記30
1つ又は複数の発芽特性が、種子密度、種子生物量、種子発芽率、種子発芽能力、及び実生生重量からなる群から選択される、付記1~29のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0041】
付記31
種子発芽率、種子発芽能力、及び/又は実生生重量が、第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と比較して、強化されている、付記30に記載の方法又は使用。
【0042】
付記32
該第2の植物Bが、非キメラ植物である、付記1~31のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0043】
付記33
該第1の植物A及び該第3の植物Cが、同じ種に由来する、付記1~32のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0044】
付記34
該第1の植物A、該第2の植物B、及び該第3の植物Cが、すべて、同じ種に由来する、付記1~33のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0045】
付記35
該植物が、ソラナム属に属する種に由来する、付記33又は34に記載の方法又は使用。
【0046】
付記36
該第3の植物Cが、トマト品種アイルサ・クレイグである、付記35に記載の方法又は使用。
【0047】
付記37
該第3の植物Cが、該第1の植物Aによって生産された種子と比較して、強化された発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を有する種子を生産する、付記1~36のいずれか1つに記載の方法又は使用。
【0048】
付記38
第1のトマト植物Aを第2のトマト植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有するトマト種子の生産のための方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子と比較して、改変及び/又は改良されており、この方法が、
a)トマト植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及びトマト品種アイルサ・クレイグの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラトマト植物を作製するステップと、
b)周縁キメラ植物を、トマト植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含む、方法。
【0049】
付記39
トマト植物Aの遺伝子型が、トマト植物Bの遺伝子型と同一である、付記38に記載の方法。
【0050】
付記40
植物Aが、ビーフトマトである、付記38又は39に記載の方法。
【0051】
付記41
発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量が、第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と比較して、強化されている、付記38、39、又は40のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
付記42
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子の生産のための周縁キメラ植物の使用であって、1つ又は複数の発芽特性が、植物A及びBを交配することによって得られた種子の発芽特性と比較して、改変及び/又は改良されており、周縁キメラ植物が、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層及び第3の植物Cの遺伝子型を有するL1シュート分裂組織層を含む、使用。
【0053】
付記43
付記1~42のいずれか1つに記載の方法によって得られたか又は得ることができる種子であって、該種子が、植物Aを植物Bと交配することによって得られたか又は得ることができる種子と比較して、少なくとも1つの改変及び/又は改良された発芽特性を有し、植物A及びBが、付記1~42において定義される通りである、種子。
【0054】
付記44
該種子が、周縁キメラ植物のL1層の遺伝子型を有する外皮又は種皮を有し、周縁キメラ植物が、付記1~42に定義される周縁キメラ植物である、付記43に記載の種子。
【0055】
第1の植物A(本明細書において「植物A」とも表記される)及び第3の植物C(本明細書において「植物C」とも表記される)は、本明細書において、非キメラ植物、すなわち、3つすべての分裂組織層L1、L2、及びL3について同じ遺伝子型を有するとして、理解されるものとする。第2の植物B(本明細書において「植物B」とも表記される)は、キメラ植物であっても非キメラ植物であってもよい。植物Bが、キメラ植物である場合、「植物Bの遺伝子型」は、本明細書において、「植物BのL2層の遺伝子型」として解釈されるものとする。第1の植物Aを第2の植物Bと交配することは、本明細書において、第1の植物Aを雌性植物とし、第2の植物Bを雄性植物として、交配することと理解されたい。上述の付記において言及されている植物Aの遺伝子型及び/又は植物Cの遺伝子型は、任意の近親交配又はハイブリッドの遺伝子型であり得る。そのようなハイブリッド又は近親交配は、たとえば、ハイブリダイゼーション交雑におけるパートナーのうちの一方の遺伝子型を約0.5、1、2、5、7、10、15、20、25、30、40、又は50%含んでもよい。植物Cの遺伝子型は、植物A及び/又は植物Bの遺伝子型の一部を含んでもよい。たとえば、植物Cは、植物A及び/又は植物Bの交配により得られた第1の世代のハイブリッド又はさらなる世代の近親交配種であり得る。周縁キメラ植物のL1及び/又はL3シュート分裂組織層は、植物A及び/又は植物Bの交配により得られた第1の世代のハイブリッド又はさらなる世代の近親交配種の遺伝子型を有し得る。
【0056】
上述の付記において言及されている植物Aの遺伝子型及び/又は植物Cの遺伝子型は、半数体、二倍体、異数体、又は多倍数体であり得る。
【0057】
本明細書において使用される植物A、植物B、及び植物Cは、株Aの植物、株Bの植物、及び/又は株Cの植物で置き換えることができるが、かならずしもそうする必要はない。
【0058】
種子の改変又は改良された発芽特性は、たとえば、より高い発芽能力、より均質な発芽、より高い発芽率、及び/又は増加した実生生物量若しくは生重量若しくは活力である。さらなる改変又は改良された発芽特性は、種子の比重又は種子の生物量であり得る。L1及び/又はL3シュート分裂組織層の選択により、1つ又は複数の発芽特性のうちのどれが改良されるかが決定される。非キメラ植物の表現型特性、より詳細には、そのような植物から得られた種子の発芽特性を踏まえて、本発明の方法を使用することにより、当業者であれば、本発明の周縁キメラ植物を生産するために、どのシュート分裂組織層(すなわち、どの植物に由来するか)を選択すればよいかを認識している。特に、当業者であれば、生産される種子に、望ましい発芽特徴を付与するために、どのL1及び/又はL3シュート分裂組織層を選択すればよいかを認識している。
【0059】
本発明はまた、本発明及び上述の付記のステップaに定義される、周縁キメラ植物の使用により、近親交配種子又はハイブリッド種子を提供する。特定の実施形態において、本発明の周縁キメラ植物は、種子生産のために、自家受精される。
【0060】
好ましい実施形態において、L3シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型は、本発明の周縁キメラ植物におけるL1シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型と同一である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】異なる発芽能力を有する植物株の発芽した種子の割合の経時的な展開を示す。発芽能力は、所与の期間における植えた種子の総数に対する割合として表される、発芽した種子の数である。取得期間は、発芽した種子の数がやがて横ばいになり、プラトー期に達するのを確実にするように十分に長いものである。この期間は、たとえば、ピーク値時間の3倍である。このプラトー期は、すべての種子が発芽している場合には100%であり得るか、又は一部の種子がまったく発芽していない場合には、それよりも低い割合であり得る。この図において、線Bは、80%の発芽能力を有する対照株である。線Aは、改良された発芽能力(100%)を有する株の例であり、線Cは、発芽能力が劣る例である。
図2】ピーク値時間の概念を示す図である。ピーク値時間は、発芽曲線の接線が最も急勾配となる時点である、すなわち、単位時間当たりの発芽する種子の増加が最も高い時点である。発芽の動力学に関連する時点であるピーク値時間は、発芽能力を評価するのに必要な期間、たとえば、種子植え付けからピーク値時間までの時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍、好ましくは、3倍に等しい期間を定めるために使用することができる。
図3】種子の密度分布を示す。エラーバーは、95%信頼区間を示す。重複しないエラーバーは、有意に異なるサンプル平均を示す(p=0.05)。A:密度クラス「3」において、線は、上から下に、S1_YY(非キメラYY植物の自殖後代)、S1-キメラ(キメラの自殖後代)、S1_XX(非キメラXX植物の自殖後代)、及びS2_キメラ(S1-キメラの自殖後代)を表す。B:密度クラス「3」において、線は、上から下に、F1_XX(非キメラ植物XXと株ZZとの他家受精の後代)、F1_キメラ(キメラと株ZZの他家受精の後代)を表す。
図4】異なる密度クラスにおける種子の生物量分布を示す。エラーバーは、95%信頼区間を示す。重複しないエラーバーは、有意に異なるサンプル平均を示す(p=0.05)。A:密度クラス「1」において、線は、上から下に、S1_XX、S1_キメラ、S1_YYを表す。B:密度クラス「3」において、線は、上から下に、F1_キメラ、F1_XXを表す。
図5】種子の発芽率を示す。エラーバーは、95%信頼区間を示す。重複しないエラーバーは、有意に異なるサンプル平均を示す(p=0.05)。A:左のカラムは、S1_XXを表し、右のカラムは、S1_キメラを表す。B:左のカラムは、F1_XXを表し、右のカラムは、F1_キメラを表す。
図6】パネルA及びBは、インビトロ発芽能力を示す。エラーバーは、95%信頼区間を示す。重複しないエラーバーは、有意に異なるサンプル平均を示す(p=0.05)。A:上の線は、S1_キメラを表し、下の線は、S1_XXを表す。B:上の線は、F1_キメラを表し、下の線は、F1_XXを表す。パネルCは、インビボ発芽能力を示す。左:非キメラXXの母体に由来するXZハイブリッド種子。右:キメラに由来するXZハイブリッド種子。
図7】実生シュート生重量を示し、エラーバーは、95%信頼区間を示す。A:左のカラムは、S1_XXを表し、右のカラムは、S1_キメラを表す。B:左のカラムは、F1_XXを表し、右のカラムは、F1_キメラを表す。
図8】種子の密度分布を示す。密度クラス「3」において、線は、上から下に:F1_キメラ(キメラとPP株との他家受精の後代)及びF1_TT(非キメラ植物TTとPP株との他家受精の後代)を表す。
図9】種子の発芽率を示す。左のカラムは、F1_TTを表し、右のカラムは、F1_キメラを表す。
図10】インビトロ発芽能力を示す。上の線は、F1_キメラを表し、下の線は、F1_TTを表す。
図11】THハイブリッド種子の比重を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとHH株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_TT(対照、TTとHH株との他家受精の後代)を表す。
図12】THハイブリッド種子の発芽率を示す。黒色のカラムは、F1_キメラを表し、灰色のカラムは、F1_TTを表す。
図13】THハイブリッド種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラを表し、灰色の線は、F1_TTを表す。
図14】ビーフトマト植物(対照)又はビーフトマトのL2及びL3並びにアイルサ・クレイグ×チェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株の交雑により得られたF1のL1を含むキメラ(キメラ、黒色の線)を自家受粉させることによって生産したBB種子のインビトロ発芽能力を示す。
図15】ビーフトマト植物(対照)又はビーフトマトのL1及びL2並びにアイルサ・クレイグ×チェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株の交雑により得られたF1のL3を含むキメラ(キメラ、黒色の線)を自家受粉させることによって生産したBB種子のインビトロ発芽能力を示す。
図16】BM種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとMM株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_BB(対照、BBとMM株との他家受精の後代)を表す。
図17】MH2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとH2H2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとH2H2株との他家受精の後代)を表す。
図18】MH2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとH2H2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとH2H2株との他家受精の後代)を表す。
図19】MP2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP2P2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP2P2株との他家受精の後代)を表す。
図20】MP2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP2P2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP2P2株との他家受精の後代)を表す。
図21】MP3種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP3P3株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP3P3株との他家受精の後代)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
定義
以下の説明及び実施例において、いくつかの用語が使用される。そのような用語に与えられる範囲を含め、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。本明細書において別途定義されない限り、使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。
【0063】
本明細書において使用されるとき、「含む(comprising)」及び「含む(to comprise)」という用語、並びにそれらの活用形は、これらの用語が、この単語に続く品目が含まれるが、具体的に述べられていない品目が除外されるわけではないことを意味して、非限定的に使用される状況を指す。これは、「からなる」というより制限的な動詞をもまた包含する。加えて、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という不定冠詞による要素への参照は、文脈によりその要素が1つ及び1つだけ存在することが明確に求められていない限り、その要素が1つを上回って存在する可能性を排除するものではない。「1つの(a)」又は「1つの(an)」という不定冠詞は、したがって、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0064】
本明細書において使用されるとき、「及び/又は」という用語は、言及された事例のうちの1つ又はそれ以上が、単独で生じ得る、又は言及された事例のうちの少なくとも1つとの組合せで生じ得、最大で言及された事例のすべてとの組合せで生じ得る、状況を指す。
【0065】
本発明の文脈において、種子の発芽は、種子胚からの植物の発生、得に、種皮からの幼根の出現の最初の段階を意味する。
【0066】
発芽は、通常、プライミングと称されるプロセスの間に、水による種子の制御された事前処置によって、促進される。プライミング中に、種子は、水和又は部分水和を受ける。このプライミングプロセスの後、通常、種子を、再び乾燥させる。種子を蒔くか、植えるか、又はそうでなければ分配し、水に曝露した後、種子が発芽することになる。
【0067】
湿層処理は、種子が、発芽の前に耐えなければならない可能性のある低温条件をシミュレーションするために、種子を事前処置するプロセスである。湿層処理は、胚の休眠期を打破する手段である。胚の休眠を打破するために、通常、低温期間が、可能性としては湿潤条件と組み合わせて、適用される。適用される温度は、1~5℃であることが典型的であるが、これに限定されない。処置の期間、適用される温度、及び湿潤条件は、植物の種に依存し、当業者には公知であるか、又は当業者によって構築することもできる。湿層処理の期間は、植物種及び湿層処理の他の環境条件に応じて、たとえば、1週間~20週間、又は1ヶ月間~3ヶ月間であり得る。種子は、冷水中に、たとえば、植物種に応じて、2~20時間浸漬され得、その後に、低温処置に曝露される。また、一部の事例において、低温処置には、種子を、植物種に応じて、及び植物種に応じた期間、温暖処置、たとえば、12~25℃に曝露することが先行する。当業者であれば、所与の植物種の湿層処理条件を選択する方法を認識している。
【0068】
実生は、種子に存在する植物の胚から発生した若い植物である。実生は、幼根(胚の根)、胚軸(胚の茎)、子葉(胚の葉)、シュート頂分裂組織、及び根頂分裂組織を含む。実生は、たとえば、子葉に加えて、第1の本葉を含み得る。そのような場合には、実生は、小植物体と称することもできる。
【0069】
遺伝子型という用語は、植物細胞、実生、植物の一部、又は植物の遺伝子構成を指し、とりわけ、植物細胞、実生、植物の一部、又は植物の特定のアレルの構成を含む。当業者には周知のように、種子の構成要素は、胚である。「胚遺伝子型」という用語は、したがって、種子のこの構成要素の遺伝子構成を指す。遺伝子型判定とは、たとえば、異なる分裂組織層又は異なる(非キメラ)植物のサブセット間での遺伝子の変動(たとえば、SNP)を判定するプロセスを指す。
【0070】
ハイブリッド種子とは、遺伝子的に異なる親から生産された種子を指す。したがって、ハイブリッド種子は、遺伝子的にヘテロ接合性であるか、又は大部分が遺伝子的にヘテロ接合性である。ハイブリッド種子はまた、F1ハイブリッド種子とも称される。
【0071】
近親交配種子は、近親交配株に由来する。近親交配株は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10世代連続の制御された自家受精、同胞交配、又は反復親への戻し交雑の結果として得られた純粋交配株である。近親交配株は、少なくとも5世代連続の制御された自家受精又は反復親への戻し交雑により得られた純粋交配株であることが、好ましい。
【0072】
類似の環境条件とは、とりわけ、類似の温度、湿度、栄養、及び光の条件、並びに類似の灌水、昼/夜リズム、及び受精レジメンの使用を意味する。これらの条件は、たとえば、周縁キメラのL3シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物、又は周縁キメラのL1シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載される植物が、成長する条件である。類似の環境条件は、同一の環境条件を示唆する。
【0073】
母体植物から、発生する種子への同化物の分配は、母体植物が、栄養源、たとえば、代謝産物及び/又はホルモンを種子に提供する、「分配」の相対レベルに関する。
【0074】
本発明の文脈において、種子発芽特性という用語は、とりわけ、発芽能力、発芽の均質性、発芽率、実生生重量、及び/又は種子活力を指す。
【0075】
種子密度は、種子の比重に関連する。この密度は、たとえば、種子の、たとえば、スクロース勾配における、液体密度分離によって、判定することができる。
【0076】
本発明の文脈において、発芽能力は、所与の植物種に適切な固定期間以内に発芽する、すなわち、幼根の出現を示す、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子の割合を意味する。したがって、発芽能力は、所与の期間以内に、発芽した種子の数を、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子の総数で除し、割合として再計算したものとして計算することができる。種子発芽特性は、たとえば、分類及び選択の手順、たとえば、農業及び園芸における通常のものを行った後に、判定することができ、特定の植物種を目的とするものであり得る。種子は、たとえば、液体密度分離によって、又はX線分類(たとえば、トマト種子に使用することができるようなもの)によって、分離することができる。種子はまた、まず、プライミングしてもよい。当業者であれば、所与の植物種に適切な固定期間がどれほどの長さであるかを認識している。この期間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍であり得る。これは、ピーク値時間の3倍であることが、好ましい。この期間が、環境条件に応じて変動し得ることもまた、当業者には公知である。これらの条件は種子発芽に最適な条件であることが、好ましい。したがって、発芽率又は発芽均質性における変動性が、発芽能力の計算に影響を及ぼさない長さの期間が、選択される。この期間は、当業者が、発芽能力のある種子の大半が実際にこの期間内に発芽すると妥当に予測することができる場合、適切である。図1は、異なる発芽能力を有する植物株の発芽した種子の割合の経時的な展開を示す。取得期間は、発芽した種子の数がやがて横ばいになり、プラトー期に達するのを確実にするように十分に長いものである。このプラトー期は、すべての種子が発芽している場合には100%であり得るか、又は一部の種子がまったく発芽していない場合には、それよりも低い割合であり得る。発芽能力とは、植物種に応じて、たとえば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を意味する。したがって、85%の発芽能力は、たとえば、ピーク値時間の3倍であるがこれに限定されない、所与の植物種に適切な期間以内に、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子のうちの85%が発芽する、すなわち、幼根の出現を示すことを、示唆する。高い発芽能力は、より多くの種子が幼根の出現を示すことを意味する。最適な環境条件下において発芽能力を構築するための、所与の植物種に適切な固定期間の例は、たとえば、シロイヌナズナ(Arabidopsis)については5日間、オオムギについては約7日間、オトギリソウ(Hypericum)については約7日間、タバコについては約7日間、トマトについては約7日間、キンポウゲについては約28日間、及びインパチェンスについては約30日間であるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の文脈において、ピーク値時間は、本明細書において、種子が発芽するように種子を蒔いたか、植えたか、又はそうでなければ分配してからの、場合によっては種子の分類及び選択からの、又はたとえば種子のプライミング及び/若しくは湿層処理からの期間であって、発芽した種子の割合をy軸にプロットし、時間をx軸にプロットした曲線において、最も大きい正接に到達する期間である。図2は、ピーク値時間の概念を図示する。したがって、ピーク値時間は、時間単位当たりの発芽する種子の数の増加が最も高くなる瞬間に到達するのに必要な期間として決定される。ピーク値時間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍、好ましくはピーク値時間の3倍の期間で固定することによって、発芽能力又は発芽率の計算に役立てるために使用することができる。
【0078】
本発明の文脈において、種子発芽の均質性又は発芽均質性は、固定割合の発芽した種子(X)に到達するのに必要な時間(T)である。この固定割合は、50%(T50)、75%(T75)、80%(T80)、90%(T90)、95%(T95)、99%(T99)、又は特定の種子バッチに適切な任意の割合であり得る。時間が短いほど、均質性が高い。種子発芽の均質性が、環境条件に応じて変動し得ることが、当業者には公知である。これらの条件が、種子発芽の最適な条件であることが、好ましい。種子発芽の均質性は、原則として、発芽能力又は発芽率とは独立しているが、かならずしもそうとは限らない様式で、測定される。
【0079】
本発明の文脈において、発芽率は、1日当たりの総発芽種子の加重合計として定義される。式形式では、発芽率=(1日目に発芽した種子の数を1で除したもの)+(2日目に発芽した種子の数を2で除したもの)+…+(Z日目に発芽した種子の数をZで除したもの)であり、式中、Zは、測定の最終日である。この測定は、American Association of Seed Analysts(AOSA)(AOSA.,1983.Seed vigor testing handbook.Contribution No.32 to handbook on seed testing.Association of Official Seed Analysts)によって定義される発芽指数(GI)と同じである。発芽率は、所与の植物種に適切な期間にわたって判定され、この期間は、当業者が、発芽する能力のある種子の大半が実際に発芽すると妥当に予測することができる期間である。当業者であれば、この期間を判定する方法を認知している。この期間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍であり得る。これは、ピーク値時間の3倍であることが、好ましい。発芽率が、環境条件に応じて変動し得ることが、当業者には公知である。これらの条件は種子発芽に最適な条件であることが、好ましい。しかしながら、準最適条件下においては、改良された種子バッチ品質もまた、強化された発芽率として評価することができ、これは、農業又は園芸の実施において一般的であり得る。
【0080】
本発明の文脈において、種子活力は、種子から生じる実生が、植えたときに、生存し、成長する能力を意味する。したがって、高い活力を有する種子は、類似の条件下であれば、生存し、まず子葉が展開され、次に、シュートが大きくなり、最後に、第1の本葉が生じることによって、第1の本葉が生じた実生又は小植物体に成長する割合が高い。同じ条件下であれば、植物種に応じたある特定の期間内に観察され得る第1の本葉が生じた実生又は小植物体の割合が高いほど、種子活力が、より高いと考えられる。また、播種後の固定期間後の実生の総生物量(生重量及び/又は乾燥重量)が大きいほど、種子活力が、より高いと考えられる。したがって、実生の生重量は、とりわけ、種子活力の尺度である。
【0081】
本発明の文脈において、種子表現型特性は、雑種の組織(胚及び胚乳)ではなく、植物の母系組織によって決定される、種子組成の生物化学的及び生物物理学的態様として、定義される。表現型特性は、植物の母系組織による主な栄養素(炭水化物、ミネラルなど)の供給によって決定される、胚及び胚乳内に保管される蓄えの量及び化学組成であり得る。他の表現型特性は、母系に由来する種皮の強度及び/又は厚さであり得る。表現型特性という用語は、生理学的特性を包含する。種子表現型特性は、種子発芽特性と関連する。
【0082】
本発明の文脈における、改変された又は改変するとは、植物Aを植物Bと交配することに由来する種子を、その表現型特性又は生理学的特性について、より詳細には、その発芽特性について、本発明による周縁キメラ植物から得られた種子と比較し、該表現型特性及び/又は生理学的特性が、変化していること、好ましくは、改良されていることを意味する。本発明による周縁キメラ植物は、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層を含み、一方で、L1及び/又はL3シュート分裂組織層は、異なる遺伝子型を有する、植物である。本発明による非キメラ植物は、L1及びL3シュート分裂組織層と同じ遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層を含む植物である。本発明による周縁植物から得られた種子は、植物Aと植物Bとの交配に由来する種子と比較して、強化された発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を示し得る。本発明の方法により得られたか又は得ることができる種子は、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aと植物Bとの交配に由来する種子と比較して、改変又は改良された種子密度分布、強化された発芽率、強化された発芽能力、改良された発芽均質性、改良された種子活力、及び実生生重量のうちの少なくとも1つを示し得る。植物A及びBは、同一の遺伝子型を有してもよく、その場合、得られる種子は、近親交配種子であり、或いは植物A及びBは、異なる遺伝子型を有してもよく、その場合、得られる種子は、ハイブリッド種子である。
【0083】
提供した定義は、完全及び十分であるが、説明が不足している場合には、その分野において提供されるさらなる定義は、International Seed Testing Association(ISTA)のハンドブック及び種子商業のウェブサイト、たとえば、http://www.fao.org/docrep/006/ad232e/ad232e09.htm又はhttp://www.seedbiology.de/germination.aspにおいて見出すことができる。これらの供給源による定義は、上記に提供される定義と矛盾しない限り、参考にすることができ、矛盾した場合には、上記に提供した定義が、適用される。
【0084】
〔詳細な説明〕
本発明は、第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の胚遺伝子型を有する種子を有する種子を生産するのに好適な周縁キメラ植物を生産する方法であって、種子の1つ又は複数の発芽特性が、改変及び/又は改良されており、この方法が、
i)第1の植物A及び第3の植物Cの提供のステップと、
ii)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層、並びに第3の植物Cの遺伝子型を有するL1及び/又はL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと
を含む、方法を提供する。
【0085】
生産される周縁キメラは、第2の植物Bの花粉での受粉に好適であることが、好ましい。
【0086】
本発明はまた、該周縁キメラ植物を母体植物として使用して、該種子を生産するための方法も提供する。したがって、本発明はまた、種子の胚の遺伝子型に影響を及ぼす必要なしに、種子を生産するため及び/又は種子の発芽特性を改変するための方法も提供する。該方法は、
a)植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層、並びに第3の植物Cの遺伝子型を有するL1及び/又はL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと、
b)周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させるステップと、
c)そのようにして得られた種子を採取するステップと
を含み、
種子胚が、第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られた種子と同一の遺伝子型を有する。
【0087】
本明細書において上述のように、第1の植物A(本明細書において「植物A」とも表記される)及び第3の植物C(本明細書において「植物C」とも表記される)は、本明細書において、非キメラ植物、すなわち、3つすべての分裂組織層L1、L2、及びL3について同じ遺伝子型を有するとして、理解されるものとする。第2の植物B(本明細書において「植物B」とも表記される)は、キメラ植物であっても非キメラ植物であってもよい。植物Bが、キメラ植物である場合、「植物Bの遺伝子型」は、本明細書において、「植物BのL2層の遺伝子型」として解釈されるものとする。第1の植物Aを第2の植物Bと交配することは、本明細書において、第1の植物Aを雌性植物とし、第2の植物Bを雄性植物として、交配することと理解されたい。L1及び/又はL3シュート分裂組織層は、L1シュート分裂組織層、L3シュート分裂組織層、並びにL1及びL3の両方のシュート分裂組織層のうちのいずれか1つとして理解されるものとする。ステップcにおいて採取された種子の少なくとも1つ又は複数の発芽特性は、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aを植物Bと交配することによって得られた種子と比較して、改変、好ましくは改良されていてもよい。1つ又は複数の発芽特性は、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aを植物Bと交配することによって得られた種子と比較して、有意に強化されていることが、好ましい。少なくとも1つの発芽特性は、発芽能力、発芽均質性、発芽率、種子密度、実生生重量、及び/又は種子活力のうちのいずれか1つであることが、好ましい。任意選択で、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの発芽特性が、改良又は強化されている。ステップcにおいて得られた種子は、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aを植物Bと交配することによって(植物Aを植物Bの花粉で受粉させることによって)得られた種子と比較して、強化された発芽能力及び強化された発芽率;強化された発芽能力及び強化された実生生重量;強化された発芽率及び強化された実生生重量;又は強化された強化された発芽能力、強化された発芽率、及び強化された実生生重量を示す。本方法は、ステップcにおいて得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップ及び/又はステップcにおいて得られた種子を発芽させるステップをさらに含んでもよい。したがって、そのような種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するための方法であって、上記に定義されるステップa~c、及び得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するための後続のステップを含む方法もまた、提供される。少なくとも1つの発芽特性は、発芽能力、発芽均質性、発芽率、種子密度、実生生重量、及び/又は種子活力のうちのいずれか1つであることが、好ましい。任意選択で、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの発芽特性が、評価される。これらの発芽特性は、第1の非キメラ植物A(雌性植物として)を、第2の植物B(雄性植物として)と交配することによって得られた種子の発芽特性と比較されることが、好ましい。任意選択で、この方法は、少なくとも1つの発芽特性を評価する前に、種子を発芽させるステップをさらに含む。種子を発芽させるための方法であって、上記に定義されるステップa~c、及びステップcにおいて得られた種子を発芽させる後続のステップd)を含む方法が、さらに提供される。任意選択で、この方法は、少なくとも1つの発芽特性を評価する後続のステップをさらに含む。本発明はまた、これらの方法のうちのいずれか1つにおける周縁キメラ植物の使用も提供する。
【0088】
好ましい実施形態において、胚乳の遺伝子型も、影響を受けることはない。たとえば、本発明では、改変された(たとえば、改良された)種子密度、生物量、発芽率、発芽能力、種子活力、及び/又は実生の生重量を有する種子が、提供され得る。発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量は、第1の植物A(雌性植物として)を第2の植物B(雄性植物として)と交配することによって得られた種子と比較して、強化されていることが、好ましい。
【0089】
第1の植物Aを第2の植物Bと交配することによって得られる胚遺伝子型を有する種子の発芽特性は、植物A又はBの交配の後代の遺伝子構成を改変することなく、改変又は改良することができる。この目標は、第3の植物Cに由来するL1及び/又はL3層、並びに第1の植物Aに由来するL2層を含む周縁キメラを調製し、それを、たとえば、受粉によって、第2の植物Bと交配する方法によって、達成される。このようにしてキメラから得られた種子は、第1の植物A及び第2の植物Bを交配することによって得られた種子の胚遺伝子型と同一の胚遺伝子型を示すが、第1の植物A及び第2の植物Bを交配することによって得られた種子と比較して、修飾された発芽特性を示す。解決される問題は、種子の胚遺伝子型を修飾することなしで、種子の発芽特性を修飾することである。解決方法は、上述のように構築したキメラを使用することである。修飾しようとする発芽特性は、種子密度、生物量、発芽率、発芽能力、及び/又は実生の生重量と関連し得るが、発芽特性における任意の他の所望される変化であってもよい。
【0090】
キメラにおいて使用される第3の植物Cは、所望される発芽特性の修飾に基づいて、及び特に種子の品質に関連するものを考慮して、選択され得る。たとえば、植物Cは、所与の密度、生物量を有する種子を生産することが公知の植物、又は所与の発芽能力若しくは実生の生重量を有する種子を提供することが公知の植物であり得る。そのような植物Cは、次いで、植物Cの種子の発芽特性により類似するように、種子の発芽特性を修飾するために、キメラにおいて使用され得る。たとえば、トマト種子生産においては多くの目的で、トマト品種アイルサ・クレイグを植物Cとして使用することが、有利であり得る。植物Cの選択は、さらに、又は上記に引用した選択基準に加えて、植物Cと植物Bとの交配により得られた種子の存在及び/又は発芽特性に基づき得る。換言すると、植物Cと植物Bとの交配が、種子、好ましくは、許容されるか良好な発芽特性を有する該種子をもたらすことが公知であるか又は確立されている場合、植物Cの遺伝子型を、本発明の方法において使用される周縁キメラ植物のL1及び/又はL3層の遺伝子型として選択することができる。双子葉植物において、植物の組織は、シュート頂分裂組織の3つのクローン的に異なる細胞層、すなわち、L1、L2、及びL3クローン細胞層における多能性幹細胞から生じる。L1クローン細胞層は、表皮を作製する。L3クローン細胞層は、脈管輸送系、すなわち、木部及び篩部を含む、すべての植物器官において内部組織の大部分を生じ、果実の子房内の胚珠の数、並びに種子における同化物の蓄積、並びにしたがって種子発芽の特性及び品質を制御する。さらに、L1クローン細胞層もまた、種子の品質に寄与するが、これは、種皮又は外種皮へと発生し、食物供給に関与する、胚珠の外皮を生じるためである。雌性配偶体及びしたがって卵細胞は、対照的に、L2クローン細胞層から別個かつ排他的に生じる。したがって、シュート頂分裂組織の3つの細胞層においてそれぞれの幹細胞から生じる細胞及び組織は、シュート頂分裂組織の3つの細胞層においてこれらの幹細胞それぞれの遺伝子型を有する。
【0091】
「周縁キメラ」は、1つ又は複数の細胞層(1つ又は複数)L1、L2、及び/又はL3全体が、別の細胞層とは遺伝子的に異なる、キメラである。周縁キメラの事例において、単一の組織層自体は、同種であり、キメラではない。周縁キメラは、最も安定な形態のキメラであり、明確に異なった価値のある植物表現型をもたらす。これらの植物は、それらが生成された末端分裂組織と同じ頂組織を有する腋芽を生産する。したがって、周縁キメラは、栄養繁殖によって倍増し得、それらのキメラ層組織を維持することができる。周縁キメラは、シュート分裂組織の(L1、L2、L3)層のうちの1つにおける幹細胞の体細胞変異生成によって、作製することができる。周縁キメラはまた、たとえば、Szymkowiak,E.J.及びSussex,I.M.(1992),The internal meristem layer(L3)determines floral meristem size and carpel number in tomato periclinal chimeras,Plant Cell 4,1089-1100によって記載されているように、合成方法によって生産することもできる。該周縁キメラは、2つの接木された種の間で生じる種間の細胞層移入の例である。この特定の方法は、栽培室又は温室において、周囲条件下で実施される。これは、一方を台木とし、もう一方を穂木とした、2つの植物の通常の接木からなる。接木接着部は、癒合した後、切断され、不定シュートを再生成することが可能となる。これらの不定シュートの中に、キメラが自発的に出現し得る。周縁キメラを生産するためのインビトロ合成技法もまた、開発されている。これらには、次のものが含まれる:(1)2つの異なる植物に由来する隣接した幹切片を、一緒に培養してキメラカルスにし、不定キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、細胞の共培養。(2)2つの異なる植物の細胞懸濁液を混合し、混合物を、成長させてキメラカルスにし、不定キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、混合カルス培養。(3)2つの異なる植物のプロトプラスト懸濁液を、アガロースに埋め込み、非常に高い細胞密度に成長させると、キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、プロトプラストの共培養。(4)2つの実生を、滅菌条件下において、それらの胚軸に沿って接木し、接木の頂端下の断面を培養して、キメラ不定カルス及びシュートを誘導する、インビトロ接木培養。このような技法は、組織培養の共通点に含まれ、個々の植物株又は種に特異的であり得る多数の異なるプロトコールからなる。当業者であれば、2つの異なる植物の細胞を一緒に組織培養して、周縁キメラである場合もそうでない場合もある植物を再生成する方法を、理解するであろう。植物キメラに関する詳細な考察については、Richard A.E.Tilney-Bassettによる「Plant Chimeras」(Cambridge University Press,1991)を参照されたい。
【0092】
本発明は、周縁キメラを生産する方法を提供する。これらの周縁キメラは、L2クローン細胞層の遺伝子型並びに花粉の遺伝子型によって決定される、ある特定の所望される遺伝子型の種子の生産を可能にする。これらの種子は、L2クローン細胞層とは異なる遺伝子型を有するL3クローン細胞層及び/又はL2クローン細胞層とは異なる遺伝子型を有するL1クローン細胞層を有する、そのような周縁キメラ植物において成長する。L3クローン細胞層及び/又はL1クローン層の遺伝子型の選択は、遺伝子型が母系特性(それが由来する植物の)、たとえば、胚珠特性、果実サイズ、植物学的活力、及び発生する種子の良好な栄養供給について選択されるような方法で、行われ得る。他の態様において、これは、劣性株であってもよい。しかしながら、L3及び/又はL1クローン細胞層の遺伝子型の選択は、L3及び/又はL1層が、独立して、又は組み合わさって、本発明の方法により、生産される種子の改変された(たとえば、改良された)発芽特性、並びに良好な品質の種子(たとえば、改良された発芽特性、たとえば、強化された発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を有するす種子)の生産に寄与し得るようなものであることが、好ましい。
【0093】
L3及び/又はL1クローン細胞層は、遺伝子的に後代に寄与するのではなく、種子に栄養源を提供し、種子の発芽特性及び品質を決定する機能のみを果たすため、植物のL3及び/又はL1クローン層の遺伝子型の選択により、改変された(たとえば、改良された)発芽特性及びL2遺伝子型のみからなる非キメラ植物によって決定されるであろうものよりも高い品質を有する種子の生産が可能となる。換言すると、L2遺伝子型のみからなる非キメラ植物によって生産される種子と比較して、本発明の周縁キメラ植物によって生産される種子は、改変された(たとえば、改良された)発芽特性、特に、改良された発芽特性、たとえば、強化された発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を示す。
【0094】
一実施形態において、L2クローン細胞層と同じ遺伝子型を有する雄性植物(植物B)と交配させた場合、そのような周縁キメラで得られる配偶体は、L2クローン細胞層によって遺伝子型が決定されるが、種子へと方向付けられる同化物の量は、L1及び/又はL3クローン細胞層の遺伝子型によって決定され、さらに他の種子特性、たとえば、種皮の厚さは、L1クローン細胞層の遺伝子型によって決定される。
【0095】
好ましい実施形態において、L1及び/又はL3クローン層は、L1及び/又はL3シュート分裂組織の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物が、雌性不稔性となるように選択される。単発的には、L1及びL3細胞は、L2層に侵入し、本発明の方法により得られた種子にいくらかの割合の望ましくない不純物をもたらす場合がある。L1及び/又はL3シュート分裂組織の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物が、雌性不稔性となるようなL1及び/又はL3クローン層を提供することにより、この望ましくない不純物が、防止される。この目的で、あらゆる形態の雌性不稔性を使用することができ、たとえば、不稔性は、遺伝子的なもの、たとえば、雌性配偶体の(一部の)発生及び機能に関与する変異の使用を通じたものであり得る。或いは、不稔性は、多倍数体又は異数体を使用して、たとえば、二倍体又は正倍数体の花粉ドナー植物と交配させたときに生存性のない卵、生存性のない胚乳、又は生存性のない胚を作出する、細胞遺伝子的なものであってもよい。
【0096】
たとえば、トマトの近親交配株Aにおいては、観察されている最大の本質的発芽能力は、60%である。この能力を改良するために、株AのL2層、並びに株CのトマトのL1層及びL3層を有する、周縁キメラを生産する。株Cは、それが95%という本質的に高い発芽能力を持つので選択する。周縁キメラを、株A及びCの実生を接木することによって作製し、これは、(1)胚軸を横方向に切断した後に隣接させて再接着させるステップ、(2)接木接合部を横方向に切断するステップ、並びに(3)カルスを成長させ、不定シュートが、接木接着の部位から再生成されるステップ、並びに(4)再生成された植物の中からキメラを選択するステップからなる。ステップ1~4の技法は、当業者に公知である。一般に、接木及び再生成を使用する場合、周縁キメラが、不定シュートに生じる頻度は、約0.2%~10%であろう。したがって、多数の株A及びCの実生が、接木され、多数の独立した不定シュートが生成される。これらの不定シュートのそれぞれを、長さおよそ5cmで、いくつかの葉を有する小植物体に成長させる。これらの小植物体から、シュート頂端を除去して、葉腋から葉腋シュートを生じさる。これらの葉腋シュートの中から、構成物質である株A及びCを区別する遺伝子マーカーを使用して、周縁キメラを特定する。これらのマーカーは、表現型、たとえば、異なる葉の色であってもよく、又は任意の形態学的若しくは生物化学的な違い、たとえば、果実の形状であってもよい。これらのマーカーは、遺伝子型、たとえば、株AとCとの間のDNA又はRNA配列多型性であってもよい。表現型及び/又は遺伝子型マーカーは、適切な検出方法によって検出され、すべての個々の接木された植物対から再生成されたすべての不定シュートに由来するすべての葉腋シュートに適用される。周縁キメラは、生殖交雑の結果ではなく、接木接合部からの不定シュートの再生成の結果として、株A及びCの両方のマーカーの組合せを単一の植物に有するとして認識される。そのようなキメラは、その葉腋シュート、花序、開花、並びに周縁キメラのシュート頂分裂組織からの自然の成長及び発生から生じる植物のすべての他の成長部分を含め、植物のさらなる成長の間、これらのマーカーを安定に保持する。その幹細胞層L(1、2、3)の構成という点で、所望される種類の周縁キメラは、特定の組織、たとえば、表皮(L1)、脈管(L3)、花粉粒(L2)、又は主としてこれらの層に由来することが公知の任意の他の組織における、マーカーの存在を観察することによって、特定される。純系株Aの種子の発芽能力を、ここで、(L1(C)、L2(A)、L3(C))型の周縁キメラを、株Aの遺伝子型の花粉で受粉させることによって、改良する。この花粉は、非キメラ株A植物から採取するか、又は周縁キメラを自家受精させる場合には、周縁キメラ自体から採取する。そのような受粉により得られた種子は、母系及び父系の配偶体が、L2層に排他的に由来するため、純系遺伝子型Aのものである。この方法で得られた株Aの種子ロットの改変された(たとえば、改良された)発芽特性及び改良された発芽能力は、通常の播種実験によって評価される。高品質の株Aの種子ロットを、この方法で生産させ、これらを、標準的な手順に従って処理することができ、続いて、(商用)流通に利用可能にすることができる。
【0097】
本発明はまた、F1ハイブリッド種子を生産する方法であって、周縁キメラのL2クローン細胞層の遺伝子型、並びに雄性植物の遺伝子型からなるF1ハイブリッド種子を生産するために、上述の周縁キメラを、所望される遺伝子型の雄性植物と交配する方法も提供する。
【0098】
本明細書において定義される本発明の方法、すなわち、種子を生産する方法及び/又は種子の発芽特性を改変させる方法には、さらなるステップ、すなわち、得られた種子の少なくとも1つの発芽特性を評価するステップが、含まれる。発芽特性は、通常の播種実験によって評価することができる。本発明の方法は、本明細書において上記に定義される、改変された、好ましくは改良された、発芽特性を示す種子の特定及び/又は選択を含み得、ここで、改変された又は改良されたとは、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aを植物Bと交配することにより得られた種子の発芽特性と比較して、改変又は改良されていることとして理解されるものとする。
【0099】
本発明の方法又は使用において、植物A及びCの遺伝子型は、互いに異なってもよい。本発明の方法又は使用における周縁キメラが、植物Cの遺伝子型を有するL1を含む場合、キメラのL3層は、好ましくは、植物A又はCの遺伝子型を有する。本発明の方法又は使用における周縁キメラが、植物Cの遺伝子型を有するL3を含む場合、キメラのL1層は、好ましくは、植物A又はCの遺伝子型を有する。周縁キメラ植物のL1及びL3シュート分裂組織層の両方が、植物Cの遺伝子型を有してもよい。任意選択で、周縁キメラ植物において、植物Cの遺伝子型は、植物A及び/又は植物Bの遺伝子型の一部を含む。ある実施形態において、植物Cは、植物A及び/又は植物Bの遺伝子型の一部を含む、植物A及び植物Bの交配(任意選択での自家受粉、同胞交配、及び/又は戻し交雑ステップを含む)により得られたハイブリッド及び/又は近親交配植物であってもよい。たとえば、植物Aの遺伝子型の、植物Cの全遺伝子型に対する寄与は、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも10%、なおもさらにより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%、又は少なくとも50%である。追加又は代替として、この実施形態において、植物Bの遺伝子型の、植物Cの全遺伝子型に対する寄与は、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも10%、なおもさらにより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%、又は少なくとも50%である。換言すると、任意選択で、周縁キメラ植物のL1及び/又はL3シュート分裂組織層は、植物A及び/又は植物Bの遺伝子型の一部を含む。周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層の遺伝子型は、植物B、好ましくは、植物BのL2シュート分裂組織層の遺伝子型の一部を含み得る。植物Aの遺伝子型は、植物Bの遺伝子型と同一であってもよいか又は異なってもよく、好ましくは、植物BのL2シュート分裂組織層と同一であってもよいか又は異なってもよい。換言すると、周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層の遺伝子型は、上記に定義されるステップbにおいて周縁キメラ植物を受粉させるのに使用される、植物B、好ましくは、植物BのL2シュート分裂組織層の遺伝子型と同一であってもよいか又は異なってもよい。任意選択で、上記に定義されるステップbにおいて、周縁キメラ植物は、自家受精される。本発明の方法又は使用の植物Bは、非キメラ植物であってもよい。本発明の方法又は使用の第1の植物A及び第3の植物Cは、同じ属の種及び/又は該属の種のハイブリッド若しくは近親交配種に属し得る。本発明の方法又は使用の第1の植物A、第2の植物B、及び第3の植物Cは、すべてが、同じ属の種及び/又は該属の種のハイブリッド若しくは近親交配に由来するものであってもよい。任意選択で、第3の植物Cは、該第1の植物Aによって生産される種子と比較して、強化された1つ又は複数の発芽特性、たとえば、発芽率、発芽能力、及び/又は実生生重量を有する種子を生産し得る。本発明の方法又は使用において、台木品種の種子が、生産され得る。本方法又は使用は、トマト種子の生産のためのものであり得る。本発明の方法又は使用の1つ又は複数の植物又はハイブリッド植物若しくは近親交配植物A、B、及びCは、ソラナム属に属する種に由来し得る。本発明の方法又は使用の1つ又は複数の植物又はハイブリッド植物若しくは近親交配植物A、B、及びCは、ソラナム・リコペルシクム種、ソラナム・ペンネリイ種、ソラナム・ハブロカイテス種、及びソラナム・ピンピネリフォリウム種、又はこれらのハイブリッド若しくは近親交配種の群から選択され得る。任意選択で、植物Cは、第1世代のF1ハイブリッド植物、好ましくは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1ハイブリッド植物、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのF1ハイブリッド植物、又はソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ピンピネリフォリウムのF1ハイブリッド植物であり得る。任意選択で、植物Cは、ハイブリッド又は近親交配植物、好ましくは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのハイブリッド若しくは近親交配植物、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのハイブリッド若しくは近親交配植物、又はソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ピンピネリフォリウムのハイブリッド若しくは近親交配植物であり、ここで、それぞれの種の遺伝子型の、全遺伝子型に対する寄与は、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも10%、なおもさらにより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%、又は少なくとも50%である。植物Cの遺伝子型のうちの少なくとも50%は、トマト品種アイルサ・クレイグの遺伝子型であり得る。本発明の方法又は使用の周縁キメラ植物のL1及び/又はL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム品種アイルサ・クレイグ×ソラナム・ペンネリイのハイブリッド植物、ソラナム・リコペルシクム品種アイルサ・クレイグ×ソラナム・ハブロカイテスのハイブリッド植物、又はソラナム・リコペルシクム品種アイルサ・クレイグ×ソラナム・ピンピネリフォリウムのハイブリッド植物の遺伝子型を有し得る。
【0100】
植物A、B、及びCのうちの少なくとも1つは、ソラナム・リコペルシクム植物であることが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム植物は、ソラナム・リコペルシクム植物品種アイルサ・クレイグであることが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム植物品種アイルサ・クレイグは、アクセッション番号LA3579を有し得ることが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム植物は、ソラナム・リコペルシクムビーフ品種である(たとえば、2つを上回る、好ましくは3つを上回る子房を有する)ことが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム植物は、マネーメーカー品種であることが、好ましい。マネーメーカー品種は、アクセッションLA2706を有し得ることが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム植物は、チェリータイプソラナム・リコペルシクム植物であることが、好ましい。ソラナム・リコペルシクム品種セラシフォルム(cerasiforme)が好ましい。
【0101】
植物A、B、及びCのうちの少なくとも1つは、ソラナム・ペンネリイ植物であることが、好ましい。ソラナム・ペンネリイ植物は、ソラナム・ペンネリイアクセッションLA716であることが、好ましい。
【0102】
植物A、B、及びCのうちの少なくとも1つは、ソラナム・ハブロカイテス植物であることが、好ましい。ソラナム・ハブロカイテス植物は、ソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826であることが、好ましい。
【0103】
植物A、植物B、及び植物Cのうちの少なくとも1つは、ソラナム・ニグラム(Solanum nigrum)ではないことが、好ましい。植物A、植物B、及び植物Cは、ソラナム・ニグラムではないことが、好ましい。
【0104】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・ペンネリイ株LA716の植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイ株LA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0105】
本発明の方法又は使用のさらなる実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L2又はL3シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・ペンネリイ株LA716の植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイ株LA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0106】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・ハブロカイテスアクセッション番号PI127826の植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイ株LA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0107】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L2又はL3シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・ハブロカイテスアクセッション番号PI127826の植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイ株LA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0108】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層もまた、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0109】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層もまた、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L3又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0110】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L2又はL3シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であることが好ましく、並びに/又は植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが好ましい。
【0111】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムのビーフ品種の近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Bは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であることが好ましく、並びに/又は植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが好ましい。
【0112】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ハブロカイテスとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0113】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ハブロカイテスとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L3又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0114】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ハペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0115】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ハブロカイテス株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L3又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ハブロカイテスとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0116】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ハブロカイテスとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L3又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0117】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L3シュート分裂組織層は、好ましくは、L1又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0118】
本発明の方法又は使用の実施形態において、植物A、及び周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有し、植物B、より詳細には、植物BのL2シュート分裂組織層は、ソラナム・ペンネリイ株の遺伝子型を有し、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株とソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層は、好ましくは、L3又はL2シュート分裂組織層、好ましくはL2シュート分裂組織層の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義される通りであり得る。この実施形態において、植物Aは、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの植物であり、植物C、及び周縁キメラ植物のL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグとソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
【0119】
本発明はまた、植物Aを植物Bと交配することによって得られたか又は得ることができる種子と比較して、少なくとも1つの改変された、好ましくは改良された発芽特性を有する種子を提供する。該種子は、本発明の方法により、すなわち、植物Aの遺伝子型を有するL2シュート分裂組織層、並びに第3の植物Cの遺伝子型を有するL1及び/又はL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を提供し、周縁キメラ植物を、植物Bの花粉で受粉させ、そのようにして得られた種子を採取することによって、得ることができる。該種子は、類似の環境条件下において試験した場合、植物Aと植物Bとの交配に由来する種子と比較して、改変された(たとえば、改良された)種子密度分布、強化された発芽率、強化された発芽能力、改良された発芽均質性、改良された種子活力、及び実生生重量のうちの少なくとも1つを示すことが、好ましい。発芽特性のうちの少なくとも1つが、改変及び/又は改良されていることが好ましく、任意選択で、複数の特性が改変及び/又は改良されていることが好ましい。種子は、好ましくは、外皮又は種皮を有し、これらは、本発明の方法の周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層の遺伝子型を有するであろう。L2シュート分裂組織層が、植物Aの遺伝子型を有し、L1シュート分裂組織層が、植物Cの遺伝子型を有する、本発明の方法によって得られたか又は得ることができる種子は、その外皮又は種皮が植物Cの遺伝子型を有し、その胚が、本明細書において定義される植物Aと植物Bとの交配によって得られる遺伝子型と同一の遺伝子型を有することによって、認識される。
【0120】
本発明はまた、本発明の方法又は使用における、本明細書において定義される周縁キメラ植物を提供する。該周縁キメラ植物は、本明細書において定義される本発明の方法において使用するためのものであることが、好ましい。本発明の方法において使用するための周縁キメラ植物は、L1シュート分裂組織層が、ソラナム・ペンネリイアクセッションLA716の遺伝子型を有し、L2及びL3シュート分裂組織層が、ソラナム・リコペルシクム栽培種ハインツ1706の遺伝子型を有する、L1、L2、及びL3シュート分裂組織層の組合せを含まないことが、好ましい。本発明はまた、受精した周縁キメラ、すなわち、胚を含むものである、本明細書において定義される周縁キメラを提供する。胚は、植物Aと植物Bとの交配により得られる遺伝子型と同様に、植物Aの遺伝子型及び植物Bの遺伝子型の組合せを含むことが、好ましい。
【0121】
本発明はまた、台木品種のための種子生産、台木品種の種子、及び台木を提供し、ここで、種子は、高品質な種間F1ハイブリッド種子である。商用の野菜生産は、台木接木を利用する系を利用することが増えている。そのような系において、栽培種のシュート(穂木、たとえば、F1ハイブリッドトマト品種)を、第2の栽培種の根(台木)に接木する。台木自体は、通常、F1ハイブリッド品種、特に、穂木の成長及び生産に役立つその優れた台木特性のために交配されたものである。台木により、たとえば、土壌伝播性の病原体に対する抵抗性、最適な栄養成長対繁殖成長のバランス、寒冷地に対する抵抗性、及び寿命の延長が付与される。
【0122】
台木は、市場性のある産物(たとえば、果実、種子、又は葉)の品質パラメーターを満たす必要がないため、その遺伝子構成において高い自由度で交配させることができる。たとえば、栽培種と野生種との第1世代のF1ハイブリッドを利用することが可能であり、野生種により、生物的及び/又は非生物的ストレスに対する広範な遺伝的抵抗性への直接的なアクセスが得られる。たとえば、トマトの場合、ほとんどの台木は、野生種(たとえば、ソラナム・ハブロカイテス、ソラナム・ペンネリイ)と、雌性ソラナム・リコペルシクムとの種間交雑により得られたF1ハイブリッドである。
【0123】
そのような広範なハイブリッドの利点は明白であるが、必要とされる交雑は、遺伝子の不適合性レベルが問題となり、結果として(非常に)少なく、低い品質のF1種子をもたらすことが、欠点である。トマト台木ハイブリッドの場合、種子の欠陥をもたらす不適合性は、通常、胚乳に欠陥があり、胚の栄養不良が生じることが原因とされる。胞子体の母系種子組織(外皮)が、胚乳の欠陥において役割を果たす。シロイヌナズナ(Arabidopsis)の外皮に発現される遺伝子TTG2のバリアント発現レベルにより、種間交雑を補正することができる(Burkart-Waco D.,Ngoa K.,Dilkes B,Josefsson C、及びComai L(2013)Early disruption of maternal-zygotic interaction and activation of defense-like responses in Arabidopsis interspecific crosses.Plant Cell 25(6):2037-2055)。台木ハイブリッドの商用としての成功は、その台木自体としての特性と同程度に、その発芽特性に高度に依存する。これは、台木交配において最も高度に需要のある形質の良好な発芽のものをもたらす。本発明は、そのような良好な発芽特性を提供する。
【0124】
例示的な実施形態において、本発明は、L2層が、たとえば、ソラナム・リコペルシクム(EE)のものであり、L1層が、たとえば、EEと遺伝子型WWの野生種との交雑に由来するハイブリッド遺伝子型EWのものである、周縁キメラを利用する。L3の遺伝子型は、自由に選択することができる。そのような周縁キメラを、雌性として、純系遺伝子型WWの雄性植物と交配すると、結果として得られる種子から発芽する植物は、通常のE×Wの交雑と遺伝子型の区別がつかないが、より改良された発芽特性を有するものとなるであろう。これにより、高品質の種間F1ハイブリッド種子の生産への道が開ける。
【0125】
本開示において、ソラナム・リコペルシクム植物品種アイルサ・クレイグは、アクセッション番号LA3579を有し得、ソラナム・リコペルシクム植物品種マネーメーカーは、たとえば、アクセッションLA2706を有し得る。
【実施例
【0126】
実施例1:ビーフトマトF1ハイブリッドにおける種子発芽の改良
F1ハイブリッドトマト品種XZの種子の発芽特性が、改良された。この品種は、大型のビーフタイプのものであり、母系(XX)及び父系(ZZ)の近親交配株を交配し、トマトF1ハイブリッド種子を生産することによって、生産する。
【0127】
{L3(YY)、L2(XX)、L1(YY)}型の周縁キメラを作製し、ここで、YY及びXXは、二倍体を示す(X及びYが、半数体である)。YYは、近親交配トマト品種アイルサ・クレイグ(アクセッションLA3579)である。まず、YY穂木をXX台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、表現型マーカーxa(Szymkowiak,E.J.及びSussex,I.M.(1992),The internal meristem layer(L3)determines floral meristem size and carpel number in tomato periclinal chimeras,Plant Cell 4,pp.1089-1100)、並びにYY株によって保持されるU(Powellら、Uniform ripening Encodes a Golden 2-like Transcription Factor Regulating Tomato Fruit Chloroplast Development,Science 29 Jun 2012:Vol.336,Issue 6089,pp.1711-1715)を使用して、周縁キメラを、目視により選択した。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性であり、黄色の葉をもたらす。優性マーカーUは、果実に緑色のショルダーをもたらす。いずれのマーカーも、XXには存在しない。所望される種類のキメラは、薄緑色の中心部(L3黄色)及び深緑色のリム(緑色のL2)を有し、緑色のショルダーを有する果実を示すことによって認識した。L1層の同一性は、表皮細胞におけるXXをYYと区別するSNPマーカーの有無をスコア付けすることによって、YYであると判定した。このキメラは、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。葉及び茎において黄色の部分として現れる自発的なL2(XX)層の置換えは、稀であった。
【0128】
キメラの交配挙動を、ゲノムにわたって分布している518個のSNP遺伝子座を使用して分析した(データは示されない)。キメラの自殖後代(S1実生、n=14)の遺伝子型は、非キメラXX植物で生産された種子に由来するXX S1実生と区別することができなかった。これを、xaマーカーの分離比分析によって、さらに確認した。キメラに由来する500個のS1実生において、黄色の実生は1つも観察されなかった。対照的に、非キメラYYの自殖後代(XA/xaヘテロ接合性)は、50%が黄色の実生に分離する。
【0129】
このデータは、キメラが、遺伝子型Xに由来する配偶体を保持していたこと、及びYY組織が、胞子体の役割しか果たさなかったことを示した。
【0130】
キメラ、並びに非キメラXX及びYY植物から、種子を生産させた。この目的で、それぞれの6つの植物を、遺伝子型XXの台木に接木して、それらの根系を等しくした。これらは、自家受精させて、株種子(S1)を生産させたか、又は株ZZに由来する花粉で他家受精させて、XZハイブリッド種子(F1)を生産させたかのいずれかであった。すべての植物を、4月~8月の期間、通常の温室で成長させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで摂氏10度/相対湿度10%で保管した。
【0131】
種子の5つの発芽特性を定め、測定した。
【0132】
(a)密度
(b)生物量
(c)発芽率
(d)発芽能力
(e)実生生重量
すべての測定は、以下の逐次的な方法で行った。
【0133】
(a)密度
成熟種子の密度は、その生理学的組成の一次関数である。これは、主として、種皮内の空間を占める胚乳及び胚における代謝化合物の量及び生化学的性質によって決定される。密度(比重)は、スクロース水溶液における液体密度分離によって判定した。約500個の種子を、メスシリンダーにおいて、水1リットル当たり0、200、及び400グラムのスクロースに順番に通過させた。軽い溶液中に沈む種子を収集し、次へ進めた。これにより、低いものから高いものへ、次の4つの密度画分が得られた:0、200、400、及び400+。これらの画分を、水道水で十分にすすぎ、室温において、ろ紙の上で少なくとも72時間乾燥させた。1画分当たりの種子の数を計数し、密度クラスにわたる分布を判定した。試験を、独立した種子500個のサンプルで、合計約2500個の種子を用いて、5回反復した。
【0134】
図3Aに示されるように、キメラのS1種子は、YYのS1種子のものとは同一であるが、XXのS1種子とは大きく異なる、密度分布を有していた。キメラに由来するS1種子及びXXのS1種子は、胚及び胚乳が遺伝子的に同一であるため、密度における差は、YY胞子体によって種子に生理学的に付与されたものであると結論付けなければならない。これを、キメラに由来するS1植物のS2種子を分析することによって、確認した。XX胞子体において成長させたS2種子は、XXのものと同一の密度分布を有していた(図3A)。同じパターンが、F1ハイブリッド種子で観察され(図3B)、YYによって付与される種子密度形質が、胚及び胚乳の遺伝子型から独立していることが示された。
【0135】
(b)生物量
生物量は、種子内に存在する生物材料の総量の関数であり、種子密度とは独立している。種子における生物量の蓄積は、胚及び胚乳が従属栄養性であるため、最終的には胞子体によって制限される。上述の(a)部の密度画分のそれぞれ及び5回の反復のそれぞれから、乾燥及び計数した種子の総生物量を、精密天秤で測定した。データを、個別の種子ごとの平均量に変換した。
【0136】
図4Aに示されるように、S1種子の生物量は、4つの密度クラス間及び遺伝子型間で、それほど違わなかった。密度クラス3の種子の生物量が最も大きいという傾向があった。これは、純系のYY植物で最も顕著であり、密度クラス3から密度クラス4で、急激な重量の減少が見られた。このYYパターンは、キメラに由来するF1種子に付与されていた(図4B)。加えて、キメラF1種子は、クラス3において、XXに由来するF1種子よりも有意に重かった(図4B)。
【0137】
(c)発芽率
100個の種子を、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、成長チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。次いで、発芽率を、以下の式に従って計算した:発芽率=(#1/1)+(#2/2)+……+(#7/7)、式中、#1は、24時間後に発芽していた種子の数であり、#2は、48時間後に発芽していた種子の数である、といって具合である。発芽率の数字が大きいほど、幼根の出現が速い。試験を、独立した種子100個のサンプルで、合計約900個の種子を用いて、9回反復した。
【0138】
図5は、キメラ及びXX対照植物に由来するS1及びF1種子のインビトロ発芽率試験の結果を示す。種子は、密度クラス3(キメラ由来)又は密度クラス4(XX由来)からのみ得たが、これは、これらのクラスが、それぞれの標準値を表すためである。YY植物の種子は、YY遺伝子型の胚を保持し、したがって、直接的に比較することができないため、含めなかった。キメラが、S1(図5A)及びF1(図5B)の両方の種子について、より高い発芽率を有する種子を生産したことは、図5から明らかである。この率の増加は、F1種子で特に顕著であり、播種後の最初の2日間において、対照よりも顕著に発芽した(図6A及び6Bを参照されたい)。キメラ及びXX対照に由来する胚及び胚乳は、遺伝子的に同一であるため、発芽率の差は、胞子体YYによって付与されていると結論付けなければならない。
【0139】
(d)発芽能力
発芽能力を、上述の(c)部に記載されるものと同じアレイにおいて、7日後に発芽した種子の総数(%)をスコア付けすることによって、インビトロで測定した。加えて、120個の種子(キメラについては密度クラス3、XXについては密度クラス4)を、10個ずつ12個の群で、格子状のアレイに入れて土壌に蒔き、細粒土壌の薄い層をかぶせ、軽く水やりをすることによって、発芽能力を、インビボで測定した。インビボでの発芽に関して、種子はまた、最も大きい種子を蒔くように、サイズによって手作業で選択した。発芽した実生の数を、温室において、7日後にスコア付けした。
【0140】
結果を、図6に示す。インビトロでの発芽能力は、キメラのS1種子(図6A)及びF1種子(図6B)の両方で、XX対照植物と比較して、有意に高かった。F1種子は、S1よりも本質的に低い能力を有していた。発芽能力の差は、インビボ条件下において、特に顕著であった。7日後に、キメラ由来の種子は、98%まで均質に発芽したが、一方で対照は、低く、不規則な発芽を示した(図6C)。
【0141】
(e)実生生重量
実生シュート生重量を、まず、20個のランダムに選択した発芽した種子((c)部に記載される手順の2日目に発芽した)を、土壌を充填したフラットに移すことによって、測定した。摘み取りの時点において、これらの種子は、ほとんどが、根の出現のみを有しているだけであったが、胚軸の出現の最初の兆候を有する場合もあった。種子を土壌表面に置き、細粒土壌の薄い層をかぶせ、水をやった。移動の際には、若い実生を傷つけないように、注意を払った。温室において周囲条件下で7日間成長させた後に、測定を行った。実生-シュート全体(胚軸-根の接合部まで)を、新しく採取し、精密天秤で計量した。
【0142】
図7から見ることができるように、キメラに由来するS1の実生(図7A)及びF1の実生(図7B)は、対照よりも有意に重かった。この差は、F1種子において特に顕著であった。実生が重いということは、成熟した種子における豊富な食物貯蔵及び/又はYY胞子体による栄養供給によって可能となる発生中の胚の成長の強化のいずれかに起因する可能性が高い。
【0143】
上記に示したデータは、様々な種子発芽態様(a~e)における顕著な変化が、胚及び胚乳には遺伝子的に無関係な胞子体遺伝子型の影響下において生じたことを示す。結果は、異なる環境条件下において、発芽率及び発芽能力として、並びに実生活力として測定した場合の改良された種子品質であった。
【0144】
実施例2:ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1ハイブリッドにおける改良された種子発芽
種間F1ハイブリッド品種TPに由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株TTを、ソラナム・ペンネリイの父系株PPに交配することによって、生産される。
【0145】
{L3(TT)、L2(TT)、L1(EP)}型の周縁キメラを作製し、ここで、TT及びEPは、二倍体を示す(T及びE及びPが、半数体である)。TTは、標準的な近親交配トマト(ソラナム・リコペルシクム)品種である。EPは、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイ株PP(アクセッションLA716)との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP穂木をTT台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてEP穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択した。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性条件下において、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色の葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(TTのL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(EPのL1)を有することによって、認識した。このキメラは、葉及び茎において黄色の区域として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が完全に存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。このキメラの交配挙動を、xaマーカーの分離比分析を使用して、分析した。500個のキメラの実生において、PPとの戻し交雑により、黄色の実生は1つも観察されなかった。これらのデータは、このキメラが、遺伝子型T由来の配偶体を排他的に保持していたこと、及びEP組織が、胞子体の役割しか果たさなかったことを示した。L1層は、胚珠の外皮を生じ、後に成熟種子の種皮を生じることが周知であるため、キメラの種子発生におけるEPの胞子体の役割は、外皮及び種皮のものである。
【0146】
種間のTP F1ハイブリッド種子を、キメラ並びに非キメラTT植物から生産させた。この目的で、それぞれの6つの植物を、遺伝子型TTの台木に接木して、それらの根系を等しくした。それらを、PP株由来の花粉で他家受精させて、TPハイブリッド種子(F1)を生産させた。すべての植物を、4月~8月の期間、通常の温室で成長させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで摂氏10度/相対湿度10%で保管した。
【0147】
種子の3つの発芽特性を定め、測定した。
【0148】
(a)密度
(b)発芽率
(c)発芽能力
【0149】
すべての測定は、以下の逐次的な方法で行った。
【0150】
(a)密度
成熟種子の密度は、その生理学的組成の一次関数である。これは、主として、種皮内の空間を占める胚乳及び胚における代謝化合物の量及び生化学的性質によって決定される。密度(比重)は、スクロース水溶液における液体密度分離によって判定した。約500個の種子を、メスシリンダーにおいて、水1リットル当たり0、200、及び400グラムのスクロースに順番に通過させた。軽い溶液中に沈む種子を収集し、次へ進めた。これにより、低いものから高いものへ、次の4つの密度画分が得られた:0、200、400、及び400+。これらの画分を、水道水で十分にすすぎ、室温において、ろ紙の上で少なくとも72時間乾燥させた。1画分当たりの種子の数を計数し、密度クラスにわたる分布を判定した。
【0151】
図8に示されるように、非キメラTTをPPに交配することにより作製した種間F1種子は、キメラをPPと交配したものとは大きく異なる密度分布を有していた。キメラ交雑とは対照的に、非キメラ交雑は、充填度の低い軽い種子を高比率で有していた。これらの2つの交雑種における胚及び胚乳の遺伝子型は、同一であるため、密度分布における差は、EP胞子体によって種子に生理学的に付与されたものであると結論付けなければならない。充填度の低い種子の比率が高いことは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイの交雑種の特徴であり、これらの種間における軽度の種間交雑障壁の現れである。キメラでは、この障壁が有意に緩和されていた。
【0152】
(b)発芽率
100個の種子を、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。次いで、発芽率を、以下の式に従って計算した:発芽率=(#1/1)+(#2/2)+……+(#7/7)、式中、#1は、24時間後に発芽していた種子の数であり、#2は、48時間後に発芽していた種子の数である。発芽率の数字が大きいほど、幼根の出現が速い。試験は、種子100個のサンプルで行った。
【0153】
図9は、キメラ植物及びTT対照植物に由来するF1種子のインビトロ発芽率試験の結果を示す。未処理の種子バッチのみを蒔いた、すなわち、播種の前に、密度分画は行わなかった。図9から、キメラが、より発芽率の高い種子バッチを生産したことは明らかである。キメラ及びTT対照に由来する胚及び胚乳は、遺伝子的に同一であるため、発芽率の差は、胞子体EPによって生理学的に付与されていると結論付けなければならない。遅い種子発芽は、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイの交雑種の特徴であり、これらの種間における軽度の種間交雑障壁の現れである。キメラでは、この障壁が有意に克服される。
【0154】
(c)発芽能力
発芽能力を、上述の(b)部に記載されるものと同じアレイにおいて、10日後に発芽した種子の総数(%)をスコア付けすることによって、インビトロで測定した。結果を、図10に示す。インビトロでの発芽能力は、キメラの種子では、TT対照植物と比較して高かった。
【0155】
実施例3:ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのF1ハイブリッドにおける改良された種子発芽
種間F1ハイブリッド品種THに由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株TTを、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株HHに交配することによって、生産される。
【0156】
{L3(TT)、L2(TT)、L1(EP)}型の周縁キメラを作製し、ここで、TT及びEPは、二倍体を示す(T及びE及びPが、半数体である)。TTは、標準的な近親交配トマト(ソラナム・リコペルシクム)品種である。EPは、標準的なソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイ株PP(アクセッションLA716)との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP穂木をTT台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてEP穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択した。ヘテロ接合性条件下において存在する半優性マーカーxaは、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色い葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(TTのL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(EPのL1)を有することによって、認識した。このキメラは、葉及び茎において黄色の区域として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が完全に存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。このキメラの交配挙動を、xaマーカーの分離比分析を使用して、分析した。500個のキメラの実生において、PPとの戻し交雑により、黄色の実生は1つも観察されなかった。これらのデータは、このキメラが、遺伝子型T由来の配偶体を排他的に保持していたこと、及びEP組織が、胞子体の役割しか果たさなかったことを示した。L1層は、胚珠の外皮を生じ、後に成熟種子の種皮を生じることが周知であるため、キメラの種子発生におけるEPの胞子体の役割は、外皮及び種皮のものである。
【0157】
キメラ、並びに非キメラTT対照植物を、HHと表記されるソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826に由来する花粉で他家受精させて、THハイブリッド種子(F1)生産させた。すべての植物を、4月~8月の期間、通常の温室で成長させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0158】
種子の4つの発芽特性を定め、測定した。
【0159】
(a)比重
(b)発芽率
(c)発芽能力
【0160】
すべての測定は、以下の逐次的な方法で行った。
【0161】
(a)比重
成熟種子の密度は、その生理学的組成の一次関数である。これは、主として、種皮内の空間を占める胚乳及び胚における代謝化合物の量及び生化学的性質によって決定される。比重は、スクロース水溶液における液体密度分離によって判定した。約500個の種子を、メスシリンダーにおいて、水1リットル当たり0、200、及び400グラムのスクロースに順番に通過させた。軽い溶液中に沈む種子を収集し、次へ進めた。これにより、低いものから高いものへ、次の4つの密度画分が得られた:0、200、400、及び400+。これらの画分を、水道水で十分にすすぎ、室温において、ろ紙の上で少なくとも72時間乾燥させた。1画分当たりの種子の数を計数し、密度画分にわたる分布を判定した。
【0162】
図11に示されるように、非キメラTTをHHに対照交配することにより作製した種間F1種子は、キメラをHHと交雑させたものとは異なる密度分布を有していた。対照交雑は、充填度の低い軽い種子を高比率で有していた。これらの2つの交雑種における胚及び胚乳の遺伝子型は、同一であるため、密度分布における差は、EP胞子体によって種子に生理学的に付与されたものであると結論付けなければならない。充填度の低い種子の比率が高いことは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスの交雑種の特徴であり、これらの種間における種間交雑障壁の現れである。キメラ交雑におけるEP胞子体組織により、これが補正された。
【0163】
(b)発芽率
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。次いで、発芽率を、以下の式に従って計算した:発芽率=(#1/1)+(#2/2)+……+(#7/7)、式中、#1は、24時間後に発芽していた種子の数であり、#2は、48時間後に発芽していた種子の数である。発芽率の数字が大きいほど、幼根の出現が速い。試験は、種子100個のサンプル3つで行った。
【0164】
図12は、キメラ植物及びTT対照植物で生産されたF1種子の発芽率試験の結果を示す。未処理の種子バッチのみを蒔いた、すなわち、播種の前に、密度分画は行わなかった。図12から、キメラが、より発芽率の高い種子バッチを生産したことは明らかである。キメラ及びTT対照に由来する胚及び胚乳は、遺伝子的に同一であるため、発芽率の差は、胞子体EPによって生理学的に付与されていると結論付けなければならない。非常に低い種子発芽は、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスの交雑種の特徴であり、これらの種間における種間交雑障壁の現れである。キメラ交雑種におけるEP胞子体組織により、この障壁が緩和された。
【0165】
(c)発芽能力
発芽能力を、上述の(b)部に記載されるものと同じアレイにおいて、7日後に発芽した種子の総数(%)をスコア付けすることによって、インビトロで測定した。結果を、図13に示す。インビトロでの発芽能力は、キメラで作製した種子では、TT対照植物で作製した種子と比較してさらに高かった。
【0166】
実施例4:ビーフトマト近親交配種子の改良された種子発芽
ビーフ品種BBに由来する近親交配種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株BBの自家受精によって生産される。
【0167】
{L3(BB)、L2(BB)、L1(ER)}型の周縁キメラを作製し、ここで、BB及びERは、二倍体を示す(B及びE及びRが、半数体である)。ERは、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株RRとの第1世代のF1ハイブリッドである。まず、ER穂木をBB台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(ERハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、BBをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、BBのL2及びL3層の上に、遺伝子型ERのL1層を保持する周縁キメラであることを示した。このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0168】
キメラ、並びに非キメラBB対照植物を、自家受精させた。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0169】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、8日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図14で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
【0170】
実施例5:ビーフトマト近親交配種子の改良された種子発芽
ビーフ品種BBに由来する近親交配種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株BBの自家受精によって生産される。
【0171】
{L3(ER)、L2(BB)、L1(BB)}型の周縁キメラを作製し、ここで、BB及びERは、二倍体を示す(B及びE及びRが、半数体である)。ERは、標準的なソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株RRとの第1世代のF1ハイブリッドである。まず、ER穂木をBB台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(ERハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって、周縁キメラを選択した。色がいくらか薄緑色である葉の中央部、及び深緑色の外側リムを有する、葉腋枝を選択した。これらの枝は、BBをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。遺伝子型判定を、茎の髄(L3由来)及び表皮の薄い剥離片(L1)からの切片組織に由来するDNAに行った。前者にEE SNPが存在し、後者にそれが存在しないことは、シュートが、BBのL2及びL1層の下に、遺伝子型ERのL3層を保持する周縁キメラであることを示した。このキメラは、本来であれば緑色の組織において完全な黄色の区画として現れたであろうL3細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0172】
キメラ、並びに非キメラBB対照植物を、自家受精させた。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0173】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、8日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図15で見ることができるように、キメラは、非常に強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
【0174】
実施例6:ビーフタイプの母体植物に由来するF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種BMに由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系ビーフタイプ近親交配株BBを、ソラナム・リコペルシクムに由来する父系株MM(栽培種マネーメーカー)に交配することによって、生産される。
【0175】
{L3(ER)、L2(BB)、L1(BB)}型の周縁キメラを作製し、ここで、BB及びERは、二倍体を示す(B及びE及びRが、半数体である)。ERは、標準的なソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株RRとの第1世代のF1ハイブリッドである。まず、ER穂木をBB台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(ERハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって、周縁キメラを選択した。色がいくらか薄緑色である葉の中央部、及び深緑色の外側リムを有する、葉腋枝を選択した。これらの枝は、BBをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。遺伝子型判定を、茎の髄(L3由来)及び表皮の薄い剥離片(L1)からの切片組織に由来するDNAに行った。前者にEE SNPが存在し、後者にそれが存在しないことは、シュートが、BBのL2及びL1層の下に、遺伝子型ERのL3層を保持する周縁キメラであることを示した。このキメラは、本来であれば緑色の組織において完全な黄色の区画として現れたであろうL3細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0176】
キメラ、並びに非キメラBB対照植物を、MMに由来する花粉で他家受精させて、BMハイブリッド種子(F1)生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0177】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、8日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図16で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
【0178】
実施例7:種間のソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種MH2に由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株H2H2に交配することによって、生産させる。
【0179】
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
【0180】
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0181】
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ハブロカイテス遺伝子型H2(アクセッションLA1625)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0182】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図17で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
【0183】
実施例8:種間のソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスのF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種MH2に由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株H2H2に交配することによって、生産させる。
【0184】
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EP1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEP1は、二倍体を示す(M及びE及びP1が、半数体である)。EP1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EP1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EP1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EP1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
【0185】
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0186】
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ハブロカイテス遺伝子型H2(アクセッションLA1625)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0187】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図18で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度能力を有する種子を生産した。
【0188】
実施例9:種間のソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種MP2に由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P2P2に交配することによって、生産させる。
【0189】
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
【0190】
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0191】
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P2(アクセッションLA1809)に由来する花粉で他家受精させて、MP2ハイブリッド種子を生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0192】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図19で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
【0193】
実施例10:種間のソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種MP2に由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P2P2に交配することによって、生産させる。
【0194】
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EP1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEP1は、二倍体を示す(M及びE及びP1が、半数体である)。EP1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EP1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EP1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EP1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
【0195】
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0196】
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P2(アクセッションLA1809)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0197】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図20で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度能力を有する種子を生産した。
【0198】
実施例11:種間のソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1種子の改良された種子発芽
F1ハイブリッド品種MP3に由来するトマト種子の発芽特性が、改良された。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P3P3に交配することによって、生産させる。
【0199】
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
【0200】
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
【0201】
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P3(アクセッションLA2657)に由来する花粉で他家受精させて、MP3ハイブリッド種子を生産させた。交配は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
【0202】
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図21で見ることができるように、キメラは、強力に改良された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21